あかり「最近ごらく部にいてもつまらない」 (394)

京子「ちなちゅ~♪」ダキッ

ちなつ「ちょっ、やめてください京子先輩っ」グイッ

京子「そんな事言わないでさっ、ねっ、ちゅっちゅ~♪」

ちなつ「もぉぉっ!ほんとやめてくださいってっ!」グイグイグイッ

結衣「こら、ちなつちゃんが嫌がってるだろ。離れろ!」

京子「照れてるだけだよ。ね、ちなちゅ~」

ちなつ「だー! ぜんっぜんそんなんじゃないですから! 助けてください結衣せんぱぁ~い!」

結衣「こら、いい加減にしろっ!」ガツン

京子「痛ッ! ちょ、そんな強く叩かなくても……」

ちなつ「あーん、こわかったですぅ結衣せんぱぁ~い♡」ダキッ

結衣「ちょ、ちなつちゃんも抱きつかないで!?」

京子「むむむ、このナンパ結衣め!」

結衣「誰がナンパだ!」

ちなつ「私、結衣先輩にならナンパされたいです!」

結衣「しないから……」




あかり「…………」ハァ

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あかり(なんか最近、あかりがますます空気になってる気がするよぉ……)

あかり(京子ちゃんはとっても優しくて面白いし、結衣ちゃんはクールで格好いいし、ちなつちゃんはとっても可愛くていい子なのに……)

あかり(あかりは取り柄もないし可愛くもないし、それに特にやりたい事も提案できないし……)

あかり(第一あかりって、なんでごらく部にいるんだろう)

あかり(あかりがごらく部に入ったのって、たまたまあかりが京子ちゃんと結衣ちゃんの幼馴染だったってだけだもん)

あかり(もし、あかりが2人の幼馴染じゃなかったら……多分あかりはごらく部に入部してないよね……)

あかり(京子ちゃんも結衣ちゃんも、あかりが2人の幼馴染だったからっていうだけでこの部に誘ってくれたんだもん……)

あかり(あかりって本当に、ごらく部に必要な人間なのかなぁ……最近京子ちゃんと結衣ちゃんは話しかけてきてくれる事も少なくなっちゃったし……)

あかり(なんか…………最近ごらく部にいてもつまらないなぁ……)

京子「あかり?」ジィー

あかり「わわわっ! な、なに京子ちゃん?」アタフタ

京子「いや、なんかさっきから黙ってるから。そんなんじゃ益々影が薄くなっちゃうぞぉ~?」

あかり「ひ、酷いよ京子ちゃ~ん! あかりだってちゃんと頑張ってるんだらねぇ!」プンプン

結衣「でも本当に大丈夫かあかり? なにか暗い表情してたけど。まるでそのまま消えちゃいそうな……」

あかり「結衣ちゃんまでぇッ!」プンプン

京子「ほほー、さては恋の悩みだな?」

あかり「え、えぇー! 違うよぉ!」

ちなつ「あかりちゃん、まさか結衣先輩の事を……」ジロッ

あかり「違うよぉ、本当に何でもないから大丈夫だってばぁ!」

結衣「そうか? それならいいんだけど…… 体調が悪かったらすぐに私たちに言わないとダメだぞ」

京子「そうそう! なにかあったら京子ちゃんに任せときなさい!」

あかり「あはは、ありがとう京子ちゃん!結衣ちゃん!」

ちなつ「あ、もちろん私もだからねあかりちゃん!」

あかり「うん!」

京子「いまだチャンス! ちなちゅー!!」ムギュ!

ちなつ「きゃあー! 油断してたぁ!!」

結衣「こぉらいい加減にしろって言っただろ!!」

京子「ちゅっちゅー!」

ちなつ「や、やめてー!! 私の初めては結衣先輩にぃ!!」

結衣「そ、それもそれで勘弁願いたいかも……」

結衣(それに私はあの玄関での事件を忘れてないよ、ちなつちゃん……)

あかり「あははは…………」

あかり(やっぱりこんな展開に戻っちゃうと途端にあかりがする事がなくなっちゃう……)

あかり(それどころか私がここにいるとみんなに心配をかけちゃって、寧ろ迷惑にしかなってない……)

あかり(…………………)

あかり「ごめんね、やっぱりあかり少し体調が悪いみたい。今日はもう帰る事にするね」

ちなつ「え、大丈夫なのあかりちゃん!?」

京子「むむむ、ちなちゅから心配されるとは……! あ、ちなつちゃん、私も少しアタマが痛いような……」

結衣「さっき私に殴られたからだろうが!」ガツン

京子「あてっ!」

結衣「全く…… あかり、家まで送ってくよ。かばん貸して」

ちなつ「あ、私が持ちますよ! 結衣先輩はあかりちゃんの事を支えてあげてください!」

あかり「お、大袈裟だよぉ! あかりもう中学生なんだから1人で帰れるもん!」

京子「遠慮するなってぇ~ 私たちあかりの幼馴染なんだぞ!」

ちなつ「私だってあかりちゃんの大切な友達だもの!」

あかり「本当にいいから!」バッ

結衣「あっ……かばん!」

あかり「みんなごめんね! あかりに構わずに部活動進めちゃっていいから! それじゃあね!」

あかり(一週間前からずっとみんなに悪い感情を持っちゃってるあかりに、心配してもらう価値なんてないもん!)

ガラガラ!

京子「ちょ、あかり!?」

結衣「あかっ…………行っちゃった」

京子「……ちなつちゃん、教室であかりに何か変わった事はなかった?」

ちなつ「い、いえ特には思い当たらないですけど。強いて言うなら少し櫻子ちゃんや向日葵ちゃんと仲良くなったかなぁって事しか……」

結衣「大室さんと古谷さんとか。それなら別に問題はない、寧ろいい事だな」

京子「うーん、どうしたんだろうねあかりの奴。なんか最近暗くなってない?」

結衣「京子もそう思うか?」

京子「うん、大体一週間くらい前からじゃなかったっけ?」

結衣「うん。なにか思いつめた表情をする事も多くなったし。なにか悩みでもあるのかなって思ってたんだけど」

京子「結衣もかぁ~ それなら最近あかりに話しかける回数が減ったのも……」

結衣「あかりが何か相談してくれるのを待ってたんだよ。……って、その言い方からすると京子もか」

京子「うん。言いだしてくるのを待ってたんだよねぇ。昔からあかりって私か結衣に相談してくれてたから」

ちなつ「…………………」ポカーン

結衣「ちなつちゃん?」

ちなつ「いえ……2人ともあかりちゃんの事をよく見てるんだなって思いまして。正直私はあかりちゃんの変化に全く気付いてませんでしたし」

京子「まー幼馴染だからね。あかりの事は嫌でも目に入って来ちゃうよ」

結衣「そうそう。それに本当に微妙な変化だからちなつちゃんが気付く事ができなくても全然変じゃない」

ちなつ「でも…………」

京子「ちなちゅは優しいなぁ~! そんなところも大好きだぜ!」サッ

結衣「だからどさくさに紛れて抱きつこうとするな!」ガシッ

京子「はいは~い」

結衣「まったく……」

京子「…………………………」

京子「よしっ! いまからあかりの家に行くぞ!」

ちなつ「へっ!?」

結衣「京子!?」

京子「あのあかりがここまで思い詰めてるなんて余程の事に違いない! 多少無理にでも聞き出してやらないと!」

結衣「そんな無理に………いや、でも……そうかもしれないな」

ちなつ「結衣先輩まで!」

結衣「無理に聞き出そうとはしないけど、なにか悩みがあるならそれを打ち明けて貰えるよう頼みに行くくらいはしたい。それに私たちはあかりの味方である事を伝えないと!」

京子「そうそう♪ 我々あかり親衛隊はいついかなる場合もあかりの味方なのだ!」

ちなつ「あかりちゃんの親衛隊って……」

結衣「それは無視していいよちなつちゃん」

京子「なんだよつれないぞぉ結衣ィ……」

結衣「はいはい。とりあえず早い所行かないと」

ちなつ「そ、そうですね。今ならまだあかりちゃんに途中で追いつけるかもしれません!」

京子「よっしゃ行くぞぉ!」

ちなつ「おぉ~!」
結衣「お、おぉ~……」カアア

あかり「はぁ、はぁ……」

あかり(思わず走って来ちゃったけれど……京子ちゃんたち怒ってるよねぇ)

あかり(せっかく結衣ちゃんがかばん持ってくれてたのに無理やり奪っちゃって……ちなつちゃんや京子ちゃんの善意も断っちゃって……)ジワッ

あかり(うぅ、あかりってすごく悪い子だ…………)

あかり(もういいや、明日謝ろう。とにかく今日は帰らないと…………って)

あかり「あぁ! 家の鍵を教室に忘れちゃったよぉ! 机の中に入れっぱなし! 取りに行かないとぉ!」タタタタッ






京子「ほら行くぞぉ!」

結衣「こ、こら京子! 廊下を走るな!」

ちなつ「ふ、2人とも足早すぎ!」

京子「むむむ、昇降口にももういないか! ほら、早く追いつかないと!」

結衣「あっこら!」

ちなつ「待ってください結衣せんぱぁ~い!」

あかり「はぁ、あかりって何やってるんだろ。勝手に1人で落ち込んで、みんなに心配かけちゃって……」

あかり「なんか……もうごらく部に行きづらいなぁ……」

あかり「あ、鍵あった。これでようやく帰れるよぉ」


ガラララ


綾乃「へ?」

あかり「うぇ?」


ドシーン!



綾乃「きゃあっ!?」

あかり「あわっ!?」


バサッ!


綾乃「あ、プリントが!!」

あかり「うわぁ、目の前が真っ白だよぉ! 一体何がぁ!」

綾乃「あら、あなた赤座さん?」

あかり「って、杉浦先輩!」

綾乃「ごめんなさい赤座さん! いま、プリント運んでて前をよく見てなかったの! 怪我とかは大丈夫!?」

あかり「い、いえあかりこそごめんなさい! あかりも全然前見てなくて! あ、プリント拾うのお手伝いします!」

綾乃「別に大丈夫よ、このくらい1人ですぐに……」

あかり「それじゃああかりの気が済みません!」

綾乃「そ、それならお願いしようかしら。私はこっちの方を拾うから赤座さんはそっちをお願い」

あかり「よっと。これで全部ですね!」

綾乃「ええ、そうね! 赤座さんのおかげで早く終わっちゃったわ」ニコッ

あかり「元々あかりがぶつかっちゃったのがいけないんですし。杉浦先輩もお怪我はありませんか?」

綾乃「ええ、大丈夫よ。それじゃあ私はこれを持っていかなくちゃいけないから」

あかり「あ、あの……もし良かったらお手伝いします!」

綾乃「へ?」

あかり「そんな顔が隠れちゃうくらいのプリントを1人で運ぶのは危ないですよぉ! いま暇なんでお手伝いさせてください!」

綾乃「で、でもいいの? 歳納京子達を待たせてるんじゃない?」

あかり「ッ!」ズキッ

綾乃「赤座さん?」

あかり「…………………」

綾乃「……………」

綾乃「分かったわ。それじゃあ手伝って貰ってもいいかしら?」ニコッ

あかり「は、はい! 落とさないよう頑張ります!」

ガラララ


綾乃「ただいま戻りました!」

あかり「し、失礼します……」

千歳「綾乃ちゃんおかえり~ それと赤座さん?」

櫻子「あかりちゃんじゃん! どしたの!!」

綾乃「プリントを運ぶのを手伝って貰ったの。赤座さんのおかげで助かっちゃったわ」

櫻子「おぉー流石はあかりちゃん! どっかのオッパイバカのばかっぱいにも見習ってもらいたいもんだよまったく!」

向日葵「櫻子、それは誰のことを言ってますの?」ギロッ

千歳「ありがとな~赤座さん。ウチの綾乃ちゃんがお世話になりました~」

あかり「い、いえ! 大したことはしてないですよぉ!」

向日葵「ありがとうございました赤座さん。さ、後はわたくしが引き継ぎますわ」

あかり「うん、お願い向日葵ちゃん!」

向日葵「おっとと……あら?」

千歳「どないしたん?」

向日葵「このプリント、並び順がめちゃくちゃですわ。ほら、名前順になってるはずなのにワ行の方がこの位置にありますの」

あかり「っ!!」

千歳「ほんまや。回収したクラスが間違えたんかな~?」

綾乃「ああ、ちょっと来る途中でプリントを落としちゃって。今から私が並び替えておくわよ」

櫻子「あ、私も手伝いますよ杉浦先輩! この量だと1人じゃ時間かかるでしょうし」

綾乃「いえ、大室さんはそのまま自分の作業を進めてちょうだい。これは私が1人でやるから大丈夫」

櫻子「えぇ、でも杉浦先輩も自分の作業があるじゃないですか……」

綾乃「気持ちは嬉しいのよ。でも最近生徒会の仕事が増えて来ちゃって大室さんも余裕がなくなってきてるんでしょう? 私のことは気にしなくても平気だから……」

あかり「あ、あかりがやります!」

綾乃「赤座さん?」

あかり「杉浦先輩がプリントを落としたのはあかりがぶつかったのが原因ですし……」

綾乃「気持ちは嬉しいけれど……これ以上赤座さんに迷惑をかけちゃうわけには……」

あかり「め、迷惑なんかじゃないですよぉ! お願いしますやらせて下さい!」ペコリ

綾乃「…………うーん、でも赤座さんは生徒会のメンバーじゃないし……」

千歳「手伝ってもらったらええやん」

綾乃「ち、千歳!? そんな勝手なこと……」

千歳「赤座さんが頭下げてまで頼んでくるんやし、ここで頼まないのは逆に失礼になると思わん?」

綾乃「うぅ……」

あかり「………………」

綾乃(なんだろう、今日の赤座さんはいつもと雰囲気が違うのよね。いつもより暗いというか……なにか元気がないというか…… それにいつもよりも必死?)

綾乃(千歳の言う通りここは好意に甘えちゃおうかしら。それに少し赤座さんとお話しもしたいし……)

綾乃「赤座さん、本当にお願いしちゃっても大丈夫?」

あかり「も、もちろんです! あかりが全部悪いんですから!」

綾乃「もう赤座さん! 私も前を見てなかったんだから悪いに決まってるじゃないの。あまり1人で背負いこもうとしちゃダメじゃない!」

あかり「あ、あぅ…………」

綾乃「…………ふふっ」ナデナデ

あかり「っ!?」

綾乃「それじゃあお願いしちゃおうかしら? もちろん私も手伝うけどね!」

あかり「は、はい! 頑張ります!」

綾乃「よーし、ファイトファイトファイファイビーチよ!」

あかり「え~っと、この人のはこっちでこれはこっちかな」

綾乃(さっきはつい撫でちゃったけれど……赤座さんってなんか放っておけない感じなのよね)

綾乃(言うなれば……そう、妹みたいな。凄く可愛くて愛嬌あって、それにいい子なのよね)

綾乃(そろそろ切り出しちゃっても大丈夫かしら……)

綾乃「ねぇ赤座さん」

あかり「は、はい……なんでしょうか?」

綾乃「いえ。なんか今日の赤座さん、いつもと雰囲気が違う気がして」

あかり「……そ、そうでしょうか」

綾乃「えぇ、なにか体調が悪いっていうのとも違う……そう、何かに悩んでいるとか。そんな感じがするの」

あかり「っ!!」

あかり(京子ちゃんや結衣ちゃんすら気付かなかった事なのに!)

綾乃「何かに悩んでいるなら1人で抱え込んじゃダメよ。歳納京子とか船見さんとか、あなたには相談できる人が沢山いるんだから」

あかり(す、杉浦先輩が……あ、あかりの心配をして……)ウルウル

綾乃「も、もちろん私だって相談に乗るわよ? 学校の副生徒会長なんだし、それに知らない仲ってわけでもないんだから」

千歳「いざとなったらうちも相談に乗ったるで。可愛い後輩のためなんやし」

櫻子「え、なになにあかりちゃんなにか悩みでもあるの!? それならこの櫻子様にどーんと任せなさい!」

向日葵「櫻子なんかに任せたら解決するものも解決しなくなりますわよ」

櫻子「なにおー!? それなら向日葵なら相談のれるってのかよー!」

向日葵「当然でしょう! 赤座さんのためなら大抵の事は頑張れますわ!」

櫻子「それくらい私もだよ! 私が普段どれだけあかりちゃんに助けられているか知らないだろう」フンスッ

向日葵「なんで自慢気なんですかあなたは………赤座さん?」

あかり「……………………」プルプル

綾乃「赤座さん……あの、なにか気に触る事を言っちゃったかしら…………?」

千歳「そ、そんな泣かんといて……!」

櫻子「このでかっパイが怖いの?」ツンツン

向日葵「ひぁ!? このバカ櫻子! くたばれ!!」ドゴォッ!

櫻子「うぎゃっ!!」

あかり「ううん違うよぉ………み、みんなが心配してくれて……それが嬉しくて…………」グスッ

向日葵「そ、そんな事当然じゃないですの! 私たち、大切なお友達じゃないですの!」

櫻子「私の事も心配しろよー!」

向日葵「あら、生きてましたの?」

櫻子「人を勝手に殺すなー!」

あかり「……グスッ、ふふ……2人とも、本当に仲がいいんだねぇ……」

櫻子・向日葵「「それだけはない!!」」

綾乃「息ぴったりじゃない」

千歳「ツンデレとツンデレもええわぁ~ まだ鼻血はでないけど」

綾乃「出たら困るわよ!!」

あかり「ふふ、そうですね……」

千歳「はいこれティッシュ。これで涙を拭いてな」

あかり「あ、ありがとうございます」

千歳「いつかの借りを返しただけや、気にせんといて」

櫻子・向日葵「「ワーワーギャーギャーオッパイチッパイ!」」

綾乃「こぉら2人とも! 喧嘩してないで早く作業しないと罰金バッキンガムなんだからね!」

あかり「…………………」

綾乃「赤座さん?」

あかり「あの…………相談、乗っていただいてもいいですか?」

千歳「なるほどなぁ、赤座さんは疎外感を抱いとるわけかぁ」

櫻子「粗大缶? でっかい缶詰の事?」

向日葵「疎外感ですわ! その……早い話が、仲間はずれ……という事です」ボソッ

櫻子「な、なんだってー! こんなにいい子のあかりちゃんを!?」

綾乃「なるほど。歳納京子や船見さんにその事は話したの?」

あかり「いえ、話してません……」

櫻子「なんでなんでー! ビシッとバシッと言っちゃえばいいのにぃー!」

向日葵「赤座さんがそんな事を言えるわけないでしょう!」

千歳「親しき中にも礼儀ありって言うもんなぁ~」

あかり「それに最近それが顕著になってきて……京子ちゃんも結衣ちゃんもあかりにあまり話しかけてくれなくなって……それに、こっちから話しかけると少し身構えてるような気がするっていうか……」

綾乃「身構える?」

あかり「はい。やっぱり2人ともあかりとは話し辛いのかなって……会話が弾む事もないですし、あかりと話してもつまらないのかなって思っちゃって……」

櫻子「ちなつちゃんはどうなの? 同じクラスで友達じゃん!」

あかり「ちなつちゃんは表面上は普通に接してくれるけど、部室に行くとすぐに結衣ちゃんの所に行っちゃって……」

向日葵「なんとなくイメージは出来ますわね」

あかり「こうしてみるとやっぱりあかりはいらない子なのかなぁって……思っちゃって…………」

櫻子「そんな事ないよ! あかりちゃんは絶対に必要な子だって! 向日葵のおっぱいを犠牲にしてでも私はいて欲しいくらいだもん!」

向日葵「勝手に私の胸を犠牲にしないでよ!」

櫻子「あかりちゃんがいなかったら、私は何度お弁当を素手で食べなくちゃいけなくなった事か! 花瓶の花ももうとっくに枯れちゃってるよ! それに私も学校でつまらない思いをしちゃうもん!」

向日葵「そうですわね。私も学校で赤座さんとお話しするのをとても楽しみにしてますの」

千歳「うちもやで~ たまにしか会う事ないけど、会うたんびに赤座さんに癒されてんで」

綾乃「私も! 確かに普段あまり会話はしないけど、大室さんや古谷さんにお話しを聞いたりしてるし、たまにこうやってお話しできたりするととても楽しいわよ!」

あかり「ほ、本当ですか……?」

綾乃「当然じゃない!こんなにいい子を邪険に扱うなんて、少し歳納京子と船見さんを見損なったわ!」

千歳「見損なうは少し言い過ぎかもしれんけど、あまり褒められた事やないねぇ~」

あかり「ち、違うんです! 京子ちゃんも結衣ちゃんも悪くなくて……全部あかりが悪いんです! だ、だからみんなの事を悪く言うのは止めてください……」ウルッ

綾乃「ぁ……」

千歳「ご、ごめんな赤座さん」アタフタ

向日葵(赤座さん、なんてお友達想いでいい子なんですの……!)



櫻子「いや、どっからどう考えても先輩方とちなつちゃんが悪いじゃん」スパーン

綾乃「ちょ!?」
千歳「お、大室さん!?」
向日葵「ばっ!?」

あかり「さ、櫻子ちゃん……! 違くて! 全部あかりが…………」

櫻子「あかりちゃんの事を少し仲間はずれにしてる時点でそれは悪い事だと思うよ。だって大切な友達で幼馴染なんでしょ? 私は友達の事を無視なんてしないし無視されたらスッゲー怒るよ? もちろん向日葵にも」

櫻子「私はバカだから今までいろんな事を間違えてきてばっかりだけどさ、そんな事人間なら誰だってする事じゃん。先輩方だってたまには間違えたりするよ」

櫻子「そんな時はさ、気付いた人がそれを注意してあげないとダメだと思うんだ。私なんて向日葵や姉ちゃん、妹にまで注意されてるよ? でもそのおかげで悪い事や失敗に気付けるんだもん。スッゲー感謝してる」

向日葵「櫻子……」

櫻子「あかりちゃんはとってもいい子だし優しいし、頭も良くて気遣いできるいい子だもん。人のために行動できるいい子だし……それに、えと……スッゲーいい子だもん! この櫻子様が保証する!」

向日葵(そろそろ櫻子の語彙力に限界が……)

櫻子「だからさ、自分が悪いだなんて思い込んじゃダメだよ! あかりちゃんはずっと扱いに我慢してきたんでしょ? そろそろ怒ってもいい頃だってば! ね、向日葵?」

向日葵「」
綾乃「」
千歳「」


櫻子「あ、あれ? どうしたの?」


向日葵「櫻子がこんなにもまともなことを言うなんて……!!」

綾乃「夢みたい……」

千歳「明日は台風かもしれんなぁ」

櫻子「どういう意味だー!!」



ワーワーギャーギャーツケモノツンデレ!

あかり「………はぁ、そうかもしれないねぇ」

櫻子「あかりちゃん?」

あかり「何でもかんでも1人で背負いこんじゃうよりも、少しは京子ちゃん達にも背負って貰ってもいいのかもしれないなぁって思ったんだぁ」

向日葵「赤座さんっ!」

櫻子「おぉ! いい調子だよ!」

あかり「うん、そうだね! ありがとう櫻子ちゃん、向日葵ちゃん! ありがとうございました杉浦先輩、池田先輩! あかり、胸がスッキリしました!」ニコッ

あかり「明日、京子ちゃん達に謝ります! それと少しお説教もしちゃうもん! 明日が楽しみだよぉ」

櫻子「あ、あともう一つあかりちゃん!」

あかり「なぁに櫻子ちゃん?」

櫻子「あのさこれはお願いなんだけどさ…………」





櫻子「明日から生徒会に入らない!?」

京子「おっはよーちなちゅー♪」ギュ

ちなつ「だぁー 朝から引っ付かないでください!!」

京子「朝からちなちゅに会えるだなんて~ これは神の思し召しに違いないよぉ~♡」ムギュ

結衣「ふん」ガツッ

京子「あだぁー!」

結衣「ったく」

ちなつ「あ~ん、ありがとうございます結衣先輩♡」ムギュ

結衣「ち、ちなつちゃんもあまり腕にくっつかないで……」

京子「結衣ばっかりずるいぞ~ 私にも抱きついてこーい!」バッ

ちなつ「そんな両腕を開いても私は飛び込みませんからね」

京子「もう、シャイなんだから」

結衣「そのポジティブさ、少し分けて貰いたいくらいだな」

ちなつ「心配しなくても大丈夫ですぅー!! 私の心は結衣先輩一色ですから!」

結衣「あぁ、うん……ありがと」

京子「ムスー」プックリ

結衣「お前も分かりやすく膨れるなよ」

京子「ほーい」

結衣「まったく。2人とも何のためにこんな朝早くにここに来たのか覚えてるのか?」

京子「あったりまえよ! そもそも言い出したの私じゃんか!」

ちなつ「そ、そうですね。ふざけてる場合じゃなかったです」

結衣「昨日はあかりに会えなかったからな。今日は確実に会おう」

ちなつ「でもなんでこんなに朝早くから会いに来たんです?」

京子「それはちなちゅに早く会うための口実さ」キラッ

結衣「」グッ

京子「も、もといあかりがとっても心配で早く会いたかったからさ! 昨日の様子もおかしかったし!」

ちなつ「…………」ジーッ

京子「ち、ちなちゅ? その顔は……なに?」

ちなつ「………………」ジーッ

京子「視線の先には私!! そして眼差しは疑い!!」

結衣「大丈夫、それは本当の話だから。その証拠にほら、この携帯の履歴を見てごらん」

京子「ちょちょ!? それは見せない約束………」

ちなつ「うわっ!? なにこのメールの数! しかも……全部あかりちゃんのことばかり!」

京子「あ、あぅ……」カアァ

結衣「私も凄くあかりのことを心配してるけど、一番心配してるのは京子なんだよ」

ちなつ「………」

ちなつ(京子先輩、普段あかりちゃんの事をおちょくってばかりいるけれど、異変に気付いたり裏ではこんなに心配してたり、あかりちゃんの事が本当に好きなんだなぁ)

ちなつ「行きましょう、京子先輩、結衣先輩! 早くあかりちゃんと会わなくちゃ!」グイッ

京子「うひゃ!」

結衣「うわっ!」

ちなつ(私だってあかりちゃんを心配している気持ちは2人に負けないつもりです! たとえ昨日まであかりちゃんの異変に気付かなかったとしても、今から精一杯あかりちゃんのために行動してやるんだから!)





京子(棚ぼたでちなつちゃんに手を握ってもらえたのは嬉しいんだけど…………)

結衣(ち、力が強くて……手が痛い…………)

ピンポーン


京子「あかり~! 学校行くぞぉ!」

結衣「声が大きいって、まだ結構早い時間なんだからさ!」

ちなつ「下手すれば今頃あかりちゃんが起き始めてるくらいですもんね」

ピンポーン

京子「あかりー! この家は完全に包囲されている、下手な抵抗は諦めて出て来い!」

ちなつ「ちょ、あまり鳴らすとお家の人の迷惑になっちゃいますって!」

ガチャ


あかね「あら、京子ちゃんに結衣ちゃん。それにちなつちゃんじゃない」ゴゴゴゴゴ

京子「おはようございますあかねさん!」

結衣「おはようございます」

ちなつ「お、おはよう…ございます……」

ちなつ(な、なんかすごいオーラが出てるような気がする……)

あかね「おはよう。今日はどうしたの? こんなに朝早くからここへ来るなんて」ゴゴゴゴゴ

結衣「実はあかりにちょっと話したい事があって。まだ寝てますよね?」

あかね「え、あかり? あかりならもう学校に行っちゃったけど」ゴゴゴゴゴ

結衣「え……」

京子「なっ……」

ちなつ「も、もう……ですか? どうしてです?」

あかね「なにか用事があるって言ってたわ。詳しく聞こうとしたのだけれども教えてくれなかったのよ」ゴゴゴゴゴ

結衣「そ、そう……ですか」

京子「……………………」

あかね「……もしかして、なにか心当たりがあったりする?」ゴゴゴゴゴ

結衣「い、いえ……特には…… な、京子?」

京子「…………………………」

結衣「京子?」

京子「…………………………」

ちなつ「あ、あの……! 大丈夫です! と、とりあえず私たち学校へ急ぎますので! 朝早くに失礼しました!」タタタタッ

結衣「あ、ちなつちゃん!? す、すみません失礼しますあかねさん!」グイッ

京子「……………」

あかね「あら?」ゴゴゴゴゴ

ちなつ「はぁ、はぁ……あのままあそこにいたら……ヤられてたかも……」

結衣「やられてたって……ちなつちゃんはあかねさんをなんだと思ってるの」

京子「…………あのさぁ」

結衣「ん?」

京子「これってもしかして……私たち、避けられてる……?」

結衣「…………………」

ちなつ「……そ、そんな……まさか…………」

京子「……………」

結衣「……………」

ちなつ「せ、先輩……」

ちなつ(今まで見たこともないくらい落ち込んじゃってるよ2人とも! あかりちゃん、早く私たちのところに来てー!!)








綾乃「はぁ、まさかこんなに朝早くから学校へ来ることになるとは思わなかったわ」

ガラララ

綾乃「あれ、鍵が開いてる?」

あかり「あ、おはようございます杉浦先輩」

綾乃「赤座さん!? どうしたのこんなに朝早くに、しかも生徒会室で!」

あかり「昨日相談に乗ってもらったせいで最終下校時刻になっちゃって……それでお仕事が終わらないままになっちゃったから……少しでも終わらせておこうと思って……」

綾乃「そ、そんな気を使わなくても良かったのに……」

あかり「あの、このプリント全部名前順に並び替えておきました。それと櫻子ちゃんと向日葵ちゃんがやっていた書類整備も終わってます」

綾乃「そ、そこまで……でもなんで書類整備も出来たの? やり方とか知らないはずなのに」

あかり「昨日の帰り道に櫻子ちゃん達から聞いたんです! あの、チェックしてもらってもいいですか?」スッ

綾乃「え、えぇ」

ペラッペラッ……

綾乃(全部完璧に終わってる……! しかも古谷さんや大室さんの仕上げたものよりも完成度が高い!)

綾乃「赤座さん、あなた今日何時から学校にいるの?」

あかり「確か1時間位前にここに来ました」

綾乃「い、1時間ッ!?」クワッ

あかり「あわわ!? な、なにかダメなことしちゃいましたか!?」

綾乃「1時間でこれだけの仕事を終わらせたの!? しかもたった1人で!?」

あかり「は、はいぃ……ごめんなさい!」

綾乃(こ、この子……普段のんびりしてるからそうとは思わなかったけど、かなりの逸材だわ! 多分この子はなにか作業を与えた時に光るタイプね)

綾乃(歳納京子も船見さんも赤座さんを見誤り過ぎよ! この子はごらく部にいるよりも生徒会にいた方が絶対に活きるはず!)

綾乃(……とは言っても)チラッ

あかり「?」キョトン

綾乃(この子がどうするかはこの子が決める事なんだけれどもね)ナデナデ

あかり「わひゃあ!?」

綾乃「ありがとう赤座さん。すっごく助かっちゃったわ。本当にありがとう」ナデナデ

あかり「えへへ! そう言ってもらえて嬉しいです!」ニコッ

綾乃「あ、でも赤座さんは生徒会じゃないんだからこの部屋に勝手に入ったのは罰金バッキンガムなんだからね!」

あかり「そ、そんなぁ!? あかり、お金持ってきてないよぉ~!」アタフタ

綾乃「……クスッ、冗談よ」ナデナデ

あかり「ひ、酷いですよぉ杉浦先輩~」プンプン

綾乃「っ!」ドキッ

綾乃(これは可愛いわね…… 益々生徒会に欲しい人材だわ!)

あかり「あ、少し馴れ馴れしくしちゃったかもしれません! ごめんなさい杉浦先輩!」

綾乃「べ、別に平気よ。歳納京子や船見さんと同じ感覚で話しかけてくれて構わないわ!」

あかり「えへへ、ありがとうございます杉浦先輩。京子ちゃんに聞いていた通りとっても優しい人ですね!」

綾乃「とっ、ととと歳納京子が!?」カアア

あかり「はい。頭もいいし優しいし、いつも学校の事を気にかけている素晴らしい人だって聞いてます」

綾乃「ほ、ほほ褒め過ぎよ!! わ、私なんてまたまだなんだから!」

あかり「でも、昨日あかりの事をすごく心配してくれてとっても嬉しかったです!」

綾乃「そんなの当然じゃないの。赤座さんだって私の大事な後輩なんだから」

あかり「ありがとうございます! あかり、とっても嬉しいです!」

綾乃(歳納京子……あなた、なんでこんなに可愛い赤座さんを邪険にしたりしたのよ…………)

綾乃「あーあ、やっぱり私も赤座さんを生徒会に欲しいわね。ねぇ、やっぱり今からでも入る気はないかしら?」

あかり「あ、ごめんなさい。でもあかり、昨日も言いましたけれどやっぱりごらく部が大好きなんです! 京子ちゃんも結衣ちゃんもちなつちゃんも!」

綾乃「ええ、分かってるわ」

あかり「昨日は落ち込んじゃったけれど、きっとみんなもあかりの事大切に思ってくれてると思うんです。あかりに酷い事を言うのも、きっとあかりとお話ししたいからだと思うんです!」

綾乃「まぁ確かにそうね。歳納京子ってそういう所あるし」

綾乃(ただ船見さんの方はあまりそういうイメージがないんだけれども、恐らくそれが友達と幼馴染の差なんでしょうね)

あかり「もしみんながあかりの事を想ってくれてるなら、あかりもそれに応えたいんです! あかりに悪い所があるなら、それを治してみんなと仲良くしたいです!」

綾乃「ふふふ、そうね」ナデナデ

綾乃(ただ、赤座さんに本当に悪い所があるとは思えないけれど……)

あかり「でも今回ばかりはあかりも黙ってませんよぉ! 昨日櫻子ちゃんに言われた通り、謝り終わったらあかりからも言いたい事を言ってやります!」

綾乃「そう、頑張ってね赤座さん! きっとみんなも分かってくれるわよ」

あかり「はい! それじゃあ杉浦先輩、失礼します! 本当にありがとうございました!」




ガラララ



綾乃「………本当に全部終わってる。それに部屋が少し片付けてあるから、作業自体はもっと早くに終わってたのね」

綾乃「それに作業だけじゃない。赤座さんは他の人のために進んで行動する心も持ってるし、気遣いもできる優しい子」





綾乃「………赤座さん、私なんかよりあなたの方がよっぽど生徒会に向いてるわよ」

ー教室ー


ちなつ(あの後公園で2人の気持ちを落ち着かせてたから、結局遅刻ギリギリになっちゃった……)

ちなつ(2人はなまじあかりちゃんと過ごした時間が長いから、ショックが大きい! ここはこのチーナがどうにかしないと!)

ちなつ(先輩方2人のためにもここで私があかりちゃんとコンタクトを図らなければ!)

ガラララ!

ちなつ「おはようあかりちゃ……」



櫻子「ありがとうあっかりちゃーん!」ギュッ

あかり「ちょ、ちょっと櫻子ちゃん!! あんまりくっつかないでよぉ~」

向日葵「こら櫻子! あまりくっ付いては赤座さんに迷惑でしょう!」

櫻子「だってあかりちゃんがいい子すぎるのがいけないんだもん! 私たちの作業が終わってるなんて信じられないよ!」

向日葵「確かにそうですわね。あれだけの作業を短時間で終わらせるだなんて……赤座さん恐るべしですわ」

櫻子「やっぱりあかりちゃんは生徒会入るべきだって! 来年生徒会福会長補佐として私の下で働いてよ~」

向日葵「補佐どころか副会長にだってなれますわよ。再来年には会長も夢ではありませんわ」

あかり「2人ともあかりの事を褒めすぎだよぉ」ニコッ

ちなつ「………ぁ」

ちなつ(あかりちゃんがあんなに笑ってる…… 最近は私たちにあまり笑顔を見せてくれてないのに…………)






京子『これってもしかして……私たち、避けられてる……?』




ちなつ(ま、まさか本当に…………)

あかり「……ぁ」

櫻子「んぁ? あ、ちなつちゃんだー!」

向日葵「あら、本当ですわ。今日は普段よりも随分遅かったですわね」


あかり(き、昨日のことを謝らなくちゃだよぉ…… 緊張するけれど、でも勇気を出さなきゃだよね!)

ちなつ「ッ!」サッ

あかり「……え」

櫻子「……………」

あかり(いま、ちなつちゃん……あかりと目を逸らした……?)

ちなつ(しまった……朝の京子先輩のセリフが頭に浮かんでつい目を逸らしちゃった! ど、どうしたらいいのチーナ!!)

あかり(や、やっぱりちなつちゃん、あかりの事を邪魔だと思ってるのかなぁ…………)ウルッ

キーンコーンカーンコーン♪

ちなつ(あぁ! でも目が合わせられない! 目を合わせる勇気がない! もし私が話しかけても無視されたりしたら………)ガクガク

あかり(やっぱりあかり、迷惑だったんだねぇ…… このまま話しかけてもちなつちゃんに迷惑にしかならないよぉ)

ちなつ(お願いあかりちゃん! 私にそっちから話しかけてきて! 私待ってるから!)


櫻子「どったのあかりちゃん?」

向日葵「吉川さんも早く席に着いたらいかかですか? もうチャイム鳴りましたわよ」

あかり「あ、うん。なんでもないよぉ……」

ちなつ「あ、うん。そうだね」

向日葵「?」

櫻子「…………」

櫻子「よっしゃ放課後だーい!」

あかり(放課後になっちゃったけれど……)

ちなつ(あかりちゃんと全く話さないままだったから、この先ごらく部に行くまでが気不味い……)

あかり(あかり、ごらく部に行かない方がいいんだよねぇ……)

ちなつ(あかりちゃんにどうやってごらく部に来てもらおうかな……)

あかり(どうやってごらく部を休もうかなぁ……)

向日葵「今日も新しい仕事が来ますから、頑張りましょうね櫻子」

櫻子「当然! それに私には秘密平気がある! ね、あかりちゃん!」グッ

あかり「へ?」

櫻子「ちなつちゃん! 今日ちょっとあかりちゃんを借りるからね! よっし行こうー!」タタタタッ

あかり「ちょっとぉ! あかりを引っ張らないでぇ!」

向日葵「ちょっと櫻子! ごめんなさい吉川さん。それではまた明日」

ちなつ「ぁ…………」






向日葵「ちょっと櫻子! 赤座さんを無理やり引っ張って連れて来るなんて迷惑でしょう! 部活もあるんですし」

あかり「ぜぇぜぇ……あかり、久々に全力疾走したよぉ~」

櫻子「あかりちゃん」

あかり「へ?」

櫻子「あかりちゃんには悪いけど、いま私はモーレツにちなつちゃんに怒ってる!」

向日葵「櫻子、いきなり何を言って……!」

櫻子「とりあえず生徒会室に入ろう」

向日葵「え、えぇ……」

向日葵(このように怒る櫻子を見るのは初めてですわ)


ガラララ

綾乃「お、来たわね」

千歳「今日も赤座さんおるんやね~」

松本「……」

櫻子「会長、杉浦先輩、池田先輩! こんにちは! そして会長、お話があります!」

ズンズンズン

松本「……?」

櫻子「このあかりちゃんを生徒会に入れてください! お願いします!!」


あかり「え?」





あかり「えぇえぇぇぇ!?」







千歳「なるほどなぁ…… そのクラスのお友達が赤座さんを無視してたんかぁ」

櫻子「はい! 朝だってせっかくあかりちゃんが謝ろうと声をかけようとしたのに目を逸らしたんです! 偶然見ちゃいました!」

向日葵「た、確かに少しよそよそしかったですけれど、櫻子の考えすぎじゃあありませんの? 吉川さんがそんなことをする人には思えませんわ」

あかり「ううん、違うよ向日葵ちゃん。あかり、朝に目を逸らされたもん」ウルッ

櫻子「ほらね!」

あかり「あかり……やっぱり、ごらく部にいらない人間なんだ」グスッ

綾乃「赤座さん……」

松本「…………」スッ

あかり「あ、ハンカチ…………ありがとうございます、会長さん」

松本「…………」ナデナデ

あかり「えへへ、心配してくれてありがとうございます。そんな事言われたの久しぶりです」

松本「……!?」

綾乃「へ? 赤座さん、会長が何を言ってるか分かるの?」

あかり「え? はい、分かりますけれど……皆さんは分からないんですか?」

千歳「うちらには分からんねん。まず聞こえへんしなぁ」

櫻子「あかりちゃんってスッゲー耳がいいんだね!」

向日葵「いえ、そういう問題じゃないでしょうに……」

松本「…………………!」

あかり「そ、そんな事できませんよぉ! 3年生の先輩にそんな事!」オロオロ

松本「……!」ギュ

あかり「わ、分かりましたから! い、一回だけですからね! その、えっと……」

あかり「りせ、ちゃん……?」

松本「………………!!」ブンブンッ!

綾乃「うひゃあ! 会長が今まで見た事もないような満面の笑みで赤座さんの手を取って振っている!?」

千歳「嬉しさのあまり感情の数値が振り切れちゃったみたいやね」

西垣「私とお話できる友達がずっと欲しかった、と松本は言っているぞ」

綾乃「ちょお、西垣先生! いつの間に!?」

西垣「松本が普段出さないような大声を出していたからな、思わず様子を見に来てしまった」

松本「……!」ダキッ

あかり「か、会長さん~ あまりあかりを抱きしめないで下さいよぉ~」

千歳「大声出してたんかぁ。まぁ、それはさておき」スチャ

千歳「眼福やぁ~」タラー

向日葵「ちょ、池田先輩! ティッシュ!」

千歳「毎度毎度ホントに済まんなぁ~」

また後で続けます

櫻子「ところで会長! あかりちゃんの生徒会の件は……」

松本「!!」カキカキ

綾乃「か、会長が猛スピードで何かを書いている!」

松本「……」スッ

あかり「へ、生徒会役員就任推薦書? しかももう推薦者の欄に会長の名前が書いてある」

西垣「松本のやつ随分と乗り気だな。すぐにでも赤座を入れる気だ」

櫻子「やったー!! 最近は仕事が多かったからメチャクチャ助かるよ!」

松本「…………」

あかり「あ、あの会長……」

松本「……」

あかり「え? あ、その……りせ、ちゃん………」

向日葵(もうりせちゃんと呼ばせるのは確定なんですのね……)

あかり「あかり、実は別の部活に入ってるんです……ですので……」

松本「……………」

あかり「あ、はい。ごらく部っていう部活に」

松本「…………?」

あかり「その、多分届け出は出してないと思います。なんていうか、特に活動もしてませんので」

松本「……………」

あかり「確かにそうですね。あと、さっきのあの話もそうなんですけれど…………」

松本「………………………」

あかり「はい……ありがとうございます…………でも、踏ん切りがつかなくて……みんなとっても優しくしてくれたので……」

松本「………?」

あかり「い、いえそこまでして貰うわけにはいきません! これはあかりの問題ですから!」

松本「…………」

あかり「はい。でも、それって逃げてるんじゃないかって思っちゃって……それに…自信ないですし」

松本「………」

あかり「……はい、確かにそうですけれども」

松本「……………」チラッ

綾乃「へ? わ、私がどうかしましたか?」

西垣「赤座の仕事での活躍ぶりはかなり凄まじいんだろう? と松本は言っているぞ」

綾乃「あ、それはもう! 下手をすれば私なんかよりもスピードも正確さも上なんじゃないかっていうぐらいです!」

松本「………………」ニコッ

あかり「えへへ、ありがとうございます」ニコッ

松本「……………」

あかり「分かりました。少しお話ししてきます。りせちゃん、本当にありがとうございました!」ニコッ

松本「…………」グッ!



ガラララ!



櫻子「あかりちゃん行っちゃったね。どういう事?」

西垣「要約しよう」

西垣「まず、ごらく部は正式な部ではないから生徒会と掛け持ちしてもOK。ただ、赤座は今その部で問題を抱えているらしいから、それについて松本は心配をしている」

西垣「松本的には赤座にごらく部を辞めて欲しいらしいが、赤座は歳納とかに世話になったからといって辞める踏ん切りがつかない。なにしろ幼馴染だしな」

西垣「それならば自分がごらく部に行って赤座が辞めることを伝えようかと松本は提案したが、それを赤座は断った。それならと、松本は部は辞めなくてもいいから、ごらく部との問題が解決できそうになるまでの間だけここで働かないかと提案をした」

西垣「赤座はそれを問題からの一時的な逃げではないかと心配している。それならやはりきちんと決断をしなくてはならない。ごらく部を辞めるか生徒会を諦めるかのどちらかをな」

西垣「やはり松本的には生徒会に入ってもらいたい。いまなら生徒会長と副会長に直々にスカウトされたっていう理由も使えるからな」

西垣「現に赤座の能力は杉浦も認めるくらいで、このままごらく部にいるのは宝の持ち腐れ以外の何物でもない」

西垣「でも、最終的に赤座のことを決めるのは赤座以外の何者でもない。どんな決断をしても私は赤座を応援する、と松本は言っている」

西垣「そして赤座はごらく部に話をしに行ってしまった」




千歳「ほぇ~ あの短い会話の中にとんでもない情報が詰め込まれてんねんな~」

綾乃「一体会長と赤座さんの頭はどうなってるのかしら?」

櫻子「えっと……つまりどういう事?」

向日葵「相変わらずおバカですわね……」

櫻子「なにおーー! 馬鹿って言う方が馬鹿なんだよこのばかっぱい!!」バシッ!

向日葵「あ痛!」

松本「………」ドキドキ

西垣「赤座がどんな決断をしても応援するとは言ったが、やはり生徒会に入って貰いたいという気持ちが強くなってきて、今更緊張し始めている松本も可愛いぞ」

ーごらく部ー




ちなつ「と、言うわけであかりちゃんは今日は来ません」

京子「……」ズーン
結衣「……」ズーン

ちなつ(うぅ、この暗さ……今までにない程のごらく部のピンチじゃ……)

京子「……ちっぱいちゃんめぇ~」

結衣「おーむろさんめ……」ギリッ

ちなつ「ちょっとしっかりして下さい! いつもみたいに元気になって下さいよぉ!」

京子「ちなつちゃんちゅっちゅーちゅっちゅーだいすきだー」

結衣「こらーやめろきょうこーはやくはなれろー」

ちなつ「えぇい! いい加減にして下さい!!」





京子「すみませんでした」

結衣「うん、ごめんねちなつちゃん。少し私たちおかしかったよね」

ちなつ「いえ、もう大丈夫ですから。それよりも早くあかりちゃんの事を考えないと……」

京子「………………」ズーン

結衣「………………」ズーン

ちなつ「ちょっと2人ともしっかりして下さい!」

京子「いや、だってさぁ。普段のあかりならどんな事があっても、一日中ちなつちゃんに話しかけないなんてあり得ないっしょ……」

結衣「やっぱり私たち、避けられてるんだなって考えちゃうと……来るものがある」

京子「なんかイメージできないけどさ。でもあかりだって、ずっと私たちにベッタリってわけじゃないんだもんな……」

結衣「でも、こんな分かれ方だなんて納得できない……! もしあかりが私たちの何かが気に入らないと言うのなら、それを教えてもらって改善したい!」

京子「やっぱりあかりを少しいじり過ぎたのかも……」

結衣「私もだよ。京子のおふざけに乗っかって色々あかりに酷い事を言っちゃったし……」

京子「全部私なりの愛情表現だったんだけど……あかりはずっと我慢してたのかな……ずっと溜め込んでたのかな……」グスッ

結衣「\アッカリ~ン/ とかも……あの時のあかりは本当に……心の底から私のことを…………」ウルッ

ちなつ「もう、2人とも! そんな事をいつまでもウジウジ考えていてもしょうがないじゃないですか!」

京子「ちなつちゃん……」

ちなつ「私だってあかりちゃんにはずっと迷惑かけてきましたよ! むしろ一番恨まれてるとしたら私に決まってますよ!」

京子(確かに……)

結衣(あの玄関の事件)

ちなつ「過ぎてしまった事はもう取り消せない! それならばそれを受け入れてあかりちゃんに精一杯謝ればいいんです!」

ちなつ「ほら、うじうじ考えてないで早く行きますよ!」

京子「…………そうだね」

結衣「……そうだよ、確かにこんなところで考えててもなにも解決しない!」

京子「よっし行くぞ! ちっぱいちゃんの魔の手からあかりを救い出せぇ!」

ちなつ「その意気です! 頑張りましょう京子先輩!」

京子「流石ちなちゅ! そんな所が大好きだよーんちゅっちゅー♪」ダキッ

ちなつ「ぎゃー! 途中までいい調子だったのにこんな所でぇ! 助けてください結衣先輩!」グッ

京子「そんなに照れるなよ~ちなちゅ♡」

ちなつ「こ、こらぁ! 首を弄らないでくださぁ~い!」

結衣「いい加減にしろ!」

京子「へん、やめろと言われてやめる京子様ではないのだ! なんならこのまんまの体勢で生徒会に………」



ガラララ



あかり「……………楽しそうだね、みんな」

京子「あ、あかり……」

ちなつ「あかりちゃん……!」

結衣「ぁ……」


あかり(外まで楽しそうな声が聞こえてきてたのに、あかりが部屋に入った途端に静かになっちゃった……)

あかり(ごめんね、京子ちゃん、結衣ちゃん、ちなつちゃん。あかり、もう決心がついたよ。今まで…ありがとう……)ウルッ


京子「……あかり、あのっ…………」

あかり「京子ちゃん! あの、これを見て!」スッ

京子「……へ? なにこれ…………ッ!」

結衣「な、なに…それ……生徒会役員就任推薦書……」

あかり「あかりね、昨日たまたま生徒会にお手伝いに行ったんだけれども、少しそっちに興味が出ちゃって。やってみたいなって思ったんだぁ」ニコッ

あかり「松本会長と杉浦副会長にも是非って勧められてね。でも生徒会と部活動の掛け持ちって出来ないらしいの」ニコッ

京子「ま、まさか……あか………」









あかり「京子ちゃん。あかり、ごらく部を辞めてもいいかな?」

結衣「な………」

ちなつ「あ、あかりちゃ……」


京子「………うん、わかった。無理に入って貰って悪かったなあかり」ニコッ

結衣・ちなつ「「なっ!?」」


あかり(全く引き止めてもくれない………それどころかあかりがいなくなると分かった途端にこんな笑顔に……)


あかり「う、うん……あ、ありがとう京子ちゃん…………」ニコッ

京子「いいってことよ! いままでお疲れさん! そんじゃな!」グッ

あかり「そ、それじゃああかり、生徒会室に、行かなくちゃだから…………い、今まで……ありがとッ!!」タタタタッ


ガラララ!

京子「あっははは、あかりもとうとう私たちから巣立つんだね。いや~感慨深いもんだ」

結衣「おい京子! おまえどういうつもりだよ!!」グイッ

ちなつ「そうですよ! あかりちゃんがいなくて一番ショックを受けてたのは京子先輩じゃないですか! それなのにあんなッ!」

結衣「おまえあかりの事がどうでもいいのかよ! もうあかりに謝る事だって諦めたのかよ!!」

ちなつ「京子先輩のバカッ! もう京子先輩何て知りません! 結衣先輩、あかりちゃんを引き止めに行きましょう!」

京子「だめだよちなつちゃん」バッ

ちなつ「なっ!? 京子先輩そこをどいてください!」

結衣「どけ京子! 今日という今日はお前のおふざけに構ってる暇はないんだ!」

京子「いいや、ダメだよ2人とも! あかりを連れ戻すことは部長の私が許さない!」

ちなつ「京子先輩!」バシッ!

京子「ッ! た、叩いてもダメだよちなつちゃん!」

結衣「どいてちなつちゃん!」

ちなつ「きゃ!」

結衣「………」グイッ!

京子「……ッ なんだよ結衣、胸倉なんか掴んじゃって、らしくないぞ?」

結衣「おまえ、本当にあかりをこのまま生徒会に入れさせるつもりか?」

京子「だからそうだって言ってるじゃん」

結衣「ふざけるなよ! 私達にはあかりがいないとダメなんだ! あかりがこの部を去ろうとしてるのは恐らく私達のせいだ! だから土下座してでもあかりに帰って来てもらう義務が私達にはあるんだよ!」

京子「私は、そうは思わない」

結衣「なっ………」

京子「あかりがこの部を去るのは私達のせい、だから謝る必要がある、そこまでは私も同意見。だけどごらく部に戻って来てもらう義務はない」

結衣「きょ、京子……おま、え本当にこのままでいいのか?」

京子「……………………」

結衣「あのあかりが……10年以上ずっと一緒に過ごしてきたあかりが! こんな簡単に私たちから離れて行っちゃうんだぞ!」

京子「……………………」

結衣「しかもその理由が私達があかりを苛めたからだ! そんな理由であかりはイヤイヤこの部を去って行ったんだぞ!」グスッ

京子「…………………………」

結衣「本当に……本当にこんな結末でいいのかよ!? 答えろよ歳納京子ォ!!」




京子「いいわけないだろ!!」ポロポロ


結衣「………ッ!」

ちなつ「京子、先輩?」

京子「そりゃ私たちがごらく部に戻って来るように頼んだらあの優しいあかりは多分戻ってきてくれるよ! でも本当にそれでいいのッ?」

京子「あのあかりが! 初めて私たちから離れてやりたい事を見つけたんだぞ! そんなあかりに私たちのわがままでそれを諦めろだなんて言えるはずないだろ!」ポロポロ

結衣「……京子」

京子「結衣だってそう思うでしょ! 今の私たちがする事は、あかりをごらく部に戻すんじゃなくてあかりの事を応援してあげる事じゃんか!」

ちなつ「京子先輩……」

京子「それにあかりだって最近はイヤイヤごらく部に来てたんだよ!? あかりは昨日体調不良で帰るって言ってたのに実は生徒会で仕事をしていた! つまりズル休みをしてまでごらく部を休んでたんだぞ!」

ちなつ「ぁ………」

京子「あのあかりをそこまで追い込んじゃった私達が、今更どのツラ下げてあかりに戻ってくるよう頼むってんだよ!!」

結衣「……そ、それは」

京子「それに2人とも見ただろ!? あかりが推薦書を出して来た時の得意気な顔を! 笑顔を! そして退部を許した途端に私達に目もくれず、生徒会室まで走って行っちゃったあかりの姿を!」

京子「今頃あかりは生徒会室で喜んでるはずだよ! 退部して嫌いな私達と離れられたことを! 生徒会に入ってみんなと仲良く楽しく過ごせることを!!」

あかり「そんなあかりに……そんな、あかっ、りに…………」プルプル

結衣「……京子」




京子「………………やだ……」



京子「嫌だよあかりぃーッ!! お願いだから戻ってきてよ!! なんでもするからぁ!! 100回だって1000回だって謝るからぁ!! もう二度とあかりの事弄ったりしないからっ!! うわあああぁぁぁあぁぁぁあん!!!」

結衣「…………………………」グスッ

ちなつ(あかりちゃん…………)








あかり「うわあああぁあん! 京子ちゃんも結衣ちゃんもちなつちゃんも! 全員全員大っ嫌いなんだから! うわあああぁぁぁあぁぁぁあッ!!」

松本「…………」ナデナデ

綾乃「赤座さん……」グスッ

千歳「よう頑張ったなぁ赤座さん……もう大丈夫やで」



向日葵「櫻子、帰りますわよ」

櫻子「えっ、でも………」

向日葵「赤座さんだってクラスメイトの私達に泣き顔なんて見られたくないでしょう。あとは先輩方に任せましょう」

櫻子「う、うん………」



松本「…………」ギュッ

あかり「うわあああぁぁぁあぁぁぁあんッ!! 嫌だよぉ! こんな別れ方なんて絶対にやだよぉ!! みんなのバカッ! あかりの大バカッ! うわあああぁぁぁあッ!!」

松本「………………」ナデナデ

続く

このSS自体はここで終わりです
続きはまた別のスレ、もしくはこのスレに投稿します

皆さんの意見を参考にしここで投下します
シルバーウィーク中に終わるといいな

放置はしないのでもう少し待って

>>75
>>55 あかり「そんなあかりに……そんな、あかっ、りに…………」プルプル
てこれあかりが京子たちのやりとり陰で聞いてプルプルしてんのかと思った

これは台詞主があかりじゃなくて京子の間違い?

>>76
うん、全くもってその通りです
言われるまで気づかんかったです

そこのところのセリフは京子でお願い
他のみなさんもいろいろ申し訳ないです

あかり「お姉ちゃんおはよう!」

あかね「あら、あかりおはよう。最近早くに起きて学校に行っているけれどどうしたの?」ゴゴゴゴゴ

あかり「うん! 今日はクラスのお友達と一緒に登校するんだ! あかりが2人のお家まで迎えに行くんだよぉ!」

あかね「ふぅん、そうなの。楽しそうで良かったわ」ゴゴゴゴゴ

あかり「うん! 櫻子ちゃんと向日葵ちゃんっていうんだけど、とっても優しくて素敵な子なんだ!」ニコッ

あかね「あらあら、本当に楽しいのね」ナデナデ

あかり「えへへへ」

あかね(この笑顔を見るだけでご飯3倍はいけるわ! つまり普段が2杯だから今日は6杯! 自分でも何を言ってるか分からないけれどとりあえずそういう事!)ゴゴゴゴゴ

あかり「それじゃあ行ってきまーす!」ガチャ

あかね「行ってらっしゃ~い」ゴゴゴゴゴ

あかね(今日は一日中フリー! そしてあかりは学校! 親はいない! うっふふふふふ! 宴(カーニバル)の始まりよ!!)

あかね「えっと、まずはパンツで次にスク水……あ、使用済みの歯ブラシとお尻の触れる椅子、ベッドのシーツにさっきかんでた鼻水のティッシュに………うっふふふ………あふぁはははは!!」ゴゴゴゴゴ

あかり「おはよう向日葵ちゃん!」タタタタッ

向日葵「おはようございます赤座さん。わざわざ私たちの家まで来てもらってすみません」ペコリ

あかり「べ、別に大丈夫だよぉ! あかりが2人と一緒に登校したくてやってるんだから」

向日葵「そう言って頂けると嬉しいですわ」

あかり「えへへ。ところで櫻子ちゃんは?」

向日葵「多分まだ学校の準備ができてないのではないかと……約束の時間はもう過ぎてるというのに……」


ガチャ



撫子「あ、ひま子」

向日葵「おはようございます撫子さん」

撫子「おはよう。櫻子でしょ?ちょっと待ってて」



バタン



ハヤクオキナサイ、ヒマコガマッテルヨ

サクラコハヤクオキロシ!

マダネムイ…

コンダケネムッテマダネムイトカシンジラレナイシ……

オネガイシマスハヤクオキテクダサイ

アア…ツイニナデシコオネエチャンガドゲザヲ……

ココマデシテマデオキテホシイノカヨ!

あかり「な、なんか中ですごい事が起こってる気がするよぉ」

向日葵(撫子さん、また櫻子に土下座してらっしゃるんですね……)


ガチャ


撫子「ひま子、もうすぐ用意終わらせてくると思うから悪いけどもう少し待ってて」

向日葵「えぇ、いつも櫻子を起こしてもらって申し訳ありません」

撫子「いや、どちらかと言えばそれはこっちのセリフだと思うんだけど」

あかり「あははは」

撫子「ん? そっちの子はいつからそこに?」

向日葵「最初からいましたわよ!?」

あかり「………………」ズーン

あかり(やっぱり影が薄いのはそう簡単に変わらないんだねぇ……)

向日葵「あぁ、赤座さん! そう気を落とさないで下さい。ほら、あれですわよ! 撫子さんには先入観があったからですわよ! 櫻子を迎えに来るのはいつも私一人だっていう!」

撫子「気付かなくてすみませんでした」ゲザァ

あかり「あ、あわわわ! そ、そんな外で土下座しないでください!」アタフタ

向日葵(流れるような土下座でしたわね)

撫子「愚妹櫻子の愚姉の大室撫子です。本日は愚妹が至らないばかりにとんだご迷惑をおかけしました。そして私も大変失礼なことを」ゲザァ

あかり「そ、そんな事ないですよぉ! とりあえず頭を上げて下さい!」

撫子「はい」

向日葵(素直ですわね)

あかり「あの、あか……私、赤座あかりです! 櫻子さんにはいつもお世話になってます!」ペコ

撫子「お世話になってる? お世話してるじゃなくて?」

あかり「あ、あはははは………」

向日葵(なにも言い返す事ができませんわね……)

花子「ほら、とっとと出ろし!」

櫻子「あだっ! 花子ぉ、もっと優しくしてよ!」

あかり「あ、櫻子ちゃんおはよー!」

櫻子「あれあかりちゃん? なんでここにいるの?」

向日葵「昨日約束したじゃないですの! もう忘れたんですかあなたは!?」

櫻子「あれ、そだっけ?」

あかり「酷いよ櫻子ちゃん!」プンプン

櫻子「あ、あはははは! ごめんごめん」

あかり「もう、今度から忘れちゃダメだよぉ?」

櫻子「オッケィ!」

向日葵「はぁ、心配ですわね」

撫子「櫻子、ひま子だけならまだしもあかりちゃんにまで迷惑かけるんじゃないよ」

櫻子「はぁ? なに言ってんのさねーちゃん。私が向日葵に迷惑かけた事なんてないじゃん! 逆ならまだしも」

撫子「え?」

向日葵「おいコラ」

櫻子「あいたたた! 向日葵ぃ私の頬っぺたを抓るんじゃないぃー!」

向日葵「あなたに迷惑かけないようないい所なんて一つもないじゃないですの! 寝言は寝てから言いなさい!」

撫子「その通りだよ櫻子」

あかり「あはは、本当に仲がいいんだねぇ。そうだ! 櫻子ちゃん、向日葵ちゃん、今度からあかりにもうんと迷惑をかけてよ!」

向日葵「へ?」

櫻子「え、マジで!? さっすがあかりちゃん! でもどうして?」

あかり「だって迷惑をかけあえる仲だなんてとっても羨ましいんだもん。あかりももっと2人と仲良くなりたいなって、えへへへ」

櫻子「お、おぉ………」

向日葵「あ、赤座さんそんな事を言ってはダメです! 櫻子の事ですわ、調子に乗ってとんでもない事を要求され………」

あかり「大丈夫だよぉ。あかり、櫻子ちゃんがすっごく優しくて気遣いのできる子だって知ってるもん。向日葵ちゃんだってあかり以上に櫻子ちゃんのいい所を知ってるはずだよ」

向日葵「ぇ……ま、まぁ……」

あかり「ね? だから大丈夫。あかり、櫻子ちゃんの事信じてるから」ニコッ

櫻子「あかりちゃん」ジワッ

あかり「ん?」

櫻子「大好きだぁ!」ガバッ

あかり「あわわわ!! あ、あんまりくっ付かないでぇ!!」アタフタ

撫子(なにこのいい子? うちの妹にしたいくらいだね)

花子「話は全部聞かせてもらったし!」

向日葵「あら、花子ちゃん」

撫子「花子いたの」

花子「是非とも花子のお姉ちゃんになってもらいたいし。櫻子は要らないし」

櫻子「にゃ、にゃにおぅ!? 貴様はそれでも櫻子様の妹か!」

花子「櫻子の事を姉と認めてる部分なんて遺伝子くらいだし。いいからとっとと出て行けし。送別会くらいはしてやるし」

櫻子「本気で追い出す気だ!? そ、それじゃあ私はあかりちゃんの代わりに赤座家の娘に……」

撫子「それ迷惑どころか、かなり悪質な嫌がらせになるよ」

櫻子「ひ、酷い……」ガクッ

向日葵「まぁ、赤座さんと比べてしまうと……」

あかり「あ、あははは……」

櫻子「もうこんな家出て行ってやるー!!」タタタタッ

あかり「あ、櫻子ちゃん待ってよぉ!!」

向日葵「さ、櫻子! それではすみません、行ってきますわ」

撫子「うん、櫻子のことをよろしく頼むよ」

花子「頼んだし、ひま姉」

向日葵「任せておいてください」





早いもので赤座さんが生徒会に来てから3週間が経った。赤座さんは既に、私たちと同時期に生徒会に入ったと錯覚してしまうほどよく馴染んでいる。



赤座さんはもうごらく部の方々とは特に連絡を取っていないらしい。それでも教室では吉川さんと特にこれといった問題もなくやって行けている。







表向きは…………

櫻子「あ、そう言えばさ。昨日の夕方学校を超えた先にある、なもりんスーパーに行ったんだけどさ」

向日葵「あら、ずいぶん遠くまで行きましたのね」

あかり「そういえば昨日特売日だったんだよねぇ。お姉ちゃんが何か買いに行ってたみたいだよぉ」

櫻子「そうそう。ねーちゃんと花子に行けって言われてさ。そん時にね、ちなつちゃんを見たんだ」

あかり「へー、ちなつちゃんもいたんだぁ」

櫻子「そうそう。なんかさ、ラムレーズンのアイスをスッゲー買い込んでてね。凄かったなぁ。羨ましいー!」

向日葵「あら、吉川さんってそんなにラムレーズンが好きなんですの?」

あかり「ううん、違うよ。多分それは京子ちゃんの分じゃないかなぁ。京子ちゃんってラムレーズン好きだから」

櫻子「くうぅー! ちなつちゃんって歳納先輩のためにラムレーズンを買ってくれるほど優しいんだ! 向日葵、私の分のアイスを今日買ってこい! これは命令だ!」

向日葵「櫻子に命令されるほど落ちぶれてなんていませんわ! それよりも、なぜ吉川さんが歳納先輩のアイスを?」

あかり「なもりんスーパーって結衣ちゃんの家から近いんだぁ。多分昨日3人でお泊まり会をしたんだと思うよぉ」

向日葵「……………!」

櫻子「むむむ、それは羨ましい!」

あかり「3人とも仲良くごらく部でやってるみたいで良かったよぉ!」ニコニコ

櫻子「……よっし! それなら今日私たちもお泊まり会をしよう!」

あかり「へ?」

向日葵「はぁ?」

櫻子「生徒会の親交を深めるための会合! ほら、明日って休みでしょ? 丁度いいじゃん!」

向日葵「そんな急に……大体どこでそんな事を………」

櫻子「今日はうちの両親がいないから! ちょっと待ってて、今からねーちゃんに許可もらってくる!」タタタタッ!

向日葵「さ、櫻子っ!! バ……」

あかり「櫻子ちゃん戻ってきてよぉ! 遅刻しちゃうよぉ~!!」





ー教室ー


ガラララ!


櫻子「っ! セーフ!!」

向日葵「ぜぇぜぇ……こ、こんな朝早くから………は、走るだ…なんて……」ハァハァ

あかり「ぎ、ギリギリだったよぉ……」

櫻子「まぁまぁ! 間に合ったんだし気にしない気にしない!」

あかり「ちょっとは気にしてよぉ……」

向日葵「ぜぇぜぇぜぇぜぇ…………」

あかり「向日葵ちゃん大丈夫!?」

櫻子「まったくもう。そんな重いものを二つもぶら下げてっから体力がすぐなくなるんだよ」

向日葵(か、回復したら殴る!)


あかり「あれ、まだちなつちゃんが来てないねぇ」

櫻子「本当だ。いつもならこの時間には来ているはずなのに」


ガラララ!


ちなつ「……はぁ、はぁ」

あかり「あ、ちなつちゃんおはよう」ニコッ

ちなつ「あ、あかりちゃん……はぁ………お、おはよう」ハァハァ

櫻子「なになに、ちなつちゃん寝坊したの?」

ちなつ「ま、まぁそんなとこ。夜遅くまで起きてて」

あかり「ちゃんと早く寝ないとダメだよ、ちなつちゃん」

ちなつ「う、うん」ハァハァ


ちなつ(い、言えない。昨日、結衣先輩の家で夜遅くまであかりちゃんの思い出話されてただなんて……)

ちなつ(終いには泣いちゃうし……それを慰めるのに私達がどれほど苦労したと………あかりちゃん、お願いだからカムバーック!!)

あかり「??」キョトン

向日葵「せいっ!」ガツン

櫻子「痛い!!」

向日葵「忘れるところでしたわ」

櫻子「何をだよ!!」

ー生徒会室ー



あかり「終わったよぉ」
綾乃「お、終わったわ!!」


櫻子「あかりちゃん、お疲れ様」

向日葵「すみません。いつもいつも私たちの作業まで手伝ってもらっちゃって」

あかり「ううん、大丈夫だよぉ」ニコッ

櫻子「朝にあかりちゃんあんなこと言ってたけど、私たち既に多大な迷惑をかけてるんじゃない?」

向日葵「ま、全くもってその通りですわ」

千歳「赤座さん、今日も凄かったなぁ。あれだけの仕事を短時間で終わらせて、そればかりか2人の手伝いまでしてしまうなんてなぁ」

綾乃「そ、そうね……」グデー

千歳「あらあら、満身創痍やね」

綾乃「さ、流石に赤座さんに負けてしまうんじゃ副会長としてのプライドが………」

千歳「別にそないなこと考えんでもええのに」ニコニコ

綾乃「うぅ……疲れたぁ……………」

あかり「杉浦先輩、池田先輩。紅茶入れました。どうぞ」カチャ

千歳「ありがとな赤座さん~」

綾乃「あ、ありがと……」グッタリ

向日葵「杉浦先輩、ずいぶんとお疲れのようですわね」

櫻子「やっぱり福会長って疲れるんだね。それだけ頑張らなくちゃいけないから」

あかり「うん。だからあかりももっともっと頑張って杉浦先輩みたいになりたいんだぁ」

綾乃「そ、それ以上頑張られたらこっちの身が持たないわよぉ~!!」バタン!

あかり「す、杉浦先輩しっかりしてください!!」

千歳「しばらく放っといてあげてな。綾乃ちゃん、お疲れみたいやから」

向日葵(半分は赤座さんのせいでしょうね……)



ガラララ!



あかり「あ、お疲れ様で…………」

りせ「…………………」ムギュ

りせ「…………………」スリスリスリスリスリスリスリスリ

向日葵「いつもの事ながら、入ると同時に赤座さんに抱きついて頬ずりし始めましたわね」

あかり「あ、あのぉ………」

りせ「………………………」スリスリナデナデスリスリナデナデ

あかり「あ、あにょぉ………」

櫻子「なんか最近ずっとこんな感じだよね。会長は仕事とかちゃんとしてるのかなぁ?」

向日葵「さすがに会長ですからやってるでしょう。この方は見えない場所で努力なさる方ですから」

りせ「…………………………」フンスッ

西垣「変なところで威張ってる松本も可愛いぞ」

向日葵「西垣先生いつの間に……」

西垣「松本が大声で赤座を愛でる声が聞こえてきてな。何事かと駆けつけた次第だ」

櫻子「ふーん、大声出してたんだ」

向日葵「未だによくわかりませんわね」

あかり「も、もうりせちゃん。恥ずかしいよぉ」カアア

りせ「………………♪」スリスリ

向日葵「あ、そうですわ。会長、今日なんですけれども、私たちこの後用事がありまして。仕事ももう終わりましたので、申し訳ないですがそろそろお暇してもよろしいでしょうか?」

りせ「……………………」グッ!

櫻子「ものすごい笑顔とサムズアップだ!」

西垣「やっと詰まらない会議を終わらせてきたのでテンションが高めなんだ」

櫻子「へぇ~ ま、とにかくありがとうございます! んじゃ帰ろっか向日葵、あかりちゃん!」

りせ「………………!?」

あかり「あ、そうだねぇ。それじゃあ皆さん、お疲れ様で…………」

りせ「…………!!」ムギュ

あかり「あわわわ!?」

向日葵「会長?」

西垣「赤座にまだ帰ってほしくないらしい。やっと会えたのにこんなすぐに別れるのはあんまりだ。あかりちゃん、愛してるわ! ちゅきちゅき~(はぁと) と松本は言っている」

りせ「………………」プンスカ

あかり「後半は言ってないって怒ってます」

西垣「心を読んだつもりだったのだが……余計なお世話だったかな」

りせ「……………」

あかり「ぁ、あぅ…………」カアァァ

向日葵(一体何を言っているのでしょうか? 赤座さんの顔が赤鬼に……)

りせ「………………」テキパキ

向日葵「徐ろに帰り支度を始めましたわ」

あかり「一緒に帰ろうって言われても、りせちゃんの家ってあかりの家から正反対じゃなかったっけ?」

りせ「……………………」グッ

あかり「そ、そんな無茶苦茶なぁ!!」

西垣「赤座のいる場所が私の帰る場所だ と言っている」

向日葵(最近、会長に櫻子のバカが移ったんじゃないのか心配ですわね)ジィー

櫻子「んあ?」キョトン

りせ「……………………」

あかり「あ、あの……だ、大丈夫なの? 仕事とか残ってたりとか」

りせ「……………」グッ








綾乃「大丈夫なわけあるかぁー!!」クワッ

りせ「……………」ビクッ

あかり「ひゃっ!?」

櫻子「杉浦先輩、ずっと喋らなかったと思ったら!」

千歳「ずっと頃合いを伺ってたんよ」

綾乃「会長……? 帰るだなんて寝言はこの書類の束を見てから言ってください!!」



バッサァァ!!



あかり「うひゃあ! なんなのこのプリントの束は!!」

向日葵「ど、どこから出しましたの!? と、いうよりもこれは一体……」

千歳「全部会長がやるはずだった書類やね。赤座さんが来てからの3週間、ずっとサボってたからなぁ」

向日葵「さ、サボってたぁ!? 会長が!?」

櫻子「ま、マジですか?」

綾乃「大マジよ! この3週間ずっと黙ってましたけど今日こそは我慢の限界です。今日はこれを終わらせてもらうまで返しませんからね!!」

りせ「………………」キョトン

綾乃「とぼけてもダメです! 今の私は頭がカンカンカンブリアなんですからね!」

りせ「…………………」ヒューヒュー

綾乃「吹けもしない口笛なんて吹かない!」

りせ「…………………」ジロッ

綾乃「別に怖くないですから睨んでも関係ありません!!」

りせ「……………」ウルウル

綾乃「泣いてもダメェー!!」

りせ「…………グスッ」ガシッ!

あかり「あ、あかりに抱きついて泣いちゃったよぉ!!」オロオロ

千歳「ほんまに会長のキャラが変わったなぁ……これも赤座さんの影響力なんやな。それはさて置き……」スチャ



千歳「あっはぁ~」タラー

櫻子「はいティッシュです」

千歳「ほんまにありがと~ 最近歳納さん静かだから妄想する機会が少ないんよ~」

あかり「もう、しょうがないなぁ。よしよし、あかりがなんとかしてあげるからねぇ」ナデナデ

綾乃「なっ!? あ、赤座さん! 会長を甘やかすなんてダメダメダーメ川なんだからね!」

あかり「杉浦先輩、あかり会長の仕事をお手伝いします!」

綾乃「へ?」

りせ「……!!」パァァ

綾乃「で、でも赤座さんじゃ会長の仕事なんて難しいんじゃ……」

あかり「教えてもらいながらやります。いいよね、りせちゃん?」

りせ「………………」コクコクコクコク

向日葵「どこかのバンド並みに頭を振ってますわね」

櫻子(なんか貞子みたい……)

あかり「悪いけれどもそういう事だからさ、向日葵ちゃんと櫻子ちゃんは先に帰っててもらってもいいかな?」

向日葵「ええ、そういう事でしたら全然構いませんわ」

櫻子「できるだけ早く終わらせて私の家に来てね! それじゃあお疲れ様です!」

千歳「また月曜にな~」



ガラララ




綾乃「まったくもう、赤座さんに感謝してくださいよ会長」

りせ「……………」ギュッ

あかり「はいはい、一緒に頑張ろうねぇ」

綾乃「もう……」

千歳「なぁなぁ綾乃ちゃん、綾乃ちゃんは手伝わんでええん?」

綾乃「へ?」

千歳「いやだって、このままじゃ赤座さんに生徒会長を持ってかれちゃうかもしれんよ?」

綾乃「…………はっ!」

ーめくるめく妄想の園ー


櫻子『あかりちゃん、生徒会長おめでとう!!』

向日葵『おめでとうございます!』

千歳『これからよろしく頼むな赤座さん』

あかり『えっへへ、ありがとうみんな!』

綾乃『そ、そんな…………』

りせ『民主主義の勝利』

あかり『そうですよねぇ。あかりよりもお仕事できないし』

櫻子『怒りっぽいし』

向日葵『ダメダメですものね』

千歳『正直ホッとしとるわぁ~』

綾乃『み、みんなぁ……』グスッ

りせ『泣いても結果は変わらない』

櫻子『うっわ泣いてるし!』

あかり『中学生なのに泣くなんておかしいですよね』クスッ

千歳『こんな泣き虫に生徒会長が務まるわけあらへんな』

向日葵『そうですわね。ふふふふ』




あ~っはっははははは!!




綾乃『い、い………………』





綾乃「嫌ぁああああ!!!」

りせ「…………っ!?」ビクッ

あかり「す、杉浦先輩……? だ、大丈夫ですか?」

綾乃「あ、あああ赤座さん! わ、わわ私も手伝うわ! いいですよね会長!?」

りせ「…………!?」

綾乃「お願いします手伝わせてくださいっ!」

あかり「大丈夫なんですか杉浦先輩!? さっきなんてすごく疲れてたのに……」

綾乃「問題ないないナイアガラ! 今の私はやる気満々マンハッタンよ! さぁみなさんご唱和ください! 次期生徒会長の杉浦綾乃でございます!!」ビシィッ!

りせ「…………………………」

あかり「…………………………」

千歳「…………………………」

千歳「あ、綾乃ちゃん……?」

綾乃「歳納京子だろうが爆弾だろうがなんでも来なさい! 今の私は無敵だぁ!!」


あかり「…………………………」

りせ「…………………………」

千歳「…………………………」

西垣「…………………………」

千歳「あ、まだいたんですね」

西垣「ずっといたぞ」



ー大室家ー




あかり「そんな感じで杉浦先輩がすっごく頑張ってたよぉ」

櫻子「へぇ、まさか杉浦先輩がそんな風になるなんてねぇ。あかりちゃんの影響かな?」

あかり「あ、あかりそんな事しないよぉ!」

櫻子「えーそうかなぁ? なんか以前ちなつちゃんにあかりちゃんがおかしくなったって聞いたけど」

あかり「もぉちなつちゃんったら、なんて事を櫻子ちゃんに言ってるのぉ!」プンプン

櫻子「でもいいじゃん。そのおかげで今日中に全部終わったんでしょ?」

あかり「うん、凄かったよぉ。あかりと杉浦先輩が2人がかりでやった仕事をりせちゃんは1人で終わらせちゃったんだぁ」

櫻子「会長ってすっごく仕事できるもんね。向日葵にも見習わせたいものだよ」

あかり「あ、あはは…… ところで向日葵ちゃんはいつ頃くるの?」

櫻子「えっとねぇ、もう直ぐ来るはずだけど……」


ピンポーン


櫻子「お、来たっぽい! 噂をすれば崖だね!」タタタタッ

あかり「それを言うなら噂をすれば影なんじゃ…………」

向日葵「お邪魔しますわね」

楓「お邪魔しますなの」

櫻子「おお、楓も来たのか!」ナデナデ

楓「えへへへ、櫻子お姉ちゃんこんばんは」

櫻子「おう! ささ、入って入って。向日葵はそこで靴磨きな」

向日葵「お前がやれ」

あかり「あ、あははは」

楓「あ、あの……こんにちは、なの」

あかり「こんにちは、楓ちゃん…だっけ。向日葵お姉さんと櫻子お姉さんのお友達の赤座あかりって言うんだ。よろしくねぇ」ニコッ

楓「……古谷楓、なの」コソッ

向日葵「あら、楓ったら。ごめんなさいね赤座さん」

あかり「ううん、大丈夫だよぉ」ニコッ

櫻子「大丈夫だ楓! あかりちゃんは櫻子様の次に優しく寛大なのだ! 向日葵なんかよりも段違いにいい子だよ!」

向日葵「櫻子、それはどういう意味で…………」プルプル

あかり「まぁまぁ、櫻子ちゃんなりのジョークなんだから。あかりなんかよりも、向日葵ちゃんの方が優しいもん!」ニコニコ

向日葵「ああいえ、そういう事じゃ……」

櫻子「いざ行かん我が部屋へ!」

楓「おー」

あかり「おー!」

向日葵「こ、こら! 3人とも待ちなさい!」

ー櫻子の部屋ー



櫻子「そんじゃ向日葵と楓はそこに座って。早速トランプやろー!」

あかり「わーい!」

楓「楽しみなの!」

向日葵「楓もいることですし、メジャーなババ抜きでもやりましょうか」

あかり「よーし、やるよ! 今日こそは絶対に勝ってやる! あかりが弱いと言われるのも今日が最後だよぉ!」

向日葵「ただのババ抜きにこれほどまでの執着心。これはまさか………」






楓「これであがりなの!」

あかり「ふ、ふぇええん! また負けたぁ~!」

向日葵「なんとなく想像通りでしたが……」

櫻子「ここまで弱いなんて……」

楓「えへへへ、あかりお姉ちゃんはすぐに顔に出るから分かりやすいの」

あかり「うぅ………」

楓「よしよしなの」ナデナデ

あかり「楓ちゃんに慰められるなんてぇ…………」

櫻子「楓は本当にいい奴だなぁ。うちの花子にも見習わせたいくらいだ」

向日葵「花子ちゃんも十分良い子でしょうに」

櫻子「花子がぁ? 全然だよ花子の奴は! あいつはまずお姉様である私を敬う気持ちがない! その時点で妹失格!」

あかり「そうかなぁ。朝少し見たっきりだけど、とってもいい子そうだったよぉ」

向日葵「櫻子がしっかりしないから花子ちゃんが困ってるんでしょうに……」

楓「楓も花子お姉ちゃん大好きなの!」

櫻子「むむむむ……」

あかり「あかりも妹だけど、お姉ちゃんの事大好きだけどなぁ」




ガチャ


花子「ただいまだし!」

撫子「櫻子、ちょっと荷物運ぶの手伝って」

櫻子「あ、ねーちゃんたち買い物から帰ってきたみたい」

あかり「そうみたいだね。あかりもご挨拶に行かないと」

楓「あかりお姉ちゃんも向日葵お姉ちゃんも一緒に行くの!」

あかり「そうだねぇ、一緒に行こ」ニコッ

向日葵「あらあら楓ったら、もう赤座さんと仲良くなっちゃって」

あかり「楓ちゃんいい子だもんね」ナデナデ

楓「えへへへ」







撫子「あかりちゃんもう来てたんだ」

あかり「はい、お邪魔してます。この荷物ですよね」

撫子「あぁ、いいよそんな事しなくて。櫻子、アンタが運びな」

櫻子「言われなくても分かってるよ。ところでアイスはどこ?」

撫子「ちゃんと買ってあるから。早くしなって」

花子「早く運べし。こんな所で止まってるほど花子は暇じゃないんだし」

櫻子「うっさいなぁ、分かってるよ。よいしょっと」

向日葵「今日はまた結構買いましたわね」

櫻子「スゲー! 黒毛和牛じゃん!」

向日葵「まぁ、本当! これ、かなりしたんじゃありませんの? 私と赤座さんが出した分のお金じゃ到底足りないはずじゃあ………」

撫子「私からのおごりだよ」

あかり「えぇー!? そ、そんな悪いですよぉ! あかりも払います!」アタフタ

撫子「普段うちの櫻子がお世話になっているお礼だよ」

櫻子「肉だー肉ぅ!!」

花子「櫻子うるさいし!」バシッ

櫻子「あだっ! 痛いなぁ……」

あかり「で、でも……」

撫子「中学生が高校生に遠慮なんてするものじゃないよ。もしも気が晴れないならそうだね、花子の宿題を見てやってくれないかな」

花子「へ?」

あかり「花子ちゃんの宿題、ですか?」

花子「べ、別に平気だし! 宿題くらい1人で出来るし! 花子なんかよりも櫻子のを見てもらうべきだし!」

櫻子「私はもう宿題終わらせたよ?」

花子「なん……だと…………?」

櫻子「今夜を楽しく過ごすために帰ってきてすぐに宿題を終わらせたのだ! 櫻子様を見くびるなよ花子!」

花子「こんな時だけ鬼の首を取ったようにするなし!」

向日葵「そうですわよ櫻子。これを毎日続けないと」

櫻子「ふぐぅ……」

撫子「まぁそんなわけで、あかりちゃん。花子のことをよろしく頼むよ」

あかり「わ、分かりました」

花子「ちょ、花子を無視して話を先に進めないで欲しいし」

向日葵「まぁまぁいいじゃありませんの。その間に私たちでご飯の支度をしてしまいますから」

撫子「終わったら遊んでていいから。ほら、楓も一緒に行きな」

楓「分かったの! 早く花子お姉ちゃんのお部屋に行くの!」

花子「わ、分かったし……あの、こっちですし」スタスタ

あかり「うん、ありがとう! それじゃあ行ってくるね」テケテケ



撫子「これでよし。あかりちゃんに余計な気を使わせちゃマズイしね」

向日葵「そうですわね。花子ちゃんをダシに使っちゃったのが少し心苦しいですけど」

櫻子「それにしても花子の奴、なんであんなに宿題見てもらうの嫌がってたんだろ? あかりちゃんってとってもいい子なのに」

撫子「そりゃ花子からしたらあまり知らない人に宿題を見られるわけでしょ。少し恥ずかしいんじゃないの。櫻子だって私の友達に宿題やってるところ見られるの嫌でしょ?」

櫻子「へ? 教えてもらえるんだから嬉しくない?」

撫子「…………」

向日葵「……………プライドもへったくれもないんですのね櫻子は」

櫻子「あんまり褒めるなよ~」ニコッ

撫子「……はぁ」


ー花子の部屋ー


花子「ど、どうぞ」

あかり「わぁ! すっごい可愛いお部屋だねぇ」

花子「あ、あまりジロジロ見ないで欲しいです。あまりいいお部屋じゃないですし」

楓「楓は花子お姉ちゃんのお部屋大好きなの」

あかり「えへへ、良かったねぇ花子ちゃん」ニコッ

花子「…………うぅ」カアァ

花子(櫻子ともひまねぇとも撫子お姉ちゃんとも違うタイプで少し対応に困るし)

花子「しゅ、宿題やるし」

あかり「あ、そうだったねぇ。見ててあげるから頑張ってねぇ」

楓「楓も見ててあげるの」

花子「は、恥ずかしいし…………」



ーその後ー


あかり「うわぁ凄いね花子ちゃん! 全部正解だよぉ!」

楓「花子お姉ちゃん凄いの!」

花子「ふふん、当然だし! この花子を櫻子と同列にされちゃ困るし!」フンスッ

あかり「花子ちゃん凄い凄い」ナデナデ

花子「わわわ!? は、恥ずかしいです!」

楓「楓もやるの」ナデナデ

花子「か、楓まで…………」

花子(でも全然嫌じゃないし。むしろ凄く気持ちいいし…………)

楓「えへへへ」ナデナデ

あかり「えへへ、花子ちゃん可愛いなぁ」ナデナデ

花子(こ、これは幸せすぎるし)ウットリ

あかり「せっかく花子ちゃんの先生になってあげようと思ってたのに、あかりの出番はなかったねぇ」

花子「今日は偶々だ……です。普段は花子も撫子お姉ちゃんに質問してます……し」

あかり「別に普段の話し方でもいいよぉ。あかりなんかの為に無理しないで平気だからねぇ」ニコニコ

花子「う、でも…………」

花子(この人に敬語使うのやめたら、花子の方がお姉ちゃんぽくなっちゃう気がするし…………)

あかり「気にしなくてもいいよぉ。それじゃあご飯ができるまで少し遊ぼっか」

楓「トランプあるからババ抜きやるの!」

あかり「わーい!」

花子「わ、わーい…………」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



花子「あかりお姉さん、一つ質問してもいいし?」

あかり「うん、いいよ。あ、また揃わなかったかぁ……」

花子「あかりお姉さんと櫻子っていつから友達だったし? いままで櫻子はあかりお姉さんのことをあまり話さなかったのに、最近は凄く会話に出てくるし」

楓「向日葵お姉ちゃんも一緒なの。最近よくあかりお姉ちゃんのことを話してくれるようになったの」

あかり「えっとね、中学に入ってからすぐにお友達になったんだよ」

花子「でも一緒に遊ぶようになったのは最近? 櫻子と同じ生徒会に入ったのも」

あかり「うん、そうだよぉ」

花子「なんで急に生徒会に入ったし? あかりお姉さんは今まで部活とかやってなかったの?」

あかり「…………………………」

花子「あかりお姉さん?」

あかり「あ、うん……そうだよぉ。今まで部活とか入ってなかったんだ。だから櫻子ちゃんに誘われて生徒会に入ったんだぁ」ニコッ

花子「………やっぱりあかりお姉さん、嘘つくのが苦手みたいだし」

あかり「え? それはどういう…………」

花子「はい、花子あがりだし」

楓「えっと……それじゃあ楓もこれであがりなの」

あかり「ふ、ふぇええん! またあかりの負けぇ~!?」ガーン

花子「あかりお姉さんは嘘をつこうとするとすぐに顔に出るから分かりやすいし。ババ抜き弱いのもそのせいだし」

楓「ババを取ろうとするとすごい表情で笑うからとても分かりやすいの」

あかり「す、すごい表情…………」ズーン

花子「あかりお姉さん、生徒会に入る前に何かあったのかし?」

あかり「べ、別に何もないよぉ……」

花子「本当かし?」

あかり「えっと、なんで花子ちゃんはそんなにあかりのことを気にしてるの?」

花子「櫻子のバカが無理矢理にあかりお姉さんを生徒会に入れたんじゃないかと思って心配になったからだし」

あかり「い、いやいやいや! そんなことは絶対にないよ!? あかりは自分の意思で生徒会に入ったんだから大丈夫だよぉ!」

花子「あかりお姉さん優しいし、櫻子をかばって嘘をついているんじゃないかし?」ジーッ

あかり「そんなことないってばぁ! それにあかりは最終的には生徒会長の推薦で入ってるんだよぉ」

花子「生徒会長?」

楓「生徒会で一番偉い人のことなの」

あかり「そうそう、だから大丈夫。花子ちゃんが心配しているようなことは全くないから大丈夫だよぉ」

花子「……………………」ジーッ

あかり「あ、あはははは…………」

楓「楓は大丈夫だと思うの花子お姉ちゃん。だってあかりお姉ちゃんが嘘をついていたらすぐにわかると思うの」

花子「それもそうかし」

あかり「ホッ……」

花子「でも前に他の部活はやってたんだし?」

あかり「え……」

花子「だってさっき嘘をついてる顔をしてたし。あかりお姉さん凄く分かりやすいし」

楓「楓も分かったの!」

あかり「うぅ、こんな小さい子達にも見破られるなんてぇ…………」

花子「ということはやっぱり……」

あかり「うん。でもね、その部活を辞めたのはあかりが自分で決めたことなんだぁ。きっかけは櫻子ちゃんだったかもしれないけれどもね。だから花子ちゃんが心配してるようなことはないよぉ」

花子「それならよかったし。もし櫻子があかりお姉さんを無理に生徒会に入れたんなら本気で怒るところだったし」

楓「良かったの!」

あかり「えへへへ、2人とも本当に優しいんだねぇ。あかりのことを心配してくれて本当にありがとう」ナデナデ

楓「あかりお姉ちゃんに頭撫でられるの好きなの!」ニコニコ

花子「ま、まぁ悪くないかもだし…………」カアァァ

あかり「それならもっと撫でてあげるねぇ」ナデナデ

花子「ありがとうだし。それと最後に一ついいかし?」

あかり「ん? なにかな?」

花子「生徒会に入る前と入った後、どっちの方が楽しいし?」

あかり「それはもちろん生徒会に入ってからの方だよぉ」ニコッ

花子「それは良かったし。櫻子もたまには良いことをするもんだし!」

あかり「本当に櫻子ちゃんには頭が上がらないよぉ」

花子「あ、でも櫻子にそんなことを言っちゃダメだし! 櫻子はすぐに調子にのるし!」

あかり「うん、そうかもしれないねぇ。あかりのことを心配してくれてありがとう」ナデナデ

花子「えへへ、どう致しましてだし」




ガチャ

あかり「え?」ナデナデ

花子「へ?」

撫子「3人とも、ご飯できたよ…………って、花子とあかりちゃん凄く仲良くなってるね」

花子「な、撫子お姉ちゃん! 部屋に入る時はノックして欲しいし!」カアァァ

撫子「あら、花子ももうそんなお年頃なの?」

花子「そ、それと恥ずかしいからもう撫でるのをやめて欲しいし……」

あかり「ご、ごめんねぇ!」

楓「花子お姉ちゃん、顔が真っ赤なの」

撫子「花子、なんなら楓だけ連れて行こうか? 2人の食事はラップでもしといて………………」

花子「すぐ行くし! 別に撫でられるのが終わって残念とか思ってないし!!」

撫子(かなり残念がってるみたいだね、この子)

楓(花子お姉ちゃんも凄く分かりやすいの)



ー同時刻の結衣の家ー




京子「…………」ピコピコ

結衣「…………」ピコピコ

京子「…………」ピコピコ

結衣「…………」ピコピコ

京子「…………あ、負けた」ピコピコ

結衣「…………あ、勝った」ピコピコ

京子「あーあ、なんか今のはいけそうな気がしたのに~」

結衣「そんな簡単に負けてたまるかっての。もう良い時間だしそろそろご飯にしよっか」

京子「え、私も食べてっていいの?」

結衣「こんな時間に急に押しかけて来ておいて今更だろ。今何か用意するから待ってて……って」ガラッ

京子「どうかした~?」

結衣「お前、昨日ちなつちゃんに買って来てもらってたラムレーズン、一個も食べてないじゃないか」

京子「え、あぁ……そうだっけ」

結衣「どうしたんだよ、いつもなら1日も経たずに食べちゃうのに」

京子「うん……なんか最近さぁ、なに食べても美味しく感じないんだよねぇ~」

結衣「なんでだよ」

京子「なんでだろうね~」

結衣「………………オムライスでいい?」

京子「わーいオムライス、京子結衣のオムライス大好き~」

結衣「…………………………」

京子「………結衣?」

結衣「お前さ、いい加減にしろよ」

京子「な、なにさ……急に怖い顔しちゃって」

結衣「いつまでそんな風に不貞腐れてるつもりだ! 付き合わされる私たちの身にもなってみろ!!」

京子「べ、別に不貞腐れてるわけじゃないって……」

結衣「自覚がないのか? お前のせいで私やちなつちゃんがどれくらい気を使ってると思ってるんだ!」

京子「そ、そんなこと言われたって! だ、大体気を使ってくれだなんて私頼んでないじゃんか!」

結衣「そういう問題じゃないだろ! 大体ごらく部だけならまだしも私の家に来てまでそんな風にされたんじゃ私まで気が滅入って来るんだよ!」

京子「なんだよ! 私が来た時は笑顔で迎えてくれたくせに!!」

結衣「当たり前だろ! あんなに気落ちしてるやつを無下にできるわけないだろう!!」

京子「…………ふん、そういう事か」

結衣「なに?」

京子「結局のところ結衣が今まで私とずっと一緒にいてくれてたのは同情心からだったんだね」

結衣「なっ…………!?」

京子「あかりがいなくなってからの事じゃない。小さい頃から私とずっといてくれたことも!」

京子「小さい頃泣き虫で人見知りだった私を気にかけてくれたのも、お母さんから言われたとかで嫌々だったんでしょ!」

京子「いままで私とずっと友達ごっこしてたんだろ!! もう私みたいな奴と友達ごっこなんてしたくないんでしょ!!」

結衣「そ、そんなわけ…………」

京子「うるさい! 大体あかりがいなくなってから私がこんなにも落ち込んでるのに結衣やちなつちゃんはすぐに平気な風にしちゃってさ!」

京子「どうせ2人ともあかりのことなんて別にどうでもよかったんでしょ!! 最初からあかりの事を邪魔者扱いしてさ!! 裏じゃあかりがいなくなって喜んでるんだろッ!!」

結衣「………………ッ!」




バシィッ!




京子「うあっ……!」

結衣「…………」

京子「ゆ、結衣ぃ……いま、私のこと…………」

京子「い、痛い………いたいよぉ…………」ウルウル

結衣「…………らない」

京子「……え?」

結衣「今回のことは……謝らない。京子が泣こうがどうなろうとも、絶対に謝らない」

結衣「私だけならまだしも、ちなつちゃんまでもバカにする発言を私は絶対に許さない」

京子「ッ!」




バタン!





結衣「……出てっちゃったか」

結衣「…………………………京子のバカ。私やちなつちゃんがどれだけ……泣くのを我慢してると…おも、て…………」グスッ



結衣「………嫌だよ、あかり。こんなの、私たちは望んでなかったよ」グスッ


ー大室家ー



櫻子「よっしゃ! これなら勝ったぁ!」

あかり「なんの! ゴーストを使って甲羅ゲット! えいっ!」

櫻子「あぁ! なんでこんな!?」

あかり「やった、当たったぁ!」

花子「あ、こら! それ花子の甲羅だし!」

あかり「えへへへ、ごめんね花子ちゃん」

花子「むむむ、絶対に許さないし。あとであかりお姉さんには復讐してやるし」

向日葵「撫子さんはかなり後ろの方ですわね」

撫子「そろそろ雷が……ほら来た」

あかり「あぁ!! 雷のせいであかりの車が谷底にぃ!!」ガーン

櫻子「ちょっとねーちゃん! 今わざと私のこと踏んで行ったでしょ!!」

撫子「勝負の世界は非常なの。覚えときなさい」

花子「ぷぷぷ、あかりお姉さんいい気味だし」

あかり「もぉ花子ちゃん酷いよぉ~」プンプン

向日葵「よし、今のうちにキノコを使って……」

撫子「えい」

向日葵「きゃああ! 私まで踏まれましたわ!!」

撫子「これで邪魔者は消えたね。私が1位に…………」

楓「やった、ゴールしたの!」パァァ

撫子「あ」

櫻子「か、楓がいたのを忘れてた!!」

向日葵「楓ったらアイテムをほとんど使いませんし………失念していましたわ」

花子「えい、えい!」

あかり「ふわぁあああん! 花子ちゃん、あかりにボムをぶつけるのをやめてぇ!!」

あかり「ふわぁ~」

櫻子「あかりちゃん、どうしたの?」

撫子「もしかして眠いとか?」

あかり「う、うん……少し眠いかも…………」

向日葵「まだ9時前なのに……」

撫子「あかりちゃんは規則正しいんだね。櫻子、もう寝かしてやんな」

櫻子「そうだね。んじゃゲームはそろそろやめて寝よっか」

向日葵「ところで櫻子、今日赤座さんはどこで眠るんですの? さっき撫子さんに聞いたんですけれど、予備の布団いま一つしかないのでしょう?」

櫻子「え? そりゃもちろん私のベッド。私は予備の布団で寝るよ」

向日葵「そうなりますと私は?」

櫻子「あ」

撫子「え?」

向日葵「…………まさか考えてませんでしたの?」

櫻子「い、いやぁ~そのね…………あ、タオルケット貸してあげるからリビングのソファででも………………」

撫子「アンタがそうしなさい。いくら昔からの知り合いであるひま子でも、ここでは正真正銘のお客さんなんだから」

櫻子「うえぇ……こんなことまで考えてなかったぁ…………」グッタリ

あかり「大丈夫だよぉ櫻子ちゃん……あかりが、ここで……ねむる………から…」ウツラウツラ

櫻子「いや、そんなわけには! てか早くしないとあかりちゃんが本当に寝ちゃうよ!! と、とりあえずあかりちゃんは私のベッドに……」

花子「いい考えがあるし! あかりお姉さんは花子のベッドで寝ればいいし!」

櫻子「それじゃ花子はどうすんの?」

花子「花子は小さいからあかりお姉さんと一緒にベッドで寝れるし! いい考えにも程があるし!」

櫻子「それじゃ私たちは?」

花子「櫻子は布団で寝て、ひま姉と楓は櫻子のベッドで眠ればいいし! パーフェクトだし!」

櫻子「ナチュラルに私が布団になってる!?」

あかり「えー、あかり眠れるのぉ?」

花子「すぐ眠れるし! ほら、早く花子の部屋に行くし!」クイッ

櫻子「えー、せっかくのお泊まり会なのにあかりちゃんと別の部屋かぁ……」

向日葵「そこの所を考えてなかった櫻子が悪いんじゃありませんの」

櫻子「だってぇ……布団が一つしかないなんて忘れてたんだもん」

あかり「あははは~」

花子「ほら、早く行くし! それじゃあみんなお休みだし!」

あかり「お休みだし~」ウツラウツラ



バタン




撫子「なんだろうね、花子の奴随分とあかりちゃんに懐いたみたいだね」

楓「あかりお姉ちゃんとっても優しいから楓も好きなの!」ニコッ

櫻子「花子の奴猫のお面を被っちゃってさ」

向日葵「それを言うなら猫を被るじゃありませんの?」

櫻子「そうだっけ? まぁ伝わればいーじゃん」

撫子「……良くないよ」ハァ

向日葵「それでは楓もそろそろ眠らないといけませんわね。櫻子のベッド借りますわよ」

櫻子「へいへい、勝手にしてくれ~」

撫子「それじゃ櫻子は私のベッドに来な。少し狭いかもしれないけれど」

櫻子「平気でしょ。ほら、撫子ねーちゃんも私も向日葵と違ってスマートだし」

撫子「それもそっか。あはははは」

櫻子「あっはははは!」

撫子「あははは……は…………」

櫻子「あはは………………」

撫子「」ジロッ

櫻子「」ギロッ

向日葵「な、なんですの……? そんなに私のことを見て………………」



撫子・櫻子「おっぱい禁止ッ!!」バシッ!

向日葵「きゃんっ!?」







ー翌朝ー



花子「おはようだし」

あかり「おはよう花子ちゃん。ふあぁ~」

花子「大っきなあくびだし、ふあぁ~」

あかり「あれ、なんかリビングの方で音がしない?」

花子「もうみんな起きたし? ちょっと行ってみるし」





櫻子「うぉりゃー! ファイアーファイアー!」

向日葵「なんの、リフレクターで!」

撫子「リフレクターは厄介だね」

櫻子「こんちきしょー!!」



あかり「…………」ポカーン

花子「あの、3人とも……もしかしてずっとなもブラやってたし?」

あかり「し、しかも向日葵ちゃんだけ1人のチームだよぉ」

櫻子「向日葵は我々の敵だ!!」

撫子「2対1なのに一進一退の攻防になってるから大丈夫。イジメはなかった。そして…………もうだめ……」バタン

櫻子「ねーちゃんしっかり!! ねーちゃ……あぅ……」バタン

向日葵「か、勝ちましたわ…………ふ、ふふふ………………」バタン

花子「ど、どうしたし!?」

あかり「みんな眠っちゃったみたいだねぇ…………」

向日葵「あか、ざ……さん………」

あかり「へ?」

向日葵「楓は……櫻子の、ベッドに………………くぅ」

花子「寝ちゃったし」

あかり「そ、そうだねぇ」

ーあくる日の生徒会ー




千歳「あはは、それは災難やったなぁ」

あかり「えへへ、少し困りました」

りせ「……………」スリスリナデナデ

千歳「まぁええんちゃう? そういう経験もしといた方がいざという時に役に立つんとちゃうかな」

あかり「こんな経験役に立つとは思えませんよぉ」



ガラララ



綾乃「あら、赤座さん早かったわね。他の2人は?」

あかり「櫻子ちゃんたちはちょっと具合が悪いらしいので先に帰って貰っちゃいました」

千歳「今日はあまり忙しくならなさそうやったから先帰らしちゃったんよ。あとで図書室の資料を少し確認するだけやからね」

綾乃「そうね、今日はそれぐらいしか仕事もないし心配はノンノンノートルダムよ。2人とも何が原因かわからないけれど早く良くなってほしいわね」

あかり「あ、あははは」

りせ「………………」ナデナデスリスリ

千歳(夜更かししてゲームやったのが今日まで響いてるだけやねんな)

綾乃「ところで赤座さん、最近歳納京子と会話とかしてるかしら?」

あかり「京子ちゃんですか? いえ、最近はあまり会ってないですけれど」

りせ「…………」ムギュ

綾乃「そう……」

千歳「歳納さんに何かあったん?」

綾乃「いえ、大したことじゃないんだけれどもね。なんか今日の歳納京子、いつもより元気がなかったから」

千歳「そうだった? うちは気付かんかったけど。むしろいつもより元気があったと思うけど」

綾乃「なんか空元気みたいな感じがしたのよ。無理して元気を装ってる感じがね」

あかり「何かあったのかなぁ? 結衣ちゃんは京子ちゃんに何か言ってませんでしたか?」

りせ「……………」スリスリムギュ

綾乃「あ、そう言えば…………」

あかり「??」

綾乃「今日その2人が話してるところを一度も見てないわ。いつもなら絶えず2人一緒にいるのに、今日に限って別々の友達とそれぞれ話ししてたわ」

千歳「そう言えばそうやねぇ。そこはうちも気づいてたで」

あかり「う~ん、という事は2人は喧嘩したのかなぁ」

綾乃「喧嘩ねぇ……」

千歳「あの2人が喧嘩かぁ。俄かには信じられんなぁ」

あかり「あ、よかったらあかりが詳しく聞いてきましょうか?」

綾乃「え……へ?」

あかり「ほら、あかりって2人の幼馴染ですし。結構話しやすいんじゃないかなって思って」

綾乃「いや、でも………」

千歳「赤座さん、それはアカンで」

あかり「へ、池田先輩それはどういう意味で……」

千歳「はっきり言わせてもらうとな、赤座さんをあんな風に泣かせた2人のことをうちらはまだ許してないんよ」

綾乃「ちょっと千歳!?」

千歳「黙っといてもしかたないよ。流石の綾乃ちゃんだって歳納さんと船見さん両方に怒ってたくらいやし」

綾乃「ま、まぁそりゃぁね。でもだからってそれを赤座さんに言うこと…………」

千歳「赤座さんは優しいから、多分うちらがキチンと止めん限り絶対に歳納さんのところに行ってまうと思うんよ。せやろ、赤座さん」

あかり「あ、はい……… もう行く気満々でした」

千歳「うちらは正直赤座さんとあの2人を会わせる事自体に反対やねん。もちろん赤座さんが必要ならば会ってもらうのはええけど、それ以外の事ではあまり会わせたくない」

あかり「………………」

りせ「……………」ナデナデ

綾乃「赤座さんにとってはあまり聞きたくない話題だとは思うけれど、私たち2人は歳納京子と船見さんをまだ許せていないの。もちろんクラスでは普通に話すし2人とも大切な友達だって胸を張って言える間柄ではあるわ。でも、それと赤座さんの事は別なの」

千歳「せやね。赤座さんの事を無視したりいじめたりした事は忘れられんよ。赤座さんがもうそれを許しているとしてもな」

綾乃「ええ、私も同意見よ。それとごめんなさい赤座さん。私の不用意な発言でこんな話になっちゃって…………」

あかり「いえ、別に最初から怒ったりなんてしてませんから大丈夫ですよぉ。それにもう吹っ切れましたから!」ニコッ

綾乃「ありがとう赤座さん。歳納京子たちの事は私たちがなんとかするから忘れて頂戴!」ニコッ

千歳「はぁ、本当にええ子やな~ うちらは絶対に赤座さんを離さんからな!」

綾乃「本当にいい子よね。気遣いもできて仕事もできて」

りせ「……………」フンスッ

あかり「ちょっとりせちゃん、恥ずかしい事言わないでよぉ。りせちゃんの方が全然可愛いよぉ!」

りせ「…………ッ!」カアァァ

あかり「えへへへ、照れちゃってるりせちゃんも可愛い」ムギュ

りせ「…………………………!!」

綾乃「赤座さん、この満面の笑みの会長はなんて?」

あかり「我が世の春が来たッ!現世こそ偽り、新世界こそ我が真実なりぃ!! って言ってます」

綾乃「………………どうでもいいけれど、いい加減仕事してください」

ーごらく部ー



結衣「…………………………」ペラッ


ちなつ「…………………………」


京子「…………………………」カリカリ


ちなつ「…………………………」


結衣「…………………………」ペラッ


ちなつ「…………………………」


京子「…………………………」カリカリ



ちなつ(き、気まずいにも程がある!!)

ちなつ(なんでこの2人いつまでたっても話さないのよー!! 結衣先輩は来て早々に本読み始めるし京子先輩は原稿始めちゃうし!)

ちなつ(なんで2人とも全く話さないのよ!! ってこれ2回目? もうこの際そんな事はどうでもいい! と、とにかく何か話題を…………)

ちなつ「あの、結衣先輩は一体何を読んでるんですか?」

結衣「あぁ、これ? 小説だよ。よかったらちなつちゃんも読む?」

ちなつ「そ、そうですね! 結衣先輩が読み終わったら是非読ませてください!」

結衣「うん、分かったよ」ペラッ

ちなつ「ぁ…………そ、そうだ! 京子先輩! よかったら京子先輩の原稿進めるの手伝いましょうか! ほら、2人でやったほうが早く終わりますし!」

京子「ううん、大丈夫。今回はまだコムケまで時間あるし、ありがとねちなつちゃん」

ちなつ「ぁ、そうですか…………それじゃあ何かやる事は……」

京子「特には大丈夫。ちなつちゃんも今日は好きな事やってていいよ」

ちなつ「は、はぁ…………」

ちなつ(京子先輩がこんなだと調子狂うなぁ。でもとにかく私の言葉には反応してくれる事も分かったしこれは収穫かな)

京子「…えっと、あとはここのところを定規で線引いて……ってあれ?」ゴソゴソ

ちなつ「どうかしましたか、京子先輩?」

京子「いや、ちょっと定規忘れちゃったみたい。多分図書室だ」

ちなつ「なんで図書室なんですか?」

京子「お昼休みに図書室で作業してたから。置き忘れてきたんだと思う。ちょっと行ってくるよ」

ちなつ「あ、それじゃあその間にこれの手伝いを…………」

京子「いやいや! それはいいから! ホントに! ちなつちゃんは原稿に触らないでね、お願いだから!」アタフタ

ちなつ「わ、分かりました」

ちなつ(遠慮なんてしなくていいのに……)





ー廊下ー




京子「はぁ、やっぱり気まずいよなぁ………結衣には話しかけられないしちなつちゃんはあからさまに気を遣ってきてくれてるし…………」

京子「悪いのは私だって事は百も承知してるけどもさ……それでもやっぱりバツが悪くて結衣に謝れないんだよなぁ……しかも1日空いちゃってるし、教室でも一言も喋れなかったし……」

京子「あの時はあかりのいない悲しさのせいで結衣に考えてもない事怒鳴っちゃったし……あそこで結衣に叩かれてなかったらもっと酷い事言っちゃってたかもしれないなぁ…………」

京子「謝らないと………ここで定規見つけたら帰ってすぐに謝るんだ! よし!」グッ



アハハハ、オワリマシタネ

アカザサンノオカゲヤナ、ホンマニシゴトハヤインヤカラ

アリガトウゴザイマス、イケダセンパイ



京子「……ッ!?」ビクッ

京子「この声って……もしかして…………隠れないと!」コソッ



ガラララ

あかり「それにしてもこんなにたくさんの資料が図書室にあったんですね」

千歳「本棚が余ってたから貸してもらってたんよ。移動させるのも面倒やからって事でここに保管させてもろてるねん」

あかり「なるほど」

りせ「…………」スリスリ



京子(お、思わず隠れちゃったけど……やっぱりあかりだったか…………)

京子(それに千歳と会長まで…… 会長なんかあかりに凄く頬ずりしてるし! 私たちのあかりにあんな事を……!!)



あかり「でも今日はこれでお仕事終わっちゃいましたね」

千歳「あ、ほんならこれから一緒にお出かけせえへん? おいしいあんみつ屋があるんよ! ほら、よかったら会長も一緒に!」

りせ「…………………」グッ

千歳「なんやって?」

あかり「一度家に帰ってからなら大丈夫だそうです。帰りに寄り道するのは生徒会長として許せないみたいで」

千歳「赤座さんが涙目になってお願いしたらどうなります~?」

りせ「…………ッ!」ピクッ

りせ「………………」

りせ「……………………………ッ」ダラダラダラダラ

あかり「りせちゃん!! あかりそんな事しないから大丈夫だってばぁ! そんなに顔を青くして汗ダラダラにならないでよぉ!」

千歳「あははは~ 赤座さんにはめっぽう弱いねんなぁ~」

りせ「………………」ムギュ!

あかり「大丈夫だからねぇ。よしよし」ナデナデ

りせ「……………♪」スリスリ

あかり「あ、でもそれなら…………」

千歳「あぁ、あの子は今日どうしても外せない調べ物があるんやって。構わんといても大丈夫」

あかり「え、でも……」

千歳「ちゃんとお土産を買って帰ってあげるから平気や。あの子の事を気遣ってくれてありがとなぁ」ニコッ

あかり「い、いえ。当然の事ですから」

りせ「………………」フンスッ

千歳「それじゃ行こか。早く帰らないと遅くなってしまうし」

あかり「そうですね。あれ、りせちゃんどうしたの?」

りせ「……………」

千歳「どないしたんです?」

あかり「なんか先に行ってて欲しいって言ってます」

千歳「? 分かりました、先に戻って帰り支度して待ってますね」



コツコツコツコツ




京子(くそ、会長のせいで空き教室から外に出れな…………)


ガラララ


京子「ひっ!?」

りせ「……………」

京子「あ、会長…………どうも……」

りせ「………………………」ジィー

京子「あ、あの…………」



りせ「…………」ボソッ


京子「え?」


りせ「…………」スタスタスタスタ




京子「あの、あ……行っちゃった…………」

京子「いま、何を言われたんだろう? なんか少し悲しそうな表情だった? 気のせいかな……」

京子「…………………………」

京子「…………………………はっ! そうだった定規定規! 図書室で探さなくちゃ!」



ガラララ



京子「えっと……私のいた机はっと」キョロキョロ

京子「あった、私の定規! よし、これで…………」






「何してやがる!」

京子「えっ? ひゃあっ!? ち、千歳ぇ!?」

千鶴「何寝ぼけてやがる。私は千鶴だ」

京子「な、なんだ千鶴かよぉ~」ホッ

千鶴「なんだとはなんだこの野郎。それに私の机に近づいて何するつもりだ!」

京子「はぇ!? い、いや別に何も……てかここが千鶴の机だなんて知らなくて………ただ私はこの定規を……」

千鶴「なんだお前のだったのか。それならとっととそれを持ってどこかに行け」

京子「う、うん……ごめんね………」

千鶴「チッ……」

京子「あ、あのさ……一つだけいい?」

千鶴「あ?」ギロッ

京子「そ、その……さっきまで千歳ともう1人女の子がいたでしょ? その女の子の様子、どうだった?」

千鶴「あぁ? なんでお前にそんな事教えなきゃならねぇんだよ!」

京子「お、お願い千鶴! もう今後一切千鶴にちょっかいかけるのをやめるから! だからお願いします!」

千鶴「……チッ、もう1人の女の子ってのは赤座の事でいいんだよな?」

京子「う、うん……」

千鶴「別に普段となにも変わった様子はない、いつも通りのあいつだった」

京子「………………」

千鶴「なんだよその顔は。喧嘩売ってんのか!」



京子「い、いやそうじゃなくて! ただあかりの事をあいつって言うのが少し新鮮だっただけで」

千鶴「知り合いだし別にいいだろうが! この前も家に来たくらいだ」

京子「あ、あかりが千鶴の家にぃ!?」

千鶴「姉さんと杉浦さんと赤座の3人で約束していたらしい。私も多少赤座の奴と話をしたくらいだ」

京子「ふ、ふ~ん…………」

京子(あかりの奴、私がこんなに落ち込んでるのにそんな事も知らずに楽しんでるのかよ…………)

京子(あぁダメだ! こんな自分勝手な考えであかりに怒りを覚えるなんて! そんな資格私にはないのに!!)

千鶴「そういえば姉さんから聞いたけど、赤座の奴ごらく部とかいうのを辞めて生徒会に入ったらしいな」

京子「………………ッ!」

千鶴「まぁそれも当然だ。お前なんかのいる部活よりも生徒会の方が比べるまでもなく居心地がいいだろうしな。赤座の奴も言ってたよ、ごらく部を辞めて正解だったってな」

京子「…………………………」プルプル

千鶴「とにかく今の赤座はとても充実した毎日を送ってる。お前なんかの出る幕は今更ねぇんだよ。分かったらもう今後一切赤座と杉浦さんには構うんじゃ………………」

京子「ふ……ふぇ………………」グスッ

千鶴「え…………」

京子「ふえぇえぇええええん!! うわあああああああああん!」

千鶴「なっ!? ば、バカッ! こんなところで泣くやつが……」


ザワザワザワザワ



千鶴「くっ! お、おい! こっちに来い!!」グイッ

京子「ああぁああぁああああっ!! うぁあぁぁああああぁぁあッ!!!」

千鶴「くそっ!! なんで私がこんな目に!」


ー保健室ー


千鶴(幸いにも先生は席を外してる。そして他に生徒もいないしここが最善か。しかし……)

京子「ふぇ……うぐっ…………ひぐっ……」グスッ

千鶴(こいつに限ってここまでガチで泣くとは想像していなかった。いったいこの野郎はどこまで私を困らせれば気がすむんだ!)

千鶴「おい歳納!」

京子「ひぃ!! な、なんですか……」ビクッ

千鶴「赤座と何かあったんだろ、すべて話せ!」

京子「な、なにもないです…………」

千鶴「嘘をつくんじゃねぇ!!」バン!

京子「ひっ!」ビクッ

千鶴「別にお前が泣こうが喚こうが知ったことじゃないが、ここで泣いている奴を放っておくと後々私の良心が痛むんだよ! お前なんかのせいでそんな事になるのはゴメンだ」

京子「ご、ごめんなさいごめんなさい!!」

千鶴「謝るのはいいからとっとと話せ!」ガシッ

京子「きゃっ! い、痛いよ! は、話してよ謝るからぁ!!」

千鶴「そんなに強く掴んでねぇだろ!」

京子「ひぐっ!! ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」グスッ

千鶴「だから謝るんじゃなくてとっとと………って、これじゃ堂々巡りか。とうすれば…………」チッ

千鶴(あ、そういえば姉さんが……)



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




千歳『ええか千鶴。人と話すときは笑顔にならんといかんで? 千鶴はとても優しい子やけど少し表情が固いねん。ほら、こうやって笑顔にならんと』ニコッ



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



千鶴(歳納なんかで試すのは癪だがまぁやってみるか)



千鶴「おい、歳納」

京子「な、なぁに……?」

千鶴「な、な、な…………」ブルブル


千鶴「何が、あったのか……私に話し、てくれないかなぁ……」ニッコォ ←悪鬼スマイル


京子「い、い、い……………………」ブルブル

千鶴「あん?」

京子「嫌ぁあああぁああッ!!! こ、殺さないで下さいお願いします!!!」

千鶴「は!?」

京子「嫌だよぉ! 恐いよっ!! 助けて!誰か助けてよぉ!! あかりぃ!! うわぁああああぁああぁん!!」

千鶴「泣きたいのはこっちの方だ……」ホロリ



ーなんやかんやで10分後ー



千鶴「はぁ? つまり赤座のことを虐めまくってたら嫌われて、避けられた挙句ごらく部を辞められて生徒会に入られたって事か?」

京子「べ、別に虐めてたわけじゃなくて……! 私たちなりの愛情表現だったっていうか」

千鶴「赤座はそう思ってなかったからこうなったんだろうが。なにが愛情表現だ、お前がやったのはただのイジメだ」

京子「うぅ…………」

千鶴「お前の言うところの愛情表現はアレだろ、私に対して突っかかってくるやつ。あんなの正直言って迷惑以外の何物でもない」

京子「…………………」

千鶴「お前のする愛情表現ってのは結局のところ独り善がり以外の何物でもないんだよ。あの赤座に見放されるなんて余程嫌われたんだろうな」

京子「……うぅ……ひぅ……」グスッ

京子「ふぁあああああ………うぁぁあああ!!」ヒグッ

千鶴(ふん、ザマァみろ。普段調子に乗ってるからこんな目にあうんだ。この馬鹿にはいい薬だろうよ。それじゃ図書室に戻るか)

京子「ふぁああぁぁ……もうやだぁ、もう嫌だよぉ…………許してよぉ……!」

千鶴「………………」

京子「うわああぁあ! あかりぃあかりぃ!! 」

千鶴「…………………………」プルプル

京子「誰かぁ……誰か助けてよぉ!! もうやだよぉ!!」

千鶴「………………あ゛あ゛!! クソ野郎が!!」ダダダダダッ


ーごらく部ー


ガラララ!



ちなつ「もう、京子先輩遅いです……って!」

結衣「千歳……じゃなくて千鶴?」

千鶴「おい、歳納なんたらの荷物はどれだ!!」ゼェゼェ

ちなつ「え、は……? あの」

千鶴「どれだ! 早く答えろ!!」ギロッ

ちなつ「はひぃ! こ、これですぅ!!」

千鶴「チッ……」テキパキ

結衣「あ、あの千鶴。京子と何かあったのか?」

千鶴「別になんでもない。それじゃ失礼します」

千鶴(クソ歳納がっ! 私の体に流れてる姉さんと同じ血に感謝しやがれ!!)


ガラララ!


ちなつ「………な、なんだったんでしょう?」

結衣「わ、分からないけれど……すごい形相だったね。それになんで京子の荷物を持って………ッ!」

ちなつ「ゆ、結衣先輩?」

結衣「…………………ご、ごめん帰るっ!」

ちなつ「ちょ!? ゆ、結衣先輩!」

結衣「ちなつちゃんごめんね!」グスッ

ちなつ「結衣せんぱ………」




ガラララ!




ちなつ「結衣先輩……泣いてた? それに京子先輩も多分ここには来ないし………あっ!」

ちなつ「もしかして2人が喧嘩したせいで京子先輩が結衣先輩を避け始めたの……? 結衣先輩もそれを察して……それで!!」

ちなつ「ど、どうしよう! このままじゃ本当にごらく部がバラバラになっちゃう!! どうすれば…………」オロオロ

ちなつ「こ、こうなったら私があかりちゃんを連れ戻すしかない!! やればできるはずよチーナ!! ごらく部の為にも!!」





千鶴「…………………………」フラフラ

千鶴(と、歳納なんとかめ……ここまで私を苦しめるとはなんという野郎だ)

千鶴(保健室で泣きじゃくりやがって……家まで送ったら送ったで、そこから袖を掴んで泣きじゃくるし)

千鶴(疲れた……調べ物も進まなかったし……………今から学校に戻る気にもなれない。もう今日は帰ろう)フラフラ

千鶴(こんな事なら図書室に行かなきゃよかった……姉さんと一緒に帰れば良かった……)

千歳「あ、千鶴! どないしたんこんな所で?」

千鶴「あ、姉さん。そっちこそどうしたの? 杉浦さんまで」

千歳「うちらなぁ、さっきまであんみつ屋に行ってたんよ。ほら、千鶴の分もお土産買って来たで」

千鶴「え?」

綾乃「ち、千鶴さん?」

千歳「どないしたん千鶴?」

千鶴「…………………………」グスッ

千歳「わわ!」

千鶴「なんで……なんで誘ってくれへんかったんよ!! 姉さんのバカァー!!」タタタタッ

千歳「ち、千鶴!? は、走ったらあかんて! 待ってや千鶴ゥ!!」タタタタッ

綾乃「」ポカーン

綾乃「な、なにがどうなってるの……?」

ー翌日の教室前ー



ちなつ(こうなったら何が何でもあかりちゃんを取り戻してみせる。これからのごらく部の為に、そして結衣先輩と京子先輩を仲直りさせる為に!)

ちなつ(もう気まずいとか言ってられない! こうなったらあかりちゃんをふん縛ってでもごらく部に引きずり戻してやる! よーし!)



ガラララ!


ちなつ「おっはよー!」



櫻子「えぇー!? あかりちゃん昨日先輩たちとあんみつ屋さん行ったの!?」

あかり「うん。池田先輩が連れて行ってくれたんだけどね、とっても美味しかったんだぁ!」

櫻子「いいなー 今日私たちも連れてってよ!」

向日葵「こら櫻子。赤座さんは昨日も行ったのですから二日連続になってしまうじゃないですの」

あかり「ううん大丈夫だよぉ。昨日お姉ちゃんにお土産買って行くの忘れちゃったから今日も行きたかったんだぁ」ニコニコ

櫻子「いぇい!」

向日葵「赤座さん、あまり気を使わなくてもいいんですのよ? 櫻子は適度に放っておかないと際限なくつけ上がりますし」

あかり「全然平気だよぉ。櫻子ちゃんは優しいもんね」ニコニコ

櫻子「もちろんだとも! へっへへへ~」

向日葵「もう、程々にしておきなさいよ?」

櫻子「もちろんだとも。あかりちゃんに無茶は言わないよー」

ちなつ(くっ! のっけから放課後ごらく部に誘いにくい話を聞いてしまった……! だがここで挫けるわけにはいかないのよ!)

ちなつ「おっはよ、みんな!」

あかり「ちなつちゃんおはよう」ニコッ

向日葵「おはようございます吉川さん」

櫻子「おはよーちなつちゃん。どうしたの、そんな怖い顔して」

ちなつ「はぇ!? わ、私怖い顔してた?」

櫻子「うん。なんかあかりちゃんの事を睨んでたけど。獲物を狙ってるハンターみたい」

あかり「え、えぇええぇ!? あかりちなつちゃんに狙われてるのぉ~!?」ガーン

ちなつ「ね、狙ってないから! 別にあかりちゃんの事を狙ってたりしないから!」

櫻子「ふ~ん」

あかり「あ、そうだちなつちゃん! 今日の放課後みんなであんみつを食べに行こうと思ってるんだけど、ちなつちゃんも来ない?」

向日葵「あら、良いですわね。生徒会の仕事を終わらせてからごらく部に迎えに行けば一緒に行けますわ」

あかり「うん、そうしようよ! 京子ちゃんと結衣ちゃんも誘ってさ!」ニコッ

ちなつ「え、あ……うん………」

あかり「…………ちなつちゃん?」

櫻子「別に来なくても良いんじゃない? 来たくないならさ」

向日葵「さ、櫻子ッ!!」

ちなつ「ち、ちがっ! そうじゃなくて……その……………」

ちなつ(結衣先輩と京子先輩の現状で仲良くあんみつ屋に行けるわけがないし………まずはこの件を解決しないと………………)

あかり「ちなつちゃん?」

向日葵「あ、ところで櫻子は宿題やったんですの?」

櫻子「へ? ……………あ゛!!」

向日葵「はぁ、そんな事だと思いましたわよ」

櫻子「向日葵、宿題見せて!!」

向日葵「わかってますわよ、こっちへいらっしゃい」

櫻子「ありがとうございます!」ゲザァ

向日葵「……………」チラッ

ちなつ「……………………ッ」ピクッ

向日葵「…………………」ニコッ

ちなつ(向日葵ちゃん、私があかりちゃんと話したい事を見越して……! あ、ありがとう!!)



ちなつ「あ、あのさあかりちゃん!」

あかり「どうしたのちなつちゃん?」

ちなつ「いや、その、えと…………さ、最近どう? 生徒会に入ってから!」

あかり「えへへ、毎日が楽しいよぉ。自分のやりたい事がやっと見つかったんだもん。先輩方も櫻子ちゃん達もとっても優しいし! すっごく充実してるんだぁ」ニコニコ

ちなつ「そ、そっかぁ……それは良かったね」

あかり「うん! ちなつちゃんはあかりの事を心配してくれてたんだねぇ。ありがとうちなつちゃん!」ニコニコ

ちなつ「……………ッ!」ズキッ

ちなつ「う、うん………………」

ちなつ(全然そんな事考えてなかったのにぃ……! あかりちゃんってどこまで良い子なのよぉ~!)

あかり「それでどうかな? あんみつ屋さん」

ちなつ「あ、えっとね……きょ、今日はちょっと無理かなぁって…………」

あかり「あ、そうなんだぁ…………」ショボン

ちなつ「さ、誘ってくれたのはとっても嬉しかったの! また今度誘ってよ!」

あかり「うん、そうだねぇ」

ちなつ「あ、あはははは…………」

あかり「…………………」

ちなつ「…………………」

あかり「あ、ところでさ。最近京子ちゃんと結衣ちゃんに変わった事はなかったかな?」

ちなつ「か、変わった事?」

あかり「うん。なんか喧嘩とかしてないかなって。杉浦先輩とかがそう言ってたから」

ちなつ(まさかそっちから振ってくれるなんて! これはいまチーナに波が来てる!!)

ちなつ「う、うん……確かに少しおかしいかもしれないの。でも私じゃそれが解決できなくて…………だからあかりちゃんにーーー」

あかり「うん、大丈夫だよぉ! だって杉浦先輩と池田先輩がなんとかしてくれるもん!」ニコッ

ちなつ「ごらく部に………………って、へ?」

あかり「杉浦先輩と池田先輩が2人の事を心配してるんだよぉ。なんとか仲直りさせようって頑張ってくれるんだ」

ちなつ「そ、そうなの…………で、でもあかりちゃんは何かしたりはしてくれないの?」

あかり「あかりが何かしなくても大丈夫だよぉ! だって杉浦先輩と池田先輩がなんとかしてくれるんだよぉ? あかりよりも2人の方が生徒会に長くいる立派な人だもん!」ニコッ

ちなつ「そ、そうだね…………」


あかり(池田先輩達にこの事に関しては関わらないように言われちゃったものね。それにあかりなんかよりも2人の方がよっぽど頼りになるもの。あかりが余計な事をしちゃダメだよねぇ)

ちなつ(い、今までのあかりちゃんなら結衣先輩達が喧嘩したって聞いたなら絶対にこんな風に放っておかなかったハズなのに!! や、やっぱりあかりちゃん……もう私たちにできるだけ関わらないつもりなの……? さっき誘ってくれたのも流れで嫌々だったんじゃ…………)




ちなつ「…………………………」チラッ


櫻子「あーもう終わんないよぉ~!!」

向日葵「無駄口叩いてる暇があるなら手を動かしなさい!」


ちなつ(こうなったら作戦変更! “将を射んと欲すれば先ず馬を射よ” 作戦よ! 櫻子ちゃんはともかく向日葵ちゃんは私の味方になってくれるハズ!)




ー同時刻ー


綾乃「歳納京子!!」

京子「…………………………」ボケー

綾乃「貴女、最近元気がないじゃないの。何かあったのかしら!」

京子「…………………………」ボケー

綾乃「貴女がそんなだと私たちまで気が滅入ってくるのよ!」

京子「………………ッ!」ビクッ




結衣『そういう問題じゃないだろ! 大体ごらく部だけならまだしも私の家に来てまでそんな風にされたんじゃ私まで気が滅入って来るんだよ!』




綾乃「なにか悩みがあるなら相談にも乗るわよ。ほら、とっとと吐きなさい! 赤座さんも心配してるんだからね!」

京子「………………あ、かり」

綾乃「べ、別に私は心配なんてしてないんだからね! ただ生徒会副会長としてクラスメイトの異変を放っておくわけにはいかないだけなんだから!」

京子「うん、ありがと………」

綾乃「え、えぇ……」



ガラララ



綾乃「あら、船見さん。おはよう」

京子「…………ッ!」ビクッ

結衣「う、うん……おはよう綾乃」

京子「…………………………」

結衣「…………………………」スタスタ

綾乃「あ、あの…………」

綾乃(な、何よこれ! 話す事もなく船見さん自分の席に座っちゃったわ! こうなったら)チラッ

千歳(任しといて綾乃ちゃん! ここはうちが何とかしたる! 綾乃ちゃんは歳納さんをお願いするねんな!)チラッ

綾乃(任せておきなさい!)




千歳「船見さん、おはよう~」ニコニコ

結衣「千歳、おはよう」

千歳「なんや元気ないなぁ。普段はもうちょっと元気なのに」

結衣「うん、昨日少し遅くまで起きてたからさ。少し寝不足なんだよね」

千歳「ゲームでもやってたん?」

結衣「いや、少し眠れなくてさ」

千歳「そっかぁ~ うちも昨日は千鶴が機嫌良くなくて少し寝るのが遅くなったんよ。なにがあったか聞いても教えてくれへんし」



結衣「千鶴さん? そういえば昨日ごらく部に来たよ」

千歳「千鶴が? なにしに行ったん?」

結衣「いや、なんか京子の荷物を持って行っちゃった。少し怖かったかな」

千歳「ふ~ん、何があったんやろ? それになんで歳納さんの荷物を千鶴が?」

結衣「さ、さぁ?」

千歳「あ、そうそう。それと少し聞きたいことがあるんやけど」

結衣「なに?」

千歳「いやな、ちょっと聞き辛い事なんやけどね。最近歳納さんと何かあったりした?」ボソッ

結衣「…………なんで?」

千歳「なんでって、そりゃ様子を見てたら分かるって。最近になって歳納さん、とても静かやろ? 船見さんもそれにつられて静かになって行っちゃったし。それに今朝だって全然話してへんかったやん」

結衣「……うん、そうだね」

千歳「ほらほら。なんか喧嘩でもしたんちゃう? 何かあったならうちが相談乗ったるよ?」

結衣「いや、大丈夫。全然平気だよ」

千歳「全然平気な顔してへんよ。うちも綾乃ちゃんも心配してるんやから。それにごらく部の吉川さんだって心配してると思うよ?」

結衣「うん………」

千歳「自分だけならまだしも、他の人たちも不安にさせてるんやし。早めに解決しといた方がええやん? なんでも受け止めてあげるからなんでも話してよ」

結衣「う、うん……なんかごめんね、心配させちゃって」

千歳「ええよええよ~ そんじゃ授業始まっちゃうし用意しよか」ニコニコ

結衣「うん、本当にありがとう。それとさ、ちょっといいかな」

千歳「ん?」

結衣「いや、放課後に少し話をしたいんだけどさ」

千歳「もちろんええよ~ そんじゃまた後でなぁ」ニコッ





千歳「これでよしっと。さて、綾乃ちゃんと歳納さんのほうはどうなったんかな…………」

ダダダダッ!

綾乃「ど、どうしよう千歳ぇ!! 放課後に歳納京子が話したい事があるって!!」アタフタ

千歳「うちも船見さんに言われたんよ。多分相談されるんちゃうかなぁ、喧嘩の事について」

綾乃「……………あ、あぁそっちね」

千歳「なんか残念がってへん?」ニコニコ

綾乃「べべべ別にそんなことナイナイナイアガラよ!」

千歳「うちの鼻血のためにも! 早く歳納さんを元気にしたってな!」

綾乃「逆に困るわよ!!」





ー放課後ー


あかり「向日葵ちゃん、櫻子ちゃん! 生徒会に行こう」

ちなつ「あ、ごめん! 向日葵ちゃんと櫻子ちゃん。ちょっと話があるんだけど、いいかな?」

櫻子「はなし?」

向日葵「私たちにですか?」

ちなつ「う、うん。すぐに済むからいいかな。少し相談したいことが………」

あかり「あ、それならあかりも相談に乗るよぉ!」

ちなつ「あ、大丈夫だから! あかりちゃんはいなくても平気!」

あかり「え…………」



ちなつ「あぁそうじゃないの!! 別に変な意味じゃなくて、とにかくあかりちゃんは来なくても平気なんだってば!」

向日葵「分かりましたわ。赤座さん、申し訳ないですが先に生徒会室に行っててもらってもよろしいですか」

あかり「う、うん……分かったよぉ…………」ショボン



ガラララ



向日葵「それで吉川さん。お話ってなんですの?」

ちなつ「あ、そのね。あかりちゃん、最近どんな感じかなって思って。迷惑とかかけてない?」

櫻子「迷惑なんてかけるわけないじゃんあかりちゃんが。仕事とかとってもよくやってくれてるし先輩からも好かれてるよ」

向日葵「そうですね。もはや赤座さんはいなくてはならない存在ですわね」

ちなつ「そ、そうなんだ…………」






結衣「そっか、あかりの奴元気にやってるんだな…………」

千歳「もちろんやで。うちらのプライドにかけて赤座さんに嫌な思いはさせへんよ」

結衣「うん、ありがとう千歳。そっかぁ……そうだよなぁ……………そんな事あるわけないよなぁ……なにバカな期待を持ってたんだ私は……」ウルッ

千歳「船見さん?」






京子「私さ、心のどこかで期待してたんだ……あかりがごらく部に戻って来たがってるんじゃないかって。でも、そんなことなかったんだね…………」グスッ

綾乃「そ、そうね……最近は赤座さん、ごらく部の話題すら出さなくなってきたし。昨日も放課後遊びに行ったりもしたけれど本当に楽しそうだったわよ」

京子「そっかぁ……やっぱりあかり、私たちの事が本当に嫌になっちゃったんだね」

綾乃「そ、そんな事ないわよ! だって歳納京子の様子が変だって話をしたらとても心配してたわよ!!」

京子「そりゃあかりはいい子だもん。私たちじゃなくったって誰にでもそんな反応するよ」グスッ





千歳「そんなわけあらへんって! 赤座さんはまだ2人の事を大切な幼馴染と思ってるに決まっとる!」

結衣「でも……最近あかりからなにも連絡こないし…………私たちが中学一年の頃だってほとんど毎日連絡は取ってたのに…………」

千歳「そ、そりゃあ赤座さんにしてみたら気まずいからやない? ごらく部を辞めたんやし」

結衣「辞めた……そっかぁ…………あかり、ごらく部を辞めたんだよなぁ…………私たちのッ……せい、で…………うぅ……」グスッ

千歳「ちょちょ! 落ち着かんとアカンで! ほ、ほらティッシュや!」

結衣「くっそ……ちっくしょ、お…………」グスッ

千歳「そ、そんな泣かんといて……」オロオロ

結衣「なんだっていなくなっちゃったんだよ! 私たちのなにがいけなかったんだよッ!!」

千歳「お、落ち着いて! 取り敢えず落ち着こ、な?」オロオロ






京子「ううぅぅぅ…….ふぇえぇええん…………」グスッ

綾乃「そ、そんな泣かないでよ!」

京子「返してよぉ……私のッ! 私たちのあかりを返してよッ!!」グイッ

綾乃「ちょっと引っ張らないでよ! 言いたくはないけれど赤座さんがごらく部を辞めたのはあなた達の責任でもあるのよ!」

京子「うるさい! そんなの関係ないんだよ! 早くあかりを返せ!! うまい言い訳作って生徒会をクビにするなりなんなり綾乃だったら出来るでしょ!!」

綾乃「そ、そんな事できるわけないじゃない! 今の赤座さんに生徒会から離れられたら色々と困るのよ! それほどまでに赤座さんは重要な人なの!」

京子「そんなの知らないもん! あかりの幼馴染でもない癖に知ったような口をきかないでよ!」

綾乃「そんな事関係ないじゃない! いくら歳納京子でもその言葉は聞き流せないわ!」

京子「う、うるさい! どうせ綾乃が私たちのあかりを誑かしたんだろ! 純真なあかりの事をうまいこと騙したんでしょッ!!」

綾乃「」ブチィ


綾乃(ごめん千歳……もう私我慢の限界だわ)






千歳「ええ加減にしぃや船見さん! ええ加減にせんとうちも堪忍袋の緒を緩めるよ!!」

結衣「な、なんだよ! 開き直るのはおかしいだろ!」

千歳「……あのな、赤座さんの事が大事ならなんで赤座さんの事をごらく部から追い出すような事をしたんや?」

結衣「な、なに言ってるんだよ! 私はそんな事してない!」

千歳「どこまでアホンダラなんや船見さんは! 赤座さんの事を虐めたり要らない物扱いしといてそんな事よく言えるわ!!」

結衣「なっ…………そ、そんなこと……」

千歳「赤座さんが言っとった事や。ごらく部で疎外感を感じて悩んでいた事知っとったか? みんなに悪い感情を持ってた事を知っとったか?」






京子「そ、そんなの知らない! だってあかりの奴なにも言わないからッ…………」

綾乃「そんなの当然でしょう! “貴方達3人が私の事を蔑ろにするのでごらく部に居づらいです。虐められてるので、みんなの事が少し嫌いになってます” だなんてあの赤座さんが言えるわけないじゃない!! 貴女はそんな事もわからないの!?」

京子「だ、だってあかりは優しい子でそれに幼馴染としての絆があるんだ! そんな風に私たちから疎外感を感じるなんて思うわけが…………」

綾乃「歳納京子、貴女は赤座さんの事を見誤りすぎよ。あの子だって中学一年生の多感な女の子なのよ? 当たり前のように傷付くし、当たり前のように人の事を恨んだりもするわ。凄いのはそれを微塵も見せない事やすぐに許せてしまうっていう事だけよ」

京子「ち、違う! あかりがそんな事を感じるわけがない! あかりが私たちを憎むだなんてそんな事あるわけないッ!!」

綾乃「全部事実よ! 貴女はまだ自分のした事から目を背けるの!? いい加減に認めなさい!」

京子「違う……違うもん………あかりちゃんは優しくて、いつも私たちの事を好きでいてくれて……」グスッ

綾乃「……はぁ、もう呆れてなにも言えないわよ。そりゃ赤座さんも見捨てるはずよね」

京子「違う違う違う…………あり得ないあり得ないあり得ないあり得ない…………」ブツブツブツブツ







結衣「私はあかりに嫌われてた私はあかりに嫌われてた私はあかりに嫌われてた私はあかりに嫌われてた…………」ブツブツブツブツ

千歳「少しは反省しぃや! 1人の女の子を泣くまで追い詰めた罰や!!」

結衣「嫌われてた嫌われてた嫌われてた嫌われてた嫌われてたあかりに嫌われてたあかりに嫌われてた……」ブツブツブツブツ

千歳「それじゃあもう行くからね。うちも生徒会があるから暇やないんよ」



ー生徒会室前ー



千歳「あ」

綾乃「あら」

千歳「……あ、その…………どやった?」

綾乃「そ、それはその…………ち、千歳の方はどうだった?」

千歳「う、うち!? うちはまぁ……その…………えっとな…………」アタフタ

綾乃「どうしたのよ?」

千歳「いや、その………実は…………」

綾乃「?」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



千歳「て事は綾乃ちゃんも!?」

綾乃「ええ、思いっきり怒っちゃったわよ……勢いで歳納京子が傷付きそうなことを思いっきり……」ハァ

千歳「実はうちもやねん。叱るんやのうて怒ってしもたんよ……」ハァ

綾乃「赤座さんにあんな風に偉そうな事言っといて滑稽ね。喧嘩を仲裁するどころか新しい喧嘩を増やしてきちゃうなんて」

千歳「ほんまやなぁ。どないしよ」ハァ

綾乃「…………どうしようかしら」

千歳「…………………………」

綾乃「…………………………」

向日葵「あら、どうかしたのですか先輩方?」

櫻子「なんか沈んでません? 何かあったんですか?」

千歳「2人も今来たん? そっちも何かあったん?」

櫻子「まぁちょっとちなつちゃんと話をしてきて」

向日葵「ごらく部の子です。ほら、あのピンク色の髪をした」

綾乃「……ッ! 」

千歳「そ、それでどんな話を!?」

向日葵「いえ、特にこれといって大した事は。ただ赤座さんが生徒会でどのように生活してるかを聞かれただけです」

綾乃「ふ、ふーん……」

千歳(これは……)チラッ

綾乃(赤座さんを取り戻しに来てるわね、ごらく部)チラッ

向日葵「?」

櫻子「?」ボケー


ーごらく部ー



ちなつ「これはもはや手遅れね。今更どう頑張ってもあかりちゃんを生徒会からごらく部に戻すのは不可能」カリカリ

ちなつ「いや、あかりちゃんに泣きながら直訴すればワンチャンあるかもしれない。でもそうなるとその後の生徒会との関係が拗れちゃうし……」カリカリ

ちなつ「と、いう事は掛け持ちしてもらう? ごらく部と生徒会を…… いや、これもダメ。生徒会と部活は掛け持ち出来なかったはず。あかりちゃんはどっちか片方にしか属せない。と、いう事は…………」カリカリ

ちなつ「これ、詰んでない?」



ちなつ「あぁーもうダメだこりゃ!! 向日葵ちゃんの話からして生徒会はあかりちゃんを手放すつもりは無いし、あかりちゃん自身も生徒会を辞めるつもりがない! つまり直訴ぐらいしか手がないんだけどもさ!」

ちなつ「今更私たちにどのツラ下げてあかりちゃんに直訴しろってのよ! あかりちゃんを泣かせるまで追い詰めた私達が! あかりちゃんの気持ちに気付かなかった私たちがぁッ!!」バタン

ちなつ「もう手遅れよこりゃ。あかりちゃんをごらく部に戻すのは諦めて他の手を考えないと…………と、いうわけで」ガラッ



ちなつ「さっさと押入れから出てきて下さいよ2人とも!」


京子「ふぐっ……えぐっ…………」

結衣「うぐっ………ひぐっ…………」


ちなつ「そんな風に泣いてても仕方ないでしょう! いつまで2人で傷の舐め合いをしているつもりですか!」

京子「あかりぃ…………」

結衣「帰ってきてよぉ…………」

ちなつ「……………ダメそうねこれじゃ」ガラッ



ウワアァアァァン

メソメソメソポタミアー



ちなつ「もう押入れの中にいる2人は当てにならないわ! こうなったら私1人ででもどうにかしてみせる!!」

ちなつ「3週間前も空いちゃって今更謝りにくいとか考えている場合じゃない! 私が京子先輩や結衣先輩の分も謝らなくちゃ!!」






ー数日後ー


ちなつ「作戦1! あかりちゃんに誠心誠意の謝罪文を書く!」

ちなつ「と、いうわけであかりちゃんの下駄箱に私が書いた謝罪の文章を入れておいたわ! あれを読めばきっとあかりちゃんも私たちの元へ戻ってきてくれるはず! あ、来たわね」コソッ




あかり「あれ?」

櫻子「どったのあかりちゃん?」

あかり「えっと、なんか下駄箱にこんな物が……」

向日葵「そ、それはっ!? まさかラブレターでは!!」

あかり「え、えぇえええっ!?」

櫻子「凄いよあかりちゃん! ラブレターもらっちゃうなんて!!」

あかり「そ、そんなわけないよぉ! あかりなんかがラブレターなんて貰うわけないよぉ。入れる場所を間違えたとか」カアァァ

向日葵「あ、宛先は!?」

あかり「えっと……赤座あかり様って書いてあるけど…………」

櫻子「誰がくれたのかは書いてないね。ねね、開けてみてよ!」

あかり「えっと……その、うん! 分かったよぉ」ドキドキ

向日葵「…………」ドキドキ




ちなつ「そして凄いのは私の気遣い。いきなり謝罪文だと気まずいから、一枚目にはなんと私渾身のあかりちゃんの “絵” が描いてあるのよ!! これであかりちゃんもファンシーな気分で二枚目に行けるはず」

ちなつ「完璧よ! 完璧すぎて自分の才能が怖いわよねチーナ!」




向日葵「あ、赤座さんっ!?」

ちなつ「ん?」




向日葵「あ、赤座さん!! どうなさったんですの!? 赤座さん!!」ユサユサ

あかり「」

櫻子「た、立ったまま白目むいて気絶してる!! あかりちゃんしっかりして!!」

向日葵「い、いったい赤座さんは何を見て…………ひぃ!!」

櫻子「え? う、うわぁあああ!! な、何これ!?」

向日葵「わ、分かりませんわよそんな事……」ブルブル

櫻子「こんな恐ろしいもの見た事ないよ………ひ、向日葵ぃ……」ブルブル

向日葵「ひ、ひぃ!! 櫻子! それをこっちに向けないでよ!!」

櫻子「わ、私だってこんなもの見たくもないよ!! えぇい、こんな物こうしてやる!!」



ビリビリ!



ちなつ「あぁ!! 私の渾身の作品がぁ!! それに二枚目にあった手紙までもが破られたぁ!!」ガーン

櫻子「と、取り敢えずあかりちゃんを保健室まで運ばないと!! 向日葵、手を貸して!」

向日葵「わ、分かりましたわ! 落とさないように気をつけないと。赤座さんは櫻子と違って繊細ですから」

あかり「」




ちなつ(くっそ! 作戦1は失敗かぁ。それなら作戦2に移行よ!!)



ー休み時間ー



ちなつ(向日葵ちゃんたちに聞いたところ、あかりちゃんは毎日のように生徒会長の松本先輩から抱きつかれたりしているらしい。そしてあかりちゃんもまんざらじゃない様子)

ちなつ(つまりあかりちゃんもどちらかと言えばスキンシップをされたい派だったという事! 思えばごらく部では京子先輩が私に、私が結衣先輩にっていう感じでやっていた事。多分あかりちゃんはそれが羨ましかったに違いない!)

ちなつ(よって作戦2はスキンシップ作戦! ぎゅっと抱きしめてあげて、そのまま謝りに行く!)



ガラララ



あかり「はふぅ……やっと回復したよぉ」

向日葵「赤座さん、もう大丈夫なんですの?」

あかり「うん、大丈夫。でもあかり、なんで気絶しちゃったのか覚えてないんだよね。何があったの?」

向日葵「あぁ、いや……それは……」ブルブル

櫻子「ま、まぁいいじゃん! 元気になったんだしさ! お帰りあかりちゃん♪」ギュッ

あかり「え、えへへ。ただいま櫻子ちゃん。向日葵ちゃんもあかりの事保健室まで運んでくれたんだよね。ありがとう」

向日葵「そんな事当然ですわよ。お礼を言われる事なんかじゃありませんわ。それにしてもアレは一体ーーーー」


ちなつ「あかりちゃんっ!!」ガバッ!

あかり「ふぇ、ちなつちゃん!?」

ちなつ「えいっ!」ギュッ


ミシッ



あかり「はぐっ!?」

ちなつ「良かった、本当に心配してたんだよ! 何ともないみたいで本当に良かったぁ!」グググッ

あかり「ちょ、ち、な、つちゃ…………」

ちなつ「………………」ググググッ!

あかり「……ぁ……………が………………」

あかり「」ガクッ

ちなつ「それでねあかりちゃん! 言いたい事が…………あかりちゃん?」サッ

あかり「」フラフラ


バタン!!



ちなつ「ちょ、あかりちゃん!? だ、大丈夫どうしたのよ!?」

向日葵「ま、マズイですわよこれ! 赤座さんが白目むいてますわ! 口からは泡吐いてますし!」

櫻子「は、早く保健室に運ばないと!! 向日葵手を貸して!!」

向日葵「ガッテンですわ!」

ちなつ「わ、私も手伝ーーー」


櫻子・向日葵「絶対にやめて!!」





ちなつ(作戦2も失敗………まさかあかりちゃんを絞め落としちゃうなんて………………)

ちなつ(でもまだ大丈夫! まだ終わらんよ!!)



ー昼休みー



ちなつ(ふっふっふ。今日はご都合展開で給食がなくお弁当の日! それを見逃すチーナではないわよ!)

ちなつ(このちなつ特製のオムライスであかりちゃんの胃を鷲掴みにしてやるんだから!)

ちなつ(失敗はないはずよ。だって昨日お姉ちゃんも言ってたもの! 胃を鷲掴みにされた気分だって!)

ちなつ(ふふふふふ…………)



ガラララ



あかり「みんな、お待たせ~」

向日葵「赤座さん大丈夫ですの!? こんな時間まで休んでいたならもう早退してもいいんじゃ……」

あかり「大丈夫だよぉ~ 午前中まるまる眠っちゃったけれど、午後はしっかりとするからね!」

櫻子「私なら絶対に帰ってると思うよ。やっぱあかりちゃんって凄いなぁ」

あかり「えへへへ」

ちなつ「あかりちゃん! あの、さっきはごめん! 私あんな事するつもりはなくて…………」

あかり「大丈夫だよちなつちゃん。全然気にしてないから。ね?」ニコッ

ちなつ「う、うん!」



櫻子「よっしゃお弁当だぁ~! 見るがよい、この櫻子様お手製のお弁当を!!」

向日葵「み、見事に磯辺揚げばかりですわね…………」

櫻子「ふっふ~ん! どうよ」ドヤッ

向日葵「栄養バランスの偏ったお弁当。0点ですわ」

櫻子「な、なにを~!! じゃー向日葵のお弁当はどうなんだよ!」

向日葵「私のはほら、こんなものですわよ」

あかり「うわぁ~ すごく綺麗なお弁当だね! 赤緑黄、カラフルなお弁当だよぉ!」

向日葵「野菜を沢山摂るために考えてきましたの。どう櫻子? これが私のお弁当ですわよ」フフン

櫻子「こ、このおっぱいめ! おっぱいバカ! でかっぱい! バーカバーカ!」

あかり「さ、櫻子ちゃん……負けを認めようよぉ、ね? あかりのお弁当だってそんなに大したものじゃないんだしさ」

向日葵「だとしても、最下位は櫻子ですわね。さて、櫻子。罰ゲームは何にしましょうか?」

櫻子「く、くっそ~!」

あかり「あははは、あまり難しいのにしないであげてね向日葵ちゃん。ところでちなつちゃんはどんなお弁当持ってきたの?」

ちなつ「わ、わたし? 私はね……じゃじゃーん!」ドーン

あかり「お、オムライス!? しかも、デカすぎない!?」

ちなつ「頑張って作ったら大きくなりすぎちゃって」



ちなつ(そう、あかりちゃんは結衣先輩のオムライスが大好き。だから私もオムライスで勝負よ!)



ちなつ「でもちょっと大きく作りすぎちゃったからさ、あかりちゃんちょっと食べてくれないかな」

あかり「え、いいの! わーいオムライス! あかり、オムライス大好き!」ニコッ

ちなつ「それじゃあまずあかりちゃんに感想を聞こうかな。はい、あーん」

あかり「あーん、はむ……」モグモグ









あかり「うぴゃああぁあぁぁあああぁっ!?」



バタン!!



向日葵「あ、赤座さんっ!?」

ちなつ「あかりちゃんどうしたのよ!?」

向日葵「赤座さんしっかりしてください!! 赤座さんっ!!」

ちなつ「ちょっと! なんでひっくり返っちゃってるのよ!! あかりちゃんしっかりしてぇ!!」

あかり「……っ…………ぁ……」パクパク

ちなつ「え、なに聞こえない! どうしたのあかりちゃん!!」

あかり「胃……が…………握り、つぶ、された……みたい…………だよ……」ガクッ

ちなつ「ちょっとあかりちゃん! 目を開けて! お願いあかりちゃん!!」

櫻子「保健室まで運ぶよ向日葵! 手を貸して!」

向日葵「任せとけ!!」

ちなつ「わ、私も……!!」



櫻子・向日葵「やめろ!!」


ー生徒会室ー




櫻子「というわけで今日はあかりちゃんは帰りました」

綾乃「そ、それは大変だったわね……」

千歳「赤座さんも災難やったなぁ……」

櫻子「それにしても許せない! 一番最初にあかりちゃんの下駄箱にあんなものを入れた奴は誰だ!」プンスカ

向日葵(それも……)

綾乃(多分……)

千歳(吉川さんやろなぁ……悪気はないんだろうけども)

綾乃「そういえば会長は?」キョロキョロ

向日葵「先ほど赤座さんの事を話したら一目散に帰って行きましたわ」

櫻子「多分お見舞いに行ったんだと思います。だいぶ慌ててましたから」

千歳「あらまぁ」

綾乃「また仕事をほっぽって行っちゃって……… でも仕方ないかしらね。最愛の人のためなんだし」

向日葵「最愛……?」ピクッ

千歳「ところでその吉川さんも赤座さんにとこに行ってるんやろ? 会長大丈夫かなぁ……」







ー図書室ー



京子「…………………」ズーン

千鶴「で、なんでまたお前がいるんだよ!」

京子「…………………」ズーン

千鶴「落ち込みたいなら勝手に1人で落ち込んでろ。私を巻き込むんじゃねぇ!」

京子「うぅ……だってぇ…………」グスッ

千鶴「だから泣くな! 船見さんとはもう仲直りしたんだろう? そっちに行け!」

京子「……ま、まだ仲直りはしてないもん。一緒に泣いただけで」

千鶴「ああもう面倒臭い! それなら家にでも帰れ!」

京子「ひ、1人は寂しいよ……」グスッ

千鶴「」イライラ

京子「ねぇ千鶴……私はどうしたらいいのかな」

千鶴「知るか」

京子「そ、そんなこと言わないで考えてよぉ! お願いだからぁ!」ガシッ

千鶴「てめっ……!」

京子「千鶴ぅ……」グスッ

千鶴「……泣きながら掴んでくるな! 叩きにくいだろ!」

千鶴(ああもう面倒臭い! これなら話を聞いてとっとと追い返した方が早いか)

千鶴「分かったよ。聞くだけ聞いてやるから話せ」

京子「ほ、本当に!」パァァ

千鶴「本当に」

京子「あ、ありがとう千鶴!」

千鶴「気が変わらないうちにとっとと話せ」




千鶴「聞けば聞くほど嫌われない理由が理解できない。むしろなんで赤座はいままでお前なんかについて行ってたんだ?」

京子「……………」

千鶴「おまえ、本当に赤座の事を大切に思ってるのか? 友達の少ないこの私でさえもう少し人との接し方には気を使ってるぞ?」

京子「そ、それが私とあかりのお決まりのやり取りというか……」

千鶴「まだ言うか。お前には自覚が足りない!」

京子「自覚……」

千鶴「どれだけ赤座の心が広かろうが限界はある。お前はその限界を超えてしまったんだろう。お前達が、か」

京子「うん……反省してる」ズーン

千鶴「本当にか?」

京子「私たち、あかりに甘えてたんだなって……最近になってやっと気付かされた」

千鶴「家に来た時には、目つきの悪いこの私にすら笑顔で話しかけてきたからな。あいつに甘えたくなる気持ちは分からないでもない。だが、親しき中にも礼儀あり。限度を考えろ」

京子「はい………それでね」

千鶴「あん?」

京子「これから私たちはどうすればいいんだろう……」

千鶴「」ブチッ

千鶴「ふざけた事ぬかしてんじゃねぇ!!」

京子「ひぃ!!」

千鶴「何をするかなんて一つだろうが!! 謝れ!!」

京子「そ、そんなこと言われてもぉ…………」

千鶴「何が難しいんや! 悪いことをしたと思ったら素直に謝らんかいこのボケッ!! いつまでこんな所でウジウジしとるつもりや!!」

京子「は、はひ…………」

京子(ち、千鶴が方言出すと途轍もなく恐ろしい…………)ブルブル

千鶴「ぜぇぜぇ……わ、わかったらとっとと失せろ」

京子「う、うん……ありがと千鶴」

千鶴「チッ…………」

京子「……………」ギュッ

千鶴「ひっ!? な、なに手を握って……!」

京子「私、千鶴と友達で本当に良かった」ニコッ

千鶴「ああ? いつお前が友達になったんだよ!」

京子「え…………わ、私たち友達だよね?」オロオロ

千鶴「私はお前のことが大嫌いだ」

京子「……うぅ」グスッ

千鶴「大嫌いは言いすぎた。お前のことが嫌いだ」

京子「き、嫌いってぇ…………」グスッ

千鶴「普通だ。今のところはな……」

京子「え、えへへへ。千鶴は優しいなぁ」ニコッ

千鶴「…………………」ギロッ

京子「ち、千鶴がどう思ってても私は千鶴の友達のつもりだからね! 今日は本当にありがとう! またね!」



ガラララ!



千鶴(やっと行ったか…………それにしても)

千鶴(いきなり手を握ってきやがって…… それに勝手に友達認定していきやがるし)

千鶴(まぁでも、普段の歳納と比べたら幾分かはマシか……)



ー生徒会室前ー



京子「えっほえっほ……って、結衣!?」

結衣「あ、京子…………」

京子「どうしたのこんな所で!」

結衣「お前こそどうしたんだよ」

京子「わ、私はその……あかりに会いに」

結衣「…………謝りに来たのか?」

京子「てことは結衣も?」

結衣「うん。一晩考えたよ、ははっ…………」

京子「はは、確かに笑っちゃうよね。今更になってこんな簡単なことにたどり着くなんて」

結衣「でも京子は私よりも凄いよ。私は相談してやっとこうしようって考え付いたんだから」

京子「わ、私もだよ。千鶴に相談しちゃって…… 結衣は誰に相談したの?」

結衣「まりちゃん」

京子(うわぁ………)

結衣「正座させられて三時間も小言を言われたよ」

京子「あははは、流石まりちゃん」

結衣「困ったよホント……」フフッ

京子「…………………………」

結衣「…………………………」

京子「結衣、ゴメン!!」ペコ

結衣「それはこの前のことか?」

京子「うん。あ、あの時は頭に血が上ってて考えてもない事を怒鳴っちゃって……! そのっ、本当にゴメン!!」

結衣「…………………………」

京子「…………………うぅ」


結衣「あの時言ったけれど、今回のことに関しては私は謝る気はない」

京子「うん……分かってる。あれは私が最低だったもん」

結衣「まったく、あんなこと言われて私がどれくらいショックだったか分かってるのか?」

京子「う、うん…………」ビクビク

結衣「ったく、そんな目で見るなよ。全部許すよ」

京子「ほ、本当!?」パァァ

結衣「ああ。心の中でちなつちゃんにも謝っておけよ」

京子「もちろんだよ! ごめんねちなちゅ~ちゅっちゅ~!」

結衣「反省してないだろ」グッ

京子「は、反省してま~す!! だからまずはその手を降ろそうよ!!」

結衣「ったく……」




ガラララ




綾乃「へ?」

京子「へ?」

結衣「あ」


綾乃「歳納京子!!」

京子「あ、綾乃どしたの?」

綾乃「どうしたのはこっちのセリフよ。外が騒がしいから開けてみたら…… ここはあなたが来るような所じゃないはずだけども」

結衣「そ、そんな言い方しなくたって………」

綾乃「船見さんもよ! 今更なにしに来たの!!」

櫻子「どうしたんですか? あ、歳納先輩に船見先輩。こんちは」

京子「ちょうどいい所にちっぱいちゃん!」

向日葵「あら?」

結衣「おっぱいも来た!」

向日葵「は?」

結衣「あ、あぁいや何でもない! つ、つい京子に釣られて……」カアァァ

向日葵「べ、別に構いませんが……」

京子「そんなことはどうでもいいんだ! それよりもあかりを呼んでよ!」

千歳「ちょっと待ち」ジロッ

結衣「ち、千歳…………」

千歳「赤座さんに何の用なん?」ジロッ

櫻子(い、池田先輩から笑顔が消えた!?)

向日葵(普段温厚な方が怒ると怖いと言いますが……)

千歳「もしまた赤座さんにちょっかい出そう言うんならうちらも黙っておかんよ」ギロッ

京子「あ、いや………その…」チラッ

結衣「へ、あ……あっ…………え…………」アタフタ

綾乃(千歳がこんな風に対応するなんて向こうも予想外だったんでしょうね。完全にテンパりパリコレクションね!)

千歳「なんなん? 用がないなら帰ってくれへん? うちらも暇じゃないんやで?」

京子「よ、用事はある! あかりに!」

結衣「あかりは今日来てないの?」

向日葵「赤座さんなら今日は帰りましたわ」

京子「帰った?」

櫻子「今日だけで3回も保健室に運ばれてますから。主にちなつちゃんのせいで」

京子「ちなつちゃんが!? あ、あかりに何かしたの!?」

向日葵「鯖折りとバイオテロですわ」

結衣「鯖折り? ………………あぁ」

京子「バイオテロ? ………………あぁ」

綾乃「これだけで分かるの!?」

千歳「腐ってもごらく部っちゅう事やな」

結衣「ちなみにあと一回は?」

櫻子「ちなみに朝には悍ましい絵が下駄箱に入ってたんです!」

京子・結衣「悍ましい絵? ………………あぁ」

向日葵「これも心当たりが?」

京子「ま、まぁね」

結衣「多分悪気はなかったんだと思うよ。悪気は……」

結衣(それだけにタチが悪いんだよなぁ……)

京子「で、でもそれならさ! これからあかりの家に行こうよ結衣! そこなら絶対会えるでしょ!」

綾乃「あ! それはやめたほうがいいと思うわ!」

結衣「なんでだよ! 別に私達があかりの家にお見舞いに行く分には構わないはずだ!」

綾乃「あ、いえ……そうじゃなくて、その………… 邪魔しちゃ悪いというか……そのっ…………」ボソボソ

向日葵「へっ!? ま、まさか!?」

櫻子「んあ?」



ーあかりの部屋ー



ガチャ


りせ「………………」

あかり「あっ、美味しそうだよぉ! これりせちゃんが作ってくれたんだよねぇ」

りせ「………………」クスッ

あかり「えへへ、それもそうだよねぇ。この家今はあかり達しかいないものねぇ」

りせ「………………」

あかり「え、ちょっと恥ずかしいかもだよぉ」カアァ

りせ「………………」クイッ

あかり「う、うん。あ~ん」パクッ

りせ「………………………」ドキドキ

あかり「美味しい!」

りせ「……………………!」

あかり「凄いよりせちゃん! あかりこんなに美味しいオムライス食べたの初めてだよぉ! たまごはフワフワでご飯も味付けが丁度良くて! あかり幸せだよぉ」キラキラ


りせ「……………………」フンスッ

あかり「えっへへへ」ニコッ

りせ「………………」ナデナデ

あかり「うん、ありがとう。お昼ご飯も食べてなくてお腹減ってたから本当に助かったよぉ」

りせ「……………」ナデナデ

あかり「うん、ありがとう。今度りせちゃんに何かあったらすぐにあかりが駆けつけるからね!」

りせ「………………」ダキッ

あかり「えへへ、りせちゃんあったかい……」ギュッ

りせ「…………………………」

あかり「………………………」

りせ「…………………………」

あかり「………………………」

りせ「…………」チラッ

あかり「………………うん、いいよ」ニコッ

りせ「…………」スッ

あかり「…………………………」スッ




ちゅっ

















ちなつ「」




櫻子「え、えぇえええっ!? あかりちゃんと会長が!?」

綾乃「た、多分よ!? でもこの前のあんみつ屋さんの時、赤座さんの家に会長が泊まりに行ったらしいのよ」

向日葵「そ、それがなんでお付き合いしてるという事に?」

綾乃「その日からね、会長が何かそわそわしてるなぁって思ってたの。ほんのちょっとだけだけど。そうしたらこの前生徒会室でね…………」

西垣「キスしている2人を見てしまったと」

綾乃「そうです……って西垣先生!?」

西垣「呼ばれた気がしてな!」

綾乃「誰も呼んでませんけど……」

西垣「まぁとにかく、杉浦はその現場を見てしまったと」

綾乃「い、いえ! もしかしたら私の見間違いかもしれませんし! 赤座さんが会長の顔に顔を近づけてたところを見たくらいなので多分私の勘違い…………」

西垣「いや、2人は付き合っているぞ。キスもしたと言っていたな!」

綾乃「」

千歳「ほ、ほんまなんですか?」

西垣「ああ。最近は松本の惚気話が凄くてな。私の装置が爆発することも多くなったよ。これが本当の“リア充爆発した”という奴だな。ハッハッハ!」


千歳「………………」スチャ



ドバッ!!



千歳「」バタン

綾乃「ち、千歳ぇ!? しっかりしなさい!!」

千歳「」

綾乃「こ、このままじゃいけないわ!」

向日葵「ティッシュですわ! これで早く鼻を塞いでください」

櫻子「メガネはそこにありますんで踏まないように気をつけて下さい!!」

綾乃「わかったわ! 千歳しっかりして!」

向日葵「な、何か言ってますわ!」

千歳「ひ、ひさびさの……豊作…やでぇ………………ガクッ」

綾乃「千歳ぇ!! こ、こうなったら保健室へ運ばないと! 」

櫻子「わ、分かりました! 向日葵手伝え!」

向日葵「アンダスタン!」

綾乃「そ、そこの2人も手伝って………いない!!」

西垣「2人なら池田が鼻血を撒き散らす前に走って出て行ったぞ」

綾乃「そんなぁ!!」

向日葵「は、早く鼻に詰め物をしないと!! このままでは出血多量で命が危ないですわ!」

櫻子「でもポケットティッシュがもう一つしかないよ! これじゃ足りないよ!!」

綾乃「ああもう! いまから持ってきたんじゃ間に合わないわ!!」

西垣「ふふふ、私の出番だな!これを見ろ!!」ドーン

綾乃「な、なんですかこれは!? なんかすごい複雑そうな機械ですけれど!」

西垣「ふふふ、これは同一物製造マシーンだ! まだ試作品だから大したものはコピーできないがティッシュの箱くらいなら平気だろう。それ!!」



ビビビビーッ!!


ボンッ!


ポケットティッシュ × 2


櫻子「す、凄い!? ティッシュの箱に光線が当たったと思ったら二つになった!!」

向日葵「な、中身も全く同じですわ!! これなら鼻血が止められますわよ!!」

綾乃「な、な、な………………」ガクガク

西垣「ふふふ、成功だ! どうだ驚いたか!」

綾乃「驚くもなにもないですよ!! これどんな手品なんですか!?」

西垣「科学だとも!」

綾乃「科学の範疇を軽く超えてますよ!! もはやSFです!!」

西垣「SRだとも。Science Fiction ではなくScience REALだ!」

綾乃「そ、そんな馬鹿な………………」

櫻子「この際どっちでもいいです! これで池田先輩は安泰です!」



ヴ……ヴヴヴ…………



櫻子「へ?」

向日葵「あ…………」

綾乃「ま、まさか…………」

西垣「ふっふふふ…………」








西垣「芸術は爆発だ!!」


ー赤座家玄関前ー



京子「ぜぇ、ぜえ……ま、まさかあかりが…………」

結衣「い、いやまだ決まったわけじゃない。綾乃の勘違いという可能性も……!」

京子「いやでも! もしかしたらもしかする可能性も……………って、あれちなつちゃんじゃない!?」

結衣「本当だ! ちなつちゃんもあかりのお見舞いかな? おーい、ちなつちゃん!」

ちなつ「あ、結衣先輩。それと京子先輩……」

京子「どうしたのちなつちゃん、なんか元気がないけれど?」

ちなつ「お二人はいつも通りの元気が戻って来ましたね……」

結衣「う、うん。いろいろあってね。ちなつちゃんには心配かけちゃってごめんね」

京子「私たちがいつまでも腑抜けてちゃダメだもんね。これからは私たちも出来るだけ頑張ってみるよ」

ちなつ「…………はい。でももう手遅れかも」

結衣「え?」

ちなつ「いや、それがですね………生徒会長が…」

京子「会長!? ま、まさか……綾乃が言ってたこと…」

ちなつ「恐らくはそのまさかですよ京子先輩。あの2人デキてます。ガチな方で。私見ちゃいましたから!」

結衣「み、見たって……!」

ちなつ「さっきお見舞いに家に上がらせてもらって、あかりちゃんの部屋に行ったんです。そしたら……生徒会長とあかりちゃんが…………」

京子「トランプしてたの?」

ちなつ「そうじゃありませんよ! キスですキス!!」


結衣「はぅ…………」カアァァ

京子「あ、あかりが……ちゅうして……たの?」

ちなつ「その前もあ~んとか恋人同士の熱い抱擁、見つめ合い、そしてどちらからともなくキス! ま、まさかあかりちゃんが……!!」ガクガク

京子「…………………………」

結衣「…………………………」

ちなつ「せ、先輩?」

京子「そ、想像できない………あのあかりが……?」

結衣「私たちはあかりの事を小さい頃からずっと知ってるから…………とても想像できない」

ちなつ「で、でもっ……!」



ガチャ




結衣「っ!! 隠れろ京子!ちなつちゃんも!!」グイッ

京子「あわっ!?」

ちなつ(結衣先輩に腕つかまれちゃった♪)

ちなつ(ってそんなこと考えてる場合じゃない!!)



あかり「本当にありがとう、りせちゃん。おかげでもうバッチリだよぉ」

りせ「……………」コクコク

あかり「えへへ、でもごめんね。わざわざあかりの家までお見舞いに来てくれちゃって」

りせ「…………」フルフル

あかり「ううん、本当に嬉しかったんだぁ。あかり、りせちゃんの事大好きだよ」

りせ「…………」カアァァ

あかり「え、えへへ。そんなこと言われちゃうと照れちゃうよぉ」




京子「あかりの奴会長と会話してるよ!」ボソッ

結衣「なんで言ってる事が分かるんだ!?」ボソッ

ちなつ「存在感が薄い人同士で波長が合ったんじゃないかって向日葵ちゃんが言ってました」ボソッ

京子「お、おっぱいちゃん……」ボソッ

結衣「以外と黒いこと言うね」ボソッ

京子「で、でもさ! やっぱりあの様子を見るとただのお見舞いみたいじゃない?」ボソッ

結衣「そ、そうみたいだ。生徒会の部下のお見舞いに来た会長って感じじゃない?」

ちなつ「で、でもさっき見たんです! 2人がキスしてるところを! 信じてください!」

結衣「シィー 静かに」ボソッ

京子「多分見間違いだよ。ちなつちゃんって思い込み激しいから~ アハハ」

ちなつ「そんなはずは……」

結衣「だってほら見てご覧。あの様子は恋人って感じじゃ」





りせ「……………」
あかり「……………」


ちゅっ






結衣「」
京子「」
あかね「」

ちなつの絵 参考画像
http://i.imgur.com/4966K9i.jpg



ちなつ「ほら、やっぱ……え?」


あかね「」





ちなつ「りぃぃぃぃ!!?」




京子「ひいっ!?」

結衣「あ、あかねさん!!」

あかね「」

ちなつ「ま、まずいわこれは…………」ガクガク

京子「ひ、ひとまずここは」

結衣「お、お先に失礼しま……」

あかね「」ガシッ!

結衣「うわっ!?」

ちなつ「ゆ、結衣先輩!! は、早く逃げ……っ!」

あかね「誰? あの子は?」ゴゴゴゴゴ

京子「ひいっ!?」

あかね「誰・な・の? あかりの唇を奪ったあの娘は。だれもしらないの?」ゴゴゴゴゴ

結衣「い、いやその! あ、あれは…………」

京子「う、うちの学校の……生徒会長…………です」

あかね「ふぅん、そうなの。生徒会長があかりにねぇ…………」サッ

結衣「!」

あかね「………………」コツコツ






ちなつ「結衣先輩、無事ですか!?」

結衣「べ、別に平気だって。そこまで強く掴まれてた訳じゃないし」

京子「し、死んだかと思った…………」

結衣「大袈裟な」

京子・ちなつ(全然大袈裟じゃない!!)

ちなつ「このままじゃ会長さんが危なくないですか!?」

京子「そ、そうだよ!! 八つ裂きにされてもおかしくない!!」ガクガク

結衣「そんな馬鹿な……」ハァ

ちなつ「あっ! 見てください!!」




あかね「」クイッ

あかり「」ニコニコ

りせ「」ペコリ




京子「ああ!! 遠くて何言ってるか分からないけれど、会長が再びあかりの家にぃ!!」


ちなつ「だ、大丈夫! あかりちゃんがいます! あかりちゃんがいれば流石のあかねさんも何もしないはず!」

京子「そんなのどうとでもなるよ! あかねさんが一言部屋に戻ってなさいと言えばあかりはそれに従うだろうし!! もうどうしょうもない!!」グスッ

ちなつ「そ、そんなっ!! 会長~」グスッ

結衣(この2人大丈夫か?)




ガチャ




結衣「誰か出て来るぞ?」

ちなつ「なっ!? は、早い!!」

京子「血塗れのあかねさんじゃないの?」

結衣「お前はあかねさんをどうしたいんだ!」

ちなつ「逆に血にまみれた会長さんという可能性も!」

京子「うぅ…………い、一体」

ちなつ「生き残ったのは………………」







結衣「え?」
ちなつ「は?」
京子「ふぇ?」







松本りせ

装備品

頭 : くまさんぱんつ
右手: あかり抱き枕(着ぐるみパジャマver)
左手 : 分厚いアルバム






結衣「」
京子「」
ちなつ「」




あかね「」フラフラ


結衣「あ、あかねさん!?」

あかね「ま、負けたわ…………」

ちなつ「へ?」

あかね「負けたわ……うふふふ………………」フラフラ

京子「ちょ、ちょっと!!」

あかね「ごめんなさいみんな。今日は帰ってもらってもいいかしら………………気持ちの整理をしたいから」

ちなつ「は、はい…………」

あかね「うふふふ……うふふふふ………………」フラフラ


ー帰り道ー



京子「ねぇ、結衣」

結衣「なんだよ、京子」

京子「さっきのさ、その……ちゅーしてるあかり、見てどう思った」

結衣「…………………京子は?」

京子「質問に質問で返すなよ~」

結衣「うん、ごめん」

京子「もう」

結衣「…………なんかさ、すごい恥ずかしい…のかな…よくわからない」

京子「うん、私もだよ。なんか、昔のあかりを思い出すと身を捩りたくなるくらい恥ずかしい感じがする」

結衣「でも恥ずかしいとはちょっと違う気がするんだよなぁ」

京子「うん。なんなんだろねこの気持ち」

ちなつ「多分それは背徳感なんじゃないですかね……」

結衣「背徳感?」

ちなつ「幼馴染の見てはいけない一面を見てしまった事に対する背徳感。小さく無垢だった女の子が大人の女性になった瞬間を見てしまった事に対する……嫌悪感でもなく罪悪感でもない。背徳感」

京子「……………………」

ちなつ「背徳感の使い方が合ってるかどうかは分かりませんけれど、先輩方の感情を表すのはこれが一番近いと思います。私だってもしもお姉ちゃんがって考えると…………」

結衣「背徳感、か…………」

京子「なるほど。確かにそれが一番近いのかもしれない…………」


結衣「なぁ、京子」

京子「なに、結衣」

結衣「あかりさ、今すっごく幸せそうだよね」

京子「うん。良い友達に恵まれて、良い先輩にも恵まれて」

結衣「そして恋人まで出来た」

京子「私さ、あのとき泣いちゃったけれど……」

結衣「ん?」

京子「今なら笑って言えるよ。あかりをごらく部から生徒会に行かせて良かったって。心の底から!」

結衣「…………そうだな。あかりにとって本当に必要なものが今は揃ってる」

京子「私みたいにあかりを虐める先輩はいないし」

結衣「私みたいにあかりを無自覚で不快にさせてしまう人もいない」

京子「綾乃も千歳も、心の底からあかりのことを大切に思ってくれてる。それこそ私たち以上に。でなきゃあんなに怒らないもんな」

結衣「大室さんや古谷さんもね。それにちなつちゃんも」

ちなつ「わ、私ですか!?」

結衣「うん。今日だってあかりの為に色々してくれたんでしょ?」

ちなつ「でも結果は空回りしちゃって……」

京子「それでもだよ。あかりの為を思って行動したんだもの。私たちは自分のことしか考えてなかった」

ちなつ「ち、違います! 私だって自分のことしか考えて…………!」

結衣「それでも、私たちよりは全然立派だよ」

ちなつ「そんなっ! そんなこと言わないでください!!」

京子「ううん。分かったんだよちなつちゃん」

ちなつ「分かったって……何がですか!!」

京子「あかりにとって私は」

結衣「あかりにとって私は」





“もはや必要のない人間なんだって事が”


その後のことは朧げにしか覚えていない

でも確かなことは、ちなつちゃんが泣きながら去っていった事

そして私たち2人が今後あかりに極力関わらない事を決めた事

この2つくらいだ

もうあかりは私たちを必要としていないしそして私たちもあかりを必要としなくなった

後者に関しては間違いなく強がりだけれどもそれでもいい

今後はこの事に触れずに2人でまた1年前のようにやって行こう

今後はもうこの事で泣くのはよそうと決めた

だからその日の夜だけは涙が枯れるまで泣いた

翌朝に会ったとき向こうも目が真っ赤だった

多分私と同じように泣きつかれるまで泣いたんだと思う

その日の放課後にちなつちゃんのいない部室で2人で話し合った

その結果2人であかりに手紙を書く事になった

内容は掻い摘むとこうだ



今まで私たちに付き合ってくれてありがとう

いままで辛い思いをさせてごめんなさい

あかりが私たちを嫌いになるような態度をとってしまってごめんなさい

もうあかりは私たちに縛られることもない

私たちなんかよりも素晴らしい人たちに囲まれて楽しい学園生活を送って下さい

今後はもう私たちは一切あかりに関わりません

あかりはこのまま生徒会で楽しく充実した日を過ごしてください

いままでありがとう

私たちはあかりの事が大好きだよ




私たちは当然あかりに嫌われている

だからあかりもこの手紙を読んで喜んで私たちと縁を切ってくれると思ってた

そしてら手紙を出した当日にあかりが部室へとやって来た

その後ろからは慌ててついてきたと思われる綾乃と千歳と会長がいた


あかり「ねぇ京子ちゃん! 結衣ちゃん! この手紙どういうこと!!」

京子「どういうことってその手紙の通りだよ、あかり」ニコッ

結衣「そうだよ」

あかり「そんなっ……! どうしてもうあかりと関わらないようにするなんて書いたのぉ…………」

京子「それがあかりの為だからだよ」

結衣「そう。あかりは私たちみたいな最低な人間と一緒にいちゃいけないんだ」

あかり「そんなこと言わないで!! 京子ちゃんも結衣ちゃんもあかりの大切な人なの!! 最低な人間だなんて言わないで!!」

千歳「そうやで! うちらもあんな風に怒っちゃったけれども、こんな事をして欲しくて怒ったんやない!」

綾乃「2人とも赤座さんの事を大切に思ってるって私たちは知ってるわよ! だからこんな手紙を出したんでしょう! 完全に空回りしてるわよ!」

千歳「せやで! 今からでも遅くない! 赤座さんの気持ちを汲み取ってあげな!」

結衣「無自覚にあかりの事を傷付けた私がか?」ニコッ

あかり「っ!!」

千歳「ぁ……」

綾乃「そ、それは…………」

京子「いつもあかりの事を虐めて、最終的にあかりから嫌われた私が?」

あかり「そ、そんなことないよぉ! あかりは京子ちゃんも結衣ちゃんも大好きだもん!」

京子「それならなんでごらく部を辞めたんだよ、あかり」ニコッ

あかり「ッ!! そ、それは…………」

結衣「無理しなくていいんだよあかり。あかりは優しいからね、私たちにどうしても気を使っちゃうんだろ?」

京子「遠慮なく言っていいんだよ。あかりは京子ちゃんと結衣ちゃんが大嫌い! ってさ」

あかり「ち、違う………そんな…………違っ………………」プルプル

京子「ほら、無理するなってば。私たちももう踏ん切りがついてるんだから」

結衣「あかりももう自分の考えを押し殺してまでいい子でいる必要はないんだって」

あかり「そ、そうじゃないよぉ…… だってあかりは…………京子ちゃんと結衣ちゃんとちなつちゃんに嫌われてるって勘違いしちゃって……それでぇ…………」

あかり「あかりが勝手に思い込んで落ち込んで……全部全部あかりが悪いんだよぉ……!!」

あかり「あかりは2人に大好きって思われてて本当に嬉しかったんだよ! だから今日は謝りに来たの!」

あかり「あかりの勝手な思い込みで2人の事を嫌っちゃってごめんなさい! あかりも2人の事が大好きなんだもん!」



あぁこれだ

あかりは自分を悪者にする天才だ

今回のように100%自分に非がない状況でもこのように謝る事ができる

普通の人間ならこんなことはできないだろう

他ならぬあかりだから出来ることなんだ

こうなってしまうとあかりはとても頑固だ

到底このままでは縁を切ることはできないだろう

目配せをすると向こうも同じ事を考えていたらしい

だから私たちはお互いにしか分からないくらいに小さく頷いて

そして最後までしたくなかった最低な行為をする事を決断した


京子「はぁ、面倒臭いなぁ。せっかく波風立たないように手紙を出してあげたのに」

あかり「………………え」

綾乃「と、歳納京子?」

結衣「本当になんでこうなるんだか。あかりは本当に馬鹿だな」

千歳「船見さんまで………」

あかり「京子ちゃん……? 結衣ちゃん……?」ビクッ

京子「これは最後まで言いたくなかったんだよ。いったら多分あかりの事を傷付けちゃうから」

結衣「でもここまで来たらもう言うしかないな。はぁ……」

あかり「ふ、2人とも一体どうしたの…………」




京子・結衣「私達、あかりの事が大嫌いだから」



あかり「………………え?」

綾乃「なっ!?」

千歳「っ!」


京子「だってあかりってさ、何も特徴がないじゃん。正直言っていてもいなくてもどうでもいい存在だし」

結衣「むしろいたらいたで邪魔だもんな。目障りだし」

京子「大して面白い話もできないし、会話を振ってあげたら振ってあげたで特に話も続かないし」

結衣「昔から幼馴染のよしみで付き合ってあげてたら図に乗って先輩の私たちをちゃん付けするしさ。失礼にもほどがある」

京子「まさかあかりは私達が好き好んで遊んでたと思ってた? そんなのは小学校の頃までだよ。中学に入ってからは完全に仕方なく、だったんだよ」

結衣「それを自覚してごらく部を辞めてくれたと思ったらそうじゃなかったのか。本当に呆れちゃうよ」

京子「なにが京子ちゃんも結衣ちゃんも大好き、だよ。気持ち悪くて吐きそうになる」

結衣「本当だよ。せっかくあかりがいなくなって平和が戻って来てたのにさ。まさかこのまま戻ってくるつもりだったの? こっちの迷惑も考えて欲しいよ」

あかり「い、嫌だよ……や、やめ………………」

京子「何度でも行ってあげるよ」

あかり「やめて! お願いだからやめてよぉ!!」

結衣「私たちはあかりの事が」






“世界で一番大嫌いだ”



そこまで言った途端急に視界が真っ白になった

その理由が後ろに控えていた綾乃と千歳のビンタによるものだと気付くのにそう時間はいらなかった

普段なら恐らく泣いていただろうけれどあいにく私たちはもう泣かないと決めてある

だから私達は涙の代わりに笑みを零した

それが気に食わなかったのか2人はまたしても手を振りかぶる

けれどもその手が振り下ろされることはなかった

松本会長の腕の中で泣き噦るあかり

泣き噦りながらも必死に綾乃と千歳を抑えていたから

ビンタするのを止めてくださいと

悪いのは全て自分だからと

私が2人に嫌われるような事をしてしまったからだと

綾乃達はまだ収まらない様子だったけど取り敢えずは手を下ろした

そしてあかりと共にそのまま部室から出て行った

出て生きざまに見せた怒りにまみれた瞳がよく印象に残っている

それと対照に悲しみに満ちた松本会長の瞳もよく印象に残っている

4人が出て行った後に私たちは顔を見合わせて共に微笑んだ

これであかりはもう私たちと関わらないようにするだろう

あかりはもう私たちと縁を切って生徒会で充実した毎日を過ごせるだろう

それが嬉しくてしょうがなかった

そしてそのようにあかりを導けた事を私たちは誇りに思う



それからしばらくしてあかりと会長の事が学校中に知れ渡った

有能な会長とその恋人兼優秀な部下というカップルは瞬く間に生徒の話題の中心となり

全員が全員2人を祝福した

元々クラスで根強い人気があったあかりはその人気を他のクラス

遂には他の学年までに伸ばしていき

ファンクラブと言っては大げさかもしれないけれどとにかくそういう物まで出来たようだった

こうしてみるとやはりあかりは私たちといてはいけないんだなって再認識できる

綾乃と千歳もあかりの事を誇りに思っているようでクラスでよくその話をしている

もちろんその相手は私たちではなく他のクラスメイト達だ

最初の頃は私たちが全く会話をしなくなったことに違和感を覚えていた人もいたみたいだったけれども

やがてそれが日常となってしまった

そして私たちは今日も2人でごらく部にいる

これ以降は自己満足
>>230で満足という人は読まない、もしくはifストーリーとして読んで下さい

それからしばらくしてあかりと会長の事が学校中に知れ渡った

有能な会長とその恋人兼優秀な部下というカップルは瞬く間に生徒の話題の中心となり

全員が全員2人を祝福した

元々クラスで根強い人気があったあかりはその人気を他のクラス

遂には他の学年までに伸ばしていき

ファンクラブと言っては大げさかもしれないけれどとにかくそういう物まで出来たようだった

こうしてみるとやはりあかりは私たちといてはいけないんだなって再認識できる

綾乃と千歳もあかりの事を誇りに思っているようでクラスでよくその話をしている

もちろんその相手は私たちではなく他のクラスメイト達だ

最初の頃は私たちが全く会話をしなくなったことに違和感を覚えていた人もいたみたいだったけれども

やがてそれが日常となってしまった

そして私たちは今日も2人でごらく部にいる










そして時は流れ11月

生徒会選挙が近づいてきた

ー生徒会室ー



あかり「そ、それじゃあ2人は本当に立候補しないの!?」

向日葵「ええ。そう決めましたの」

櫻子「うんうん」

あかり「べ、別にあかりが副会長に立候補することになったからって遠慮しなくても……」

向日葵「いいえ、そうではありません赤座さん。私たちは赤座さんに遠慮なんてしてませんわ」

あかり「それじゃあなんで……」

櫻子「いやぁ~ だって勝ち目ないでしょ。あかりちゃん相手じゃ」

あかり「そんな事ないよぉ!」オロオロ

綾乃「大室さん。それじゃあ貴女は赤座さんに勝てそうもないから立候補するのをやめるってことなの?」

向日葵「あ、すみません杉浦先輩。そうではありません」

綾乃「それじゃあどうして……?」

向日葵「私が生徒会副会長になりたかったのは、この学校をより良いものにしたかったからです。それが私の目的でした」

綾乃「だったら尚更立候補するべきじゃないのかしら?」

向日葵「ずっと赤座さんと一緒に仕事をしてきたから分かります。悔しいですが赤座さんの生徒会としての能力は私よりも遥かに卓越しています。櫻子とは比べるのが烏滸がましいくらいに」

櫻子「お、おこ……? なんだって?」

向日葵「更に1年から3年の先輩方まで、殆どの方に赤座さんは愛されています。副会長になる為にはそのような人望も必要だと私は思いました」

あかり「向日葵ちゃん褒めすぎだよぉ!」カアァァ

りせ「………………!!」クワッ

櫻子「会長はなんだって?」

あかり「え、えと…………はぅ……」カアァァ

綾乃(多分赤座さんが愛されてる、の部分に反応してるんでしょうね。一番愛してるのは私だって言ってるみたい)

向日葵「それに私の目的である学校をより良いものにする、という事を実現する為にはなにも私が副会長になる必要はないと思いましたの。赤座さんをサポートするという方法もあるのかな、と」

あかり「そ、そんなこと………」

向日葵「私が副会長になって赤座さんにサポートしてもらうよりもその方が学校の為になる。私はそう確信しました。だからこそわたしは胸を張って副会長の座を赤座さんに譲ることが出来ます」

櫻子「ただでさえ張ってる胸を更に張ると申すかこの巨乳オバケ」ボソッ

向日葵「黙りなさい」バシッ

櫻子「ぎゃふぇ!!」

あかり「さ、櫻子ちゃんしっかりしてぇ!!」

綾乃「で、でも……古谷さんはあんなに副会長になりがってたのに………………」

千歳「ええんちゃう?」

綾乃「千歳……」

千歳「古谷さんはうちと同じ決断をしたんやね」

向日葵「はい、そうですわ。池田先輩のようになりたいと思ってますの」

千歳「あははは~照れるで古谷さん」

綾乃「大室さんは? 念願の副会長にならなくていいの!?」

櫻子「私ですか? ええ、大丈夫ですとも!」

綾乃「そんなあっさり!?」ガーン

櫻子「だって私が福会長になりたかったのって元々は向日葵に対抗してたからですから。向日葵がいいなら私もいいんです。もぐし! うめぇ!」

綾乃「そんな簡単に……って! それ私のプリンじゃないのぉ!!」

櫻子「いただいてます! 流石は杉浦先輩です! こんなに美味しいプリンを買ってくるなんて!」

りせ「…………」モグモグ

綾乃「会長までぇ!! 私のプリンがぁ……」

向日葵「うふふふ、全く櫻子ったら」

綾乃「笑い事じゃないわよぉ!」

千歳「ところで赤座さんは選挙の時の応援演説は誰に頼むん?」

向日葵・櫻子「それはもちろん私が………って、え?」

あかり「え?」

向日葵「バカなこと言うのはよしなさいな。貴女に演説の文章を考えるなんて無理でしょうに」ハァ

櫻子「そういうそっちだって! 舞台に立った途端に緊張で一言も喋れなくなるに決まってる!」

向日葵「そ、そんなことはありませんわよ!」

櫻子「ふん、どーだか!」

あかり「ま、まぁまぁ2人とも落ち着いてよぉ」

櫻子「あかりちゃんはどっちに応援演説してほしいの!」

向日葵「もちろん私ですわよね赤座さん! 生徒会の同級生で一番仲がいいのは私達ですもの!」

櫻子「ぬぁ~にが仲がいいだ! 仲が良かったらあかりちゃんの事を赤座さんだなんて呼ぶわけないじゃんか!」

向日葵「私は親しみと尊敬を込めて色々な方をさん付けで呼んでいるの。同級生では貴女だけですわよ、私が尊敬も親しみも込めてないのは」

櫻子「バカにしてんのかぁ!」

向日葵「櫻子をバカにしてなにがいけないの!」

櫻子「このばかっぱい!!」

向日葵「お黙りなさい!!」

櫻子・向日葵「ぐぬぬぬぬぬぬ~~!!」

あかり「あ、あの!えと! ………杉浦先輩!」チラッ

綾乃「………………………私の演説は任せたわよ千歳」

千歳「任しといて!」

あかり(見捨てられたよぉ!!)ガーン

りせ「…………………………」クイックイッ

あかり「どうしたのりせちゃん?」

りせ「……………!」フンスッ

あかり「あ、その……えっと……………ゴメンナサイ」ペコリ

りせ「」ガーン

綾乃(まぁ会長じゃ演説する以前の問題だものね)

向日葵「くっ! こうなったらどちらがより素晴らしい文章を書けるか勝負ですわ!!」

櫻子「おおー乗ったとも!! 私の白菜な部分を見せてやる!!」

綾乃(白菜?)チラッ

千歳(多分博識と秀才が混ざったんやろなぁ……どの道“博才”だと賭け事の才能って意味になってまうねんけどな)チラッ

櫻子「よっしゃ! あかりちゃん今日泊まりに来て!! 私の文才を見せてあげるから!」

あかり「え? べ、別にいいけれど……」

向日葵「いえ! 今日は私の家に泊まりに来てくださいな! 私もあまり文才はありませんが、それでも櫻子なんかよりは数十倍はマシな文章に仕上げて見せますわ!」

あかり「いや、その…………あのっ……」

櫻子・向日葵「あかりちゃんの応援演説の座をかけて勝負!!」

あかり「」ポカーン

綾乃(別に演説する人は2人でもいいのだけれども)

千歳(もう言い出せる雰囲気じゃないから黙っとこうなぁ)

りせ「……………」ウルウル

ー教室ー


ちなつ(はぁ、あれからというもののまったくごらく部に顔出してないなぁ………)

ちなつ(でも京子先輩も結衣先輩も2人だけで楽しくやってるみたいだし……今更私が行っても居づらいだけだもんなぁ……このまま喧嘩別れしちゃうのかなぁ)

ちなつ(…………………………帰ろ)



ガラララ!



「すみません、この教室に吉川さんって方はいますか?」

ちなつ「え、あっ……はい? な、何のようですか?」

「あなたが吉川さん?」

ちなつ「は、はい……」

ちなつ(誰だろこの人? 学年違うよね?)

「あぁ、ごめん。私は3年の者なんだけれども、少しお話ししても良いかしら?」

ちなつ「さ、3年生!? 先輩でしたか!」

「いいわよ、そんなに気を使わないでも。急に押しかけちゃったこっちが悪いんだし」

ちなつ「は、はぁ……」

「それでどう? 少し時間をもらっても良いかしら?」

ちなつ「わ、分かりました」

ちなつ(一体何の用事だろ? こんな人まったく知らないのに)

「実はね、私の姉が吉川ともこさんという人とお友達でね」

ちなつ「私の姉とですか?」

「そうなの。やっぱりあなたのお姉さんだったのね!」

ちなつ「は、はい……」

「それでね、その繋がりから貴女の事を聞いて勧誘に来たの!」

ちなつ「か、勧誘……ですか?」

「えぇ! 吉川さん、貴女ーーーーーー」







ちなつ「……………え?」

ー大室家ー



あかり「と、いうことがあって…………」

撫子「それで2人ともあんな形相で原稿用紙と睨めっこしてるのか」

花子「櫻子のくせにいつになく真剣な表情だし」

櫻子「………………」カリカリ

向日葵「………………」カリカリ

花子「今日の食事当番は櫻子だから早く終わらせてくれないと困るし」

あかり「あ、それならあかりが変わってあげたんだ。だから今日はあかりが作るよ!」

花子「え? 大丈夫なの?」

あかり「今日も泊めてもらうんだもん。このくらいの恩返しはさせてよぉ」

花子「いや、そうじゃなくて。ちゃんと食べれる物作れるのか心配だし」

あかり「そっちなのぉ!?」ガーン

花子「うっかりしてお団子を鍋に落としちゃうとか、塩と胡椒を間違えるとかしそうだし」

あかり「このお団子は着脱式じゃないよぉ! それにお塩と胡椒って……お塩とお砂糖ですらないのぉ!?」

花子「お鍋とか爆発しない?」

あかり「そんなの現実ではありえないよぉ!! もう花子ちゃん、あかりのことバカにしてるでしょ!」プンプン

花子「ちゃんと作ってくれるし?」

あかり「もちろんだよ!」

花子「それはそれで詰まらないし」

あかり「花子ちゃんはあかりになにを求めてるの!?」

花子「面白い失敗と安全な食事だし!」

あかり「それは絶対に両立できないよねぇ!?」

花子「是非とも頑張って欲しいし!」キラキラ

あかり「無理だよぉ!」

撫子「こら、花子。あまりあかりちゃんを困らすんじゃないよ。ごめんねあかりちゃん」

あかり「い、いえ! 全然平気です。それにむしろ楽しいです!」

花子「!!」パァァ

撫子「そう言ってもらえると助かるよ。花子もね、最近は暇さえあればあかりちゃんの話をしてるもんだからさ」

花子「ちょ、撫子お姉ちゃん! それは言わない約束だし!!」

撫子「ふふふ、だってもう1人姉妹が出来たみたいだってすっごく喜んでたから」

あかり「えへへへ」

撫子「妹が出来たみたいだって」

あかり「あかりお姉ちゃんじゃなくて妹なのぉ!?」ガーン

花子「ふふん、花子の方がお姉ちゃんだし。あかりお姉さんはお姉さんという敬称のついた花子の妹だし」

撫子「ついでに私の妹でもある」

あかり「一気にお姉ちゃんが3人になっちゃったよぉ!?」

花子「ひま姉もいるから4人体制だし。完璧だし!」

あかり「さ、櫻子ちゃんはどうなっちゃうの!?」

花子「とりあえずペットにしとくし」

あかり「人間ですらないよぉ!?」

櫻子「おいこら花子! うっさいから静かにしてろってば!」

あかり「ごめんね櫻子ちゃん。あかりの為に書いてくれてるのに邪魔しちゃって」

向日葵「いえいえ、むしろこれだけ賑やかな方が赤座さんの良いところをより一層鮮明に思い出せますわ」

花子「流石はひま姉だし」

撫子「まぁでも少しは静かにしないとね。せっかく櫻子が本気で頑張ってるんだからそこは汲んであげないと」

花子「……仕方ないし。それじゃあかりお姉さん、一緒にご飯作るし!」

あかり「花子ちゃん手伝ってくれるの?」

花子「もちろんだし! 妹の面倒をみるのも姉の役目だし」

あかり「えへへへ、ありがとう花子お姉ちゃん!」

花子「ふぁっ!? お、お姉ちゃんって……からかうのはやめて欲しいし!」カアァァ

撫子(花子のやつからかわれるのには慣れてないのか)

あかり「ほら、早く作ろうよぉお姉ちゃん」

花子「わ、わ、わ、わかったし! この花子様に任せておけだし!!」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





あかり「向日葵ちゃん、櫻子ちゃん! ご飯できたよ!」

花子「ふふん。2人で頑張って作った肉じゃがだし。櫻子は感激で噎び泣きながら食べるといいし」

櫻子「お前はもう少しお姉様である私に敬意を払え! あ、それと演説の文章できたよ!」

向日葵「私もできましたわ」

あかり「本当!? うわぁ凄い沢山書いてあるよぉ!」


撫子「一言も喋らず黙々と描いていたからね」

花子「その態度を普段からとって欲しいし」

櫻子「ふっふっふ。そんなことをしたら櫻子様のアイアンマンがなくなるだろう!」

花子「は?」

あかり「あ、アイアンマン?」

向日葵「もしかしてアイデンティティの事ですの?」

櫻子「そうだっけ? まーそんなことはどうでもいい! さぁ! この文章を読んで…………」

撫子「よっと」ヒョイ

櫻子「ちょっとねーちゃん!!」

撫子「櫻子の場合とんでもなくトンチンカンな文章を書いているかもしれないからまず私が読んで推敲してあげないと」

向日葵「それではまずこちらから。私の赤座さんに対する全想いを込めた文章ですわ」

あかり「ありがとう向日葵ちゃん! 早速読んでみるね」

花子「ワクワクするし」

撫子「えっと、ここも違う。ここもか。あとここも。漢字の間違いが多い。それに文脈もおかしい」ブツブツ

櫻子「ああぁ~ 私の文章がどんどん赤字塗れに…………」




撫子「さてと。2人の文章を読んだけれども、どっちの方がいい?」

あかり「え、えっと…………」チラッ

向日葵「」ドキドキ

櫻子「」ドキドキ

撫子「ひま子の文章は言わずもがなだけど、櫻子の方も伝えたいことは中々上等だったと思う。誤字脱字が非常に多かったけれどもね」

花子「もうなに書いてあるかわからないくらい真っ赤だし。元々なに書いてあるか読めないくらい櫻子の字が汚いというのもあるけど……」ヒョイ

櫻子「うっさい!」

あかり「えっと……その」

向日葵「遠慮することはありません! どちらがいいかをビシッと言ってください。もし負けても悔いはありませんわ」

櫻子「私の圧勝だからって向日葵に気を使う事はないよ!」

向日葵「やかましい!」

櫻子「むしろ負けて凹ませた方が良いってば! おっぱい的な意味でも!」

向日葵「ふんっ!」バシッ

櫻子「あべしっ!!」

花子「いつも通りの展開だし」

撫子(それで本当に凹むのなら私も協力は惜しまないけれども……)

あかり「あのね……あかり2人の文章読んだけれどもどっちもとっても嬉しいから。だからどちらかを選ぶなんて出来ないよぉ」



向日葵「あ、赤座さん……」

櫻子「むむむむ、でもどっちかを選ばないと演説が出来ないよ……!」

あかり「うん、分かってる……でもあかりの為にこんなに素晴らしい文章を書いてくれた2人のどちらかを切り捨てるなんてあかりには出来ないよぉ……」

花子「あかりお姉さん…………」

撫子「…………確かにね。櫻子にしても向日葵にしてもあかりちゃんのことを本当に想って書いてくれたんだから。あかりちゃんはそれを選ぶなんて出来ないよね」ナデナデ

あかり「はい…… ごめんね、2人とも。せっかく書いてもらったのにこんなこと言っちゃって」

向日葵「べ、別に赤座さんが謝る必要は全くありませんわ!」

櫻子「そうだよ! むしろ私たちの文才があまりにも卓越していたのが間違いだったんだって!」

花子「櫻子のは何か違うし」

向日葵「この子は謙遜という言葉を知らないんですわ」

櫻子「でも、それじゃあどうすればいいの……?」

撫子「足して2で割りなよ」

向日葵「へ?」

櫻子「どういうこと?」

撫子「2人のを読んだけどさ。櫻子には櫻子にしか知らないあかりちゃんの良いところ、ひま子にはひま子にしか知らないあかりちゃんの良いところがそれぞれ書いてあるんだよ」

向日葵「た、確かにそうですわね」

櫻子「私の知らないあかりちゃんの良いところも沢山あるもんね」

撫子「それなら2人で情報を共有して1枚にまとめたら、それが最も素晴らしい応援演説になるんじゃないのかな」

櫻子「で、でもこれは私と向日葵の勝負だし…………」

撫子「ひま子との勝ち負けとあかりちゃん、どっちが大事なの」

櫻子「あかりちゃん!」

撫子「ならもう答えは出てるでしょ」

向日葵「…………………………」チラッ

櫻子「…………………………」チラッ

向日葵「仕方ありませんわね。ここは呉越同舟ですわね」

櫻子「ごえごえ? なに訳のわからないこと言ってんの向日葵、バカじゃない?」

向日葵「…………確かにそうですわね。櫻子に四字熟語を使った私がバカでしたわ」

櫻子「なんだとごらぁ!!」



ワーワーギャーギャー オッパイチッパイ!



撫子「これでよかったかな、あかりちゃん」

あかり「はい! ありがとうございました撫子さん!」

花子「流石は撫子お姉ちゃんだし。もうお姉ちゃんが応援演説したらどうだし?」

撫子「いいや、私なんかよりもあの2人の方がこの子のことをよく知ってるよ。私にはこんなに良い文章は書けない」

あかり「えへへ、本当に嬉しかったです」

撫子「これからもあの2人のこと、よろしく頼むよあかりちゃん」

あかり「はい!」



ー同時刻の生徒会ー


綾乃「さてと、これでもうこの辺の整理は終わりましたね会長」

りせ「………………」コクコク

綾乃「でもよかったんですか? 3人を先に帰らせちゃっても。結構時間かかっちゃいましたし」

りせ「………………」

西垣「赤座には素晴らしい演説と応援演説をして貰いたい。だから早めに帰ってもらって用意をして欲しいと松本は言っている」

綾乃「西垣先生いつの間に!? って、このツッコミももうそろそろ飽きてきましたよ」ハァ

千歳「ホンマに会長は赤座さんが好きなんやね」ニコニコ

りせ「………………」ブイッ

綾乃「ま、まぁだって恋人だっていう……ね………」ボソボソ

千歳「それにしてももうすぐ綾乃ちゃんが生徒会長かぁ~ あっという間やったねぇ」

綾乃「まだ決まったわけじゃないわよ。他の人が立候補したりとか……」

千歳「そんなんあり得へんに決まっとるやんか~」

綾乃「そ、そうね! 落ち着かないと!」

千歳(綾乃ちゃん大丈夫かなぁ…… 演説の真っ最中に倒れたりせぇへんよね?)




コンコン




綾乃「はい、どうぞ」

「すみません、失礼します」

綾乃「えっと、なんの用かしら?」

りせ「……………」

西垣「松本と同じクラスの奴らしい」

綾乃「うぇ!? それじゃあ先輩!? すみませんでした!」

「いや、別に大丈夫ですよ。それでですね、実はこれを受理して貰いたくて」

綾乃「えっと……部活動の申請書ね。分かりました、今日はもう遅いので明日以降なるべく早く処理しますね」

「はい。えっと、これで大丈夫ですか?」

綾乃「何か不備があったらこちらから連絡しますね。確かに預かりました」

「はい、それじゃあ失礼します」



ガラララ




綾乃「こんな時期になって来るなんて珍しいわね。えっとなになに……あぁなるほど」

千歳「どういうこと?」

綾乃「入部希望届けじゃなくて部活動の発足申請書なのよ。最初に5人揃わないといけないやつ。多分今まで色々なところで勧誘活動してたのね」

千歳「へぇ。3年生なのに今から部活始めるんかぁ~」

りせ「………………」

西垣「彼女はもう進学がほとんど決まったも同然らしい。部活に入るのも我慢して勉学に励んでいた奴らしい」

千歳「へぇ~」


綾乃「なるほど。もう受験が終わったから部活を今からでも始めようってことね」

千歳「そっかぁ、うちらも来年生徒会を引退したら部活を始めてみよっか」

綾乃「あはは、それもいいわね。さて、と。会長、この申請書は会長でないと処理できないので」サッ

りせ「…………………」コク

りせ「…………………………」ジーッ

りせ「っ!?」

りせ「ッ!!」バンッ!

綾乃「きゃっ!?」

千歳「か、会長!」

綾乃「ど、どうしたんですか!? 会長がそこまで取り乱すなんて……なにが?」

りせ「………………」

西垣「ま、松本……?」

りせ「…………………」チラッ

千歳「あの、会長はなんて?」

西垣「少し1人になりたいらしい」

りせ「………………」コクッ

綾乃「え、あの……私たちは………」

千歳「それじゃ帰ろか。まだ千鶴もいるはずだから図書室に寄ってってもええ?」

綾乃「い、いいけれど……」

千歳「それじゃあお先に失礼します~」

綾乃「お、お先に失礼します」





西垣「松本、私には教えてくれてもいいだろう。それは一体なんなんだ? ただの申請書ではないのは察したんだが」

りせ「……………………」サッ

西垣「ふむふむ、見た所別におかしくはないな。爆発もしなさそうだし……」

りせ「…………………」スッ

西垣「ん? …………………………………」ジーッ

りせ「………………」フルフル

西垣「…………………なるほど。そういう事か」

りせ「…………………」ハァ

西垣「辛い立場だな、松本」

りせ「………」

西垣「どうするんだ?」

りせ「………」フルフル

西垣「決断は早めにな。せめて松本が生徒会長であるうちに全てに片をつけた方がいい。それが赤座と杉浦の為になる」

りせ「…………………………」ガタッ




パサッ




部活動発足申請書

発起人代表 : ○○○○
発起人 : ○○○○
同 : ○○○○
同 : ○○○○
同 : 吉川ちなつ
同 : ○○○○


顧問 : ○○○○ 先生



発足希望部名 : 茶道部


ーごらく部ー




結衣「そろそろ帰ろうか、京子」

京子「そうしよっか。宿題ももうとっくに終わっちゃったし」

結衣「2人だけだとお前も真面目に宿題やってくれるんだな。そこは喜ぶべきところかな」

京子「不幸中の幸いって奴だね!」ブイッ

結衣「はいはい。さて、と………」

京子「ねえ、結衣。もうさ、私たち元には戻れないよね」

結衣「なんだよいきなり、別れたカップルみたいなこと言いだして」

京子「いやさ、あかりのこと。もうすぐ副会長になるじゃん。そうなっちゃったらもう本当に終わっちゃうんだなあって思って」

結衣「今更にもほどがある」ビシィ

京子「あははは、最近あかりの話題が凄いからつい思っちゃって」

結衣「本当にもう天の上の人だからなぁ。この前サインを求められてるのを見かけたよ」

京子「サイン!? あかりの!?」

結衣「私もあれはびっくりした」

京子「はんぱねーな……」


結衣「全学年でいまやあかりの事を知らない人はいないくらいだからね。会長とセットでみんなから慕われてるよ」

京子「ううむ…………」

結衣「京子?」

京子「私の家にあるあかりグッズ、売れば金持ちになれっかな」

結衣「下世話すぎる!!」

京子「ははは、まぁ冗談だけどね。半分は!」

結衣「半分本気だったのかよ!?」

京子「お金は大事!」

結衣「身も蓋もない……!」

京子「よし、帰ろう!」

結衣「お、おい! ったく、本当にマイペースなんだから……」

京子「ほらほら、置いてっちゃうぞ!」

結衣「今いくよ!」




ー下駄箱前ー




結衣「ふぅ、走るなって」

京子「時間は待ってくれないのだよ!」

りせ「…………」

結衣「あっ…………」

京子「ん? へぁ!?」

りせ「……………」

結衣「か、会長。どうも」

りせ「…………」コク


京子「あの、それじゃあ私たちはこれで……」

りせ「………………」スッ

結衣「あ、あの……ひとつだけ聞いていいですか?」

京子「ゆ、結衣!」

結衣「いいから! あの、会長。あかり、最近どうですか? ちゃんと生徒会で頑張ってますか!」

りせ「………………」コク

結衣「そうですか。よかった」

りせ「…………………………」

結衣「あと、あかりって最近は私たちの事とかごらく部の事とか話題にしてますか?」

りせ「…………………」フルフル

結衣「そうですか」ホッ

りせ「…………!」

結衣「すみません会長、ありがとうございました。それじゃ帰るぞ京子」

京子「う、うん……… あの、お先に失礼します!」





京子「ちょっと結衣! ダメだよあんなこと聞いちゃ! 会長にとって私たちはあかりの敵だよ!?」

結衣「それでもどうしても聞いておきたかったんだ。あかりの事をさ」

京子「そう」

結衣「良かったよ本当に」

京子「うん」


結衣「それにちょっと心配もしてたんだよ。あかりが自分の事を未だに責めてるんじゃないかって」

京子「ああ、あれね」

結衣「あそこまであかりの事を攻撃したのに」




あかり『全部あかりが悪いんです!! あかりが結衣ちゃんと京子ちゃんに嫌われるようなことをしちゃったからです!!』




結衣「とか言い出すんだもんな」

京子「あれには驚いたよ。あかりはどこまでいい子なんだってさ」

結衣「あの時、もう少しで泣きそうだったよ。心が痛すぎて」

京子「私も私も! あかりに抱き付いて泣きかけた!」

結衣「千歳にビンタしてもらって良かったよ」

京子「結衣、何てことを!?」

結衣「は?」

京子「ビンタされて嬉しいだなんて……そんな性癖持ってたなんて……」ガクガク

結衣「………」バシッ

京子「あたっ!!」








りせ「……………………」コソコソ

西垣「……………………」コソコソ

りせ「……………」ハァ

西垣「なんとなく想像はしていたが、やはりこういうことだったのか」

りせ「………………」


西垣「なに? 私は最初から気づいていただと?」

りせ「………………」

西垣「そもそも最初から赤座とごらく部の間にはなんの確執もない。ただのすれ違いだった、だって?」

りせ「…………………………」

西垣「だから歳納にはもうその事を伝えている。悲しい事だけど赤座がごらく部を選ぶなら私はそれを尊重すると。だから貴女も早く誤解を解きなさい、だって?」

りせ「…………」コクコク

西垣「因みにそれいつの事だ?」

りせ「………………」

西垣「随分前? たまたま図書室近くの空き教室にいたからその時に話した、か」

りせ「…………」コクコク

西垣「………………なぁ、言いにくいんだが」

りせ「……………?」キョトン

西垣「多分それ伝わってないぞ」

りせ「」ガーン

西垣「でもそれなら今からでも赤座にその事を伝えれば」

りせ「…………!」フルフル

西垣「なに? もう嫌だ、あかりちゃんはごらく部に渡したくない! だって?」

りせ「…………」ウルウル

西垣「ふふふ、大丈夫だ松本。お前がそんな事を考えても私はお前の事を見損なったりなんてしない」ナデナデ

りせ「……………」

西垣「それでも赤座の事を決めるのは赤座自身、どんな決断でも赤座の意思を尊重する、か」

りせ「………………」

西垣「ふふふ」ナデナデ

りせ「…………」

西垣「あ、ところで……」

りせ「……………?」

西垣「その、程々にしとけよ。赤座が好きなのは分かるんだが、部屋を見たら多分、いや絶対に引かれると思うから」

りせ「…………………!」グッ

ー大室家ー



花子「うりゃ! うりゃ!」

あかり「ふわぁあああん! 花子ちゃん、レース中なのにわざわざあかりに甲羅をぶつけてこないでよぉ!!」

花子「さっき花子にファイアーボールを当てた罪は大きいし! んふふふ!」

あかり「ひぇえええ!!」

撫子「アタック」

花子「ぎゃあ!? 花子が崖下に吹っ飛ばされたし!?」

あかり「やったぁ! これで助かった……」

向日葵「あ」

あかり「ああぁ! あかりまで崖下にぃ!!」

向日葵「ごめんなさい赤座さん。当たるつもりはなかったんですのよ」

櫻子「くっそ! あかりちゃんの仇だ! このバナナの皮でも喰らえい!」

向日葵「おっと」

櫻子「ちょ!? 避けるな……ああぁ!!」

撫子「櫻子は皮投げるとほぼ確実に自分で踏んじゃうんだから……」


花子「くっ! かなり遅れたし……なんでこんなに順位を落としたし!」

あかり「確実にあかりに構ってたからだよね!?」

花子「つまりあかりお姉さんのせいだし! こうなったら甲羅ぶつけてやるし!!」

あかり「見事に原点回帰だよぉ!!」

向日葵「あ」

花子「ぎゃあす!?」

向日葵「ご、ごめんなさい花子ちゃん! わざとじゃないんですのよ!?」

あかり(い、今のうちに影の薄さを使ってこっそりアクセル全開だよぉ!)

櫻子「向日葵にバナナアタック!」

あかり「ひゃあっ!? ああああ!! また落ちたよぉ~!!」

櫻子「しまった!? あかりちゃんに気付かなかった!」

撫子「それにしても花子とあかりちゃんは仲がいいね」

花子「仲良きことは美しき事だけどこんな風に蟻地獄で仲良くもがくのはゴメンだし!」

あかり「早くゴールしたいよぉ!」

向日葵「あ」

あかり・花子「嫌ぁあああぁ!!!」

向日葵「ゴメンなさい!!」

撫子「ひま子ぜったいわざとでしょ」

櫻子「向日葵は以外と腹黒いからなぁ~」

向日葵「ち、違います! 本当にぶつかるつもりはなくて!!」

あかり「向日葵ちゃんの鬼ィ~!」

花子「やるならあかりお姉ちゃんだけをやるし!!」

あかり「あかり花子ちゃんに売られたよ!?」

櫻子「どーでもいいけど早くゴールしてよ」

花子「ていっ! ていっ!」

あかり「やめてぇ~!!」



ー花子の部屋ー




あかり「それじゃあお休み花子ちゃん」

花子「お休みなさいあかりお姉さん」

あかり「ふぁ~ 今日は楽しかったねぇ。あかりと遊んでくれてありがとう、花子ちゃん」

花子「遊んでもらったのはこっちだし。礼を言うのはこっちだし」

あかり「あはは、そうだねぇ」

花子「…………………………うん」

あかり「花子ちゃん? どうかしたの?」

花子「………………ねぇ、さっきの怒ってる?」

あかり「さっきのって?」

花子「ゲームであかりお姉さんを攻撃した事。あの時は深く考えなかったけど今考えてみると…………その……」

あかり「ん?」

花子「ゴメンなさい………」

あかり「ううん、謝る必要なんてないよ」

花子「え……」

あかり「あかり全然怒ってないもん。さっきだって花子ちゃん凄く楽しそうな顔してたからさ、その顔を見てるだけであかりとっても嬉しかったよぉ」


花子「でもそのせいであかりお姉さんが……」

あかり「全然大丈夫だよぉ。花子ちゃんの嬉しそうな顔を見るだけであかりも嬉しくなっちゃうもん。だから全然気にしなくていいよぉ」ニコッ

花子「あかりお姉さんゴメンなさい。そしてありがとうだし……」

あかり「えへへ、どう致しまして」

花子「あかりお姉ちゃんって今まで本気で怒った事ってあるし?」

あかり「へ? うーんと……えっと…………」

花子「やっぱりないみたいだし」

あかり「えへへへ……人を怒るのって難しいね」

花子「花子は毎日櫻子に怒ってばっかだし」

あかり「あっはは、なんか想像できちゃう」

花子「それでも最近は少しマシになって来たところだし」

あかり「へぇ、そうなんだ。どんなところが?」

花子「以前までは宿題をさせるまでに撫子お姉ちゃんが10回は催促してたのに、最近は8回くらいに減ったし!」

あかり(あんまり変わってない気がするよぉ!?)

花子「あんまり変わってないと思うかもしれないけれど、櫻子にとっては大きな進歩だし!」

あかり「そ、そっかぁ……」


花子「学校ではどうだし? ちゃんとあかりお姉さんの指示に従ってるし?」

あかり「あかりは指示はしてないよぉ。でもお願いするんだ、これをやってもらってもいいかなって」

花子「それじゃどんどん付け上がるんじゃ……」

あかり「ぜんぜんそんな事ないよぉ。多分花子ちゃんは櫻子ちゃんの事を少し勘違いしてるんだと思うよ」

花子「勘違い………」

あかり「姉妹だからっていうのもあるとは思うけれども、花子ちゃんもよく櫻子ちゃんの事を見てあげて。きっと良いところがたくさん見つかるから」

花子「あ、うん。分かったし……」

あかり「とは言っても花子ちゃんは既に櫻子ちゃんの良いところを全部知ってると思うけどもね」

花子「うん、その自信は一応あるし。あんなでも一応姉だし」

あかり「あんなでも、とか言っちゃダメだよ花子ちゃん」

花子「あ、はい……」

花子(こうしてみるとやっぱりあかりお姉さんも立派なお姉さんだし…………)

あかり「だから、ひゃあなてね………」

花子「へ?」

あかり「スースー…………」

花子「寝付きよすぎだし…………」

花子(あかりお姉さんはやっぱり妹みたいだし…………)



ー生徒会総選挙当日ー



あかり「もう少しで演説! 緊張するよぉ!!」

向日葵「お、おおお落ち着いてくださいましな赤座さん!!」ガクガク

櫻子「いや、お前が落ち着け向日葵。あかりちゃん以上に緊張してるじゃん」

向日葵「だだだだって!! こんなに人が集まるなんて思いませんでしたの!!」

櫻子「それは想定しておけよ! 全校生徒が集まってるんだから」

向日葵「なんであなたは平気な風なのよ!? これだけ人がいて緊張しないのは馬鹿だからなんですの!?」

櫻子「うっさいおっぱい! ほら、向日葵は池田先輩を見習う事にしたんだろ! ともかくあれを見ろ!」ビシィッ

向日葵「は、はい!?」




千歳「しっかりせんといかんで綾乃ちゃん! 早く落ち着かんと!」

綾乃「ももも問題ないわよ!! ないないナイアガラやよ!! この伊波綾乃は無敵よ!」

千歳「伊波ってだれやねん! 綾乃ちゃんは杉浦綾乃や!」

綾乃「ゴメン! でもね大丈夫な気がしないのよぉ! ハクション大魔王にでも替え玉を頼みたい!」

千歳「なぜにハクション大魔王?」

綾乃「ガッチャマンの方が良かったかしら!? それともヤッターマン!?」

千歳「タツノコプロから離れぇや!」

綾乃「う……吐きそう…………私はこんな風に目立つの嫌なのよ苦手なのよ!!」

千歳「あ、綾乃ちゃん…………」

綾乃「ふえぇぇん…………もう泣きたいわよ! わたしの代わりに千歳が会長になりなさいよぉ!」

千歳「それもええけど、結局綾乃ちゃんはうちの応援演説するから全校生徒の前に出なきゃいけへんで?」

綾乃「…………………………」

綾乃「終焉(おわり)だぁぁぁ……!!」ガバッ

千歳「ちょっと綾乃ちゃん! 抱きつくならうち以外にしてくれんと! 鼻血垂らす暇がないやんか!」




櫻子「なっ? すごく落ち着いてるでしょ!」

向日葵「杉浦先輩の方に目を奪われてしまいましたわよ……」

あかり「あかりもあの様子を見てたら逆に落ち着いちゃって。えへへへ」

櫻子「ほら、向日葵もあれを見たら落ち着いたでしょ?」

向日葵「た、確かに落ち着きましたけれども」

櫻子「よし、オッケーだ! しっかりとわたしの傍に立っているが良い!! あとは櫻子様に全て任せろ!!」

向日葵「わ、分かりましたわ!」

あかり(そういえば演説は結局、向日葵ちゃんが文を書いて櫻子ちゃんが読む事になったんだよねぇ)

あかり「って、向日葵ちゃん裏で待機してるだけなのに緊張しすぎだよぉ!!」

向日葵「な、慣れてませんもの……! そこは汲んでください!」

あかり「櫻子ちゃんは逆に落ち着いてるね。実際に壇上に立って読むんだからもっと緊張してても良いはずなのに」

櫻子「だってここまで来ちゃったらもう緊張したって仕方ないじゃん。やるだけやるしかない!」

向日葵「バカって凄いわね」

櫻子「さっきから本当にうっさいなぁ! 裏で待ってるだけの役立たずは黙ってなよ!」

向日葵「誰がその文を書いたと思ってるんですのぉ!!?」

あかり「あ、あははは」


綾乃「アァアアア赤座さん!!」ガシッ

あかり「はいっ!?」

綾乃「私の救世主(メシア)ァアアアア!!!」ガバッ

向日葵「ちょっと杉浦先輩!!」

櫻子「頭良い人って凄いですね……」

千歳「ここまで壊れるとは思わんかったわ……」

櫻子「でももうすぐ……」

「すみません、もうすぐ出番ですので準備お願いします」

綾乃「ははははははぁあああ!?」

千歳「あ、ごめんなさい。すぐ行かせます」

綾乃「ちちちちととととととせせせせ!!!」ガクガク

千歳「ほら、さっさと行き」

綾乃「薄情者ォオオオ!!!」



千歳「やっと行ったなぁ~」

櫻子「あれ、池田先輩は行かないんですか?」

向日葵「まず先に候補者が演説。その後に演説者から呼ばれて応援演説者が壇上に上がるのよ。聞いてなかったの?」

櫻子「てへっ!」

向日葵「全くもう……」

千歳「それにしてもやけに静かになったなぁ。綾乃ちゃんもいざとなったら落ち着いて演説を…………」




綾乃『千歳ぇ! 早く来て頂戴ぃいいいい!!!』




千歳「ダメやったみたいやね……」

櫻子「でも会場からは笑い声が聞こえてるからウケはいい感じじゃないですか!」

千歳「ウケ狙いしてたわけではなかったと思うけどなぁ。ま、とにかく行ってくるわぁ」

向日葵「はい、ご武運を!」

櫻子「頑張ってください!」

千歳「そんじゃなぁ~」




向日葵「さて、池田先輩なら心配はないでしょう。櫻子、準備はよろしいかしら? 当然練習はしたのでしょう?」

櫻子「へ? 練習なんてしてないよ」

向日葵「は、はあぁぁ!?」

櫻子「だって台本読んでいいんでしょ? そんなの簡単じゃんか」

向日葵「そんなわけないじゃないの! 一度は練習するのが普通の精神を持つ人間ですわ!!」

櫻子「うむむ~ これを読むだけだから簡単だと思うんだけど……」

向日葵「赤座さんを見て御覧なさい! さっきからずっと原稿用紙とにらめっとして練習してるんですよ!」

あかり「……………」ブツブツ

櫻子「おお、さっきから一言も喋ってないと思ってたらそんな事をしてたのか!」

向日葵「ほら、貴女も…………」



綾乃「おわ゛っだぁあああ!!」

あかり「ひゃあ!?」

向日葵「きゃう!」

櫻子「ゾンビ!?」

千歳「綾乃ちゃんやで~」

綾乃「」バタン

櫻子「だ、大丈夫ですか?」

向日葵「今は静かにしてあげましょう」

あかり「それじゃあ次はあかりの番だね!」

向日葵「ええ」

櫻子「よっしゃ! ぶちかましてこーい!」

あかり「うん、行ってくるね!」ガタッ



向日葵「ええ、行ってらっしゃい。さて、もうすぐですわね。櫻子、今のうちに練習を…………」

櫻子「よっしゃ! それじゃあ本番を想定してこれを!」

向日葵「な、なにそれ? どこから持ってきたの!?」

櫻子「なんか杉浦先輩が持ってた」

向日葵「ま、まぁいいですわ。それじゃあ練習しましょう」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



あかり(さて、こうして実際に壇上に上がったのはいいけれど……)

あかり(やっぱり、凄く緊張するよぉ!!)

あかり(当然のことながら全員の目線があかりに向いているから、かなりのプレッシャーだよぉ…… と、とりあえずマイクを…………)

あかり(って!? マイクがないよぉ!?)

あかり(え!? なんで!? 何処にもないよぉ!!)キョロキョロ

「どうぞ」ボソッ

あかり「へ、あっ! ありがとうございます!」ボソッ

あかり(進行役の人ありがとう! よし!)

あかり「あーあー えと、こんにちは。1年生の赤座あかりです。今回は生徒会副会長に立候補しました!よろしくお願いします!」ペコリ

あかり「私が副会長に立候補したのは、この中学校の多くの人を笑顔にするためです!」

あかり「この中学校の人たちはみんないい人であると、私は胸を張って言い切ることが出来ます」

あかり「例えば私が生徒会の仕事でたくさんの荷物を運んでいるとそれを運んでくれる、花壇の水やりをする時に一緒に手伝ってくれる、私に微笑んでくれる、具体例を挙げればキリがありません」

あかり「えっと、さっき廊下で緊張してた私を励ましてくれた2年生の方もありがとうございました!」ニコッ



キャーアカリチャンカワイー!

アカリチャンガワラッタワー!

アカリチャンコッチムイテー!

マツモトカイチョーガウラヤマシイワー!



あかり「えへへへ」フリフリ

あかり「私はそのような人の温かさや優しさに触れ……………」



ピーガガーー


あかり「そんな皆さんに精一杯の恩返しを…………ってアレ?」


ガ、ガガガー


あかり「な、何だろうこの音…………」



『だからそこはそうじゃないと言ってるじゃありませんの!!』

『うっさい! このおっぱいオバケ!!』


あかり「なっ!?」



ナンダナンダー

コノコエダレダロ

オッパイオバケダッテ

ドコカデキイタヨウナ



『だから貴女はダメなんですの! もっと大きい声でハキハキと読みなさい! 舌ったらずなのはダメなんです!』

『生まれつきなんだから仕方ないだろー!』

『バカなのもの生まれつきでしたわね。なら仕方ありませんわ』

『やかましいわ! そういうそっちだってそのおっぱいは生まれつきだろ!』

『そんなわけないでしょう! 生まれた時は今の櫻子並みでしたわ!』

『なにおー!! 私の今のおっぱいを知らんだろ! 今見てみるか!?』

『ないものを見てもなにも感じませんわよ』フフン

『あるっての!! おいこら向日葵! その顔をやめろー!!』



あかり「な、な、なんであの2人の声がマイクに拾われて………」




『そんなバカなこと言ってる場合じゃありません! 早く練習しないと赤座さんが恥をかきますわ!』

『うむむむ~仕方ない。えっと、あかりちゃんは学校の多くの“ほうぼー”から“ぼ“われてて、生徒会ではいつも物静かに仕事を………』

『多くの“方々”から“慕”われてて!! 貴女はこんな簡単な漢字も読めないんですの!?』

『うっさい! 向日葵がこんなに難しい漢字を使うのが悪いんだよ!』

『小学生レベルの漢字ですわよ!? 貴女本当に中学生なの!?』

『バカでも年取れば中学生になれるんだもんねーだ!』フフン

『そんな事を威張るんじゃありません!』



『あとさー、ここんところ』

『なんですの?』

『あかりちゃんって物静かに作業してなくない? いっつも会長とベタベタしてるじゃん』

『……あ、あれはどちらかと言えば会長の方がベタベタしに行ってるじゃありませんの』

『でもあかりちゃんも満更じゃなくない?』

『………………ま、まぁそうですわね』

『そんじゃさ、ここん所は“いつも会長とベタベタしてて、この頃の寒さも全く感じさせないくらい熱々の中で仕事をしてて”にすれば?』

『流石にそれは赤座さんに酷でしょう!?』

『でも、向日葵もそう思うよね?』

『………………否定はしませんわ』

『この前なんかプリンをあ~んしあってたもん。もう見てるこっちまで熱くなってくるねあれは』

『生徒会温暖化の原因は確実にアレのせいですわよね』

『そのくせ仕事が早いんだもんなー 卑怯だよね』

『恋する乙女は強いんですわ』

『あの2人、何処まで行ったんだろ? もう同じお風呂に入って同じ布団で寝てたりするのかな?』

『は、はぁ!? さ、櫻子はなに言って……!?』

『だって仲の悪い私たちですらもうそれはこなしてるんだよ? あの2人だってもうそれくらいはさ……』

『あ、プラトニックな意味なんですのね…………まぁ櫻子ですから…………』

『んあ?』

『ま、まぁでもあ~んを私たちの前で恥ずかしげもなくするくらいですから……そのくらいはもしかしたら…………』

『プラスチックにね!』

『プラトニック!!』




わははははー!
あははははー!
あっはははー!





あかり「は、はうぅぅ~」カアァァ

あかり「も、もう櫻子ちゃん! 向日葵ちゃん!!」カアァァ



『お、呼ばれたぞ! よっしゃ行くぞー!!』

『が、頑張ってらっしゃい櫻子! ちゃんと読んできなさいよ』

『なに言ってんの? ほら、向日葵も行くよ』

『な、ななななんで!?』

『だってあかりちゃん、私たち2人を呼んだんだよ?』

『む、むむむ無理!! 無理無理無理ですわよ!! あ、あんなにたくさん人がいるのにそんなところに私が出ていけるはずがありませんわ!!』

『読むのは私なんだから。向日葵は後ろで控えといてよ』

『そ、そんなこと言われても!! さ、さすがに無理ですわぁ!!』

『いいからほら!』グイッ

『きゃっ! って…………』

『なんだよ?』

『震えてますの? 櫻子』

『べ、別に震えてねーし』

『…………………』

ぎゅっ

『うわっ! なに手握って来てんだ!』

『櫻子、付いていきますわよ。ずっと後ろについててあげます』

『向日葵……』

『まったく、本当は緊張してたんですのね。流石にこの辺りの漢字を間違えるのはおかしいと思ってました。さっきまでもずっと空元気でしたのね』

『ふ、ふん!』

『ほら、行きましょう櫻子。私はずっと櫻子を見守ります。貴女が素晴らしい演説をしてくれると信じてますわ』


『…………………………』

『櫻子?』

『よくぞ言った! それでこそ我が下僕、褒めて使わす!! 何処までも私の後ろをついてこい!』

『はいはい、そうですわね』

『向日葵?』

『どこまでも付いていきますわよ櫻子。絶対に』

『んなっ!?』

『ほら、早くしないと赤座さんが困っちゃいますわよ』

『…………はっ! そうだったよ。急ぐぞ向日葵!!』

『はいはい』

『あ、この練習用のマイクどうすればいいかな?』

『杉浦先輩に返したらいいんじゃありません』

『でも、2人とも保健室行っちゃったよ?』

『それではその辺に置いておきましょう』ガタッ




ドタドタドタドタ!



櫻子「ども~! あかりちゃんの応援演説をする生徒会の大室櫻子です…………って、あれ?」

向日葵「あ、あの……赤座さん、なんで皆さん、その………尊いものを見るような表情を……?」

あかり「…………えっとね、あの」

櫻子「よっしゃ! なんか知らんが注目されてる今がチャンス! ここでアレを……あれ、あれ?」

向日葵「櫻子、まさか……」

櫻子「台本裏に忘れた」テヘッ

向日葵「……………」ハァ

櫻子「ちょっと取ってくるから待ってて!」

向日葵「え、ちょ!? さ、櫻子! 私を1人にしないでぇ!!」

あかり「…………………………」



あかり「もうメチャクチャだよぉ………」







りせ「…………」グッ

西垣「いや、多分狙ってたことじゃないとは思うぞ? まぁ結果的にこれで生徒会の株はウナギのぼりだろうな」


ー放課後ー



向日葵「」ズーン

櫻子「」ズーン

綾乃「」ズーン

あかり「あ、あの…………」オロオロ

千歳「流石にダメージが大きかったみたいやなぁ~」

綾乃「もう嫌……あんな恥を…………全校生徒の前で…………」プルプル

向日葵「聞かれてた……全部聞かれてた…………あんな恥を…………」ズーン

櫻子「ごめんあかりちゃん……こんな…………バカが演説なんて………あかりちゃんの迷惑に……………」ズーン

綾乃「大室さんは悪くない……わ、私が……緊張のあまりマイクを……裏まで持って行きさえしなければ………」ズーン

向日葵「ち、違います……わ、私がマイクを使うのを……止めておけば………」ズーン

櫻子「ごめんよあかりちゃん~~!!」ズーン

あかり「べ、別に気にしてないよぉ! だから櫻子ちゃんは元気出してぇ!!」オロオロ

向日葵「もういや…………………」

綾乃「こんな私が生徒会長なんかになれる訳がない……………」

千歳「あ、綾乃ちゃん……」



ガラララ



西垣「死屍累々だな、松本」

松本「……………」

千歳「あ、西垣先生に会長……」

松本「………」

千歳「あの、結果出たんですか?」

綾乃「!!」ガバッ!
櫻子「!!」ガバッ!

あかり「うわぉ!? 急に起き上がったよぉ!?」

綾乃「ああああああわわわわわわ、私ははははは!! 」ガクガク

櫻子「あああああああかりちゃんはぁぁああああ!!?」ガクガク

向日葵「なんという失態を………みんなの前で………………うぅ……」グスッ

西垣「めでたく2人とも当選だ」

綾乃「」

櫻子「」


千歳「ほんまにか! おめでとう赤座さん~!」

あかり「ほ、本当ですか!! 良かったぁ~ あかりホッとしたよ…………」

櫻子「うおっしゃああああぁぁああぁああぁッッ!!!」ダキッ!

あかり「ちょっと櫻子ちゃん!?」

櫻子「良かったよぉ!! あかりちゃん!! 私達のせいでもしもあかりちゃんが落選してたらって思うとドキドキしてたよぉ!!」グスッ

あかり「だ、大丈夫だよぉ! だって櫻子ちゃん達、あかりの為に一生懸命演説してくれたんだもん! あかり絶対に当選すると思ってたよぉ!」

櫻子「あ~が~りぃ~ぢゃあぁあん!!」グスッ

あかり「よしよし」ナデナデ

りせ「……!」ムッ

西垣「こらこら、後輩に嫉妬するんじゃないぞ」

りせ「……」コク

櫻子「あかりちゃん大好きだよぉ~!」グスッ

あかり「あかりも櫻子ちゃん大好きだよぉ」

りせ「」グッ!

西垣「待て松本! とりあえずその振りかぶった手を降ろせ!!」

綾乃「」

千歳「あ、綾乃ちゃん~ しっかりしぃや…… ほら、受かったんやからもっと喜びなってば!」

綾乃「」

千歳「え、えっと古谷さん。ほら、赤座さんも綾乃ちゃんも無事に受かったんやから、そろそろ落ち着いてぇな」

向日葵「も、もういや……学校に来れない…………」プルプル

千歳「……………」ハァ


西垣「因みに杉浦は投票率100%で当選したぞ。例年は欠席とか無投票とかあって80%が平均なんだがな」

千歳「そりゃなぁ……あんな可愛い演説をされたらみんなメロメロになるでぇ」

あかり「そんなに凄かったんですか?」

千歳「うん。だって真っ赤な顔でシドロモドロになりながら読んでたんよ。端から見てても可愛かったもん~」

綾乃「」

千歳「まだ反応ないなぁ……」

西垣「そして赤座に至っては驚異の150%だ!」

あかり「150%!? そ、その数字は一体どこから出てきたの!?」

西垣「投票率100% + 紙の裏にまで名前を書いた人が50% で150%だ」

あかり「そ、そんなに!?」

千歳「赤座さんは元から根強い人気があったからなぁ~ 会長が嫉妬するくらいに」

りせ「……………」コクコク!

櫻子「やっほぉ~い!! あかりちゃんが福会長!! あっはははは!!」

向日葵「…………………」ズーン

綾乃「」

西垣「こりゃ赤座と池田以外はカオスだな」

りせ「………………」

西垣「そうだな。しばらく放っておくとしよう」


ー赤座家ー



櫻子「よっしゃ! それじゃあ杉浦先輩とあかりちゃんの当選を祝して!!」



「「乾杯!!」」



綾乃「あ、ありがとう!」

あかり「ありがとうみんな!」

向日葵「おめでとうございます杉浦先輩! 赤座さん!」

千歳「おめでとうなぁ~ 2人とも! うちもホッと一安心やで!」

りせ「…………」

櫻子「今日は我々の奢りだ! さぁ皆の者、存分に食べて飲むが良い!!」

向日葵「なんで貴方がそこまで偉そうなんですの……」

綾乃「で、でも本当にいいのかしら? こんなに沢山の豪華な料理を……」

千歳「ええよええよ、うちらにはこんくらいしかできへんもん」

向日葵「うふふふ、豪華と言っていただけて嬉しいです。腕をふるった甲斐がありましたわ」

あかり「え? これ向日葵ちゃんが作ったの!?」

櫻子「私と会長と池田先輩とついでに向日葵で!」

向日葵「貴女はお皿に盛り付けただけでしょう!」

櫻子「日本人は美を大事にするから、盛り付けが重要なの!」

向日葵「バイキング行った時には、非常に前衛的な盛り付けをしてたくせに……」

櫻子「うっさいなもー!!」


千歳「うふふふ~」

りせ「…………」

綾乃「会長はなんだって?」

あかり「2人が仲良くって安心してます。これなら生徒会を任せられるって」

向日葵「べ、別に仲良くはありませんわよ?」

櫻子「そうですわよ~?」

りせ「……………………」

あかり「あ、あははは」

千歳「なんやって?」

あかり「な、なんでもないです……」

あかり(あの放送のことをぶり返したら向日葵ちゃんがまた伏せっちゃうよぉ……)

りせ「…………………」グッ!

向日葵「相変わらず綺麗なサムズアップですわね」

櫻子「はい、あかりちゃん! 杉浦先輩! どうぞ!」

綾乃「ありがとう大室さん。まぁ、美味しそう」

あかり「ありがとう櫻子ちゃん! うわぁ~唐揚げだぁ! あかり唐揚げ大好き!」

向日葵「他にも玉子焼きや手作りのお寿司、ロールキャベツや煮込みハンバーグ、サラダもたくさん作ってありますわよ!」

千歳「うちも沢山の漬物持って来たで。ほら、これとかとっても美味しいんよ綾乃ちゃん。はいあ~ん」

綾乃「あ~ん………美味しい!! なにこれ千歳!? これ千歳が作ったんでしょ!?」

千歳「それは千鶴が作ったものやねん。今日のために持ってけって言ってくれたんよ」

綾乃「千鶴さんが?」

あかり「美味しいなぁ~ はい、りせちゃんあ~ん」

りせ「…………」モグモグ

あかり「あむ! えへへ、りせちゃんに食べさせてもらうといつもより美味しいよぉ!」

櫻子「ほれ、向日葵。食え」

向日葵「貴女はいつになったらニンジンを食べられるように…………ゲッ!」

櫻子「……………ほら、よこしなよ」

向日葵「し、仕方ありませんわね。ほら」

櫻子「あむ。なんで向日葵ピーマン嫌いなんだよ? 別に不味くないのに」

向日葵「なにってこの味ですわよ。臭いとかも……あ、それと!」

櫻子「ん?」

向日葵「中身が空っぽのところが櫻子に似てるところとか」

櫻子「あぁ~なるほど! …………ってどういう意味だぁ!!」

向日葵「おっほっほっほ!!」








あかね「」ゴゴゴゴゴ

あかね(くっ!! せっかく私のあかりが副会長に就任することになったからお祝いに来たのに、入るには入れない……!!)ゴゴゴゴゴ

あかね(なんなのよこの生徒会は!! ガチゆりしかいないの!? なんでみんなみんなあ~んし合ってるのよ!! そんなの普通はしないでしょ!?)ゴゴゴゴゴ

あかね(私だってあかりとあ~んしたいわ! あかりの事を抱きしめてぎゅってして! ナデナデして! チュッチュしたいのに!!)ゴゴゴゴゴ

あかね(それもこれも全部あの女のせいよ………あの松本りせとかいう小娘に私の幸せは全部破滅させられた!! しかもこの私を凌駕する程のあかり愛を持つだなんて!!)ゴゴゴゴゴ

あかね(ええ乾杯よ! 間違えた完敗よ!! あの中学生に私は完膚なきまでに叩きのめされたわよ! この私が!!)ゴゴゴゴゴ

あかね(私がなにを言っても目をそらさずまっすぐにこっちを見てきて、片時も目をそらさなかった! しかも無言で! これは私と話すまでもなく勝利を宣言されたのも同じ事!)

あかね(私のあかり愛を確かめさせる為に部屋に案内したら満面の笑みで私に握手してきて、なにを勘違いしたかあかり三大神具を持っていかれる始末!!)

あかね(それでも私はまだ諦めない! なぜなら私にはあかりが必要だから!! だから私は戦うわ! 見ててねあかり!!)ゴゴゴゴゴ

あかね(とりあえずはこのプレゼントよ! 私が選んだ高級万年筆!! とはいっても中学生に持たせるものだからそこまで高くできなかったけど……精々3万円くらいだけどもね!)

りせ「…………」チョン

あかね(ふっふふふ! プレゼントは誠意という言葉があるかもしれないけれども実際は金額! 価値よ! 価値がすべてを決めるのよ!!)ゴゴゴゴゴ

りせ「………………」チョンチョン

あかね(あの中学生にこの3万円の万年筆が買える?買えないわよねぇ! 精々それがあの女の限界! そこを私は飛び越えるわよ! うっふふふ! あっははは!!)

りせ「…………………………」チョンチョン

あかね(さぁて? このまま部屋に突撃してこのプレゼントをあかりに渡してきましょう! あの女の悔しがる様を見たいものよ!)

りせ「…………………………………」チョンチョン

あかね(うっふふふふ! あっははははははははは!!)

りせ「…………………………………………」チョンチョン

あかね「…………………………は?」

りせ「…………………」ペコリ

あかね「は、はあぁあああぁああ!? あ、貴女なぜここに!?」



りせ「………………」ユビサシ

あかね「あ、あぁ……トイレ? 行きたいの? え、もう帰ってきたところ?」

りせ「…………………………」コクン

あかね(全然気づかなかった! いつの間に部屋から出ていつの間に行ってきたっての!?)

りせ「………………」クイクイッ

あかね「へ、なに? 引っ張ってどうしたの?」

りせ「……………」クイクイッ

あかね「え? へ?」




ガチャ




あかり「りせちゃん帰ってきた…………お姉ちゃん!?」

綾乃「お姉ちゃん!? ってことはこの人が!」

千歳「噂の赤座さんのお姉さんか!」

櫻子「うわぁ! そっくりだ! ちなつちゃんの言ってた通りあかりちゃんとそっくりだよ!ね、向日葵!! へぶっ!?」

向日葵「ば、バカ! 人を指差さない! しかも初対面の方に対して失礼極まりませんわ!!」

あかね「あ、べ、別にいいのよ!? あかりの友達なんですもの、そんな事くらいで怒ったりしないわよ」アタフタ

綾乃「あ、あの! は、初めまして!! わ、私は杉浦綾乃といいまして、生徒会で赤座さんとご一緒させて頂いてていつも赤座さんにはお世話になってたりしてそれで……!!」オロオロ

千歳「綾乃ちゃん、落ち着きぃ」

向日葵「あの、うちの櫻子が本当に失礼を働きまして……!」

櫻子「すみませんでした!」ゲザァ!

あかね「あ、いや……その……」

あかり「み、みんな落ち着いてよぉ! あかりのお姉ちゃんだから大丈夫だってぇ!」

櫻子(いや、私たちはちなつちゃんから……)

向日葵(お姉さんの事を前もって聞いてたから……)

櫻子・向日葵(安心できない気がする!!)


りせ「……………」

あかり「あはは、確かにそうかもねぇ」

あかね「あ、あのあかり。この子は一体なんて言ってるの?」

あかり「お姉ちゃんみたいな大学生の人って珍しいからみんな緊張してるんだよって言ってるよぉ」

あかね「な、なんで分かるの!?」

あかり「なんでだろうねぇ? えへへ」

あかね(か、可愛いっ!!)

綾乃「あ、あの!」

あかね「はい?」

綾乃「初めまして! 私は杉浦綾乃といいます。赤座さんと同じ生徒会には入ってる者です。赤座さん…………あかりさんには普段からお世話になってます!」

千歳「うちは池田千歳といいます。あかりちゃんには普段からお世話になってます」ペコリ

櫻子「ども、あかりちゃんのお姉さん! あかりちゃんの大親友の大室櫻子です! 今後あかりちゃんのお世話は私におまかせくださ……っぐへっ!!」

向日葵「あなたはいい加減にしなさいっ!! 本当に申し訳ありません! この子はこのパジャマから見ても分かるように鳥頭でして!」

櫻子「ピヨピヨッ!」

向日葵「私、古谷向日葵です。この櫻子と同様赤座さんのクラスメイト、そして生徒会でもご一緒させていただいています」

あかり「杉浦綾乃先輩と池田千歳先輩は2年生、こちらの松本りせ先輩は3年生なんだぁ! あ、りせちゃんはこの前会ったから知ってるよねぇ」

りせ「……………」

あかね「も、もちろん忘れるわけがないわよ! この前は楽しかったわ!」

りせ「……………」ペコリ

あかり「りせちゃんも楽しかったって言ってるよ! 2人とももう仲良しなんだね!」

あかね「も、もちろんよぉ!」

櫻子「さすが会長です! もうあかりちゃんのお姉さんと仲良しになってるだなんて!」

綾乃(もうお姉さんに、妹を下さいって頭下げに行ったのかしら?)

千歳(なんかこのお姉さん匂うねんなぁ……… うちと近い雰囲気を感じるで……… いや、うちよりも行動的な感じが…………)

あかり「それでね、これがあかりのお姉ちゃん! あかりのことをとっても大切に想ってくれる優しいお姉ちゃんなんだ!」

あかね「赤座あかねよ。みんなの事はあかりからいつも聞いてるわ。いつもあかりがお世話になってます」ペコリ

櫻子「あかりちゃん、私たちの事お姉さんに話してくれてたんだね!」

向日葵「ま、櫻子の事はあまりいいことじゃないでしょうけどもね」


あかね「あら、そんな事ないわよ。あなたが櫻子ちゃんね?」

櫻子「はい!」

あかね「とっても元気な子で、いつもあかりを元気にしてくれる子だって聞いてるわ。それにとても優しくて運動神経も抜群だって」

櫻子「て、照れるなぁ~ あかりちゃん」カアァァ

あかね「そして貴女が向日葵ちゃんね? 私が想像してた通りの子だわ」

向日葵「初めまして」

あかね「気配りが出来てとても真面目なんですってね。あかりがいつも助けてもらってるって感謝してたわ」

向日葵「そ、そんなことありませんわ! 私の方が赤座さんに余程助けていただいてます!」

あかり「そんな事ないよぉ。向日葵ちゃんはいつもあかりの事を助けてくれてるもん!」

向日葵「そ、そんな事言われると……うぅ…………」カアァァ

あかね「うふふふ、そして貴女が綾乃ちゃんね。格好いい先輩だっていつもあかりから聞いてたの。一度会いたかったのよ」

綾乃「か、格好いい!? わ、私がですかぁ!!」

あかり「そうなんだよお姉ちゃん! いつもあかりの事を気に掛けてくれる優しい先輩で、お仕事してる時なんかはとっても格好いいんだよ!!」

綾乃「あ、赤座さん!? あ、あまりそういう事言わないでくれないかしら……恥ずかしい………」カアァァ

千歳「綾乃ちゃんは恥ずかしがり屋さんやなぁ」

綾乃「ち、千歳ぇ~」グスッ

あかね「千歳ちゃんの事ももちろん聞いてるわよ。優しくてとっても可愛い綿あめみたいな先輩がいるってね」

千歳「う、うちが可愛い……? そ、そんな事あらへんよ赤座さんったら~」

あかね「ううん、とっても可愛いわよ千歳ちゃん。それにあかりが頭を撫でたいって言ってた意味が分かるわねぇ~」

千歳「あ、そんなことないですって! そ、そんな綿あめなんてなぁ……」

あかり「ちょっとお姉ちゃん、そんな事まで言わないでよぉ~!」

あかね「うふふふ、ごめんなさい。でもあかりが皆さんの話をするとき本当に嬉しそうな顔をしてたから」

あかり「もぉ~」プンプン

あかね「そしてりせちゃんね。この前は楽しくお話し(?)出来たわ」


りせ「…………」

あかり「え、そうなのりせちゃん?」

あかね「へ?」

あかり「なんかりせちゃんがね、お姉ちゃんがさっきからずっと部屋の外にいたって言ってるんだぁ」

あかね「ギクッ!!」

櫻子「そうだったんですか!? 早く入ってきてくれればよかったのに! なんかあったんですか?」

あかね「いえ、別にやましい気持ちはなにも!! ただ生徒会のみんなが集まって楽しんでるのにそこに私なんかが入っていいのかなって思っちゃって!」

あかね(まさかりせちゃんに呪詛を飛ばしてただなんて言えない! あかりに嫌われちゃう!)

あかり「それじゃあなんであかりの部屋の前にいたの?」

あかね「そ、それはね……これを渡そうかと…………」

あかり「なにこれ?」

あかね「ほら、あかりの生徒会副会長当選のお祝いに買ってきたの!」

あかり「え、本当!?」パァァ

あかね(か、可愛いわぁあああ!! この笑顔が見られただけでご飯10倍は行けるわよぉ~!! つまり30杯はいけるわぁ!!)

あかり「ねぇ開けてもいい?」

あかね「もちろん」ニコッ

あかり「えっと、これは……」ゴソゴソ

あかり「ペン?」

向日葵「ま、万年筆じゃありませんの!? そ、それにこんなに高級そうな!!」

櫻子「流石大学生!!」

あかね「うふふふ、多分これからはあかりも文を書くことが多くなるでしょう? それならこれが一番いいかなって思ったのだけれども……気に入ってくれたかしら?」

あかり「うんっ! あかりとっても嬉しい! ありがとうお姉ちゃん、大好き!!」

あかね「~~~~~~~~~~~~!!」

あかね(天使降臨!!)


千歳「赤座さん良かったなぁ」ニコッ

綾乃「そうね。多分これからは沢山それを使うことになるわよぉ~」

あかり「はい! あかりの宝物にします! ずっと大切に使います!! 本当にありがとうお姉ちゃん!」

あかね「あっはぁああああああ!! こんな事当然よあかり!! 可愛い私の妹ですもの!!」ギュッ

あかり「えへへへ」

りせ「………………」

あかり「え、りせちゃんも私に何かくれるの!?」

りせ「………」コクコク

あかり「うわぁなんだろう!」ゴソゴソ

りせ「………」

綾乃「え、私にもですか!?」ゴソゴソ

あかり「あ、キーホルダーだ!」

綾乃「私もよ! 赤座さんとは色違いのやつ。ほら」

あかり「えへへ、お揃いですね杉浦先輩!」

あかね(……ふふふ、勝った!)

千歳「うちからはこれや!」

綾乃「うっ! これは…………」

あかり「あ、ぬか漬け! あかりぬか漬け大好き!」

千歳「何プレゼントしたらええか思い浮かばんかったからいつも通りのこれにしたんよ」

綾乃「あ、あははは、ありがとう千歳」

綾乃(貰っておいて何だけど流石にこれはどうかと思うわよ、千歳…………赤座さんは喜んでるけども)



向日葵「私からはこれですわ。大したものではないのですけども…………」

あかり「わぁお人形さんだぁ!」

綾乃「こ、この人形ってもしかして……」

千歳「えらいそっくりやなぁ~ すぐに赤座さんと綾乃ちゃんだって分かったもんなぁ」

綾乃「手作りしたの!?」

向日葵「は、はい。試行錯誤を繰り返してなんとか渡せそうなものを作る事ができました。本当につまらない物で恐縮ですが……」

あかり「ううん、とっても可愛い! ありがとう向日葵ちゃん!」

綾乃「私も嬉しいわ。ありがとう古谷さん!」

向日葵「気に入っていただければ幸いですわ」ニコッ

櫻子「よし、最後は私だ! えーオホン! 2人ともよく聞いててね」

あかり「?」

綾乃「?」

櫻子「わたし大室櫻子は一生あかりちゃんと親友でいる事を誓います! わたしと友達になってくれてありがとうあかりちゃん! これからもずっとずっとよろしくね!」

あかり「へ?」

櫻子「わたし大室櫻子は一生杉浦先輩の後輩でいる事を誓います! 普段からわたしの面倒を見てくれてありがとうございます! 今後もどうぞよろしくお願いします!!」

綾乃「あ、ありがとう……?」

向日葵「?」

千歳「?」

向日葵「………………って、それで終わりですの!?」

櫻子「へ? うん、そーだよ」

向日葵「さ、櫻子…………」ガクッ

櫻子「え、えへへへ~ プレゼント何にしようか迷ってたんだけどさ、お小遣いは使い尽くしちゃったし、かと言ってなにかあげられるものもなかったから」

向日葵「あ、貴女って子は…………」



りせ「……………」パチパチパチパチ

千歳「会長?」

向日葵「な、なんですの?」

りせ「…………………………」

りせ「………………………」

りせ「………………」

あかり「うん、あかりもそう思う!」

りせ「………………」ナデナデ

櫻子「わわわ!? か、会長!」

千歳「赤座さん、会長はなんて?」

あかり「その、もらった私が言うのは少し恥ずかしいんですけども……」

りせ「…………」コク

あかり「プレゼントは相手を想う気持ちがあれば何でもいい。心がこもっているものはどんな物であれ最高のプレゼントになる、と言ってます」

あかね(ッ!!)

あかり「それに今回はあかりと杉浦先輩に一生涯付き合っていける友人ができた。そんな友人は一生でそう多くはできない。2人も櫻子ちゃんを手放さないように大事にしなさい、とも言ってます」

櫻子「てへへ~」

あかり「あかりとっても嬉しかったよ櫻子ちゃん! 普段あかりの事を大事に思ってくれてる気持ちが伝わってきたもん!」

綾乃「わ、私もよ。ちょっとストレートに感謝されちゃったから恥ずかしかっただけで……とっても嬉しかったからね!」



あかね(…………そうよ赤座あかね。貴女は一体なにを言っていたのよ!)

あかね(プレゼントが価値だけで決まるのなら、私があかりから貰った幸せな日々は無価値なの!? 幼い日にもらったあの指輪は意味のないものなの!? 違うでしょ赤座あかね!)

あかね(私はこのりせちゃんを憎むばかりに、あかりの心すらを蔑ろにしていたわ! 姉として失格よ! 最低よ! )

あかね(まさか中学生の女の子、それもあかりを奪って行った子にその事を気づかされるなんて………ふふふ、もう本当にダメなお姉ちゃんね…………)

あかね「りせちゃん」

りせ「……?」

あかね「ありがとう」ナデナデ

りせ「っ!」ピクッ

あかね「うふふ」

りせ「…………………」

りせ「…………」ニコッ

あかね(尤も、まだ認めたわけではないけどもね)ゴゴゴゴゴ






綾乃「ごちそうさまでした」

あかり「ごちそうさまでした! とっても美味しかったぁ」

向日葵「お粗末様でした。喜んで頂けて良かったですわ」

千歳「頑張って作った甲斐があったなぁ」

あかね「ごちそうさま。とっても美味しかったわ! 私まで頂いちゃって申し訳なかったわね」

向日葵「いえいえ、お姉様にも気に入って頂けて良かったです」

あかね「今日はみんな泊まっていくのでしょう?」

櫻子「はい! 生徒会全員でのお泊まり会です!」

あかね「あらあら、楽しそう。それじゃあ私はこの食器を台所に置いてくるわね」

あかり「あ、あかりも一緒に行くよぉ」

向日葵「いえ、それは私達が……」

あかね「まぁまぁ。あかりの事を気にしてくれるのは嬉しいけどもここは私たちの家だもの。お客様にはそこまでさせられないわ」

あかり「あ、それじゃあみんなはこの円机の片付けと押入れから布団出してもらっていいかな?」

櫻子「了解! この櫻子様が綺麗に布団を敷いてやろう!」

向日葵「貴女はまた調子に乗って…………」

りせ「……………」

あかね「それじゃあ行きましょう、あかり」

あかり「うん、お姉ちゃん! それじゃあちょっと行ってくるね!」






あかね「よっと。それにしてもみんなきれいに食べたわね、おかげで軽く洗うだけで済みそう」

あかり「そうだねお姉ちゃん。あかりも一緒に洗うよぉ」

あかね「お願いするわあかり。それにしてもあかりはいいお友達と先輩を持ったわね」キュッキュッ

あかり「えへへ、そうでしょ!」

あかね「あ、ところでみんなはどうしたの? またお祝いしてくれるのかしらね?」キュッキュッ

あかり「みんなって?」

あかね「何言ってるのよあかり。京子ちゃんたちのことに決まってるじゃないの」

あかり「……………ッ!!」


パリーン!



あかり「あ…………」

あかね「あかり! 大丈夫? 怪我はない!?」

あかり「う、うん。大丈夫だよお姉ちゃん。いまあかりが拾うから……」

あかね「ダメよ! 怪我したらどうするの! いま私が拾うからあかりは動いちゃダメよ!」

あかり「う、うん。ごめんねお姉ちゃん……」

あかね「いえ、大丈夫」

あかり「…………………」

あかね「…………何かあったの?」

あかり「え…………」

あかね「あかりがその顔をしてる時は何かあった時、昔から変わってないわね」

あかり「…………う、うぅ」

あかね「無理して話してくれなくてもいいわよ。でももしも私が相談に乗ってあげることであかりの気が軽くなるのなら話して貰いたい」

あかり「…………………うん」

あかね「……えっと、もう大丈夫かしらね。残りの細かいのは掃除機で吸い取りましょう」

あかり「…………………………」

あかね「あかり?」

あかり「お姉ちゃん………」

あかり「お、お姉……ちゃ…………うぅ…………」グスッ

あかね「大丈夫よあかり」ギュ

あかり「あ…………」

あかね「お姉ちゃんはあかりの味方だから。大丈夫よ、大丈夫」ギュッ

あかり「…………ふ、ふぇ…………ふわあああぁぁぁあぁぁぁあ!!」



あかね「なるほど、私の知らないうちにそんなことになってただなんて」

あかり「……………………」

あかね「京子ちゃんと結衣ちゃんがそんなことを言うなんて夢にも思わなかったわ。辛いことを思い出させてしまってゴメンなさい、あかり」

あかり「ううん、大丈夫だよ」

あかね「ふふ、ありがとう」

あかり「ねぇ、お姉ちゃん。あかりはどうしたらいいのかな…………」

あかね「あかりはどうしたいの?」

あかり「……………分からない、どうしたらいいのか分からないの」

あかね「………………」

あかり「あかりは京子ちゃんも結衣ちゃんも大好き。これからも2人とずっと仲良くしていたい。でも…………」

あかね「2人はあかりの事を嫌いって言ったのね」

あかり「うん…………」

あかね「そっか、難しいわね」

あかり「……………………」

あかね「喧嘩だったならゴメンなさいをすれば良いのだけど、今回は喧嘩ですらない。あかりには謝ることがなにもないものね」

あかり「京子ちゃんと結衣ちゃんに嫌われちゃったあかりが悪いの……あかりがもっとしっかりしてて、楽しいお話もできればこんな事にはならなかったの…………」

あかね「それは違うわよあかり」

あかり「え……」

あかね「あかりはね、自分では気づいてないのかもしれないけれど、とってもしっかりしてて明るく元気な子なの。楽しいお話だっていっぱい出来る子なのよ」

あかり「でも……京子ちゃんたちが…………」

あかね「あの2人がどう言おうとも私はそう思う。上にいるみんなにも聞いてごらん。絶対に私と同じ答えを出すと思うわよ」

あかり「……でも…………」



あかね「あかり、自信を持ちなさい」

あかり「……………え?」

あかね「謙虚な心は美徳、でも自らを過小評価しすぎるのは良くないわ。あかり自身にとっても、あかりを認めてくれているお友達にとっても」

あかり「………あ」

あかね「ね?」

あかり「うん……そうだね………」

あかね「でしょ?」

あかり「うん………」

あかね「……………………ふふ」ナデナデ

あかり「お姉ちゃん?」

あかね「ねぇあかり。あかりはもう京子ちゃん達と関わるのは嫌? 京子ちゃん達のことを嫌いになった?」

あかり「………………」

あかね「もしそうなら無理は言わないわ。あかりにだってお友達を選ぶ権利はあるもの、このまま関わらないで学校生活を送るのも1つの選択肢よ」

あかり「…………………………」

あかね「でもねあかり。もしあかりがまだ心のどこかで迷っているのなら………お姉ちゃんはその心を尊重すべきだと思う」

あかり「…………………………」

あかね「りせちゃんもさっき言ってたけれども、一生大切にできるお友達なんてそう簡単にできないわ。私はあの2人ならあかりにとってそういうお友達になれると思うの」

あかり「…………大嫌いって言われてたとしても?」

あかね「ええ。私にもなんでか分からないけども……お姉ちゃんの勘よ」

あかり「…………」

あかね「あかりは、今まで京子ちゃんと結衣ちゃんと、そしてちなつちゃんと一緒にいて楽しかった? 楽しくなかった?」

あかり「……………………し…っ……」

あかね「あかり?」

あかり「たのし……かった………」

あかり「京子ちゃんと一緒にダラダラしてたのも、結衣ちゃんと一緒にゲームしたのも、ちなつちゃんと一緒にお買い物に行ったのも……」

あかね「…………………………」

あかり「全部…………全部楽しかった!!」



あかね「…………………」

あかり「でもっ……怖いの!」

あかね「怖い?」

あかり「今までの全てが……全部全部が嘘だったって考えちゃうと怖いの!! 京子ちゃんも結衣ちゃんも本当は楽しくなかったんじゃないかってどうしても考えちゃうの!!」グスッ

あかね「………………」ナデナデ

あかり「好きだったのも楽しかったのも全部あかりだけで、2人とも実は嫌々あかりに付き合ってたのかもって考えちゃうと怖いの!!」

あかね「そんなわけないわ」

あかり「そうだもん!! 2人ともそう言ったの!! あかりと嫌々一緒にいたって!! 全部全部嘘だったんだって!!」

あかね「あかりはそう思うの?」

あかり「だって本人がそう言ったんだもん!」

あかね「あかりはそれを信じられるの?」

あかり「だって……そういう風に言われちゃったんだから…………信じるしか……」

あかね「ふぅ、そうね。聴き方を変えましょう」

あかり「え?」

あかね「小さい頃からずっと仲良く遊んできて、2人が中学1年生になってからもほぼ毎日会いに来てくれて、あかりが中学生になったらすぐに部活に誘ってくれて、それから毎日毎日笑いながら過ごしていた京子ちゃんと結衣ちゃん」

あかね「そしてあかりの事をたった一度だけ嫌いと言った、3分にも満たない時間の2人」

あかね「あかりは……どっちを信じたいの?」

あかり「…………………」

あかね「私が言いたいのはそれだけよ。さぁ、そろそろ部屋に戻らないと。みんなが心配するわよ」

あかり「あ、でもお皿を掃除しないと……」

あかね「お姉ちゃんがやっておいてあげるわ。ほら、今日はもう寝ないとね」

あかり「……うん、わかったよ。ね、お姉ちゃん」

あかね「なにかしら?」

あかり「ありがとう……」ニコッ

あかね「…………えぇ、どういたしまして」ニコッ




りせ「……………」

りせ「…………………」コソコソ




ガチャ




りせ「………………」

りせ「…………」


prrrrr……prrrrr……




西垣『どうした松本? こんな時間に電話してくるのは珍しいな』

りせ「…………………!」

西垣『茶道部のことを考えるとお腹が痛い? なに!? まだあれを処理していなかったのか!?』

りせ「…………」

西垣『確かに赤座はショックを受けるとは思う。しかしこればっかりはどうしようもないからな』

りせ「…………」

西垣『そうだろうな。誰がどう考えてもごらく部が出て行かなくてはならないだろう。そもそも不法占拠しているようなものだからな』

りせ「…………」

西垣『どうにかしたいと? 具体的にはどうしたいんだ?』

りせ「………………」

西垣『そんな事私にだって分からん。お手上げ状態だ』

りせ「…………!!」

西垣『落ち着け松本。お前がそのように猛ってもなにも解決はしない』

りせ「………………」

西垣『ああ、いや気にしてない。むしろ珍しい松本を見れて……いや、聞けてか。とりあえず嬉しかったぞ』

りせ「…………」

西垣『ああ、腹を出して眠るなよ。それじゃな』

りせ「……………」ピッ

りせ「……………………」ハァ


ガチャ


りせ「……………!」ビクッ

あかり「あ、いたいた。どうしたのりせちゃん? 外に出てるなんて」

りせ「……………」

あかり「部屋にいなかったから探しに来たんだよぉ。こんな時間に1人で外に出るなんて危ないよぉ~」プンプン

りせ「…………」

あかり「ほら、外は寒いんだから早く戻ろ? あかりもう眠いもん」

りせ「……………」コクン

あかり「一緒に寝よ~ ふわぁああぁ……」

りせ「…………」



櫻子「…………はっ!?」

千歳「大室さん、どないしたん?」

櫻子「いや、なんか胸騒ぎが……」

向日葵「はぁ?」

櫻子「なんか嫌な予感がするんだよねー なんだろ?」

綾乃「嫌な予感って?」

櫻子「うーん……… なんだろ?」

向日葵「バカな事言ってないでもう寝ますわよ」

櫻子「ううむ……まあいいいや。今日もまた向日葵の抉れた胸の夢を見て楽しむとしよう」

向日葵「バカな事言わないでよ!」




ー翌日の生徒会室ー



綾乃「うーん……」カキカキ

あかり「うーん……」カキカキ

松本「……………」

櫻子「なぁ向日葵、2人はなにを書いてるの?」

向日葵「何って……原稿ですわよ。今度の就任演説の」

櫻子「就任演説?」

千歳「綾乃ちゃんと赤座さんの事を選んでくれた人へのお礼文みたいなもんやな。それと今後頑張るからよろしくって事とか」

櫻子「なるほど!」

向日葵「まったく、そんな事を知らずによく以前は立候補したがってたものね」

松本「…………」

櫻子「てか会長はいつまで会長なの? 多分会長じゃなくなってもここには来ると思うけどさ」

千歳「就任演説まではまだ松本りせさんが会長やね。その後に腕章をそれぞれ貰うねんな」

向日葵「それならばもう暫くは松本会長が生徒会長なんですのね」

櫻子「なんだよーそんな事も知らなかったのか向日葵はー」

向日葵「お黙り」

綾乃「えっと……どうしようかしらここ」

あかり「あかりもここの所をどうしようか迷ってます」

千歳「なんかこうして見てると2人は姉妹みたいやね」

向日葵「そうですわね。髪の色もなんとなく似てますし」

千歳「姉妹ってのはええよ~ 楽しい時は2倍で悲しい時は半分で済むもんなぁ。これからはこの2人がお互いに助け合いつつやってくんやね」

向日葵「もちろん私達もサポートしますわ! ね、櫻子」

櫻子「うむ。この櫻子様に任せなさい!」

向日葵「またこの子は威張ったりして……あら?」



コンコン




綾乃「はーい、どうぞ」

「失礼します」

りせ「……………っ!!」ビクッ



千歳「あ、この前の人やね」

「はい。お忙しいところ失礼します。あの、この前の件についてお話しに来ました」

りせ「………………」ダラダラ

綾乃「か、会長!? 汗が滝のように!!」

あかり「りせちゃん!?」

「あの、りせさん? 大丈夫? 凄く顔色悪いけども……」

りせ「……………」ダラダラダラダラ

あかり「あ、あの! 会長は具合が悪いようなので私が代わりにお聞きします!」

「あ、貴女が赤座さんね。応援演説見てました。凄く可愛かったです」

あかり「ありがとうございます!」

「それで私の用事なのだけれども、この前提出に来た書類の通り部活動の発足にいてなのだけれども、少し問題が出てしまって」

あかり「部活動の発足、ですか?」

「うん。茶道部なんだけれども」



りせ「……………っ!!」

千歳「え」

綾乃「なっ!?」

向日葵「さ、茶道部……!? それって……」



あかり「どのような問題があったんですか?」

「先ほど部室の下見に行ったのですが、何やらなかで人の声がしまして……」

あかり「誰かいたんですか?」



「恐らくそのようです。昔の顧問の先生に聞いたところスペアキーが1つ紛失していたみたいで………」

あかり「つまり誰かがそれを拾って、部室を勝手に使っているという事ですね」

「はい」

あかり「分かりました、その人達には理由を説明してスペアキーを返して貰います。えっと、部活はいつから始めますか?」

「できるだけ早い方が。私も3月で卒業してしまいますし」

あかり「分かりました。任してくださいね!」ニコッ

「ありがとう赤座さん。副会長頑張ってくださいね」

あかり「はい!」




ガラララ




あかり「うう……とは言っちゃったものの、恐い人たちだったらどうしよう……」

櫻子「ふっふふふ! あかりちゃん大丈夫! この櫻子様に任せておきなさい!! 一緒について行ってあげるよ!」

あかり「本当!? ありがとう櫻子ちゃん!」

櫻子「はっははは! 頼りになるあかりちゃんの右手は私だ!!」

あかり「櫻子ちゃん、多分それを言うなら右腕だと思うな……」

櫻子「うえっ!?」

あかり「あはははは」


りせ「…………」

綾乃「も、もしかして……」

千歳「き、気付いてへんの?」

向日葵「あ、あの! 赤座さん!!」

あかり「え、どうしたの向日葵ちゃん?」

櫻子「なんだぁ向日葵? まさか私たちについてくる気なのか! ふふん、もう遅い! あかりちゃんの右腕ポジはこの天才櫻子様が貰い受けたのだ!」

向日葵「違いますわ」

櫻子「む……どうしたの向日葵、そんな深刻そーな顔しちゃって」

あかり「向日葵ちゃん?」


綾乃「ねえ、赤座さん。茶道部の部室ってどこにあるのか知ってる?」

あかり「部室ですか? えっと……そういえば知りません。だいたい茶道部があった事だって知りませんでしたし。皆さんは知ってるんですか?」

櫻子「多分畳の部屋なんじゃない? 豪勢に掛け軸とかもかかってたりして!」

向日葵「あ、その……」

綾乃「え、えっとね赤座さん……そのっ……」

千歳「ちょ、ちょっと2人ともこっち来て」




千歳「こうなったらこの件はうちらだけで処理せなあかん」ボソボソ

綾乃「処理って言われても……どうすればいいの?」

向日葵「先輩方は何もしなくても構いませんわ。ここは先輩方と確執がない私と櫻子がなんとかします」

千歳「それはあかんで。うちらが全部始末つけるから2人は手を出さんでええ」

綾乃「そうよ。ここで私たちが甘えてちゃいけないもの!」

向日葵「しかしそれでは歳納先輩と船見先輩との仲がまた………」

千歳「……………でもこれはうちらがやるべき事やからね」

綾乃「辛いけれども……ね。あれからアヤフヤになっていた私たちの関係が完全に崩れーーー」





櫻子「畳って言えばごらく部の部室も畳張りだったよねー」

あかり「え……」


向日葵「あ」

千歳「あ」

綾乃「あ」

りせ「」



櫻子「どーしたのみんな? そんな固まっちゃってさ」

向日葵「さ、櫻子…貴女って人はとこまで馬鹿なんですの!!」

櫻子「ちょ、やめろってば! なんなの一体! べつにごらく部とか関係ないんだからいいじゃんか!」

綾乃「ち、違うのよ大室さん。ごらく部の部室が茶道部の部室なの……」

櫻子「へ? てことは皆んなは本当は茶道部だったって事?」

綾乃「いえ、そうじゃなくって………」

千歳「あれや、いわゆる不法占拠って奴や。元々ごらく部というのは歳納さんが作った実態のない部活動やから」

櫻子「実態のない部活? え、でもごらく部と生徒会で合同合宿とかしたじゃないですか」

千歳「あんなんはただのお泊まり会みたいなもんや。第一生徒会が合宿なんてする必要あらへんやろ?」

櫻子「た、確かに言われてみれば……」



あかり「りせちゃん……さっきの人が言っていた発足用紙、見せて」

りせ「……………………」

あかり「お願い、りせちゃん」

りせ「…………………………」

あかり「ううん、あかりがやるから…………お願いだから…………」

りせ「…………」


りせ「」ゴソゴソ

あかり「ありがとう、りせちゃん」ペラッ





部活動発足申請書

発起人代表 : ○○○○
発起人 : ○○○○
同 : ○○○○
同 : ○○○○
同 : 吉川ちなつ
同 : ○○○○


顧問 : ○○○○ 先生



発足希望部名 : 茶道部





あかり「………………」

櫻子「え、うそ! ちなつちゃん!?」

向日葵「な、なんですって!?」ガタッ

あかり「…………やっぱり」

向日葵「やっぱりって、気づいてましたの?」

あかり「最近ちなつちゃん、ごらく部に行ってなかったみたいだったから……それに元々茶道部志望だったみたいだし」

綾乃「吉川さんまでごらく部からいなくなっていたなんて」

千歳「そう言えばこの前行った時もいなかったもんなぁ」

あかり「…………………………」

千歳「赤座さん?」

あかり「…………………………ッ!」ガタッ

綾乃「あ、赤座さんどこに行く気!?」

あかり「さっきの人のところです。どうにかして茶道部を諦めて貰いに行きます!」

綾乃「え!?」

千歳「そ、そんなん無茶や! ごらく部の方が圧倒的に不利やねんて!」

あかり「それでもです! このままじゃ京子ちゃんと結衣ちゃんの思い出が詰まったごらく部がなくなっちゃうんです!」

向日葵「そ、それはそうですが………」

綾乃「赤座さん、気持ちはわかるわよ。でもね、こればっかりはどうにもならないの」

あかり「それでも! あかりは何もしないうちに諦めたくないです! 頼むだけでも頼んでみたいです!」

向日葵「赤座さん………」



櫻子「よし! それなら私も一緒に行くよあかりちゃん!」

向日葵「櫻子!?」

あかり「櫻子ちゃん……」

千歳「そんなことしたらあかん。うちらには部活動の発足を禁止する権限はないんやで?」

綾乃「そ、そうよ! そんなこと無理無理ムー大陸なんだから!」

櫻子「でもこのあかりちゃんがですよ? いつも文句やわがままの1つも口にしないあかりちゃんが、初めてわがままを言ったんですよ! それって余程のことだと思いません?」

綾乃「そ、それはそうだけど……」

櫻子「それなら一回くらい、いいじゃないですか。頼みに行くくらいならタダですし!」

千歳「……………まあ、それくらいなら確かに」

綾乃「べつに平気かしらね。それに他ならぬ赤座さんの頼みでもあるわけだし……」

向日葵「はぁ、わかりましたわよ櫻子。それなら私もついていきましょう」

櫻子「よっし! 流石は向日葵、私の下僕!」

向日葵「ぶん殴りますわよ?」

あかり「あ、あははは……それじゃ行こっか」



りせ「………………」スッ

あかり「りせちゃん?」

りせ「……………」フルフル

向日葵「会長が扉の前で両手を広げて仁王立ちを……」

あかり「な、なんでだめなの!? 頼みに行くくらいならいいでしょ!」

りせ「…………」フルフル

あかり「そんなっ! どいてよりせちゃん! 頼みに行くだけだから! 断られたら諦めるから!!」

りせ「…………………!!」ググッ

綾乃「あ、赤座さん落ち着いて!」

千歳「手を出したらあかんで赤座さん!」

あかり「早くどいてよ! お願いだから早くッ!!」

りせ「…………………!!」







りせ「いい加減に……しなさいッ!」



あかり「………………え」



綾乃「なっ!?」

千歳「か、会長が……」

向日葵「しゃ、しゃ、しゃ……」

櫻子「喋った!?」








りせ「あなたに、2年半も…部活を行うのを我慢してきたあの子を……邪魔する権利はない」



あかり「…………………………」

あかり「………………」

りせ「…………」

あかり「……で、でも………」

りせ「……だめ……」

あかり「は、話だけでもッ!!」

りせ「……………許さない」





りせ「これは……わたしが処理する……………」





あかり「……………」プルプル

櫻子「あ、あかりちゃん………」

向日葵「赤座さん……」




ガラララ!




西垣「おい! 松本の怒鳴り声が聞こえたが何が………………ッ!」

千歳「西垣先生……あの、これは………」

西垣「いや、全て把握した。赤座、お前は今日は帰れ。大室と古谷も一緒でいい」

向日葵「で、でもまだ仕事が……」

西垣「松本が全て終わらせる。とにかく帰れ」

櫻子「わ、わかりました」

向日葵「わかりましたわ西垣先生」

あかり「…………」グスッ

西垣「荷物を忘れるな。ほれ」

向日葵「有難うございます、西垣先生。それでは」ペコ

櫻子「とりあえず今日は帰ろうよあかりちゃん。今から家で作戦会議だ!」




りせ「……………」

綾乃「会長、あの……」

西垣「先程ここに来たという生徒はな、非常に優しい少女だ。もし赤座があのまま頼みに行ったら恐らく二つ返事でOKしただろう。自分の希望を押し殺してでもな」

りせ「………………」

西垣「だから松本は絶対にあれを許すわけにはいかなかった。いくら赤座の頼みとはいえそんなエゴを許すことは松本にはできん」

綾乃「………………」

千歳「そ、そんなら……」

りせ「………」コクン

綾乃「そ、それならその役目は私が!」

西垣「ダメだ」

綾乃「な、なんでですか!」

西垣「この件についてはお前たちの介入は不要だ。松本が1人で全ての片をつけると言っている」

りせ「…………………………」

西垣「お前たちはいずれも歳納達と仲が良かった。だから一番関わりの少なかった自分が全てを終わらせると言っている」

千歳「でも赤座さんがいるのに会長がそんな憎まれ役を買って出るのはマズイんじゃ……」

西垣「それは仕方がないだろう。松本はまだ生徒会長なんだからな。書類を受け取った以上受理をする義務がある」

りせ「……………」

西垣「ただ、行動は少ししてからにするらしい」

綾乃「へ?」

りせ「…………………」

西垣「あまりにも大声で怒鳴ったせいで声が枯れてしまったらしい。喉も痛いらしいから当分は無理だ」

千歳「あれ、怒鳴り声だったんですか……」

綾乃「ま、まぁ初めて私たちが聞けた会長の肉声だったしね…………」



ー3日後の生徒会室ー





西垣「さて、松本よ。ごらく部に攻め入る準備はいいか?」

りせ「…………」コクン

西垣「私の役目はあくまで会話の橋渡し。それ以上のことはしないからな」

りせ「……………………」

西垣「赤座のことを思うなら変に長引かせず今日中に終わらせてやれ」

りせ「………………」コクン

綾乃「会長、ご武運を! 私たちはここで見守りミケランジェロしてますから!」

千歳「ほんまにうちら行かんでええんですか?」

西垣「松本は必要ないと言っている。安心してここで待っていればいい」

りせ「………………」




ガラララ





綾乃「行っちゃったわね」

千歳「会長も辛いやろな。自分の大切な人の幼馴染の居場所を奪いに行くんやから……」

綾乃「でもあの2人、赤座さんに酷いこと言ってたじゃない。それなのに赤座さんがあそこまでショックを受けるとは思ってなかったわ」

千歳「それが赤座さんの良いところなんやろな。ごらく部からいなくなって一番罪悪感を感じてるのも赤座さんやろしなぁ」

綾乃「追い出した罪悪感よりも追い出された罪悪感の方が大きいなんてのも変な話だけどもね」

千歳「せやなぁ」

綾乃「ところで今日、赤座さん達来てないけれどどうしたんでしょうね?」

千歳「さあ? クラスで係でもあるとちゃう?」

綾乃「もしかしてごらく部に行ってたりして」

千歳「…………………………」

綾乃「…………………………」

千歳「まさかぁ~」

綾乃「まさかね~」




りせ「………………ッ!」ジタバタ

櫻子「ここは通しませんからねー!!」ガバッ

向日葵「も、申し訳ありません会長! この非礼は後ほど必ずお詫びします!」ガシッ

りせ「………………ッ!!」ジタバタ

西垣「はっはっは、何を言う松本よ。私は言ったはずだ、会話の橋渡し以外のことはしないと」

りせ「…………………ッ!」ジタバタ

向日葵「くっ! 意外と力がありますわね……!」

櫻子「こら向日葵! もっとちゃんと抑えとかないと!」

向日葵「わかってますわよ! 櫻子こそ力が弱まってるんじゃないですの?」

櫻子「そんなことあるか! ほらっ!」ガシッ

りせ「………………ッ!?」

櫻子「ほぉら! 向日葵の方が力ないんだよ!」

向日葵「な、なんの! 私だって!」ムニュ

りせ「…………………………!?」

西垣「あぁ、松本の顔があの胸に埋もれて…………」

向日葵「どうです? 私が抑えた途端こんなにも力が弱まりましたわよ!」

櫻子「ぐぐっ! ま、負けてたまるかぁー!!」ガシッ

向日葵「こっちだって!」ムニュ

りせ「………………ッ!! …………………………!!!」

西垣「松本よ、お前にとってはただ苦しいだけかもしれないが、それは全国の男子生徒の夢の死に方だ。名付けて愛の窒息死」

櫻子「おりゃー!!」

向日葵「なんのー!!」

りせ「」ブクブク

西垣「あとで酸素ボンベでも渡してやるか」


京子「結衣~暇だよ~」

結衣「今日何回目だよそれを言うの」

京子「だってさ~最近二人っきりだから何もすることがないんだもん。まるで1年前に戻ったみたいだよ」

結衣「コムケの原稿はどうなんだ?」

京子「もう終わらせちゃった。だってそれくらいしかすることがなかったし」

結衣「それじゃあ宿題するか」

京子「えぇ~ めんどくさいんだけど。もっと別のことやろうぜ!」

結衣「何をだよ?」

京子「話題ボックス!」

結衣「2人でやるとか冒険すぎるだろ! 誰も得しないぞ!」

京子「王様ゲーム!」

結衣「だから意味がないってば」

京子「うむむむ~ これが俗に言う倦怠期ってやつか……」

結衣「なっ!? へ、変なこと言うな!」バシッ

京子「あ痛ッ! へ、へへっ! ツッコミのキレが増したようだな。流石だぞ結衣よ!」

結衣「なにキャラだよ……」

京子「京キャラだよ!」

結衣「強キャラには到底なり得ないな」

京子「むっはははー!」

結衣「まったく………」



コンコン



京子「ん? 誰だろ?」

結衣「さぁ? ここまで訪ねて来る人なんてもう誰もいないと思うけど」

京子「まさかあかりだったりしてね。“京子ちゃん結衣ちゃん、あかりをまたごらく部に入れてよびえぇ~ん”みたいに来たりして」

結衣「バカなこと言ってないでさっさと開けてやれ!」

京子「はいは~い、今開けますよ~」
















あかり「みんなのハートにドッキューン! お久しぶり赤座あかりだぴょ~ん♪」


京子「」

結衣「」

あかり「あ、あれ……? あかりとしては場を和ませる出来うる限りの挨拶をしたはずなのに」

京子「」

結衣「」

あかり「きょ、京子ちゃん結衣ちゃん? か、固まっちゃってるけれども大丈夫!?」ユサユサ

京子「はっ!? あまりの衝撃に頭がフリーズしてた!」

結衣「一瞬白昼夢かと思ってしまった」

あかり「えへへへ、2人のあんな顔は久しぶりだったよぉ。あ、入らせてもらうね」

京子「う、うん……」

結衣「…………はっ!? ダメだ京子ッ!」

京子「え……あっ!!」

結衣「あかり、目障りだから早くーーー」

あかり「あかり久しぶりに結衣ちゃんの淹れたお茶が飲みたいなぁ」

結衣「いや、だから早くーーー」

あかり「お茶お茶~♪ あったかいお茶~が飲みたいなぁ~♪」

京子「あ、あのあかりーーー」

あかり「京子ちゃんはお茶請けを持ってきてよ。あかりうすしおが食べたいなぁ」

京子「うぇ、あ、は…………わ、分かった」

結衣「京子!?」

京子「とりあえずあっち行こ」

結衣「う、うん…………」

あかり「…………………」

あかり(追い出されずに済んだ。な、なんとかここまでは作戦通りだよぉ)





結衣「京子、はやくあかりを追い出さないと!」

京子「いや、ありゃもう無理だろ。出オチのせいで追い出すタイミングをとうに逃してるし」

京子(もしかしたらこれを狙ってあんな挨拶で飛び込んできたのか?)

結衣「大体なんであんな風に飛び込んできたんだ? いや、それ以前になんであかりがここに来たんだ! なんの用事で!」

京子「そんなの知らないよ。結衣は慌てすぎだってば、少し落ち着きなよ」

結衣「京子」

京子「なに?」

結衣「おまえ、あかりのお茶請けに自分のリボン出す気か?」

京子「あ………」





京子「はい、お茶とお茶請け」

あかり「わぁいうすしお あかりうすしお大好き!」

結衣「それ食べ終わったらさっさと帰ってよ。邪魔だから」

あかり「わぁい! そういう事は食べ終わるまでいていいんだね?」

結衣「は? いや、そうじゃない!」

あかり「えへへ、結衣ちゃんの淹れてくれたお茶美味しいなぁ」ズズッ

結衣「話を聞けッ!」

京子「うすしおだって本当は私が食べたかったのに、あかりのせいで食べられなくなったし」

あかり「そんなに食べたかったうすしおをあかりのためにくれたんだね! 京子ちゃんは本当に優しいね!」ニコッ

京子「ふぇ!?」

あかり「あ、そうだ! あかりの家にラムレーズンあるから今日帰りに寄って行ってよ!」

京子「マジで!!」ガバッ

結衣「バカッ!」バシッ

京子「痛い!!」

あかり「本当に2人は仲がいいんだねぇ。あかりも幼馴染なのになんか妬けちゃうなぁ」ポリポリ

結衣「なぁあかり。わかってるとは思うけれど私たちはあかりの事が大嫌いなんだよ。だからあかりがここにいると本当に不愉快で仕方ない。だからはやく出て行ってくれないか?」

京子「そ、そうだそうだ! あかりは即刻この部室から出て行けー」

結衣「大体あかりは綾乃と千歳から私達に会う事は禁止されてるはずだろ?」

あかり「えへへ、黙って来ちゃった」ニコッ

結衣「次期生徒会副会長が会長からの命令を無視するのは大問題なんじゃないのか?」

京子「そうだそうだー! 2人とも怒るとすごく恐いんだぞー!」

あかり「あかりの心配をしてくれてありがとう2人とも」ポリポリ



結衣「別にあかりの心配をしてるわけじゃない。ただ綾乃と千歳に私達が怒られるんだよ。それが嫌なだけだ」

あかり「それは絶対にさせないもん。心配しなくて大丈夫だよぉ」ポリポリ

結衣(さっきから絶えずうすしおチップス食べてるけど…………)

京子(これならしばらく放っておけば勝手に食べ切って帰ってくれるんじゃないのかな)

あかり「それよりもね、今日は大事なお話があって来たんだ。多分2人にとってとっても大切な事が。どちらかと言えば生徒会よりのことなんだけども」

結衣「?」

京子「生徒会よりの?」

あかり「うん。ほら、これを見て欲しいんだけど」ゴソゴソ

結衣「なにこれ、なんかの書類?」

あかり「うん。ほら、茶道部を作るっていう書類だよ」

京子「それがなんだっての?」

結衣「私達に関係あるのか?」

あかり「だから茶道部の部室を不当占拠している2人には出て行ってもらわなくちゃいけないんだよぉ」

京子「不当占拠?」キョトン

結衣「どういう事?」キョトン

あかり「へ? いや、だって……ここ、もともと茶道部の部室……………」

結衣「…………………………」

京子「…………………………」

あかり「…………………………」

結衣「…………………忘れてた」

京子「…………………………右に同じ」

あかり(あかりもすっかり忘れてたもんね……)

あかり「それとさ、ほらここのところを見て。ちなつちゃんの名前があるでしょ」

結衣「……………ッ!」

京子「そ、そんな………ち、ちなつちゃんまで…………わ、私たちの事を見捨てて…………」ジワァ

あかり「このことに関してちなつちゃんを責めるのはやめてあげて。勧誘してきた人のお姉さんがちなつちゃんのお姉さんと知り合いで断れなかったみたいなの。それにちなつちゃんもここが元茶道部だって事を忘れてたみたいで」

結衣(元茶道部志望なのに!)

あかり「それでね、このままだと2人にはここを出て行ってもらわなくちゃいけないんだけども……」

京子「ちょ、ちょっと待ってよあかり! い、いきなりそんな事言われても……」

あかり「元々は杉浦先輩が何度もここに言いに来てたでしょ。不当占拠しちゃダメだって」ポリポリ

京子「それはそうだけども……」

結衣「そうか、とうとう私たちはここから追い出されてしまうのか………」

結衣(しかもそれが他ならぬあかりの手で行われるだなんて思ってもみなかったけども)



結衣「………………くっ」ウルッ

京子「ゆ、結衣ぃ………どうしよう…」グスッ

あかり「………………」

京子「私は嫌だよ。このたくさんの思い出の詰まった場所を明け渡すなんて絶対に嫌だ……」

結衣「そんな事言っても仕方ないだろ!」ジワァ

京子「そんなぁ………」ウルウル

あかり「出て行かせなんてしないよ」

結衣「え?」

京子「あ、あかり……?」

あかり「今日あかりはそれを言いに来たの。確かにどう考えても2人は出て行かなくちゃいけない。けれどもあかりはそんな事を2人には絶対にさせない!」

結衣「な、なに言ってるんだよあかり! そんな事できるわけがないしやってもらう義理もない!」

あかり「確かに義理なんかないかもしれないね。というよりも義理なんていう言葉じゃ片付けられないほどの絆があかりたちにはあると思ってる」

結衣「なにを今更……そんな生ぬるい事を言ってるんだ」

あかり「結衣ちゃん、どんなにあかりの事を貶めても無駄だよ! あかりは絶対に2人の事を嫌いになんてならない!!」

結衣「それなら勝手にしろ。独断で動いて生徒会の全員から嫌われて! ここと同じように追い出されでもしちゃえ!!」

京子「ゆ、結衣言い過ぎなんじゃ………」

結衣「煩い! もう私は帰るからな!!」

京子「ま、待ってーーー」

結衣「それじゃあ!」


バタン!


京子「ひっ!!」

あかり「結衣ちゃん帰っちゃったねぇ」

京子「あ、あの……あかり、そのっ…………」

あかり「大丈夫だよ京子ちゃん」

京子「え?」

あかり「あかりはね、今の2人よりもあかりに優しくしてくれたあの頃の2人を信じる事にしたんだ。だからなにを言われても平気だよ」

京子「それってどういう事……?」

あかり「京子ちゃん、安心して」ギュッ

京子「あ、ちょっ…………」カアア

あかり「ごらく部は絶対にあかりが守ってあげるからね。絶対にどんな事をしてでもだよぉ」

京子「あか……り…………」ジワァ

あかり「あかりが生徒会副会長に就任するまであと2日。それまでに絶対になんとかしてみせるからね。またね、京子ちゃん」



ガラララ




あかり「さて、頑張らなくちゃ……」





千鶴「さて、そろそろ帰るとするか……ん?」

「グスッ…………うぅ……ごめん、ごめんねあかりぃ………………」

千鶴「……………嫌な予感がする。ここはまっすぐ帰った方が」

結衣「………………」ガシッ

千鶴「うぐっ……!?」

結衣「少し、話に付き合って行って……」

千鶴「…………今度はお前か、船見結衣。ごらく部の4人中3人が私に泣きついてきやがって………………」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




千鶴「つまり赤座にひどい事を言ってしまってグズグズ泣いていると」

結衣「端折り過ぎだけどそういう事……」グスッ

千鶴「そもそも後悔するなら初めから言わなければいいだろう」

結衣「後悔はしてないんだよ。ただ罪悪感がいっぱいなだけで」

千鶴「はぁ?」

結衣「あのままじゃあかりはごらく部を守ろうとして色々としちゃうだろ? そんな事をしたら綾乃や千歳に悪い印象を与えちゃうだろ」

千鶴「別にそんな事はないと思うけどな」

結衣「下手をすれば綾乃たちに生徒会から追い出される可能性もあるし………」

千鶴(お前たちごらく部の連中じゃあるまいし、と言ったら泣くだろうな。よっぽど言ってやりたいが)

千鶴(しかしまぁどうしたものか。“あの事”を言ってやってもいいが、それは赤座にとって悪い影響を与えるだろうし。ここははぐらかしておこう)

千鶴「言ってしまった事は取り返せない。覆水盆に返らず、後の祭りとも言うしな」

結衣「……………」

千鶴「しかし覆水は新しい盆に入れ直す事はできる、祭りが終わったのなら後片付けに参加する事はできる」

結衣「え……」

千鶴「要は、終わってしまった事をうじうじ考える事は時間の無駄という事だ。それならそこからのフォローをどうするかを考えた方がいい」

千鶴「罪悪感をどうするかはこれからのお前次第だ。このままそれに押しつぶされるもよし、どうにかしてそれを解決するもよし。そういう事だ」

結衣「…………………」

千鶴「それにな、お前が今更なにをしようともう遅い。それだけだ」

結衣「…………え? それってどういう意味?」

千鶴「別になんでもない。それじゃあな」

結衣「ま、待って!」

千鶴「もう赤座は覚悟を決めた、次はお前の番だ。2日後に覚悟を決める為の覚悟をしておけ」



ガラララ



結衣「千鶴……いったいどういう意味だったんだろう………………」





りせ「…………………」ハァハァ

京子「…………………」

西垣「…………………」

櫻子「向日葵、これはどういう…………」

向日葵「櫻子は黙ってなさい!」ハァハァ

京子(あの後1人で部室にいるのが居た堪れなくて帰ろうと廊下を歩いていたら、なんか騒がしい声が聞こえてきてなんだろうと見に来たら…………)

西垣(まだ部室にいると思っていた歳納が何故か曲がり角から姿を現した。流石の松本も少し面食らっているみたいだな)

向日葵(赤座さんはもう先輩方とお話を終えた後なんですの? それともまだお話ししていないんですの? い、一体どっち…………)

櫻子「歳納先輩、あかりちゃんと話は終わったんですか?」

京子「……ッ! な、なんでその事を知ってるのさくっちゃん!?」

櫻子「その様子だと終わったみたいですね! よっしゃ、帰るよ向日葵!」グイッ

向日葵「ちょっと、櫻子! 引っ張らないでください!」

櫻子「へっへ~ん! 歳納先輩、悔しいですけれど私たちの負けはもう決まってます! 2日後を楽しみにしてて下さいね!」

向日葵「そ、それではまた…………」

京子「…………え…うん」

りせ「……………ッ!」ハァハァ

西垣「松本、色々と問いただしたい事があるかもしれんがとりあえず今日は引き上げた方がいい。髪や服がグチャグチャだぞ」

りせ「…………………」コクン

西垣「私は少し歳納と話をしていく。なに、変な事は言わないから安心しろ」

りせ「…………………」フラフラ


西垣「……………………行ったか」

京子「あ、西垣ちゃん。話ってなに……ですか…………?」

西垣「どうした歳納、そんなにしおらしくなって。いつも通りでいいぞ」

京子「あ、あははは……」

西垣「赤座から話は聞いたな?」

京子「は、はい………」

西垣「それなら話は早い。赤座は今お前たちを救おうと必死に走り回っている。色々な場所をな」

京子「走るってそういう意味で!?」

西垣「あながち間違ってはいないな。赤座のフットワークの軽さはかなりのものだ。茶道部の事を知ってから僅か3日でごらく部を救う算段を立ててしまったくらいだ」

京子「えぇ!?」

西垣「まぁ後もう少し壁はあるがな。杉浦と池田、後は松本。この3人の説得をしなくてはならない」

京子「そ、その……それって…………」

西垣「まぁ説得というよりは一方的な宣言だな。赤座の腹は決まっているからもうなにを言われても自分を曲げはしないだろう」

西垣「ただ、それを受け入れるかどうかは歳納と船見次第だ。2日後に選択しろ、赤座を受け入れるかどうかをな」

京子「ま、待ってよ西垣ちゃん! なにを言ってるのか全然わからないってば!」

西垣「果報は寝て待てと言うだろう。ふっふふふ、私も少し忙しいから。またな」

京子「あ、ちょっと!!」

京子「……………………一体なんなんだろ、こんな状況からごらく部を守れるだなんてそんなわけないのに……」




ー生徒会室ー



ガラララ




綾乃「あ、会長おかえりなさ…………って!? なんでそんなにグチャグチャになってるんですか!?」

千歳「あらあら~ えっとクシとかここに置いてあったはずやけどなぁ」ゴソゴソ

りせ「………………」キョロキョロ

綾乃「えっと、赤座さんたちですか? まだ帰ってきてないですけれども」

千歳「あったクシ! 会長、これで髪の毛を整えて下さい」

りせ「………………」ペコリ

りせ「…………………」サッサッ

綾乃「それにしても、最近赤座さんたちここへ来るの遅いわよね。まぁ仕事とかは真面目にしてくれるし問題はないんだけれども」

千歳「せやな。西垣先生も最近理科室にこもりきりでここに来ないし。普段の生徒会室とは少し違った風景やね」

りせ「…………………」

千歳「会長の顔も心なしか暗いみたいや」

綾乃「普段からあれほどベタベタしてたらね。会長、赤座さんいなくて寂しいのはわかりますけども2日後までまだ会長なんですからきちんと仕事は終わらせてくださいね」

りせ「………………」コクン

千歳「古谷さんや大室さんまで揃って遅れるのは初めてやね。一体どこで何をしてるんやろ?」

りせ「……………ッ!」

綾乃「会長?」

りせ「…………………………ッ!」サッ バッ!

りせ「…………………………ッ!」ググッ フルフル!

りせ「…………………………ッ!」ババババッ!

綾乃「…………………………」

千歳「…………………………」

綾乃(た、多分何かしら私たちに伝えたくてボディランゲージをしてるのだろうけれども)

千歳(必死さだけが前面に伝わってきて何にも理解できへん……………)

りせ「…………………………」クイックイッ!

りせ「…………………………」クイックイッ!

綾乃(なに、この変なポーズ……!?)

千歳(ダイナマイト四国?)




櫻子「どもーこんにちは! 遅れてすみませんでした!」

向日葵「あ、よかった。みなさんお揃いでしたわね」

りせ「………………」ビシィ!

りせ「……………………!」プンプン

綾乃「古谷さんと大室さんを見た瞬間、会長が烈火の如く取り乱し始めたわ!?」

千歳「なにかあったんかなぁ? あ、後ろに赤座さんもおるなぁ」

あかり「すみません、お待たせしました」

りせ「…………………!」パァァ

千歳「赤座さんを見た途端会長が輝きだした!?」

綾乃「ものすごい豹変だわ!?」

りせ「…………………」ムギュ

あかり「ごめんねりせちゃん。お待たせ」ナデナデ

りせ「……………」スリスリ

綾乃「赤座さんは一体どこに行ってたの? 最近は来るの遅いけれど、今日はいつにも増して遅れてない?」

あかり「えと……すみません、杉浦先輩。あかり、京子ちゃんと結衣ちゃんに会いに行ってました」

綾乃「なっ!?」

千歳「あ、あれほど会いに行っちゃダメと言うたのに………」

あかり「すみません。でもどうしても会いに行かなくちゃいけなかったんです」

綾乃「大丈夫!? なにか嫌なこととか言われなかった!? 泣いたりしてないわよね!?」

あかり「えへへ、大丈夫です。2人とも京子ちゃんと結衣ちゃんを誤解しすぎですってば。あの後京子ちゃん達とお話とかしてます?」

綾乃「あ、それはその……」

千歳「少し気まずいのもあって話はしとらん。まぁうちらの腹の虫が治ってないのもあるけどなぁ」

櫻子(池田先輩の怒りって結構尾をひくんだなぁ)

向日葵(やはりこういう方に限っては、絶対に怒らせてはいけないことを再認識しましたわ)

あかり「あのですね。実は今日は先輩方に大事なお話があって…………」

綾乃「大事な」

千歳「はなし?」

りせ「…………?」

櫻子「はい。私たちも同じ気持ちです」

向日葵「赤座さんも大分迷った果てにたどり着いた結論です。私達は赤座さんを最後まで支持します」

千歳「そんなに畏るくらいの話なん?」

綾乃「な、なにかしら井の頭公園?」

りせ「……………」




あかり「はい。実はあかりーーーー」











向日葵「始まりましたわね、演説が」

櫻子「杉浦先輩大丈夫かなぁ。あんなに顔真っ赤にしちゃって。途中で気絶しちゃうんじゃない?」

千歳「今回は大分練習したから大丈夫とは思うけど」

櫻子「万が一のことを考えてここに水と簡易ベッドは用意してあります!」

向日葵「西垣先生が用意した、というところに一抹の不安を感じ得ませんが……」

千歳「さすがに爆発はせえへんよ~ 多分」

向日葵「だといいのですが……」

櫻子「それよりもあかりちゃん、準備は大丈夫?」

あかり「うん、大丈夫だよ。さすがに少し緊張するけどもねぇ」

櫻子「でもアレほどじゃないでしょ?」



綾乃『あ、あっ! うひゅっ……! あわわわわ…………!』←アレ




あかり「た、多分……」

櫻子「それなら平気だよ! さっ、頑張ってこい!」

あかり「うん!」

千歳「……………………」

向日葵「どうかしまして? 池田先輩」

千歳「いや、赤座さんはやっぱり凄いなぁ思って」

向日葵「?」

千歳「ごらく部のためにこの5日間必死に考え続けて、それで結果を出してしまう。うちらには到底できん所業や」

向日葵「そうですわね。よほど赤座さんのごらく部への愛が深かったという事なんでしょう」

櫻子「あ、ほら! 杉浦先輩の演説終わったよ! 頑張ってきてねあかりちゃん!」

向日葵「私たちはここで赤座さんの帰りを待っていますわ」

千歳「気ばってなぁ! 心から応援しとるで!」

あかり「はいっ! みんな、行ってきます!」



体育館を埋め尽くす拍手の中、あかりは壇上にゆっくりと上っていく

心臓はこれ以上ないくらいバクバクしていたけれども、心はこれ以上ないくらい落ち着いていた

マイクスタンドの前で立ち止まり一礼してからゆっくりと会場を見渡して…………見つけた。京子ちゃんと結衣ちゃん、そしてちなつちゃん

3人とも不安そうな風にこっちを見ている。あ、京子ちゃんは心なしか目が潤んでる! だ、大丈夫かなぁ

あぁ、ダメだよあかり! 今はそんな事を考えてる場合じゃないよぉ! 落ち着いて深呼吸だよぉ!

スーハースーハー よし! もう大丈夫!

そしてあかりはゆっくりと口を開いた。ごらく部を……京子ちゃんと結衣ちゃん、ちなつちゃんを救うために








こんにちは、改めまして一年生の赤座あかりです。今日はよろしくお願いします

早速ですが皆さんには大切な人はいますか?

私は友達やクラスメート、その他にも私に関わってくれる全ての人を大切に思っています

その中で私が特に大切にしている人たちについて今日はお話をしたいと思っています

まずは私の姉についてお話をさせていただきます



『どうしよう………どうしたら京子ちゃん達を………………』

コンコン

『あかり、入ってもいい?』

『あ、お姉ちゃん? うん、入ってもいいよぉ』

ガチャ

『ありがとうあかり。デパートでマカロンを買ってきたから一緒に食べましょう』

『マカロン?』

『そうよ。どう、美味しそうでしょう?』

『うわぁ綺麗! とっても可愛い食べ物だねお姉ちゃん!』

『そうね。こかの赤いマカロンなんてまるであかりみたい! うふふ、本当に美味しそう』

『あかりを食べちゃダメだからねお姉ちゃん』

『うふふ、もちろんよ! もちろん………うふふふふ』

『もぅお姉ちゃんったらぁ』プンプン

『冗談よ。さ、紅茶もあるからティータイムといきましょう』

『わぁい紅茶、あかりお姉ちゃんの淹れた紅茶大好き!』

『あら、机の上色々とゴチャゴチャしてるわね? 何かしてた?』

『あ、ごめんねお姉ちゃん! すぐ退かすから!』

『あら、別にいいわよ。少しお行儀悪いけれど床にお皿とティーカップを置いちゃいましょう』

『ごめんね、お姉ちゃん』

『大丈夫、お姉ちゃんに謝る必要なんてないわ』





『マカロンって美味しいねお姉ちゃん!』モグモグ

『でしょう? あまりにも美味しかったからあかりにお土産を買って行きたくなったの! この前のあんみつのお礼も兼ねてね』

『えへへ、お姉ちゃん大好き』

『ふふふふ、お姉ちゃんもあかりのことが大好きよ』



(あ~もうなんて可愛いのかしらこの子は! もうギュって抱きしめてチュッチュしてしまいたい!)

(…………ってそうじゃないでしょうあかね! 私は何をしに来たと思ってるのよ!!)


『ねぇ、あかり。さっきから何か悩んでるみたいだったけど、一体どうしたのかしら?』

『ふぇ!? べ、べつになななにも悩んでなんて!! あはははは!!』

『…………いくらなんでも分かり易すぎよあかり』ハァ

『う、うぅ…………』カアァァ

『こういう時こそお姉ちゃんを頼りなさい』

『じ、実は…………』



ーーーーー


ーーー






『成る程、そんなことになっちゃったのね』

『う、うん……』

『とりあえずともこにキツイお仕置きをしに行って来るわね!!』

『ダメェ~!!』ガシッ

『と、いうのは冗談だけど』

『も、もぉ~お姉ちゃんったら! 危うく本気にするところだったよぉ~!』プンプン

『うふふごめんなさい。でもそれを解決するのはかなり難しそうね……このままではあと3日後にごらく部はなくなってしまうのよね』



『そうなの。だからどうすればいいのか分からなくて困ってるんだぁ……』

『あかりはごらく部を守ることはもう決めたのよね?』

『うん、それはもう決めたよ。池田先輩っていう人に後押しもしてもらったもん!』

『あら、私よりも先に相談した人がいたのね。妬けちゃうわ~』

『え、えへへ成り行きでつい……』

『あかりが困っているのは、ごらく部が顧問もいないし活動もしていないような実態のないものだからなのでしょう?』

『うん。それに部員も5人集まってないしちなつちゃんはいないし………もうどうしようもないよぉ』グスッ

『う~ん……ともこの妹さんが茶道部に入ろうとしちゃってるのよね。それに茶道部としても妹さんを外したら5人揃わなくなっちゃうんでしょう? それじゃあ引き抜きもできないし』

『………………』グスッ

『妹さんともう話しはした?』

『うん。茶道部の部長さんがともこさんの知り合いの妹さんらしくて、断るに断れなかったらしいの。それに今更断るにしても自分が抜けたら茶道部が始められなくなるから申し訳なくてできないって……』

『あら、あかりだってともこさんの知り合いの妹のはずなのに?』

『そ、それはそうだけど…………』

『う~ん………でもともこさんの知り合いということは私の知り合いでもあるかもしれないわね。ちょっとその茶道部の部長さんの名前を教えてくれないかしら?』

『えっと……あ! ここに発足上の写しがあるから…………』ゴソゴソ

『あった! はいお姉ちゃん』

『ありがとうあかり。う~ん……残念だけど知り合いじゃないわねぇ………………ん?』

『どうしたのお姉ちゃん?』

『………………えっとあかり、もしかしたら妹さんの件は解決したかもしれないわよ?』

『……………………え?』



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



私の姉は、私が知る誰よりも優しく誰よりも私の事を愛してくれました

それは生まれた頃から今までずっと変わらず、どんな逆境に立たされた時もいつも私を正しく導いてくれました

私はそんな姉の事をとても尊敬し、なにものにも代えがたい大切な人だと心から思っています



えっと、次はある1人の先輩についてお話をしたいと思います

実のところこの方とはつい最近まで全く関わりがありませんでした。それにも関わらず私にとても親身になってくれた先輩の話です



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『はぁ………どうしよう。初めてだよ、生徒会室に行きたいと思わないのは。このままサボっちゃおうかなぁ』

『おい、何をしている』

『ひゃあ!?』ビクッ

『なにもそんなに驚くことはないだろ』

『す、すすすすみません池田先輩! べ、べつにサボろうとしたのは冗談でっ! す、すぐに行きますからぁ!!』

『図書室で騒ぐな。お前は歳納か』

『へ、へ? あ、もしかして千鶴先輩?』

『当たり前だ。姉さんは今頃生徒会室にいる。それはお前が一番分かっているだろう』

『あ、あははそうですね。ついうっかりしちゃって……』

『はぁ……ほら、さっきの独り言は聞かなかったことにしてやる。とっとと生徒会室に行け』

『は、はい…………すみませんでした……………』

『………………』

『はぁ……………』トボトボ

『…………………………』

『……………………』トボトボ

『………待て』

『へ?』

(ったく、最近の私はどうかしてるな。楓ちゃんと会った辺りからここまでお節介になるだなんてな)

『なにか悩みでもあるのか?』

『……………い、いえべべべ別に!!』

『嘘を付くのならせめてバレないように努力しろ』

『あ、あうぅ………』カアァァ

『取り敢えず話していけ。今のお前たちの関係は大体把握している。話すことで何かの糸口が見えるかもしれない』

『は、はい。実は…………』



ーーーーー


ーーー






『つまり迷ってるわけか。ごらく部を守るべきかこのまま生徒会長に従うかを』

『はい。私は京子ちゃんたちを……ごらく部を守りたいと思ってます。でも生徒会長をはじめ生徒会の皆さんにも返そうとしても返せないほどの恩があります』

『どちらかを立てればどちらかが立たず、か』

『どうすればいいか分からないんです。ごらく部を守ろうとすれば会長、杉浦先輩、千歳先輩、それに友達2人を裏切っちゃう』

『かといってこのまま何もしなければ京子ちゃんや結衣ちゃんを泣かせちゃう………大切な幼馴染で今までずっとあかりの事を守ってくれたのにッ……! あかりは何もできない…………』グスッ

『……………泣くな。対処に困るだろ』

『ご、ごめんなさい…………』


『ふん、歳納なんかの為に何かしようとする気持ちは私には全く理解できないな。大体娯楽部を救うメリットなんて何もないだろ。内申だって生徒会にいたほうがいいに決まってる』

『………………………』

『ただ、もしも私がお前の立場であったと仮定してだ。生徒会を最近できた私の数少ない2人の友人、ごらく部を姉さんと置き換えたとしたら…………』

『……………』グスッ

『私は躊躇なく姉さんを取る』

『……………え?』

『もちろん私にとってどっちも大切な存在であることは間違いない。ただそれでもだ、私は誰に憎まれようが嫌われようが蔑まれようが姉さんを取る』

『そ、そんな簡単に………』

『現に私は今までずっとそうして来た』

『な、なんで…………』

『理由なんてない。私は姉さんが大好きでとても大切に思っている。でもそれも理由じゃない』

『……?』キョトン

『理屈じゃないだろ。そんなものに理由なんてない。両方を比べて姉さんの方が大切だから守る、なんてのは後付けの理由だ。気づいたら行動してるもんだろ』

『…………………………』

『ただな。もしも赤座が私のように一方を切り捨てることができないというならば、折衷案を見つけ出せばいい』

『折衷案ですか……?』

『そうだ。ごらく部を守りつつ生徒会のみんなを裏切る事のない案をだ。お前ならできるだろう? 友達も多いんだしな』

『………………』

『……………歳納も待ってるぞ』

『え?』

『あいつも大分懲りただろう。そろそろ助けてやれ』

『……………京子ちゃん』

(そうしないといつまで経っても私のところにアイツが来やがるからな)

『千鶴先輩……』

『なんだ?』

『ありがとうございました!!』

『別に…………まぁ頑張れよ…』



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



その人は自分の事を冷たい人間だ、酷い人間だと思っています。でも私はそうは思いません

その人は自分で気付いていないだけで、本当は誰よりも暖かく優しい心を持っている人だと私は知っています

私の事を励ましてくれ、悩んでいた私の背中を押してくれた先輩。この場を借りて改めてお礼を言わせてください。本当にありがとうございました



そして次にお話しするのは私の大切なお友達です

2人は生徒会に入ってからの私をいつも近くで支えてくれました



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



『あ、赤座さん! それは本気なのですか!?』

『うん、本気だよ。あかりはもう決めたんだもん』

『でもせっかく私たちよりもみんなから認められたのに、そんなの勿体無いよ!』

『勿体無いかは放っておくにしても、いささか無礼なのではありませんか? それはもう全校生徒の皆さんに対しての裏切りとも言えるべき行為ですのよ?』

『うん、わかってる』

『そ、それなら!』

『わかってるけど! それでもあかりはやるよ! 例えみんなから悪口を言われる事になったとしても、絶対に!』

『なんでそこまでして……… あかりちゃんはもう許しちゃったの!?』

『表向きには出さなかったものの、私たちもまだ先輩方を許してはおりません。赤座さんの本心はどうなんですの?』

『許すも何も、あかりは初めから怒ってなんかないよぉ』

『なっ、それは嘘でしょう流石に!?』

『関係ない私たちだって怒ってるのに当の本人がそんな事って…………』

『あかりお姉さんの言ってる事は本当だし』

『あ、こら花子! お前はここに来るなって言っただろ!』

『櫻子たちがあまりにもうるさいからだし。おかげで勉強もできないし』

『う、それは申し訳ありませんでしたわ』

『前にあかりお姉さんと怒る事についてお話しした時、あかりお姉さんは今まで本気で怒った事なんか一度もないって言ってたし』



『そんなの本当かどうかなんて分からないじゃん』

『ほほぅ、つまり櫻子はあかりお姉さんが嘘をついてあると言いたいわけだし?』

『別に嘘をついていると疑っているわけではありません。しかし赤座さん自身が分かっていないだけかもしれませんし……』

『それなら別にいいんじゃないのひま子?』

『ね、ねーちゃんまで!?』

『自分が怒ってるか怒ってないかわからない時なんて、大概怒ってないもんだよ。それなら別にいいでしょ』

『し、しかし撫子さん!』

『あかりちゃんだって悩んだ末の結果、こうして2人に打ち明けたんだよ。それを尊重してあげるのも親友としての務めじゃないの?』

(まぁ、3人がなんの話をしてたのかなんて私は全く知らないわけだが)

『やっぱり本気なの? 私は正直嫌だよ、せっかくあかりちゃんとクラスメート以上の親しい関係になれたのに』

『ごめんね櫻子ちゃん。でも本気だよ。あかりはもう決めたんだもん』

『で、でもそんな事したら先生からすごく怒られるよ! それに杉浦先輩たちからも嫌われちゃう可能性だって……!』

『あかりはね、たとえ杉浦先輩や池田先輩に嫌われたとしても……りせちゃんに嫌われたとしても! ごらく部を守るもん。京子ちゃん達を絶対に見捨てたりしない!』

『そ、そんな……!!』

『もちろんそうはならないようにするよ! あかりはごらく部を守るけど、茶道部も生徒会の人たちも全員を納得させてみせるもん!!』

『そんなことできるのあかりちゃん!?』

『ううん、分からない。もしかしたら櫻子ちゃんの言った通り多くの人から嫌われちゃうかもしれない。それでもあかりは絶対にごらく部の味方だもん!』

『………………はぁ、仕方ありませんわね』

『ひ、向日葵!? お前本気か!?』

『こうなった時の赤座さんは櫻子並みに頑固で意地を張ってしまいますから。もう説得するのは無理です』

『喧嘩売ってんのかおっぱいやろう!!』

『貧相な胸を持ってるのはあなたの責任でしょう!!』



『貧相な胸…………』

『牛乳飲んでるのに…………』

『やっぱり遺伝なのかな…………』

『向日葵ちゃんの発言で3人が一気にテンションダウンだよぉ!?』

『し、しまった…………撫子さん花子ちゃん! お気になさらないで…………』

『ひま子、そのおっぱい2つに増やして私に分けてくれない?』

『そうだし。撫子お姉ちゃんがこれじゃあお先真っ暗なのは目に見えてるし! 早くその胸を分裂させて花子たちに寄越すし!』

『そ、そんな事できるわけないじゃない!』

『………………増やす』

『…………………………それだッ!!』

『櫻子ちゃん!?』

『どうしましたのいきなり!?』

『あかりちゃん一気に解決だよ!! これでごらく部と茶道部は守られた!!』

『え、え!?』

『櫻子、何か妙案が!?』

『私たちの胸も増やす目処があるの!?』

『もったいぶらずに教えるし!!』

『いや、そういうわけではないかと思いますが………………』




そして生徒会の先輩方3人

皆さんも知ってると思いますが、松本会長、杉浦副会長、池田先輩の3人です

時に厳しく時に優しく、そしてどんな時でも私たちの事を心配してくれる素晴らしい先輩方



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



『反対よ! 絶対に反対よ!!』

『す、杉浦先輩…………』

『うちもやなぁ。赤座さんはもう既に生徒会になくてはならん人材や。それにここまで事が進んだ後にそんな事をしたら全校生徒から大顰蹙やで』

『わかってます。それでもあかりは決心を変えるつもりはありません』

『いい加減にしなさい赤座さん!!』

『流石にそれは許されへんよ? 無責任にも程がある』

『そうよ、千歳の言う通りだわ! 古谷さんと大室さんからも何か言ってあげて!』

『御二方、申し訳有りませんが私たちは赤座さんに最後まで味方すると約束をしてしまいましたの』

『ふ、古谷さん……!!』

『それに話を最後まで聞いてください! あかりちゃんが考えた作戦があるんです!!』

『作戦?』

『分かったわ、確かに何も聞かんうちに全てを反対するのはいかんしな。ただ、それはうちらを納得させられるものなん?』




『多分大丈夫です。だよねあかりちゃん!』

『た、多分………』チラッ

『』チーン

『か、会長……しっかりしてください!!』

『よほどショックやったんやね……』

『りせちゃん、お願いだから聞いて。あかりは絶対にりせちゃんを蔑ろになんてしないから』

『……………』ピクッ

『りせちゃん。お願い』

『…………………………』コクン



ーーーーー


ーーー






『と、いうわけなんです。これならごらく部も茶道部も生徒会も全て円満に解決できると思います』

『………………』

『………………』

『………………』コクン

『あ、あの杉浦先輩? 池田先輩?』

『な、何か問題があったでしょうか?』

『いえ、なんていうか…………』

『まさかそんな事を考えてたとは思っとらんかったから…………』

『既に西垣先生にはお話を通してあります。多分2日後までには何とかなると仰ってくださいました』

『まぁアレを見てしまったので多少不安はありますが……でも確実に効果は期待できると思います』

『ふふん、凄くないですか? これは私が考えたんですよ!』

『……………』パチパチ

『会長有難うございます!』フフン

『あまり調子に乗らないようにしなさいよ櫻子』

『分かってるってば』


『で、でもだからと言ってやっぱり私は反対よ! 赤座さんがあんな2人のためにそこまでする義理はないと思うわ!』

『それはうちも思っとることや。赤座さんはなんでそこまでして2人の事を守ろうとするん?』

『………私とって一番大切な2人だからです。たとえ杉浦先輩、池田先輩、りせちゃんに嫌われたとしても守る価値があるものだからです』

『………………なっ!?』

『…………………ッ!』

『……………………』

『気分を悪くしてしまったならすみません。でもごらく部はあかりにとってそれほどの価値があるんです。京子ちゃんと結衣ちゃんはあかりにとってそれほど大切な人なんです』

『………赤座さん』

『う、ん……ここまでストレートに言われるとは思っとらんかった…………なんか千鶴みたいやなぁ』

『……………………』コクン

『はい。あかりにはもう既に一生付き合っていける友達が2人もいたんです。その2人を守るためならあかりは誰にどう思われても平気です』

『………………』ナデナデ

『えへへ、分かってくれてありがとうりせちゃん』

『会長、という事はあの件も!』

『…………』グッ

『やったー!! やったよあかりちゃん向日葵!!』

『やりましたわ! 赤座さん櫻子!!』

『分かったわよ、負けたわ。私もそれでいい』

『綾乃ちゃん…………』

『でもね、1つだけ条件があるわ!!』

『条件ですか?』

『えぇ! あの2人に何としてでも謝ってもらうからね!! 今までのこと全部! 赤座さんに!!』

『うちもそれが条件や。今まで赤座さんにした酷いことすべてを謝ってもらう。それだけは譲れん! もしもそれをせんなら、ごらく部はうちらが絶対に認めんからな』

『分かりました、大丈夫です』

『本当に?』

『はい、あかりは2人のことを信じてますから!』ニコッ



そして中学生になってから初めてできた友達の話もしたいと思います

実はこの子とはいま少し気まずい関係になってしまい、最近は殆ど話もしていません

ですので恥ずかしながらこの場を借りてその子に伝えたい事を言いたいと思います

その子は少し思い込みが激しくて、独特の美術センスを持っている少し変わった子です

正直のところ私もたまに、ごくたま~にですよ? その子の行動や言葉に少しびっくりしちゃったりした事もありました

でもあるとき気付きました。その子の行動や言動は、全て一途な想いから来るものだということにです

そう知ってから思い返してみると、その子の全てがとても可愛らしく思えてきました

行動の一つ一つが必死に自分をアピールしているという事、そのとき少し暴走してしまい後で後悔している様子

そしてその事を私に必死に謝ってきた事もありました

そんな日常を思い返して私はこう思いました

あの時は気づいてなかったけど、私はそんな毎日をずっと楽しく過ごしていたんだという事に

月並みな言葉ですがこういう事です

“大切なものは失ってから初めてわかる”

その子は私に迷惑ばっかりかけていたと思い込んでいるかもしれないけれども、実はそんな事はなかったんです

彼女は毎日、私にかけがえのない宝物をプレゼントしていてくれていたのです

だから私はこう伝えたいです





ちなつちゃん、今まであかりとお友達でいてくれてありがとう。あかりに宝物をたくさんプレゼントしてくれてありがとう。これからもあかりと一生友達でいてください


次で最後になります。とは言っても2人いますけれどもね

この2人とも最近気まずくなってしまってあまりお話はできていません。ですのでこの2人にもこの場を借りて伝えたい事を言いたいと思います

まず1人目、とっても格好いい幼馴染からです

その子は私やもう1人の幼馴染にとってヒーローのような存在でした

あっ、ヒーローとはいっても女の子なんですけれどもね。でもとにかくそんな存在だったんです

その子はいつも私たちの事を前へ前へと導いてくれた存在でした

辛い時は必死に励ましてくれて悲しい時は笑わせようとしてくれて、どんな時でも私たちの事を第一に考えてくれた女の子

自分が辛いときや悲しい時にはそれを必死で私たちに隠し、決して弱みを見せようとはしなかった女の子

この子の存在があったからこそ、いまの私たちがあると言っても過言ではありません。むしろこの子がいなかったらいまの私は確実になかったと断言できます

このように言うとその子には欠点のない素晴らしい人だという印象を受けると思いますが、私から見ればその子は欠点だらけです。ふふふっ

まず第一に虫が大嫌いで、ちょっとでも虫を見ようものなら悲鳴をあげて逃げ出しちゃいます。目尻を見るとうっすらと涙も出てたりします。あっ、でもそんな様子がとても可愛らしいと思います!

そして次の欠点が自分の容姿に自信がない点です。みんなが羨むくらい可愛いのに自分ではそんな事ないと決め付けていて、少しでも可愛い格好をさせようものならすぐに顔を真っ赤にして押入れに立て篭っちゃうくらいです

なにせ写真を撮る時に可愛い笑顔をする事すら恥ずかしがるくらいですから。あ、でもそんな様子がとても可愛いと思います! だよねちなつちゃん!


< ソノトオリヨアカリチャン!


えへへ、ここから見てもいま顔を赤くして俯いてる様子が見えます。本当に昔から変わらない可愛い幼馴染です

でも私がその子の最大の欠点と思っているところは、自分の気持ちを押し殺してしまうところだと思っています



例えば……そうですね。本当は離れるのが辛いのに、私の為になると信じ込んでワザと私を突き放したり

私に嫌われる為にワザと悪口を言ったり、自分の窮地にも関わらず助けを求めてこなかったり

そのくせ陰ではそれを後悔して泣いたりしてるんです。尤もこれはつい最近知った事です。たぶん私が気づいてなかっただけで、昔っからそうだったに違いないと思います

そう考えるとその幼馴染には昔から随分と迷惑をかけてしまったと思います。多分いままで私達が気づいてなかっただけでその子は何度も何度も泣いていたんだと思います

だから私はこう思います。もうその子に助けてもらうだけなのは嫌だと、その子と助け合って二人三脚のように歩んでいきたいと

ねぇ結衣ちゃん。あかりはまだ結衣ちゃんにとって守られるだけの存在なのかな? まだあかりは結衣ちゃんを守ってあげられないのかな? そんなにあかりは頼りないかな?

あかりはもう守られるだけの弱いあかりじゃない。もう結衣ちゃんの隣を並んで歩ける自信はあるよ

だからもっとあかりの事を頼ってほしい、弱い所を見せてほしい。あかり結衣ちゃんの事が大好きだよ。結衣ちゃんのためならなんだってできるよ!

だから……もしもあかりの事を頼ってくれるというのなら、何か反応を見せてくれると嬉しいな。笑うとか! もしもあかりにまだその資格がないのならこのまま黙ってて


< ………………



えっと…………ここで新生徒会長の言葉を一節

こほん、こんなに人が多い前で話すと緊張金閣寺だよぉ



< ブフッ!



結衣ちゃん、笑ってくれてありがとう! これからあかり、結衣ちゃんに置いて行かれないように頑張るからね!



< イヤッチガウ!




それじゃあこれで本当に最後です。さっきから話に出ていたもう1人の幼馴染。少し臆病で泣き虫な幼馴染のお話です

先ほどの幼馴染が私たちのヒーローであったなら、この子は私たちのヒロインのような子でした

いつも私たちの2歩3歩後ろを黙って付いてくるような可愛い女の子、引っ込み思案で人見知りの女の子

泣き虫でちょっと転んだだけで泣き出しちゃうような弱虫で、そんな子を守るため私ともう1人はいつも頑張っていました

でもそんな女の子は時とともに段々と強く変わっていきました。そしてついには私なんかよりも強く明るく、そして可愛く成長していました

そんな女の子を見て私はこう思っていました。もうこの幼馴染は私なんかよりもよっぽど強いと。私なんか必要としていないんだって

でもそれが誤りだったと気付いたのは、これまたつい最近の事でした。それも他の人によって気付かされたんです

私はそのことに気付かず、その子にこう言ってしまったんです

もうこの部活をやめるねって……

いまから思えばとても無神経な言葉であったと思います。しかしその時の私は自分が必要とされていることに気付いてなく、平然とその部を出て行ってしまいました

そんな私が今更こんなお願いをするなんて虫がいいかもしれませんが、それでもこれだけは伝えたいんです


京子ちゃん、あかりは中学生の初日とても嬉しかったんだぁ

放課後にあかりをあの部室へ連れて行ってくれた事、あかりを快く迎え入れてくれた事、とっても嬉しかった

それからの毎日はあかりにとってまさに幸せの階段を上り続けてるような毎日だったんだぁ

だって京子ちゃんってば、いつも楽しい催し物を考えてきてあかり達を1日だって飽きさせる事をしなかったんだもん

目立たないあかりを目立たせようとしてくれた事、結果はどうであれとても嬉しかった



あかりに勉強を教えてくれた事もあったよねぇ。京子ちゃんの教え方、少しいい加減だったけれどもそれでも本当に楽しくお勉強が出来たんだぁ

あかりの為に紙芝居を作ってくれた事もあったよね。あれ、本当に嬉しかったんだ。だってあんな紙芝居、あかりの事をよく理解してくれてないと描けないんだもん

他にはね……まだまだいっぱいあったよね。それこそあかりが思い出せないくらいのたくさんの思い出が

思い出せないのはそれがあかりにとってごく当たり前の日常の一部だったから。今にして思えばすごく贅沢だよね、えへへへ

だからね京子ちゃん、あかりはそんな楽しい日常をもう一度過ごしたい。もう一度京子ちゃん、結衣ちゃん、ちなつちゃんと一緒にごらく部で毎日を過ごしたい!

だから京子ちゃん、あかりをもう一度ごらく部に入部させてください。あかりに楽しい毎日を過ごさせてください、お願いします



そして全校生徒の皆さん。私は先日の演説でみんなを笑顔にするために副会長になるとお話をしました

しかしずっと一緒だった幼馴染や、中学で初めてのお友達を笑顔にする事すら出来ずにそんな事ができるとは思えません




京子「あ、あかり…………」

結衣「まさか…………!」







わたくし赤座あかりは生徒会副会長を辞退させていただきます






こうしてあかりの演説は幕を閉じた



京子「あかりぃ!!」

結衣「お前はなにを考えてるんだよ!!」

あかり「あ、京子ちゃん結衣ちゃん! やっぱり来てくれたんだね」

ちなつ「京子先輩、結衣先輩………」

結衣「ち、ちなつちゃん!」

ちなつ「ほ、本当に……本当にすみませんでした!!」

京子「な、なんで急に頭下げるの!?」

ちなつ「だって………半ば先輩方を追い出す事に加担したようなもので…………」

結衣「べ、別に怒ってなんてないよ。そんな頭を下げないで……」

京子「てかちなつちゃん、あそこが茶道部の部室だって事忘れてたんだろぉ~? 元茶道部志望のくせに」ニヤニヤ

ちなつ「な、そっそれはアレですよ! ほら、あまりにもごらく部の活動が面白かったからすっかり失念してたんですよ!」

京子「おぉちなちゅがデレたぁ!! よっしゃ! チュッチュ~!!」ガバッ

ちなつ「うぎゃ~ひっつかないで下さい!! た、助けてぇ~!」

結衣「いい加減にしろ京子!!」ガツン

京子「んげっ!?」

ちなつ「あ~ん結衣先輩、怖かったですぅ~♡」

結衣「ち、ちなつちゃん! 近いってば!」

あかり「………………」ニコニコ

京子「ってそんな事してる場合じゃないって! あかり、さっきの演説は一体どういう事なんだよ!」

結衣「そうだよ! 一体なにバカな事を言ってるんだよ! はやくさっきの発言を撤回しろ!」

あかり「ううん、撤回はしないよ。絶対にね」

結衣「ふざけるな! なんであかりは私たちの言う事を全く聞かないんだよ!! 振り回されるこっちの気にもなれよ!」

あかり「結衣ちゃんだって今まで散々あかりを振り回してきたくせにぃ~ 特に昔なんて酷かったよぉ」

結衣「うっ……それとこれとは別だ!」

あかり「えへへ、そうだねぇ」ニコニコ

結衣「う………」

ちなつ「結衣先輩が押されてる……!」



京子「あかり」

あかり「なに、京子ちゃん?」

京子「残念だけどあかりの再入部は認めないよ」

あかり「どうして?」

京子「べ、別に理由なんてないよ。部長がダメって言ってるんだからダメ!」

あかり「もしかしてあかりが生徒会を辞めるのが心配なの?」

京子「……………」

あかり「その事なら心配ないよ。だってあかりが辞めるのはもう全員に納得してもらってるんだもの」

京子「はへっ!?」

あかり「ですよね、杉浦先輩」

綾乃「……………えぇ」

京子「綾乃!?」

千歳「うちもいるで」

結衣「千歳……」

綾乃「赤座さんが辞めるのはもう決定事項よ。それもこれも全てごらく部の為」

千歳「うちらも全員納得した結果や。もうこの決定は覆らへんよ」

京子「なっ!?」

あかり「えへへへ」

京子「な、なんで…………」

あかり「…………………」

京子「なんで……あかり、は……そこまで私たちの事を……………」ジワァ

あかり「………………」

京子「私たちの事なんか放っておけばいいじゃん! あかりの事をあそこまでバカにしたのに! 嫌いになったって言ったのに!! なんでここまでするんだよッ!!」ジワァ

あかり「京子ちゃんだからだよ」



京子「あかりぃ…………あかりぃ!!」グスッ

結衣「そ、そんな哀れみなんて私たちにいらないんだよ!!」

あかり「結衣ちゃん……」

結衣「そ、そんなこと必要ない! あかりなんて邪魔なんだよもう別にいらないんだって!! もう二度とごらく部に来るなんて許さなーーー」

あかり「結衣ちゃん、もう大丈夫だよ」ギュッ

結衣「………っ!!」

あかり「そんなに苦しい思いをしてまであかりの事を悪く言う必要なんてないんだよ。あかりはどんな事があっても結衣ちゃんの味方だもん。だからほら、もう泣かないで」ナデナデ

結衣「な、泣いてなんか………ない………………」ポロッ

あかり「結衣ちゃん、あかりとちなつちゃんが抜けてから今までずっと1人で頑張ってくれたんだよね。京子ちゃんに弱いところを見せないように必死に我慢してくれてたんだよね」

結衣「……………うぅ……そ、そんな…こ……と…………」ポロポロ

あかり「もう大丈夫。これからはずっとあかりが付いててあげるから。だからさ、もう泣いてもいいんだよ」ナデナデ

結衣「………………あ、かり………」グスッ

あかり「京子ちゃんも、ほら」ナデナデ

京子「……………あかりぃ」ウルッ

あかり「なぁに京子ちゃん?」ニコッ

京子「……………うわあああぁぁぁあぁぁぁあん!! ごめん! ごめんねっあかりぃ!!」

あかり「ううん、謝る事なんてなんにもないよ。京子ちゃんもずっと辛かったんだもんね。ずっと放っておいて本当にごめんね京子ちゃん」ナデナデ

京子「ほ、ほんっ、とだよ!! ぜった……いに…………許さっ……ない、から! あかりは……ずっと、ごらく部………で、辞める…………ことっ…………許さ…………うあああぁぁぁっ!!」

あかり「うん、大丈夫……だから……! あかりは、ずっと……ごらく部、だ…から!」ウルッ

結衣「…………………」ギュッ

あかり「ゆ、いちゃ…んも……今は………泣いていいっ……から! 絶対に、あかり……は、離れないっ……か、ら……!!」グスッ

結衣「……………………ッ!!」ギュッ

ちなつ「………うぅ……ひっく、うわあぁああん…………ヒック…グスッ……」

あかり「ち、なつ………ちゃんも…………ね、ごめんっ……ね!!」グスッ

ちなつ「…………………ッ!」フルフル

あかり「ちなつちゃんとあかりっ……は…………ずっとずっと……とも、だち……だからっ……絶対に……離れなっ……い…………からっ!」グスッ

ちなつ「…………………………」ギュッ





綾乃「……………千歳行きましょう」

千歳「あはは、綾乃ちゃんもらい泣き?」

綾乃「なっ!? べ、別に泣いてなんかない……わよ!!」

千歳「ほら、ハンカチ。うちも少し泣きそうやもん、綾乃ちゃんが泣いたって何にもおかしいことなんかあらへんよ」

綾乃「……………ごめん……借りるわね」

千歳「どうぞ、会長」クスッ

綾乃「これから……頑張りましょう…………!」

千歳「ずっと付いてくで、綾乃ちゃん」



ー後日談ー


京子「………………」

結衣「………………」

京子「遅いね、3人とも……」

結衣「そうだな……なんにもやることがないとつまらないな…………」

京子「しりとりでもする?」

結衣「2人で?」

京子「文字数指定しりとりとか!」

結衣「なるほど」

京子「それじゃあ13文字しりとり! 私からね、“パルミジャーノレッジャーノ”」

結衣「難易度高いしズルいぞこら!!」

京子「えっへへへ、私の勝ちぃ~」

結衣「…………ったく!」



ちなつ「お待たせしました~ これが今日の分の書類ですよ!」

京子「お、ちなちゅ~♡ チュッチュ~!」

ちなつ「ちょっ!? いきなり抱きついてこないで下さい!!」

結衣「お前は少しは成長しろ!!」

京子「あぁ~ん! 結衣のいけず~♡」

結衣「……………………キモイ」

京子「ひどっ!?」

結衣「ところであかり達は?」

ちなつ「多分もうすぐ来ますよ。恐らく帰りのホームルームが長引いてるんだと思います」

京子「やっぱり私たちよりも長引くのかな? 私たちも来年は長く教室に缶詰にされるのかぁ~」

結衣「たまたまだろ、きっと。そんなことよりもほら、私たちにわかる分だけ終わらせちゃおうよ」

京子「よっし! あかり達が来る前に私たちで終わらせてビックリさせちゃえ!」

ちなつ「いいですねそれ! 頑張りましょう!」





あかり「みんなお待たせ~!」

京子「おっ、来たなあかり! 遅いぞ全く!」

結衣「ほら、もう一クラス分は終わらせちゃったぞ」

ちなつ「早く2人も手伝って下さいよぉ!」

あかり「えへへ、ごめんごめん。あかり達も頑張るよ」





あかり「ね、りせちゃん」

りせ「……………」コクン






ごらく部が実態のない部活だというのならば、活動内容を作って正規の部活動にしてしまえば問題ない。これはあかりが考えた



京子「それにしてもあかりも考えたもんだよね。まさかごらく部を生徒会の傘下にしちゃうなんて」

あかり「思いついた時は自画自賛しちゃったよぉ。これ以上のいい考えはないって思ったんだぁ」

りせ「………………」コクコク






正規の部活発足には最低5人の部員が必要。それならば生徒会を引退するりせちゃんを入部させてしまえばいい

生徒会の傘下に入って事務仕事を行うなら、りせちゃんの加入は正に一石二鳥だもん。これもあかりが考えた






コンコン

結衣「はーいどうぞ!」

「どうも、失礼します」

京子「あ、またお茶を持ってきてくれたんですか!」

「ええ、みんなが美味しいって言ってくれるから私たちも活動のしがいがあるわ」ニコッ

あかり「ありがとうございます!」






茶道部の部室はあの後もう一つそっくりの部屋を作って対処した

え、どういう風に作ったかって? それはなんと西垣先生が発明した同一物製造マシーンで!

櫻子ちゃんがこの装置のことを覚えておいてくれたのは本当に幸いだった。だってそれがなかったら、いまこうしてあかり達がこの部屋で活動をすることはできなかったから!



「でも残念だわ吉川さん。茶道に興味のあるあなたにこそ茶道部に入ってもらいたかったのに」

ちなつ「すみません先輩。でも私はやっぱりごらく部が好きなんです。先輩のお誘いは本当に嬉しかったんですけれども…………」

「別に平気だってば! 私たちも5人集まってるんだからね! それじゃあまた!」






お姉ちゃんが気付いてくれた事だけど、なんと茶道部の部活発足状にはちなつちゃんの下にもう1人の名前が連ねてあった

これはちなつちゃんにサインをしてもらった後、さらにもう1人からサインをもらえていたっていう事だ

つまり書類にはちなつちゃんを含めて6人のサインがしてあった。でもちなつちゃんはもう1人サインしてくれた事を知らなかったから、自分が抜けたら茶道部が発足できないと思い込んでいた

あかりはちなつちゃんのその言葉によって先入観があったから、書類に6人のサインがあった事に気付けなかった。うぅ、お姉ちゃんには本当に感謝だよぉ~






西垣「おう、やってるな」

京子「あ、西垣ちゃん! もうばっちしやってるよ!」

結衣「こら京子! 顧問の先生に対してその口の利き方はダメだろ!」

西垣「あぁ~別にいいよそれくらい。むしろ歳納から敬語で話されたらそれはそれで気持ち悪い」

ちなつ「あはは、確かに」

京子「ちなちゅまで酷い!!」

ちなつ「ちなちゅ言うな!」

あかり「あはは、相変わらずだねぇ」

りせ「………………」

西垣「そういうお前達も相変わらずそんなベッタリくっついて作業してるのか」

あかり「だ、だってりせちゃんが………」

りせ「…………………」スリスリ

西垣「あ~分かった分かった。松本もそんなに頬ずりするな。お前達の愛はよくわかったから」






あかりの演説の時京子ちゃんと結衣ちゃんの本意に気がついていたのは、何を隠そう千鶴先輩と西垣先生のおかげだったりする

同一物製造マシーンの事をお願いしに行った時、西垣先生がすべて教えてくれたから

その時一緒に、“松本を頼む” とも言われたけれど、正直のところどういう事だったのか、まだよく分かっていない

けど多分これで良かったんだよねぇ?



結衣「ところで今日はいつ頃うちに来る?」

京子「活動終わってから家で身支度を整えてすぐに!」

結衣「3人ともそれでいい?」

ちなつ「大丈夫ですぅ!」

あかり「もちろん!」

りせ「…………」コクン

ちなつ「あ、そうだ結衣先輩! 私実は先輩のために洋服を編んだんです! 今日持って行くんで良かったら着てください!」

結衣「え゛!?」

ちなつ「なんと私の服とペアルックにしたんです! 私の無償の愛を受け止めてくださいぃいい!!」

京子「…………うわぁ地獄だ」

あかり「あ、あははは………結衣ちゃんご愁傷様…………」

りせ「……」ブルブル

京子「ちなつちゃん、別に編まなくてもあかりとまっちゃんみたいにお揃いの服を買えば良かったんじゃ…………」

ちなつ「手作りのものこそ真の愛が宿るんです!! もう既に真の愛を持っているあかりちゃん達は市販のものでも構わないと思いますけど、私と結衣先輩にはそれ以上のものが必要なんです!!」

京子「あれ? てことはちょっと待って!? もしかして私1人だけのけもの扱いされちゃう感じ!?」

結衣「い、いや! あかりとりせはまだしも私とちなつちゃんは別にそういうわけじゃ!!」

ちなつ「あ~ん結衣先輩♡ 照れなくてもいいですってばぁ!」

結衣「て、照れてるわけじゃ…………」

ちなつ「あかりちゃんにもりせちゃんにも負けない愛を育みましょう!!」グッ

結衣「お、落ち着いて…………」

りせ「………………」フンスッ

あかり「愛の勝負受けて立つって言ってるよぉ~」

西垣「ははは、松本よ。青春しているな」

りせ「…………………!」フンスッ

京子「くっそ~ 私だけ1人ものかよぉ!」

りせ「………………」ポンッ

京子「へ、まつもっちゃん?」

りせ「……………………」ニヤリ

京子「ば、馬鹿にされたぁ~!!」

あかり「り、りせちゃん! あんまりいじめちゃダメだよぉ~」アタフタ

りせ「……………」フフン

京子「メソメソメソポタミア~」グスン



京子「よっしゃ! それじゃあ今日はこの話題ボックスだ! 引いた紙に書いてある事に従わなくちゃいけないんだからね!」

結衣「変なの入れてないよな?」

ちなつ「この前任意の人にキスとかいう紙が出たせいで、あかりちゃんとりせちゃんがとんでもない事になったんですから!」

京子「だ、大丈夫だよ! さ、流石に前回のアレで私も、そのっ……反省したというかなんというか…………」カアァァ

あかり「う、うぅ…………」カアァァ

りせ「……………」フンスッ

京子「こ、今回は無難なものしか入れてないから平気だってば! さ、一番手はあかりだよ! 早く引いて!!」

あかり「あ、あかりが最初なのぉ!? え、えっと…………」ゴソゴソ


“最近うれしかった事”




あかり「えっと、最近うれしかった事。それはもちろん………………」












あかり「最近ごらく部にいるのがたまらなく楽しいことだよぉ!」ニコッ





おわり

ハッピーエンド編終わり
かなり長く放置してて申し訳ありませんでした

>>230で終わりのつもりだったので多少無理やりだった気もするけど、落とし所としてはこんな所で

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このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年10月16日 (金) 23:01:58   ID: W3R0iQS8

あかりの生徒会入りネタ好きだわ

2 :  SS好きの774さん   2015年11月05日 (木) 00:32:35   ID: XxCajvnz

こういうギスギス、好きだわぁ。

3 :  SS好きの774さん   2015年12月10日 (木) 11:58:00   ID: 8pvjqBYY

うーー、せっかくハッピーエンドに向かいつつあるから何とか完結して欲しい!

4 :  SS好きの774さん   2016年01月14日 (木) 03:17:51   ID: eZgjZiQt

すごくよかった!

5 :  SS好きの774さん   2019年11月04日 (月) 09:33:25   ID: x-_mx_DD

結局ごらく部のために犠牲になっただけの話
この後どうせまたいつもの弄りが始まるんだろ

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