男「俺は守る、愛する全てを」(20)
町は、危機に瀕していた
悪魔「ふん、この町も終わりか・・手応えの無い奴ばかりで飽き飽きするぞ」
町人a「っぐぅ・・悪魔・・この町は渡さない」
悪魔「諦めぬ心、その姿勢は素晴らしいぞ。」
悪魔「だが、姿勢だけではだめなのだ・・今のお前には足りないものが多すぎる」ガスッ
町人a「がぁっ・・」バタン
悪魔「人とは、不思議なものだな。勝てぬ相手にも死ぬ気で抵抗する・・」
悪魔「その心は、嫌いではない。私には、真似できぬからな・・」
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悪魔「どれ、一思いに楽にしてやろう・・」
悪魔は、町に火を放った---
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燃え盛る町 こうしてこの町の命は炎と共に闇へと消えた
悪魔「希望あるもの、絶望するもの、全てが闇に消える・・」
悪魔「私は、悪であり続けよう」
悪魔はその町を後にした
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燃え盛る町では、一人の少年が家族を捜していた
少年「父さん、母さん、どこにいるの?」
少年は分からなかった 父と母の居場所が
しかし別の意味では分かっていた 恐らくはもう・・
いつもと変わらないはずの日常は一瞬にして変わっていた
少年はそれでも必死で、仲間を、家族を、皆を捜す。
少年「友~!少女~!!・・」
少年「・・・みんなぁ・・・」
少年「どこにいるの・・皆・・」
少年(寂しいよ・・怖いよ・・父さん・・母さん・・皆・・)
少年の捜索は 炎が消えると同時に終わる
少年は一人、闇に消えゆくこの町で伏せた
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朝、少年は目を覚ます
少年「・・・」
昨日まであったはずの景色は、もうなかった
少年「皆を・・救えなかった・・僕は・・」
少年は一人、自責の念に駆られていた
少年「うぅ・・ぐすっ・・皆・・ごめん・・」
少年「僕は、何もできなかったんだね・・」
自分の弱さ、幼さを悔いる。
少年は一人で泣き続けた---
少年「・・・はぁ」
夜になっていた。少年は空を見ている
少年「皆、星に」
少年「皆、星になっちゃったのかな」
少年「僕も、星に、なりたいな・・」
すると、空に浮かぶ星のひとつが一瞬だけ
大きく輝いて流れた。
少年「はは・・僕は何を言ってるんだろう。星になりたいだなんて」
少年「生きているだけでも、十分なのにね」
少年は近くにある雑草を食べて、眠りについた
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--夢の中--
少年「今日は、どんな夢を見よう・・」
少年は夢の中で見たい夢を考えていた
少年「そうだ、空を飛ぶ夢を見て、元気を出そう」
そう思うや否や、少年の夢はリクエストされた夢を形にしていく
少年「あぁ、空をとんで・・」
少年はお坊さんの夢を見た。
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お坊さん「なむなむ」
少年「くぅっ・・はぁ・・っ」
お坊さんのお経にうなされる少年
そのまま朝を迎える
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少年「うう、お坊さんが出てくるなんて・・」
少年「・・予知夢・・かな」
少年には特別な能力があった
見たい夢を見ることができるのだが、たまにおかしな夢
予知夢を見ることができるのだ。
しかし発動の条件が不規則であるため、周りには内緒にしていた。
少年「あそこは、お坊さんがたくさんいたなぁ・・」
少年「思い当たるとすれば、隣町の”ソウ”」
少年「このままここにいるだけじゃダメだよね・・」
少年「いってみよう」
少年はソウを目指して歩き始めた
--”ソウ”--
修行僧a「今日も良い天気ですね、bさん」
修行僧b「ええ、私の心も洗われるようです、aさん」
修行僧ab「ふふふ」
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お坊さん「ふむ。そのようなことが・・」
修行僧c「はい、この所、各所で不穏な動きが見受けられます」
お坊さん「私の弟子達に、そのようなものがいるというのは信じがたい・・残念なことだ」
修行僧c「そうですね・・私にできる事でしたら、なんなりとお申し付け下さい」
お坊さん「ありがとうc、これからも随時報告をしてくれ」
修行僧c「わかりました、失礼いたします。」
スゥー ピシャッ
お坊さん「争いというのは・・慣れないものだな・・」
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少年「ここが、ソウ・・」
少年「綺麗な空気、透き通る水、すごい・・」
少年「心が安らぐようだなぁ、町を見て回りたい気もするけれど」
少年「まずは、お坊さんという人に会わなくちゃ」 タッタッタッ
ドンッ ?「キャッ」
少年「あっ、ごめんなさい!大丈夫ですか??」
?「だ、大丈夫 それじゃっ」 ダッ
少年「行っちゃった・・とりあえず、僕も探さなきゃ」
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坊さん「隣町からようこそおいで下さいました、少年さん」
少年「お坊さん、お会いいただきありがとうございます。」
お坊さん「いえいえ、して、御用とは?」
少年は予知夢が見れること、そして見た内容について話した
お坊さん「あなたの予知夢というものは、普通では信じることが出来ません」
少年「ですよね・・」
お坊さん「しかし、数名しか知らない筈の情報をあなたはお話しました。」
少年「え?それって・・」
お坊さん「あなたの予知夢というものは、今の私にとっては大きな助けとなりえましょう」
お坊さん「あなたの話を、信じます」
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少年「あ、ありがとうございます!まさか信じてもらえるなんて・・」
お坊さん「あなたが来てくれたのもきっと運命なのです、自信をお持ちください。少年さん」
お坊さん「cよ、いるかな?」
バッ
修行僧c「はい、何用でしょうか」
少年「わぁっ、いきなりあらわれて・・びっくりした」
お坊さん「すまんな・・cは修行僧になる前に、忍をしておられたのです。」
お坊さん「彼の情報力と忍びのスキルはとても貴重なものでして、私の右腕としてこの町を見て回ってもらっているのです」
修行僧c「右腕とは勿体ない・・」
お坊さん「信頼しているのです、cよ。 こちらは少年さんと言って、予知夢を見ることができるらしい」
修行僧c「予知夢を?」
お坊さん「確か、cも似た能力を持っていたような気がしたのだが・・」
修行僧c「気のせいでしょう。私は忍であり、僧でしかありません」
お坊さん「そうでしたか・・それで、cを呼んだのにはわけがあってな」
お坊さん「今夜、例の輩が大きな事を仕掛けてくるそうだ。その迎撃の段取りと、指揮を取ってほしいのだ」
修行僧c「・・! いよいよ来るのですね・・私たちの所にも。」
少年「cさん、お坊さん、私の見た予知夢が正しければ、間違いなく今夜。その事件は起こります」
少年「よろしければ、私にもここまでの経緯を教えていただけないでしょうか?力になりたいです」
お坊さん「ふむ・・。よろしいかな、c」
修行僧c「お坊さまの仰せのままに・・」
お坊さん「そうだな、それは今から2週程前の話になります」
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お坊さん「ややや、今日も一段と冷え込みます」
cに毎日町を見てもらうのも可哀想だと思いまして、
たまには私が行ってみようと思い、町を一通り見て回っていたのです
久方ぶりに訪れた寺下の町は、前と同じく賑わっていたものです。
私はつい気合を入れて、一軒ずつ屋宅を訪問して町の状態を聞きました
最近は商売がうまくいっており、木魚が飛ぶように売れると喜ぶ仏具屋、
ファッションは今変革の時であると言い、熱心に衣替えを勧める衣装屋、
私を見るなり、拝み続ける観光の方々、
それはもう、私の方が癒されてしまいまして、中々に楽しい巡回となったものです。
そうこうしている内に日は暮れて、私は帰宅の途へと向かっていました。
「ややや、今日も一段と、冷え込みます・・」
足早に歩を進めていると、どこからともなく声が聞こえてきたのです
それは、上からでもなく、下からでもなく、なんと、右の方から聞こえてきたのです
私は一旦歩みを止めて、そちらの方へ目を向けました
しかし、何も見えませんし、音もそれからパッと止んでしまったのです。
耳を澄ましてみても、私の千里眼を発動しても、何もとらえる事ができなかったので、
その時は多分、天からのありがたいお言葉が舞い降りてきたものかと思い、
天に礼をして、その場を後にしました。
その3日後の事です。
cの巡回の時、同じ場所で同じ音が聞こえたようです。
その時は私の時とは違い、金属音のような音がしたようです。
これは偶然でも天からのありがたいお言葉でもないと確信した私は、
cにその場所を重点的に張り込むようにお願いをしました。
結果としては、割と早くにその原因を見つける事ができました
それは鉄の槍を持ち、西洋の兜を被り、
馬には乗らず直立の姿勢でその場へと佇んでいたそうです
見えない筈の者、聞こえない筈の音が、私たちには意味をなさなかったようです。
cと目が合うと兜の彼は、初めてこちらを認識し話をしたようです。
兜の者「私が・・見えるのか?」
c「・・・!あなたこそ、私が・・?」
cは元忍でもあるため、気配を常に消して巡回をしています。
町の状態はこの方が純粋に見て回れる為だというのです。
気配を消した状態のcは、私でも見つけることが容易ではないのです。
兜「そうか、見えるのだな。私が此処に居る意味は、分かるか?」
c「いいえ、わかりません。しかし、ここの町の者ではありませんね」
c「一体、ここで何をしているのです」
兜「私は、守るものを守る為に、ここにいる」
兜「それ以外の全ては、とうの昔に捨てている」
c「仰る意味が分かりません・・守るものとは・・?」
兜「あなたは、影が見えるか?」
c「影など日常嫌になるほど見えている」
兜「そうではない、私の言う影は、意に反して動き、持ち主を喰らう」
c「理解できない・・すまないが、私の知る影ではない」
兜「まぁ、いいんだ。私は影からこの町を守る。それだけの存在」
兜「そういうことになるのだが、これだけ理解してくれると助かるかな」
c「あなたが私の探す原因であるなら、きっと害は無いだろう」
c「大きな事件等が起こるのではないかと不安であったが、杞憂であったようだ」
c「邪魔をしてすまなかった、私は失礼する」
シュパッ
兜「大きな事件・・その事だけは多分もうすぐ起こるだろう」
兜「私は、それでも守り続けよう 友の剣に誓って」
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その原因がこの町の守り手だと知った時、私は心底安心いたしました。
何かよからぬ事が起こるのではないかと、cと同じで不安だったものですから・・
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少年「原因は兜を被った守り手だったのですね、しかし、私の予知夢とどのような関係が?」
お坊さん「このまま何も起こらなければよかったのですが、実はこの後からが深刻なのです」
c「・・・」
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2度目の私自らの巡回は、1週間を過ぎた頃になりました。
私は例の場所へ行き、兜の騎士さまと軽い挨拶を交わし、その場を離れようとした時でした。
兜「・・危ないっ!」ガキィッ
刹那、私の目の前に騎士は移動していました。
そしてその先には彼の言う、影というものが対峙していたのです。
お坊さん「騎士さん・・これがあなたのお話していた影なのですか」
兜「あぁ、私の存在理由はまさに今の状況に当てはまる」ググッ
影「・・ウウゥ、ウゥゥゥ・・」ギリギリ
兜「ちなみにこの影の持ち主は、あなたです」ブンッ
兜の騎士は力を込めて影を弾き飛ばす
影「グォォォッ」ガシャン
お坊さん「私の・・?私の知る影というのは、今この場所にありますが・・・全くの別物なのでしょうか」
兜「あなた方の影の概念と、今私が対峙している影という存在は全くの別物と言っていいでしょう」
兜「私の知る影は、狂暴で知力は無く、持ち主を喰らう存在なのです」
お坊さん「そうですか・・私も見てしまった以上、信じるしかありません」
お坊さん「兜の騎士さまは、私たちを守られているのですね・・」
兜「あぁ、しかし影というものは持ち主とリンクしていて」
兜「この影を殺してしまうことはできないのです」
兜「後々詳しく話すが、簡単に言うと」
兜「あなたの精神が支配されてしまうかもしれない、故に私は動きを封じる封印術によってこの影を討伐しています」
お坊さん「封印術・・?」
兜の騎士は槍を地面に突き刺すと、
両の手を合わせて祈り始めました
兜(我の内なる精霊よ、悪しきものを救いたまえ・・)
兜の騎士が祈り始めて直ぐに、赤い炎を纏った生き物が表れました
兜「精霊よ、あの影の封印を頼む」
炎の精霊「了解だ。」スゥゥゥゥ
炎の精霊「はぁっ」
炎の精霊は大きく息を吸い込み、吐き出した。
吐き出した息は丸く形を作り、影に触れると同時にそれを包み込む
影「アァァァ・・」
炎の精霊「形を変え、静まるがいい」
炎の精霊が吐き出した息にそう命じるや否や、
影はみるみる形を変えて、小さな球体へとなってしまった。
お坊さん「これが・・封印ですか」
兜「あぁ、これで封印は完了です。精霊よ、ありがとう」
炎の精霊は騎士に一礼すると、姿を消していった。
兜「・・・」
お坊さん「影とは・・恐ろしいものですな」
兜「はい、しかし今回は様子が違いました」
お坊さん「というと?」
兜「詳しくは今回だけでなく、最近になってそうなりました」
兜「彼は狂暴で、私も毎回苦戦を強いられます」
兜「これまではずっとそのような感じで、私と影は交戦を続けていました」
兜「しかし、最近は力がだいぶ弱まっているように思います・・」
兜「私としては嬉しい反面、前にも似たような事があったような気がして」
兜「思い出せずにいるのですが・・ひっかかるのです」
お坊さん「内情はよく分かりませんが、長い間相手をなさっていたあなた様の事ですから」
お坊さん「その感覚は間違いないといって良いかと思われます」
お坊さん「思い出せない事というのは気になります、cに過去の事について調べてもらいましょう」
兜「あぁ、私からもお願いしたい。」
兜「どうかよろしく頼む」
私は騎士に別れを告げ、cへ過去に似た事例などがないか等詳しく調べてもらうよう手配をしたのです。
その3日後、cは帰ってきました。
私も心待ちにしていたので、さっそくお話を聞いたのです。
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