モノクマ「学級裁判!!」KAZUYA「俺が救ってみせる。ドクターKの名にかけてだ!」カルテ.6 (1000)

★このSSはダンガンロンパとスーパードクターKのクロスSSです。
★クロスSSのため原作との設定違いが多々あります。ネタバレ注意。
★手術シーンや医療知識が時々出てきますが、正確かは保証出来ません。
★原作を知らなくてもなるべくわかるように書きます。


~あらすじ~

超高校級の才能を持つ選ばれた生徒しか入れず、卒業すれば成功を約束されるという希望ヶ峰学園。

苗木誠達15人の超高校級の生徒は、その希望ヶ峰学園に入学すると同時に
ぬいぐるみのような物体“モノクマ”により学園へ監禁、共同生活を強いられることになる。

学園を出るための方法は唯一つ。誰にもバレずに他の誰かを殺し『卒業』すること――

モノクマが残酷なルールを告げた時、その場に乱入する男がいた。世界一の頭脳と肉体を持つ男・ドクターK。
彼は臨時の校医としてこの学園に赴任していたのだ。黒幕の奇襲を生き抜いたKは囚われの生徒達を
救おうとするが、怪我の後遺症で記憶の一部を失い、そこを突いた黒幕により内通者に仕立てあげられる。

なんとか誤解は解けたものの、生徒達に警戒され思うように動けない中、第一の事件が発生した……


次々と発生する事件。止まらない負の連鎖。

生徒達の友情、成長、疑心、思惑、そして裏切り――

果たして、Kは無事生徒達を救い出せるのか?!


――今ここに、神技のメスが再び閃く!!



初代スレ:苗木「…え? この人が校医?!」霧切「ドクターKよ」
苗木「…え? この人が校医?!」霧切「ドクターKよ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1382255538/)

二代目スレ:桑田「俺達のせんせーは最強だ!」石丸「西城先生…またの名をドクターK!」カルテ.2
桑田「俺達のせんせーは最強だ!」石丸「西城先生…またの名をドクターK!」カルテ.2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1387896354/)

三代目スレ:大和田「俺達は諦めねえ!」舞園「ドクターK…力を貸して下さい」不二咲「カルテ.3だよぉ」
大和田「俺達は諦めねえ!」舞園「ドクターK…力を貸して下さい」不二咲「カルテ.3だよぉ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1395580805/)

四代目スレ:セレス「勝負ですわ、ドクターK」葉隠「未来が…視えねえ」山田「カルテ.4ですぞ!」
セレス「勝負ですわ、ドクターK」葉隠「未来が…視えねえ」山田「カルテ.4ですぞ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1403356340/)

前スレ:十神「愚民が…!」腐川「医者なら救ってみなさいよ、ドクターK!」ジェノ「カルテ.5ォ!」
十神「愚民が…!」腐川「医者なら救ってみなさいよ、ドクターK!」ジェノ「カルテ.5ォ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416054791/)


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1444145685


☆ダンガンロンパ:言わずと知れた大人気推理アドベンチャーゲーム。

 登場人物は公式サイトをチェック!
 …でもアニメ一話がニコニコ動画で無料で見られるためそちらを見た方が早い。
 個性的で魅力的なキャラクター達なので、一話見たら大体覚えられます。


☆スーパードクターK:かつて週刊少年マガジンで1988年から十年間連載していた名作医療漫画。

 KAZUYA:スーパードクターKの主人公。本名は西城カズヤ。このSSでは32歳。2メートル近い長身と
       筋骨隆々とした肉体を持つ最強の男にして世界最高峰の医師。執刀技術は特Aランク。
       鋭い洞察力と分析力で外の状況やこの事件の真相をいち早く見抜くが、現在は大苦戦中。


 ・参考画像(KAZUYA)
http://i.imgur.com/JFWgsAV.jpg
http://i.imgur.com/fGuZhyk.jpg


ニコニコ静画でスーパードクターKの1話が丸々立ち読み出来ます。
http://seiga.nicovideo.jp/book/series/13453



《自由行動について》

安価でKの行動を決定することが出来る。生徒に会えばその生徒との親密度が上がる。
また場所選択では仲間の生徒の部屋にも行くことが出来、色々と良い事が起こる。
ただし、同じ生徒の部屋に行けるのは一章につき一度のみ。


《仲間システムについて》

一定以上の親密度と特殊イベント発生により生徒がKの仲間になる。
仲間になると生徒が自分からKに会いに来たりイベントを発生させるため
貴重な自由行動を消費しなくても勝手に親密度が上がる。

またKの頼みを積極的に引き受けてくれたり、生徒の特有スキルが事件発生時に
役に立つこともある。より多くの生徒を仲間にすることがグッドエンドへの鍵である。


・現在の親密度(名前は親密度の高い順)

【カンスト】石丸 、桑田

【凄く良い】苗木、不二咲、大和田

【かなり良い】舞園、朝日奈、腐川 、ジェノサイダー

【結構良い】霧切、大神

【そこそこ良い】セレス、山田、葉隠

【普通】十神


     ~~~~~

【江ノ島への警戒度】かなり高い


人物紹介(このSSでのネタバレ付き)

・西城 カズヤ : 超国家級の医師(KAZUYA、ドクターK)

 学園長たっての願いで希望ヶ峰学園に短期間赴任しており、この事件に巻き込まれた。
失った記憶を少しずつ取り戻しながら、希望ヶ峰学園の謎に迫り生徒達と絆を結んでいく。
閉鎖されたこの学園で“唯一の大人”であり生徒のためなら自ら犠牲になることも辞さない。

半数近くの生徒を手術で救い苗木と石丸に医療技術を仕込むが、モノクマに危険視されている。


・苗木 誠 : 超高校級の幸運

 頭脳・容姿・運動神経全てが平均的でとにかく平凡な高校生。希望ヶ峰学園には
超高校級の幸運と呼ばれる、いわゆる抽選枠で選ばれた。自分は平凡だと謙遜するが、
K曰く超高校級のコミュニケーション能力の持ち主で誰とでも仲良くなれる特技がある。
石丸と共に医者を目指すことを決意し、現在はKの指導を受けている。とにかく前向き。


・桑田 怜恩 : 超高校級の野球選手

 類稀な天才的運動能力の持ち主。野球選手のくせに大の野球嫌いで努力嫌い、女の子が
大好きという超高校級のチャラ男でもあった。……が、舞園に命を狙われたことを契機に
自分が周囲からどう見られていたかを知り、真剣に身の振り方を考え始める。その後、
命の恩人で何かと助けてくれるKにすっかり懐き、今はだいぶ真面目で熱い性格となった。


・舞園 さやか : 超高校級のアイドル

 国民的アイドルグループでセンターマイクを務める美少女。謙虚で誰に対しても儀正しく
非の打ち所のないアイドルだが、今の地位に辿り着くまでに凄まじい努力をしており、芸能界を
軽んじる桑田が嫌いだった。真面目すぎるが故に自分を追い詰める所があり、皮肉にも最初に
事件を起こす。その後も自分を責め続け、とうとう限界を迎えた彼女は舞園さやかという一人の
人間を封印。「脱出のための駒」としての自分を演じることにし、現在は精力的に動いている。


・石丸 清多夏 : 超高校級の風紀委員

 有名進学校出身にして全国模試不動の一位を誇る秀才。真面目だが規律にうるさく融通が効かない。
苗木を除けば唯一才能を持たない凡人である。努力で今の地位を築いたため、努力を軽視する人間を嫌う。
堅すぎる性格故に長年友人がいなかったが、大和田とは兄弟と呼び合う程の深い仲になった。
 大和田の起こした事件で顔と心に大きな傷を負い一度は廃人となるが、仲間達の熱い友情により
無事復活。現在は尊敬するKAZUYAに憧れ医学の猛勉強を行っているが……不器用なのが玉にキズ。


・大和田 紋土 : 超高校級の暴走族

 日本最大の暴走族の総長。短気ですぐ手が出るが、基本的には男らしく面倒見の良い兄貴分である。
石丸とは最初こそ仲が悪かったが、後に相手の強さをお互いに認め合い義兄弟の契りを交わした。
 実兄を事故で死なせたことを隠していた弱さがコンプレックスであり、不二咲の内面の強さに嫉妬し
事件を起こすが、後に自ら秘密を告白し弱さを克服した。石丸の顔に傷をつけたこと、第三の事件を
誘発し不二咲を危険な目に遭わせたことを後悔しているが、自分なりに償っていく決意をした。


・不二咲 千尋 : 超高校級のプログラマー

 世界的な天才プログラマー。その技術は自身の擬似人格プログラム・アルターエゴを作り出す程である。
小柄で愛らしい容姿をした女性……と思いきや、実は男。男らしくないと言われるのがコンプレックスで
今までずっと女装して逃避していた。秘密暴露を切欠に強くなろうと決意したが、その精神的な強さが
大和田のコンプレックスを刺激し、殺されかける。石丸が自分を庇って怪我を負ったことに責任を感じ、
単独行動を取った結果ジェノサイダー翔に襲われ死にかけるが、友情の力でギリギリ蘇生した。


・朝日奈 葵 : 超高校級のスイマー

 次々と記録を塗り替える期待のアスリート。恵まれた容姿や体型、明るい性格でファンも多い。
食べることが好きで、特にドーナツは大好物である。あまり考えることは得意ではないが、直感は鋭い。
 モノクマの内通者発言により仲間達に疑われたことでとうとう不満が爆発し、KAZUYAとも衝突するが
お互いに本音をぶつけあったことで和解。現在は苗木達同様、KAZUYAの派閥に入っている。


・大神 さくら : 超高校級の格闘家

 女性でありながら全米総合格闘技の大会で優勝した猛者。外見は非常に厳つく冷静だが、内面は
女子高生らしい気遣いや繊細さを持っている。由緒正しい道場の跡取り娘であり、地上最強の座を求め
日々鍛錬している……が、実は内通者。モノクマに道場の人間を人質に取られており、指令が下れば
殺人を犯さなければならない立場にある。覚悟を決めているが、同時に割り切れない感情も感じている。


・セレスティア・ルーデンベルク : 超高校級のギャンブラー

 栃木県宇都宮出身、本名・安広多恵子。ゴシックロリータファッションの美少女である。徹底的に
西洋かぶれで自分は白人だと言い張っている。いつも意味深な微笑みを浮かべ一見優雅な佇まいだが、
非常な毒舌家でありキレると 暴言を吐く。穏健派の振りをしているが、実は脱出したくてたまらず
常にチャンスを窺っていた。KAZUYAに好感を持っているのか唯一のCランク認定をする。

前々から怪しい雰囲気でいよいよ動くかと思われたが、逆に因果応報か葉隠に刺されてしまった。


・山田 一二三 : 超高校級の同人作家

 自称・全ての始まりにして終わりなる者。コミケ一の売れっ子作家でオタク界の帝王的存在。
セレスからは召使い扱いで毎日こき使われている。 普段は明るく気のいいヤツだが実は臆病で
プライドの高い一面もあり、密かに周囲の人間に対し引け目を感じていた。特に、殺人を図った
メンバーが活躍することに嫉妬しており、それが原因でメンバー全員を巻き込む大騒動を
引き起こしたことも。娯楽室で襲われ、KAZUYAの手術を受けたが現在は昏睡状態である……


・十神 白夜 : 超高校級の御曹司

 世界を統べる一族・十神家の跡取り。頭脳・容姿・運動神経全てがパーフェクトの超高校級の完璧。
デイトレードで稼いだ四百億の個人資産を持っている。しかし、全てを見下した傲慢な態度で周囲と
何度も衝突を繰り返し、コロシアイをゲームと言い放つなど人間性にはかなり問題がある。初めて
学級裁判が起こった三度目の事件では、自ら事件を撹乱してKAZUYA達に直接攻撃を仕掛けた危険人物。


・腐川 冬子 : 超高校級の文学少女

 書いた小説は軒並みヒットして賞も総ナメの超売れっ子女流作家……なのだが、家庭や過去の
人間関係に恵まれず暗い少女時代だったために、すっかり自虐的で卑屈な性格になってしまった。
十神が好きで、いつも後を追いかけている。実は二重人格であり、裏の人格は連続猟奇殺人犯
「ジェノサイダー翔」。翔が事件を起こしたことがショックで閉じこもっていたが、今は少しずつ
メンバーに心を開いてきている。熱心に自分の面倒を見てくれるKAZUYAに好意を持っており……?


・ジェノサイダー翔 : 超高校級の殺人鬼

 腐川の裏人格であり、萌える男をハサミで磔にして殺す殺人鬼。腐川とは真逆の性格でとにかく
テンションが高くポジティブ。重度の腐女子。乱暴だが頭の回転は非常に早く、味方にすると頼もしい。
腐川とは知識と感情は共有しているが記憶は共有しておらず、腐川の消された記憶も保持している。
コロシアイが起こる以前、自分と腐川に親身だったKAZUYAに好感を持っており友好的である。


・江ノ島 盾子 : 超高校級のギャル

 大人気モデルで女子高生達のカリスマ……は本物の江ノ島盾子の方で、彼女はその双子の姉である。
本名は戦刃むくろといい、超高校級の軍人だった。天才的戦闘能力を誇るが、頭はあまり回らず全く
気が利かないため残念な姉、残姉と妹からは呼ばれている。このコロシアイ学園生活のもう一人の内通者。
ちなみに、色々と残念すぎるためKAZUYAと桑田からは既に正体を看破され霧切らにもかなり怪しまれている。


・葉隠 康比呂 : 超高校級の占い師

 どんなことも三割の確率でピタリと当てる天才占い師。事情があって三ダブし、高校生だが成人である。
飄々として常にマイペース、KAZUYAからは掴み所がないと評されている。普段は割りと 落ち着いているが、
非常に臆病ですぐパニックになる悪癖がある。 また、自分の保身第一であり、借金返済のために友人を
利用しようとする面も……。どうせ外れだと思っているが、大神が内通者だというインスピレーションを得た。

精神的に不安定な場面が過去にも見られたが、とうとう事件を起こしてしまう。果たして逃げ切れるのか?


・霧切響子 : 超高校級の探偵

 学園長の娘にして、名門探偵一族霧切家の人間。初めは記憶喪失で名前以外何も思い出せなかった。
KAZUYAがたまたま霧切について知っていたため、現在は順調に記憶が回復している。いつも冷静沈着で
洞察力も鋭く、的確な指示をするためKAZUYA派の中では副リーダー兼参謀的役割を担っている。
手に火傷の痕がありKAZUYAに手術してもらったが、すぐには治らないのでまだ当分手袋は外せない。


・モノクマ

 コロシアイ学園生活のマスコットにして学園長。苗木達を監禁しコロシアイを強制している
黒幕である。中の人は超高校級の絶望・江ノ島盾子。人の心の弱い部分やコンプレックスを突くのが
得意で、このSSでは幾度も生徒達の心を踏みにじってきた最強のラスボス。 強靭な精神力と
高い医療技術を持つKAZUYAがそろそろ真剣に邪魔になってきており、どうするか思案中である。


テンプレ作成によもや二時間かかるとは……

本編は週末くらいを予定。もう少し待っててください。

とても楽しみです。最近寒い日が続いてますので風邪などを引かれたりされませんようお気をつけ下さい。

良いところで追い付いてしまった…
これから更新待たなければならないなんて絶望的だねえ…(ネットリ

>>11
ありがとうございます。1はちょっと体弱いので気をつけつつ再開します

>>12
いらっしゃいませ。裁判始まれば書き溜めがあるから安定投下出来る…はず


それでは新スレ一発目にして久しぶりの投下……再開


― コロシアイ学園生活四十日目 保健室AM9:12 ―


事件から三日が経つ――。

また以前のような気まずい生活が戻って来てしまった。
あの時よりは仲間意識を持つ生徒もだいぶ増え、お互いに支え合い協力してきたから
まだマシな状況であったが、それでも裁判を控えどこかピリピリとしていた。

KAZUYAに至っては山田とセレス二人を同時に看なければならず、山田は巨体で絶対安静、
セレスは女性と神経を遣うことが多かったので、少しやつれて顔色も悪い。


苗木「先生、持って来ました」

K「すまんな」


苗木はKAZUYAに頼まれた本をドサドサと机の上に置く。


石丸「先生は保健室から離れられないのですから、僕達がお手伝いするのは当然です!」

不二咲「気軽に頼んでくださいねぇ」

セレス「何を持ってきたのですか?」

K「ちょっとな」


手前のベッドに寝ていたセレスが声を掛けた。本来個室以外で生徒の就寝は許されていないが、
山田を動かせないことと二人一緒に様子を看た方が楽だというKAZUYAからの要望で、
モノクマと交渉し特別に許してもらったのだった。


霧切(……奇妙な話ね。ドクターが山田君を手術して、モノクマは明らかに不機嫌だった。
    それなのにあっさりとドクターの要求を呑むなんて、何を企んでいるのかしら)

霧切(今度の裁判で何か仕掛けるつもり? いえ、もう既に何か仕込んでいるのかも……)

苗木「霧切さん、どうかしたの? 何か考えてるみたいだけど」

霧切「別に。何でもないわ」


苗木「そう? ならいいけど、何だか怖い顔をしてたから」

霧切「もうすぐ捜査が解禁されるから集中してただけよ」

セレス「事件の真相は全てわたくしが語った通りですのに、まだ調べるのですか?」

K「いくら証言があっても、証拠もなしに有罪には出来んだろう?
  告発するからには、我々はきちんと調べる義務がある」

セレス「真面目ですのね?」


セレスからは既に事情聴取が済んでいる。

彼女曰く、忘れ物を取りに娯楽室に向かったら葉隠が山田を襲っている現場に遭遇した。
葉隠は目撃者である自分を消すために腹部を刺し逃亡したとのことだった。


K「今の段階では、山田と葉隠の間に何があったのか全くわからない。本人に聞くのが
  一番だが、葉隠の性格的にどこまで正直に話すか怪しいしな。現場検証は必要だ」

セレス「そうですわね。それではよろしくお願いしますわ、皆さん」


疲れたのか、そう言ってセレスは目を閉じる。


苗木(それにしても、何に使うんだろうこの本。これって……)

K「すまん。少しだけ離れる。山田を看ていてくれ」

苗木「あ、はい!」


               ・

               ・

               ・


保健室を苗木達に任せKAZUYAはある場所に向かっていた。既に容態が安定したセレスは
ともかく、いつ容態が急変するかわからない山田の側をKAZUYAが離れることなど通常はない。

しかし、今はどうしてもやらなければならないことがあった。

――最重要容疑者・葉隠康比呂の尋問のためである。


葉隠の部屋のインターホンを鳴らすと、すぐに扉が開いた。


大和田「……センセイか」

K「その男にいくつか聞きたいことがあってな」


部屋の中には神妙な顔で座る葉隠と、見張りをしていた大和田と桑田がいた。

現在は二人一組で見張りをさせているが、葉隠はそこそこ大柄なので腕力に自信があるメンバーを
中心に組む必要があった。そのうち、KAZUYAは緊急時に備えて見張りに回す訳にはいかないため、
現在は大神・江ノ島、大和田・桑田、十神・霧切、大和田・石丸の四組で順番に見張りをしている。


「…………」

「…………」


はっきり言って彼等は疲れていた。

半数近くが見張りにつけないためすぐ順番になる。その上、今でこそ大人しいが始めのうちは
葉隠も騒がしかった。自分は無実だと訴えたり、逆にキレて訴えてやると怒鳴ったり、さながら
ヤクザの取り調べのようだったと言う。その相手をするのはさぞかし大変だったろう。

大和田に至っては率先してKAZUYAの分を代わりに引き受けてくれたため、申し訳なかった。


桑田「まったく……まーだ認めねーんだぜ? 往生際が悪いったらねえよ」

葉隠「やったのは俺じゃねえ。容疑は否認するべ!」


ふてくされたように座る葉隠に、KAZUYAはつかつかと近寄る。


K「……事件に関していくつか聞きたいことがあるのだが」

葉隠「黙秘権を発動させてもらう!」

K「全て正直に話すことがお前を救うことになってもか?」

葉隠「う……帰ってくれ。なにも話すことはねえ!」


K「正直に話せ。安広は自分も山田もお前にやられたと言っている。どうなんだ?」

葉隠「お、俺はやってねえ!」


否定するものの、葉隠の顔は不自然に青い。


K「事件の際、お前はどこで何をしていた?」

葉隠「…………」

K「言わないとお前が不利になるだけだぞ」

葉隠「…………」


葉隠は押し黙る。あくまで徹底抗戦の構えだ。


桑田「な? ずっとこんな感じでさ」

大和田「裁判でブッ潰すしかねえだろ」


元々この二人の葉隠に対する心証はあまり良くなかったが、この数日で更に悪くなったようだ。
口では証拠を見つけるまで……と言っているが、心の中では既に犯人だと思っている。


K「…………」


KAZUYAは溜息をつくと、葉隠に背を向けた。


K「あまり保健室を空けられん。俺はもう戻る」

桑田「了解」

大和田「わかった。任せてくれ」

葉隠「お、俺はやってねえぞ! やってねえからな!」

K「――本当にそうか?」


KAZUYAは一度だけ振り返った。その瞳は、まるで全てを見透かしているようだった。


葉隠「あ、あぁ……」

K「ではな。次に会う時は学級裁判だ」


もう、KAZUYAは振り返らない。


葉隠(大丈夫だ。バレてねえ……)

K(クロだな。わかりやすい程に――)


KAZUYAは長年の経験と勘から葉隠の嘘を鋭敏に読み取っていた。
しかし、それにも関わらずKAZUYAの表情が浮かばれることはない。


(この事件はあまりに謎が多すぎる。ただクロを明らかにするだけでは駄目だ)

(――大事な真相を見失ってしまう。そんな予感がする)


               ◇     ◇     ◇


モノクマ「やっほ~い!」


保健室に戻ったKAZUYAをモノクマが明るく出迎える。
その背後では苗木と石丸、不二咲が引き攣った顔を浮かべていた。


K「何の用だ」

モノクマ「いや、午後には捜査時間開始のつもりだからさ。その前にちょっとした連絡だよ」

K「何?」

モノクマ「まず、葉隠君はボクが見張っておいてあげるよ。だって、裁判に失敗しちゃったら
      これが最期になる訳だし? 全員揃ってお昼ごはんを食べさせてあげようという
      ボクの優しさ。ボクってなんて優しいクマなんだろう。感動したっ!」

「…………」


モノクマは勝手に一人で盛り上がっているが、KAZUYA達は無感動に眺めていた。


霧切「でも、ドクターは来られないわよね。ここを動く訳にはいかないのだから」


目で指し示したのは横たわる山田である。不二咲の時とは違い、本当に昏睡状態なのだ。


モノクマ「その点についても抜かりありません!」


モノクマが――嫌な笑みを浮かべた。


K(何だ?)ゾッ

石丸「そもそも、西城先生は裁判に出席出来るのだろうか? 長時間ここを離れるのは……」

モノクマ「だから、そのための用意だって!」


モノクマが手を叩くと保健室の扉が開く。そして一人の見覚えのない人間が入ってきたのだ。


「…………」

苗木「えっ……?! だ、誰だっ?!」

不二咲「女の人……?!」

K「!!!」


彼女――胸や背格好からして女だろう――はモノクマの顔が描かれたマスクで顔を隠している。

マスクからはみ出た髪は長い黒髪であり、ザンバラで長さが揃っていない。
白い看護婦の制服は彼女が医療従事者であることを暗に示していた。


K(まさか……まさかまさかまさか、まさかッ?!)


全身から嫌な汗が噴き出る。顔は見えないが、顔こそわからないが、
その体格や歩き方や雰囲気は彼の知るある人物に酷似していた。

かつて、彼がこの学園の保健室に務めていた頃に助手をしていた人物――


K「君は……」

「…………」

モノクマ「ああ、無駄だよ。彼女は一切喋らないから。捕まえて締めあげても意味ないからね?」

石丸「何者なのだ!」

モノクマ「見てわかんない? 君よりよっぽど腕の良い看護婦さんだよ。もし先生がいない間に
      山田君の容態が急変したらちゃんと適切な処置をしてくれるから安心ですね!」

霧切「信用出来るのかしら? 隙を見て毒でも注射しないと断言出来るの?」

セレス「同感です。西城先生を上手いこと連れ出してわたくしを殺すつもりではないでしょうね」

モノクマ「そこはボクの日頃の行動を信頼して頂くしかない訳ですが」

苗木「ふざけるなよ! お前なんて信用出来る訳ないだろ!」

モノクマ「ショボーン。ボクがその気になればオマエラとっくの昔に
      全員死んでるのに、それはあんまりではないですかね」

モノクマ「なら山田君におかしなことをしない証拠に、そこの監視カメラの映像を
      オマエラの電子生徒手帳に送ってもいいよ。そこまですれば十分でしょ!」

石丸「しかし、彼女は本当に適切な処置が出来るのかね? 看護婦の可能な医療行為外では……!」

K「……それは問題ない」

不二咲「先生?」

K「…………」

K(もし彼女の正体があの娘ならば、彼女はただの看護婦などではない……)

K(かつて『超高校級の保健委員』と呼ばれた、彼女の技術は既に通常の医師レベルに達している――)


KAZUYAはジッと正体不明の女性を見つめるが、モノクママスクの女は何も反応をしない。
何故彼女がモノクマの手先に? 同じ医療を司る人間なのに一体何故? 心で問いかけても
当然ながら答えはなく、その目に今何が映っているかもわからない……。


混乱する頭を理性で抑え、とりあえずKAZUYAは彼女の正体について伏せることにした。
自分でもわからないことを生徒達に言っても仕方がない。


K「俺は相手を見ればその相手の実力がわかるんだ。彼女は間違いなくその道のプロと言える」

K「大体、手術はもう済んだ。もしこれから山田の容態が急に悪化したとして、我々に
  出来ることは限られている。……俺でも彼女でも行う対処はそう変わらんのだ」

苗木「先生がそう言うなら、そうなのかな?」

霧切「電子生徒手帳に監視カメラという項目が出来ているわ。山田君の様子はこれで見られるわね」


渋々だが、一同が納得しかけたところにセレスが割って入った。


セレス「まだですわ。わたくしの安全はどうなるのです?」

モノクマ「だーかーらー、大丈夫だって! モノクマ学園長を少しは信用しなさいってもう!」

苗木「お前なんて信用出来る訳……!」

K「……裁判までは信用してやってもいい」

石丸「先生っ?!」

苗木「本気ですか?!」

K「安広については、なるべくそこの彼女と二人きりにならないよう配慮しよう。それでいいか?」

セレス「まあ、そういうことでしたら……」

K「どの道、他に選択肢などない。俺は裁判に出席させられるのだ。……嫌だと言ってもな」


諦念が滲むKAZUYAと未だ納得の行っていない苗木達の顔を見回してモノクマは嘲る。


モノクマ「ご覧よ、この物分かりの早さ! これが大人の処世術ってヤツ!!」

モノクマ「キミ達今時の子供は何かあるとすーぐ不満を言ったり駄々をこねるけど、それで
      状況が良くなったことってある? その時間を有効的な何かに使うべきじゃない?」

石丸「確かに、その通りではあるが……」


……KAZUYAは成熟した大人だ。肉体だけでなく精神も。

故に生徒達と比べいつも判断が早い。その判断の大半は自分を犠牲にすることが多いが、
このように仕方のない状況に置かれた時もその判断の早さが曇ることは全くなかった。


K「安広は裁判で葉隠を糾弾する役割がある。殺されはしないだろう。山田に関しては
  不確実だが信じるしかない。他に打てる手など俺達にはないのだから……」

K「もし山田に何かあった時は、俺が山田を殺したものと思って好きなだけ責めてくれていい」

不二咲「そ、そんなこと……!」


だが、生徒達もいつまでも子供ではなかった。何より彼等には確かな絆があったのだ……!


苗木「責めたりなんてしないですよ!」

石丸「当たり前です! 西城先生はいつも限られた選択肢の中から
    僕達にとって最善のものを選ぼうとしてくれているのですから!」

霧切「こちらが嫌だと言ってもモノクマが言い出したら拒否権なんてないものね」

不二咲「今は、出来ることをやろうよ。悩んでいても、時間を無駄にしてしまうだけだし」

セレス「……いつもいつも西城先生に泥を被らせる程、わたくし達も子供ではありませんわ」


珍しくセレスもKAZUYAの味方をした。Cランクに上がったからだろうか。それが思いのほか
KAZUYAを勇気づけてくれたが、疲れ切っているからかすぐにまた気分は沈み込む。


K「……すまん」

K(ありがとう……)


この学園に来てからこれで一体何度目だろう? KAZUYAは申し訳なさげに目を伏せた。


ここまで!

最近裁判以外めっきり本筋書いてなかったのでリハビリも兼ねて
次回から捜査編スタートです。それではまた来週~


― 保健室 PM1:00 ―


『ピンポンパンポ~ン。これより一定の捜査時間の後、学級裁判を行います』


K「いよいよか……」


昼食を終え集まった生徒達の顔に緊張が浮かぶ。今日この時こそが、モノクマの約束した時間であった。

モノクママスクの女を見た十神は捕らえて尋問するようにという至極まっとうな主張をしたが、
下手に手を出してモノクマを怒らせては不味いと全員から説き伏せられ、今も不機嫌な顔をしている。


苗木「また始まるんだ。あの時間が……」

霧切「やらなければ生き残れないわ」

大神「裁判、か……」

十神「…………」

モノクマ「はいは~い。皆さんお待ちかねの捜査時間ですよ~!」

江ノ島「別に全然お待ちかねじゃないけどね」

モノクマ「それではお約束のモノクマファイル~」

苗木「どうせ肝心なことは何も書いてないんだろ?」

モノクマ「もうん! 苗木君、ボクに冷たすぎー! とりあえず読んでみなよ」

K「どれ……」


全員が電子生徒手帳を取り出し、モノクマファイルに目を通す。


霧切「犯行時刻は三日前の夜9時半から10時の間。被害者は山田一二三。額に固いもので
    殴られたような傷痕あり。右太ももに針でつけたような小さな穴がある……」


コトダマGET!

【モノクマファイル】:
  犯行時刻は三日前の夜9時半から10時の間。被害者は山田一二三。
 額に固いもので殴られたような傷痕あり。右太ももに針でつけたような小さな穴がある。
 被害者は娯楽室の奥に仰向けに倒れていた。特に娯楽室内は荒らされてはおらず、
 血痕は山田の体周辺にしかない。床には何らかのガラスの破片が散らばっている。


十神「前回よりは幾分マシだな」

K(……)

石丸「先生! 捜査を始める前に提案が」

K「言ってみろ」

石丸「効率良く捜査を進めるために班決めをすべきだと思います!」

K「そうだな」

十神「俺は参加せんぞ。一人でやらせてもらう」

桑田「聞く前からわかってるっつーの……」

江ノ島「アタシも面倒だからあんた達に任せるわー。ギャルに捜査とかムリっしょ?
     あんた達アタシの代わりに頑張ってよ。それじゃーねー♪」


十神と江ノ島はマイペースに食堂を出て行くが、今更それに腹を立てる者はいない。


腐川「あ、びゃ、白夜様……」

K「どうした?」

腐川「……別に。何でもないわよ」

舞園「腐川さんも私達と一緒に捜査してくれるんですね? 嬉しいです!」

腐川「何でもないって言ってるでしょおおお」キィィ!

K「では石丸からの提案通り、班を決めたいが……」

桑田「つってもどーせいつもと同じメンバーじゃねーの?」

舞園「そうだ。では折角ですしクジで決めませんか?」


大和田「いいんじゃねえか? たまにはな」

腐川「そうね。どうせあたしと組みたい人なんていないだろうし、クジでいいわよ」

朝日奈「あ、私はさくらちゃんの所に行っていいかな? 正直、捜査とか
     よくわからないし、さくらちゃんと一緒に葉隠を見張ってるよ」

大神「ウム。我も頭を使うのは得意ではないゆえ、そうさせてもらいたいが」

不二咲「じゃあ、残りは八人だから3、3、2がいいかな?」

舞園「ちょっと待ってて下さい」カキカキ


その結果――


霧切「…………」

K(……ウーム)

苗木(こ、これは……)

霧切「…………」

石丸「霧切君! 腐川君! よろしく頼むぞ!」

腐川「なんでよりによってあんたと同じグループなのよ……?!」グギギ

石丸「普段はあまり話さないメンバーだしちょうど良い! これを機に友好を深めようではないか!」

腐川「いちいち声が大きいわね……! あとその熱苦しい顔を近付けんじゃないわよ!」

石丸「それはすまなかった!」

腐川「だから声が大きいって言ってるのに……! あんたって学習能力ないの?」

不二咲「ええーっと……」オロオロ

朝日奈「あはは。ちょっと大変そうだね……?」

大神「霧切よ、これも修行だ」

霧切「…………」


先程から一言も発していない霧切の眉間には、大きなシワが寄っている。


舞園「ご、ごめんなさい……まさかこんなことになるなんて……」

苗木「舞園さんのせいじゃないよ……」

桑田「なんつーか、事故だよなこれ……」

大和田「……おう、事故だ事故」

不二咲「大丈夫かなぁ……」

石丸「さあ、いざ捜査だ! 霧切君、腐川君、行くぞ!」

腐川「なにリーダーぶってんのよ! 」

霧切「…………」スクッ

K「あ、霧切」

霧切「…………」

K「その、頑張れ」

霧切「……わかってるわよ」ハァ


スタスタスタスタ……


石丸「ム、霧切君? 待ってくれ! 先に行かないでくれ!」

腐川「あ、あたしをおいていくなんてやっぱり邪魔なのね、そうなのね?!」


溜め息をつきつつ、KAZUYAは二人の肩をガシりと掴んだ。
気のせいか少しばかり目が据わっている。


K「二人共彼女の邪魔をしないように静かに、くれぐれも静かに!捜査に集中するんだ。いいな?」

石丸・腐川「……はい」


        ―    捜    査    開    始    ―


 ○1班(苗木・桑田・不二咲)


苗木「えっと、じゃあ改めて……二人共よろしく」

桑田「いやー、無難なメンバーで良かったわ」

不二咲「よろしくねぇ」

苗木「まずどこから調べようか?」

桑田「フツーは現場だろーけど今は霧切達がいるだろうしなぁ」

不二咲「もう一度セレスさんに話を聞いてみるのはどうかな?」

苗木「そうだね。じゃあ保健室に行こう」



               ◇     ◇     ◇


K「苗木達か」

苗木「もう一度セレスさんの話が聞きたくて」

セレス「残念ながらわたくしからお話出来ることはもうありませんわ。
     話せることがあるならとっくに話しています」

桑田「まあ、そうだよなぁ……」

不二咲「セレスさんは娯楽室から出てきた葉隠君を見てるんだもんね……」

セレス「葉隠君で決まりですわ。調べれば調べる程その確信を得るだけではないでしょうか」

苗木「まあ、その場合はその場合で葉隠君に認めて貰うだけだよ。あと、これは……」

K「安広が刺されたナイフだな。山田の件とは関係ない可能性もあるが、一応調べたらどうだ?」


桑田「凶器は基本だしな」


コトダマGET!

【ナイフ】:護身用に見えるやや小振りのナイフ。セレスが刺された時のもの。


K「カルテはもう出来ている。持っていくといい」

不二咲「ありがとうございます!」


コトダマGET!

【山田のカルテ】:KAZUYAが作成した山田のカルテ

『額に打撃によると思われる広範囲の裂創(肉が裂ける傷)あり。腫れ方にややムラがある。
 頭蓋骨骨折並びに硬膜下血腫を発症。開頭手術により血腫は除去済み。現在も昏睡状態』

コトダマGET!

【セレスのカルテ】:KAZUYAが作成したセレスのカルテ

『刃物による腹部刺創である。傷ついた小腸を10センチ切除して吻合する。
 止血処理を行い、臍(さい:ヘソのこと)の横2センチ程を縦に12針縫合済み』


苗木「こんな所かな」

桑田「で……あー、次はどこ行けばいいんだよ?」

K「ならば立ち寄りついでに俺の頼みを聞いてくれんか?」

苗木「何ですか?」

K「化学室に行ってこの薬品を持って来て欲しい」

不二咲「えっと、薬品ですね? わかりました」

K「早めに頼むぞ」


 ○2班(石丸・霧切・腐川)


霧切達三人は山田が倒れていた娯楽室の捜査に当たっていた。


霧切「…………」

石丸「ム、これは何だ?! 事件の重要な証拠では?!」ヒョイ

腐川「あ、あんた……! 勝手に触ってんじゃないわよ! 位置が重要かもしれないじゃない!」

石丸「し、しまった! 現場保全は最重要だというのに!」

腐川「足引っ張ってんじゃないわよ!」

石丸「すまない! こんなことなら捜査の仕方も勉強しておけば良かった……!」

腐川「そんなことどうやって勉強すんのよ……」


実は石丸の父親は警察官なのだが、腐川は当然そんなことは知らない。


霧切「…………」イライラ

霧切(血痕の一つが不自然に掠れている。上に何かがあった? 或いは誰かが踏んだのかしら……)


コトダマGET!

【掠れた血痕】:上に何かが載ったような掠れた血痕。


次に霧切は雑誌ラックに目をやる。


霧切(逆さまになっている雑誌がある。いつから?)


手に取ってパラパラとページをめくった。最後のページを見て彼女は目を見開く。


霧切「これは……」

石丸「霧切君、それは何かね? こ、これはもしや血文字……?!」


霧切「ダイイングメッセージかしら」

霧切(……山田君の指に血はついていないわね)

腐川「! ダイイングメッセージな訳ないわよ! だ、だってこれトガミって書いてあるじゃない!」

石丸「十神君が犯人だったのか?! そんな……!」

腐川「陰謀よ! 誰かの陰謀だわ!」

霧切「……二人共、静かにしてくれないかしら」

石丸「す、すまない」

腐川「白夜様……」


コトダマGET!

【血文字の書かれた雑誌】:
 雑誌ラックに逆さまに入っていた雑誌。最後のページには血文字で『トガミ』と書かれている。


 ○3班(舞園・大和田)


大和田「で、俺は舞園と二人か」

舞園「よろしくお願いしますね、大和田君」

大和田「つってもよ、俺は捜査なんて全然わかんねえぞ? 舞園に任せていいか?」

舞園「わかりました。そうですね……まずは容疑者である葉隠君の部屋を調べてみませんか?
    もし彼が犯人なら、凶器とか血痕とかそういった致命的な証拠があるはずです」

大和田「だな。じゃあ行くか」


葉隠の部屋には、葉隠の見張りをしている朝日奈と大神がいた。


朝日奈「あ、舞園ちゃんに大和田」

大神「捜査か」

大和田「ああ。葉隠が犯人ならやっぱそいつの部屋を調べねえワケいかないからな」

舞園「ちょっと失礼しますね」

葉隠「俺は犯人じゃねえし、勝手に開けるなって……!」

大和田「ああ?! 犯人じゃねえなら問題ねえだろ!」ギロリ

葉隠「あう……」

舞園「ここに少しだけ返り血のついたシャツがありますね」

大和田「おい、葉隠ェ……!」

葉隠「い、陰謀だべ! 俺を陥れるために真犯人がだな!」

大神「三日前からずっとここにいるお主の前で仕込んだということか?」

葉隠「…………」

舞園「他には、えーと……」

舞園(これは……メモ? 一体なんでしょうか。今回の事件には関係ない気もしますが、
    一応持っていきましょう。他の人が見たらわかるかもしれないし)


引き出しの奥から何やらやたら生徒の名前が書かれた紙が出てきた。
しかし、これは事件には関係ないようだ。


大和田「……見つかったのは服くらいか」


コトダマGET!

【葉隠の部屋】:部屋には血のついたシャツがあった。他に目ぼしいものはない。


ここまで。

コトダマが多いので捜査編が想像以上に長引いて苦戦中。


あああ、やっちまったあああああ

二周年記念に何かやろうと思ってたのに、バッチリ忘れてたー!
もういいや……

二周年おめでとう……
来年中には終わらせたいね。


すみません。遅れましたが今週はお休みです。
8日来れたら頑張ってきます

本当は記念で絵とか描きたかったんだけど、
最近多忙の極みなのでムリかなー…

質問・・・
①ドクターKのスーダン2や絶女とかは出すのですか?
②ドクターKがいるって事は、トワイライト殺人事件は回避されているのですか?
③七海(本物)とかになるんでしょうか?
④絶女没案・・・不二咲母や舞園妹とかって、出るんですか?
⑤苗木の両親とかは生存しているのですか?
⑥全員(黒幕含む)が死亡しなずに、学園から出られた場合、苗舞endとか、苗霧endとかになるんですか?


               ◇     ◇     ◇


桑田「こんなの一体なんに使うんだろーな?」

苗木「治療には関係ない薬品ばかりだね。石丸君ならわかるかな」

不二咲「もしかして、捜査に使うんじゃないかな……」

桑田「捜査ァ?」


話しながら、苗木達1班のメンバーはKAZUYAに頼まれた薬品や器具を持って保健室に入った。

ガラッ。


桑田「オーッス。頼まれたモン持ってきたぜ」

K「助かった。それでは早速作るか」

セレス「作る? 何をですか?」

K「捜査に役立つ物さ」

苗木「捜査に役立つ?」

K「まあ、すぐに出来るからそこで待っていろ」


ハカリで量を調整し、ビーカーに薬剤を入れKAZUYAは手慣れた様子で調合していく。
いや、実際手慣れているのだ。何故なら薬品の調合も彼の専門分野の一つであるのだから。


K「……ほら、出来たぞ」

苗木「えーと、ただの透明な液体にしか見えないんですけど」

不二咲「もしかして、ルミノール溶液かな?」

K「その通り。よくわかったな」


ビーカーを手に取りながら、KAZUYAは生徒達に説明する。


K「ルミノールは3-アミノフタノール酸ヒドラジドというアルカリ性の試薬の俗称だ。
  それに無水炭酸ソーダと過酸化水素水を加えたものが俗に言うルミノール溶液に当たる」


苗木「へぇ、そうなんだ(どうしよう、何を言っているのか全然わからないぞ……)」

セレス「まあ……! 西城先生はそのような物まで調合出来るのですね」

K「必要な薬剤と知識さえあれば作ること自体はさほど難しくない。理系の人間にとっては
  よく知られている基本的な実験内容だ。……最も、普通の人間はそうそう知らんだろうがな」


ギラリとKAZUYAの目が光る。知識の有無はこの空間において勝敗を決する重要なファクターだ。
そしてその知識と経験を誰よりも多く持っているこの男こそ勝負の鍵なのである。


桑田「なんだっけそれ? なーんかどっかで聞いたことあるような」

苗木「えーっと……あ、わかった! 警察が捜査の時に使う液体ですよね?」

K「そうだ。ルミノール反応、という言葉の方が馴染みがあるかもしれんな。見てみろ」


KAZUYAはセレスが刺されたナイフを手に取り、切っ先に少し液体を付ける。すると、


桑田「おぉ?! なんかうっすら光ってる?!」

K「簡単に説明すると、ルミノール溶液は赤血球に含まれる鉄や銅(ヘミン)に化学反応を起こし
  付着するとこのように青白く発光する。これにより捜査の見落としをなくすことが出来る訳だ」

不二咲「わぁ、凄い!」

苗木「やった! これがあれば捜査がだいぶ楽になるぞ」

K「この霧吹きに入れて使うといい。量が限られているからあまり使い過ぎないようにな」

「はーい!」


コトダマGET!

【ルミノール溶液】:
 KAZUYAが調合した推理モノではお馴染みの薬品。血痕のあった場所に吹きかけると薄く発光する。


苗木「あ、あとこっちの薬は何ですか?」

K「これは塩酸キナクリンという薬品だ。ルミノール溶液と同様血液に反応して
  発光するが、こちらはY染色体……すなわち男の血液にしか反応しない」


桑田「マジかよ?! そんなことまでわかんの?」

K「ルミノール反応よりは知名度は低いかもしれないがな。これも化学捜査では基本だぞ」


コトダマGET!

【塩酸キナクリン】:血液中のY染色体に反応して発光する化学薬品。血痕から性別が割り出せる。


苗木「先生って本業はお医者さんじゃ……」

K「知り合いに監察医がいてな。実際俺も何度か捜査に協力したことがある」

桑田「ほとんどプロみたいなもんじゃねーか……」

不二咲「じゃあ、この液体はなんに使うんですか?」

K「それは……ちょっとな。念のためというやつだ。使う機会がなければ良いが」

「?」

K「そんなことより、捜査の時間は限られているぞ。早く現場を検分した方が良い」

苗木「は、はい」


KAZUYAは少し目を伏せると、パンパンと手を叩き苗木達を保健室から追い出した。


苗木「…………」チラ


去り際に、苗木はKAZUYAの机の上に置かれたその瓶を見る。ラベルにはよく見慣れた名前。


苗木(ヨウ素液って小学校の理科の実験とかで使うやつだよな……一体何に使うんだろう?)


コトダマGET!

【ヨウ素液】:何の変哲もないただのヨウ素液。


               ◇     ◇     ◇


そのまま苗木達の班は現場と目される三階の娯楽室に向かった。


桑田「よう。そっちはどんな感じだ?」

霧切「大体見終わったわ。あなた達もよく見ておいた方がいい」

腐川「安心しなさいよ……あんた達にもわかるくらい怪しい物だらけだから。フフフ……」

不二咲「床にガラスが散乱してるねぇ」

石丸「まったく! 折角僕が掃除をしていた最中だったと言うのに!」

桑田「掃除っていやぁ……」

苗木「そういえば今って掃除週間だったね……」


数日前のことである。


石丸『今日から一斉掃除週間を開始する!』

『ハァ?』

石丸『みんな、自分達の生活スペースである寄宿舎は掃除しているが、神聖な学び舎である校舎部分を
    ほとんど放置していただろう? 久々に教室に行ったら部屋の隅に埃が積もっていたぞ!』

石丸『ああ、嘆かわしい……僕が戻ってきたからには、きちんとせねば!
    という訳で、これから一週間みんなで協力し校舎を一斉に掃除する!』


確かに石丸の指摘通り、彼等は厨房や食堂、大浴場など共通のスペース以外はほとんど掃除を
していなかった。それすらも、以前に比べて著しく頻度が減っていた。度重なる事件やアクシデント、
続発する病人の看病に人員を割いていたり、時間はあっても心の余裕がなかったからだ。

やっと落ち着いてきて、心の余裕が生まれたため最初は全員積極的に掃除していたのだが……
だんだん飽きてきて石丸の目が届かない場所は手を抜いていたのはここだけの話だ。


霧切「……娯楽室の担当は別の人ではなかったかしら? それに、確かもう終わっていたはずだけど」


石丸「ウム。実はな、みんな掃除が下手だから最後に必ず僕が確認して仕上げを行っているのだよ!」

苗木「そうだったの?!」

腐川「下手で悪かったわね……あたし的にはこれでも十分綺麗よ……」

桑田「俺はむしろサボらなかったことを誉めてほしいぜ」

石丸「わかっている……! 文句も言わず参加してくれているだけでも
    有り難いから、あえてそれ以上は何も言わなかったのだ!」


以前の石丸なら担当を呼びつけてちゃんと出来ていないことを叱っただろうし、
掃除の大切さについて延々説教していただろうが、最近は流石にこの男も諦めてきたようだ。


苗木(……この感じだと何人かはかなり手を抜いてたな。言ってくれれば手伝ったのに。
    なんだか悪いことしちゃったなぁ。僕ももっと気付いてあげないと)

不二咲「知らなかった……。次からは僕も手伝うねぇ」

苗木「うん。遠慮とかしなくていいから」

石丸「すまない。だが、僕も少し細かすぎたかもしれないし程々にせねばな!」

霧切「それがいいわね。何より今は、掃除よりも捜査について集中して頂戴」

桑田「ほいよ。で、なにから見りゃいーんだよ」

霧切「ねえ……この砕けたガラスはどこから来たと思う?」

桑田「窓じゃねーし、ビンかなにかじゃねーの?」

腐川「何の瓶かが重要なんでしょ……!」

不二咲「娯楽室なら、恐らくアレじゃないかなぁ?」

苗木「アレって?」

不二咲「ほら、確かここにはモノクマのぬいぐるみが入った飾り瓶があったでしょ?」

苗木(ああ、そういえばそんなのあったな)


言われて苗木も思い出す。頻繁に娯楽室を訪れている訳ではないので
失念していたが、確かにそんなものが棚の上に置いてあった。


石丸「あれは中身に対して瓶の口が小さく、あの大きさの物を中に入れるのは不可能だ。
    即ち、ボトルシップのように長いピンセットを使って中で組み上げたに違いない!」

霧切「その推測は正しいと思うわ。モノクマはモノクマボトルと呼んでいたけど」

桑田「おー、これか。そういやこんなんあったな」


桑田が指し示したのはビリヤード台の上に並べられた四つのモノクマボトルだった。


不二咲「あれ? これって確か棚の上に置いてなかったかな?」

腐川「犯人がわざわざ移動させたって訳……?!」

苗木「犯人が? 一体何のために……」

石丸「いや、移動させたのは僕だ」

(お前かよ!)


その場の全員が心の中で突っ込んだ。


石丸「棚の上の埃を拭こうと思って事件の晩に移動させたのだ。その後戻すつもりだったが、
    掃除に夢中になっていたら時間になってしまったのでやむなくそのままにしてしまった」

桑田「紛らわしいことすんなよな!」


言いながら、桑田がボトルを手に取って眺める。


霧切「気を付けて。中の模型を綺麗に見せるために薄めのガラスで
    出来ているようなの。落としたら多分割れるわよ」

桑田「わーかってるって」


苗木(モノクマボトルか。割れてるってことは事件に何か関係あるのかな?)


コトダマGET!

【モノクマボトル】
 ボトルシップのように中にモノクマの模型が入ったボトル。石丸が棚の上からビリヤード台に
掃除のため、一時的に移動させていた。ガラスが薄いので扱いには注意が必要。


不二咲「えっと、このボトルは全部で六本あったはずだよね?」

桑田「数まで覚えてんのか? すげーな」

不二咲「えっとね、そういう訳じゃなくて……」

腐川「フ、フン。チェスでしょ……?」

苗木「チェス?」

腐川「このボトルの中の模型はそれぞれチェスの駒を持っているのよ。チェスはポーン、ルーク、
    ナイト、ビショップ、クイーン、キングの六種類の駒があって、ここには四つしかないわ」

石丸「つまり、事件の晩だけで二つボトルが割れた訳だな!」

霧切「そうね。床に二つ、ナイトとキングの模型が落ちていることから見てそれは間違いない」

苗木「……二つか。並び順は棚にあった時と同じ?」

石丸「ウム、ちゃんと順番通りに並べたからな」


ビリヤード台にはポーン、ルーク、ビショップ、クイーンの四つが置いてあり、
ルークとビショップの間には丁度ビン一つ分ほどの空間がある。


苗木「ということは、左から三番目がナイトで右端がキングってことだね」


コトダマGET!

【なくなった二つのボトル】
 モノクマボトルはそれぞれチェスの駒を表しており、ポーン、ルーク、ナイト、ビショップ、
クイーン、キングの順に並んでいた。割れていたのはナイトとキングで床にその模型が落ちている。
娯楽室の床に散乱するガラスの破片もモノクマボトルの物と思われる。


ここまで。コトダマの数的にあと二回位で捜査編は終わるはず。
早く書き溜めしてある裁判に入りたい……11月中に行けるかどうか


スーダンは構想はしてるんですが、今のペースだと正直実現するか怪しいです
とりあえず今はこれを完結させることに注力致したいと思います

トワイライトは起こっているでしょうね。Kが赴任したのは最近ですし
それ以外のことは全て選択したルートによります。


今週はお休み。また来週


桑田「じゃあ次は死体もとい山田が倒れてた辺りだな」

苗木「縁起でもないこと言わないでよ……」

桑田「でもあれを見たらなぁ……」

苗木「……まあ、うん」

不二咲「……だねぇ」


なるべく見ないようにしていたが、山田が倒れていた場所にチョークで
人型の線が引かれていたのだ。まるで本物の殺人現場さながらである。


石丸「僕が描いたのだ! 流石の僕も警察の捜査現場がどんな感じかくらいは
    知っているからな。どうだね? わかりやすいだろう?」

不二咲「う、うん。わかりやすいよ。ありがとう……」

苗木(……確かにわかりやすいけどさぁ)

腐川「こういう所は無神経なままね……」

苗木「ふ、腐川さん」


ボソリと呟く腐川を苗木が制した。今はそんなことよりも捜査が大事なのだ。
縁起が悪かろうが不謹慎だろうが捜査しやすいに越したことはない。


霧切「……思えば、倒れていた山田君を見たのはあなたとドクター、
    そして大和田君の三人だけよね? 何か気付いたことはない?」

石丸「ウーム。すぐにCPR(心肺蘇生)に取り掛かってしまったのであまりよくは見ていないが、
    特におかしなことはなかったように思う。山田君は額から血を流し仰向けに倒れていた」

霧切「アナウンスのタイミングは? 何人目で流れたの?」

石丸「ほとんど同時に飛び込んだからな。どのタイミングで流れたかまでは……力になれずすまない」

腐川「あんたって本当役に立たないわね……!」

苗木「まあまあ、そう言わずに……」


霧切「いいわ。別の観点から攻めるだけよ」


元々さして期待はしていなかったのか、霧切はファサリと髪をかきあげ顎に手を当てる。


不二咲「ねぇ……これ、なんだろう?」

苗木「あ、それ僕も気になってたんだ。なんでこんなものがこんな所に落ちてるんだろうね?」

桑田「なんだぁ? マスク?」

腐川「あたしみたいな不細工なマスクですって……?!」

桑田「言ってねーし!」


山田が倒れていたすぐ付近に、モスグリーン色の奇妙なマスクが落ちていた。


不二咲「プロレスとかで悪役レスラーがつけていそうなマスクだねぇ」

苗木「顔を隠してた? 誰が何のために?」

霧切「一つだけ心辺りがあるわ」

苗木「え、本当?!」

霧切「ただ確認しないと。少しの間私達が預かってもいいかしら?」

桑田「おう。いまはなんの変哲もないただのマスクってことしかわからないしな」


コトダマGET!

【謎のマスク】:悪役レスラーが付けていそうなモスグリーン色のマスク。何故現場に……?


不二咲「あとは特にないかな?」

霧切「これを見せておくわ。セレスさんから証言を聞いた後ドクターから預かったの。
    山田君のズボンのポケットに入っていたそうよ」


苗木「メモだね。なになに……?」


メモにはこう書かれていた。

『脱出口らしきものを見つけた。まだ確証が持てないので、誰にも言わず9:30に一人で
 娯楽室に来てほしい。集合には少し遅れるかもしれないので、誰かにそう伝えておくこと』


苗木「これ……! 呼び出し状だ!」

桑田「山田は誰かから呼び出されてたのか!」

腐川「どうせ葉隠でしょ。あいつがやったんだから……!」

苗木(本当に葉隠君が書いたのかな? それにしては字が少し汚いような)


コトダマGET!

【呼び出し状】:
 山田のズボンのポケットに入っていた呼出状。汚いクセ字で以下のように書かれている。
『脱出口らしきものを見つけた。まだ確証が持てないので、誰にも言わず9:30に一人で
 娯楽室に来てほしい。集合には少し遅れるかもしれないので、誰かにそう伝えておくこと』


苗木「ここの捜査はこんなものかな」

石丸「では、ガラスの破片は危ないから僕が拾っておこう!」

霧切「……待って」

石丸「何かね?」

霧切「気になることがあるの。破片とモノクマ人形を全て集めてくれないかしら」

石丸「了解した」


石丸と不二咲、苗木の三人が協力して娯楽室の床を綺麗にする。


霧切「ありがとう。私は調べることがあるから少し離れるわ。
    石丸君と腐川さんは二人でここを見張っていてくれないかしら?」


腐川「そ、そんなことを言って邪魔なあたし達を置いて苗木達に合流する気ねそうなのね?!」

石丸「霧切君がそうしたいと言うのなら仕方あるまい。悲しいが……とても悲しいが!」

霧切「…………」

不二咲「えっと、霧切さん……」


ハァ、と霧切は困ったように溜め息を吐いた。


霧切「……あなた達にお願いするわね」

苗木「あ、うん」

桑田「おう」


               ◇     ◇     ◇


大和田と舞園は男女に別れそれぞれ生徒達の部屋を調べていた。


大和田「山田の部屋も含めてかたっぱしから見てったが、何もなかったぜ。
     チッ、十神とか怪しいのによ」

舞園「女子の部屋も特に不審な物はありませんでした。まあ、
    私は素人なので見過ごしている可能性もありますけど」

大和田「次はなにをすりゃいいんだ? 現場でも行くか?」

舞園「現場も大事ですが、霧切さんや苗木君の班も見ていますし、
    私達は皆さんのアリバイや証言をまとめるのはどうでしょう?」

大和田「おう、そうだな。全員で同じ場所を見ても仕方ねえし、あいつらが
     現場から離れられないなら他のヤツが動き回る必要があるしな」


頷いてから、大和田は感心したように呟く。


大和田「……あれだ。やっぱ女は細かいトコに気が回るな。俺はさっぱり頭が回らなくてよ」

舞園「そんなことないですよ。私なんて西城先生や霧切さんの真似をしているだけです。
    でもあくまで真似ですから、捜査は自信がないし証言を取るくらいなら誰でも出来ます」

大和田「マネできるってことはそれだけ相手のことをよく見てるってことだろ」

舞園「……そうなんですかね?」

大和田「そうだろ? ……ま、俺は頭脳労働はムリだってハナから
     割り切ってるから代わりに体の方を使わせてもらうけどな」


話しながら、二人は再び葉隠の部屋に戻った。


葉隠「ま、また来たな?! おめーらいい加減に……!」

大和田「黙れ」

葉隠「……黙るべ」シュン

舞園(本人は謙遜しますけど、大和田君はこういう時とても頼りになりますね)

朝日奈「あれ、二人共どうかしたの?」

大神「忘れ物でもしたのか?」

舞園「改めて事件当時の皆さんの動きをまとめようと思って。当日のことを聞かせてくれませんか?」

朝日奈「当日かぁ。私は舞園ちゃんとずっと一緒だったから特に変わったことはないと思うよ」

朝日奈「舞園ちゃんの部屋にいたら血相変えた桑田が飛び込んできて、事件が起きたからみんなを
     集めて保健室に集合だ!って言われたんだ。それで、女子の部屋を順番に回って……」

朝日奈「腐川ちゃんは部屋にいて、寄宿舎のホールで霧切ちゃんを待ってから保健室に行ったんだ。
     保健室の前でちょうど今来たところだってさくらちゃんと十神と合流して、中で待ってたら
     ジャマになりそうだからみんなで廊下で待ってた。少し後に江ノ島ちゃんも来たかな」

舞園「私もその場にいたので間違いないです」


コトダマGET!

【朝日奈の証言】:
 舞園の部屋にいたら血相を変えた桑田が飛び込んできた。全員を集めるため、女子の部屋を
順番に回り、まず部屋にいた腐川と合流。その後寄宿舎のホールで霧切と合流し、保健室の前で
十神・大神と遭遇した。その後、廊下で待機中に江ノ島が合流した。


大和田「大神は?」

大神「部屋にいたらアナウンスが聞こえて来たので、もしやまた事件が起きたのかと思い
    自分から保健室に向かったのだ。我のすぐ後に十神がやって来た」

朝日奈「私達とは入れ違いになっちゃったんだね」

大和田「で、葉隠は……」

葉隠「俺はずっと部屋に篭ってたぞ」

大和田「ま、信用できねえけどな」

葉隠「じゃあなんで聞いたんだべ?!」

舞園「では次の場所に行きましょうか?」

大和田「おう。ジャマしたな」

葉隠「あれ、無視? 無視? 舞園っちまで無視するんか? えぇ~……」


― 物理準備室 ―


苗木「えーと、霧切さんに頼まれたことは……」

不二咲「拾った破片やモノクマ人形と無事なモノクマボトルを比較することだったね?」

苗木「じゃあ、まずはモノクマボトル同士の重さを量るね」


苗木が持ってきたモノクマボトルを順々にはかりに載せていく。


桑田「お、中の人形は微妙に違うデザインなのに全部同じ重さなんだな?」

不二咲「不思議だね」

モノクマ「当然だよ!」ピョーイ

苗木「わ、モノクマ!」


例によってどこかからか飛び出たモノクマが会話に割って入ってきた。


モノクマ「このモノクマボトルはボトルシップのように実に繊細な技術と根気良さで
      作られている芸術品であって、当然全てのボトルは同じ重さなのです!」


桑田「いや、意味わかんねーよ。芸術品でも別に重さが違ったっていいだろ……」

モノクマ「桑田君みたいなちょっとアレな子に芸術は難しかったみたいですね」

桑田「ハァ?! なんでだよ!」

苗木(成程ね。モノクマボトルが全部同じ重さなのは間違いない訳だ)

苗木「次は破片と無事なボトルを量ってみようか」

桑田「そんなの同じ重さになるに決まってるだろ。割れたって量は同じなんだからさ」

不二咲「そうかなぁ? 拾いきれない細かい破片や粒子もあるはずだし、
     元の重さから微妙に軽くなるんじゃない?」

苗木「実際に比較してみればわかるよ。じゃあ、載せるね」

桑田「どーせ同じだって」


苗木ははかりに破片類を載せた。秤皿は……


不二咲「あ、釣り合った……!」

桑田「ほら、俺の言った通りだぜ!」

苗木「…………」

苗木(――何かおかしくないかな?)

不二咲「あれ?」


釣り合ったかと思われたはかりは、三人の前でゆっくりと片方に傾いていく。

……割れた瓶の方に。


不二咲「本当にごく僅かな誤差だけど、破片の方が重い?」

苗木「えっ、でもそれっておかしくない? 何か余分なものが入ってるのかな?」

桑田「破片を拾った時にゴミも入っちまったんじゃね?」

不二咲「でも、娯楽室は掃除したばかりなのに……」

苗木「うーん……」


コトダマGET!

【秤の実験】:無事なモノクマボトルより、集めた破片やモノクマ人形の方がごく僅かだが重かった。


ここまで。あとちょっと……!

お疲れ様です。
最近寒くなってきて気温が下がりやすくなってきておりますので、
体調を崩されたりなさいませんようご自愛下さい。


うおおおおおお! 更新滞ってる合間にとんでもないビッグニュース来てた!
ダンガンロンパ3は知ってたけど、まさか新作アニメまで来るとは…

…と、言うわけで申し訳ないがお祝いSS書いたので今週もこちらはお休みとなります。ゴメンネ

苗木「えっ、ダンガンロンパ3が出るって?!」舞園「そうなんです!」
苗木「えっ、ダンガンロンパ3が出るって?!」舞園「そうなんです!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1449411042/)


>>76
いつもありがとうございます。ちょっと最近仕事が忙しくて
更新遅めですが、裁判入ったら頑張りますので…



一ヶ月くらい間が空いて申し訳ない。久しぶりに更新します。


               ◇     ◇     ◇


舞園「あの、保健室に行っても良いですか?」

大和田「あ? ああ、センセイとセレスの証言か」

舞園「はい」

舞園(それだけではないんですけどね)


彼女の手の中には、葉隠の部屋で手に入れた不審なメモがある。


江ノ島「あ、舞園に大和田じゃん」

舞園「江ノ島さん?」


保健室に入ると、長椅子に腰掛け暇そうにしている江ノ島にまず声をかけられた。


大和田「なんでここにいんだよ?」

江ノ島「なに? アタシが見舞いに来たらオカシイの?」

舞園「いえ……」


舞園は江ノ島が内通者であるという情報を教わってはいなかったが、今までの情報や
女性特有の勘の良さ、特に、同業者ならではの視点からからかなり濃い疑惑を持っていた。

すかさず大和田がフォローする。


大和田「捜査はメンドウって言ってたからてっきり部屋にいると思ってたぜ」

江ノ島「最初は部屋にいたんだけど、ヒマでさー。ま、気分転換てワケ」

セレス「わたくしへのお見舞いは暇潰しということですのね」


江ノ島「来てあげただけいいでしょ。部屋にオッサンと二人じゃ気まずいだろうし」

K「まあ、否定はしない」


セレスではなくKAZUYAが同意した。セレスは意外と神経が太いのか、或いは単に
KAZUYAに好感を持っているからかさほど気にしているそぶりはないが、女子高生と同室で
寝泊まりするKAZUYAはそうもいかない。着替えや物音一つ取ってもとかく神経を使う。


セレス「あら、西城先生は見かけによらず意外と気が回りますのよ? 特に困ることはありませんわ」

舞園「当然ですよ! 先生はそういう人ですから!」

江ノ島「いや、なんであんたが胸を張るのよ」

大和田「そういや入院第一号だったな」

舞園「西城先生はとても優しかったです♪」

K「そういってもらえると何よりだ……。それで、何か用事があったのだろう?」

舞園「あ、はい。こんなものを葉隠君の机の引き出しから見つけたので、先生に
    渡しておきます。多分今回の事件には関係ないと思いますが……」


舞園は【葉隠メモ】をKAZUYAに渡した。


大和田「なんだそりゃ?」

K「全員の名前がランダムに書かれているな。――いや、何か法則があるのか?」

舞園「わかりません。葉隠君はだいぶ前に何かを占った結果を書いたけど何を占ったか忘れたと」

K「捜査には関係なさそうだが念のために預かっておこう」

舞園「はい」


その後、二人はセレスと江ノ島から証言を得たが特に
目新しい内容もなかったためメモだけ取るとすぐ次の場所へ向かった。


大和田「じゃあいよいよ現場だな」

舞園「そうですね」


娯楽室では霧切達三人が現場を見張っている。


石丸「おお、兄弟!」

大和田「よ、俺達も来たぜ」

舞園「お疲れ様です」

腐川「べ、別にあたしは疲れるほど捜査してないわよ……」

大和田「で、なんか見つかったか?」

霧切「捜査の基本は現場から。重要な証拠を幾つか見つけたわ」


そこに、苗木達のグループも戻ってきて加わった。


苗木「あ、舞園さんに大和田君だ」

舞園「苗木君」

大和田「オメエらも来たか」

桑田「霧切、頼まれたヤツ終わったぜ」

不二咲「霧切さんが気になった通り、少しおかしな結果になったよ」

霧切「そう……」


苗木達が元通りボトルを並べる姿を見つめながら、霧切は考えている。


舞園「あ、そうだ。ちょうど皆さんが揃っているので証言を貰っていいですか?
    今全員のアリバイを洗っている所なんです」

苗木「証言だね。でも大体もう全部話しちゃったからなぁ」

不二咲「力になれなくてゴメンねぇ」

舞園「どんな些細なことでもいいんです。何か気になったことはありませんか?」

桑田「ってもよー……」

苗木「あ」

大和田「どうした、苗木ィ?」

苗木「いや、大したことじゃないんだけどね。ふと思い出したことがあって」

霧切「教えて。裁判では何が重要な証拠になるかわからないわ」

苗木「うん。お泊り会の少し前だったと思うけど、石丸君に遅刻組がちゃんと
    時間通りに来るか確認しておいてくれないかって頼まれたんだ」

石丸「ウム。人に任せるのはどうかと思ったが、あの時僕は食事当番、掃除ととても忙しかったのだ。
    そのため、たまたま通り掛かった苗木君に申し訳ないが手伝ってもらうことにした」

大和田「水くせえな。俺に頼めよ」

不二咲「大和田君も僕も同じ班だし……」

桑田「ついでに俺もな」

腐川「ムサ苦しいわね……」


ここに更にKAZUYAが加わる。石丸の班は男臭いのだ。


霧切「それで?」

苗木「遅刻組……山田君と葉隠君に聞きに言ったんだけど」


苗木は二人との会話を克明に思い出す。


山田『集合時間ですか? ええ、覚えていますとも。今日はちゃんと時間通りに行きますのでヨロ!』


苗木「山田君は時間通りに来るって言ってた。それで、葉隠君なんだけど……」


葉隠『おお、苗木っち。ちょうど良かった! 実はな、少し遅れるかもしれないから
    先生によろしく伝えといて欲しいんだべ。頼んだぞ』


舞園「……遅れるって言ったんですか?」

苗木「そう。それで理由を聞いたら……」


苗木『え? なんで遅れるの? 急いでやらないといけないことなんてある?』

葉隠『!』

葉隠『な、なんでもないべ! 期待してダメだったらガッカリするだけだからな』ウンウン

苗木『なんの話?』

葉隠『ま、もし本当だったら情報料ニ十万で教えてやるから苗木っちも楽しみにしてろって!』

苗木『はぁ……?』


苗木「今から思うと、呼出状にそう書かれていたからなんだね」

霧切「山田君は時間通り、葉隠君は遅刻。そう……」


コトダマGET!

【苗木の証言】:山田は時間通り保健室に来る予定だった。逆に葉隠は少し遅れると言っていた。


苗木「大した手がかりじゃなくてゴメン。今度は僕達が見張ってるから霧切さん達は移動していいよ」

霧切「それじゃあお言葉に甘えさせてもらうわね」

舞園「私達も行ってみましょう」

大和田「おう。でも次はどこ行くんだ? 葉隠の部屋も山田の部屋ももう調べ尽くしちまったぜ?」

腐川「全部のフロアを見て行ったら時間が足りないわよ……」

石丸「しかし、捜査とは思わぬ所から証拠が出るものだぞ」

霧切「そう、思わぬ所。まだ私達が調べていない所がある。犯行現場からさほど離れておらず、
    それでいて被害者と関わりの深い場所――ここまで言えばわかるわね?」

大和田「ア? どこだ?」

腐川「勿体ぶらないでさっさと言いなさいよ……!」

石丸「ここから近くて山田君と縁のある場所だと? 彼は勉強があまり好きではなかったようだから
    物理室は違うだろうし、図書室は漫画がないから嫌いだと言っていたな。となると……?」

舞園「美術室ですね! 山田君はよく美術室にこもって漫画を描いていました」

霧切「ええ、その通りよ」


― 美術室 ―


舞園「あれ?」

K「…………」


彼等が美術室に入ると、そこにはどこか上の空で立ち尽くすKAZUYAの姿があった。


石丸「西城先生!」

K「……あ、あぁ。お前達か」

大和田「どうしたんだよ。保健室はいいのか?」

K「俺も少しは現場を見た方が良いだろうと、葉隠を連れて朝日奈達が戻ってきてくれてな。
  ちょうど十神も来たし、保健室は彼等に任せて出てきたのだ。山田の様子はこれで見れるしな」


そう言うと、KAZUYAは目を閉じた山田が映っている電子教員手帳を見せる。


K「俺はもうあらかた見た。美術準備室をよく見ておけ」

霧切「ドクター、それは?」


霧切はKAZUYAが何かの紙束を大事そうに抱えているのを見咎める。


K「……山田の描いた漫画だ。ゴミ箱に捨てられていた」

舞園「酷い……誰がそんなことを?」

腐川「大方自分で捨てたんじゃないの? あたしだって書いた原稿が気に入らなかったら捨てるわよ?」

K「それはないと思いたいが――」

「……?」


原稿を見つめるKAZUYAの瞳は暗い。とても暗い。彼等もそれ以上は聞けなかった。


K「とにかく、俺は現場に向かう。……また後でな」


未だ傷心の抜け切れていないKAZUYAだったが、足取りは確かに美術室から出て行った。


石丸「僕達も急がねば!」

舞園「美術室は特に変わった所はないですね。あ、机の上に山田君の描いた同人誌があります」

大和田「絵はすげえ上手いのに、字はきったねえな。俺も人のこと言えねえけどよ」

石丸「兄弟、文字は心の鏡だぞ! 練習した方が良い!」

霧切「それは今は置いておくとして……ドクターも山田君の漫画を持って行ったし、
    これは何かの証拠になるかもしれないわね。一部持っていきましょう」


コトダマGET!

【山田の同人誌】:以前山田が描いた同人誌。絵は凄く上手いが字は汚い。


大和田「で、美術準備室だな。センセイがよく見ろって言ったってことはなんかあんだろうな」

舞園「絵や彫刻に使う道具がたくさんありますね」

腐川「ハンマーに彫刻刀、それにパレットナイフ。よくよく考えたらここって凶器に
    なるものばかりじゃない……! 封鎖しといた方が良かったんじゃないの?」

石丸「しかしそれでは純粋な芸術活動も阻害されてしまう。難しい所だ」ウーム

大和田「現に山田は入り浸って漫画描いたりフィギュアだか作ってたりしたしな」

霧切「封鎖しても無駄よ。男子には工具セット、女子には裁縫セットが配られているし、
    そもそも倉庫に行けばいくらでも凶器になりうるものはあるのだから」

舞園「固い物や長いヒモ状の物さえあれば簡単に人を襲えてしまいますしね……」

腐川「う、うぐぐ! あたしの考えた対策なんてどうせ駄目だったわよ……!」グギギ


さほど広くもない部屋を、五人は順に見ていく。すぐさま、霧切は妙な物を見つけた。


霧切「……ねえ、石丸君。あなたに聞きたいことがあるのだけど」

石丸「何でも聞きたまえ! 僕が答えられることなら何でも答えよう」


霧切「この美術準備室はまだ掃除していないわね?」

石丸「当然だ! 見たまえ、この埃まみれの部屋を。僕は悲しいぞ!」

舞園「霧切さん、何か見つけたんですか?」

霧切「このハンマーを見て頂戴」


霧切は壁にかかっている六つのハンマーのうち、二番目に大きいハンマーを指差した。


霧切「他のハンマーはしっかりと埃をかぶっているのに、このハンマーだけ埃がほとんどないの」

大和田「それがどうかしたか?」

霧切「一つだけ違うなんておかしいと思わない?」

腐川「確かに変ね。全部一緒にあった訳だし……」

舞園「誰かが使って洗ったということでしょうか?」


コトダマGET!

【埃のないハンマー】:
 美術準備室の壁にかかっていた大きさの違う六つのハンマーのうち、
二番目の大きさのハンマーだけ他と違いあまり埃をかぶっていなかった。


霧切「ドクターなら、もしかして……」

舞園「霧切さん?」

霧切「事件と関係ある可能性が高いわ。持って行きましょう」


霧切がハンマーを壁から取り外すと、捜査時間終了を示す鐘が鳴った。


ここまで。

鐘が鳴ったけど、あと一回だけお付き合い頂きます。現在は裁判に使う資料の
準備等をしております。年内には開始したいです。それではオタッシャデー

前回の裁判を参考にするためにふと過去スレを見ていたら、
あの頃は犯人予想とかトリック予想とかでかなり盛り上がっていたね
最近は投下速度がめっきり減っちゃってすっかり人がいなくなっちゃったけど、
裁判盛り上がるのか……人がいなかったら最悪オートかなぁ

ぶっちゃけ今回の裁判はかなり入り組んでて難しいと思う。多分
コトダマ19個はやり過ぎたかな……

>>90
筆者殿が我々読者と語らなくなったからだよ~ん
また前みたいに語らおうず

ようやく追いつきました・・・・。
すごいSSありがとうございます。
またドクターKの面白さもこのSSのおかげで知れました。
わくわくして続き待ってます。


ありがとうありがとう……

久しぶりにたくさんコメントがついてハッスルしたよ
この三日間体調崩して寝込んでたけど、たくさんのコメントに
元気づけられたので今年最後の投下行きます。



キーンコーンカーンコーン……

鐘の音と共に、モニターにモノクマの姿が映り気合の入った号令が飛ぶ。


『比類なき迷走の時間は、終わりを告げ……時は来たれり! 今こそ雌雄を決する時だ!
 鮮血の睨み合い! 狂乱の知恵比べ! さぁ、学級裁判が遂にその幕を開けるぞッ!!』


桑田「まだなんもわかってねーのにタイムアップってワケかよ……」

不二咲「……大丈夫、だよね?」

苗木「うん、多分」

苗木(きっと、大丈夫だ。今までだって何度も僕達は危機を乗り越えてきたんだから……)

K「…………」

苗木「先生?」

K「いや……」


珍しくKAZUYAは煮え切らない顔をしていた。


桑田「大丈夫か、せんせー?」

K「問題ない。行こう」

桑田「おいおい、しっかりしてくれよな」

苗木(どうしたんだろう、KAZUYA先生。いつもと雰囲気が違うな)

苗木(……先生には、まだ僕達が見えていない何かが見えているのかな?)


廊下で霧切達の班と出会う。


桑田「よ、どうだった?」

霧切「重要かもしれない証拠を持ってきたわ」

不二咲「そのハンマー……もしかして美術準備室にあったものかな?」

石丸「その通り! 他のハンマーは埃がかぶっていたのに、このハンマーだけ埃がなかったのだ!」

舞園「事件に使われたんじゃないかな、って思いまして」

苗木「まさか、犯人が?!」

腐川「そこまではわからないわよ……」

大和田「でも怪しいだろ?」

霧切「ドクター。あなたなら化学室の薬品を使って血液反応を割り出せたりしないかしら?」

石丸「そうか、ルミノール溶液さえ作ることが出来れば……!」

不二咲「ちょうど僕達持ってるよぉ!」

大和田「マジか!」

腐川「そんな便利な物を持ってるなら早く言いなさいよ!」

桑田「せんせーが作ってくれたんだぜ! まだ少し余ってるし、さっそく使ってみるか!」

苗木「よし、行くよ……」


ポゥ……


苗木「光った!」


霧切「反応ありね」

K「しかも反応が強い。間違いないな。このハンマーは何らかの形で犯行に使われている」

大和田「凶器ってことか?!」

霧切「それはまだ断言出来ないけど、その可能性は高いわ。みんなよく覚えておいて頂戴」

苗木「うん」


コトダマアップデート!

【埃のないハンマー】:
 美術準備室の壁にかかっていた大きさの違う六つのハンマーのうち、 二番目の大きさの
ハンマーだけ他と違いあまり埃をかぶっていなかった。ルミノール溶液をかけたら強い反応を示した。


舞園「他に反応のあった場所はあるんですか?」

桑田「それがなぁ、三階の事件に関係ありそうなところにとにかく吹きかけてみたけど、
    普通に血痕のある場所しか反応しなくてさ。つまんねーの」

舞園「そうですか……」

K「気を落とすことはないさ。今はわからなくても、後から見えてくる事実もある」

大和田「そういうもんかぁ?」


コトダマアップデート!

【ルミノール溶液】:
 KAZUYAが調合した推理モノではお馴染みの薬品。血痕のあった場所に吹きかけると薄く発光する。
三階の事件に関係ありそうな場所にとにかく吹きかけたが、血痕のある場所しか反応はなかった。


               ◇     ◇     ◇


KAZUYAはセレスを連れてくるため保健室に立ち寄り、苗木達はそのまま廊下で待つ。
まず朝日奈達が出てきた。葉隠は大神に首根っこを掴まれ引きずられている。


朝日奈「みんなー!」

葉隠「ヒィィ、行きたくないべー!」

大神「暴れても無駄だ」

大和田「男のくせに往生際がわりぃな……」

桑田「ま、これでこいつも年貢の納め時だし」

腐川「ざまぁみなさい」

苗木(……腐川さんがそれを言っていいのだろうか)

霧切「朝日奈さん」

朝日奈「え、私? どうしたの、霧切ちゃん?」

霧切「これ、見覚えないかしら?」


霧切は現場から持ってきていたマスクを朝日奈に見せる。


朝日奈「それ……! 私を襲ったヤツのだよ! どうして持ってるの?!」

大神「例の不審者の物か?!」

不二咲「あの時の?!」

苗木「現場に落ちてたんだ」

朝日奈「えっ、現場に? ……なんで?」


霧切「やっぱり……」


コトダマアップデート

【謎のマスク】:
 悪役レスラーが付けていそうなモスグリーン色のマスク。
朝日奈曰く、不審者がつけていたマスクと同じ。何故現場に……?


霧切の顔が途端に険しくなる。その意味を聞く前に、保健室が開いた。
セレスが乗った車椅子をKAZUYAが後ろから押し、その横には江ノ島が立っている。


江ノ島「お待たせー」

セレス「すみません。お待たせしました」

K「では、向かおうか」


KAZUYAは名残惜しげに山田の方を振り返り、苦肉の表情で扉を閉めた。
医者が患者を置き去りにするなど、この非常時以外では考えられないことだ。

……モノクママスクを付けた不気味な彼女は、無言の存在感を放ちながらそこにいる。


霧切「ドクター、少し良いかしら?」


そんな中霧切に呼び止められ、何か重要な話があると察したKAZUYAは他の生徒達を促した。


K「……みんな、すまないが先に行っててくれ」

苗木「じゃあ僕が代わります」

セレス「わかりましたわ」

大和田「早く来いよな」

桑田「あんま遅いとモノクマにせっつかれるぞー」

K「ああ、わかってる」


               ◇     ◇     ◇


赤い扉を開くと、エレベーター前には既に全員が集合していた。


十神「遅い! この俺を待たせるとは。自慢の手術で頭に時計でも入れたらどうだ?」

K「そうカッカするな、十神」

霧切「もう少し余裕を持った方が良いわよ」

十神「フン」


裁判前でピリピリしているのか、十神はいつも以上に機嫌が悪い。
だが、それは他の生徒達にも言えることだ。


朝日奈「大丈夫……だよね? 葉隠、殺されないよね?」

不二咲「山田君が生きてる限りは大丈夫だと思うけど……」

腐川「あ、あたしは意識がない時で良かったわ。普通の人間ならきっと堪えられないわよ……!」

葉隠「嫌だあああ、死にたくないぃぃ!」

大和田「犯人じゃなかったんじゃねえのか? ア?」

石丸「では行くぞ、諸君! 今日こそ葉隠君の凶行を暴くのだ!」

桑田「おー! 行くぜ!」

苗木「えっと、決めつけはいけないんじゃなかったっけ……?」

十神「何だ? ではこいつ以外に真犯人がいるとでも?」

苗木「それはわからないけど……」

舞園「冷静になりましょう。乗せられたらダメですよ」


江ノ島「あー、メンド。早く終わらないかなー」

セレス「わたくしとしても起きているのは辛いので早く戻りたいですわね」

大神「しかし葉隠もしぶといからな。一筋縄で行くだろうか」

霧切「証拠が多すぎて状況が雑然としているわ。全容を暴くには骨が折れそうね」

K「そうだな。――行こう」


15人もの人間を載せた鉄の箱が微かに揺れ、ゴウンゴウンと低い音が響く中、
彼等はそれぞれの物思いに耽っていた。怒り、悲しみ、恐怖、そして……?

いくつもの感情の色が複雑に交差し、混ざり合って奇妙な模様を描いていく。


K(……もうこれには乗りたくなかったのだがな)

K(とうとう二度目の裁判か。多いと見るか少ないと見るか。いや……正直な話、
  生徒達はよくやってくれている。もう俺の役目は半分以上終わっているも同然だ)



――そう、この学園でのKAZUYAの役目は終わりに近付いている。



K(俺がこれに乗るのは、きっと今回が最後だろう――)

K(集中しろ! 目の前の裁判に、そして生徒達に! 最後まで……!!)


そして、始まる。


希望と絶望が渦巻く学級裁判が始まる。

ある者が渇望し、ある者が望まなかった二度目の裁判がここに始まるのだ――


ここまで。それでは皆様、良いお年を!

来年はいきなり裁判から始まります。来年もこのSSをよろしくお願いします。


早速ですがあけおめことよろ!
そして昨日は山田君、今日は日向君の誕生日でしたね。誕生日おめでとう!


>>95
質問、雑談はいつでも歓迎ですよ。そろそろ話も後半になってきて
ネタバレがあるので多くは語れませんがそれ以外ならお気軽にどうぞ

>>96
いらっしゃいませ!ドクターKも面白いので、機会があったら是非読んでみてくださいね


また結構空いちゃった。すまんね

1の性分的にまず前スレを潰してから裁判始めたいので、
先に前スレに番外編を投下してきます。では


やっと投下完了。……長い!1レスに詰め込んでギリギリ収まった

番外編は大体10レス前後って決めてるのになんであんなに長くなったのか
鬱展開はついつい心理描写とか細かく書いちゃって長くなり気味。気をつけよう


前スレ無事に完走いたしました。レスくれた方はご協力ありがとうございました

>>998
やり直しという希望をみんなに与えるのが黒幕的に面白くなかったのと、
まだ投票していない石丸君の件で揉めるのがわかっていたからですね
揉めた結果、誰が死んでも黒幕的には美味しい展開になる訳です


申し訳ない。現在最終調整中のため、もう少しかかります。来週には始められるかな?
とりあえず、時間潰しに以前作ったカルテの最新verでも……


カルテNo.1【KAZUYA】その①

 頭部に複数の挫傷あり。頭骨に若干のヒビ。右腕に一発、腹部に三発の銃痕。
弾は腹直筋及び外腹斜筋内部で止まり、術式にて全て摘出縫合済である。

[負傷日] :コロシアイ学園生活-三日目。

[経過日数]:43日。完治。


<KAZUYAのコメント>

 この生活が始まって大体一週間くらいで治ったかな? 俺は治るのが早いんだ。


カルテNo.2【舞園 さやか】

 腹部刺創。胃中心部に貫通創。術式にて縫合止血済み。
縫合した皮膚は完全に癒着していると見られる。12日目に抜糸予済み。

右手首骨折。33日目にギプスを外す。長期間固定していたため関節が固まっているが、
リハビリをすれば戻ると思われる。37日目に手に入れたレントゲンで撮影をした所、
骨は見立て通り綺麗に再生していた。ほぼ完治と見ていい。

[負傷日] :コロシアイ学園生活四日目深夜(五日目)。

[経過日数]:35日。十日目に仮退院。現在、腹部は完治。右手はリハビリ中。


<KAZUYAのコメント>

 腹部の傷は無事完治したが、俺の腹の傷のように縦15センチ程の大きな縫い跡が出来てしまった。
舞園はアイドルで歳も若い。石丸の顔もそうだが、ここから出たら綺麗に消してやらねば……
右手は熱心なリハビリの結果、少しずつ可動範囲が広がっている。もう日常生活に問題はないな。


カルテNo.3【江ノ島 盾子】

 右膝下4cm、左膝下6cm、左大腿部9cm、左肩5cmの切創。左肩、左大腿部は縫合処置。
左腕に槍状の鉄棒による貫通刺創。橈骨動脈が切断されていたため、吻合。


[負傷日] :コロシアイ学園生活十日目。

[経過日数]:30日。完治。


<KAZUYAのコメント>

 あの後なんとか抜糸だけさせたんだ。その後は自然治癒に任せたが綺麗に治ったようだな。
けして軽くはない怪我をしたはずなのに本人は至ってケロリとしている。やはり、彼女は……


カルテNo.4【石丸 清多夏】その①

・左額から瞼を通り左頬に抜ける12cmの切創Ⅰ。
・切創Ⅰの左、正面から見てやや右の左頬から左顎部に抜ける8cmの切創Ⅱ。
・左頚部に7cmの切創Ⅲの計三つ。

切創Ⅲはトレーニング機材の角にぶつかったことにより外頚静脈を損傷していたので縫合。
創面が粗かったため、[ピザ]リードマンを実施の上、創面も縫合。

切創Ⅰ、Ⅱは鏡の破片で切ったものであり創面は特に問題なかったが、極度の興奮が原因か
麻酔効果の減衰が見られたため、真皮縫合は行えず通常縫合での縫合とした。


[負傷日] :コロシアイ学園生活十日目深夜(十一日目)。

[経過日数]:29日。14日目に退院。現在は完治(ただし、大きく傷痕が残っている)。


<KAZUYAのコメント>

 本人はもう克服したとのことだが、あまりにも傷痕が目立つため他の生徒達への心理的負担を
考慮し、現在も包帯で傷を覆わせている。俺的には脱出後真っ先に治療したい案件だな。

…………。何にしろ、失明だけは避けられて本当に良かった――。


カルテNo.5【不二咲 千尋】①

 縄状のものにより頚部を圧迫され窒息。発見し即座に心肺停止を確認。
気管挿管し、バックバルブマスクにて送気しつつ開胸式心臓マッサージを施行。
CPRと同時にエピネフリン1mgを静注。以後、様子を見ながら追加で静注を行った。

約二時間後、心拍再開を確認。強心剤心注し、自発呼吸を再開した。 蘇生後は、蘇生後脳症を
防ぐため低体温療法を実施。ただし、学級裁判により一時看護が中断するため、シバリングの
発生する極低温は避け34~35℃を目処に調整する。

裁判後、無事に意識を回復。予後は安定していたため、様子を見ながら一週間入院させた。


[負傷日] :コロシアイ学園生活十四日目。

[経過日数]:26日。21日目に退院。現在は完治。


<KAZUYAのコメント>

 正直に言うと、この時のことはあまり思い出したくないな。俺にとって忘れられない悪夢の一つだ。
いつか、こんな凄惨な出来事すらも思い出として生徒達が語れる日が来るといいな。


カルテNo.6【腐川 冬子】

 全身にⅠ度の熱傷あり。電極と直接接触していた部分は浅達性と見られるⅡ度熱傷。
変色、水ぶくれも多少見られるが植皮は必要ない程度である。

アズノール軟膏を塗ってガーゼで覆った(症状が軽度だったため処置は霧切に委任)。
事件の影響か、部屋に引きこもってしまう。精神のケアが必要。


[負傷日] :コロシアイ学園生活十四日目。

[経過日数]:26日。33日目に無事復帰。


<KAZUYAのコメント>

 石丸の件やジェノサイダーの存在があったとはいえ、しばらく放置することになってしまった。
実は、俺は今でもあの時のことは本当に申し訳ないと思っているんだ。無事、信頼関係が築けて
心から嬉しく思っている。……脱出後は、約束通り映画を一緒に見に行かないとな。


カルテNo.7【KAZUYA】その②

 左掌に折れた木刀の木片が三箇所貫通。その他複数の切創。消毒止血済。
手当をするまでにやや時間がかかってしまったので、破傷風に気をつけたい。


[負傷日] :コロシアイ学園生活十四日目。

[経過日数]:26日。約5日で完治。


<KAZUYAのコメント>

 俺は傷が治るのが(略)。……破傷風には何故か嫌な感じを覚えるからかからなくて良かった。


カルテNo.8【石丸】その②

 深刻な精神疾患を発症。急激なストレスのせいか髪が脱色現象を起こしている。

< 中略 >

また、会話が全く成り立たず独り言、強度の他害妄想有り。独り言の内容は謝罪、
自己否定的なものが大半を占め、時々理解不能な内容も含まれる。

< 中略 >

25日目、長期療養になると判断し右鎖骨下静脈にカテーテルを通し、
中心静脈栄養法に切り替えた。向精神薬を使うかギリギリまで見極めたい。

< 中略 >

30日目、上記により石丸の意識・会話能力は共に標準レベルに回復。
今後、感染等に注意をしていくが本日をもって退院扱いとする。


[発症日] :コロシアイ学園生活十四日目。

[経過日数]:26日。30日目に退院。


<KAZUYAのコメント>

 今回ほど自分の力不足を痛感したことはない。俺より生徒達の方がお互いをよく理解している。
……それも当然か。俺は後からここにやって来た人間なのだからな。生徒達の記憶さえ戻れば……


カルテNo.9【不二咲 千尋】②

 突然何の兆候もなく嘔吐し昏睡状態になる。諸々の症状から、極度のストレスにより自家中毒を
発症したと診断。脱水症状を避けるため点滴を打つ。幸い、大事には至らず早期に意識を回復。


[発症日] :コロシアイ学園生活二十七日目。

[経過日数]:13日。30日目に退院。


<KAZUYAのコメント>

 不二咲のカルテは色々と辛い。軽症で本当に良かった……


カルテNo.10【安広 多恵子(セレスティア・ルーデンベルク)】

 小型のナイフによる腹部刺創。傷ついた小腸を約10センチ切除して吻合する。
止血処理を行い、臍(さい:ヘソのこと)の上2センチ程を横に12針縫合済み。
45日目に抜糸予定。


[負傷日] :コロシアイ学園生活三十七日目。

[経過日数]:三日。入院中。


<KAZUYAのコメント>

 舞園の時とほぼ同じだな。幸い、重要な血管に傷が付いていなかったため大事には
至らなかった。しかし、また大事な生徒の体に傷を残してしまうとは。俺は……


カルテNo.11【山田 一二三】

 額に打撃によると思われる広範囲の裂創(肉が裂ける傷)あり。腫れ方にややムラがある。
頭蓋骨骨折並びに硬膜下血腫を発症。開頭手術により血腫は除去済み。現在も昏睡状態。

術後出血、脳浮腫等の二次性脳損傷に気をつけつつ術後管理に細心の注意を払う。


[負傷日] :コロシアイ学園生活三十七日目。

[経過日数]:三日。現在昏睡状態。


<KAZUYAのコメント>

…………。目を開けてくれ。頼む。


モノクマ「以上、カルテの更新でした。完治の日にちとKAZUYA先生のコメントが増えてるよ!」

モノクマ「おっと。>>119のデブリードマンが特殊変換に引っかかってピザになってるね。
      ピザリードマンてなんだよ!(笑) デブのリードマンさんてこと?」

モノクマ「そして久しぶりのモノクマ劇場~。って言ってもただの雑談だけどね」

モノクマ「今更だけど多忙の中、1はダンガンロンパ2の舞台見に行きましたよ。凄く面白かったよ!」

モノミ「あちしの活躍を見に来てくれたんでちゅね!」

モノクマ「配役も概ね合ってるし、何よりセットが! 無印の時のあのショボさはなんだったのってレベル!」

モノミ「無視されまちたよ! 潔いくらい見事な無視でちゅ!」

モノクマ「演出も前回の時より大幅パワーアップ! 特にボクは裁判の演出が好きだね。緊張感があっていいよ」ダンッ!

モノミ「役者さんも誉めてあげてくだちゃい! 田中君、左右田君、罪木さん、終里さん、
     澪田さんはまんま本人でちたよ! そして狛枝君が案の定ヤバかったでちゅ!」

モノクマ「……見た目は細いのに凄く男らしかったね。ゲームだと絵柄と声で中性的な感じだったけど
      舞台の狛枝君はちゃんと男の子だったよ。そして、ちょっと夜神月ぽかった」

モノミ「デスノ?! 藤原竜也なの?! キレちゃうの?!」

モノクマ「あとボクは個人的に小泉さんが好きでした。理由はかわいいからです」

モノミ「顔?! 顔なんだ?! 女の子はみんな可愛かったよ! それに主役の日向君も誉めてあげて!」

モノクマ「日向君もまんまだったね。なんか普通に上手くてコメントに困るっていうかー、イジりづらい」

モノミ「なんでイジる前提なの?! 普通に誉めてあげればいいじゃない!」

モノクマ「演技力がずば抜けてるなって思ったのはやっぱりいしだ壱成さんだね。ベテランだし。
      最初は一人だけ歳が離れてて大丈夫かなーとか思ったけど無駄な心配だったよ」

モノミ「ブルーレイ&DVDは絶賛発売中でちゅ! 気になったら買ってくだちゃい!」

モノクマ「でもさー、なんで今回は台本オマケについてないワケ? 購買意欲が……」

モノミ「それ以上はダメでちゅ―!」

モノクマ「あ、あとダンガンロンパ1再演決定したから。しかも地方四都市巡業するのでヨロシク」

モノミ「さり気なく言わないで埋もれちゃうから! 宣伝する気あるの?!!」



ダンガンロンパ1舞台再演決定!!(東京・名古屋・大阪・神奈川)
http://www.cornflakes.jp/dangan/

詳しくは公式サイトにて。



モノクマ「ぶっちゃけ神奈川いらなry」

モノミ「ダメったらダメ―!!」


乙っつんつん
KAZUYAは人間の鑑だな~敬愛する
舞台観にいったみたいだけど野性爆弾の川島はどうだった?

>>125
何が恐ろしいって原作のKAZUYA先生もガチで人間の鑑な所ですよ
川島さんは役者さんではないのでちょっと演技慣れてないのかなって感じはしました
1は普通にアドリブ笑ったけど、弐大ファンからは賛否が分かれてるようですね
あとアドリブのネタが対象年齢高めなので若い子は???になったかも


  ― 軍曹によるわかりやすい学級裁判の進め方講座Ⅱ ―


大垣「……また俺の出番か。嬉しいやら悲しいやらってヤツだな。そもそもお前ら、俺を覚えてるか?」

佐知子「前に出たのは3スレ目の>>671だから3スレ振り、期間にすると一年半振りね。お久しぶりです!」


大垣蓮次(軍曹)&佐知子:KAZUYAの帝都大時代の先輩とその妻である。


大垣「ここでは学級裁判について説明するぜ。基本的には前回と同じだからおさらいだな。
   【】で囲まれてる部分を適切なコトダマで撃ち抜くんだが……」

佐知子「今回からは同意も含まれているの。《》で囲まれてる部分はコトダマで同意してね」

大垣「吸収はなしだ。もう今の段階でコトダマありすぎて作者も把握しきれてないからな」

佐知子「他にも色々増えてるけど、基本的には裁判中に指示されるわ」

大垣「あと必要なのはこのスレ独自のコマンドだな」

佐知子「ヒントが欲しい場合は『助けて霧切さん』。答えが知りたい場合は『教えてKAZUYA先生』ね」

大垣「正直なぁ、今回はかなりゴチャゴチャしてるし何より長いからな。
    ちょっと考えてわからなかったらどんどんコマンド使っちまえ!」

大垣「前回の学級裁判の時は、KAZUYAは基本生徒任せで自分は傍観に徹してたが、
    今回は頻繁に前に出てくる。その意味がわかるか?」

佐知子「それだけ裁判が難しい、切羽詰まっているということね?」

大垣「……まあ下手したら死ぬかもしれないしな」

佐知子「えっ?」

大垣「なんでもねえよ! とにかく俺達も応援してるから頑張んな!」

佐知子「頑張ってください、皆さん! それでは」


参考画像:http://i.imgur.com/lUkSi2i.jpg



エレベーターを降りた一同は、前に一度来た道を迷うことなく真っ直ぐと進む。
地下特有の臭いと閉鎖空間故のカビ臭い空気が、以前にも増して鼻腔を刺激し一同は眉を顰めた。

自己主張の激しい蛍光色の黄色い矢印を踏みつけながら扉を開け、裁判場に入場する。


モノクマ「遅いよ! もうボク待ちくたびれちゃったよ!
      オーディエンスを待たせるなんてエンターテイナー失格だね!」

桑田「誰がエンターテイナーだっつーの」

「…………」


桑田が苦々しく返したが、他の面々は無言のまま自分の席に向かう。


朝日奈「……あれ? なんか前と雰囲気少し違わない?」

モノクマ「おや、気が付いたかい? あまりに前の裁判から間が空いたので、その時間を
      利用してリフォームしちゃいましたー! 見映えが変わらないとつまらないしね」

モノクマ「――『視て』いる方もさ」

霧切「…………」

K(これはいつものブラフか。それとも……)

K「どうでもいい。さっさと始めるぞ」

モノクマ「おや、先生ヤる気十分? ヤッちゃうヤッちゃう?」

K「…………」


モノクマの煽る声を無視してふと視線を下にやると、KAZUYAは自分の席にも生徒達同様金文字で
名前が彫られた木製のプレートが置かれていることに気が付いた。これもリフォームの結果らしい。


モノクマ「ではでは、折角オマエラがやる気になっているのに学園長のボクが
      水を差しちゃう訳にはいかないよね~。お約束のルール説明をするよ!」


「学級裁判の結果はオマエラの投票により決定されます」

「正しいクロを指摘出来れば、黒だけがオシオキ。だけど……」

「もし間違った人物をクロとした場合は……クロ以外の全員がオシオキされ、
 みんなを欺いたクロだけが晴れて卒業となりまーす!」

「それじゃ、ちゃっちゃと始めちゃってください!」


モノクマの説明が終わると一同の視線はある男に集中する。


葉隠「…………」


勿論葉隠康比呂だ。額から汗を流し、助けを求めるようにKAZUYAの方をチラチラと見ている。


K「……皮肉なことに、今回も俺には完璧なアリバイがある。議長として進行役をさせてもらおう」

K「みんな色々言いたいことはあるだろうが、今回の事件にはハッキリしない点が多すぎる。
  なるべく感情的にならず、事件の全貌を解き明かすことに注力してもらいたい」

K「――頼んだぞ」

「ハイッ!」

十神「フン……」

江ノ島「…………」






          !   学   級   裁   判   開   廷   !






          裁判席


          モノクマ

       朝日奈  K  葉隠 

   大和田            不二咲               

  霧切                 十神

大神                      セレス

  江ノ島                桑田

    石丸            腐川

       舞園 苗木 山田




モノクマ「コトダマは結構ダイナミックに変更・修正しちゃったからこちらを参考にしてね!」


― コトダマリスト ―


犯行現場見取り図
http://i.imgur.com/3OKMiUp.jpg


>>30
【モノクマファイル】:
  犯行時刻は三日前の夜9時半から10時の間。被害者は山田一二三。
 額に固いもので殴られたような傷痕あり。右太ももに針でつけたような小さな穴がある。
 被害者は娯楽室の奥に仰向けに倒れていた。特に娯楽室内は荒らされてはおらず、
 血痕は山田の体周辺にしかない。床には何らかのガラスの破片が散らばっている。

>>34
【ナイフ】:護身用に見えるやや小振りのナイフ。セレスが刺された時のもの。

【山田のカルテ】:KAZUYAが作成した山田のカルテ

『額に打撃によると思われる広範囲の裂創(肉が裂ける傷)あり。腫れ方にややムラがある。
 頭蓋骨骨折並びに硬膜下血腫を発症。開頭手術により血腫は除去済み。現在も昏睡状態』

【セレスのカルテ】:KAZUYAが作成したセレスのカルテ

『舞園の時同様、刃物による腹部刺創である。傷ついた小腸を10センチ切除して吻合する。
 止血処理を行い、臍(さい:ヘソのこと)の上2センチ程を横に12針縫合済み』

>>35
【掠れた血痕】:上に何かが載ったような掠れた血痕。

>>37
【血文字の書かれた雑誌】:
 雑誌ラックに逆さまに入っていた雑誌。最後のページには血文字で『トガミ』と書かれている。

>>38
【葉隠の部屋】:部屋には血のついたシャツがあった。他に目ぼしいものはない。

>>52
【ルミノール溶液】:
 KAZUYAが調合した推理モノではお馴染みの薬品。血痕のあった場所に吹きかけると薄く発光する。

>>53
【塩酸キナクリン】:血液中のY染色体に反応して発光する化学薬品。血痕から性別が割り出せる。

【ヨウ素液】:何の変哲もないただのヨウ素液。デンプンにたらすと青紫になるのが有名。



>>57
【モノクマボトル】
  ボトルシップのように中にモノクマの模型が入ったボトル。石丸が棚の上からビリヤード台に
 掃除のため、一時的に移動させていた。ガラスが薄いので扱いには注意が必要だ。

【なくなった二つのボトル】
 モノクマボトルはそれぞれチェスの駒を表しており、ポーン、ルーク、ナイト、ビショップ、
 クイーン、キングの順に並んでいた。割れていたのはビショップとキングで床にその模型が
 落ちている。 娯楽室の床に散乱するガラスの破片もモノクマボトルの物と思われる。

>>67
【謎のマスク】:悪役レスラーが付けていそうなモスグリーン色のマスク。何故現場に……?

>>68
【呼び出し状】:
 山田のズボンのポケットに入っていた呼出状。汚いクセ字で以下のように書かれている。
『脱出口らしきものを見つけた。まだ確証が持てないので、誰にも言わず9:30に一人で
 娯楽室に来てほしい。集合には少し遅れるかもしれないので、誰かにそう伝えておくこと』

>>70
【朝日奈の証言】:
  舞園の部屋にいたら血相を変えた桑田が飛び込んできた。全員を集めるため、女子の部屋を
 順番に回り、まず部屋にいた腐川と合流。その後寄宿舎のホールで霧切と合流し、保健室の前で
 十神・大神と遭遇した。その後、廊下で待機中に江ノ島が合流した。

>>72
【秤の実験】:無事なモノクマボトルより、集めた破片やモノクマ人形の方が明らかに重かった。

>>83
【苗木の証言】:山田は時間通り保健室に来る予定だった。逆に葉隠は少し遅れると言っていた。

>>86
【山田の同人誌】:以前山田が描いた同人誌。絵は凄く上手いが字は汚い。

>>87
【埃のないハンマー】:
  美術準備室の壁にかかっていた大きさの違う六つのハンマーのうち、
 二番目の大きさのハンマーだけ他と違いあまり埃をかぶっていなかった。


裁判開廷と同時に口を開いたのは、当然今回のもう一つの事件の被害者・セレスだった。


セレス「犯人など議論する必要もありません。何故なら犯人はこいつです! 葉隠康比呂ォ!」

葉隠「ひ、ひぃぃ! 違うべ! 俺じゃねえ! 俺はやってないべ!」

朝日奈「いい加減にしなよ! セレスちゃんはしっかり犯人を見てるんだからね!」

石丸「言い訳は見苦しいだけだぞ! 潔く認めたまえ!」

葉隠「よ、夜時間は廊下の照明もちょっと暗くなるし、はっきり顔が見えた保障はないべ!」

セレス「あなたのような目立つ髪型の人間を見間違えるとでも?」

葉隠「そこが逆に盲点なんだべ! 例えば誰かがカツラでもかぶれば俺と間違えるだろ?!」

大和田「まあ、そうだな……こんな髪型の男は葉隠に決まってるって先入観はあるかもしれねえ」

葉隠「そうだべ! 人間の記憶なんて曖昧なんだ! 目撃者の証言と実際の犯人が
    食い違ってるなんて話は腐るほどあるじゃねえか! こんなん誰かの陰謀だ!」

K「人間は不確かな記憶があると脳が勝手にその空白を埋めることはある」

葉隠「だろ?! だろ?! だから陰謀なんだって……!」

腐川「陰謀? あんた、死体発見アナウンスが鳴る前から部屋でガタガタ震えてたんでしょ……?」

葉隠「う゛!」

江ノ島「正直議論する必要なくない?」

霧切「……そうね。状況証拠は十分過ぎる程揃っているわ」

「…………」


その言葉を引き金に、全員黙り込む。明らか過ぎる犯行に、もはや議論の余地はなかった。
だが、ここに諦める訳にはいかない男がいる。――被告人である葉隠康比呂本人だ。

この男、とにかく往生際が悪かった。ない頭を絞り、助かる方法を何度も占い、
そして今横に立っている、最も情け深いだろう男に泣きながら縋り付いた。


葉隠「け、K先生ー!! 頼む! 俺を信じてくれえええええ!」

K「…………」

葉隠「俺、俺まだ死にたくねえ! やりたいことがたくさんあるんだべ!!」


葉隠の懇願を全員が冷ややかな目で見ている。特に厳しいのはやはり被害者であるセレスだ。


セレス「西城先生に手術していただいたらどうですか? 即死でなければ可能性はありますわよ?」

葉隠「死んじまったらどうすんだ?! 大体物的証拠はなんにもねえんだぞおおおお?!!」

K「……そうだな」

苗木「先生……?」

K「証拠がないなら、議論して証拠を見つけて行く必要があるだろう」

葉隠「じゃ、じゃあ……!」

K「勘違いするな。議論の結果、出てくる証拠がお前を地獄に突き落とすやもしれんぞ」ギロリ!

葉隠「ひえええええ!」

霧切「確かに、事件の全容は明らかになっていないし、議論なしで投票するのは早急ね」

K「では、早速議論に移る。まずは基本となる犯行時刻や犯行現場等について議論しよう」


えっと、今回はここまで。いよいよ裁判始まりました。

修正が結構あるので、次回から手直ししつつちょっとずつ進めて行こうと思います。


[ 事件概要 ]


石丸「断言しよう! 被害者は山田君とセレス君の二人だ! しかし、セレス君を
    刺した犯人は既に判明しているので、この裁判では山田君を襲ったクロを探すぞ!」

桑田「わかってんだよ、んなことは!」

苗木「とりあえず、犯行現場は娯楽室でいいのかな?」

K「山田の体はまだ温かかった。襲われてからさほど時間が経っていないのは
  間違いないだろう。<犯行現場はそのまま娯楽室と見ていい>」

腐川「山田を運べるヤツなんて限られてるから、多分それで合ってるでしょうね……」

大和田「でもよ、<共犯者がいたらわかんねえ>ぜ?」

十神「裁判のルールがわかっていない馬鹿がいるようだな。【共犯に何の
    メリットもない】のに殺人の片棒を担ぐ人間がいると思うのか?」

江ノ島「だよねー。他人のために自分の命かけるとかありえないし!」

大神「果たしてそう言い切れるものだろうか……」

舞園「心当たりでもあるんですか?」

セレス「事件と関係ない話は裁判の後にしてくださいまし。議論を戻しますが、
    【恐らく葉隠君が山田君を呼び出し、一撃お見舞いしたのでしょう】」

葉隠「だーから、違うんだってー!」


適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け!
コトダマリスト>>144-145

↓2

フム、わかってはいたが人がいないね
最近ちょっと投下が不定期だったから仕方ないね

ちょくちょくセルフ上げしていくしかないか……

ヒントと言いますか、最初の問題はチュートリアルですので
そんなに捻くれた出題ではありません。ストレートでオッケー


モノクマ「……ちょーっと不味いかな、これは。あまりにも裁判の進行が遅すぎると
      視聴者も飽きちゃうだろうし。という訳で霧切さーん、ヘールプー!」

霧切「コマンドが使われていないのに出るのはしゃしゃり出るようで気が乗らないけど、
    あまりに遅いと確かに進行に関わるからヒントを出させてもらうわね」

霧切「ドクターは基本的に何らかの確信があって発言をしているわ。
    つまり、今回はドクターの発言にあのコトダマで同意すればいいのよ」

霧切「犯行現場は娯楽室……。それに同意するには娯楽室の外から山田君が
    運び込まれていないことを証明するコトダマを選択すればいいわ」

霧切「ここまで言えばわかるわね?」


↓1


【モノクマファイル】 ドンッ! ====⇒ <犯行現場はそのまま娯楽室と見ていい>同意!!


舞園「それに同意します。モノクマファイルにも書かれているように、血痕は山田君の周辺にしか
    ありません。もし少しでも引きずったりしたら何らかの痕跡が残るはずです」

霧切「推定犯行時刻から考えても、山田君の巨体を運んで血の跡を処理するには
    ほとんど余裕が無いわ。犯行は娯楽室で襲われたと見るのが妥当ね」

十神「そんなことはわかっている。それよりも、既に容疑者がいるのだから
    そいつに対して尋問することがあるんじゃないか?」

葉隠「し、知らねえ! そもそも俺は娯楽室になんか行ってねえ! 本当だべ!」

K「まず葉隠が娯楽室にいたかどうかをハッキリさせる必要があるようだな」



[ 葉隠が娯楽室にいた根拠 ]


葉隠「し、知らねえ知らねえ! 俺は三階にも【娯楽室にも行ってねえ】んだって!」

大和田「おめえなぁ……【服にバッチリ返り血がついてた】じゃねえか……」

朝日奈「そうだよ! もう葉隠で決定だよ! 間違いないって!」

葉隠「! ……あ、えと、<三階には行ったべ>。そこで刺されたセレスっちを発見して、
    触っちまったんだ! その時の血だな! ああ、うん!」

セレス「ここまで正々堂々と嘘をつかれますと怒りを通り越して殺したくなりますわね……」

桑田「やっぱおめーが犯人じゃねえか!」

葉隠「ふざけんな! 今の説明に【俺が現場にいた証拠なんてなかった】ぞ!」

不二咲「本当にそうなのかなぁ……?」


適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け!
コトダマリスト>>144-145

↓2 おやすみなさい。次は水曜か木曜の夜を予定

(もう逆に何を使って論破していいのかわからなくて混乱してるのは私だけじゃないよな?いいよね?)

助けて霧切さーん!


ヒントだけ


>>171

モノクマ「なんだか今回の裁判は忙しくなりそうだねぇ」

霧切「そうね……応援を呼んだ方がいいかしら?」

K「霧切にだけ負担をかけさせる訳にもいかん。毎回ヒントが必要になるなら俺が手配しておこう」

霧切「とりあえず今回も私がヒントを出すわ。葉隠君が娯楽室にいた根拠……
    当然、その証拠は娯楽室に残されていると見るべきよね?」

霧切「捜査パートのうち、娯楽室を調べているレスをよく読み直せばわかるはず」

霧切「ここまで言えば……」

モノクマ「わかるよね!」

霧切「……人の台詞を取らないでくれるかしら」


↓2


モノクマ「再開する前に、えー……業務連絡です」

K「毎回ヒントでは霧切の負担が大きいからな。こちら側で合議した結果、
  オリロンパシリーズ等でよく見られる『スキル制』をこのスレでも採用することにした」

モノクマ「何か情報がほしい。でもヒントだとほぼ答えになっちゃってつまらない。
      そんな人のためにフレキシブルに活用出来る、それがスキル制度なのです!」

苗木「ロンパポイントはわかるのにコトダマがわからない。もしくはこのコトダマが
    怪しいけど、誰をロンパすればいいかわからないって時に使ってほしいな」

江ノ島「でもさー、ぶっちゃけスキルなんて今まで手に入れてなかったじゃん」

葉隠「そうだべ。ズルだべ! ついでに俺は冤罪だべ! 釈放しろ!」

舞園「甘いですね、皆さん。この苗木君は全生徒の通信簿をMAXにしてるいわば苗木君改ですよ?
    伊達にお医者さんになる勉強をしてる訳じゃないんですよ!」

「ナ、ナンダッテー?!」

  ・ ・ ・

モノクマ「茶番はここまで。苗木君がストーリーの裏で密かに通信簿制覇してるのは
      事実だけど、今回はKAZUYA先生が用意したスキルを使ってください」

K「……これは俺の友人達のスキルだ。適宜使ってくれ」


高品 龍一【診察】:ロンパポイントの持ち主を三人まで絞ることが出来る。

大垣 蓮次【咄嗟の機転】:コトダマを三種類まで絞ることが出来る。

ドクターTETSU【眼力】:論破すべき人物を特定する。

磨毛 保則【M.A.R.S】:コトダマを完全に特定する。


K「ちなみに、TETSUと磨毛のスキルは強力過ぎるので【二回ミスをした時のみ使用可】だ」

霧切「今まで通り私のヒントやドクターに答えを聞くことも可能よ。気分で使い分けて頂戴」

モノクマ「それじゃあ本編再開! 行っくよー!」


【掠れた血痕】 ドンッ! ====⇒ 【俺が現場にいた証拠なんてなかった】BREAK!!


不二咲「それは違うと思うよ」

葉隠「な、なにが違うって言うんだべ!」

霧切「……葉隠君、あなたの草履の裏を見せてくれないかしら」

葉隠「草履? なんで草履の裏なんか……」ヒョイッ

葉隠「!」

K「……血が付着しているな」

不二咲「娯楽室の床の血痕に、一つだけ踏まれたみたいな妙な血痕があったんだ。もしかしてと思って」

十神「ククク、服は個室に予備があるが靴の替えはないからな?」

大和田「娯楽室に行ってたんじゃねえかよ!」

葉隠「訴えるべ!!」


  反論ッ!!


葉隠「確かに俺の草履には血が付いてるけど、【それが証拠だって言うなら気が早い】べ!」


スルー or 論破
論破する場合はコトダマリスト>>144-145

↓2


発展!!


桑田「往生際わりーぞ!」

葉隠「うるせー! 【絶対的な証拠をつきつけられる】まで俺は諦めねえ!」

葉隠「あの晩はセレスっちの血が廊下にたくさん飛び散ってたし、それをたまたま踏んだだけだ!」

葉隠「それとも、これが【セレスっちの血じゃないなんて証拠でもある】んか?!」


スルー or 論破
論破する場合はコトダマリスト>>144-145

↓2

>>185
どっちに?

反論ショーダウンではノンストップ議論同様、
ポイントになる【】とコトダマを選択してくださいね

次は土曜日だと思います。それでは。

↓1

一部わかりづらいところがあり申し訳ありません。以後気を付けるようにします

ただ一つ言い訳を致しますと、霧切さんの踏んだ発言は本来存在しなくて後付けなんですね
推理モノで掠れた血痕→誰かが踏んだものだ!は割りとよくある表現かなと思ったので。

…が、当たり前ですが読者の皆さんは金田一君やコナン君ではないので、それだけの情報では難しい人も
当然いるだろうし、全くヒントを入れないのは不親切かな?と難易度調整のため後から追加した台詞や
文章が結構あります。捜査パートだけでなくて裁判パートとかにもヒントがあったりするので、いちいち
全部読み直すのも大変でしょうから、スキルを駆使してアタリをつけて読み直すと案外簡単にわかったり
するかもしれません。あと、外しても特にペナルティとかないのでガンガン安価取って大丈夫です。

ちなみに、前回の裁判は余裕で優評価でした。裁判が難易度高めなので評価も甘めです。
再開します。


【塩酸キナクリン】→【セレスっちの血じゃない/なんて証拠でもある】


          解ッ!!


石丸「切り捨て御免っ!」

石丸「葉隠君、君は塩酸キナクリンという薬品を知っているかね?」

葉隠「塩酸……キナコとクリ? なんだそりゃ?」

朝日奈「ドーナツに入れたらおいしそうだね!」

石丸「塩酸キナクリンとは、血液の中のY染色体に反応して染色反応を起こす薬品だ!」

K「染色体が何かを説明すると長くなるから省略させてもらうが、要は哺乳類の性別は
  XとYという二つの性染色体で決まるのだ。男ならXY、女ならXXの染色体を持っている」

桑田「えーと、つまりどーゆーことだよ?」

苗木「Y染色体を持ってるのは男子だけ。つまり、Y染色体に反応する塩酸キナクリンで
    血の色が変わったら、それは男子の血液っていうことになるんだよ」

セレス「先に言っておきますが、わたくしは不二咲君のように男の娘ではありませんから」

霧切「江ノ島さん以外の女子が証明するわ」

K「では、草履を貸してくれ」

葉隠「…………」


半ば放心状態の葉隠から草履を奪い取り、塩酸キナクリンをかける。すると、見事に色が変わった。


大神「どうやら決まったようだな」

葉隠「あ……あぁ……」

大和田「もうこいつが犯人で確定じゃねえか! さっさと投票しようぜ」

石丸「ウム、正直彼の言い訳は見苦しい」

腐川「とうとうあんたも年貢の納め時ね……!」

セレス「だから議論なんか無駄だってさっきから言ってんだろうがよぉ!」

葉隠「た、確かに現場に行ったのは認めるべ! でも、俺が行った時は既に山田っちは死んでたんだべ!」

江ノ島「ハァ? あんたまだ言うワケ?」

大和田「人を刺し殺そうとした分際でなに言ってんだ!」

セレス「テメエいい加減にしないとぶち殺すぞ?!」

大神「葉隠……余りに暴言を繰り返すようなら流石の我も容赦せぬ」

朝日奈「もうこんなヤツの言うことアテにしないでさっさと投票しちゃおうよ!」

十神「同感だ。見苦しいだけだな」

不二咲「葉隠君……」

苗木「あんまり往生際が悪いのは良くないんじゃないかな……」

葉隠「い、嫌だ! 助けてくれぇー!!」

モノクマ「じゃ、前回に比べて大分スピーディーだけどちゃっちゃと行っちゃいますか!」

モノクマ「投票ターイ……!!」








「待ったッ!」


桑田「ハ?」

大和田「なッ?!」

苗木「えっ?」

十神「……!!」

K「……もう少しだけ議論を続けてくれないか? 俺にはどうしても気になることがあるんだ」

舞園「気になることですか?」

石丸「それは一体……」


しかしその問いには答えず、KAZUYAはいつもながらの冷静な口ぶりで生徒を宥める。


K「俺自身もまだはっきり確証がある訳ではない。だから、もう少しだけ議論を続けてみたいんだ」

霧切「そうね。私もいくつか葉隠君に聞きたいことがあるし」

十神「ちゃんと納得の行く成果が得られるんだろうな? 貴様等は
    この俺の貴重な時間を無為に浪費しているという自覚を少しは持て」

江ノ島「ムダに裁判を長引かせただけでしたーとかやめてよね。なんか飽きてきたし」

朝日奈「先生の言うことなら大丈夫……だよね? 多分」

大神「……わからぬ」

舞園「今は西城先生を信じましょうよ」

セレス「わたくしが怪我の体をおして無理に参加しているということを忘れないでください。
     長時間起き上がっているのは辛いので、早めに結論を出して頂きたいですわ」

不二咲「う、うん。ごめんねぇ」

大和田「お前が謝るこたないだろ」


犯人は葉隠――

この当たり前過ぎる結論の前に、生徒達はすっかり議論の意欲を失っている。


苗木(先生も霧切さんも、何か考えがあるんだよね……?)

苗木(適当なことを言ったら何だか不味いことになりそうな雰囲気だぞ……)

K(まずは、この場に一石を投じる。全てはそれからだ――)



[ 葉隠が三階にいた理由 ]


K「俺が気になっていることだが、そもそも葉隠は何故三階にいたんだ?」

石丸「確かに。葉隠君は何故【お泊り会に遅刻】してまで三階に行ったのだろうか」

葉隠「俺は誰かに呼び出されたんだ。抜け穴を見つけたから娯楽室に来いって!」

江ノ島「ウソつかないでよ! 本当は<山田を殺すために行った>んでしょ」

腐川「わざわざ【呼出状まで用意してね】! この、人殺し!」

桑田「……いや、おめーは人のこと言えなくね?」

大和田「まあ<動機を配られた後にノコノコ一人で出向くなんてぶっちゃけ山田も不注意>だけどな」

舞園「逆に、それだけ追い詰められていたのかもしれませんよ」

苗木「脱出……なんて文字を見たら【誰だって冷静ではいられない】しね」

十神「まあ、俺だったら行かないがな」


適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け!
コトダマリスト>>144-145

↓2


苗木「そうだよね。わざわざ僕に伝言までして何で三階に行ったんだろう?」

朝日奈「怪しいね! 怪しい匂いがプンプンだよ!」

石丸「全く、五分前行動は基本と日頃から言っているだろうに!」

葉隠「だから呼び出されたって言ってんだろ! オメーら人の話聞いてんのか?!」


不正解のようだ。

コトダマリスト>>144-145


↓2おやすみ。


【呼び出し状】 ドンッ! ====⇒ 【呼出状まで用意してね】BREAK!!


朝日奈「それは違うんじゃない?! 確か、葉隠って字だけはムダに綺麗だったような?」

葉隠「字だけとムダには余計だべ」

石丸「そうだ、思い出したぞ! 以前、僕のためにみんながパーティーを開いてくれた時、
    達筆な彼が代表して横断幕の文字を書いてくれたのだったな!」

舞園「よく覚えています。普段の葉隠君のイメージとは真逆でしたから印象に残りました」

霧切「みんな、これをよく見て頂戴。例の呼出状よ」

大神「フム。言われてみれば、確かに葉隠が書いたにしては悪筆過ぎるな」

葉隠「というか、ん? その呼出状……俺がもらったやつと同じじゃねえか? 見せてくれ」

K「……何だと?」

葉隠「間違いねえ! どこ行ったのかと思ってたけど、山田っちが持ってたんか!」

苗木「ちょっと待って……その呼出状、葉隠君が書いた訳じゃないんだよね?
    じゃあ、一体誰が書いたの?」

葉隠「そりゃあ山田っちに決まってんべ。何せ“俺を呼び出したのは山田っち”なんだからよ!」

「ハァ?!」


全員が予想外過ぎるその発言に固まった。


江ノ島「あんた、さっきは誰かに呼び出されたって言ってたよね?」

K「何故山田に呼び出されたことを黙っていた?」

苗木「そうだよ! 凄く大事なことじゃないか! 君の無罪がかかっているんだよ?」

葉隠「いや、だって……この流れで山田っちに呼び出されたって言っても
    どうせ信じてもらえねえと思ってよ……かえって疑われそうだったし……」

葉隠(本音を言うと、あんまり詳しく言いたくねえんだべ! K先生に霧切っちに十神っちと
    頭のいいヤツが揃ってるし、何が失言になるかわかったもんじゃねえしな……)


基本的にしぶとい性格をしている葉隠だが、変な所で潔さもあった。自分がこのメンバーの中で
最も頭脳派から遠いことは本人が一番自覚している。故にタチが悪いのだった。


大神「本当に呼び出したのは山田だったのか?」

腐川「どうせ、適当に誤魔化してるだけでしょ! 死人に口なしだものね……!」

不二咲「山田君はまだ死んでないよぉ……」

石丸「ウーム、山田君がこの呼出状を書いたという確かな証拠でもあれば話は違うのだが」

舞園「私達が現在持っている証拠の中に、何か役立つ物があるかもしれません」

桑田「いっぱいあってよくわからねー!」ウーン


呼出状を山田が書いたという証拠を選べ!

コトダマリスト>>144-145

↓2


【山田の同人誌】正解!


大和田「そういやよ、確か美術室にあいつの同人誌がたくさん置いてあったよな?」

霧切「何かの証拠になるかもしれないと思って一部持ってきているわ」

K「同人誌とは要は漫画だ。漫画だから当然至る所に手書きの台詞が入っている」

腐川「この特徴的な汚い文字……そうね。間違いなく山田のものだわ……」

桑田「ハハーン、わかったぜ。つまり、どういうワケか山田に呼び出された葉隠は、
    娯楽室は人気がないから誰にもバレずに殺せるチャンスだって気付いたんだよ」

大和田「それで、思い切ってヤっちまったってワケか」

十神「さもありなんという話だ。このクズは前々から金に執心していたからな?」

葉隠「ま、待てって。あの呼び出し状には日にちが入ってなかったし、いつの
    今夜かわからねえべ! つまり、ずっと前の物かもしれねえだろ?!」

苗木「ずっと前って……葉隠君が貰ったものなのにそれがいつかわからないんだ?」

舞園「そもそも、呼び出されたからあの晩娯楽室に行ったってさっき言ってましたよね……?」

葉隠「う゛……」


露骨におかしなことを言い出した葉隠に、全員の冷たい視線が浴びせられる。


江ノ島「もうメンドーだしさっさと投票しちゃおうよ!」

十神「時間の無駄だな」

セレス「ですからわたくしもさっきからそう言っておりますのに……」

K「いや、待ってくれ」


続きは九時頃に。

今回は同意が増えているので【】と<>が紛らわしいですね。
言っている内容が仮に正論でも【】だったら同意できないし、逆にあからさまな
論破ポイントでも<>だったらダミーと思うといいですよ


腐川「な、何が気になるの……? 犯人は葉隠! それ以外にない、と思うけど……」

K「まず、何故葉隠は山田を襲ったんだ?」

葉隠「だから襲ってなんか……」

K「正直に言え! 俺はまだお前を犯人だと思っていないが、言わないならお前がクロだッ!!」


いつになく厳しいKAZUYAの声に、流石の葉隠も俯いて真実の一端を漏らす。


葉隠「う、ぐ……山田っちが俺を襲おうとしたから、咄嗟にモノクマボトルで殴ったんだべ……」

霧切「山田君が葉隠君を襲おうとした……?」

朝日奈「え、なにそれ?!」

不二咲「どういうことぉ……?!」

大和田「なんでそんな大事なことを言わねえんだ!!」


ザワザワ! ガヤガヤ!

裁判場は一瞬で騒然となるが、混乱を正すようにモノクマが口を挟む。


モノクマ「あのさぁ、好奇心旺盛なのは構わないけどキミ達ちゃんとクロを特定する気ある?
      今ここで重要なのは、何で襲ったかじゃなくて誰が襲ったかでしょ?」

セレス「あくまでホワイ(Why?)ではなくフー(Who?)を問うのが学級裁判ですからね」

十神「そうだ、西城。貴様が何故こんな男を弁護しようとしているか知らんが、
    今こいつはハッキリと自白したぞ。山田を襲った、とな」

大神「如何にも。クロを明らかにするだけならこれで裁判も終わりに出来よう」


葉隠「ち、違う! 俺は悪くない! ……そうだ! 動機につられて先に襲いかかってきたのは
    山田っちなんだべ! だからこれは立派な正当防衛で俺は悪くねえんだ!」

桑田「ムダだろ。俺が正当防衛っつった時だって通らなかったし」

舞園「もし葉隠君の言っていることが本当なら気の毒だとは思いますが……」

苗木「そもそも、山田君が本当に襲ってきたの? 勘違いとかじゃなくて?」

葉隠「間違いねえ! それだけは本当に間違いねえべ! この水晶球を賭けてもいい!」

江ノ島「葉隠があのガラス球を賭けるなんて……! なんかマジっぽい?」

大和田「いや、でもしょせんガラス球だろ?」

石丸「僕は葉隠君の熱意を信じるぞ! 彼はきっと本当のことを言っているのだ!」

葉隠「そ、そうだべ! 今回ばかりは全部本当のことだべ! ワッハッハ!」

苗木(……何だろう。確かに本当のことも言ってるんだろうけど、
    他にまだ大事なことを隠してるような気がする)

K(あの晩二人の間にどのようなやり取りがあったか……それが今回の事件において
  重要なピースだと思うが、まだ聞き出せる段階ではなさそうだな)

K(――どうにかして議論を引き延ばさねばなるまい)

霧切「ねえ、まずは山田君の致命傷について議論する必要があるんじゃないかしら?」

K「!」


KAZUYAと霧切の視線が合う。


霧切「葉隠君の与えた傷が致命傷なら彼がクロ、もしそうでないなら他の可能性もあるわ」

K(そうか、霧切。お前も……)

十神「馬鹿らしい。いいだろう。そこまで言うならとことん議論してやろうじゃないか。
    そしてお前達の行動が単なる徒労に過ぎないことをわからせてやる」


[ 山田の致命傷 ]


十神「この無駄な裁判をさっさと終わらせるために、愚民共にもわかるようこの俺がまとめてやろう」

十神「【山田は動機に目が眩み、葉隠を殺すため娯楽室に呼び出した】。
    しかし、間抜けにも<葉隠を殺す前に反撃を受けてしまった>訳だ」

霧切「その時に【使われたのはビリヤード台に置かれていたモノクマボトル】。間違いないわね?」

石丸「娯楽室にはモノクマボトルの物と思われるガラスの破片が散乱していた。
    葉隠君の証言から見ても恐らく間違いないだろう!」

不二咲「<なんの抵抗も出来ずに殴られた山田君はそのまま倒れちゃった>んだねぇ」

大神「咄嗟のこととはいえ【固いガラス瓶で脳天を強打】か。完全に殺す気ではないか……」

セレス「普通の人間は鈍器で思い切り頭部を殴られたら死にますからね」

江ノ島「正当防衛にしてもやり過ぎ。完全にアウト」

朝日奈「やっぱり葉隠じゃん!」

葉隠「う、うう……誰でもいいから助けてくれー!」

苗木「うーん、おかしな所なんてあるかな……?」


適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け!
コトダマリスト>>144-145

↓2


苗木「先生! 質問ですけど、カルテの裂創はどうやって出来たんですか?」

K「打撃が主原因だな。あれは刃物で斬りつけられた鋭い裂創ではなく、強い打撃で
  皮膚が裂けた鈍い創だ。だから、頭部の出血自体はさほどでもなかったろう?」

K「頭部のように皮膚が薄い部位は、一定以上の衝撃を与えると裂けてしまうのだ」

桑田「殴られて肌が破れるってなんかイメージしにくいけどなー」

大和田「いや、俺はわかるぜ。確かに腕や足は殴られてもアザになるだけだけどよ、
     頭を殴られたら結構血が出るからな。あと鼻もヤバイ」

腐川「物騒な話をしないでよね……」


不正解だ。

コトダマリスト>>144-145


↓2


【モノクマボトル】 ドンッ! ====⇒ 【固いガラス瓶で脳天を強打】BREAK!!


霧切「それは違うわ」

大神「何が違うのだ?」

霧切「あのボトルは中のぬいぐるみを綺麗に見せるため、非常に薄く
    作られているの。落としただけで粉々になってしまうほどにね」

K「そう、それが俺の気になっている所だ。人間の頭蓋骨はお前達が思っているよりずっと
  頑丈に出来ている。中身がからっぽの薄い瓶で殴ったくらいなら脳震盪で済むはずだ。
  山田は頭部にも脂肪が多く付いていたし、頭蓋骨も分厚かったからな」

苗木「そういえば……落ちていたガラスの破片にはそんなに血がついていなかったね」

石丸「成程、血が吹き出る程の衝撃ではなかったということだな」

セレス「そんな手札は通りませんわ!」


     反論ッ!!


セレス「確かにモノクマボトルの瓶は薄っぺらいかもしれません」

セレス「ですが、底の角の部分で殴ればどうです? ここなら他の部分より固いはずですわ」

セレス「不幸にも山田君は瓶の当たりどころが悪く致命傷を負ってしまった。
     これならガラスが薄いモノクマボトルが凶器でも矛盾はありません」

セレス「【角の部分で殴っていない証拠でもない】限り、その推理はあくまでも憶測なのです」


スルー or 論破
論破する場合はコトダマリスト>>144-145

↓2


【山田のカルテ】→【角の部分で殴って/いない証拠でもない】


             解ッ!!


K「その言葉、メスをいれさせてもらう」

K「カルテに写真を付けたから見て欲しいが、山田の傷は広範囲に丸く腫れ上がっている。
  もし君の言う通り瓶の角で殴ったなら、細長い傷痕になるはずだが?」

セレス「あら、そのようですわね」

朝日奈「でも、じゃあどういうこと?」

十神「……つまり、モノクマボトルでの一撃は致命傷とはならなかったということだ」


苦々しい顔で十神も認める。


葉隠「ほ、ほら! やっぱり俺は犯人じゃなかったじゃねえか!」

桑田「うるせー! お前が山田を殴ったことに変わりはねえだろうが!」

不二咲「でも……じゃあ、どうして山田君は瀕死の状態だったのかな?」

K「それについてだが、はっきり断言出来ないからカルテには書かなかったが、どうも
  傷口がズレている気がする。つまり、俺には深い傷と浅い傷の二つあるように見える」

苗木「それって……!」

霧切「山田君は二回殴られ、そして二回目が致命傷になった可能性があるということよ」

江ノ島「モノクマボトルが凶器じゃなかったの? じゃあ本物の凶器は……?」

K「それについてはもう見当が付いている。わかるな、お前達?」


コトダマリスト>>144-145

↓2


【埃のないハンマー】 正解!


桑田「覚えてるぜ。これだろ!」

石丸「僕が美術室で発見したハンマーだな!」

舞園「このハンマーだけホコリをかぶっていなかったんです。誰かが使って洗ったんですよ」

大和田「兄弟が掃除掃除うるさいから気付いたんだよな」

霧切「一歩間違えば証拠を消してしまう所だったけどね」

苗木「それは言いっこなしだよ……」

十神「何故それが事件に使われたと断言出来る? 別の用で使った可能性もゼロではあるまい」

桑田「アレだよ、アレ! ルミノール反応! せんせーが調合して薬を作ったんだって」

葉隠「そんなことまで出来るんか?!」

石丸「ルミノール試薬は知識と薬品さえあれば意外と簡単に作れるぞ?」

江ノ島「まるっきり科学捜査じゃん! なら、犯人もすぐ見つかるんじゃない?」

霧切「それはどうかしらね……」

苗木「霧切さん、それってどういう……」

霧切「…………」


霧切は答えなかった。ただいつものように思案顔で顎に手を当てただけだ。


K「だが、ルミノール反応は絶対ではない。実は血液以外にも反応する成分がいくつかあり、
  しかも反応精度が高すぎるため裁判での証拠能力は知名度の割りに高くないのだ」

舞園「えっ、そうなんですか?」

霧切「本当よ。だから科学捜査では常に複数の視点から検証を行うの。間違いがないようにね」

K「故に、今回はルミノール反応に加え保健室にあったこれを使った。本来は便潜血を
  調べるキットだが、これに付属する試薬を使えばヘモグロビンの有無がわかる」

不二咲「ヘモグロビンって確か赤血球の中に含まれてるタンパク質のことだよねぇ?」

石丸「そうだぞ。人間の血が赤いのはヘモグロビンに含まれる赤色素ヘムに由来しているからだ!」

K「検査の結果は陽性だった。つまり、このハンマーに血液が付着していたのはほぼ確かという訳だな」

大和田「お、おう」

葉隠「ええ~っと……つまりそういうことなんだな、うん」

腐川「本当にわかってるんでしょうね……?」

K「真犯人かは別にして、今一番怪しいのが葉隠なのは間違いないだろう」

桑田「なんかいろいろ余計なことしてそうだしな」

朝日奈「さんざんウソついてたしね! 信用できないよ」

K「真相を明かすためにもあの晩の葉隠の行動をもっと突き詰めたい。
  本当にお前が犯人でないなら、事件の時の出来事を順を追って正確に話せ」

霧切「今度嘘をついたらあなたを犯人として扱うわよ?」

大神「お主の体をサバ折りにしてくれよう」

葉隠「ヒ、ヒィィ! わかった! わかったからそれだけは勘弁してくれ!」


そして葉隠は少しずつあの晩のことを話し出した。


ここまで。

次は木曜頃を予定。それでは。

すみません。修正に手間取って今日は間に合いませんでした。土曜日に来ます
コメントたくさんもらえて嬉しいです。いつもありがとうございます。


葉隠「え、えっとだな……あの時は頭に血が上ってて正直あんまり覚えてねえんだけど……」

葉隠(へ、へへ……良かったべ。泣きついてみるもんだな! 今回で俺の容疑は
    晴れたし、あとは『あのこと』さえ黙っとけば万事上手くいく……)


すっかり気が抜けた葉隠は持ち前の飄々さを少し取り戻したが、その空気は周囲にも伝わっていた。


霧切「……ねえ葉隠君、あなた勘違いしていないかしら?」

葉隠「あ? 何を?」

霧切「言っておくけどあなたの容疑はまだ完全に晴れた訳じゃないのよ?」

葉隠「ぬなっ?! なんでだべ?! 俺の攻撃で山田っちは死ななかった! それでいいじゃねえか!」

十神「馬鹿め。西城が証言したのはあくまで初撃で死ななかった可能性が高いということだけだ。
    山田を殴って後に引けなくなった貴様が改めてトドメを刺していないと何故言える?」

葉隠「ああーっ??! ち、違う! 俺じゃねえべ! 本当だべ!!」

K「わかったからさっさと話せ。それとも投票にするか?」

葉隠「待った! 待ってくれ! 今話すって! 俺はメモで呼び出されて娯楽室に行ったんだべ!」

腐川「怖がりのくせになんでのこのこ呼び出しに応じた訳? 馬鹿じゃないの?」

セレス「きっと脱出の二文字に目が眩んだのですわ。つまり馬鹿なのです」

葉隠「そう言われたら反論できねえけど……」


桑田「そもそもさ、山田がいきなり襲いかかったっつーのがまず信じらんねえよな」

不二咲「人を襲うような人には見えなかったけど……」

大和田「いや、ああいうタイプは案外キレるとタチわりいぞ?」

朝日奈「前にすごい怒鳴ったこともあったしね。けっこう気の強いところはあるんじゃないかな?」

大神「そうだな……あの時は大変だった」


食堂で大喧嘩をした時のことを思い出す。あの時の山田は大神かKAZUYAでなければ止められまい。


舞園「娯楽室で会った時、山田君は何か言っていませんでしたか?」

葉隠「ああ、少し話したぞ」

大神「会話していたのか! 何と言っていた?」

葉隠「前に不審者騒動があったろ? そのことについてだ」

K「不審者だと……?!」

K(何故ここで唐突にその話が出る――!)


あまりに予想外過ぎる話の流れに、議論は大きくターニングポイントを迎えることとなる。


[ 浮かび上がる不審者の影 ]


葉隠「それが、変なマスクを見せながらいきなり<俺が内通者>だのなんだの言われたんだべ!」

K「マスク? 現場に落ちていたというあの妙なマスクか……?」

セレス「何故そんな重要なことを黙っていたのです!」

葉隠「いや、だって……下手なことを言うと俺が不審者扱いされるかもしれねえし……」

十神「この期に及んでまた山田のせいか。いい加減ワンパターンだな」

大和田「呼出状はともかく、お前が前にモノクマから
   【凶器をもらっていた】のは言い訳できねえからな?」

朝日奈「そういえば、あんた前にもナイフを振り回してたよね?」

江ノ島「【ナイフ持ってる葉隠が不審者】なんじゃないの? つーかそれが一番自然だし」

舞園「以前の朝日奈さんの証言よりは少し背が大きいですが、誤差の範囲ではありますね」

苗木「じゃあ、逆に言うと【例の不審者が山田君を襲った訳ではない】んだね?」

葉隠「だから俺は不審者じゃねえって! きっと真犯人が不審者なんだべ!
    <マスクを取り返しに後から現場に現れた>んだ! 間違いねえ!!」

大神「そもそもマスクの出どころがわからないのではな……」


適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け!
コトダマリスト>>144-145

↓2 また明日


スキル【診察】発動!

・大和田
・江ノ島
・苗木

この三人の誰かが論破相手だ!


↓2次は夜

【例の不審者が山田クンを襲った訳ではない】←<マスクを取り返しに後から現場に現れた>

とか可能なのかな?

>>272
今回コトダマ吸収はなしです。


話は変わりますが、諸事情で1はまだK2読んでないんですよね
大垣先生の娘って出てくるのかな?wikiにも載ってないので名前教えてくれると助かる

安価下

大和田の矛盾点:「凶器」=ナイフはセレス襲撃のものであり、本件との関係性は不明
苗木の矛盾点:「不審者が山田を襲った訳ではない」の論拠不足

江ノ島の矛盾点がわからんな……
安価下


大和田「なんでそう言えるんだ? 朝日奈の証言によるとよ……」

朝日奈「え、なんでそこで私の証言が出てくるの?」

苗木「僕の発言は、もし葉隠君があの時の不審者の正体なら他に不審者が存在して
    その人が山田君を襲った訳じゃないんだね?っていう意味だよ」

霧切「不審者が複数いたらどうしようもないけど、今回はその可能性は消しているわ」

モノクマ「だって、この場にいない奴が犯人だったら裁判成り立たないし」


コトダマリスト>>144-145

↓2


苗木「ぜ、全然わからないよ……助けて霧切さん!」

霧切「今回は少し捻った問題だから難しいかもしれないわね……。
    とりあえず【】の部分をもう一度落ち着いてよく読んで頂戴」

K「論破する、ということはそれを否定するということだ。例えば【凶器をもらっていた】を
  否定するのなら凶器を貰っていない証拠を提示すればいい。【ナイフ持ってる葉隠が
  不審者】を否定するなら葉隠が不審者ではない証拠を提示すればいい」

不二咲「でも、どのコトダマで否定出来るかわからないよぉ……」

霧切「これ以上は答えになるから、思い切ってスキルでコトダマを絞るのはどうかしら?」

K「コトダマさえわかれば、自ずとどの台詞を論破するか見えてくるはずだ」


↓2

江ノ島の【ナイフ持ってる葉隠が不審者】を【ナイフ】で論破はどう?
葉隠が前にモノクマから渡されたナイフは事件の時にはもう持ってなかったから


江ノ島「は? そのマスクがどうかしたの?」

苗木「葉隠君がかぶるには髪が邪魔なんじゃないかなーって……」

モノクマ「マスクはフリーサイズとなっております。推理漫画でよく犯人が黒い影になっているけど
      実際にはあの影に収まりきらない人なんてたくさんいるでしょ。そういうもんです」

十神「頭の大きい人間は入らないなら、誰かが大きさについて言及しているはずだろう。馬鹿め」

セレス「大きさについて説明がないということはそこは問題ではないということですわね」

霧切「でも、着眼点は良くなって来たんじゃないかしら。少しずつ真実に近付いているわ」

石丸「ムムム。不審者について何か思い出せそうな気が……?」

舞園「もう少しですよ。頑張ってください!」


コトダマリスト>>144-145

↓2


スキル【M.A.R.S】ヲ起動シマス...

ウィィィン!


コトダマ装填→【ナイフ】ガチャッ


↓2


大和田「葉隠が前にモノクマから凶器をもらってたのは間違いねえからな!」

苗木「そのナイフはセレスさんの犯行に使われたナイフだよね?」

桑田「おう。ハッキリ覚えてねーけど、確かそんな感じの折りたたみナイフだったぜ?」

江ノ島「じゃあやっぱり葉隠じゃん!」

葉隠「ヒエー?!」


違ったようだ。既に正解(>>308)が出ているので、オートで進行


【ナイフ】 ドンッ! ====⇒ 【ナイフ持ってる葉隠が不審者】BREAK!!


石丸「いや、それは違うぞ! 不審者が持っていたナイフはアーミーナイフのはずだ。
    今回の事件で葉隠君が使ったナイフとは別物だぞ!」

大和田「セレスを刺したナイフは折りたたみだし、どっちかっつーと
     護身用って感じだな。前にモノクマから貰ってたヤツだろ、多分?」

不二咲「あの騒ぎは不審者事件より後に起こったしねぇ」

霧切「葉隠君が不審者の正体なら、わざわざ凶器を変える必要はないと思うわ」

腐川「構成がなってないわね……!」


        反論ッ!!


腐川「何でナイフの種類が違うから不審者じゃないってことになるのよ……
    不審者はモノクマの手先なんだからナイフぐらい何本でも持ってるでしょ」

腐川「は、【葉隠が不審者の正体】だった! それで決まりじゃない……!」


スルー or 論破
論破する場合はコトダマリスト>>144-145

↓2


腐川「部屋が何? それで葉隠が不審者じゃないって何で言えるのよ」


違ったようだ。


スルー or 論破
論破する場合はコトダマリスト>>144-145

↓2


        発展!


苗木「でも、何でわざわざ違うナイフにしたんだろう? サバイバルナイフはどこに行ったの?」

腐川「知らないわよ、そんなの。あたしに聞かないでよね!」

腐川「【持ち運ぶのに不便】だから小型のナイフに変えたんじゃないの?
    どうせ行方不明のサバイバルナイフだって【どこかに隠してる】んでしょ……!」


スルー or 論破
論破する場合はコトダマリスト>>144-145

↓2


腐川「ハア?! それが何だって言うのよ……!
    大型のナイフは持ち運びが不便だから小型のナイフにしただけでしょ!」


違ったようだ。


スルー or 論破
論破する場合はコトダマリスト>>144-145

↓2


【葉隠の部屋】→【どこかに/隠してる】


             解ッ!!


苗木「その言葉、切らせてもらうよ」

苗木「葉隠君は事件後すぐに大神さん達に確保されて証拠を処分出来る時間なんてなかった。
    もし葉隠君が不審者の正体だったのなら、部屋にサバイバルナイフがあるはずなんだ!」

セレス「ですが、娯楽室に行く前にサバイバルナイフを隠せばいいだけでは?」

苗木「葉隠君は山田君に呼び出された側であって元々殺意があった訳じゃない。だから護身用に
    小型のナイフを隠し持っていただけであって、事前にサバイバルナイフを隠す動機がないよ」

江ノ島「まあ、普通は部屋の中が一番安全な隠し場所だもんね」

桑田「隠そうとしてるとこを見られたらそれこそ言い訳できねーしな」

K「凶器を変えるメリットがないのはそれだけではない。不審者の正体は未だ明らかに
  なっていないのだ。可能ならば不審者のせいにした方が逃げ延びられる確率は上がる」

葉隠「ほー、成程なぁ」

腐川「なんであんたが納得してんのよ。……そうね、確かにこのバカが不審者は無理があったわ」

朝日奈「でもさ、いくら護身のためでもナイフなんて持ち歩かないでよ!
     現に事故が起こっちゃったワケだしさ!」

葉隠「あ、その件なんだけどな……」


気まずい顔で葉隠は切り出す。



葉隠「実は、あのナイフは騒動のドサクサで失くしちまって事件の時はもう持ってなかったんだべ……」



シーン……!



一瞬の静寂の後、全員が同時に声を上げた。


「ハァ?!」

苗木「葉隠君、いくらなんでもその言い訳は……」

葉隠「ほ、本当なんだって! 大マジだべ!!」

十神「投票するか……」

大神「そうだな……」

セレス「時間の無駄でしたわね」

桑田「なんかすっげー疲れたわ……」

葉隠「待った待った! K先生ー!!」

K「……気持ちはわかるが、全員落ち着け」

霧切「彼以外にナイフを入手出来た人はいるのかしら? 凶器の入手手段を調べる必要があるわね」

K「モノクマ、確認だ。俺達の誰かが殺人を計画したとして、お前が凶器を用意することはあるか?」

モノクマ「ボクがこっそり凶器を渡すことはありません! 誰も知らない凶器を持ってるというのは
      ミステリーにおいてかなり強いアドバンテージがあるからね。謎解きは公平でないと」

K「――それは内通者であってもか?」


ギロリと鋭い目線を飛ばしながらKAZUYAはモノクマを睨みつける。


モノクマ「内通者であっても、内通者がその正体を明かさない限りは他の生徒と同様に扱います。
      学級裁判においては、たとえボクの内通者であろうと同じまな板の上の鯉なのです!」

霧切「では、凶器以外の道具はどうかしら?」

モノクマ「……全く、細かいなぁ。新妻に指のホコリを見せて詰め寄る姑並みだよ」

K「で、どうなんだ?」

モノクマ「うーん、ボクはフレキシブルなクマだからね。不自由はさせないって前に言っちゃったし、
      倉庫にあってもおかしくないような平凡な品物なら、要望に応じて渡したことはあるよ」

モノクマ「でも、事件に使う道具は別! この学園にはたくさん物があるでしょ!
      犯人にはそれを上手くやりくりして事件を起こしてもらわないと」

大神「では、内通者もモノクマから凶器を受け取っていないと言うことか」

十神「その発言……裏を返せば俺達の中に不審者はいなかったと言うことになるな」

不二咲「体型的に山田君は不審者じゃないだろうし……」

モノクマ「ギク! まさかとは思いますが、その『不審者』とはあなたの想像上の存在にすぎないのでは
      ないでしょうか。もしそうだとすれば精神科の病院にかかることを切にお勧めします」

朝日奈「ひどい! 私おかしくなんかないよ! 確かにいたもん!」

石丸「そうだ! 僕だって誰かを投げた覚えがあるぞ!」

モノクマ「う、うるさいよ! 今はそんなこと話してる場合じゃないでしょ!
      真面目に議論する気がないならタイムアップにするよ!」

K(……やはり不審者の正体はこの場にいない人間だったか。だが、予想の
  範囲内であって特に驚くことではないな。今は裁判に集中せねば……)

霧切「山田君は他に何か言っていた?」


葉隠「他? 俺がモノクマの内通者だって言いがかりをつけてきて、
    俺が否定したら襲ってこようとして……。おう、そんだけだ」

桑田「え、そんだけ? 手掛かりは?」

大和田「なんかこう、あんだろ。事件解決につながるような重要な発言とかよ」

葉隠「いや、なにも。本当にこれだけだべ」

苗木「え、いやいやいや……」

腐川「ここまで議論して来たっていうのに、結局どん詰まりぃ?!」

葉隠「そんなこと言われてもなぁ。あの時は頭に血が上ってて記憶も飛び飛びだしムチャ言うなって……」

十神「おい、葉隠……嘘をつくにしても、もう少しまともな嘘をついたらどうだ?」

葉隠「ウ、ウソ? 俺はウソなんて……」


獲物を見る蛇のように冷たい目をした十神が、葉隠をじっと睨み付けていた。


十神「今までの議論で証明されたのはせいぜいお前が山田に呼び出されたことくらいだ。
    どうせ、言いがかり等は全部嘘で本当はお前から襲いかかったんだろ?」

セレス「葉隠君は先程から嘘ばかりついていますからね。何が本当で何が嘘なのか信用できませんわ」


今度ばかりは嘘ではなかったのだが、哀れな狼少年もとい狼青年はすっかり信用を失っていた。


葉隠「ああー! 俺は本当のことを言ってるはずなのに! もう頭ん中ぐちゃぐちゃだべ!」

K「凶器についての議論はここで打ち止めのようだ。次は、別の視点から話してみよう」

苗木「別の視点と言えば……」

K「どうした?」


苗木「山田君は、体型が違いすぎるから不審者じゃない。
    で、さっきの議論で葉隠君も不審者じゃないって結論になった」

苗木「葉隠君も山田君も不審者じゃないなら……あのマスクはどこから来たんだろう?」

不二咲「本当だ……山田君は本物の不審者の正体を知ってたのかなぁ?」

江ノ島「でもそれだと葉隠を不審者呼ばわりしたことの説明が付かなくない?」

モノクマ「君達ってさぁ、人に言われたことをすぐ素直に信じちゃうよね。考える頭がないの?」


議場が迷走する前に、素早くモノクマが割って入った。


モノクマ「あのマスクが本物とは限らないでしょ? あんなマスクどこにでもある訳だし。
      そんなんだと、葉隠君みたいに騙されてガラス球を掴まされることになるよ?」

葉隠「これは本物の水晶球だべ! かのナポレオンがなぁ……!」

桑田「あー、その話聞くと一気に信憑性なくなるわ」

腐川「どうせモノモノマシーンじゃないの? あの中には色んなガラクタが入ってたじゃない」

大和田「まあ入っててもおかしくはねえよな。役に立つモノより変なモノの方が多いしよ」

霧切「逆に、あのマスクを手に入れたからこそ今回の犯行を思い付いた可能性もあるわね」

十神「山田がな。葉隠を不審者呼ばわりしたのは単に因縁をつけただけだろう」

セレス「きっと不審者に罪をなすりつけようとしたのですね」

苗木(因縁をつける? ……でも、それって変じゃないかな。
    どう考えても不意打ちした方がいいと思うけど……)

苗木(なんでそんな、わざわざ相手に警戒させるようなことをしたんだろう。まるで……)

K「――何かから注意を逸らすかのようだ」

苗木「えっ?!」

K「…………」

不二咲「どうかしたのぉ?」

K「……いや、何でもない」


ちょっとゴチャゴチャしてきたので、ここで一旦切って整理しておきます。

シーユー


朝日奈「あれ? ていうことは、そのマスクって偽物? うーん、本物だと思ったんだけどなぁ……」

石丸「僕は記憶がしっかりしていないから何とも言えないが……」

K「では、再び議論に戻ろう。とりあえず舞園、今までの流れをまとめてくれないか?」

舞園「はい。山田君から呼び出し状を貰った葉隠君は、九時半に三階の娯楽室に行きました。
    そこで内通者扱いされ襲われそうになった葉隠君は山田君をモノクマボトルで殴打」

舞園「慌てて現場から逃げ出そうとした葉隠君は運悪くセレスさんに遭遇し、
    持っていたナイフで口封じにセレスさんを刺しそのまま逃亡」

舞園「その後、現れた真犯人が凶器となるハンマーで山田君にトドメを……」

K「待て。わかったのは凶器がハンマーであるということだけだ。時系列はまだ確定していない」

葉隠「なんでだべ?! そういうことだろ?!」

十神「フン、馬鹿め。もう先程の言葉を忘れたのか? ボトルで殺しきれなかったことに気付いた
    貴様が、美術準備室からハンマーを取ってきて改めてトドメを刺した可能性も消えていない」

十神「証拠を隠滅し逃げようとした時にセレスと遭遇、刺した。今のところ一番無理がない解釈だ」

大神「セレスよ、お主は何か覚えていないのか?」

セレス「何度も皆さんに説明した通りです。刺されたショックで細かいことまでは覚えておりません」

セレス「娯楽室の中で倒れている山田君と葉隠君を目撃したのです。
     驚いて叫んだら刺されて、あとはそのままですわ……」

江ノ島「葉隠ならやりかねないよ」

葉隠「ちげーって!!」

苗木「でも、仮にそうだとしても結局証拠はないってことになるんじゃ……?」


朝日奈「じゃあ、さっさとこのバカに投票しよっか」

葉隠「ひぃ、ひええっ!」

霧切「……待って」

桑田「どうかしたのか?」

霧切「さっきから葉隠君の存在が邪魔をしてちっとも真相に近付いている気がしないわ」

石丸「確かに。葉隠君の行動がいちいち疑わし過ぎる! 君は一体何をしているのだね?!」

葉隠「何って言われても……俺、巻き込まれた側だしなぁ……」

江ノ島「その後の行動が怪しすぎるから問題なんでしょ!」

十神「山田を瓶で殴りセレスを刺した。この二つは確定しているからな」

大和田「犯人として見りゃそれでもう十分すぎるくらいだろ……」

舞園「それで、霧切さん。何か良い案でも?」

霧切「…………」


顎に手を当てながら、霧切は目を閉じ思案する。


霧切「……いっそ発想を転換して、もし葉隠君以外の第三者が
    現場に現れていたらと仮定して議論するのはどうかしら?」

苗木「第三者?」


霧切「そう。その議論で第三者の可能性が否定されたら葉隠君が犯人で確定ということになるわね」

葉隠「逆に、第三者の存在が証明されたら俺は無実で確定ってことなんだな?!」

K「それでいいだろう」

不二咲「あ、でも、もし仮に第三者が校舎にいたとして……」

大和田「どうした?」

不二咲「その……」

江ノ島「なによ。ハッキリ言ってくれない?」

K「『何故室内で倒れている山田に気が付いたのか』ということか?」

不二咲「は、はい。床に倒れているから、扉の窓に近づかないと視界に入らないと思うし……」

苗木「あ、そうか。仮に校舎内に用があって来たとしても、普通は通り過ぎちゃうよね」


事件時、娯楽室の扉は完全に閉まっていた訳ではないがほぼ閉まっており、
廊下が薄暗いこともあって中に気付かず通りすぎてもおかしくない。


石丸「セレス君のように、娯楽室に何らかの用があったということか?」

大神「何か異常に気付くキッカケがあったのやもしれぬ」

K「或いは――」


腕を組んだまま、KAZUYAは衝撃の言葉を口にした。


K「――その場にいて二人のやりとりを目撃していたか」

「ええっ?!」


何の証拠もないもはや飛躍してるとすら言えるその発言に、すぐさま反論が飛び交う。


十神「そんな人物はいない! 葉隠が犯人で確定だ!」

セレス「そうですわ! そうそう校舎内に人がいるでしょうか?」

桑田「……流石にちょっとキツくねーか?」

大神「ウム……」

舞園「西城先生……」


しかし、KAZUYAは頑として譲らなかった。


K「確かに都合の良い話だ。だが、第三の人物の存在が否定されたら、
  その時は改めて葉隠が犯人だと霧切も言っただろう」

K「上手く行けば、これが最後の議論となるはずだが?」

腐川「これで葉隠の命運が尽きるって言うなら……確かに議論してみる価値もあるかも……?」

朝日奈「『楽を求めたら、苦しみしか待っていない』って野村監督も言ってるしね。
     トコトン議論しようよ。絶対葉隠が犯人だと思うけどさっ!」

葉隠「そもそも俺が犯人だっていう前提をやめて欲しいべ……」

K「……それでは、最後になるかもしれない議論を開始しよう」


ここまで。今回の投下分を三行でまとめると、

霧切「葉隠ジャマ。第三者いないなら犯人」
K「おk」
葉隠「酷いべ」


先週は体調不良で休んでしまいすみませんでした
あとダンガンロンパ3絶望編おめでとうございます!動く2キャラ楽しみですね。

今週中になんとか議論だけ投下する予定です。では


[ 第三の人物 ]


不二咲「その場にもし別の人がいたらってことだよねぇ」

セレス「そんな人が都合良くいるのでしょうか?」

江ノ島「もしいたとして、外でたまたま<盗み聞きしてた>とか? まさか、中にはいないだろうしさ」

霧切「隠れる場所自体はあるわ。例えば<掃除ロッカーの中>とか」

大和田「【ビリヤード台の後ろ】でもいけるよな」

大神「しかし、一体何のために?」

十神「<目的もないのに現場にいる>とは思えんな」

舞園「【何故校舎内にいたのか】も疑問ですね」

朝日奈「そもそもさ、本当にいたの? 【第三者がいたなんて思えない】んだけどな」

K「今までに明らかになった事件当時の状況と、矛盾している証拠があるはず。よく見るんだ」


適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け!
コトダマリスト>>144-145

↓2


見取り図に掃除ロッカーがありませんでしたね。スミマセン
スロットの上、右上の方にあります。


セルフage
あと、書き忘れたけど今回間違えるとオマケが見れます。


論破失敗!


十神「何が第三者だ! そんなものはいなかった!」

セレス「長い議論でしたわね」

江ノ島「もうさっさと投票にしちゃえば?」

K「待ってくれ! まだ証明が……!」

モノクマ「タイムアーップ!! 投票してください!」

K「待て! まだ議論は終わっていないぞ!」

モノクマ「うるさいなあ。投票って言ったら投票なの! もう飽きたの! はい投票投票!!」

苗木「そ、そんな……?!」


             ・

             ・

             ・


モノクマ「ブッブー! 不正解! 残念でした!!」

舞園「信じられません!」

桑田「ウソだろ……ウソって言ってくれよ……」

不二咲「み、みんな……」


生徒達が次々に連行され、オシオキにかけられていく。
絶望的な顔でそれを見ていたKAZUYA自身も同様に死刑場へと引きずられて行った。


オシオキを受けて血まみれになりながらも、KAZUYAは叫ぶ。


K「誰だ……! 一体誰が犯人だったんだッ?!」

???「…………」

K「お前はッ?! そうか……!!」

K「……こんなことをして、許されると思うなよッ!!!」

???「…………」


黒い影がKAZUYAを見下ろしている。その顔に浮かんでいる感情は嘲笑なのか哀れみなのか、
或いは侮蔑なのか罪悪感なのか、傷つき激昂するKAZUYAにはついぞわからなかった。


モノクマ「それでは皆さん、さよ~なら~!」


K(こんな、はずでは――)


視界が血に染まり、そして……真っ暗になった。




― GAME OVER ―


コンティニューしますか?

→はい
 いいえ


まあ、結果は見えているので普通に続行


苗木(なんか今、縁起でもない変な夢を見たような……)

K「どうかしたか、苗木?」

苗木「あ、いえ何でもないです」

K「証拠一覧をよく読んで見るんだ。今までに明らかになった事件当時の状況では
  説明しきれない妙な証拠があるはず。それを使うんだ」


↓2


霧切「基本的にコトダマは一度しか使わないわ。だから、明らかに議論の決め手となりそうな
    コトダマはここぞという時にこそ使って一気に場の流れを引き寄せるのよ」

霧切「でも、重大な事実をいきなり目の前に突きつけるよりも、まずは軽い一石を投じて
    新事実を受け入れる土台を作ってから重要な証拠で一気に畳み掛けるのも手ね。
    今までの流れを見ていても、ドクターはどうもそういう手法が多いわ」

霧切「慎重派なのかしら? 医者だから、確実性を重視しているのかもしれないわね。
    今回もそのパターンで、まず奇妙な『アレ』の提示を求められているわ」

霧切「>>389で舞園さんが事件の仮の流れをまとめているから、それと
    コトダマリスト>>144-145を比較するのがいいかもしれないわね」


↓2

セルフksk


十神「それがどうかしたか?」

苗木「雑誌が裏返って置かれてて……」

大神「事件の前からそうだったのでは?」

苗木「中にダイイン……」

十神「いちいち無駄話をするな!」

大和田「おいおい、苗木ィ。しっかりしてくれよ」

苗木(……今はまだこの証拠を使うタイミングじゃないみたいだ)


↓2

論破ポイントが【第三者がいたなんて思えない】だと仮定して
霧切さんのヒントで奇妙な『アレ』の提示ってあるから【ヨウ素液】みたいな普通のコトダマは除外される
残ったコトダマで奇妙なのは【血文字の書かれた雑誌】【なくなった二つのボトル】【秤の実験】ぐらいだが
【血文字の書かれた雑誌】は否定(あくまで【第三者がいたなんて思えない】のセリフだけだけど)
【秤の実験】は【なくなった二つのボトル】を使ってからだと思うので
残った【なくなった二つのボトル】が使うコトダマかな?

安価なら【第三者がいたなんて思えない】に【なくなった二つのボトル】

>>430
QED!

【なくなった二つのボトル】 ドンッ! ====⇒ 【第三者がいたなんて思えない】BREAK!!


霧切「それは違うわ。なくなったモノクマボトルに注目して頂戴」

腐川「それが、なんだっていうのよ……」

霧切「葉隠君、あなたが手に取ったボトルは六つのうちどれかしら?」

葉隠「覚えてないべ。でも、端じゃないから確か真ん中辺だったような……」

K「お前が割ったボトルは確かに一本だな?」

葉隠「ハア? 当たり前だべ。こちとら一回しか殴ってねえんだから」

霧切「葉隠君が使ったボトルは右から三番目のもので間違いない。そうなると、
    なくなったもう一つのボトルは一体何故割れたのかしら?」

江ノ島「なくなったもう一つのボトルって何よ?」

苗木「あのボトルの中のモノクマはそれぞれチェスの駒を持っているんだ。全部で六つあって、
    床に落ちていたのはナイトと一番端に置いてあったと思われるキングだね」

石丸「ああ。僕は掃除の時確かに順番に並べた。それは間違いない」

桑田「本当は葉隠が二回殴ったんじゃねーのか? トドメを刺すためにさ」

セレス「ですが、先程凶器はハンマーということになったのでしょう?」

大和田「最初にボトルを掴んだ時、勢い余って隣りのも落としただけだろ」

舞園「落ちていたのは隣りのボトルではなく端のボトルですよ?」

大神「きっと葉隠が逃げる時ぶつかって落としたのだろう」

朝日奈「そうだよ。葉隠ってそそっかしいし!」

葉隠「逃げる時にそんなヘマはしないべ! 俺だって伊達に逃げ回ってねえんだ!」

石丸「葉隠君は変な所で冷静だからな……それにボトルを割ったことを隠しておく動機もない」

苗木「となると、何で割れたんだろうね?」


霧切「後から誰か来たんじゃないかしら? 倒れている山田君に驚いて手が
    ぶつかってしまった。……或いは、娯楽室の中に既に誰か隠れていたとか」

大和田「そう簡単に隠れるって言われてもな。例えばどこだよ?」

霧切「自分で言っていたじゃない。ビリヤード台の後ろよ。慌てていたか、或いは突然の
    出来事に動揺してビリヤード台にぶつかり、その衝撃で端のボトルが落ちてしまった」

十神「辻褄は合うな」

桑田「じゃあそいつが犯人か!」

朝日奈「でもさぁ、やっぱり葉隠が落としただけかもしれないよ?」

腐川「こいつの発言に信憑性なんてカケラも感じられないわ!」

葉隠「否定できねえのがツラいところだべ」ウンウン

桑田「いや、そこは否定しろよ……」

葉隠「とにかく、俺は山田っちを殴った後【一目散に逃げた】んだって!
    モノクマボトルは勿論、他に何も触ってないし何もしてねえべ!」

K「一目散に逃げた、か」

霧切「…………」


KAZUYAと霧切の顔が少し強張っている。


苗木「ねえ、葉隠君――また嘘ついてない?」

葉隠「は? う、嘘……?! 何を根拠にそんなこと言ってんだ!」


コトダマを選べ!

コトダマリスト>>144-145

↓2


【血文字の書かれた雑誌】


苗木「葉隠君、この雑誌に見覚えあるよね?」

葉隠「…………」

大神「その雑誌がどうかしたのか?」

苗木「この雑誌の中に血で書かれた文字があるんだ」

腐川「山田のダイイングメッセージってこと? だ、誰よ! 誰なのか早く言いなさいよ!」

舞園「それがですね……」

石丸「カタカナで十神君の名前が書いてあったのだ! しかし、
    セレス君の証言もあるしきっと何かの間違いだろう」

葉隠「間違い?! そんなわかりやすいシャイニングメッセージがあるんだから
    十神っちが犯人に決まってるべ! 俺の推理は三割当たる!」

セレス「シャイニングではなくダイイングですわ……」

江ノ島「輝いてどうすんのよ……」

十神「ふざけるな! この俺がこんなトリックのカケラもないチープな事件を起こすか!」

苗木「そこ、怒る所なのかな……」

霧切「……葉隠君。あなた、そろそろいい加減にしてくれない?」


霧切の目が完全に据わっていた。声も1トーン低い。


葉隠「ヒッ! 霧切っちがいつになくマジギレモードだべ……」

霧切「さっきから思っていたけど、あなた私達に問いただされたこと以外
    何一つ本当のことを話していないじゃない……!」

葉隠「うっ……それは……」


霧切「裁判のルールを忘れたの? 仮にあなたがクロでないなら、
    私達が投票を誤った場合あなたもオシオキを受けるのよ?」

K「正直に言え。……この雑誌のダイイングメッセージ、本当はお前が書いたんだろう?」

桑田「マジで?!」

セレス「何故そんなことがわかるのです?」

苗木「だって、山田君の体はラックから離れてたから雑誌をラックに戻したのは犯人でしょ?
    でも、普通自分の名前が書かれた雑誌をただ戻す? 名前の部分を破るなりして処分しない?」

十神「この場合犯人は俺ということになるが、俺ならその部分だけ破ってトイレに流すな」

K「十神以外の人間ならわざわざ雑誌を隠す必要はないだろう。事件の撹乱になるからな」

霧切「かと言って第三者が、目につかない場所にダイイングメッセージを
    偽装しても意味がないわ。普通はわかりやすい場所に置いておくはずよ」

石丸「ムム……つまり、第三者にとって都合が悪いから急いで雑誌を隠した、と言うことになるのか?」

朝日奈「でも、なんで都合が悪いの?」

十神「決まっている。第三者は葉隠に罪を被せるつもりだったからだ。葉隠は実際に山田を襲っているし、
    頭が悪いから捜査したらすぐにボロが出る。この俺に罪を被せるよりもよほど安全だ」

腐川「さ、流石白夜様だわ! 名推理です!」

桑田「まあ、確かに……十神より葉隠の方が楽だろうな。俺でもそうするわ」

大和田「そうだな」

朝日奈「そうだね」

葉隠「オメエらひどいべ!」

石丸「仲間を悪く言うのはよしたまえ!」

セレス「わたくし、その仲間に刺されたのですが」

K「ゴホン! 話を戻すぞ。それでどうなんだ、葉隠。まだ嘘を言うならみんなお前に投票すると思うが」


KAZUYAは厳しい目で隣の葉隠を見下ろす。


諦めの悪い葉隠も流石にKAZUYAを敵に回す訳にはいかず、とうとう観念した。


葉隠「……そうだ。俺が書いた。気が付いたら山田っちが倒れて頭から血が出てて、
    必死だったんだべ。とにかく誰かになすりつけねーとって」

朝日奈「サイテー……」

腐川「クズの思考ね!」

モノクマ「あれ? でも腐川さんも事件を撹乱しようとしてなかったっけ」

腐川「だ、だって! やったのはアイツであってアタシじゃないもの!!」

モノクマ「あー、さいですか」

石丸「ム、ムムッ! みんな、大発見だぞ!」

江ノ島「え、なに?!」

石丸「葉隠君の後に雑誌を隠した第三者が存在した! つまり、葉隠君は犯人ではなかったのだ!」

大和田「えーっと……ああ、そうだな」

朝日奈「ホントだ! 大変だよ! また別の人が!」

葉隠「これでやっと俺の無実が証明されたべ!」

不二咲「う、うん! 真犯人を見つけなきゃね!」

桑田「不二咲、気を遣わなくていいぞー」

腐川「馬鹿は放っておきなさいよ……で、次は何を話す訳? もう話せることなんて……」

石丸「やはりアリバイではないか? アリバイのある人間は犯人にはなりえないだろう?」

苗木「僕、先生、桑田君、石丸君、大和田君、不二咲君の六人はずっと保健室にいたし、
    誰もトイレに行ったりもしなかったからアリバイは成立でいいよね?」

桑田「早めに集合して遊んでてほんと良かったわ……」


石丸「いつものように夜時間ギリギリまで粘って掃除していたら、
    僕は事件に巻き込まれていたかもしれなかったな……」

K「葉隠は娯楽室だ。十神はどこで何をしていた?」

十神「図書室だ。いい加減言わなくともわかるだろう? 頭に脳が詰まっているならな」

舞園「私と朝日奈さんは私の部屋でお泊り会の準備をしながらお喋りしていました」

霧切「私も手伝っていたけど、何度か部屋を出たからアリバイにはならないわね」

大神「我も霧切と同じだ。何度か出入りをしていた」

腐川「アタシは部屋で支度してたわ。お泊り会なんて初めてだから、何が必要かわからなかったし……」

江ノ島「アタシもおんなじ感じ。校舎には行ってないよ。……証明はできないけどね」

K「君達はいい。俺が一番聞きたいのは君だな、安広」

朝日奈「あ、そっか。セレスちゃんは三階にいたんだよね。そんなところでなにしてたの?」

セレス「わたくしは途中までは部屋で支度をしていたのですが、お泊り会で使おうと
     思っていた愛用のトランプを娯楽室に忘れてしまったことに気が付きまして」

セレス「夜時間になる前にと慌てて取りに言ったら、事件に巻き込まれてしまったのです……」

K「まとめるとこういうことになるな」


アリバイあり→KAZUYA、苗木、桑田、石丸、大和田、不二咲、舞園、朝日奈

アリバイなし→葉隠、十神、霧切、大神、腐川、江ノ島、セレス


苗木「それにしても……」

K「どうした?」

苗木「はい。その、前の事件の時は突発的だったからアリバイとか考えてないのは仕方ないと
    思います。でも今回、山田君ははわざわざ呼出状で時間を指定してますよね?」

苗木「みんなが夜に集まるってわかってる時に事件なんて起こしたら、大幅に容疑者が減って
    自分が不利になるのに何で今日にしたんだろうって……現に半分も容疑者から外れてるし」

大和田「そうだよな……別の日の夜中か早朝に呼び出せば誰もアリバイなんてねえのによ」

不二咲「ヘタしたら、自分以外の全員にアリバイがあった可能性もあるよね……」


[ 疑惑① ]

江ノ島「単にそこまで考えてなかったから……とかじゃダメだよね」

不二咲「【その日以外だと不味い理由があった】とかかな?」

腐川「不味い理由って何よ?」

大和田「<とにかく急いで金が欲しい理由があった>とかどうだ?」

石丸「実は僕達が気付かなかっただけで、外に出たくて限界だったのかもしれないな……」

朝日奈「そんな風には見えなかったけど」

セレス「お待ち下さい。アリバイが出来るのは全員が集合してから。つまり、その前の
     時間は空白となりますわ。その間に全て終わらせるつもりだったのでは?」

桑田「九時半に呼び出せば、まあ開始までに<ギリギリ間に合わなくもない>よな」

大神「うむ。多少遅れる可能性もあるが、【少しなら問題ない】だろうしな」


適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け!
コトダマリスト>>144-145

↓2


書き忘れたけど、ここまで。

更新に関しては遅くてスミマセン。仕事が忙しいのと体が弱いのダブルコンボです
なるべく頑張りますが、無理すると仕事に支障が出てしまうので勘弁

あとモノクマの声変わりましたね! 実は、もし変わるならTARAKOさんが
合ってるんじゃないかと密かに思っていたのでビックリ


安価下

ほんと>>1すげえわ・・・
色んなオリロンパ見てきたけどここまで難しいのは滅多に無い・・・と、思うよ?
メタ的な理由でセレスがクロだと思ってるけど突破口が全く見えねえ


なんかエログロは新しい板を作ってそっちに移転するとかいう話が出ているらしいですね
うちは健全なスレなんでエロ描写は一切ないけど、手術シーンとか時々グロいのでちょっぴり心配


>>495
オリロンパの方が凄いと思いますよ。安価で作ったキャラで
短期間でトリックとか裁判とかいくつも考えないといけないし
今回の裁判の初稿は去年の2月くらいでそれから50稿くらい改稿してるんで、
時間をかければまあ…という感じ。あと、ロンパならではの反則ギリギリみたいな
トリックも使ってるんで、今回は解けなくても仕方ないかなーと


【苗木の証言】 ドンッ! ====⇒ 【少しなら問題ない】BREAK!!


苗木「それは違うよ! 山田君はちゃんと時間通りお泊り会に来るって言ってた。
    もし集合時間に遅れる可能性があるならそんなことは言わなかったと思う」

腐川「ひ、人を殺してから平然と参加するつもりだった訳ね。なんてサイコな奴なの……!!」

舞園「ですが、もし抵抗されたりして計画が失敗したらどうするつもりだったのでしょう?
    隠蔽工作や移動時間などを考えたら、三十分では不安がありますよね?」

K「……いや、アリバイ的にその時点ではまだ殺さないつもりだったのではないか?」

江ノ島「どういうこと?」

霧切「呼出状で、葉隠君には遅刻をするよう指示してある。これで、
    葉隠君が失踪してもすぐには捜索されず猶予が出来るわ」

苗木「すぐには殺さないで、しばらくどこかに隠しておくつもりだったのかも」

十神「それが何だと言うんだ。猶予が出来ても結局部屋を抜け出せばアリバイが成立せず疑われる」

K「……それは怪しい行動をしていたもう一人の人物に直接聞いてみた方がいいかもしれんな」

不二咲「怪しい行動?」

K「いるだろう? 事件発生前後、この中で一人妙な行動を取っていた者がいたはずだ」


指名せよ!

↓2


腐川「あ、怪しいって言ったらやっぱりセレスじゃないの……?
    あんな時間になんで一人で校舎にいたのよ!」

セレス「…………」

腐川「な、なんで何も言わないの……? えっ、え?! まさか、正解……?!」

苗木「セレスさん……」


全員がセレスを注目する。


セレス「……何故わたくしが怪しいと? わたくしはただ、忘れ物を取りに行っただけですわ」

K「では逆に聞かせてもらおう。君のトランプは倉庫に置いてあるものと同じだそうだな。
  だったら倉庫に取りに行けばいい。動機配布後の、それも過去に不審者が現れた校舎に
  危険を顧みず一人でのこのこ行ったのは何故だ?」

K「君は馬鹿ではない。モノクマの動機がどれほど重い意味を持つかわかっているはずだ。
  金目当てで人を殺す人間などいないなどと、高を括るタイプではないと思うのだが?」

セレス「…………」

「…………」

霧切「黙っていてもあなたが不利になるだけじゃないかしら、セレスさん?」

K「…………」

セレス「…………」


KAZUYAとセレスの視線が宙空で激しく交錯する。



セレス「……ハァ、よろしいですわ。このまま黙っていても疑われるだけのようですし、裁判の
     ためにもここは正直にお話しましょう。……どうせ既に頓挫した計画ですからね」

石丸「計画だと? どういうことだね?」

セレス「単純明快なことです」


クスリと、恐ろしい微笑を浮かべてセレスは平然と言い放った。


セレス「――わたくし、実は山田君と手を組んでいたのですわ」

大和田「ハ? 手を組むって……共犯っつーことか?」

江ノ島「え、ちょっと待ちなさいよ。共犯しても出られるのは直接殺した一人だけじゃなかった?」

桑田「ああ。だから、共犯はないって前の裁判でも言われてたよーな……」

セレス「それは、死人が一人の場合でしょう?」

苗木「まさか……!」

霧切「やはり、そういうことなのね……!」

セレス「ええ。二人殺して、わたくしと山田君の二人が犯人になる計画だったのです」

「ハァッ?!!」

K「…………」


一瞬場が静寂となり、次の瞬間津波のようにざわめきが押し寄せる。


大神「ム? その場合どういう扱いになるのだ、モノクマ?」

モノクマ「ワーオ、面白いこと考えてたんだねぇ。その場合、被害者ごとに投票することになるかな。
      二回投票して、無事みんなを欺いた方のクロだけ外に出られるよ」

腐川「でも、それじゃあ犯人以外全員オシオキのルールはどうなるのよ……!」

十神「投票をミスした場合オシオキされるのはシロだけだ。そして、殺人を犯した者はクロとなる」

K「つまり、両方外せば理論上二人同時に脱出出来るということか……」

石丸「これでは、共犯は有り得ないという今までの理論が成り立たなくなってしまうぞ?!」

モノクマ「ルールの隙を突いたんだね。いいよいいよー! そういうの大好きだよ、ボク!」

大神「何と狡猾な……」

朝日奈「ちょ、ちょっと待ってよ。じゃあ、二人も殺すつもりだったの?! 一体誰を?!」

十神「一人は事前に拉致した葉隠。そしてあともう一人だな」

大和田「なんつーヤツラだ!!」

セレス「脱出するには他の全員を道連れにするのですよ? 一人殺すも二人殺すも同じでしょう?」

葉隠「ふ、ふざけんなあああ! 俺を殺そうだなんて……!!」

K「気持ちはわかるが落ち着け。今は彼女に聞かねばならんことがある」

セレス「具体的な計画についてですか? 先生達の予想通り、あの場で葉隠君を殺すつもりは
     ありませんでした。眠らせて一時的に隠しておくつもりだったのです」

大神「……もう一人は誰を殺すつもりだったのだ?」

セレス「殺せそうな相手なら誰でも良かったのですが、山田君の要望で桑田君となりました」

桑田「ハァアア?! 俺?! なんでだよ……?!!」


一瞬憤慨で赤くなりかけた桑田だが、何かに思い当たり一瞬で血の気が失せた。声が震える。


桑田「まさか……俺がアイツのこと、よくブーデーっつってからかってたから……?」


しかし、桑田の心配はセレスによって即座に否定された。


セレス「違いますわ。太っていたのは事実ですし、それは明らかに彼の自己管理の杜撰さが
     原因ですから。元々運動神経の良いあなたのことを羨んでいた節がありますが……」

セレス「――この中であなたが一番変わったからじゃないですか? 彼は変われない人間でしたから」

桑田「…………」


尚も蒼白な桑田の様子を知ってか知らずか、セレスは淡々と続ける。


セレス「計画の概要はこうです。全員が集まることを逆手に取り、片方がアリバイのある時を
     狙ってもう一人が犯行を行う。凶器を同じ物にして同一犯に見せかければ……」

セレス「――必然的に両方のアリバイがない十神君が犯人、ということになります」

霧切「成程ね。あなた達は十神君がお泊り会に参加しないことも織り込み済みだったって訳」

セレス「当然ですわ」

腐川「な、なんてふてぶてしいヤツらなの!!」

朝日奈「酷いよ! あんまりだよ!」

不二咲「セレスさん、そんな……」

大和田「腐ってやがる!」

十神「まさか、この俺を犯人に仕立てあげようとする奴がいるとはな……!」


ほとんどの人間はこの悪辣極まりない殺人計画者に憤慨しきっていたが、意外にも
十神はいつもの不敵な笑みを崩さないままだった。むしろ感心しているようにさえ見える。


K「安広の糾弾は裁判が終わってからでも出来る。今は議論を優先しろ!」

霧切「……あのマスクはどこで手に入れたの?」

セレス「モノモノマシーンでわたくしがたまたま手に入れたのです。その時、あのマスクで
     葉隠君の気を引き、わたくしが後ろから気絶させるという計画が浮かんだのですわ」

セレス「不審者云々は葉隠君の注意を引くための単なるでまかせでした。最大の誤算は、
     葉隠君が山田君を襲ってしまったために彼を気絶させることが出来なかったこと……」

セレス「なので、わたくしは慌ててその場から逃走しようとしたのです」

苗木「その時にモノクマボトルを落としてしまったんだね?」

セレス「ええ。皆さんの推理通りビリヤード台の後ろに隠れていたのですが、驚きのあまり
     ぶつかってしまったのです。その振動で端のボトルが落ちてしまったのでしょう」

セレス「わたくしとしたことがつまらないミスですわ。その上、まさか見つかって刺されるとは……」

葉隠「あ、あう……」


記憶がハッキリしてきたのか、葉隠の顔面は蒼白としている。


苗木「その時、何か見かけたり気付いたことはなかった?」

セレス「特に何も。保健室に皆さんがいることは知っていましたから、葉隠君が
     いなくなるまで死んだフリをしてその場を凌ぎ、とにかく必死に向かいました」

朝日奈「それだけ?」

セレス「はい。それだけです」

桑田「……あれ? じゃあなにも進展してなくね?」

石丸「またかね! 葉隠君の時もこんなやり取りがあったぞ?!」


江ノ島「こいつがとんでもない女だってわかっただけだったね」

腐川「どいつもこいつも役に立たないわね! 手掛かりの一つや二つ、目撃しときなさいよ……!」

セレス「無茶を言わないでください。わたくし、刺されましたのよ? ただ一つだけ……」

K「何だ?」

セレス「凶器のハンマーですが、あれは護身用に山田君が元々持っていたのです。なので、
     娯楽室に来た人間がそれを使ってトドメを刺した……という可能性は考えられます」

苗木「そうか。そうなるとわざわざ美術準備室までハンマーを取りに行く手間が
    省けるんだね。凶器を取ってきて準備室に戻すと二回往復することになるし」

朝日奈「じゃあさ、アリバイのない人だったら誰でも今回の犯行は出来たってこと?」

葉隠「誰がやったんだべ! そいつのせいで俺はエラい目に遭ったんだ!」

桑田「別に真犯人が明らかになっても、お前が人を殴って刺した事実は消えないけどな」

舞園「……あの、ハンマーって元々山田君が持ってたんですか? だったら、ハンマーが現場から
    なくなったことを言えば、葉隠君の他に第三者がいたって証明になったんじゃ……」

不二咲「葉隠君が犯人なら、わざわざハンマーだけ隠す必要ないもんねぇ」

葉隠「…………」


葉隠は腕を組んで難しい顔をしている。一部の人間の視線が冷たい。


K「……舞園、放っておいてやれ」

舞園「あ、はい」

霧切「アリバイのない残りのメンバーの話をもっと詳しく聞いてみた方が良さそうね」

K「同感だ。もう一度事件前後のことを聞かせてくれないか?」


[ 疑惑② ]


十神「何度も言うようだが、俺はずっと図書室にいたぞ。外で何度か階段を
    行き来するような<バタバタとした足音を聞いた>くらいだ」

十神「最後に一際大きい複数の足音が聞こえ、【その少し後に死体発見アナウンスが流れた】。
    その後すぐに保健室に向かったら、中で苗木と不二咲が手術の準備をしていたな」

霧切「私は厨房に飲み物を取りに行ったり大浴場にいたわ。たまたま脱衣所から
    出た時にホールで血相を変えた桑田君に会って、一緒にみんなを集めたのよ」

腐川「部屋にいたらいきなりインターホンが鳴って保健室に来るようにって
    連れ出されたわ。セレスが刺されたと聞いてパニックになったわよ……」

舞園「私と朝日奈さんもです。二人で部屋にいたら呼び出されました」

朝日奈「ちょうどその時死体発見アナウンスが流れて……」

桑田「その後江ノ島と大神の部屋のインターホン押したんだけど返事がなくてさ。
    待ってても仕方ないから、一旦俺達は保健室に戻ったぜ」

江ノ島「【部屋にいたら死体発見アナウンスが流れたよ】。でも、シャワーを浴びてたから
     すぐには出れなかったんだよね。その後廊下に出て舞園の部屋のインターホンを
     押したんだけど、反応がなかったからアタシも保健室に行ったんだ」

大神「我も同じだ。【アナウンスが鳴った時は部屋にいた】が、江ノ島と同じく
    シャワールームにいたため出られなかった。すまなかったな」

葉隠「お、俺はもう言わなくていいんだよな?! 俺の容疑は晴れたんだよな? な? な?」



適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け!
コトダマリスト>>144-145

↓2 おやすみ

大神の【アナウンスが鳴った時は部屋にいた】か?
葉隠の部屋の所で桑田と一緒のタイミングで放送聞いてた筈
だとすると使うコトダマは何だろう?

安価なら下


>>525さんの指摘で重大なミスをしていたことに気が付いた。
アナウンス時はみんなもう外に出てましたわ……以下、差し替え版


[ 疑惑② ]


十神「何度も言うようだが、俺はずっと図書室にいたぞ。外で何度か階段を
    行き来するような<バタバタとした足音を聞いた>くらいだ」

十神「最後に一際大きい複数の足音と大声の会話が聞こえ、何か起こったと直感した
    俺はすぐさま保健室に向かった。中で苗木と不二咲が手術の準備をしていたな。
    【死体発見アナウンスが流れたのは、その少し後だったか】」

霧切「私は厨房に飲み物を取りに行ったり大浴場にいたわ。たまたま脱衣所から
    出た時にホールで血相を変えた桑田君に会って、一緒にみんなを集めたのよ」

腐川「部屋にいたらいきなりインターホンが鳴って保健室に来るようにって
    連れ出されたわ。セレスが刺されたと聞いてパニックになったわよ……」

舞園「私と朝日奈さんもです。二人で部屋にいたら呼び出されました」

朝日奈「もうビックリしちゃって手分けしてみんなの部屋のインターホンを押してったよね」

桑田「江ノ島と大神はインターホン押しても返事がなくてさ。待ってても
    仕方ないしとにかく急いでたから、俺達はいったん保健室に戻ったぜ」

江ノ島「【インターホンが鳴った時、アタシは部屋にいたよ】。でも、シャワーを浴びてたから
     すぐは出れなかったんだよね。その後廊下に出て舞園の部屋のインターホンを
     押したんだけど、反応がなかったから変だと思ってアタシも保健室に行ったんだ」

大神「我も同じだ。【インターホンが鳴った時は部屋にいた】が、江ノ島と同じく
    シャワールームにいたため即座に出られなかった。すまなかったな」

葉隠「お、俺はもう言わなくていいんだよな?! 俺の容疑は晴れたんだよな? な? な?」


↓1


【朝日奈の証言】 ドンッ! ====⇒ 【インターホンが鳴った時は部屋にいた】BREAK!!


苗木「それは違うよ! ……ねえ、大神さん。どうして校舎にいたこと黙ってたの?」

大神「……!」

朝日奈「どういうこと?」

苗木「だって大神さん、インターホンが鳴った時は部屋にいたんでしょ?
    だったら、朝日奈さん達より前に保健室にいるなんておかしいよ」

霧切「寄宿舎のホールや廊下には桑田君達がいた。保健室に行く道は一つしかないから、
    大神さんが先に保健室に行くにはどこかで彼等とすれ違わなければならないわ」

大神「!」

十神「俺が図書室から来た時、大神はちょうど保健室に入っていく所だったな」

朝日奈「そ、それは疑われると思ったからだよ! 何か用事があったんだよね……?」

大神「…………」

霧切「本当は、校舎のどこで何をしていたか教えてもらおうかしら?」

大神「……体育館にいた。トレーニングをしていたのだ」

K「保健室に来たのはアナウンスが鳴るより前だな。何故保健室に?」

大神「我は格闘家故、聴覚は常人より良い。外が騒がしかったので様子を見に行ったのだ」

大和田「だったらなんで最初にそう言わねえんだよ!」

朝日奈「だから、疑われると思ったからって言ったでしょ!!」


顔を真っ赤にして朝日奈が怒鳴るが、対照的に大神は沈黙を守っていた。


大神「…………」

朝日奈「な、なんでなにも言ってくれないの、さくらちゃん……?!」

葉隠「オーガがやったのか? 山田っちを……」

朝日奈「ち、違うよね? そうだって言ってよ!」

大神「我は……」

朝日奈「さくらちゃんっ!!」

K「…………」

「大神は犯人ではないぞ。そして俺は既に犯人の目星がついている」

「?!」


その声の主が余りにも予想外過ぎて、誰もが驚愕に目を見開きながら
そちらを凝視する。視線の先にいたのはKAZUYAでも霧切でもない。

自信満々の不敵な笑みを浮かべながらそこにいたのは、そう――


十神「……ククッ、そろそろ俺の推理を披露する時が来たようだな?」

苗木「犯人がわかったの、十神君?!」


―― 十神だった。

場を引っ掻き回すイメージが強すぎるためか、何人かは既に悪意を込めた眼差しで彼を見ている。
確かに、案の定この後の彼の発言はKAZUYA達を大いに苦しめる羽目になるのだが。


十神「当たり前だ。元々疑ってはいたが、今までの議論でほぼ確信している」

K「…………」

江ノ島「また犯人目撃して黙ってたんじゃないでしょうね!」

大和田「現場を荒らしたんじゃねえだろうな?」

不二咲「決め付けは良くないと思うよぉ……」

十神「チッ! ……安心しろ。今回の事件は完全にノータッチだ」

桑田「いや、そんなこと言っておめーが犯人なんじゃねーの?」ボソッ

舞園「まあ……一応話を聞いてみましょう」

葉隠「そ、それで真犯人は誰なんだべ! さっさと教えてくれ!」

十神「その前に一つモノクマに確認しておくことがある。もし複数の
    人間が同じ人間を襲った場合、どちらがクロになるんだ?」

モノクマ「そりゃあ勿論、トドメを刺した方がクロだよ」

十神「では、もし誰かに致命傷を与えた後、そいつが死ぬ前に別の人間がトドメを刺した場合は?」

モノクマ「トドメを刺した人間、つまり最後に傷付けた人がクロだね!」

十神「よし、確証が取れたな」



十神「それではこの俺自らが、愚民の貴様等にもわかるよう説明してやろう」




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



               裁     判     中     断



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



ここまで。

もう三分のニは経過してるので、そろそろ終わりが見えてきましたね
7月までにはオシオキも含めて全部終わらせて、さっさと四章入らないと


チャ~ラ~チャチャチャ~ン♪(例のBGM)


― モノクマ劇場 ―


モノクマ「真実を知りたいって馬鹿の一つ覚えみたいにみんな言うけれど、それで得た真実が
      自分にとって都合の悪いものだとやっぱり知らなければ良かったとか言うんだよね」

モノクマ「例えば、仲の良かった人に裏切り行為をされてたとか自分一人外されてたとかさ」

モノクマ「真実っていうのは、どんなに重くて残酷な内容でもそれを受け止める
      覚悟がある人間しかボクは知る権利はないと思うんだよ」

モノクマ「……ま、覚悟があろうがなかろうが真実を知る羽目になっちゃう人間もいるんだけどさ」

モノクマ「十神君のトンデモ推理がこの後どんな影響をもたらすのか楽しみだね!」

モノクマ「え? なんでトンデモ推理ってわかるかって?」

モノクマ「だって十神君だもん。本人に当てる気があるのかもはや怪しいし」


モノクマ「以上、モノクマでした。裁判の続きはこの後すぐ~」


十神「そもそもボトルもハンマーも結果的に言えばフェイクだ。葉隠は山田をボトルで殴り
    偽装工作を行った後、戻る際に逃げようとしたセレスと遭遇し、ナイフで刺して逃亡」

葉隠「すみません……」

十神「その後、たまたま通りかかったか元々山田の動きを知っていた第三者が
    置いてあったハンマーに気付き殺害。これで事件は完結したかに思われた……」

K「……まさか、続きがあるというのか?」

十神「山田はまだ死んではいない。つまり死ぬ前に手をかければそいつが真犯人、今回の
    クロということになる。モノクマファイルに妙な記述があることに気が付かなかったか?」

セレス「針で刺されたような傷、ですか?」

不二咲「僕も気になってたんだよね。なんであんな所に針の痕があるんだろう?」

K「あれは注射痕のように見えたが……」

朝日奈「注射のあと? なんで?」

石丸「まさか……真犯人が山田君に注射をしたのか?」

十神「そうだ。真犯人は漁夫の利を狙い、山田が保健室に運ばれた後毒を詰めた注射器で山田を刺した。
    ……だが、ドクターKは犯人じゃない。不二咲にしろ山田にしろ殺すチャンスは散々あったからな」

十神「頻繁に保健室に出入りをし、ドクターK以外で注射技能を持つ人間――」

十神「石丸は不二咲の事件の時、すぐ逃げればいくらでも誤魔化せたものを愚かにも
    叫び声をあげて人を呼び集めた挙句、自白した。この腰抜けに人は殺せないだろう」

十神「そうなると、誰が残る?」

江ノ島「誰がって……」

舞園「まさか……」


全員がその人物の方に視線をやる。





十神「そう――苗木誠、貴様が真のクロだ!」




「…………」

「…………」

「…………は?」

苗木「え……ぼ、僕?」

朝日奈「苗木、なの……?」

江ノ島「ええっ?!」

大神「馬鹿な!」

葉隠「そうか、苗木っちが山田っちを……!」

苗木「いや、違うよ! 僕じゃない!!」


苗木は青ざめ、同意を求めるように周囲の顔を順に見ていく。


石丸「当たり前だ! 苗木君が犯人である訳がない! 苗木君は僕と一緒に人を救う
    医師になろうと決意した人間だぞ! その苗木君が人を殺すなど有り得ない!」

石丸「馬鹿も休み休み言いたまえ!!」


桑田「苗木はそんな人間じゃねえよ! ふざけんな、バーカ!」

大和田「兄弟の時と言い、そろそろテメエは本気で痛い目見た方が良さそうだな……!」

舞園「苗木君ではありません。苗木君のはずがありません!」


彼等の悲痛な擁護も、氷のような十神の心に響くはずもない。


十神「感情論で話すな、愚民! 腐川の時もそうやって騒いでいたのを忘れたのか?
    人畜無害な顔をして他人の手柄を横取りとは全く恐ろしい男だ」

葉隠「そうだべ! いい人ぶっても裏で何してるかはわかんねえぞ!」

苗木「……葉隠君にだけは言われたくないんだけど」カチン

霧切「つまり、十神君は三人の人間がそれぞれ別々に山田君を殺そうとしたと主張する訳ね?」

十神「そうだ。複雑難解な事件だったが、真犯人は誰かという観点だけで見れば答えは存外シンプルだな」

十神「苗木は事件の晩はアリバイがあるが、それを逆手に取ったのだ。これなら手術中や手術後に
    隙を見て実行出来る。苗木は西城や他の人間達からえらく信用されているからな。簡単だろう」

K「お前の推理では注射で毒を、とのことだが……その毒は一体どこから
  手に入れたんだ。化学室の棚は俺が厳重に管理しているぞ?」

十神「フン、別に本物の毒を用意しなくとも良い。家庭の中には人体に
    有害な物など腐る程ある。洗剤や化粧水なら倉庫でも手に入るだろう」

K「……そんな物を重傷者の体内に入れたら体調が急変すると思うが」

十神「甘いな、ドクターK。何の前触れもなく突然体調が急変したら近くにいる人間が
    疑われるに決まっている。だから急に悪化しないよう非常に微量ずつ投与したのだ」

セレス「病院でしたらちょっとした異常もすぐ検査で発覚しますが、ここは血液検査も出来ませんからね」

十神「そういうことだ。注射器は使用した後洗ってしまえば証拠も残らない」


腐川「い、医療の知識を悪用するなんてとんだ悪党ね!」

苗木「だから、違うってば!」

十神「違うというなら証拠を見せろ。ないなら投票だ」


場が静まる。半数は無茶苦茶だと思ったが、反論は出来ないのだった。


苗木(十神君……)


ちなみに、当然だが苗木は真犯人ではない。十神の推理は完全な的外れである。
しかし客観的に見たら筋は綺麗に通っており、大きな穴もないのだ。

苗木はかつて図書室で十神と対峙した時のことを思い出していた。


『貴様程度の浅はかな小細工が通用すると思うか? はっきり言え。俺を見張りに来たと』

『十神君に用があるのは確かだけど、見張りに来た訳じゃないよ。……話がしたくて』

『俺は話すことなどない』

『……そうだね』

             ・

             ・

             ・

『……お前は何だ?』

『え?』

『ここにいる愚民達の中でも、更に何の才能も可能性もなくどうしようもないお前が何を足掻く?』


             ・

             ・

             ・


『それでもいいよ。誰かを、自分にとって大切な人達を殺すくらいならさ――』

『……お前達と話していると俺の頭がおかしくなる』


             ・

             ・

             ・


『――いいだろう。凡人にも意地があると言うのなら、最後まで足掻いてみせろ』


苗木(そうだ。思い出した。一緒に何かするんじゃなくて、たとえ敵対してでも正面から
    向き合うことが十神君と本当の意味で仲間になるということなんだ)

苗木(これは十神君からの挑戦なんだ。僕が犯人じゃないとか、そういう問題じゃない。
    何とかしてこの場を切り抜けないといけないんだ。でも、どうやって?)

苗木(僕は凡人で、特に秀でた才能もなくて、みんなの話を聞いたり仲裁したり
    仲良くなることくらいしか出来なかったのに……)


考え込んでいる間に、議場は再び混乱の渦と化していた。


朝日奈「は、葉隠だよ! 苗木がそんなことするように見えないし、葉隠は一度殴ってるんでしょ?!
     きっと、偽装工作してる時にハンマーに気が付いてトドメを刺しちゃったんだよっ!」

桑田「お、おお! そうだな! それなら特に矛盾もないし。穴はなんか偶然ついただけだろ?!」

大和田「よし、俺は葉隠に入れるぞ!」

葉隠「俺じゃねえ! 違うって!!」

十神「いい加減にしろよ、愚民共! くだらん感情論で人を巻き添えにする気か?」

朝日奈・桑田・大和田「…………」

石丸「ど、どうすればいいのだ? 苗木君が犯人ではないのはわかっているが、
    だが……本当に葉隠君で良いのか……?」

不二咲「ど、どうしよう……? 誰に入れればいいの?」

腐川「苗木、かしら? 白夜様がそう言ってる訳だし……アタシは苗木に入れるわ」

セレス「明確な反証がない以上、わたくしも十神君の推理を信じますわ」

大神「ムゥ、一体どちらが真実なのだ……?」

江ノ島「苗木はそういうキャラじゃないと思うけど、反論もできないし……」

モノクマ「では投票と行きますか!」

苗木「待ってよ! 本当に僕じゃないんだ! 信じて!!」

K「クッ……!」


彼等に絶体絶命のピンチが訪れる――!


ここまで。


どうする? どうする……? 一体どうする?!


苗木(どうすればいいんだ?!)


焦燥だけが音を立てて加速していく。

このままでは、投票が行われてしまう。苗木を選んだら勿論不正解だ。
かと言って、葉隠を選んでも恐らくは不正解だろう。

反論するしかない。しかし、反論の材料がない――!


モノクマ「どうする? 投票タイムにする?」

十神「そうだな。俺はそれで構わないが?」

霧切「待ちなさい! まだ投票には早いわ!」

十神「なら、反論してもらおうか。出来るのならな?」

霧切「…………」ギリッ!

十神「では、反論もないようだしこれで……」





K「俺が執刀する!!」


            反論ッ!!



十神「何ッ?!」

K「苗木ではない。何故なら……」



K「――俺がやった!!」



「?!?!!」


突然の告白に再び議場が混乱の坩堝と化す!


石丸「せ、先生ッ?!!」

苗木「KAZUYA先生?!」

朝日奈「嘘でしょっ?!」

霧切「何を、馬鹿なことを……?!」

K「……と言ったら、お前達はどうする?」

腐川「へ?」

十神「……!」

K「現段階では俺も石丸も容疑者のままだ。だから犯人は絞れず、投票は認められん!!」

苗木「先生……(そういうことか……)」

石丸「そ、そうだ! 僕だって犯人かもしれないぞ?!」

K「どうだ? 反論出来るか?」

十神「ふざけやがって……」


怒りのあまり十神の眉間には深々とした青筋とシワが浮かぶ。


霧切「絶対違うと断言出来ない以上、今の推理は決め手に欠けるわ。
    断定出来る証拠がないなら投票すべきではないわね」

大和田「そ、それに毒をぶち込むんならなにも血管じゃなくたっていいだろ?!
     ただ薬詰めて適当に刺す程度なら俺だって出来るぞ!」

不二咲「ぼ、僕だってそのくらいなら出来るよ!」

桑田「そうだ! 俺達保健室に入り浸ってたヤツは全員出来る。だから苗木じゃねえ!」

苗木「みんな……」

K「心配するな。俺達がついている」

K(少なくとも、このメンバーの中で苗木を疑っている人間などいないさ)

苗木(そうだ。忘れてた……僕は一人で戦っている訳じゃない!)


苗木には特別な才能はない。人より少し前向きなことだけが取り柄の平凡な人間だ。

――けれど、忍耐力とコミュニケーション力で少しずつ築き上げた人並み以上の人望があった。

自分一人ではどうにも出来ないことも、仲間が力を合わせれば解決出来る。
この学級裁判は個人の闘いではなく、あくまでチーム戦なのだ。


十神「……チッ。運の良い奴め」

苗木(十神君も、いつかわかってくれたらいいんだけどな)

腐川「じゃあやっぱり葉隠じゃない? 白夜様に罪を被せようとしたクズだし!」

葉隠「そ、そんなこと言っても……こっちだって生死かかってるしな……」


朝日奈「そもそもあんたが山田を殴ったりしなければこんなことにならなかったでしょ!」

葉隠「俺は真犯人じゃないってもう証明されただろ! いい加減しつけーぞ!!」


何度も責められ命の危機にも晒され、葉隠のストレスも限界だったのかダンッ!と席を殴った。


葉隠「大体なぁ、早く真犯人を見つけないとオメエラもオシオキなんだぞ?!
    わかってんのか? 俺は死にたくねえ! オメエラももっと真剣に議論するべ!
    そんで散々人に迷惑かけたクロをさっさとオシオキしちまえばいいんだ!!」


盗っ人猛々しいと言うコトワザがあるが、謀略の結果とはいえ殺人未遂を
犯しておきながらとうとう逆ギレを始めた葉隠に、モノクマは思わず苦笑する。


モノクマ「あんだけ派手にやらかしといてこの言い草とは……
      君ってとんでもないクズだね。これには流石のボクも苦笑い」

十神「……そういえば、事件に直接関係のないことならモノクマは話せるはずだな」

江ノ島「山田の件はグレーとしても、ぶっちゃけセレスの件はどうなワケ?」

腐川「そうよね。セレスはもう全部話してる訳だし、気になるわ!」

モノクマ「お、知りたい? 知りたい??」

葉隠「え? お、おい……?!」サーッ


ちょっと前の威勢の良さはどこへ行ったのかというくらい、葉隠の顔が青ざめる。


モノクマ「しょーがないなー。じゃあ特別に皆様のご要望にお応えして……」


そう言うと、モノクマは葉隠がセレスを刺している瞬間の画面をモニタに映した。


モノクマ「ほら、ばっちり刺してるじゃない?」

「?!!」


十神「刺してるな、グサリと」

セレス「刺されましたわ、グサリと」

朝日奈「この人殺しっ!」

江ノ島「クズ野郎!」

葉隠「あ、いや、その……」


流石の葉隠も決まりが悪かったのか、青ざめてダラダラと汗をかいている。


苗木「酷いよ、葉隠君……」

不二咲「心のどこかで、葉隠君じゃないって信じてたのに……」

霧切「……あなた、やっぱり嘘をついていたのね」

大神「もう擁護は出来んな」

K「…………」

葉隠「う、うわあああああああああああああああああああああああ!!!」

大神「何だ?」

石丸「葉隠君?!」

葉隠「嘘ついてなにが悪いんだ! 俺だって死にたくねえし外に出たいべ!!」

大和田「テメエ……とうとう本性出しやがったな!」

葉隠「うるせえ! おめえらに俺が責められんのか?! 自分だって殺そうとしたくせによ!」

大和田「そ、それは……」


桑田「追い詰められて逆ギレか?! ふざけんなよ! 今まではおめーがこうやって
    俺達を責め立ててきたんじゃねえか! お前に反論する権利なんてねえんだよ!」

石丸「み、みんな落ち着きたまえ! 今は裁判中だぞ! 彼が許せないのなら投票で決着をつけるべきだ!」

朝日奈「そうだよ! もうこいつが犯人でいいって!」

苗木「ま、待って! セレスさんの件はともかく、山田君の犯人はまだ確定してないよ!」

霧切「くっ……」

霧切(今までの議論から葉隠君が犯人である可能性はまずない。でも、犯人を特定出来る証拠が……!)

モノクマ「あらあら、葉隠君も相当嫌われてるねえ。今度こそ決まりかな?」

葉隠「ま、待ってくれぇー!! 俺が悪かった! いやだぁー!!」

セレス「自業自得ですわ。さようなら、葉隠君」

モノクマ「それじゃあ行きましょう!」

霧切「!」

十神「フン」

K「…………」


誰も気が付かなかった。

表向きは怒りを浮かべながら、――内心で【真犯人】が笑っているということに。


K(俺は、どうしたらいい?)


KAZUYAは、自分の中で自問自答していた。それはこの裁判が始まる前も、
そして裁判の間もけして途切れることなく続けていた自問であった。

何度繰り返し自問をしても――KAZUYAの中での答えは同じだった。


K(……結局の所、既に俺の中で結論は出ているということか)

K(腹は決めた。あとは己の信じた道を突き進むのみ!!)


モノクマ「それでは」

モノクマ「投票ターイ……」





「待てッ!!!」




「……え?」

「えっ?!」

「ハァ?!」

「またか!」



本日何度目かの待ったをかけ、もういい加減にしろという視線が彼に冷たく突き刺さる。

彼を信頼する生徒達でさえ、もうこれ以上の議論は不可能だと目で言っている。


だが、それでもKAZUYAは投票を止めなければならなかった。





K「俺の証明は、まだ終わっていないぞッ!!!」





全ての真相を明らかにするために――!




ここまで!


えー、長らくお待たせしました
次回で決着……とまでは行きませんが、犯人指名までは行くと思います

なので、次回は事前に投下予定日をお知らせする予定です。まあ週末だと思いますが

それではオタッシャデー!


申し訳ありません。今週は多忙で修正出来なかったため、
水曜の夜9時に投下の予定です。ちなみに、次回のみ通常とルールが違います。

今までは生徒に任せ基本的に静観を決め込んでいたKAZUYAですが、今回はあまりに
反則技で難しいのと、なるべくスピード感を重視したいため一定時間経過したら
KAZUYAが勝手に正解を言って進めてくれます。なので、正解とか不正解とか気にせず
ガンガン気楽に安価取ってくれたら有難いです。

あと葉隠君だって生きてるんやで! クズだけど! キャラいじりは程々に

山田は孤立組が不満ぶつけるとこで輝いてたと思う


誰かいるかな?


もう一人くらい来たら始めます



K「その投票、待ったッ!!」



桑田「せんせー?」

十神「またか……!」

葉隠「……お? おおおお! 先生は俺のことを信じてくれるんだな?! いやぁ、やっぱり頼りに……」

大和田「テメエは黙ってろ!」

舞園「先生?」

セレス「どういうつもりですの? 確かに一部不自然な状況もありましたが、結局第三者が
     誰かを証明する証拠もありませんし、現時点で最も真犯人に近い人物は葉隠君ですわ」

K「現在わかっている状況のうち、俺はどうしても一つ気になることがあるんだ」

苗木「気になること?」

K「今回の事件の一つ、安弘が刺された件は舞園の腹部刺創と同じだ」

K「しかし、ある点が妙だと思った」

不二咲「妙……?」


KAZUYAが妙だと感じたことは何か?

・現場の状況
・出血量
・傷口
・葉隠の髪型


正解が出ても出なくても、一定時間が経過したらオートで進みます。




K「俺が妙だと感じた点は……“傷口”だ」

石丸「き、傷口の一体何がおかしかったのですか? 素人から見ても普通の刺し傷に見えましたが」

K「傷自体はおかしくないさ。……傷自体はな」

十神「焦らすな。さっさと言え」



[ 傷口は語る ]


K「これが舞園のカルテ(>>118)。そしてこっちは安広のカルテ(>>121)だ。比較して欲しい」

葉隠「比較しろって言われてもな。おんなじに見えるべ」

十神「貴様の目はどこまで節穴なんだ。舞園は胃を貫通し、セレスは腸を切除している。
    すなわちこれは、<刺された場所が違うと言えるな>」

苗木「もしくは、【傷の深さかな】。セレスさんは腸を切除している訳だし」

朝日奈「腸を切除って大変だよね……しばらくご飯食べられないなんて私には耐えられないよ……」

石丸「ムム。形成外科等の例外もあるが、基本的に一針は大体1センチだ。舞園君の
    傷は15センチで、セレス君の傷は12センチ。つまり<大きさが違うな!>」

舞園「あとは<傷の向き>でしょうか。私の傷、西城先生の傷とお揃いなんですよ!」

大和田「そんな嬉しそうな顔で言うなよ。こええだろ……」

腐川「病んでるわね、こいつ……」

江ノ島「で、それがなんだっていうワケ?」


適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け!
コトダマリスト>>144-145

間違っていてもいいので、思いついたことがあればガンガン書いてってくだしあ



【セレスのカルテ】 ドンッ! ====⇒ <傷の向き> 同意!!


K「それに同意だ」

霧切「縦の傷と横の傷……まさか?!」

K「お前達、自分が犯人になったつもりでナイフを構え、刺す動きをしてみてくれないか?」

江ノ島「ナイフを?」

大神「犯行を再現する、ということだな」

腐川「そ、それで一体何がわかるって言うの……?」

K「いいから全員やれ!」


片手で持ち明らかに素人ではない構えと動きをする江ノ島と、剣道のように
青眼の構えをして突きを放つ石丸以外は大体同じポーズになる。


K「そこだ! 止まれ!」

朝日奈「え、これでなにかわかったの?」


K「全員――刃の向きは“ 縦 ”、だな」


霧切・十神「!!」

K「さて、ここでお前達に問題だ。この中に怪しい人物がいることがわかるな?」


指名しろ!


K「……安広」

セレス「わたくしですか? 傷の向きが一体何だと言うのです?」

K「お前の傷は横向きだった。横向きの傷は……」



K「――切腹のように、自分で自分を刺した時に付く傷だ」



「?!?!!」


苗木「えっ?!」

石丸「なっ?!!」

大神「まさか?!」

十神「何ッ?!」

朝日奈「嘘でしょっ?!」

不二咲「そ、そんな?!」

桑田「マジかよ……」

舞園「そんなことが……?!」

葉隠「いやいやいや!」


――――――――――――――――――――――――――――――


誰も気が付いていないはずだった。

表向きは怒りを浮かべながら、内心で彼女が笑っているということに。


そう、嘘つき女王セレスティア・ルーデンベルクは笑っていたのだ――。


(見抜ける訳がないですわ。葉隠君が山田君を襲ったのも本当。わたくしを刺したのも本当)

(嘘つきとしてはかなりハイエンドであるわたくしが本当のことを言っているのです。
 その発言が持つ意味は有象無象の方々の平凡な発言よりも、ずっと重い……)

(わたくしがついたのは、ただ一つ。たった一つの“嘘”だけ――)


その嘘こそが、今回の事件の肝でありトリックの『要』となる。

――だが、わかる訳がない。まさか被害者が加害者でもあるなどと。


「それでは」

(この完璧なトリックが破られる訳がないですわ。幸い山田君はまだ死んでいませんし、皆さんが
 オシオキされて半殺し状態になっても、運が良ければ西城先生が何とかしてくれるでしょう)

(……わたくしから見ても、それはかなり分の悪い賭けでしょうけれどね)

「投票ターイ……」

(それでは皆さん、生きていたらまたお会いしましょう。ご機嫌よ――)


遮ったのはあの男だ。

とにかく往生際が悪く、熱苦しく、自分よりいつも他人を優先する男。


「待てッ!!!」


最初は嫌いなタイプでとにかくうっとうしくて堪らなかった。
だが、この所はよく話していたからか、今はそれほど嫌いでもなくなっていた。
……もっと違う出会い方をしていたら、好意もあったかもしれない。

けれど、それはあくまで仮定の話だ。彼女の野望を邪魔するのなら話は別。

虫けらは踏み潰す、カモは骨の髄までしゃぶり尽くす。


それが、セレスティア・ルーデンベルクという女なのだ――。


――――――――――――――――――――――――――――――



研ぎ澄まされたメスのように鋭いKAZUYAの視線が、指が、セレスを射抜く。

だが彼女は動じない。さもとんでもない言い掛かりを付けられ衝撃を受けたように目を見開く。


セレス(まだ! まだですわ! わたくしの鉄壁のトリックは破られていない……!)

セレス(このわたくしが勝負で負けることなど有り得ないのです!)


あの完璧なトリックを暴くのは、如何にこの男が天才医師であろうと不可能のはずだ。


何せ、証拠などあるはずないのだから。

いくら犯人がわかろうと、トリックを見抜かれようと、証拠がなければ
この突拍子もない推理で周りを納得させられる訳がない。


セレス(どうやら、これが最後の大勝負のようですわね)

K「…………」


心の中で目まぐるしく思考するセレスに対し、KAZUYAは沈黙したままじっと彼女を見つめていた。



ここまで!という訳で、大方の予想通り犯人はセレスさんでしたー

次回、KAZUYAが鉄壁の時間トリックを破る!
今週の日曜夜を予定してます。それでは


遅れてすまない! 最近は仕事が終わるととにかく眠くて仕方がないのだ!
本当は今日も眠い! でもこれ以上遅らせる訳にはいかないので再開!


大神「まさか自分で自分を刺したと言うのか?!」

朝日奈「い、いくらなんでもムチャだよ!」

石丸「そうです! 下手をすれば死んでしまうのですよ?!」

桑田「ありえねーって!」

K「どうかな? 俺の授業と部屋にある人体急所マニュアルによって、刺してはいけない場所は
  わかっているはずだ。それに、腹部の傷は見た目のインパクトとは裏腹に死亡率は低い」

K「ここには熟練の外科医がいるのだ。発見さえ遅れなければまず死なないだろう」

十神「くだらん。根拠のない妄言だ。そもそも葉隠がセレスを刺した瞬間がここに映っているだろう」

K「薄暗いのと葉隠の背中が邪魔でハッキリ傷口が見えん。それに、手元が
  映っていないが、この映像でも葉隠はナイフを縦に構えているように見える」

朝日奈「で、でもなんでそんなことする必要があるの?!」

霧切「絶対に疑われない被害者という立場を手に入れ、安全に山田君を殺すためよ」

セレス「そ、それではまるでわたくしが犯人のようではありませんか! 言い掛かりだけでも
     酷いのに、あまつさえ被害者のわたくしを犯人呼ばわりするとは見損ないましたわ!!」

江ノ島「ちょっと! いい加減なこと言わないでよね!」

不二咲「それに、葉隠君に刺されたセレスさんは何で無事だったのかな……?」

セレス「そうです! それをどう説明するのですか!」

モノクマ「言っておくけど、この映像自体は何の加工もしてないよ?
      葉隠君は本当にセレスさんを刺しちゃったんだから。うぷぷ♪」

桑田「多分だけどさー、服の中に何か仕込んでたんじゃねえか?」

大和田「わかった! 雑誌だ! 俺も本気でヤバイ奴とケンカする時は、
     念のために腹に雑誌とサラシを巻いたもんだぜ」

K「――いや、違うな」


自信を持って答えた二人に、しかしKAZUYAは明確に否定する。


大和田「なんでんなことがわかるんだよ?」


K「考えてもみろ。お前のように体の大きいヤツなら服の下に何か仕込んでもわからんだろうが、
  小柄で細身の安広が雑誌など仕込んだら、いくら葉隠でも刺す時に気付くだろう」

舞園「ファッション雑誌や文庫本くらいなら何とかなるかもしれませんが、
    その場合貫通してしまう危険性がありますしね……」

霧切「そもそも、そんな物を使ったのなら穴の空いた雑誌や本が現場付近から
    見つかるはず。でも、そんなものはいくら探してもなかったわ」


図書室に隠せば見つからない可能性もあるが、十神に遭遇することを考えれば得策ではないだろう。


K「大体、余りに固いものを仕込んでいたら葉隠が刺した瞬間に違和感を覚えるはずだ。
  どうだ、葉隠? 刺した瞬間、お前は何か感じたか?」

葉隠「うんにゃ。普通にスッと刺さったべ」

朝日奈「えぇー、なにそれ?! おかしくない? もう全然わからないよ!!」

大神「フム、我なりに考えてみたのだが……葉隠がナイフを突き出した瞬間、
    腕と胴体でナイフの刀身を挟み込んだのではないか? そのまますぐに
    うつ伏せに倒れてしまえば、端から見たら刺されたように見えるはずだ」

桑田「割りといいアイディアだと思うけど、それ多分おめーとせんせーくらいしか出来ねーから」

江ノ島(……私も出来る)

K「では、順を追って解説しよう」

K(この件を解き明かすには、まず事実を整理して並べる必要がある)



[ ロジカルオペレーション ]


第一問.セレスが葉隠に刺されたのはいつ?

 メス: 山田が殴られる前
 鉗子: 山田が殴られた直後
 止血: 山田が殴られて少し経ってから

第二問.先程モノクマが見せた映像は?

 メス: 本物
 鉗子: 偽装
 止血: 別人だった

第三問.つまりセレスは?

 メス: 本当は刺されていなかった
 鉗子: 刺された後も気力で行動した
 止血: 違う時間に二回刺されている


↓2


K(……安広が刺されたのは何かしらの細工をした後だろうな)

K(もしこの事件以前に刺されたとするとそのタイミングは何時だ? そんな時はあったか?)


↓2

セルフksk


すみません。眠いのでここまで
明日また来ます

というか山田は2回殴られてるけど、>>1は致命傷の方だけを「殴られた」としてないか?

安価減らしたら?


まあ、ノンストップ議論とかは候補が多いので時間がかかるのは仕方ないかなと
思いますが、今回みたいな選択方式は特に間違えてペナルティとかもないので
思ったままパッと答えを書いてもらったら確かにありがたいですね

>>731
むしろ逆ですね。葉隠君に殴られた方のみです

>>732
今回の裁判はもう出来てしまっているので、次ですね
次があるかは未定ですが


ミス二回なので自動進行

第一問 止血: 山田が葉隠に殴られて少し経ってから
第二問 メス: 本物
第三問 メス: 本当は刺されていなかった


K「摘出完了!」

K「安広はあの時、葉隠に刺されたが本当は刺されていなかったのだ!」

「ハァッ?!」

石丸「先生! それは一体……?!」

十神「とうとう頭がおかしくなったのか?」

K「そうだな。俺の発言は一見矛盾している。だが、それは葉隠が
  持っていたのが『本物のナイフだった』という前提があるからだ」

苗木「まさか……」

セレス「…………」

K「お前達は先を押すと刃が引っ込む舞台用のナイフを知っているか? モノモノマシーンには
  あまり使い道のないおもちゃやガラクタがたくさん入っていた。そういった類の
  道具がその中にあっても何ら不思議ではない」

K「葉隠は先程、山田を襲った後の記憶が曖昧だと言ったな? 何らかの方法で気絶させ、
  手にナイフを握らせておく。目を覚ました直後に安弘と遭遇し、煽るような言葉をかける」

K「――そうすれば、葉隠の臆病過ぎる性格から考えてまず間違いなく安広を刺すはずだ」

葉隠「なにを根拠に言ってんだ! 人を危険人物みたいに……」

大和田「お前、モノクマにナイフ渡されてぶん回してたの忘れたのかよ……」

葉隠「あ、はは……あったなー、そんなこと……」目逸らし

K「現場の暗さと混乱が相まり、出血がないことに気付かなかったのだろう。そして葉隠が
  血文字を残して逃げた後、山田にトドメを刺し凶器を隠滅して廊下の血を血糊で偽装する」

K「その後、帳尻を合わせるため保健室の前で自ら腹を刺したのだ!」


大和田「で、でもよ……腹を刺すんだぞ? 激痛なんてもんじゃねえだろ……」

舞園「そうです。余程の覚悟がなければ……たかがお金のためにそこまで出来るでしょうか?」

苗木「先生、その推理は流石に……」

K「そうだな。しょっちゅう怪我をする俺や格闘家の大神ならいざ知らず、
  いくら覚悟をしているとはいえ一般人に過ぎないお前達にそれは厳しいかもな」

K「ただ……」



K「――腹を刺す前に麻酔を打てばどうだ?」



「ま、麻酔っ?!!」

石丸「確かに、殺人という大罪を犯す覚悟があるのだ。痛みさえなければ腹を刺すことも……」



十神「愚民がッッ!!」




            反論ッ!!




十神「麻酔だと?! そんなもの【どこから手に入れた】というんだ!!」

十神「まさかそれすらも【モノモノマシーンで手に入れた】と主張する気か?」


スルー or 論破
論破する場合はコトダマリスト>>144-145


↓1



            発展!!


K「そうだ。あのマシンがあれば可能だ」

十神「根拠の無い憶測をさも事実だと言う風に騙るのはやめろ……!!」

桑田「確かにちょっと強引だけどさ、根拠が無いってなんで言い切れるんだよ!」

十神「では、シュレディンガーの猫とでも主張する気か?」

セレス「箱の中に入った猫。箱を開けるまでは、猫が生きているのか死んでいるのかわからない……」

霧切「今回の場合は、箱に入っていたかいないかの二つの事象が重なっていると言いたいのね」

大和田「はぁ? 入ってたなら入ってたし入ってねえなら入ってねえだろ?」

不二咲「ええっとね、量子力学の問題だからちょっと説明が難しいけど……箱の中身を知らない人にとっては
     箱を開けた時に初めて中に物があるかないか確定するんだ。だから開けるまで、箱のなかに中身が
     入っている状態と空っぽの状態、二つの状況が同時に存在してるってことになっちゃうんだよぉ」

桑田「ぜんっぜんわかんねー」

朝日奈「私もちょっと……」

石丸「本来は反論に使われた理論なのだ。つまり十神君は、実際に中身を確認するまでは麻酔が
    入っている可能性も同等に存在する、という西城先生の主張を皮肉っているのだよ」


外野を完全に無視して、十神はKAZUYAだけを見据える。


十神「確かに貴様の言う通り、モノモノマシーンの中に麻酔は入っているかもしれないし、
    入っていないかもしれない。だが、それをどうやって証明する? モノクマに聞くのか?
    まさかそれが確定するまで議論は出来ない等と詭弁を用いるわけではあるまいな?」

十神「そもそもだ。仮に入っていたとして、それが出てくる確率は?」

十神「【モノクマが犯人に手を貸した証拠でもない】限り、貴様の主張は妄言に過ぎない……!」

十神「とうとう焼きが回ったな、ドクターK?」


スルー or 論破
論破する場合はコトダマリスト>>144-145

↓1


K(ここで退いたら終わりだ!)


論破せよ!

↓1


不正解


K(コトダマの中に、明らかにモノクマが関わっているものがあるはずだ)

K(犯人は、一体『これ』をどこで手に入れたと思う?)


↓1


自動進行


【謎のマスク】→【モノクマが犯人に/手を貸した証拠でもない】


             解ッ!!


K「俺なら出来るッ!!」

K「モノクマが犯人に手を貸したと判断出来る証拠があれば、お前は納得するのだな?」

十神「あればな。そんなものあるはずがない!」

K「朝日奈。現場に落ちていたこのマスクだが……最初に見た時、
  確かに君はこれを不審者が身につけていたものだと言ったな?」

朝日奈「え? えっと……」

K「頼む。この事件の鍵はこのマスクの真贋に懸かっていると言っていい。ハッキリ証言してくれ」

朝日奈「……うん。本物で間違いないよ。怖くてずっと見てたし、少し破れてるのは
     石丸が思いっきり机に投げ飛ばした時に破れたんだと思う」

K「では問題だ。何故不審者が身につけていたマスクを山田が持っていたんだろうな?」

葉隠「そんなの簡単だ。山田っちが不審者の正体だったんだべ!」

大神「体格が違うだろう……山田が不審者ならひと目でわかる」

K「葉隠が不審者だと嘘を吹き込んでモノクマが山田に渡した? 仮にそうだとして、お前達は
  モノクマの言葉を無条件に信じるか? しかも、それを根拠にいきなり襲いかかったりするか?」

腐川「し、しないわ……モノクマの発言が胡散臭いなんて、そんなのわかりきったことじゃない……!」

朝日奈「私だったらまず先生に相談するな。それか、本人に確認すると思う」

桑田「……葉隠だったらやりかねねーけどな」

葉隠「う、うるせー! 俺だって、その、ちゃんと先生に言うべ! モノクマの言葉なんて信用できるか!」

モノクマ「酷いなぁ。ボクはなんだかんだ嘘をついたことは一度もないのに」


苗木「あからさまな嘘はなくても、情報を隠したり誘導したりしたことは何度もあっただろ!」

K「とにかくだ。マスクと葉隠を結びつけるには思考が跳躍している。
  誰かがマスクを使いそれを根拠に山田を騙したと考えるのが妥当だろう」

K「この時点では不審者本人がそれを行ったように見えるが、不審者に近い体格の人間が
  いきなりマスクを持って自分の前に現れたら、普通の人間ならまず警戒をするはずだ」

K「よって、確実に不審者ではない体格の人間がどこからかマスクを入手し山田を唆した」

腐川「……でも、なんでモノクマは本物のマスクをモノモノマシーンに入れたの?
    そんなの偽物のマスクでも良かったんじゃ……」

江ノ島「そうだよね。そんなマスクどこでも売ってるっしょ?」

桑田「わざわざ買いに行くのめんどかったんじゃね?」

苗木「そんな理由じゃないと思うけど……」

K「俺はそれをモノクマの言う『ゲーム性』……というものだと考える。あからさまに
  凶器を渡さないのはこちらの推理が大幅に制限されるからだと裁判序盤に奴は言ったな?」

K「今回の事件、舞台用のナイフや俺の管轄下にない麻酔など、俺達が推理するには
  あまりに必要な要素が少なかった。それ故の調整、とは考えられんか?」

大和田「どうなんだ、テメエ!」

モノクマ「さあてねぇ~。ボクはなーんにも知りません!」

腐川「白々しい……!」

モノクマ「でもボクが一方に肩入れすることだけはないと言っておくよ。ボクって公平な熊だから。
      最初から推理不可能、クロの勝利確定な裁判なんて見ててドキドキ感がないし」


K「これらの要素により、単なる憶測が少なくとも議論可能な推測レベルまでは引き上がった訳だ」

K「真犯人はモノクマと交渉し今回の事件に必要な物品をあらかじめ手に入れていた。
  ならば、その際に麻酔を手に入れていても別におかしくはなかろう?」

十神「…………」


もはや十神も反論をしてこなかった。


K「反論がないなら話を戻す。騙されていたとはいえ人を襲う程だ。犯人は、すぐに相手の言葉を
  信じられるほど山田と親しい関係かつ、言葉巧みに相手を誘導出来る頭脳の持ち主だな」

K「モノクマは生徒に“直接”凶器を与えることはしないと言った。が、モノモノマシーンに
  頼まれた物を仕込み、希望の物が出やすいよう多少確立を変えるくらいは出来ると俺は推理した」

セレス「…………」

K「俺もモノクマの嫌がらせか、いつもろくなものが出なくてな。……君の才能は
  ギャンブラー。そのずば抜けた運の良さはこの場の誰もが認知しているところだ」


KAZUYAはセレスとの会話を思い出す。


―しかし、これだけ揃えるならかなりのハズレもあったろう?

―あら、超高校級のギャンブラーを舐めてもらっては困りますわ。
 最小限のリスクで最大のリターンを得るのがわたくし。

―“欲しいものくらい簡単に”引き当ててみせます……


K「――君だったら、何回か引けば望みの物を引き当てることも可能。違うか?」

セレス「…………」


大神「まさか、そんなことが……」

朝日奈「セ、セレスちゃん、ウソだよね?!」

苗木「セレスさん……」

十神「何か言ったらどうだ、セレス?」

セレス「…………」

セレス「…………」

セレス「ふ」

舞園「……ふ?」


セレス「っざけんじゃねえぞ、オラァァァァァアアアアアアア!!」


「!!」

セレス「わたくしが自分で自分を刺しただぁ? んな訳あるかこのスカポンタン!
     こんだけ人数いて一人もこのヤブ医者疑う奴はいねえのか、ビチグソども!!」

桑田「せんせーはヤブじゃねえ! つか命の恩人になに言ってんだ、てめー!」

石丸「そうだ! 西城先生の技術力は確かだぞ!」

セレス「今そんな話してんじゃねえんだよ、赤毛猿に豆腐メンタルカス!」

桑田「ハァッ?!」

石丸「ぬなっ?!」

セレス「お・わ・か・り・で・す・かぁ?! 今さっき先生が言った仮説……
     いえ仮説にすらなってません。何故なら何一つ根拠のない妄想だからです!」

セレス「わたくしがその方法を使ったって言うなら証拠を見せろ、筋肉ダルマァァ!」

K「犯罪は必ず現場に証拠を残すと言う。では、現場について整理しよう」

K(ここまで来ればあと一息だ……! 悪いが、逃がす訳にはいかん!)


[ 犯行現場について ]


腐川「現場ってまずどこよ……」

石丸「間違いない。【犯行現場は娯楽室】だ!」

桑田「んなことはわかってるよ。せんせーの言ってる現場がどこかだろ……」

霧切「待って頂戴。山田君とセレスさんの事件が密接に関わっているのなら、
    セレスさんの事件の現場も含めるべきではないかしら?」

苗木「この場合、偽装に使われた三階から保健室前までの廊下も含むべきじゃないかな」

朝日奈「でも……<廊下には血痕以外何もなかった>よ?」

十神「フン、科学捜査が使えれば【血痕の成分分析】で一発なのだがな。……ただでさえ
    希少な証拠なのに、そこの馬鹿が全部拭いてしまったから今はもう何も残っていない」

石丸「だ、だって気持ち悪いではないか! 衛生的にもよろしくないし……
    山田君とセレス君の事件現場は手を付けていないから問題なかろう!」

大和田「兄弟を責めんじゃねえ! 医者のセンセイだったら、ほら……
     【血を検出する方法知ってた】よな? なんだっけか?」

不二咲「そういえば、化学室の薬品でルミノール液を作っていたよね。
     確か<血痕のあった場所しか反応は出なかったらしい>けど」

舞園「先生……」


適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け!
コトダマリスト>>144-145

↓2


今日はここまで。次回でクライマックス推理まで行きたい


【ルミノール溶液】 ドンッ! ====⇒ <血痕のあった場所しか反応は出なかったらしい> 同意!!


K「それに賛成だ。確かに血痕のあった場所以外から反応は出なかった」

不二咲「そうだよねぇ……せめて何か反応があれば……」

霧切「いえ、それがおかしいのよ」

苗木「どういうこと?」

K「反応があった血痕の場所とは、すなわち石丸が残しておいた娯楽室の中と入り口付近の血痕だな?」

桑田「そうだぜ?」

K「階段へ向かう部分は反応しなかったのか?」

不二咲「はい。ありませんでした」

K「ルミノール反応は化学的に非常に強い反応だ。ほんの少しでも成分が残っていれば、たとえ
  拭き取っていても反応は出る。が、娯楽室の入り口付近以外の廊下からは全く反応が出なかった」

K「娯楽室の前に落ちていた血痕は凶器から垂らした山田の血……。
  つまり、それ以外の廊下の血痕は――」

K「――本物の血液ではないということだッ!!」

セレス「ッ!!」


葉隠「じゃ、じゃあ一体なんだべ?!」

十神「さっき西城がチラリと触れたが血糊だろうな。拭き取られた今となっては証明出来んが」

石丸「しかし、保健室には輸血用の血液パックがあったはず。何故それを使わなかったのだろう?」

苗木「そうだよね。本物の血液を使った方が偽装もしやすいのに」

K「保健室に来る頻度の高いお前達が盗めば流石の俺も犯人を特定出来んだろうが、
  安広が盗んだらわかる。備品が無くなってすぐに気付かないほど俺はヌケてないのでな」

セレス「ビチグソがァッ!!」


            反論ッ!!


セレス「だろう、はずだ、違いない……さっきから推理になってないんだよ、小僧共がッ!」

セレス「ハア? 何かあれば全部モノモノマシーンで解決?? 何でも欲しいものが出てくる
     四次元ポケットか何かと混同してるんじゃありません?!」

セレス「そんなに言うなら【廊下に血糊を使ったと言う証拠を見せやがれ】ですわ!」


スルー or 論破
論破する場合はコトダマリスト>>144-145

↓1


            発展!!


K「確かに、拭き取られてしまった以上は証明することは出来ないな」

セレス「ほら見なさい! 適当なことヌカしてんじゃねえぞ、クソジジイ!!」

K「ところで、君のブラウスは直前に刺した割には随分たくさんの血が付いていた」

セレス「お・わ・す・れですかァ?! わたくしは葉隠君に刺された後、苦労して三階から一階まで
     歩いて戻ってきたのです。【たくさん出血してて何がおかしいってんだよォ】!!」

セレス「そもそも【血糊を使ったと証明出来る方法なんてどうせない】くせに! ハッタリですわ!!」


スルー or 論破
論破する場合はコトダマリスト>>144-145

↓1


【ヨウ素液】 → 【血糊を使ったと証明出来/る方法なんてどうせない】


             解ッ!!


K「その言葉にメスを入れさせてもらう!」

K「プロの医者を騙せると思ったのがお前の最大の過ちだな」

セレス「うっせー! ブチ殺すぞ!! 血糊なんて使ってないし大体どうやって証明するんだよ!
     頼みのルミノール溶液に血糊を見抜く効果なんてないですわよ!! ああ?!」

K「そんなことくらい知っているさ」


プロとしてのプライドが傷ついたのか、KAZUYAは睨みながら懐から小瓶を取り出す。


K「……で、だ。実はここにもう一つ薬剤を用意してある」

セレス「……ッ?!」

朝日奈「茶色い液体?」

葉隠「なんだそりゃ?」

K「これはヨウ素液。これから行うのはお前達もよく知っている実験だ」


そう言ってKAZUYAはマントの下からニ枚の赤いシミのついたガーゼを取り出す。一つは真新しい
濃い明るい赤のシミがついたガーゼで、もう片方は変色した暗赤色のシミが付いていた。


K「よく見ろ」


KAZUYAが二つのガーゼに薬液を付ける。一つ目のガーゼは、赤と茶色が混ざった何とも
言えない色になった。そして、二つ目のガーゼのシミの部分に液を漬けると濃い暗紫色に変わる。


江ノ島「なにこれ?」

石丸「ヨウ素液を使った実験と言えば澱粉反応が有名だが、まさか澱粉ではないだろうしな」

朝日奈「あ、その実験知ってる! ジャガ芋を切って液をつけるんでしょ?」

苗木「小学生の時にやったね」

桑田「あー、そういやガキの頃にやったようなやってないような……」

K「実はそれで正解だ。この二つのガーゼのうちこちらは俺の血が、もう一つは安広のオペの時に
  拭いた“安広の血”が付着している。液はこのガーゼに残った澱粉に反応しているのだ」

大神「何だと?!」

不二咲「そんな、どうして……?」

K「血糊に使われる成分は主にコーンスターチなどの澱粉質で、そこに食紅や化学色素を加える」

苗木「そうか! だからガーゼに残った澱粉質に液が反応して色が変わったんだ!」

十神(そういえば……いつもは医学の棚しか行かない奴がこの間珍しく美術や
    舞台の棚を見ていた。血糊の成分を調べていたのか……と言うことは……)

十神「待て。貴様、まさか傷の向きだけで真相を見抜いていたのか?!」

K「いや。傷の向きはあくまでその傾向が強いと言うだけで絶対的なものではない。
  錯乱して何度も自分を刺した患者を見たが、その中には縦向きの傷もあった。
  逆に横向きに刺されたケースもあるにはあるしな」

葉隠「一体どんな状況だべ……」

大和田「ハード過ぎんだろ……」

舞園「なら、どうしてわかったんですか?」

K「気付いたのはオペの時だ。傷口が妙な腫れ方をしていた」

石丸「な……?! 刺された患部が炎症を起こして腫れるなんてそんなの当たり前じゃないですか!」

K「そうだな。本当に僅かな違いだ。普通の医者ならまず気付かんだろう」


K「――だが、俺にはわかる!」


ギラリと目を光らせ、KAZUYAは生徒達に解説した。


K「麻酔液を皮下に注射すると、組織が水分を含んで膨張しふやけたようになる。
  それは一見腫れているように見えるかもしれないが、炎症による腫れか
  そうでないかぐらいの判断は俺ならつく!」

苗木「え、えっ?! まさか本当にそれだけで?!」

K「そうだ。しかも過去に一度、同様のケースを見たことがあってな。一目で確信した」

「…………」

十神(馬鹿な……これが超国家級の医師の実力か……!)

セレス「うふふふふ……」

腐川「ふ、ふん。グウの音も出ないってとこかしら?」

セレス「西城先生の巧みな話術に関心しているのですわ、わたくし」

桑田「悪あがきは見苦しいだけだぞ」

大和田「いい加減認めたらどうだ?」

セレス「確かにわたくし、血糊を使ったことがありますわ」

霧切「……何が言いたいの?」

セレス「実はわたくし、ヴァンパイアの真似をするのが好きで、この衣装もそれを
     意識しているのですが。刺された瞬間に持っていた血糊の袋が破けてしまったのでしょう」

苗木「ええっ?!」

苗木(こ、この期に及んでまだシラを切るつもりだ!)

桑田「白々しいぞ、てめー!」

大和田「いい加減にしろよ、このクソアマ!」

セレス「うっせぇガキ共! じゃあわたくしが麻酔を使ったっていう証拠はあんのかよ?!
     結局今のままだと状況証拠しかねえだろうが。そんなこともわかんねえのか、ああ?!」

大神「なんとタチの悪い……」

K「観念しろ、安広!」

セレス「わたくしの名前はセレスティア・ルーデンベルクだっつってんだろダボ!!
     何回言やわかるんだ、この嘘つき野郎!!!!!」



           [ マシンガントークバトル ]


  勘違いですわ

                         賛同出来ません

       おバカさん

                 嘘は通用しません!

   イタい人


                                ミジメですわね

           上等ですわ

                       ビチグソがぁッ!!



セレス「【証拠がない】以上はあくまで決めつけだろうが!」


コトダマリスト>>144-145

↓1


今日はここまでかな。次回で裁判終了です

では。安価下


K「これが答えだ!」


【秤の実験】 ドンッ! ====⇒ 【証拠がない】BREAK!!


K「苗木達が秤を使って調べたらしいが、あのモノクマ人形の入ったボトルは全て同じ重さだそうだ」

K「床に落ちていた破片を全て拾って測ったとしても、拾いきれない
  細かい破片もある。故に、本来なら元のボトルよりも必ず軽くなるはずだ」

桑田「あー、そういやあったなそんなの」

不二咲「でも、何故か破片の方が重かったんだよねぇ」

K「つまり、ボトル以外のガラス片が混入しているものと思われる」

セレス「!!!」

葉隠「ガラス? あそこにボトル以外にガラスなんてあったっけか?」

K「それで、ピンセットで一つずつ細かい破片を俺がチェックした所、
  ……モノクマボトルの物ではないガラスの破片を発見した」

舞園「どうしてわかったんですか?」

K「厚みが違ったんだ。それによく見るとガラスの種類も違う。これがわかりやすいサンプルだ」

朝日奈「見せて見せて! ……本当だ。ほんの少しだけど厚さが違う!」


霧切「……間違いないわね。これは二種類のガラスだわ」

大和田「よくわかったな。こんなもん……」

K「病理解剖ではミクロ単位の観察が当たり前だからな。目に見えるガラス片を見分けるくらい容易い」

K「そして、ほとんどは粉々になっていたが一つだけ小さな弧の形をしている破片があった」

江ノ島「弧ってことは、えーと弓形?」

K「それが何のガラスかは、今までの議論で答えが出ているはずだ」



 [ 閃きアナグラム ]


き ち う ち ゆ う に

し や し ん と り だ


○○○○○○


↓直下


ちゆうしやき → 注射器    正解!!


十神「成程。注射器のシリンジの部分か」

K「警察なら、この破片に残された成分を分析してこれが麻酔の入っていた注射器だと
  断定出来ただろうが、生憎ここでは成分分析も破片の再現も出来ん」

セレス「なら、それが何だと……」

K「……注射器のガラスはあったが、針はどこに行ったんだろうな?」

セレス「!!」

K「俺もプロだ。道具の管理には細心の注意を払っている。仮に針単体で落ちていたとしても
  それが注射針だとひと目でわかるし、自分の器具が減っていなければ不審に感じるだろう」

K「針だけではない。葉隠に用いた偽のナイフも未だに発見されてないな。
  何故ならマスク等と違い、それらは今回のトリックの謂わば『要』だからだ」

K「万が一見つかればその瞬間にトリックが崩れる――。半端な所には怖くて隠せないだろう」

腐川「じゃあ、こいつの言う通り証拠はないってこと……?」

K「これは俺の予想だが……どこにもなかったということは、まだ自分で持っているんじゃないのか?」

朝日奈「えっ、でもどこに?!」

舞園「彼女の服のポケットには何も入っていませんでしたよ?」

セレス「…………」

K「そうだな。俺も見つけられなかった。――ところで、君は入院してる間ほとんど靴を
  脱がなかったな? 腹が痛むから、屈んで脱ぎ履きするのが大変だからと言っていたが……」

K「――靴の中敷きの下に突っ込んでしまえばどうだ?
  細身で小ぶりのナイフと針一本程度なら楽にしまえるはずだが」

セレス「!」

K「肌身離さず持っていれば安心だろうからな。どうなんだ?」

セレス「…………」


十神「ま、待て! まだ一つだけ解決していない問題があるぞ!」

K「何だ?」

十神「山田の体にあった注射痕……あれは一体何だ?!」

K「ああ、それか。恐らくはバランス調整の一つだな」

十神「どういう意味だ、説明しろドクターK!」

K「俺が見ればあの傷が注射針によって付けられたものだというのは一目でわかる。
  いつどこで何のために注射器が使われたのか? それらは一体どこで手に入れたのか?」

K「俺達が推理に詰まった時、そういった新たな視点を与えるためのヒントだったのだ」

K「――傷口だけで俺が真相を見抜くなんて、流石のモノクマもわからなかっただろうからな」

モノクマ「……本当、反則だよねキミの存在」

K「安広には単なるミスリードだと説明してやらせたのだ。
  今やこの学園には俺以外にも注射器を扱う人間が複数いるからな」

K「まあ、医者を目指す二人の重い覚悟や信念がわからず、それでいて自分の頭脳に
  絶対の自信がある人間。上手く行けばそんな輩が引っ掛かってくれるかもしれない……
  モノクマもその程度には考えてたかもしれないがな?」

桑田「十神しかひっかかってねーじゃん!」ププッ

大和田「あんなちっぽけな傷だけで大見得切っちまってよ!」

朝日奈「わ、笑ったらダメだよ。クスクス」

苗木「犯人扱いされたけど、僕は別に怒ってないから。ハ、ハハ……」

十神「ぐ……くっ……」ギリィッ!

K「では最後に事件の概要をまとめ、この長い裁判の幕引きをするとしよう」


               ― クライマックス推理 ―


K「まず安広はモノクマと交渉し、犯行に必要な道具を調達することから始めた」

朝日奈「モノモノマシーンで麻酔や偽のナイフ、マスクを引き当てて山田をだましたんだね……」

大神「すっかり騙された山田は内通者と誤認した葉隠を呼び出し、ハンマーを片手に詰め寄った。
    そして、怖がりの葉隠は犯人の目論見通りモノクマボトルで山田に襲いかかったのだ」

葉隠「山田っちを勢いで殴ってパニックになった俺は偽装工作だけして逃げようとしたが
    セレスっちに気絶させられちまった。その時、手にナイフを握らされたんだ。目を覚まして、
    このままだとオシオキだと煽られた俺は、つい助かりたい一心で口封じを図ったんだべ……」

腐川「セレスはそのまま死んだフリをしたわ。そして葉隠が逃げ帰った後行動を開始した……!
    気絶していただけの山田にトドメを刺し、凶器を隠滅。麻酔を腹部に刺した後、針を山田の
    足に刺した。注射器のガラス部分は粉々に踏み砕いてモノクマボトルの破片に混ぜたのね」

不二咲「その後は保健室に向かいながら血糊で廊下の血痕と出血量を偽装したんだ。不要な物は
     保健室の横のトイレで流したんだと思う。流せない針とナイフだけ靴の中に隠して、
     いよいよ本物のナイフで自分のことを刺したんだね……」

K「そしてまんまと被害者という地位を手に入れたという訳だ」



K「これが事件の全貌だ――!!」


全員の視線がセレスに向かっている。

セレスは何も言わない。


ただ、お辞儀をするように深く頭を下げた。


セレス「一つ、訂正があります」


カラン……

裁判場の真ん中に、小さな透明の袋が投げ落とされる。
その袋の中には折りたたまれた小型のナイフと、小さな針が入っていた。


セレス「先生は先程、モノモノマシーンを何度か回せば
     いずれ希望の物が出るだろうとおっしゃいましたが……」

セレス「――わたくしは全て一度で引き当てました」



そう言って、この裁判が開かれてから初めてセレスは笑った。



ここまで。裁判終結!

今月はちょっと多忙なので来週は可能だったら来ます。それでは


「…………」

苗木「じゃ、じゃあやっぱりセレスさんが!」

セレス「その通り、わたくしがこの事件のクロです」

腐川「散々悪あがきしたくせに随分あっさり認めるのね……」

セレス「わたくしは仮にも勝負師。負けを宣告されてあがくほど落ちぶれてはいませんの」

K「安広、いやルーデンベルク。何故こんな真似を……」

セレス「安広、で結構ですわ。わたくし勝者に払うべき敬意は持ち合わせているつもりです」

石丸「ま、まさかお金が動機ではあるまい。何か止むに止まれぬ事情があるのだろう? そうだろう?」

セレス「残念ですが、わたくしが事件を起こした動機は純然たるお金ですわ」

不二咲「そ、そんなぁ……」

大和田「テメエ、たかが金で仲間を裏切ったのかよ!!」

朝日奈「でも、セレスちゃんはこの生活に適応しようっていつも言ってたのに……!」

セレス「あんなの嘘に決まってんだろおぉぉおお!!!」

「っ??!」


突然鬼のような形相で怒鳴るセレスに度肝を抜かれる――KAZUYAを除いて。


セレス「わたくしはなぁ! この中の誰よりもここから出たくてたまらなかったんだよォ!!」

「…………」

セレス「わたくしが事件を起こした理由――それは昔から抱いていたある夢のためですわ」

K「夢?」

セレス「ええ。わたくしはその夢の実現のためにギャンブラーになったのです。
     何度も何度も修羅場をくぐり時には自身の命すらもベットして……」

桑田「なんだよ、その夢って……」


セレス「……憧れ続けた理想の世界を現実に作り上げること、でしょうか」


一瞬だけセレスは視線を宙に巡らせ、次の瞬間舞台上の役者のように流暢に語りだした。


セレス「わたくしは昔から西洋のお城に住むことが夢だったのです」

大和田「は?」

舞園「お城?」

セレス「ええ。ついでに言うとヴァンパイアの格好をさせた
     イケメン執事達に囲まれ退廃的な生活を送ることが最終目標でした」

「…………」

「…………」

「…………ハァッ?!」


あまりに突拍子なさすぎるその発言に全員の思考が一瞬停止する。


苗木「いや……えぇ?」

桑田「くっっっだらねぇ……」

大神「くだらな過ぎる……」

朝日奈「訳がわからないよ!!」

石丸「そんな……そんな理由で君は人を……仲間を……?!」

不二咲「嘘だよね? わざと僕達に憎まれる理由を言ってるんだよね……?」

K「…………」


セレス「価値観の相違ですわ。わたくしはあなた方を仲間などと思ったことは
     一度もありません。たまたまこの災難に居合わせただけの赤の他人です」

「……………………」


あまりにきっぱりと言い切るセレスに一同は沈黙せざるを得なかった。
真実に対し強い追求心を持つ霧切が、代表して質問を続ける。


霧切「……山田君にはどう計画を持ちかけたの? それにモノクマとはいつ内通を?」

セレス「気になるなら、お話致しましょうか。推理では明かされなかった舞台の裏側を――」


立っていると辛いのか、青ざめたセレスは再び車椅子に座った。そのまま淡々と話し続ける。


セレス「今回の計画について一番の障害は当たり前ですが学級裁判です。頭のキレる先生や霧切さん、
     十神君は勿論のこと、他の方々の思わぬ発言で議論が大きく進展してしまうことがある……」

セレス「正直言って、わたくし一人では少々荷が重かったのです。
     わたくしはあくまでギャンブラーであって犯罪者ではないので」

K「それでモノクマか」

セレス「ええ。卑怯かとも思いましたが、目的のためには手段など選んではいられませんので。
     モノクマがほんの少しわたくしの計画に協力してくれればぐっと選択肢が広がるのです」

モノクマ「ほんの少しって……思いっきり脅迫してきたくせに」

不二咲「で、でも……だからって自分の体を傷付けるなんて……」

大神「お主は体に痕が残るような真似は嫌がると思ったがな」

セレス「それだけは渋りましたわね。如何に夢のためとはいえ、わたくしの
     玉のようなお肌に傷が残るのは耐えがたいことでしたので」

モノクマ「人に計画考えさせておいて文句言うとか論外だよね!」


                  ╂


KAZUYAが部屋から去った直後、セレスは即座にモノクマを呼んだ。


「はいはーい、何ですかー。イチャラブを邪魔した苦情なら受け付けないからね?」

「コロシアイについて大事なお話があるのですが」

「およ? とうとう殺る気になってくれた訳?」

「とうとうなんてとんでもありませんわ」

「――最初からです」


セレスはニコリと悪魔のような微笑みを浮かべる。


「どうです? わたくしと組みませんこと?」


直前までKAZUYAと仲良くしていたにも関わらず、平然と黒幕に協力を申し出るセレスに、
モノクマはゾクゾクした感情を覚え彼女を情報処理室に招待した。秘密の会談をするためにだ。


「とうとう動いてくれるんだね。嬉しいよ」

「しかし、大きな問題がありますの」

「はいはい! 何ですか?」

「わたくし、あと少しという所まで計画を立てたのですが、今のままでは勝てるヴィジョンが
 見えないのです。麻雀で例えるなら役が完成していないのにとりあえずリーチをかけるしかない、
 くらいの弱々しい引きですわ。このまま突き進んでも勝ちが見えないのです」

「確かに、そんなセコい攻めならあっという間に役満ツモられて終了だねぇ。
 ……でもそれをボクに言ってどうするの?」

「わたくし、ギャンブルの醍醐味は運とイカサマにあると思っていますの」


しゃあしゃあと言いのけるセレスにモノクマは大きな声で同意する。


「わかるわかる! どんなに大勝ちしててもバレた瞬間に即アウトのスリルがたまんないよねぇ!」

「ですから、わたくしに協力なさい」

「はい?」

「わたくしは先程、手を組みましょうと言いました。その意味がわからないあなたではないでしょう?」

「いやいやいや! 流石にそれはマズイって。ボクはこの学園の学園長だよ?
 ゲームマスターだよ? そのボクが堂々と生徒の一人に肩入れするのは駄目でしょ。
 フェアじゃないよ。イカサマですらない」

「別に全面協力しろだなんて誰も言っていませんわ」

「わたくしの考えた作戦にずる賢いあなたが一工夫を加えるのです。出来れば
 小道具を使うものがよろしいでしょうね。一気に難解になりますから」

「でもなぁ……」

「どうしますの? あの動機、わたくしをピンポイントに狙ったものでしょう?そのわたくしが
 諦めてしまえばもう事件なんて起こりませんわ。あなたの計画はタイミングが重要なのではなくて?」

「そうだけどさぁ……」


セレスは尚も畳み掛ける。彼女にとっての正念場は今だ。


「十神君は動きませんわよ」

「へぇ? 何を根拠に?」


「恐らく頭脳労働はわたくしより上の十神君が、今まで何度もチャンスがあったのに
 動かなかった。それで十分ですわ。結局の所、わたくし達は超高校級の天才であっても
 超高校級の犯罪者ではありませんから」

「わたくしが思うに、このメンバーで最も脱出に近い存在はジェノサイダーさんではないでしょうか?
 あの時は突発的に動いて十神君に目撃されてしまいましたが、彼女がその気になれば誰にも
 目撃されず証拠も残さず通り魔的な犯行を行うのは容易いはず。彼女は殺しに慣れていますしね」

「アッハッハッ! 見事なプロファイリングだね! 流石は超高校級のギャンブラーだよ!」


実を言うとモノクマ自身同じように考えていた。
余程のチャンスがなければ十神は動かない。もはやセレスに期待するしかないのだ。

しかし、だからと言って学級裁判が成り立たないような事件は困る。
学級裁判は彼が考案した、このコロシアイ学園生活の核と言っても良いシステムなのだから。


「いやー、気持ちはわかるよ? でもボクが直接手を貸すのは流石にマズイかなーって。
 推理が不可能になると学級裁判の意味がなくなるし」

「ならば、最低限推理が可能な事件を起こし、あなたは直接手を貸さなければ良いのです。
 必要な物はモノモノマシーンに入れてくだされば、わたくしの才能で引き当ててみせます」

「ワオ、自信満々だね!」

「この程度の運もなくて、殺人など出来るはずもないですわ」

「フフ、じゃあ今思いついたとっておきの作戦を授けようかな!」


牙を剥き出しながら、モノクマは自信満々に思いついた作戦を話す。が、


「お断りします」


けんもほろろに断られた。


「ハァア?! 何で?!」

「確かに、その完璧な計画を使えば間違いなく計画は成功するでしょう。
 ですが、わたくしの美しいお肌に傷が残ってしまいます。それでは意味がないのです」

(あああ! めんどくせぇー!! こういう女だよ、セレスは!)


モノクマの中の人間が苛立って心の中で叫ぶ。


「そんなこと言ってる場合かよ! 百億円欲しくないの?!」

「欲しい、ですわ……!」


ギリッとセレスは歯ぎしりをする。百億円は喉から手が出る程欲しい。
しかし、いくら麻酔を使うとは言え自分で自分の腹を刺すのはあまりにも抵抗があった。


「ですが、失敗したら痛いでしょうし……」

「普通に刺したら痛いじゃ済まないけどそのための麻酔でしょ?!」

「それに一生痕が残るのはやはり……」

「じゃあ腕の良い形成外科を紹介するよ! 跡形もなく消してくれるからさ!」

「何億もぼったくられるかも……」

「わかったよ! ボクが治療費を持てばいいんでしょ、持てば!」

「では、契約成立ですわね?」


セレスはニヤリとほくそ笑む。


「全く……どうせ最初からそれ狙いだったんでしょ。本当にキミって計算高いよね?」

「お互い様ではありませんか。わたくし達はそれぞれの目標のためにお互いを利用するのです」

「ハァ。もういいよ。キミのそういう所嫌いじゃないし。じゃ、モノモノマシーンには
 三十分以内に用意して入れておくから。頑張って引き当ててちょうだいな!」


― 引き当ててみせる。超高校級のギャンブラー、セレスティア・ルーデンベルクの名に懸けて。


                  ╂


K「そうして、お前は密かにモノクマと内通したのだな」

大和田「だ、大胆不敵ってレベルじゃねえぞ……」

霧切「この場合は傲岸不遜と言うのよ」

大神「だが、山田は? この計画は山田が協力しているはずだが、
    一体どんな口車であやつを騙したのだ?」

朝日奈「そうだよ! 確かにちょっとケンカしたこともあるけど、まさか
     私達を殺して自分だけ脱出しようとするなんて……!!」

十神「キッカケは、やはりアレか?」

K(アルターエゴ……山田と俺達の間に不和をもたらしたが、まさかそれだけで人を殺せるものなのか?)

セレス「わかっていませんわね。あなた達は、一ヶ月も山田君といたのに
     彼がどういう人間なのか全くわかっていませんわ」

桑田「どういうことだよ……」

セレス「……彼は体は大きかったけれど、心はいつだって小さかったのです」


セレスはその時の光景を思い出すように目を閉じた。


ここまで。

明かされる舞台裏……!


                  ╂


「ややっ! セレス殿が僕の部屋に来てくれるなんて……!」


山田は心底嬉しそうだった。ここしばらく続いていた冷戦状態は、彼の精神的孤立化に
一層の拍車をかけていたからだ。無意識のプレッシャーすらあったかもしれない。

ここぞとばかりに山田は取り繕おうとする。
セレスには山田のその必死さが手に取るようにわかっていた。

……むしろ、冷戦状態はこの日のための長い長い布石であったのだから。


(別に、わたくしは犯人扱いされたことなんてこれっぽっちも怒ってなんかいませんわ。
 疑わしい人間がいたら疑うのはあの場では至極当然のこと)

(ですが、怒っている振りをして山田君に罪悪感を抱かせれば今後操りやすくなる。
 彼はとにかく気が小さいですからね。だからこそ、利用は容易――)


何と、セレスが今まで山田と距離を取っていたのは彼女が執念深かったからではなく、
全ては今後のことを見越した計算高さからであったのだ。


「山田君、わたくしあなたとまた仲良くしたくて今日は来たのですわ」

「な、なんと?! ツンデレキャラのセレス殿がソッコーデレた?! これは一体……」


白々しいくらいの笑顔を見せて流石の山田も不審に思ったようだが、
そこは人心掌握に長けたセレス。計算され尽くした台詞を使って山田の注意を逸らす。


「それだけのことが起こったということです。わたくし、あなたのことが不憫で不憫で……」

「僕が不憫? ……もしや、なにかあったのですかな?」

「ええ、わたくしの口からはとても言いづらいのですが」

「早く教えてくださいよ」

「ですが……でもやっぱり……」


セレスはのらりくらりとかわしてなかなか言わなかった。これは駆け引きだ。
焦らすことによって相手の注意をひき、更にそれだけ重い出来事だと思わせる心理戦である。

つまり、この時点で山田は見事にセレスの術中に嵌まっていた。


「……あの子のことについてですわ」

「アルたん……!」


あからさまに監視カメラを意識して声を落とす。山田の顔がみるみる青ざめた。


「彼女に、彼女の身に何か……?!」

「いえ、そういうことではないのです。ただ、山田君には言いづらいというだけのことで」


山田は今にも叫んでセレスの肩を揺さぶりたかったが、監視カメラの存在があったので何とか抑えた。
アルターエゴが黒幕にとって不都合な存在だと言うのは流石の山田もわかっている。


「僕にとって? つまり彼女ではなく僕にとって良くないことが起こったと?」

「はい。……黙っていようかとも思ったのですが、やはり伝えておこうと思いまして。これを」


スッと、セレスは山田から借りていたカメラを取り出す。
画面には脱衣所で楽しげにしているKAZUYA派の男子メンバーが写っていた。


「これが、何か?」

「わかりませんか? 陰になって彼女ははっきり写っていませんが、これは彼等が
 彼女と話している姿をたまたま見掛けたわたくしが盗撮したものです」

「なんと!」


勿論、嘘八百である。


一月も閉鎖空間で過ごしたので、セレスは生徒達の行動パターンが大体把握出来ていた。
特に体育会系の朝日奈と大神、そして石丸は毎日ほぼ決まった時間に勉強や
トレーニングをするからわかりやすい。

最近は大分緩くなったもの、石丸に至ってはまるで一日が時間割で区切られているかのように
正確に動くため、必然的にその周りの人間の行動パターンも決まってくる。

セレスは知っていた。メンバーの変動はあれど、男子が毎晩ほぼ同じ時間に脱衣所に集まることを。
それを何度か盗撮し、上手い具合に彼等がロッカーを向いている写真を選択して山田に見せたのだ。


「西城先生は、あなたと彼女の接触を禁じたくせに自分の派閥の男子は優先的に
 彼女とおしゃべりさせて楽しませ、そうして自分の株を上げていたのです」

「な……そんなことが……?!」

「わたくしも初めは信じられませんでしたわ……ですが、先生も人を束ねる立場ですし、
 人間ですから多少の贔屓はあります。先生にとって、彼女は人間関係を円滑にするための……」

「――便利な“道具”の一つなのでしょう」

「道具?! 彼女は道具なんかじゃないっ……!」


計算通り山田の頬に赤みが刺し、目が怒りで細まる。セレスは内心で
ほくそ笑みながらも、表面的には同情するような眼差しで山田を見つめた。


「それだけではありませんわ。これだけならまだ黙って見ていても問題なかったのですが、
 彼等は彼女にあなたの悪口を吹き込んでいたのです。わたくし、見ているのが辛くなって……」

「僕の、悪口……」


山田には色々と思い当たることがあった。

半分以上は根拠の無い、彼の劣等感から生み出された被害妄想的なものであったが。


(クソックソッ! どいつもこいつも僕をバカにして! デブで悪いか! オタクで悪いか!!)


山田の中に、彼等に対する信頼や絆がなかった訳ではない。冷静に考えれば、
忠告や苦言はあっても悪意の陰口など叩くような人間達ではないとわかったはずだ。


               しかし、山田の

 アルターエゴに対する

                               歪んだ偏愛は

        そんな当たり前のことすら

                      わからなくなるくらいに


          盲目的だった。


「それで、今まではあなたに冷たく当たっていたわたくしですが、
 流石に同情を禁じえず真実を伝えに来たのです。彼等は人として信用出来ません」

「そう、そうですか……いや、ありがとうございます、セレス殿!
 言いづらいことだったのに、よく教えてくれました!」

「もう僕はあいつらのことを仲間だなんて思わないぞ!! ぜってぇに許さねえ!」

「ならば山田君……わたくしと一緒にここから出ませんか?」


セレスは目を見開いて山田を捉える。ここまで来たらもう逃がさない。


「出るって言っても一体どうやって……」

「わたくし、偶然見てしまったのです。葉隠君がこのマスクを落とした所を……」

「そのマスクがなんだと言うのです?」

「わかりませんか? 朝日奈さんを襲った不審者のマスクです」

「なんと?! では葉隠康比呂殿が内通者?!」


冷静に考えればいくらなんでもセレスの発言には偶然が多すぎる。
彼女は何もかも不自然に知りすぎているのだ。

しかし、元々が単純なうえセレスの巧みな話術で冷静さを失った山田にわかるはずもない。


「そういえば以前、彼は食堂でナイフを振り回していましたな……」


疑心暗鬼を生ずとは言ったもので、一度怪しいと思うと葉隠の過去の行動全てが怪しく思えてくる。


「きっと内通者の彼に死んでもらっては困るから、モノクマが護身用に与えたのでしょう」

「なるほど、なるほど……! 今僕の中で一気にピースが揃いつつありますぞ!」

「お分かりですか? 今ここにいるのは、わたくし達の敵だけ。何も躊躇う必要はないのです」


そして、彼女はトドメの言葉を放つ。


「この学園の中でわたくしと彼女を救えるナイトは、山田君だけ――どうか力を貸して欲しいのです」

(“ナイト”! 僕こそが選ばれた戦士で勇者……! 彼女達を救えるのは僕だけなんだ!!)

「了解しましたぞ! 不肖この山田一二三、覚悟を決めました! 目にものみせてやりましょう!!」


もはや隠すことなくセレスはニタリと笑った。


                  ╂



霧切「そのマスクを使って葉隠君を内通者に仕立て、山田君に詰問させたのね?」

K「――ハンマーを護身用に持たせてか」

セレス「ええ。山田君にはあえて強い言葉で葉隠君を脅すよう指示しました」


葉隠「だから、ここから出せとかワケのわかんねえことを言ってたんだな……」

セレス「葉隠君を脅せばもしかして出してくれるかもしれない、駄目なら駄目で作戦決行と……
     当然、葉隠君は例の不審者とは無関係ですから作戦決行の方に舵を切ります」

大和田「葉隠は内通者ではないと信じていたのか?」

葉隠「セレスっち……そんなに俺のことを……」

セレス「まさか。葉隠君は内通者にするにはおバカ過ぎますわ。論外だったというだけです」

桑田「だよなー」

葉隠「ひでえべ……」

舞園「強い言葉で脅させたのは、葉隠君の危機感を煽って山田君を襲わせるため……?」

セレス「ええ。今までの行動から、葉隠君が非常に小心者でかつ保身的だと
     いうのはわかっていました。ハンマーという目に見える凶器を持ちながら
     訳のわからないことを迫る山田君に、葉隠君はさぞかし恐怖を感じたでしょう」


『俺が内通者?! 変な冗談はやめてくれって、山田っち……』

『ええい、これほど決定的な証拠があるのにまだしらばっくれるか!』

『だから知らねえって! なんかの間違いだ!』

『かくなる上は武力に物を言わせてでも脱出口を……』

『おい、そのハンマーなんだべ……お前さん、とうとう頭おかしくなっちまったんか……?』

『こっちには武器がある。内通者なんて怖くないぞ!』

『(まともに話なんてできねえ……このままじゃこ、殺される!)』

『うわああああああああ!!』

『……エッ?!』


葉隠は背後にあったモノクマボトルを手に取る。

ガシッ、ブンッ! ガッシャーン!!

バタン……


セレス「……まさかあんなに早く動いたのは想定外でしたけど」

大神「想定外だと?」

セレス「はい。当初の予定では二人が揉み合っている所をわたくしが背後から襲い葉隠君を気絶させ、
     その後葉隠君に罪をかぶせる偽装をしてから山田君を殺す予定だったのですが……」

セレス「葉隠君が想像以上に早く山田君を襲ったため、計画を大幅に変更せざるを得なかったのです。
     しかも、呆れたことに葉隠君は葉隠君で他人に罪をなすりつける偽装をしていましたしね」

十神「全く無関係の俺の名前を書いてな」

葉隠「うぐっ!」

セレス「ダイイングメッセージを偽装している隙に背後から一気に駆け寄り気絶させたのです」

不二咲「動揺して慌てて飛び出したからビリヤード台にぶつかってボトルを落としたんだね……」

セレス「あの時は焦りましたわ……。薬品をかがせてすぐに気絶するのはフィクションだと
     聞いていたので、スタンガンで倒してからゆっくり薬をかがせ何とか気絶させたのです」

十神「つまり、葉隠の体をじっくり調べていればスタンガンの跡が残っていた可能性があった訳だ」

朝日奈「なに? KAZUYA先生が事件の直後にちゃんと調べなかったのが悪いって言いたいの?」

K「いや、抜かった……俺のミスだな。容疑者の身体検査は真っ先にしておくべきだった」

苗木「先生は悪くないよ。一度に二人も手術してみんなバタバタしてたし」

大和田「まさかスタンガンまで使ってたなんてな」

霧切「……むしろ犯行に使われたそのスタンガンを見つけられなかった私の調査不足ね」

大神「捜査時間には限りがある。仕方あるまい」

石丸「仮に見つけていたとしても、事件とどう関係があるのかわからなかったろうしな……」

セレス「あとはもう先生の推理通りですわ。葉隠君にナイフを持たせ目を覚ますのを待ち……」


葉隠『……んあ? なんで俺ナイフなんか……』

葉隠『ッ!! 山田っち?! や、やっちまった!』

セレス『葉隠君?』

葉隠『ゲエ?! セレスっち?! こ、これはだな、その……』

セレス『あなたが山田君を殺したのですね?! 近寄らないでください、この人殺し!』

葉隠『ち、違うんだべ……!』

セレス『何が違うのです! クロは処刑されるというルールをお忘れですか? わたくしという
     証人がいる以上、裁判をするまでもありません! あなたの命は今日で終わりです!!』

セレス『それとも――まさかそのナイフで山田君同様わたくしを殺し、口封じするつもりですか?』

葉隠『?! く、口封じ……』

葉隠(この場にいるのはセレスっちだけ……先生達は保健室だべ……確か十神っちは来ない……)

葉隠(イケる! どうせもう一人殺してるんだ。他に何人殺しても同じだべ! 殺らなきゃ俺が死ぬ!)


カタカタと足が震え、全身の冷や汗が止まらない。


葉隠(でも、やっぱ……)

セレス(あと一押し!)

セレス『わたくしはあなたを告発しますわ! 今すぐ保健室に行って西城先生に全てお話します!
     あなたはこれから学級裁判で処刑されるのです!! 死ね! 最低の人殺し野郎!!』

葉隠『や、やめろ……やめろ! うわあああああああああああ!!!』








ドスッ!



「…………」

苗木「葉隠君が去ってからまだ生きていた山田君を殴り、凶器を隠滅。
    その後、廊下の血痕を血糊で偽装したんだね」

モノクマ「仲間の性格を完璧に把握し利用した、なんと鮮やかかつ大胆な手口でしょう!
      ボクもう、興奮してアドレナリンが止まらないよ!」ハァハァ!

「…………」

モノクマ「じゃあ、もう結果はわかってるかもしれないけど投票タイムと行きましょうか!
      オマエラ、お手元のスイッチで投票してください」


生徒達は言われるままタッチパネル式のボタンを押していく。勿論全員同じ人物に入れた。


モノクマ「……はいっ! では張り切って参りますよ!」

モノクマ「投票の結果、クロとなるのは誰か?! その答えは、正解なのか不正解なのか――?!」

モノクマ「さあ、どうなんでしょーーー?!」


裁判場の壁にかかっている大型パネルと席のパネル、両方にスロットマシーンの映像が
映し出された。スロットの絵柄はKAZUYAや生徒達の顔写真だ。そして、徐々に絵柄が揃う。


                     VOTE

                  【セレス】【セレス】【セレス】

                    GUILTY


見事絵柄は三枚揃い、ファンファーレの音と共に画面の中でメダルがジャラジャラと流れた。



          !   学   級   裁   判   閉   廷   !


ここまで。

遅れてすみません。皆さんも熱中症や冷房病や脱水症には気を付けてください。

すみません。今週はめちゃくちゃハードでちょっと時間取れなさそうです
書き溜めしておくので、五階の探索チームの安価だけ取っておきます

尚、コミュニケーション能力が低い人だけで組ませると大惨事になるのは
前回で示した通り……霧切さんはもうあの二人と組みたくないと思っているので
無理に組ませるとKAZUYAに対する好感度が下がるかも

選択可能メンバー
苗木・石丸・朝日奈・桑田・大神・腐川・舞園・霧切・不二咲・大和田


余った人は保健室の手伝いをするので無理に全員行かせなくても可

とりあえず1チーム目(2~4人)

↓3

ダンガンロンパ未プレイでドクターK未読だけどこのスレは面白いから期待してる

今日こそはと思ったのに……明日こそ来ます!

>>916
ダンガンロンパのアニメは流石に見てますよね?
自分もゲームはまだ途中までしかやっていないので大丈夫ですよ
あとドクターKは面白いです。オススメです

俺はむしろ作者さんが最後までやってないことに驚きだww
でも、1は最後までやって2の途中とか絶女の途中とかそういう?

>>920
逆ですね~。絶女はクリア済、スーダンは終盤、1は序盤です
1は大幅に端折っているとはいえ、アニメで一応最後まで見ているので設定や展開に
出来るだけ矛盾が出ないようほとんど情報のない絶女スーダンを再優先にやりました。
と言っても、ここ半年くらいは忙しくて全くゲーム出来ていませんが…


それでは三章最終章、ゆっくり行きます


「大正解~ッ! 今回、山田一二三君を襲ったクロは――セレスさんでした!」

「今回は犯人の周囲に対する裏切りに次ぐ裏切りという、実にドラマティックな
 事件でしたね! まさかの被害者二人が犯行側という意外性もグッド!」


ハイテンションなモノクマに対し、セレスは落ち着いた口調で話を締める。


「わたくしがお話出来ることはこれで全てです。では、オシオキと行きましょうか」

「フン。随分と潔いな」

「敗者は速やかにゲームから去るべきですわ。それにわたくし、負けてしまいましたが
 一世一代の大勝負が出来て、ギャンブラー冥利に尽きると思っていますの」


そう言って彼女は笑ったが、苗木にはそれがただの強がりにしか見えなかった。


(セレスさん、死ぬかもしれないのに……)


三日経っても山田は目覚めていない。それ故、モノクマが事前に
予告した通りセレスのオシオキは前回より更に危険な内容のはずなのだ。


「これで皆さんとは最期かもしれませんが……」

「――また、来世でお会いしましょう」


嘘が上手い彼女の笑顔が、今回だけは微かにぎこちなかった。


「――待て」


KAZUYAはセレスの元へゆっくりと歩み寄り、立ちはだかる。


「わたくしが許せませんか?」

「ああ」

「先生のような方からしたら、わたくしの夢など実にくだらないでしょうね」

「くだらないな。確かに」

「…………」

「だがその子供じみた夢のために体を張ってきたという事実、信念は認めよう」

「…………」

「俺はお前の夢を否定するつもりはないが……だが、夢のためだろうと何だろうと他人に迷惑をかけて
 良い訳がない! 特に、お前はお前を信じる山田を利用した! お前のしたことは最低だ!!」

「そうですわね。一般的な感覚から見たらわたくしは最低な人間でしょうね。
 でも、わたくしは……自分のしでかしたことを少しも悪いだなんて思っていませんわ」

「……!」

「!」


反射的に、KAZUYAは平手を上げた。セレスは思わず目をつぶる。
しかし、いくら待っても平手打ちは来なかった。


「……? 叩いてもよろしいのですよ? わたくしはそれだけのことをしているのですから」

「…………」


KAZUYAの手は震えている。苦しそうに眉間にシワを寄せ、そして……

何もせずそのまま手を降ろした。


「…………」


セレスは訝しげにKAZUYAを見上げる。


「……心の底から自分を正しいと信じている人間を殴っても仕方がない」


KAZUYAの脳裏に浮かんだのは前回の裁判での苦い記憶―― 十神を殴ってしまったことだ。

あれで彼は変わっただろうか?
むしろ前より頑なになっただけでは?

KAZUYAは医者であって教師ではない。だが、感情のままに生徒を
怒鳴ったり殴るのが正しいことではないくらいわかっている。

それに――


「……そんな悲しそうな顔をしないで頂けます? 西城先生にそういう顔をされると
 調子が狂いますわ。いつもみたいに熱苦しく怒鳴って頂かないと」


もう、これが最後かもしれないのだから、とセレスは心の中でひっそりと付け加えた。


「…………」

「…………」

「本当にどうでもいいと思っているのか?」

「ええ。所詮は他人ですから」

「ならば何故――」





「山田にトドメを刺さなかった?」



「!!」


セレスの顔から血の気が引く。


「どういうことぉ?」

「西城先生、それは一体……?!」

「俺はこの学園で何度も手術を行ってきた。そして不二咲に至っては
 一度心肺停止したにも関わらず、蘇生させることに成功した」

「確実性を求めるなら、複数回殴るのが正しい。特に、山田みたいな
 頭が大きくて硬そうな奴は尚更、な。現にあっさり山田は蘇生しただろう」

「いくら急いでいるとはいえ、この状況下で一発しか殴らなかったのは何故だ。
 君はとても慎重な人間のはずだ」

「…………」

「――本当は、殴れなかったんじゃないのか?」

「そんな、ことは……予想外のことが多すぎて、頭が回らなかっただけです」

「俺の目を見て話せ、安広」

「…………」


沈黙が場を支配する。KAZUYAは腕を組み、静かに目を閉じた。
モノクマが早くしろと目で訴えているが相手にしない。

一筋の汗が、セレスのこめかみを流れ落ちる。


「買いかぶり過ぎですわ、西城先生は。わたくしはそんな、立派な人間ではありません。
 狡くてワガママで自分勝手で……エゴイストな人間なのです」

「そうだぜ、せんせー! いくらトドメを刺さなかったって言ってもやったことは変わらねえ」

「んだべ! 俺はどうなんだ!」

「葉隠は黙ってて!」

「聞いてくれ、みんな」


宥めるように両手を挙げ、KAZUYAは一度深呼吸をした。
彼自身、自分の心を整理しながら話す必要があった。


「俺は最初、真相に気付いた時怒った。ハラワタが煮えくり返っていたよ。
 あまりに卑怯で狡賢い、そんな犯行だと怒りに燃えていた」

「絶対に許すべきではない。断固として犯人を糾弾すべき。そう考えていた」

「ええ、そうでしょう。わたくし自身、このおぞましい計画に笑いが止まりませんでしたわ」

「……だが、この三日間で俺の頭は冷えた」


「山田のお陰だ」


「えっ?」

「山田君?」

「山田のお陰だぁ?」


今まで見守っていた生徒達がどよめいた。KAZUYAは頷く。


「目を醒ました……というほどハッキリしたものではない。うわ言みたいなものだ。
 だから、お前達に変な期待を持たせないよう今まで黙っていたが……」

「――実は、たった一度だけ山田は喋ったのだ」



                  ╂


「す……せん……ま、せん……」

「山田? 山田ッ?! どうした?!」

「僕が……バカでした……」

「山田、どうしたんだ? 言いたいことがあるなら目を醒ますんだ!」


KAZUYAは山田の太い手をしっかり握り声をかけた。視線はバイタルと山田の顔を交互に行き来する。


「俺はここにいるぞ!」

「バカだったんです……僕は……」

「山田! 犯人は言えるか? お前を殺そうとした奴だ!」

「犯人は……見てな……」

「山田ッ!!」

「うっ…………」



                  ╂


KAZUYAは超国家級の医師だ。

傷を見れば、その傷がいかなる状況で付けられたものか簡単に見分けることが出来る。
山田の二番目の傷は最初に殴られた時と同様、立った状態で付けられたものだった。

これは即ち、山田は一度気絶から目を覚まし起き上がっていたことを意味する。


「山田は犯人を見ていないと言ったが、正面から殴られて相手の顔を見ていないはずがない」

「――山田は庇ったのだ。自分を裏切り、殺そうとまでした卑劣な犯人のことを」

「それは……」


初めて、セレスが動揺した。その顔は今やハッキリと青い。


「何故……?」

「お前を責める資格がないと思ったんだろう。山田は裏切られたことより、
 自分がみんなを裏切ってしまったことを後悔しているようだった」

「…………」

「それに、好意的な解釈をするなら……」

「するなら?」

「もう誰かを裏切りたくなかったのかもしれない。たとえそれが犯人であっても」

「…………」

「フン、そんなものはただのエゴだ。裁判に負けたら俺達全員オシオキだというのに」

「本当の所はわからんよ。あくまで俺の想像だからな。
 実際は脳のダメージが大きくて上手く思い出せなかっただけかもしれん」

「ただ一つ言えるのは、金で作った人間関係なんてガラスよりも脆い」

「――そして人間は一人では生きていけない」

「…………」

「……時間切れだな」

「はい」


KAZUYAが促し、セレスはオシオキ場へと向かって行った。

その足取りがどこか覚束なかったのは、果たして怪我のせいだけだったのだろうか。


「セレスさん!」

「……!」


苗木がセレスの小さな背中に呼びかける。


「今回のことは、正直怒ってる」

「…………」

「でも僕達は仲間だ! だから……生きて戻って来て欲しい」

「苗木君……私も、待ってますよ。セレスさん」

「ええ、そうね。少しでも悪いと思う気持ちがあるなら、生きて償うべきだわ」

「生きろ、セレスよ。そして、山田と葉隠に対して謝罪せよ」

「セレス君、死なないでくれ!」

「あんた達……ムチャ言ってんじゃないわよ。まあ、万が一助かったらお祝いくらいしてやるけど」

「…………」


セレスは振り返らなかった。コツコツというヒールの音が遠ざかって行く。

KAZUYAは深々と溜め息を付いた。


(常に適応を主張していた彼女だが……実際は誰よりも適応障害に苦しんでいたのだろうな)


適応障害:ある特定の状況や出来事などのストレス因子により引き起こされる精神障害。
      抑うつ、不安、社会の規範を破る、破壊行動、引きこもり等その症状は多岐に渡る。

抑うつ:気分が落ち込んでいる状況。そのため思考、行動、感情、幸福感に影響が出る。あくまで
     状態であり病名ではない。軽度なら自然に治ることも多く専門の治療は要しないが、他の
     症状と複合して発生した場合は何らかの神経症の可能性もあり、専門家の診断を勧める。


(いつまでここにいればいいのか、先が見えない不安。外を見ることも出来ない圧迫感。
 そして……度重なる仲間内での諍い、流血を伴う凄惨な事件の数々……)

(心を許せる人間もおらず、ストレスの発散も出来ず……
 そうやって長期間に渡る抑うつ状態が続き、軽度のノイローゼだったのだろう)

(だから、モノクマの出した餌に食いついてしまった。食いつかざるを得なかった)

(夢の話も金の話も、結局はキッカケの一つに過ぎない。一番の動機はただ一つ。
 ……彼女は“ここから出たかった”のだ。たとえそれがどんなに反社会的な方法であろうと)

(人を殺して外に出ても、周囲がそれを許すはずなどないというのに――)


追い詰められた彼女は気付かない。ここでの行動は全て録画されている。
仮に脱出が出来たとしても、人を殺した映像などバラ撒かれたらもう彼女の夢は叶わないのだ。


(……強い人間に見えた)

(マイペースで、いつも冷静で、計算高い人間だと)


――そう思っていただけだった。


(霧切だってそうだ。しっかりしていても結局は子供だ。何故気付かなかったんだろうな……)


ぼんやりしているKAZUYAの脳裏に、忌々しいモノクマの声が響く。


「ではでは! 学級裁判の結果、オマエラは見事クロを突き止めましたので
  これからクロであるセレスさんのオシオキを行いまーす」



「今回は――」

「超高校級のギャンブラーである」

「セレスティア・ルーデンベルクさんのために」

「スペシャルな」

「オシオキを」

「用意させて頂きました!」

「では張り切っていきましょう! オシオキターイム!」


いつの間にか持っていたハンマーで、モノクマはオシオキスイッチを押す。

スイッチの下の部分についていた液晶画面と、裁判席のパネルに一昔前のゲームのような
ドット絵が映り、モノクマを模したドットキャラがセレスのキャラを引きずっていく。





              GAMEOVER

           セレスさんがクロにきまりました。
              おしおきをかいしします。






        ― セレスティア・ルーデンベルクの夢のお城 ―


セレスは長年憧れていた西洋風のお城にいた。見た目は立派なお城だが、それが張りぼてに
過ぎないことは本人も他の人間もわかっている。彼女は女王のように城の中心の玉座に座っていた。

その周囲を、仮面で顔を隠したきらびやかな衣装の男達が世話をする。豪華絢爛な
パーティーが開かれるが、一人また一人と恋人や友人に手を引かれ彼女の周りを去って行った。

最後には身動きの取れない彼女ただ一人が城に取り残される。そして、城を影で
支えていた人間達までいなくなってしまったために、セレスの城は大きく軋み始めた。


そして、憧れと理想ばかりを詰め込んで中身のなかったその城は――



                                    彼女の夢と共に崩落した。








Chapter.3 世紀末医療伝説再び! 医に生きる者よ、メスを執れ!! 争乱編  ― 完 ―



ED「絶望性:ヒーロー治療薬」
http://www.youtube.com/watch?v=E4xPtdJdNTU

キミノ ノゾムモノハナニ ミミナリ ウソミタイナハナシー♪


はい、ED。やっと三章終了!! 長かった…本当に長かった…

このSSは二章三章が最長で、四章以降はもっと短い予定です。
ここからはサクサク行きたいものですね。

まさか予定通り裁判で1スレ丸々使い切るとは思わなかった。
結構余ってるし、小ネタかオマケでも今度入れるかな

疲れたのでチャプターリザルトは今度投下しておきます。

それでは、シーユー!


あ、あとなんか知らんけど途中からsageになっててスマソ
裁判終わったので、またペースを戻せるといいなぁ

3章っていつから3章だっけ...

>>936
三章って4スレ目からだよなぁと思って開いてみたら…

えっ?! 2年?! マジか……

そして今月でこのSSは3周年とか


……(絶句)


初代スレからついてきてくれてる人、本当にありがとう
勿論、新しく一気読みしてくれた人もありがとう


四章からは頑張ってペース上げます(震え声)

今週はお休みです。

四章は次スレからなので、スレタイ考えなきゃな…
順番的に朝日奈さんとさくらちゃんですね
ちょっと絶望的な感じにしようかな。案があったらどうぞ

次スレのスレタイ案

①大神「…もう決めたのだ。許せ」朝日奈「そんなの、嫌だよ…お願い、ドクターK!」カルテ.7
②大神「後は任せるぞ、ドクターKよ」朝日奈「そんな…さくらちゃん、行かないで!」カルテ.7
③朝日奈「…さくらちゃん、信じてるよ」大神「ドクターKよ…我は何と戦えばいい?」カルテ.7


ウーム。勢いがあるのは1かな? 2は絶望的な感じか。3は迷ってる感じ

最初に三人集まった案にします。

↓よろしく

この作品でドクターKを読みだした。面白い漫画に会わせてくれてありがとう、>>1

2スレ目で書いたエピ0がきちんと完結していないことが
ずっと1の心残りだったので、ほとんど蛇足かもしれないけど
スレの余りを利用して投下しておきます


>>963
ありがとうございます!ドクターK読んでもらって
面白いと言ってもらえるとこのSS書いた意味があります


[ スーパードクターK × ダンガンロンパ ― Episode0 ― ]
桑田「俺達のせんせーは最強だ!」石丸「西城先生…またの名をドクターK!」カルテ.2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1387896354/933-)


忘れてしまった人用にあらすじ:

(霧切学園長の熱烈な依頼により希望ヶ峰学園にやってきたKAZUYA。その個性的な格好や
 キャラにより早速学園で話題の人物となる。78期生の一部の男子は興味本位で
 KAZUYAを尾行したが特に問題はなくそのまま帰ろうとするが、発作で倒れる人を発見。
 すぐさまKAZUYAのいる高品医院に運んだことによって、事なきを得たのだった)


― 2-A教室 月曜日 ―


桑田「……こんな感じで、俺達の活躍によって一人の尊い人命が救えたってワケよ!」

舞園「わあ、人助け出来て良かったですね!」

朝日奈「へぇー、やるじゃん!」

桑田「だろだろ?」

霧切「流石ドクターKね。噂通りだわ」

苗木「僕のいない間にそんなことやってたんだ。僕も行きたかったなぁ」


週明け、教室では桑田が土曜日にあった出来事を他のクラスメイト達に自慢気に話していた。


セレス「何を自慢気に話しているのですか。今の話ですと、具合の悪い方に声を掛けたのは
     石丸君、機転を利かせて電話をしたのは不二咲君、実際に運んだのは大和田君では
     ありませんか。あなた達は見ていただけで何もしていないのではないですか?」

葉隠「ギクッ」

山田「……そう言われるとそうなんですよねー」

桑田「でも俺がオッサンの後ツケようって言わなきゃ死んでたかもしれないんだぜ?」

戦刃「それはそうだけど、堂々と人の後をツケたって言うのはどうかと思う」

江ノ島「なんでもいいけど面白そうなことはアタシも誘いなさいよね!」

十神「フン、何も好き好んで愚民共と同じ行動を取らんでもいいだろう」

十神(まさかこの俺抜きでそんなことをしていたとは……)ビキビキ

腐川「流石白夜様だわ! 行動の一つ一つにこだわりを持っていらっしゃるのね」ウットリ

大神「まあ、悪ふざけはそこそこにな」



そこへ、扉を開けて仁が入ってきた。


石丸「あ、学園長先生。おはようございます!」

不二咲「おはようございます」

仁「うん、みんなおはよう。その様子だと、この間のことは全員に話した感じかな?」

大和田「この間のことって、アレのことか」

仁「そう。お手柄だったね! 流石希望の象徴たる我が学園の生徒達だ。私も嬉しいよ」

桑田「へへへ」

山田「いやー、それほどでも」

葉隠「それほどのことはあるべ」

大和田「……オメーら、なんもしてねーだろ」

仁「実は今朝、君達が助けた方のご家族が学園にお礼に来られてね。このクラスの全員にと
   お菓子を貰ったから、寮の食堂の冷蔵庫に入れておいたよ。後でオヤツに食べるといい」

「ヤッタ―!」

仁「私からは以上だ」


そう言うと仁は教室を去って行った。


朝日奈「ドーナツかな?! ドーナツだといいな! それ以外でも嬉しいけどね!」

葉隠「俺達に感謝するべ!」

腐川「なんであんたに感謝しないといけないのよ!」

不二咲「たくさんあるのかな? もし余ったら西城先生にもあげたいな」

石丸「ウム! それは名案だ!」

桑田「じゃあまた後で保健室行くか」


               ◇     ◇     ◇


放課後の保健室。そろそろ帰るかとKAZUYAが荷物をまとめた頃、ゾロゾロと来客が訪れる。


石丸「……という訳なのです」

K「それはわざわざ有り難いが、何故こんなに人数がいるんだ? これからどこかに行くのか?」

苗木「実は……西城先生って敷地内は全部回りましたか?」

K「いや。ここはちょっとした大学のキャンパスよりも広いからな。まだほとんど見ていない」

桑田「そう言うだろうと思ってさ、せっかくだから俺達が案内してやろうってワケ!」

大和田「ついでに、不二咲が先生と一緒にメシを食いたいって言うからそれも誘いにきたっす」

不二咲「お時間ありますか? 先生のお話、もっと聞きたいなぁ」モジモジ

K「俺は構わんぞ。確かに案内があった方が助かるしな」

山田「では行きますか。今日のご飯は中華はどうです? 南区には元超高校級のラーメン師の
    店があるのです。そこに行きましょう! ああ、ラーメンが僕を呼んでいるぅぅ!!」

K「君は太りすぎだから、あまり油物は食べない方が良いと思うが……」

葉隠「あそこは混むから早めに行った方がいいべ」

桑田「おーし、しゅっぱーつ」

K(フフ……随分仲の良いクラスだな)


ガラッ。

保健室から出ると、そこには美男子だがこめかみに青筋を浮かべた神経質そうな青年が立っていた。


十神「遅い! 遅いぞ、貴様等! どれだけこの俺を待たせるつもりだ!」

K「…………」


これが希望ヶ峰でのKAZUYAと十神の初めての出会いであった。


苗木「あ、ごめんね十神君! その、中で少し盛り上がっちゃって……」

十神「この俺を誘っておいてよくも悠長にオシャベリなどしていられるな。そもそも、
    超高校級の御曹司たるこの俺を庶民の飯を付き合わせること自体不届きな……」

苗木「ほ、本当にごめんね!」

葉隠「まあまあ」

K「……彼は?」

石丸「同じクラスの十神白夜君です。十神財閥、と言えば先生もご存知だと思いますが」

K「十神財閥……」


如何にも上等そうなスーツを纏いプライドの高い発言をする十神に、
KAZUYAは既に心の中で距離が出来かけていた。


大和田「ケッ、庶民のメシがイヤなら来るなってんだ」

石丸「コラ、兄弟。そんなことを言うものではない。十神君もクラスメイトではないか!」

桑田「置いてっていいんじゃねーの。うるせーし」

十神「……!」ビキビキ

不二咲「男子全員いるのに、十神君だけ誘わないのは可哀想だよぉ」

山田「流石ちーたん優しす! テラ天使!」

石丸「十神君は照れ屋なのだ! 何せ、誘えば必ず来てくれるのだからな!」

一同(あ、地雷踏んだ)


石丸を除く全員の心が一つになった。


十神「帰る! 俺は帰るぞ!」


顔を真っ赤にして帰ろうとする十神の前に慌てて苗木が回り込んだ。


苗木「そんなこと言わないでよ! ここまで来てるんだし」

石丸「そうだ。君がいないとみんな寂しいのだぞ! いてくれないと困る!」


桑田(いや、全然)

大和田(別にいなくても困らねえけどな)

十神「……フ、フン。そこまで言うのなら行ってやってもいい。感謝しろ」

山田(石丸清多夏殿は地雷とデレポイントを交互に踏むから見ててヒヤヒヤしますな……)

K(……どうやら、相当気難しい人物のようだ)

K「大変だな」ボソッ

不二咲「は、はい。でも、良い所もあるんですよ?」

葉隠「前に土下座したら金を貸してくれたべ。だから十神っちはイイヤツだべ!」

K「…………(その判断基準はどうだろうか)」


複雑過ぎる二年A組の人間関係にKAZUYAは思わず遠い目をしてしまう。


石丸「ム! 今のやりとりで先生に悪い印象を与えてしまったか?! 西城先生! 誤解しないで
    下さい! 十神君は本当は凄く頼りになる、クラスでも中心にいる人物なのです! 頭が良く
    実は大変な努力家であり責任感もあり、御曹司といっても家の権力に全く頼らない男です!」

不二咲「フフ、そうだねぇ。凄く頼りになるよ!」

十神「う、うるさい! 黙れ黙れ黙れ!!」カァァ

石丸「すまない! もしや僕は余計なことを言ってしまったのだろうか?!」

十神「余計なことだ! 貴様等が言わなくてもこの俺の真価は誰の目にも明らか!
    そんなこともわからないから、貴様はいつまで経っても空気が読めないんだ!」

苗木(もう、素直じゃないんだから……)

苗木「アハハ、ごめんね。でも本当にみんなそう思ってるからつい言っちゃうんだよ?」

十神「…………」プイッ、カタカタカタカタ

K(あいつ凄い速さでメガネをかけ直しているぞ……大丈夫か?)


病院で個性的な患者は見慣れているはずのKAZUYAだが、思わず動揺してしまう。


山田「十神白夜殿はあの三人に弱いのです。石丸清多夏殿とちーたんはナチュラルに
    褒め言葉連発してくるし、そこに苗木誠殿がコンボをかましてきますからな」

葉隠「天然の石丸っちに純粋な不二咲っち、それに苗木っちはお人好しだからな。
    あの三人を騙すのは流石の俺も少し罪悪感を感じるべ」

K「成程」

K(恐らく過酷な世界に生きているだろうから、無邪気な人間に弱いのか?)

石丸「む、むぅ。すまない、すまない! 僕はどうやらまた失敗してしまったようだ……」

十神「フ、フン! まあ、石頭の割にはよく俺の分析が出来ていたとそこだけは誉めてやる」

石丸「そうか……それは良かった。ありがとう、十神君!」

大和田(なんつーか、兄弟も鈍いよな……)ハァ

桑田(見ててこう、ムズがゆくなるっつーか)

不二咲「ありがとう、十神君」ニコッ

十神「……クッ、そんなことはどうでもいい。ほら、さっさと行くぞ!
    その、例の有名な中華料理屋というのはすぐに混むのだろう?」スタスタスタ

石丸「あ、待ちたまえ!」


足取り軽く十神は廊下を歩いて行き、石丸も後を追いかけていく。
残ったメンバーはげっそりしながらその様子を見ていた。


K「何だったんだ、今のやりとりは……」

大和田「アイツ……ホント、わかりやすいヤツだよな。まったく……」

苗木「……ハ、ハハ。僕は好きだけどね」

十神「何をしている、貴様等! 今日は俺の奢りだ。だからさっさと来い!」

葉隠「やっぱり十神っちは神だ! ほら、急がねえと!」

山田「今日は二杯行きますぞ!! ついでにチャーハンと餃子も大盛りで!」

桑田「ほんじゃ、御曹司様のご厚意に乗っときますかっと」


ダダダダダッ。


不二咲「ねえ? 良い所もあるでしょう?」クスクス

K「……そのようだ」


これがキッカケとなり、KAZUYAは苗木のクラスの男子達と徐々に仲良くなったのだった。


               ◇     ◇     ◇


桑田「なー、せんせー。今日の昼飯おごってくれよー」

K「コラ。教員にたかるな」

石丸「そうだぞ、桑田君! 大体、今日の昼は保健室で病院の話を聞かせてもらうのだ!」

K「……昼休みくらい息抜きをしたらどうだ?」

K(俺も疲れるんだが……)

不二咲「フフッ、石丸君は勉強熱心だねぇ」

大和田「付き合わされてご愁傷さんっす」

苗木「今日は第三食堂にしない? 先生はまだ行ったことないって言ってたし」

桑田「じゃそれで決定ー」

石丸「ぼ、僕の勉強は?!」

K「決定だ。お前も来い」

不二咲「あ、休み時間終わっちゃう。じゃあ先生、また後で」


ガヤガヤガヤ……


K「……フゥ。賑やかだな」


元気一杯に去って行く生徒達を見ながら、KAZUYAは顔をほころばせる。
その様子を、少し離れた物陰から見ている人物がいた。


「この短期間で、随分仲良くなりましたね」

K「ああ、霧切学園長。変な話ですが、この間の一件ですっかり懐かれてしまいましてね」

仁「うちの生徒はかわいいでしょう? 私の自慢の生徒達です」

K「ええ。高校生といえどまだまだ子供ですからね。子供はかわいいものです」


そう語るKAZUYAの脳裏に、つい加奈高の生徒達の顔が浮かぶ。


仁「子供はみんなかわいいですが、ここにいる子達は特に希望に溢れていますからね!
   いやぁ、この間の話を聞いた時は流石超高校級の生徒達だと私も鼻高々でしたよ」

K「はぁ……」

K(あれは彼等の性格や行動力のお陰であって、超高校級の称号は関係ないと思うが……)

仁「これからもよろしくお願いしますね?」

K「ええ」


仁の発言にどこか違和感を覚えながらも、KAZUYAは頷いて保健室に戻った。
その後ろ姿を見ながら、仁は満足げに口の端を吊り上げる。


仁(やはり、私が見込んだ人物なだけある。一癖も二癖ある生徒達と
   もうあれだけ仲良くなるとは。――それも、あのクラスの生徒達と)

仁(いや、これは必然か?)


仁はKAZUYAが希望ヶ峰にやって来た日のことを思い返す。


『あれだけ私のことを避けていたのに、何故突然引き受けて下さったのですか?』

『いや、なに……あなたの教育者としての熱意に根負けしましてね』


KAZUYAは少し笑い、仁も同じように愛想笑いを返す。


『フフ、しつこく頼み込んだ甲斐があったというものです。でも、それだけじゃないでしょう?』

『そうですね。正直に言わせてもらえば、この学園の生徒達に興味がありました』

『興味とは……』

『超高校級と呼ばれる才能を持つ生徒達……ですが、私が興味を持っているのは才能ではありません』

『あなた達が希望と称する、そんな生徒達の顔を間近で見てみたかったのですよ』


『ほう。つまり彼等が真に人類の希望足りえるか見定めに来た、と』

『いや、そういうつもりでは……』

『いえいえ、遠慮なさらなくて結構。是非我が校の自慢の生徒達を
 じっくり見て行って下さい。あなたもすぐに彼等の素晴らしさがわかるでしょう』

『……はぁ』


思えば、あの時のKAZUYAも要領を得ない返事をしていたなと思い返す。


(まあ、いいさ。彼は『外の人間』だからね。すぐにこの学園に馴染めなくとも仕方ない)


学園長室に戻ろうと仁が踵を返した時、一人の生徒と出くわした。


「こんにちは、学園長先生」

「やあ。……おや、怪我をしたのかい?」

「はい。さっき廊下を歩いていたらいきなり清掃ロボットが突っ込んできて」

「それは不運だったねぇ。大丈夫かい?」

「大丈夫です。……それに、もしかしたらこれは不運じゃなくて幸運かもしれない」


青年は独り言のように静かに呟く。


「そういえば、ドクターKのことはもう聞いたかな? 超高校級マニアと呼ばれる
 君なら、超国家級の称号を持つ彼にも絶対興味を持つと思ったんだが」


仁がそう話し掛けると、少し長めのパーカーを着たその青年は興奮気味に叫んだ。


「勿論! 興味は持ってますよ。前に怪我をした時、何か情報が手に入らないかと思って
 わざわざ帝都大系列の病院に行ったんです。そうしたら、幸運なことに僕の
 担当医がドクターの大学時代の同期でして。色々話を聞かせてもらいました」

「それはツイていたね。それで、もうドクターK本人には会ったのかな?」

「いえ、本当はすぐにでも会いに行きたかったんですけど、僕のようなゴミクズが
 近付いたらあの人の希望がくすんでしまう気がして、まだ直接は会っていないんです」

「……毎日、離れた所から見てはいるんですけどね」


青年がボソリと呟く。その目に光はない。


「成程。だから会いに行く口実が出来て幸運、ということだね?」

「はい!」

「君の目から見て、彼はどうだい?」

「素晴らしいですよ! 彼からは希望が溢れている。基本的に他人と関わりたがらない超高校級の
 生徒達と少しずつ距離を近付けているし、何よりあの“奇跡の”クラスともう仲良くなるなんて」

「やはり君もそう思うか」


青年の言葉を聞いて仁も満足げに頷く。


「ええ。あのクラスは特別ですからね。特別なクラスに特別な先生。この二つが合わさった時、
 僕が望むどんな絶望にも負けない絶対的な希望が生まれる。そんな気がするんです」

「誰よりも希望を渇望し追い求める君がそこまで言うのなら、そうなのかもしれないな」


仁は何かを確信するようにもう一度頷いた。


「私はもう行く。君も早く保健室に行って治療してもらうと良い。そしてドクターKを見て来なさい」

「――狛枝君」

「はい!」


狛枝と呼ばれた青年は高揚を抑えきれずに保健室に向かう。


(楽しみだなぁ。いよいよ僕もドクターKに会えるんだ。一体どんな希望を見せてくれるんだろう!
 ……あの人なら、これから襲い掛かるどんな絶望だって乗り越えてみせるよね!)

(そして、絶望と希望の間で揺れ動く僕の心を救ってくれるはず。最後に勝つのは希望のはずなんだ!)


「フ、フフ……ハハハ……アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」



そして青年は走り去って行った。




人類史上最大最悪の絶望的事件まで――残りあと66日。





[ ― Episode0 Ⅰ 超国家級の医師が超高校級の希望達と出会った日 ― ] 完



ここまで。あと、簡単な解説を少し。

仁は生徒達の才能(希望)を見てるのに対し、KAZUYAは生徒達の
素顔(人間性)を見てるのでこの二人は最後まで話が噛み合いません。

本編ではあんなことになっている十神君ですが、
クラスは勿論KAZUYAとも仲良くしていた時期がありました。

狛枝君に関してはロンパ3が終わった辺りにでも改めて……



本編の方は新スレ立てたのでそちらでやらせて頂きます。

大神「…もう決めたのだ。許せ」朝日奈「そんなの、嫌だよ…お願い、ドクターK!」カルテ.7
大神「…もう決めたのだ。許せ」朝日奈「そんなの、嫌だよ…お願い、ドクターK!」カルテ.7 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1474553743/)


では。


ロンパ3終わりましたね。……ええっと。
もうなんというか、このSSと壮絶に矛盾が発生してるんですよね。どうしたもんか……

ぶっちゃけ見なかったことにして素知らぬ顔で続けるのが一番だけど、流石に今更
七海ちゃん実在してないことには出来ないよなぁ。あー、考えてた不二咲七海イベントが……
まあ可能な限り3の設定もなるべく拾うつもりですが、基本的には元々の設定で行こうと思います。

例えば洗脳ビデオ自体は1も元々出す予定だったのですが、アニメの威力はどう考えても
ヤバい過ぎるので大幅にダウン。あと上のエピ0でわかると思いますが、狛枝君はガチ洗脳は
受けてないです。そもそも3だとこの時期はまだ学園にいないはずなので……

というかね、エピ0は78期男子編、78期女子編、77期生編の三部作の予定で、
77期が仲良しクラスだったり一括洗脳にしちゃうと温めてた77期絶望化イベントが
全部ボツになっちゃうんでね……エンディングにも支障出るレベルなんで。


そんな感じでこのSSは進めていくのでご了承願います。


ちょっと、スレ埋まりそうだし途中で落ちたらイヤなので
Chapter Resultは完成次第次スレに投下しますね


それでは、今までとは少し雰囲気の違う四章をお楽しみください。

大神「…もう決めたのだ。許せ」朝日奈「そんなの、嫌だよ…お願い、ドクターK!」カルテ.7
大神「…もう決めたのだ。許せ」朝日奈「そんなの、嫌だよ…お願い、ドクターK!」カルテ.7 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1474553743/)


以下、恒例の1000取り合戦で。バイナラ!

1000なら葉隠が男を見せる

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年10月14日 (水) 03:24:43   ID: KhYHVcvD

とうとう6スレ目か、、、ボリュームが凄いなwww

2 :  SS好きの774さん   2015年10月26日 (月) 02:11:38   ID: VTtFEbqj

葉隠アホすw

3 :  SS好きの774さん   2015年11月03日 (火) 22:43:29   ID: xo17sZ6V

wktk

4 :  SS好きの774さん   2015年11月12日 (木) 22:24:35   ID: c8PQT8qi

マイペースで大丈夫(≧∇≦)

5 :  SS好きの774さん   2015年12月11日 (金) 00:40:29   ID: j9-ZVRRv

よくここまで書けるなぁ

6 :  SS好きの774さん   2015年12月12日 (土) 12:02:15   ID: 9UXG3afH

最近、激しく更新速度落ちたな……

7 :  SS好きの774さん   2015年12月23日 (水) 04:15:07   ID: 3IVDjhkl

そりゃ何もやらなきゃ人いなくなるに決まってんだろ

8 :  SS好きの774さん   2016年02月01日 (月) 16:30:25   ID: 4nL8yq-F

面白いね

9 :  SS好きの774さん   2016年02月03日 (水) 22:40:26   ID: sz00ONO1

wktk

10 :  SS好きの774さん   2016年02月05日 (金) 16:43:43   ID: g_vJSR29

更新速度上がってほしい

11 :  SS好きの774さん   2016年02月06日 (土) 16:15:44   ID: 6Fnu1oM1

かなり長いこと連載してるんだな

12 :  SS好きの774さん   2016年02月09日 (火) 19:54:48   ID: u__o2--U

葉隠は原作でも全く成長してないからなー

13 :  SS好きの774さん   2016年02月11日 (木) 18:32:38   ID: BAViTi3U

wktk

14 :  SS好きの774さん   2016年02月13日 (土) 12:56:00   ID: K6X69DnI

wktk

15 :  SS好きの774さん   2016年02月16日 (火) 20:11:53   ID: gOCPHmB6

wktk

16 :  SS好きの774さん   2016年02月21日 (日) 11:29:11   ID: qlVX9BlH

wktk

17 :  SS好きの774さん   2016年02月26日 (金) 21:26:20   ID: a5S6H2k4

K2最新巻発売中

18 :  SS好きの774さん   2016年03月09日 (水) 22:55:28   ID: vEdEYt04

ドクターKってドラマ化もアニメ化もしてないんだな

19 :  SS好きの774さん   2016年05月11日 (水) 19:18:14   ID: RVPGQvVR

ドクターKは商品展開一切してないってことだな

20 :  SS好きの774さん   2016年05月27日 (金) 00:12:34   ID: jvSLBCPS

実写化とかしてそうなのにな

21 :  SS好きの774さん   2016年06月30日 (木) 19:33:36   ID: RoBP5AGx

あああ

22 :  SS好きの774さん   2016年07月07日 (木) 22:47:46   ID: gxZo5gE8

ドクターkの知名度が上がって欲しい

23 :  SS好きの774さん   2016年07月08日 (金) 21:45:46   ID: M8c11jYq

K2も面白いよ

24 :  SS好きの774さん   2016年07月31日 (日) 11:22:08   ID: P87PlFJ0

a

25 :  SS好きの774さん   2016年08月13日 (土) 22:04:16   ID: CdOQKPwL

はよはよ

26 :  SS好きの774さん   2016年09月28日 (水) 20:56:44   ID: YGEketrC

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom