古畑「346プロダクション」 (10)

古畑「えー、ご無沙汰しております。古畑です。さてみなさんは、童話の真実、というものをご存知でしょうか?
本来は子供向けに作られた話には実は裏があり、隠された結末が用意されている、という文学研究の話です、はい。
日本の童話ですと浦島太郎は女狂いの麻薬中毒者。さるかに合戦は家庭崩壊の復讐譚……。
なんとも恐ろしい単語が並びますが、海外に目を向けますとそれどころではない物語がひしめいているそうです。
ヘンゼルとグレーテルや白雪姫、ハーメルンの笛吹き男などは童話として有名どころでしょうか?
そして、えー……今なお愛され続けている童話の代名詞、シンデレラのお話も--」

美城「私の指示に従えないのか、君は」

武内「貴方のやり方は現場を知らない、彼女たちのこれまでを無に返すやり方です。私は納得できません」

美城「それがどうした。君のやり方が間違っている、ということを示しただけではないか」

武内「しかし--」

美城「君は今日限りで退職してもらおう。荷物をまとめて出て行きたまえ」

今西「それはやり過ぎではないかな?」

美城「君の役職は?」

今西「部長だが……」

美城「私は常務だ。職務中は上司として接するように。とにかく、これは命令だ。従えなければ全員解雇する。以上……っ!!!!」

佐久間「ダメですよぉ、プロデューサーさんをいじめちゃぁ……ね?」

美城「キ……サマッ……」

佐久間「もう一刺し!」

武内「佐久間さん!」

佐久間「アハッ☆」

武内「落ち着いてください。まずは、刃物をおろしましょう」

佐久間「はぁい、プロデューサーさんの言うことなら、なんでも聞いちゃいます」

武内「そして、そのまま、刃物を私に渡してください」

佐久間「はい、どうぞ、プロデューサーさん?」

今西「君、何をする気だ」

武内「隠蔽工作です。皆さん、くれぐれも内密にお願いします。
そして佐久間さん。今日付であなたを自宅待機にします。
ほとぼりがさめるまで、それを守ってください。
ちひろさんは、佐久間さんの仕事調整をお願いします」

ちひろ「分かりました」

武内「今西部長。処理をしますから服を着替えましょう。
血などが付着した衣服は全て処分を。凶器はこうして置けばいいでしょう。
すべての処理が完了したら、警察を呼びます。
くれぐれも、現場は封鎖してください。みなさん、
常務は不審者によって刺された、これで押し通します!」


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今泉「不審者ですってね、古畑さん!これは僕たちも気をつけないといけませんね」

古畑「君さぁ、僕らは捕まえる側なんだよ?何に気をつけるっていうんだよ全く」

西園寺「ですが、捕まえる際に殉職した、なんていう事例もありますし、用心に越したことはないかと」

古畑「まぁ、今泉君がいるからいっかぁ……」

今泉「それどういうことですか!」


古畑「で?これが現場なの?」

西園寺「はい。死因は刃物で刺されたことによる失血死です。血が付いた刃物が残されていたので、これが凶器で間違いないかと」

古畑「あぁ、そう。で、ここはどこなの?」

今泉「知らないんですかぁ?今をときめくアイドル事務所、346プロダクションですよ!」

古畑「そんなにすごいの?」

今泉「はい!シンデレラプロジェクトやニュージェネレーションズ、アスタリスクやラブライカ……新進気鋭なアイドルが所属する芸能プロダクションです!」

古畑「で、そこで事件が起こったってこと?」

西園寺「どうやら、この会社の常務である美城さんという方が殺されたようです。事務所内では手腕に反発するものもおり、殺される理由は十分です」

古畑「第一発見者は?」

西園寺「物音に気づいて飛び起きてきたプロデューサーだそうです。なんでも、全身黒尽くめの長身の男が逃げていくのを見た、と」

古畑「ふぅん……彼は?」

西園寺「例のプロデューサーさんです」

古畑「あぁ、どうも……。私、警察のものですけれども」

武内「これはこれは……私、346プロダクションでプロデューサーをしております、武内と申します」

古畑「私、古畑、と申します。この度は……心中お察ししますぅ……」

武内「いえいえ、事件のことはすでにお話さし上げたのですが……」

古畑「我々もね、いま来たばかりなもので、情報なんて縦割りですから回ってこないんですよぉはい……もう一度お聞かせ願えますか?」

武内「はい……昨日の夜9時位でしたでしょうか?
ウチは、アイドルの仕事はなるべく8時までに終わらせるようにしているのです。
その後、私と千川さんが事務作業をしている時に常務が今後の方針について話がある、とおっしゃられて、会議室で話し合いをしていたのです。
私と、千川さんと、部長である今西さんと一緒に」

古畑「なるほど、それで?」

武内「それで、その会議が終わった後……11時位でしたでしょうか?
私はコンビニに食事を買いに行き、私の仮眠室に入り、横になっていたのです。
すると、警報が鳴り響き、急いで事務所へ向かいました。
事務所では常務がまだいらっしゃったはずだと思い、廊下を走っていると、黒尽くめの男とぶつかりました。
彼は悪態をつきながら逃げて行きました。とりあえず常務の安否を確認しようと会議室に行くと、常務が血を流して倒れていました」

古畑「なぜ、その男を取り押さえなかったのです?あなたのように体格の良い方ならよほどのことがない限り取り押さえられるはずですが……」

武内「その、気が動転していて……」

古畑「なるほど。ええと、その常務さんは、どちら向きに倒れていましたか?」

武内「あの、よく覚えていません……」

古畑「そうですか、ありがとうございます。ところで、つかぬことをお伺いしますが、今日はアイドルの皆さんは?」

武内「今日は、無理を言って全員お休みにしてます。まぁ、あんなことがあった後ですし、と関係各所のご承諾を頂いてですが」

古畑「なるほどぉ……よくわかりました。どうもありがとうございます」

今泉「あ、あのさぁ、こ、今度、僕と一緒に、ご飯でも行こうよ」

ちひろ「あはは、お誘いは嬉しいのですけれど、私結婚してるので……」

今泉「あ、そう……そうなんだ」

古畑「何やってんの」ペチッ

今泉「いっ……何するんですか古畑さん」

古畑「行くよ。仕事に戻るから」

今泉「はーい……」

ちひろ「プロデューサーさん……」

武内「大丈夫です。佐久間さんには疑惑が向かないように、なんとかしてみます。最悪、私が犠牲になっても……」

今西「武内くん、私も同罪だ。いや、私のほうが老い先が短い。私が犠牲になろう」

ちひろ「ダメです。おふたりとも!常務は不審者に殺された、限界までそれで頑張りましょう!」

武内「ちひろさん……」

今西「そうだな、よし、この件が解決するまでは、休業にしよう。アイドルたちのメンタルケアもあるからね」

ちひろ「ええ、とりあえず事情は説明していますし……」


西園寺「古畑さん。現場にこんなものが落ちてたんですが……」

古畑「髪の毛?」

西園寺「はい、古畑さんの想像通り、これは内部犯の可能性が出てきましたね」

古畑「あぁそう、で、例の件はどうなったの?」

西園寺「はい、警報装置ですが、動作が確認されていません」

古畑「んー……な、る、ほ、どぉ……」

古畑「なに?」

今泉「古畑さん、これ!僕、見覚えありますよ!」

古畑「あぁそう……いくよ」ペチッ

今泉「った!……もう!」

佐久間「プロデューサーさぁん……どうしましょう……」

武内「どこかに落とした、ということにしておきましょう。佐久間さんのピアスは、探しておきます」

佐久間「きっと、現場なんです。分かるんです、私」

古畑「えぇ、どうも……お取り込み中失礼致します」

武内「すみません、また電話します。急ぎのようが入ったので」

佐久間「はい。ではまた。……はぁ」

古畑「お忙しいのですねぇ」

武内「えぇ、私しかプロデューサーはいませんから」

古畑「僭越ながらあなた方の会社のことをお調べさせていただきましたぁ……。
んー、この事務所には200人ものアイドルがいらっしゃるようで、まぁ個性的な方々が勢揃い、と言った感じですねぇ」

武内「えぇ、まぁ……」

古畑「それをあなた1人でプロデュースしてらっしゃる?」

武内「はい」

古畑「過労死しないことが不思議ですぅ……えぇ、それはさておきですね。現場からおかしなものが見つかっているんです」

武内「といいますと?」

古畑「えぇ、女性の髪の毛なんです。それと白髪が一本」

武内「はぁ……それが何か?」

古畑「あなた、現場に向かう最中犯人らしき人とぶつかってますよねぇ。声も聞いている。本当に男性でしたか?」

武内「はい、男性だと思います」

古畑「そうですかぁ……ところで、女の子と一緒にお仕事をやってらっしゃるということは、恋心なんかも芽生えたりするのではないですかぁ?」

武内「アイドルとプロデューサーですから、そういったことはないようにしています」

古畑「あなたはそう思っていても、ということですよねぇ……」

武内「もちろん、その話はどのアイドルにも徹底してあります」

古畑「わかりましたぁ……そ、う、い、え、ば」

武内「まだ、何か?」

古畑「えぇ、あのぉ……常務と会議をされてたらしいですね?」

武内「はい」

古畑「どんな会議でしたか?」

武内「それは社外秘扱いですので……」

古畑「そうですよねぇ、ごめんなさい!それではこれで」

武内「はい、では……」


古畑「えぇ、登場人物のキャラが少しぶれている、というご指摘もありましょうが、作品は少しかじっただけですので、>>1の浅さだと思ってお許し下さい。
さて、今回の事件ですが、非常に簡単に解き明かすことが出来そうです。
ヒントはプロデューサーさんの性格。
んー、はい……。ンフフ、彼は努めて冷静にしてますが、人は必ずボロを出すものです。
それが今回、かなり序盤で出てしまったというだけなのです。古畑でした」

武内「あの、お話とは?」

古畑「えぇ、みなさんお忙しいところすみません、犯人がわかったものですから……」

千川「本当ですか?」

古畑「はい、そうですよねぇ、武内さん?これは全てあなたが仕組んだこと、違いますかぁ?」

武内「どこにそんな証拠があるのです」

古畑「あなたはこう言いました。警報がなって仮眠室から飛び起きた。
事務所に向かう途中男とぶつかった。
えぇ、確かめましたら仮眠室と事務所をつなぐ廊下は一本道です逃げ場がありませんこのビルの外に出る道も」

武内「それがなにか問題でも?」

古畑「問題大ありなんですよ!そうなると仮眠室に犯人はずっと潜んでいることになる。
警察が呼ばれるまでの僅かな時間に逃げれる訳はないですからねぇ~はい。それともう一つ、足跡が確認されなかった」

武内「はぁ……」

古畑「最近の鑑識というのは技術の進歩がすごくてですね?
静電気を使って足跡を採取できるわけです。そしてビルの管理会社に問い合わせた所あの日は警報装置がならなかった」

古畑「このことから犯人は武内さんしかいないのです。あなたは冷静な方ですから常務を殺害した後処理をする事を忘れなかった。その処理の完璧さに穴があったんです」

武内「しかし、私には動機がない」

古畑「えぇ、動機はあるんです。常務はどうやら嫌われてらっしゃったようですねぇ……経営方針を180度変えられてしまった。まぁそして解雇でも告げられてカッとなった、ということでしょうか」

武内「……そのとおりです」

古畑「連行して」

西園寺「はい」

今西「待ってくれ!」

千川「部長!」

古畑「待てません。これが私の導き出した真実です。あ、そういえば、最後に、現場に落ちてた妙なものについてご回答いただけますか?」

武内「なんです?」

古畑「これなんですがねぇ?」

武内「ピアス?」

古畑「西園寺くん、手錠外してくれる?」

西園寺「はい!」

古畑「今皆さん聞きました?聞きましたよねぇ!なぜ私が手に持っているものがピアスだとお分かりになられたのですか?武内さん!」

武内「見えたので」

古畑「何が?」

武内「ピアスが見えたんです」

古畑「残念ながら、これはただのイヤホンジャックです。
そうなんです。現場にはピアスが落ちていた……千川さんのものではない。
彼女にはピアス穴がないから。となると、誰か別の人物のものとなるわけです……。
いやぁ、随分芝居を打ってしまって……ンフフ、失礼致しました。それとですね?女性の毛髪も押収されているのです」

武内「……」

古畑「200人分のDNA鑑定とりますと、かなりな量になりますが……んー、手配してくれる?」

向島「はい」

佐久間「待ってください!」

武内「佐久間さん!」

古畑「その身につけてらっしゃるピアスは、証拠品と同じですねぇ……なぜそれが現場に落ちていたのかご説明ください、佐久間まゆさん」

佐久間「私が殺しました。プロデューサーさんをいじめる人間は、私の手で粛清することが、使命ですから」

古畑「そうですかぁ……ですが、あなたは自分自身でプロデューサーさんを危険にさ、ら、し、た……おわかりですね?」

佐久間「……はい」

古畑「連行して」

西園寺「はい」

佐久間「プロデューサーさん、お世話になりました」

武内「すみません……あなたを……守りきれませんでした」

佐久間「いいんです、私は、みんなの輝きを、ずっと見守ってます。私は執念深いんですよぉ?」

武内「……いつ、気づいたんです?」

古畑「うちには今泉とか言うポンコツがいるんですけどね?彼のお陰です。
彼がこのピアスのことを知らなければ、お手上げだったと思います。
それと、まぁ、あなたの証言が不自然だったから、というのもありますし。
寮に聞き込みに行った際、皆さんが口をそろえて佐久間さんの様子がおかしい、とおっしゃるし……。
佐久間さんだけ少し動揺していらっしゃったので」

武内「そうですか……」

古畑「はい」


--ハイッケーオツカレッシター

武内P「お疲れ様でした。みなさん、いい演技でした」

まゆ「これ、本当に特典につくんですか?」

武内P「はい」

ちひろ「あー緊張しましたよぉ……」

部長「全く……」

常務「君、私はいつもこういう役なのか?」

武内P「これも要請なんです……すみません」

ちひろ「じゃあ、ご飯でも行きましょうか?」

常務「そうだな、久しぶりにそういうのも悪く無いだろう」

まゆ「じゃあ、行きましょう!」

武内P「はい」

以上、短編ですがこれにて終了です

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