男「……」 女「あ、あのっ!」 (34)
男「ん?どうしましたか?」
女「あの……その、ですね……」
男「?」
女「~~~~!!」
男「(なんだこの子……)」
女「しっ……」
男「し?」
女「し、し……死んでください!!」
男「嫌ですごめんなさい!!」
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男「(思わず勢いで断っちゃったけど、本当になんだこの子……)」
男「(初対面の人に『死んでください』って!!どういう方向性の度胸なのよ!?)」
女「そんな!どうして断るんですか!?」
男「死にたくないからです!!」
女「どうしてもですか!?」
男「どうしてもです!!」
女「ぐぬぬ……!」
男「(むぅ……相当イッちゃってる感じだなこりゃ……面倒くさいぞ)」
男「(まぁ冷静に冷静に。もしかしたら僕に非があるかもしれないし、そうなった経緯を聞くか)」ポクポクチーン
女「これで……」
男「ん?」
女「この1万円で勘弁してください!!」
男「嫌ですごめんなさい!!」
男「(暴挙に出よった!!この子とんでもない暴挙に出よった!!)」
男「(金!マネーで解決しようとしよった!!しかも……)」
イチマーン
男「(1万円って……!!金で解決しようと思うならもっと頑張れよ君!!)」
男「(というか僕の命安すぎませんか!?コーラ62本の命程の価値しかないと仰るのですか君は!?)」
男「(もー本当に何なのこの子……)」
女「じゃあ……」
男「ん?」
女「何円ならいいって言うんですか!?」
男「金から離れませんか!?」
女「金の問題じゃないんですか!?」
男「明らかに違いますよね!?」
男「というか僕一言もお金だなんて言ってませんし……」
女「それはそうですけど……」
男「と、とにかくですよ」
男「とにかく、何故僕に死んでほしいのか、の理由が聞きたいのですよ」
女「あぅ……それは……」
男「(絶対に逃がさんぞ……!!卵を盗まれたリオレウス並に追跡してやるからな……!!)」
女「それは……ですね……」
男「……」ギロリ
女「ぁぅぅ……!」
男「……」ギロリ
女「ゆっ……許してください!!」
男「嫌ですごめんなさい」ギロリ
男「(どうやら何か深刻な理由がありそうだが……)」
男「(許しを請う程に言いたくない事なのか)」
男「(……それってどういう理由なんだよ!!そもそも自分から仕掛けた訳なんだからその理由は通らんですぞ!!)」
男「(絶対に聞き出してやる……!!例え日が暮れて夜が明けようと絶対に聞き出してやるからな……!!)」
女「……こ」
男「こ?」
女「この1万円で勘弁してください!!」サシダシー
男「それしか行動コマンドないのかい君は!?」
男「コイキングでももうちょっと何かできるぞ!?」
女「うぅ……!」
男「(というかさっき1万円作戦は失敗したでしょうに……!!がくしゅうそうちでも付けるかい!?)」
女「じゃ……」
男「じゃ?」
女「じゃあどうすればいいって言うんですかぁ~~!!」
男「理由を話してくれればそれで済むんだよ!?」
女「それは……言えないですよ……!」
男「どうしてですか?」
女「だ、だって……」
男「……」
女「……あ、UFO」
男「……」
男「(泣いたッ!!この子のあほっぷりに僕が泣いた!!)」
男「(何でUFOなんだ……!!何で、どうしてUFOなの!?今の時代にそれ使う!?)」
男「(原始的にも程が有るよッ!!)」
女「ぐぬぬ……効きませんか……!」
男「(効く人が知りたいよ!!)」
男「……もういい、分かったよ」
女「え?」
男「どうしても……ってなら、もういいよ」
女「……死んでくれるんですか!?」
男「(迷宮入りしたァーーーーーーッ!!)」
男「(何故なの!?どうしてなの!?何故!?Why!?)」
男「(どうして今の流れで僕が死ぬことを受け入れるって理解できるの!?)」
男「(突っぱねてるよ!!生きる気メガマックスだよ!!生命力の塊だよ!!)」
男「(本当に何なんだこの子!?希少価値あるよ!!)」
女「では、この包丁を使ってお願いします」ペコリ
男「……」
女「?」
男「(お前がやるんと違うんかーーーーいッ!!)」
男「(僕にこの手を汚せというのか!?僕の手で僕を殺めて!?)」
男「……」
男「(どうしてなんだよッ!!どういうことなんだよッ!!)」
男「(今猛烈に僕は泣きたいよ!!今日という日を呪いたいよ!!)」
女「あ、包丁が嫌ならロープとかもありますよ」ガサゴソ
男「(無駄に種類豊富だしさ!!)」
男「違う……違うんだよ……」シクシク
女「え?」
男「そういうことじゃないんだよ……!」シクシク
女「……なんで泣いてるんですか?」
男「(お前のせいやろがい!!どついたろか!?)」
女「気持ちが落ち着かないのでしたら、近くにカフェがあるのでそこでお茶しますか?」
男「(そういうことじゃねえよ!!)」
男「……」
男「(いやそういうことだけどさ!!)」
女「行きましょう、混まないうちに」
男「(何で行くことがもう決定されてるのさ!?)」
――カフェ――
男「(気付いた時には来てしまっていた……不覚)」
女「さてどれにしましょうかね~」
男「(どういう生活を送ってたらそんなゴンブトの神経ができあがるのさ……)」
男「(謎だよ!!人類史上における謎だよ!!)」
女「決まりました!あなたはもう決まりましたか?」
男「えっ?あ……じゃあこのコーヒーにしようかな」
男「(……自分も何で普通にメニュー決めてるのさ!?)」
チーン
オーダー「ご注文をお承りします」
男「僕はこのコーヒーで」
女「私はこのコーヒーで」
オーダー「アイスコーヒー2つですね、かしこまりました」
女「あ……」
男「……」
女「メニュー、被っちゃいましたね//」
男「……」
男「(死んで欲しい相手とメニューが被って嬉しいかい君は!?)」
女「コーヒー、楽しみですね」ワクワク
男「さいですねー」
男「(はぁ……今日は何て日なんだ……)」
男「(アイスコーヒー飲んだらすぐに出よう、それでこの子ともおさらばだ)」
女「……」
男「……」
男「(気まずい……)」
女「……私、ですね」
男「(ん?)」
女「……その」
男「(今度はなんだ?)」
男「(……あ、ようやく死んでほしい理由を言ってくれるのか……?)」
女「……」
男「……」
男「(これじゃまた気まずい雰囲気に逆戻りじゃあ……)」
ウェイター「こちらアイスコーヒーになります」スッ
男「(このウェイター……やりおる!)」
女「私……」
男「(えっ続行!?)」
女「あなたのことをずっとお慕いしておりました!」
男「(えっ?)」
女「あなたのことが……好きなんです!」
男「(えっえっえっ?)」
男「……」
男「(ええええええ……!?)」
男「(いや待って、待ってよ……)」
男「(初対面だよね、君と僕!?)」
男「(……ってそこじゃないそこじゃないんだ)」
男「(死んでほしいんじゃなかったの!?)」
男「……あっ」
女「いつも……この街であなたをお見かけしていました」
女「初めてあなたを見たのはもう今から10年くらい前でしょうか」
女「……一目惚れでした」
男「なるほど」
女「でもその想いを告げることは中々できず、日々あなたを見かける度にどうにかなりそうで」
男「はー……」
女「それが10年も続き、変に片思いを続けるのならばもう嫌われてしまった方が楽だと思い、今日に至ったのです」
男「(……いやでも死んでくださいはどうなのさ……!?)」
女「……」
男「なるほどね……」
男「……」
男「(そもそも本気で死んでほしいと願うなら一緒に喫茶店なんて入るわけもないし)」
男「(まぁ……ここで取るべき行動は1つしかあるまい)」
女「あの……」
男「ごめんなさい」
女「……ありがとうございます」
男「だが待ってください、まずは友人関係から始めましょう」
男「話もしたことないのに告白しても想いは伝わらないですし、まずはお互いの事をよく把握してから……では?」
女「……はい」
男「(これが最善じゃなかろうか)」
男「(もしかしたら友人関係を続ける中で僕の中でのこの子の印象も変わるかもしれない)」
男「(だからまずは交友関係から)」
男「(焦らず、地道に)」
女「……うん、美味しかった」
男「(というかいつの間に完飲したんだ……)」
女「ごちそうさまでした、また機会があればどこかで」スタッ
男「え?」
女「ここのアイスコーヒー一度飲んでみたかったんだよね~!!やっぱり美味しかったよ!」スタスタ
男「え?」
男「……え?」
男「………………え?」
男「(もしかして……最初の最初からこのアイスコーヒー飲みたかっただけ!?)」
男「……えっ?」
男「本当に帰りおったし、そうなんじゃなかろうか」
男「…………」
男「……僕の純情返せよおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
完
男「……っていう事が昨日ありまして」
後輩「はぁ……」
男「そもそも僕がここに引っ越してきたの8年前なんだよね」
後輩「知ってますよ」
後輩「というか何で10年前のくだりで気付けなかったんですか?」
男「雰囲気と雰囲気に流された」
後輩「それで、その後支払ったんですか?」
男「いや?」
後輩「は?」
男「いやだって作り話だもん。昨日はずっと布団でゴロゴロしてたよ」
後輩「……は?」
男「『死んでください』から始まる物語って中々難しいね」
後輩「……私の1時間30分返せよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
本当の本当に完
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