八幡「……いきなり何を語り出してるんだ? あと、ハッチーってひょっとして俺の事か?」
雪乃「平塚先生から聞いたわ。ハッチーの作文の事について」
八幡「ああ……。やっぱりハッチーって俺の事か……」
雪乃「そう。人間は確かに群れる生き物よ。そして、それは私たちが弱いからね。でも、弱さを受け入れて群れるのも大事だと私は思っているの」
八幡「……俺はそうは思わないが」
雪乃「ハッチー、反対意見を述べる時は手を上げてからにして」
八幡「お、おう……。こ、こうか?」サッ
雪乃「両手を上げて」
八幡「え」
雪乃「両手よ。早くして」
八幡「お、おう……」サッ
雪乃「動くな」サッ (銃を構える)
八幡「何がしたいんだ、お前」
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雪乃「私はずっと一人で暇だったのよ。だから、私に構いなさいよ」
八幡「子供かよ」
雪乃「はい、これがあなたの銃よ。あなたの好きな本物だから気を付けてね」ポイッ
八幡「おい、ちょっ、待て! 投げて渡すな、って言うか、本物!?」
雪乃「しまったわ。思わず口が滑って。私とした事がつい本当の事を話してしまうだなんて偽物のモデルガンよ」
八幡「どっちなんだよ……」
雪乃「試しに撃ってみればわかるわ。まずはこうやって安全装置を外して」ガシャッ
八幡「おい、雪ノ下。……何で銃口を俺に向ける」
雪乃「ふふふっ。まさかこんなに簡単に罠にかかるだなんて、呆れた男ね。そう、これは姉さんの敵討ちなのよ! 覚悟しなさい!」サッ (拳銃を向ける)
八幡「……映画とか……結構好きなのか?」
雪乃「わりと好きね」コクッ
八幡「……そうか」
雪乃「ハチハチ。あなたはどう? 映画とか好きかしら?」
八幡「……別に嫌いではないな」
雪乃「そんな事はとうの昔に知っているわよ」
八幡「え」
雪乃「あなたが毎週欠かさず金曜ロードショーを見ている事なんて、私にはお見通しなの」
八幡「いや、結構まちまちだぞ」
雪乃「ハッチー、残念ね。あなたは空気を読むという事すら出来ないのかしら?」
八幡「俺もう帰っていいか?」
雪乃「ごめんなさい、まだ帰らないで。退屈なの」
八幡「……なら、残るが」
雪乃「ふふふっ。それなら二人で一足早いクリスマスパーティーと洒落こみましょうか。奴らにはこの特製クリスマスプレゼントをお見舞いしてやらないとね」ピンッ (手榴弾のピンを抜く)
八幡「……楽しいか、雪ノ下?」
雪乃「結構」コクッ
八幡「……そうか。良かったな」
ガラッ
結衣「やっはろー! 遅れてごめんねー、ヒッキー、ゆきのん!」
八幡「お、おう……」
雪乃「あら、ようやく来たのね、由比ヶ浜さん。残念だけど、あなたの席はもうないわよ」
結衣「え? あ、そういえば、椅子が一つもないし!」
八幡「本当だな……いつの間に」
雪乃「ふふっ。さあ、由比ヶ浜さん、選びなさい。床に這いつくばるか、それとも私の膝の上に座るか」ポンポン
結衣「え……?」
八幡「は……?」
雪乃「え、選びなさい……。床に這いつくばるか……私の膝の上に座……」
結衣「…………」
八幡「…………」
雪乃「……ご、ごめんなさい。私が床に這いつくばるわ。だから……」
結衣「わ、私、椅子取ってくるね、ヒッキー……」
八幡「おう……」
雪乃「ま、待って! せめて私が行くわ……! だから二人とも残念な目で見ないで……!」
結衣「ゆきのん、なんか涙目で出ていっちゃったね……」
八幡「ちょっと可哀想な事をしたな……。何でお前、膝の上に座ってやらなかったんだ……?」
結衣「え、だって、いきなりだったし……。て言うか、普通、無理じゃない? ヒッキーだったら乗れた?」
八幡「……すまん、俺が悪かった。こんな場所でいきなりは無理だ」
結衣「それにしても、最近、ゆきのん、楽しそうだよね」
八幡「空回りしてる感は半端ないけどな」
結衣「なんか心境の変化とかあったのかな。ヒッキー、心当たりとかない?」
八幡「……特には。あ、いや待てよ、そういえば……」
結衣「そういえば?」
八幡「この前、雪ノ下の家に遊びに行ったんだが、多分、その時から変わったような気がする」
結衣「!?」
結衣「ちょっとヒッキー、それ初耳だし! いつ行ったの!?」
八幡「この前はこの前だぞ。一週間ぐらい前か。そこで雪ノ下とトランプをして帰ってきた」
結衣「トランプ!?」
八幡「二人で話していたら、いつのまにか流れでな。それで延々四時間ずっとトランプを」
結衣「……本当にそれだけ?」
八幡「ああ、おかげで翌日は腰が痛かったな」
結衣「そっか……良かった。トランプなんだ」ホッ
八幡「雪ノ下も最後らへんは声が枯れてたし、とにかく凄かったぞ」
結衣「白熱したんだねー」
コンコン、ガラッ
雪乃「お待たせしたわね。椅子を持ってきたわ。さ、由比ヶ浜さん、座って」ドンッ
結衣「わ、ゆきのん、ありがとー。ふっかふっかだね」ポフッ、ポフッ
八幡「おい、雪ノ下、ちょっと待て。何かおかしい」
雪乃「え? 私にどういった粗相が?」
結衣「って、これ、ソファーじゃん!? ゆきのん!」
雪乃「え、ええ……ソファーだけど? 一番いい椅子を持って来ようと思って」
八幡「……どこから持ってきたんだ?」
雪乃「確かプレートには校長室と書いてあったわね」
結衣「って、これ、ソファーじゃん!? ゆきのーん!」
雪乃「しまったわ。私とした事が椅子とソファーを間違えるだなんて……! 一生の不覚ね……!」
八幡「とにかく、このままだと俺達が泥棒扱いされるぞ。何とかしないと」
コンコン
静「おい、奉仕部の連中。いるか?」
結衣「いきなりピンチだし!」
結衣「まずいよ、ヒッキー! どうするの!?」
八幡「わかった。ここは俺が犠牲になって時間を稼ぐ。その間に二人はソファーを何とかしてくれ」
雪乃「由比ヶ浜さん、とりあえずソファーに座るわよ」
結衣「ふかふかだし!」ポフッ、ポフッ
八幡「平塚先生、奉仕部は今、誰もいませんから速やかにお帰り下さい」
静「お前ら……。さっきから丸聞こえだというのがどうしてわからない……」
静「とにかく入るからな」ガラッ
八幡「せやっ!」ピシャンッ!!
静「ぐはあっ!! 指が!!」ゴロゴロ
八幡「おい、あまり長くはもたないぞ! 今の内にどうにかしてくれ!」
雪乃「こうなったら最終手段ね。由比ヶ浜さん、ソファーを外に投げて証拠隠滅をはかるわよ!」サッ
結衣「オッケー、ゆきのん! こっちは準備オッケーだよ!」サッ
雪乃「それじゃ行くわよ!」
結衣「せーの! ふんっ!」ブンッ!!
雪乃「ぴゅーーーーーーーーーん!!」
結衣「ゆきのーん!」
― 翌日 ―
八幡「それにしても、昨日は雪ノ下が窓の外へ飛んでいったおかげで色々とうやむやになって、どうにか誤魔化せたな」
結衣「うやむやとか、なんか語呂がいいし」
八幡「まあ、元は雪ノ下がソファーをパクってくるから悪いんだが」
結衣「うやむやとかなんか語呂がいいし」
八幡「それにしても、雪ノ下は相変わらず不死身だよな。車に轢かれただけで入院する俺とは大違いだ」
結衣「うやむやとかなんか語呂がいいし」
八幡「人の話を聞けよ」
結衣「それはこっちのセリフだよ、ヒッキー! さっきから無視ばっかして!」プンスコ
八幡「お、おう……? わ、悪かった」
ガラッ
八幡「うーす」
結衣「やっはろー、ゆきのん!」
雪乃「あら、こんにちは。はちぴょんにユイユイ。今、お茶でも入れるわね」
八幡「はちぴょんは流石にやめてくれ。照れるだろ」
結衣「私はユイユイとか気に入ったよ、ゆきのん!」
雪乃「気に入ってもらえて嬉しいわ。それに比べてハッチンときたら」
八幡「ハッチンもかなりきついな……」
雪乃「なら、あなたはどんな呼び方が望みだと言うの? 呼び方次第では叶えてあげるわ」
八幡「普通に、八幡で頼む」
雪乃「わかったわ。ダーリンね」
結衣「え」
結衣「ね、ねぇ、ヒッキー、ゆきのん。八幡にダーリンって呼び方おかしくない?」
八幡「そうか?」
雪乃「そうは思わないけれど……」
結衣「だ、だって、二人とも付き合ってもないのに、そんな呼び方とかやっぱり変だよ」
八幡「なら、由比ヶ浜はどんな呼び方だったらおかしくないと思うんだ?」
結衣「どんなって……無理に変えなくても、いつもの呼び方でいいと思うし」
雪乃「つまり、ダーリンね」
八幡「つまり、ユキユキだな」
結衣「え」
雪乃「ところでダーリン、明日の休み、私はとても暇をもて余しているのよ」
八幡「なら、明日は映画でも見に行くか。昨日、少し話をしてたしな」
雪乃「そうね。それはとても楽しそうね」
結衣「ちょ、ちょっと待つし!」
雪乃「あら、由比ヶ浜さん、髪にポテトチップスのコンソメ味がついてるわよ」ヒョイ
結衣「え?」
八幡「おかしい。由比ヶ浜はコンソメ味は絶対に食べないのに……」
結衣「ふ、普通に食べるし! ていうか、今はそんな話じゃなくて!」
雪乃「あら、由比ヶ浜さん、この黒い不気味なノートは何かしら? 人の名前が沢山書いてあるけれど」パラパラ
八幡「しかも隅にパラパラ漫画が書いてあるぞ」
結衣「だから、私、そんなノートなんか持ってないし!」
雪乃「由比ヶ浜さん、このノート。何枚か切り取られた跡があるんだけど、これは一体どういう事かしら?」
八幡「白状するなら今の内だぞ、由比ヶ浜」
結衣「だから、違うってば! ていうか、二人とも誤魔化すなし! さっきの映画って何!?」
雪乃「明日、ダーリンと映画にでも行こうかという話よ。良かったらユイユイも一緒にどうかしら?」
結衣「え、わ、私も……!」
八幡「ガハガハも来たらいいと思うぞ。来るか?」
結衣「ちょ、ガハガハとかやめるし、ヒッキー!」
雪乃「ハマハマの方がいいそうよ、ダーリン」
八幡「そうか。やはりガハマンの方がいいか」
結衣「もうメチャクチャだし!」
雪乃「それじゃあ、来週の日曜日は三人でダブルデートという事になるわね」
結衣「デート!? しかもダブル!?」
八幡「俺と雪ノ下、雪ノ下と由比ヶ浜でダブルだな」
結衣「組み合わせ、おかしいし!」
雪乃「両手にマシンガンで羨ましいでしょう、ダーリン?」
八幡「持ちにくそうな上、間違いなく撃ちにくいな」
結衣「もう何の話だかわかんないし!」
結衣「と、とにかく、ヒッキー。来週の日曜日は三人で映画なんだね」
八幡「ああ、遅れて来るなよ。由比ヶ浜」
結衣「わかってるし!」
雪乃「あと、待ち合わせはいつものところだから」
結衣「いつものとこね!」
八幡「後は何を見るかだな。今週は雪ノ下の好きそうなB級映画が目白押しだし」
雪乃「悩むところね」
結衣「って、いつものとこって、どこだし! ヒッキー! ゆきのーん!」
八幡「ああ、そういえば由比ヶ浜は初めてだったな。駅前のモールだ。そこで待ち合わせだから」
雪乃「ごめんなさい、言うのをすっかり忘れていたわ」
結衣「その前に、いつものでわかるってどういう事!? もしかして、二人で何回も映画に行ってるとか!?」
八幡「そうでもないぞ。映画は初めてだよな?」
雪乃「そうね、映画は初めてね」
結衣「そ、そっか……初めてなんだ」ホッ
八幡「ボーリングもこの前が初めてだったしな」
結衣「ヒッキー、ボーリングの話はストーップ!」
雪乃「今度はスキーとかも行ってみたいわね、ダーリン」
八幡「ディスティニーランドはもう飽きたしな」
結衣「一回で飽きるとか早過ぎない、ヒッキー?」
雪乃「さて、話もまとまった事だし、それなら悪いけど今日はもう先に帰らせてもらうわね」
結衣「あれ? なんかやけに早くない、ゆきのん?」
雪乃「ごめんなさい、元々、顔を見せるだけのつもりだったのよ」
八幡「何か用でもあるのか?」
雪乃「ええ。今日は夜に姉さんが家に来る予定なのよ。だから、今からその準備をしておかないといけなくて」
八幡「そうか。陽乃姉さんが来るなら仕方がないな」
雪乃「ええ、爆弾七個で足りるか心配でね」
結衣「ちょ、ちょっと待つし!」
雪乃「ごめんなさい、ユイユイ。名残惜しいのはわかるけど、私はもう行かなくてはいけないの」
八幡「ガハマン。淋しいのはわかるが、雪乃がああ言ってる事だし、少し我慢しようぜ」
結衣「ちがっ! ガハマンじゃ、え、雪乃って、ちょっ! ヒッキー!?」
雪乃「それじゃあね、ユイユイ。アディダス」
八幡「グッドドラッグ」
結衣「ちょっ、待っ! ツッコミが追い付かないし! ていうか、ヒッキーまで待ってよ、二人とも!」
― そして翌日 ―
結衣「時間、聞き忘れたし……」ポツーン
完
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