悪魔「取引をしよう。」(25)

男「取引?」

悪魔「貴様の望みを叶えてやる。」

男「望み?」

悪魔「貴様の好きな女と両想いになる事、だ。」

男「……」

男「対価は?」

悪魔「いらん。」

悪魔「我は良い悪魔だからな――」

男「……」

男「変な夢、だったな。」

男「……よし。」

男「行ってきまーす。」

女「あれ、男君?」

男「お、女さん?」

女「男君の家、ここなんだ。あっ、おはよう。」

男「夢じゃない……?」

女「?」

男「い、いや、なんでもないよ。おはよう。」

女「変なの。寝ぼけてるの?」

男「……寝ぼけてるかも。」

女「ふふっ、ほらシャキッとして!」

男「あ、あぁ。」

女「そうだ!」

女「一緒に登校しない?」

男「い、一緒に?」

女「……駄目?」

男「全然。駄目じゃないよ。」

女「よし、じゃあ行こう!」

男「あっ、ちょっと待って。踵踏んでるから。」

男「……よし、行こう。」

女「こうやって男君と普通に話すのは珍しいね。」

男「いつも委員の仕事の時しか話さないからな。」

女「そうそう。でももっと話しかけてくれても良いんだよ?」

男「いつも女さん、女子のグループにいるからさ。それはちょっと無理かな。」

女「ふふっ、そうだよね。」

女「男君も友達と仲良く話してるから話しかけられないしな。」

男「そもそも男子と女子で仲良く話してる奴なんて少ないから浮くんだよな。」

女「そうだね。」

男「よし、到着。」

女「男君の家、学校に近いね。」

男「女さんは遠いの?」

女「うーん、微妙なところかな。」

男「そっか。まぁ、良かった。」

女「?」

男「家が近いからもっと遅く家を出るんだけど。」

男「今日はいつもより早く家を出たからさ、女さんと偶然逢えて良かったな、って。」

女「そ、そう? 私で良いならいつでも一緒に登校してあげるよ……」

男「え? あ、うん……」

女「……」

男「……」

女「わ、私、先に行くね! えへへっ!」

男「あっ。」

男「……」

男「夢じゃないのか……?」

男(数学の授業……)

男(眠くなる……)

男(くそ……黒板の文字は催眠の術式か何かなのか……?)

男(もう無理……)

男(……)

女「男君男君。」

女「……男君!」

男「おわっ!」

女「授業終わったよ。」

男「あ、あぁ、ありがとう。」

女「ほら、職員室にこれ届けに行くから手伝って。」

男「うぅ、はいはい。」

女「ほら、シャキッとして!」

男「……それにしても。」

男「俺達の係活動は大した名前を掲げてるけど、雑用だよな。」

女「確かに。おとと。」

男「大丈夫?」

女「……男君のほうが軽そうでずるいなぁ。」

男「持ってみる?」

女「うん! 交換しよ!」

男「……」

女「……男君、交換しない?」

男「何が入ってるのか知らないけど結構重いよね、それ。」

女「ねぇ、交換しよー!」

男「見た目は軽そうなのにね、それ。」

女「ねー!」

男「あれー、女さん遅いなー!」

女「むっー! 男君のいじわるー!」

女「男君なんて嫌い! ふんっ!」

男「……」

女「およよ? なんで立ち止まるの?」

男「交換するんでしょ?」

女「え? あ、ありがとう。」

男「重っ。これ本当何が入ってるんだ……」

女「私にその、き、嫌われたくない?」

男「……」

男「ま、まぁ。」

女「~!」

女「わ、私、先にこれ渡して帰るから男君は重たいの頑張ってね! ふんっ!」

男「ちょ、ずるい!」

女「……」

女「えへへっ……」

男「重っ……」

男「……」

男「あの夢は本当だったのか……」

男「両想いに……」

男「……」

男「ふぅ、やっと帰れる。」

男「家に帰る前にコンビニにポテチでも買いに行こうかな、っと。」

男「ふぁみふぁみふぁみーまふぁみふぁみま、っと。」

男「……」

女「……」

男「……」

女「……恥ずかしいね?」

男「うわああああああ!」

男「な、なんで女さんがここに?」

女「プ、プリンを買いに来たんだけど、男君こそ。」

男「お、俺はポテチとジャンプを立ち読みに。」

女「今日はなんか偶然がいっぱいだね。えへへっ。」

女「……じゃあ、私は帰るね。あんまり遅い時間まで出歩いちゃ駄目だよ?」

男「あぁ、じゃあな。」

女「また明日っ!」

男(ジャンプの内容が頭に全然入らなかった。)

男(あー、駄目だ。)

男(女さん可愛いなぁ……)

男(でも、夢が本当なら……)

男「……」

男「朝、か。」

男「……よし。」

男「行ってきまー

女「おはよう!」

男「……」

男「行ってきまーす!」

女「なんで無視して言い直したの!?」

男「言わないと朝って気分がしなくてさ。」

男「おはよう。」

女「そうなんだ……」

男「……待っててくれたの?」

女「ううん。丁度男君が家から出て来たから挨拶してみた。」

男「凄い偶然だね。」

女「だね。」

男「今日も一緒に行く?」

女「勿論だよ。」

男「じゃあ、っと踵踏んでる。ちょっと待ってね。」

女「はーい。」

男「よし、行こう。」

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