男「夏ん時は、うっとしいぐらい元気だったのにどうしたんだよ」
蚊「ごめんね……体調わるくて……」
男「風邪か? 季節の変わり目だからな。体温調整しっかりしろよな」
蚊「ありがと……男君は優しいね」
男「やめろよ。そんなんじゃねぇよ。ただ飛び回ってないお前は、お前じゃない気がしたからさ」
蚊「ふふ、私ってそんなに落ち着きなかったかなー。心外だなー男君」
男「はははは。はー、それにしてもすっかり秋だな。長袖じゃないと寒くなってきたよ」
蚊「そうだねー。でも触れられる男君の肌が少なくって悲しいな……」
男「蚊……。な、な、なんか暑くなってきたなー。長袖だと暑くて仕方ねぇ」ヌギヌギ
蚊「やったー。男君の肌だ。あったかくて大好き」
男「ほらこっち来いよ」
蚊「うん」
チューーーーーーーッ
男「お、おい。いきなりキスしたらビックリするだろ」
蚊「なんかしたくなっちゃった」テヘ
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男「お前、この頃忙しいのか?」
蚊「ん? 何で?」
男「いや、俺の部屋に来る頻度が減ってるし」
蚊「もー男君も知ってるでしょ。家庭の事情でこの時期しかこっちにこれないの。」
男「そうだったな。一緒にいるのが当たり前になってたから忘れた」
蚊「しっかりしてよね」
男「ってことは、今年も行くのか?」
蚊「……うん」
男「寂しくなるな」
蚊「……だね」
男「……」
蚊「……」
男「……傍にこいよ」
蚊「うん!!」
男「……」
蚊「……」
チュ――――――――ッ
男「今日いくのか」
蚊「うん……、いい加減仕事を再開しなくちゃならなくて」
男「そっか……」
蚊(バカッ、行くなって言うぐらいできないの!)
男「大事な仕事だもんな。頑張れよ。頑張って元気な赤ちゃん産んでこいよ」
蚊「ぷーん。言われくても頑張りすよーだ」
男「いつもの蚊だ。安心したよ」
蚊「男君がいなくても、私は生きていけるんだから」
男「そりゃ逞しいこった」
蚊「……じゃあ、行くね」
男「おう」
ぷーーーん
男(……)
ぷーーーん
男(……! これじゃダメだ!)
ぷーーーん
男「蚊!」
蚊「!」
男「来年の! 来年の夏も、待ってるから!」
蚊「男君!」
ぷーーーーーーーーーーーん
蚊は男への許へ飛んだ。そして激しく――――
チュ――――――――ッ
蚊「あれから一年経ったのね」
蚊「ここらへんも久しぶりね。相変わらずだわ」
蚊「あっ、よく汗かいた坊やだ」
蚊「あっ、あの人はO型の匂いを発してる」
蚊「あっ、……ダメダメ。私には男君という一途に決めた人がいるんだから」
蚊「ホントに久しぶり。早く男君に会いたいなー」
蚊「やっと着いた。男君、やっほー……えっ」
男「やめろよ。くすぐったいじゃないか」
カ「いいーじゃん。ちょっとだけだからぁ」
男「ちょっとだけだぞ」
カ「男君やさしぃ。遠慮なくさせてもらうね」
チュ――――――――ッ
蚊「え、え」
カ「男君といると落ち着く」
男「嬉しいな」
カ「ねぇ、もう一回していい?」
男「もう一回だけだぞ」
チュ――――――――ッ
蚊「え、え」
カ「うふふ」
男「あはは」
蚊(私一人の思い違い。去年行ってくれた来年の夏も待ってるってのは嘘だったんだね)
蚊(私みじめだ……男君はずっと待っててくれると思ってたのに)
蚊「男君……さよなら」ボソ
男「なんか聞こえたような」
カ「そんなことより、もう一回! もう一回! ラストにするからぁ」
男「こらこら何回目のラストだ? ははは」
それからというものの私は自暴自棄になった
男君だけに与えていたものを色んな男にも与えた
時には大人の体に満たない子にも、時には女性にですら
あの日のことを考えると苦しくなった
砂粒程の心臓が締め付けられるのだ
魂は人間しか持てないという人間がいた
魂を持つ男君と魂を持たない私
離れ離れになるのは必然かもしれない
だってこの世は魂がないのは生き物じゃないと思うから
私は魂を持ってないのだろうか
魂が何かなんてわからない
ただこの胸の痛みはどこから来るんだろう
おじさん「蚊ちゃん。俺にアレしてくれよ」
蚊「はい……」
チュゥ
おじさん「もっと激しくしろよ」
蚊「……」
チュゥ
おじさん「ふざけんなよお前。使えねぇやつだな。身ごもったお前が可哀想だったから家に上げてやったってのによ」
蚊「……すみません」
おじさん「もういいよ。帰って。あっ、もしもし。これから来れる? 近くにいるの? よかったー。うん、じゃあよろしくねー」
おじさん「まだいたのかよ。さっさと出てけよ」
蚊「……」
プーーん
?「おじさーん。わたしー、もうきちゃったー」
蚊(この声は!)
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