兎角「不安」 (96)

悪魔のリドル 第10話直後辺りの妄想です。

百合・エロ描写ありますのでご注意ください。

地の文章です。

以前書かせて頂きましたSSの続きみたいなものになります。

兎角「初恋」
兎角「初恋」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1408/14080/1408012659.html)

ちょっと暗い話なのでイチャイチャはあんまりないです。

拙い文章ですがよろしくお願いします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1416826366

――女王蜂とは一体なんなんだ。

兎角が最上階でそう尋ねた時、晴は明確には答えなかった。

あれ以来、兎角と晴の関係は少しぎこちなくて、気にしないように努めてもどこか不自然になっていくのをお互いに感じていた。




兎角「晴、大浴場へ行くか?」

晴「んー……今日はいいです」

理由は特にないのだろうと、兎角にはそう思えた。

やっと気兼ねせずに入れるようになったのに。

少し惜しみながら、以前浴場ではしゃいでいた晴を思い出す。


兎角「そうか」

晴「兎角さん行ってきていいよ」

兎角「いや、お前が行かないなら別に用はない」

晴を想っての提案だったから兎角自身はどうでも良かった。

ただ、晴が喜ぶ事を選びたいだけだった。

晴「……もう襲ってくる人は誰もいないから晴のそばにいなくても大丈夫なんだよ」

わずかに目を伏せる晴。


今更変な気の遣い方をするんだなと思いながら、兎角はわざと口の端を上げて笑って見せた。

兎角「いない方がいいか?」

晴「そういう意味じゃ――!」

兎角「冗談だ。まぁ、たまには別行動したっていいよな」

慌てる晴を遮り、兎角は彼女の頭をそっと撫でて背を向ける。

そして着替えを準備すると、部屋の外へと向かった。

晴「兎角さん……」

不安そうな声に後ろ髪を引かれる思いだったが、今の晴にかける言葉も見つからなくて、兎角は聞こえないふりをした。

ドアノブに手をかけて、2秒程立ち止まってゆっくりと扉を開く。

外の空気が流れ込んで兎角の肺が満たされた時、部屋の中が息苦しかった事に、ようやく気が付いた。


-------------


兎角が大浴場から1号室に戻ろうとする途中、7号室から出てくる鳰と鉢合わせた。

鳰「おんやぁ?兎角さんじゃないっスか」

兎角の姿を見つけ、外面だけの愛想を振りまく鳰。

それに対して兎角は嫌悪感丸出しで睨みつけた。

相変わらず嫌な笑い方をするやつだ。

そう思いながらも鳰の前で立ち止まったのは単なる気まぐれだった。

鳰「なんでそんなめんどくさそうな顔をするっスか。失礼っス」


兎角「自覚はないのか?」

鳰「感じ悪いっスね」

おどけて見せても、人を食ったような鳰のその態度が兎角には不愉快だった。

表情が豊かでも、考えている事はいつも同じなのだろう。

いつでも何かを企んで、そのための行動と言動なのだと、そんな風に思えた。

兎角「静かになったな」

各部屋の扉と、温かみのない廊下を見渡す兎角。


心なしか照明も前より薄暗くなったような気がする。

点呼なんて、もう必要ない。

鳰「みんないなくなったっスからね……」

さみしそうな声を出す鳰が意外で、兎角は目を細めた。

なにを考えているにしろ、退場した者や今の状況を憂うなどと、裁定者である鳰が言えたことではない。

鳰「晴とは仲良くしてるんスね」

唐突に表情を変えて鳰はにやりと笑った。


兎角「……なんのことだ」

鳰「またまたぁ。見れば分かるっスよ。ラブラブじゃないっスか」

とぼけてみても、やはり鳰には通じなかった。

雰囲気を見て察するというよりは、何処かから覗いているんじゃないかと勘繰った。

兎角「趣味悪いぞ」

鳰「今更っスか?」

開き直って笑う鳰にはため息しか出てこない。

どこで見られているか分かったものではない。


兎角「そうだったな」

付き合いは短いが、鳰の性格の悪さを兎角も知っていた。

鳰「ウチとも仲良くしてみるっスか?」

ずいっと正面から距離を詰めて来る鳰。

下からのぞき込んでくるその目の奥には、淀んだ光が深く漂っていた。

殺意がないとはいえ、眼前まで詰め寄られたことに油断を自覚する。

兎角「は?バカか」

動揺を見せないように低く呟くと、兎角は一歩下がって鳰から距離を取った。


鳰「晴のこと、信用できるんスか?」

カチンとくるのを感じた。

兎角「……殺されたいのか?」

腰に仕込んだプッシュダガーに手を掛ける。

脅しではなく、場合によってはここで決着をつけてもいいと思った。

鳰「怖い顔しないでくださいよー。知りたい事があるんじゃないんスか?」

鳰が怯えたような仕草を見せるが、芝居がかったその態度が余計腹立たしい。

そんな安っぽい挑発にうんざりして兎角はダガーから手を離した。

兎角「バカバカしい。お前に聞かなくても晴に聞けばいい話だ」


鳰「答えてくれないならどうしようもないっスよ」

兎角「うるさい」

しつこい鳰を無視して背を向ける。

足を向けたのは1号室ではなく、屋上の方向だった。

苛々したまま部屋には戻りたくない。

鳰「ま、兎角さんがそういう人だって分かってますけどね」

何かを企むような含み笑いに兎角は顔をしかめ、振り返ることもなくその場を立ち去った。


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兎角「本当にバカバカしいな……」

寮の屋上で空を仰ぐ。

風呂上がりの火照った体に夜風が気持ち良かった。

周りに惑わされても仕方が無い。

次の指示があるまでは黙って待っているしかない。

その先のことなんてそれから考えればいいだけだ。

兎角は柵に背中を預けて座り込むと、目を伏せて思考を閉じた。


-------------


晴「兎角さん、どこ行ってたの?」

兎角が部屋に入ると、晴が心配そうに駆け寄って来た。

日向の匂いに混じって風呂上がりの温かさがふわりと流れてくる。

兎角「少し風に当たってた」

廊下の冷たさと違い、ここには人の温もりがある。

晴「少しって……2時間も?」

時間なんて意識していなかったから、時計を見て兎角自身も驚いた。


考え事もしていたが、ほとんどはぼーっとしていただけだった。

晴は兎角の手を取り、眉をひそめた。

晴「手が冷たいよ。お風呂の後に外にいたの?」

晴は兎角を温めるように背中に手を回して、首に鼻先を押し当てた。

兎角も晴の頭に頬を寄せ、腰をぎゅっと抱きしめる。

兎角「私はお前が好きだ」

唐突な言葉に、晴が驚いたように目を見開いて兎角の顔を覗き込んだ。

そしてすぐにまた身を寄せる。


晴「うん……知ってるよ。晴も兎角さんが好き」

耳元で囁く晴の声が心地よかった。

兎角「晴、キスしたい」

晴の肩がぴくりと揺れたのを感じた。

もぞもぞと兎角の肩口に顔をうずめると、晴は恥ずかしそうに息を吐いた。

晴「いいよ」

返事と同時に晴が顔を上げ、兎角はそれについて顔を近付ける。


お互いに慣れた動きで唇が重なった。

動作には慣れてきても心はいつも追いつかなくて、胸が高鳴るのは抑えられなかった。

その度に晴を好きなことを自覚する。

もっと深く結びつきたくて晴の手に指を絡めた。

晴「んっ……」

兎角が舌を差し込むと晴の手に力が入り、舌先を返してきた。

晴「はぁ……っ、んっ、ん……」


唾液が混ざり合う。

唇と舌を吸う音が脳に響き、吐息が大きくなっていく。

兎角「は、る……っ」

頭がくらくらしてきた。

晴の服の裾から手を差し込み、腰や背中をなでる。

晴「……ベッド、行く……?」

晴が熱くなった息を吐いて兎角の耳元で囁いた。

犬の散歩に行ってきますので、続きは明日にさせて頂きたいと思います。

余談ですが、土曜日の上映会が楽しかったです。今日の朝、東京から戻ってまいりました。

第13話は第7巻に収録、黒組PARTYのイベントの映像が167分入っているそうなので、ぜひとも見て頂きたいなと思います。

リドルのアニメが終わってしまうのは寂しいですが、まだまだSSで発散していきたいと思います。

それでは、今日はお休みなさい。

ただいま戻りました。

なんか仕事から帰ったら、犬が増えてて何事かと思いました。
昔里子に出した犬なんですけど、飼い主の体調不良とかで飼えなくなったらしいんですよ。
めっちゃ大事に育ててたみたいで、爪も毛もきれいにしてもらってて、性格も穏やかないい子になってました。
今日の散歩は3匹連れて行ってこようと思います。

私事はさておき、SS続けますね。


兎角「ここでいい」

晴の体を壁に押し付けて首筋にキスを繰り返す。

そしてその一つを強く吸った。

晴「やっ……、跡、見えちゃう……」

今更、誰が見るって言うんだ。

もう黒組には鳰くらいしかいない。

肌に残る跡を舌で撫でる。


兎角「晴……?」

ふと顔を上げると、泣きそうな表情をしている晴の姿が写った。

兎角「どうしてそんな顔をするんだ」

そう聞くと、晴は不思議そうに首をかしげた。

自覚がないんだろうか。

兎角「なにか……」

――思うことがあるのか?


兎角「……体調でも悪いのか」

口にしようとした言葉を、なぜか言い出せずに飲み込んでしまった。

晴「そんなことは……」

否定しようとする姿すらもどこか弱々しくて、兎角は晴の頬に優しく口付けると、乱してしまった彼女の服を整えた。

兎角「気付いていない疲れがあるのかもしれない。今日は早く休もう」

晴の手を引いてベッドに連れて行くと、布団に入るよう促した。

晴「晴は、兎角さんが大好きだよ」

確認するような口調が独り言みたいだった。


誰に言い聞かせているのかを考えて、すぐやめた。

兎角「分かってるよ。私も同じだ」

そう言えば晴は安心するだろうか。

想いに間違いはなかったが、今は溢れるような気持ちにはなれなかった。

少し冷めた感覚。

そんな気分を言葉で誤魔化した気がする。

もう、晴を護る必要はない。

きっと今までの張り詰めた感覚が解けた反動だろうと決め付けて、兎角も自分のベッドに入った。


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晴「ひゃぁっ!」

本校舎の階段を降りている最中、目の前を歩く晴が甲高い悲鳴を上げた。

足を踏み外しかけた晴の腕を咄嗟につかんでことなきを得る。

兎角「大丈夫か?」

晴「うん、ありがとう、兎角さん」

ほっとした様子で振り返る晴の表情にどきりとする。

兎角「あまりぼーっとするな。怪我をするぞ」


照れ隠しに低めに呟くと、晴はそれも分かっているみたいに笑った。

鳰「兎角さんと晴じゃないっスか」

不意に階段の上から聞こえた声に、兎角はあからさまに不機嫌な態度で顔を上げた。

鳰「兎角さん無愛想っスね」

兎角は階段を降りてくる鳰に背を向けて歩き出すが、鳰はわざわざ追いついて歩幅を合わせてきた。

兎角「お前に振りまく愛想なんてない」

鳰「誰に対しても愛想ないじゃないっスか」


どんなに兎角が顔をしかめて見せても鳰は全く気にしていないようだった。

晴「もう、また喧嘩して……」

間に入ってくる晴には不機嫌な顔を見せたくなくて、兎角は顔を逸らした。

兎角「元々仲良くしていたことなんてないだろ」

鳰「じゃあこれから仲良くするってのはー?」

階段を降り切ったところで、鳰が肩を寄せてきた。

兎角が嫌がることを分かった上でやっていることも知っている。


鳰「ほら」

鳰は尖った歯を見せて笑うと、兎角の腰に手を回し、晴から見えないように服の裾に手を差し込んだ。

兎角「っ、知るか!」

兎角は鳰の腕を引き剥がして距離を取った。

晴「どうしたの?」

晴は兎角の態度に怪訝な表情を向けている。

動揺し過ぎたことを自覚して、浅く息を吐いて気分を落ち着かせる。

兎角「なんでもない」

晴を不安にはさせたくない。

兎角は晴に気付かれないよう鳰を視線で牽制すると、彼女はいたずらをした子供のように肩をすくめて見せた。


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放課後に一人で廊下を歩いていると鳰を見つけた。

どうせ威嚇したって流されてしまうだけだろう。

兎角はため息をついて鳰に声をかけた。

兎角「晴の前で変なことをするな。どういうつもりだ」

兎角は苛立ちを隠しもせずにぶつけるが、鳰はにこにこと愛想のいい笑顔を向けてきた。

鳰「んー?ウチは兎角さんと仲良くしたいだけっスよ」

当然そんな笑顔に誤魔化されるはずもなく、兎角は少しも表情を緩めない。


兎角「お前と仲良くする気なんてない」

鳰「ふーーん……」

鳰は意味ありげに鼻を鳴らした。

その目には妙な威圧感がある。

とにかく鳰の態度が不愉快で、文句を言うつもりで兎角は前に一歩踏み出す。

兎角「なん――」


口を開いた瞬間、わずかに鳰の輪郭がブレた気がした。

目眩だろうかと思った時には鳰の顔が目の前に迫っていた。

兎角「っ!?いつの間に……」

ほぼ密着するほどの距離に驚愕して体が硬直する。

昨日間合いを詰められたのは油断だと分かっていたが、今回はそういったものではなかった。

距離感を誤魔化されたような感覚だった。

鳰「気、抜き過ぎじゃないっスか?」


鳰は兎角の腰に手を回し、舌で首筋をなぞった。

兎角「っ……!」

生暖かい感触に体が跳ねる。

鳰「あはっ。意外に感度がいいんスね?」

耳元で囁かれて頭にカッと血が上るのを感じた。

兎角「お前っ――!!」

晴「兎角さん?」

名前を呼ばれて振り返ると、やや離れた場所に晴がいた。


兎角「晴!?」

鳰「あいたっ」

咄嗟に鳰の肩を突き飛ばす。

晴「どうしたの……?」

ゆっくりと歩いてくる晴の表情には、不信と不安がはっきりと見て取れた。

どう言おうか考えて、ただなんでもないと伝える事しか思いつかなかった。

仕方なくそのままを口にしようと軽く息を吸うが、

鳰「ひどいっスよ、兎角さん。せっかく転びそうなところ助けてくれたのに突き飛ばすなんてー」

先に鳰が口を開いた。


兎角「なっ……」

兎角は胡散臭い説明をする鳰に絶句した。

余計に不信感を煽るんじゃないかと晴の顔色を窺う。

晴「そうなんだ。怪我、しなかった?」

兎角の心配を余所に、晴はほっとしたような顔をして鳰の側に寄っていた。

そんな風にいつも誰かと仲良くしようとばかり考えているから、今まで兎角は苦労をしてきた。


今回はそんな晴の人懐っこさに助けられたようだ。

鳰「大丈夫っスよ。助かったっス、兎角さん」

鳰は晴には見えないように口元を歪めてにやりと笑った。

本当は睨み付けてやりたかったが、今に限ってはやり過ごしたくて兎角は適当に頷いて見せる。

兎角「あぁ……」

晴に嘘をついた事が心苦しい。

そんな痛みを隠すために兎角はさっさと二人に背を向けてしまった。


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晴「ねぇ兎角さん」

バスルームから出てきた晴が、機嫌良さげに声をかけてきた。

兎角「ん?」

ソファで携帯をいじっていた兎角は視線を上げた。

濡れた髪の毛と上気した頬に一瞬目を奪われる。

晴「なに?」

兎角「い、いや。私に用か?」


晴「明日、鳰と放課後に出掛けてこようと思うんだけどいいかな?」

兎角「大丈夫なのか?」

暗殺者と二人きりで外出なんて、よくそんな無邪気になれるものだなと半ば呆れるが、それは今に始まったことではない。

晴「鳰は裁定者だから大丈夫だよ。」

兎角「そうか……」

晴「心配なら一緒に来る?」

心配と言えば心配だったが、兎角が参加することで雰囲気を悪くしてしまうことは目に見えていた。


せっかく楽しそうにしている晴の気持ちに水を差すのはやはり悪いと思う。

兎角「いや。ずっと私と一緒だったんだ。たまには他の人間と交流があってもいいんじゃないか」

狙われている時ですら友達を作りたがっていたのだから、もう晴の自由にしたっていいはずだった。

誰も狙ってこないのに口うるさく注意するような権利はもはやない。

晴「そっか……」

残念そうに目を伏せる様子が少し嬉しい。


兎角「ただし、ひとけのない所には絶対に行くなよ。あと早く帰ってこい」

口元を緩めて笑いかけてやると、晴もそれに返すように笑った。

晴「うん」

返事をする晴の表情に不安はなかった。

晴が楽しんでくれたらそれでいい。


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一人で部屋にいる事なんて滅多にないものだから、妙に居心地が悪くて兎角は外で体を動かしていた。

護衛が必要ないとしても、生まれてこの方暗殺者になるための体作りばかりしていたせいで、自然とこうなってしまう。

日も落ちかけた頃、寮に戻ると玄関先で鳰に会った。

兎角「帰ってきていたのか」

近くに晴がいると思って辺りに視線を配るが、彼女の姿は見当たらなかった。

鳰「晴が心配っスか?」

兎角「当たり前だ。お前と一緒だったんだからな」

鳰「ほんと失礼っス」


拗ねたような顔を見せる鳰の様子は、いつもの裁定者の物ではなくて、本当に晴の友人と思える表情だった。

やはり晴が人との付き合いを広げていく事は間違いではないと思う。

兎角「晴は?」

鳰「今頃部屋にいるんじゃないスかね。迎えてあげなくてよかったんスか?」

兎角「せっかく自由に動けるんだ。晴にも一人になる時間があってもいいだろ」

晴は好奇心旺盛なタイプなのに、護衛のためとはいえずっと縛り付けていた自覚もあって、後ろめたく思う所もあった。

黒組以外を巻き込んではならないルールのおかげで、全ての時間を一緒に過ごしてきたわけではなかったが、それでもたくさん無理をさせた気がする。


鳰「兎角さんも一人になりたいんじゃないんスか?」

からかうような言い方だった。

晴に対する態度とだいぶ物言いが違うが、それも仕方のない事。

兎角がそういう態度で接しているのだから今更気にはしないし、むしろそうであってくれた方がよほど楽に思う。

兎角「……どうだろうな」

確かに今は晴と一緒にいることが息苦しいと思う時がある。


晴の隠し事のせいだとは分かっているが、それを気にしてしまう自分の事も嫌だった。

鳰「晴が気にしてましたよー?兎角さん、ちゃんと晴との時間大事にしてるっスか?」

兎角「お前が言うな。余計な事をしてるのはお前だろう」

昨日の鳰の行動を思い出すと今でも腹が立つ。

面白がっているのだろうし馬鹿にしてもいるのだろう。

兎角「なにを企んでる?」

鳰「そんなの言うわけがないじゃないっスか~」


今の鳰の笑い方は裁定者のものだった。

人を試すような態度。

冷たく吹く風が、鳰に触れたところから腐っていきそうだった。

兎角「だろうな」

鳰「もっと晴に構ってあげてくださいよー?」

鳰が少しでも間合いを詰めようとするなら引き倒してやるつもりで兎角は意識を集中させた。

下校時刻よりだいぶ遅い時間のせいか周りには誰もいない。

多少の騒ぎは問題にならないだろう。


兎角「言われるまでもない」

鳰「そんな余裕ぶってていいのかなー?」

兎角「どういう意味だ」

兎角が問うと、鳰は目を細めて冷笑を浮かべた。

自分の指先を唇に当て、ゆっくりとなぞる。

鳰「今日、ウチと晴がなにしてたか——」

兎角「お前!!」

腰に仕込んだプッシュダガーを抜き出して間合いを詰める。


鳰「うわわっ!!」

そのまま胸に向けて突くと、鳰は兎角の手を払い、一歩身を引いてそれをかわした。

すれ違う瞬間に強い香のような匂いが鼻を突く。

本当に刺すつもりだったわけではなかったが意外な瞬発力に兎角は目を見開いた。

鳰「じょ、冗談っス!! 買い物行ってクレープ食べただけっスよ!!ほんとっス!!」

兎角がダガーを構えると、鳰は慌てて両手を上げてまくし立てた。

嘘はついていないようだったが、態度が気に入らない。

兎角「悪趣味だ!バカ!!」

兎角は鳰に怒鳴りつけ、ダガーをしまうと急ぎ足で寮に入った。


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部屋の前まで戻って息を整えると、兎角は自然を意識して扉を開いた。

晴「あ、兎角さん」

兎角「晴、おかえり」

自分の机で荷物を整理する晴に、まるで今晴が帰ってきた事を知ったかのような態度で挨拶をする。

晴「ただいま。どこいってたの?」

兎角「ちょっと運動してた。特にすることなかったし」

晴「やっぱり一緒に来れば良かったんじゃない?」

兎角「かもな」


機嫌の良さそうな晴の笑顔にほっとするが、兎角のそばまで寄ってきた時に、何かに気がついたようにぴくりと視線が動いた。

晴「ねぇ……一人で外に行ってたの?」

兎角「あぁ。そうだけど」

晴「……じゃあ、なんで鳰の匂いがするの?」

自分でも表情が固まったのが分かった。

やましい事なんてない。

しかし昨日の事を思うと、すっきりしない部分があるせいで、無意識に鳰の話は避けようとしていた。


兎角「さっき外で会ったんだ」

頭を軽く掻くと、手首の辺りからさっき嗅いだ香のような匂いが鼻腔に届いた。

――やられた。

触られた時に匂いをつけられたらしい。

それでも平静を装うが晴は怪訝な顔をした。

晴「匂いが移るくらい近くにいたの?」

兎角「い、一瞬だけだ」


どんどん詰め寄ってくる晴に兎角は少し後ずさる。

晴「昨日も鳰に抱きつかれてたよね」

やはり見られていた。

視線が泳ぎそうになるのを堪えて兎角は晴をまっすぐ見つめ返す。

兎角「あれはあいつが勝手に――」

晴「じゃあなんで隠したの?」

兎角「……お前、まさか疑ってるのか?」

思わず口にした言葉は、疑ってくる晴の態度よりよほど辛辣だった気がする。


晴「そういうわけじゃっ……」

はっとしたように身を引き、晴は押し黙った。

自己嫌悪に陥る晴を見ているとひどく胸が痛んだ。

兎角「悪い。私も不注意だった。あいつとはなにもない。少し取っ組み合いになっただけだ」

晴の手を握り、体を引き寄せる。

しっかりと抱きとめると、晴も兎角の背中に手を回した。


晴「兎角さん、ちゃんと晴が見えてるよね……?」

声を震わせる晴が何を言いたいのか、兎角には分からなかった。

何を伝えれば晴の不安が消えるのかも分からない。

兎角「当たり前だ。お前を護るって決めた日からお前しか見てない」

晴「でもそれは晴の……」

何かを言いかけて黙り込む。

晴が肩に顔を押し付けて来るのが分かった。


晴「……ごめんね」

晴は少し明るい声で呟くと兎角から体を離した。

晴「少し考え過ぎたかも。ありがとう、兎角さん」

兎角の頬に軽く口付けるといつもの笑顔を向けてきた。

無理があることは分かっていたが、それ以上干渉することも出来ず、兎角には晴の頭を撫でることしか出来ない。

無理矢理距離を縮めようとしても、霧がかかったみたいな晴の心に辿り着けるはずもなかった。


-------------


ベッドに入って数分ほど経つと、晴が起き上がる気配を感じた。

そのまま兎角のベッドに腰掛けて、顔を覗き込んで来たのが薄闇の中で分かった。

晴「起きてる?」

優しい声なのにはっきりと強く兎角の脳に響いてくる。

闇に溶け込みそうな晴の影がなぜか不気味に思えて返事が遅れた。

兎角「……どうした?」


動揺を悟られないように声の高さに気を遣う。

いつもより日向の匂いが薄いことに気付いて晴が心配になった。

枕元の間接照明を点け、身を起こそうとして驚きに息が止まる。

晴は返事もせず、いきなり兎角にキスをした。

息をつく間もなく晴の舌が唇を撫でる。

促されるままに兎角は口を開いて舌を差し出した。

兎角「ふ…っ、んんっ…!んくっ…」


唐突に欲に任せた口付けを始め、兎角の口内に晴からの唾液が流れ込む。

晴の興奮した息遣いに反応して、兎角が彼女の胸に手を添えた。

服を脱がそうとするその手を晴が掴んで、そのままベッドに押し付ける。

晴「今度は、晴の番だよ……」

そう静かに囁いて、晴は兎角の上にのしかかり、シャツの裾に手を入れてきた。

首元に唇を寄せ、乱れた息と舌の這う音が兎角の耳に届く。

兎角「んくっ…。ぁっ!」


唐突に欲に任せた口付けを始め、兎角の口内に晴からの唾液が流れ込む。

晴の興奮した息遣いに反応して、兎角が彼女の胸に手を添えた。

服を脱がそうとするその手を晴が掴んで、そのままベッドに押し付ける。

晴「今度は、晴の番だよ……」

そう静かに囁いて、晴は兎角の上にのしかかり、シャツの裾に手を入れてきた。

首元に唇を寄せ、乱れた息と舌の這う音が兎角の耳に届く。

犬の散歩に行ってきます。

今日中に終わらせる予定ですのでもうしばらくよろしくお願いします。

戻りました。

前に書いた兎晴とは繋げてあります。それ以外は特に繋げていません。
あとアニメと原作の設定と時系列はできるだけそのままで妄想しております。


兎角「んくっ…。ぁっ!」

首への刺激が腰と背中に響いて、全身が震える。

晴「兎角さんのこんな声初めて聞いた……」

兎角「ばっ――!」

晴「もっと聞きたい」

晴は兎角のシャツを捲り上げて胸に吸い付いた。

兎角「あっ、ぅくっ……!!」


晴の舌が胸の先を撫で、時々歯を立てて刺激を与えてくる。

晴「気持ちいいの?」

兎角「……っ」

恥ずかしさで答える事が出来ないでいると、舌で先を強く押された。

声を抑えることは出来ても体が跳ねるのは耐えられなかった。

晴「気持ちいいんだ。じゃあ、こっちも……」

晴は下半身に手を掛けると、兎角の着ている物を素早く剥ぎ取ってしまった。


さらに晴自身も服を脱ぎ、お互いに何も纏うもののない状態になる。

晴「すごい、兎角さん……」

兎角「バカっ、見るな!」

晴は兎角の中心をじっと見つめ、穴の周りを楽しむように撫でた。

兎角「んっ……!」

晴「奥からいっぱい出てくる……。」

晴は口を兎角の股に寄せ、その部分を丁寧に舐めた。


兎角「ふぁっ……ん!」

ぬるぬるとした生暖かい感触に腰が自然と動いてしまう。

そこへの愛撫が終わると、晴は顔を上げて、兎角に深く口付けた。

それに返すと舌にぬるりとした液体を塗り付けられた。

兎角「――っ!?」

それがなんなのかすぐに気付いて晴の体を押し戻す。

晴はそんな兎角の反応を楽しむように目を細めた。


晴「気付いた?兎角さんのだよ」

口にたまったそれを吐き出そうとするが、すぐさま晴が深く口付けてきて逃げられない。

混ざり合って溢れた二人の唾液が唇の端から流れていく。

兎角「んぐっ……」

喉に詰まる唾液と一緒に、結局は自分の体液まで飲み込んでしまった。

それを確認した晴はとても満足そうに笑うと、兎角を解放した。

兎角「や、やめろって……!」


気持ち悪さに口元を拭い晴を睨むが、彼女が気にする様子はない。

むしろさらに妖艶に笑った気がした。

晴「じゃあ……」

晴は兎角から離れ、身を起こすと自分の中心に指を当てた。

晴「んっ……」

くちゅくちゅと音を立てて晴自身の中をかき回す。

晴が自分を犯すその姿から、兎角は目を離せずにいた。


指を感じる表情、刺激にぴくんと震える肩、揺れる谷間。

晴「あっ……はぁっ……んっ、あ……ぅ」

音を立てるその部分は彼女の手の影に隠れてしまっている。

それを見たくて、兎角が手を伸ばそうとすると晴が今まで使っていた手を差し出してきた。

目の前に迫ってきた手には、付着したばかりの晴の体液が光っている。

晴「こっちは舐める?」

目を細める晴の、色気の満ちた表情に胸が高鳴る。


引き寄せられるように身を起こし、指先を控えめに舐めた。

晴「ぁっ……」

ぴくんっと晴の手が揺れた。

兎角「気持ちいいのか?」

晴「うん……気持ちいい」

兎角はこくりと喉を鳴らすと、晴の手を取り、舌を這わせた。

手のひらまで流れた晴の体液を舐めとるだけでなく、その手に情を込めて舐め回す。


指を吸って、甘噛みをして、手のひらにキスをしていると、時折晴の体がぴくりと揺れた。

晴「兎角さん、舐め方やらしい……」

晴は掴まれた手を引くと、指を兎角の中心にあてた。

晴からキスされて、押さえ込まれるまま身を倒し、晴の顔を見上げる。

兎角は体が強張るのを感じてそっと息を吐いた。

晴「緊張してる?」

兎角「似合わないだろうけどな」


晴「そういう兎角さんが見られるの嬉しいよ」

優しく笑って晴は兎角にキスを落とすと、ゆっくりと指を進めた。

兎角「っ……」

声が出そうになるのを抑え、下半身の違和感にじっと耐える。

晴「痛い?」

兎角「いや……」

痛みが全くないわけではなかったが、耐えられないほどではない。


何かが自分の中に入って来るのは初めてでも、行為自体は初めてではないから勝手は分かっている。

兎角「晴がやりたいようにしてくれて構わないから……」

晴の首に両腕を回して、ぎゅっと引き寄せる。

肌が触れ合って、普段抱き合う時よりずっと気持ちが落ち着いた。

体温、息遣い、匂い、全てが愛しい。

晴「兎角は……」

ぽそりと小さく呟く声を聞いて、その続きを待っていたがそれより早く晴の指が動いた。


兎角「んぅっ!」

喉の奥から声が漏れる。

動き始めた指が兎角の中を刺激した。

鈍い痛みと、くすぐったいような甘い感覚。

晴「兎角さんの中、熱い……」

晴の指が肉壁を撫で回しているのが分かる。

兎角「ぅっ、ん……っ!は……ぁっ!」

今までに感じた事のない異様な感覚が全身を駆け巡る。


どう耐えていいのか分からなくて、晴の手を握ると、彼女は嬉しそうに笑った。

一度深く口付け、晴は兎角の鎖骨や胸を吸って跡を残した。

兎角「あっ、ぅっ!」

急に指の動きが激しくなって、浅い部分を小刻みに撫で始めた。

晴「兎角さん、音聞こえる?」

溢れる体液を使って、兎角に聞こえるようにわざと音を立てている。

ひどい性格だと思う。

しかしそれすらもきっと兎角の感度を高めている。

晴「今、中が締まったよ。興奮してる?」


楽しそうに兎角の反応を見る晴。

そんな態度が不愉快で、強く晴を睨んだが少しも通用する気配はない。

兎角「そっ……!そうい、うの……んっ、やめ……あぁっ!」

急に強く差し込まれて体がびくんっと大きく跳ねる。

晴「これ好きなの?」

晴が指を動かすとまた勝手に体が跳ねた。

兎角「んくっ!あっ!ぅう……っ、あっ……く!!」


同じところをずっと擦られて頭が痺れて行く。

耐えられなくなって身をよじるが、晴は逃がしてはくれなかった。

兎角「ふ……んんっ!ぅあっ!!」

晴「ねぇ、兎角さん、気持ちいい?」

興奮気味に息を乱して晴が聞いてくる。

頭の中は答えられるほどの思考と言えるものはなにもなくて、ただただ晴から与えられる刺激で満たされていた。

兎角「は……っる……!!」


なのに、名前を呼んで、晴に抱きしめられても、離れた場所にいるように錯覚していた。

慣れない感覚の中で冷静に考えることもできず、兎角は晴を求め続ける。

キスをして、舌を絡ませて、唾液を飲み込む事も忘れてただ貪った。

兎角「ふっ……く、ンっ、……んぅっ」

もっと深く結び付きたくて、晴を強く抱きしめる。

晴の暖かさと日向の匂いを感じているのにそれでもまだ何かが足りない。

晴「はぁ……っ、中、ビクビクしてる。もっと激しくするね……」

晴の体が離れ、指がさらに深い所へと入り込んだ。


両脚を大きく広げられ、全てを見られているような羞恥心に体が反応していた。

兎角「っ!あっ!はぅ……っ!!ンんっ!!」

自分でもこんな声が出ると思っていなかったくらいの嬌声を上げ、晴の行為を全身で感じていた。

気持ちいい。

頭がおかしくなりそうなくらい。

もう晴のことしか考えられなかった。

いや――出会ってからずっと晴のことしか考えていなかった気がする。

初めての行為の時、夢中で晴を抱いて、晴も自分に夢中になって愛し合った。

今は――。


兎角は晴の様子を見て、眉をひそめた。

今は、晴は何か別のことを考えている。

それでも体は快楽に満たされていて、晴の指に翻弄されていた。

兎角「はる……っ!あっ!あっ!んっ!」

晴「すごく締まってきた……。イキそうなの……?」

指の動きが早くなり、奥にぐりぐりと押し当てられているのが分かった。

下腹部の奥が刺激されて、痺れたような感覚が大きくなっていく。


兎角「晴……どうした?」

聞いても晴は答えない。

隠し事をしているのは出会った頃から分かっている。

無理に聞く気もない。

――信用できるのか?

思わずよぎった疑問に兎角ははっとした。

何を考えてるんだ。

その疑問を打ち消したくて、晴の背中に手を回してしっかりと抱きとめる。


兎角「晴。大丈夫か?」

晴「うん」

体を離して、見下ろす形で微笑む晴の表情はいつも通りだった。

少し安心して兎角も微笑んで返すが、やはりすっきりしない気持ちもあって、うまく笑えたかどうかは分からない。

——お前は一体なんなんだ。

初めてそう聞いた時はなんの躊躇もなかったのに、今はどうしても口に出来なかった。

黒組のことも、晴のことも、釈然としなくて疑っているのは自分でも拭い切れない事実。

ほんの数日前に幸せを感じていた時間には、もう戻れない気がしていた。



終わり


終わりました。
色々とノリの悪い話だとは自覚していますが、エロくて少し黒い晴ちゃんを書きたかったので今回は暗い話にしてみました。
このままでは終わりたくないので、次はまた続きにして、卒業式辺りでイチャイチャさせてみたいと思います。

いつも読んでくださってありがとうございます。
以前レスで頂いたネタも使わせて頂きたいと思っていますので今後ともよろしくお願い致します。

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