男「ダジャレを言うと現実化する能力……?」(28)

男「せっかくこんな能力を得たんだ。ちょっと試してみるか……」

男「“アルミ缶の上にあるミカン”」



ボワンッ!



男「うわっ、ホントに出た!」

男「どれ、せっかく出たんだから……このミカン、食べてみるか」ペリッ…

男「……」パクッ

男「うっ、うまい!」

男「あらためて食べると、ミカンってこんなにおいしい食べ物だったんだなぁ」

男「結局、一つ食べただけじゃ物足りなくって、いっぱい買ってきちゃった」

男「ミカンってあんまり食べると手足が黄色くなるっていうけど」パクパク

男「やめられない、止まらないなぁ」パクパク

男「ミカンだけに未完ってか」ハハッ

いてもたってもいられなくなったオレは、さっそくミカン農家のもとを訪れた。





男「こんにちは!」

農家「こんにちは」

男「実はオレ、最近ミカンのおいしさに目覚めて、その味にすっかりハマってまして」

男「ミカンをどのように作っているかを知りたくなったんです」

男「さっそくですが、ミカン農家の一年のスケジュールについて伺いたいのですが」

農家「かまいませんよ」

農家「まずは冬ですが、冬には次のシーズンに向けての準備をしなければなりません」

農家「そこで、剪定(せんてい)という作業を行います」

男「剪定?」

農家「ミカンの木に生えている余計な枝を取り除き」

農家「葉や枝にまんべんなく日光が当たるようにする作業です」

農家「他にも堆肥をまいたり、農道を整えたり、害虫を駆除したりと……」

農家「おいしいミカンを作るための土台を築いていくわけです」

男「なるほど……」

男「シーズンオフだからといって、休んでいるヒマはないということですね」

農家「おっしゃるとおりです」

農家「春になると、ミカンの木に芽が生え始めます」

農家「ここで行わねばならないのが、摘蕾(てきらい)という作業です」

男「摘蕾というのは?」

農家「つきすぎたツボミや花を取る作業です」

男「ツボミや花を取るんですか?」

男「素人考えなんですけど、ツボミや花が多くつくのにこしたことはないのでは?」

農家「そうもいかないのです」

農家「木にとって、花を咲かせるというのは非常にエネルギーを使うことなのです」

農家「なので、質のよいミカンを作るためには、間引きも必要になるのです」

男「なるほど、そういうことですか」

農家「夏になると、いよいよミカンの実が大きくなり始めます」

農家「同時に、雑草も多く生えるので、草刈りが欠かせません」

農家「また、大きくなりすぎた実や小さすぎる実、傷ついている実などを取り除き」

農家「木全体の実の量を調整します。これを摘果(てきか)といいます」

農家「これを行わないと、実がなりすぎて、小さなミカンしかできなくなってしまいます」

男「摘蕾に、摘果……。人の手でミカンの木をサポートすることが大事なのですね」

農家「秋になるといよいよ収穫の季節です」

農家「この時期がミカン農家にとってもっとも忙しい季節といえます」

農家「晴れの日は、当然収穫作業を行わねばなりませんし」

農家「雨の日や夜間は、選果(せんか)といういいミカンと悪いミカンを分ける作業を」

農家「行わねばなりません」

農家「まさに、猫の手も借りたいほどの忙しさなのです」

男「こうして収穫され、選別されたミカンが、我々の手に届くわけですね」

農家「はい」

農家「説明としては、こんなところでしょうか」

男「ありがとうございました」

農家「もちろん、今説明したのは、非常に大雑把な内容に過ぎません」

農家「日々、土壌や害虫、病気などに注意を払うのは当然として」

農家「台風などの災害が迫れば、それに伴う対策も講じなければなりません」

男「はぁぁ……」

男「ミカン作りの大変さがよく分かりました」

農家「こちらこそ、興味を持っていただいて嬉しいです」

農家「ですが、あなたのようにミカンをおいしいといって下さる人に出会えると」

農家「そのような疲れも吹っ飛んでしまいますね」ニコッ

男「……」ジーン…

男「あ、あのっ! 折り入ってお願いがあるのですが……」

農家「なんでしょう?」

男「ぜひオレを、あなたの弟子にしていただけないでしょうか!?」

農家「……」

農家「厳しい世界ですよ?」

男「分かってます!」

農家「ほとんど休みなんかありませんよ?」

男「覚悟しています!」

農家「……いいでしょう。あなたのその目、どうやら本気のようです」

農家「ついてきなさい」クルッ

男「はいっ!」

男(やってやる! オレは世界最高のミカン農家になってやる!)

オレはようやくのぼりはじめたばかりだからな



このはてしなく遠い蜜柑坂をよ……








― 未完 ―

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