南青山の会員制レストラン
地下へ続く階段を下りて未央がやって来た
未央「しぶりん久しぶりー!」
凛「久しぶりだね未央」
ハンドバッグを置いた未央は
革張りのチェスターフィールドソファに腰かける
未央「あたしはカカオフィズひとつ!」
凛「私は車だからお酒は遠慮しとくよ」
二人の前にパスタが運ばれてきた
凛にはジェノベーゼ、未央にはアマトリチャーナが
未央はパスタを食べながら近況の話をし出す
未央「しぶりん、最近人気凄いじゃん!」
凛「ドラマの主演が決まってから忙しくなったかな」
未央「NHKの朝の連続TV小説でしょ。凄い人気だよね」
凛「歌手以外で初めての大役だったから、何だか緊張する仕事だよ」
未央「あたしなんかバラエティのレポーターだからなあ」
凛「結構人気あるでしょ」
未央「世界中で食レポするから、色んな所に行けて楽しいよ」
凛「芸人さんや外国人の友達も増えた?」
未央「まあね!」
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パスタを食べながら仕事の話をして
食後のコーヒーが運ばれてきた
凛「それでさ、今日は卯月のことで相談があるんだ」
未央「しまむーか~ 結婚式以来会ってないな~」
凛「ミュージカルの仕事をしてたけど、今は休んでいるみたい」
未央「IT関連の青年実業家がお相手でしょ。卯月、玉の輿だよね~」
凛「それはそうなんだけど・・・今はあまり良くない状況なんだ」
未央「結婚生活がうまく行ってないの?」
凛「そんな感じ」
未央「それでも・・・持ち前の明るさで頑張ってるでしょ?」
凛「ううん、そうでもない。今の卯月は頑張れない」
未央「え? そんなにひどいの?」
凛「これから卯月の所に行くつもりなんだけど。一緒に来る?」
未央「あたしがお役にたてるなら!」
凛「一緒に来てくれれば心強いよ」
オレンジ色の街灯が辺りを照らす駐車場
凛はそこに停めてあるアルファロメオ・ジュリエッタの施錠を解いた
未央はその助手席に乗り込んだ
未央「しまむー・・・どうしちゃったんだよ」
凛「行って会えば分かるよ・・・」
凛は愛車のキーを回した
夜の静かな駐車場にエンジン音が響いた
凛「六本木のタワーマンションだから、そう遠くないよ」
未央「しまむー・・・」
口数少なくなった2人を乗せた車は、青山通りを走る
その最中に凛が未央に忠告した
凛「卯月に会っても頑張れとか頑張ろうって言っちゃダメだから」
未央「何で? 頑張りますっていつも頑張るのが、しまむーの良い所なのに」
凛「うつ病の人を励ますと逆効果なんだ」
未央「え? うつ病? しまむーが?」
凛「さっきも言ったけど、今の卯月は頑張れない」
コインパーキングに車を停めた凛は
未央を連れてマンションの入口へと進んだ
インターホンで卯月を呼び出し、入口ドアを開けて貰った
広くて明るいが閑散としたラウンジは
未央の不安をかえって煽る雰囲気だった
未央「凄い所に住んでるね」
エレベーターに乗って上階まで来た
地上から隔離された場所に卯月は住んでいる
無言のまま凛は廊下を突き進んだ
未央は不安そうな表情を浮かべながら凛の後ろを歩いた
人気のない明るい廊下を、未央は綺麗な廃墟だと思った
角部屋の一室の前で凛は立ち止まった
ドアの脇にあるインターホンを押して
マイクに向かった凛は、悲しさと優しさを込めた声で呟いた
凛「来たよ卯月」
卯月「あ・・・凛ちゃん・・・おはようございます」
凛「今日は未央も連れて来たよ」
未央「しまむー、久しぶりだね」
卯月「あ・・・未央ちゃん久しぶりです」
インターホンから漏れる卯月の声は
重々しい感じがした
入口の鉄扉の重さと相まって、重たい空気が来客を包み込んだ
施錠が解かれる音がして、重そうなドアが開いた
ドアの隙間から現れた卯月の顔を見て
未央は戦慄した
未央が知っている卯月ではない
まず印象的だったのは、目に光がなく生気を感じられないことだった
それから、仮面のように張付いた笑顔が、未央を困惑させた
生気のないロボットが、笑顔という名の無表情を浮かべ、呆然と立っている様に見えた
未央「や、やあ、久しぶり・・・」
引きつった笑顔を浮かべた未央には
いつもの元気キャラを出せそうな相手ではないと思えた
気まずさを感じた未央は凛を見た
悲しそうな表情を浮かべており
緑色の瞳は微かに涙でうるんでいる
卯月「こんな時間に来て貰ってごめんね」
凛「こっちこそ遅くに来てごめん」
卯月「私は夜の方が都合良いですよ。昼夜逆転した生活ですから」
卯月はリビングへ二人を招いた。
片付いてスッキリしたリビングは、生活感を感じさせない雰囲気だ
明かりは落とされており、外から入り込む夜景の光が室内を照らしている
そんな中、未央はテーブルの上にある物に目を奪われた
錠剤のシートが、何枚も無造作に散乱していたのだ
たぶん抗鬱剤だろうと未央は思った
卯月「何か食べますか? 生ハム位しかありませんけど」
凛「それじゃあ、生ハムを頂こうかな」
卯月は皿に生ハムを盛り付けて来客に差し出した
三人で生ハムを摘まみながら夜景を眺めた
夜景が綺麗だからそっちに目を奪われたわけではなく
未央は夜景に逃げたい気持ちだった
何を話していいのか分からなかったからだ
生ハムの油分が喉にまとわりつき
それが未央の言葉を遮っている様にさえ感じられた
とはいえ、何も話さないのは悪いと未央は思った
また、沈黙が続けば続くほど雰囲気が重くなる様子があったので
未央は思い切って一言発してみた
未央「いつも一人で過ごしてるの?」
卯月「彼は仕事仕事でいつも返って来ないんですよ」
凛「それは気の毒だね」
卯月「きっと私に魅力がないからですね・・・」
未央「そ、そんなことないよ」
凛「気にしないほうがいいよ。きっと単に忙しいだけだよ」
卯月は寂しそうな目で近くのビルを見つめた
卯月「あのビルに彼はいるんです。
こんなに近くに見えるのに、ずいぶん遠いと感じます」
彼の話題は逸らしたほうが良いと、未央は思った
話題を変えるために質問した
未央「いつも家にいるの?」
卯月「たまには散歩に出たりもしますよ」
凛「へえ、どういう所へ行くの?」
卯月「六本木ヒルズとか公園ですね。
夜の六本木ヒルズって人がほとんど居ないんですよ」
未央「こ、今度さ、あたしたちと遊びに行こうよ、ね?」
卯月「人が多い所だと落ち着かなくて・・・」
未央「で、でもさ、暗い所ばかりにいたら気が晴れないよ」
凛「まず、日中起きられるようにすれば良いんじゃないかな?」
卯月「夜型はやっぱりいけませんよね」
未央「太陽は元気をくれるーって言うでしょ」
卯月「朝起きられるように頑張ります!」
凛「そんなに気負わなくてもいいと思うんだ」
卯月「そうですね。頑張りますって気張らないほうが良いと
先生も言ってましたし・・・・・・」
未央「まずはジョギングでも始めてみるとか」
卯月「そうですね。出来る所からやりましょう」
未央「生活を取り戻せば色々出来るようになるって!」
卯月「そうですね・・・みんなみたいに・・・また」
凛「卯月は卯月のペースで行けばいいよ」
卯月「そう言ってくれると嬉しいです」
凛「卯月は今はまってる事って何かある?
それをきっかけにすれば・・・きっと良くなる」
卯月「録画とDVDです」
未央「録画? DVD?」
卯月「はい。346プロの皆が頑張ってる姿を観てますよ」
凛「私のドラマも録画してるの?」
卯月「はい! 未央ちゃんの番組も録ってますよ。ほかにも・・・」
卯月はDVDが置いてある棚を指差した
リーナと夏樹のロックライブ
みくのトークバラエティ
菜々が声優をやってるアニメ
小梅がやってる怪談トークショー
あやめが出演している時代劇
奏、楓、瑞樹が出演している映画
他にも沢山あった
卯月「みんな第一線で活躍してますよね!」
震える声でそう言った
卯月の目には涙が浮かんでいた
卯月はうつむいて涙を流し始めた
凛はそんな卯月に寄って行って静かに抱きしめた
凛「卯月・・・人と自分を比べたってしょうがないよ」
未央「そうだよ! しまむーはしまむーで戦ってるんでしょ!」
卯月「私・・・ダメダメですよね」
凛「卯月は風邪をひいているだけだよ。心の風邪なんだよ、それは」
未央「うつになる事だって珍しくないよ! 女の人はうつになり易いって聞くし」
卯月「私なんかクズですよ。彼にも言われました」
凛「どういうこと?」
卯月「お前なんかクズだって言われて・・・」
未央「ひどいよそんなの」
卯月「彼・・・来る度に・・・背広から香水の匂いがするんですよ。
きっと私は捨てられたんでしょうね」
凛「卯月を見捨てて他所に女を作ってるんだ・・・」
卯月「車の助手席に女物の小物入れが落ちていたことも・・・」
未央「何でしまむーみたいなイイ女を見捨てるんだろうね」
卯月「私、精神が弱いんですよ・・・彼のお荷物なんです」
凛「奥さんを荷物扱いするなんて、ひどい男だよ」
卯月「お前みたいな壊れた女は、もう魅力がないとも言ってました」
未央「なにそれ! こんな風になったのはアイツのせいじゃん!」
卯月「彼、私を私として見てくれなかった。アイドルで女優の島村卯月だから気に入ったんだそうです」
凛「そんなのおかしい」
未央「女をアクセサリーだと思ってるよ!」
卯月「二人は私が壊れてても気にせず来てくれます。だから・・・感謝していますよ」
凛「だって、卯月は友達でしょ」
未央「そうそう! 落ち込んでる時は支え合うのが仲間だよ!」
卯月「凛ちゃん・・・未央ちゃん・・・」
凛「暗い部屋で悶々としていても仕方ないよ。ドライブでも行かない?」
卯月「どこへ行くんですか?」
凛「連れて行きたい場所があるんだ」
凛はドライブに行こうと卯月を誘った
コインパーキングまで手を引いて連れ出し
未央は助手席の真後ろにある後席に乗り込んだ
それから卯月は助手席に座った
2人がシートベルトを締めてから、凛は車のキーを回した
卯月「遠出は久しぶりです」
凛の愛車・ジュリエッタは
国道246号線を厚木方面へ直進した
国道沿いにあるオレンジ色の街灯が三人の顔を照らした
その薄暗く重い光は卯月の不安気な表情を際立たせた
信号待ちの時、凛は卯月の方を向いて問い掛ける
凛「さっき、彼に捨てられたって言ったよね」
卯月は凛の目を見て頷いた
凛「卯月の方こそ捨てなよ、そんな旦那と今の日常なんか」
未央「そうだよ! 今の環境が悪いんであって、しまむーは悪くないよ!」
卯月「私が捨てるんですか・・・」
凛「卯月は頑張れない状態になったけど、そもそも頑張る必要なんてないと思う
立ち向かわなくてもいい物ってあるでしょ
今の卯月はそういうのと無理して戦っている気がするんだ」
未央「うん、もっと別の事に没頭したほうがいいよ」
卯月「私、頑張らなくてもいいんだ・・・・・・・」
凛「私が卯月と同じ境遇に置かれたら、とっくに逃げ出してるよ
耐える前に怒って立ち去って別の事を探しているだろうね」
未央「そうそう、一人でよく耐えたと思うよ。
あたしだったら逃げ出して実家に閉じこもると思う」
卯月「私・・・そんなに無理してるように見えますか」
凛「卯月は昔から頑張り屋だから
それが良い所なんだけど、今回はよくない面が出たんだよ」
卯月「私・・・逃げていいんだ」
車道の信号が青になって車が発進する
凛「逃げるのとは違うよ。新たに走り出そうってこと」
未央「今の生活にとどまってモヤモヤしてても仕方ないよね」
卯月「新しい私・・・新しい生活か・・・」
車は国道246号線から住宅街へ入って行った
そこは凛の実家がある街だ
卯月「ここって・・・・・・・」
車が着いた先は懐かしい場所だ
卯月と武内プロデューサーが
アイドルになることを迷っていた凛を説得した公園である
凛「卯月に初心を思い出して貰いたくて、今日はここに連れてきたよ」
卯月「懐かしいですね。私と凛ちゃんが初めてじっくり話した場所です」
凛「うん、私はここで卯月の笑顔に魅せられた。それでアイドルになる決意を固めたんだよ」
卯月「笑顔・・・あの時みたいな笑顔は、今の私に出来ませんよ・・・」
凛「そうかもしれない。だけど、徐々にでいいから笑顔を取り戻してほしいんだ」
懐かしいあの日のように、サクラの花びらが舞っている
卯月は屈んで手を伸ばした
そして、地に落ちたサクラの花を一輪拾い上げた
卯月「笑顔・・・か」
花を持って凛の方を向いた卯月は
眉を八の字に下げて少し戸惑った顔をしていた
卯月「そのためには決着をつけなきゃダメみたいですね」
凛「それは卯月が決める事だけど、私は応援するよ」
未央「晴れ晴れすればよし! じゃない?」
しばらくして、卯月は離婚届を夫に突き付けた
卯月も夫も想いは一緒の様子で、泣きも笑いも怒りもしなかった
何の激情も湧かない程の限界状態
夫婦間のそんな状態が明白となった
卯月は、役所で貰ってきた緑色の公的書類を机の上に広げた
無表情かつ事務的にテーブル上に広げて夫に見せた
卯月の夫はある程度予想していた様子で
驚く様子もなく淡々と申し出を受け入れた
離婚の際のやり取りが冷やかになるほど
既に夫婦関係は冷め切っていた
離婚は当然の結果だった
離婚後、卯月は実家へと帰った
実家に帰ってからしばらく経った
卯月は346プロダクションを見学したいと思い
武内プロデューサーに連絡を入れてアポを取った
武内「お久しぶりです。島村さん」
卯月「プロデューサー。お久しぶりです」
武内「その・・・色々あって大変だったと聞いております」
卯月「決着はつけましたよ」
武内「・・・それは良かった。
今日は後輩のアイドルたちを見学したいそうですね」
卯月「はい。初心に帰ろうかと思います」
武内「何かの足しになれば幸いですよ」
卯月は後輩のレッスンを眺めた
アイドルデビューした頃の自分と同じ位の歳の子たちが
熱心にレッスンに励んでいた
卯月「昔はダンスが巧く出来なくて悩んだんですよ」
武内「その分、かなり努力していました」
卯月「ぎこちない動きを観ていると、あの頃の気持ちを思い出します」
武内「今の島村さんは大分成長しました」
卯月「技術的には巧くなったかもしれません
でも、ひたむきな気持ちは忘れてましたね・・・」
武内「その気持ちを思い出せそうですか?」
卯月「はい!」
武内「それは良かった」
応接室に通された卯月は
紅茶を飲みながら武内プロデューサーと話をした
卯月「昔、スランプになって養成所に戻った事がありましたね」
武内「あの時は焦りましたよ」
卯月「凛ちゃんと未央ちゃんに支えられて立ち直れました」
武内「島村さんは転んでも立ち上がる人間です
何度転んでも起き上がるダルマのような強さを持っています
転びっぱなしにならない所が、島村さんの良さです」
卯月「そう言っていただけると嬉しいです」
武内「今の島村さんも転んでから起き上がろうとしている
私にはそう見えます」
卯月「私、また頑張ろうと思ってますよ」
武内「前向きになってくれて良かった」
卯月「復帰する為の仕事を探していたら
舞台公演に出ないかと劇団から誘われました
やって来たチャンスに乗ってみようと思ってます」
武内「再出発・・・ですか」
卯月「はい!」
武内「実は・・・島村さんがシンデレラプロジェクトを休んだ時
常務から島村さんを切り捨てるよう言われたのです」
卯月「そのとき、プロデューサーはどうしたんですか?」
武内「反対しました
島村さんはきっと立ち直ると期待したからです
晴れない雲はありません、星はそこにある・・・と常務を説得しました」
卯月「そんなことが・・・」
武内「あの時、島村さんを切り捨てる事に反対して
本当に良かったと思っています
島村さんは強い人ですから」
南青山の会員制レストラン
入口を開けて卯月が入って来た
卯月「お待たせしました」
未央「あ! なんか今日は元気そうじゃん!」
卯月の目には光が戻っていた
表情も自然な感情表現に戻った
しばらく三人で談笑してから
卯月は鞄を手に取って
舞台公演のチケットを取り出した
凛「へえ、招待してくれるんだ」
未央「復帰おめでとう! あたしは公演初日を空けとくよ!」
凛「私もそうする。未央、一緒に行こう」
卯月「ありがとうございます!」
凛はチケットをまじまじと眺めた
凛「演目は・・・『春の雪』か」
未央「何の役で出るの?」
卯月「ヒロインの綾倉聡子の役です
伯爵家の令嬢で主人公の幼馴染なんですよ」
凛「どういう御話なの?」
卯月「そうですねえ・・・悲恋物語ですね
大正時代の貴族社会を舞台にした劇です」
未央「何だか難しい役じゃない?」
卯月「今まで明るい・可愛いだけの役ばかりでしたから
こういう役にも挑戦したくて引き受けました」
凛「復帰して早々ヒロイン役なんて・・・やるじゃない、卯月」
「春の雪」が開演された
凛と未央は武内プロデューサも誘って公演を観に行った
三人は卯月の演技を観て驚いた
卯月が演じる綾倉聡子は、可愛いだけの役ではなかった
悲愴感や激情といった感情もひしひしと伝わる演技を見せつけた
困難を乗り越えて復帰した卯月は一皮むけている
それが昔の卯月を知る人にはよく分かった
凛「卯月・・・圧倒されたよ」
未央「あ、あたし・・・感動して泣いちゃった」
武内「また成長しましたね島村さん
アイドルにスカウトした時、私は笑顔が素敵だと言いましたが
今の島村さんの持味は笑顔だけじゃないようです」
卯月「ありがとうございます!」
武内「今日は紹介したい人がいます
私の友人で映画監督の黒田さんです」
黒田「いや~ 驚きましたわ
島村卯月って名前は知ってたんですけどねえ
いつもニコニコしててキャピキャピしてるだけかと思ってました
典型的なアイドル上がりの女優だってね
そんなイメージは今日の公演を観て変えさせられましたわ」
卯月「それは嬉しい評価ですね」
黒田「現在企画中の映画で
どうしても決まらない役が有ったんですけどねえ
島村さんやってみませんか?」
卯月「え? 本当ですか!」
黒田「ええ、詳しい話は後日に持って行きますんで」
卯月「ぜひ御話聞かせてください!」
未央「やったじゃん!」
凛「新たに走り出す良い機会だよ」
卯月が演じた綾倉聡子役は好評を得た
鬼気迫る演技だと絶賛され
笑顔が可愛いだけの島村卯月のイメージを払拭した
こうして卯月はまた成長したのである
千秋楽が終わった後、凛と未央は卯月を1泊旅行に誘った
山間にある静かなペンションだ
凛「こうしてゆっくり話すのは久しぶりだよ」
未央「あたしは仕事で旅ばかりだけど、こういうのは特別って感じがするよ」
卯月「私も旅行なんて久しぶりだから、楽しいです」
昼間は曇り空が続いていたが
夜になって雲は流れ去って行った
次第に星明りが戻ってきた
凛「晴れてきて良かった。ここは星が綺麗な場所だから」
未央「ミツボシは見えるかな?」
卯月「さっきまで雲に隠れていた星が、また見え始めましたね」
その日の空模様は
卯月の心境と周囲の状況を象徴しているかのようだった
-Fin-
ハッピーエンドで完結させました
一時的とはいえ、卯月をどん底に落としたことは
卯月ファンの皆様に謝ります
どん底から這い上がる復活劇
その後の成長劇としてみていただけたら幸いです
長々と失礼しました
楽しんで頂けたなら幸いです
読んで頂いた方、ありがとうございます
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