水本ゆかり「有香ちゃんを捕まえましょう」 (51)
法子「捕まえてどうするの?」
ゆかり「捕まえて……」
法子「捕まえるのが目的な感じ?」
ゆかり「いえ、捕まえて……家に連れて帰って」
法子「連れて帰って」
ゆかり「一緒に暮らします」
法子「ふぅん、なんだか楽しそう!」
ゆかり「絶対楽しいです、トランプなんかもします」
法子「楽しそう!」
ゆかり「絶対楽しいです」
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ゆかり「では有香ちゃんを捕まえるにあたって」
法子「どうやって捕まえよっか。有香ちゃん強いよ?」
ゆかり「捕獲に役立ちそうなものをいくつか用意してみました」ゴソゴソ
法子「なになに?」
ゆかり「……あっ、映画のチケットが出てきました」
法子「映画!」
ゆかり「はい、皆さんと見に行こうと思って」
法子「そうなんだ! ありがとー」
ゆかり「いえ、法子ちゃんは土曜日はお暇ですか?」
法子「暇ひまー、有香ちゃんも暇だといいなー」
ゆかり「あとで聞いてみましょう」
法子「そだね」
ゆかり「……」
法子「……で?」
ゆかり「??」
法子「有香ちゃんを捕まえるにあたって用意したものは?」
ゆかり「あっ、そうでしたね……まずはこれです」
法子「どれ?」
ゆかり「拳銃です」
法子「わぁ、黒ーい」
ゆかり「そうですね……本当に、驚くほどに黒いですね」
法子「本物?」
ゆかり「これは……間違いありません、本物の黒です、こげ茶などではありません」
法子「拳銃は本物?」
ゆかり「拳銃は偽物です」
ゆかり「あとはこれです、チョコレート」
法子「なんでチョコレート?」
ゆかり「お腹が空いたときに食べようと思って」
法子「お腹が空いたらドーナツもあるよ!」
ゆかり「準備万端ですね、では有香ちゃんを捕まえに行きましょう」
法子「うん! ええと、有香ちゃんは今」
ゆかり「ダンスレッスンのスタジオにいるはずです」
法子「レッスン中かー」
ゆかり「……邪魔をしてはいけませんね、少しここで待ちましょうか」
法子「そうしよー」
ゆかり「……」
法子「……」
ゆかり「チョコレート食べますか?」
法子「じゃあドーナツと交換してあげる」
ゆかり「ありがとうございます、いただきます」
ガチャッ
有香「ただいま戻りました」
法子「あっ! 有香ちゃんおかえり!」
ゆかり「有香ちゃん、お待ちしていました」
有香「待っててくれたんですか?」
ゆかり「はい」
有香「えへへ、お待たせしてしまってすみません」
法子「有香ちゃんちょっとごめんね」
有香「何ですか?」
法子「捕まえた!」ギュー
有香「どうしたんですか法子ちゃん」
法子「んー、なんでもないよ?」
有香「今日は甘えん坊ですね」
法子「なんかふかふかしてる」フカフカ
有香「ちょっと恥ずかしいです」
法子「ゆかりちゃん今だよ! 早く早く!」
有香「えっ?」
ゆかり「えっ?」
法子「えじゃなくて! 捕まえたから早く!」
ゆかり「そうでした、では、どうしましょう」
有香「ええと……」
法子「何か、袋とか!」
ゆかり「袋、これですね」バサバサ
法子「入んないよ! ビニール袋じゃ入んないよ! もっと大きいやつ!」
ゆかり「ではこちらを」バサバサ
法子「違くて! ビニール袋のLサイズとかじゃなくて! もっと凄ーく大きいの!」
ゆかり「そういうのはありません」
法子「そうかー。じゃあ縄とか」
ゆかり「縄ですね、ちょっと待って下さい」ゴソゴソ
有香「あたしはどうしたらいいんですか?」
法子「大人しくしてないとTシャツでドーナツ食べた口拭く」
有香「やめて下さい」
ゆかり「法子ちゃん、縄はありませんでした」
法子「じゃあ一体何を用意してきたの!?」
ゆかり「チョコレートとか」
法子「さっき食べちゃったじゃん!」
ゆかり「そうですね」
有香「ドーナツご馳走様でした」
法子「まだまだあるよー」
有香「いえ、これからプロデューサーの外回りに同行する予定なので」
ゆかり「そうなんですね。では、この辺りでお開きにしましょうか」
法子「はーい。有香ちゃんお仕事頑張ってね!」
有香「押忍! ありがとうございます」
ゆかり「どうしてもフルートの音が必要なときは呼んで下さい」
有香「あははっ、じゃあ、そうさせてもらいます」
ゆかり「ぜひ」
有香「……あの」
ゆかり「はい?」
有香「おやつを一緒にって、それで待っててくれたんですよね」
ゆかり「……?」
法子「そうだよ! 一緒に食べたほうが、おいしいもんね!」
有香「ですよね……えっと、改めて言うのは少し照れてしまうんですが」
法子「えー! 何々なに何なに!?」
有香「あの、嬉しかったです……えへへ、ありがと、二人とも」
法子「……」キューン
ゆかり「……」キュン
有香「では、ご馳走様でした、行ってきます」
法子「はーい、またねー」フリフリ
ゆかり「また明日、ですね」
有香「押忍っ、また明日」フリフリ
ガチャッ パタン
法子「……」
ゆかり「……」
法子「照れ顔の有香ちゃんてさ」
ゆかり「はい」
法子「可愛いよね」
ゆかり「……待ってください」
法子「なになに?」
ゆかり「有香ちゃんは、照れ顔でなくとも……?」
法子「あっ! 可愛い! じゃあもはや事件だね」
ゆかり「警察を呼んだほうがいいのでしょうか……」
法子「可愛すぎ取締法違反の罪で逮捕だよ」
ゆかり「逮捕……刑法は奥が深いんですね」
法子「逮捕って単語から捕まえようとしてたことを思い出してほしかったな」
ゆかり「ところで全然関係ないのですが、私たちは有香ちゃんを捕まえようとしていたのでは?」
法子「今その話振ったよね」
ゆかり「拳銃も使いませんでしたね」
法子「そう言えばあったねそんなの」
ゆかり「捨てましょうか」
法子「捨てちゃダメだよ! みんなビックリするよ!」
ゆかり「あっ……燃えないゴミ?」
法子「まぁ燃えそうにはないよね」
ゆかり「……」
法子「……?」
ゆかり「ふふふっ、手を上げてください」カチャッ
法子「わぁどーしよー! 助けてドーナツ!」
ゆかり「命が惜しければ可愛いことをするんですね」
法子「じゃあ幸子ちゃんの物まねしまーす」
ゆかり「ばきゅーん」
法子「せめて見てから判断してよ!」
ゆかり「では物まねをどうぞ」
法子「撃ったうえに物まねもさせるの!?」
亜季「フリーズ!! そこを動くな!!」
ゆかり「!!?」
法子「めっちゃ怒られたね」
ゆかり「はい、覚えました、例えモデルガンでも人には向けない、ゆかり覚えました」
法子「持つときは引き金に指をかけない、法子も覚えました」
ゆかり「拳銃はやめましょう」
法子「そだね」
ゆかり「では、有香ちゃんをどうやって捕まえましょうか」
法子「んー……晶葉ちゃんに高性能な罠でも作ってもらおっか」
ゆかり「良いアイデアですね、さすがです」
法子「えへー、そーかなー」
ゆかり「私の案も聞いてください」
法子「聞くよー」
ゆかり「まず晶葉ちゃんにですね」
法子「ん?」
ゆかり「高性能な罠を作ってもらいます」
法子「それあたしの良いアイデアだよ!」
ゆかり「これが私の案です」
法子「横取りする気だ! 返してー!」
ゆかり「ではお返ししますね」
法子「わーい、ありがとー」
法子「すごい早さで作ってもらった」
ゆかり「まさか一時間で出来るとは思いませんでした」
晶葉「なにこの程度、天才にかかれば造作も無い」
法子「これどうやって使うの?」
晶葉「まずこのギザギザの歯を開き、上に皿を設置する」
ゆかり「このギザギザはどういった役割なんですか?」
法子「ガシャンって閉じるの? 危なくない?」
晶葉「心配するな、この部分はビニル製だ」フニフニ
法子「安心だね!」
ゆかり「ならどういった役割なのでしょう」
晶葉「でだ、皿に物を乗せておき、さて、準備はこれだけだな」
ゆかり「簡単ですね」
晶葉「何かを乗せていく分にはまるで問題ないが、少しでも皿が軽くなると……」
法子「なると?」
晶葉「上から籠が降ってくる。中からは持ち上げられない天才設計だ」
法子「おー」パチパチパチ
ゆかり「これなら私にも使えますね、ありがとうございます」
晶葉「礼には及ばん、どういう結果になったかだけ報告を頼む」
法子「はーい! 任せてー!」
ゆかり「それでこのギザギザはどういった役割なんですか?」
翌朝
ゆかり「どうなったでしょうか、どきどきします」ドキドキ
ゆかり「法子ちゃんのドーナツを餌に罠を設置しましたが」
ゆかり「有香ちゃんは捕まえられたでしょうか」
ゆかり「ドーナツの引力に逆らえるはずがない、とは法子ちゃんの言ですが」
ゆかり「……どきどきします」ドキドキ
罠< ガタガタガタ
ゆかり「あっ! かかってます! かかってますよ法子ちゃん!」
ゆかり「法子ちゃん法子ちゃん」ポチポチ
prrrrrrr prrrrrrr prrrrrrr……
ゆかり「……出ません」ピッ
ゆかり「ふふっ、法子ちゃん、お寝坊さんですね」
ゆかり「……」
ゆかり「……」
ゆかり「開けてしまいましょうか」
ゆかり「昨日の法子ちゃんのアドバイスをもとに、今日は縄を持ってきました」スルッ
ゆかり「でも、こんな50センチ程度の縄で一体なにをするつもりなのでしょう……」
罠< ガタガタガタ
ゆかり「あっ、はいはい、いま開けますね」
ゆかり「よいしょ」
パカッ
法子「ふぁービックリしたー! いきなり籠が降ってくるんだもん!」ノソノソ
ゆかり「……」
法子「あれ? ゆかりちゃんから着信きてる」
ゆかり「はい、先ほど連絡を差し上げました」
法子「ゆかりちゃんゆかりちゃん」ポチポチ
prrrrrrr prrrrrrr
ゆかり「もしもし、水本です」ピッ
法子「なんか電話くれた?」
ゆかり「はい、罠に、誰かが掛かっていましたので」
法子「すごい!!」
ゆかり「でもその誰かは法子ちゃんでした」
法子「ごめんね……」シュン
ゆかり「いえ、いいんです」ナデナデ
有香「……なにしてるんですか」
ゆかり「あっ、有香ちゃん、おはようございます」
法子「有香ちゃんおはよー」
有香「押忍っ、おはようございます」
ゆかり「見てください、法子ちゃんを罠にかけました」
法子「いま出してもらったとこ」
有香「法子ちゃんは何か悪いことでもしたんですか?」
法子「えーっ! してないよぉ!」
有香「ならなぜ罠にかけたりなんか……可哀想じゃないですか」
ゆかり「法子ちゃん、申し訳ありませんでした」
法子「いいよー、ドーナツ仕掛けたのあたしだし」
有香「……あれ? 法子ちゃんも仕掛けた側なんですか?」
法子「そだよー」
有香「なのに自分で罠にかかっちゃったんですか?」
法子「うん」
有香「……えっ?」
法子「ん?」
ゆかり「では、本来の目的を果たしましょうか」
法子「そうしよー。じゃあもう一回ドーナツ仕掛けるね」
有香「ほんとは誰を捕まえるつもりだったの?」
ゆかり「……」
法子「……」
有香「……?」
法子「時子さんを」
有香「えー、怒られちゃいますよ」
法子「大丈夫、時子さん優しいから鞭打ちくらいで許してもらえるよ」
有香「許してもらえてないですね」
法子「皮の鞭の先にこういう、釣り針みたいな鉤爪が付いた……」
有香「痛い痛い痛い、やめて下さい」
法子「それを十本くらい束ねて一気に……」
有香「やめてー!」
ゆかり「十匹いっぺんにお魚が釣れますね」
法子「そう」
有香「それなら安心です」
ゆかり「とりあえずまた仕掛けてみました」
有香「こんな罠罠しい罠に引っかかる人いるんですか?」
法子「いるよ」
有香「そうでしたね」
ゆかり「あっ、誰か来ましたよ」
法子「隠れて隠れてっ」グイグイ
有香「あっ、ちょっと」
里美「ほぁー」ノコノコ
法子「めっちゃ引っかかりそうな人きた」
ゆかり「アイス食べながら来ましたね」
有香「いくら里美ちゃんでもあれには掛からないんじゃ……」
里美「ほわぁー、ドーナツが置いてありますよぉ」トコトコ
ガシャンッ カポッ
有香「……」
ゆかり「里美さんは誰に向かって話していたんでしょう……」
有香「疑問そこ?」
法子「よしよしよしよし怖かったねー」ナデナデ
里美「……」
ゆかり「あ、あの、アイスを落としてしまわなくて良かったですね」ナデナデ
里美「うん……」
法子「はい、罠に負けず見事に獲得したドーナツは、里美ちゃんの物だからね!」
里美「ほわぁ」
法子「おかわりもあるから、いっぱい食べて!」
里美「ありがとうございますぅ」
法子「じゃあ里美ちゃんは、時子さんが来たら罠に誘導する役ね!」
里美「んー、よく分からないですけどぉ、お任せ下さい」
有香「あの、もう止めにしませんか……」
ゆかり「あっ、また誰か来ましたよ」
法子「隠れて隠れて!」
有香「もう……」
時子「……」
法子「本命来た!」
ゆかり「本命は本当に時子さんだったでしょうか……」
法子「そう言えばそうだね」
有香「……?」
法子「時子さん引っかかるかな」
有香「無理ですよ、あんないかにも罠ですっていう罠に掛かる人なんか……」
法子「……」
有香「そうでした、ごめんなさい」
ゆかり「里美さんも掛かりましたよ」
有香「ごめんなさい」
里美「んー、んむむむむ……!」ギュー
時子「……何なの?」
法子「里美ちゃん、頑張って罠に誘導しようとしてくれてる!」
有香「誘導っていうか、押し込もうとしてますよね」
ゆかり「寸分たりとも動いていませんが……」
法子「里美ちゃん攻撃力ゼロっぽいもんね」
有香「攻撃という概念を知らないかもわかりません」
里美「うむむむむ……!」ギュー
時子「……この罠は、貴女が仕掛けたの?」
里美「う?」
時子「……はぁ」
カツ カツ カツ
法子「近付いてく! 掛かるっぽい!」
有香「そんなまさか……!」
時子「……」スッ
ガシャンッ
時子「……」ヒラリ
法子「避けた! 時子さんスゴーイ!」
有香「達人の域の身のこなしです。あの人いったい、何者……?」
ゆかり「時子さんですよ」
有香「それは分かってます」
時子「ドーナツを餌に罠を仕掛けるなんて」
里美「ほわぁ」
時子「頭の中がドーナツの中心のようになってる輪っか狂いの小娘が、当然のように掛かるわよね」
里美「ドーナツの中心は空っぽですよぉ」
時子「トラバサミに、大きな籠まで用意して」
里美「トラ?」
時子「悪戯のつもりだったんでしょうけど、万が一、あの子が怪我でもしたらどうするつもりだったのかしら」
里美「ふえぇ、怪我は怖いですぅ……」
ゆかり「里美さんが怒られてしまっています……」
有香「やはりやるべきでは無かったんです」
ゆかり「そうですね、出て行って事情を説明しましょう」
有香「早急に」
ゆかり「……あら、法子ちゃんはどちらへ?」
有香「えっ? ……あっ」
法子「……」ギュー
時子「……何か用なの」
法子「……」ギュー
時子「煩わしい小娘ね」
法子「……」
時子「離れなさい、暑苦しいわ」
法子「あたしのこと心配してくれたんでしょ?」
時子「貴女に何かあればプロダクション、延いてはこの私にまで面倒が及ぶでしょう? ただそれだけの理由よ」
法子「うん、それでも嬉しい、時子さん大好き」ギュー
時子「……チッ」
ゆかり「……」スッ
~♪
~♪
時子「フルートで雰囲気を演出するのをやめなさい」
ゆかり「申し訳ありません……」
有香「里美ちゃんはあとでアイス買ってあげますね」
里美「アイス!」ピコーン
ゆかり「では第三回、有香ちゃんを如何にして捕まえるか会議を始めます」
法子「やっぱり有香ちゃん手強いね」
ゆかり「そうですね、いま一歩及ばず、惜しい場面はあったのですが」
法子「無かったよ」
ゆかり「そうですね、よく考えたら無かったですね」
有香「……あの、あたしはこの会議に参加してて大丈夫なんですか?」
ゆかり「……」
法子「……」
ゆかり「やってしまいました」
法子「どうしよう」
ゆかり「……映画のチケットがあるのですが、有香ちゃんは土曜日はお暇ですか?」
法子「ここから誤魔化すのは無理だよ!」
有香「土曜日なら、はい、たぶん平気です」
法子「意外といけそう!」
ゆかり「でも誤魔化せませんでした」
法子「まぁそうなるよね」
ゆかり「まさかこんな凡ミスをするなんて」
法子「有香ちゃんいるの自然すぎて全然気付かなかったよー」
ゆかり「だって私たちは、三人でゆかゆかのりこですから……」
法子「ゆかゆかのりこは永久に不滅だよ……!」
有香「えっと……」
法子「ノっといて、とりあえずノっといて」
有香「あ、はい、ええと……ずっと三人でお仕事を続けられたらと……!」
ゆかり「では会議に戻りましょう」
有香「ちょっと」
有香「つまり、ゆかりちゃんは」
ゆかり「はい」
有香「あたしを捕まえて、一緒にご飯食べたり、トランプしたり」
ゆかり「はい」
有香「パジャマで寝転がって今後のことを語らったりしたい、と」
ゆかり「概ねそうですね、あとは小さい頃の写真を見せ合ったりとか」
有香「お泊り会がしたい、ということですか?」
ゆかり「ああ! そうです! それです、それまり会がしたいんです!」
法子「なんだ、それまり会がしたかったの?」
ゆかり「そうなんです」
有香「ふふっ、いいですよ、しましょうか、それまり会」
ゆかり「有香ちゃん、お泊り会ですよ、何ですかそれまり会って……」
有香「議長、会話のログを」
法子「じゃあ死刑」
有香「それ議長じゃないです」
ゆかり「量刑も重過ぎますね」
有香「お泊り会がしたかったんなら、そう言ってくれればいいのに」
ゆかり「お泊り会がしたいです」
有香「いえ、今じゃなくて、早く言って下さいと」
ゆかり「オトマリカイガシタイデス!」
有香「速度の話でもなくてですね」
法子「でも、目的が達成できてよかったね!」
ゆかり「はい、一時はどうなることかと思いました」
有香「お泊り会、いつにしましょうか」
ゆかり「では、今からなんてどうでしょう」
有香「今から!?」
ゆかり「あっ、ご都合が、つかなかったりしますか……?」
有香「んー……いえ、いけます、今からやりましょう!」
ゆかり「ありがとうございます、では車を回させますので、ぜひ我が家に」
法子「よしよし、話がうまく纏まったところで」
ゆかり「纏まったところで」
法子「あたし帰るね!」
ゆかり「……えっ?」
法子「じゃあ、またねー!」パタパタ
ゆかり「えっ? えっ、あの、えっ……?」
有香「あれ、えっと、法子ちゃん行っちゃいましたけど……」
ゆかり「え、どうして、えぇ……あら……?」
有香「法子ちゃんは、帰っちゃっていいんですか?」
ゆかり「いえ、あの、三人でお泊り会をと……」
有香「ですよね、そうですよね、じゃあすぐ呼び戻さなきゃ」
ゆかり「……」
有香「……ゆかりちゃん?」
ゆかり「もしかしたら、法子ちゃん……」
有香「何か心当たりが?」
ゆかり「私が有香ちゃんにばかり感けていたから」
有香「……」
ゆかり「自分は誘ってもらってないからと、思ってしまったのでは……」
有香「誘ってないんですか?」
ゆかり「……誘って、ないです」
ゆかり「有香ちゃんを捕まえることにばかり腐心して」
有香「……」
ゆかり「私は法子ちゃんを、蔑ろにしてしまっていたんです……」
有香「そんなことは無いと思いますけど……」
ゆかり「法子ちゃんなら、誘わなくても自動で、来る気が満々でいるだろうと」
有香「……」
ゆかり「図々しい子だと……思ってないです、そんなことは微塵も思っていないのですけれど……」
有香「分かってます、大丈夫」
ゆかり「でもきっと心のどこかで、そんなふうに法子ちゃんを、軽んじて」
有香「まさか」
ゆかり「夢中になると、すぐに傍らが見えなくなる」
有香「……」
ゆかり「大切な友達を知らず知らずに傷つけて……私は、最低です……」
有香「そんな、自分を卑下することはありません、ちょっとした勘違いじゃないですか」
ゆかり「でも……」
有香「すぐに電話をかけて、法子ちゃんにも来て欲しいと伝えれば良いだけです」
ゆかり「……」
有香「ねっ?」
ゆかり「……はい」
有香「となればさっそく電話を……」
prrrrrrr prrrrrrr
ゆかり「あっ……法子ちゃんからです」
有香「えっ、早く出て出てっ」
ピッ
ゆかり「もしもし、水本です……はい、はい」
有香「……」
ゆかり「はい、大丈夫です、はい、分かりました、では……」ピッ
有香「法子ちゃんはなんと? というか、いま誘ってしまえば……」
ゆかり「やっぱりパジャマを取りに行くのが面倒だから、私のを貸して欲しいと……」
有香「来る気まんまんでしたね」
ゆかり「ああああああ良かったああああ」フルフル
有香「傷ついた法子ちゃんがいなくて良かったですね」
ゆかり「本当に、本当に……!」
有香「ふふっ、次回はちゃんと誘いましょう」
ゆかり「そうします、そうします、ああー良かったです、あああ、もぉおおん」フルフル
有香「もーん?」
後日
法子「またお泊り会したーい」
有香「いいですね」
法子「今度はさー、有香ちゃんかあたしの家にしよっ!」
有香「あたしの部屋は……」
法子「だめ?」
有香「駄目ではないけど……」
法子「じゃあー、いつにしよっか」
有香「あっ、今日は駄目ですよ! 部屋を片付けるための猶予を求めます!」
法子「ゆかりちゃんの予定も聞いてみなきゃだしねー」
有香「とりあえずゆかりちゃんを捕まえましょうか」
法子「ゆかりちゃんならすぐ捕獲できそう」
有香「あはは、また罠でも張りますか?」
法子「この子ども有香ちゃんブロマイドを餌に」
有香「じゃあこの子ども法子ちゃんブロマイドも一緒に」
ゆかり「これはいけませんね、こんなの回避不可能です」
有香「ここに子どもゆかりちゃんブロマイドを加えたら……」
法子「もう無敵だよ……」
ゆかり「そうですね……」
ゆかり「……」
有香「……いつから居ましたか?」
ゆかり「実はずっといました」
法子「ぜんぜん気付かなかった!」
ゆかり「十秒くらい前からずっといました」
有香「いま来たところなんですね」
ゆかり「おはようございます」
有香「押忍! おはようございます」
法子「今ね、またお泊り会しようって話してたの!」
ゆかり「そうなんですか、良いのではないでしょうか」
法子「そのためにゆかりちゃんを捕まえようってなったんだけど」
ゆかり「そうなんですか、では微力ながら、力添えをさせて頂きますね」
法子「ありがとー」
有香「気付いてください、クエスト達成されてます」
ゆかり「ご安心を、捕獲のためのグッズは沢山の用意が……」ゴソゴソ
有香「聞いて」
ゆかり「……あっ、すみません、そういえば捨ててしまったのでした」
法子「あー」
有香「捕獲グッズって、どんなものだったんですか?」
法子「んー、色々」
ゆかり「チョコレートとか」
法子「それは食べたよね、捕獲グッズじゃなくておやつだよね」
亜季「……事務所のゴミ箱にモデルガンを捨てたのは、ゆかり殿でありましたか」
ゆかり「!!?」
時子「ここには年端もいかない子だって来るのよ? わかってるの?」
ゆかり「!!?」
里美「はわぁ~、今日のおやつはシュークリームですぅ」
ゆかり「!!?」
有香「里美ちゃんには驚かなくとも良いのでは」
ゆかり「あっ、流れで、つい……」
亜季「ゆかり殿、大事な話ですので、真面目に聞いて欲しいのであります」
ゆかり「も、も、申し訳、ありません……」
時子「手ごろな縄も添えてあったのだけれど、これで叩いたらいいのかしら」
ゆかり「……」
時子「……」
ゆかり「……映画のチケットがあるのですが、土曜日はお暇でしょうか」
法子「無理だよその誤魔化しかた!! 前にも失敗したじゃん!」
亜季「映画、いいでありますな」
法子「意外といけそう!!」ダンッ
ゆかり「誤魔化せませんでした」
有香「ですよね」
以上です。
ゆかりちゃんお誕生日おめでとう、アホの子にしてごめんなさい。
ではHTML化の依頼を出してまいります。
法子ちゃんいいですね、ツッコミ役いけますね。
ご覧頂きましてありがとうございました。
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