「好きだよ、君の事」(16)

「あ、おはよー」
「今朝は寒いね。ついこの間までの暑さが嘘みたい」
「秋の香りがするよね。その辺歩いていると金木犀の香りが不意にフワッと……」
「するよねするよね! 甘くていい香りだよね~」
「でも、この季節大学は銀杏臭いね……」
「一限どこ? あ、六号館か」
「私? 私はあっち。もう通り過ぎちゃった」
「……いいじゃん! もうちょっと喋っていたかったの!」
「うん! また昼休みにね」

「うへ~、学食はやっぱり混むねぇ」
「夏休み明けは皆張り切っているからなぁ。もうしばらくすれば皆来なくなって空くんだけどなぁ」
「あ、君はちゃんと大学に来るんだよ? い~い?」
「うむ、よろしい。学生はキチンと勉強せねばならんのです!」
「あ、でもでも」
「……たまには君んちで一日ダラダラしてるのもいいかもね? ん?」
「あっ、照れてる! かわいー! あはははは!」

「そういえば、この間ミキが動物園行ったんだって」
「そこのカバがなんともやる気がないらしくって、ずっとプールの中にいるんだってさ」
「後、レッサーパンダも居たりするらしくって……」
「って、もう! 聞いてる? さっきからふんふん頷いてばっかりじゃん!」
「へ? 今週末?」
「え、やた! 行く行く! うわー楽しみレッサーパンダ!」
「お弁当とか作っちゃおうかな、それから、それから」
「……はっ!? 今、私めちゃくちゃチョロい感じじゃなかった?」
「うわっ! むかつくなー! 何か上手く扱われている感じ!」
「えっ、いや、えと……」
「……うん、行く」
「……ちくしょー」

『おーい』
『スマホばっか弄ってないでちゃんと講義聞きなさ~い』
『今日バイト何時まで?』
『じゃあ七時位に行くね』
『鍋しようよ鍋!』
『はーい』

「やほ、来たよ~」
「ほい、白菜ときのこと人参と……」
「お肉と油揚げはあるんだよね?」
「よし、一発やりますか! エプロン借りるよ~」
「んふふ、どーお?」
「いや、この前アキモーから聞いたんだけど」
「『エプロン姿はイイ』んだって~? このヘンタイめ」
「ほら、どうよどうよ?」
「え!? あ、う、うん。そう、ありがと……」
「何かそう素直に言われるとなんか恥ずかしいな……」
「ちょ、そんなにジロジロ見ないで。あっちで待ってて」
「……」
「うー……も~、だからぁ」

「では、頂きます!」
「ポン酢取ってー。ん、ありがと」
「あっ! お肉ばかり取るのはルール違反だよ!」
「あ、あ、あぁ~! 言ったそばから!」
「ん!」
「ん~! おひふ! あえはへへ!」
「んっ! あふい!」
「いやぁ~、やっぱお肉は美味しいな~! 最高!」
「もう一枚ちょーだい!」
「んふふ~、おいしー。幸せの味だぁ~」
「……君、こうやって甘えるとすぐ甘えさせてくれるよねぇ。チョロいチョロい」
「あっ、ごめん、ごめんって! だから鍋のお肉取るのやめてよう!」
「……あ! もしかして、そうやってまた食べさせてくれるのかな~?」
「わぁ! そんな一気に食べちゃ勿体無い! 味わって食べるの!」
「くぅ~……いじわる!」

「は~満腹満腹。ごちそーさまー」
「あぁ~、ダメだ~体横にしたら起きられない」
「お、洗い物やってくれるの? ありがとー」
「んふふ、なんだかんだで優しいなぁ君は」

「終ったの? ありがとう」
「いやぁ、ところで枕カバーとか、洗濯してる? クッションとかさぁ」
「すごい君の匂いがするよコレ。」
「……いや、変な匂いではないけど」
「いや、離さない」
「……ふふっ、離さないもーん」

「ん、もうちょっとそっち寄って」
「そそ。よいしょっと。ふぅ~、あったか~い」
「君んちのお風呂は相変わらず狭いな~」
「でも、こうやって君に包まれるみたいにお風呂入るの、好きだよ?」
「いいじゃん、別にこの程度で恥ずかしがる仲でもないでしょ?」
「んっ……」
「ふふ、爽やかポン酢風味」
「うん……そうやってお腹に手回してもらうの、好き」
「……好き」

「ねーねー! 髪梳いて!」
「ほら、そこ座って。で、その上に私が座る」
「とっくとうせき~! ほ~ら~、早く梳いて」
「ん~、これこれ。安心する~」
「今日は優しいねぇ~。機嫌がいいのかなぁ~?」
「……」
「……うん、気持ちいいよ」

「じゃ、そろそろ寝ようか」
「ん、おやすみ~」
「……と、見せかけて布団を全部奪う!」
「フッフッフッ! 寒さに凍えるがいいぞー」
「って、あれ? どこ行くの? おーい」
「……なんだ、トイレか」

「おかえり。はい、布団返してあげる」
「ふふっ、ぎゅ~」
「……暖かいね」
「まだこの季節だと少し暑いかな」
「ん、そうそう。しっかりと私を離さないでね」
「……もっと強く」
「もっと」
「もっと」
「ん……」
「ぷはっ」
「ふふっ、寝れなくなっちゃうね?」
「好きだよ。大好き」


「ん、そうやって頭撫でられるの好き……」
「……」
「ふふっ、好きだね、おっぱい」
「いいよ、たくさん触って」
「君に触られると、何か嬉しくて、気持ちいいの」
「ん……」
「その、えと……する?」
「え、ゴム切らしてるの?」
「バカ。気が利かないオトコはダメだぞっ」
「ふふっ、でもそういう風にちょっと抜けてるところも好きよ」
「ん、わかった。おやすみなさい」
「うん、私も」
「……」
「あーあ、明日大学行きたくないなぁ……」

おわり

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