【艦これ】 陽炎「やっと会えた!」 提督「!?」 (33)

地の文とキャラ崩壊注意
拙い文ですが何卒ご容赦ください

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「やっと会えた」

屈託のない明るい声と共に海から飛び出してきたそれは、認識する間を男に与えずに抱きついてきた。

「き、君は一体……」

「陽炎よ、よろしくね!」

そう言うと少女はぐったりとして、男の胸の中で気を失った。

「おい!君!しっかりしろ!おい!君……………………」

陽炎「ん……ここは?」

目を覚ますと目の前には清潔感が漂いながらも白く無機質な天井、そして肌に感じる柔らかい布の感触。

「やっとお目覚めかい?」

ふと、隣から低い声が聞こえたので、そこに目をやってみると、白い制服を着た中年の男が座っていた。

陽炎「あの……ここは…………一体……」

男「ここは海軍の治療施設だ。とは言っても、ちっぽけな泊地のだかね」

そう言って男は自嘲気味に笑う。

陽炎「………貴方は……ここの司令官なんですか………?」

男「ああ、自己紹介をしていなかったな……」

男「君の言う通り、私はここの提督を務めている者だ」

冷静な思考を取り戻しつつある陽炎は、提督の今の一言で事態を把握した。

陽炎「し、失礼しました!先程の無礼な振る舞い、お許しください!」

慌てて、ベッドから起きる陽炎。そこに提督は声をかける。

提督「はっはっは、そんなに畏らなくても良いぞ。それに、君は何一つ私に無礼は働いて無い。安心しなさい」

陽炎「は、はい!」

提督「いやいや、そんなに固くならんでもいい。自然体で、楽にしていなさい」

陽炎「で、ですが……」

流石に、初対面の司令官の前で自然体になるのは陽炎でも気が引けるものである。

提督「ふむ、どうやら君は艦娘の様だね」

陽炎「はい」

提督「しっかりと礼儀を弁えてる辺り、余程いい教官に指導された様だな」

陽炎「きょうかん…………?」

提督「……………まあいい。とにかく、ここでは私には普通に接しなさい」

陽炎「でも……それは流石に致しかねます」

提督「そうだな………礼儀を重んじるであろう君ならこの言葉を分かってもらえるだろう」

提督「"上官命令"って奴を……」

陽炎「お言葉ですが、貴方は私の直接の上官ではありません」

提督「言ってくれるな。しかし、階級では私が上だぞ?」

陽炎は心の中で卑怯だなと思いつつも、しぶしぶ提督の言いつけに従うことにした。

提督「それで、他に聞きたいことはあるか?」

陽炎「あの」

提督「何だ?」

陽炎「どうして……私はここに………?」

提督「すまないが、私にもわからない」

提督「ただ1つ言えるのは、君が突然海の中から飛び出して来たということだ」

陽炎「私が海から………?どういうこと?」

提督「なんだ?憶えていないのか?」

陽炎「はい……何1つ…………」

提督は陽炎と出会った時のことを説明した。

提督「………そういう事があったんだ。大破した状態でよくもまあ、人に飛び付く元気があったもんだ。そこだけは感心したよ」

少し揶揄う様に笑う提督に対し、赤面し、両手で顔を押さえながら小刻みに震える陽炎。

陽炎「…………わ……私………なんてことを………」

提督「どうした?気分でも悪いのか?」

陽炎「……いえ………その……会っていきなり、そんな無礼な事をしたなんて……」

提督「大丈夫だ。私は別に気にしていない」

提督「しかしまあ、君みたいな年頃の娘が、初対面の男にいきなり抱きつくのはどうかと思うがね。」

陽炎は恥ずかしさのあまり、ベッドで悶えた。

陽炎かわいいね

阿武隈「提督、あの子はどうだった?」

 提督の顔を覗き込む碧眼の少女。彼女の名前は阿武隈。提督の秘書官だ。

提督「ああ。やっと目が覚めた。それと、少しだけ会話もした」

阿武隈「もしかして提督、あの子にイジワルはしてませんよね?」

提督「あ……ああ、そんなことはしてないぞ」

阿武隈「ほんとうに~?」

 阿武隈が提督を見つめる。彼女の透き通るような碧色の視線が突き刺さる。提督はその視線に吸い込まれそうな気がして、目をそらした。

阿武隈「あ!今、目を逸らしましたよね?」

提督「い、いや、逸らしてはいない」

阿武隈「そんな分かりやすい嘘を吐いても無駄ですよ。どうせ、いつものようにあの子にもイジワルしたんでしょ」

提督「イジワルとは人聞きが悪いな。ただ少しだけ揶揄ってみただけだ」

阿武隈「それを”イジワル”って言うんですよ」

阿武隈「ほんっと、提督のイジワルは時々度が過ぎるんです」

提督「そんなに酷いか?」

阿武隈「酷いですよ。潮ちゃんの時なんか、アレはもうセクハラですよ」

提督「私としては、艦娘たちとのコミュニケーションの一環だと思っているのだが?」

阿武隈「はぁ…………提督はイジワルさえしなければカッコいいのに……」

提督「今のは褒め言葉として受け取っておこう」

阿武隈「どうぞお好きに……ふん」

 呆れる阿武隈を余所に提督は特に意に介さない様子だった。

続けて どうぞ

阿武隈「あの、提督……あの事は言ったの?」

提督「……まだ伝えていない。本人もまだ完全には状況を飲み込めていないだろう。そんな中で伝えるのは彼女を余計混乱させてしまうだけだ。だから、頃合いを見計らってから伝えようと思っている」

阿武隈「まだ目覚めたばかりだからね……」

提督「どうやら、私と出会った時の事は憶えてないようだ」

阿武隈「あれだけ弱っていたから、意識が飛んじゃったんじゃないかな?」

提督「むしろ、それだけで済んでいたのが奇跡だ」

阿武隈「正直、あれを知った時は私も信じられなかった……」

提督「これから何があったのかを本人に聞かないとな……」

阿武隈「忙しくなりそう?」

提督「それはどうだろうな。まあ、忙しくなるだけで済めば良い話だが……」

 ここは陽炎に与えられた病室、提督と阿武隈が見舞いに来ていた。

提督「調子はどうだ?そろそろ入院生活も飽きてくる頃じゃないか?」

陽炎「お陰様でだいぶ良くなってきたわ。早く外に出たくて。居ても立っても居られないくらいね」

提督「うむ、この前よりも顔色が良くなってきたな。それに、話し方もより自然だ」

提督「軍医に確認してみたが。この調子なら数日以内に退院できるそうだ」

陽炎「やったぁ!」

阿武隈「良かったね、陽炎ちゃん」

陽炎「はい!本当に、ありがとうございます!」

 淀みのない満面の笑みで頭を下げ、礼を告げる陽炎。それに対し、阿武隈が少し恐縮したように答える。

阿武隈「そんな、お礼なんていいよ。陽炎ちゃん」

提督「阿武隈の言う通りだ。私たちはあくまで当然のことをしたまでだ」

陽炎「でも……私はここの艦娘じゃないし…………」

 陽炎のその言葉を聞いて、提督は神妙な面持ちである事を告げる。

提督「その事なんだが…………君に伝えなければならない事がある………………」

阿武隈「提督…………今、話すの………………?」

提督「ああ、そろそろ話しても良い頃合いだろう……」

 そして、提督は口を重そうに開く。

提督「……実は、こちらで君については調べさせてもらったよ」

提督「まず、結論から言うと君はこれからここの所属になる」

提督「君が知っているかどうかは知らんが……君の所属していた鎮守府はもう存在しない…………」

提督「……大規模な深海棲艦の襲撃に遭い、壊滅したそうだ…………」

 提督の突然の告白に、陽炎は状況が飲み込めていないという様な顔をしている。

陽炎「……あの…………」

提督「どうした?何か質問か?」

陽炎「……私、分からないの…………」

提督「それも無理はないな…………君はその時に……」

陽炎「そうじゃなくて…………覚えてないの…………」

陽炎「私がどこにいたのか、私が何をしていたのかを……」

提督「それでは君は……自分がいた鎮守府のことを覚えていないのか?」

陽炎「それだけじゃない…………私がここに来るまでのこと……全部思い出せないの………………ただ、私が誰なのか……それと、艦娘としての知識…………それだけは覚えてる……」

提督「そうか………………」

提督「それでは、これも話しておく必要があるな……」

提督「君は…………1年前に轟沈した」

 陽炎が困惑と驚きと悲壮の混じった複雑な顔をする。それを見た阿武隈は提督の隣でおどおどしている。

提督「正確には、”轟沈した事になっていた”と言った方がいいかな?」

提督「ここは天国でも地獄でもないし、君は生きている。だから安心しなさい」

 提督は冗談っぽく笑って見せた。勿論、彼自身笑えるような状況ではない事は分かっていたが、この場の空気を少しでも和らげる方法がこれしか思い当たらかったのだ。

しかし、提督の試みも虚しくすぐに気まずい沈黙がこの場を支配する。










阿武隈「そういえば提督、陽炎ちゃんはここの所属になるんだよね?」

 沈黙を破ったのは阿武隈だった。

提督「ああ、そうだな」

阿武隈「じゃあ、退院したら私が鎮守府の中を案内してあげるよ。それと、みんなに陽炎ちゃんを紹介しないとね」

陽炎「で、でも、そこまで…………」

阿武隈「大丈夫だよ。陽炎ちゃんは可愛いから、きっとみんな仲良くしてくれるよ」

陽炎「は、はぁ…………」

 阿武隈の的を外した返しは、結果的に病室に漂っていた重苦しい空気を和らげることとなった。

軍医「うん。特に異常な無いみたいだし、予定通り退院許可を出すわよ」

陽炎「ありがとうございました」

陽炎が軍医に深々と頭を下げる。

軍医「いいのよ。私は当たり前の事をしたまでだから………でも、もう陽炎ちゃんの可愛い寝顔が見れないと思うと寂しいなぁ〜」

軍医が猫撫で声で言う。

陽炎「か……可愛いって………」

対して顔を赤らめる陽炎。

阿武隈「ふふふ……良かったね陽炎ちゃん。可愛いだってさ」

陽炎「もう!二人とも私をからかうのはやめて下さい!」

軍医「まぁ残念だけど、もうここにお世話になるような事にはならないでね」

陽炎「はい。もう人の寝顔を覗くような人のお世話にはなりませんので」

陽炎がふて腐れたような顔をする。

軍医「うむ。憎まれ口を叩けるようなら大丈夫だね。それじゃあ、お大事に!」

陽炎「はい!ありがとうございました!」

阿武隈「ありがとうございました」

二人は軍医に頭を下げると、治療施設を後にした。

陽炎スレか…期待

気が向いたら更新していくスタイル

 治療施設を後にした2人は艦娘寮内の廊下を歩いていた。

阿武隈「先ずは、秘書官の能代を紹介するね」

陽炎「え?……秘書官は阿武隈さんじゃないんですか?」

阿武隈「あ……えーとね、うちの秘書官は二人いて、私と能代で交代でやってるの」

阿武隈「今週は私の番だったから、能代は陽炎ちゃんに会う機会はなかったし、知らないのも無理はないよね」

 そうこうしてるうちに2人は能代と阿武隈が使用している部屋の前に着いた。

能代「だから言ったじゃない。やめといた方がいいって…………」

能代「はぁ……うん、わかった。それじゃあ、元気でね」

能代はため息を吐き、通話を止める。ふと、ドアをノックする音が聞こえた。

阿武隈「のしろ〜、いる〜?」

同居人、阿武隈の声だ。能代はスマートフォンを机の上に置き、その声に応える。

能代「居るわよー。勝手に入ってきてもいいよー」

ドアを開ける音がした。その方へ目を向けてみると、阿武隈の見慣れた顔ともう1人、栗色の髪をツンイテールにしている少女がいた。

端整な顔立ちにアメシストを嵌め込んだような瞳、笑顔が映えそうな子だと能代は思った。

阿武隈「あ、紹介するね。この子が陽炎ちゃんだよ。どう?私の言った通り可愛いでしょ」

能代「そうね、評判以上の美人さんね」

陽炎「そ、そんな!私なんか全然可愛くないですよ!」

入院中、阿武隈や軍医から散々投げかけられた言葉だが、いつまでたってもこう言われるのは陽炎にとっては慣れないことである。

能代「あ、自己紹介を忘れてたわ。私は能代。阿武隈と同じ秘書艦をしているの。よろしくね」

能代は陽炎に右手を差し出す。

陽炎「あ、陽炎です。よろしくお願いします」

陽炎はぎこちなく自己紹介をすると、能代に応えるように右手を差し出した。

能代「あら、可愛いリボンね。どこで買ったの?」

能代は陽炎の髪を結んでいる黄色地に水玉模様が入ったリボンを指して言った。

陽炎「えっ、あ、リ……リボン…………?」

能代「そうそう。それ、とっても可愛い!」

目が覚めてからというものの、陽炎はごく当たり前のようにいつもリボンを着けていた。一体いつからなのか、どうして着けているのかすら考えたこともない。それはまるで、記憶とは別に体に染み付いた長年の習慣のように。

阿武隈「もう、能代ったら!陽炎ちゃんはここに来る前のことは覚えてないんだよ」

能代「ああ、そうだったわね。ということは、ここに来る前から着けていたんだ」

阿武隈「提督の話では、出会った時から着けてたみたい……」

能代「それならきっと、とても大切なものだったのかもしれないわね…………」

能代は陽炎の顔を覗き込みながら微笑んで見せた。

陽炎は何故リボンなのかと思いつつ、部屋を何の気なしに見渡してみる。

軍の宿舎らしく部屋はあまり大きくはなく、二段ベッドが1つに、机が2つ、それとテレビが1台あるだけという小ぢんまりとした部屋だ。しかし、それでも住人の人となりをさぐる手掛かりはいくつか見て取れた。

能代が座っていたところの机には様々なキャラクターのグッズと、ピンクのカバーを付けたスマートフォンが置かれていた。

もう一方の机には、ヘアスプレーやブラシ、そして数冊の本が無造作に置かれていた。ブックカバーを掛けてあるためなんの本なのかまでは分からない。

それを見て陽炎は何となく合点がいった。なるほど、彼女は見かけによらず可愛いもの好きなのだ。だからこそ、自分のリボンに目が行ったのだろう。

能代「ところで、この子は実戦には参加するの?」

阿武隈「とりあえず演習で様子を見てからって、提督が言ってた」

能代「次の演習は来週?」

阿武隈「そうだね。陽炎ちゃんがどんな戦いぶりを見せてくれるのか楽しみ〜」

能代「そうね。期待してるわよ」

そう言うと能代は陽炎の肩を軽く叩いた。2人の私生活を想像するのに夢中になっていた陽炎は不意に肩を叩かれ、ビクリと体を震わせた。

待ってた

どこまでも青い空、太陽は照り輝き、海は波一つない。陽炎はそんな空間に居た。今日は能代が言っていた演習の日だ。片耳にかけたイヤホンから相手チームが配置についたとの無線が聞こえる。

陽炎は能代を旗艦とした、朧、曙、漣、潮で構成される能代チームの一員として参加する。対して今回の相手は、阿武隈、朝潮、大潮、満潮、荒潮、叢雲で構成される阿武隈チームである。

ここで演習が開始されるまで少し時間があるので、どのようにきて演習が行われるのかを大まかに解説しておこう。

演習は実戦とは違い実弾を使うことは殆どない。年に数回実弾演習も行われるが、それ以外の演習では艦娘の被弾判定は赤外線センサーを使う。しかし、より実戦に近い臨場感を出すために偽装には空砲を詰める。砲撃時の反動や硝煙の匂いは実弾のそれに近いものとなっている。また、魚雷は火薬のついていない模擬魚雷を使う。これは爆発しないことを除けば実戦で使用する魚雷と殆ど同じもののため、当たりどころが悪ければかなりの痛みを味わうことになる。以上が演習についての大まかな解説である。

日に焼かれること数分、無線機が演習の開始を告げる。

能代「前進、原速!」

その声と同時に艦隊全員の基機が一斉にバタバタと音をたてる。陣形は単縦陣、先頭の能代は前進しながら索敵機を飛ばす。後方の陽炎は離されまいと前の漣に付いて行く。陽炎は後ろから数えて二番目の位置にいる。最後尾にならなかったのは、久々の演習で慣れないだろうからと最後尾に潮をフォロー役として付けたためである。

陽炎のフォロー役を能代から仰せつかったこの潮という少女、演習前に何度か言葉を交わしてみたが、毎回おどおどした受け答えをする。お互い初対面だからだろうかと陽炎は考えたが、それ以外の立ち振る舞いを見てもどうにも頼りないという印象を抱かずにはいられなかった。

潮「か、陽炎さん。大丈夫ですか?」

陽炎「心配しなくてもちゃんと付いて行けてるから安心して」

潮「そうですか……それは良かったです」

潮「………………あ、あの」

陽炎「ん?なあに?」

潮「も、もしも、分からない事があったり、気分が悪くなったりしたら……わ、私に言ってくださいね」

この少女はこっちに気を遣っているのだろか?それとも、先輩風を吹かせているのだろうか?

陽炎「わかったわ……よろしく頼むわね」

それからまもなく、能代が全員に敵艦隊の発見を告げた。

書いてもええんよ

能代「みんな!観測機から入電よ。前方に2隻の艦影を発見、今から2分後に接敵するわよ!」

全員の顔が強張る。演習で戦う相手は実戦とは違い同じ艦娘同士であり、轟沈の心配もない。とはいえ、演習であっても全力を尽くして戦うというのは艦娘同士の暗黙のルールであり、もし負ければ自らが所属する艦隊やそこの旗艦娘(フラッグシップ)が汚名を被ることとなる、ましてや鎮守府をまたいだ演習ならばそれが自らが仕える提督にまで及ぶこととなるのだ。鎮守府間の合同演習で負けた側の提督が無能のレッテルを貼られて他の鎮守府から見られることも少なくない。だからこそ、艦娘達にとっては演習だからと言って手を抜く訳にはいかないのである。

漣「うーむ、臭いますねぇ……ゲロ以下の臭いがぷんぷんしますねぇ…………」

漣が無線越しに何やら呟き出す。それにつられて、曙が訊き返す。

曙「臭うって、一体何が臭うのよ?」

漣「いや、ですね、相手は6隻いるはずなのに零観(ゼロカン)の入電では2隻しか発見できてないんですよ。残りの4隻はどこにいるのでしょうか?」

陽炎には、漣が曙ではなくあたかも他の誰かに問い掛けているかのように聞こえた。

曙「ただ単によく見えなかっただけじゃないの?」

朧「もしかして、観測機に見つかりにくいように擬装をしてるんじゃないかな?」

駆逐艦娘がそれぞれの推理を披露しているところに能代が口を開いた。

能代「大丈夫、残りの4隻もきっと近くにいるはずよ。今観測機に探させているわ」

能代のその一言を聞いて、旗艦の言うことは絶対なのだと言わんばかりに駆逐艦娘達は一気に黙り込んだ。

トリップ間違えた

すいません>>1です
久しぶりに書き込んだらトリップをど忘れしてしまったので、これからは◆bws2QjWhyo0B
で書き込ませていただきます
ご了承下さい

能代「みんな!観測機から入電よ。前方に2隻の艦影を発見、今から2分後に接敵するわよ!」

全員の顔が強張る。演習で戦う相手は実戦とは違い同じ艦娘同士であり、轟沈の心配もない。とはいえ、演習であっても全力を尽くして戦うというのは艦娘同士の暗黙のルールであり、もし負ければ自らが所属する艦隊やそこの旗艦娘(フラッグシップ)が汚名を被ることとなる、ましてや鎮守府をまたいだ演習ならばそれが自らが仕える提督にまで及ぶこととなるのだ。鎮守府間の合同演習で負けた側の提督が無能のレッテルを貼られて他の鎮守府から見られることも少なくない。だからこそ、艦娘達にとっては演習だからと言って手を抜く訳にはいかないのである。

漣「うーむ、臭いますねぇ……ゲロ以下の臭いがぷんぷんしますねぇ…………」

漣が無線越しに何やら呟き出す。それにつられて、曙が訊き返す。

曙「臭うって、一体何が臭うのよ?」

漣「いや、ですね、相手は6隻いるはずなのに零観(ゼロカン)の入電では2隻しか発見できてないんですよ。残りの4隻はどこにいるのでしょうか?」

陽炎には、漣が曙ではなくあたかも他の誰かに問い掛けているかのように聞こえた。

曙「ただ単によく見えなかっただけじゃないの?」

朧「もしかして、観測機に見つかりにくいように擬装をしてるんじゃないかな?」

駆逐艦娘がそれぞれの推理を披露しているところに能代が口を開いた。

能代「大丈夫、残りの4隻もきっと近くにいるはずよ。今観測機に探させているわ」

能代のその一言を聞いて、旗艦の言うことは絶対なのだと言わんばかりに駆逐艦娘達は一気に黙り込んだ。

能代「砲雷撃戦、始めます。みんな、艦隊陣形よろしくね!」

朧「了解です」

曙「了解」

漣「ほいさっさー」

陽炎「えっと……り、了解!」

潮「は、はい!」

能代の呼びかけに駆逐艦娘達が次々と答える。

能代「打てー!」

能代が砲撃命令を出したその時、後方から何筋もの白い線が陽炎達を目掛けて伸びてきた。

潮「後方から魚雷来ています!」

能代「え!?面舵いっぱぁぁぁぁい!!」

能代が声を張り上げ回避行動のための指示を出すと今度は朧が叫ぶ。

朧「右舷に敵艦2隻発見!」

朧が叫ぶと同時に右舷と前方から空砲の爆ぜる音が響く。

漣「至近弾です!」

曙「缶に被弾、出力低下!」

次々と仲間から上がる被害報告、しかし左舷に回避行動をとるわけにもいかない。なぜなら、左舷には岩が突き出た浅瀬が広がっており、下手に突っ込めば座礁の危険があるからだ。この状況で座礁をしようものならたちまち敵の砲撃の餌食となる。

迫り来る魚雷と砲撃の雨の中で能代は自らの索敵の甘さを痛感しつつも、なぜ他の4隻を観測機や電探をもってしても発見できなかったのだろうかと疑問に思うのだった。

荒潮「敵艦6隻がこちらに向かって前進中でぇーす」

阿武隈「了解しました。そのまま適切な距離をたもちつつ敵を引き付けてください」

荒潮「了解しましたぁ」

満潮「こちらも敵艦隊を発見」

阿武隈「了解。それでは満潮ちゃん達は速度を落としつつ、欺瞞紙を展開してください」

満潮「了解」

朝潮「阿武隈さん、私たちもそろそろ……」

阿武隈「そうだね。それじゃあお願いね」

朝潮「はい!」

 阿武隈が能代チームの艦影を確認すると、朝潮はチャフを斉射する準備をした」

阿武隈「欺瞞紙斉射!」

 掛け声と同時に朝潮の12cm30連装噴進砲が火を噴いた。

阿武隈「ちゃんと偽装できるといいなぁ…」

朝潮「油断大敵というやつですね」

 先ほどのチャフは阿武隈と第8駆逐隊のお手製である。材料はアルミ箔と出所不明の火薬…………という装備としては少々心許ないものである。

阿武隈「もし、気づかれたとしてもその時は作戦を変えればいいだけだから………………朝潮ちゃん、偵察機!」

朝潮「っ……!」

 阿武隈がこちら側に近づいてくる偵察機に気づき、2人の間に緊張が走る。しかし、偵察機は彼女たちに気づいた様子もなくそのまま離れていく。

朝潮「気づかれていませんよね…………?」

阿武隈「多分…………?」

 若干自信なさげにこたえる阿武隈。それも無理はない、艦娘の装備の一つである偵察機は名前や形こそ第二次大戦時に日本で開発された水上偵察機に似ているが、その実態はミリ波レーダーとカメラを搭載する現代技術を詰め込んだ小型無人機である。そんな相手だからこそこちらの姿が視認されたかもしれないと阿武隈が不安になるのも当然のこと。

朝潮「行きしたね……」

阿武隈「欺瞞紙のお陰……かな?」

朝潮「あとはこの迷彩もですね」

 苦笑しながらつぶやく朝潮。実は演習開始地点につく前に、阿武隈たちは岩陰に隠れて囮役の荒潮と叢雲を除く全員に簡易の迷彩を施していた。偽装や服、そして顔などに灰色の絵の具を塗りたくったのである。頭からセメントを浴びたような酷い見た目になってしまったが、先ほどの偵察機の反応を見る限り隠蔽効果は抜群である。蛇足ではあるが、水性の絵の具を使用したので制服に塗った分は洗濯すれば落ちるようになっている。

もう更新しないのん?

荒潮「こちら、荒潮です」

阿武隈「どうしたの?」

荒潮「ごめんなさぁい、敵の射程内まで追いつかれちゃいましたぁ」

阿武隈「了解。こちらも敵を射程内に捉えつつあるので、戦闘に備えてください」

荒潮「了解でぇす」

阿武隈「満潮ちゃん、聞こえますか?」

満潮「はい、聞こえます」

阿武隈「荒潮ちゃんたちが敵の射程に入ったそうなので、できるだけ早く敵との戦闘に移れるように準備してください」

満潮「了解しました」

 満潮の無線を聞き終えた阿武隈は確認するように朝潮に問うた。

阿武隈「朝潮ちゃん、準備はいい?」

朝潮「はい、いつでも大丈夫です」

 朝潮の返事に阿武隈は確信を得たように頷くと、魚雷発射準備の号令をかけた。

阿武隈「焦っちゃだめ、ぎりぎりまで敵を引き付ける……」

 まるで自らに言い聞かせるように阿武隈はつぶやく。その刹那、敵艦隊が光ったのが見えた。

阿武隈「魚雷、発射!」

 魚雷が”しゅぽん”と音をたてて阿武隈、朝潮両名から一斉に発射される。すかさず阿武隈が無線で命令を入れる。

阿武隈「各艦砲撃準備!」

 阿武隈が命令するうちにも、白い線は敵の方角へとみるみる伸びていく。それらに気づいたのか敵艦隊はあわてて回避行動をとる、その瞬間阿武隈は次なる命令を下す。

阿武隈「撃てー!」

 命令が下された次の瞬間には空砲が爆ぜる音が響く。二方向からの砲撃にさらされる敵艦隊、そこに更に追い打ちをかけるように阿武隈たちも敵への砲撃を始める。三方向からの砲撃を受け、残りの一方向は浅瀬という逃げ場のない状況、まさに袋の鼠である。それでも隊列を乱さずに離脱を試みるあたりは流石、優等生能代が旗艦なだけはある。しかし、それも阿武隈にとっては既に予想済みの行動パターンである。

 阿武隈は砲撃をしつつ、荒潮組、満潮組に特定の方向に砲撃を集中するよう無線で指示を出す。阿武隈は能代の動きを先読みし、更に砲撃のよって彼女たちを特定の方向へとおびき出す戦法をとっているのだ。これも自身の友であり、良きライバルとして能代を知り尽くした阿武隈だからこそできる戦法である。そして、彼女は能代が優等生であるが故にどんな状況にも教科書通りの対応しかできないという欠点も知っていた。

 徐々に被弾を重ねていった能代チームは機関の損傷により速力を落とす者が増えていく。

潮「機関に被弾しましたぁ!」

 潮の今にも泣きそうな声が響く。

能代「速度は出そう?」

潮「すいません、これ以上出せません」

能代「しょうがない。みんな、速度を半速に落として」

 能代が指示を出した途端、意外なところから拒絶の声が上がる。

潮「いやです!」

 声の主は潮だった。泣きそうな声ではあるが勢いのある声だ。

潮「私に構わず皆さん逃げてください!」

能代「それは駄目よ。1人でも犠牲にするのは許されない。艦隊全員で脱出するわよ」

潮「それだと、みんなやられちゃいます!」

 なおも食い下がる潮。一見頼りなさげで、長いものには巻かれそうな雰囲気の彼女だが、意外にも頑固な性格のようだ。

能代「いいえ、それは許可できないわ。これは旗艦命令よ、絶対に従ってもらうわよ」

 その時だ、複数の方向から伸びる白い航跡、またもや魚雷だ。どうやら逃げ回っているうちに迂闊にも敵の魚雷が集中しやすいポイントに入ってしまったようだ。

能代「全艦出力最大、取り舵一杯!」

 能代の号令で綺麗な隊列を組んで魚雷を回避するはずだったが、

陽炎「え!?あっ!」

能代と潮のやり取りに気を取られたのか、陽炎がワンテンポ遅れて回避運動に入る。

能代「陽炎、避けて!」

 能代が叫んだ時には既に魚雷が陽炎に命中せんとしていた。

「危ない!」

 その時だった、陽炎と魚雷の間に黒い影が割って入る。その直後、「うう……」という呻き声が陽炎の耳に届いたのであった。

期待

まだ?

0512

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