貴音「大物喰い……」 (107)
まさかの作者さんらしき人からゴーサインらしきものが出ていたので一話だけ
・アイマスとGIANT KILLINGのクロスの三次創作
・やよい「ぎ、ぎあんと、きるりんぐ……?」の続き
【重要】・千早「ジャイアント・キリングを起こす72の方法…」までとは別のひと
・この話だけでも読めるようになっているはず
・ジャイキリ本編、アイマスrelations、ノイエブルーを読んでいるとなお楽しめるかも
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~事務所~
ぺら
律子「…………」
律子「ふーっ…………」
ぱさっ
小鳥「……どうしたんです、律子さん。そんなに大きなため息なんて」
律子「んっ……。ごめんなさい、小鳥さん」
律子「……読みました、この記事?」
小鳥「へっ? ……ああ」
『《アイドル神》DNAプロ佐野美心、東豪寺プロへ電撃移籍!』
『IU制覇までの期限付き? 新生・魔王エンジェル+の真相に迫る!』
小鳥「魔王エンジェルに新メンバー……。大騒ぎになってますね」
律子「ただでさえ強力なユニットなのに、確かな実力と経験を持つ佐野さんの加入……。これも日高舞の意図なんでしょうか」」
小鳥「……どうでしょうか。舞さんの考えそうなことではありますし、そうじゃないのかもしれません」
律子「……はあ。こうなると結局、プロデューサーの読みは正しかったってことなんですよね……」
『あの目は、切れる切り札があるのに切らなかった。……いや、切れなかった。そういう目だった』
小鳥「…………」
小鳥「そう、ですね」
律子「はーっ……。いったいどうやったらあんな考え方ができるようになるのか……。ほんと、意味わかんないですあのひと」
小鳥「ふふっ。不思議な人ですよね」
律子「不思議な人? ああいうのは変人って言うんですよ、へ、ん、じ、ん!」
小鳥「……あはは」
小鳥「そういえば、今日はそのプロデューサーさんはどうしたんです?」
律子「……今日は、みんなのレッスンの方に着いています。段々とみんなからも信頼されてきているみたいですね」
小鳥「ジュピターと、魔王エンジェル……。結果的には、この二組を相手に互角に渡り合ったんですもんね」
律子「ちょっとずつ、何かが変わってきた……。そう考えて、いいんでしょうか」
小鳥「ええ。みんなが信じ始めているなら、私たちも信じないと」
律子「信じ始めている……。ですか。そうですね」
律子「……まあ、伊織なんかはまだよく文句を言っているみたいなんですけれど」
~レッスンルーム~
伊織「ちょっと、どういう事よ!!」
しぃ……ん
P「朝からうるさいなー水瀬は。ちゃんと朝飯食べた?」
やよい「……? えっと、伊織ちゃんは、朝ごはんならわたしのうちで一緒に……」
伊織「ちょ! ちょっと! やよい、余計なことは言わなくていいの!」
やよい「……?」かくん
伊織「……って、そうじゃなくて!」
伊織「私は、どうして次のオーディションに向けた作戦を教えられないのかって聞いてるのよ!」
P「…………」
響「い、伊織……」
伊織「アンタがプロデューサーとしてそこそこやれるってことは、まあ、認めてあげるわよ。『勝利』っていう結果も出してるんだし」
P「…………」
伊織「ほんの少しだけど、信頼してあげてもいい。きっとみんなもそう思い始めてるはずよ」
亜美(……とは言っても大分前から、兄ちゃんのこと信じきってないのはそもそも)
真美(いおりんと……はるるんくらいのもんだったけどね)
伊織「でもね、考えてることを話してくれないんじゃあ、それはアンタが私たちを信頼してないってことなんじゃないの!?」
P「…………」
真「…………」
春香「……そうなんですか?」
千早「!」
春香「プロデューサーさんは私たちのことを……。信頼していないんですか?」
響「ま、まぁまぁ春香、そんなわけ……」
P「そう見える?」
響「ちょっ!?」
春香「…………」
伊織「…………ふん」
響「うぅ……」
しぃ…………ん
雪歩「……………………ぅ」
雪歩「あ、あの……。わ、わ、私は……。そんな、風には……」
貴音「……!」
やよい「うぅ……」
貴音「……。……」
貴音「……プロデューサー」
P「四条」
貴音「あなたに何か思惑があることは私も承知しております。決して考え無しに行動を起こすような方ではないことも。……ですが」
貴音「それを不安に思う者がいる以上、もう少し言葉をくださってもよいのではありませんか?」
伊織「なっ! 私は、不安だなんて一言も……!」
P「……」
貴音「…………」
P「……はっ。じゃあまあ正直に言うとだね」
P「まだ、作戦の詰めが甘いんだよね。だからきちっと完成してから話そうと思っててさ」
伊織「だから! 詰めが甘いとかじゃなくって、大筋ができてるっていうならそれを教えなさいって言ってるのよ!」
伊織「それならそれで、私たちだって今からできることはある」
伊織「でも何も情報がないと、『勝つためのレッスン』ができないじゃないn……」
美希「はい、その辺でストップなのー。話進まないよ、デコちゃん?」
伊織「もが! もがもが! もがーっ!」
貴音「…………」
貴音「……正直、私も納得できていないというのが本音ですが」
貴音「先ほども水瀬伊織が申し上げたよう、私たちは貴方を信じることにしました」
貴音「ですから……。この場も貴方を信じることにします。きっと何か、理由があるのでしょう?」
P「……ん。まぁ、そだね」
貴音「ならば、いいです」
貴音「勝つためには……。どうやら、貴方の力が必要なようですからね」
P「(勝つためのレッスン、ねぇ……)」
P「(どうしたもんか)」
律子「そういえば、小鳥さん。見ましたか? 次の高校生組のオーディションの相手」
小鳥「次のオーディション……。『RHYTHMIX』でしたっけ。ええ、見ました。ほとんどは格下のユニットみたいでしたけど、一組だけ……」
律子「はい。……『サイネリア』」
小鳥「ネットアイドルから突如リアルアイドルへの転身を決めた、『新進気鋭の電子の歌姫』……でしたっけ」
律子「そうですね。正直に言うと、ほとんどデータがない、というのが実情ですが」
律子「数々のオーディションを突破している以上、実力があるのは間違いないと思います」
小鳥「プロデューサーさんは、また何か策を練っているんでしょうか」
律子「ここのところ資料室にこもりっぱなしのところを見ると、そうなんじゃないですか? 相変わらず私たちには何も教えてくれませんけどね」むすっ
てくてく
雪歩(はぁ……。さっきの伊織ちゃん、怖かったなぁ)
雪歩(でも、なんだかんだでプロデューサーのこと、信じてるみたいだったし。少しはいい方向に向いてきているのかも?)
「もし」
雪歩(それと、四条さん。あの場面であんなにはきはきものを言えるなんて)
「あの」
雪歩(私なんて、おどおどしてるばっかりで何も言いたいこと言えないし……。あんな風に、強くなれたらな)
「もし、萩原雪歩?」ぽん
雪歩「うひゃああああ!?」びくっ
貴音「!?」
雪歩「あ、な、なんだ四条さんでしたか……。ごめんなさい、私、考え事をしていて……」
貴音「それは失礼致しました。大変驚かせてしまったようですね」
雪歩「うぅ、ごめんなさい……」
貴音「いえいえ。……ところで、先ほどのレッスンのことで少し聞きたいのですが、よろしいですか?」
雪歩「ふぇ? シニア組のレッスンでしたら、私じゃなくてあずささんの方が」
貴音「それが、あずさはレッスンが終わるなり姿が見えなくなってしまって……」
雪歩「あ、あはは……」
貴音「私はこのあと取材に出ねばなりませんので、お力添えいただける人を探していたのです。……お邪魔でしたでしょうか」
雪歩「そ、そんな! 邪魔だなんてそんなことありません! 私なんかにできることでしたら……」
貴音「それは良かった。ではまず、この部分の足運びのことなのですが……」
雪歩「……、という感じでしょうか……? 私が意識しているのは、このくらいです」
貴音「……ふむ。感謝いたします、とても参考になりました」ぺこ
雪歩「そ、そんな! 四条さんのお役に立てて、良かったですぅ……」
貴音「…………」
雪歩「……四条さん?」
貴音「……少し、変わりましたね。雪歩」
雪歩「ふぇ?」
雪歩「か、変わった、ですか……?」
貴音「はい。以前よりもほんの少しですが、自信が着いたような顔をしています」
雪歩「ええ!? そんなこと、ないですよ……?」
貴音「いえ、確かですよ。……例えば、先ほどの場面です」
貴音「以前の雪歩なら、あのような険悪な雰囲気は苦手にしていたように思いますが」
雪歩「い、以前の私、ですか……? 今もあんな雰囲気は苦手ですけど……」
貴音「でも今日は、自分の意見をしっかり述べていたではありませんか」
雪歩「あ、あれは、何か言わなくっちゃって、必死で……。それに、四条さんみたいにはっきりものを言ったわけでもないですから……」
貴音「無意識だった、と?」
雪歩「……はい」
貴音「……ふふ。無意識だったとしたら、それはそれで大きな進歩です。何せ、以前は意識的にも行動できなかったのですから」
雪歩「!」
貴音「自信を持って、いいと思いますよ」
雪歩「は、はいっ!」
貴音「雪歩が変わった契機」
貴音「……それはやはり、あの方の存在なのでしょうか?」
雪歩「えっ!? ううん、どうなんでしょう……」
雪歩「確かにプロデューサーが来てからいろんなことがありましたけど……」
雪歩「……やっぱり、変わったとかは、よく、わからないです」
貴音「そうですか」
雪歩「あ、でも、ひとつだけ……」
貴音「?」
雪歩「――――――――。――――――――」
貴音「!」
貴音「――――。――――?」
雪歩「――――」
貴音「…………!」
~レッスンルーム・レッスン終了後~
真「や、春香。ちょっといい?」
春香「真。いいよ、どうしたの?」
真「春香はあの記事、見た? 魔王エンジェルの……」
春香「……見たよ。佐野さんが加入する、って」
美希「あれ。2人とも、美心のこと知ってるの?」
春香「美希。……うん、私と真は、ライブが同じ会場になったことがあるから」
真「そういう美希こそ、なんで知ってるのさ? それに、美心だなんて気さくな呼び方だし」
美希「ミキもね、美心と一緒にお仕事したことがあるんだ」
美希「老人ホームのステージなんて、最初はつまんなそーって思ってたけど……。美心のおかげで、すっごく楽しかったの」
真「そっか。……ねぇ、美希から見て、佐野さんってどんな人だった?」
美希「どんな、って……。そうだなぁ。初めはイケてない普通の女の子かなぁなんて思ったりしたけど」
真「あ、あはは……」
美希「でもどのアピールもすっごくレベルが高くて……。その中でも、ボーカルは別次元だったと思うな」
真「だよね。ただでさえ強敵の魔王エンジェルなのに……。ますます戦力が強化されたってワケか」
美希「でもね」
美希「ミキが美心について一番覚えてるのは、すっごく楽しそうに歌うんだな、ってことだったの」
真「楽しそうに……」
春香「……」
美希「ほとんど喋ったことないミキと即席でユニットを組んだのに、それが当たり前みたいに最高のライブをしてて」
美希「一緒に歌ってるミキまで、すっごく楽しくなっちゃった。だからあのときのことは、よく覚えてるの」
真「……うん。確かに、ボクたちとライブをしたときも、そんな感じだった……」
真「あのときの佐野さんとボクたちのランクと実力には、天と地ほど差があったけど……。佐野さん、そんなボクたちにも気取ったりせず普通に接してくれたよね」
春香「……そうだったね。それどころか、メールアドレスや電話番号まで交換したりして。まるで、友達みたいに」
真「そんな佐野さんが、どうして今になって魔王エンジェルに……」
美希「……その理由はわかんないけど」
美希「ミキね、老人ホームでのお仕事のときどーしても気になって、『どうしてもっとCD出したり、大きなお仕事しないの?』って聞いちゃったんだけど」
美希「その時美心は、こう言ってたんだ」
美希「『アイドルになってどこを目指すかは人それぞれ』」
美希「『誰にだって、きっと一番輝ける場所が見つかりますよ』」
美希「……って」
真「一番輝ける、場所……」
美希「だから、きっとね」
美希「今回のことも、美心なりの理由があるんだと思う」
~765プロ・屋上~
P「……」
むくり
P「決めた」
P「あれで行こう」
P「あ、いたいた。おっさーん」
高木「おお、君か。最近、良くやってくれているみたいじゃないか。頼りにしているよ」
P「まーね」
高木「私に何か用かい?」
P「あのさー、俺さー。腹減っちゃって」
高木「え……? ああ……」
P「カレーおごってくんない? 大盛りで」
高木「…………カレー?」
やよい「今日は合同レッスンかぁ。いったい、どんなレッスンするのかなー」
亜美「なんせ亜美たちは魔王エンジェルを倒しちゃったわけですからなー」
真美「うんうん。これは地獄の特訓が待っているに違いありませんなー」
やよい「う、うぅ……。着いていけるかなぁ」
千早「ふふ。前回のヒーローが何を言ってるの」
やよい「千早さん! ひ、ヒーローとか、そんなんじゃ……」
すたすた
P「よーう」
亜美「あ、兄ちゃん!」
やよい「プロデューサー! おはようございまーっす!」ガルーン
P「おはようさん。お前らさー、カレー好きー?」
真美「へ?」
千早「……カレー?」
P「うん、カレー。食いたくない?」
やよい「カレーは大好きですよ! たくさん作り置きできますし、余ったいろんなお野菜も入れられて、夏バテを防ぐのにもとーってもこうかてきなんです!」
千早「……というか、突然何の話なんですか?」
P「じゃあ、買ってきて」
千早「……は?」
P「これ、お金と材料書いたメモ。さっき下のたるき亭のおばちゃんに計算してもらったからきっと正確」
千早「あ、あの……?」
P「チキンカレーな。やっぱアイドルだし、鶏肉の方がいいでしょ」
P「カツカレーで『勝つ』ってのも考えたけど……。あれってそもそもダジャレだし」
亜美「……兄ちゃん?」
P「んじゃ量とか間違えんなよ。行ってらっしゃい」
亜美真美「…………」
ちはやよい「…………」
「……れ、レッスンは?」
伊織「…………」ぴらり
伊織「……何よ、コレ」
伊織「ちょっと、アンタ!」
P「?」
P「何って……。チラシですけど」
真「カレーパーティー、ですか? 何だか楽しそうですね」
伊織「そういうことを聞いてるんじゃないわよ! どうして私たちがこんなものを街で配って来なきゃならないの、って聞いてるの! レッスンもしないで!」だんっ
伊織「大体何よカレーパーティーって……! 聞いてないわよ私こんなの!」
P「えー……。でも、たいていの人ってカレー好きじゃね?」
伊織「そんな話してないでしょうが! 真面目に聞きなさいよ!」
真「ま、まあまあ、伊織……」
伊織「とにかく! アンタの気まぐれのお遊びにはこりごりなの! やるなら勝手にやってなさいよ!」
伊織「まったく……。どうかしてるわ、本当に。こんなんじゃまたすぐ連敗まっしぐらよ」
P「…………」
P「あーあ」
P「アイドルともあろう者が、地元のファン達との交流をおろそかにするとはねえ……」
伊織「……」ぴくっ
伊織「そっ……! それとこれとは関係ないでしょ!?」
P「一流アイドルの水瀬伊織サマとしては、もう全国区になった気満々ってわけだ」
P「そりゃ地元のファンなんかにかまけてる暇はないよなぁ」
伊織「!!」
P「それか、他に理由が?」
P「……あ、そーか。でこちゃんじゃ人が集まらないか」
伊織「!!?」
P「しょーがない、菊地ちょっとだけ行ってきてくんねぇ?」
真「ボクがですか? そりゃいいですけ」
がしっ!!
伊織「…………!」ぎろっ
伊織「30分だけだからね!! それ以上は1分たりとも負からないわよ!!」
P「あ、ホント? じゃあ頼むわ」
真「ちょ、待ってよ伊織。ボクも行くってば」
伊織「全く、何なのよアイツは……!」ぶつぶつ
すたすた
P「ニヒー」
春香「あの、プロデューサーさん」
春香「少しお遊びが過ぎるんじゃないですか? この大事な時に」
P「はっ。自分は仕事ないと思うなよ天海」
春香「へ?」
「ほらほら! 山ほどカレー作るんでしょ、空いてる人は手伝って!!」ぱんぱん
春香「た、たるき亭の……? どうして……?」
律子「ちょっとプロデューサー! 私に一言も言わずに、どういうことですか!」
P「お、割烹着似合ってんじゃん律子」
小鳥「うぅ……玉ねぎが目に染みるぅ……」とんとんとん
高木「ううむ、包丁を持つのなんて何年ぶりだろう……」とん、とん、
律子(社長に、小鳥さんまで手伝わせて……。何がしたいのよこの人は!)
かすみ「猫の手、猫の手……」とん、とん、とん
「あら、上手ねかすみちゃん。真にも教えてあげたいくらい」
かすみ「ほ、ほんとですか? えへへ。お姉ちゃんのお手伝いしてるから……」
「さすが我那覇さん、リズム感いいわね」
響「へへっ、自分にかかればこのくらい朝飯前だぞ!」
春香「やよいの妹に、みんなのお母さん、レッスンのトレーナーさんまで……!? 全員巻き込むつもりですか!?」
P「そうだよ。みんなでカレーを作るんだ」
『765プロ カレーパーティーのお知らせ!』
「あのチラシ見た? カレーパーティーって」
「765プロ? アイドルなの?」
「知らねーの!? ジュピターに真っ向勝負挑んだって話題になってたじゃん」
「噂だけど、この前あの魔王エンジェルにも勝ったとか……?」
「あの伊織ちゃんが直接ビラ配ってたって!? くそーっ!!」
「お母さんお母さん! はるかちゃんたちとカレーパーティーだって! わたしもいきたい!」
「765プロ……。そういえば近くのデパートでイベントやってたわねぇ」
「カレー手渡ししてもらえるなんて、行くに決まってる!」
「真様の手作りカレー……。ふわぁ……」
わいわい
がやがや
ざわざわ
「こんにちはーっ! カレーお配りしてますから、順番に並んでくださいねー!」
「CD、買ってくださっているんですか……? 私の歌を聴いてくださるなんて、嬉しいです」
「わぁ、家族みーんなで来てくださったんですね! ありがとうございまーっす!」
「ほら、そこのちびたち! ちゃんと二人分あるんだから喧嘩するんじゃないわよ!」
「先ほど、私もいただきましたが……。味は保証いたしますよ。どうぞご賞味ください」
「わ、わたしもお手伝いしますぅ……!」
「ボクもいくよ! 雪歩はそっちの女の子たちをよろしく」
「あれって真のファンなんじゃないのか……? まあいっか、自分も手伝うぞ!」
「ミキの仕事、おーわりっ! 準備ができたら呼んでほしいのー」
「ミキミキ、こんなところで寝ちゃだめだよー」
「んっふっふー。起きないとミキミキのカレーだけ激辛にしちゃうかんね?」
「それは勘弁なのーっ!」
P「……………………」
ざっ
高木「いやあ、結構な騒ぎになっているね」
P「はは。カレーご馳走になってるよ、おっさん」
高木「……しかし、息抜きさせるにももう少しやり方があったのではないかい? 何か問題でも起きたら」
P「何も起きてないよ」
P「みんなで仲良くカレー食べてら」
「おかーさーん! カレーもらったー!」
「それとね、それとね」
「はるかちゃんが、あとでいっしょにうたってくれるって!」
「まあ、よかったわね。……すみません、この子が」
「いえいえ。それじゃあ、まとあとでね!」
「うんっ!」
P「おっさんの目は、確かみたいだね」
高木「? 目、かい?」
P「ん。アイドルを見抜く目」
P「今のあいつらを見てたら」
P「あいつらがどれだけ、このプロダクションのことを」
P「そして、ファンのことを思っているのかっていうのが伝わってくるよ」
高木「…………」
P「何人かまだぎこちないやつもいるけどさ」
P「アイドルも」
P「プロダクションの人間も」
P「ファンの人たちも」
P「地域の人やアイドルの家族たちも、皆一緒になって一つのことを共有してる」
雪歩「わ、わ、私のファンですか……!? すっごく嬉しいです、ありがとうございます!」
「雪歩ちゃんの歌に、いつも勇気をもらってます! 応援してます!」
雪歩「!!! う、嬉しいです……!」
雪歩「私も、もっともっと、頑張りますね!」
P「これがアイドルじゃないかな、おっさん」
高木「……」
P「ステージでパフォーマンスしてるときに見えるのは、目の前の観客だけ……」
P「でもそれだけじゃない」
P「来れなかったファン、密かにテレビで応援してる人、CDを買ってくれる人」
P「見てくれる地域の人、自分の周りで支えてくれる人、そして家族。765プロに関わるたくさんの人……」
P「そのすべてが同じ方向を向いて、同じ気持ちで臨むんだ」
P「勝つことも、大事だけどさ」
P「……自分が、何のために頑張るのか。そこを理解すること」
P「それが出来れば765プロは、もっともっと上に行ける」
高木「……うむ」
高木「そうだね」
P「ま、こんなことができるのも有名になってくる前だけだけどね」
高木「はは、全くだ」
P「……じゃあ」すっ
高木「?」
P「お支払い、よろしく」
高木「!? もしかしてこの代金、私のポケットマネーからなのかね!?」
P「おごるって言ったじゃーん」
高木「…………むむ」
P(……さて)
P(……サイネリア戦は、あのプランで行きますか!)
すみません、ちょっとだけ外します
多分すぐ戻れるはず
あと、このペースだとsageた方がいいんでしょうか
ID変わってると思いますが>>1です
とりあえずsage進行で再開していきます
~資料室~
P「はーい、ちゅーもーく」
一同「…………」
P「何だい何だい。相変わらず元気ねえなあ」
伊織「いきなり集められて、『重大発表があるから』なんて言われてきゃいきゃい騒げるわけないでしょ……」
千早「何なんですか、一体?」
春香「…………」
P「次のオーディションのことだけどね」
真「!」
やよい「!」
伊織「何よ、やっと作戦を教える気になったわけ?」
P「それもあるけど。もっと重大な発表」
P「……次のオーディション、天海と星井は出られません」
一同「……………………」
一同「は?」
真「ちょ、ちょ、ちょっと! どういう事なんですかプロデューサー!」
伊織「確かに今回のオーデションは格下が多いのかもしれないけど、春香と美希抜きなんて……」
律子「落ち着いて、みんな。いつものこの人の突拍子もない発案とは違って、今回はちゃんと理由があるわ」
P「なんかトゲのある言い方だねえ……。ま、そゆこと」
P「天海」
春香「…………」
春香「みんな、『発掘アイドル辞典』って番組、知ってるよね?」
やよい「『発掘アイドル辞典』って……。ええと……」
真「確か、新進気鋭のアイドルを紹介していく情報番組だったっけ? でも、確かうちのプロダクションってもう全員出演してた気がするんだけど」
春香「うん。でも今回は、IU特集と称して各プロダクションの再紹介を行うんだって」
亜美「じゃあ、はるるんとミキミキはそれに出るってこと……」
律子「そういうこと。出演のことを考えると、どうしても日付の折り合いがつかなくってね」
真美「あれ? でも、そしたらあずさお姉ちゃんとお姫ちんのユニットからは……」
律子「……残念だけど、シニア組のユニットは出演を辞退したわ。デュオから一人抜けてソロになると、残った方のオーディションでの負担が段違いになるし」
律子「だからシニア組のユニットについては、春香と美希にトーク中の話題に出してもらうだけで留めてもらうことにしたの」
律子「他にも予定が合わないソロやデュオのユニットもたくさんあるはずだし、次の特集機会だってきっとある。そう踏んで、ね」
雪歩「一度に全ユニット出る必要はない、ってことかぁ……」
春香「そういうこと。だから今回オーディションの方は、みんなにお願いするね」
響「ちょっと待ってよ! 辞退っていうのが可能なら、春香か美希のどっちかだけで……」
P「ごちゃごちゃ言うない」
ぽか
響「うぎゃっ! 何するんだ、プロデューサー!」
P「確かにオーディションだけを考えるなら、出演させるのは一人でいいかもしんない」
P「けど俺は、こっちの方があとあと絶対面白くなると思ってっからこうしたの」
P「それとも、お前らは天海と星井がいなきゃ戦う前から白旗あげんの?」
響「…………!」
P「この先、なんかのトラブルでメンバーが欠けることだって重々考えられるんだ」
P「誰かがいなくても自分たちでカバーできる、ってところを見せてみろよ」
春香「…………」
響「……わかった、ぞ」
P「じゃ、ついでにもう一つ」
律子「へ?」
P「今回のセンター、萩原と高槻だから」
P「よろしく」
雪歩「ふぇ」
やよい「え」
春香「え」
一同「ええええええええええ!!?」
~オーディション会場~
ばたばたばた
響「ひゃー! すっかりずぶ濡れだぞ……」
真「天気予報は雨だったけど、まさかこんなに急に降るとはね……」
律子「だから傘持っていきなさい、って言ったのに……。早く体拭きなさい、体調崩すわよ」
真「サンキュ、律子。……だってねえ、響」
響「うん。わざわざ傘指すより、自分と真だったら走った方が濡れないしな」
律子「あんたらねぇ……」
雪歩「う、う、ううう……」
亜美「ゆ、ゆきぴょん、大丈夫?」
真美「お顔が雪みたいにまっしろになってるよ……?」
雪歩「わ……私ちょっと、荷が重くて……」
伊織「緊張してるのよ、そっとしておいてやりなさい」
亜美「いおりん! でも……」
貴音「大丈夫です。雪歩はこのくらいで挫ける人間ではありません」
雪歩「……四条さん」
貴音「緊張感を持たずにステージに上がる人間などおりません。……少し、外の空気でも吸って来てはいかがですか?」
雪歩「そ、そうですね。時間もあるみたいですし……。そう、します」
あずさ「あ、雪歩ちゃん」
雪歩「あずささん。あずささんも、外の空気を?」
あずさ「ええ。雨、ひどいなぁって」
雪歩「そうですね……。なんだか、私たちの気持ちまで滅入っちゃうような……」
あずさ「こう雨が続くと、お洗濯ものが溜まって困っちゃうのよね。部屋干し、したくないんだけど……」
雪歩「えっ」
あずさ「この前なんて、横を通ったトラックに思いっきり水かけられちゃって……。なんとか、えい、って傘を出したんだけど、間に合わなくって」
あずさ「あーあ、お気に入りのスカートだったんだけどなぁ」
雪歩「そ、それは災難でしたね……」
雪歩(あずささん、リラックスしすぎじゃないかな……。自分の家みたい)
あずさ「ふふ。でも悪いことがあった分だけ、これからいいこともあるはずよね」
あずさ「……だから雪歩ちゃん。二人で、今日をいい日にしちゃいましょう?」にこ
雪歩「!」
雪歩「は、はいっ」
あずさ「うふふ」
雪歩(マイペースだけど、すごいなあ……。こういうのを、自然体っていうのかな)
雪歩(私には、絶対あんな風にはなれそうもないや……)
雪歩(……あ、でも)
雪歩(震えが、止まった……)
サイネリア「……あ」
P「……お」
サイネリア「どうも、765プロのプロデューサーさん。今日はよろしくお願いします」
P「どーも。……そっちのプロデューサーは?」
サイネリア「?」
サイネリア「……いませんよ。『サイネリア』はセルフプロデュースなんデス」
P「ふぅん、そっか。大変だね」
サイネリア「(別段、隠しているつもりもないんだけど……。本当に知らないのかな)」
サイネリア「(だとしたら、対戦相手であるアタシの情報はほとんどリサーチしていないということになる)」
P「んじゃ、またね」
サイネリア「…………」
サイネリア「(それとも、知らないフリ……?)」
──────
雪歩(震えは、止まったけど)
雪歩「(うう……やっぱり落ち着かない。むずむずするよ)」
雪歩「(それは、そうだよね……。センターなんて、レッスン以外じゃあ初めてだもん)」
雪歩「(……でも)」
真「へへ。覚悟は決まったかい、雪歩?」
千早「頑張りましょう、萩原さん」
響「ミスしても自分たちがいるから大丈夫だぞ! 思いっきりやっちゃってよね!」
雪歩「……うん!」
雪歩「(みんなに迷惑をかけないためにも……。頑張らなくちゃ)」
真「じゃあセンターさん、円陣の声出しよろしく!」
雪歩「えっ!? わ、わ、わ、私!?」
真「そりゃそうだよ。春香がいないんだから、誰が他にやるのさ」
雪歩「そんな、いきなり、むむむ無理だよぅ……!」
千早「そこまで意識することは、ないと思うのだけれど……」
響「あはは。じゃあ時間がないし、自分がやっちゃうぞ?」
真「……そだね。よろしく、響」
雪歩「ご、ごめんね、響ちゃん」
響「気にしない気にしない。じゃあ、いくぞ?」
真「うん。絶対、勝とうね」
千早「ええ。……春香のためにも」
雪歩「う、うんっ」
響「よーし、せー、のっ」
765プロ、ファイトーっ!!!
おーっ!!!
~タクシー車内~
春香(……そろそろ、オーディションの時間かな)
春香(円陣の声掛け……。響ちゃんあたりがやってるんだろうな)
春香(…………)
春香(確かに響ちゃんの言う通り、無理をすれば私か美希のどちらかは出場することも可能ではあった)
美希「……zzz」
春香(…………)
P『天海。お前は今回のオーディション、出なくていいから』
春香(…………)
春香(それでも、そうしなかったのは……。みんなの実力が底上げされていると判断したから?)
P『けど俺は、こっちの方があとあと絶対面白くなると思ってっからこうしたの』
春香(でも、プロデューサーさんは何で雪歩をセンターに……)
春香(雪歩のことだから……。余計プレッシャーがかかって、いつも通りのパフォーマンスができなくなっちゃうんじゃ)
春香(それとも)
春香(今の雪歩なら、乗り越えられるということですか……?)
──────
流行
① Da.★★★★★②Vi.★★★③Vo.★★
:参加ユニット:
No.1…765Angels RankD ImageLv.10
No.2…サイネリア RankD ILv.10
No.3…なべしき RankD ILv.8
No.4…パッション! RankE ILv.7
No.5…きりきりまい RankE ILv.7
No.6…どもッス RankE ILv.6
律子「前もってにらんでいた通り、相手はほとんど格下ですね」
律子「サイネリアさんとの一騎打ちのような形でしょうか」
P「そだね。このオーディション受けたのは、ファン数を稼ぐのが目的じゃなかったし」
律子「ランクの高いオーディションほど、当然ファン数は増える。……だとすると、今回の目的は」
P「ま、大体律子の想像の通りだろーよ。……さて」
P「最初が肝心だけど……。どうなるかな?」
・第一回審査開始
響「(GOだぞ、雪歩)」
雪歩「(え、いっ……!!!)」
──雪歩 思い出アピール Failure!!──
雪歩「(ぁっ……!!)」
サイネリア「(!!?)」
サイネリア「(いきなり……!?)」Da.appeal +82p
真「(雪歩っ……!)」Da.appeal +84p
千早「(…………萩原さん)」Vo.appeal +90p
響「(こ、のっ……!!)」
──響 思い出アピール Success!!──
Da. +116p Vi. +210p Vo.115p
サイネリア「(…………!)」Vo.appeal +80p
律子「ああ……。ここは決めてほしかった」
P「……ま、しょうがないね。前回みたいにいつもいつもボムが決まるわけじゃないし」
P「我那覇がナイスカバーをしてくれた」
律子「失敗も織り込み済み……。ですか」
P「そういうこと」
P「最初ならミスのダメージも少ないし、あいつらなら立て直せる」
P「全然戦えるよ」
P「それよりも、気にしないといけないのは……」
サイネリア「(やはり、我那覇サンのボムもViに使ってきた……)」Da.appeal +83p
サイネリア「(つまり、これはViの萩原サンを中心でいくということ)」Vi.appeal +90p
雪歩「(う、えっと、こっち……)」Vi.appeal +79p
真「(ボクは、こう……!)」Da.appeal +84p
サイネリア「(765プロのオーディションのデータ、全て見させてもらいました)」
サイネリア「(その中で)」
サイネリア「(……数は少なかったですが、その全てで輝きを放っていたアイドルが、ひとりいた)」
サイネリア「(萩原、雪歩……)」
サイネリア「(荒削りなところもありますが)」
サイネリア「(765プロで乗せると面倒なのは、彼女デス)」
サイネリア「(ミスした彼女のテンションを上げさせないためにも)」
サイネリア「(Viは、このままマークし続ける……!)」
──サイネリア 思い出アピール Success!!──
Da. +120p Vi. +218p Vo.121p
雪歩「(う、わっ…………!)」
律子「むむむ」
P「?」
律子「雪歩、舞い上がってるんでしょうか……。見てて落ち着きがありません」
律子「やっぱりあの子に、センターは重荷でしたかね……」
P「…………」
P「まあ、ちょうどいいでしょ」
P「今日の萩原は、やることシンプルなんだしさ」
律子「そうですけどー……」
P「さてさて」
P「主導権はどっちに転ぶことやら」
サイネリア「(さて)」Da.appeal +82p
サイネリア「(先ほどの思い出アピールで、アタシがViをマークしていることは伝わったはずですが)」
サイネリア「(萩原サンは、どう動く……?)」Vo.appeal +81p
千早「(…………)」Da.appeal +80p
響「(Daは抑えたいっ……!)」Da.appeal +83p
雪歩「(…………っ)」
雪歩「(ポイントを、固める……!)」
──Double appeal!!── Da.+40pt Vi.+41pt
サイネリア「(流行一位のDaを抑えながらのViとの両天秤……まあ、そんなところでしょう)」Vi.appeal +89p
サイネリア「(天海サンがいない分、自らがバランスを取ろうとしている。……健気でスネ)」
サイネリア「(……その隙は、見逃すわけにはいきません)」Da.appeal +81p
・第一回審査結果
Da. 1位…765Angels (487p) 2位…サイネリア(452p) 3位…なべしき(384p)
Vi. 1位…サイネリア(397p) 2位…765Angels(330p) 3位…パッション!(312p)
Vo. 1位…サイネリア(282p) 2位…なべしき(264p) 3位…どもッス(256p)
総合:現在同率1位(★×5)
真「(……同点、か)」
雪歩「(わ、私のミスがなければ……!)」
千早「(……よし)」
響「(んー…………どうなんだ、これ?)」
サイネリア「(……!)」
サイネリア「(Viは、競り勝ったけど)」
サイネリア「(Daを、取られた……? この展開で?)」
サイネリア「(アタシのDaへの配分が特別少なかったとは思いませんが)」
サイネリア「(…………?)」
P「それにしてもさ、サイネリア? だっけ、あの子」
律子「彼女がどうかしましたか?」
P「すっごい気合い入ったアピールするよね。見てて伝わるくらいに」
P「さっきの思い出アピールなんか、萩原に喧嘩売ってるみたいだったもん」
小鳥「け、喧嘩……ですか。なんだか穏やかじゃないですね」
律子「サイネリアさんは」
P「?」
律子「ネットアイドルからリアルのアイドル界にデビューする際、誰かと組んでという案もあったみたいです」
律子「それも、当時彼女が所属することになった事務所で、最も実力のあるアイドルと」
小鳥「そうなんですか? ……確かに、ネットアイドルから現実のアイドルとなると、誰か経験者が居た方が安心ですもんね」
律子「ええ。……しかし、彼女はそれを断固として断った」
律子「『独りの方が、甘えずに自分を高めていけるから』……そう、応えたそうです」
P「へえ」
律子「さっきのアピールもそうですけど」
律子「彼女のアピールにギラギラしたものを感じるとすれば、そういった覚悟からきているんだと思います」
P「となると」
P「そういうやつは」
サイネリア「(……何か、おかしい)」
サイネリア「(Daが取り切れなかったこともそうですが、それだけではなく)」
サイネリア「(萩原さんが、全然目立とうという雰囲気を出していまセン)」
サイネリア「(アタシがきっちりマークしているから、警戒した……? いや、違う)」
サイネリア「(…………)」
サイネリア「(…………)」
サイネリア「(まさか、囮……?)」じろっ
雪歩「(…………ひっ)」びくっ
サイネリア「(思い出せ……。このオーディション、萩原サンと我那覇サンのボムで幕を空けた)」
サイネリア「(その後も明らかにViに寄せた萩原サンのアピール。しかし、その裏で)」
【千早「(…………)」Da.appeal +80p】
サイネリア「(っ!)」
サイネリア「(如月サンが、Daに寄せていた……!?)」
サイネリア「(となると、萩原サンがセンターに立ったのも注意を引くため……? Viにアピールを惹きつけて、アタシのVoとDaに対する警戒を緩めるために)」
サイネリア「(……フム。なかなかに、姑息な真似を)」
サイネリア「(……考えてみれば、当たり前のことでス)」
サイネリア「(今日は、天海サンがいない……)」
サイネリア「(つまり向こうのメンバーはDaの菊地サン、我那覇サンにVoの如月サン。萩原サンはVi寄りとはいえバランス型……)」
サイネリア「(バランサーの天海サンがいない今、ストロングポイントであるDaかVoで勝負した方が有利なのは火を見るより明らかデス)」
サイネリア「(と、なると……)」
・第二回審査開始
雪歩「(うぅ。もう、失敗だけは、しないように……)」Vi.appeal +87p
千早「(第一審査は、同点……)」Vo.appeal +93p
真「(サイネリア……。かなり、手堅い。大きなミスはしてくれそうにない)」Vi.appeal +85p
響「(逆に言えば、大きく仕掛けてくることもない……か?)」Da.appeal +89p
サイネリア「(あちらの出足は、静かなものですネ)」Vi.appeal +89p
サイネリア「(このままなら、動きが読みやすくていいのデスが)」Da.appeal +80p
サイネリア「(最後まで何の動きもないようなら、そのときは……)」Vo.appeal +82p
雪歩「(さ、さっきの視線)」
雪歩「(うぅ、もしかして、気付かれたのかな……?)」
雪歩「(でも)」
雪歩「(同じように、確実に……。同点なんだし、そうしたら、少なくとも負けることは……)」
雪歩「(…………)」
雪歩「(…………本当に?)」
雪歩「(…………本当にそれで、いいの…………?)」
~ミーティング後・資料室~
雪歩『プ、プロデューサー……。やっぱり、センターを私から他の人にってわけには……』
P『…………』
雪歩『……』
P『ダメー』
雪歩『……!』
P『天海がいないんだ。お前はこのオーディション、この状況ん中でベストを尽くすことだけ考えろ』
P『楽しようとすんな』
雪歩『は……はいっ……』
雪歩『(楽……か)』
雪歩『……うん。確かに、逃げるのは嫌だ……』
P「萩原にViで引きつけてもらう作戦だけどね」
律子「? ……はい」
P「多分あっちにはバレてる」
律子「ええっ!?」
P「わかんないけど……さっきそんな顔して萩原の方見てたし」
律子「そ、そんな! まずいじゃないですか! Viにアピールを引きつけられないとなると……」
P「まあそうだけど……。それでも全く無警戒ってわけにはいかないだろうから、なんとかなるでしょ」
P「向こうは賢そうだし、遅かれ早かれ修正されちまう問題だったと思うよ」
P「ま、それよりウチにとって重要なのは」
P「萩原自身が、このオーディションを戦いきれるかどうかだよ」
律子「……え」
P「今日の萩原は調子悪い……。天海がいなくて余計なプレッシャー感じてんのか知んねえけど」
P「だからと言って、チームがあいつの好不調の波に振り回されるわけにもいかない」
P「悪いなりにもやりきる……。今のあいつに必要なのは、そうやって小さいながらも自信を積み上げることだよ」
雪歩「(…………)」
すぅぅっ
雪歩「……ふ―――っ」
P「そんなわけでセンターを任せた」
P「向こうの目を引くって目的もあったけど、俺が欲しかったのは萩原の経験値だ」
P「オーディション一つをセンターとしてやり抜く……。これは間違いなく萩原の自信につながるはずだよ」
律子「な、なるほど」
小鳥「…………でももし失敗したまま終わりでもしたら、雪歩ちゃん、立ち直れなくなっちゃいそうですよね…………」
P「味方としてその発言はどうなのよピヨちゃん」
P「はっ。そんなことあるかってんだ」
P「このままであいつらが終われるわけねえだろ」
りつことり「……え」
真「(このまま行って……いいの? 第1回と同じ結果に)」Da.appeal +85p
響「(……まあ)」
響「(……この回も同点で終わって、ラスト1回の審査での勝負になるなら、それはそれで……?)」Da.appeal +87p
サイネリア「(……なんて、思っているのなら)」
──Triple appeal!!──Da.+28pt Vi.+28pt Vo.+27pt
雪歩「(…………!?)」Vi.appeal +89p
サイネリア「(……大きな、間違いデスよ!)」
──サイネリア 思い出アピール Success!!──
Da. +216p Vi. +120p Vo.121p
響「(しまっ……ここで、仕掛けてきた! しかも、Daが……!)」
真「(この、タイミングっ……。狙われていた!)」
真「(仕掛け返そうにも、ボクと響の番は終わってしまってる……!)」
響「(千早、は、っ……! ……そうか!)」ぎりっ
千早「(……くっ。私の、今回の役目は)」
千早「(★は取れなくてもいいから、ペナルティにならない程度に『独りで』Voを支えること。……つまり)」
サイネリア「(裏を返せば、こういう状況ではVoから身動きが取れないってことデス! ……図星、でしょう?)」にやり
千早「(そこまで、読み切られていた……?)」
千早「(……っ。せめて、少しでも)」
──Double appeal!!── Da.+35pt Vo.+36pt
千早「(これで残りは、一回……。動けるのは)」
真「(雪歩っ!!)」
響「(雪歩ぉっ!!)」
雪歩「(……わ)」
雪歩「(私、しか)」
雪歩「(かく、じつに?)」
雪歩「(それ、じゃ、ダ、メ……)」
雪歩「(わた、し、センター、まけ、たく、な)」
雪歩「(…………!)」
雪歩「(…………っ)」
──Double appeal!!── Da.+46pt Vi.+46pt
サイネリア「(DaとViのダブルアピール……。第一回審査の焼き直し、デスか)」
サイネリア「(まあ、咄嗟にしてはよく動けた方だと思います。今までの彼女なら、固まっていてもおかしくない)」
サイネリア「(何か、心境の変化でもありましたかネ?)」
サイネリア「(……ですが)」
・第二回審査結果
Da. 1位…サイネリア(493p) 2位…きりきりまい(354p) 3位…765Angels(312p)
Vi. 1位…765Angels (342p) 2位…サイネリア(327p) 3位…パッション!(288p)
Vo. 1位…サイネリア(313p) 2位…パッション!(284p) 3位…どもッス(265p)
総合:現在2位(★×8)
サイネリア「この勝負、アタシの勝ちデス」
雪歩「う、ぅ……!」
サイネリア「(そもそも、アタシと貴女たちとでは覚悟の量が違う)」
サイネリア「(明るく楽しく、アイドル活動をしたい……。765プロの理念は、ライブやオーディション映像を見ればはっきり伝わってきます)」
サイネリア「(その理念は、良いものだと思いますし、見事ではありますが)」
サイネリア「(それは、負けられない理由としては些か弱い)」
サイネリア「(……ネトアがリアルに出てくるなんて、生半可な覚悟でできることだと思いますか?)」
サイネリア「(ネット上のファンからは、利益や虚栄心に目が眩んだと揶揄され)」
サイネリア「(リアルアイドルのファンからは、畑違いの所へ乗り込んできたと貶され)」
サイネリア「(誹謗、中傷、妬み、嫉み、上下関係、圧力。それらを画面越しでなく、ダイレクトに受けなくてはならないこの世界)」
サイネリア「(……それでも)」
『サイネリア』
『ずっと友達で、いてね?』
サイネリア「(『センパイ』を『私』の手に取り戻すために)」
サイネリア「(アタシはこんなところでは、絶対に負けられないんデス……!)」
律子「くっ……。リードを許してしまいました」
律子「やっぱり、対応されてる……。どうするんです、プロデューサー」
P「…………」
律子「プロデューサー?」
P「べくちっ!!」
P「……うー」ずるずる
P「雨に濡れたからかなー」
P「ってかちょっと冷房効きすぎじゃない? やばいよ律子、俺風邪引いちゃうかも」
律子「……。それはそれで大変ですけど……。今の状況分かってます?」
P「あー、うん。大丈夫でしょ、何か取り返しのつかない失敗したわけでもないし」
律子「え?」
P「ティッシュちょうだいティッシュ。……あんがと」
ずびび
P「……だってさ。ここまでやられたら否が応でも修正するでしょ。俺が言わなくたって」
律子「……。……!」
P「……あいつらは、いろんな人の想いを背負ってることもちゃんと分かってる」
P「そんなやつらのアピールがつまんないわけがない」
P「やられっぱなしのまんま、終われるかってんだよな」
雪歩「(み、みんな……。ごめんなさい……)」
真「(ごめん雪歩、ボクたちがもっと早く向こうの動きに気付いていれば……)」ちらっ
響「(自分のせいだ……。つい、このままの流れで行ってくれたらって思っちゃった)」ちら
千早「(……上手く隙を突かれてしまったわね。それでも、萩原さんのおかげでなんとか食らいついている)」ちら
雪歩「(……!)」
真「(こうなったら)」
響「(……最後で)」
千早「(……取り返しましょう)」
雪歩「(…………っ!)」
真「」こく
雪歩「(みんな……)」
雪歩「(……まだ、私に)」
雪歩「(……うん)」
きゅっ
雪歩「(…………)」
雪歩「(センターを任されたのに……。らしいことを何ひとつできない)」
雪歩「(作戦もうまくいかなかったし。リードを許してる)」
雪歩「(そのうえ、みんなに心配をかけちゃってる……)」
雪歩「(…………)」
雪歩「(…………)」
『雪歩ちゃんの歌に、いつも勇気をもらってます! 応援してます!』
雪歩「(私は何のために、今ステージに立ってるんだ……!)」きっ
雪歩「(プロデューサーは、楽しようとすんなって言った……)」
雪歩「(なのに、私、またラクな方に逃げようとしてた)」
雪歩「(残り審査は1回。このままじゃ、負ける)」
ごく
雪歩「(やるしかない……)」
雪歩「(失敗を、恐れるな)」
雪歩「(自分の中のジャイアントキリングを、起こせ……!)」
「……はは。それだよ、それ」
「いい表情になったね」
「君のそういうところが見たかったんだ」
・第三回審査開始
サイネリア「(ここまで来たら、ボム無しの安全策でも大丈夫でしょう)」
サイネリア「(5点取れば勝ちデス。Daを取ってもいいし、ViとVoを取りにいってもいい)」Vi.appeal +84p
サイネリア「(相手の出方次第、デスね)」Da.appeal +83p
千早「(私が、なんとか、Voをもぎとる……!)」Vo.appeal +93p
真「(ボクと響だ。まっとうにいけば、Daは問題ないはず)」Da.appeal +85p
響「(……だから後は頼んだぞ、雪歩)」Da.appeal +87p
雪歩「(…………!)」
雪歩「(みんなが、まだ私を信じてくれている)」
雪歩「(前向きに、前向きに、自分のできることを)」
雪歩「(……やりたい、のに)」
雪歩「(うぅ……。視野が狭い)」
雪歩「(集中し切れて、ないんだ……)」
雪歩「(できるときは、もっと、視界が……!)」
サイネリア「(まだ、諦めてはいませんか……。いいチームですね)」Vo.appeal +83p
サイネリア「(それに、萩原サン……。やはり少し雰囲気が?)」
サイネリア「(……いや、それでも)」
サイネリア「(逆転するには、もう遅い)」
雪歩「(サイネリアさんは強い……。それも、たった独りで戦ってる)」
雪歩「(今の私じゃ、敵わないのかもしれない)」
雪歩「(……でも、それを認めたら、負けになってしまう)」
雪歩「(私は、負けたくない……。もっともっと、強くなりたい)」
雪歩「(言いたいことさえ言えない……。そんな臆病な私からは、変わるんだ)」
雪歩「(もっと強くなって、ダンスだって歌だって上手くなって、いいパフォーマンスをして)」
雪歩「(そして、このメンバーで、みんなと楽しくっ……!!)」
──Triple appeal!!── Vo.+36pt Da.+36pt Vi.+37pt
サイネリア「(くっ…………!?)」
律子「! 雪歩の動きがよくなった……!?」
律子「トリプルアピールだなんて、プロデューサー、いつの間に指示を」
P「いや」
P「何もしてないです」
律子「へ」
P「あれはね」にっ
P「萩原のやつが、自分の判断で良かれと思った方に動いたんだよ」
P「勢い任せでちょっと雑なアピールだけどさ……」
P「それでも俺が思ってたよりは、よっぽどいいアピールになったよ」
P「ま、不調の割にはってことだけどね」
律子「…………」
律子(なんだか、今日のプロデューサーは)
律子(どんと構えて、動こうとしない……?)
律子(まるでステージ上のアイドルに、全てを委ねているみたい……)
~会場隅~
善澤「おっとっと。もう出るつもりがついつい見てしまったよ」
高木「はは。お互い、持ち味を出したいいオーディションになっているね」
善澤「天海くんが居なくてもやれたみたいじゃないか、765プロ」
善澤「まあ、それはそうか……。君がいいと思ったアイドル達なんだから」
高木「またまた。……褒めるにはまだまだ早いよ」
高木「如月くんだって、菊地くんだって、我那覇くんだって、まだまだ伸びしろだらけさ」
高木「……そして、萩原くんもね」
善澤「そうだね。今日の彼女は、前半、無駄に時間を使ってしまっていたようだ」
高木「萩原雪歩くん……。彼女の才能が爆発するときは、ある共通した条件がある」
高木「決まって相手が格上のとき、そして追い詰められたとき……。ここぞの大一番で輝くんだ」
善澤「大舞台を自分のものにしてしまえる能力、か……」
善澤「そんなものは教えられて身に付くものじゃない。天性のものだね」
高木「ああ。そんな才能を持っているアイドルなんて」
高木「私は過去に、二人しか……。知らないね」
善澤「……二人、か」
サイネリア「(すっかりお目覚めデスか、萩原雪歩っ……!)」
サイネリア「(マズい、ああして積極的なアピールをされると、ptが読めない)」
響「(雪歩、すごい……!)」
雪歩「(追いついて、みせるっ……!)」
──Double appeal!!── Da.+45pt Vi.+46pt
真「(……雪歩のあんな顔、初めて見た)」
真「(予定では最後のボムはボクが使うはずだった、けど……)」
雪歩「(……………………!)」
──Double appeal!!── Da.+50pt Vi.+51pt
サイネリア「(この、勢いっ……!)」
サイネリア「(安全策は厳しい、か……? しかしボムを使ってミスするリスクも当然ある)」
サイネリア「(くそっ……。リードしているのはアタシなのに、なんでこんなに追い詰められた気分に……!)」
響「(これなら、もしかすると……!)」
真「(いいよ、雪歩)」
真「(……行って来な!)」
雪歩「(……!)」
雪歩「(真ちゃん、ありがとう……!!)」
──雪歩 思い出アピール Success!!──
Da. +230p Vi. +121p Vo.120p
サイネリア「(……っ!)」
サイネリア「(時間が、ない)」
サイネリア「(安全策で逃げ切れると踏むか)」
サイネリア「(リスクを冒してボムを使って引き離すか)」
サイネリア「(どうする)」
サイネリア「(どうするッ……!?)」
──サイネリア 思い出アピール Success!!──
律子「あっ!」
P「ちっ……!」
>>83 ミスです、こっちで
──サイネリア 思い出アピール Success!!──
律子「あっ!」
P「ちっ……!」
高木「あれ」
善澤「おっとっと。これは決まってしまったかな」
善澤「……でも、得たものは大きい敗戦だったんじゃないかい? 765プロにとっては」
高木「…………」
善澤「……ふふ。また取材させてもらう日を楽しみにしているよ」
・第三回審査結果
Da. 1位…サイネリア(483p) 2位…765Angels(463p) 3位…どもッス(372p)
Vi. 1位…765Angels(422p) 2位…サイネリア(410p) 3位…きりきりまい(332p)
Vo. 1位…765Angels(366p) 2位…サイネリア(344p) 3位…パッション!(290p)
:総合:
1位…サイネリア(★×17)
2位…765Angels(★×13)
3位…×
サイネリア「…………」
サイネリア「…………アリガトウゴザイマシタ」
P「…………」
サイネリア「いい勝負でした。なんて、勝ったから言えることデスが」
ぷいっ
サイネリア「……へ」
P「今のうちは上機嫌でいさせてやるけどよ」
P「次当たるときは泣いてもらうかんな」
P「覚えてろってんだ」
すたすた
サイネリア「(…………こ)」
サイネリア「(子供ですか…………)」ごーん
サイネリア「……しかし」
サイネリア「もう一度当たるとき、天海サンが揃った765プロと競うことになれば」
サイネリア「確かに一筋縄ではいかないのかもしれません」
サイネリア「(それに、なにより)」
サイネリア「(向うのメンバーには、まだまだ伸びしろが感じられた……)」
サイネリア「(如月千早、我那覇響とVo、Daで渡り合えたのは大きな収穫ですが)」
サイネリア「(収穫があったのはアタシだけではないということデスね)」
響「……ふぅっ。惜しかったな」
雪歩「ご、ごめんなさい……。私の、最初のミスがなければ……」
真「いやいや、雪歩のせいじゃないって」
千早「ええ。むしろ萩原さんがいなければ、最後の追い上げはなかったわ」
雪歩「でも、それでも……。やっぱり、届かなかったから……」
真「…………」
貴音「萩原雪歩」
雪歩「! 四条、さん……?」
貴音「恐れながら、貴女のアピールを見させていただいていました」
貴音「……意思と強さを伴った、とてもいい演技だったように思います」
雪歩「そん、な。四条さんまで……。だって、それでも、届かなかったのに……」
貴音「いいえ。……気付きませんでしたか? 雪歩」
雪歩「き、気付く……? 何をですか?」
貴音「……。対戦相手の彼女は、二回目の審査が終わった時点で、勝ちを確信していました」
貴音「後は安全に逃げ切ろう、そういった意思が表情に表れていました」
雪歩「……はい」
貴音「しかし、貴女の勢いに気圧され……。最後は思い出アピールを使って、逃げ切りを図った」
雪歩「……!」
響「それって、つまり……」
貴音「分かりますか? 雪歩のアピールが無ければ、勝つ確率は零のままでした。しかし、それを」
真「相手に『負けるかも』と思わせた……?」
貴音「はい」
貴音「…………」
貴音「反省したい箇所もあるとは思います。ですが、これは貴女の強さがもたらした厳然たる事実」
貴音「……安心してください。あなたの覚悟は、しかと……。届いておりましたよ」きゅっ
雪歩「しじょう、さ……!」
貴音「だから」
貴音「次は、私の番です」
雪歩「!」
貴音「私の演技。見ていていただけますか? 雪歩」
雪歩「……っ」
雪歩「勿論、です……!」
あずさ「(……えいっ)」
──Double appeal!!── Da.+41pt Vi.+43pt
律子「シニア組、すごくいい動きを見せていますね! 中学生組と高校生組の活躍に触発されたんでしょうか!」
P「……かもね」
貴音「(…………)」
貴音「(……あずさ。よろしいですか?)」
あずさ「(本当にやるのね、貴音ちゃん。……いいわ)」
あずさ「(サポートは私に任せて、思い切り行って来て)」
貴音「(……恩に着ます)」
──貴音 思い出アピール Success!!──
律子「…………!」
律子「貴音が、あんなに積極的に……?」
貴音「(…………)」
貴音「(あの日)
貴音「(雪歩が口にした言葉)」
雪歩『あ、でもひとつだけ……。心に残ってる言葉があって』
貴音『……? 言葉、ですか』
雪歩『はい』
雪歩『……ジャイアント・キリング』
雪歩『この言葉に、私は……。大きな勇気を、貰っているんです』
貴音「(ジャイアント・キリング……)
貴音(『大物喰い』)
貴音「(なるほど、判官贔屓を好む日本人にはぴたりと来る言葉かもしれません)」
貴音「(とりわけ、雪歩のように強い自分になりたいと願う人間にとっては、心強い言葉なのでしょう)」
貴音「(……面白い)」
貴音「(自らを研鑽し、より高みを目指したいと願うのは、この四条貴音も同じこと)」
貴音「(勝利を掴むこと、それそのものが目的ではなく)」
貴音「(自らを理想の自分へと磨き上げることでこそ)」
貴音「(わたくしも、果たして見せようではありませんか)」
貴音「(……わたくしなりの『大物喰い』を)」
──貴音 思い出アピール Success!!──
P「……はっ。確かに」
P「なんか随分やる気みたいじゃんかよ」
やよい「……すごい」
伊織「貴音のあんな姿……。見たこと、ない」
P「さてさて」
P「次の高校生組の相手も、手ごわくなりそうだし」
P「俺ももうちっと気合いを入れるとするかな」
伊織「次の、相手……? 何よアンタ、もう次のオーディションエントリーしたわけ?」
P「ん。まあ、まだ予定だけどね。これ」
ぴらっ
伊織「ふぅん。レベル的には妥当ね」
伊織「対戦相手も、まあ同ランク、の……?」
伊織「…………!?」
くしゃっ
やよい「……? 伊織ちゃん?」
伊織「…………ま、さか。そんな」
伊織「……っ!」
だっ!!
やよい「あっ! 伊織ちゃん!?」
はあっ、はぁっ
伊織「(…………っ!)」
伊織「(嘘よ、嘘よ、嘘よ……! なんであの人たち、が)」
はぁっ、はぁっ、はぁっ
伊織「(偽物? たまたま同じ名前のユニット? ……いや、そんなことありえない)」
伊織「(まだ、アイドルを続けていたの? あの人たちが、春香たちとぶつかるの?)」
ぜぇ、ぜぇっ……
伊織「(…………麗華は、このことを知ってるの!?)」
~東豪寺プロ~
ともみ「……麗華。『NEW BE@T』の組み合わせ、見た?」
麗華「は? NEW BE@Tって、レベル低いからスルーしたオーディションじゃなかったかしら?」
りん「そーなんだけどさー。見たら、面白いことになってんだよね」
ぴらっ
ともみ「確かにランクのそう高くないオーディションだけど……。765プロと、もう一組」
麗華「……これ」
りん「しょーじき、どーでもいーっちゃあどーでもいいんだけどさ」
りん「……やっぱそう簡単に割り切れるもんでもないじゃん?」
美心「…………」
麗華「……ふん。あいつらが765プロとぶつかる、ねぇ」
麗華「それはそれで、面白いじゃない」
にやっ
麗華「……もはやアイドルですらない『過去の亡霊』が、どこまでやれるのか。見せてもらおうかしら?」
つづかない
嘘次回予告
律子「みんな、最近心なしか気持ちが乗ってるように見えます……」
律子「前回の高校生組の僅差での敗戦が、何かの引き金になったんでしょうか」
P「……かもね」
亜美「やっと出番だね! 亜美も→まちくたびれちゃったよ!」
P「……お前もだよ、行ってこい」
美希「えー。ミキ、今日は休日気分でいたのになぁ」
小鳥「(プロデューサーさんは、本当にすごい)」
小鳥「(相手のアピールを上手く誘導して、★を取っていく作戦は成功したし)」
小鳥「(今のも会場の雰囲気がDaに偏ったところを突いて、一気にptを稼いだ)」
小鳥「(…………)」ごくり
小鳥「(相手のスキを見つけ出し、そして駄目な理由もつらつら言えてしまう……)」
小鳥「(この、人……)」
小鳥「(絶対昔、いじめっ子だったわね……)」どぉぉん
雪歩「(今までの人たちと、雰囲気が、全く……)」
千早「(殺気とすら感じられる、集中力)」
春香「(……これが)」
響「(魔王エンジェルの、ルーツ……)」
真「(伊織の話と、全然違うっ……!)」
雪歩「(一体何が、この人たちをここまで駆り立てるの……!?)」
雪歩「(この人は、すごい)」
雪歩「(技術も、そして、精神面も……。もともと私なんかが敵う相手じゃないのかもしれない)」
P「こういう瀬戸際の状況でこそ、自分を信じろ」
P「ここまで色んな強敵とぶつかってきた……。お前の武器は何だ、萩原」
雪歩「(でも)」
雪歩「(どうせ敵わないのなら、なおさらだ……)」
雪歩「(当たって砕けて当然なら、私の持てる力全てをぶつけてやる……!)」
To be continued…?
つづきません
人差し指を立てたサイネリアさんの映像が脳裏に浮かんだ人が一人でも居れば嬉しいです
いろんな妄想はするけど、やっぱり30巻のアレや32-33巻のソレをあの人やあの人に置き換えるのが一番滾ると思うんだ
お付き合いいただいた方がもしいれば本当にありがとうございました
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