比企谷八幡の身体は… (477)



雪乃「もう3時半過ぎ、そろそろ来る頃ね。」


雪乃「平塚先生が言うには、
今日からこの奉仕部に新入部員が入部してくるという事らしいけど…」


雪乃「確か私と同じ学年の比企谷八幡という名前だったかしら?」


雪乃「この名前に私は聞き覚えがある。」


雪乃「去年、私の家の車と交通事故に遭い怪我を負った少年。」


雪乃「けどあの話は既に相手側と示談が成立している。
今更気にする事なんて何もないけど相手がその事を根に持っている可能性はあるわ。」


雪乃「少し用心しておく必要があるかもしれないわね。」


静「雪ノ下入るぞ!」


雪乃「だから平塚先生、ちゃんとノックしてから入ってくださいと…あら?」


平塚先生に付き添われて現れた少年。

それが比企谷八幡だった。

けれど彼は…



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八幡「あの…平塚先生…
ここまで階段多すぎですよ…もう少し俺の身体の事も考えてください。」


静「何を言ってる!いいリハビリになるだろう!」


雪乃「比企谷くん…だったかしら…?
あなた、その松葉杖は一体どうしたの?確か事故にあったのは去年だったはずじゃ!?」


八幡「あぁ、俺の事故の事知っているのか。
あの事故で身体が少し不自由になってな。それで暫くリハビリしてたんだよ。」


静「だから比企谷は出席日数がギリギリでな。
こうして2年からでも部活動をやらせれば、
少しは内申点が高まるだろうと思ってこの部に入れたんだよ。」


雪乃「…」


腐った目で松葉杖をひきずり部室へ入る比企谷くん。

正直、この時の私はどんな表情をしていたのかわからない。

自分が直接起こした事故ではないはず…

それなのにこの胸に突き刺さる罪悪感は何なのかしら…?

けれどそんな私に追い打ちをかけるようにある人が現れた。



陽乃「雪乃ちゃ~ん!久しぶり!」


雪乃「ね…姉さん…どうして…?」


陽乃「勿論、八幡の様子を見に来たんだよ!ねぇ~八幡~♪」


八幡「陽乃さん…
あんまりひっつかないでください。立っているバランスが取れなくなりますから…」


雪乃「あの姉さんがこの新入部員の比企谷くんと妙に仲がいいなんてどういう事なの…?」


私はさっそく姉さんを連れて部室を抜け出した。

そしてこの状況を問いただしてみると…



雪乃「それでどういうつもりなの…?」


陽乃「どういうつもりって何の話かな~?」


雪乃「とぼけないで!さっきの彼の事よ!彼は…!?」


陽乃「雪乃ちゃんが直接じゃないけど起こした事故の被害者…これに間違いなよね?」


やっぱり姉さんはこの事を知っていた。

それを知っていてあの少年を私のいる部室へ連れ込んだ。

これは姉の新手の嫌がらせだとすぐに直感できた。



陽乃「一応説明するとあの事故の後、
お姉ちゃんは八幡の家族への示談も兼ねてお見舞いに行ったのよ。」


陽乃「そしたらあの子の事を気に入っちゃってね!あれ?雪乃ちゃん聞いてる~?」


雪乃「フン、何を話すかと思えば…」


雪乃「要するに姉さんはこう言いたいのでしょう。これは私に対する嫌がらせだと!」


雪乃「事故の被害者を加害者と同じ場所に居させれば間違いなくトラブルが起こる!」


雪乃「姉さんはそれを狙っているのよ!!」


陽乃「そんなんじゃないんだけどな…」


私は激しく姉を罵倒して部室へと戻った。

けれど部室には既に平塚先生の姿はなく比企谷くん一人が取り残されていた。



雪乃「あなた、まだいたのね。」


八幡「入部した以上は部活動しないと平塚先生に怒られるからな。
それにしても随分と鬼気迫る顔で陽乃さんと一緒に出て行ったな。
まあ大凡の事情はわからなくはないが…」


雪乃「なら察する事ができるはずよ。
あなたがこの奉仕部に入部する事は事情を人道的に配慮してあげる。
けど我が家の問題に首を突っ込まないでもらえるかしら。」


八幡「へいへい、でもあの人の事を悪く言うのだけはやめてくれないか。」


雪乃「あら?姉さんの事を庇うのね。あなたまさか姉さんに下心を抱いているの?」


八幡「そんなんじゃない。
お前の家の人間で直接俺に見舞いに来てくれたのがあの人だけだったからだよ。」


雪乃「え…?」


その話を聞き私は動揺を隠せなかった。

確かに私は事故の詳細について人伝以上の事は聞かされていない。

でも最低限、両親くらいは謝罪に出向いたのだとこの時までは信じていたのだから…



八幡「あの事故に遭ってから翌日、
お前のとこの葉山って顧問弁護士がこの件を大事にしたくないから口止めしにきたんだよ。
そんでお前の家って資産家だろ?
俺んちは黙ってその言葉に従うしかなかった…
その光景を見て俺は少し大人に対して嫌気が差したよ。」


雪乃「それは…その…」


八幡「でもそれから数日後に陽乃さんがやってきた。
あの人、最初は単なる興味本位も兼ねてたんだが俺の事を気に入ったみたいでな…
事ある毎にちょっかいかけてくるから大変でな。」


八幡「おかげでリハビリもうまくいって松葉杖でならなんとか動けるようになった。」


八幡「あの人がいなければ俺は今でもこの不自由な身体の事で腐っていたかもしれない…」


八幡「正直お前の家って最高だな。」


そんな皮肉を呟くと彼は満足に動かせない自分の足を見つめた。

恐らくこれから一生、普通のスポーツなど満足に出来ない彼の身体…

それに私の家が彼に与えた損害と侮辱。

彼の立場を考えれば私は殴られてもおかしくはないのだろう。

私はというと真っ赤に硬直させた顔を見られまいと本で隠すのが精一杯だった。



雪乃「比企谷くんといったわね…あなた…何でこの部に入ったの…?」


八幡「平塚先生に無理やり…
というのは半々…本当のところは陽乃さんに誘われてな…
私の妹しかいない部活に入ってくれないかってそう言われたんだ。」


雪乃「信じがたい話ね…」


八幡「実の姉ちゃんの言葉だぞ疑うなよ。
それであの人がせっかく誘ってくれたんだし身体動かさないからここへ入部しただけだ。
それ以上の他意はない。」


面倒な男、その腐った目と立つのがやっとな不自由な身体。

私がこの男と同じ立場だったらこんな無様な姿を他人に見られたくないと、

恐らく自ら命を断つ選択を取っていたかもしれない。

だからこそこの男にとって姉さんは恩人に近い存在なのね。

あの人がそんな聖人君子のような行動を取るなんて信じられないけど…

どうせこの男を利用して私をけしかけようという魂胆なのでしょう。



雪乃「まあいいわ、せっかくだからお茶くらい淹れてあげるわよ。」


八幡「いや、悪いが遠慮する。」


雪乃「せっかくこの私がお茶を淹れてあげようというのに失礼な男ね。」


八幡「ちがう…そうじゃないんだ…その…トイレが…」


雪乃「トイレ…?」


八幡「こんな話…女子の前でしたくはないんだが…
この学校バリアフリーじゃないだろ。
だからその…普通のトイレだと用を足すのがつらいんだよ。
お前にとっちゃ馬鹿げた話かもしれないが俺にとっては死活問題だ。
高校生にもなって漏らしたなんて他のヤツに知れたらそれこそ学校にいられなくなる…」


雪乃「本当に女子の前ではしてほしくない話だわ。」


正直この男の話は一々重苦しくてどう反応していいのかわからなくなる。

けど彼がこうなった原因は私にある。

だからこそ私に重く伸し掛って不快になるのよ。

これが姉さんの嫌がらせでなくてなんだというの…?



雪乃「とにかく出されたお茶くらい飲みなさい。それが最低限の礼儀というものでしょう。」


八幡「けど…」


雪乃「心配しなくても部活なんて5時で終わり。
それまでそんなに時間はないんだし飲んだところですぐには影響なんて出ないはずよ。」


八幡「それじゃあありがたく頂くよ。
うん、このお茶美味しいな。久しぶりにこういうの飲めた気がする…」


雪乃「フン、この程度で喜ぶなんて安い男ね。」


くだらない、媚でも売ろうというのかしら?

けど美味しいと言われて悪い気はしないのは事実だけど…

ここまで
入学式の事故で八幡の怪我がその後も後遺症が残っていたらの話です

はちまんこかと

別に事故をなかったことにするような隠蔽工作とかじゃなくて、
他に言いふらすんじゃねえぞっていう口止めなんじゃないの? 
謝罪は一切なく当事者も来ず、代理人だけが金だけ持ってきて
他に喋るなと脅し入れたとかだと、
さすがに被害者の八幡はムカつくだろうし。



結衣「あの~奉仕部ってここですか?」


八幡「お前は…確か同じクラスの由比ヶ浜結衣…」


結衣「あ…ヒッキーじゃん!でもその足でよくここまでこれたよね!?」


八幡「ま…まあな…頑張ればなんとか…」


雪乃(そういえばこの二人はF組だったはず…
ここはF組から一番離れた部室、そこへこんな足で昇ってくるのは困難なはずよね?)


八幡「それでお前は何しにここへ来たんだよ?」


結衣「え~と…そのクッキーの作り方を教えて欲しいんだけど…」


雪乃「クッキー?」


どうやら彼女はクッキーを渡したいらしいとの事。

そこでさっそく私たちはクッキーを作るために準備に取り掛かったのだけれど…



結衣「うえ~ん!何度やっても失敗だよ~!」


八幡「酷い…何度やっても消し炭になっちまう…」


雪乃「一体何で…?」


結衣「聞きたいのはこっちだよ!びぇ~っ!?」


どうやら料理が苦手な由比ヶ浜さん。

彼女に何度手ほどきしても出来るのは消し炭ばかり…

何故こうなるのかしら?



陽乃「フフン!お姉ちゃんが手本を見せてあげようか!」


雪乃「姉さん…あなた帰ったはずじゃ…?」


陽乃「お姉ちゃんは雪乃ちゃんの悪口くらいじゃ凹まないよ!そりゃっ!」


八幡「ちょ…何で俺の胸なんか揉んでるんですか!?」


陽乃「教えてあげるよ!え~とガハマちゃんだっけ?
好きな子のおっぱいを揉んだ手で作れば大抵の料理は美味しく作れるんだよ!」


八幡「いや、そんなの初耳なんですけど!?」


八幡「あのだから…やめて…あっ…うぅ…ん…」


結衣「心なしかヒッキーが色っぽい…!私…この部に入る!!」


雪乃「まったく…呆れるわね…」


結局姉さんは比企谷くんの胸を揉みしだいた。

私たちは半ば強制的にその光景を見せつけられただけ…

けどそれが私に反抗心を生むきっかけとなった。

それから由比ヶ浜さんが帰ったのを見計らって私は行動を起こす事に…



八幡「由比ヶ浜が入部か。いきなり人が増えたが…まあ時間になったしそろそろ帰るか。」


雪乃「その前に…このっ!」


八幡「おい…急に何押し倒してんだよ!?」


雪乃「姉さんの男が!黙りなさい!私の居場所を土足で踏みにじった罰は重いわよ!!」


私はこの男を押し倒すとさっきの姉さんと同じく胸を揉みしだいた。

キレイなピンク色をして小さくて柔らかい。

まるでマシュマロみたいな感触…

それが終わると次は彼のズボンをずり下ろし、そして…



((ズプッ!))


八幡「痛っ…!」


雪乃「あら、生娘だったのね?
姉さんもまだ手をつけていなかったなんて意外だわ。
私のモノを突っ込まれて血が出てるじゃない。」


八幡「いきなりこんなのケツに突っ込まれたら当然だろ!
ていうか何すんだよ!お願いだからこんな事は…う…ん…くっ!やめて…」


雪乃「やめてですって…?
あなたの身体はこんなに求めているじゃないの!
いやらしい男!ほら言いなさい!姉さんのより私のモノが良いと言いなさい!!」


八幡「う…ぐっ…あぁっ…!?」


雪乃「フフ、やってやったわ!
姉さんの持ち物を私が汚してやったのよ!
私の居場所を踏みにじろうなんてさせるものですか!!」


姉さんの男を汚してやった。

その事に私の心は征服欲と満足感に浸っていた。

それに彼の身体の心地いい感触も味わいながら…

結局姉の思惑なんて私には関係ない。

これからも自分の好きなようにやっていこうとそう思ったわ。



八幡「うぅ…ゲホッ…ゲホッ…」


雪乃「いつまでいるつもりなの。
いい加減部室の鍵を締めるから早く出てほしいのだけど…?」


八幡「起き上がれない…」


雪乃「なんですって?」


八幡「その…さっきので…お尻が痛くて起きれないんだよ…」


雪乃「ハァ…仕方ないわね。掴まりなさい。」


私は彼の腕を抱えて部室を出た。

けれど私は運動が苦手なわけで…



雪乃「重たい…あなたのような虚弱な男子でも意外と重いのね…」


八幡「わりぃ、入って早々面倒かける事になるとは…ゴメン…」


雪乃「まあいいわ。
次からは少し気をつけてあげる。
ところであなたはもう私のモノなのだからこれからは姉さんに従うのはやめなさい!」


八幡「従うってお前は俺を何だと思っているんだ…
俺と陽乃さんはお前が思っているような関係じゃないんだぞ…?」


雪乃「どうだか…
それよりも今日の事を口外しないと約束しなさい。
そんな事をすればあなただってこの学校にいられなくなるのだから!」


八幡「言われなくたってそうするよ。
それに…こんな事で陽乃さんに迷惑かけられないしな…」


一々姉さんの名前を出すなんて本当に私を不快にさせる男ね。

そんな話を交わしながら階段を降りていると姉さんが待ち構えていた。



陽乃「ひゃっはろ~!八幡、一緒に帰りましょ~♪」


八幡「遠慮します。一人で帰れますから…」


陽乃「何言ってんの!
その松葉杖じゃ家までなんてきついでしょ。それに…お尻も痛そうだし?
お姉さんの車に乗せていってあげるから!
あ、雪乃ちゃんも乗せてあげようか?」


雪乃「結構よ、私は姉さんの車に乗るつもりはないから…」


最近姉さんが車を購入したという話は聞いていた。

けどまさかこれは彼のために…?

まあそんな事はどうでもいいわ。

姉さん、既に彼は私が汚してあげた。もうあなたのモノではないのよ。

このお礼にこのまま彼をボロ雑巾のように使い潰してあげようかしら?



陽乃「ところで雪乃ちゃん、八幡の身体どうだった?」


雪乃「え…まさか…?」


陽乃「八幡のおっぱい触っているところ見せたら雪乃ちゃんきっと何かするかと思ったの。
雪乃ちゃん童貞だし♪
それに雪乃ちゃんのおっぱいは八幡のより小さいしコンプレックスあるもんね!」


雪乃「誰のおっぱいが小さいですって!」


陽乃「それにしても…
私のイチモツが良いと言えだなんて雪乃ちゃんも過激な事言う年頃になったのね♪」


雪乃「ね…姉さん!あなた聞いてたの!?」


陽乃「わかっていると思うけど、
八幡に手を出した以上はちゃんと責任を取るのよ。じゃあね~♪」


雪乃「くっ…」


最後の最後に姉さんにやられた。

姉さんは全てお見通しのようだ。

比企谷くんを乗せて校門を出ていく姉さんの車。

二人を見送る私は何故かよくわからない敗北感に苛まれていた…

ここまで
作者が書く俺ガイルssは全てハチマ〇コですだからこのssもハチマ〇コになります
今回はハチマ〇コによる感動ssを目指しています
>>24の人はよく気づけましたね
>>27-28
事故に関してはそちらのような解釈でよろしいです
政治家はスキャンダルが命ですからね
ちなみに今回の話を要約すると
「お前の女犯してやったよ!ザマァッ!」
「俺が用意してやった女どうだった?気持ちよかったろ?」
「ぐぬぬっ!」
という話ですな



戸塚「いくよ!えぃっ!」


結衣「ひゃ~!さいちゃん強いね!」


八幡「テニス部を強くしてくれって依頼だったがこれなら俺たち必要ないよな。」


雪乃「ぜぇ…ぜぇ…そうね…私も身体を使うのは苦手だから…」


八幡「お前はもう少し体力をつけろ。この前俺を押し倒した時の元気はどうした?」


雪乃「黙りなさいヒキガエルくん!あなたこそサボっていないで少しは…」


八幡「お前…この身体の俺に今回の依頼が務まると思ってんのか?」


まったくこの男は事ある毎に自分の弱者としての立場を利用する。

正直悪質極まりないわ…



葉山「突然だけどすまないね。」


三浦「悪いけどここはあーしらが使わせてもらうよ!」


結衣「隼人くんに優美子…」


戸塚「葉山グループの人たちが来ちゃった。」


雪乃「まったく随分と横暴な真似をするのね。」


突然テニスコートをこちらへ寄越せと乱入してきた葉山くんと三浦さんたち葉山グループ。

そしてこのテニスコートを賭けて何故か彼らと対戦に事になったのだけど…



結衣「痛゛っ!」


雪乃「きゃっ!?」


三浦「アンタら弱すぎ、相手になんねーし!」


葉山「もう決着も付いたよね。このコートは俺たちがもらうという事でいいかな?」


雪乃「こんな男に負けるなんて冗談じゃないわ!」


葉山くんとは過去に因縁がある。

だからこそこんな男にだけは負けたくはなかった。

そんな事を思った時だったわ。



八幡「まだ俺が残っているんだが…」


三浦「何言ってんの?アンタの足で勝負になるわけねーし!」


葉山「そうだよ、そんな満足に動かせない身体で勝負と言われても…」


八幡「それならこういうのはどうだ。
俺が一点でも得点を入れられたらお前らはコートを明け渡す。
障害持ちの俺相手なら丁度いいハンデだろ。」


葉山「なるほど、それなら条件は五分だな。その話乗った!」


こうして今度は比企谷くんと葉山くんで一騎打ちの勝負をする事になった。

誰もが葉山くん優勢だと思った試合。

けどその結果は…



八幡「うりゃっ!」


戸塚「やったー!八幡の得点!これで僕たちの勝ちだー!!」


葉山「そんな…」


三浦「アンタ汚いよ!
隼人油断していただけなのに!大体何でその身体でそんなに動けるわけ!?」


雪乃「真剣勝負に油断していたそっちが悪いのよ。」


結衣「これでテニスコートはさいちゃんたちが使っていいんだよね!ヒッキーやったね!」


戸塚「ありがと八幡♪」


八幡「陽乃さんのリハビリで随分鍛えられたし、
それに天使可愛い戸塚のためならこのくらい…痛っ!?」


テニスの勝負は比企谷くんの勝利に終わったわ。

一応褒めてあげようと思ったのだけど…

けど比企谷くんはすぐに痛みを訴えて保健室へと向かってしまった。



~保健室~


八幡「痛っ!こんなんでもう限界とは情けないな…」


雪乃「あの程度動いただけで随分と腫れるのね。」


八幡「まあな、身体がポンコツだから激しい運動すればすぐにガタがくるんだよ…」


雪乃「だったら無理しなければいいのに。自分の身体の状態をよく考えなさい。」


八幡「お前…葉山に勝ちたかったんだろ?
それに俺だって…あの葉山ってヤツはお前のとこの弁護士の息子だよな。
あいつの親父に事故について口止めされたんだ。
そんなヤツに負けるのは俺だって嫌なんだよ…」


雪乃「比企谷くん…」


馬鹿な男…

こんな事で熱くなって身体に影響が出ているのだから。

けど葉山くんに勝った事だけは評価してあげる。



雪乃「横にうつぶせになって足を診せてみなさい。腫れが収まるまで冷やしてあげるわよ。」


八幡「すまないな。それじゃ…」


雪乃「傷だらけの足…それでよくあんなに動けたわね。」


八幡「陽乃さんのリハビリのおかげだ。
それに…障害持ちだからと蔑まれるのが癪だから。
さっきの試合はそんな意地もあったんだよ…」


雪乃「意地とか…腐った目をしているくせに一応男の子なのね。」


意外にも負けず嫌いな面を持つ比企谷くん。

事故による不自由な身体と葉山くんとの因縁が彼をそうさせたのだろうけど…



雪乃「それにしても…いいお尻…本当にいいわ…」


八幡「え…ちょっと雪ノ下さん…何俺の尻勝手に触ってんの?」


雪乃「黙りなさい!
その汗で蒸れたお尻で私を拐かしておいて何を言っているの!」


八幡「それ間違いなく言いがかりだろ…」


まあそんなわけで比企谷くんのお尻を堪能したわけで…



雪乃「気持ちよかったわ…」


八幡「何一人で賢者タイムに浸ってんだよ?いつも自分勝手に犯しやがって…」


雪乃「それにしても葉山グループを敵に回すなんてあなた教室で孤立するわよ。」


八幡「構わねえよ。
事故に遭って初めての友達作りのタイミング逃してろくに話すヤツはいないし。
それに元々ボッチだし…つーかお前だって友達いないだろ。」


雪乃「失礼ね、私だって友人くらい…由比ヶ浜さんとか…あとは…」


八幡「いないんだな…」


雪乃「…」


比企谷くんが指摘され私は落ち込んだ。

彼の言う通り私も友人はいない。

私と釣り合う事のできる人間なんて、

この世に居るわけがないとそう信じて生きてきたから…



八幡「なぁ…」


雪乃「何かしら…」


八幡「その…俺でよければ…」


雪乃「却下するわ。あなたみたいなヒキガエルが友人なんて死んでもお断り…」


雪乃「けど私専用の性処理係になら考えてあげてもいいわよ。」


八幡「お前のブレなさは異常だ…」


雪乃「黙りなさい。これからは私の命令にのみ従いなさい。」


こうして私は比企谷くんの事を少しは認めてあげた。



~林間学校~


静「よし、今日はここで子供たちと一緒に林間学校を体験してもらうぞ!」


結衣「よーし!頑張ろうねみんな!…ってあの…?」


雪乃「頑張れと言われても…」


八幡「俺ら体力ねーし俺に至ってはポンコツだから動けねーし何したらいいんだよ?」


結衣「せっかく場を盛り上げているのに何このお通夜ムード…!?」


私たちは平塚先生の勧めで林間学校に参加する事になった。

比企谷くん以外は誰もがこの場の環境を満喫していたのかと思っていたのだけれど…



留美「…」


八幡「見事に孤立してんな…」


雪乃「鶴見留美さん、他の子たちに虐められているわね。」


結衣「あの子をなんとか助ける事できないのかな?」


八幡「俺らだけじゃ無理だろ。
他に来ていた葉山たちの助けでもあれば別だが、
俺たちはあのテニスの一件以来葉山グループとは仲があまりよろしくない。
俺が悪役にでもなってあいつらのグループに亀裂を生じさせる事をすれば…」


雪乃「無理よ、あなたのその身体では返り討ちに合うのがオチよ。」


八幡「俺は女子小学生にすら負ける惰弱なのかよ…」


確かにこの子の環境を変えるには荒療治しかない。

けど私たちが悪役になるにはさすがに無理がある。

それなら…



留美「…」


由香「きもだめしなんて楽勝!」


仁美「すぐに終わらせようね!」


森ちゃん「ちょっと待って?前に誰かいるよ?」


「アンアンッ!」


「オラッ!オラッ!」


ヨッコ「何やってんだろ?」



雪乃「ほら、子供たちに見られているわよ!」


八幡「ちょっと待て!何なんだこれ!?」


留美「え…お姉さんが目つきの悪いお兄さんを犯してる…?」


由香「何なのこれ…?」


雪乃「子供たちには過激な光景を見られてしまったわね。これも全てあなたの所為よ!」


八幡「何で俺の所為なんだよ!?」


森ちゃん「とにかくやばいから逃げようよ!」



雪乃「待ちなさい!こんなところを見られて逃がす気はないわ!」


ヨッコ「それじゃあどうすればいいのよ!?」


雪乃「そうね、この男は生粋の淫乱魔。
だからこの男の淫らなハチマ〇コに指を差し込みなさい。そうすれば許してあげるわ。」


八幡「おぃぃぃぃぃ!?」


由香「うわ…このお兄さんの…赤くてとろとろしてる…」


ヨッコ「触ってみたい…」


森ちゃん「でもなんだか怖いよ…」


比企谷くんのハチマ〇コをジッと眺める少女たち。

子供相手にこんな危ないお遊びは他にはないわね。

誰もが興味津々ではあるけど中々手が出せない時に一人の少女が名乗りを上げた。



留美「私…触ってみる…」


由香「留美…危ないよ!」


留美「でも…触らないとこのお姉さん絶対に私たちの事を帰してくれそうにないから…」


雪乃「この子たち私の事をなんだと思っているのかしら?」


留美「入れるよ…えい!」


八幡「うぐっ!?」


留美「うわ…暖かい…こんなの初めて…」


由香「本当に…?それじゃ私も!」


仁美「私も!」


ヨッコ「ハァ…ハァ…これがハチマ〇コ!」


彼女たちはいつの間にか仲違いしていたのも忘れて夢中でハチマ〇コを触り続けた。

その後は仲も良くなり彼のハチマ〇コについて語りついていたわ。



留美「二人ともありがとう!」


雪乃「これもあなたのおかげね。よくやったと褒めてあげる。」


八幡「まさか女子小学生たちの玩具にされるなんて…もうお嫁行けない…」


雪乃「あなたお嫁に行く予定だったの?
けど安心しなさい。そんな身体のあなたなんて誰が貰うものですか…あっ!」


言ってしまった。

つい口が滑ってしまった。

これまで彼と接して何度か口論したり皮肉めいた発言をしたけれど…

決して身体の事に関して蔑みはしなかった。



八幡「そうか…そうだよな…」


雪乃「その…ゴメンなさい…」


八幡「いや…いいんだ…お前が悪いわけじゃないんだし気にすんな…」


結局、最後に私は彼の傷口を抉ってしまった。

それからこの林間学校が終わるまで彼と口を聞く事はなかった。



~花火大会~


陽乃「花火キレイね雪乃ちゃん!」


雪乃「そうね、こんな来賓客への挨拶回りさえなければもっといいのに…」


陽乃「それは言わない約束だよ!
ていうかせっかくお姉ちゃんが浴衣を用意したのに普段着で来るなんて…」


雪乃「私が何を着てこようが勝手でしょ。一々口を挟まないで。」


夏休みのある日、私は姉さんに連れられて花火大会の会場へ来ていた。

そこでは姉さんと一緒にやりたくもない来賓客への挨拶回り…

姉さんは得意なのだろうけど私はこういった事柄が苦手なわけなのだけど。



結衣「陽乃さ~ん!ゆきの~ん!やっはろ~!」


陽乃「ひゃっはろ~ガハマちゃん!」


雪乃「由比ヶ浜さんあなたも来ていたのね。」


結衣「えへへ~!陽乃さんに誘われてね。ヒッキーも連れてきたんだよ!」


雪乃「比企谷くんも…?」


来賓の客席に現れた由比ヶ浜さん。

それにもう一人遅れて現れた比企谷くんの姿があった。

でも彼の姿は…



八幡「由比ヶ浜…よくも無理やり俺に女物の浴衣を着せてくれたな…」


結衣「だってヒッキーはそっちの方が可愛いなって思ったんだもん!」


陽乃「アハハ!八幡似合ってるよ~!色っぽ~い♪」


雪乃「…」


女子の浴衣姿で現れた比企谷くん。

何を馬鹿げた格好をと思ったけど何故か私の胸が急に高鳴ってしまったの。



陽乃「もう少し行った先に、
もっと見渡せる場所があるから雪乃ちゃんはそこに八幡を連れて行ったら?」


雪乃「何でこの私がヒキガエルくんをわざわざ…」


陽乃「以前お世話をお願いって言ったよね。
それとも引き続き来賓の相手をするのとどっちがいい~?」


雪乃「わかったわよ、行けばいいんでしょ。行くわよ比企谷くん!」


八幡「ちょ…待ってくれよ!」


私は比企谷くんを連れて場所を移動する事になった。

けど比企谷くんは松葉杖、移動は少々困難に…



八幡「うぅ…こんな歩きづらい林の中を通らなきゃいけないなんて最悪だ。」


雪乃「そんな浴衣でおまけに松葉杖、
もう少し歩きやすい格好で来るべきなのよ。大体あなたの身体は…」


雪乃「いえ、ゴメンなさい。また不躾な事を言ってしまうところだったわ。」


八幡「構わねえよ、どうせ本当の事だ。
俺の身体はとっくにポンコツ、これだけはどうやっても覆せない事実なんだからな。」


雪乃「…」


またやってしまった。

彼への暴言に関して私は身体の事にだけは触れないように注意してきた。

けどこうした場では思わず言ってしまう事が多々あった。

でも比企谷くんはそんな不穏な空気を読んだのか会話の流れを変えてくれたのだけど…



八幡「なぁ…前から聞きたかったんだがどうしてあそこまで陽乃さんの事を嫌ってんだ?」


雪乃「別に嫌っているわけじゃないけれど…
確かに姉さんが偉大だという事はこの私自身が一番理解している。
あの人は私が持っていないモノを全部持っているのよ。」


雪乃「だからこそ苦手なのかもしれないわ。
けどいつかはあの姉さんを乗り越えたいと常々そう思っている。
奉仕部を作った本当の理由もそんなところにあるのよ。」


八幡「あの人に勝とうなんて馬鹿な考えは捨てた方がいいと思うぞ。
人間ある程度諦めをつけて生きていった方が却って気が楽になれるしな。」


雪乃「諦めて生きていけですって…?
そんな妥協した生き方なんて私は認めないわ!!」


八幡「そうか…強いな…俺には出来ない生き方だ…」


雪乃「何を言っているの?あなたはやろうとしないだけ。私だけが特別というわけでは…」


会話の流れを変えてはくれたけどよりにもよって姉さんの話題なんて…

けどそこで私は言葉を止めた。

彼の足を見たからだ。



八幡「俺は…事故で入院して…
もうまともに歩く事は出来ないって聞かされた時は人生終わったなと思った。」


八幡「確かに陽乃さんのおかげである程度リハビリもできた。」


八幡「けどだからって全部が元通りになったわけじゃない。」


八幡「俺の身体が不自由なのは相変わらずだし何をするにしても制限がある。」


八幡「だから物事には諦めが肝心、この身体になってからそう思えるようになったんだ。」


八幡「そうする事で少しは楽になれた。これが俺なんだなって思えたよ。」


八幡「だから雪ノ下、
お前もあまり勝ちに拘ろうとするな。姉ちゃんの事なんて気にすんな。
ありきたりなセリフかもしれないがお前はお前なんだからさ…」


雪乃「ふざけないで!そんなのただ負けを認めた事じゃない!?」


比企谷くんの言葉に私は思わずカッとなり彼を押し倒した。

松葉杖で支えていた彼の身体は地面に倒れて、

気づけば私は彼の身体を馬乗りしていた。



雪乃「あ、ゴメンなさい…こんな事するつもりじゃ…」


八幡「痛っ!こりゃ少し捻っちまったな。しかも浴衣まで解けてるし…」


雪乃「裸が丸見え…」


比企谷くんの浴衣が解けてその裸体が私の目の前にあった。

傷だらけの足に華奢な身体。

私がこれまで散々汚してきた彼の身体…



雪乃「嫌なら…いいのよ…」


八幡「…」


雪乃「何も言わないのは承諾したと解釈するわよ…」


雪乃「悪く思わないでちょうだい。出来るだけ痛くしないであげるから…」


八幡「んぅ…んっ…!」


林の中で私は比企谷くんの身体を貪り尽くす。

それから私は花火の光に照らされた彼の身体を見た。

正直、空に浮かぶ花火などよりも鮮やかでそれでいて淫らな比企谷くん…

そして花火が終わる頃に私たちは行為を終えていた。



八幡「おい、着物の結び手伝ってくれよ。このままじゃみんなの前に出られないだろ!」


雪乃「面倒かける男ね、結べないならそんな格好でこないでくれるかしら?」


八幡「だからこの格好は由比ヶ浜のおふざけで…あれ?どうかしたのか?」


雪乃「いえ、なんでもないわ。
ただ、その浴衣姿もなんだか意外と可愛いと思っただけよ。」


八幡「…ありがとって礼でも言えばいいのか…?」


咄嗟に出た一言に私は思わず何故そんな事を言ったのかわからず、

それに比企谷くんもまた赤面していた。

その後は姉さんの車に乗せられて私たちは帰路に着いた。

二人を家に送った後で私は思い切って姉さんにある質問をしてみた。



陽乃「雪乃ちゃん、何か私に聞きたい事があるって顔しているね。」


雪乃「えぇ、何故比企谷くんを奉仕部に入れたの?姉さん本当は何を企んでいるの?」


陽乃「別に何も企んじゃいないよ。
それは雪乃ちゃんが勝手に勘繰っているだけだから…
でも私に他意があるとすればそれは八幡の方にあるのかもね。」


雪乃「比企谷くんの方…?」


陽乃「雪乃ちゃん、私は八幡と出会って以来彼は事故に関して怒りも悲しみもしなかった。
これはあの年頃の男子には正直ありえない事よ。
本当なら…」


何か言おうとしたけど姉さんはそこで口を止めた。

恐らくこれは彼の深い問題なのだろう。



陽乃「でもたぶん八幡はこれから先、必ず思い悩む日が来るはず…」


陽乃「その時、傍にいなければいけないのは私じゃない。」


陽乃「雪乃ちゃん、あなたが八幡の傍にいないとダメなの。」


雪乃「私が…?
真面目な顔をして語っているところ悪いのだけど話の要点が何ひとつわからないわ。」


陽乃「そうだね、本当なら八幡と最初にあった日にやってほしかった事なんだけど…
でもまさかその前に八幡を襲っちゃうなんてお姉ちゃんの予想外だったよ。
雪乃ちゃん本当にケダモノなんだから…」


雪乃「誰がケダモノよ!?」


陽乃「アハハ、でも八幡と雪乃ちゃんは案外似ているんだよ。」


最後は茶化されたけど私は姉の言葉の意味を考えていた。

いつか比企谷くんが悩む日が来る。

その時に傍にいるのは私でなければならない。

本当ならば比企谷くんと会った時にやらなければならなかった事…

この時の私には姉の言葉の意味が何ひとつとして理解できずにいた。



~文実事務所~


八幡「ぅ…んっ…ん…っ!ケホッ…」


雪乃「まったく何をしているの?
最近忙しくて溜まっているのだからもっと飲み込みなさい。」


八幡「いきなりフェラさせてきておいて無茶言うな!
これ以上は無理…
ていうか少しは場所をわきまえろ!ここは部室でも他の教室でもなく会議室だぞ!?」


雪乃「安心しなさい。
どうせ暫くは誰も来る事はないわ。なにせ実行委員長があれではね…」


八幡「まあそりゃわかるよ。でもそろそろみんな来る頃だぞ。」


文実事務所で行為に及ぶ私たち。

私だってこんな事はしたくはないけど最近は本当に忙しくて時間が惜しい。

その理由は…



めぐり「みんな集まったけど実行委員長の相模さんはまだ来ていないんだね。」


八幡「いつもの事だから気にしても仕方ないでしょ。」


雪乃「時間もないし彼女抜きでさっさと作業を続けましょう。」


結衣「けどこれはちょっと酷いかも…」


私たち奉仕部は相模南さんの依頼で文化祭の実行委員の手伝いに出ている。

この私も副委員長として文化祭を盛り上げる事になったのだけれど…

肝心の委員長である相模さんは常に欠席。

手柄のみを横取りしようという魂胆なのでしょう。



雪乃「この仕事量は少し手こずるわね。」


八幡「無理すんな、お前だけでどうにか出来る量じゃないだろ。」


雪乃「黙りなさい、このくらい私ならやってのけるわ。」


八幡「…」


城廻先輩がかつて姉さんは誰も出来なかった規模の文化祭をやってのけたと言っていた。

私は姉さんを越えてみせたい。

だからこそこの文化祭はなんとしても成功させてみせる。

正直、相模さんの事はどうでもよかった。



<翌日>


相模「え…え~と…それじゃ各自の分担は…」


雪乃「これはB組の彼が、それはC組の彼女が、その程度の把握しておいてください。」


相模「くっ…」


八幡「…」


翌日、何故か彼女は珍しく委員の仕事に出ていた。

まあ役立たずなのは相変わらずだけどその後も委員としての仕事に参加して、

委員たちの低下していた士気は再び高まり私は少し不審に思いながらも仕事を続けていた。

でもある日、そのカラクリが解けた。



相模「ほら、ちゃんとしゃぶりなよ。」


八幡「う…ん…ん…」


雪乃「相模さんが…比企谷くんに…しゃぶらせている…!?」


その日、文実事務所である出来事に遭遇した。

そこで私が見た光景は…

比企谷くんは相模さんの性処理の玩具にされていた。



相模「ふぅ、気持ちよかった。
アンタみたいなかたわでもこういう使い方があるんだ。」


八幡「ゲホッ…それより明日も出てくれるんだろうな。」


相模「まったく冗談じゃないっての!
こっちはいいとこ取りしたいだけなのにヤラせてくれるから出てるだけなんだからね!」


相模「でなきゃあんな面倒な実行委員なんて出てられるかっつーの!!」


彼女の一言で状況は瞬時に把握できた。

恐らく相模さんがいきなり来だしたのは比企谷くんが彼女の性処理をしだしたからだ。

正直、彼女が来ようが作業の進行に影響はない。

けれど私のモノを土足で踏みにじるのは許せなかった。



((パシャッ!))


雪乃「そこまでよ相模さん。今の光景を撮らせてもらったわ。」


相模「雪ノ下さん…何で…?」


雪乃「もう少し場を弁える事ね。
悪いけどあなたの依頼はなかった事にさせてもらうわ。
それと、実行委員長も私と交代して副委員長になってもらおうかしら。
どうせ誰もあなたになど期待していないのだから問題ないでしょ。」


相模「このっ!舐め腐って!?
こんなかたわに仕事くれてやっただけでもありがたく思いな!!」


怒りを膜して立てる相模さん。

けど既に証拠を掴まれている相模さんは、

それ以上何も出来ずに私の言う通りにするしかなかった。

彼女がその場から去った後、私は比企谷くんにこの事態を問い詰めた。



雪乃「それで…これはどういう事なのかしら…?」


八幡「どうもこうもない。
あんな馬鹿でも委員長さまだ。会議の場にいさせないと士気が低下するからな…」


雪乃「誰もこんな事頼んだ覚えはないのだけど…」


八幡「あぁ、俺が好きでやった事だ。
どうせ俺の身体はポンコツ、出来る事なんてこんな事くらいと限られている。
お前が気にする必要なんてない…」


雪乃「別にあなたの事なんて気にしてはいないわ。
こんな事をしなくても私なら大丈夫なのだから無駄な労力だったわね。」


私は彼の労力を否定しながらその実、相模さんなんかに汚されたのが腹立だしかった。

こうしてひと悶着がありながらも準備期間は過ぎ去り文化祭の日がやってきた。




めぐり「おまえらッ!文化してるかーッ?!」



「 「オォ――――――――――――!!」 」



城廻先輩の音頭で文化祭は開催された。

全てが順調に進行していった。

けれどそんな中、エンディングセレモニーの前にある問題が発生した。



めぐり「相模さんがいなくなっちゃったの。」


八幡「あいつ、表彰結果を持ち出していなくなりやがって…」


陽乃「これは間違いなく嫌がらせの類だよね。」


結衣「でもどうしたら…時間がないよ!?」


雪乃「こうなったらバンドの演奏で場を繋げるしかないわね。」


八幡「その間に俺があいつを探すしかないか。見つかるかわからんが…」


陽乃「でも八幡の身体じゃ…」


雪乃「時間がないわ、お願いできるかしら。」


こうして私は比企谷くんに相模さんの捜索を任せて、

残った他のメンバーとバンド演奏をしてその場をしのいだ。



雪乃「もう限界ね…これ以上は時間を稼げない…」


結衣「ゆきのん!ヒッキーから連絡があったよ!さがみん見つけたって!」


八幡『俺だ…相模が見つかったが説得にまだ時間がかかる…』


雪乃「そんな…もう時間がないの!お願い!早くして!」


八幡『時間か…わかった…なんとかする…』


雪乃「頼むわよ比企谷くん…私はこの文化祭を成功させて姉さんを…」


間一髪のところで比企谷くんから相模さんが見つかった連絡が入り、

その数分後に葉山くんたちと一緒に相模さんが到着した。



相模「あ…あの…うち…」


葉山「ほら、表彰結果だ。これを早く!」


雪乃「わかったわ、壇上には私が立つけどいいわね。」


相模「う…うん…」


結衣「ところでヒッキーどこ行ったの?」


ゆっこ「し…知らないよあんなの!」


遥「きっと先に帰ったんだよ!ねえ葉山くん!」


葉山「あ…あぁ…比企谷は気分が悪くなったので先に帰ったんだ!だから早く行って!」


陽乃「…」


私は葉山くんの言葉を信じて、

壇上に上がり閉会式での最後の役目を果たして文化祭を終わらせた。

私は胸を張れる仕事をやってのけた。

これで姉さんという偉大な存在に追いつけたと、その達成感に満足していた。



~後夜祭~


めぐり「今回はお疲れさま雪ノ下さん、さすがははるさんの妹さんだね!」


結衣「うん!ゆきのん頑張ったよ!」


葉山「あぁ、最高だったよ雪乃ちゃん!」


雪乃「みんなありがとう。素直に喜ぶわ。」


晴れて大舞台を成功させた私は高揚感からか、

本来なら行く予定ではなかった後夜祭に参加していた。



めぐり「雪ノ下さん今度生徒会の選挙があるんだけど立候補しない?
あなたなら誰もが会長に相応しいと思うし今回の功績も高い。
きっといい学校になると思うの!」


雪乃「私が…生徒会長…?」


結衣「スッゴ~イ!ゆきのんヘッドハンティングされてるよ!!」


葉山「あぁ、キミなら適任だ。是非やってみたらどうだい?」


私は城廻先輩から生徒会長にならないかと勧められた。

誰からも拍手喝采され、私は姉さんを超えたと自覚した。

この時の私は正直有頂天だった。



沙希「ねぇ、ちょっといいかい。比企谷いる?」


結衣「あ、サキサキ!ヒッキーならとっくに帰っちゃったよ?」


雪乃「あの男、気分が悪いとか言って帰ったはずよ。そうよね葉山くん?」


葉山「そ…そうだね…」


沙希「あいつが帰ったって…こんなモノ置いて帰るのか?」


後夜祭にひょっこりと姿を現す川崎さん。

けど比企谷くんの不在を知ると彼女は手に持っていたあるモノを私たちに見せた。

それは身体の不自由な彼が肌身離さず持っていなければならない大事なモノ…



沙希「だって…あいつの松葉杖ここにあるんだけど?」


雪乃「確かに…これは…比企谷くんの松葉杖だわ!」


結衣「でもヒッキーって先に帰ったはずじゃ…?」


雪乃「そんなのありえないわ!
彼の身体は松葉杖なしではろくに動けないのだから…まさか…?」


その時、私は相模さんたちと葉山くんを見た。

この松葉杖を見て動揺する姿を見せる相模さん。

彼女は間違いなく何かを知っていた。



相模「嘘…それじゃ…まさか…」


ゆっこ「大丈夫だよ…葉山くんの言う通りあいつ帰ったんだよ!」


遥「でも…もしかしたら…まだあそこに…」


葉山「…」


雪乃「あなたたち!何を知っているの!すぐに答えなさい!?」


私は先程までの高揚とした気分とは一転、

これまでの半生で他人には見せた事もない剣幕をまくしたてながら彼女たちを問い詰めた。

すると相模さんは怯えながらもとんでもない事を私に告げた…



相模「うち…屋上にいたんだ…誰か探しに来てくれないかって思って…」


相模「そしたら…アンタのとこのかたわがきて…」


相模「その後、葉山くんやゆっこたちも一緒に…」


相模「それで葉山くんたちが私を説得してくれたの。
でもあいつは、途中携帯で誰かに連絡を取っていたんだけど…」


雪乃「比企谷くんが携帯で連絡?まさかあの時の…?」


相模さんの話を聞きながら私は思い出していた。

バンド演奏が終わる頃に比企谷くんから相良さんが見つかったと連絡があった。

それでその時…確か…彼にこう言ったのよね…

急いでと…



相模「うち…みんなから励まされて頑張ろうかなと思っていたの。そしたら…」


ゆっこ「あいつが変な事言い出して…」


遥「さがみんを悪く言い始めたんだよ!」


雪乃「悪く…?まさか…」


比企谷くんの事だ。

きっと相模さんをわざと怒らせてそれで立ち直らせようとしたんだわ。

でもそれが最悪の結果を生んだ…



相模「うち…イラッとしてあいつの事を突き飛ばしたの…そしたら…」


葉山「比企谷は頭を打って血を流しその場に倒れこんだ。」


雪乃「頭を打って…倒れた…何よそれ…?」


結衣「その後…ヒッキーはどうしたの!?」


ゆっこ「知らないよ!」


遥「葉山くんがあいつの事確かめてたもん!」


葉山「あぁ、比企谷は辛うじて意識があった。
それから自分は大丈夫だから俺たちに早く壇上へ行けと言ってくれたんだ。」


雪乃「それじゃあ…彼は無事なの…?」



相模「でも…あの血の量…結構多かったんだけど…」


彼の事が気がかりになった私は急いで連絡を取った。

お願い…無事でいてと…

いくらかけても連絡が繋がらない。

そう思っていた矢先、ようやく通じた。

けど出てきた相手は比企谷くんではなかった…



陽乃『もしもし、雪乃ちゃん?』


雪乃「姉さん…?何で姉さんが比企谷くんの携帯に…?」


陽乃『ちょっとお姉ちゃん今立て込んで、裏の駐車場まで来なさい。出来れば急いで…』


私は恐怖に慄く相模さんたちを無理やり引っ張り出し、

姉さんの車がある駐車場へとやってきた。

そこで私たちを待っていたのは…



八幡「う…うぅ…」


雪乃「比企谷くん!?」


結衣「酷い…頭からの血が…たくさん…出てる…」


陽乃「さっき屋上で見つけたばかりなのよ。
雪乃ちゃんの着歴を見たけどあれから3時間以上屋上で放置されてたのね。」


姉さんは自分の服に血が付くのも構わず、

血まみれの比企谷くんを担いで自分の車に乗せようとしていた。

けど屋上で3時間も放置?

そんな…

何でこんな事に…?

そもそも何故そんな長時間も放置されているの…!?



葉山「陽乃さん…血で汚れて…汚いからあまり触るんじゃない!」


雪乃「汚れる…汚いですって…?」


陽乃「隼人…あなたって相変わらずだね。
そもそも最初に八幡がこうなった時にあなた何をしたの?」


葉山「何をしたって…
比企谷が自分は大丈夫だから相模たちを連れて行けって…だから相模たちを連れて…」


陽乃「ハァ…頭を打って大量出血起こした八幡を放置していくなんて…呆れるね。」


相模「は…葉山くんは悪くないよ!悪いのはこいつだよ!」


ゆっこ「そうだよ!大げさに血なんか流して汚いじゃん!」


遥「私たち悪くないし!?」


汚いって何が汚いの?

彼は血を流して倒れているのよ。

それなのにどうしてそんな事が言えるの…?



陽乃「まあ、どうせ時間がないし今は何も言わないであげるから。」


隼人「あ、陽乃さん!病院なら母の病院が!?」


陽乃「嫌だよ、隼人の伝手なんて信じたら今度は八幡が殺されるかもしれないからね。」


雪乃「姉さん!私も一緒に…」


私は急いで姉さんの車に同乗しようとした。

けど姉さんは一瞬だけ私と目を合わすと、

そのまま何も言わずにアクセルを思い切り踏んでその場から去ってしまった。

けど私に向けられた姉さんの眼差しはこう言っていたように思えた。



ねぇ、満足?

文化祭を成功する事ができて満足した…?

みんな楽しかったよね文化祭~♪

でも、一人だけ楽しめなかった人がいるよ。

雪乃ちゃんの所為で楽しめないどころか苦しんでいる人がいるよ?

あなたがみんなから拍手喝采されている時、その人は何処で何をしていたのかな~?

ずっと屋上で血を流しながら倒れていたんだよ。

可哀想に…

あなたのために頑張ってこんな酷い目に遭って…

何であなたは浮かれていたの…?

何であなたは…

そんなに喜んでいられるの…?



雪乃「そうよ…私だわ…」


雪乃「あの時…私が急かしたばかりに彼は…」


雪乃「イヤァァァァァ!?」


私はその場で叫び声を上げた。

全ては私の所為だ。

姉さんは比企谷くんがあの壇上に現れなかった時点で何かを察していた。

最初に彼の異変に気づくべきは直前まで連絡を取っていた私なのに…

結局、私はまた彼を傷つけてしまった。

ここまで
うちのゆきのんには重い十字架を背負わせたい

追記でさがみんは八幡にフェラしかしていません
本番やっているのはゆきのんだけです



それから修学旅行が過ぎ、生徒会選挙の時期が近づいてきた。


修学旅行が終わった頃に比企谷くんはまるで最初から居たかのように学校に戻っていた。


けど彼は…


あの事件であまりにも重い傷を背負ってしまった…



~奉仕部~


めぐり「相談したい事があるんだけど…」


いろは「あの、一色いろはって言います。
その…生徒会選挙に立候補されたんですけど…私やる気がなくて…
それに信任投票で落選って超カッコ悪いじゃないですか。
だからなんとか穏便に脱落したいんですけど?」


結衣「依頼はわかったけど…」


八幡「…」


奉仕部の部室に城廻生徒会長とそれに相談者の一色いろはさんが訪ねてきた。

けれど私は教室には入らずドア越しからそっと中の様子を伺っている。

あれから私は彼と一度も会話をしていない。

それは彼に怪我を負わせてしまった申し訳なさもあるのだけど…



八幡「その依頼、要はこうすればいいわけだ。
俺が一色の応援演説をする。そしてヘマでもやらかせばいい。
そうすれば一色は傷つく事なく俺の落ち度って事で落選できる。」


結衣「そんな…ダメだよヒッキー!」


めぐり「それにあなたは目を…」


いろは「え…やってくれるんですか!
それじゃこれで私生徒会やらずにすむんですね!やったー♪」


馬鹿…やめなさい…あなたの目は…

私は以前彼の目を腐っていると罵った。

でも今はもうそんな事は口が裂けても言えない。

何故なら…

そんな時、奉仕部の部室へ誰かが入ろうとしていた。



陽乃「あら…」


雪乃「姉さん…」


陽乃「退いて、邪魔…」


現れたのは姉さんだった。

姉さんは部屋の前にいる私をまるで、

その場にいない者として扱い部室の扉を開けた。



陽乃「はっちま~ん!お待たせ!さぁ、帰りましょう~♪」


八幡「あれ…陽乃さん…?もうそんな時間なんですか?」


結衣「え…あの…その…」


いろは「ちょっと待ってください!私の依頼が…!?」


陽乃「え~といろはちゃんだっけ?
悪いんだけどそんな選挙辞退したいなんて依頼は自分でやってくれるかな~?
今は、ほら…わかるよね?」


いろは「は…はい…」


めぐり「はるさん…」


八幡「待ってください!これは俺たちの依頼だから…」


陽乃「いいから、早く帰りましょ~♪」


突然部室へ入った姉さんは、

一色さんの返答なんてお構いなしにこの依頼を無かった事にさせた。

それはまるで大切な我が子を守ろうとする母親のようなそんな感じだった。

私は姉さんに腕を支えられて部室を出ようとする比企谷くんに声を掛けようとした。



雪乃「あ…あの…」


八幡「声…陽乃さん…今…俺の目の前に誰かいるんですか…?」


陽乃「う~ん…どうだろうね…たぶんいないんじゃないかな?」


雪乃「あ…あぁ…」


陽乃「うん、いないね。間違いなくいないよ。
目の前にいようがいなかろうが、
堂々と話しかける事も出来ない人はそれはきっといないって事なんだよ。」


八幡「そ…そうなんですか…」


姉さんの言葉を聞いた比企谷くんは手探りで語りかけた私を探そうとする。

けどその手は私のいる距離まで届かない。

諦めた彼はそのまま姉さんと一緒にいなくなった…



結衣「ゆきのん…いたんだ…」


雪乃「由比ヶ浜さん…やはり彼の目は…」


結衣「うん、そうだよ。私も初めて知った時はショックだったけど…」


いろは「あの比企谷って先輩、目が見えないって噂は本当だったんですね。」


めぐり「そうよ、文化祭の日に彼は頭を打って…」


あの文化祭の日、彼は相模さんによって頭を怪我して重傷を負った。

その後、姉さんに発見されてなんとか命は取り留めたのだけど…

その代償は余りにも大きかった。



雪乃「彼は目を…」


雪乃「光を失ってしまった。」


雪乃「もう二度と何も見る事が出来ない…」


雪乃「これも全て私の所為…」


あの日、私が彼を急かしたばかりに…

こんな目に合わせてしまった。

あれ以来、私は彼と話をしていない。

今更どうすればいいのか…私にはわからなかった…

ここまで

さらに十字架は重くのしかかります



~2年F組~


八幡「あ…あぁ…」


結衣「あ…ヒッキィ…」


葉山「…」


三浦「…」


戸部「…」


海老名「…」


ある日、私は彼の教室を覗いていた。

F組はあの事故以来、教室の雰囲気はまるでお葬式のように静かだった。

その原因は比企谷くんにあった。

あの事件でクラスメイトの一人が失明してしまったから当然の事…

けど、彼の境遇を同情する者は少ない。



「あいつの所為でメチャクチャだよな。」


「修学旅行なんて全然楽しめなかったし…」


「あの事故もあいつが相模さんに悪口言ったからで…」


「つまり自業自得って事…?」


「あの葉山くんも厳重注意させられたんだし当然の報いだよね!」


八幡「…」


彼への暴言がクラス中に伝わるように響いていた。

あの事故の原因は比企谷くんの自業自得という解釈がなされてしまったからだ。

何故そんな誤解が生じてしまったのか…?

それは相模さんに原因があった。



相模「本当あいつには散々な目にあったよ。」


ゆっこ「そもそもあいつが変な事しなきゃねぇ…」


遥「もしかして狙ってやったんじゃないの?」


そう、これも全ては彼女たちの噂が原因。

相模さんたちは自分たちが悪者にならないように都合のいい解釈をみんなに吹き込んだ。

比企谷くんもあの性格だからF組の殆どの生徒たちがこの噂を信じてしまった。



八幡「うわっ!」


戸塚「八幡大丈夫!しっかりして!」


八幡「そ…その声…戸塚なのか?さすがは天使だな。でも…大丈夫だから…」


川崎「アンタその目でどこに行こうとしてんの?誰かに付き添ってもらわなきゃダメだろ。」


八幡「そっちは川崎…?だ…大丈夫だ…このくらいなんでもない…痛っ!?」


材木座「しっかりするのだ八幡!我が付いているぞ!」


八幡「そっちは材木座なのか…?悪いな…」


「プッ…」


「フフ…」


クラスの中から今の彼の姿を嘲笑する声が響く。

卑劣な人たち…

私はというと、

そんな彼を戸塚くんたちのように助けようともせずその場を離れるしかなかった。

結局私もその卑劣な人たちと同類かもしれない。

はちまんこにするなきもいわ



~廊下~


八幡「痛っ!」


雪乃「比企谷くん…一人で歩いているの?ここからだと奉仕部に向かっているのかしら?」


八幡「う…うぅ…」


雪乃「助けに行こうかしら…けど今は…」


比企谷くんは誰にも付き添われず、

たった一人で勘だけで奉仕部の部室へ向かおうとしていた。

そんな彼を私は手助けできずにいた。

気まずいというのも理由のひとつだけど、もうひとつはある人に呼ばれているからだ。



~生徒会室~


雪乃「私に…生徒会長を…?」


めぐり「そう、前にも言ったけどやってくれるかな?」


雪乃「お誘いはありがたいのですが…
生徒会長になるには選挙がありますから私が選ばれるという保証は…」


めぐり「雪ノ下さんなら大丈夫だよ!
文化祭を成功させた実績もあるし何なら私が応援演説をやってあげてもいいのよ!!」


雪乃「それはさすがに…現役の生徒会長がそこまで贔屓したらいけないと思いますけど…」


私は城廻先輩に生徒会室へ呼び出されていた。

そこで私は城廻先輩から生徒会長へ立候補しなからと推薦された。

確かに私なら生徒会長が務まる自身があった。

それに城廻先輩からこのような助言もされた。



~廊下~


八幡「痛っ!」


雪乃「比企谷くん…一人で歩いているの?ここからだと奉仕部に向かっているのかしら?」


八幡「う…うぅ…」


雪乃「助けに行こうかしら…けど今は…」


比企谷くんは誰にも付き添われず、

たった一人で勘だけで奉仕部の部室へ向かおうとしていた。

そんな彼を私は手助けできずにいた。

気まずいというのも理由のひとつだけど、もうひとつはある人に呼ばれているからだ。



めぐり「それに雪ノ下さん、
今は奉仕部の…彼の事で少し距離を置くべきじゃないかな。
別にあの事故はあなたの所為じゃないのよ。責任なんか感じる必要はないんだから!」


雪乃「責任…」


めぐり「それじゃ考えておいてね。
私はあなたこそ次の生徒会長に相応しいと思っているんだから!」


私が次の生徒会長…

確かに悪い気はしない。

これならあの姉さんも越えられるかもしれないだろうし、

なにより今の私には奉仕部と距離を置く事こそが肝心。

暫く奉仕部の活動を休止する許可を貰おうとその足で平塚先生の下へ行った。



~職員室~


静「なるほど生徒会選挙か。いいんじゃないか?」


雪乃「私事で部活を休止して申し訳ありませんが…」


静「まあ、あんな事件があった後だ。キミにも気持ちを整理する時間が必要だろう。」


平塚先生は私が部活を休止する事を快く受け入れてくれた。

でも私は平塚先生のある傷が気になって仕方がなかった。



めぐり「それに雪ノ下さん、
今は奉仕部の…彼の事で少し距離を置くべきじゃないかな。
別にあの事故はあなたの所為じゃないのよ。責任なんか感じる必要はないんだから!」


雪乃「責任…」


めぐり「それじゃ考えておいてね。
私はあなたこそ次の生徒会長に相応しいと思っているんだから!」


私が次の生徒会長…

確かに悪い気はしない。

これならあの姉さんも越えられるかもしれないだろうし、

なにより今の私には奉仕部と距離を置く事こそが肝心。

暫く奉仕部の活動を休止する許可を貰おうとその足で平塚先生の下へ行った。



雪乃「ところで先生、そのおでこの傷はどうなされたんですか?」


静「これか?
実はこの前比企谷の家へ謝罪に行ったんだ。その時…小町くんにな…」


雪乃「謝罪に…?」


静「私はあいつの部活の顧問だ。
それに文化祭の時には生徒の指導にも当たっていたから責任はある。
けど私の教師人生であんな修羅場を体験したのはあれが恐らく初めてだな。」


平塚先生はそれしか言わなかったが恐らく比企谷家に行った際、

相当な修羅場があったのは予想するのに容易い事だ。

そういえば最近小町さんと連絡を取っていない。

実の兄が失明したのだから何か連絡があってもいいはずじゃ…

私は今頃になってそんな心配をしてしまった。



静「まあキミが気にする事はない。
聞けばあの事故は比企谷に非があったと言うしな。」


雪乃「そうですか…」


静「ところで比企谷の事だが…
いや…これはキミには関係のない事だ。もう行きなさい。」


あの事故、先生たちですら比企谷くんに非があると思っている。

でも私は知っている。

彼に非などない。

でもそれを肯定する事など出来るはずがない。

もし彼に非が無い事を認めれば私たちに非がある事になってしまうから…

今は生徒会選挙に集中しよう。

そう思って帰路についた。



~雪乃の部屋~


((パンッ!))


陽乃「おっかえり~!雪乃ちゃ~ん~♪」


雪乃「ね…姉さん…どうして勝手に部屋に入っているの!?」


陽乃「合鍵くらい持っていて当然でしょ。
あなたが自分でこのマンション買ったわけじゃないんだしね!」


自宅の扉を開けると姉さんがクラッカーを鳴らして笑顔で出迎えてきた。

思えばあの事故以来、姉さんとはまともに話をしていない。

だからこそ姉さんの笑顔が私にとっては異様なまでに恐ろしく思えた。



陽乃「さぁ、テーブルに座って!
お姉ちゃんケーキ持ってきたんだよ!なんたって今日は雪乃ちゃんの記念日だからね!」


雪乃「記念日って何の事よ…?」


陽乃「またまた惚けちゃって…!
めぐりから全部聞いたよ。
雪乃ちゃん生徒会選挙に立候補するんでしょ。これはその記念日!」


雪乃「もうそんな話を聞きつけたの…?
そうよ、私は生徒会長になって学校をより良くしようと…」


そこで私は声を詰まらせた。

姉さんが私に視線を向けたから…

それは冷酷な目、いつもの外面を象った茶目っ気あるモノじゃない。

まるで汚らわしい汚物でも見ているかのようなそんな目で私を睨みつけた…



陽乃「へぇ、学校をより良くしたいんだ~?それって八幡にとっても良い学校になるの~?」


雪乃「そ…それは…」


陽乃「あら、八幡だけは別なの~?それはどうして~?」


雪乃「か…彼は目を…」


陽乃「そうだよね、もう目が見えないもんね。誰かさんの所為で…」


姉さんは私の事をネチネチと追い詰めていく。

今の私はさしずめ処刑台に送られる罪人…

そんな罪人である私を処刑する執行人は姉さん。

嫌なたとえ話だ。

今すぐにでもこの場を逃げたい。そんな気持ちでいっぱいだった…



陽乃「雪乃ちゃんはみんなに認められて生徒会長になるんだね。
対して八幡はみんなから煙たがられて挙句の果てには学校を追い出されちゃうんだ。」


雪乃「学校を追い出されるってどういう事…?」


陽乃「当然でしょ、ていうか静ちゃんから何も聞いてないの?
八幡は今月いっぱい、つまり生徒会選挙が終わる頃には施設に行くんだよ。
そりゃそうだよね。目が見えないんだもん。
うちの学校で授業なんて続けられるはずがないんだから…」


雪乃「そんな…嘘でしょ…」


さらに私の肩に罪悪感が押し寄せた。

彼が学校から追い出される。

それも私たちの非によって…

私はもう抑えきれない感情が制御出来ずにいた。

けれど姉さんの話はこれで終わりではなかった…



陽乃「ねぇ、雪乃ちゃんは何を考えているの~?
ひょっとして今頃になって罪悪感でも募らせているの~?
だとしたらお姉ちゃん軽蔑しちゃうぞ!」


雪乃「だってしょうがないじゃない!これは私たちでどうにか出来る問題では…!?」


陽乃「そうかなぁ?
雪乃ちゃんなら八幡に非がなかったと言えたよね。あの事故の全容を知っているんだから。」


雪乃「あ…あぁ…」


姉さんの言う通りだ。

私や由比ヶ浜さんは同じ奉仕部で彼を弁護する事が出来た。

それをしなかったのは…

由比ヶ浜さんは簡単、彼女はクラスの輪から拒絶されるのを最も嫌う。

だから彼女は何も言えない。

それに私も…



陽乃「八幡可哀想に…そうだ!お姉ちゃんが八幡の敵を取っちゃおう!」


雪乃「え…?」


陽乃「私があの事故の時、八幡を病院に送っただけだと思う?
ちゃ~んと事故の証拠は揃っているんだよ。
あの相模って子が事故直後にベラベラ喋った事は全部録音してあるし…
それに八幡の傷の具合からしてどうやって傷が付いたのかも検証したんだよ!
裁判に持ち込めば八幡が100%勝てるようにね~♪
ちなみに弁護士はどうしようかな?葉山先生じゃない人がいいかも~!」


雪乃「姉さん…それが何を意味するのかわかっているの…?」


陽乃「もっちろ~ん☆
八幡が報われる代わりに雪乃ちゃんたち大勢の総武高校生徒が犠牲になるね。
今の3年生は受験を失敗する子が出るかも…
それに2年生も危ないよね、来年からの新入生も若干減るんじゃないかな~?」


雪乃「それがわかっていて何故そんな事を…!?」


陽乃「そりゃ決まっているよ。八幡を助けるためだから。
八幡は私のお気に入り、それを傷つけられて黙って見ていられるわけがないじゃない♪」


姉さんは本気だ。

比企谷くんを守るために本気でやる気だ。

もしそうなれば私たちはどうなるのかしら?

事件の当事者である相模さんたちは勿論多額の慰謝料を請求される。

それに事件に関わっておきながら放置していた葉山くんも相応の制裁を受けるはず…

そして私も…

恐らく姉さんの事だから生徒会選挙が終わった頃にこの事を実行するだろう。

その時、もしも私が生徒会長になっていれば…

障害を持つ生徒に重傷を負わせて追放した生徒会長として不名誉なレッテルを貼られる。

そこまで計算尽くの事なのかもしれない。



陽乃「もしかして…今…保身の事を考えている…?
私はこれからどうなるんだろう?酷い目に合うんじゃないのかなぁって…」


雪乃「…」


陽乃「沈黙は肯定と受け止めるよ。
私の妹ながら情けないね、八幡とは真逆の考えだわ…」


雪乃「比企谷くんとは…?それはどういう意味よ…?」


陽乃「ずっと不思議に思わなかったの?
こんな事件、八幡が訴えれば学校側や加害者はみんな不利になるんだよ。
それなのに八幡は事故について何も話さない。それは八幡の意志だからだよ。」


雪乃「比企谷くんのってどういう事なの…?」


そういえば今更ながら考えてもいなかった。

何で彼は今回の事件を訴えようとはしないのだろう…?

もしかしてまた我が家や葉山先生が彼に口止めをしているの?



陽乃「あれは文化祭の日、
八幡を病院へ送っている時だよ。あの子は私にこう言ったんだ。」


『この事が知れ渡れば雪ノ下にまで非が及ぶ…』


『そうなったらあいつの苦労が報われない…それだけはダメだ…』


『だから今回の事件を俺の自業自得って事にしてくれ。』


陽乃「そう言っていたよ。
さすがは八幡、こんな自己犠牲中々出来る事じゃないよ~?」


陽乃「それに対して雪乃ちゃんは一体何なの~?
自分や学校の事ばかり気にして肝心の八幡についてはやっと聞いてくるんだから。
正直救いようがないよねぇ…」


そう、私は比企谷くんに助けられていたんだ。

あんな不自由な身体をしているくせに私を助けてくれた。

それに引き換え私はどこまで愚か者なの…



陽乃「それとついでに言っておくけど八幡は妊娠しているよ。」


雪乃「え…妊娠…?」


陽乃「まさか覚えがないとは言わないよね。
雪乃ちゃんが八幡襲ったんだから。
そりゃ八幡は可愛いけど私はを襲ってないしそうなると雪乃ちゃんしかいないよね?」


雪乃「まさか彼のお腹には私の子が…?」


陽乃「うわ、もう雪乃ちゃんたら救えな~い!
八幡の足を不自由にさせて目も奪ってさらには子供を孕ませて学校から追い出すなんて…
こんな悪逆非道な子だったなんてお姉ちゃんショックゥ~!!」


雪乃「茶化さないで!私に一体どうしろというの!?」


私は茶化す姉さんを怒鳴った。

けど姉さんはそんな私の顎をつねってこう呟いた。



陽乃「そんな事、自分で考えなさい。」


雪乃「う…うぅ…」


陽乃「生徒会選挙当日までに猶予をあげる。
それまでに自分自身で考えて答えを出してそれを八幡に伝えなさい。
そうでないと私は今言った事を必ず実行するから…」


陽乃「あ、それとケーキはちゃんと食べるのよ。捨てちゃダメだからね~♪」


そう言って姉は私の部屋から出て行った。

一人残された私は言われるがままにケーキを食べた後、気持ち悪くなりすぐに吐いた。

ここまで
ゆきのんにはもっと十字架を乗せなきゃ!



~応援演説会~


結衣「というわけで!ゆきのんを!ゆきのんをよろしくお願いしま~す♪」


雪乃「…」


あれから数日が過ぎた。

今日は生徒会選挙の応援演説会の日。

由比ヶ浜さんは私の応援演説を承ってくれたのだけど…



雪乃(確かに由比ヶ浜さんが私の応援演説をしてくれるのは嬉しい。)


雪乃(けれど今の私は正直そんな嬉しい気分に浸れる事は出来ないわ。)


雪乃(何故なら生徒会選挙当日までに答えを見つけて比企谷くんに伝えなければ…)


雪乃(姉さんは容赦なくあの事故の真相を公表する…)


雪乃(そうなればどうなる事か…)


雪乃(出来る事なら今すぐにでも選挙を辞退したい気分だわ。)


今すぐにでも選挙を辞退すれば、

哀れな比企谷くんを追い出した生徒会長という、

最も不名誉なレッテルを貼られる事だけは避けられる。

けれど運命とは残酷なもの、周りはそれを許そうとはしなかった。



めぐり「雪ノ下さん、やる気になってくれてよかったわ。
あなたならやってくれると信じているの!だから雪ノ下さんには大いに期待しているわ!」


雪乃「城廻先輩…あの…私は…」


めぐり「今日は他の立候補者も来ているのよ。入ってちょうだい!」


雪乃「他の立候補者ですって…?」


当然の事だけど生徒会役員に立候補するのは私だけではない。

他クラスからも多数の立候補者が現れるのは容易に想像できる。

けれどその立候補者たちを見て…私は思わず寒気がした…



葉山「やぁ、雪ノ下さん!俺も副会長に立候補するよ!」


相模「葉山くんが立候補するって聞いたからうちは書記に立候補するね!」


ゆっこ「私は会計に!」


遥「私もね!」


雪乃「葉山くん…それに…相模さんたちまで…一体どうして…!?」


相模「勿論、この前の文化祭のリベンジも含めてね!今度こそちゃんと成長したいし!」


葉山「まあ俺は内申が少し目当てというのもあるが、
雪ノ下さんともう一度昔みたく仲良くなれたらと思ってね…」


結衣「うわぁ!みんなやる気だ!よかったねゆきのん!」


めぐり「生徒会長に立候補するのは雪ノ下さんと一色さんだけなんだけど、
一色さんはあまりやる気はないみたいだし…
それに他のみんなは推薦される役職も被らないだろうから、
たぶんこのメンバーで新規生徒会メンバーになると思うわ!
だからみんな頑張ってね!!」


「 「ハ~イ!」 」


城廻先輩の応援に喜ぶ他の立候補者たち…

けど私はこの面子を見て思わず血の気が引いてしまった。

何故なら…

彼らは全員あの事故の真相を知る人たち…

彼らの目が私にこう叫んでいる。



『私たちはお前の共犯者だ。』

『お前を名誉ある生徒会長にしてやるからお前も私たちの罪を見逃せ。』

『お互い新しい生徒会で大いに活躍しようじゃないか。』

私にはそう言っているように思えた。

なんておぞましい…これは相当な悪意を感じる。

それだけじゃない。

この人たちは姉さんが真実を公表する事をまだ何も知らない。

姉さんは必ずこの生徒会の人間関係を疑ってくる。

そうなればどうなると思う…?

この学校の新規生徒会メンバーは比企谷くんを貶めた者たちの集まり。

全校生徒の代表である生徒会メンバーがその集まりだと判明すれば、

この学校は世間からのバッシングを一身に浴びてしまう。

無論、生徒会の中心になる会長職になるかもしれない私もタダではすまされない。

それに私自身も既に辞退出来る状況ではない。

まるで目には見えない巨大な意思に引きずり込まれていく。

誰にも助けなんて言えない。

いいえ…これだけ注目されて言えるわけがない…どうすれば…

私は目の前が真っ暗になった。

ここまで
さらに十字架が課せられていきます



いろは「あ、やってるやってる!ちょっと待ってくださ~い!」


結衣「あ、いろはちゃんだ。どうしたんだろ?」


雪乃「それに…もう一人誰かやってくるわね。あれは…嘘でしょ…!?」


生徒会選挙の応援演説の場に遅れて二人の人間が現れた。

それは以前、奉仕部に生徒会選挙を辞退する依頼をしに来た一色いろはさん。

それにもう一人は…



八幡「おい一色、あまり急がないでくれ。こっちは目も足も不自由なんだよ…」


雪乃「比企谷…くん…?」


葉山「いろは、確かキミは生徒会に入る気はなかったはずじゃないのか?」


いろは「まあそうだったんですけど…こちらの先輩に煽られまして…」


八幡「一色を生徒会長として正式に立候補させに来た。それは許可されますよね城廻先輩?」


めぐり「確かに…それに関しては問題ないわ。けど…」


突然この場に現れた比企谷くんと一色さん。

一色さんを生徒会長へ正式に立候補させようとする比企谷くん。

その行動は先程まで城廻先輩が既に決定済みかと思われた、

新規生徒会メンバーの構図に泥を塗るかのような行為に等しかった。



いろは「あと先輩も副会長として立候補しま~す!つまり私の片腕になってもらいます!」


結衣「ヒッキーも立候補!?」


八幡「俺は別にいいと言ったんだが…」


いろは「何言ってんですか!
先輩が私を立候補に推したんだから一緒に立候補してくださいよ!
まあ先輩は庶務でもいいんですけど今の先輩じゃ雑用は無理だし…
それに役職付きの方が…ほら…もしかしたら…」


雪乃「比企谷くんが副会長に立候補って…それってもしかして!?」


この時点で私たちには察しがついた。

彼は私たち新規生徒会が発足されるのを妨害しようとしているのだと。



めぐり「でもあなたは…もうすぐ学校を…」


相模「そうだよ!アンタは学校を追い出されるじゃん!」


葉山「それに比企谷は目が不自由だ。立候補できるはずがない…」


いろは「そうでしょうか?
先輩だってまだこの学校の生徒ですよ。役員に立候補する権限はあるはずですが?」


一色さんの言う通りだわ。

確かに比企谷くんはもうじき学校を追い出される身…

けれどだからと言って生徒会選挙に立候補出来ないという理由にはならない。

これはこの学校の生徒である限り守られる権利ではあるはず。



結衣「でも…どうしてヒッキーは今になって選挙に立候補する気になったの?」


八幡「そりゃ…まあ当然だろ…
こいつらが選挙に当選してみろ、この学校がどうなるかわかったモンじゃないからな。」


相模「つまりアンタの逆恨みって事?
バッカじゃないの!あれはどう見てもアンタの自業自得に決まってるじゃん!!」


葉山「いろは、キミもこんな馬鹿な真似に付き合うんじゃない。
こんな事は言いたくはないがキミと雪ノ下さんでは人望においては圧倒的に不利だ。」


葉山くんが指摘するように私たちは彼らよりも他生徒から圧倒的支持を得ている。

けど一色さんはともかく比企谷くんは…

文化祭の一件で誰もが比企谷くんを同情するどころか敵視している。

当然の事だけど選挙に当選するには票を獲得しなければならない。

でもその支持を自称ぼっちである彼に集められるわけがない。



相模「アンタみたいなぼっちが立候補しても意味ないじゃん!
こっちは学校の人気者たちの集まり!絶対に適うわけがないし!!」


いろは「まあいろはも本当ならそっちに行きたいんですけどね…」


葉山「ならこんな馬鹿な真似はよせ!恥を掻くだけだぞ!」


いろは「恥ってそもそも恥なのは葉山先輩たちの方だと思いますが…?」


相模「ハァ?うちらが恥ってどういう事…?」


いろは「先輩から改めて立候補してくれと頼まれた時に諸々の事情を全部聞きました。
聞けばこの生徒会メンバーって先輩を事故で失明させたメンバーの集まりじゃないですか。
もしそんな人たちがまかり間違って当選したらどうなると思いますか?」


八幡「今回の事でお前たちは、
これだけの事をやらかしても大してお咎めがないと確信したな。
そうなるとお前らは次に気に食わないヤツを叩いて第二、第三の俺のような犠牲者を出す。
悪いが俺が学校にいる間、それだけは阻止させてもらうぞ。」


比企谷くんの話は極論かもしれないけど可能性は否定できない。

確かに相模さんは気に入らない相手は敵視するタイプ。

もし今回の件が明るみにならなければ彼女は次も同じ手を使うはず…

それも今度は生徒会の権限を悪用して堂々とやってのけようとするに決まっている。



葉山「比企谷それは考え過ぎだ。キミはあの事故で感情的になっているだけだぞ。」


いろは「今の葉山先輩のセリフ、本気なら幻滅しますよ。
それって加害者が被害者に言っていいような言葉じゃないはずですよね。」


結衣「いろはちゃん…抑えた方が…」


いろは「ていうかここにいる人たちおかしいでしょ?
先輩を失明させておいて、
誰一人として謝りもしなければ他のみんなへの誤解も解かないとか…
こんな人たちが生徒会やる事になったらこの学校お先真っ暗ですよ!?」


一色さんは私が心に抱いた事をズバズバと言ってくれた。

確かに私だってこの事件に関わっていなければ彼女と同じ事を言えたかもしれない。

けれど…

今の私は相模さんたちと何も変わらない。

もうこの窮地をどう抜け出したらいいのかわからない…



戸塚「八幡!八幡の応援演説は僕たちがするよ!」


川崎「アンタには借りがあるからね。」


材木座「我も協力するぞ!」


結衣「さいちゃんにサキサキに中二!みんなヒッキーに協力するの!?」


戸塚「当然だよ、八幡は味方が少ないからね。」


川崎「私らくらいは応援してやってもバチは当たらないだろ。」


材木座「無二の親友のピンチに駆けつけなくてどうするか!」


いろは「何だ、先輩ぼっちだって言ってたのに集まってくれる人が居るじゃないですか!」


八幡「あぁ…お前ら…本当にすまないな…」


誰も応援する人がいないと思っていた、

比企谷くんたちの応援演説に戸塚くんたちが駆けつけてくれた。

裏表のない戸塚くんたちの姿を見て正直私は羨ましかった。

あの人たちは本当に心の底から比企谷くんを応援しようとしてくれている。

それに引き換え私の下に集まったこの人たちは何なのかしら…?



相模「うちらがあんなヤツらに負けるはずないし!」


葉山「そうだね、みんな頑張ろう!」


雪乃「…」


結衣「ゆきのん…顔色悪いけど大丈夫…?」


雪乃「大丈夫…じゃないわ…間違いなく…」


私の周りにいるのはみんなあの事故の真相が明かされるのを恐れる薄汚れた人たち…

けど既に私もそんな薄汚れている一人…

何処でこんな差が開いてしまったのかしら。

出来れば私もそっちへ行きたい。

私も比企谷くんたちと同じように胸を張って堂々とこの選挙に臨みたかった。

ただそれだけなのに…

ここまで
まだまだ十字架が足りねえな



「ユキノシタサンガンバッテ!」


「キャーッ!ハヤマセンパイ!」


「サガミンオウエンシテルヨ!」


相模「相模!相模南をよろしくー!」


葉山「僕たちが新しい生徒会を盛り上げていくのでよろしく!」


雪乃「よろ…しく…」


結衣「も~!ゆきのん元気ないよ!もっと大きな声で言わないと!」


あれから数日が経過した。

生徒会選挙も残り二日と大詰めになってきた。

現在、この学校の生徒会選挙は二つの派閥に別れた状態になっている。

ひとつは私と相模さんたちに葉山くんによる俗称雪ノ下派閥。

もうひとつは…



いろは「一色いろはを!それとついでに先輩もお願いします!」


八幡「俺はついでかよ…」


戸塚「まあまあ…」


川崎「けどアンタって本当に人望がないよね。」


材木座「ぬぅぅ…これでよくぞ選挙に出る気になれたものだと我もある意味感心するぞ!」


そしてもうひとつは一色さんと比企谷くんの一色派閥。

今回の生徒会選挙は二つの派閥で争われている。

でも現在の状況は圧倒的なまでに私たちの方が有利。

一色さんはともかく比企谷くんの支持率は歴代生徒会選挙では過去最低のものだった。



相模「ほら!やっぱり結果はご覧の通りじゃん!」


いろは「先輩…これじゃ私たちボロ負けですよ…」


相模「私らの方がみんなから注目浴びているんだし、
アンタみたいなぼっちには最初から勝目なんかないに決まってんじゃん!」


八幡「なるほど、要は注目されればいいんだよな。それなら問題は解決済みだ。」


その時、学校の前に数人のマスコミ勢がやってきた。

一体何の騒ぎかと思ったけど彼らの目当ては比企谷くんにあった。



「キミが失明したのに生徒会に立候補する比企谷くんだね!」


「今どんな気持ちなのか教えてくれるかな!」


「そもそもどうして失明をしてしまったんだい?」


葉山「何だこれは…?マスコミが押し寄せてきたぞ!?」


結衣「ヒッキー!一体何をしたの!」


八幡「簡単な事だ、失明した高校生が生徒会に立候補するんだぞ。
こんなネタをマスコミに晒せば嫌でも俺に注目が集まる。
あとはあちらさんが勝手に美談にしてまとめてくれるだろ。
弱さってのは使いようによっては武器になるんだよ。」


いろは「さっすが先輩!
最初から勝てる手はずを考えてくれてたんですね!
でも付き合うのは無理です!ゴメンなさい!!」


川崎「けどこんな事して学校側に怒られないか?」


八幡「構わねえよ、どうせ俺がこの学校にいられるのはあとわずかだ。
それまでに好き勝手やったところで学校側も文句は言えねえから何も問題ねえよ。」


そう、彼はマスコミに自分の弱点をアピールしながら注目を狙っていた。

哀れな障害を持つ少年が生徒会役員に立候補。

この話題は世間からの注目を一気に集める。

そうなるとこの学校の生徒たちの動きにもある変化が見られた。



「ねぇ、キミたちも勿論比企谷くんを応援するんだよね?」


「え…あ…も…勿論ですよ!」


「頑張っている人は応援しなきゃいけないしね!」


相模「嘘…流れが変わってきている…?」


八幡「所詮人間なんてこんなもんだ。
自分たちが注目されれば下手な行動が取れなくなる。人間の行動心理を読み取った結果だ。」


戸塚「スゴイよ八幡!これで一気に形勢逆転だね!」


材木座「さすがは我が友だ!」


川崎「ちょっと汚い気もするけど…」


いろは「これでみんなから注目を集めれば先輩も学校に残れるかもしれませんよ!」


八幡「そこまでは期待できん、俺の施設行きだけはどう頑張っても免れないだろ…」


一色さんの言うように、

この選挙に比企谷くんたちが勝てば彼の施設行きは無くなるかもしれない。

それは確かに僅かな可能性に過ぎない。

けれど私はこう思った。

もし今回の選挙に比企谷くんたちが勝ち彼が学校に残る事が出来るのなら、

姉さんもあの事故の真相を公表するのを思い止まってくれるかもしれないと…

私の中に淡い期待が生まれた。



~比企谷家~


陽乃「八幡、お家に到着だよ~♪」


小町「陽乃さんいつもご苦労さまです。」


八幡「小町か…ただいま…」


雪乃「…」


私は姉さんたちよりも先回りして比企谷くんの自宅で彼の帰りを待っていた。

その理由は先ほどの比企谷くんが学校に残れる可能性を確実なものとするために、

比企谷くん自身にも協力とそれに姉さんの説得に協力してもらうためだ。

けれど当然の事ながら彼は失明して以来、

送り迎えを他の人間に頼らなければいけなくなった。

その役目を承っているのが姉さん自身なので彼のガードは意外と固い。

それなので姉さんの帰るのを見計らって彼に交渉を挑む事に、

そして姉さんの車が去ったのを確認した後に私は比企谷家に近づいた。



雪乃「あの…!」


八幡「うん…?誰かいるのか?」


小町「あれは…お兄ちゃん!すぐに家の中に入って!」


八幡「おい小町!?」


私は玄関前にいた比企谷くんに声を掛けようとする。

けれど私の存在に気づいた小町さんがすぐに彼を家の中に入れてその邪魔をしてきた。



雪乃「小町さん、これは何の真似かしら?私は比企谷くんに話があるのだけど。」


小町「話なら小町が聞いてあげますよ。一体何の用ですか?」


雪乃「ハァ…出来れば彼に直接話したかったのだけど…
私の姉を説得したいから彼に協力を頼みたいの。その事をお願いしてもらえないかしら。」


小町「あの…話ってそれだけ…?他に何かお兄ちゃんに言う事はないんですか…?」


雪乃「それだけよ?出来れば急いで彼に伝えてもらえるかしら。」


何か様子がおかしい小町さん。

それから彼女はブツブツと何か呟きながら私の方へと近づいてきた。



小町「雪乃さん…あなた…今日までお兄ちゃんに話しかけてこなかったのは何故ですか?」


雪乃「それは…あんな事があったから気まずくて…」


小町「へぇ、気まずい…なるほど…それで今頃になって何の話をしに来たんです?」


雪乃「二度も言わせないで、さっきも言ったように姉さんの事よ。
姉さんを説得するには比企谷くんの協力が不可欠なの。だからその事を伝えて…」


この時、私は重大なミスを犯した。

そもそも姉さんが何に対してあんな真相を公表しようとしたのか…?

それも全ては比企谷くんのためであると、この事を忘れてはいけなかった…



小町「ハハ…アハハ…
それはいくらなんでも酷い…ていうかあんまりでしょ…」


小町「雪乃さん…もしかして小町が何も知らないとでも思っていました…?
悪いですけど陽乃さんから全部聞いていますよ。
あの文化祭の日、あなたや相模って女がお兄ちゃんにやった事を全部ね…」


小町「陽乃さんは私たち家族に謝ってくれましたよ。
こんな事になって申し訳ないって…
いつもお兄ちゃんの世話を欠かさずやってくれているのに責任を感じてくれて、
私たちの方が逆に謝ったくらいですよ…
でもそれなのにあなたはあの事故の当事者なのに、
こんな文化祭が終わって暫く経ってからノコノコとうちにやってきた。」


小町「それで今度はいきなりやってきて、
お兄ちゃんに陽乃さんの説得を手伝え?
アンタ…自分が今何を言っているのかわかってんの!?」


雪乃「あ…あぁ…」


やってしまたった…

姉さんがこんな事をする理由は比企谷くんの失明にある。

元々の原因を生み出したのは他の誰でもないこの私自身。

それなのに私は被害者の彼にこんな無礼な事を頼み込んでいた。

これでは私も比企谷くんが足の事故を負った時の両親や葉山先生の対応と同じじゃない…



小町「そういえば以前にもアンタと同じ事を言いに来た人がいましたよ…」


小町「確か奉仕部の顧問の平塚先生でしたっけ…?
兄は何故か知らないけど怪我を負わせた相手の名前を言わないから、
事故直後に訪ねて来た先生に犯人の名前を教えろそいつに責任を取らせろと言ったら、
守秘義務がどうたらこうたらとわけのわからない事を言ってうやむやにしていました…」


小町「それで悪いのはお兄ちゃんで相手側は厳重注意だけとか、
あまりにもお兄ちゃんの事を舐め腐っていたからこれで殴ってやったんですよ!」


その時、私は平塚先生がおでこに怪我を負っていた事を思い出した。

あれは何か凶器で殴られた傷…

そして小町さんがあるモノを持ち出してきた。

それは見るからに鋼鉄な金属バット…

彼女は金属バットを私に振りかざしてきた。



小町「死゛ねぇぇぇぇっ!」


雪乃「キャァッ!?」


小町「よくも…よくもお兄ちゃんを!
足を不自由にさせて今度は目を!それに妊娠までさせて!次は何を取る気だ!命か!?」


雪乃「違うわ…私はそんなつもりじゃ…痛っ…さっきので転んで足を擦りむいた…」


小町「アハハ!足を擦りむいたから血が結構出てますよ!
でもその程度で済んでよかったじゃないですか。
お兄ちゃんなんてアンタの所為で松葉杖じゃないと歩けないんですからねぇっ!!」


小町さんはバットを振り上げて渾身の力を込めて襲ってきた。

私は足に怪我を負ってしまい逃げようがなかった。

殺される…

そう思い目を閉じた。



((ドゴォッ!))


八幡「うわっ!?」


小町「そんな…お兄ちゃん!どうして!?」


八幡「急に大声がしたから気になって…それより教えてくれ…一体何があったんだ…?」


小町「大丈夫だよ…何にもないから!
それよりバット当たって大丈夫…?
怪我はない?お腹の赤ちゃんも平気?ゴメンね…ゴメンなさい…」


雪乃「あ…あぁ…」


小町さんが振り下ろしたバットから私を守ってくれたのは比企谷くんだった。

彼は状況もわからないのに身を呈して庇ってくれて背中に打撲を負ってしまう。

小町さんはそんな比企谷くんに何度も謝っていた。



八幡「小町…もう謝らなくてもいいから…それよりも早く家に入ろう…」


小町「そうだね…うん…そうしよ…ゴメンねお兄ちゃん…」


雪乃「待って!私の話を…!?」


小町「うるさい!お前は二度と家へ来るな!!」


小町さんは一括して私から比企谷くんを遠ざけた。

そして家の鍵を厳重に占めて私が入るのを完全に拒んだ。



雪乃「フ…フフ…」


雪乃「私ってこんなに嫌われていたのね…」


雪乃「小町さん…以前はあんなに仲が良くて慕ってくれていたのに…」


雪乃「どこでこんな事になってしまったのかしら…?」


私はショックを隠しきれずにいた。

けどそんな私にさらに追い打ちをかけようとする人が現れた。

姉さんだ。



陽乃「これって最悪…だね…
八幡はよく自分の身体はポンコツだって言っているけど雪乃ちゃんは頭がポンコツだよ。」


雪乃「姉さん…戻ってきていたのね…」


陽乃「私が出た後にすぐあなたの姿が見えたから少し気になったの。
けどまさかこんな騒ぎを起こすなんて思わなかったよ。
一体何があったのかは…まあ大体想像つくけどさ…」


雪乃「余計なお世話よ、放っていて…」


突然姉さんは怪我をした私を心配するどころか、

まるで当然の事だというような蔑む目で私を見ていた。

そして何もかも見透かしたかのように私にこう言った。



陽乃「選挙の話はめぐりから聞いたよ。
まさか隼人や相模って子と協力して猿軍団の大将になるとはね…
何で止めなかったの?」


雪乃「あれは私がやったわけじゃない…周りが勝手にやっているのよ…」


陽乃「あんな猿軍団を止められないんだからボス猿のあなたの責任よ。
それで八幡が、
あなたたち猿軍団をどうにかするために不自由な身体をひきずって選挙に立候補した。
さすがは八幡、私のお気に入りだけの事はあるね!」


雪乃「そうよ…比企谷くんよ…
彼が当選すれば学校に残れるかもしれない…
だから姉さんがあの事故の真相を公表する必要はもうないはずよ!?」


陽乃「…」


私は姉さんの前で縋るようにそう叫んだ。

けど姉さんの目は冷酷なモノだった…



陽乃「雪乃ちゃん…今の話は聞かなかった事にしてあげるよ…」


雪乃「何を言っているの!姉さんだって比企谷くんが学校に残ればそれで…!?」


陽乃「そんな望みの薄い話を間に受けるほど私は世間知らずじゃないよ。
それと雪乃ちゃんは自分が助かりたいために少し話の論点をすり替えているよね。
私は八幡が学校に残ろうが残るまいがあの事故の真相を公表するつもりだから。」


雪乃「そんな…どうして…彼が助かるのならそれが最善の選択のはずよ!?」


陽乃「八幡が助かるのは確かにいい事だよ。
でもそれは当然の事、あの子にあれだけの傷を負わせた人たちが無傷でいる方が問題なの。
そして自分だけ助かりたいために恥も外聞も捨てて縋る雪乃ちゃんこそが一番問題だよ。」


そう、姉さんは最初から真実を公表する気でいる。

そしてその事を恐れた私は当初からこの話の論点をすり替えていた。

全ては自分自身の身勝手な保身のために…



雪乃「それなら…一体どうしたらいいの…?」


陽乃「最初に言ったはずよ、自分で答えを見つけてそれを八幡に伝えなさい。」


雪乃「答えって何なの…教えなさいよ!?」


陽乃「…」


姉さんは何も言わずにその場を去った。

いつもなら私を気遣い足の手当くらいしてくれるはずなのに…

呆れているのか?それとも見捨てられたのか?

どちらにせよ後に残ったのは足を怪我して無様に地面に転がる私だけだった…

ここまで
どっかで十字架のバーゲンセールやってないかな



~生徒会室~


結衣「ゆきのん足の怪我は大丈夫?」


雪乃「このくらい平気よ…」


葉山「明日は選挙当日なんだ。
怪我で選挙を休んじゃ大変だから今日は早く帰った方がいいね。」


相模「そうそう、後はうちらに任せておきなって!」


雪乃「それではお願いできるかしら。」


生徒会選挙前日、私たち雪ノ下派閥は既に生徒会室を使い着々と準備を行っていた。

一色派閥による比企谷くんのマスコミ効果で支持率は若干彼らが上回っている。

けれど実際の事務作業となると話は別になる。

失明した比企谷くんが今後も生徒会活動を行えるとは思えない。

それなので先生方や城廻先輩はむしろ私たちの方を支持してくれている。

だからこそ私たちは今回の選挙に生徒会室を使う事を許可されていた。



葉山「それにしても比企谷たちにも困ったものだね。」


相模「あいつらしぶといよね!まだ諦めてないんだから!」


ゆっこ「けど今のままだとあいつらが勝っちゃうんじゃ…?」


遥「どうしたらいい?」


相模「だったらこういうのはどう…?」


私が帰った後の生徒会室で相模さんたちは何やらよからぬ事を企んでいた。

それが後に重大な事に繋がるのだけど…



~下駄箱~


雪乃「あら、一色さんに戸塚くんに川崎さん。あなたたちも今帰りなの?」


戸塚「うん、八幡だけはまだ奉仕部の部室に残っているけどね。」


雪乃「奉仕部の…?」


川崎「一緒に帰ろうって誘ったけどやんわり断られたよ。
あいつ…失明してからいつも部室で誰かが来るのを待っているみたいなんだよね。」


材木座「八幡め!無二の友である我にまで秘密にするとは!?」


いろは「まあ先輩が誰を待っているのかはいろはたちには教えてくれませんけどね。」


雪乃「…」


私は一色さんたちの帰宅する姿を私は見送りつつ比企谷くんの事を考えていた。

そういえば以前にも彼は奉仕部の部室へ一人で行こうとしていた事を思い出した。

彼の待ち人って誰なの…?

そんな物思いにふけっていると由比ヶ浜さんが血相を変えて駆けつけてきた。

だからこどじゃねーだろww
なおさら使わせないだろ生徒会室wwwwwwwwwwww



結衣「ゆきのん大変だよ!さがみんがたち!?」


雪乃「由比ヶ浜さん…相模さんがどうしたの…?」


結衣「今からヒッキーを懲らしめてやるって言って奉仕部の部室へ…どうしたら…」


雪乃「なんですって!?」


彼女たちがこれほど愚かだとはこの時ほど思った事はなかった。

相模さん…強硬手段に出るなんて一体何を考えているの…?



雪乃「痛っ!」


雪乃「走ると足が…痛い…」


雪乃「おまけに奉仕部への道は階段だらけ…」


雪乃「今なら足が不自由になった彼の苦労がよくわかるわ。」


雪乃「私は彼になんて酷い事をしたの…」


由比ヶ浜さんに先生方を呼びに行くよう促し私は部室へ急いだ。

しかし先日、小町さんとのトラブルで私は足を怪我して思うように走れない。

いつもなら何の問題もなく登れる階段がこれほどまでに険しいなんて…

怪我した足を引きずりながらようやく部室へたどり着いた。

けれどそこで行われていたのは…

とりあえずここまで
>>371
先生たちはみんな事故はヒッキーたちのせいだと思っているから
有力候補の優等生たちに生徒会室を使う事を許可しているのです

>>372
結衣「ゆきのん大変だよ!さがみんがたち!?」

相模がタチってことはやっぱり八幡がネコなんですね



~奉仕部~


相模「比企谷、アンタもこれでおしまいだよ。」


ゆっこ「アンタのフェラは最高だよ、でも覚悟は出来てるよね?」


遥「ほら!もっと美味そうにしゃぶりなよ!」


八幡「ゲホッ…ゲホッ…」


相模「アハハ無様じゃん!何が最底辺の人間だよ!
ちょっと脅しただけで簡単にフェラしてるアンタが一番最底辺だっての!!」


私が部室の扉を開けた時、

比企谷くんは奉仕部の部室で相模グループに取り囲まれてレイプされていた。

彼の首元にカッターナイフを近づかせて脅す相模さんたち。

普通の男子なら女子三人程度に取り囲まれようとなんとかなるけど、

生憎彼は足が不自由で失明してさらに妊娠までしている。

そんな彼が自力でこの場を切り抜けるのは不可能だった。



八幡「わかってる。どうせ逃げられやしないんだ。無駄な抵抗なんかしねーよ。」


ゆっこ「へぇ、それじゃ大人しく嬲られちゃうんだ。」


八幡「でも…ひとつだけお願いがあるんだ。」


遥「お願い…?」


八幡「お腹に赤ちゃんがいる。俺はいいけどこの子は傷つけないでくれるか。」


相模「バカなヤツ!
雪ノ下になんか関わったからこんな目に遭うんだよ!
お腹の子もアンタと同じ目に遭わせてやる!!」


相模さんたちは非情だった。

彼の唯一の願いすら聞く耳を持ってはいない。

比企谷くんも覚悟を決めたのだけど…



雪乃「相模さん…!」


相模「あ、雪ノ下さん!
今からこいつを痛めつけるところだから黙ってそこで見ていてね!」


雪乃「誰がそんな事をしろと頼んだの!今すぐやめなさい!」


ゆっこ「ハァ、何それ?命令とか生意気なんだけど!」


遥「私らがアンタを生徒会長にしてやるんだから黙って見てなよ!」


八幡「うぐっ…!?」


相模さんは卑劣にも比企谷くんのお腹を足蹴にする。

逃げられない彼はお腹の子を守ろうと必死にうずくまった。

その姿を見て嘲笑う彼女たち…

そんな彼女たちを見て私は怒りを露にした。



雪乃「やめなさいと言っているのよ!!」


相模「だ~か~ら~!
うちらはアンタのためにやってるんだけど!生徒会長やりたいんでしょ?」


雪乃「私は最初からあなたに何も頼んでいないわ。」


相模「そうだよ、アンタの言う通りうちらが勝手にやっている事だよ。
でもアンタだってうちと同類の卑怯者じゃん。
なんせ比企谷をかたわにした張本人なんだからさぁ!
そんなヤツが今更止めに入るとかマジ受けるんだけどぉ!!」


ゆっこ「ていうか本当に何しにきたわけ?」


遥「もしかして私らと一緒に比企谷を虐めたいとか?」


雪乃「いいから早く彼から離れて!でないと…」


私は彼女たちを腕ずくで阻止しようと構えた。

けれど普段なら得意の合気道でどうにかなるかもしれないけど、

今の私は足を怪我してさすがに三人も相手にするのは不可能。

これでは返り討ちに合うのは確実…



八幡「おい…お前ら…これを見ろ!」


相模「ちょっと…比企谷!カッターなんか取り出してどうすんのよ!?」


八幡「それは…こうするためだよ!」


ゆっこ「こいつ…自分の首にカッターを突きつけている!」


遥「アンタ…何考えてんの!?」


比企谷くんは相模さんが彼の首筋に当てていたカッターを奪い取り、

それを自らの首に突きつけた。

こうなると全員の視線は一気に比企谷くんへと向けられる。

けど彼は一体何を考えているの?



八幡「俺はここで自殺するぞ。
そうすればどうなると思う?今この場にいるお前ら全員が疑われるのは確実だぞ!」


ゆっこ「やばいよ…この前は厳重注意で済まされたけど…」


遥「さすがに死人が出たら…」


相模「嘘…こいつに死ぬ度胸なんかないって!ほら、カッターなんかこっちに渡して!」


八幡「嘘じゃない事を教えてやるよ…」


((ドスッ!))


「「キャァァァァァッ!?」」


彼はカッターの刃を自らの首に切りつけて首から出血。

彼の本気がわかると相模さんたちは、

一目散にこの場から一目散に逃げ出して私と比企谷くんだけが部室に取り残された。

ここまで続きは夜できたらいいな
>>386
結衣「ゆきのん大変だよ!さがみんがたち!?」 ×

結衣「ゆきのん大変だよ!さがみんたちが!?」 〇

本当はこう書き込みたかったんです
それにしてもチクショー!さっき他のssに誤爆しちゃったよ!
これも全部葉山のせいだ!こうなったらこのssが終わり次第葉山への制裁ssを書くしかないね!!



八幡「あいつら…出て行ったのか…ハァ…よかった…」


雪乃「比企谷くん!なんて事を…!?」


八幡「お前…雪ノ下…なんだよな…?」


雪乃「そうよ!私よ!雪ノ下雪乃よ!」


比企谷くんは相模さんたちが出て行った事がわかると、

先ほどのカッターを捨て緊張を解いた。

けど先ほどの傷は大きく彼の首から未だに出血は収まらない。



雪乃「あぁ…血が…すぐに保健室へ行かないと…」


八幡「いいよ、俺はもうこれでいい…」


雪乃「何を言っているの!このままだとあなた死んじゃうわよ!?」


八幡「それでも別に構わない。これで相模たちは生徒会選挙から手を引いて一件落着。」


八幡「それに俺は…
もうこの身体はポンコツなんだ。
これからお先真っ暗な人生を送るくらいならこのまま死んだ方がマシだ…」


雪乃「まさか私を助けるためにあんな無茶な真似を!なんて馬鹿げた事を!?」


確かに比企谷くんの言う通り相模さんはこれに懲りて生徒会選挙を辞退するはず。

けれど…

そんな事はもうどうでもいい!

あなたが死んでしまったら意味がないじゃない。



雪乃「あなたのお腹の中には子供がいるのよ!それなのに…!?」


八幡「あぁ…でも今の俺にお腹の子を育てさせる事なんて出来るわけないだろ…」


雪乃「それなら姉さんや…小町さんが…」


八幡「あの二人にそこまで迷惑をかけられない…
小町や陽乃さんだって自分たちの将来がある。
それを俺なんかの面倒で台無しにさせるわけにいかないからな…
これでお腹の子も苦しまずに楽になれるはずだ。」


この男はどうして妙なところで律儀なのよ。

確かに姉さんや小町さんだってこの先、四六時中彼の介護を行うのは不可能だ。



雪乃「それなら…私ではどうなの…?」


八幡「え…?」


雪乃「私があなたの事を一生面倒見ると言ったらどうするの…?」


八幡「お前が俺を…?そんな事が出来るわけないだろ!お前にだって将来が…!?」


雪乃「私の将来ならもう気にする必要ないわ…
姉さんは今回の件を公表する気でいる。そうなれば私の将来なんて終わったも同然…」


そう、今回の件が明らかになれば雪ノ下家の跡取りは姉さん。

私は厄介者として扱われるだけ…

恐らくこの後はどこかの御曹司と政略結婚に利用されるかも。

それならまだ彼の世話をした方が私の生きている意味があるというモノだ。



雪乃「だから言いなさい。
今まであなたが我慢していた事…包み隠さず全てこの場で言ってみなさい…!」


八幡「いいのか…これから言う事は全部お前を傷つける事になるんだぞ…?」


雪乃「構わない。
あなたをここまで傷つけたのはこの私よ。
だから私もあなたが傷ついた分だけ傷ついてあげるわ。」


私の本心から出た言葉。

そんな私の言葉を聞き、比企谷くんは涙を流しながらこう呟いた。

それは姉さんが以前にも言っていた彼がずっと思い悩んでいた事だ…



八幡「どうして…俺が…こんな目に合わなきゃいけないんだよ…」


雪乃「うん…」


八幡「足を怪我して身動き取れなくなって…」


雪乃「うん…」


八幡「次に目が見えなくなって…」


雪乃「うん…」


八幡「それでお腹には子供が…」


雪乃「そうね…そうよ…もっと言いなさい…!」


八幡「どうして俺ばかりこんな目に遭うんだ!俺が何したっていうんだよ!?」


雪乃「そうよ!あなたは悪くない!
全部私の所為よ!私が…私があなたを…ごめん…ごめんなさい…ごめんなさい!」


「 「う゛ぁぁぁぁぁぁ」 」


姉さんが私に言っていた比企谷くんへ伝えなければいけない事…

それは謝らなければいけない事だ。

私は泣きじゃくりながら彼に謝罪を続ける。

そして私たちは二人きりの部室で思い切り泣いた。

それから暫くお互いの涙が枯れるまで泣き続けた。



雪乃「これで治療はおしまい。はい、お茶よ。」


八幡「やっぱり雪ノ下の淹れるお茶は美味しいな。久しぶりに飲めたよ…」


雪乃「そうね、あの文化祭から色々と大変だったものね。」


八幡「そういえば…お前とこうして話すのも文化祭以来なんだな。」


雪乃「今更そんな事に気づくなんて呆れるわね。」


泣き続けた後、

落ち着きを取り戻した私たちは比企谷くんに治療を行いながらお茶を淹れてあげた。

今、私たちは久しぶりの平穏な一時を満喫している。

この後、姉さんによる制裁が待っていようと今この時だけは誰にも邪魔されたくなかった。



雪乃「それにしても今のあなたが一人になれば、
相模さんたちに襲われる可能性があったのはわかっていたはずよ。
それなのに何でこの奉仕部の部室に一人でいたの?」


八幡「それは…」


雪乃「まったくあなたの待ち人さんは余程罪深い人なのね。
それで一体誰なのかしら?その人に今回の事について一言忠告しておきたいのだけど。
あなたをいつまでも待ちぼうけさせるのだから…」


そうよ、こうなった原因はそもそも彼の待ち人にあるのよ。

私だって迷惑を被ったのだから文句くらい言わせなさいと彼に言った。

すると比企谷くんは照れ臭そうになりながら私に対してこう囁いた。



八幡「…だよ…」


八幡「俺がこの部室で待っていたのは…」


八幡「雪ノ下…お前なんだよ…」


雪乃「私を…でもどうして…?」


八幡「この部室にいれば学校を追い出される前にお前に会えるからな…だから待ってた…」


雪乃「でも…何で私を…?」


八幡「ちゃんと伝えたかったんだ…
俺が失明したのはお前の所為じゃないから気にすんなってさ…」


彼がこの部室で待っていたのはこの私だった。

その事実を告げられ思わず私たちは互いに顔を真っ赤にさせてしまう。

それから暫く沈黙が続いた。



「「……」」


雪乃「ねえ…比企谷くん…」


八幡「何だよ?」


雪乃「その…今まであなたと会えなかったから…だからその…」


八幡「いきなりどうしたんだ?」


雪乃「その…我慢できないの…!」


そう、彼此1ヶ月近く私はお預け状態だった。

だから…



雪乃「ヤラせなさい!」


八幡「ちょ…おま…待って!?」


雪乃「待てるわけないでしょ!私は…この1ヶ月ずっとこの日を待ち侘びていたのよ!!」


八幡「でも…俺にだって心の準備が…ダメ…やめて…!?」


彼が何か喚いていたけどそんな事は知った事ではない。

私は嫌がる彼を押さえつけて無理やり行為に及んでやったわ。



雪乃「久しぶりに味わう私のモノはどうかしら!言ってご覧なさい!」


八幡「あっ…やっ……あっ…あっ…ああっ!」


雪乃「フフ、失明してもちゃんと気持ちいい事だけはわかるのね!いやらしい人!」


八幡「それは…いやらしいのはむしろ…お前の方だろ…ひゃんっ…ひぐぅっ!?」


雪乃「感じているのね!そろそろ出すわよ!」


八幡「待って…胎内には赤ちゃんがいるから!だから…ダメェェェェェェッ!?」」


私は久しぶりの比企谷くんの身体を存分に堪能した。

行為を終えた私はふと彼の背中を目にする。

それは先日、私が小町さんとのトラブルに合った際に彼が庇って負った打撲痕だ。



雪乃「背中の傷…それに足や目…あなたって傷だらけよね…」


八幡「う…ん…そりゃ…お前が色々と傷つけてくれたからな…」


雪乃「全部私の所為で負った傷、まるであなたの身体って机みたい。」


他愛もない言葉だ。

よく学生が自分の机にわざと傷をつけて自分の証を建てようとする。

彼の身体の傷はまさに私のモノであるという証そのものだ。

そうよ、彼は私のモノだ。

私以外が彼を傷つける事なんてもう絶対に許さない。



八幡「ところでさっきの話だけど…あれは信じていいのか…?」


雪乃「あなた、私の事を疑っているの?
大丈夫、安心しなさい。もうこれからはあなたの事を離したりはしないわ。」


八幡「でも…俺の身体はもうポンコツなんだぞ!」


雪乃「安心して、姉さん曰く私は頭がポンコツらしいわ。これでお相子よ。」


八幡「足も満足に動かないし目も見えないし…」


雪乃「私があなたの足になるし目にもなるわ。」


八幡「それに赤ちゃんだって…」


雪乃「私たちの子供でしょう。大切に育ててあげるわよ。」


八幡「雪ノ下…」


上目遣いをしながら比企谷くんが私の顔を見つめてきた。

その目は恐らく私の顔など見えてはいないはず…

けれど彼の瞳には赤裸々になった私の顔がハッキリと映っていた。



雪乃「そんな事より、まだ興奮が冷め止まないわ。このまま続けるわよ!」


八幡「え…まだヤル気かよ!ひぐぅぅぅっ!?」


こうなれば興奮が収まるはずもなく…

こうして私たちは朝になるまでずっと行為を続けた。

そして一晩経った。



陽乃「ひゃっはろ~!八幡、それに雪乃ちゃん~♪」


雪乃「姉さん…まさか…隠れて全部見ていたの…?」


陽乃「当然、八幡の送り迎えは私がやっているんだもん!
八幡を迎えに部室にやってきたら、
まさかこんな事をしていたなんて…雪乃ちゃんは本当にケダモノだね!!」


雪乃「だから誰がケダモノよ!」


翌朝、目が覚めると私たちの前に姉さんがいた。

どうやら一晩中彼を犯していたところを全て見られていたようだ。

まったく…この姉さんには一生勝てないというのが嫌というほどわかったわ…



陽乃「その様子だと雪乃ちゃんは八幡に言うべき事を伝えられたみたいだね。
約束通り、生徒会選挙当日にちゃんと言えてよく頑張った。偉い!褒めてあげるよ~♪」


八幡「あ…そうか…今日は生徒会選挙当日なんだな…」


雪乃「そうね、それじゃそろそろ行くとするわ。」


八幡「行くって…お前大丈夫なのか?」


雪乃「平気よ、もう覚悟は出来ているもの。」


それから私たちは姉さんに連れられてある場所へと向かった。



~生徒指導室~


静「雪ノ下…これは一体どういう事だ…?」


雪乃「どうもこうも全て事実です。」


早朝、生徒会選挙が始まる前に私たち雪ノ下派閥は生徒指導室へ呼び出されていた。

平塚先生の顔は怒りに満ちていた。

その理由は勿論…



静「相模、キミたちは昨日部室にいた比企谷を襲ったらしいな!それも凶器を用いて!」


相模「あの…その…」


静「それに葉山!キミもこのくだらない悪事に加担しているそうじゃないか!」


葉山「ぞれ゛ば…」


平塚先生からの厳しい尋問に怯える首謀者たち。

ちなみに葉山くんは、

あの端正なお顔が見事なまでにグチャグチャになり呂律が回らなくなっている。

それもそのはず。

実は昨日、

相模さんたちが行動を起こした直後、こんな事に付き合えないと一人だけ逃げたらしい。

そこへ比企谷くんを迎えに来た姉さんに問い詰められ、

この事を白状した後、彼は姉さんから鉄拳制裁を受けたそうだ。



静「雪ノ下、キミはこの悪事に直接関わってはいないかもしれないが…
それでもこの派閥のリーダーを務めていた人間だ。
もしかしたらだがキミにも何かしらの罰が与えられるのは覚悟しておいた方がいい。」


雪乃「構いません、ですが罰を受けるなら自分で選ばせて欲しいのですが。」


静「罰を選びたいとはどういう事だ?」


雪乃「それは…」


それから相模さんたちの事情聴取が行われる中で私と比企谷くんは早々に解放された。

するとそこには同じく生徒会選挙に出る一色さんとそれに城廻先輩が待ち構えていた。



めぐり「雪ノ下さん…大変な事になってしまったね…」


いろは「先輩大丈夫でしたか!?
まさか葉山先輩までこんな馬鹿げた悪事に参加していたなんて!マジで幻滅です!!」


八幡「まあ俺なら大丈夫だ。怪我もたいした事ないしな。」


雪乃「ところでこの場を借りて言わせてほしいのですけど、私は生徒会選挙を辞退します。」


めぐり「そんな…今回の事はあなたのせいじゃないのよ…!?」


雪乃「いいえ、そうではありません。
あの程度の輩の手綱を抑える事が出来なかった私に会長なんて務まらなかったはずです。
私には人を率いていく資格がない。その事がよくわかりました。
それに生徒会長を目指した理由も単に姉さんを越えたかったからだけ…
でもそれが無意味だったと今頃になって思い知りました。」


城廻先輩が私の事を少しだけ恨めしく見つめている。

でも城廻先輩には悪いけど生徒会長立候補辞退に後悔はない。

何故なら私には姉さんを越える事よりも大事なものが出来たのだから…



雪乃「次の生徒会長はそちらの一色さんにお任せしてください。」


いろは「私に譲って…いいんですか…?」


雪乃「あなたは比企谷くんに請われて選挙に挑んだのでしょう。その目的を果たしなさい。」


いろは「それではお言葉に甘えて生徒会長に就任します。」


八幡「どうやら選挙は一件落着だな。これで俺も安心してこの学校を去る事が出来る。」


雪乃「フフ、それはどうかしらね。あなたが学校を去るのはあと1年先よ。」


八幡「それってどういう意味だよ…?」


疑問を抱く比企谷くんの肩を抱えて私は一色さんたちの前から立ち去った。

後で聞いた話だけど彼女たち曰く、

この時の私の顔はまるで憑き物が落ちたかのように穏やかな顔だったらしい。



<後日>


~2年F組~


雪乃「この度、国際教養科から新しく普通科に転属した雪ノ下雪乃です。よろしく。」


八幡「なっ…!」


結衣「ゆきのんが私たちのクラスへ!どうなってんの!?」


あれから数日後、私は比企谷くんの居るクラスへ転属になった。

何故こんな事が許されたのか?

それは姉さんを経由して学校側に頼み込んだからだ。

先日の比企谷くんの失明の一件とそれに相模さんたちの凶行。

あれを世間に公表させたくなければと学校側に迫った結果、

予想以上に事がスムーズに運んだ。



結衣「でもどうして普通科に転属したの?もしかして今回の事件の罰なの!?」


雪乃「まあそんなところね、でも本当のところは彼のためよ。」


八幡「俺の…?どうしてだよ?」


雪乃「感謝しなさい。
これからは私が四六時中付きっきりで面倒を見てあげるのだから!
勉強や送り迎えも全て私に頼りなさい!!」


そう、私が自ら選んだ罰とは学校側に頼み込み彼の世話役を任せてもらう事だった。

既に相模さんたちや葉山くんは今回の悪事が発覚した事により退学処分を受けている。

もうこの学校で彼に危害を加えるような人間は現れない。

後は私たちの問題よ。



結衣「でも…さすがにトイレとかはさいちゃんたちに任せないと…」


雪乃「心配には及ばないわ。彼のシモの世話だって完璧にこなしてみせるのだから!」


八幡「何でお前そんなに意気揚々と俺のシモの世話なんかやりたがっているわけ?」


雪乃「別にあなたをトイレに連れ込んでいやらしい事をするわけではないわ。」


戸塚「雪ノ下さん…なんだか八幡にいやらしい事する気満々だね…」


川崎「足が不自由で失明して妊娠して抵抗できない比企谷をトイレに連れ込むとは…」


材木座「まさにケダモノの所業であるな!」


雪乃「何を失礼な事を言っているのかしら。私は聖人君子の行いをしているのよ。」


こうして私はF組に転属となり彼とはクラスメイトとして世話係を一任する事になった。

それから1年の月日が流れた…



<翌年>


~教会~


結衣「ゆきのん!そのスーツ姿似合っているよ!カッコいいよゆきのん!」


雪乃「ありがとう由比ヶ浜さん。
でもまさかこの私がこんな服を着るなんて思ってもいなかったわ。」


あれから1年が経過した。

今日は比企谷くんの18歳の誕生日。

この日、私は白のタキシードに身を包み教会の祭壇前に立っている。

その理由は勿論…



陽乃「お待たせ、新婦の入場よ~♪」


八幡「陽乃さん!俺…重いからこんな抱き抱えなくても!?」


陽乃「え~!いいじゃないの!
なんならこのまま可愛い新婦を抱き抱えたまま愛の逃避行しちゃってもいいのよ~♡」


雪乃「姉さん!さすがにそれは許さないわよ!」


姉さんにお姫さま抱っこされながら比企谷くんが遅れて入場してきた。

彼は純白のウエディングドレスに身を包み、

またそのお腹は出産間近の臨月であるためとても大きかった。



八幡「つーか何でこんな出産間近にいきなり結婚式挙げなきゃいけないんだよ!?」


雪乃「仕方ないでしょ、子供が生まれる前に結婚しないと世間体が悪いのだから!」


陽乃「でも両家の親に結婚の話を言ったらどっちも白目向いて卒倒してたよね~!
比企谷さんの家は息子を怪我させられておまけに妊娠させた張本人だから激怒だし~!
うちのお母さんもこの事を知ったら、
世間体がまずいから責任取ってすぐに八幡と結婚しろと事がスムーズに進んでよかったね~♪」


雪乃「なんだか姉さんの掌で踊らされている気分なのだけど…?」


私は客席を見渡した。

そこにはなんとも微妙な顔で式に出席している私の両親と比企谷くんの親御さん。

それにこの教会で一際賑やかな由比ヶ浜さんに一色さん、戸塚くん、川崎さん、

あと…ざい…何だったかしら?

それに『教え子に…しかも比企谷に先を越されたチクショー!』と嘆く恩師の平塚先生、

笑顔で喜びつつも『お兄ちゃんを捨てたら絶対殺しに行くからな!』と鋭い視線を送る小町さん、

中々愉快な面子が集まっている。



八幡「なぁ…考え直すなら今のうちだぞ…
俺は見ての通りこんなポンコツな身体だからお前にしてやれる事なんて何もないんだ…」


雪乃「よく言うわ、今まで私の事を散々助けてくれたくせに。
あなたは私のモノよ。だから誰にも渡さない。勿論あの姉さんにだって…!」


八幡「でも…俺…これからスッゲー迷惑かけるぞ…」


雪乃「私だって同じくらい迷惑かけてあげるから大丈夫よ。いい加減観念しなさい。」


そして私はベールに包まれた彼の顔を解いた。

そこには失明した彼の目が…

この素敵な結婚式も彼の目には映らない。

けど彼の代わりに私はこの光景を全て焼き付けてあげる。

そして…



雪乃「う…ん…ん…ぷはぁ…」


八幡「キス…してくれたのか…?」


雪乃「そうよ、これで私たちは夫婦の契りを交わしたわ。今日から私たちは夫婦よ。」


八幡「改めて…よろしく…あなた…」


雪乃「フフ、こちらこそ…」


こうして誓いの口づけを交わして私たちは正式な夫婦となった。

最早、姉さんに対するわだかまりなど微塵もない。

私には既に姉さんなんか比較にならない素敵な伴侶がいるのだから。

出来ればこの愛が永遠に続きますように…


Fin

これで終わりです

なんか一番学校を退学しなきゃいけない人が残ってたり
ご都合主義で由比ヶ浜が途中で何処かに消えたり
色々と雑な展開だったけど八幡にウエディングドレス着させたいためにこのssを書いたので正直細かい事はどうでもいいのです

もうおしまい

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年11月14日 (土) 13:29:27   ID: PmtvTk-0

気持ち悪い…。

2 :  SS好きの774さん   2015年11月15日 (日) 09:56:16   ID: NzR_SOja

原作の相模は、まだ許せたけど…これは…

3 :  SS好きの774さん   2015年11月17日 (火) 20:29:09   ID: BhkAMTBA

地獄に落ちろ!立候補グループ!

4 :  SS好きの774さん   2015年11月18日 (水) 10:42:41   ID: OddEmlcB

性転換ものなのかな、そこについての言及も疎かだし、そもそも超展開過ぎて雪乃叩きがしたいということ以外何も伝わってこない。

5 :  SS好きの774さん   2015年11月19日 (木) 23:40:12   ID: LEKhg8_X

とりあえず、みんなの性別だけでもいいから教えてくれ

6 :  SS好きの774さん   2015年11月20日 (金) 01:13:37   ID: GAC7itno

設定詰めたら化けそう

7 :  SS好きの774さん   2015年11月22日 (日) 23:08:11   ID: ps1mul9_

はちまんこシリーズはつまらんけど今作は面白い

8 :  SS好きの774さん   2015年11月23日 (月) 01:46:04   ID: iN-X1NQn

超期待

9 :  SS好きの774さん   2015年11月23日 (月) 02:46:16   ID: FmG80fZB

最高傑作

10 :  SS好きの774さん   2015年11月23日 (月) 10:21:36   ID: cERlp_wP

おもろい、続き早く読みたあ

11 :  SS好きの774さん   2015年11月23日 (月) 10:49:46   ID: SjkiQRqB

ゆきのんが屑すぎて影が霞んでるが、ガハマも屑やなw

12 :  SS好きの774さん   2015年11月23日 (月) 20:42:13   ID: Vibj2SpN

地獄に墜ちろ相撲と屑山とか言いたくなるほどアレな性格ですね。
続きを期待しておりますよ。

13 :  SS好きの774さん   2015年11月23日 (月) 22:56:46   ID: eKoZ1G74

もうちょいゆきのんが能動的なクズ具合じゃないとイマイチだなあ
前は「堕胎堕胎堕胎!」で責任逃れだったけど今回は「何もしなかった」の責任逃れだし

14 :  SS好きの774さん   2015年11月28日 (土) 23:20:38   ID: OPAGnXsq

こういうの好きだわ

15 :  SS好きの774さん   2015年11月29日 (日) 10:27:05   ID: bftRmX7Q

八幡って、ふたなり的な?男性だけどあれがある的な?男であってる…???

16 :  SS好きの774さん   2015年11月29日 (日) 11:11:35   ID: av_sod4E

早く続きが読みたい
期待

17 :  SS好きの774さん   2015年11月29日 (日) 11:17:04   ID: oyltgmH7

最初普通に読んでたけど途中から訳がわからなくなったわw

18 :  SS好きの774さん   2015年11月29日 (日) 19:50:04   ID: FidDyrVD

これゆきのんは、八幡に孕ませた責任を取って、ゲス民と屑山とその塵巻どもに復讐する復讐鬼ルートまだとかいいたくなりますね。

19 :  SS好きの774さん   2015年12月03日 (木) 21:27:59   ID: GqgfP4hs

きもすぎワロタ

20 :  SS好きの774さん   2015年12月04日 (金) 16:27:01   ID: gzv-Gax8

胸糞悪い

21 :  SS好きの774さん   2016年10月24日 (月) 01:47:56   ID: rTXGuCoN

八幡のふたなり設定がいるかいらないかの微妙すぎたラインだったな。出来れば八幡には一回死んで貰ってゆきのんの復讐ルートが見たかった。けど、まあ及第点ギリギリ

22 :  SS好きの774さん   2018年06月17日 (日) 00:56:13   ID: rmGf9cZ_


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