魔王「武器を持たぬ者」 (6)
ギィィィィイ
魔王「……」
勇者「はぁはぁ……ついにここまで来たぞ……魔王!」
勇者「お前を倒せば世界は平和に……」
僧侶「……勇者様」
勇者「……へへ、最初はそう思っていた」
勇者「同時にあの”無血”の勇者ですら敗れたお前を倒し、俺が伝説に……なんてことも」
勇者「……でもな、ここまで来て思う事はそんな事じゃない」
勇者「世界平和も伝説もどうでもいい」
勇者「お前を倒さないと……志半ばで散った仲間に顔向け出来ないんだよ!!」チャキ
勇者「戦士、魔法使い……約束は必ず……!」
勇者「僧侶! 援護頼む……俺たちの最後の戦いだ……!」
僧侶「はい!!」
勇者「はぁぁああああああ!! 行くぞっ!! 魔王ぉぉぉおおおおっ!!!」
魔王「……くだらぬ」
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勇者「ぐっ……はぁ、はぁ……僧侶……っ!」
勇者「ちくしょう……ちくしょぉぉおおおおおおっっっ!!!!!!!!」バッ
魔王「ふむ……」
魔王「そのような体躯でまだ立つとは」
勇者「うるせぇ!! 何が何でもお前を倒すんだ!!!」
魔王「……これまで幾十の者がここへ来た」
勇者「はぁぁぁぁああああああああああっっ!!!!!!」
魔王「その中で我に傷をつけたのは幾許か……」
勇者「くっ!」ガッ
魔王「貴様も人としてありながら稀代の強さを持つ」
勇者「はぁっはぁっ」
魔王「だが、それでも貴様は貴様らの言う”無血”の勇者に足り得ぬ」ゴッ
勇者「っ……くそう……すまねぇ……みんな」
魔王「さらばだ、憐れなる人間よ」
魔王「……」
魔王「つまらぬ」
魔王「あれから200余年の時が過ぎたが……」
魔王「貴様程の人間をついぞ見る事はなかった」
魔王「もうよかろう」
魔王「あの時の貴様の言葉は只の幻想であり、まやかしであった」
魔王「なればこそ、今一度、我の在るべき儘に」
魔王「人間に一縷の希望も与えることなかれ」
ギィィィィイイ
魔王「……」
女勇者「こんにちは」
魔王「!」
女勇者「あ、貴方が魔王……でいいよね?」
魔王「そこに転がっている死体を見れば分かろう」
女勇者「……」
魔王「其奴らは存外頑張っておったが……貴様はどうか」
魔王「くっくっ、体躯に見合わぬ大剣に魔の杖か……」
魔王「しかし、ここに来るまでに随分とやられたようだな」
魔王「我と対峙するまでもなく満身創痍ではないか」
魔王「その様な身体で我と戦おうなど……どこへ行く?」
女勇者「……よいしょっ」
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