提督「脆性破壊」 (560)



終戦後な設定
イチャイチャほのぼの日常メイン



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不知火「なぜか実感がわかないわね。もう鎮守府も離れたというのに」

提督「わかる。なんかまだ落ち着かないよな」

不知火「……でも、よく考えてみればあまり状況が変わってないのかもしれません」

提督「そうかな……」

不知火「ええ、だって──────」

不知火「だって、不知火はずっと司令の傍に居ましたから。もちろん今もですけど」

提督「あー、そういえばそうか。なるほど、そう考えればある意味で新鮮味はないかも」

不知火「それにこれもあります」

提督「これ?…………あぁ、はは……。なんか改めて見ると恥ずかしいな」

不知火「司令がくれたんですよ?」

提督「あくまで『カッコカリ』だからな?」

不知火「そうね……。でも、ここまで来るともうカッコカリもカッコガチも関係ないのでは?」

提督「『ガチ』とか使うのか」

不知火「漣から」

提督「あいつ……。まあいいや」



提督「それにしても布団に大の字で転がるとか何年ぶりだ……」

不知火「3年と8ヶ月13日ぶりです」

提督「その数字はどっから出てきた」

不知火「適当」

提督「やけにリアリティのある数字」

不知火「やりました」

提督「…………無駄に似てるのがなんか悔しい」




不知火「あ、そういえば司令」

提督「…………こう、戦いが終わってるのにその呼び方はあれだな」

不知火「…………気に障りますか?」

提督「いや、それでいい。謎の安心感がある」

不知火「あらそう、良かった」

提督「んで、なんだっけ?」

不知火「そうでした。神通さんたちはどこへ?」

提督「軽く買い物に行ってくれてる」

不知火「暁と夕立と?」

提督「そうそう、いつもの面子」

延性破壊の人か



不知火「長門さんは?」

提督「さすがにそこまでは……。でもこの時間はいつも外出してるよね」

不知火「ええ、それです。何をしているのかしら」

提督「さあねー。リア充してるんじゃないかな」

不知火「長門さんが?……くっ、まさか」

提督「なに地味に笑ってるんだよ、長門も相当な美人じゃないか」

不知火「あ、いえ……。そういうことには興味なさそうに見えるので」

提督「わからないぞ?バリバリ艦娘してたときはそんな暇なかっただろうから」

不知火「そういうものでしょうか」

提督「だと思うな、よくわからんけど」



不知火「では長門さんが外出してる間は、あの三人は誰が?」

提督「漣以外に心配要素があるか?」

不知火「…………思い当たりませんね」

提督「Верный……響はしっかりしてるし」

不知火「時雨も心配なさそうですね。たまにあり得ないようなことをやらかしますが」

提督「その観点だと響も冷静っぽく突拍子もないこと仕出かすことがある」

不知火「漣はデフォルトでぶっ飛んでます。でも意外と根はしっかりしてるんですよね」

提督「もしかするとその三人で一番まともなのって漣……?」

不知火「かもです」

提督「やべぇ、不安になってきた……」

不知火「誰かに頼んでみては?」

提督「そうだなぁ……。あとで那智あたりにでも持ちかけてみるか」

不知火「那智さんなら大丈夫そうですね」

提督「飲まなけりゃな、うん」



夕立「ただいまっぽーい」ガチャ

暁「あれ、司令官と不知火は?」

提督「………………あえて静かにしてようぜ」

不知火「意地悪…………。乗った」

神通「私室にいませんか?」

暁「んー、形跡はあるけど……」

神通「じゃあきっと──────」



神通「てーとくっ、ここですよね?」

提督「……敵わねぇ」

神通「ふふ、ただいま戻りました」

提督「おかえり。報告する癖は艦娘時代のが抜けきってないな?」

神通「悪いことじゃないですから。それに、一応みんな予備役に編入されています」

提督「そういえばそうか」

神通「提督もですよ?」

提督「一応だし、一応」



夕立「不知火ちゃん、提督さんとゴロゴロっぽい?」

不知火「あまりにも暇だったのでつい」

夕立「あたしも暇だから混ざるよー」ギュッ

不知火「…………暑苦しい」

提督「長門たちのとこ見てきたりした?」

暁「少し遊びにね。響と時雨がなんかお菓子作ってたわ」

提督「なんだそれめちゃくちゃ行きたいんだが」

神通「できたら持ってくるそうです」

提督「ありがたい……。漣は?」

暁「味見職人だって」

提督「つまみ食いの間違いだろ……。気づいたらぜんぶ消えてそう」

夕立「あとね、長門さんがすっごく優しい目で見つめてたっぽい」

提督「あれ、今日はいるんだ。いつもは出かけたりしてるのに」



神通「それと、明日あたり那智さんが来るみたいです」

提督「お、ちょうど良かった」

神通「何かご用事が?」

提督「少しね。那智だけ?」

神通「はい、今のところは」

提督「了解。ありがとう」

神通「いえ、では夕飯の準備をしてきますね」

提督「ああ、今日は神通か。楽しみにしてるよ」

神通「はいっ♪」

>>5

あのスレを見ていてくれた人がいてありがたいです

過去作は

艦娘「時報担当」
伊401「大切な予定?」
提督「十人十色」
提督「放置してみる」艦娘「放置された」
不知火「延性破壊」
神通「ランダウンプレー」

となります



今回のメインはこの四人。他にも色々と出てきます
投下は書き溜め次第なので毎日はできないと思いますが、よろしければぜひ

それでは失礼します

>>14
タイトルが似てはいますが、直接的には繋がりはないはずです。
ただやっぱりキャラは引き継ぎで、リクエスト漏れの艦娘、雑談で出てきたシチュエーションなども詰め込む予定なので、皆無ではないと思います。

以下投下



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那智「貴様とこうして語らうのも久々だな」

提督「語らうって程のことはしてないぞ、たぶん」

那智「まあいいじゃないか。酒があれば文句なしだったが」

提督「そう言うと思って買ってないんだよ」

那智「どういう了見だ?」

提督「お前に付き合うと本当に潰れるまで飲まされるからな……」

那智「む……、楽しみにしていたのに残念だ」

提督「少しはその本音を隠そうとしてくれよ……」

那智「ふっ、まあ今日のところはいいさ」



那智「で、他の艦娘……いや、もう退役しているか」

提督「予備役らしいぞ。俺も、お前も、他のみんなもな」

那智「そうなのか?いつの間に……」

提督「うん、俺も昨日思い出した」


那智「それで、どこに行っている?」

提督「普通に考えろ、平日の昼間だ」

那智「ふむ、貴様も仕事に行かねばなるまいな?」

提督「俺はいいの!もう仕事しまくってたくさんもらってるから!」

那智「提督とは割のいい仕事だな」

提督「常に死と隣り合わせだし」

那智「ほう?それを私たちの前で言うか?」

提督「……ごめんなさい」

那智「冗談だ。貴様がいたから生き残れたようなものさ、感謝しているぞ」



提督「神通たちは学校とやらだよ」

那智「ああ、そうか。軍が艦娘用に作ったと噂の」

提督「そうそう、無駄に過保護なやつ。駆逐艦の子たちはそこ、週に何回かしか行かなくていいらしいけど」

那智「ああ、艦娘はどうしてかそれなりに教養があるからな」

提督「行きたい子は毎日のように行ってるらしい」

那智「学ぼうとする姿勢はいいじゃないか。神通は?」

提督「JK」

那智「……あのルックスなら引っ張りだこだな」

提督「いや、それが女子校へ」

那智「自ら青春を投げ捨てていくのか……」

提督「そういうのはもう十分に満足してるんだとさー」

那智「…………貴様、まさしく両手に花だな。いや、両手では足りないか」


那智「正直どうなんだ?その、心境とか」

提督「……正直言ってとっても幸せですね」

那智「本当に正直に……」




提督「那智もこっち来ない?」

那智「ばっ……馬鹿者!私だって大学があるんだ」

提督「お前こそ引っ張りだこだろうなー、那智だもんなー」

那智「……殴るぞ貴様」

提督「いや、褒めてるつもりだぞ?」

那智「虚しくなる」



提督「…………え、まさか」

那智「…………酒癖が過ぎたかな。ま、私は気にしていない」


提督「今さっき虚しいって」

那智「一人暮らしが、だ!」



那智「……………………もし」


那智「もし私がここで……、いや、ここの近くで過ごしたいと言ったら貴様はなんと言う?」

提督「本気か?」

那智「も、もし!」

提督「んー、そうだなぁ。俺はいいと思うし大歓迎かな」

那智「……他の子はどう感じると思う?」

提督「大歓迎じゃないか?」

那智「そうか…………。そうなのか、ふふっ」


那智「ならばそれも悪くない、かもしれないな」

提督「…………………………」



那智「む……もうこんな時刻か。失礼、このあと講義が入っている」

提督「あ、ごめんな、長居させちゃって」

那智「なに、心配いらないさ。楽しかったぞ」


提督「そういえばひとつお願いがあるんだけど」

那智「なんだ?」

提督「長門が時雨たちの面倒を見るってことでこの近くに住んでるのは知ってるっけ?」

那智「もちろん。響……もといВерный、時雨、漣だったな」

提督「そうそう。それで、長門がよく昼間に外出してるわけよ。昨日はいたんだけど」

那智「…………ああ」

提督「あの子たち艦娘用の例のとこ行く予定なんだけど、希望者多数で順番待ちでさ」

那智「……つまり、私にその面倒を見ていてほしいと?」

提督「さすが、付き合い長いだけある。暇な時でいいんだ、見に来てくれる程度で。俺も毎日行けるってわけじゃないし」

那智「なるほど、お安い御用だ。長門には私から断りを入れておこう」

提督「お、気が利くねー」

那智「なに、気にするな。貴様の頼みなのだから」


那智「…………こっちに来れる理由にもなる」

提督「……………………」




那智「ではそろそろ失礼する」

提督「遠いところご苦労様です」

那智「からかうな。隣町だぞ?」


那智「……また来るからな」

提督「ああ、楽しみにしてるぞ。今度は休日にでも」

那智「そうだな、調整しておくさ」



提督「──────那智」

那智「なんだ?」

提督「いつでも来てくれな、今度は酒も用意してるから」

那智「………………ったく、貴様というやつは……」

那智「そういうところ、なんだ……その…………」

那智「嫌いじゃない……いや……」



那智「し、失礼するっ!」

提督「あ…………。なんだあいつ、足速いな」


提督「さーてと、これは意外に早く来るかな。今日中に買い溜めておくか」

投下終了

脆性なので、今回はわりと早い段階からイチャイチャする予定。糖度リミッターはありません
艦娘の趣味なども想像で盛り込んでしまうかもしれませんが、そのあたりも楽しんでいただければ幸いです


それでは失礼します



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時雨「漣、提督にちゃんと謝るんだよ?本当は一昨日、作った日に持って行けたはずなんだから」

漣「ご主人様は話せばわかるって!ね、響?」

ヴェル「そうだと思うけど……。つまみ食いした事実は変わらないんじゃないかな」

時雨「つまみ食いで全部食べちゃうしね」

漣「うぐ……、そ、それだけ美味しかったってことでしょっ!」

時雨「そうやって都合の良いほうに解釈できる性格が、僕は羨ましいよ……」

ヴェル「ん、着いたよ」

漣「まあご近所だし?」



ヴェル「…………」ピンポーン

時雨「……留守かな」


神通「はーい、って、あら?三人揃ってどうしたの?」

時雨「神通さんこんにちは。提督はいるかな?」

神通「提督にご用ですか?提督は今出掛けていますから、上がって待ってくれますか?」

ヴェル「あ、いや、いいんだ。その、大した用じゃない」

時雨「うん、あとで出直すよ」

神通「ふふっ、じゃあ私がみんなとゆっくりしたいからぜひ、と言ったら?」

時雨「そ、それは……」

神通「お菓子、ご用意いたしますね」

漣「お邪魔しまーす!!」

時雨「あ、漣!」



ヴェル「…………私たちが持ってきたのに、逆みたいに思えてきたよ……」



──────
────
──


神通「それで、わざわざ持ってきてくれたの?」

時雨「この前夕立たちと来てくれた時に約束したから。遅くなってごめんね?」

神通「そんな、時雨ちゃんが気にしなくても……」

ヴェル「気にするべきは誰かな?」

漣「…………ケーキうまー!」

時雨「…………漣、誤魔化したつもりかもしれないけど、それはどう見てもお饅頭だよ」

神通「あ、あはは……」



ヴェル「!」

ヴェル「帰ってきた」


提督「ただいまー」

神通「どうしてわかったの……?」

ヴェル「さあ、予感かな。長い付き合いだしね」

神通「そ、そこまでわかるものなのでしょうか……」


提督「あれ、三人とも来てたのか」

漣「おっかえりなさいませーご主人様っ♪」

提督「っと……。お前は着任したときからまったく変わってないな」

漣「えへへー、そうですかね。うーん、間違いない」


ヴェル「……食べ物なのか司令官なのか、目がないのはどっちかにしてほしいものだ」

時雨「どっちもだから漣なんだよ、きっと」



時雨「提督、おかえりなさい」

提督「おう、ただいま。何か用か?待たせたな」

時雨「ううん、待たせちゃったのは僕たちだから……。この前作ってたクッキー、持ってきたんだ」

提督「ああ、お菓子ってクッキーだったのか。ありがとう、いただくよ」

時雨「うん。ごめんね、本当は一昨日持ってくるはずだったけど……」

ヴェル「つまみ食いの天才が才能を発揮しすぎたんだ」

漣「あ、味見職人!人聞きの悪いこと言わない!」


提督「…………うん、だいたい掴めた」



提督「それで、味見のサンプルはいくつになった?」

漣「合計で40個くらい」

提督「よしわかった、お前の分は無しだ」

漣「はにゃ!?」

ヴェル「……自業自得」

時雨「いいさ、今日はうんとたくさん作ってきたんだ。漣が食べても大丈夫なようにね」

漣「さすが時雨様!ありがたく頂戴いたしますねー」




時雨「今日の晩ご飯は抜きだけど」ニコッ

漣「」

提督「……時雨、怖い」



時雨「ふふ、冗談だよ。今回は見逃してあげる」

時雨「でも、晩ご飯までつまみ食いしてたら本当に怒るからね?」

漣「肝に銘じます……」

提督「時雨は怒らせたら絶対にやばいタイプだからなぁ……間違えるなよ?」

時雨「そ、そんなことないよ。僕がそんなに怒ったことってある?」

提督「…………ないな。ないけど間違いなく怖い」


提督「むしろ時雨ってどんなときに怒るんだ?」

時雨「どうかな……。大事な人を傷つけられたとき、とか」

提督「あー、西村艦隊で出撃してほとんど中破したときとかすごかったんだってな」

時雨「あの敵は僕が片付けたよ。魚雷30本は使ったかな」

提督「フフフ、怖い。てかどんだけ持ってったんだお前は……」






提督「あ、漣。いくら許されたからってあんま食いすぎるとまた──────」

漣「」ガタガタ









時雨「少し怖がらせすぎっちゃったかな。調整してだいぶ控えめに言ったんだけど……」

ヴェル「…………怖い。色々と怖いよ……」


投下終了です

提督LOVEな漣ちゃんという可能性を全力で推していきたい
時雨ちゃんは艦娘の中でも怒らせたらただじゃ済まなそうですよね


失礼します



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提督「………………んー」ピッ

時雨「提督、さっきから何をしているの?」

提督「見ての通りチャンネルを意味もなく回してる」

時雨「暇だから?」

提督「まったくだ」

時雨「…………」




時雨「隣、いいかな?」

提督「ん、おう。一人で座るには広すぎたな」

時雨「失礼します」

提督「…………」


時雨「どうしたの?」

提督「いや、やけに他人行儀だなーと」



時雨「リモコンいい?」

提督「いいけど、この時間本当になにも面白いのないぞ?」

時雨「うん。でも提督も、わけもなく回してたんでしょ?」

提督「まあそうだけどさ……」

時雨「もしかしたら番組が変わってるかもしれないし」ピッ


『次のニュースです。プレミア12────』


時雨「……」ピッ

『このセットでお値段なんと19800円────』


時雨『…………』ピピピッ

『見てくださいこの大きな蟹!』



時雨「何もないね……」

提督「昼前ってなかなか面白いのないよね」



時雨「ふふっ、でもこういう夫婦っていそうじゃない?」

提督「いる……のかなぁ、そういうのはあんまり見ないしサンプルが少ないから」

時雨「あ、そうだね……」

提督「時雨がいそうって言うならたぶんいるんだろ、たぶん」

時雨「……いなくても作ればいいんだよ」

提督「…………?」



提督「なんか喉乾いたな……。この部屋乾燥してないか?」

時雨「うーん……そうだね。僕もちょっと乾いてきちゃった」

提督「待ってて。なんか持ってくるから」

時雨「あ、いいよ。僕が行くから。ここで待っててよ」


時雨「って言うと遠慮してくれるんだよね?」

提督「…………無駄な抵抗はしないことにする」

時雨「うん。余計に喉乾くからね。待っててね?」



時雨「てい……………………、あ!」

提督「あ?」


時雨「…………ふぅぅ」




時雨「──────あなたは、何か飲みたいものあるかな?」

提督「そうだなー、熱々のコーヒーとか……って、ん?」


提督「時雨、いまなんと?」

時雨「…………///」


提督「…………なるほど」



時雨「コ、コーヒーだよね。うん、わかったよ。すぐに用意するから」

提督「おっと、ちょっと待ってくれ」

時雨「な、なに、かな?」


提督「注文変更で温かいココア。お願いできる?」

時雨「………………ありがとう」

提督「お礼を言うべきはこっち。自分のを忘れるなよ?」

時雨「大丈夫、僕もココアだから」




時雨「──────あなたと同じの、ね」

提督「っ…………」











提督「勢いで乗っちゃったけど言われるほうもだいぶ恥ずかしいなこれ……」

時雨「そう?でももう少しだけ付き合ってもらおうかな♪」




寒いとどういうわけか甘めのを書いてしまいますね


失礼します



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ヴェル「司令官、いるかい?」

提督「響か?いるよ」

ヴェル「入っても大丈夫かな?」

提督「どうぞどうぞ」

ヴェル「失礼するよ」


ヴェル「司令官、漣と時雨なんだけど…………」

提督「時雨?時雨ならさっき戻ったけど」

ヴェル「え?じゃあ入れ違いだったんだね……。気づかなかった」



提督「それで、時雨と漣がなんだって?」

ヴェル「ああ、うん。時雨のほうは朝からいなくて探してただけ。ここにずっと居たんだね?」

提督「まあそうだな、色々と……。漣は?」

ヴェル「これも大したことじゃないんだけど、二度寝しちゃったんだ、漣」

提督「二度寝って、そんな最近起きたわけ?」

ヴェル「いや……、昼寝のほうがいいかもしれない」

提督「もうほとんど夕方だけどな」

ヴェル「夜まで起きないやつだね」



提督「んで、なぜここに?」

ヴェル「漣とテレビ見たりトランプしてたんだ。でも暇になったから」

提督「ドストレートに……」

ヴェル「司令官もだよね」

提督「…………お見通しってことか」

ヴェル「ふふ……。わかるよ、そのくらい」


ヴェル「少し退屈しのぎでここにいてもいいかい?」

提督「いいよ。なんもないけど」

ヴェル「Спасибо。ありがとう」



─────
────
──


提督「……………………」

ヴェル「──────♪」



提督「なぁ」

ヴェル「なに、司令官?」

提督「なんでそんな楽しそうなんだ?」

ヴェル「楽しそう……?そうかな、そんな顔してるかい?」

提督「してる」


ヴェル「そうか……。楽しいというか、穏やかな気分ではあるかな」

提督「あー、あるよなそういうの。原因不明だけど」

ヴェル「あるね。でもそれとは違う。私のは原因が明らかなんだ」



提督「へぇ、それまたどんな?」

ヴェル「さあ……。どんなだろうね」

提督「???」


提督「いまさっき原因が明らかって言っただろ?」

ヴェル「言った」

提督「うん、じゃあその原因とやらは?」

ヴェル「ふふっ、さあね」




提督「…………遊んでる?」

ヴェル「…………どうかな」



提督「響に遊ばれるとは……。珍しいこともあるもんだ」

ヴェル「ちょっとやってみたかったんだ。私に遊ばれるのは嫌だったかな……?」

提督「そんなことはない。響の新たな可能性を見出した気がする」

ヴェル「可能性って?」

提督「こっちの話。気にしない気にしない」

ヴェル「……まあいいか」







ヴェル「さっきの原因、そんなに知りたい?」

提督「いや、話したくなけりゃいいよ。響がご機嫌っていう事実は変わらないし」

ヴェル「そうか。私もそっちのほうが嬉しいかな」


提督「そんなに話したくない理由だった……?」

ヴェル「あ、違うんだ。ただ少し…………」

提督「………………少し?」


ヴェル「……なんでもない」



ヴェル「司令官、少し疲れてない?」

提督「ここまで休んでて疲れたとか罰当たりそうだな。なんで?」

ヴェル「少しね、思い出したんだ。司令官が疲れたっていうときのことを」

提督「疲れたって…………、あぁ……あれか」


ヴェル「私からの提案だったけど、受けてくれて嬉しかった」

提督「膝枕してもらえると聞いて断るかっての」

ヴェル「あれ以来は恒例になった気がする」

提督「そうだなぁ……。他の娘にバレてないのが奇跡だ」

ヴェル「わからないよ。ドアの隙間から……とか」

提督「怖いから地味にリアルなとこ突かないでくれよ……」



ヴェル「…………司令官、たまには逆もいいんじゃないかな」

提督「逆?」

ヴェル「つまりその……私がされるほうに、というか……」

提督「されるって、何を?」

ヴェル「……恥ずかしいからあんまり遊ばないでくれると嬉しいな」ジトー

提督「わかったわかった、でもいいものじゃないと思うぞ?」

ヴェル「いいよ。司令官はただ座っててくれれば、あとは勝手にするから」



──
────
──────



提督「本当にそんなところがいいのか?」

ヴェル「司令官は膝を貸してさえくれればいいんだ。暖かいな」

提督「てかこれ意外とくすぐったいのな……」

ヴェル「あ、ごめん。極力動かないようにするから」



提督「………………」

ヴェル「………………」



提督「仰向けのまま動かないと目が合って落ち着かないんだが」

ヴェル「私はこれがいい。司令官は目を逸らしてくれても構わないさ」

提督「くそぅ、今までのもあって拒否できない……」

ヴェル「…………♪」






ヴェル「司令官の近くに居ると落ち着くな」




寒いとどうしてか甘さが欲しくなりますよね
というわけでこれから寒くなるので、徐々にですが糖分を増やしていきます。まずは微糖から


それと雑談などは構いません。むしろそこからネタを拾ってくることすらあるかもしれないです


失礼します



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時雨「ごめんね提督、漣が……」

提督「慣れてるから。あの子無理に起こすと機嫌悪くなるし」

ヴェル「やっぱり司令官が一番よく知ってるね」

提督「初期艦だからな。一番付き合いも長い」

時雨「…………それなのによく僕たちを手放せたね?」

提督「うぐ……。上からの通達は断れないんだ……すまなかった」

時雨「ふふ、いいよ。いまこうして居られるんだから」


時雨「もし起きたら連絡してね。迎えに来るから」

提督「ああ、そんな深夜とかじゃなけりゃね」

ヴェル「じゃあ私たちは失礼するよ。司令官、いろいろありがとう」

時雨「久々で楽しかったよ。またそのうち」

提督「ん、そのうち」


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提督「漣はー……まあ寝てるよな」

提督「とりあえずでソファに寝かせちゃったけど、さすがに寒いし窮屈か」

提督「動かすのは億劫だけど、布団くらいはかけてあげるかね」



………………
…………
……






提督「これで少しは寒くないだろ」


漣「──────ありがとうございます、ご主人様っ」

提督「ん、どういたしまし……て……?」



提督「なんだ、起きてたのか」

漣「結構前から起きてましたよー、布団持ってくるあたりから」

提督「それわりと最近」



提督「いいや。とりあえずこの時間に起きたなら時雨に────」

漣「あーあーあー!だめです!」

提督「えっ、帰らないのか?」

漣「今日はここがいいんです。ダメ……?」


提督「…………ダメじゃないけど」

漣「きたこれ!えへへっ♪」



……
…………
………………



提督「それで、もう寝るのかよ」

漣「今日はなーんか眠いのです。早いですかね?」

提督「まだ21時回ったあたり……ってそんな異常な時間でもないな」


漣「ご主人様?」

提督「ん」

漣「あの、ですね……久しぶりに、その……いいですか?」

提督「久しぶりに…………ああ、あれか。いいよ」

漣「失礼しますっ!」



提督「お前はほんと後ろから抱きつくのが好きだよな。立ってても座ってても、挙句はこんな感じで寝てる時だって」

漣「へへーん、落ち着くっていうか」

提督「そういうもんなのかな」

漣「ご主人様形の抱き枕的な?」

提督「形、というかもう本人だが」



提督「これだと寝返り打てないし、適当なところで解放してくれよ?」

漣「むしろ寝返り打たせないのが主目的です」

提督「なんだ、つまり嫌がらせか?」

漣「ち、違いますってば!そ、その…………」

提督「その?」

漣「………………んー」

提督「ん……、少し締め方が強い。ちょい苦しい」

漣「知ってますー」



提督「そっち向けないのがもどかしいなこれ」

漣「……………………向かれると恥ずかしくてできないですし」

提督「え?声籠ってよく聞こえないからもう一回」

漣「知ってますよーだ!」

提督「うわ、そこまで大声じゃなくてもいいから……。というか背中に顔埋めるな、喋られるとくすぐったい」

漣「この漣に喋るなと?」

提督「いや、離してくれればいいんだよ」

漣「じゃあ喋らないからこうしてます」

提督「あのなぁ……」



漣「…………」


漣(ご主人様の匂い久しぶり……)

提督「漣?寝たかー?」


漣(背中、安心する……♪)

提督「寝たならそのうち離してくれるかな」



漣「────────今夜は朝まで離しませんよ」


提督「ん、起きてたか。なに?」

漣「寝てますよ。ぐがー!ぐがー!」

提督「こいつ……。はぁ、早く寝ろよ?」

漣「気が向いたらそうしますよー」








漣「…………向かないけどね」




投下終了
本格的な砂糖回はメインの神通さんや不知火ちゃんのために温存するので、それまでは微糖やほのぼの日常でお送りします。

それではこのあたりで



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提督「随分と朝早くから迎えに来るんだな。まだ七時過ぎだけど」

長門「提督は起きるのが早いからな。起きていたんだろう?」

提督「まあ……。でも昼頃でも良かったんじゃないか?」

長門「……昼はシフトがな」

提督「シフト……?昼間いないのはそういうことだったのか」

長門「ふむ……、なぜか根拠のない噂も流れているが」

提督「いや、言えば済む話でしょ……」

長門「言うと来る奴がいるだろう?からかいに」

提督「あー……いそう」



長門「まあその話はいいとして」

提督「漣だな」

長門「そうだ。起きているのか?」

提督「寝てるよ。昨日は随分と夜更かししたみたいで」

長門「すまない、いつも注意はしているのだが……」

提督「いや、ははは……。変わってなくて安心した」



提督「ここじゃ寒いし、あがるか?」

長門「心配無用。この長門、この程度で風邪は引かんぞ」

提督「ほう」

長門「そもそも私たち艦娘というものは────…………っ!」




長門「…………ックシッ」

提督「えっ、かわいい」



長門「なっ……!?か、からかうな!」

提督「あ、ごめん普通に素だった。それで艦娘ってのは?」

長門「そうだ……、艦娘というものは寒い冬ですら海上で駆け巡るゆえ────」



長門「ックシュン!」

提督「寒いんじゃねーか」


長門「……ゴミが入っただけだ」

提督「強がるなって、少し中に入って待ってて」

長門「…………すまない」



───

───


提督「ほら、これ」

長門「なんだ?」

提督「マフラー。あげるけど使う?」

長門「誰のものだ?」

提督「ごめん俺のしかない」

長門「…………ほう」

提督「まあ使わないよな」

長門「いや……、ありがたく頂くとしよう」

提督「え?いいのか?」

長門「……勘違いしないでもらいたい。急に寒くなるからな。早速使わせてもらおうか」




漣「ふみゃ…………ん、ご主人様……と長門さん?」

提督「ん、起きたかおはよう」

長門「おはよう漣。眠れたか?」

漣「んー、まあ、たぶん……」


長門「あまり寝ていないんだそうだな?」

漣「えへへ……、いい抱き枕があったのです。でも消えちゃって起きたんですよね」

提督「お前は……」



長門「提督、そろそろ失礼するぞ」

提督「あ、うん。わざわざごめんな」

長門「なぜ謝る、世話になったのはこっちだが?」

提督「普通に起きて飯でも食ったらそっちに送ろうと思ってたから」

長門「ああ、まあ……。それは私が好きで迎えに来たということで気にしなくていい」



長門「風が冷たいな…………」



───

───



漣「うぅぅ、寒いですね長門さん……」

長門「ああ、寒い。朝だからな」

漣「なんでこんな早く迎えに来ちゃったんですか……もっと布団で包まってたいのに……」

長門「すまない。用事は早めに片付けるのが私の基本だ」

漣「いや、いいんですけど……。というか長門さん寒くなさそうな声してるんですけどどういうことなんですか……」

長門「そうか?風が冷たくて寒いが」


漣「……………………あれ、マフラーしてるんですね」

長門「む……?ああそうだ。せっかく寒いんだから使わないとな」

漣「わざわざ持ってきたんです?」

長門「いや」

漣「んー、借りてるとか!」

長門「違う違う。今は私のものだ」



漣「えっと……」

長門「ふふ……。わからないか、まあ無理もない」

長門「これはな、『抱き枕』がさっき私に譲ってくれたんだ」

漣「抱き枕…………ってぇ!?」

漣「漣も欲しかったですー!長門さん色々ずるいですー!」ポカポカ

長門「ははは、そうして動けば少しは暖まるだろう?」

漣「うぅ……じゃあ動かないですっ」

長門「ほう?いいのか?寒いだけだと思うが」




漣「…………あーもうっ!」ポカポカ

長門「ははは、いくら殴ってもこれはやらぬぞ?」






長門「これは今日から宝物だ」




投下終了
微糖ってどれくらいですかわかりません(錯乱)

次あたりからしばらくはほのぼの日常に入ります。もちろん糖分も時々補充します
艦娘の趣味など完全なイメージが入り込む可能性大なので、そういうのが苦手な方はご注意ください


それでは失礼します



────────────

─────────

──────

───



暁「ほら夕立!いつまでも食べてないの、遅刻するんだから」

夕立「ん~……あとちょっとで食べ終わるからー」

暁「はぁ……。もう先行って待ってるからね?」

夕立「ぽーい」

提督「暁がお姉ちゃんしてる……」

不知火「毎朝のことです。もしかしたら珍しいかも、ですけど」



夕立「神通さん、おかわりっぽい!」

神通「夕立ちゃん、そろそろ行かないと……」

夕立「でもー…………」

神通「お弁当にも入ってますから。ね?」

夕立「ほんとに?」

神通「もちろんです」


夕立「じゃあ行ってくるっぽい!」

神通「ふふ、行ってらっしゃいっ」



提督「……毎朝ごめんな」

神通「あはは……。もう慣れっこですから」


不知火「…………。ご馳走様でした」

不知火「では不知火もそろそろ行ってきます」

提督「ん、行ってらー」

神通「お気をつけて」





提督「………………ふぅ」

神通「…………作戦完了、ですね」



提督「いつも悪いな、もっと寝てたいだろうに」

神通「どうせ起きます。そもそもこんなドタバタしてたら目も覚めちゃいます。それにみんな見送った後のこの時間が、私の楽しみなんです」

神通「────提督と二人だけになっちゃいましたね」

提督「…………毎朝のことだ」

神通「お隣、失礼いたしますね」

提督「ん」



神通「ん…………っふぅ……」

提督「さすがの二水戦旗艦もお疲れモードかな?」

神通「はい、少し……。最近は忙しいですから」

提督「そういえばみんな最近は昼間いないね」

神通「テストが近いので、少しでも勉強しておかないと」

提督「弾道計算よりは簡単だろ?」

神通「まあ、そうなんですけど……。慢心はいけません。良くない成績だと補習なので」


神通「そうしたらもっと時間が無くなっちゃいます」

提督「そりゃ大変だ」

神通「一大事ですよ」



神通「私としてはもっと提督との時間を……」

提督「……思ったけど神通ってあれだよね、なんかこう、他と比べて気弱じゃないというか」

神通「他の私と、ですか?」

提督「そうそう。まあ全員同じだとそれはそれで怖いけども」

神通「…………少し大胆な『神通』は、なしでしょうか?」

提督「大いにありだと思います」

神通「よかった……♪」



提督「そろそろじゃない?」

神通「あら、本当に。そろそろ準備しないと……」

提督「お疲れさん。頑張ってな」

神通「提督も毎日お疲れさまです。日替わりでいろんな子が訪ねてきてますよね?」

提督「…………ああ、知ってたか」

神通「提督が知ってることで、私の知らないことはありませんっ」

提督「ほう?」

神通「……自信もありません」

提督「ふふ、やっぱ神通だな」

神通「……………………」



───

───




神通「では──────」

神通「神通、行きます!」



提督「ほんっとそれ好きなのな」

神通「これじゃないと気合が入らなくって……」

提督「そうなのか……。まあいいや、気を付けて」

神通「はいっ」



神通「あ、少し待ってください」

提督「ん、忘れ物?」

神通「そんなものだと思ってもらえれば……。提督、少しだけこちらへ来てもらえますか?」

提督「お、おう……?こんな感じか」



神通「…………んっ──────────!」

提督「──────────っ!?」




神通「………………まだ思いっきり朝なので頬で我慢しておきますね」

神通「行ってきますっ」


提督「………………ありゃ洋画の見すぎだな」



提督「……………………」






提督「悪くない」

投下終了です

失礼します



───

──────

─────────

────────────



北上「提督いるー?」

提督「いるよー」

北上「寒いし上がらせてもらっていいー?」

提督「たぶん鍵開いてる……ってあいつ聞こえてるのかよ」




北上「丸聞こえですよー」

提督「ほんと高校行き始めてから耳が良くなったんだな」

北上「もともと悪くはないけどね。お、てか蜜柑あるじゃん」

提督「食べる?」

北上「いいねぇ、炬燵で蜜柑……。でもあとでね。今日はちょっとべつの用事があって来たし」

提督「へぇ……。北上が暇つぶし以外で来るとはな」

北上「むー、あたしをなんだと思ってるのさー」



提督「で、用って?」

北上「ふっふっふー……聞いちゃいますか」

提督「手短に」

北上「ちぇー……。まあ単刀直入に言うとですよ」

提督「……言うと?」



北上「提督さ、ベースアンプ持ってない?」

提督「ない」



北上「あれ、あたしが着任した頃くらいに持ち込んでなかったっけ?」

提督「いや、あれギターアンプな。下手すりゃベースぶっこむと逝く可能性ある」

北上「え、マジ……?」

提督「まあフルテンとかしなきゃ大丈夫だとは思うけど……。買うのが確実」

北上「うえーマジかー……、本体につぎ込んで金欠だよ……」

提督「VOXあたりそんなに高くは……、てかベース買ったの?」

北上「んー、ちょっと奮発したよね」

提督「どこのさ?」

北上「Fender」

提督「うわぁよりによって……。高そう」



提督「弾けたのか、知らなかった」

北上「んー、まあ……。部室にあったぞーさんで練習とかしたし、少しはね」

提督「よくそれでFenderに……。てか部室って」

北上「あれ、言ってないっけ?あたし軽音部なんだよね」

提督「そうなのか。……あーたしかに、わかるかも」

北上「まあないなら仕方ない。持ってきたけど重いだけだったよ……」

提督「な、なんか悪いな……」

北上「よく確認しなかったしあたしのせいだから……。今度見てみるかね」

提督「それがいい」




北上「てことで、だらだらしよ?」

提督「……切り替え早いな。ちゃっかり行動にも移してるし」

北上「それが取り柄ですから。蜜柑貰うよー」

提督「あいよー」


北上「いやー、炬燵で蜜柑ってほんと最高だねぇ」

提督「この季節の醍醐味だしね」

北上「わかるよ。窓閉めて暖房入れて、暖かい格好で炬燵に入ってアイス食べるんだよね」

提督「ほんとな、あれ凄いよな。矛盾しかしてないのに」


北上「……夏はやっぱり?」

提督「窓閉めてクーラーかけて涼しい格好して、扇風機かけて毛布をかぶる」

北上「ふふん、気が合いますねー提督ー」



北上「よくさ、『あーん』とかしてるのいるじゃん?」

提督「いる」

北上「あれって味変わらないよね」

提督「変わらないな」

北上「でも、食べさせた後に『美味しい?』とか聞くんだよね」

提督「美味しい、って答えるやつね」

北上「そうそう。元が美味しければ当たり前でしょ!みたいな。ならない?」

提督「なるなる。なるけど言わない」

北上「そうねぇ」

提督「…………」

北上「…………」



北上「提督あーん」

提督「ん、あーん……」



北上「………………。どう?美味しい?味変わった?」

提督「変わらん美味い」

北上「あたしも試していい?」

提督「あいよ」

北上「あー……んっ」


北上「………………うん、変わらない美味しさだよ。いい蜜柑だね」

提督「そりゃそうだ」




北上「…………んふふ」

提督「…………ふふ」






北上「もっかいやろっ」

提督「あいあいさー」




投下終了

艦娘×ギター、ベースという可能性を探っていきたい

失礼します



北上「暇だねぇ」

提督「そうだなー」

北上「蜜柑もなくなっちゃったし……」

提督「向こうにまだ少し残ってるはず」

北上「ほんと?取ってきて?」

提督「立つのだるい」

北上「そこをなんとか!」

提督「じゃあ北上が取ってきてよ」

北上「んー、炬燵がね、行かないでって言って離さないのよ」

提督「なんだそれ……」



北上「────お、誰か来たよ?」

提督「んー」

北上「出ないの?」

提督「出るよー…………ほら」

北上「……何それ?」

提督「インターホン。持ち歩けるタイプの」

北上「へぇ……。炬燵に入りながらも対応できる時代ですか」



提督『はーい』

阿武隈『あ、提督ですか?』

提督『おー阿武隈か?久しぶりだな』

阿武隈『お久しぶりですっ……じゃなくて、えっと、そこに北上さん居たりとかしませんよね?』

北上『いるよー、大井っちが心配してるって?』

阿武隈『わかってるなら早く出てきてください!』

北上『この寒いのに?拷問もいいところだよ』

阿武隈『その寒い中をここまで来たのは誰ですか……』

提督『まあそこ寒いだろうし、話は中でゆっくりとしないか』

阿武隈『鍵は?』


提督「あれ、北上閉めた?」

北上「あった通りにしておくのがあたしのモットー」


提督『じゃあ開いてる』

阿武隈『……お邪魔します』



阿武隈「こんにちはー……って!二人ともなに寛いじゃってるんですか」

北上「来た来た。阿武隈も入りなよ、暖かいよー」

阿武隈「あたしはただ大井さんに頼まれて北上さんを探しに……」

北上「あ、ちょうどいいや。向こうから蜜柑取ってきてくれる?箱ごと」

阿武隈「いきなりパシリですか!?」



提督「…………結局行くのね」

北上「いい子だよほんと。前髪のいじり甲斐もあるし」




───

───


阿武隈「それで、いつ帰ってくれます?」

北上「どうしようね。外寒いし」

提督「暗くなると余計寒いが」

北上「そうねぇ……」


提督「そもそもどうしてここまで来ようと思ったのさ」

北上「……炬燵があるから?」

阿武隈「暇つぶしですよね。暇じゃないのに」

北上「え、ひ、暇だよ?」



阿武隈「テスト近いのによくそんな事を呑気に……」

提督「神通たちも騒いでたけどそっちもか」

阿武隈「そうです。大井さんがせっかく誘ってくれたのに、北上さんは抜け出してきちゃうし……」ムスー

北上「き、気のせいだよ気のせい」

阿武隈「気のせいじゃないです!実際ここにいるじゃない!」


提督「阿武隈、立ち上がると風が入って寒いからやめて」

阿武隈「……すみませんー」



提督「で……、北上はどうすんの?」

北上「どうしよっか」

阿武隈「どうしよっか、じゃなくて今すぐ戻るんです」

北上「まあまあまあ、とりあえず落ち着こう、ね?」

阿武隈「十分に落ち着いてるつもりなんですけど」

北上「ほら、目の前に蜜柑とかあるしさ、これ食べてからでも遅くはないと思うんだよね」

阿武隈「すでにだいぶ遅れてますから……!」

北上「1分も10分もたいして変わらないよ」

阿武隈「2時間です」

北上「……そこまで来るといくら遅れても変わらないよ、うん」

提督「お前も少しは反省しろよな……」



北上「提督までー……。糖分足りてないんじゃない?」

提督「まさか。さっきかなり蜜柑食べたし」

阿武隈「かなり?」


提督「たぶん2箱は二人で食ったな」

北上「あー、そうそう。それはいってる」

阿武隈「えぇ…………」




北上「でもまだ足りないってことだよ。ほら、あーん────」

提督「…………相変わらず甘いな」

北上「だよねー、じゃあ次あたしっ♪」




阿武隈(なんなのこの空間……)

北上さんとほのぼの空間を築き上げたい欲


失礼します



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北上「うあー」

提督「さすがにもうないからな?」

北上「わかってるよー」


阿武隈「……言っときますけど、買ってきませんからね?」

北上「……なんで言動を先読みされるかねぇ」



阿武隈「というか本当にそろそろ帰りましょうってば」

北上「阿武隈もそろそろ炬燵から離れられなくなってるんじゃない?」

阿武隈「な……なってないですー」

北上「へえ?じゃあ少し外行って寒いか確かめてきてよ」

阿武隈「言うまでもなく寒いですって……」

北上「だからその寒さを体感してきてよ」

阿武隈「嫌ですよ。風邪引きたくないもん」

北上「でしょでしょ?だからあたしも出ないってわけ」



北上「でもそろそろ帰ろっか。ベース取ってくるよ」

阿武隈「あの重いの持ってきてたんだ……」

北上「んー、提督のとこにアンプあるかと思ったけど、なかったから」

阿武隈「当たり前じゃないですか、なんであると思ったんですか?」

北上「ギターアンプならあるみたいだし」

阿武隈「えっ」



北上「あれ、初耳?」

提督「あー、阿武隈が着任した頃にはそんな余裕なかったからなぁ」



阿武隈「……なんであるんですか?」

提督「なんでって、弾くからでしょうに」

北上「使わないのに置いてあったら逆に面白いけどね」

提督「そりゃそうだ。場所取るだけだしな」

阿武隈「知ってれば持ってきたのに……」

提督「あれ、阿武隈も?」

北上「あ、この子ギターね。リードだよ」

提督「へぇ……、それは予想してなかった」

阿武隈「今度来る時は持って来ようかなぁ」

提督「どうぞどうぞ。小型しかないけど」




─────────
──────
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神通「ただいま戻りました」

提督「おかえりー……って早いな」

神通「部活動停止でそこまで居残れなくなってて……。それなら早く帰った方がいいかなと思いました」

提督「あぁ、そういう……。でもここだと落ち着かないと思うけど」

神通「大丈夫です。もうやることはやったので」

提督「さすが」



神通「……今日も誰か来たのですか?」

提督「ん?ああ、北上と阿武隈。なんで?」

神通「蜜柑の香りで一杯ですよ、ここ」

提督「…………そんなに?」

神通「提督の鼻が麻痺してるだけかと……」



神通「私は先にお風呂頂きますね」

提督「寒いからね。ごゆっくり」

神通「いえ。そんなに長く入るつもりはありません」

神通「もっと暖かそうなところがそこにあります」

提督「…………炬燵か?暖かいけど湯船には敵わないぞ?」

神通「そうですね……。でも」




神通「──────暖を取れる相手がいますから、その分ポイントは高いですよ?」

短めですが投下終了

秋イベですね
E0突破できたらいいな程度だったのが、E1突破&風雲ちゃんドロップとかいう幸先良すぎるスタートなので逆に怖くなってます

次回の投下は地の文ありであまーーく仕上げる予定


それでは失礼します



 無音を楽しんでいた。
 この部屋には、いまこの瞬間も世話になっている炬燵と、その枠組みの上に被せられた毛布、クッション、そしてテーブル代わりの板しかない。時計もない。
 つまり、音を発するものがないのである。うるさいといえば、自分の発する鼓動くらいだろう。

 数時間ほど前までは箱の中に蜜柑が敷き詰められていたものの、今となってはただの空き箱。邪魔でしかなかった。中にはまだ少し香りが残留している。

 両腕を伸ばし前へ倒れ込んだ。右腕に頭を乗せそのまま左へ向くと、この部屋唯一の出入り口がある。今日はほとんど開け放してあったが、ついさっき神通が閉めてから出て行ったためにぴったりと閉じていた。

 高い場所に位置する窓は黒で、どうやらもうほとんど夜だということらしい。予報では雨だったと思う。いまのところそのような音は聞こえない。
 しかし夕立や不知火がまだ帰っていないことを考えると、そちらのほうが心配が少なく好都合だった。朝、彼女たちが傘などを持って出た覚えがないからだ。

 部屋の外から裸足で近づいてくる音が聞こえ、数秒後に二回ほどノック。無音の空間には少々煩いかもしれない。
 軽く返事をするとすぐに入ってきた。
 神通だ。まだ少し髪が濡れている。旅館でも何でもないのだが、風呂上りは浴衣というのが相場らしく、いつか着ていた桃色のものを、今日も例外なく着用していた。


「おかえり。寒くない?」


 一声かけると、彼女は少し微笑む。苦笑いだったかもしれない。それからやはり入り口を閉めると、右足から膝を折って正座した。


「入らないの?炬燵」

「浴衣で炬燵って、少し変ではないですか?」

「そうかな……。でも寒いのは変わらないと思うけど」

「そうですね……」

「二人しかいないし誰も気にしないさ」


 また彼女は微笑む。右足から立ち上がると、こちらの横へ空いたスペースに入り込み足を投げ出した。だいぶ忙しい動作に見える。
 そうして入り込んだ後になって「よろしいですか?」と心配そうな顔で聞いてくるのだが、よろしくない、と言ったらどうなるのか。
 
 でもそんな抵抗はせず、なるべく仕方なさそうな表情を作って頷いておいた。実際、まったく悪い気はしないし、先ほど部屋を出たときからすでに予想できた展開のはず。




 神通はこちらより背が小さいという程度で、女性としては低くはない。普段は特に意識しないことだが、今日のように軽巡洋艦娘などが遊びに来るとよくわかる。時々、重巡ですら越しているのでは、ということもあるので驚きだ。

 乾きかけの髪と、風呂上り特有のシャンプーの甘い匂いが近づく。彼女は当たり前とでも言うように、全身を密着させてきている。


「暖かいですね、やっぱり」

「炬燵だし」

「炬燵もですけど、提督も暖かいですよ?」

「伊達に一日ずっと炬燵に入ってないぞ」

「それ自慢できることじゃないですから」


 言いながら、神通は吹き出した。
 言っていることはまったくその通り。反論の余地すらない。一日中炬燵の世話になるなど、贅沢というよりは怠けていると言ったほうがしっくり来るだろう。足はすっかり怠け者の仲間入りをしてしまったようで、動かそうとするととてつもない疲労感が一気に押し寄せるために、つい引っ込めてしまうほどだった。

 かたかた、と小さく窓が鳴る。少し風が出てきただろうか。


「外はもっと寒そうですね」

「大丈夫かな」

「え?」

「不知火たち。雨の予報なのに傘とか持って行かなかった」

「ああ……。傘はわかりませんけど、寒くなりそうなのでマフラーや厚手のコートなどは持つように言っておきました」

「じゃあ寒さは大丈夫か。問題は雨だな」


 辛うじて怠け者を回避している上半身を叩き起こし、起き上がる。しかし今度は即座に後ろへ倒れ込んでしまった。こちらも時間の問題か、と思ったが、どうやら自分以外の力が働いているらしい。幸いなことに真後ろにはクッションがあったため、衝撃は和らいだ。
 左を向くと、すぐ横で犯人らしき顔がニヤリと不敵な笑みを浮かべ、左腕でこちらの胸部を抱くように押さえている。一緒に倒れ込んでしまうとはなかなか物好きだ。


「提督、どこへ行かれるおつもりですか?」

「どこだろう……、特に宛はない。ただずっと炬燵に入ってて疲れただけだよ」

「お疲れなのですか?」

「足がなぁ……。自業自得なんだけどね」

「もう……。少しは運動も挟まないと」

「痛感してる。というかさすがに暑くなってきたな」


 せめて足だけでもこの蒸し風呂から離脱させよう。冬のお供も、あまり長く付き合いすぎると鬱陶しい。

 足を曲げて離脱。
 これを彼女が何も咎めることもなく受け流してくれたおかげで、無事に外の空気に触れて、眠っていた感覚が一気に目覚めた。


「大丈夫ですか?」

「足だけだから。こっちは何も咎めないのね」

「咎める理由もありません」

「そう?足が自由ってことは、いろいろ動き回れると思うけど」

「だって提督、もうどこかへ行こうなんて思ってないですよね?」


 言われてみればなるほど、その通りだ。
 左腕で押さえこまれた時点で勝敗は決している。艤装など付けなくとも、艦娘の力というのは一般人ではとても太刀打ちできないほどのものなのだ。艤装なんて付けていたら一捻り、それこそ一瞬で……。
 どう足掻いたって結果は同じこと。それなら大人しくして体力の消耗を避けようと、本能的に感じたらしい。我ながら賢明な判断だと評価できる。



 曲げることで蒸し風呂を回避していた両足も、少し体勢を変えたい。どちらかへ倒れ込んで横向きになろうとした。
 
 特に意識することもなく、神通のいるほうとは反対側の右へ。

 動きを察知した彼女の左腕が、ぐっとその動きを抑止する。そして引っ張られた。

 正面。

 溜め息を吐いてから左を向くと、どこか期待を含んだ、それでいて寂しそうに瞬く瞳。

 綺麗だった。炎のように微動して、少しだけ涙で潤っていて。

 油断すると引き込まれそうだ。

 腰のあたりに回る柔い手に、促すようにつつかれる。

 たまらず左へ。

 目の前には神通の顔。嬉しさと驚きを足して二で割ったような表情だった。


「あら?良かった、伝わったんですね」

「何が?」

「こっちを向いてほしい、というサインです」

「……わかりにくいな」

「でも結果的には私の勝ちですねっ」


 胸のあたりを拘束していた重みが消え、それが今度は額のほうへ。相変わらず温かい手だ。
 それから軽く前髪を分け、彼女はふっと笑った。


「寒いでしょう?暖めて差し上げます」


 白い手。柔らかい。

 細い指。頬を滑るように伝って下へ。

 舐めるように下へ。

 胸元まで下がってようやく降下が終わった。手のひらを浮かせ、五本の指を軽く立てていた。

 顔が近づいてくる。


「もう朝ではないので、頬で我慢なんてしませんから。覚悟してくださいね?」


 目を閉じ、暗い視界へ。もう逃げるなんてことは頭にない。

 その視界の中でかかる息遣い。熱い。

 胸元から手が離れ、顎を少しだけ持ち上げられ、熱いほうへ。

 一瞬だけ止まり、

 そして──────────








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 どれくらいの時間が経っただろう?
 玄関の方向から、いつも聞く三人の会話が耳まで届いて意識がはっきりした。

 時計を探したが見当たらない。そうだ、この部屋には時計というものがないのだ。思い出した。

 体感だけでものを言うと三十分は経過したように思う。つまり実時間だと十分も経っていないってこと。

 起き上がって見渡した。さっきは神通がいたように思うが、これも見当たらない。しかし炬燵とクッションは、記憶通りの場所へ律儀に居座っている。

 顔のあたり……、唇の付近が湿っていた。どうしてだろう?普段はあまり感じない類の感覚のように思える。


「あ、ごめんなさい。みんな無事に帰ってきましたよ」


 探し物の一つである神通が入ってきた。どうやら意識が飛んでいたらしいこの元提督に代わって、駆逐艦の子たちを出迎えにいってくれたらしい。


「あまり長くできませんでしたね」

「え?」

「……記憶にないのですか?」

「ごめん……、完全に飛んでた」

「ふふっ、そんなに緊張してくれちゃったんですね」

「緊張してた?」

「まあ私も大概ですけど、意識だけは飛んでいきませんでしたよ?」


 神通はどこか機嫌が良い。何が原因なのか、恐らく自分が関わっているようにも思えたが思い出せない。もどかしい。
 
 暗い視界の中で熱い吐息が顔を撫でて、一瞬だけそれが止まって。

 次の瞬間にはそれが覆いかぶさってきたように思う。唇のあたりがやけに重く、何かが少し強引に入り込んで来ようとしていた。
 予想していなかったことだったのか、このあたりで全身の力が抜けてしまい、これ以降の記憶が曖昧になっている。というか、ほとんど思い出せない。どうして目を閉じてしまっていたのだろう?開いていれば見られただろうに。




「提督?」


 呼ばれたのでそちらを向いた。


「足は大丈夫ですか?」

「足……?あぁ……、うん、もう大丈夫。ありがとう」

「良かったです。もうなるべくなら、一日ずっと炬燵なんてやめてくださいね?」

「十分に痛感しました……」

「ふふっ、本当に……」


 笑われた。今日で何度目だ。呆れたような、仕方なさそうな、行儀の悪い子供を前にしたような、そんな苦笑い。

 また彼女は正座で、今度はいきなり顔を寄せてくる。

 そして耳元のほうで、彼女は小さく囁く。


「みんなが寝静まった頃がお楽しみです。今度は飛ばないようにしてくださいね?」


 耳元のくすぐったさで既に意識が遠のきそうだ。

 予報を気にしたのか、外ではようやく少し雨が降り出していた。

投下終了

『お楽しみ』は脳内補完で許してください……


それでは失礼します



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提督「今日は部屋の片づけでもすっかなー……」

提督「この前の蜜柑の箱とかまだそのままだし」

提督「…………さすがにもう匂いは消えてるな」

不知火「何をしているのですか?」

提督「ん、不知火か。あれ、テストは?」

不知火「今日のは終わりました。夕立たちはもう2時間みたいです」

提督「へぇ……。お疲れさま」

不知火「はい」

提督「不知火と二人ってのも新鮮だな」

不知火「……鎮守府にいた頃はまだ多かった状況ですが」



提督「ああ、そういえば残ってる子もいるんだっけ」

不知火「一部ですが、戦艦や空母などの大型で強力な艦娘が」

提督「いやー、大変ですねー」

不知火「他人事ではありません。潜水艦などが出てきた場合は予備役の不知火たちも緊急で出撃です」

提督「駆逐とか軽巡とか残ってないのかよ……」

不知火「上の事情はよくわかりませんが……、そこまで多くはないかと」

提督「潜水艦そのものがあんまり出てこないからね」

不知火「知ってるんじゃないですか」



不知火「それで、何を?」

提督「ん……ああ、この段ボールとか処理しようと思って」

不知火「この前の蜜柑のね」

提督「そうそう。空き箱だけあっても仕方ないし」

不知火「手伝いましょうか?」

提督「疲れただろうしのんびりしてなさい」

不知火「……ではお言葉に甘えて────」



───

───


提督「地味に処理に困るなこれ」

不知火「…………」

提督「とりあえず向こうに、っと……」

不知火「…………」

提督「で、あとは……このあたりかな」

不知火「…………」

提督「……なんだこの視線は」



提督「不知火さん?」

不知火「!……はい?」

提督「俺の動き見ててそんなに面白いですか?」

不知火「つまらないです」

提督「うん……。じゃあちょっと視線を外してくれないかな?」

不知火「できません」

提督「うん……うん!?なぜ」

不知火「他にすることもないので」

提督「いや、なんかやりたい事とかあるでしょうに」

不知火「ありますよ」

提督「だろうな。じゃあそれをやるとかさ」

不知火「いまそれをすると恐らく司令にご迷惑かと」

提督「何をしたいのさ」

不知火「…………さあ?」

提督「何か用事とか?」

不知火「大まかに言えばその類かと」


提督「まあいいや。とりあえず今は整理終わらせるから、用件はそのあとね」

不知火「了解です」

提督「少し時間かかるかもしれないけど」

不知火「……了解、です」



──
───



不知火「………………」スタスタ

提督「ふぅ……。だいぶ片付いたな。あとは────」

不知火「ん」

提督「ん?」

不知火「…………」


提督「部屋を出るのか?先いいよ」

不知火「…………」ガチャ

提督「…………?よくわからんな今日の不知火は」



提督「えっと、こっちの部屋も少し……」

不知火「…………」ジーッ

提督「……不知火?」

不知火「!!」


不知火「はい、ご命令ですか」

提督「べつについてきたうえに見つめたって、早く終わるわけじゃないぞ?」

不知火「知ってますよ」

提督「それとその……気が散ってむしろ遅くなりかねない」

不知火「そう、ですか……。すみませんでした、不知火がいけませんでしたね……」




提督「………………あー、わかったわかった!なんでか知らないけど程々にな?」

不知火「!!!了解です」


提督(シュンとされちゃうと弱いなぁ……)



───
──



提督「それで、だ」

提督「何してるのさ?」

不知火「段ボールを被ってます」

提督「なんで」

不知火「…………気分?」

提督「はぁ……。もうそれ捨てるやつだよ」

不知火「ご自由にお取りください」

提督「どっかのパンフレットかよ、取るぞ?」



不知火「ぬ…………ぬいっ」

提督「ぬいっ、じゃなくて」

不知火「~~~~っ!」

提督「いま完全に自分で言ったよね……」


提督「いい?捨ててくるよ?」

不知火「構いませんよ、もう被らないので」

提督「なんで被ったのやら……」

不知火「………………♪」



提督「よし、終わりっと。みんな帰るまでのんびりしてよう」

不知火「お疲れです」

提督「ん。そういえば用事って?」

不知火「問題ありません。現在進行形で達成しています」

提督「達成?何が?」

不知火「手のひらを上にしてここに置いてください」

提督「ふむ」

不知火「はい。これはなんですか?」

提督「何って……手だけど」

不知火「赤ん坊に話すときは?」

提督「……おてて?」

不知火「それから一個『て』を抜くと?」


提督「…………おて」

不知火「ぬいっ」ポン



提督「えっ、なにそれは」

不知火「『お手』と言われたのでつい」

提督「つい、じゃないよ。最初からその気だったな?」

不知火「むー……」

提督(ああ、構ってほしかっただけなのか……)





提督「……お手」

不知火「!!!」


不知火「ぬいっ」ポン


提督「お座り」

不知火「ぬいっ」スッ

提督「よーしよくできました」






夕立「…………提督さん……と不知火ちゃん、さっきから何してるの?」


不知火「!?!?」

提督「お、夕立おかえり」

夕立「ただいまっぽい!」



夕立「それで、さっきのは?」

提督「なんというか、流れでやってしまったというか……」

夕立「ふーん……。新しい遊びっぽい?」

提督「そんなところじゃないのかな」

夕立「不知火ちゃんすっごく楽しそうだったね~?」

不知火「…………忘れてください。お願いですから」

夕立「えー、それはわからないなぁ。けっこう面白いもの見られたっぽいしー」

不知火「うぅ…………」

投下が安定しなくて申し訳ないです……ツェッペリンちゃんが出てきてくれればそれなりに安定すると思います……

ということで、ここから少しメインの子たちでほのぼのする予定


失礼します

49周目にしてツェッペリンがドロップしたのでやっとE4周回が終われる……
大和型と装甲空母をフル稼働してたら燃料が10万ほど飛んでいたけど報われました

今夜の投下はありません。申し訳ないです

明日から全力で書き溜めていくのでペースが上がって少しは安定すると思います。寒さからか甘いのはどんどん甘くなってしまいますね
このスレでは甘々メインにほのぼの、日常、軽くですが終戦後の妄想など色々と詰め込む予定なので少し長くなりそうですが、これからもよろしくお願いします



提督「そういえば暁は?いつも一緒に帰るだろ?」

夕立「暁ちゃん、用事あるっぽいから帰っててって」

提督「そういうことか」

不知火「珍しいですね」

提督「なんの用事か知らんけど確かに珍しいかもね」

夕立「んー、特に変わった様子はなかったっぽい」

提督「まあそんなに遅くはならないだろ」

夕立「うん!すぐ追い付くって言ってたよ」



暁「ただいまー」

提督「噂をすれば」

不知火「おかえりです」

暁「ねえ司令官、夕立って────」



夕立「え?」

暁「あ、夕立!バス停のとこで待っててって言ったでしょ?」

夕立「あれ、帰っててって……?」

暁「はぁ……。まあいいわ。夕立すぐ迷子になっちゃうし心配だったから」


提督「……暁、なんかお姉ちゃんみたいだな」

暁「あ、当たり前でしょ。立派な長女だしっ」

不知火「言われてみればそうでしたね」

暁「ちょっと、それどういう意味よ!?」



提督「ところで何の用事だったの?」

暁「秘密。喋りすぎると良くないし」

提督「なるほど」


不知火「暁もやっと『大人』になったと」

提督「……なるほど」


暁「なにを考えてるか知らないけど、絶対違うわよ?」

不知火「あら、そういう返しができるようになったんですね」

暁「うーるーさーいー」



夕立「提督さん、早く帰ってきたしみんなでどっか行きたいっぽい!」

提督「いいけど、どこに?」

夕立「え?えっと……」

暁「あ、私はパスだからね。風強いし、あんまり外出したくないもん」

不知火「不知火はもう部屋に籠って布団に潜りたいです」

提督「珍しいな。不知火の昼寝願望とは」

不知火「そういう気分の日もあります」


夕立「あれー?不知火ちゃんさっきの遊びの続きしないっぽいー?」

不知火「……やめてください」

暁「遊びって?何してたの?」

夕立「不知火ちゃんね、提督さんに────」


不知火「少し夕立を連れて行きます」

夕立「!?」

提督「お、おう……」


不知火「失礼しました」



暁「夕立が引きずられてたけど……何があったの?」

提督「不知火に構ってたら夕立が帰ってきた」

暁「それだけで引きずるかしら……」

提督「一部が黒歴史ってこと」

暁「……あんまり聞かないでおいてあげる」



提督「……なんか暁、落ち着いたな」

暁「そう?一人前に見える?」

提督「それを言ってるうちは見えない」

暁「うぅ、何よそれ!」

提督「ははは、でも落ち着いたように思うのは本当だよ」

暁「……もちろんそれなりの努力はしてるし」

提督「じゃあそれが実ったってことか。よかったよかった」

暁「うん……。それよりそこ閉めてよ、寒いわ」

提督「ん、そうだな」

暁「……ごめんね、ありがと」




暁「はーあ、今日はなんか疲れちゃった……」

提督「夕立を探してたの?」

暁「そ。でもそれは10分くらいだったからそんなに疲れてないかな」

提督「じゃあ座りっぱなしのテストか」

暁「早く終わらせて寝てたからそうでもないわね」

提督「そんな簡単なのか……」

暁「…………空欄」

提督「おい」


暁「し、仕方ないでしょ!わかんなかったんだもん」

提督「何か書けば当たるかもしれないのに」

暁「見当すらつかなかったの!」

提督「どんな問題なのさ?」

暁「えっと……、あれ、どんなのだっけ……?」

提督「深刻だな……」


暁「……覚えてるのもあるし、ちょっと付き合ってもらっても平気?」

提督「ん、いいよ」



────────────
─────────
──────
───




暁「んーんっ…………」

提督「疲れるよな、休憩する?」

暁「え、いいの?」

提督「俺も勉強は好きじゃないからね。それとももっとしたい?」

暁「休憩休憩!」

提督「ふふっ、了解」



暁「────、────、…………」

提督「眠いな?」

暁「!!!」


暁「ね、眠くなんてないし!」

提督「いや、思いっきり眠そうだぞ……」

暁「寝ちゃったらせっかくの時間が台無しよ」




暁「…………か、勘違いしないでよね、勉強の時間がってことだからね!?」

提督「特に何も言ってないしそのつもりだったけど……」

暁「え!?あ………。い、一応よ、念のため」

提督「なんの念押し?」

暁「いいから!!」

提督「……変な暁だな」


暁「…………はぁ、もうっ……」

投下終了
すみません、一部だけsage sagaになっちゃってましたね

失礼します



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────────────────────
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提督「すっかり夕方だな」

夕立「ごめんね、提督さん……」

提督「あ、いいよ。満足した?」

夕立「うん!」

提督「よしよし」

提督「じゃあもうみんな帰るだろうし、帰ろうか」

夕立「はーい」


提督「あれ、帰りは助手席なのね」

夕立「後ろだと眠くなるから……」

提督「寝ちゃっても大丈夫だけど」

夕立「ダメなの!」

提督「そ、そうか……。まあいいや、行くぞ?」




夕立「あ、海」

提督「そういえば海は久しぶりだっけ」

夕立「終わってからは初めて見たっぽい」

提督「でももう見慣れてて新鮮味とかないだろ?」

夕立「ううん。最近は離れてたっぽいし、けっこう新鮮だよ!」

提督「それもそうか」

夕立「それに夕暮れ時で綺麗だし」



夕立「──────♪」

提督「随分と機嫌良さそうだな」

夕立「当たり前っぽい。デートの後だよ?」

提督「だからその表現は違うからやめてくれって……」

夕立「えー、違わないよ?だって夕立がお出かけしたいってお願いしたら来てくれたもん!」

提督「いやまあそう考えればそうなんだけども……」

夕立「ふふん、やっと認めたっぽい」


提督「お前はその気がなくてもそう言いそうだし気を付けろよ?」

夕立「その気って?」

提督「…………本当にわかってなさそうだから憎めないよなぁ」

夕立「憎めないっぽい?」


───

───



提督「着いたぞ夕立ー……って完全に寝てるな」

暁「あ、司令官!帰ってたなら何か言ってよね」

提督「ごめんごめん、今帰って来たんだよ」

暁「みんなちょっと心配してたんだから……。どこ行ってたの?」

提督「少し夕立に付き合って色々と」


提督「で、夕立は疲れて寝ちゃったから、なるべく起こさないように動けずにいる」

暁「……普通に起こして連れてくればいいんじゃないかしら」



夕立「んぅ…………あれ、提督さん?どこ?」

提督「お、起きたか。隣だよ」

夕立「隣っぽい……?」

提督「確かに隣だけど、いま触れてるそれは空のペットボトル」


夕立「えへへ……提督さん……♪」


提督「……………………」

暁「寝ぼけてるだけだってば。そんなに落ち込まないでよ」




暁「ていうかそろそろ本当に起こさないの?」

提督「いや、起こそうと思う。夜になるとさすがに寒いし」

暁「よかった。じゃあ私は戻るから、司令官と夕立も風邪ひかないうちにね?」

提督「悪いね、ありがとう」




提督「さて、と…………」



提督「夕立、そろそろ起きろー」

夕立「んん…………?」

提督「なんだ、意外と簡単に起きるじゃん」

夕立「……あれ、もう帰ってきたっぽい?」

提督「少し前にね」

夕立「…………寝ちゃってたっぽい!?」

提督「そこに気づいてなかったのか」

夕立「ずっと夢見てたから変な感じ……」




──
───



提督「大丈夫か?一人で歩ける?」

夕立「ちょっとまだフラフラするっぽい……」

提督(もう手まで差し出してきて繋ぐ気しかないな)


提督「繋いでおくから転ぶなよ?」

夕立「ほんとに?じゃあ転ばないっぽい」

夕立「だから離さないでね?」

提督「離したら千鳥足だもんな、仕方ない」

夕立「そうそう、転んだら痛いもんね!」



夕立(もうフラフラなんてしてないっぽいけど♪)

投下終了

失礼します



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大井「北上さん、早く準備しましょう?」

北上「わかってるよ。わかってるんだけどさぁ……」

大井「…………布団から出たくないのはわかります。冬だし仕方ないわ」

北上「それなんだよね。如何せん寒くて」

大井「猫じゃないんですから……」

北上「んー、そういや提督に『猫みたいだ』なんて言われたことあったなー」

大井「……いつですか?」

北上「いつだっけ?けっこうな頻度で言われてて忘れちゃうんだよね」



大井「それはそれとして、北上さんは猫じゃないんですから丸くなってないで起き上がってくださいな」

北上「えー、あたし猫だよ?にゃーにゃー」

大井「…………と、とにかく!もう先に待ってますからね?」

北上「おっけ、了解ー」


大井(鼻血ぶちまけるところだったわ……)


北上「大井っち、ドアの前でどしたのさ?」

大井「なっ……なんでもありません。早く来てくださいね」

北上「………………なんでもない、か」

北上「変わってないなぁ」



北上「……いい加減着替えよ」






───
──


──
───






北上「おはよー」

阿武隈「遅いです北上さん!」

北上「あはは、ごめんて」


大井「すみません、朝はパンです」

北上「あー……いいよいいよ、あたしが起きるの遅くなったわけだし」

北上「それに今日のご飯は大井っち担当だし、もう任せるよ」

阿武隈「でも大井さん、随分と早くから起きてませんでした?」

大井「貴女もでしょうが」



阿武隈「あたしは髪のセットに時間かけたいし、今日は用事があるから遅れたくないし……」

北上「お、今日は一段と整ってる。これは崩し甲斐がありますねぇ」

阿武隈「やめてくださいね!?」

北上「それは勿体ないなぁ……って、あれ?」

阿武隈「どうしました?」

北上「大井っち、ごめん。ジャム貰える?」

大井「……あ、ごめんなさい。すぐ持って来ますから」

北上「んー、ありがと」



阿武隈「大井さんが北上さんのパンにジャムを忘れるって、けっこう珍しくないですか?」

北上「そうねぇ……。まあそういう日もあるよ」

大井「すみません北上さん、私ったら…………」

北上「気にしない気にしない。ありがとね」

阿武隈「────────?」


───
──




阿武隈「今日の大井さん、なんかちょっと変じゃないですか?」

北上「そうねー」

阿武隈「……北上さん、何か知ってます?」

北上「わりと前からだよ、これ。練度が90超えたあたりから」

阿武隈「これって?」

北上「だから、大井っちがなんとなく変に感じること」




阿武隈「でも昨日まで普通だったような気がするんですけど……」

北上「そうそう。昨日までは普通。いつもの大井っち」

阿武隈「…………まさか今日の大井さんは別の大井さん!?」

北上「違う違う、阿武隈の知ってる大井っちだよ」

阿武隈「じゃあ…………、多重人格とか!?」

北上「あはは、面白い発想だけど違う。別人でも別人格でもないよ」



北上「法則があるわけよ」

阿武隈「法則、ですか?」

北上「例えば、大井っちが秘書の日とか」

阿武隈「…………秘書の日」

北上「あとMVP獲ったときとかも」

阿武隈「MVP…………」

北上「わかりやすいのはそれくらいだけど、あとは呼ばれた時もかな」

阿武隈「誰にですか?」

北上「そりゃ……ねえ?」



阿武隈「でもなんで今日もなんですか?秘書でもMVPでもないし、誰かに呼ばれてるわけでもないですし」

阿武隈「そもそも秘書とかMVPとかもう関係ないというか」

北上「えー、ここまで言って気づかない?」

阿武隈「気づきません。なんなんですか?」


北上「むー……。秘書ってのはどういう仕事?」

阿武隈「一日ずっと提督の補佐をする感じのですっ」


北上「MVP獲ると?」

阿武隈「えっと、キラキラして……提督がなんでも要望を聞いてくれていい気味です!」

北上「いい気味か……。あー、あたしもそういうスカッとすることすりゃ良かったな」


阿武隈「……あたしはそういうの頼んだことないですよ?」

北上「なんだ、つまんないの」



北上「で話は戻るけど、今日の予定はっと」

阿武隈「提督のとこに押しかけです!」

阿武隈「……………………あっ」


大井「そろそろ準備終わりましたー?」

北上「あ、うーん!今そっち行くよー」


北上「はい、ということで察したでしょ?この話終わり。先行くよ」

阿武隈「………………」




阿武隈「…………あの大井さんが……?」

投下終了です

失礼します



───

──────

─────────

────────────



提督「────で、アポなし突撃してきたと」

北上「予定とか平気だった?」

提督「あと10分早かったら外出中だった」

北上「お、ナイスタイミングってことだね」

提督「できれば来るって連絡してな……」

北上「驚かせたかったんだよ。ごめんね?」



提督「今日はベース持ってこなかったのな」

北上「あー、うん。アンプ買ったけどさ、置く場所とか音とか考えてヘッドホンアンプにしたんだよね」

提督「なるほど」

北上「そうそう。だから合わせるのとかできなくてね……」

提督「……いまこれテレキャス弾いてるのは?」

北上「テレキャスなら大井っち。てか音でわかっちゃうの?」

提督「わかるわかる。だってエフェクター置いてないもん」

北上「あー、じゃあ直しかないわけか」

提督「テレキャスくらいシャキシャキしてるとね。てかカッティング気持ちいいな」

提督「阿武隈は何使ってんの?」

北上「なんか新しいの買ったみたいだけどねー、教えてくれないのよ」

提督「それまでは」

北上「ストラト」

提督「最高」



北上「そういえば提督、ちょっと聞きたいんだけどさー」

提督「んー」

北上「提督ってさー」

提督「んー」




北上「大井っちのことどう思ってるの?」

提督「んー……………えっ」



提督「えっと、それはどういう……」

北上「何かあるでしょ?怖い、とか」

提督「例えが『怖い』ってのも大井らしいな」


提督「どうだろう、でも怖いとかは本当にないんだ」

北上「あれ、そうなの?」

提督「お前は大井をなんだと思ってるんだよ……」

北上「いや、あたしも怖いとか思ったことはないんだけどね、他の人に聞くとだいたいそう答えるから」

提督「あー……、そういうことか」



北上「でもさ、大井っち提督にちょい厳しくない?」

提督「まあ……。と言っても理不尽じゃないから」

北上「…………あー、たしかに。確かにそうだね、うん」

提督「……ただ他の『大井』だと結構クレイジーなのもいるらしいけど」

北上「例えば?」

提督「『北上さんを秘書にして私から取り上げたら海に沈める』とかなら可愛いもんだってさ」

北上「わお…………。そりゃすごい」






北上「────ん、雰囲気変わった」

提督「パワーコードのフレーズだな。これも大井?」

北上「んー、いや……大井っちはこういうのはあんまり弾かないよ」

提督「じゃあこれは阿武隈か」

北上「どうかね……。いつもソロばっかり弾いてるしよくわからないや。どっちでもいいんじゃない?」

提督「それもそうだね」




北上「それよりさっきの質問の答え、まだだよ?」

提督「それを聞いてどうするのさ」

北上「どうもしないって、ちょっと興味あるだけ」

提督「興味ってな……。特に変わった印象は持ってないと思うけど──────」

投下終了

艦娘×ギター&ベースを推していくスタイル
提督LOVEとまでいかなくてもLIKEくらいの大井っちは最高だと思います

それではこのあたりで



大井「ふぅ……。なかなかいい音ね、これ」

大井「ちょっと下で休憩してくるわ」

阿武隈「はーい。テレキャス借りていいですか?」

大井「新しいの試さなくていいの?何か知らないけど」

阿武隈「大井さんの聞いてたらテレキャス弾いてみたくなっちゃって……」

大井「ふぅん……。まあそういうことならいいかな」

阿武隈「ありがとうございますっ!」



──────
─────
────
───
──




大井「北上さ──────?」



提督「なんというか、いい奥さんになりそうな感じあるよね」

北上「あーわかる。何気なく気を遣ってくれるんだよね」


大井(……何の話題?)




提督「正直、最初はやけに文句言ってくる子だなぁって思ってたんだ」

北上「……本人が聞いたら悲しむよ?」

提督「今はそんなことないからな?」

北上「んで、今はどう違うの?」

提督「真逆。ありがたく思ってるくらい」

北上「え、ありがたい?なんでさ?」

提督「文句は言われるんだ、指揮が悪いとか」


大井(指揮が悪いって……まさか)



北上「あー、たまに言われてたっけ。あたしは別に問題ないと思ってたんだけど」

提督「お前が着任する前はだいぶ酷かったんだよ……。実際のとこ大破で戻ってくるわけだし」

北上「んー、仕方ないことだと思うけどねぇ」

提督「それで、終わった後に呼び出して聞いてみたことがあって」

北上「どこが悪かったのか、って?」

提督「そうそうそんな感じ。そしたらまあズバッと言ってくるわけで……」

提督「ぜんぶ的を得てて何も言い返せなかった」



提督「で、次から少し言われたところを意識して編成とか陣形とか考えてやったんだけど、やっぱり大破撤退」

北上「あぁ……。うん、仕方ないよね」

提督「それがさ、撤退の原因が旗艦の大井だったんだ。他は被弾一つしてない」


大井(!!)


北上「それはお互い気まずいかなぁ……」

提督「そうなんだよな……。だから呼び出せずにいたし、報告はいいから風呂行って今日は休めって言ったんだよ」

北上「それがベストだと思う」



提督「そしたら向こうから来た」

北上「えっ」

提督「大破のまま」

北上「…………えっ!?」

提督「びっくりするよな」

北上「いや、そりゃするでしょ……」

提督「それで、ものすごく謝られたよね」

北上「へぇ、どんな風に?」

提督「『指揮に問題はなかった。自分の不注意だから外してくれ』って」

北上「おぉ……。外したの?」

提督「いや」

北上「男らしいねー」

提督「…………大井を外すと戦力的にやばかった」

北上「おいっ!」



大井(えぇ……あれってそういう……)



提督「まあまあ……。で、後日そこは編成変えずにほぼ無傷で突破と」

北上「お、やるねー」

提督「完全に大井のおかげ。言われなかったら色々と犠牲にしてた気しかしない」

北上「じゃあ、提督の大井っちへの評価は高いんだ?」

提督「高いも何もないよ、もうありがとうございますって感じ」


大井(提督…………)


北上「惜しいよね、ケッコンまであと少し!って練度だったのに」

提督「でも大井は断りそうだな」

北上「……どうしてそう思うの?」

提督「よくわからないけど、そんな気がしなくもない」


大井(………………)



北上「じゃあさ、ちょっと質問変えるね」

北上「……もし大井っちから打ち明けられたらどうする?」


大井(──────え……?)


提督「いやー、それはないでしょ。あの大井だぞ?北上LOVEの」

北上「むー、だからうちはそんなハードじゃないって言ってるじゃん」

提督「ははは、ごめんごめん」



提督「そうだなぁ、仮にか……。まず大前提としてその状況はあり得ないだろ」


大井(……まあ、そう思われても仕方ないのかな)


提督「でももしそんなことになったとしたら──────」


大井(…………────)






提督「そしたら、断るような要素もないかな」


大井(……あ………………)



北上「おお、これはいいネタを頂きましたー!」

提督「いや、大前提としてあり得ないことだから」

北上「えー、そう?そうかな」

提督「お前は青葉かって。青葉が二人もいたらプライベートとかあったもんじゃない……」

北上「あはは、冗談だって。でもそっかぁ……ふーん……ふふっ」

提督「……なんだその顔は」

北上「なーんにも?」


大井「────っ!」



北上「あれ、いま誰か一階にいるっけ?すごい勢いで階段上ってく音がしたけど」

提督「喉でも乾いてどっちか降りてきてたんだろ。ギターって案外疲れるし」

北上「案外というか普通に体力消耗するよね、あれ」


提督「俺も少し喉乾いたな。何か飲んでくる」

北上「行ってらっしゃーい」





北上「…………大井っち、今の聞いてたらなー」




──
───
────
─────
──────



阿武隈「あ、大井さんお帰りなさーい」

大井「阿武隈!ちょっとそれ寄越しなさい!」

阿武隈「え、あ、はい。ありがとうございましたっ」

大井「ゲインもボリュームもMAX、トーンも……。よし」

阿武隈「テレキャスで歪みですか?」

大井「そういう気分なの」


阿武隈「……普段やらないのに、何かあったんですか?」

大井「うるさい!!」

阿武隈「ひいぃ……っ」

投下終了です

失礼します



提督「うへぇ、歪ませたな……。もう音割れそう」

北上「ん、歪みは苦手なの?」

提督「大好きですね」

提督「しかしアンプ直でテレキャスで歪みとはなかなかやりおる」

北上「あんまりやらないもんねー」

北上「あたしもちょっと上で遊んでくるよ」

提督「頼むからゲインかボリューム下げてくれって言っといて」

北上「あはは、了解了解」




───
──




不知火「ただいまです」

夕立「ただいまっぽい!」

提督「お、もうそんな時間か」

不知火「そんな時間ですよ。それとこの音はなんですか?」

提督「テレキャスの歪み」

不知火「はい?」

提督「つまりエレキギター」

夕立「エレキギターっぽい?」

提督「上で阿武隈だか大井が弾いてるの」

不知火「……なんだかイメージと全然違う音なのですが」

提督「あぁ、ははは……。そのうち少しはマシになるさ」



提督「てかまた暁がいないのな」

夕立「暁ちゃんなら今日は神通さんと一緒っぽい」

提督「なんでまた?」

不知火「少し用があるみたいです」

提督「そうか。わかってるならいいや」


不知火「先にお風呂いいですか?」

提督「冷えるからね」

夕立「えー、夕立も冷えちゃうよー」

不知火「極力早めに済ませますから」

夕立「うぅ……。あ、じゃあ一緒に」

不知火「お断り」

夕立「艦娘同士だから大丈夫っぽい~」


提督「もうどっちでもいいから早く行って来いよ……」



不知火「では夕立が先でいいですよ。不知火は司令とご一緒します」

提督「待って」

夕立「方針転換っぽい!?」

不知火「ええ。ですのでどうぞ」

提督「待て待て、俺とってのは色々と問題があるからやめて」

不知火「……?なんの問題ですか?」

提督「え、いや、なんのってな……そりゃ……」




不知火「じれったいわね。もう無理にでも引っ張っていきます」

提督「ちょ、待って!」

不知火「もう何度もやってるはずですよ」

提督「いやそんな記憶ないからな!?」

不知火「冗談はもう少し冗談っぽく言うものです。司令、お先にどうぞ」

提督「先にって────」











提督「………………炬燵かよ」

不知火「ええ、そうですが……。何か?」

提督「いや……。なんでもないです、はい」



不知火「では失礼して不知火も」

不知火「ということなので先にいいですよ、夕立」

夕立「……不知火ちゃん、今のは勘違いしても仕方ないっぽい」

不知火「は?」

夕立「ううん。じゃあ先に行くね」


夕立「それと提督さん、出てきたらそこ夕立だからね?」

提督「お前らも飽きないよなほんと」


不知火「…………むー」



北上「提督ー、ってあれ?不知火じゃん。いたっけ?」

不知火「先ほど帰宅しました」

北上「あ、そうなのね」


提督「で、どうした?」

北上「もう暗くなっちゃうからそろそろ帰ろうって話になってさ、挨拶にと」

阿武隈「またそのうち来ますからね」

大井「……あ、ありがとう、ございました」

北上「じゃあみんなにもよろしくー」

提督「んー、お疲れさん」






不知火「…………大井さん、何かあったのですか?」

提督「え?なんで?」

不知火「やけにしおらしく見えたのですが」

提督「そうだった?北上の後ろでよく見えなかったな」




──
───

投下終了です

宅練でフルテンは勇気が必要ですね……
セッティングにもよりますが、ただでさえ歪ませるとノイズも拾いやすいテレキャスだとなおさらに


失礼します



 気が付けばもう12月。すっかり冬と呼んで差支えのない時期になっていた。18時にもなると辺りは暗くなるなんて、夏ではないことも冬では常識。

 その暗闇の中を商店街の明かりに照らされて、暁は白い息を勢いよく吐き出す。


「神通さん、遅いなぁ……」


 完全なるサプライズを仕掛けようとしているのだ。もちろん待ち合わせの予定もなければ、連絡すらしていない。そもそも暁が佇んでいるそこだって、神通がいつも通る道というだけで、今日もその限りだなんて保証はこれっぽちもない。

 不安定な予定、と言えば聞こえはいいが、失敗すればただ風邪をひくリスクが大きくなるだけ。弁明しようにも「サプライズを仕掛けようとしていた」なんて、とても言えたものじゃない。
 希望的観測だけを頼りに、彼女はそこにいるのだ。マフラーに手袋、それとダウンジャケットという防寒をして。


 頭上には大きな時計。寒さに堪らず足踏みをしながら、それを見上げた。
 12、それと7を指している。午後7時ということらしい。つまり、もう待ち続けて一時間は経ったということ。

 普段ならターゲットである神通はとっくにここを通過している頃だ。


「今日は違う道を通って帰ったのかしら?」


 そんな思考が過り、帰路へ就かせようとしたときだった。


「────暁ちゃん?」

「あ……、神通さん!」

「どうしたの?もう帰ってる時間だと思うけど……」


 そこまで言いかけて、神通は今日という日を思い出す。

 腕に掛けたやけに大きな紙袋、ビニール袋の数々。

 朝とは違う柄の手袋。

 こんな時間にいつもの道を通った経緯。

 そしてやけに手を後ろへ隠そうとする暁の姿──────

 彼女は状況を察知し、微笑んで見せた。


「せっかくなので、一緒に帰りましょうか」

「え、あ…………。うん」



 ゆっくりとした歩調で、隣の小さな体躯に合わせて。

 彼女が早足になることのないように。

 帰宅中、神通は何も話さなかった。暁も特に話すことなく、相変わらず下を向いて、何かを大事に持ちながらその手を後ろへ隠していた。

 バス停から降りてしまえばもうすぐそこ。歩いて10分もかからないと思う。
 緩やかなカーブが続く道には商店街のような眩い光はなくて、民家の明かりと街灯が暗闇の中で一際に存在感を放っている。

 この時期特有のイルミネーションを施している家もいくつかあった。現役の艦娘だったときには見ることのできなかった光だ。

 青、白、赤、黄、緑……

 それらが点滅し、どこかが点くとどこかが消えた。
 
 一つ一つが重なって、合わさって、滲んで……。その結果もっと綺麗になって、こうして自分の目に飛び込んでくる。

 軍や鎮守府という閉ざされた空間で、年頃の彼女たちは外の世界に夢を見た。それも一度ではなく、何度も何度も。これを夢見なかった艦娘はきっといないだろう。
 実際は期待通りとまでいかなかったものの、このようなイルミネーションを見せられたりすると、つい見入ってしまうのだ。

 そんなふうな理由で時々立ち止まりながらも、二人は無事に帰宅した。

 家と言っても提督のもので、もっと言うと提督のものでもなく、やはり軍から提供されたものらしい。どういうカラクリでここが提供されたのか理解できないが、とにかく今はここが帰る場所。


「寒いですね……。入りましょうか」

「…………ちょっと待って」


 両手を口に当てがって白い息を吐きながら、神通は横を向く。

 暁は手を降ろし、それを前に持ってきていた。何やら小さな箱が乗せられている。提督に貰ったケッコンユビワの箱に似ているような気もしたが、それはないだろう。




「ごめんなさい。これ、渡したかったの」

「……覚えててくれたのね?」

「誕生日なのか進水日なのかわからないけど……。でも何かプレゼントしたくて」

「ふふ、どっちでも構いませんよ。ありがとう」

「学校でもだいぶ貰ったの?」

「あぁ……。はい、まあそうですね」

「それに比べたらちょっと申し訳ないけど……」

「そんなことありません。どんなものでも嬉しいですから」


 霜が降りそうな冷たい地面に大量の袋をひとまず降ろし、箱を受け取った。両手で包めば隠れてしまうほどに小さな箱。ここまで小さいと逆になんなのか気になって仕方がない。


「ここで開けてみてもいいですか?」


 無言で恥ずかしそうに頷く暁を見届けてから開けると、そこには銀色のキーホルダーが窪みに収まっていた。小さいながらも精巧にできていて、それははっきりと認識できる。
 
 細かく線が刻まれている円は、『神通』のトレードマークとも言える探照灯。その裏には力強い書体で"二水戦"

 忘れることのない、大切な二つ。
 

「あら、素敵。こんなものが売っていたの?」

「ううん。それは神通さんしか持ってないと思うわ」

「それって……」

「本当はもう少し神通さんっぽくオーダーしたかったけど、ちょっと足りなくて……」

「わざわざそこまで……。ずっと大事にします……!」

「気に入ってくれてよかった」


 サプライズ、というにはインパクトに欠けた気がしなくもないが、暁は胸をなでおろす。
 
 また「神通さんっぽく」というのが当の神通には少し理解に苦しむ表現だったものの、そんなことよりもプレゼントが嬉しくて、彼女はすぐにそれを忘れた。




「じゃあもう入りましょう?司令官は心配性だし」

「ふふ、そうですね。探しに来られても、こんな目の前だと拍子抜けしちゃうかも」

「ほんとほんと。それに、司令官も何か渡すの待ってるかもしれないわ」

「覚えててくれたら嬉しいですけど……」

「大丈夫よ、ああ見えてそういうのはちゃっかり覚えてそうだもん」

「……じゃあ少し期待しておきますっ」


 再び紙袋たちを持ち上げ腕に通すと、暁がドアを開けて待っていて、『ただいま』と大きく声を張り上げている。
 
 もらったキーホルダーは箱に戻し、他のプレゼントとは別にバッグの中へ。

 それからわざとらしく、少しどころか過度とも言える大きな期待を含んだ表情で、彼女も『ただいま戻りました』と声を上げる。きっと『遅かったね』と心配されて迎えられるだろう。そんな予感がした。
 


 それと同時に、今日は例年よりももう少し特別な日になりそうな、そんな予感もしたのだった。


なんだか随分と少ないレスになってしまいましたが投下終了

昨日は余裕がなくて一日の遅刻です……
何はともあれ神通さんの進水日をお祝いしたかった。神通さんは可愛いというか美しいですよね


失礼します



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長門「では少し頼む」

那智「ああ、任せておけ」

長門「まあ、お前なら大丈夫か」

那智「なんだ、そんなに手のかかる子たちだった記憶はないぞ?」

長門「ああ、まったく。放っておいいても問題はないと思う」

那智「随分と楽な任務だな……」

長門「……いいか、私が帰ってくるまでだぞ?」

那智「わかっている。それまで任せてくれ」

長門「…………絶対の絶対だからな?」

那智「変な奴だな、なにがそこまで心配なんだ?」



───
──
───


那智「というわけで、今日は生憎のところ長門が留守だ」

ヴェル「でもなんで那智さんなんだい?」

那智「私では何か不満か?」

ヴェル「いや、そうじゃない。嬉しいよ。ただ純粋な疑問として聞いてほしい」

那智「ふむ……。よくわからないが奴の指名だ、なんていうか……」

時雨「…………提督のこと?」

那智「あ、ああそうだ。普段は『貴様』としか呼ばないからなんて呼ぶべきなのやら……」

時雨「なんでもいいんじゃない?」

漣「そうですよ。べつにご主人様がいるわけでもないですし」

那智「ふむ……、そうだな。適当でいいか」

漣「あ、でも漣の個性がピンチになるので、ご主人様呼びだけはやめてくださいね!」

那智「はは、言われなくてもそんな呼び方しないから安心しろ」



那智「さっそくで悪いが、何か飲むものはあるか?」

時雨「飲み物ってお酒しかイメージしてないよね」

那智「……あればありがたい」

時雨「でも残念。お酒はないんだ」

那智「長門はそんなに酒豪だったか?」

ヴェル「真逆だよ。長門さんは飲まないから置いてない」

漣「オレンジジュース大好きですからねー、長門さん」

那智「お、オレンジジュース…………」



那智「わかった、この話はなしだ」

那智「では、私は主になにをすればいい?」

ヴェル「ぼーっと」

漣「気ままにすごせばいいのです」

時雨「一日を無駄に浪費するんだよ」

那智「……長門はどうしている?」

ヴェル「特に何も」

時雨「ずっと僕たちを見て穏やかな表情してるよ」

漣「ときどき混じりに来ますね」

那智「混じるのか……どうも私の知っている長門ではない気がする……」



那智「まあいい。とりあえず少し遅いが朝食だ」

那智「すぐに用意する。待っていてくれ」

漣「あ、ご飯ならもうできてますよ」

時雨「うん。あとは盛り付ければ終わり。那智さん、手伝ってもらって大丈夫かな?」

那智「そうなのか。まさかこれも長門が……?」

時雨「違うよ。今日の担当は僕と響だったよ」

ヴェル「時雨は和食で、私はブリヌイを焼いたんだ。食後にでも軽くどうぞ」

那智「……本当になんでもできそうだな」

投下終了

失礼します




──
───


那智「ご馳走様。美味かったぞ」

ヴェル「Спасибо……喜んでもらえて良かった」

那智「時雨の作った味噌汁も、な」

時雨「ふふ、ありがとう」

那智「よし、では片付けだ。これくらいは私に────」

漣「はにゃ?もう終わりましたよ」

那智「……そ、そうなのか」

那智(本当にやることがないな……)



漣「んーっ……!」

漣「日向は暖かいのですっ」

ヴェル「閉めてればね。開けるとたぶん寒いよ、今日も」

漣「だから開けなければ最強。なんだか眠くなっちゃいますね」

時雨「那智さんもおいでよ。そこは少し寒いでしょ?」

那智「私はいいさ。ここが心地良い」

時雨「そうなの……?わかった」


ヴェル「長門さんと同じようなこと言ってるね」

時雨「……そういえばそうだね」

那智「長門もここが好みなのか?」

時雨「わからないけど、いつもそこで幸せそうな顔してるよ」

那智「幸せ?本当によくわからないな、長門の奴……」



───
──────
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時雨「……どうするの?」

漣「どうもこうも、起こすのは良くないですよ」

ヴェル「とりあえず、長門さんが帰ってくるまでそっとしておこう」



長門「私はここにいるぞ」

ヴェル「えっ」

時雨「音もなく帰ってくるんだ……」

漣「おかえりなさいですっ」

長門「ああ、ただいま」



長門「それより響、私に用か?それと那智はどうしている?」

ヴェル「那智さんが転寝しちゃって、長門さんが帰るまでそっとしておこうって言ったんだ」

長門「…………転寝?」

時雨「ちょっとお疲れみたい。それとここが気持ち良かったんじゃないのかな」

漣「まあ起きるまで寝かせてあげましょ?」

長門「う、うむ…………」



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──────

───

───

──────

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長門「────ということがあってだな」


提督「それをわざわざ話しに来たのか……」

長門「も、もちろん別の用事がメインだからな!!」

提督「はぁ……。まあいいや、それでどうしたの?」

長門「漣に免じて起きるまで寝かせてやったぞ」

長門「私とあの子たちに囲まれて飛び起きる様子は見ものだった」

提督「ははは、那智のことだから随分驚いただろうな」




長門「しかしだ。私はある疑念を抱いている」

提督「疑念?」

長門「そうだ。那智へのな」

提督「少し寝ただけで疑念抱かれるとか那智も大変だなぁ……」

長門「提督、これは真面目な話だ。大真面目な」

提督「はいはい……。で、どんな疑いを?」

長門「ふむ、それはだな──────」



長門「那智の奴、あの子たちが可愛いからって時間を稼いだのではないだろうか」

提督「大真面目でそこに行き着くのかお前は」




長門「寝ればきっと起こされないと考え、あえて寝たんじゃないか、と」

長門「そうすれば可愛い駆逐艦たちと同じ空間に長く居られる、と」

提督「そこまで計算して人の家で寝ないって……」

長門「わからないぞ?那智だからな」


提督(もうこれ自分のこと言ってるんじゃないかな……)





長門「そういえば提督、聞きたいことがある。というかこれが本題だ」

提督「今度は何さ?」

長門「また軍のほうからお呼びがかかったそうではないか」

提督「ん、ああ……。たぶん他にもたくさん声かけてるよ」

長門「なぜだ?」

提督「さあ…………」



長門「……また行くつもりなのか?」

提督「艦娘のほうも極力連れて来いって言うんだよな、これが」

提督「だから乗り気じゃない」

長門「なんだ、不知火たちも一緒ならいいと言うのかと思っていたが」

提督「正直言って、戦ってるのとこうやってのほほーんと過ごすのどっちがいい?」

長門「…………現状のほうが好ましいな」

提督「だろ?たぶん不知火たちもだよ」

長門「……しかし提督だけとなると、これはこれで寂しがるんじゃないか?」

提督「嬉しいことにそういう反応をしてくれる子がいるみたいだからね。行かないのがベスト」

提督「それに残党処理だろ、きっと」

長門「ああ……。それでは不知火たちだと持て余すな」

提督「長門も大概だと思うんだ」

長門「ふふ、誰のせいなんだか……」

投下終了

まったく関係ないですけど霞ちゃんのクリスマスボイスの破壊力とんでもないですね……


失礼します



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夕立「ぽいぃ…………」

不知火「むー…………」

暁「…………」ジーッ

神通「…………ていとくー?」

提督「なんだみんな、そんな怖い顔して」



神通「提督、お話があります」

夕立「あたしも大事なお話っぽい」

不知火「夕立よりも重要なお話に伺いました」

暁「暁の用事が何よりも重大よ。最優先するべきだと思うわ」


提督「あー……、よくわからないけどわかった」



提督「とりあえず全員の用件を聞こう。神通から」

神通「はい、とても簡単なことです。最近私は、それらしいことをしていませんよね?」

提督「どれらしいことだよ」

神通「えっと、その……夫婦というか……」


夕立「それは夕立もだよ!」

暁「わ、私も一応……!」

提督「というかここにいる全員だよな、うん」

神通「……話を戻しますね」


神通「最近は私たちが忙しいのもわかります。でもちょっと……」

不知火「放置しすぎです」



提督「そうかな……。まあそう感じたならごめん」

神通「いえ、決してそういうわけではなくて……」

提督「あれ、違った?」

神通「なんていうか、その……夫婦らしいこととか……」

夕立「じれったいなぁ、夜戦だよ夜戦!夜戦っぽい!」

神通「そ、そんなこと言ってませんからっ!」

不知火「ピンク色はすぐそっちに走るって本当なんですね」

暁「……ピンクの類いだとブーメランじゃないかしら」



不知火「不知火は違いますよ」

提督「ほう、不知火は何をお望みで?」

不知火「そうですね……。買い物とか」

夕立「ペタ」

暁「相当に」

不知火「…………ライバルはいないみたいね」


提督「じゃあそういう二人は?」

夕立「夕立はさっき言ったみたいに────」

提督「あ、わかった。はい暁」

夕立「流されたっぽい!?」



暁「もちろん大人のレディだし食事に行きたいかな」

提督「あー、外食か。最近してないな」


神通「そんなに私の料理がお口に合いましたか?」

提督「それが大半」

神通「もう……♪これからも頑張りますね!」


暁「な、なんで惚気の材料にされるのよ!」



提督「で、結局神通は?」

神通「そうですね……。よく考えてみたら、私はもうそれらしくなってました」

神通「提督にご飯を作ってあげられますし、見送りも『おかえり』も言ってもらえますし」

提督「なんか少し逆な気がしないでもない……」

神通「寝るときとかご一緒できないのは少し寂しいですけど……」

提督「世間体ではJKの子と寝るとか色々アウトな気がするからね」


夕立「あたしはセーフっぽい?」

提督「夕立はさっきのでアウト入り」

夕立「作戦失敗っぽい…………」



提督「言いたいことはわかったから、できるだけ頑張ってみる」

不知火「ほ、本当にいいのですか?」

提督「暇だし」

暁「えっと……予定空けなきゃ……!」

神通「私は現状維持でお願いします」

提督「それはこっちからもお願いしたい所存」



提督「夕立は?夜戦以外で」

夕立「……さっきのは冗談っぽいよ?」

提督「本気だったらあらゆる方面から頭を抱えてたよ……」

夕立「えへへ、ちょっとからかってみたっぽい」


夕立「んー、どうしよ。でも絶対に何か考えてくるから楽しみにしててね!」

投下終了です

ということで、次の投下からまたメインとイチャイチャします

それではこのあたりで



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夕立「んー」

提督「まだやってるのか」

夕立「んー」

提督「一晩考えても決まらなかったの?」

夕立「んー」

提督「そりゃ難しく考えすぎなんだよ」

夕立「んーんー…………」



提督「とりあえずリビング徘徊しても何もないと思うんだ」

夕立「んー」

提督「おいおい、聞いてるのか?」

夕立「んー」

提督「……ダメだこりゃ」




────15分後────




提督「さすがに飽きるだろ」

夕立「んーんー」

提督「てか『ん』以外の音を発してくれ、真顔だから感情すらわからん……」

夕立「ん、ん」

提督「え?」

夕立「ん!」パタパタ

提督「……犬の耳みたいだと思ってはいたけど、その髪本当に動くんだ……」



────30分後────



提督「そろそろ座ってくれ、頼むから」

夕立「んー」

提督「気になって仕方ないから」

夕立「んー……」

提督「お菓子あげるから」

夕立「ん!ん!」パタパタ


提督「なるほど、ある意味わかりやすいな」




提督「その髪どうなってんの?」

夕立「?」

提督「触ってみていい?」

夕立「…………」パタパタ

提督「いい……ってことでいいのかな」



提督「あ、なにこれすごく普通」

夕立「…………♪」パタパタ

提督「可愛いなこれ、ふふ」

提督「でも普段は見ないこの機能みたいなの、なんで今は出てきたんだろう」

夕立「??」


提督「……まあ気にしても仕方ないか」



────1時間後────



提督「暇だからテレビつけるよ?」

夕立「んー」

提督「なんか面白いのあるかねー」

夕立「…………っ?」

提督「夕立はこの時間帯でなにか面白そうなの知って……って」


提督「いつの間に隣に座った?」

夕立「たったいまっぽい」

提督「おお、喋った」




提督「決まったの?」

夕立「うん!」

提督「それは良かった。何か協力できたらするよ」

夕立「じゃあ提督さん、そのままね」

提督「わかった」


夕立「────────♪」

提督「………………」



提督「えっと……結局なんなんだ?」

夕立「え?何もしてないよ?」

提督「決まったんだよな?」

夕立「うん!」

提督「それで、実行するんだよな?」

夕立「もうしてるっぽい」

提督「えっ」



提督「いや、座ってるだけだろ」

夕立「のんびりしながら座ってるって、なんか夫婦っぽい!」

提督「あぁ、そういうシチュエーションなのね」

夕立「提督さん、こういうの嫌い……?」

提督「違う違う、夕立のことだからもっと踏み込んだことしてくるのかと」

夕立「例えばどんなことー?」ニヤニヤ


提督「…………あんまりからかうとこっちから踏み込むぞ」

夕立「えー」






夕立「じゃあもっとからかうっぽい!」


提督「どうしてそうなった……」




投下終了

レディならセーフですね
夜中にトイレについてきてほしいって言いそうなレディでもセーフのはず
誰とは言いませんけど


それでは失礼します



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暁「ふんだ!司令官なんてもう知らないんだから!」

提督「だからあれは勢いというかなんというか……」




暁「あの店員も店員よ!私を一目見て『お子様ランチでよろしいですね?』なんて」

暁「司令官もなんで即答で『もちろんです』とか答えちゃうのよ!!」

提督「あれは本当に悪かった」

暁「だいたいね、お店選びから間違ってたのよ。どうしてもっといいお店にしなかったの?」

提督「高いから」

暁「だからってファミレスはないでしょ、ファミレスは!」



提督「それ以外どうしろと」

暁「だからさっきから言ってるようにもっといいお店!高級そうな!」

提督「……お前高けりゃなんでもいいと思ってるな?」

暁「ちっ……違うってば!」

暁「レディとしてある程度のラインは保っておきたいだけ」

提督「はいはい、次からはもう少しだけ奮発するから。な?」

暁「まったく…………」



暁「もっとエレガントなお店にしてよね」

提督「エレガントだと高いのか」

暁「何を言ってるの?当然よ。アフリカからの直輸入だし」

提督「アフリカ……?エレガントとアフリカが何か関係あるのか?」

暁「エレガントと言えばアフリカよ。動物園にもいるけどね」

提督「動物園……」



暁「もしかして見たことないの?」

提督「…………暁、一ついいかな」

暁「なに?」

提督「エレガントの意味は」

暁「え、知らないの!?象よ象、パオーンって鳴くやつ」

提督「あー…………、なるほど」



提督「一応確認するけど、象は英語で?」

暁「からかってるの?エレガントよ、エレガント!」

提督「…………なるほどなるほど、聞き間違いじゃないな」

暁「さっきからなんなのよ」

提督「あのな暁、落ち着いて聞いてくれ」

暁「???」

提督「暁がいま言ったのはエレガント」

暁「……そうよ?」

提督「象は英語でエレファント」

暁「エレファ…………んん!?」



暁「待ってよ!エレガントはどういう意味なの!?変な意味じゃないわよね!?」

提督「変なって?」

暁「え、その……恥ずかしい言葉とか……」

提督「あー、違う違う。優雅とか優美とか、そういう意味ね」

暁「ほっ……よかった」

暁「…………あ、よくない、全然よくないわ!」

暁「私は今まで『エレガントなレストラン』では象の料理が出てくると思ってたのよ!?」

提督「それは俺に言われてもなぁ……」




暁「うぅ……今日は恥ずかしい思いしてばっかり……」

提督「そういう日もある」

暁「一人前のレディを目指すのに、こんなんじゃいけないわ」

暁「せっかく最近少し近づけてると思ったのに……」

提督「べつに、背伸びしなくてもいいんじゃないかな」

暁「え?」

提督「まあそれはそれで微笑ましくて大変よろしいんだけど」



暁「せ、背伸びなんてしてないもん!」

提督「それを背伸びって言うんだよ」

提督「大丈夫だって、暁はきっと立派になるから」

暁「……どうしてそう思ったの?」

提督「わからない」

暁「ちょっと!!」



提督「冗談冗談。暁は努力してるから大丈夫だって」

暁「…………本気で言ってる?」

提督「そんな疑り深い目で見ないで……」

暁「いいわ。司令官を信じる」

暁「でも本当に背伸びじゃないんだからね」

提督「悪いことは言わないから子供の背格好してるうちは子供でいなさいな」

暁「……もしかしてロリコン?」

提督「待て待て、それはレディの言う言葉じゃない」

提督「子供のほうがね、色々と気楽なんだよ」

暁「でも自由そうじゃない?」

提督「それは幻想」



暁「でもやっぱり早く大人になって、一人前を名乗りたいかな」

提督「焦らなくても気づいたらなってるから」

暁「なんでそんなに呑気なのよ」

提督「むしろ何を急いでる。急いだってたいして変わらないからな?」

暁「それはもちろん──────」

提督「…………もちろん?」

暁「……司令官が大人だもん」

提督「なんだそりゃ」

暁「し、知らないわよ」






暁(早く大人になって、『カッコカリ』は外すんだからね)




投下終了

失礼します

お前暁だったらなんでもかわいいと思ってんじゃないの?

俺は思ってる

>>299
実際のとこ暁ちゃんを書くとなんでも可愛くなる不思議
時雨ちゃんだと何をさせても天使になりますね

投下します



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提督「ただいまー」

提督「って誰も起きてないよな、この時間だもんな。もうすぐ日付変わるし」

提督「それにしても退役したってのに無理難題を押し付けようと……ん?」

提督「明かりが……俺の部屋?なんで」

提督「留守に乗じて私物を漁るとは感心しないなぁ、誰だろう」



提督「おーい、もうそろそろ寝ておかないと────」


提督「………………神通」

提督「寝てるのかな」

提督「……なんで床に膝立ちしてベッドに伏せてるんだ」



提督「まあいいや、仕方ないからあとで起こすとして…………えっ」

提督「……コーヒーとクッキー、と。机の上まで片付けてくれたのか」

提督「私物を漁るどころか整理までしてくれるとはいい嫁さんを貰ったもんだ」

提督「ありがとうな」ナデナデ


神通「……………………ん」

提督「ん」

神通「ん……んん…………っ」


神通「てい、とく……?」



提督「あらら、起こしちゃった」

神通「おかえりなさいっ!」

提督「おっと……、いきなり抱きつくとはお前らしくもない」

神通「ずっと待ってたんです、ずっと」

神通「でも提督ったら帰りが遅すぎますっ」

提督「申し訳ない……」

神通「ふふ、いいんですよ?普段できないこともできました。ベッドを借りたり」



提督「いまも随分と眠そうだもんね。でもだいぶ眠ったな?」

神通「はい。とっても寝心地が良くて……」

提督「……ごくごく普通なんだけどなぁ」

神通「ベッドの質じゃなくて使ってる人の話です。提督が普段使ってるから良かったんです」

提督「…………神通、大丈夫か?なんか寝ぼけてない?」

神通「まさか。大好きな人が使ってるベッドと思うととても……とても居心地、が…………」

提督「??」



神通「……Zzz…………」

提督「なんかおかしいと思ったらやっぱり寝ぼけてたか」




神通「………………」

神通「…………んぇえ!?」



提督「ふふ、なんだ今の声。初めて聞いたぞ?」

神通「て、提督……。お帰りになっていたのですね」

提督「今さっきね」

神通「あの……なんで私は提督の腕に……」

提督「自分から来たんだよ?」

神通「……………………え!?」



提督「ほんとほんと」

神通「えっと、その……夢ではそういう記憶がありますけど……その……」

提督(ああ、夢見てたのか)

提督「まあなんでもいいんだけど、待っててくれたわけだよね?」

神通「はい。リビングで」

提督「リビングで待っててくれたと」

神通「はい」

提督「ふむ……。ここの部屋は?」

神通「提督の私室です」

提督「うん…………。なんでここに居るのかな?」



神通「……布団、布団です!布団が少し乱れていたので、直しておきました」

提督「あれ、そうだった?ごめんね」

神通「いえ、これくらいはさせてくださいっ」

提督「それで、そのあとは?」

神通「…………す、すみません。よく覚えてないんです。き、気が付いたらこの状況に……」

提督(あれ、話がさっきと違うな)



提督「このベッド、少し使ったりした?」

神通「!!?」

神通「……つ、使ってません。記憶が飛んでいるので曖昧ですけど、たぶん使ってないと思います」

提督「…………そうか」


提督(んん、これはどっちが正しいのやら……)



神通「て、提督?」

提督「ん?」

神通「私、そろそろお休みさせていただきますね」

提督「あ、うん。そうだな、色々ありがとう」

神通「いえいえ。もしこの後も起きていらっしゃるなら、机のクッキーを是非」

神通「……少し頑張って手作りしました」

提督「なんだそれ美味い未来しか見えない」

神通「食べてもないのに……もうっ」

提督「神通の作ったものにハズレがあった経験がないからね」



神通「と、とにかくお召し上がりください!」

神通「おやすみなさいっ!」バタン

提督「んー、おやすみー」


提督「……寝ぼけモードと普通モード、どっちが本当の神通かなぁ」

提督「寝ぼけて本心が出るのは可愛い」

提督「寝ぼけが覚めても隠し通そうとしてるならそれも可愛い」



提督「…………あー、もうどっちでもいいや」








神通「私ったら寝ぼけて変なこといったりして……、ないですよね?」

神通「でもどうして私から提督に……。あれは夢だったはずなのに」

神通「……て、提督の照れ隠しです、きっとそうですっ」

神通「でもそうだとしても提督が私を────」



神通「どっちにしたって混乱しちゃいます……♪」


机に突っ伏してしまった神通さんにブランケットをかけて朝まで眺めていたいだけの人生だった


失礼します



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不知火「ここが家電量販店……」

提督「来たことないっけ?」

不知火「恐らく」

提督「そうか」

不知火「でもなぜ不知火を連れてきていただいたのですか?」

提督「んー、暇そうだったし」



不知火「たしかに暇ではありましたが……」

提督「なら問題ないな」

不知火「………………」

提督「……それとこの前『買い物に行きたい』みたいなこと言ってたし」

不知火「取って付けたような言い方ね。本当に覚えていたのかしら?」

提督「実際いま思い出して取って付けたようなもんだから許して」

不知火「そこは嘘をついても誤魔化すべきですよ、司令」



不知火「ところで何を買いに?」

提督「電子レンジ」

不知火「……正常に見えましたけど」

提督「それがさ、タイマーが上手く動作しなくなったんだと」

不知火「それは……。かなり困りますね」

提督「そうそう」



提督「じゃあ少し店員さんに聞いて見てくるから、不知火はそのへんうろうろしてていいよ」

不知火「それは何か有益なことがあるのですか?」

提督「…………あるんじゃない?」

不知火「随分と適当ね……。まあいいです、了解しました」



───

───


不知火「とは言っても電気屋なのでそんなに興味をそそられるようなものはないわね」

不知火「特に機械が好きとかでもないですし」

不知火「……テレビがやけに大きいし同じ番組ばっかり流しています。何が楽しいのやら」

不知火「っ?これは……?」

不知火「マッサージチェア……?やたらごつい。逆に凝らないのかしら」

不知火「それにこの額……!?怖くなってきました」




不知火「この場は離れましょう。買うものと勘違いされては────」


不知火「無料……体験、可能……」

不知火「…………」キョロキョロ

不知火「敵影なし、と」



不知火「物は試しとやらです。不知火、突撃します」



────30分後────




提督「終わった終わった。少し時間食ったな」

提督「さーてと、不知火は……」

不知火「あああ~………………」

提督「……まあ、こうなるな」



提督「おーい、不知火ー」

不知火「あ、あ、そこ凝ってる……んんん~……」

提督「おっさんかお前は」

不知火「あ、司令。お疲れです」

提督「随分とそれが気に入ったようで」

不知火「買っていただけますか?」

提督「手が出ないよ……」



不知火「あ、来た、あっ」

不知火「背中、そこ、んんっ……」


提督「……これ何回目?」

不知火「恐らく4回目くらい、ですっ……」

提督「逆に疲れそう」




提督「じゃあそれ終わったら帰ろうか」

不知火「了解です、んっ」

不知火「は、あ、そこ…………」

不知火「はあああああ…………♪」

提督「あー、完全に蕩けてるな……」


不知火「あら、終わったのかしら」

提督「まだあと二分あるみたい」

不知火「え、にふ、二分もまだ……んんんんんんんんっ」



提督「………………ダメだこりゃ」

投下終了

不知火ちゃんのだけもう一回続きます

それではこのあたりで



───
──


──
───


不知火「…………先ほどはお見苦しいところを……」

提督「はは、たしかにマッサージチェアであんなに悶える人は初めて見たよ」

提督「それとな、不知火」

不知火「はい」

提督「もう少し離れて歩いてくれるかな」

不知火「なぜですか?」

提督「なぜって、歩きにくいから」

不知火「歩きにくい……?」




提督「なんでそこで『うわ、なんだこいつ』みたいな目で見るの……」

不知火「不知火は司令とケッコンしていますよ」

提督「カッコカリね」

不知火「ケッコンはケッコンです。指輪まであります」

提督「いや、そうなんだけども」

不知火「……不知火では不満ですか?」

提督「滅相もない、勿体ないくらいです、はい」



提督「でもいつかも話したけどね、世間体的には問題がありすぎるわけよ」

提督「ほら、不知火みたいなまだ子供の格好してる子と並んで歩くと、まあだいたいの場合は親子って認識されるよね」

不知火「ええ、知っていますよ」

提督「うん。それがいきなり『夫婦です』なんて大真面目に言ったら、五度見くらいされるかふざけてると思われるかの二択だ」

不知火「………………」

提督「だから外ではなるべくそういう事は言わないでおく。OK?」

不知火「…………むー」





店員「お待たせしましたー」

提督「あ、どうも」

店員「こちらの電子レンジ、お届けもできますが如何いたしますか?」

提督「普通に持って帰ります」

店員「かしこまりました。包むので少々お待ちください」


不知火「………………」



店員「可愛いお子さんですねー」

不知火「…………」イラッ


提督「え、ああ……、ははは……」

店員「ふふ、お父さんっ子ですか?」

不知火「不知火は司令の子供ではありません」

提督「…………」


店員「あ……、変なこと聞いちゃいました……?すみません」

提督「い、いえ、お気になさらず……」

不知火「気にします。不知火はこの人のお嫁さんですから」

店員「…………えっ」


提督「」



店員「け、結婚してる、の?」

不知火「ええ、していますよ。指輪もちゃんとあります」

店員「随分と手が込んでる……」

不知火「は?」


店員「あ、わかった!大きくなったらお父さんと結婚するんだ?ふふっ、可愛い~」

不知火「…………沈め」


店員「ひっ……」



提督「す、すみませんやっぱり郵送でお願いします!!」

提督「行くよ不知火!」グッ

不知火「むー…………」

店員「………………」




店員「さっきのあの子の声、本気だった……」



───

───


提督「だから言っただろ?無理に引っ張ってきてよかった」

不知火「……すみません」

提督「気を付けろよほんとに……」


不知火「でも不知火にはできません」

提督「え?」

不知火「親子のフリをするなんて不知火には……」

提督「べつに、普通にしてればいいんだよ。勝手にそう認識されるし」

不知火「それも嫌です」



不知火「不知火は司令の子供ではありません」

提督「そうだな」

不知火「つまり親子ではありません」

提督「うん」

不知火「では、不知火と司令は何なのですか?」

提督「夫婦」

不知火「そうですね。つまり不知火は司令のおよm…………」



不知火「~~~~~~~っ!!」

提督「さっきは人前で自分から言ったのに……」

投下終了

まさかコミケにまで行って艦これ関連のアレンジやオリジナル曲のCDばかり持ち帰ることになるなんて思ってもいませんでした……
やっぱりキネマ106さんの艦これ関連は別格ですね

もう参加された方、明日も参加される方、お疲れさまです


失礼します




──
───
────



漣「明けましておめでとうございます、ご主人様っ」

提督「今年もよろしくね」


漣「えへへ……。なんか面と向かって真面目に言うと恥ずかしいですね」

漣「やっぱり漣には『あけおめことよろ』くらいのノリが一番似合う気がするのです」

提督「それはわかる」



提督「それで、新年早々に遊びに来たと」

漣「んー、みんなまだ寝てるんですよね」

提督「え、もう11時になるけど……」

漣「俗に言う寝正月ってやつですね、たぶん」

提督「呑気だなぁ」

漣「ですよねー。ちゃんと7時には起きた漣を褒めてくれてもいいんですよ?」

提督「うわ、珍しいこともあるんだ」

漣「む、なんですかその言い草は!」



漣「こう見えて節目ではしっかりしてるんですからね!」

提督「旗艦で出撃予定の大規模作戦当日に1時間の寝坊をしたのはどこの駆逐艦だっけなー」

漣「…………か、過去は掘り返さない!漣は変わったんですからねっ」

提督「本当かよ」

漣「本当ですって!いまここにいるのが証拠です!」

提督「ふふ、わかったよ」



漣「ご主人様って漣の扱いがたまに雑ですよね」

提督「そう?」

漣「これでいて初期艦なのに酷くないですか?」

提督「だとしたらそれは初期艦だからこそ、かな」

漣「初期艦だから扱いが雑ってどういうことなの……」

提督「人聞き悪いなぁ、付き合い長いから自ずとそうなっただけだよ、きっと」

提督「漣ってだいぶ適当な雰囲気だから絡みやすいんだよ」

漣「いまのは聞き捨てなりませんね?ねぇ??」



提督「ほらな、ちょっとからかうとすぐ反応してくれるし、飽きないし」

漣「……褒められてるのやら貶されてるのやら」

提督「褒めてる褒めてる。一緒にいたり話したりしてて飽きないってことだから」

漣「あーなるほど、そういうことなら褒められてますね。納得納得」



漣「………………って!え!?」

提督「えっ?」



漣「一緒にいても飽きないってその……つまり?」

提督「いや、そのまんまだけど」

漣「漣といると楽しいってこと……?」

提督「まあそうなるんじゃないかな」

漣「……い、いきなり何を言い出すんですかっ!」

提督「ぐほっ!?グ、グーパンチはやめてくれ……」


漣「平気ですって、本気じゃないですから」

提督「……思ったより痛くなかった」

漣「なんですか?本気がいいです?」

提督「艦娘のパンチは本当に死ぬからやめて……」




漣「そういえば、元旦の過ごし方で一年が決まるみたいなことよく聞きません?」

提督「ああ、聞くかも」

漣「今年は何かと漣に殴られるような年になりそうですね!」ニコッ

提督「……やけに楽しそうだな、お前」

漣「えー?そう見えますかー?」

提督「思いっきり」



漣「……いきなり押しかけたのも、実は願掛けだったりするのです」

提督「へぇ、どんな?」

漣「それを言っちゃ面白くないですよ。精々考えるんですね」

提督「そう言われてもな……」

漣「ふっふっふー……♪漣からのネタバレは無しの方向ですっ」

提督「えー…………」



漣「────────」






漣(今年も、たくさん一緒に過ごせますように)




明けましておめでとうございます

今年初の投下は漣ちゃんから
本年もよろしくお願いします


それではこのあたりで



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提督「それで、突然呼び出すとはどうした?珍しい」

長門「ああ、別に大した用じゃない。気を張らなくていいぞ」

提督「ほう……」

長門「──────♪」

提督「…………」



提督「なぁ長門」

長門「なんだ?」

提督「その、結局なんなんだ?俺には料理してるようにしか見えないんだけど」

長門「そうだな。まさにその通りだ」

提督「……え、料理してるところを見せるためにわざわざ呼んだの?いや確かにあんまり見ないけども」

長門「ふふ、エプロンなど着けたのはいつ以来だかわからないな」

提督「てか着けたことあったっけ?」

長門「…………言われてみればないかもしれない」

提督「そうだよね、見たことないもん」



長門「まあそう焦るな。落ち着いてただそこで待っていてくれればそれでいい」

提督「今はそうしておくよ。せっかくだしな」

長門「たまには私の手料理もいいだろう?」

提督「でも作れるならなんでいつも駆逐艦の子たちに任せっきりなんだ?」

長門「いくつか理由はある。一つはあの子たちからの申し出だから」

長門「もう一つは私がそれを食べたいから」

長門「さらにそれが美味いからと来て」

長門「極め付けには断る理由がない、というか断れない……、いや、断りたくないからだな」



提督「完全に長門の私利私欲じゃねーか」



長門「なっ……し、失礼な!本人からの申し出だ」


長門「では逆に、提督は断るというのか?」

提督「…………あー、断れないわ」

長門「ふっ、同志ではないか」

提督「なーんか悔しいなぁ……」




長門「そうこうしているうちに出来上がったぞ」

提督「……壊滅的に下手とかじゃないよな?」

長門「疑う前に食べてみるんだな」

提督「お、見た目は普通じゃん」

長門「当たり前だ。私をなんだと思っている」



提督「────ん、美味い……」

長門「良かった。久しぶりだったからな。ビッグセブンとはいえ少し不安は残っていたが」

提督「いや、普通に美味いよ。なんであんまり作らないんだ?」

長門「……陸奥に言われてな」

長門「『強くて頼れる長門が、当たり前のように料理をしたら何か違和感がある』と」

提督「あー…………。それはある」



提督「でもなんで今日はこうして、わざわざ呼んでまで振る舞ってくれたわけ?」

長門「駆逐艦の子たちが外出していて、夕方まで帰らないらしい」

提督「そりゃ知ってるよ、不知火たちも一緒だし」

長門「つまり、どんなに嫌でも自分で作らねばならない。まあ、嫌というわけではないが」

提督「で、せっかくだからと御呼ばれしたのか」

長門「一人というのは寂しいだろう?私も、提督も」

提督「はは、それもそうだ。俺もちょうど良かったよ、ありがとう」


長門「…………それと、陸奥からもう一つ……、こう言われた」






長門「『大切な人ができたときには振る舞うと喜ばれるはず』」




長門「私の手料理を食べたのは陸奥だけだ。つい先ほどまでは、な」




投下終了

主婦な長門さん、いいと思います



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提督「ごめん、そこのその……なんていうのかな」

ヴェル「えっと……、これかい?」

提督「そうそう、その部品」

ヴェル「渡せばいいんだね」

提督「うん。ありがとう」



ヴェル「急に暗くなって何事かと思ったよ」

提督「蛍光灯が切れるのはちょっと予想してなかったな。夜じゃなくて良かった」

提督「……これでよし、と」

ヴェル「大丈夫かい?」

提督「ん?ああ、一応椅子の脚押さえといてくれるとありがたい」

ヴェル「了解。気を付けて」




提督「いやー、響がいて助かった」

ヴェル「…………。たまたま来ただけなんだけどね」

提督「さすがにこれを見越して来てたら凄いよ……」

ヴェル「ふふ、それもそうか」



ヴェル「そういえば、司令官にずっと前から聞きたいことがあるんだけど、聞いていいかな?」

提督「聞きたいこと?なに?」

ヴェル「改装してからの私は、以前より強くなったね」

提督「耐久やら対潜やらでかなり安定してたな。頼もしかった」

ヴェル「うん……。でも一番大きく変わったのって、もっとわかりやすくて、表に出てることだと思うんだ」

提督「…………名前のこと?」

ヴェル「……さすがにわかっちゃうよね。正解」



提督「横文字になったよね」

ヴェル「横文字って……。まさか忘れてないかい?」

提督「そんなはずないよ、鎮守府最高練度でエースだもんな」

ヴェル「じゃあ私のいまの名前は?」

提督「ヴェールヌイ。信頼できる、って意味」

ヴェル「……そう、Верныйだ」



提督「じれったいな、つまり何が言いたい?」

ヴェル「私は今はВерныйなのに、司令官はずっと『響』で呼ぶよね?」

提督「あ……、もしかして気に障ったかな、忘れてるとかじゃないんだ」

ヴェル「そうじゃないよ。ただ、どうしてかなって思ってたんだ」

提督「……つまりいまだに『響』って呼ぶ理由が知りたいと」

ヴェル「うん。もしよかったら教えてほしい」

提督「うーん……いろいろあったりするんだけど……」

ヴェル「……そんなにいろいろ考えてくれてるのか」


提督「まあ…………。じゃあひとつずついこう」



提督「まずは一番理由っぽいのね」

提督「名前が変わったからって、それまでのことがまるっきり変わったわけじゃない」

提督「日本で生まれて日本で活躍したそれは変わらないから、響は響だ」

ヴェル「ふふ、それは当たり前だよ。私は日本の艦だからね。不死鳥の名は伊達じゃない」



提督「次に、『響』のほうが馴染んでるし呼びやすい」

ヴェル「……司令官のことだからたぶんそれが一番大きな理由だよね」

提督「いやいや、違うぞ。もっととんでもない理由がある」

ヴェル「とんでもない……?」

提督「いいか響、心して聞けよ?」

ヴェル「う、うん」



ヴェル(どんな凄い理由なのかな……)






提督「──────これはな、呼び方を変えるタイミングを完全に見失った結果だ」


ヴェル「聞いてしまってここまで後悔することも珍しいよ司令官……」






ヴェル「一つ目で……、聞いても二つ目まででやめておけば感心できたんだけど……」

提督「まあまあまあ……。もちろん最初の理由もあとから付け足したわけじゃないから」

提督「それとも『ヴェールヌイ』とか『ヴェル』のほうがいい?頑張って今からでも変える努力はするけど……」

ヴェル「………………」ジーッ

提督「………………」



ヴェル「…………ふふっ、いいよ、いまのままで」

ヴェル「むしろそのままでお願いしたい」

提督「え、いいの?」

ヴェル「構わないよ。暁や他のみんなも、私をそう呼ぶ人はたくさんいるからね」


ヴェル「でも本当の理由はもっととんでもないこと」

提督「と、とんでもないこと……」

ヴェル「いいかい司令官、よーく聞いてね?」








ヴェル「一番大きな理由は、司令官に『響』で呼ばれるのが大好きだからだよ」






ヴェルちゃんはイチャラブするよりもしっとりとほのぼのした時間を過ごしたい……
もちろん砂糖加えても可愛いのは言うまでもないです


次の投下は時雨ちゃんの予定ですが、地の文が入るかもしれません

それでは失礼します



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 空間を切り裂き、腹に響く凶悪な轟音が鳴る。部屋の隅に置かれた黒っぽい箱からだ。いったいどこにこれだけの爆音を作る要素があるのか不思議に思う。部屋で鳴らすには十分に爆音、という意味だ。

 その音を確認すると満足したのか、右手が無意識に止まり、弦に触れ、音を消した。たちまち部屋には静寂が戻り、また雨音が聞こえるようになる。

 でも静寂はどうも気に入らないようで、これもまた無意識に右手が動く。それに呼応して左手も指板で踊りだした。きっと手だけが意識とは違う別のところにあって、自分とは違う生き物なんじゃないかな。いつもそう思えて仕方がなかった。

 再び雨音は掻き消され、部屋には重低音が。

 細かく、素早くリズムを刻む重低音が切り裂く。それを発するのは震えるような動作でひたすらに六弦を弾く右手と、時々上下にポジションを変えるだけの左手。もちろん部屋の隅にある箱だって共犯者で、近所迷惑もいいところ。

 それでもなんとか爆音の理由を述べるとすると、雨だから少しくらい大きくてもそこまで聞こえないと思った。そんな保証はどこにもないけれど……。


 今度は左手が満足したのか、演奏を終わらせようと素早く下のほうへスライドし、適当なところで素早く上へスライド。

 さっきとはまた違う、リズムもなにもない重低音が唸りを上げる。

 音が好きで最初から頻繁に使っていたこれは、どうやらグリッサンドというらしい。エレキギターにおいてはこのグリッサンドとピックスクラッチができると、なんでも格好のいい音になって非常に便利だと思う。アコギにはない音だ。

 ストラップを外しスタンドに立てかけた。

 美しい。流線形も塗装も、ピックアップでさえ美しい。

 ラッカー塗装はいい具合に木目を残し、赤に近いのが縁の色。内側につれてだんだんとオレンジっぽい塗装が施されている。



 ずっと立っていたためさすがに足が疲れて、不意に窓際の椅子へ腰を下ろし、降りしきる雨をただ眺めていた。爆音もいいがこの雨音も嫌いじゃない。ずっと聞いていると外にいるような錯覚を起こしそうだ。

 少し目を凝らすと他より開けた空き地があって、そこはちょうど時雨や長門の住まいがある。というかほとんど目の前にあると言っていい。

 開けたとは言っても本当に何もない。某アニメで定番となっている土管のようなものもない。それが理由なのか、そこにはだいたい誰もいなくて、横を通ったときでも特に気に留めることもなく素通りできるほどだった。

 そんな場所なのでもちろん人などいないものとして、何も考えずに眺めていた。そもそもこの大雨で人がいたとすれば逆に興味が湧いてくるはず。ぜひともお目にかかりたいものだ。

 目線を上にやると灰色の雲が空を覆いつくし、狂ったように雨粒を地面へ投下している。あれがもし爆撃機なら、いまごろこのあたりは焼け野原どころの被害じゃないな、なんてしょうもないことが頭を過る。それだけ暇ってこと。

 視線を空き地へと戻した。相変わらず面白みのない場所だった。晴れの日とは違って水たまりくらいはあるかもしれないけれど、別段面白いものでもない。


 下の階にはたしか神通がいたはずだ。最新の記憶だと洗濯物をたたんでくれていたが、さすがに終わって退屈しているに違いない。

 特に用があるわけではないが、なぜか様子が気になることというのが稀にある。今がそれだった。

 一度だけ視線を外し、またすぐに空き地へ。それから迷うことなく部屋を出て、階段をゆっくりと降りて、訳もなく神通に話しかける。そんな予定だった。きっと温かい飲み物を勧めてくるだろう。

 だが一度だけ視線を外し、またすぐに空き地へ戻したとき、その予定が派手に音を立てて崩れていった。

 ────雨の中に佇む、だいぶ記憶に濃い人影。遠目でも認識できるほどに。

 迷うことなく乱暴に部屋を出て、予定にはなかったような勢いで階段を駆け下り、真っ先に玄関へ。後ろから神通の声がした気もするが、それをまともに聞く暇もなく、次の瞬間には傘を片手に飛び出していた。天気は窓から見たものとまったく同じで、これも面白みに欠けている。

 飲み物くらいは飲んでくれば良かったかもしれない、と後悔してみるものの、すでに体中が雨に濡れてしまってとても易々と戻れるものではなかった。今さらながらとんでもない雨だ。

 ここまで濡れていると傘なんて邪魔でしかない。片手に持ったまま一瞬だけ立ち止まった後、空き地へ向かって走り出した。


───
──







「あ、やっぱり時雨!」


 聞き慣れた声に名前を呼ばれて、思わず振り返った。

 まさかこんな雨でわざわざ外に出てくるのは僕くらいだし、ましてや出てきたうえに僕に用がある人なんていないと思っていたけど、それが目の前で壊された瞬間だ。

 その人は傘を持っているのになぜか使わないでいて、体中がずぶ濡れ。まるで僕みたい。


「提督……?どうしてここに?」

「それはこっちの台詞だよ。なんでこの雨なのに家に入らないんだ?」

「ふふ、僕も気になるよ。この雨なのに、どうして傘も差さずに飛び出してきたの?」

「時雨っぽい子がここに居るのが見えたから」

「…………そっか」


 心配して飛び出してきてくれたんだって知って、なんだか少し恥ずかしいような嬉しいような気持ち。

 我ながら本当に単純だと思う。なるべく表情や態度に出ないようにすることで精一杯。


 それから僕は洗いざらい提督に話した。

 みんなまだ外出しているらしいこと。

 僕だけたまたま早く帰って、でも合鍵を忘れて入れないこと。

 雨に濡れるのが好きなこと────

 最後のは驚かれたけど、結局は「時雨らしい」って笑い飛ばしてくれた。僕もこれは「僕らしい」と思っている。



「あー、じゃあ傘差さないよな、濡れるのが好きなら」

「うん。それに今から使ってももうずぶ濡れだよ」

「俺ももうだいぶ……。そう考えれば傘とかいらなかったな……」

「あはは、そうかもね。でも、ありがとう。僕を心配して出てきてくれて」

「当たり前だ、時雨じゃなくたって心配するぞこの雨は」

「むぅ……。僕だから心配してくれたんじゃないの?」

「い、いや、時雨っぽい格好だったから飛び出してきたのはかなりあるし、というかそれしかないし」

「……ふふ、そんなに取り乱さないでよ。僕が悪いみたいじゃないか」



 少しだけ意地悪をしてみた。こうなることはわかりきっていたけれど、提督が僕の知っている『提督』のまま、何も変わってないことをなんとなく確認したかったんだ。相変わらずで良かった。

 ふと気が付くと提督が横にいて、灰色の空を見上げている。僕と同じように雨に濡れていた。傘を持っているのに使わないで濡れる人なんて、何も知らない人が見たら絶対に変な人だと思うだろう。

 僕だっておかしな人だ。傘を持っていないで濡れている。十分に変だと思う。

 でも提督と二人で、同じような状態でいられることがどこか心地良くて、何も言わずに僕も空を見た。

 雨粒。

 冷たい。

 当たり前だけど冷たい。寒い。

 続ければ寝込むことになるのは明確だ。




「提督、戻らなくていいの?風邪引いちゃうよ?」

「それは時雨もだろ?」

「僕は大丈夫」

「大丈夫なわけあるか、時雨だって風邪は引くだろうに」

「ああ、うん。僕は何度も引いてるから大丈夫ってこと」

「それは大丈夫なうちに入らないと思うよ……」

「慣れって素晴らしいよね」

「慣れは怖いぞ」




 それから10分と少しくらい雨に濡れながら話していた。話というか、堂々巡りのほうが近いけど……。

 結果的に僕が折れて、提督のところで雨宿りさせてもらうことになった。本当はもう少し粘って雨に濡れながら話していたかったけど、それは提督には内緒。

 話したって「風邪を引くだけ」と言われるだろうし、こうしているのが心地良いなんて言ったら絶対変な印象を持たれるだろう。これは間違いないと思う。ただでさえ不思議な子みたいなイメージを持たれてそうなのに……。

 歩いてる時は、ずぶ濡れだったけど傘を差した。二人くらいなら余裕で入れる大きな傘で、邪魔にならないように少し離れても大丈夫。もう少しくっつきたかったけど、これも内緒。

 やっぱり提督も寒いみたいで、空いた片手に息を吐いたりして凌いでいた。


「さすがに寒いなー、濡れてるから尚更に」

「冬だもん、仕方ないさ。大丈夫?傘持つの代わる?」

「時雨が持ったら俺は少し屈まないとな」

「僕が目いっぱい手を伸ばすから平気だよ」

「ふふ、ありがとう」


 けっこう本気だったんだけど、どうも提督はそう捉えてくれなかったみたいで軽く受け流されてしまった。でもまあ、無理もないことかなとは思う。









 そんなに遠くないから時間はかからなくて、5分もしないで到着。

 神通さんが心配そうに、でも安心したような顔で出迎えてくれた。提督に対しては少し怒ってたようにも見えた。

 聞き耳を立てていてわかったのは、どうやら本当に突然飛び出してきたらしいってこと。「本当に心配したんですから」と、神通さんが説教をするのも頷ける。僕は黙って、少し苦笑いで見ていた。同じ立場なら僕だってそうしたはずだから……。


「時雨ちゃんを迎えに行ったってことですか?」

「そうそう。まさか放置するわけにもいかないし」

「でもせめて傘くらい差して行ってくれれば良かったのに……」

「そうしているうちにも時雨は雨に濡れてしまう……!」

「それではミイラ取りがミイラですよ」

「いや、ごめんごめん。とりあえず先に時雨を中に入れてあげて。本当に風邪引くから」

「はぁ……、わかりました。時雨ちゃんは愛されてますね、ふふっ」


 聞いている僕が恥ずかしい。寒かったのに暑いくらい。
 
 でも逆に、少し寒気がしてきたような感じもする。


 今だけでも暖かいものに触れたくて探してみたけど、生憎そんなものは持ち合わせていなくて、さり気なく提督の手を両手で掴んだ。




「提督は暖かいね」

「ん、そう?今はわりと冷たいほうだと思うけど」

「じゃあ僕が冷えちゃったんだ」

「そんなに?」

「あはは……。ごめんね。僕、もう風邪引いちゃったかも……」




──
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時雨ちゃんは天使
ひたすらにほのぼのする時雨ちゃん回はまだ続きます


それではこのあたりで




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提督「具合はどう?」

時雨「提督……、ありがとう。僕は大丈夫」

提督「雨に打たれるのが好きでも、もうあんなマネするんじゃないぞ?」

時雨「うん……。気を付けるよ」

提督「よし。じゃあ早く寝て、早く治すんだな」

時雨「……ごめんね、みんなに迷惑かけちゃった……」

時雨「提督だって風邪がうつるかもしれないのに」

提督「気にしない気にしない。じゃないと神通がやるって言うからな、神通に寝込まれちゃまずい」



提督「じゃあ俺はもう行くから、ゆっくりね」

時雨「…………待って」


時雨「欲しいものがあるんだ。話し相手が欲しいな」

提督「……寝なくていいのか?」

時雨「まだ眠くないよ」

時雨「いい……、かな?」



提督「…………。よっしゃ、そういうことなら付き合うよ。時雨が眠くなるまでね」

時雨「…………!ありがとうっ」



時雨「まず何から話そうか」

提督「わざわざそれを決めようとするあたりが時雨らしいな」

時雨「雨に濡れてたときもそう言ったよね。何が僕らしいって?」

提督「いかにも時雨がやりそうなことをやってれば時雨らしい」

時雨「意外と曖昧なんだ……」


時雨「そういえば、提督は風邪引かなかったの?」

提督「いまのところね」



夕立「時雨!?風邪っぽい!?」

提督「うお、急に入ってくるなよ」

時雨「夕立、大丈夫だから。それより君にうつっちゃうよ?」

夕立「時雨の風邪なら喜んで貰うっぽい!」

提督「何言ってんのこの子……」



夕立「熱は?寒くない?えっと、飲み物とか……」

時雨「あはは、夕立も相変わらずで安心したよ。熱も大したことないし、寒くもないし、飲み物はさっき貰ったから」


夕立「……ん、この服夕立のっぽい?」

提督「あ、言ってなかったね。時雨の服がずぶ濡れで洗ってるから、その間は夕立のを貸してるんだ。ごめんな」

時雨「……だからぴったりだったんだ」

提督「夕立、少し貸しててもいいかな?」

夕立「平気だよ。時雨、早く元気になってね」

時雨「ありがとう。夕立も早く出たほうがいい、本当にうつっちゃうから」



夕立「んー、どうしよ。うつっても大丈夫っぽい」

提督「いやいや、バケツかけて治るわけじゃないから……。てかバケツとかここにないし」

時雨「夕立、僕からもお願い。風邪なんていいことないよ」

夕立「…………あるよ、いいこと」

時雨「え?」


夕立「いまだってその真っ最中っぽい」

提督「なんのことだ?」




夕立「時雨、提督さんが付きっきりっぽい。いいなぁ」

時雨「な……っ!ち、違うってば!そういうわけじゃなくてその、提督はただ話し相手に……」

提督「そうそう、本当に話し相手ってことでここにいる」

夕立「えー?本当?」

提督「ほんとほんと。まあ看病ってことで来たのはそうだけども」

夕立「あれー?時雨、また熱上がったっぽい。顔真っ赤だよ~?」

時雨「……!?」

時雨「そ、そうかもね、うん。じゃあ頭まで布団被って休むよ」バサッ

夕立「……ふふ、少しからかいすぎたかも。提督さん、時雨をよろしくっぽい」

提督「まったく、好き放題からかいやがって……」



───

───



時雨「……………………行った?」

提督「夕立のことならとっくに」

時雨「ふぅ……。ごめんね、色々と」

提督「これだって時雨が謝ることじゃない」

時雨「ううん。夕立は妹だし、僕はお姉さんだから。僕が謝らないとね」


提督「はぁ……ほんと……」

時雨「ど、どうしたの?」

提督「時雨、お前は本当にいい女性になると思う」

時雨「え……、や、やめてよ急に、恥ずかしいじゃないか……」

投下終了

時雨ちゃんはもう一回だけ続きます

それではこのあたりで



一回と言わず何回続いてもいいのよ?



────
───
──


──
───
────



時雨「────電話、誰からだったの?」

提督「長門。時雨がいないけどそっちに行ってるかって」

時雨「……あ!そういえば言ってなかったね……」

提督「ほんとな、時雨の相手してたらすっかり忘れてたよ」


提督「それで一連の流れ話して、ひとまず今日は泊まりってことにしておいたから」

時雨「え、泊まり……でいいの?」



提督「まさか病人をこの雨の中で帰すのも気が引けるというか悪化するだろ。というかもう随分といい時間してるし」

時雨「で、でも……悪いよそんな」

提督「大丈夫大丈夫、みんな『時雨なら無期限でいい』って」

時雨「…………ふふ、ありがとう。じゃあ甘えさせてもらうね」



提督「眠くならない?」

時雨「少し眠くなってきたかな……。いま何時なの?」

提督「んーと……、もうすぐ23時」

時雨「あれ、もうそんな時間なんだ。提督といるとすぐ時間が経っちゃうね」

提督「それは嬉しいけど、風邪引きにしては遅いくらいの時間だぞ?」

時雨「うん……。今日は佐世保の時雨も、そろそろ看板かな」

提督「それがいい」



時雨「提督、平気?気分悪くなったりしてない?」

提督「なんでさ?」

時雨「もしうつっちゃったりしたらって……」

提督「ああ、うん。いまんとこ平気」

時雨「提督ってば最初はマスクしてたのに途中から外しちゃうんだもん。気が気じゃないよ……」

提督「あはは、そういえばそうだったな。息苦しくてつい」

提督「それに話し相手がマスクしてるってなんか変な感じするだろうし」

時雨「そんな心配はいいんだ、僕は提督にうつらないかってほうが心配なんだから」



提督「まあでもそんなこと言い出したら時雨を隔離して放置することになっちゃうからさ」

時雨「っ……。ぼ、僕は平気さ。独りは慣れてるから」

提督「本当に?」

時雨「うん……。だから提督も、もう部屋で休んでよ。今日はいろいろ疲れさせちゃっただろうし」

提督「そんなことないけど……。まあ時雨がそういうならそうさせてもらおうかな」

時雨「うん。おやすみ、提督」

提督「おやすみ。ゆっくり休んで早く治してな」

時雨「…………──────」

時雨「寂しいけど、これでいいんだ」


───
──









提督「────────」

夕立「あ、提督さん!」

提督「ん?おお、夕立か。どうしたこんな時間に」

夕立「ううん。寝る前に時雨におやすみって言ってきたの」

夕立「それで、そのついでに喉が渇いたからジュースでも飲もうかなーって思ったっぽい」

提督「本当に仲が良いのな。ジュースならオレンジが冷蔵庫にあるよ、未開封の」

夕立「うん」



夕立「……提督さん、時雨の傍に居てあげなくていいの?」

提督「頼まれたら一晩でもいてやろうと思ったけど、部屋で休んでくれって言われた」

夕立「嘘?」

提督「嘘言ってどうするよ。独りでも大丈夫だってさ」

夕立「…………それは強がってるよ。時雨、あれでも寂しがりだから」

提督「…………やっぱそうだよな」

夕立「え、気づいてるっぽい?」

提督「まあ……。あのまま粘ってもまともな理由がないと時雨は折れそうにないし、とりあえず引き上げてきたんだ」

夕立「……理由はできたっぽい?」

提督「いや……」

夕立「…………仕方ないなぁ」

夕立「提督さん、あのね──────」



──
───






提督「しーぐれー」

時雨「え、て、提督?どうしたの?忘れ物?」

提督「いやいや、ただ単に舞い戻ってきた」

時雨「そんな……、ダメだよ。言ったじゃないか、うつるって」

提督「そのことだけど、夕立に言われたんだ」

時雨「え?」

提督「『もううつってるかもしれないから、なるべく出歩かないでくれ』って」

時雨「夕立……それは酷いんじゃないかな……」

提督「ははは、でも真っ当だろ?」

提督「てことで、治るまでは付きっきり確定。わかったら早く寝なさいな」

時雨「提督…………。ありがとう」



時雨「姉妹艦はみんな大丈夫かな?」

提督「夕立のこと?」

時雨「あ、ううん。夕立もなんだけど、村雨とか春雨とか」

提督「あぁ、その二人なら鎮守府に残ってるはず。なんで急に?」

時雨「僕みたいに風邪なんて引いてないかな、って思って」

提督「ふふ、変な時雨だな。それよりも自分が早く治して遊びに行ってやりなよ」

時雨「……そっか。そうだよね!おやすみなさい、提督」

提督「おうよ」



夕立「………………上手くいったっぽい」

夕立「あーあ、風邪が治るまでだからね、時雨っ」

夕立「…………」






夕立「姉妹艦かぁ……」

>>390 時雨ちゃんを書きたいのは山々ですが他の子も書きたい……っ!
今回が最後なわけではないので、そのうちまた出てくる予定です


ということで時雨ちゃん回も終了

次回から少しの間視点が変わる予定ですが、まだ決めてない艦娘なども少々いるので、困ったらリクエスト枠も軽くあるかもしれません。
その時は何卒よろしくお願いします……


それではこのあたりで



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


村雨「今日の見回りも異常なーし」

春雨「もう終わったんですし、そんなにいても困りますけど」

村雨「でもいるかもしれないわよ?いまも足下に……」

春雨「え!?」

村雨「ふふ、冗談よ。いないから安心して」

春雨「ふぅ……」

村雨「さ、それじゃ五月雨も待ってるだろうし、帰ろっか」

春雨「はいっ」




村雨「──────────♪」

春雨「………………、…………」

村雨「…………どうしたの?あんまり余所見ばっかりしてると転ぶわよ」

春雨「だ、大丈夫で……すっ!?」

村雨「あっ、もう」



春雨「うぅ……寒い……冷たい……」

村雨「だから言ったのに……。ゆっくり行く?」

春雨「い、いえ……。早く帰って暖まります……」

村雨「そう。今度は転ばないように、波にはしっかり乗らないとダメよ?」

春雨「はい……」

村雨「まあ、これは基本だから大丈夫か」

春雨「……あの、村雨姉さん」

村雨「はいはーい」

春雨「あの、どうして転んだ時だけ服とか濡れるんですか?戦闘で水被ってもそんなことないのに……」

村雨「さあ…………」

村雨「ま、それはいいとして飛ばすよ。こんなところに居たって寒いだけだしね」



春雨「………………────……」

村雨「…………っ?」

春雨「……綺麗…………」

村雨「え?」

春雨「あ、いえ。海が綺麗だなーって」

村雨「毎日のように見てるけど……。それに見惚れてたの?」

春雨「はい」

村雨「ふーん……。変な春雨ね」



春雨(いろいろあったけど、なんとか海だけは護れました)

春雨(本当にいろいろ……)

春雨(いろんな鎮守府で、いろんな艦娘のみんなと会って)

春雨(いろんな私や、いろんな夕立姉さん、村雨姉さんもいて)

春雨(みんな同じように見えて、でも少しだけ違うところが必ずあって、それが面白かったかなぁって)

春雨(あ、司令官さんも色々です。一番びっくりしたのは『春雨』だけものすごく集めてた人)

春雨(びっくりだし、なんか嬉しかったし、不思議だったし)

春雨(でも一番楽しくて思い出に残ってるのは、最初に着任した鎮守府のみんなと司令官です)

春雨(なんだかんだで一番長く居たような気がします、はいっ)




春雨「……ふふ、また会えるかなぁ」

村雨「誰に?」

春雨「あ、村雨姉さんは大丈夫です!もうこうして会ってますから」

村雨「え……?なになに、なんの話なの?」

春雨「なんでもないですよー」

村雨「えー、気になるなぁ」

春雨「えへへ、いまは秘密です!」



春雨「あ、着きましたね」

村雨「ん、そうね。服は大丈夫?寒いでしょう?」

春雨「んーと……あ、もう乾いたみたいです」

村雨「あらら、あれだけ飛ばしたからね。でもそれ海水だし、早く流してきちゃいなよ」

春雨「はーい。じゃあお先です!」

村雨「ごゆっくりー」




村雨「ほっ……。ただいま戻りましたー」

五月雨「あ、お帰りなさーい」

村雨「んー。今日も大丈夫よ」

五月雨「良かったぁ……。遅いから心配したんですよっ」

村雨「あ、ごめんごめん。転んじゃってね、春雨が」

五月雨「春雨が?珍しいかも……?」

村雨「珍しいわねー、転ぶ艦娘ってのが」

五月雨「そうですねー、私も自分以外で見たことないです」

村雨「ふふ、自虐に走れるようになったの?」




五月雨「いつまでもドジを嘆いててもダメだと思ったんです!こうすれば少しは意識付けにもなるかなーって」

村雨「そう。いい心がけだと思うけど、ソックス片方しか履いてないのは新しいファッションなのかしら」

五月雨「………………あれ!?どうりで片足だけ寒いなーと思ったら……」

村雨「……あなたはまず感覚をどうにかするべきじゃない?」

五月雨「うぅ…………」


村雨「ふふっ、まあ五月雨らしいや。私も休んできまーす」

五月雨「あ、向こうにお水を用意してあります!」

村雨「あら、気が利くのね。いただこうかな」



五月雨「おっかしいなぁ、なんで靴下なんて履き忘れるんだろう……。しかも片方だけ……」

五月雨「あーあ、このドジどうにかならないのかなぁ……」

五月雨「…………でも提督は言ってくれたもん!」

五月雨「『一生懸命なのは見てればわかるし、他で充分補ってるからあんまり気にするな』って!だからそんなに────」




村雨「ちょ……。五月雨、これサイダーじゃない!私あんまり炭酸好きじゃないって言ったのにー!」

五月雨「え、あ、あれ!?ごめんなさーい!」

投下終了です

五月雨ちゃんはドジっ子かわいい



───
──



龍田「あなたが居てくれてほんと助かるわね~」

大淀「ここはまだ深海棲艦の目撃も比較的多いです。何かあったらすぐ本部に連絡できるようにと」

龍田「あら~、他はもっと平和ってこと~?」

大淀「平和というか……。目撃情報も戦闘報告もほとんどありませんよ」

龍田「それなら一手にここで引き受け受けなくても、あえて別のところに担当させたりもしたいかな~」

大淀「無茶言わないでください、それだけ重要って所なんですから」

大淀「龍田さん含め、みなさん練度を買われてここに居るんですからね?」

龍田「それにしては死にたいお船が少ない気もするけど~?」

大淀「そりゃそうですよ、どうせはぐれ艦くらいしか出てきませんし」

龍田「それなら、私たちじゃなくてもいいんじゃない?」

大淀「万が一に備えてです。というか私もそこまでは知らされていませんよ……」



龍田「戦闘になったらあなたも出るのかしら~?」

大淀「ええ、もちろんです。ただでさえ少数ですし、こう見えて貴重な4スロットです!」

龍田「…………それは旧式な私への侮辱?」

大淀「ち、違います!そういうつもりはありません」

龍田「あはは、冗談だってば~」

大淀「龍田さんは本当に斬りつけてきそうですし……」

龍田「そういう悪いお口は、もう使えなくしてあげましょうかね~」

大淀「じ、冗談ですよ!」



村雨「失礼しまーす。大淀さん、報告ね」

大淀「あ、お疲れさまでした。お願いします」

村雨「はーい。今日も異常なしよ。春雨がずぶ濡れだけど」

大淀「転びでもしたのですか?」

村雨「そうそう。よそ見してるからあんなことになるのよ」

龍田「よそ見って、何かあったの~?」

村雨「海が綺麗だーって」

大淀「…………それだけ?」

龍田「変な子ね~」




龍田「それにしても、ここにいる艦娘って最初の鎮守府が同じ子多いのね~」

大淀「あぁ……。規模が大きくなりすぎて、逆に敵が避けて通るようになった挙句ほとんど解体されたっていう」

龍田「私はけっこう気に入ってたんだけどな~、あのメンバー」

村雨「大淀さんは違ったのよね?」

大淀「そうですね、最初は本部に近いところでした。というか『大淀』はみんなそうなんですけど」

大淀「私に至っては最後までここに着任していないんですけど、大きい鎮守府だったみたいなので提督もすごいお方なんでしょうね」

村雨「え、普通よ?とっても普通」

龍田「そうねぇ~、街中を歩いてても気づかないかもしれないわね~」

大淀「えっ」



村雨「でも無理な運用とかなかったし、嫌ってた艦娘はいないかな」

龍田「戦闘は基本的に任されてたし、戻ったらのんびりしてて居心地良かったな~って」

大淀「大きい鎮守府にしては少し珍しいですね……」

村雨「……ねえ、みんなばらけちゃったあとここはどうなってたの?」

大淀「えっと……、数週間後に駆逐艦が着任、その後は駆逐艦3と軽巡1で任務に就いていた、と」

龍田「あはは、小型艦ばっかりね~」

村雨「……提督は生きてるのかな」

大淀「さあ……。終戦宣言とほぼ同時に失踪となっています」

村雨「それって失踪なの?」

大淀「一応は宣言前なので……。ただ面倒だったらしくて書面では『退役』ですね」

村雨「ふーん……。生きてるんだ」



龍田「あら~、随分と気にするのね~?もしかして?」

村雨「…………え、あ、違うってば!春雨がかなり懐いてたからよ」

大淀「本当に楽しかったみたいですね、うふふ」

村雨「でもほんと、なんでここにいた子ばっかり集めるの?」

大淀「そういうわけじゃなくて練度の問題です。古い鎮守府で比較的初期のメンバーは自ずと練度も高めですから」

龍田「納得いかないわ~。それなら響ちゃんとか漣ちゃんとかすごーく練度高かったけど?」

村雨「……言われてみれば時雨も」



大淀「もしかしてケッコン艦でしたか?」

龍田「そうね~」

大淀「じゃあそれは特権ですよ。ケッコン艦だけは行く宛があれば普通に街中で暮らしていいことになってますから」

大淀「それ以外でも、一定数で群れればケッコン艦と一緒なら大丈夫になってます。予備役ですけど」

龍田「……残念ながら私たちは溢れちゃったみたいね~」

村雨「えー、つまりすぐ動かせるから私たちってことなの?」

大淀「……申し訳ないですがそういうことです」

村雨「変なのー……」

村雨「まあいいや、騒いだって仕方ないしね。用は済んだし戻りまーす」

大淀「お疲れさまでした。夕方の哨戒もお願いしますね」

村雨「はいはーい」



龍田「…………会えたりしないかなぁ~」

大淀「ここにいた頃の提督に、ですか?」

龍田「最初だったし、やっぱり気になるのよね~」

大淀「不可能ではないと思いますけど、そんな簡単にもいかないかと」

大淀「でも龍田さんも随分気にするんですね?」

龍田「ち……、違うのよ~?村雨ちゃんの理由は照れ隠しだけど、私のはちゃんとした理由があってね~?」

龍田「天龍ちゃんがなんだかんだでよく遊びに来てたし、今考えれば懐いてたからすこーし気になるだけで────」


大淀「それさっきの村雨さんとあまり変わらないと思いますよ?」





龍田「……………………少し外の空気を吸ってくるから~」


大淀「……意外にわかりやすくて不器用なんですね、ふふふっ」

投下終了

いままでオムニバス寄りでしたが、ここから少しずつストーリー寄りも混ぜていく予定です
甘々なのはお約束


それでは失礼します



伊勢「うへー、退屈だよー」

最上「伊勢さん、さっきからそう言って水ばっかり飲んでるよ」

伊勢「仕方ないよー、暇なんだしさ」

最上「そういうものかな……」

伊勢「そういう貴女も退屈してるんでしょ?」

最上「え、ぼ、ぼくが?そんなことないよ」

伊勢「見栄張らなくていいのよー、見てりゃわかるし」



伊勢「出番ほとんどないからねぇ」

最上「……こっちのほうが平和で好き」

伊勢「ふーん……。意外に引っ込み思案だよね」

最上「そ、そうかな」

伊勢「んー、他の『最上』ならもっとノリがいいというかさ」

最上「………………」

伊勢「あ、ごめんごめん。貴女のノリが悪いとかじゃなくて」

最上「……ああ、うん。大丈夫だから」



伊勢「あー、でもほんと退屈。もっとこう、戦艦が相手じゃないとやってられないような骨のある敵はいないかなぁ」

最上「あはは、誰かがそんなこと言ってたね」

伊勢「え?」

最上「もっと骨のある敵はいないのか、って」

伊勢「あれ、そうだっけ?よく覚えてるね」

最上「そんな簡単に忘れないよ」

伊勢「いやぁ、私ももう年かねぇ」

最上「まさか」



最上「…………」

伊勢「…………ね」

最上「え?」

伊勢「ここの鎮守府、いたんでしょ?」

最上「ああ、うん。一時期だけど」

伊勢「これだけ大きいところが、どうしてばらされちゃったの?」

最上「えっと……」

伊勢「大丈夫よ、もう終わってるんだから」

最上「……そうだね。ぼくが知ってるのは、戦力が集中しすぎたっていうことかな」



伊勢「集中しすぎた?」

最上「強敵がよく出てきてたから、たくさんの艦娘をここに集めたんだ」

最上「それでみんなすごいレベルになってたんだけど、それを察知したのか敵がここを避けるようになっちゃって」

最上「だから他のところに、なるべく均等に分けられたってことかな」

伊勢「へぇ……。色々あるものだなぁ。提督は?」

最上「残ったよ。そのあとは知らない」

伊勢「そうじゃなくて、どんな人だった?」

最上「あ、そっちか」



最上「『提督』って感じではなかったかな……」

伊勢「あー、わりと多いよねー」

最上「……ぼくもあんまり接点があるわけじゃないんだけど、けっこうなところまで育ててくれたなぁ」

伊勢「どれくらいなのさ?」

最上「……90」

伊勢「わぁガッツリ……。訓練とか大変だったでしょ?」

最上「あはは、それがほとんど演習で上げてくれたからね」

伊勢「そこまでしといて接点ってないものなのかなぁ……」

最上「………………」



最上「……さ、それじゃあぼくはそろそろ行くよ」

伊勢「ん、なんか用事あった?ごめんごめん」

最上「平気。このあと瑞雲で哨戒任務がね。駆逐艦の子じゃ届かないところを」

伊勢「私も瑞雲飛ばせるんだけどなー」

最上「伊勢さんでは役不足ってことじゃないかな。行ってきまーす」

伊勢「……そういうものかねー。ま、いいや」



──
───



最上「……………………」

最上「…………瑞雲」




最上「──────今日も『哨戒』、よろしくね」

投下終了です

失礼します



────
───
──



最上「……今日も異常なし、か」


五月雨「あ、最上さーん!」

最上「ん……、ぼくに何か用?」

五月雨「哨戒お疲れさまですっ」

最上「ああ……。うん、君もだったよね?」

五月雨「はい。午前中のは春雨だったので、午後の哨戒は私と村雨でした」

最上「ありゃ、村雨が大変そうだ」

五月雨「私たちは日替わりで二回出る順番を替えてて、今日は村雨だったんですよ」



五月雨「でも最上さんだって、いつも一人で毎日哨戒してませんか?」

最上「これがぼくの役目だからね」

五月雨「大変でしょうね……」

最上「ぼくは瑞雲を飛ばすだけだから。海に出ていく君たちのほうが大変だと思うけどなぁ」

五月雨「でももう慣れちゃいました」

最上「あはは、ぼくも同じさ」



五月雨「伊勢さんと交代で、とかしないんですか?」

最上「……伊勢さんはここで唯一の戦艦だからね。いざというときの切り札に負担はかけられないよ」

五月雨「最上さんだって貴重な火力艦ですよ!」

最上「ありがとう。たしかにここではそうなるのかも」

五月雨「私たちからすると最上さんや伊勢さん、大淀さんに龍田さんもみんな頼りになるんですっ」

最上「どうして?」

五月雨「そりゃあ、後ろに火力のある人たちがいるって心強いからですよ」



五月雨「大和さんや武蔵さんがいてくれると、とっても頼りになりません?」

最上「そういうことか。たしかにそれはあるよね」

五月雨「それと同じ感じですっ」

最上「そ、そんな……。ぼくじゃとてもあの二人には敵わないよ」

五月雨「いいえ!最上さんはとっても頼りになります!」

最上「あ、あはは……。ちょっと照れくさいなぁ」


最上「ぼくも君たちを頼りにしてるんだけどね」

五月雨「最上さんが私たちを……?」



最上「うん。ぼくよりも小回りが利くし、敵の潜水艦とか嫌だから……」

五月雨「…………!!」

最上「君たちが前で警戒しててくれるから、攻撃に集中できる」

五月雨「…………最上さん」

最上「え、なに?」

五月雨「私……、頑張っちゃいますから!」

最上「…………。ありがとう、心強いな」

五月雨「はい!前衛はお任せくださいっ」

最上「……うん。しっかり頼んだよ」

五月雨「もちろんです!戦闘になったら頼ってくださいね。私も頼りにしてますから」



五月雨「じゃあ私、部屋がここなので」

最上「ああ、そうなんだ。じゃあまた」

五月雨「はい。おやすみなさーい」

最上「え、まだ一九〇○だけど……」

五月雨「………………し、食堂でまた会うかもですねっ!」バタン

最上「強引だなぁ……。あの子らしいや」



最上「さて、と。じゃあぼくも部屋に……って、いつの間にか通りすぎちゃってたか」

最上「……………………しっかり」

最上「しっかりと頼んだよ」

最上「………………よし」


最上「前方確認!衝突禁止っ!」










「…………?」

また少し投下間隔がばらついてしまって申し訳ないです……

失礼します



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



提督「……みんな集まったかな、よし。手短にいく」

提督「─────今日でここの鎮守府は解散、みんなはそれぞれ別の鎮守府に行ってもらうことになる」

提督「………………急で申し訳ない。以上。ここでは最後の任務を全うしてくれ」


 それは突然のことだった。みんな何も言えず、不思議な顔をして数分はその場に佇んでいた。ぼくも同じだった。

 提督もそれは同じで、その時点ではきっとよくわかっていなかったんだと思う。手短に、何かを押し殺すように、全員を集めての重大発表はあっけなく終わった。

 これだけ規模の大きな鎮守府が解散というのも珍しいことだったけれど、確かに最近は交戦が少ない。どうも敵に避けられている気がしていたのも事実で、妙に納得できてしまう節がないとは言えない。

 でも、それでもやっぱり完全な納得と言うには程遠かった。


三隈「もがみん、大丈夫?」


 横から小声で聞こえた声は三隈。ぼくの親友で、姉妹みたいな感じ。ぼくより遅く着任したから少し練度は物足りないけれど、それをカバーしようと毎日演習に精を出している。


最上「ぼくは平気。急でびっくりはしたけどね」

三隈「これからどこに配属になるのかしら」

最上「さあ…………」

三隈「また一緒の鎮守府だといいのだけれど……」



 結局その日も何事もなく、いつものように過ぎていった。どこか物静かで、それぞれが何か考えていたようにも思う。極端に会話が少ない日。

 鎮守府に戻ると大きな張り紙があって、そこに誰がどこへ行けばいいのか書かれていた。ぼくは少し遠い前線のほうで、三隈も同じところ。前線が不安だったのは否定できない。でも三隈が一緒になって嬉しそうだったし、それはぼくにとっても大きかった。

 この練度になれたのも、癖があって使いにくいだろうぼくを積極的に使って活路を見出してくれた提督のおかげ。最後は挨拶に行こうと三隈に提案すると、三隈も思うところがあったようで快諾してくれて、執務室に向かう途中でも色んな人から言葉をかけてもらえた。

 執務室の前はわりと混んでて、やっぱりみんな同じ考えだったんだと思う。その日の秘書で鎮守府最高練度を誇っていたВерныйが少し膨れてたのも印象的。少しだけ待つと順番が来た。提督は片手で頬杖をついて座っている。


最上「提督」

提督「お、もがみくま」

三隈「もう、そうやってまとめて呼ぶのはやめて下さりません?」

提督「だっていつも一緒に居るしな。呼びやすい」

最上「……提督、もしかしてそこまで考えて同じ鎮守府にしてくれたの?」

提督「…………知らん知らん、偶然ってことにしておいてくれ。これくらいしか俺にはできないからね」

三隈「提督……。感謝いたしますわ」


 ぼくたち二人での話はそれで終わり。後ろにも待ってた人がいたし、最後にあんまり話すと離れる時に複雑になっちゃうし。

 ドアがほぼ開きっぱなしなのも覚えている。だから会話は丸聞こえ。まあここまで出入りが多いと閉めるほうが面倒ってのはその通りだけれど。

 三隈が少し後ろに下がって、ぼくは簡単な資料を受け取った。長く感じたけど一分もかかっていない間の出来事だったと思う。

 戦っているんだから戦線が移るのは当たり前のことで、その度の別れに一喜一憂するほうが辛いというのはわかっているつもりだけど、それでも長く過ごしたところや人と離れるというのは寂しい。あの言葉をかけられたのは、名残惜しいけど資料を受け取って顔を上げたときだ。


提督「最上」

最上「ん、どうしたの?」

提督「三隈はまだ練度が十分とは言えない。演習で上げてたけどまだ少し間に合わなかったんだ」

最上「う、うん」

提督「…………三隈を頼んだよ」

最上「…………!」

最上「はいっ!」


 それからは忙しくてとても話せる暇もなく、これが別れ際に提督と交わした最後の会話。いまでも鮮明に、脳裏に焼き付いている。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



最上「…………提督、無事かなぁ」

村雨「無事だって」

最上「え」

村雨「あ、ごめんなさい。ちょっとね」

最上「い、いつから居たの?」

村雨「ついさっきよ」




最上「でもなんで君が提督が無事なんてこと知ってるの?」

村雨「大淀さんから聞いたの。ルートは信憑性あると思います」

最上「そ、そう、なんだ」


村雨「やっぱり気になる感じですか?」

最上「うん……。でも向こうはぼくのこととか忘れてるかもしれないし。『最上』はわりと多いからね」

村雨「……最後に呼び止めて言葉をかけるくらいなのに、忘れるはずないと思うなぁ」

最上「えっ」

村雨「ふふ、気にしないでくださーい」

最上「か、からかわないでよ……」



村雨「…………最上さん、ここを離れてから何かあったりしました?」

最上「……っ!」


最上「な……、なにもないよ。至って普通。うん…………」

村雨「……最上さんを信じるわよ。でもね」


村雨「何かあったら、一人で抱え込んじゃダメですよ」


最上「…………!!」




村雨「じゃあ私、龍田さんと会う約束あるので行きますねー」

最上「………………ありがとう」

村雨「え、なに?なんですか?」

最上「ううん。僕ももう戻るよ」

村雨「そうですね、寒いし。暗くなっちゃうしね」

最上「うん……」

村雨「…………────────」

なんだかここから先もがみん成分が増えまくりそうな予感しかしてません
もがみん可愛い

失礼します



村雨「龍田さーん、村雨よー」

村雨「…………部屋じゃないのかしら。出直してみよっと」

龍田「──────あら」

村雨「…………ん」



───
──




龍田「ごめんね~、呼んでおいて待たせちゃったみたいで」

村雨「いいえ。それで、私に何かご用ですか?」

龍田「………………これから話すことはまだ確定じゃないし、他言無用よ?」

村雨「は、はぁ……。了解ですっ」

龍田「漏らしたら……、わかるわね~?」」

村雨「…………っ、だ、大丈夫だって!」

龍田「あはは、そんなに怖がらなくていいのよ~。何れわかるだろうし~」



龍田「この前ね、大淀さんの電話越しの会話を聞いちゃったのよ。ちょっと面倒だけど、残党の潜水艦隊がこっちに向かってるらしいの~」

村雨「潜水艦ですか?べつに一艦隊分くらいなら私たちでなんとか……」

龍田「五艦隊分」

村雨「えっ、なんでそんなに……」

村雨「……つまり三十隻……?」

龍田「そうね~、ちょっと手に負えないかもね~」



村雨「でもやるしかないですよ。これしかいないけど……」

龍田「殲滅できるかしら?潜水艦って残ると厄介だけど~」

村雨「…………やってみないとわかりません」

龍田「じゃあ、もし一気に来たら?」

村雨「無理よ、そんな……。応援を頼まないと」

龍田「…………当てはあるのかな~?」

村雨「それは……」

村雨「で、でも伊勢さんや最上さんにも瑞雲を満載していけばもしかしたら……!」

龍田「瑞雲、そんなにないのよね~……」

村雨「………………」



龍田「……もしね?」

龍田「もし、軽巡が一と駆逐艦が六、ついでだけど戦艦も一、加わったらどう?」

村雨「その数はなんなんですか?」

龍田「いいからいいから」

村雨「…………それならいい線行くんじゃないかしら」

村雨「つまり軽巡が三、私たち駆逐艦が九、戦艦系が二で航巡が一?勝算はあります」

龍田「そのうち攻撃に期待できない子が二人、いるけど~」




村雨「二人ですか……?戦艦の一人なんじゃない?」

龍田「…………最上さん、どこかおかしいわ。貴女なら気づいているでしょう?」

村雨「…………本人は何もないと言っていました」

龍田「それを真に受けちゃダメよ~?強がってるだけだから」

村雨「強がり……」

龍田「最上さんが不調なのは痛いって大淀さんも言ってたわ~」

村雨「でも歴戦よ。ここに居たときは少なくとも────」

龍田「そこ」

村雨「え?」



龍田「仮にも重巡系だし、ここでは貴重な火力。他の敵が出てきたときも考えて、復調してくれれば勝率は跳ね上がるわ」

龍田「そうするとどうなるかな~?」

村雨「どうって……、勝つんじゃないかしら」

龍田「あはっ、そうね。勝つと敵が減って、私たちの任期も短くなっていく。いいこと尽くめよ~」

村雨「でも原因もわからないのにどうやって……」

龍田「……残念だけど、私たちにはどうしようもないこと。原因も不明だし、彼女の多くを知っているわけじゃないから……」

龍田「最上さんをよく知っているのは姉妹艦ともう一人、いると思うの」

村雨「……………………も、もう一人って」

龍田「あははは、誰だろうね~?」

龍田「貴女のことも、私のこともよーく知ってると思うわ~」



龍田「──────私たち、ここの古参だもの、ね?」

投下終了です

失礼します



──────────────────────────────

──────────────────────────────



大淀「無茶ですよ!」

龍田「無茶か~……。つまり『無理』ではないのよね~?」

大淀「知りません!」

龍田「対潜って危ないのよ~?」

大淀「単横陣を組んで対潜兵装を満載すればそうは負けないはずですけど」

龍田「甘いなぁ~。そんな簡単なことなら誰も沈んだりしないけど~?」

大淀「それはそうですが……」



大淀「と、とにかく!」

大淀「艦娘はいいとして、鎮守府内の判断で元提督まで、しかも指定で呼び寄せるなんて無茶です。前代未聞です」

大淀「艦娘ですら艦種指定の例はあっても、名指しでなんて聞いたことありませんよ」

龍田「対潜が得意な子ばかり連れているみたいよ~?」

大淀「……頭一つ抜けているのはВерныйだけのように見えるのですが」

龍田「つべこべ言わずにさっさと連絡付けてくれないかなぁ~」チャキ

大淀「つ、通報しますよ!?」



龍田「でも、どうせここに指揮官とか臨時で付けるのは決定じゃない?」

大淀「…………どうしてそう思うのですか?」

龍田「昨日聞いちゃったの。潜水艦、こっちに来るんでしょう?」

大淀「………………はぁ、もういいです。近々どうせ話すつもりでしたから」

大淀「敵の残党潜水艦が約五艦隊分こちらに向かっています」

龍田「まさかこの人数と指揮系統で乗り切るつもりじゃないわよね~?」

大淀「もちろん。緊急ですから」

龍田「その提督と艦娘をちょこ~っと指定するだけなんだけど~……」

大淀「以前の指揮官の下で戦いたいのはわかりますけど、ここにはその指揮下にいなかった私のような艦娘もいるんですよ。勝手がわかりません」



龍田「すぐに慣れるって~」

大淀「そういう問題ではなく……」

大淀「とにかく難しいと」

龍田「……それで最上さんが復調するかも、と言ったら?」

大淀「……どういうことですか?」

龍田「だから────────」




────
───
──


──
───
────











大淀「はい……はい。そこをなんとか……」

大淀「水雷戦隊の指揮に長けていると聞きます。対潜も豊富で……」

大淀「失踪の件……?なんのことですか?」

大淀「…………はい?書類上では『退役』なのですが」

大淀「……はっきりしませんね。情報を改竄した、ということでいいですか?」

大淀「公にしたら大問題ですね、それ。もちろん改竄したことについて」

大淀「………………了解しました。ありがとうございます」

大淀「ええ、では五日後ですね。よろしくお願いいたします」ガチャ



大淀「……五日後に複数の艦娘と共に」

龍田「あははっ、さすがね~。言い訳もとっても上手かったなぁ~」

大淀「まったく……。あんまりああいうのを掘り返して指摘すると私の首が飛ぶんですからね?」

龍田「改竄してくれてて助かったわ~」

大淀「こちらから事前に連絡も入れておきますか?」

龍田「ううん、どうせなら知らないほうが面白いと思うの~。サプライズってやつ?」

大淀「は、はあ……。まあいいですけど」

龍田「五日後かぁ、楽しみね~♪」



村雨「あ、最上さん。哨戒お疲れさまですっ」

最上「うん。ただいま」

村雨「この前の、風邪とか大丈夫ですか?」

最上「この前の……?ああ、あれか」

最上「あのあとすぐに戻ったし、特に問題ないかな」

村雨「ならよかったです。少し元気なさそうに見えたので」

最上「…………そ、そう、かな?」




村雨「そんな最上さんに、ちょっといいこと、教えてあげる!」

最上「いいこと?」

村雨「具体的には言えないんですけど、一週間以内にいいことあるかもですっ」

最上「だからいいことってなんなの?」

村雨「んーと……そうですね」

村雨「────懐かしい人に会える、とか!」

最上「…………懐かしい人」

村雨「気づいちゃったらそれはそれでいいんですよ?どうせそのうちわかりますし」


村雨「じゃあ春雨と食事する約束なので、失礼しまーす」

最上「あ、ああ。うん…………」











最上「……三隈にでも会わせてくれるのかな」

最上「なーんて無理だよね」




最上「…………あはは、ぼくって弱いなぁ」




投下終了

提督パターンか五月雨パターンか迷ったんですが、極端に複雑怪奇なことにはならなそうな提督パターンにしました

口直し、というかシリアス調の混ぜ方はだいたい延性破壊と同じ感じでやるつもりです
あんまり見ない気もする最上メインのシリアス調です


それでは失礼します



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 


提督「はー、だる……」

暁「ここまで来てそんなこと言っても仕方ないでしょ」

提督「だってこの間やっと終わったばっかりだし」

神通「予備役でしたから……。呼ばれる覚悟はありました」

提督「本当に呼ばれるとだるいんだよなぁ……」




夕立「提督さん、早く早く!」

不知火「……身軽すぎませんか、あれ」

提督「ほとんど荷物持ってきてないもんな。逆になに持ってきてるんだろう」

神通「服は5セットほど用意していましたよ」

不知火「……それだけですか?」

神通「……思い出せる範囲だとこれだけです」

提督「大丈夫なのかなあの子……」

暁「困ったら司令官になんとかしてもらうって意気込んでたけど」

提督「意気込む方向がおかしい」




不知火「そういえば艤装は持ってこなくても良かったのですか?」

提督「新しいの用意してくれるとさ。それくらいはしてもらわないとね」

神通「艤装って重いし嵩張るので、それは助かりますね……」

夕立「提督さんっ!」

提督「お、戻ってきた」

夕立「もう、遅れちゃうよ?」

提督「あれ、そんな時間?」



夕立「提督さん、どれくらいで帰れるっぽい?」

提督「三ヶ月」

暁「え……、長くない?潜水艦倒すだけなんでしょ?」

不知火「それならまずこんな人数は呼ばないかと」

提督「…………まあそういうこと。さすがは長いこと秘書やってもらってただけあるな」

神通「三ヶ月は任期ってことですね?」

提督「そうそう。面倒だけどねー……」



暁「……どうにかして短くできないかしら」

夕立「早く片付ければ早く終われるっぽい!」

神通「どんなに早く終わっても三ヶ月は確定なんですよ」

不知火「手っ取り早くて確実なのは……」

不知火「不祥事を起こすことかしら」

提督「真顔で物騒なこと言わないの。時雨たち待たせちゃうと悪いし行くよ」


────
───
──







時雨「ねえ、長門さん」

長門「な、なんだ?」

ヴェル「……少し早く着きすぎたんじゃないかと思うんだ」

漣「ちょっとだけ損した感じです?」

長門「いや、この長門の計算に狂いはない。きっかりと一時間前行動をしているぞ」

ヴェル「一時間前……」



時雨「……………………ん?」

ヴェル「どうしたんだい?」

時雨「いや……」

長門「何かあったのか?」

五月雨「────、────♪」

五月雨「─────……!!」



五月雨「こんにちは!」

ヴェル「こんにちは。君は此処の……?」

五月雨「はい!これから哨戒に向かうところです」

時雨「…………五月雨」

五月雨「あ、自己紹介まだでしたよね。白露型五番艦の五月雨って言いますっ」

漣「知ってますよ。『五月雨』ちゃんたくさんいますし」

五月雨「あはは……そうですよねー……」



時雨「…………ねえ」

五月雨「はいっ」

時雨「君は五月雨……、だよね?」

五月雨「……はい、五月雨ですよ」

時雨「そうじゃなくて」

時雨「────僕たちとここに所属してた五月雨、だよね?」

五月雨「…………さすがに姉妹艦にはわかっちゃうのかぁ」



五月雨「──────時雨、みなさん、お久しぶりですっ」

忙しくてだいぶ投下が長引いてしまい申し訳ありませんでした
なんとか目処が付いたので、ぼちぼち再開していきます

それではこのあたりで


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大淀「みなさん、臨時で提督の着任ですよ」

龍田「…………ふふふ♪」

最上「…………」


提督「突然で驚いてるかもしれないけど、今日から、というかついさっき着任ね」

提督「んーと、潜水艦の掃討ってことだけどここの艦娘は…………あれ」

春雨「………………えっ!?」


伊勢「なになに、どうしたのさ?」

春雨「し……し、司令官……?」

提督「春雨ここに居たのか!なんか親近感あると思えば」



最上「……………え……」



提督「てことはもしかして村雨も、あと龍田も……?」

村雨「…………っ♪」

龍田「天龍ちゃんは別のところよ~」

提督「おうおう、懐かしいのがたくさんだな。偶然なのかこれ……」

伊勢「私は初めましてかな」

大淀「一部は偶然で、一部は……、ここだけの話必然です」

提督「なんか面倒ごと起こしてない……?」


提督「そうなると向こうのほうで棒立ちしてる最上ってまさか」

最上「────────てい、とく……」


────
───
──


──
───
────



春雨「もうっ!なんで私には教えてくれなかったんですかっ!」

村雨「そのほうが面白そうだからよ。実際にあんなに慌ててくれるなんて思わなかったけど」

春雨「うぅ……」

五月雨「でもなんで私には教えてくれたんですか?」

村雨「五月雨は慌てるとドジ率が跳ね上がるもの。初日からそれじゃ嫌でしょう?」

五月雨「あー、なるほど!そこまで考えててくれたんですね!」

村雨「当たり前じゃない」


春雨「そ、それは納得できちゃう……のかな……?」



伊勢「私には教えてくれても良かったんじゃない?どのみち初対面で知らないんだしさ」

龍田「私は、大淀さんには『どちらでも』って言ったのよ~?でも大淀さんが特に言わなかっただけで」

伊勢「んー……なーんか納得いかないなぁ……」

提督「まあまあ、聞いたってしょうがないさ。貴重な戦艦だから期待してるよ」

伊勢「……航空戦艦だから攻撃はできるけど、潜水艦相手でそんなに期待されてもねぇ」

提督「…………忘れてた」


伊勢「ねえこの人大丈夫なの?」

龍田「あはは、ちょっと戦場を離れてたから鈍っちゃっただけだと思うわ~」


提督「そういや時雨とか響とか先に来てない?」

五月雨「あ、私さっき会いましたよ。今はたぶん艤装のチェックかなんかしてます」

提督「じゃあ夕立たちと同じか」



最上「……提督」

提督「ん」

最上「…………ごめん、呼んだだけ」

提督「お、おう……」

最上「えいっ」

提督「近い近い、もう少し離れてくれ」

最上「や」

提督「や、って……。そのうち転ぶぞ?」

最上「いいもん」

提督「何がいいんだ……」


最上「提督と一緒に転ぶから」

提督「巻き添え前提はやめなさい」



最上「…………提督」

提督「呼んだだけ、は無し」

最上「……………………」


提督「絶対『呼んだだけ』って言おうとしてたでしょ」

最上「そ、そんなこと……ないよ」

提督「そう?」

最上「提督」

提督「はいはい」

最上「…………」ギュッ




最上「……呼んだだけ」

提督「………………」



村雨「……いきなり効果覿面みたいですね」

龍田「そうね~。でもまだまだこれからよ」

龍田「…………貴女の妹さんにも効果覿面みたいね~?」

村雨「え?」

春雨「ぁ……ぅ…………」

村雨「なんであの子が赤くなってるのかしら……」

春雨ちゃんは一人で色々と想像して赤くなるタイプかわいい

失礼します



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大淀「改めて、着任を歓迎いたします」

提督「まーた戦場に戻るなんてねー……」

大淀「申し訳ありません……」

提督「あー、いや。大淀のせいでもないから……。なんとかやるよ」



大淀「ありがとうございます」

大淀「早速ですが秘書の件はどの艦娘に?私は────」

提督「秘書は不知火か神通か……響に頼もうかと思ってる」

大淀「…………それはその三人からでないといけませんか?」

提督「そういうわけじゃないけど……、なんで?」

大淀「私はぜひ、最上さんを推薦します」



提督「でも最上は秘書って感じじゃないと思うけど」

大淀「その点は心配ありません。以前ほど書類仕事は多くないはずですから」

提督「だとしてもなぜピンポイントで最上を……」

大淀「嫌なのですか?」

提督「滅相もない」

大淀「二択です。最上さんでいいか、他の艦娘じゃなきゃダメか」

大淀「どちらですか?」

提督「その聞き方で断れないでしょ……。最上にお願いするよ」

大淀「ありがとうございます。最上さんには『大淀に言われた』とか言わないでくださいね?」

提督「わかったわかった、好きにしなさい」

大淀「ふふっ、ではすぐに呼んできますね」

提督「…………なんなんだこの状況は」



───

───


大淀「最上さん、いらっしゃいますか?」

大淀「…………もう、タイミング悪いですね……。いっそのこと放送で────」

最上「あれ、大淀さん?どうしたの?」

大淀「どうしたの、じゃありません!放送で呼び出すところだったんですからね?」

最上「……何かやらかしちゃったっけ?」



大淀「そうじゃなくて……。その瑞雲は?」

最上「ああ、これね。伊勢さんに少し借りて訓練してたんだよ。潜水艦は久々だからね」

大淀「そんなことしてる場合じゃありません!」

最上「え…………、なにかあったの……?」

大淀「……あ、ごめんなさい。そんな深刻なことでもないですよ」

最上「なんなのさ、もうっ」



大淀「用件はひとつだけ。提督がお呼びなので、至急執務室へ」

最上「提督が……?なんだろう」

大淀「とにかく何か重大なことに違いありません。個別で名指しですからね」

最上「ふーん……。わかった、汗流して何か食べたらすぐ行くから」

大淀「…………急いでないように見えるのは気のせいでしょうか」


───

───



最上「コンコンコン」

提督「……ノックは口で言うものじゃないぞ」

最上「あはは、だって開いてるんだもん」

提督「普通に入ってくりゃいいものを」



最上「それで、ぼくを呼んだんだって?」

提督「ん……ああ、まあ」

最上「何か任務とかかな?」

提督「任務っちゃ任務なのかもしれないけど……」

最上「…………そんなに難しい任務?できるかなぁ……」

提督「あー。いや。むしろ戦闘に比べたら簡単すぎるくらい」

最上「え、戦闘じゃないの?」



提督「最上にな、秘書をお願いしたいと思って」

最上「秘書?ぼくが?戦闘より不安なんだけど……」

提督「書類もほとんどないみたいだし大丈夫でしょ」

最上「えー……。でもどうして?響とかよくやってたのに」

提督「細かいことは気にしない。気分だ気分、今日から秘書官最上!決定ね」

最上「強引だなぁ……」

提督「……どうしても無理ってならどうにかするけど」

最上「そ、そんなことないけど……。わかった、頑張るね」




大淀「…………なんとか上手くいったみたいですね」

大淀「次はどうしましょう?」

龍田「見守るだけよ~」

大淀「そんなのでいいんですか?」

龍田「……大丈夫じゃないかな~?」

大淀「大丈夫、なんでしょうか……」

もがみんは慣れるとあざとい可愛い

失礼します

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最上「提督、いる?」

提督「ん、最上か。いいよ」

最上「失礼します。訓練終わったから」

提督「秘書が旗艦だと楽でいいねぇ」

最上「対潜部隊の旗艦がぼくっていうのもなんか変だけど、まあ……」

提督「ははは……。ん、電話だ」

最上「あ、外したほうがいいかな?」

提督「どちらでも。相手がわからないし」



提督「もしもs──────」

大井『ちょっと!なんなのよ急に!』

提督「うげ」

最上「どうしたの?」

提督「いや……、ごめんやっぱり少し外しててもらえる?」

最上「……うん、わかった。またあとでね」






大井『こら、なんとか言いなさいよ!!』

提督「あー……えっと……どの件?」

大井『はぁ!?全部よ全部!急に消えたことも、置手紙一枚なことも、また戦場に行くことも!!』

北上『やっほー、提督元気してるー?』

提督「してるしてる」

北上『ふふ、ならよろしいっ』

大井『き、北上さん……よろしくないですって……。あ、ちょっと』

提督「どうした?」

北上『あははは……。なんでもなーい』




提督「いま誰がいるの?」

北上『んーと、いつもの』

提督「北上と大井と阿武隈と」

北上『プラス那智さんね。那智さんもそっち行く気満々だよ~』

提督「も、ってことは」

北上『もちろん、他の子もね』

提督「わりとダメ元だったんだけど予想外……」



北上『あたしと阿武隈は、最初はけっこう考えたんだよ?』

北上『でも那智さんがすでにその気だったしね』

提督「そうか。でもぶっちゃけ重巡って対潜戦闘では……」

北上『私が出向いて盾にでもなれるなら行こう!……ってさ』

提督「……あんまり似てないぞ」

北上『えー、上手くいったと思ったんだけどねぇ』



提督「それで、那智の雰囲気に気圧されて決めてくれたと」

北上『あー、違う違う。一番張り切ってたの大井っちなんだよね』

提督「そうなのか………え?」

提督「大井が一番張り切ってた……?」

北上『というか、提督のこと散々ズタボロ言って、でも最後には────』

北上『だから私がわざわざ行ってあげないと、あの人が何をやらかすかわからないから心配だわ!』

北上「……って」

提督「…………今のは似てた」

北上『よっし!』



北上『とまあそんな感じで、大井っちに気圧されてと』

提督「それまた予想外というか……」

提督「ところでさっきから大井の声が聞こえないんだけど何があった」

北上『んーとね、さっき誘拐されてた。那智さんと阿武隈に』

提督「……連れて行かれたのな」

北上『ま、まあとにかく!そういうことだからよろしくー』

提督「んー、急がなくていいよ」

北上『え、わりと切羽詰まってるから呼ばれたんじゃないの?』

提督「まだ訓練始めたばっかりだよ」

北上『わー、そりゃ大変だ。なるべく早く参戦しますよー』

提督「……すまないな」

北上『いいってことよ、じゃあ切るねー』







提督「………………だいぶ増えるなこれ」

最上「……提督、終わった?」

提督「あれ、ドア前で待ってたのか。待たせたね」

最上「ぼくの勝手だから気にしないで」

提督「部屋に戻って気が向いたら来るのでも良かったんだぞ?」

最上「……て、提督のことだし長電話はしないかなって」

提督「その確信はどこから生まれたのか……。まあ確かにそうなんだけど」

最上「き……気にしない気にしない!報告の続きするよ」

投下終了

まさか五日くらい連続で投下しようと思いつつも寝落ちするとは思いませんでした
一瞬でも布団に入るのは禁物ですね……

失礼します



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三隈「…………よかった」

最上「え?」

三隈「新しい提督も、いい人そうで」

最上「あぁ……。そうだね、うん」

三隈「……もがみん、元気なさそう」

最上「そう?まだ慣れてないからかな」

三隈「大丈夫、きっとすぐに慣れますわ」

最上「そうだといいなぁ」



最上「じゃあ今日は出撃班だから、ぼくはここで」

三隈「気を付けてね?」

最上「うん、三隈は明日だっけ」

三隈「ええ。どちらかというと、私のほうが危なっかしいわ……」

最上「あはは、自分で言わないでよ」

三隈「そうね。やるしかありません」



最上「そんなに危険な任務じゃないし平気だよ」

最上「なにしろぼくが手取り足取り訓練に付き合ってるんだから!」

三隈「…………」


最上「……な、なーんて……」

三隈「……ふふっ、頼もしいですわ」

最上「…………!」



最上「おっと、じゃあもう時間だから行くよ」

三隈「ええ、大戦果の報告、期待してますね?」

最上「そんな大袈裟な作戦じゃないってば」

三隈「敵はいつ出てくるか予測できませんから、一概には言えないわ」

三隈「もがみんが一人で片付けちゃうってことも!」

最上「ないない、でも頑張るよ」




 新しい鎮守府でのぼくと三隈の任務は、制空の補助、索敵、そして艦隊の中核を担うことだった。期待されてるとわかってとても嬉しく思えた。

 あとは三隈と日替わりで日々の哨戒や出撃をこなすのも任務のうち。こうして使ってもらえれば、この艦種の良さも引き出してもらえるしいいこと尽くめだった。

 他の艦娘とも上手く打ち解けたし、特に不満もなく過ごせた点はありがたいけど、三隈と一緒に出撃することが激減したのは少し寂しかったかな、と思う。でも部屋は一緒だったし、配慮はしてくれていた。

 ただ心配だったのは、三隈が演習艦隊に組み込んでもらえなかったこと。どうやらここでは他に練度を上げるべき子が多いみたいで、三隈は後回しにされてしまった。だから以前ほど練度の伸びはなくなってしまって、ぼくが見てあげられることも少なくなった。

 それでも三隈だった頑張ってるわけだし、高いとは言えないけど危険なほど低いわけでもなく、きっと何とかやってくれると思っていたし、実際に大破して戻ってくることは然程多くない。どうやらぼくの心配は杞憂だったみたい。

 『危険な海域』にさえ出なければ、三隈は絶対に戻って来る──────

 そう確信した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






夕立「提督さん提督さん!」

提督「どうした、相変わらず元気だな夕立は」

夕立「ぽい!遊んで遊んで!」

提督「ははは……。よっしゃ、やることないし遊ぶか」

夕立「やった!提督さん好きー!」

提督「わかったわかった、一応ここ執務室だから走るな」



夕立「んー♪」スリスリ

提督「……遊ぶってかお前の場合は甘えるだけなんだよな」

夕立「ダメ?」

提督「いや、いいんだけども」

夕立「えへへー♪」




夕立「あ、そうだ。あたしね、今日は哨戒の当番だったの」

提督「ダメじゃん。もう終わったの?」

夕立「うん!」

提督「ならいいや」

夕立「それでね、報告してなかったのを思い出したっぽい」

提督「一応ね、してくれないとね。今でもいいぞ」

夕立「ぽい!」



夕立「今日は鎮守府の近海から、少しだけ沖のほうにも行ってみたっぽい」

提督「あんまり遠くは飛行機に任せるから行かなくてもいいって言ったのに」

夕立「大丈夫だよ、夕立強いもん!」

提督「いや、そうじゃなくてな……」

夕立「それでね、潜水艦が居たの。だから爆雷とかなかったけど沈めてきたっぽい!」

提督「……………えっ」



夕立「どうしたの?」

提督「潜水艦が、いたのか?」

夕立「うん。単独だったけど、なんか赤かったの!」

提督「エリートじゃんそれ……」

夕立「ほんと?褒めて褒めてー♪」

提督「うん、褒めるんだけどな、そう言うことは先に報告してくれな」

夕立「あっ、ごめんなさい……」

提督「まだ間に合うからいいよ。沈めてくれたんだな?」

夕立「それは間違いないっぽい!」

提督「なら大丈夫。よくやってくれた」

夕立「うん……♪」



提督「それと夕立にお願いなんだけど、大淀を呼んできてほしいんだ」

夕立「大淀さんね。放送じゃダメっぽい?」

提督「他の子が慌てても困るからね。とりあえずは大淀だけ直接」

夕立「わかったっぽい。呼んできまーす」

提督「…………ついに来たか……────」

投下終了です

失礼します



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────────────────────


提督「──────ということで、夕立が見つけたらしいんだ」

大淀「エリート級となるとかなり近いですね……」

提督「一応警戒はしてたけど掻い潜ってここまで来るとは」

大淀「もう仕方ありません。提督、作戦はお考えでしょうか?」

提督「そのことだけど、実は増援が来る」



大淀「増援……ですか?どこから?」

提督「響とか漣と同じ感じ、とでも言うのかな……」

大淀「つまり退役後も関わりがあった艦娘ですか?」

提督「そういうこと。4人なんだけどさすがに部屋は余ってるよな?」

大淀「もちろん。これだけ大きいんですから」



提督「そりゃそうか。艦種は雷巡2と軽巡1、それと重巡」

大淀「重巡ですか……」

提督「そんな渋い顔してやるな。一番気合い入れてるみたいだし」

大淀「で、ですがこれは対潜でして……」

提督「うん、俺も最初はそう思ったんだけどね。自ら盾になることを名乗り出てくれたみたいで」

大淀「……そこまで言われてしまうと頼りになりますね」

提督「せっかくだから缶やらタービンでもガン積みしてもらうかね」

大淀「もっといい装備がありますよ?」

提督「お、回避上がる新装備?」







大淀「有り余った普通のダメコンと女神です!これをガン積みしましょう」

提督「それは大破進撃前提みたいで変な誤解を生むからやめて……」






大淀「ふふ、冗談です。索敵がまだ甘いこともよくわかりましたし、偵察機も積んでもらいましょう」

大淀「残りは回避に徹して缶やタービン、そして女神です!」

提督「結局は女神積むのな……。まあ一つなら普通か」

大淀「……そもそも缶の類いが2つしかありません」

提督「先にそれを言いなさい。しかしそうなると本当に女神で保険付けるのが最善か」



提督「こんなところかな。対潜装備はどうなってる?」

大淀「一応あるにはありますけど、ほとんど旧式なので現在必死で開発してます」

提督「そっちのほうが深刻なのか……。できるだけ揃えたいけど、間に合わなかったら数で押すか……」

大淀「そうならないように間に合わせます、大丈夫です!」

提督「……よし、できるだけ多く頼んだよ」

大淀「お任せくださいっ」



大淀「では私は戻りますね。装備の開発も急がないと」

提督「悪いね……。他の子には増援が来た段階で伝えるから」

大淀「到着前の奇襲という可能性は?」

提督「ある……。けど、それには常に備えてるはずだから」

大淀「もちろんです」

提督「こっちから攻めるとなれば数が多いほうが気も楽だ。艦隊数もパターンも増やせるし」

大淀「……もう少しだけ黙っててくれ、ということですね」

提督「何かしら察する子もいるだろうけどね。一応」

大淀「わかりました。艦娘の気持ちまで考えてくれてたんですね」

提督「感情があるのにそれが関係しないはずもないさ」



提督「あ、もう戻るんだっけ。急に呼んでごめんな」

大淀「いえ、大事なことでしたから。信頼していただいて光栄です」

提督「頼りにしてるよ」

大淀「はい。あの……えっと、私も、その……頼りにしています」

提督「ほう、嬉しいねぇ。短い期間だけど今後ともよろしく頼むよ」

大淀「…………!」



大淀「はいっ!」

シリアス成分(シリアル混じり)

でもこれくらいは全然甘くないですね


失礼します

おつおつ
大淀は上司としてかね?

>>546
とりあえずはそのつもりですね
大淀さんは「上司として」でも「提督LOVE」でも映えるから素晴らしい

投下します



────────────────────
────────────────────
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村雨「お仕事終わりましたー」

提督「んー、ありがとう」

村雨「ううん。最上さんも大変だもの。助けてあげないとね」

村雨「でもなんで臨時の代理が私なの?」

提督「なんとなく」

村雨「適当すぎ……。いいけど」




最上「提督、報告に来たよ」

村雨「最上さんお疲れさまでーす」

最上「うん、村雨も」

提督「どう?実戦もいけそう?」

最上「たぶん……ううん、大丈夫」

提督「心配になる返事だなぁ……」

最上「だ、大丈夫だって!ね、村雨?」

村雨「そこで私に振ります?もともと練度は低くないからいけるとは思うけど……」

最上「そうそう。みんな感覚だけ戻れば大丈夫だよ。対潜だけは長らくやってなかったから……」



提督「終わりになってくると敵潜も随分減ったからな、そのあたりは仕方ないさ」

提督「まあ相手も不足してるし模擬でしかないんだけども」

提督「とりあえず相変わらずってことね」

最上「…………あ、そういえば」

最上「夕立の動きがやたら冴えてたような気がするかな」

提督「……なるほど。張り切ってると」

提督(口からでなくても行動に表れるタイプだからなぁ……)



提督「よし、じゃあ夕立は後でべた褒めしてあげるとして」

最上「えー、ぼくも頑張ったよ?」

提督「なんだ?最上も褒めてほしいのかな?」

最上「あはは、冗談だよ」

最上「…………そりゃ、褒めてくれると嬉しいけど……」

提督「…………ほう?」

最上「っ!ぼ、ぼくはせっかくだしゆっくり休むね!それじゃ!」



提督「……最上って意外と可愛いとこあるよな」

村雨「意外は余計じゃない?」

提督「え、でも意外じゃない?」

村雨「…………意外だけども」

提督「ほらな。あのギャップは素晴らしい」



村雨「でもでも、私には『意外』なんて言わせないからねっ」

提督「………………」

村雨「ちょ、何か反応してよー!ねえってば!」

提督「……村雨は意外とウブ。素晴らしい」

村雨「そ、それ本人の前で言うこと!?」



───
──


──
───





最上「さて、今日も哨戒っと」

最上「今日もよろしく、瑞雲」


最上「…………少しだけ遠くのほうもやってみようかな」

投下終了

失礼します

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年11月24日 (火) 07:17:11   ID: D2AeRIaQ

Tです。
このss見てたら、和みました。
これからも頑張ってください。

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