【ラブライブ!】真姫「壁ドンマスター西木野」 (28)

ラブライブのSSです。短いです。

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壁がドンというから壁ドンなのだな、なんてしょうもないことを考えた。

あまりに緊張していて、脳の大部分が緊張しろという命令をだしていたので、それくらいしか考えることができなかった。

にこ「あ……」

にこちゃんは自体が飲み込めないといった様子だったが、それは私も同じ。

私も唖然とした顔をしていることだろう。

自分がなにをやったのかよく分かっていなかった。

私がにこちゃんを壁際に追いやり、にこちゃんは少しおびえたように小さくなっている。
私は壁に手をついたまま、そちらに重心を移しているが、汗でいつ手が滑るか分からない。


その体制のままどれだけ時間が経っただろう。

鼓動は間違いなく早いはずだが、それすら閉めた蛇口から水が滴るようにゆっくりと感じられた。
しかしその一滴ごとに、確実に、にこちゃんをいとおしく思う気持ちを取り戻していくかのようだった。

きょろきょろ。

視点が定まらない。

嫌な汗はどんどん分泌されていき、実際に壁についた左手が滑ってバランスを崩しかけた。

壁から手を離し直立する。

呆然とたたずみ、練習終りの汗とシャンプーの混ざったにこちゃんの匂いは素敵だな、とか、
おびえてるにこちゃんをぎゅーっとしたいなとか、考えるけれど、
実際髪に顔をうずめて匂いを堪能することもできそうにないし、抱きしめるだなんてできるのは十年先に思われる。

今日の練習が終わり、μ’sの他のメンバーが帰った後の部屋。

私もにこちゃんも着替えを終え、にこちゃんから部屋を出ようとしたところを、呼びとめた。

なによ、とにこちゃんが怪訝そうにこちらを見てきた。

私もその時、変なことを言ったものだ。

今日のにこちゃん、可愛かったよ、と。

にこ「えっ……」

言った後で失言に気づき、訂正しようとしたが、なんだかまんざらでもない様子だったので、
日頃たまっているにこちゃんへの思いをつい暴発させてしまい、ふらふらとにこちゃんに近づいて壁ドンをしてしまった。

後悔の念でいっぱいだ。

壁際に追い込んでしまえば、後は簡単に想いを告げられる……ネットで見た情報は大間違いだった。

好きな人といつもよりも近い距離で正対して冷静でいられるはずがない。

そうこう考えている間にも、気まずさが二人の間に蓄積されていく。

私は耐えられなくなって、

真姫「こ、この後どうするんだっけ……」

そう言った。

とたんににこちゃんの頬が緩み、そこから噴き出すまで時間はあまりかからなかった。

にこ「あは、あははははは!!!」

真姫「な、なによ! ……なによ」

せっかく勇気を出して行動を起こしたのに。

にこ「どうしたの? 私に告白でもしたかったの?」

私の脳内で、告白、という言葉が何度も反響した。私がいつも、心で唱えていた言葉。いつもあと一歩躊躇われる行動。

にこ「……なに、真剣な顔してんのよ。まさか本気……」

私は耳が熱いのを感じているし、にこちゃんから見ても私が赤面しているのは分かっていることだろう。それを知った上で、逃げ出したりしないということは……。

真姫「ねえ、にこちゃんは……?」

自然と声が震え、縮こまってしまう。
背の低いにこちゃんに対し上目づかいで、尋ねる。
心で祈る。

にこ「その表情、反則なんですけど」

にこちゃんはぼそりと呟く。

と、壁際から離れて私と距離をとる。

にこ「いい、見てなさい。こうやるのよ」

そう言うとにこちゃんは、初めはゆっくり、しかしだんだん素早く私に近づいてきた。
凄味のある表情で私はつい後ずさってしまう。

と、そこで思い至った。

私が、壁ドンされるのね――。

にこちゃんは私を壁際に追いやり、左手を壁についた。

ドン、と言う音よりも、自分の心拍の方が大きい気がした。

私を見つめるにこちゃんが唇を動かし、そうであるはずの言葉を、私の待ちわびていた言葉を紡ぎだす――。

にこ「私、真姫のことが――」

心はもう、燃え上がっていた。

聞かずとも分かるその言葉。

熱情に潤んだにこちゃんの瞳、股ぐらに差し込まれるにこちゃんの細く綺麗な脚――。


にこ「すか」

空気が凍りついた。
いや、元から無音だったはずなのだが、それが殊更意識された。

真姫「……ぷっ」

にこ「今のやり直しね、もう一回」

真姫「あははははははは!! すかってなによ!!!! はずれってこと!? あははは!!」

にこ「なによ、ちょっと噛んだだけじゃない!! もう一回やるから、今度はちゃんと好きっていうから……」

にこちゃんは、そこではっと目を見開いた。

にこ「……聞いた?」

真姫「ばっちり」


にこ「じゃあ取り消しなさい。聞かなかったことにしなさい」
 
つとめて冷静な声を発しようとしているが、その声は上ずっていて、顔が真っ赤だった。

そんなにこちゃんを、私は堪らなくいとおしく思って、

にこ「……ふえっ?」

気づいたら、にこちゃんを抱きしめていた。

つやつやの髪のいい匂いをかぎ、にこちゃんのあたたかさを肌で感じた。
にこちゃんも、こちらを抱き返してくる。
柔らかい感覚と、甘いにこちゃんの視線が、早鐘を打っていた私の心臓を落ち着かせる。

真姫「もう一回、壁ドンさせてくれないかしら?」

にこ「その必要ある?」

真姫「……ないわ」

私はじっくりと胸の中でかみしめた。

このこと両思いだったという事実。

想いを伝えあった事実。

真姫「でもこれだけは言わせてほしいわ」

にこ「なによ」

真姫「にこちゃんは私だけのものだからね」

にこ「……ふん。一緒に帰るわよ」

そう言ってそっぽを向き、部屋のドアを開けるが、開いた手はこちらに差し伸べられていた。


おわり

お読みくださりありがとうございました。
saga忘れてた……

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