突然だが、俺は昔から何でもできた。
「男くんすごい!テストまた1番だね!」
「また男かよ!」「まあ、いつもどおりだね」
学校では勉強も運動もずっと1番。どうして1番になれるのか分からないが、とにかくずっとそうだった。
とにかく何でもできた。周りのやつらがどうしてできないのかいつも疑問だったくらいに。
そんな俺の人生が大きく方向転換したのは、10歳になったばかりの時だった。
男「はぁああ!?て、転校!?」
父「ああ、そうだ」
母「ごめんね男、お父さんとお母さんの仕事の事情なのよ」
男「ね、姉ちゃんと妹たちには…?」
母「もう言ったわよ」
父「3人とも、納得してくれたよ」
男「そっ…そうなんだ…」
父「下妹と姉は入学したばかりだったのにな」
父「本当、あの子たちには申し訳ないよ」
母「友だちもいるのにごめんね、男」
男「…は、ははっ、しょ、しょうがないよ!仕事だもんな!」
男「と、友だちは転校してもできるんだし、俺は大丈夫!」
母「男…」
男「…自分の部屋に荷物おいてくる」
男「っ…」ダッ
父「あっ、お、おい!」
母「…はぁ」
父「男、ごめんな…」
母「…そんなこと言ってもしょうがないわよ」
母「今の友だちと離れるのは寂しいかもしれない」
母「けどあの子なら、転校してもすぐに友だちができるはずよ」
父「…そうだな」
母「父と違ってね」
父「うぐっ…む、昔のことはいいだろ」
母「ふふっ」
男「はぁ…転校か」
男「あいつらともう会えなくなるのか」ゴロゴロ
男「あーあ…」ゴロゴロ
男「さびしいなぁ…」ゴロゴロ
姉「…あああああうるさい!!勉強してるんだから静かにしなさいよ!」
姉「それにここ、私の部屋でしょ!!」ビシッ
姉「私のベッドでゴロゴロするなああああああ!!」
男「姉ちゃん!いつの間に!?」
姉「暗い顔して部屋に入ってきたと思ったら、急にベッドでゴロゴロしだして」
姉「あんた、自分の部屋あるでしょ…」
男「妹たちがなぜか寝てたからな、しょうがない」
姉「あの子たち、またあんたの部屋で寝てたの…」ハァ
男「…転校だって」
姉「…うん、知ってる」
男「姉ちゃん、入学したばかりなのに」
姉「私のことはいいの」
姉「入学したばかりってことは、転校してもあまり変わらないってことだもんね」
男「けど、小学校からの友だちとか…」
姉「…まあ、しょうがないよ」
男「好きな人とか…」
姉「いないっての」
男「ほんとかな~」
姉「なにその顔…本当にいないってば」
男「はぁ、そうですか」
姉「…まっ、決まったことはしょうがないじゃん」
姉「お互い、がんばろうね」
男「…うん」
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