注:アニメ設定
─346プロ・モバデュンヌの部屋─
飛鳥「…………」
晴「…………」
飛鳥「……ねぇ、プロデューサー。少し訊きたい事があるのだけど……いいかな?」
デュンヌ「? なーに?」
飛鳥「ボク達は、新しく入った仕事の説明の為に此処に呼ばれたんだよね?」
デュンヌ「ええ、そうよ」
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晴「それじゃあさ……これは一体なんなんだ? まさか、これが次の仕事の衣装だって言うんじゃないだろうな……?」
デュンヌ「???」キョトン
晴「なんだよ、その『何当然のこと聞いてるんだ』って顔は……」
飛鳥「……はあ。まさかボク達が、あの番組に出る事になるとはね……」
晴「冗談キッツいぜ、ほんと……」
デュンヌ「……そんなに嫌なの?」
飛鳥「……正直、気は進まないね。まあ、キミがやれと言うのなら、吝かでないとは思うけれど」
晴「オレは絶対に嫌だ。……何が悲しくて──……」
晴「──12にもなって、チャイルドスモックなんて着なくちゃいけねーんだよ……!」
デュンヌ「だってしょうがないじゃないの。それがあんた達の次の仕事──とときら学園の衣装なんだから」
晴「……いや、だからって……つーか、そもそもなんだってオレ達にこんな仕事を持ってきたんだよ」
デュンヌ「こんな仕事、とは失礼しちゃうわね。これでも結構な人気番組なのよ、これ」
飛鳥「……そうらしいね。ボク達の部署のアイドルの中にも、視聴者が結構いるようだし……」
飛鳥「しかし、正直この人選には疑問を抱かずにはいられないな。ボク達よりもよっぽどこの役に向いたアイドルなんて、幾らでもいるだろうに」
デュンヌ「え? そりゃ、私が見たいか……いや、色々と、総合的に判断した結果よ? うん」
晴「今、『私が見たいから』って言いかけただろ」
デュンヌ「私のログにはなにもないわ」
飛鳥「…………」
晴「…………」
デュンヌ「……やっぱり、乗り気でない?」
晴「当たり前だろ。もしもこんなの着てる姿を梨沙や橘に見られたら、何を言われるかわかったもんじゃないからな」
デュンヌ「あら、それに関しては心配いらないわよ? ……ほら、これ、番組の資料。出演者の欄を見てみなさい?」
晴「お? えーっと…………」
飛鳥「……追加レギュラー、結城晴、的場梨沙、橘ありす、村上巴。良かったじゃないか、晴。キミの憂いは、どうやら杞憂で終わりそうだよ?」
晴「ああ、そうみたいだな……って、よくない! 追加レギュラーってどういうことだ、追加レギュラーって!」
デュンヌ「???」キョトン
晴「その心底不思議そうな顔やめろ!」
飛鳥「まあ、見た通りの意味だろうね。どうやらボクは今回限りのゲストのようだけど、キミには次回以降も出番があるみたいだ」
晴「全っ然っうれしくねぇ……! ……ってか、飛鳥。何かお前……資料を見てから妙にテンション上がってないか?」
飛鳥「ん? ああ。どうやら今回のゲストには蘭子も来るみたいだからね」
飛鳥「彼女と歌以外の大きな仕事を一緒にするのはこれが初めてだから──少し、心が逸っているのかもしれない」
晴「ふうん……」
飛鳥「…………」
飛鳥「……ねえ、晴」
晴「……なんだよ」
飛鳥「……確かに、ボクもチャイルドスモックなんて出来ることなら着たくはないさ。だけど……例えどんな衣装を着ていたとしても、自分が自分だという事に変わりはない。そうだろう?」
晴「あ? ああ……」
飛鳥「これは以前蘭子から聞いた話だけれど……番組初回からのレギュラーである城ヶ崎莉嘉も、始まった当初はキミと同じように番組に対して強い不快感を抱いていたそうだ」
飛鳥「『カリスマギャルであるアタシが、何でこんな子供っぽい衣装を着なくちゃいけないんだ』……ってね」
飛鳥「だけど彼女は、小道具のバッグをギャルらしくデコレーションするという工夫により、スモックを着ながらも自分らしさを演出できるという事を証明してみせたらしいよ?」
晴「自分らしさを演出……」
デュンヌ「……晴ちゃん。あんたは一体、どういうアイドルになりたいんだっけ?」
晴「…………」
晴「……そりゃ、『カッコイイアイドル』だけど……」
デュンヌ「でしょ? だから、こういうカッコイイからかけ離れた衣装を着ることに抵抗を覚えているのでしょうけど……」
デュンヌ「でも、こうとは考えられない? 『本当にカッコイイアイドルは、例えどんな衣装を着ていてもそのカッコよさが霞むことはない』……ってね」
晴「…………」
デュンヌ「……折角だから目指しましょうよ。そういう、『本当にカッコイイアイドル』をさ?」
晴「…………」
晴「……そんな調子のいい事言って、ただオレにコレを着せたいだけなんだろ、アンタ」
デュンヌ「ギクッ」
晴「はぁ…………ま、アンタの言うことにも一理あるといえばあるよな」
デュンヌ「! それじゃあ……!」
晴「……仕方ねえ、引き受けてやんよ。……アンタの顔を立てるためにもな」
デュンヌ「っ……ありがとう、晴ちゃん! お礼にハグしてあげる! はぐーっ!」
晴「なっ……ちょ、やめろ! 馬鹿プロデューサー! おい飛鳥! 見てないで早く助け……」
飛鳥「……それじゃ、後は二人でごゆっくり」
晴「待っ……! 何で逃げようとしてるんだよ、おい! 飛鳥────っ!!」
…………
………
その後。
当初はゲストとして一回限りの出演になる筈だった飛鳥であったが、
同じ回でゲストを務めた蘭子と共にその独特な感性を以って視聴者の悩みをバッサリ切り捨てる様が番組ディレクターの琴線に触れ、
以降の回でも度々呼ばれる準レギュラー的な立場となり──最終的には、『闇黒を照らす比翼-DARK ILLUMINATE-』という専用コーナーまで受け持つ事になった。
そして、一方の晴はというと。
同じ回でレギュラー入りしたありす共々、他のレギュラーやゲスト、お悩み相談にかこつけた視聴者達にいじられるという、
中々美味しいポジションを確立する事ができたものの──……それは、彼女が目指した『カッコイイアイドル』の姿とは完全にかけ離れたものであったとさ。
晴「ああもう……っ! やっぱりこんな仕事、引き受けるんじゃなかった────っ!」
おわり
アニメのとときら回で晴ちんが動く姿が見ることができるなどと、
その気になっていた俺の姿はお笑いだった
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