【艦これ】瑞穂と提督と艦娘と【安価有】 (578)
・瑞穂が可愛くて仕方ないので書いた
・基本ほのぼの
・独自解釈アリ
・地の文アリ
・偶にキャラ安価を取る予定
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-東京 赤坂の某料亭-
提督「新しく入手した水上機母艦の艤装の適任者が見つかったの良いけど、着任の顔合わせが赤坂とは…」
榛名「適用者が旧財閥系の一族出身だという話でしたから、きちんと手順を踏まないと先方が納得しないのでは?」(護衛1)
加賀「でも、その一族の中でも傍流の出なのでしょう。ここまでやる必要があるのかしら」(護衛2)
提督「まあ、傍流だろうが親からすれば、娘が出征するってなればそれなりに気を使うんじゃないかな」
---
案内人「お待ちしておりました。提督様でございますね?お付きの方は別室にご案内致します」
榛名「提督、それでは榛名達は別室で待機していますね」
加賀「何かあれば直ぐに駆け付けるわ」
提督「分かった。まあ、ささっと済ませて鎮守府に帰ろう」
案内人「それでは、提督様はこちらの部屋でお待ちください」
-数分後-
(……暇だ)
(先方に気を遣って少し早目に来過ぎてしまったか…)
(傍流とはいえ、お嬢様だろ…きっと高飛車で上から目線で世間知らず…面倒だなぁ)ウヘェ
(最上型の子達はお嬢様学校出身。綾波も名家のご子息とはいえ、着任時にここまでの事は無かったし)
(幸い、解体制度のお蔭で自分に合わないと思ったら自己申告で解体・社会復帰できるし)ズズッ
(文字通り血生臭い荒波に揉まれて、自分の立ち位置を理解してくれるだろう)ウンウン
ガラッ
案内人「提督様、○○様が到着しましたので、こちらへご案内致します」
(さて、鬼が出るか蛇が出るか…)ワカリマシタッ
スススッ
案内人「○○様、こちらのお部屋でございます」
ガララッ
スッ
瑞穂「水上機母艦、瑞穂、推参致しました。どうぞよろしくお願い申し上げます」ペコリ
(鬼でも蛇でも無かったぁ!!!???絵に描いた様な超正統派ご令嬢様じゃないですかぁーっ!!??)
---
カコーン
(予想は裏切られたが、如何せん今回の席を設けた理由が解らない…)フム
瑞穂 ニコニコ
提督「えっと、どうして瑞穂さんは艦娘に?適正候補とはいえ、辞退も可能だった筈だけど…」
(まあ、見た感じおっとりした人みたいだし、やんわりと確認できれb「…みずほ」
提督「…ん?」
瑞穂「提督、瑞穂はもう提督の艦娘です。瑞穂とお呼びになってください」ニコ
提督「あっはい」
(おっとりとは言え、やはり自己主張は強いっぽい?お嬢様扱いが苦手とかか?)
提督「…それで改めてなんだけど、瑞穂が艦娘になった理由を聞いても?」
瑞穂「はい。最初、瑞穂の元へ艦娘の適正結果が届きましたときは…その、驚きました。それに提督や他の艦娘の方々と過ごせるか。きちんと戦えるかといった不安がありました…」
そう言って、キュッと胸の前で両手を握りしめて不安げに視線を落とす。
(まあ、そりゃあそうだよなぁ。俺も最初はそんな感じだったし…)
瑞穂「ですがっ」
今度は顔を上げて、視線がぶつかる。
気のせいか少し瞳が潤んでるような…
そりゃいきなり軍人・軍属になれってなったら泣きたくなるわな
瑞穂「父が、本家の伝手で海軍の高官に配属先を選べるようにして頂き、少しでも瑞穂が勤務し易い場所があればと動いてくださったんです」
提督「成程、噂程度とは言えそういった話が聞いたことがありますね」
親心…は分からないが、自分の娘がせめて勤務し易い環境をと動く。
古今東西、そういう話はどこでも聞くだろうし、
瑞穂の家は傍流とはいえ、一族全体では政界・財界・軍事界隈にかなり顔が利く筈だ。
(……待て待て待て、だったらどうして…)
提督「でも、それならうちの鎮守府じゃなくて、中央でもっと安全な場所があった筈じゃないか?」
瑞穂「それは、父や一族の人たちからも言われてきました。ですが、瑞穂は提督が…提督の元に推参したいとずっと申して参りました。それで、今回一席を設けてくださったのです」
フルフルと首を振りながら
恐らく自身の中でも過去最大級の我儘を…決意の内容を話す瑞穂の目には
とても強い意志のような何かを感じる。
感じるからこそ…
提督「なら、尚更面識のないうちの鎮守府では無くてだな…」
そこまで言ったとき。
恐らく、『面識のない』辺りからだったか
瑞穂がプクッと頬を膨らまし始めた。
何か失言したみたいだが、怖いというか
正直可愛いだけなので意味無いというか…
瑞穂「まだ、想い出してくださらないのですか…?」ムーン
提督「…想い出す?」
瑞穂「提督は、幼少の頃。様々なお所に引っ越しをなさっていた筈です」
提督「あぁ…親が転勤族だったからな…」
瑞穂「××という場所は、ご存知でしょうか?」
提督「××って言ったら…確か小学校低学年の頃に住んでた場所だな。結構自然やら、遊び場もあって良いところだったんだけど数か月で引っ越してそれっきりだな」
流石、海軍から資料を受け取っただけあって
俺の過去についてもバッチリってことか…
うへぇ…
それなら、アレとかソレとかも見られたのか…?
若さゆえのとは言ったもんだが勘弁して欲しい
瑞穂「まだ、想い出されませんか…?………どうしましょう…」シュン
いや、どうしましょうって言いたいのは
俺の方d…ん?どうしましょう…?
どうしましょう……どうしましょう………ドウシマショウ?
提督「あっ」
瑞穂「!」
提督「何か、××に住んでた頃いっつも『どうしましょう』って言ってる子と遊んでた気がする…」
瞬間、瑞穂の顔というか表情がパァアッと輝く。
スッと手のひらを合わせて、想い出してもらえた嬉しさからか
頬をうっすらと上気させる。
正直、その表情が余りに美しかったのでこう…見惚れてしまった。
瑞穂「やっと…想い出してくださいましたね。瑞穂のことを…」クスッ
そう言って微笑む瑞穂の顔に見惚れていた俺は、
考え途中だった『若さゆえの何とやら』についてすっかり忘れてしまっていた。
その内容が切っ掛けで、後々大変な目に合うとは露知らず…
書貯めとオリョクル終わったらまた投下します
---
その後、こちらの疑問が一応解決したところで
「冷めてしまわないうちに、頂きましょう?」
と瑞穂に言われて、そのまま料理に箸をつけ始める。
こう、普段行かない場所で、
最初は他人だと思ってた目の前の人物が
実は知り合い、それも幼少期の知り合いとなると
幾らか気楽になるもので
やれ「××近くの何々はどうなった」とか「どこそこで遊んだ公園には遊具が増えた」
等々お互い共通の話題で盛り上がる。
瑞穂「提督、お隣、失礼致しますね?」
提督「?」
丁度、鍋の中身が良い感じに煮込まれているのを確認すると
スススッと対面に座っていた瑞穂が隣に移動して
そのまま取り皿に、バランス良く中身をよそっていく。
(高そうな牛肉だなぁ…)
とか庶民臭い事を考えていたら、
取り皿をそっと渡される。
瑞穂「本当は瑞穂が夕餉の支度をしたかったのですが、本日はこのような席ですので…ごめんなさいね」
少し残念そうに話す。
提督「あー、うちの鎮守府に所属するんだし、瑞穂が秘書艦になったら、そのとき食事の支度をお願いするよ」ポリポリ
あ、またバアッとなった
瑞穂「提督、瑞穂にお気を使って頂いて有り難うございます。瑞穂、嬉しいです///」
そのまま、箸を進めていく。
久々に日本酒を飲んだけど、飯に合う。
瑞穂「お注ぎ致しますね」スッ
瑞穂が目聡くトクトクッと、空のお猪口に注いでくれる
普段、鎮守府の酒好き連中と飲むときよりも良い日本酒なんだろうか
普段より、酔いが回り易くなっているような…
瑞穂「お待たせ致しました。どうぞ、お飲みになられてください?」
あ、お香か何かを着物に染み込ませているのか甘くて良い匂い…
提督「瑞穂も食べないと勿体ないよ?」
瑞穂「お気遣い、有り難うございます。ですが、瑞穂はここで提督のお酌をしていれば十分です///」ニコッ
提督「」キュン
そう言って微笑む瑞穂の顔がとても綺麗で
こう、ほおっておけない愛らしさがあふれ出てるようで
思わず手を瑞穂の頭にやり、撫でる
提督 ナデクリナデクリ
瑞穂「んっ…提督、瑞穂…嬉しい気持ちで一杯で…どうしましょう///」ウツムキ
(何だこの可愛い生き物!?癒されるわぁ…)
「「うぉっっっほんっ!!」」
提督「っ!?」ブフッ
背後から聴こえる大きな咳払い。それに反応して吹き出す俺
スパァーンと開け放たれる襖。
背中を擦ってくれる瑞穂。あ、凄い気持ちいい…
加賀「護衛の存在を忘れて…随分なご身分ね?…流石に気分が怒髪天になります」
提督「いや、加賀に榛名。これはだn「提督!」…はい」
榛名「榛名はあまり大丈夫ではありません」ニコニコ
提督「左様で」
榛名「榛名にも、先ほど瑞穂さんにしていたみたいに食べさせてください」
提督「いやー待たせちゃったしそろそろ帰ろうかと…」
榛名「食 べ さ せ て く だ さ い」ニコォ
提督「」
クイクイッ
提督「…?」クルッ
加賀「あーん」クチアケタイキチュウ
提督「」
---
瑞穂「ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございません。水上機母艦、瑞穂と申します」
加賀「司令直衛艦隊、第一航空戦隊所属、航空母艦加賀よ」ドヤァ
榛名「同じく司令直衛艦隊、並びに機動打撃艦隊所属、高速戦艦榛名です」フンス
瑞穂「お二人のお話は、着任前からお噂を良く聞いておりました。若輩者ですが、どうぞよろしくお願い致します」
取り敢えず、護衛二人のご機嫌を取るため
鍋の残りやお酒を勧めて宥める。
モキュモキュと鍋の中身を食べる加賀に、熱燗を飲む速度が速い榛名。
どういう訳かドヤ顔で挨拶する護衛二人にしずしずと挨拶する瑞穂。
ふと、瑞穂の挨拶に気になる部分があったので聞いてみる。
提督「噂…?」
瑞穂「はい。艦娘になると、ケッコンカッコカリという制度があり、提督と艦娘との間で強い絆で結ばれるというお話のことです」
提督「あー」ダラダラ
(やっべ、何か地雷踏んだ気がする)
榛名「その通りです瑞穂さん!因みに、榛名は提督と既にケッコンカッコカリ済ですっ!!」フンスフンス
加賀「私も、ついこの間、第二次SN作戦を前に、ケッコンカッコカリを提督と済ませているわ」ドヤヤァ
えらいドヤ顔で指輪をチラチラと見せ、瑞穂に自慢気に話す二人。
何か飛び火したら嫌なので、この隙に端っこでひっそり手酌で飲むことにしよう。
瑞穂「提督、瑞穂も、お恥ずかしながらお約束を果たしに参りました!」ズイッ
提督「……約束?(逃げられなかった…)」
瑞穂「はい。その、瑞穂のことを一人にしない。迎えにきて、ずっとお側に居て頂けると…///」ポッ
提督「あー、確かあのときの瑞穂って、ずっと一人ぼっちで友達いなかったもんな」
傍流とはいえ令嬢だ。きっと親も溺愛していたのだろう。
“常”に人気のない公園で遊んでいた瑞穂は、草むらから出てきた俺にびっくりしていた。
話を聞くと、両親・親戚・偉い人のことしか話さないので、どうも友達もいないらしい。
寂しそうに自分のことを話す姿が、どうにもほっておけず、次の日も遊ぶ約束をした。
瑞穂は驚いてどうしましょうどうしましょうと首を傾げていたけど、やがて嬉しそうににっこり笑った。
そこから暫く公園で遊ぶ日々が続いた。
瑞穂と遊ぶには、事前に人気のない公園に入らなければならず
草薮の中に秘密基地めいたものを段ボールで作り、草で擬装した。
転勤族の親を持つ俺も元々、友達と呼べる存在が少なく
瑞穂と遊ぶのは、とても楽しかった。
ただ、転勤族の宿命というか、数か月後にはまた引っ越す事となった。
そのとき、泣きじゃくる瑞穂を抱きしめてそんな事を言った記憶が……
提督「確かにそんなこと言ってたわな…」
瑞穂「はい。ですから、提督のお側に居ることができるならばと、瑞穂は艦娘になることも躊躇致しませんでした」
提督「そりゃ、凄い決意だと思うけど、ご家族は良く納得したね…」
瑞穂「瑞穂、最終的に、一族である○○家とは縁を切って参りました」クスッ
提督「」
瑞穂「ただ、戦争が終結の暁には、海軍から立派な婿養子を連れて戻ると約束して、やっと一族の者に納得して貰えました」
(んんー?)
何か雲行きが非常に怪しくなってきた。
こっから先は聞きたくないというか…
護衛二人がさっきから無言なのも怖い。
首元がチリチリする…
瑞穂「提督…いえ、あなた様。瑞穂、不束ものでございますが、何卒よろしくお願い致します///」スッ
三つ指揃えて頭を下げる瑞穂。
後ろから刺さる冷たい殺気。
手遅れだがようやく理解した。
何故今回の着任がわざわざ赤坂の料亭なのか
それも海軍軍令部直々の事例なのか
着任に合わせて支給予定の大量の資源・資材
瑞穂と二人きりの会席
甲斐甲斐しく世話をしてくれる瑞穂
瑞穂の家族との約束
提督「知らない間に物理的に外堀埋められてたぁああああっ!!!???」
ただただ、悲鳴を上げるしか無かった…
書き溜めが尽きたので一旦ここまでです
区切りの良いところまで書けたので投下します。
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--東京湾 某海上護衛総体所属の埠頭--
運転手「提督様、お嬢様、到着致しました」
瑞穂の実家の所有資産である高級車の運転手が、埠頭に付くとすぐに
客席のドアを開ける。
提督「ありがとう。加賀、これを2番桟橋の当直士官に渡してきてくれるか。榛名は、瑞穂を案内してくれ」
鎮守府へ酒保物品を搬送する輸送飛行艇への搭乗許可証を加賀に預け、
榛名に瑞穂を桟橋まで案内させる。
車の中では、瑞穂を交えて俺のことをあーでも無いこーでも無いと姦しく話し込んでいた二人だが、流石に2年以上海軍に身を置いてるだけあって、車を降りると命令一下素早く対応する。
運転手「提督様、お嬢様をどうかよろしくお願い致します」
3人の艦娘が離れた頃合いを見て、運転手が頭を下げる。
提督「このご時世です。確約は出来ませんが、戦が一段落したらご挨拶に伺いたいと思います。その際には、送迎をお願いしたい」
その言葉に、運転手は再度頭を下げ、感謝の言葉を述べると車に乗り埠頭を後にした。
(…負け戦に出来ない理由がまた増えたなぁ)
少々アンニュイになりながら、先ほど口にした2番桟橋に足を運ぶ。
衛兵「誰何!」
提督「先ほど許可証を渡した提督だ。搭乗したい」
衛兵に軍隊手帳を確認してもらい、
当直士官に搭乗機まで案内してもらう。
当直士官「お連れの方は既に3名とも搭乗済です。離水時間は10分後になります」
提督「ん、承知した」
事務的な会話を済ませてそのまま機内へ入る。
機長「閣下、お待ちしておりました」
提督「急な積荷で申し訳なかった…総隊本部から何かあったか?」
機長「総隊本部、通信所からも定時連絡以外は特にありません。こちらと鎮守府周辺の気象情報も問題ありません」
提督「分かった。飛んだら餅は餅屋に任せる。俺は客室に居るから、何かあれば呼んでくれ」
機長「はっ!」
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機長に挨拶を済ませた後は、そそくさと客室…貨物室に椅子を固定しただけのものだが…に引っ込んだ。
客室には、既に三人が仲良く座って女子トーク?だかに華を咲かせている。
榛名「あっ提督!榛名、どうせ乗るなら蒼空より白鳳に乗りたかったです」ムー
俺の顔を見るなり、榛名が不満をぶつけてくる。
着任当初のお淑やかなイメージは既にない。
どうしてこうなった…
提督「白鳳は大陸間とか、遠隔地への高速輸送飛行艇だぞ。そもそもこの近辺だと霞ヶ浦に行かないと搭乗出来ない。東京湾を横断するたかだか十数分の移動なら、蒼空で十分だろ…」
榛名「むぅ、蒼空は陸戦隊の強襲揚陸用で、噴進式旅客機みたいに内装が綺麗じゃないです。それに雲の上まで飛ばないですし…」
提督「お前は軍用輸送機を何だと思っているんだ…」ハァ
第一この輸送機に搭乗するのだって、面倒くさい申請書類を何枚も書いた結果なのだ。
(まあ、それは俺の仕事であって、この娘達に言うべきことじゃないが)
そう思いつつ、やや呆れながら榛名のワシワシと撫でてやる。今日は随分悪酔いしてるらしい…
榛名「えへへ、榛名、撫でられちゃいました♪」ニヘラ
顔のデッサンがおかしくなった榛名の頭から、手を放す。
グワシッ!!
…が、提督からみて一番奥に座っている加賀にそのまま手首を掴まれる。
加賀「………」
提督「………」
提督 ナデクリナデクリ
加賀「~♪」ホワワーン
(幸せそうな顔をしおってからに…)
(そういやこいつら二人、護衛だったんだよな…護衛とは一体…)
護衛二人と提督のやり取りを瑞穂はニコニコと眺めている。
(一人だけしない…って訳にもいかないよなぁ。うん、艦娘みな平等)
そのまま、加賀の頭から瑞穂の頭に手をスライドさせる。
提督「あと少しで鎮守府だけど、瑞穂も今日は慣れない事だらけで疲れただろ。お疲れ様」ナデリ
瑞穂「…あっ。瑞穂は大丈夫です。提督にお気を付けて頂けるだけで、瑞穂は幸せでございます」
撫でられている間、瑞穂は目を閉じたままとても、幸せそうに撫でられるがままになっている。
(すっごい艶やかで肌触りの良い髪だなぁ…こう、やっぱり椿油とかも市販品とは別モンなんだろうか。明日酒保物品について、明石に訪ねてみるか)ナデリナデリ
提督「ん、それは良かった。到着前から聞くのもおかしいけど、鎮守府ではやっていけそうかな?加賀も榛名もこんな感じで少しおk…とても素敵な奴らでな!他の艦娘も瑞穂のこと、歓迎してくれると思うz…イタイイタイアシフマナイデクダサイッ!!」
瑞穂「クスッ…はい。榛名さんと加賀さんと話をして、お二人のお話し振りから、提督が艦娘の為にとても尽力してくださっていることが感じられました。あのとき、瑞穂の手を取ってくださった優しい提督のまま…そんな提督の元に推参することが出来たのです。瑞穂にはもう、恐れも迷いもありません」
提督「そっか、じゃあもうあの時みたいにジャングルジムから出れなくなったりブランコの漕ぎ方分からなかったり、シーソーで一人だけ座って動かなくて『どうしましょう…どうしましょう』と言ってた瑞穂は見られない訳かぁ…残念d…って、どうした?」
随分と高い志を吐露してくれたので、普段うちの艦娘にやってる感じでからかってみる。
が、公園で直面した瑞穂との場面を挙げていたら、顔を手で覆ってそっぽ向かれてしまった。
(やりすぎたかな…?)
(…覚えていてくださって…幸せ過ぎて顔が緩んでしまって提督にお顔を向けられません…ど、どうしましょう…///)ドキドキドキ
榛賀 ジトーッ
提督「おーい瑞h ビーッ!!
機長『間もなく、鎮守府水上滑走路に着水します。閣下、シートベルトの着用をお願いします』ガチャ
そうこうしてるうちに鎮守府に着いたようだ。
瑞穂の様子も気になるが、取り敢えず着水に備えて席に座ってシートベルトを付ける。
(取り敢えず、これで今日の業務は終わったし、ゆっくり休めそうだ…)
榛名「あっ、提督!今日のお話を金剛お姉さまに連絡したら、後でお話しがあるそうですよ!」ニコ
提督「」
投下完了、次回は鎮守府到着からです
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--鎮守府 桟橋--
榛名「やっと鎮守府に帰ってきました!」ノビー
加賀「まだ、食堂はやってる時間ね」
瑞穂「ここが提督の鎮守府ですか…」キョロキョロ
提督「ん、取り敢えず加賀と榛名は解散して大丈夫だな。明日はいつも通りで問題n「テイトクゥー!!」」
声のした方を振り返る
そこには鎮守府玄関から桟橋へ向けて全力疾走でこちらに走ってくる人影
高速戦艦 金剛改二!!!!
(…って、なんでアイツ艤装付けて走ってくるんだよ!?)
艦娘は艤装を装着することで、何だか良く分からないが海上機動が可能になったり
数万馬力の出力で、何千トンもある装備を自在に操り
戦闘行動が可能となる!!
その艤装を付けてこちらに陸上で出せる 全 力 で 走ってくる金剛
つまり
(受け止めたら、確実に吹っ飛ぶ!!!)
ここは一時退避しよう
そうしよう
ちょっとタイミング良く避ければ良いだけ…
ガシッ
提督「っ!?加賀ぁっっ!!?」
逃げないように
離さないように
加賀は全力で提督の右腕に抱き着く
加賀「ごめんなさいね…諦めてください//」
提督「っちぃ!!」
やられた!
鎮守府到着と同時に仕組まれた罠
こうなったらせめて瑞穂だけでも離して、巻き添えを受けないようにしないと…
加賀「瑞穂さん!」
瑞穂「は、はいっ!」
(っ!?流石に加賀も空気を読んだか!)
加賀「提督の左腕に抱き着いてください」
(違う、そうじゃないっっ!!!!)
だが、瑞穂なら…きっと正論で止めてくれる筈
瑞穂を振り返る提督
瑞穂「……瑞穂、しっかり…!」
自分自身を勇気付ける瑞穂の姿!
もう、あの頃の瑞穂じゃない!!
そんな印象を受けた提督は感動とちょっぴりの寂しさを感じた
瑞穂「ごめんなさい…提督、はしたない瑞穂を、お許しください!」
決意を秘めた瑞穂の瞳!
その瞳は穢れを知らずとても澄んでいて綺麗だと提督は感じた
ギュム
左手に抱き着く瑞穂
運命の再開なのだ
もう離すものか!
(あ、思ったより大きい…凄い柔らかい)
提督は若干現実を受け入れる事を拒否し始めた!!
しかし、全ての希望が失われた訳ではない!
金剛の進路上に立ち塞がる榛名
艤装を自動展開する
本来、艤装は専用の装着装置用いて装着する
だが状況によって、そんな悠長な時間が残されていないかもしれない
そんなこともあろうかと!
ある一定の練度に達した艦娘は
厳重に格納されている艤装を瞬時に呼び出し、勝手に装着できる
理由は良く分からないオカルトパワーとか物質転送システムとか
ご都合主義的な話という事にしておこう!!
そんな便利な能力ではあったが
普段、余程の事態でなければ勝手に艤装展開をすることは厳禁となっている
陸上に、瞬時に、軍団規模の火力投射能力を持つ戦力が出現する
治安関係者にとっては悪夢以外の何物でもない
そこで海軍上層部は艤装の自動展開に際しては
複雑な書類手続きを行って、初めて許可が下りるような要綱を作った
無論、非常事態にそんな悠長なことをやってる余裕は無い
そこで、詳細な事後報告書類を提出する代わりに
提督は艦娘達の"自己判断"で艤装展開できるように許可を出されている
「書類の事は心配するな。悠長に構えてお前達が沈むくらいなら、最悪俺の首一つで済む方がマシだ!」
と、提督は以前言った
だからこそ艦娘は非常事態とは何か
どのような状況が該当するのかを良く考えて行動するようになった
艦娘からしたら、提督に迷惑を掛けたくないからだ
だがしかし!今!!金剛、榛名は艤装展開を行った!!!
恐らく、彼女達二人にとって、今がその非常事態なのだ!!
(…訳が解らねぇよっ!!?)
提督と金剛の間に榛名が立ち塞がったことで突っ込みを入れる余裕が出来た
やったね!
しかし金剛は止まらない
榛名は両足を開き腰を低くし、両手を…組んで前に突き出す
まるでバレーでトスをするような体勢
いや、組んだ手は手のひらが上に来るようになっていた
二人一組で壁や障害物を乗り越えるときに片方が足場を作って持ち上げるような体勢だ
金剛が勢いを付けたまま
あと数メートルで榛名に衝突する
そんな距離
シュババッ
金剛は艤装展開を止め普段の身一つ…派手なコスプレをした街中の生娘と同じ状態になる
しかし、こちらに向かう勢いは止まらない
金剛「榛名ぁあああああっーーー!!!!!」ダダダッ
榛名「はい!お姉さまっ!!」グッ
更に腰を落とす榛名
金剛は前に突き出された榛名の手の平に飛び乗り
その状態で榛名は腕を全力で振り上げる
榛名「お姉さまをっ!!提督にっ!!!」グオンッ
金剛、そのまま空を舞う!!
榛名から提督までの距離はおよそ30メートル
空中では空気抵抗を最小限にする為
膝を抱えくるくると丸まっている
あと15メートル!
放物線の丁度一番高いところに達した金剛は
提督と正対するタイミングで丸まるのを止める
両手・両足を開き、正面から『大』の字になった形で提督に向かう
(これなら踏ん張れば何とか…いけそうか!?)
艤装さえなければ、普段のスキンシップとそう変わらない
両腕を掴まれ、その場から動けない提督はそう判断し
両足を踏ん張り、金剛を正面から受け止める体勢を取る
提督「来いっ!!金剛っ!!!!」
金剛「バァアニングラァアアアアアブッ!!!!!」
愛を叫びながら提督に向かって落下する金剛
勝算はあった
両腕を固定されているとは言え
両足で踏ん張り、重心を下げる
あとは正面から金剛の体を受け止めるだけだっ!!
しかし…少し、ほんの少しだけ提督は慢心してしまった
瑞穂に抱き着かれた左腕
柔らかい瑞穂の肢体と感触
甘い匂いと必死な表情
見惚れてしまう
金剛「…目を離しちゃ………NOなんだからネ!!!」
叫びながら金剛と提督は接触
提督は身体をやや左に傾けた状態で金剛のハグを受け止めた!!
その結果、本来上半身全体で均等に受ける筈だった金剛の運動エネルギーを体の右側が多めに受けた状態になる
均等なら問題は無かった
しかし、僅かなバランスの変化は
最も体の脆い部分に負荷として影響を与える!!
グキッ
思いっきり首を捻った
提督「っ!!!!?????」
悲鳴は正面から抱き着いた金剛の胸へと吸い込まれ
金剛達が離れるまで提督の苦境を気付く者は居なかった
一旦ここまで
------
-鎮守府 本館2階廊下-
金剛「テートクゥ、首の方は大丈夫デスカ?」
提督「ちょっと首を横に曲げる時に痛むけど、まあ湿布でも貼っておけば大丈夫だろ」
金剛の全力ハグを受けた後、
捻った首を気にしつつ、金剛、瑞穂と一緒に執務室に向かう
尚、榛名と加賀は玄関ホールで別れて食堂に夕食をとりに行った
金剛「うぅ~…テートクに会えるのが嬉しくて力み過ぎてしましました。ゴメンナサイ」
流石に反省したのか、ショボーンとする金剛
提督「会うって言ったって、半日前に提督代理の引継ぎするのに会ったばっかりじゃないか…」
金剛「それでも、半日でも寂しいものは寂しいデース…」ムゥ
提督「そんなもんか…まあ、悪かったよ」
苦笑しながら金剛の頭を撫でると、ぴょこんと跳ねてるあほ毛がグデェと手に絡みついてくる
提督「それで、俺が留守の間は何かあったか?」
金剛「Nothingネ!!通常業務オンリーだったので、提督の承認印が必要な書類以外は全て終わらせておきましタ!」
提督「分かった。助かるよ」
金剛「Yes!あと、艤装の緊急展開に関する事後報告書は私と榛名、念の為加賀の分も含めて作成しておきましタ。後で確認をお願いしますネ」
提督「…はいはい、手回しの良いことで」ハァ
金剛「それと…」チラッ
提督の後ろ、丁度三歩程後ろをしずしずと歩く瑞穂を見やりながら金剛が報告を続ける
金剛「瑞穂さんの艤装と大量の資源、資材と〝員数外″の特注家具職人使用許可証が届いてイマス」
提督「ああ、もう届いたのか…納品書は?」
金剛「テートクの執務机に置いてアリマス!」
提督「りょーかい」
そんな会話を続けていると、執務室に続くドアまで辿り着いた
この鎮守府では、提督執務室の前に提督公室がある
主に来客対応に使う部屋だが、普段は緊急時の即応体制強化と提督の護衛を兼ねた艦娘が数名、消灯時刻まで待機している。
(さて、今日の待機組は誰だったかな…?)
>>+1~3 駆逐艦限定
※埋まらなかったらこちらで適当に書きます
待機組 陽炎、響、時津風
※響=Bepってことでオナシャス
------
時津風「あっ!しれーだ、おっ帰りー」ピョコン
提督「おう、今戻ったぞ」ダキカカエ
陽炎「ね?あたしが言った通り、旦那のお迎えだったでしょ?」ニヤニヤ
響「そうだね。金剛さんが脇目も振らず、執務室から飛び出していったから何事かと思ったよ」クスリ
金剛「Oh、それはスミマセンでした」タハハ
金剛「…でも、私が出て行った時は随分散らかってた筈なのに、今は大分綺麗になってますネー?」ニヤ
陽炎「げっ…しっかりその辺は見てたのね…」ウヘーバレテラー
響「流石は提督代理だね」グッb
金剛「Yes!提督がいない間は、貴女達を含めて、鎮守府と全艦娘を守るのが私の使命ですからネー」グッb
時津風「んしょっ…ねーしれぇー、そんなことよりお土産はー?」ガールルー
提督「いてて…ほら、在り来たりだけど東京バ○ナ買ってきたから、食べていきなさい」アタマニノルンジャナイ
時津風「んふー、良いね良いね~♪」
響「ハラショー」
陽炎「さーんきゅっ!それでえっと…司令、こちらの方が?」
提督「ああ、本日付で本鎮守府に着任した瑞穂だ。皆、しっかり挨拶するように」
陽炎「陽炎型駆逐艦一番艦 陽炎よ。よろしくね、瑞穂さん!」ビシッ
響「特Ⅲ型駆逐艦二番艦 響だよ。よろしくね」ペコリ
時津風「陽炎型駆逐艦十番艦 時津風だよー。よろしくね~」ニパ
瑞穂「本日付で本鎮守府に配属となりました。水上機母艦 瑞穂と申します。どうぞよろしくお願い致します」ビシッ
提督「挨拶も済んだところで済まんが、書類とか引継ぎ作業で少々立込むんで…ちょっと瑞穂はここで待っててくれるか?」
瑞穂「はい。瑞穂、待機命令、承知致しました」ビシッ
提督「お前たち、消灯時間まであと少しの所申し訳ないが、瑞穂にお茶を入れてやってくれないか?出張先からここまで、ずっと移動していたからな」
陽炎「はーい!ねっ、瑞穂さんって司令の小さいときの顔見知りなんでしょ!?どんな感じだったか色々と教えてくれませんか?」
時津風「あっ、それあたしも知りたーい!!」
提督「お前ら…何で知ってるんだよ…」
響「午後のティータイムに金剛さんが、その事をずーっと愚痴ってたからだよ」
提督 ジロッ
金剛 プイッ
瑞穂「はい。瑞穂は構いませんよ?それでは提督、準備が出来ましたら瑞穂の事をお呼びくださいね」
提督「分かった……金剛、引継ぎを始めるぞ」
金剛「Sir, my Admiral!」ビシッ
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-提督執務室-
金剛「こちらが、提督の決済・承認待ちの書類になりマース」ドサッ
提督「ん、助かる。取り敢えず重要度が高いのと締日が近いのは籠に入れておく」オオイナァ
金剛「了解デース」
提督「大和田通信所からは何か入ってないか?」
金剛「ンー…全軍向けの通信で、『欧州連邦の遣米連絡潜水艦が北大西洋で消息不明』っていうのが入ってますが、後はいつもの定時連絡のみデスネ」フーム
提督「あぁ…確か欧州連邦空軍所属の妖精さんが設計した、新型重爆とかの設計図を運んでた奴か。まあ、うちの管轄じゃないから特に心配しなくても大丈夫だ」
金剛「…了解デス」
提督「……何か言いたそうだな?」
金剛「提督、意見具申!」
提督「許可する」
金剛「あの子…瑞穂ですが、統合参謀本部や情報統帥部の間諜の可能性は有りませんカ?」
提督「…心配か?」
金剛「Yes!今回の着任の流れははっきり言って異常デス。横須賀総司令部を超えて、提督への直接の艦娘着任受領命令。ましてや受領場所が赤坂にある、海軍高官・政府要人御用達の料亭なんて、胡散臭すぎてドン引きデス!」机バン
提督「ん…金剛、この部屋の盗聴器は?」
金剛「一昨日明石と青葉が定期調査を行って無い事を確認していマス。公室にも音は漏れまセン」
提督「分かった。金剛、鎮守府会については知っているな?」
金剛「勿論デス。主に前線勤務の将校、海上護衛総隊や各業界人を中心に構成された、皇国防衛と艦娘保護の為の相互扶助組織でしたヨネ?」
提督「そうだ、その中の一人に財界系の人物が居てな…」
金剛「それって瑞穂の…?」
提督「いや、瑞穂の一族とは寧ろ商売敵にあたる位置の人間だ」
提督「一応、今回の命令を受けてからその人物に依頼して探りを入れていたのが…」
金剛「…結果を伺っても?」
提督「どうも、今回の着任に当たって本家から勘当扱いされたらしい…」
金剛「Oh…それは艦娘になるからですか?」
提督「いや、今までに何回も縁談を断り続けてきたらしい。その中身が、各界隈の大物のご子息だったりと一族全体を挙げた話を何度も破断にしたとかで、体面を保つ為に勘当する機会を伺っていた節があるとか」
金剛「それで、今回の艤装適用者に立候補したのを良い事に…って訳ですネ」
提督「まあ、胸糞悪い話だな…」
金剛「それで、提督はあの子をどうするつもりなんデス?」
提督「うちで面倒を見る。可能ならそれなりの手柄を立てさせて、ドヤ顔で実家に乗り込む」ドヤッ
金剛 プックククッ
提督「そんな全力で笑わなくてもいいだろ…」
金剛「だって…一介の将官風情が財閥に喧嘩売るって…出来過ぎたジョークだヨ!」クスクス
提督 ムッスー
金剛「クスッ…Sorry…でも、そうなると提督も責任重大だヨ?あの子の事ちゃんと守ってあげるんだヨ?貴方のことを見るあの子の目、妬ける位純粋で、本当に綺麗でしタ」
提督「……」
金剛「でも大変だったり、辛かったりしたら、私や私達を頼ってくださいネ?提督は素敵な人だけど、色々溜め込み過ぎるのが玉に瑕なんだから」ウィンク
提督「…分かってるよ」
金剛「それと提督、あの子の事、疑ってしまい申し訳ありませんでしタ」ペコリ
提督「気にしてないよ。誰だって、疑問に思う事があれば確認する。金剛が意見したことは、つまり鎮守府と艦隊を守る為に必要な事だった訳だ」
金剛「有り難うゴザイマス!それじゃあ、そろそろ瑞穂を呼んで来ますネ?」
提督「ああ、今日はそのまま上がってしまって構わない」
金剛「分かりました…っと、一つ忘れ物が有りましタ!」手ポンッ
提督「なんだ、まだ何か…?」
そう問いかけようとした提督の前にカツカツと歩み寄る金剛。
そのまま、提督の胸元にスルッと入り込む。
しかし、重心を提督に預けた金剛の身体はそのままでは倒れてしまう。
提督は手に持っていた報告書を躊躇なく離して、彼女の身体を抱き留める。
金剛「んっ…」
抱き留められた金剛は目を瞑り、自分よりも十数センチ高い提督の唇に合わせる為、背伸びをして口付けを行う。
提督「ぷはっ…お前はいつも突然だな…」
一瞬の短い口付け。
それでも金剛は満足気に、提督に抱き着いた時と同じようにスラリと身体を離した。
金剛「秘書官代理を頑張ったご褒美ネ…♪」ウインク
提督「全く…」
呆れ顔の提督も、内心は普段通りの金剛に戻ってくれた事に安堵する。
そのまま金剛は上機嫌に、公室へと続くドアノブに手を掛け一度立ち止まり、笑顔で振り返る金剛。
金剛「それとテートク…」ニヤリ
その顔は悪戯心満載の…歳相応の顔をしていて
金剛「口、お酒臭いから瑞穂とKissする時は、ちゃんと歯を磨いてからじゃないとNo!なんだからネッ?」バチコンッ
心底どうでもいい報告に、提督はズッコケた
投下終了、また書き溜めたら投下します
------
金剛が退室してから、やや間を空けてドアがノックされる。
提督「入ってくれ」
瑞穂「水上機母艦 瑞穂、失礼致します」
提督「待たせてしまって済まない」
瑞穂「いえ、問題ございません。それと提督、僭越ながらお茶のご用意が出来ておりますので、お持ちしてもよろしいでしょうか?」
提督「ああ、気を使わせてしまって済まない…頂くよ」
瑞穂「畏まりました。それでは、失礼致しますね」ススッ
コトッと、提督公室に置いてあった湯呑に淹れたお茶を慣れて手付きで提督の執務机に置く。
提督「…美味いな。料亭から何も飲んでいなかったから、助かるよ」ズズッ
瑞穂「有り難うございます」ニコッ
提督「それで着任に関する処理だが、持参してきた書類は問題無かった。最後の手続きとして、そこにある秘書艦机にある最終確認書類を読んで、署名をして欲しい」
そう言って、提督は自分の執務机から向かって左手側にある秘書艦机を示す。
瑞穂「承知致しました。書類の確認と署名を致します」
秘書艦机備え付けの椅子に腰を下ろした瑞穂は粛々と、書類の内容を確認していく。
『最終確認書類』
それは艦娘候補者となった女性が、それまでの自己を抹消し、
艦娘として人生を歩むか否かを決める最後の分かれ道であった。
この書類に署名をすることで、署名した女性は本名・社会的立場を一時的に凍結し
以後は「所属鎮守府名 艦種 艦名」といった具合に呼ばれる事になる。
この状態は、艦娘が解体・轟沈・行方不明による海軍艦娘名簿から除籍される時まで継続する。
艦娘候補者となった女性は、この書類に署名する権利を有しており
署名を拒否することで機密保持を条件に、艦娘を辞退することも出来る。
書類に記載された注意・確認事項を読み終えたのか、
瑞穂は傍らに置いてあった万年筆を手に取るとサラサラと署名した。
その動作はとても自然で、躊躇する素振りすら提督に感じさせなかった。
瑞穂「提督、書類の確認と署名の記載が終わりました。お手数を御掛けしますが、確認をお願い致します」
秘書艦椅子から立ち上がった瑞穂は、そのまま提督の執務机の前に来ると
署名の終わった書類を提督に提出する。
書類を受け取った提督は、内容を確認する。
提督「内容を確認した。この署名により、水上機母艦 瑞穂の本鎮守府着任の手順は完了とする」
瑞穂「はい!ご確認頂き、ありがとうございます」ペコリ
提督「さて、水上機母艦 瑞穂の本日の艦隊業務は全て終了した…」
そう言って提督は椅子から立ち上がり、瑞穂の前に立つ
提督「これより業務時間外という事で、私的な時間を取らせてしまうことを許して欲しい…どうしても言いたい事があってな」
瑞穂「私的な事…で、ございますか?」キョトン
首を傾げる瑞穂。
それに構うことなく、提督は瑞穂を優しく抱きしめた。
瑞穂「あ、あの…提督…!?///」
提督「瑞穂…待たせてしまって、済まなかった」
提督「幼少の頃の約束で、長い間縛り付けてしまった。辛い思いをさせてしまった…ごめん」
抱きしめたまま、提督は謝罪の言葉を瑞穂に述べる。
謝罪の言葉を聞いた瑞穂は、驚き、そして言葉の意味を理解する。
瑞穂「…あっ……」
その瞳には大粒の涙
(あ、零れた…)
瑞穂「あっ…あなた様、あなた様ぁ…瑞穂は、瑞穂はっ…」
ポロポロと、目元から雫を滴り落としながら瑞穂もギュウッと
提督に強く、優しくしっかりと抱き着くと胸元に顔を埋める。
瑞穂「瑞穂は、ずっとこの日を…お待ちしておりました…良かった…本当に、良かったですっ」
瑞穂「もう、二度とあなた様のお側を離れたくありません」
提督「…血生臭い戦いに巻き込むぞ」
瑞穂「瑞穂はもうあなた様の艦娘です。あなた様のご命令には全て従います」フルフル
提督「…得体の知れない連中とはいえ、数多くの敵を葬ってきた。俺の手は血塗れだぞ?それに、場合によっては人間の赤い血でこの手を染める可能性がある」
瑞穂「人間という名の魑魅魍魎は、あなた様と別れてから何度も見て参りました。あなた様が血で穢れるなら、瑞穂が清めて差し上げれば良いのです」ギュッ
提督「…分かった。意地悪を言って済まなかった。もう…離さないからな」ギュッ
瑞穂「はいっ!瑞穂は…瑞穂は嬉しゅうございます」
そう言って提督を見上げる瑞穂。
涙で溢れたその顔は、それでもとても嬉しそうで幸せそうで
まるであの公園で、再会の約束をした時のようだった。
------
鎮守府二階
提督執務室・提督公室の隣には提督私室がある。
炊事、洗濯、入浴と睡眠が出来るように必要な家具、生活用品が置いてあり
消灯時間後は、提督は主にここで寝泊りをすることになる。
また、提督私室は二階廊下の一番端に位置しており
そこから非常階段を伝って一階に降りることも可能となっている。
あの後、瑞穂が落ち着いてから
瑞穂の私室が用意されている空母・水母寮へと送り届けた提督は
非常階段の踊り場で管を巻いていた。
普段からサボr…休憩や考え事がある度に
ここで一服するのが提督のお決まりの日課になっていた。
(さて、明日からは瑞穂の運用をどうするか…)
(直衛艦隊や第一遊撃艦隊、或いは第二三水雷戦隊で近海掃討任務について貰うか…)フゥー
煙草を咥えたまま、腕を組み考え込む
オーイ!テイトクーッ!!手ブンブン
(いやいや、まずは艦隊内部での演習が先だろ…いきなり実戦は不味い)フーム
ムー…キコエテナイナー
(取り敢えず、明日は鎮守府を案内するついでに艤装を装着してもらおう。適用係数がどんなものか調べたいし)
コソコソ
(適用係数によって、他の新入りと一緒に艦隊演習…といった感じが落としどころかな)
???「誰だーーっ!?」メカクシ
提督「うぉおおっ!!?って、あっつ!!!」ビクッ…ジュッ
???「ああっ!ごめん!大丈夫!?」アセアセ
提督「…灰が落ちただけだ」アツツ
提督「それよりだな、いきなり抱き着くのは止めろって言っただろ、特設秘書艦?」
???「だって、提督のこと呼んだし、手も振ったけど全然反応しなかったもん!どうせ、考え事でもしてたんでしょ?」
提督「…おっしゃる通りです」ハイ
???「もー、提督の悪い癖だよ?考え事に集中し過ぎて周りが見えなくなっちゃうの」
???「それに、考え事ばっかりしてると肩凝っちゃうよ?」ジトー
提督「分かった分かった、気を付けるよ…それと、特に今日は考え事が多くてな」
提督「肩揉みをお願いできないか…鬼怒?」
鬼怒「おっけー!鬼怒に任せてっ♪」ニパッ
投下終了
やっと導入の一日目が終わった…
早く色んな艦娘との吸った揉んだのイチャイチャが書きたいでち
×→吸った揉んだ
○→すったもんだ
IME君はスケベだなぁ
次の安価まで一旦投下します
------
朝、提督私室の窓側、四畳半の寝室で提督は目覚める。
寝室に置いてある本棚から、今後の艦隊運用に関する参考資料を探して
読み込んでいるうちに寝入ってしまったようだ。
(その割には、掛布団をしっかり掛けて寝てるのは我ながら珍しいな…)
ポリポリと頭をかきながら、寝惚けた頭で考えながら
寝室と台所を仕切る襖をガラッと開ける。
瑞穂「…あ、あなた様。おはようございます」ニコッ
和装にエプロンを付けた瑞穂がくるりと振り返り
朝の挨拶と共に振り返る
その仕草に見惚れながら、提督は疑問に思ったことを訪ねる
提督「おはよう瑞穂。俺の部屋の鍵、もしかして掛け忘れてた…?」
瑞穂「いいえ、閉まっておりました」
提督「って事は、誰かに開けてもらったってこと?」
瑞穂「はい。こちらに来る途中に、巡洋艦の艦娘の方にお会いして、あなた様のお部屋の場所を伺いました」
瑞穂「そうしたら、とても丁寧にお部屋まで案内して頂き、鍵のほうも開けて頂きました」
提督「……あー、どんな奴だった?」
鍵を開けたと考えられる艦娘を数人程思い浮かべながら
提督は質問を続ける
瑞穂「はい、髪を後ろで結んでいらっしゃる方でした。後は、その方も足が遅いのを気にしているらしくて、艤装での移動について色々とアドバイスを頂きました」エーット
(…あっ)
取り敢えず犯人を察した提督は、
朝食後直ぐに呼び出すことにした。
そんな提督の様子を不安げに覗き込む瑞穂
瑞穂「あの、ご迷惑…だったでしょうか?」シュン
提督「…いや、びっくりしただけだよ。掛布団も瑞穂が掛けてくれたんだろ?ありがとう」ナデリ
瑞穂「あっ…とんでもございません。瑞穂に出来る事をしただけです///」ナデラレ
朝の落ち着いた雰囲気の中、更に提督と瑞穂の周りの時間はゆっくりと
とても穏やかに流れていた。
最も、それも僅かな間だけだったが…
コンコンッガチャッバターン!!
金剛「Good Morning テートクー!!金剛がっ!起しにっ!!来たヨーーッ!!!」
比叡「司令、比叡も!比叡も一緒に来ましたっ!!」ピョンピョン
提督私室の廊下側のドア、玄関口を勢いよく開けて金剛が挨拶しながら金剛が入ってくる
その後ろでは比叡がワタワタと存在をアピールする。
提督「……おはよう金剛、比叡。もうちょっとドアを大切に扱っt
金剛「オウッ、瑞穂もここに居ましたカー!Good Morning!!部屋に呼びに行ったけど居なかったから心配したヨー!?」
…話を聞いておくれよ」
瑞穂「おはようございます、金剛さん。ご心配をお掛けして申し訳ございません」ペコリ
金剛「問題Nothing!!偶々瑞穂の居る寮の前を通りかかっただけだから、全然気にしないでくだサーイ!」
金剛は靴をサッと玄関に置くと、タタッと瑞穂に駆け寄り瑞穂の両手を取って「ダイジョウブダイジョウブ」とハンドシェイクする
比叡「金剛お姉さま、今日は一段と上機嫌なんですよねー♪」ニヘヘ
提督「昨日鎮守府に帰ってきてからあんな感じだったぞ」
金剛がそのまま瑞穂に話しかけ、瑞穂もしどろもどろしながら受け答えてしている
昨日より、大分打ち解けた様子の二人を見やりながら
比叡と取り留めのない会話をする
比叡「えぇ~、司令はどこに目が付いてるんですかっ!?」プンプン
比叡はそう言うと提督の耳元で、昨日見ていた金剛の様子を伝える
比叡「昨日、お姉さまのお手伝い…あ、勿論居眠りしたりとか、ずっとお姉さまを見てて結局手伝えなかったとか、してないですからね!本当ですよ!?」ポソポソ
比叡「それで、暫くしたら榛名から連絡が来て、それからお姉さまちょっと上の空で…とにかく昨日司令が帰られるまでは、いつものお姉さまじゃなかったんですよ!」ボソボソ
取り敢えず、比叡が居眠りやまともに仕事をしていなかったのは置いておいて
金剛の様子をとても細かく見ている事に関心しつつ
金剛の様子がおかしかったのが自分の所為だと思う申し訳なさを隠すため、比叡の頭をワシャワシャと撫でる
提督「…そうだな。比叡は一番、金剛の事を良く見ているな」
比叡「えへへ、司令もそう思います?伊達に比叡は、金剛お姉さまの妹分を名乗っていませんからねー」ニヘラ
撫でられた比叡は、コロコロと表情を崩す
提督「あとは、比叡も金剛みたいに瑞穂にきちんと挨拶出来れば完璧なんだがなー」
比叡「はっ!?忘れてましたっ!司令、ありがとうございます!!」ダッ
そう言って比叡は金剛と瑞穂の間に突っ込んでいく
(本当に騒がしい朝だな……まあ、悪くないが)
苦笑すると提督は、
自己紹介の仲介をしに三人の輪の中へと入っていく。
------
-提督執務室-
朝食の時間が終わり、一日の業務が開始されようとしている。
艦娘達は三々五々、各自の業務を行うため移動を始める。
金剛、比叡と瑞穂を一旦部屋に戻らせた提督が
夕張を放送で呼び出したのは、そのような時間帯であった。
出頭した兵装実験軽巡洋艦 夕張は、スペアキーの件について
夕張「良いじゃないですか、もう許嫁というか内縁の妻みたいなものですし」
と、さも当然のように回答した
提督「いや、それを判断するのはお前じゃないだろう…」
至極疲れた表情をする提督
夕張「クスッ…それで、私を呼んだ本当の理由を聞かせてもらっても?」
クスリと笑うと、夕張は先ほどの問答時より幾分か表情を引き締めて提督に質問する
この辺のやり取りは、この二年半に鎮守府内で何回も繰り返してきているので夕張も慣れっこだ
大抵面倒臭い…それでいて、どこかしらで役に立つ依頼を受けるのが常なのも承知している
提督「ここに記載のある各航空機が、仮に深海棲艦に取り込まれて鬼か姫級になったとする。その場合の、作戦行動半径と弾薬搭載量を概算で良いから計算して欲しい」
そう言って、夕張同様顔を引き締めた提督は、幾つかの航空機の名称・型番が記載された紙を夕張に手渡す
紙を受け取った夕張は、それを見て
夕張「……えらく物騒、というかゲテモノばっかり書かれていますけど、これどこ出の情報なんですか?」
提督「…昨日、遣米連絡潜水艦が北大西洋で消息を絶ったと連絡が入った」
夕張「その潜水艦の積荷がこれですか?」
提督「積荷が変わってなければな。実機ではなく設計図なのが幸いだが…」
夕張「でも、昨日の話では積荷の情報まで出てませんでしたよ…」ジトー
提督「あれだ、積荷が決まった段階で海上護衛総隊 英国支隊にいる同期から連絡を貰った」
夕張「"俺と貴様の仲"ってやつですか」
提督「…そんなところだ」
夕張「…分かりました。あくまで概算ですけど、算出が終わったらご報告に伺います」
提督「助かる」
夕張「それと、場合によっては瑞鳳ちゃんに声掛けても良いですか?あの娘の方が航空整備関係は、色々詳しいので」
提督「ああ、それは構わない。ただ、その時は一応俺に連絡を入れてくれ」
夕張「了解です。あと、新入りの艤装整備と通常業務との平行作業になるので、報告までに一週間程度掛かりますよ?」
提督「それで良い、早過ぎるくらいだよ」
夕張「それでは、退室します」ペコッ
提督「うん」コクッ
夕張が退出したドアを眺めながら
(さて、そろそろ瑞穂と今日の待機組が来る時間か…)
ボケーッと、そんな事を考えていた。
投下完了
今日の待機組
>>+1~3
※大和・ビスマルク・大鳳・瑞穂以外でお願いします
※埋まらなかったらこちらで適当に書きます
------
コンコン
提督「入れ」
陽炎「司令、待機交代の時間よ。確認をお願い!」
提督「分かった。今行くよ」
提督公室に入ると、本日の待機任務を担当する重巡洋艦 摩耶、軽巡洋艦 天龍、駆逐艦 電の姿があった。
その体面に昨日の待機組である駆逐艦 響、駆逐艦 時津風が並んでいる。
陽炎「駆逐艦 陽炎、響、時津風 以上の三隻による公室待機任務。滞りなく終了致しました!これより、引継ぎを行います」
摩耶「重巡洋艦 摩耶、軽巡洋艦 天龍、駆逐艦 電。以上の三隻が公室待機任務を引継ぐ」
提督から向かって一番手前、摩耶の正面に位置した陽炎が待機任務交代を告げる。
そして、手に持っていたチェック表を摩耶に手渡す。
摩耶「提督、引継ぎ任務、異常無く完了したぜ!サイン頼む」
答礼した摩耶は、提督にチェック表を渡す。
提督はチェック表を確認し、必要項目が記入されていることを確認すると署名する。
提督「異常が無いことを確認した。陽炎、待機任務引継ぎご苦労。摩耶、本日の待機任務をよろしくお願いする」
陽炎「はっ!」
摩耶「おうっ、任せとけ!」
署名したチェック表を摩耶に渡しながら、提督は引継ぎ確認が完了したことを伝える。
すると、さっきまで肩を張っていた陽炎が、とたんに提督にご褒美を強請る。
陽炎「それじゃ司令、いつものご褒美お願いしまーす!」
提督「はいはい、それじゃ……これで甘いものでも食べておいで」
そういって、ポケットから甘味処 間宮の一品無料券を3人分手渡す。
陽炎「やたっ♪さーんきゅっ、司令!それじゃ響、時津風、早速間宮まで行きましょ!」
響「そうだね、今日は最中が食べたいや。それじゃあね司令官、ダスビダーニャ」フリフリ
時津風「あたしは白玉かなぁー、楽しみ~」ニコニコ
陽炎「ということで司令、陽炎、休憩入りまーすっ!」
提督「おう、走って転ぶなよ」ハイハイ
摩耶「それで提督、今日はどっか行く予定はあんのか?」
ドタバタと提督公室を出ていく三人を見送りながら、摩耶が提督に話掛ける
提督「今日か…今日は、午前は瑞穂の艤装適用と鎮守府案内で執務室を空けるだけで、午後は通常業務予定だよ」
摩耶「…そっか、なら午前はアタシ達も昨日のあいつ等みたいに留守番だよな…うん」
何やらブツブツと呟く摩耶。
先ほど無料券を渡すとき、視線が無料券に釘付けだったのを思い出しつつ提督は摩耶をからかう。
提督「無料券なら安心しろ。明日の引継ぎでちゃんと渡す予定だよ」
天摩「「ほんとかっ!?」」
今度は摩耶だけでなく天龍も反応する
素直なことは良いことだ…うん
摩耶「…って、別にそれが目的で待機任務してる訳じゃねーし…」
まだ何かあるのか、チラチラとこっちを見ながら呟く摩耶
提督「はいはい。無料券目当てじゃないのは分かってるよ」
摩耶「…んだよ。含みのある言い方しやがって」
提督「別に他意は無いよ」
そう言って摩耶の頭を撫でる
摩耶「他意がねーなら良いけど、この手は何なんだよ…」ジトッ
提督「いや、先日の第二次SN作戦では大活躍だった重巡摩耶への報償だよ、報償!」
摩耶「……報償か、報償なら仕方ねーな…//」
そう言うと摩耶は、被っていた帽子を取るとやや前屈みになり頭をこちらに向ける
提督「…?」
摩耶「っ!!だからっ…報償なら、しっかり受け取るのが筋ってもんだろ…///」プイッ
顔を赤く染めながら報償を受け取る摩耶
口は相変わらずだが、着任当初に比べれば大分性格は丸まったなぁ
トントン
不意に肩を叩かれる
振り返ると天龍がこう、目を輝かせながら自分の番を待っていた
いつも思うんだが、頭のあれは動物の耳か尻尾的なものなのだろうか…?
ピコピコピコピコと凄い揺れている
提督「そうだな、天龍も遠征という、艦隊の運営に欠かせない役割をしっかり担ってくれたな。これは地味ながら天龍にしか任せられない大事な仕事だからな、天龍にも感謝している」
そう言って今度は天龍の頭を撫でる
天龍「へへん、ったりめーだろ?天龍様のお蔭で、提督もしつぎょーしないで済んでんだからよ!」ドヤッ
提督「ああ、偉いぞ!」ワシワシ
天龍「ニシシッ♪」
摩耶「おい、手が止まってんぞ…」
提督「はいはい」ナデナデ
左手で摩耶、右手で天龍の頭を撫でる
何だこの状況…
電「摩耶さんに天ちゃんさんも、羨ましいのです」
ボソッと呟く電
摩耶「あんっ?何だ、最先任様も報償が欲しいのかよー?」コノコノー
電「ひゃわわわわっ!?まやひゃんやめるのひぇふ」ホッペノビー
電の発言に摩耶はニヤニヤしながら、電の頬っぺたを引っ張る
というか、いつまで撫で続けるんだよこれ
(摩耶が電に合わせて屈んだから、こう…体のバランスが…)
電「ひろいのれす!」フリホドキ
摩耶「あっこいつっ!?」ガーッ
電「天ちゃんさん助けてなのですっ!」
そういって摩耶の脇をすり抜けて天龍の方へ逃げる
天龍「いや、今のは電が自分で言ったんだろ?俺は関係ねーぞ」ヤレヤレ
天龍の方へ向かう途中、提督の後ろを通り抜けようとして
電「はにゃっ!!?」
中途半端な体勢を取っていた提督の腰にぶつかり
提督「ぐえっ」
提督はそのままバランスを崩して目の前の応接用ソファに突っ込む
同じくバランスを崩した電が後ろから抱き着くながら
摩耶「何やってんだ提督…」
天龍「書類仕事ばっかやってるから、足腰がよえーんだよ…」
呆れる摩耶と天龍
いやいや、俺が悪いのかこれは?
提督「と、取り敢えず電は降りてくれ…」マタクビガ
電「あの…倒れた拍子に腰が抜けちゃって…動けないのです」シガミツキ
提督「……本当の理由は?」
電「………最近あまり司令官さんに構って貰えなかったので、拗ねているだけなのです…//」ギュッ
提督「いや、これは忙しくてだな…」
天龍「そうだな、提督が悪い!」ウンウン
摩耶「ああ、弁解の余地無し…だな!」ウンウン
電「~♪」
提督「仲良いなお前達…」
天摩「「んなことねーよっ!!」」
提督「…あっそう」
「あっ…あのぅ」
ドアを開けっ放しだったのをすっかり失念していた。
ドアの端から顔を覗かせた瑞穂が、どのように声を掛けていいのか分からずオロオロしている
そりゃあ、呼び出した提督がソファに女の子を乗せたまま突っ伏しているのだ
訳が分からないだろう
提督「いや、何と言うか…呼び出したのに色々と済まなかった」
瑞穂「いえ、瑞穂は大丈夫です。その、提督はどこか怪我をなさったりしていませんか?」
提督「大丈夫だよ、昔から身体だけは頑丈だったし…ほら、滑り台の階段から転げ落ちてもタンコブで済んでただろ?」
瑞穂「クスッ…そうでしたね。提督はいつも瑞穂を導いてくださっていましたね」
提督「そうだったか?」
瑞穂「はい。そうです♪」
瑞穂「それで、摩耶さん…?とは何かあったのでしょうか?」
提督「……良く見ているな」
瑞穂「空いてしまった時間を早く埋めたくて…お嫌だったでしょうか…?」シュン
提督「いや、重要な事さえ聞き逃さないでいてくれれば、別に構わないよ」
瑞穂「…良かったです」ニコッ
瑞穂が自己紹介をした際、摩耶が何とも言えない表情で提督に視線を送り
それを受けた提督が目礼したのを目聡く見ていたらしい。
提督「摩耶との事も、これから艤装適用することで理由が解るはずだ」
提督「…そうだな、工廠まで少し歩くから復習ついでに、艦娘が前線に立つまでの流れを説明しておこう」
工廠へ向かう共用舗装路を提督と瑞穂は歩いていく。
道すがら、何人か艦娘達とすれ違う。
提督「今のは、三提のところの艦娘達だ。腕章に『横三』と書いてあっただろう」
瑞穂が頷くのを見て、提督は説明を続ける
提督「艦娘が対深海棲艦の戦力として有力なのは事実として、敵との物量差があるのもまた事実だと認識した統合参謀本部は、複数の提督を鎮守府や各基地・泊地等に配備するに至った…」
そう言って提督は、艦娘が対深海棲艦との戦いを実施するに至る経緯を説明し始めた。
我々の生まれ育ったこの皇国は、前世紀初頭の対露戦役でバルチック艦隊を打ち破ったものの、奉天で行われた大会戦で壊滅的敗北を喫した。この結果、大陸での権益を事実上失った皇国は、新たな国家戦略を打ち出す必要性に駆られた。
折から、対露戦争で外国から借入していた資金の返済を行うため、各種貿易産業の発展を目標に、重化学工業の増進による国民所得の増加と農業改善による人口増加を図った。その間に、二度に渡る欧州大戦への連合国側での参戦を経験したが、皇国本土が大規模な戦災に見舞われる事無く目標を達成することが出来た。
そして、時代が進むにつれて、食糧事情の好転と医療技術の進歩、所得増加による各種サービス業の発展が成された。しかし、その弊害として、他の列強諸国同様に平均寿命の高齢化と少子化問題が次第に頭角を現す。これに対し皇国に住む人々は、将来的には無視出来ない問題となるそれを先送りにしようと、半ば目を瞑った状態で国家運営を続けていた。
深海棲艦が現れたのは、そのような時であった。
未知の、規模の分からない全人類の敵が突如出現して世界の海をズタズタに引き裂いたのだ。
人類も果敢に反撃を行い、その中には皇国海軍も含まれていた。
しかし、彼らの武装では、敵を撃退することは出来ても沈める事は出来なかった。
悪戯に損害だけが増えていく中で、ある研究家が発表した論文が皇国の識者達を戦慄させる。
相手に満足な損害を与えられず、このまま延々と消耗戦を続けて人的資源の出血を強いられた場合、ごく近い将来皇国から壮健な労働人口が激減し、物的資源の不足よりも先に人的資源の枯渇により国家が傾くだろうと。
かなり主観的な意見が入っていたかもしれないが、その論文が各界隈、特に軍関係者に与えた衝撃は劇的で殆ど恐慌状態に近かった。既に度重なる深海棲艦との戦闘で、軍の人員補充・物資補給系統が全身麻痺に近い状態に陥っていたからだ。
そして、皇国の屋台骨がへし折られかけたその時に、"妖精"と呼ばれる存在が認知される。
彼らは、どこからともなく出現し、片言ながら人語を介し、深海棲艦を共通の敵としていた。
彼らは対深海棲艦用の装備である"艤装"を作成し、この艤装を操作するには妙齢の女性の協力が不可欠であると述べた。
政府は直ちに皇国全土を捜索して、艤装を操作できる女性を探し求めた。そして選ばれた未成年の、まだ子供とも呼べる女の子が艤装を装着し「試製一號艦娘(後の特Ⅰ型駆逐艦 吹雪)」として、実戦に参加した。
効果は絶大だった。どれだけ弾を撃ち込んでも撃退するだけで精一杯だった深海棲艦を撃破、魚雷攻撃により轟沈せしめる事に成功したのだ。軍は狂喜した。
軍は妖精と協力し、対深海棲艦用の各種装備開発、艦娘用の艤装の建造を推進と艦娘候補者の募集を実施した。また、妖精は世界中で認知され始め、各国で独自の艤装・装備の開発も進められた。
その後、艦娘の戦力が整ってきたことで海軍は対深海棲艦との戦闘を艦娘と、艦娘を指揮する『提督』に一任し、その他全ての余剰戦力を海上護衛総隊に委譲させる。こうして、艦娘によって深海棲艦を撃滅して海上輸送路を確保し、その輸送路を海上護衛総隊旗下の護送船団が物資を輸送することで皇国を生き長らえさせるシステムが完成するに至った。
このシステムを運用するに当たって、問題点もあった。その一つが『一人の提督の元に同名の艦娘は一人しか建造出来ない』という不文律であった。これは、妖精の不可思議な力を以てしても解決不可能と妖精自らが語ったことである。
その為、艦娘を運用する際、その数的不利を少しでも減らす必要があると考えた海軍軍令部は、各拠点に数人の提督と指揮下の艦娘を配属することで一度の海戦でそれなりの戦力を投入出来るように尽力した。
結果的に、横須賀鎮守府では7名の提督(少将)、1名の鎮守府長官(中将)がおり、提督の元に戦闘・遠征任務を主体とする艦娘が配属され、長官の元には通信・開発・工廠・事務・補給等を担当する艦娘が配属されている。
尚、この話の主人公である提督は横須賀第七提督であり、序列で言えば最後任である。
提督「各艦種毎の寮や、食堂・休憩室や出撃・入渠ドックは各提督単位で設備が用意されている。反対に、建造ドックや開発工廠は長官直属の設備として一纏めにされている」
提督「だから、建造や開発を行うときはここまで来て、うちだったらそこの…七と書かれたドアに入る。その先がうちに割り当てられた建造ドックと開発工廠に繋がっている」
そういって、提督は巨大な建物の一番端、七と書かれたシャッターの隣に設けられたドアを指差した。
瑞穂「…開発工廠、建造ドックの場所について承知致しました。あの、後ろの大きな建物も工廠でしょうか?」
手に持ったメモ帳に丁寧な字でメモを取っていた瑞穂は、工廠の背後にそびえる一対のコンクリート製の塊を示す。
提督「あれは高角砲塔と言ってな、高角砲を設置したG塔と対空電探を設置したL塔で運用される防空設備だ」
瑞穂「成程…とても、大きいのですね」メモメモ
提督「緊急避難所を兼ねた鎮守府防空の最後の要だからな。まあ、あれの力を示す必要が無いように警戒・索敵は常に実施しているから使われる事は無いと思うが…」
提督「さて、それじゃあ工廠でさっさと艤装適用を済ませようか。それが終わったら、残りの施設を見学して食堂へ昼飯を食べに行こう」
瑞穂「畏まりました」ペコッ
瑞穂は了解の旨を伝えると、提督の開けてくれたドアを潜り工廠へと入っていった。
投下終了
次は瑞穂の艤装装着からですが
その後食堂で提督、瑞穂と一緒に昼食を食べる艦娘を安価で募集します
>>+1・2
※大和、大鳳、ビスマルク、瑞穂以外の艦娘
※埋まらなかったらこちらで適当に書きます
次回安価分まで書けたので投下します
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【横須賀第七鎮守府 工廠】
装備の改修設備が用意された工廠内を、提督と瑞穂は工廠管理室まで進んだ。
管理室のドアをノックすると中から応答する声があり、ドアが開けられる。
夕張「あ、そろそろ来る頃だと思ってました」
ドアを開けた夕張は、二人を室内に案内する。
夕張「その辺に座っててください。今、明石さんも来ると思いますから」
二人に壁に立てかけられたパイプ椅子を示すと、
夕張は部屋の真ん中にある大きな作業台の上にある、艤装の…今朝修理依頼のあった…チェックを始める。
明石「提督、お待たせしました!」
ややあって、明石が部屋に入ってくる。
提督「あれ、今日は水着じゃないのか?」
明石「もう秋ですし流石にこの時期は工廠内も涼しいですからね…テイトクモナニモイワナイシ」
提督「ん…最後何て言ったんだ?」
夕張「ああ、それは提t「さあ、瑞穂さんですね!!?ささっと艤装適用しちゃいましょう!!」」
何か言いかけた夕張に、瑞穂に準備を促す明石。
明石の聞こえなかった部分も気になるが、今日は瑞穂の艤装適用が主目的な為、明石の言葉に従う。
提督「じゃあ明石に夕張、俺はここで待ってるから後は頼む」
明石「わっかりました!工作艦 明石、参ります!!」
夕張「…いい加減そのテンション直しなさいよ。それじゃあ瑞穂さん…?こっちに来て」
瑞穂「はっ、はい。では提督、行って参りますね」ペコリ
ガヤガヤと三人が管理室から出て、工廠の奥の方に向かう。
艤装適用は、妖精の手によって作成された艤装専用の服に着替えて行う。
年頃の女の子の多い鎮守府だけに、その辺は非常にデリケートなので基本夕張と明石に任せている。
専用の洋服に着替えた候補者は、クレーンで吊り下げられた艤装を装着する。
この時装着者の脳内、普段は使われていない領域に艦としての生涯、艤装を装着した状態での海上機動・武装の使用方法等が『追記』される。
その為、最初の艤装適用時には頭痛や吐き気等の症状が現れるが、一時的なものであり、以後艤装を装着する際には再現しない事から現在は問題視されていない。
また、最初に艤装を装着する事で計測されるのが艤装との『適用係数』である。これは艤装との精神的な結合力を示す数字であり、従来は1~99の数字が割り振られていた。この数値が高い艦娘は艤装を身体の一部の用に使いこなす事が出来る。
これは、意識せず艤装を使用することで戦闘時の素早い回避行動や射撃精度の向上に繋がっている。殆どの艦娘は適用係数が1である為、訓練や実戦、鎮守府での生活を経て上昇させていく。稀に数値が高い候補者も居るのだが、それはあくまで例外として軍では考えられている。
提督(うちで一番高かったのは、金剛の25だったか…瑞穂は幾つだろうか)
パイプ椅子に座りながら考える提督。
すると、またドタバタと外が騒がしくなり、バタンとドアが勢い良く開けられる。
入ってくる明石と夕張と瑞穂、瑞穂はそのまま提督に駆け寄ると提督に飛びつく。
瑞穂「提督、瑞穂…瑞穂、やりましたっ!!」
ペカーと後光が差しそうな眩しさで瑞穂が伝えるが、何の事か…恐らく適用係数が高かったんだろうが…分からなかった為、明石と夕張に説明を求める。
提督「明石、夕張、説明」ダキカカエ
明張「「62!!!」」
提督「何が?」
明張「「適用係数っ!!!」」
提督「ああ、適用係数………62ィッ!!!!?」
一番驚いたのは提督であった。
あと、加賀はその時くしゃみをした……らしい。
【食堂】
提督「ここが食堂になる。寮では、共用キッチンで自炊も出来るが殆どの艦娘はここを使ってる」
瑞穂「…提督も普段は食堂を使っていらっしゃるのですか?」
提督「ああ、忙しかったり偶に弁当を作ってくる娘がいるから、その時は執務室で食べるけど大体ここで食べてるよ」
弁当という言葉にピクリと瑞穂が反応する。
見渡すと、席は百席程だろうか。
既にピーク時間が過ぎてしまった為、席はどこも開いている状態である。
カウンターには「定食」「麺類」「カレー」「小鉢」と書かれたプレートが天井からぶら下がっており、食べたいメニューの所に並ぶ仕組みだ。
提督「お盆を取ったら瑞穂も好きなメニューに並ぶと良い。俺は今日は……今日もカレーだな…」
瑞穂「では、瑞穂はBの和定食に並びますね」
提督「おう。じゃあ、受け取ったら端で待ってるから、小鉢とか色々見てみると良い。どれも一品だぞ」
そう言うと提督はカレーのプレートが下がったカウンターの前に立つ。
龍鳳「あ、提督!またカレーですか?」
カウンター内で、皿を洗っていた龍鳳が振り返る。
普段は、調理を担当していて配膳は当番の艦娘が行うのだが、忙しい時間が過ぎて裏で片付けでもしているのか、見当たらない。
提督「基本はカレーだ。早い、上手い、コスパが良いと三拍子揃っているからな!」
龍鳳「もうっ!野菜の小鉢、付けておきますからバランス良くちゃんと食べてくださいね?」
提督「あっはい」
龍鳳「それで、あちらの方が瑞穂さん…ですか?」
提督「ああ、昨日無事着任して、今工廠で艤装適用をしてきたところだ」
龍鳳「成程…それで、適用係数はどれくらいだったんですか?」
提督「…62だ」
龍鳳「62!?」
目をパチクリさせる龍鳳
提督「俺も驚いた。他のところは知らないがうちでは断トツの値だな」
龍鳳「…金剛さんの時で、確か25でしたよね?」
提督「確かそうだった筈」
龍鳳「むむむ…私も負けていられませんっ!」
提督「何に…?だって龍鳳はもう80超えているだろ?」
何やら気合いを入れ始める龍鳳。
瑞穂より大分高いのに、どうしてか分からないので質問する。
龍鳳「もうっ!…気付かない提督は知れません」プイッ
ツーンとそっぽを向かれてしまう。
龍鳳「あっ!そうだ…」
今度はテテテッと離れると、牛乳を持ってくる。
龍鳳「はい。これもオマケです!しっかり飲んでください」
提督「いや、カレーだから水が良いんだけど…?」
龍鳳「ダ・メ・で・す!ちゃんと栄養取ってください」
提督「はい」
取り敢えず、そのまま箸とスプーン、手拭きを取ってカウンターの端で待つ。
瑞穂の方も、鳳翔が担当しているようだ、こっちをチラチラ見ながら何やら話込んでいる。
提督(何だろうこの……色々と握られてしまった感は…)
「提督、おはようございます!」
龍鳳も合流して、何やらきな臭い感じが和定食カウンターからしてきた頃、
提督に話掛ける艦娘が一人。
提督「おはよう五月雨、遠征は終わったのかい?」
五月雨「はい!今日は大成功で、資源も多めに持って帰れました」
ニパーッと笑顔を向ける五月雨。
五月雨「提督もご飯ですか?」
提督「ああ、瑞穂の…昨日着任した水上機母艦の案内ついでに…な」
五月雨「わあ、ご苦労様です。あの、ご一緒しても良いですか?」
五月雨は洋定食らしい。
駆逐艦向けの小ぶりのハンバーグが皿に盛りつけられている。
提督「ああ、構わないぞ」
その後、和定食を持ってきた瑞穂と三人で四人掛けのテーブルに座る。
因みに席順は提督と瑞穂、体面に五月雨といった具合だ。
頂きますと自己紹介が終わり、五月雨の遠征の話を聞きながらカレーを食べる。
提督「そういえば、今日は涼風は一緒じゃないのか?」
五月雨「はい。涼風ちゃんは今日は遠征班じゃないので、海風ちゃんと江風ちゃんと一緒に朝から街に行ってます」
ゴクンとハンバーグの皿に盛りつけてあったポテトフライを飲み込むと、五月雨が姉妹艦の報告をしてくれる。
提督「そっか、何だかんだ暫く歩けば色々店は揃っているからなぁ」
五月雨「はい!鎮守府の近くだからか、女の子向けのお店が多いんで楽しいです!」ニパッ
瑞穂「そうなのですか?それはとても楽しみです」
提督「今度、休みになったら色々と案内してみようか」
瑞穂「本当ですか?瑞穂、嬉しいです」パァッ
五月雨「あー!良いなぁー」プクー
提督「はは、五月雨も休日が重なればな…」
五月雨「もう、約束ですよ提督?」
秋月「あの、席をご一緒しても宜しいでしょうか?」
提督「ああ、構わないぞ」
五月雨「うん。こっち空いてるよ秋月ちゃん!」
トントンと隣の空いてる席を叩く五月雨。
秋月は「失礼します」と声を掛けて、五月雨の隣に腰を下ろす。
そのまま、瑞穂と秋月の自己紹介が終わり
4人の中で一番早く食事を終えた提督が秋月に話題を振る。
提督「秋月、第二次SN作戦以降、ゆっくり話をするのは久々だな」
秋月「はい。作戦終了後は、司令は報告書の作成や照月を始め、着任した艦娘の対応で忙しそうでしたし」
提督「まあ、何時ものお約束だったからな。ただ、秋月の例があったから、今回は長十サンチ砲の分の書類はちゃんと作成出来たよ」
秋月「本当ですか!?良かったです…」タハハ
艦娘の中には、艤装適用時に「連装砲ちゃん」「長十サンチ砲ちゃん」等のマスコットが出現する場合がある。
勿論それも、艦娘の装備品として管理しなければいけない訳で、
その都度追加の書類を書く必要があった。
先日の第二次SN作戦で入手した艤装を元に着任した防空駆逐艦 照月も、姉の秋月同様このマスコットが出現した。
幸い、細部が異なる以外は秋月の艤装適用時に出現したものと同じ状態だったため、
秋月の着任時に作成した書類を流用することが出来た。
秋月「あ、そういえば司令。以前私が待機組だった時の事なんですが…」
提督「ああ、あの時のことか?」
モキュモキュと、おいしそうに和定食のアジの開きを食べると秋月が尋ねてきた。
秋月「あのとき、比叡さんが訪ねてきて、大騒ぎだったみたいなんですが、結局何があったんですか?」
提督「……あれか、あれねぇ……」
五月雨「何の話ですか?私、その話知らないです」
提督「ああ…と、五月雨はその日確か遠征か何かで、居なかった日だな」
ちらりと瑞穂を見やると、丁度食べ終えた瑞穂と目が合う。
あれは「瑞穂を聞きたいです!」と言外に主張している目だと思った提督は何とも言えない表情で話を続ける。
提督「あの日、第二次SN作戦の攻略編成と使用装備の案を纏めていてな…」
提督の話はこうだった。
作戦準備に明け暮れて、元々不摂生気味だった生活が更に酷くなりその日は体調が優れなかった。
それをどこで聞きつけたか、比叡が気を利かせて提督の好きなカレーを差し入れに持ってきた。
それだけならとても嬉しいことで、提督はワシャワシャと比叡の頭を撫でくり回して終わった筈だ。
しかし、そのカレーを煮込んでいるときに鳳翔から「何やら、外国語で書かれたスパイスの瓶を何個か空にして、鍋を掻き混ぜています」という一報を受けた提督は、割と危機感を感じた訳だ。
先日金剛から、テレビを見ていた比叡が、スパイスを使った健康メニューに嵌ったという話がそれを補強する。
正直胃に優しいものを、軽く食べる程度にしておきたい提督は、執務室から脱出する事を考えた。
しかし、提督公室には秋月を始め、待機組の艦娘がいる。
どうすべきか考えているとノックと共に秋月が入ってくる。
秋月「司令、比叡さんが差し入れをお持ちしたとのことですが…入室させても大丈夫ですか?」
提督「おっおう…ちょっ、ちょっっっと都合が悪いから後にしてくれと伝えて貰えないか?」
秋月「…はい、分かりました」
キョトンと頷く秋月が、執務室のドアを閉めるのを確認した提督は
執務机の後ろ、大きな窓を開く。
そのまま、履いていた靴を下に放り投げると、提督は窓から身を乗り出し、
一階と二階部分を分ける縁の部分へと足を延ばす。
五月雨「何やってるんですか…」
ジトーと呆れ顔で提督の話を聞く五月雨。
秋月は、あの日の真相を聞くことが出来る為か、ゴクリと話の先を待っている。
提督「でだ。窓の縁まで辿り着いて、次は一階の窓の縁に降りて、そのまま着地すれば良かったんだが…」
提督はとうとう苦虫を噛み潰したような表情で話を続ける。
一階の、提督執務室の下には、偶々駆逐艦向けの講義室が用意されていた。
その日は、既に午前の講義が終わっており、駆逐艦の艦娘達は三々五々お昼を食べに部屋を後にしていた。
しかし、何人か艦娘が残っており、上から放り投げた靴と、窓に映る提督の足を目撃した艦娘が居た。
提督「その時、講義室に偶々残っていたのが卯月と時津風だった訳だ…」
五月雨「あっ…」
秋月「あっ…」
講義室に残って、午後はどんな遊びをしようか考えていた二人の駆逐艦。
そんな時に窓から提督の足が見えたもんだから堪らない。
おもちゃを見つけた二人は窓を開けると、窓の手摺の縁を探す提督の足を引っ張ったりした。
提督「止めろとは言ったんだがな…瞬く間に靴下をぽいされてな…」
五月雨「そ、それでどうなったんですか…」
提督「丁度、講義室に人が残っているのに気付いた講師役の艦娘が入ってきた」
秋月「それで、その講師に助けてもらったんですか?」
提督「…いや、講師は足柄だった。おまけに清霜と朝霜が一緒にいた」
五月雨「…あっ」
秋月「…あっ」
提督「足柄の奴、止める所か率先してズボンまで脱がしに掛かってな…それで、上を向いたら……窓から身を乗り出してニッコリ笑う比叡と目が合った」
五月雨「逃げ場が無いですね…」
提督「その後は、足柄達に引っ張られて講義室前の花壇に落下。比叡が一階まで駆け付けて捕まった…」
秋月「…あの後、執務室にずっと比叡さんが居たのは、その為だったんですね」ナットクシマシタ!
提督「ああ、一日中臍を曲げた比叡の相手をしながら執務する羽目になった」
五月雨「あはは…でも、素直に比叡さんに言えば良かったんじゃないですか?」
提督「…まあ、編成に煮詰まってて、こう、気分転換したかったのもあって…な」
秋月「えぇ…」
提督「因みにこの話には続きがあってな…」
皆、食事を終えたのを確認して提督が話の閉めを語り始める。
提督「その次の休日は、一日比叡の買い物に付き合う羽目になった」
昼食を終え、執務室に戻る提督と瑞穂。
待機組からは、異常が無い旨報告を受けて、部屋には提督と瑞穂だけになる。
提督「さて、午後は簡単に秘書艦の役割について教えようと思う。そして業務終了後は瑞穂達、新入りの歓迎会だ」
瑞穂「…はい。ご教示、よろしくお願い致します」
提督「……なあ、執務室に戻ってくるときから微妙に怒ってないか」
瑞穂「…提督の気の所為かと」ツーン
提督「いやだって、瑞穂機嫌悪いときとか、何かあるとき微妙に視線逸らすよね?」
バッと提督に向き直る瑞穂。
瑞穂「提督…、もうっ!あなた様というひとは…//」
それでも瑞穂の機嫌は、提督が次回の休日に街を案内する約束をするまで治らなかったという。
投下終了
次回は歓迎会です
歓迎会で提督or第二次SN作戦報酬艦が絡む艦娘を安価で募集します
>>+1~4
※大和、ビスマルク、大鳳、第二次SN作戦報酬艦以外の艦娘
※埋まらなかったらこちらで適当に書きます
注意
とりあえず楽しめればいいにわか勢
球磨型動物枠以外がカワイイ
この子出してっていうのは無理(安価は出すかも)
鈴谷は適当な選出
以上が無理という方は
ホッポ「カエレ!!」
提督「我が鎮守府の艦娘について語りたい」鈴谷「きんもー」
提督「我が鎮守府の艦娘について語りたい」鈴谷「きんもー」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443088506/)
遅れて申し訳ありません
私事で立込んでいました。
取り敢えず、霞と朝潮の部分を書いたので投下致します
【食堂】
青葉「ども~、清く正しい艦隊のラブリークルーザーこと、青葉ですっ!!」キョーシュクデスッ
提督「……よし、瑞穂は歓迎席だからあっt「ちょっと!!」…ああ、青葉じゃないか!」
青葉「今挨拶しましたよねっ!?青葉の可愛い挨拶を無視するんですか?」
提督「だって…凄い面倒臭そうなオーラ放ってたし…」
青葉「おっっと、今のは聞き捨てならないですね?」
業務終了後、歓迎会の開かれる食堂へと待機組、瑞穂を連れだって向かう。
本日は第二次SN作戦終了後、初の大きなイベントなので殆ど全ての艦娘が出席する。
尚、近海の哨戒任務は横須賀の残り6人の提督の艦隊が交代で行う為、穴が開く事は無い。
そもそも、各提督毎に1日ずつ開催日をずらしてこの手のイベントを開催しており、
本日は最後任である横須賀第七提督の艦隊がイベントを開催する日に当たるのだ。
さて、食堂に到着したは良いが、いきなり司会を務める青葉に捕まった。
そのまま絡まれると面倒なのはいつもの事なので、適当にあしらうつもりだったが今日はやけにしつこい。
摩耶「じゃあ、アタシ達は…」
天龍「向こうのテーブルに行ってっから…」
電「青葉さん、頑張ってください!」ナノデス
提督「ちょっと!?」
待機組は巻き込まれないように、さっさと歓迎側の艦娘が居るテーブルに退避していく。
青葉「……という事で、司令官はこっちの席で、瑞穂さんは…いやぁ、噂に違わぬ美人さんですねぇ…こちらの席に座ってください!」
見れば、残りの5人、改白露型駆逐艦 海風・江風、夕雲型駆逐艦 風雲、秋月型駆逐艦 照月、マエストラーレ級駆逐艦 リベッチオ、高速給油艦 速吸は既に着席している。
提督「じゃあ、また後で席に行くから」
瑞穂「はい。お待ちしておりますね」クスッ
瑞穂と別れて、席に座ると航空巡洋艦 鈴谷が近づいてくる。
鈴谷「はい、てーとく。今日の会の進行表だよっ!」
提督「ん、ありがとう。珍しいな、お前が持ってくるなんて」
いつもは、提督の座席に予め置いておかれるか青葉が渡してくる。
鈴谷「おっ?さっすが提督、気付くの早いねぇ~♪実はね、今日やる余興って鈴谷が考えたやつなんだよ!」エッヘン
提督「ああ、そういう事か…って『時間になったら説明します♪』としか書いてないぞ…?」
鈴谷「にしし、それは時間が来てからのお楽しみだよー?」
提督「…それじゃ進行表に書く意味無いんじゃないか?」
鈴谷「あーっ!そう言って、後で驚いても知らないからねー?」
提督「分かった。俺が悪かった…楽しみにしてるよ」
鈴谷「初めからそう言えば良いのに…んじゃ、また後でね~」バイビー
そう言って、鈴谷は手をヒラヒラさせながら席に戻っていく。
まあ、鈴谷はおどけた調子だが根は真面目な娘だし、大丈夫だろう提督は考えていた。
勿論ただのフラグだったのは言うまでもない。
青葉「それでは、乾杯の音頭をご存じ、我らが司令官にお願いしたいと思います」
開式の辞と共に、乾杯の音頭を振られる。
提督「あー、先の第二次SN作戦の完遂に辺り、諸艦娘の働き…特に誰一人として欠ける事無く達成出来たことに対して、非常に感謝の念が堪えない」
艦娘「「「………」」」
提督「特に今作戦の結果、南太平洋を通じて米豪連絡線の回復も視野に入れt
/
ハヤクシロー!!
リョウリノヌクモリ…コンナトコロデウシナウワケニハ…
\
…簡潔に纏めると、お前ら良くやった!新入りも宜しく頼む!以上、乾杯!!」
艦娘「「「かんぱぁーいっ!!!」」」
乾杯の声と共に、打ち鳴らされるグラス。そのまま喧噪に包まれる食堂。
いつもの如く、乾杯の音頭は楽しい時間を待ち切れない艦娘の野次で手短に終わる。
無論その辺は提督も知っているが、新しく着任した艦娘も居る手前、当鎮守府がどのような雰囲気か知ってもらう一計として
乾杯の挨拶を勿体ぶるのも習慣となっていた。
乾杯後、艦娘は其々の仲の良い艦娘同士…姉妹艦・国別・艦種同士に限らずだが…に分かれて会を楽しんでいる。
新顔にも早速、着任後仲良くなった艦や姉妹艦が取り囲み、隣の同僚に紹介しては輪を広げていく。
会食が始まり、一通りのテーブルに挨拶に回った提督は一服入れようとそのまま外へ出る扉を開ける。
食堂の側面は海に面しており、壁に沿うように何個かベンチが置かれている。
今は当鎮守府の艦娘が総出で食堂に詰めているため、ベンチは無人の筈だった…が
提督「今日は随分とアンニュイな雰囲気だな…霞?」
ベンチに腰掛ける艦娘が一人。
霞「……別に、そう思うならさっさと戻りなさいよ。仮にも司令官でしょ?」
普段の威勢も無く、必ずこちらの瞳を覗きながら助言・苦言・その他諸々をぶつけてくる艦娘は、
今日は視線を海に…警告灯の赤い点と、繋留された駆潜艇や短艇のシルエットがゆらゆらと浮かび上がる海上に向けながら答える。
提督「一通り挨拶周りを済ませたからな。食堂に入れてない艦娘が居ないか確認ついでに一服をしようと思ってな…」
霞「………そう」
何とも言い訳になってない言い訳だが、これで突っ込みがくれば有り難かったがそれもない。
そもそも、最初の会話からして?みあっていない。
ポリポリと頭を掻きつつ、霞の隣に腰を下ろす。
暫く、お互い無言で何も無い…普段と何一つ変わらない海を見ている。
霞「………ねぇ」
提督「うん?」
ポツリと、意識をしなければ波の音に吸い込まれそうな声で霞が話す。
霞「…どうして、私達艦娘はこの世界に生まれたのか考えた事って…ある?」
提督「……そうだな、深く考えた事は無い…が、仮説レベルの考証はある」
霞「そう…」
相槌を打ったきり、口を閉じる霞。
やや間があって、提督に質問を続ける。
霞「司令官は、司令官になる前の……前世の記憶って信じてる?」
提督「……信じてるも何も、夢に見るレベルで鮮明だな」
霞の声は、とても普段の凛とした感じではなく、どこか恐る恐る…藪をつつく様な慎重さを感じた。
だからこそ一字一句ゆっくりと、しかしどこか穏やかさを感じる口調で提督は答える。
霞「そう…だったの…その、司令官の前世もやっぱりク…ズ司令官だったの?」
提督「クズかどうかは…まあ、クズだったかもしれん…」
提督の発言、クズのイントネーションに何かを感じたのか、ビクリとする霞。
いつの間にか、こちらを見つめる霞の視線を敢えて気付かない振りをする。
視線を海に、まるで全てを飲み込むかのように禍々しく思えてくる暗闇に絞り出すように答える。
提督「霞の…駆逐艦『霞』としての記憶は、菊水一号までで合っているか?」
コクリと、視界の隅で霞が頷くのが見える。
提督は話を続ける。
提督「俺の居た前世では、俗に言う坊ノ岬沖海戦は生起しなかった…」
霞「……?」
提督「何故か?…霞の居た昭和と違って、幾らか…ほんの数回だけ、船団護衛が成功した」
我々、読者諸兄の知る昭和史に比べればほんの僅かの違い。
人類史全体から見れば誤差の範囲かもしれない。しかし、その結果は霞の居た世界と大きく異なる歴史を生み出した。
僅かながら、本当にもしかすれば逆転が狙えるかもしれない。
その僅かな機会に賭ける人間が史実より多かった。
結果は、徹底的な戦力温存とポツダム宣言の拒絶。
即ちそれは終戦派の逮捕・軟禁と来たるべき本土決戦への破滅の道を突き進む事だった。
それからどれだけの月日が経ったか。国土の全てが破壊し尽くされ、とうとう中部山岳地帯に迫る連合軍を迎えるに至った。
亡国の一柱となるべく、土砂崩れを起こし連合軍の戦車部隊を谷底へ流し落とす為、自らを点火栓として起爆スイッチを持つ青年士官の姿を想い出す。
気が付けば胸に温かい感触。
霞が抱き着いていた。
提督「…悩むという事は大事だと思うが、『霞』がここに居るということは問題ではないよ」
提督「君が過去に、どのような道を歩もうが関係ない」
霞はただ、胸に顔を埋め、静かに聞き入っている。
提督「確かに、過去と対面することはあるだろうさ。でも、ここに居る全ての者は君を受け入れるだろうし…」
提督「それにな、霞は若いんだ。焦って答えを見つけるよりは…ゆっくりと考えていけば良い」
スッと、顔を上げる霞。
いつの間にか涙を流す、その瞳をしっかり覗きながら提督は話す。
提督「それに、私を含めて相談出来る者はここにゴマンと居る」
霞 クシクシ
提督「それにほら、ここには俺より霞のこと。詳しい奴がいるしな」
ぐしっと、自分の腕で涙を拭う霞。
その仕草から、先ほどに比べれば元気になったと感じ取れた提督はベンチのずっと横。
食堂の端から覗く見学者を指差す。
壁から覗くのは
|ω□) キラリーン
|ω・´)
|ω゚)
|ω-) ウトォ…
下から清霜、朝霜、足柄、大淀の四人。
これに霞を入れた五人は、前世繋がりで何かと仲が良い集まりだ。
その四人に…恐らく事の一部始終を…覗かれていた霞は
口をパクパクさせ、顔を真っ赤にしたと思ったら、最後は目元に影が差して見えなくなった。
霞「……全く、変に考えこまないで最初からぶちまけていれば良かったわ…」ユラッ
立ち上がる霞
提督「だろ?だから、気にせずnガスッ…何でっ!?」
こう、脛を蹴られる
痛…くは無かった。珍しい
霞「全く、誰の目があるんだか分からないんだから司令官のアンタはしっかりする!抱き留めてばっかりじゃダメよ!!」
提督「はい…」
霞「だから今のは、活を入れてあげたわ……感謝なさい!//」
提督「…有り難うございます」
霞「ほら、しゃきっとする!」
提督「はいっ!」ビシッ
霞「…良し!」フンスッ
取り敢えず、立ち上がってそれとなくビシッとしてみる提督。
それを見た霞は満足気に頷くと、壁の方を睨む。
霞「それと…許可も無く、覗き見する奴にはしっかりと対処しないとね…」
アッヤバイ
ニゲルゾキヨシモ
ゴゴゴゴッと気迫たっぷりな礼号組旗艦。
その後の展開を想像して、離脱に掛かる礼号組その他四隻。
霞「じゃあ、私はあいつらに活を入れてくるから、アンタはさっさと席に戻ること!それくらいは出来るでしょ?」
提督「ああ、それは良いが…あんまりやり過ぎないように…な?」
霞「当たり前でしょ!?それくらい判断出来るって、部下のことを把握出来ないでどうするのよっ!?」
提督「分かった!分かりましたっ!!」
霞「分かれば良いのよ…じゃあ、また後でね………アリガトウ」
最後に何か言ったが、聞き取れずに霞はぴゅーっっと食堂の端、四人が逃げた先にすっ飛んでいく。
ややあって、「ぬわーーー!!」「ぐえぇーーー!!」とか聞こえるが、まあ手加減してるだろうから気にしないでおく。
提督「さて、これで霞も幾らか話し易くなったかな……こんな感じで大丈夫だったか、朝潮?」
ズズッと、引き戸を開けて朝潮がヒョコッと顔を覗かせる。
朝潮「はい!司令官、わざわざお時間を割いてくださって、ありがとうございます」
提督「大事な艦娘の事だ、気にしてないよ」
何て事は無い。先ほど、朝潮型の輪に挨拶周りしたときに、朝潮にそれと無く霞の様子がおかしい事を耳打ちされたのだ。
朝潮「それで、霞は大丈夫でしょうか?」
提督「うん。多分、朝潮や他の子達にも話すことが出てくると思う。その時は、きちんと向き合ってくれないか」
朝潮「はい、勿論です。霞は大事な…大事な姉妹艦です」
しっかりと、提督の眼を見て朝潮は頷く。
彼女は施設…出生率向上の為という名目で艦娘や軍属の獲得を目的として全国に設けられた貧困家庭向けの無償幼児育成所…に預けられた一人だ。
朝潮型で本当の姉妹は荒潮だけで、他の朝潮型は施設で共に育った子達である。
それでも朝潮は朝潮型の長女として、血の繋がりなど関係無く姉妹艦の面倒を良く見てくれている。
提督「そうだな。朝潮のお蔭で、俺も霞の重荷に気付く事が出来たし、何かご褒美をあげたいと思うんだが…」
朝潮「ご褒美ですか…ですが、朝潮は当然の事をしただけですし…」
提督「何でも良いよ、朝潮は何か欲しいものとか、して欲しい事とかは無いかな?」
提督は少し屈んで朝潮と同じ目線で、朝潮に質問をする。
朝潮は悩んでいるのか、視線をあっちこっちにやると、意を決したのかご褒美について提督に話した。
提督「これくらいなら、別に何時でも出来るんだがなぁ…」
朝潮「いえ、こうしていられるだけで朝潮はとても…とても嬉しいです//」
ベンチに腰掛け、提督の膝にちょこんと座る朝潮。
朝潮の求めたご褒美とは、要約すれば提督に甘えたいというささやかな内容だった。
提督「しかし、綺麗な髪だな朝潮は。毎日潮風を浴びてるのに艶やかで、良く手に馴染む」
朝潮「有り難うございます…//」
提督の胸に背中を預け、頭を撫でられ髪を梳かれるがままの朝潮。
最初は借りてきた猫のようにカチコチだったが暫くすると緊張がゆるんできたのか、肩を下げてリラックスしているのが感じられる。
朝潮「あの…司令官は、将来はご結婚はされるんですか?」
提督「結婚かぁ…まあ、この戦争が終われば考えると思うが…」
提督「ただ、そしたら朝潮みたいなしっかりした娘は欲しいかもな」
朝潮「娘…ですか…」ムゥ…
提督「はは、俺みたいな親父じゃあ勤まらんか?」
朝潮「あっ…いえ、娘では…その…駄目なんです//」
提督「…そっか。まあ、それなら戦いが終わったら、朝潮はどうしたいのか教えてくれ」ナデナデ
朝潮「!はいっ!必ず、お伝え致します」
そのまま、お互い沈黙を保ったまま数分過ごす。
朝潮は、リラックスしていたので少し眠そうだ。
提督「さて、そろそろ霞も食堂に戻ってるだろうし、朝潮も戻らないといけないんじゃないか?」
朝潮「…あっ!申し訳ありません。お時間を取らせてしまって…」
提督「ん、気にしないで良いよ。俺は一服してから戻るから、先に戻ってて大丈夫だよ」
朝潮「了解しました。あの…早く戻ってきてくださいね」
テテテッと朝潮が食堂に戻るのを見届けると、提督は海辺まで来る。
煙草を手に取り、火を点けようとするが中々点けることができない。
手が震えてマッチが上手く擦れない。
提督「……くそっ」
想い出されるのは自分の前世。
崩落で確実に敵機甲部隊を崖下に落し込む為、折を見て敵車列の先頭と最後尾を小規模な崩落で飲み込み立ち往生させる。
その為に点火役として青年士官が顔を合わせたのは信州に疎開してきていた学童達だった。
それも朝潮や霞と同年代の…本来なら命を掛けて守るべき国民だった。
横から手が伸びたかと思うと、マッチ箱とマッチを引っ手繰り素早く火を点ける。
鬼怒「はい。また想い出してたの…?」
提督「ああ…すまない」
鬼怒の点けてくれた火で煙草に火を点け、肺に紫煙を吸い込む。
提督「霞がな、断片的だが記憶を思い出したらしい」
鬼怒「…そっか、朝潮ちゃんが戻ってきたから念の為様子を見に来て良かった」
提督「…有り難う。お前には助けられてばかりだな」
鬼怒「にしし、鬼怒は提督と艦隊の皆が好きだからね!」ニパッ
鬼怒「…だから、提督も辛いときは遠慮しちゃダメだよ?」
提督「有り難うな、鬼怒の顔を見てたら幾分か落ち着いてきたよ」
そういって鬼怒の頭を撫でる。
擽ったそうにしているが、鬼怒も目を細めてその感触を楽しんでいるようだ。
提督「…記憶があるというのは……贖罪なのだろうか」
果てしなく暗闇の続く海を見つめながら
どことなく、呟く提督
鬼怒「んー…鬼怒は色々と想い出して、航空機は苦手だけどさ…贖罪とか難しいことは今は良いんじゃないかな?」ンー
鬼怒「あっ!それより鈴谷さんが探してたから早く戻らなくちゃ!行くよ、提督!!」
そう答えながら、鬼怒は寄り添うように提督と腕を組み前へと歩みだす。
提督は、その快活さ…今まで何度も助けられたその相方に…苦笑しながら歩みを進める。
霞や朝潮にも言ったではないか。
答えを出す前に色々と考えることに。
その為にはこの鎮守府で、艦娘達と向き合わなければならない。
そして提督の鬼怒の向かう先には外まで喧噪が漏れ聞こえる食堂の明かりが映えていた。
一旦投下終了
瑞鶴と瑞鳳も書き上がったら投下致します
お待たせしました
瑞鳳と瑞鶴の安価を書きましたので投下します
また最後に安価を取りたいと思うのでよろしくお願いします
【食堂】
鈴谷「あっ!やっと見つけた!何夫婦揃って逢引してるのさー?」
食堂に戻るなり、鈴谷に捕まる。
提督「いや、ちょっと一服をだな…」
鈴谷「はいはい。とにかく、余興が進まないから早くこっちに来てよね!」
言い訳を聞く間も惜しいのか、鈴谷にグイグイ押されて食堂の前の方、余興用に開けられたスペースに連れていかれる。
途中、壁際に正座する清霜、朝霜、大淀、足柄と何やら叱ってる霞の姿が見えたので内心ホッとする。
連れて行かれた先では、一段高い雛壇のようなものがあり、そこに立たされる。
鈴谷「それじゃあみんなー!!お待ちかねの余興タイムだよー!!!」
/
ウオー
キアイ!イレテ!サンカシマス!
ウラバングミヲブットバセー!!
\
提督「んで、俺は前に立って何をすれば良いんだ?」
鈴谷「それはねぇ…実際にやってみよっか?」
そう言うと鈴谷は右手を前に出す
鈴谷「最初はグー」
つられて提督も片手を出して、鈴谷の掛け声に合わせる
鈴谷「じゃんけんぽん…やたっ!鈴谷の勝ちぃ」ガッツポーズ
提督「おう、負けたのは分かったからn「壁ドン!」…は?」
鈴谷「このイベントは、提督とじゃんけん勝負して勝った娘が、提督に関する色々な景品をゲットする企画でーす!!」
/
ヴォォー
ピャアアー
ポイー
\
提督「ちょっと待て、聞いてないぞ!?」
鈴谷「だから『時間になったら説明します♪』って書いてあったじゃん」
鈴谷「それとも、今更怖気着いちゃったのかなぁ~?」ニヨニヨ
提督 イラッ
提督「…分かった。壁ドンすれば良いんだな?」スッ
鈴谷「へっ!?ちょ…ちょちょっ!!?」
そのまま提督は大股かつ無言で鈴谷に近寄り、そのまま壁際に追いやる。
壁際に追いやられた鈴谷は、普段の調子もなく縮こまり狼狽える。
鈴谷「や…本当にして欲しい訳じゃなk ドンッ! ひゃっ!?」><
提督「何だ、適当な事を言ったのか?」ジトッ
鈴谷「ち…違くて…その///」フルフル
そのまま鈴谷の耳元で囁く
提督「そんな風に教えたつもりは無かったのに、鈴谷は悪い子だな」
鈴谷「あっ…や…ごめんなさぃ//」ヘナヘナ
腰が抜けたのか、その場にしゃがみ込む鈴谷
してやったり顔の提督
提督「んで、こんな感じで良いのか鈴谷?…おーい」
返事が無い
鈴谷は顔を両手で覆ってプルプルしている
提督「えっと…やり過ぎちゃったかこれ?」
ちらと艦娘側を振り返る提督
今の今まで会場が静かだったことに気付いたのだ
/
キャー!!
ハルナハソノママベッドヘドンデモダイジョウブデス!
ハヤクハジメロー
\
途端に熱気に包まれる会場。
取り敢えず鈴谷を熊野に預けて、青葉が臨時に進行役を務める事となった。
青葉「それでは最初はこちら、海図ケースと司令官が削ってくれた筆記具セット2点です!!」
青葉「欲しい人は手を挙げてくださーい!」
シーンと静まる食堂内。
そんな中しずしずと手を挙げる艦娘が二人。
青葉「おっと、扶桑さんと山城さんですね?他に欲しい人は居ませんかー?」
他に手を挙げる艦娘はいない
青葉「幸先良いですね、それではこちらの2点は扶桑さんと山城さんにプレゼントでっす!」
扶桑「やったわ山城、普段はこんな機会なんて無いのに」
山城「はい姉様!今の私達はきっと運が追い風になってるんです!」
青葉「ではでは、当選されたお二人に司令官は渡してあげてください!」
そう言って青葉から景品を受け取る
提督の前に並んだ二人はとても嬉しそうだ
扶桑「提督、有り難うございます。海図入れも筆記具も良く無くすので大切に使わせて頂きますね」ニコッ
山城「姉様共々、有り難う提督。私も、筆記具が折れてばかりだから助かります//」
提督「ああ、ささやかなものだが貰ってくれて嬉しいよ」
提督(本当は着任したときに渡す筈の海図ケースに、執務中暇を見付けては削ってた大量の鉛筆)
提督(皆持ってる上にこのタイミングまで、扶桑と山城にだけ渡しそびれていたなんて言える訳が無い…)ダラダラ
---------
青葉「それでは、次の景品ですが…次回の司令官と一緒に休日お出かけ出来る休暇申請書でーす!!」
艦娘達「「「っ!!!?」」」ガタタタタッ
提督「何それ!?聞いてないぞっ!?」
その後もじゃんけん大会は続き、肩車やらあすなろ抱きやら私物の譲渡等が要求された。
まあそれくらいならと対応していた提督だったが、最後の景品内容には流石に驚く。
青葉「あっ、次の休暇は瑞穂さんと過ごされるのは承知してるので、その次の休暇で大丈夫ですよ!」
提督「違うそうじゃない!というか、何でその辺まで把握してるんだよ!?」
青葉「上官である司令官のスケジュールはきちんと把握しているのは当然です!」エッヘン
大淀「あっ、その辺は私が皆さんに、常に連絡して情報共有していますので提督は心配しないでください」メガネクイッ
提督「…お前ら」
青葉「それでは、景品が欲しい人は手を挙げてくださーい!」
青葉の掛け声に百人以上の艦娘が手を挙げた
伊58「でちくしょう…」
時雨「雨が止まなかったよ…」
提督「…つ、疲れた……」
伊58と時雨が負けて、最終的に残ったのは航空母艦の瑞鶴、瑞鳳の二人だった。
因みにここまでで60回近くじゃんけんを繰り返し、40回くらいは所謂運の高い艦娘達が延々勝ち続けており、全く人数が変わらなかった。
提督も流石に疲れてきた。
青葉「ええ、流石に司令官もお疲れなので、残ったお二人にはこちらからのお題を出して、その回答内容を司令官に判断してもらう…というのは如何でしょう?」
瑞鶴「ええ、私はその条件で大丈夫よっ!」フンス
瑞鳳「瑞鳳もそれで大丈夫れ~す」ヒック
青葉「では、ルール変更に伴い解説員を務めていただく鬼怒さんと加賀さんです!」
鬼怒「鬼怒だよっ!二人とも頑張ってね」
加賀「加賀です。この勝負、瑞鳳が勝つわ」
瑞鶴「ちょっと!まだ始まってもいないのに、何言ってるのよ!!」
青葉「それでは、勝負のお題ですがお二人には『好きなモノをアピール』をして頂きたいと思います!」
瑞鶴(す…好きなものって…)
チラと提督を見やる瑞鶴
瑞鶴(でも別に、提督さんのこと嫌いって訳じゃないし…)ムー
瑞鶴(何より、加賀さんのことギャフンと言わせて、翔鶴姉と一緒に提督さんに買い物に連れて行ってもらうんだから!!)グッ
瑞鳳「えっと、瑞鳳の好きなのところは、まず大きさの割には全体的にシュッとしたところでしょ」ウーン
瑞鶴(しまった!瑞鳳に先手を取られたわ…そうね、確かに提督さん背はそこそこだけど、スラッとしてるわよね)
瑞鶴「わ…私も、背が高くてスラッとしてるところとか良いと思うわ!」
瑞鳳「それとぉ、打たれ弱いところはあるけれど、しっかりと戦果を出しているところも素敵よねぇ//」ニヘラ
瑞鶴「あ、そ…そうよね!確かにしょっちゅう吹っ飛ばされてたり、私も爆撃したりしたけどピンピンしてるし…」
瑞鶴「それに…指揮を執ってるときはり…凛々しいというか、素敵だと思うわ!うん//」
鬼怒「ねぇ、加賀さん。瑞鶴さんもしかして…」
加賀「ええ、瑞鳳は酔うと大体ああなるのは知らないと思うわ」ハァ…
翔鶴「瑞鶴…」
葛城「先輩…」
瑞鳳「それでね、やっぱり一番大事なのって脚だと思うなぁ//」エヘヘ
瑞鶴(足!?瑞鳳って足フェチなの!!?)
瑞鶴「なら、私はその…腕とか、その…逞しい方が抱き締めて貰えた時にすごく安心すると思うっ!!///」カァアア
瑞鳳「あっ!あと、脚と同じで翼端が丸まってるのも可愛いと思います!」ウンウン
瑞鶴(翼端!?…えっ…翼端に足ってもしかして…)
瑞鶴「えっと、瑞鳳?それって航空機の話?」
瑞鳳「うん!勿論、九九艦爆のことだよ♪」エヘッ
瑞鳳「瑞鶴はぁ、何のことを話してたの?」クビカシゲ
瑞鶴「…………っ!!」ボンッ
瑞鳳「あ、きっと提督のことでしょ?」
瑞鶴「あっ…いや…そのっ……ウン///」
瑞鳳「瑞鶴、もしかして提督とお出掛けしたかった?」
瑞鶴「ま…まぁ、で…デキレバダケド//」コクリ
瑞鳳「んー…なら、瑞鶴の勝ちでも大丈夫だよっ!」
瑞鶴「…へっ?」
青葉「おっとぉ!?これは予想外の展開です!!」
鬼怒「あれ、瑞鳳さんってカッコカリ近いんじゃなかった?」
加賀「確か適用係数97だった筈よ」
鬼怒「何だかんだ初期から居たし、提督のこと凄い慕ってると思ったんだけど…」
加賀「…辞退するなんてらしくないわね」
瑞鶴「で、でも折角のチャンスなのに良いのっ!?」
瑞鳳「うん!瑞鳳は大丈夫、だから翔鶴さんや葛城ちゃん達と楽しんできたら良いと思うよ」ニパッ
瑞鶴「瑞鳳……有り難う!」ガシッ
提督(良い話だなぁ)
瑞鳳「それに瑞鳳は、今度提督が空技廠に新型乙戦の見学に行く一泊二日の出張に同行するし」
瑞鳳「その時に提督にい~っぱい甘えちゃうんだから♪」
瑞鶴「えっ?」
鬼怒「は?」
加賀「あ?」
提督(あっ…やばい)
青葉「おっとっとぉ!?ここで、提督と瑞鳳さんの出張旅行の話題が出てきましたよ!?」
青葉「大淀さん!?これは、記録に残ってるんですか?」
大淀「ええ、確かに提督が一泊二日出張されることは確認済みです。ただ、同行者有という話は…」
鬼怒「…聞いてない」
鬼怒「提督っ!!」
提督「はい!」
鬼怒「鬼怒は前言ったよね?提督と鎮守府の皆で楽しく過ごせれば良いって」
鬼怒「だから、チョウコンも気にしてないし、皆がそれで幸せになれば万々歳だよ!」
鬼怒「なのに!提督がきちんと皆に報告しないで、抜け駆けのようなことするってどういう事なの!?」
提督「や、きちんと出張の連絡はしたのだg「良い訳しない!」…はっ!申し訳ありません!!」
加賀「特設秘書艦、これは略式艦娘裁判を実施すべき案件かと」
鬼怒「…略式艦娘裁判の実施を許可します」
青葉「はい!!特設秘書艦の許可が下りました!これより、司令官への略式艦娘裁判を開廷致します」
朝霜「りゃくしき…んーと…お固い名前だねぇ。なんだいそりゃ?」
ガヤガヤ
ナニソレー
青葉「まだ知らない娘も居ますので青葉が説明しましょう!」
青葉「略式艦娘裁判とは、司令官が我々艦娘の尊厳、主にデリカシーに欠ける行為を行い、余りにもそれが目に余る場合に実施されます」
青葉「当初は、全ケッコンカッコカリした艦娘が司令官の行為の有罪無罪を判断していましたが…」
青葉「ケッコンカッコカリ艦の数が増えたり、任務等で留守にする場合を考慮して、特設秘書艦の鬼怒さんの許可が得られた場合」
青葉「一番秘書艦の金剛さんと、一番新しくケッコンカッコカリした艦娘…今は加賀さんですが…の判断で即刻有罪無罪を決定出来るようにした我が鎮守府独自の制度です!!」
オオー
ナンダカスゴイゾー
青葉「えーと…今回で確か、48回目でしたっけ?」
榛名「はいっ!榛名が、榛名が数えました!」ピョンピョン
金剛「全く、提督は乙女心については何時まで経っても理解してくれないネー」アキレ
提督「乙女心って…お前もうそういう年r「Shuuuuuut up, Sir!!!!!!」 はい」
金剛「Hey!!そうやってデリカシーに欠けた事言う提督は、植民地人がやったみたいに海に投げ込まれるか、異端者達がやったみたいに窓からぶん投げられるのがお望みデスカ?」ニコリッ
提督 ブンブン
青葉「それでは、司令官が大人しくなったのでちゃちゃっと済ませちゃいましょう」
青葉「金剛さん!判断をお願いします!!」
金剛「G.H.Q!!」q
青葉「はい出ました!お馴染み金剛さんのG.H.Qでっす!」
照月「秋月姉ぇ、あれって何かの略語?」
秋月「うーん…何て言ってたかなぁ」
青葉「またまた青葉、解説しちゃいます!」
青葉「G.H.Qとは『Go to Hell, Quickly』の略語で、まあ『とっととくたばれ』的な意味の英語でっす!」
比叡「お姉さま、はっきり言いますからねぇ」
青葉「では、もう一人の判断を加賀さんお願いします!」
加賀「ぎるてぃよ」
青葉「はい!加賀さんからも有罪と判断されました。これで司令官の有罪は確定しました!」
提督「よし!分かった!!今度は皆にきちんと報告するから!なっ!?」
ガヤガヤ
ソレハヨクナイナァー
提督は逃げようと決心した。
いや、逃げるのではない。
状況が悪化するだけの食堂にいるよりは執務室に戦略的転進をしようと決意したのだった。
しかし、その目論見は背後から羽交い絞めされたため頓挫する。
提督「ちょっ!?赤城、は…離してくださいお願いします!!」
赤城「駄目です♪」ギュッ
赤城「提督、罪を認めて受け入れましょう?大丈夫です、この赤城も一緒に提督の運命を乗り越えてみせます」ニコッ
鬼怒「赤城さん、凄く楽しそう」ホエー
加賀「最近はあまり提督とゆっくり出来る時間が無かったから。赤城さんなりのスキンシップね」ウンウン
青葉「それでは、司令官を取り押さえましたので執行部隊のお二人も準備をお願いします!」
青葉の声と共に、艤装を展開した重雷装巡洋艦 大井・北上が前に出てくる
北上「提督さー、いい加減学習しなよ~」ニヤニヤ
大井「全くよ、オマケに最近は北上さんや私に構わないし!少しは考えて行動しなさいよ」ジロー
提督「分かった!構う!!構うからここは穏便に…それ痛いんだよ!」
北上「この提督処断用弾頭魚雷のこと?まあ、この場はギャグ空間だし大丈夫でしょー」フハハ
大井「後で湿布貼るくらいはやったげるから、我慢しなさいな」フン
提督「ま…待て、話せば分かる…」
北上「おっ!曲がりなりにも海軍の人間がそれ言っちゃう?それじゃあ大井っち、お返しにぎったぎたにしてあげましょうかね!」ニヤリ
大井「はい北上さん!提督、問答無用でいきますね」ニコッ
その後、80射線の提督処断用弾頭魚雷の直撃を受けた提督は大破した。
勿論次々回の休暇の予定も埋まった。
因みにこの手の艦娘側の制度は各鎮守府に必ずと言って良い程存在しており、各提督をして「深海棲艦より恐ろしい」という共通見解を述べさせるほどだったという。
投下終了です
また、次回の待機組となる艦娘を安価で募集します
>>+1~3までの艦娘
※大和・ビスマルク・大鳳・瑞穂以外の艦娘
※埋まらなければこちらで適当に書きます
春雨 天津風 如月 で安価了解致しました
書き上げたらまた投下します
お待たせして申し訳ありません
安価分は書き途中ですので、そこまでの小話部分を投下致します
【皇国本土南東海域】
漆黒の海原を6つの影が進んでいた。
深海棲艦の一団である。
先頭に軽巡ホ級が位置しており、その後方を戦艦ル級、輸送ワ級2隻が続く。
そしてル級の両側に駆逐イ級が護衛するように展開していた。
この6隻からなる船団の目的地は定まっていない。
ただ直線的に進み、陸地…小さな環礁から大陸までを問わず…に辿り着けばそこに投錨する。
すると、ワ級を起点に赤黒い蔦状の物質が対象の陸地を浸食し始める。
具体的な説明は難しいが、マングローブの根が陸地全体を覆う様を想像して欲しい
そして、その浸食が一定の規模に達するとその周辺海域に深海棲艦が"出現"する。
その瞬間を目撃した正式の報告は無いため、そのように表現するしか無いが、突然出現するのである。
この世界に出現してから日の浅い深海棲艦の小規模艦隊も、深海棲艦側の勢力範囲内に出現し、そのままどことも知れない陸地を目指して突き進んでいた。
その為、制海権を深海棲艦からもぎ取ったとしても、人類の勢力範囲であっても定期的に深海棲艦の漸減を行う必要がある。
先頭を行くホ級が突如水柱に包まれる。
被雷の瞬間である。
その数舜後には、大音響と共にホ級は大爆発を起こす。
その後方を行くル級は周囲を見渡す。
敵の姿は見えない。
本能的に敵は潜水艦だと感じ取ったル級は、直ちに回避行動を取ろうとする。
しかし、突然の雷撃の為どこから魚雷を撃ち込まれたのか判断が付かなかった。
数秒の思考時間、その間に左側面にいたイ級が水柱に包まれる。
その光景と、ホ級が大爆発を起こしたとき、その右腕が一瞬見えたことからル級は左舷側からの雷撃だと判断し、右転舵を開始する。
だが、その判断はあくまで希望的観測に縋るものであり、ホ級の右腕が本当に見えていたのかすら怪しい。
何故ならば、魚雷は深海棲艦から見て正面から放射状に放たれていたからだ。
そして、左わき腹を見せたル級に対して2本の魚雷が突き刺さる。
長射程と無航跡、他国と比較して炸薬量の多さから"ロングランス"と恐れらた酸素魚雷の系列を組む、53糎九五式魚雷二型の一発がル級の左側の砲塔支持架に命中して、水中防御に大破孔を作る。
もう一発は、ル級の左脚部の膝より下を消し飛ばした。
バランスが崩れたル級は慌てて右側砲塔支持架に注水し復元を試みるが、みるみる左舷側に傾いていく。
左側砲塔支持架内の弾薬庫では、大量の砲弾と装薬が倒れ、砲塔も重さで砲身が傾斜側に傾いていく。
その状態で更に左舷に一発。
大破孔の拡大と共にバイタルパート内で炸裂した魚雷は、そのまま無造作に転がっていた弾薬庫内の装薬にも爆轟の科学反応を発生させる。
これが致命傷となり、数千分の一秒の間にル級は爆発四散した。轟沈である。
その爆風と衝撃波、そしてル級を構成していた艤装の一部がル級の後方にいたワ級をズタズタに引き裂く。
声にならない絶叫が漆黒の海に響く。
その間に右舷側のイ級も水柱の中に消失している。
数分間に渡る一方的な殺戮が終わり静けさを取り戻した海上には、深海棲艦の艤装の残骸と身体の一部が浮かぶのみとなった。
更に三十分程時間が経過して、殺戮の場からかなり離れた海上に6人の艦娘が浮上する。
彼女達6人の潜水艦艦娘は、深海棲艦の予想経路上の正面で獲物を狩るため鶴翼陣形で潜水待機していたのだ。
伊58「よし、みんな揃ったでちね」
呂500「はい!みんな無事で、今回のぜんげん作戦も成功ですって!」
伊8「待って、まだしおいの艦載機を回収してないですよ」
伊8が窘めている間も、周辺警戒を続ける。
逆探に反応が無いか警戒すること数分後、しおい…伊401が周辺索敵用に放った晴嵐が着水する。
伊168「どうだったしおい。何か異常はあった?」
伊401「ううん。妖精さんは、索敵経路上に異常は見れなかったって。ただ…」
伊19「ただ?」
伊401「北東方面に飛行中に、微弱だけど深海棲艦の電信を傍受したみたいなの…」
防水マップケースから取り出した海図に該当座標を書き込みながら、伊401が他の五隻に伝える。
伊8「ふぅむ…はぐれ艦かもしれませんね」
伊19「確かそっちの方角って、第五の管轄範囲に近いのね…」
伊58「じゃあ、向こうの索敵機からも報告があるかもしれないでちね」
呂500「てーとくには報告、どうします?」
伊401「そこは、どんな些細な事があっても報告しろって言われてるし…」
伊168「じゃあ、報告書にもきちんと書いておきましょう」
伊58「そうでちね。じゃあ、次は第一の連中が引き継ぐ予定だから、引き継ぎまでは任務継続でいきます」
呂500「はーい!!」
そのまま彼女達は横須賀第1鎮守府の潜水艦艦娘達が到着して、引き継ぎが完了すると帰路に着く。
定期的に本土近海に出没する深海棲艦に対して、本土の各鎮守府からは潜水艦隊を派遣し漸減邀撃戦を行っている。
横須賀鎮守府では、常に2個潜水艦隊が漸減と哨戒を担当しており、今回は横須賀第五と第七提督旗下の潜水艦隊による定期哨戒任務中の出来事であった。
【横須賀鎮守府 第七提督執務室】
提督「はい。第五提督からも報告が上がっているかと思いますが…」
提督は横須賀鎮守府長官に内線電話を掛けていた。
内容は、先日の定期哨戒任務で伊58より提出された報告書に記載されていた事に関してだった。
提督「X日として、予測されるのは恐らく来月上旬かと」
提督は、手元に置かれた使い古された手帳を確認しながら電話を続ける。
提督「明日の横鎮定期連絡会議でも提案予定ですが、シ号覆滅作戦の作戦準備と事前任務として航空総軍、護衛総隊と協力した哨戒の徹底が必要かと思います」
提督「…はい。航空総軍の方は、厚木空に知り合いがおりますので、そちらからも上申するよう働きかけてみます」
提督「はい。では、明日には大まかな作戦概要を用意しておきます」
提督「…分かりました。それでは、失礼致します」ガチャン
電話が切れると提督は、机上の隅に置かれた連絡先一覧表から「航空総軍 厚木航空基地」の連絡先を見止めると再度受話器を手に取る。
提督「あぁ、交換台か?すまんが厚木空司令のK大佐を頼む」
やや間があって、該当先に電話が繋がる。
提督「や、K大佐か?先日出席した新型乙戦の地上滑走試験以来だな」
皇国航空総軍は、本土防空を主任務として第二次欧州大戦後に陸軍航空隊と海軍基地航空隊を統合して作成された組織である。
陸軍、海軍、海上護衛総隊に並ぶ第4の軍事組織として皇国の空を守備範囲としている。
深海棲艦出現後は他の3軍同様に妖精も多数在籍しており、対深海棲艦にも対応出来る作戦機を多数保有する。
K大佐は、提督と同じく前世の記憶を持っており、航空総軍にも存在する鎮守府会のメンバーでもあった。
提督「うちの潜水艦がな、恐らく本土北東海上からの深海棲艦のものとおぼしき電信を傍受した」
提督は単刀直入に話を切り出す。
提督「来週頭の統合参謀本部会議でも議題には上がるだろうが、そっちからも航空幕僚本部に一言口添えを頼めないか?」、
提督「…うん。一応、第一総軍には第二種警戒待機命令が下令されるだろう」
提督「乙戦…陣風や噴式震電は勿論なんだが、電光四二型…雷光だったか?一応高々度邀撃機の準備もしてくれると助かる」
提督「ああ、それと先日水戸で見学したキ-283 八咫烏のテストパイロット妖精のえぇと…アラマキ君だったか?今後の試験飛行では模擬弾頭ではなく、実戦用の炸裂弾頭を装填して飛行するようにお願い出来ないだろうか」
提督「いや、手間を掛けさせて済まない。今度会ったときは飯でも奢るよ。うん…うん…では、宜しく頼みます」ガチャン
電話を終えた提督は、執務机の背後の書棚から海図を引っ張り出すと、赤鉛筆と電卓を手に海図に線を書き込んでいく。
提督「すまん瑞穂、換気はするから煙草を吸っても良いか?」
瑞穂「はい。瑞穂は構いませんよ」
秘書艦机で、定常業務である資材表の計算をしていた瑞穂が微笑で応える。
何か考え事をする時、この提督は煙草の煙を肺に吸い込ませる必要があることを瑞穂は知っていた。
提督は煙草を咥えて、海図を睨み、赤線と数値の書き込みを修正していく。
瑞穂「あの、提督?少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
3本目の煙草を灰皿に押し付けたときに、いつの間にか傍らに佇んでいた瑞穂に声を掛けられる。
提督「ああ、構わんが…何か書類で分からん箇所があったか?」
瑞穂「いえ、書類の方は問題ございません。その、先ほどの電話でお話しされていたことです」
提督の顔を伺いながら瑞穂が質問内容を口にする。
電話の内容がら、ただならぬ情勢だと感じた為、瑞穂も聞きにくかったのだろう。
少し不安そうな表情の瑞穂を見ると、何だか懐かしさを感じた提督は問題無い旨を伝える。
瑞穂「電信の傍受で、ここまで大きな話になるので…出来れば、その理由を瑞穂にご教示願いませんか?」
提督「うん、じゃあ取り合えずこっちにおいで」
瑞穂が海図を見易い位置に立たせると、提督は説明を始める。
提督「ここがうちの潜水艦連中が哨戒していた海域で、こっちが第五の連中の位置だ」
海図に書かれた楕円を示しながら提督は話を進める。
提督「で、しおいの飛ばした晴嵐の哨戒範囲がここで、電信の傍受地点がここになる」
提督「そして第五の飛ばした哨戒機も電信を傍受していて、その座標がここだ」
提督「第五の傍受した電信の方が、強度が高かったから、この2点の座標から推測される電信の発信推定位置が…ここになる」
2点から伸びた線から、北東太平洋の一部海域が赤枠で囲まれている。
提督「ここまでは分かったか?」
瑞穂「はい、有難うございます。ですが、疑問に思うことがあるのでうが…」
提督「うん、言ってごらん」
瑞穂「先ほど提督は、来月上旬を目安とお話しされていました。ですが、この推定範囲でしたら本土からかなり離れています」
瑞穂は素直に、思ったことを言葉にして続ける。
瑞穂「仮に深海棲艦の目的地が本土だとしても、作戦日時は来月上旬ではなくもう暫く時間が経ってからになるのではないでしょうか」
おずおずと口にする瑞穂に対して、逆に提督は電話内容から深海棲艦の進撃速度を考えて質問をしたこと内心関心する。
だから、瑞穂の頭を優しく撫でながら、諭すように提督は質問の答えを述べる。
提督「確かに、連中の進撃速度からすれば来月上旬は早いと思うのは瑞穂の言う通りだ」
提督「ただな、海図だけだと人はどうも二次元的に物事を捉えてしまうことがある」
提督は背後の書斎の中段、その端に本で圧迫され窮屈そうに置かれた地球儀を取ってきて執務机を置く。
提督「大体この辺が、敵がいると思われる海域だ」
そう言って地球儀の一部を指で示す。
提督「そして、電信を傍受した部分はこの辺り…そこで問題になってくるのは、どんな連中が電信を発したのかという点だ」
提督「電信は基本直線上に進む。そして、我々の哨戒機は電信の飛んできた方向に敵影を認めていない」
提督「海上を進む艦から電信を発信した場合、この世界が平面ならそれこそ推定海域よりも遠方から発信しても傍受可能だ」
提督「だが、地球は丸い。だからこそ、かつては戦艦の艦橋高くに電探等を設置していた訳だ。水面に近いよりその方が水平線の先まで届く」
提督「そして、電信の発信源と思しき辺りは世界最大の戦艦 播磨の艦橋頭頂部で電波を発信して届く距離より遥かに遠い」
提督「そうすると考えられるのは…」
瑞穂「航空機…でしょうか?」
瑞穂の回答に提督は笑顔で頷く。
提督「そうなると、夜間発着艦の可能なF級以上の敵空母…或いは鬼・姫級の大型空母の可能性がある」
提督「それを考慮した場合、陸地から離れた位置から艦載機を発艦出来る地点に来るのが、大よそ来月上旬という訳だ」
提督「これで、瑞穂の疑問は晴れてくれたかな?」
瑞穂「はい。有難うございます提督」ペコリ
瑞穂「それと、申し訳ございません。瑞穂が浅学な為に、お時間を取らせてしまって」
シュンとする瑞穂の頭を撫でながら、提督は気にしてないさと答える。
提督「俺の方も、頭の中を整理できて助かったよ。ありがとうな、瑞穂」
提督の言葉に瑞穂はパアァッと顔を輝かせる
提督「さあ、定時まであと2時間程だ、お互い頑張って仕事を進めようか」
瑞穂「はい、提督。瑞穂、頑張ります!」
投下終了
次は安価の3人分を書き終えたら投下致します
乙
任務に忠実な潜水艦隊が新鮮やな、何気に夜間飛行をモノにしてるのか。
瑞穂と提督の関係ええなあ・・
安価の3人分が書き終わりましたので投下します
>>170
ゲームと違って、練度の高い妖精なら夜間飛行可能ってことで…
まあ、舞台背景自体は艦娘と合法的にイチャつく為の設定ってことでオナシャス!!
瑞穂「提督、待機組の如月さんが呼んでいますが…」
提督「おう、今行くから待ってるように言ってくれ」
瑞穂「畏まりました。では、そのように伝えておきますね」
翌日提出する作戦概要の資料作成が一段落した提督は、私室の非常階段で一服していた。
瑞穂は「室内で吸われても構いません」と言うが、日が沈みかけた茜色の海を眺め、潮風に揺られながら吸いたいと言って執務室を後にしたのだった。
時間的には、定時を30分程回ってしまったくらいだろうか。
瑞穂に任せていた定常業務も滞りなく終わっている。
取り敢えず夕飯は食堂ではなく私室で編成表を睨みながら食べようかと考えていた所に、瑞穂が声を掛けてきたのだ。
【横須賀鎮守府 第七提督公室】
如月「あ、司令官!わざわざごめんなさいね?」
提督「ん、取り敢えず仕事は一段落したから飯の時間くらいまでは大丈夫だぞー」
提督「それで、一体どうしたよ?…春雨は寝てるし」
ソファの端では、普段の待機組の間延びした空気が感じ取れるくらい穏やかに、すやすや寝息を立てる春雨の姿があった。
天津風「あのね、あなたに教えってもらったこのゲームで、戦闘に勝てそうに無いから手伝って欲しくて…」
提督を呼び出した理由を申し訳なさそうに伝える天津風。
その傍らでは如月が春雨を起こす。
如月「ほら、春雨ちゃん?司令官が来たわよ」ユサユサ
春雨「ふみゅ…ふぁあああ~」ノビー
提督「おはよう春雨、良く眠れたか?」
春雨「ふぁい、おはようございます司令官…」ボー
寝起きでまだ頭が回らないのか、少しぼんやりとしている。
そして段々状況が飲み込めてきたのか、びっくりする。
春雨「………ふぇ!?あ…あれ、し、司令官!?」
春雨「ごめんなさい。春雨、居眠りしてしまいました…」シュン
提督「ん、大丈夫だ。何も無ければ一日待機なんて暇だろう…俺でも居眠りすると思うぞ?」
天津風「もう、あなたがそれじゃ駄目じゃない!」
提督「分かってるって…だから、春雨はあんまり気にしちゃ駄目だよ?」
春雨「…はい。ありがとうございます、司令官」ニパッ
春雨の表情が明るくなったのを確認して、提督は天津風に確認する。
提督「今やってるのはどのゲームだ?」
天津風「あなたが教えてくれた、中世のゲームよ」
提督「ああ、『中世総力戦Ⅱ』ね…」
提督公室には、来客用の大きなテレビと提督の趣味で買ったそこそこ高性能のパソコンが置かれており、待機組は普段暇つぶしにテレビを見たり、ゲームで遊んだりして過ごすことも多い。
天津風が遊んでいたのは、中世ヨーロッパを舞台にした戦略ストラテジーゲームで、提督が学生時代に遊んでいたものだった。
一応、内政と戦闘の2パートに分かれており、天津風は戦術の勉強にも使えるからと、ちょくちょく提督にゲーム内容について質問しに来ていた。
真面目だな内心思いながら提督も、その質問に一つ一つ応えてあげていたのだ。
最も天津風からすれば、勉強以上に提督と共通の話題が出来て、尚且つ提督に会いに行ける理由の一つとして遊んでいたのだが…
如月「神聖ローマ帝国でプレイしていて、ビザンティン帝国に攻め込んでいたところなんだけど、部隊の移動中に敵伏兵に捕まっちゃって…」モウッ
天津風「こっちは数が少ないし、戦力比も3:7でビザンティン側が優勢なのよ…」
提督「ふむ、そうするとAIの自動戦闘じゃまず勝てないな…ユーザー操作では?」
天津風「それが…ちょっと勝てる自信が無くて…」シュン
如月「それで司令官ならヤリ慣れてるから、代わりに戦闘指揮をしてもらおうかって話になったの」
春雨「司令官の戦闘指揮ですか…普段は直接見れないから、見てみたいです。はい」フンス
提督「実戦だと無線越しだもんな…分かった。まあ、ちょっと貸してみろ…」
そう言って、提督はソファの真ん中に座り、マウスとキーボードを手にする…が
提督「んで、何で天津風は膝に乗ってくるんだ…?」
天津風を膝の上に乗せ、両脇の下から手を伸ばしてゲームを操作する状態である。
天津風「しょ…しょうが無いじゃない!この方が、ユーザー視点での戦闘操作の参考になるのよっ//」
如月「そうよねぇ天津風ちゃん。この前のパーティであすなろ抱きされてた娘のこと、凄く羨ましそうに見てたものね?」ウフフ
天津風「ちっ…違うわよっ!?そんな理由じゃ無いったら!!もうっ!///」カァア
提督「分かった分かった、別に何でも良いから、操作中は大人しくしておいてくれよ?」
天津風「ええ、分かってるわ//」
如月「じゃあ如月はぁ、司令官の左隣に座っちゃいまぁす♪」ヨイショット
春雨「春雨は、司令官の右隣に失礼します//」ハイッ
瑞穂「それでは瑞穂は、僭越ながら上座の方で拝見させていただきますね」
いつの間にか5人分のお茶を入れてきた瑞穂がコの字型に設置されたソファの縦の部分、上座に座る。
そして、コの字の下の横棒部分に提督と3人の駆逐艦娘が座る。
ポーズ画面から、戦闘画面へと切り替わると、早速提督は操作を開始する。
提督「…こっちの部隊はオットー将軍旗下の下馬騎士3部隊、垣盾弩兵3部隊、傭兵槍兵3部隊、重騎兵と軽騎兵が2部隊ずつと…特科のカタパルトと天秤式投石器が2台ずつか…」
提督「ビザンティン側は将軍と直衛の騎兵1部隊に弓兵2部隊、散兵3部隊、軽歩兵7に重歩兵3部隊、特科はバリスタ6台とな…」
天津風「どうかしら…勝てそう?部隊数も兵数も相手の方が多いわ…」
提督「ん、敵に騎兵がほぼ居ないから何とかなるだろう。という事で戦闘開始と…」
画面が戦闘画面に切り替わり、最初に部隊展開を行う場面となる。
提督「場所的にちょっと後方の丘の上を起点にして…」
ささっと展開を進める提督に、天津風が質問する。
天津風「ねぇ、軽騎兵を本陣から離しちゃって大丈夫なの?」
提督「ああ、こいつらには右側面の林に伏兵待機してもらう。歩兵から離れた敵のバリスタを叩いて、余裕があれば後方攪乱に使いたい」
そう言って提督は、配置完了ボタンを押す。
すると、こちらの布陣の先に大量の敵兵の姿が現れる。
提督「まずは特科部隊がうちの前衛の弩兵と槍兵の頭越しに火弾を撃ち込んで、幾らか敵を削らせてっと…」
如月「敵の数が多い分、結構命中はしているけど敵も怯まないわね…」
提督「そこは想定済みだ」
天津風「あっ!こっちの弩の射程に入ったわ!敵の弓兵と散兵も射ってきた…」
提督「前衛の槍兵と弩兵には耐えてもらう…んで、敵歩兵が前進してバリスタ部隊と距離が離れたところを…」
春雨「軽騎兵がバリスタの列線に突入して…バリスタの射撃準備をしていた敵兵が潰走し始めました」ワァ…
天津風「あ…あなた、敵歩兵の大群がもう目前よ!?」ギュウゥッ
提督「ちょっ…痛い痛い!そんな強く腕を掴むんじゃない」
天津風「あっ…ごめんなさい//」
提督「ここで弩兵は左側面に抜けて、後方に居た槍兵を壁にして敵歩兵を止めて、左右に配置した下馬騎士で補強する」
如月「左に抜けさせた弩兵はどうするの?」
提督「そのまま左翼後方で敵歩兵の側面と、その後方にいる敵弓兵と散兵に射掛ける」
春雨「あっ、右翼と中央は膠着状態ですね」
提督「右翼には下馬騎士2部隊を展開させてるからな。相手が軽歩兵主体だから持ちこたえるだろ」
天津風「やだっ!?今度は敵の将軍が突っ込んできたわっ!」キュウゥッ
提督「こんなんお出でませ状態だろ…傭兵とは言え、重装備の槍兵の壁に真正面から騎兵で突っ込んできたんだし」
如月「…確かに。あら、敵の将軍討ち取ったみたいよ」
春雨「将軍戦死で敵も動揺してるみたいですが…こっちの左翼も少し押され気味ですね」ハイッ
提督「ああ、少し内側に押されてるよな?そこで、温存していた重騎兵を敵の右翼…こっちの左翼斜め後方側からドゥーンさせると…」
天津風「凄いっ!後ろが無防備だった敵歩兵が派手に吹っ飛んだわっ!」ヤタッ
如月「左翼に殺到していた敵が、一気に士気崩壊して潰走し出したわ」アラマアッ
春雨「潰走した敵兵はどうするんですか?」
提督「潰走した連中は敵後方で待機させてた軽騎兵に狩らせる」
提督「そんでもって重騎兵は一度体勢を整えたら…後方の散兵と弓兵に突撃して蹴散らす」
天津風「右翼側には突撃させなくても良いの?」
提督「それはな…こうして、余裕の出来た左翼配置の槍兵と下馬騎士をぶつければ問題ない」
如月「なぁるほど、歩兵で右翼の敵を挟撃するのね?」フゥン
提督「そんな感じだ。こっちも遊軍を残すほど余裕がある訳じゃないからな」
春雨「わぁ、右翼の敵兵も次々に士気崩壊して潰走し始めました」
提督「後は消化試合みたいなもんだ。騎兵を使った楽しい追撃タイムになる」
天津風「敵全部隊が潰走で戦闘の終了か継続を選択できるけど、どうするの?」
提督「身代金の為に継続で…」ポチットナ
如月「…捕虜数が4桁になってるわね」
春雨「…最後の敵部隊も、全員捕虜になったみたいです」
提督「さてさて、これにて戦闘終了。結果は…っと」
天津風「英雄的な勝利!?良かった!有り難うあなた!本当に助かったわ!!」ガバッギュウゥ
振り返った天津風が全力で抱き着いてくる。
お蔭で提督は身動きが取れない。
提督「おっおう!分かったから、そんな強く抱き着かんでも…」
咄嗟の行動に気付いた天津風が、離れる。
天津風「あっ…ごめんなさい///」ポシュウゥー
如月「うふふ、天津風ちゃんったら気分が高揚しちゃったのね?」
春雨「お見事でした、司令官!」
提督「いや、久々にやったから内心冷や冷やしたが…楽しいなやっぱり」
提督「有り難うな天津風?楽しめたぞ」ナデナデ
天津風「そ、そんなお礼を言われる事じゃ…でも、あなたが楽しそうだったから良かったわ//」スリスリ
提督「瑞穂はどうだった…余り反応が無かったが、暇じゃなかったか?」
瑞穂「いえ、とんでもありません。提督の指揮なさっている御姿が見れて、とても良かったです」ニコッ
如月「瑞穂さん、ずっと司令官のこと見てたものねぇ…凛々しい姿を見て惚れ直しちゃったんじゃない?」
瑞穂「…///」オボンデカオカクシ
春雨「でもでも、普段と違って司令官、とても生き生きしてたと思います」ハイッ
提督「おっ!そりゃあ普段は生き生きしてないって事かぁ~?」ワシャワシャ
春雨「ふにゃっ!?そ…そんな訳じゃないです。…ごめんなさい」フミュウ
提督「ついでに内政も確認しておくか……って、何で周辺国全てと仲悪いんだよ!?」
提督「教皇庁の評価も低いし…破門ギリギリの状態じゃないか…」
天津風「わ、私達が続きを始めたときから、内政は特に操作してないわよっ!?」
提督「最後に遊んでたのは誰だ…」
如月「最新のセーブデータの名前が確か…『pyon.save』だったわね」
提督「Oh…」
提督「…じゃあ内政も少しやっておくか」
天津風「良いの?」
提督「ああ、ただ少し腹が減ってきた…」
瑞穂「あの、それでしたら瑞穂が提督と皆さんの夕餉の支度をして参りましょうか?」
提督「お、頼めるか?部屋の台所とか冷蔵庫の中の食材も好きに使って良いよ」
瑞穂「畏まりました。それでは、夕餉の支度をして参りますので少々席を外させて頂きますね」
如月「あら、それなら如月も手伝いまぁす」ハァーイ
天津風「私も、助けてもらったお礼がしたいから手伝うわ!」スタッ
春雨「では春雨は待機組として、司令官の傍でご飯が出来るまで待っていますね」フンス
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提督「取り敢えず各国には外交官を派遣して、関係修復を図るとして…次は各領地の内政だな」
春雨「はいっ!」
瑞穂達3人が、提督私室に向かうのを見送った後、提督はゲームの続きを開始する。
今度は膝の上に春雨を乗せて。
冗談半分で「天津風みたいに膝の上で見学するか?」と聞いたのだが、顔を赤らめながら了解の返事をされた為、断れなかったのだ。
春雨「あの、今確認している領地…アントウェルペンではどのように内政をするんですか?」
提督「ここは海に接しているから…そうだな、春雨は遠征先の港で岸壁に投錨している輸送船を良く見掛けるだろ?」
春雨「はい。埠頭で物資を積み込んでいるのを良くみます」
提督「あれも、砂浜だと陸地から船まで物資を運ぶまで手間が掛かるから埠頭を整備しているんだ」
春雨「なるほど、勉強になります」コクコク
提督「それで、このアントウェルペンはまだ港関係の設備が整っていない状態だ。だから商業埠頭の建設を優先して行う」
春雨「これで、船の行き来がし易くなりますね」
提督「これで、イングランドや他の貿易国との海上貿易が盛んになる」
春雨「はい。えっと、そうしたら内陸の領地はどうしますか?」
提督「そうだな…」
内陸の領地で建設可能な施設一覧を開きながら春雨に質問する。
提督「たとえば首都のフルンクフルトとかは内陸で港が無いから船は使えない…そうするとどうやって物資を運ぶと思う」
春雨「えっと……馬車とかですか?」ウーン
提督「そうだ。そうすると、どういった設備を作る必要があるかな?」
春雨「……あ、分かりました!道路の整備ですね」
提督「その通り、道路の質を上げて、人馬の往来を活発化させる」
提督「そして、市場や市庁舎等の経済・内政設備を整えることで、海から内陸までの線が出来上がる」
提督「こうやって交易路を整備して、国家の収入を増やして、施設の発展や軍の補充と更新を進めていくんだ」ナデナデ
春雨「えへへ//春雨、司令官のお蔭で少しだけ賢くなりました」ニパッ
提督と春雨の微笑ましい時間は、夕餉の準備が終わった事を伝えに、如月が提督公室に来るまで続いた。
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如月「ねぇ、司令官?如月の髪、梳いてくれないかしら」
食事を5人で食べた後、天津風は駆逐艦寮から呼び出し…島風か時津風辺りだろうか…があった為、一旦離席している。
そして、如月が提督私室で風呂に入りたいと言い始めたので、提督は止む無く許可した。
その後、珍しく春雨も入りたいと言ったのでこれも許可して、現在入浴中だ。
因みに瑞穂は、食後の片づけと洗濯物を洗いたいと言って提督私室を実質占拠している。
手持ちぶたさな提督は、取り敢えず入浴の邪魔にならないよう提督公室のソファに腰掛けて、明日提出する資料の肉付けを行っていた。
湯上りで、髪が少し湿った状態の如月に声を掛けられたのはそのようなタイミングだった。
提督「男の俺に任せるより、自分で梳いた方が良いんじゃないか?」
如月「あら、司令官を信頼しているから頼んでいるのよ?」
如月「…それとも、金剛さんに榛名さん、赤城さん達にはやってあげて、如月にはしてくれないの?」ツーン
提督「それを言われると何も言えなくなる…ほら、おいで」
プクーッと頬を膨らまして拗ねた振りをする如月に苦笑して、膝をポンポン叩く。
如月「分かってくれたら良いのよ。それじゃあ、失礼しまぁ~す♪」
機嫌を直した如月はそのまま提督の膝の上に座ると、櫛を提督に手渡す。
如月「今日は、瑞穂さんの使っている椿油を使ってみたのよ。どうかしら?」
提督「うん。いつも遠征や演習で潮風を頻繁に浴びてるとは思えない程、艶やかで綺麗だよ」
如月「うふふ、ありがとう司令官//」
髪を傷めないよう慎重に、かつ髪が上手く流れるように櫛で梳かしていく。
この辺の加減の仕方は金剛や大井辺りに当初散々言われたので、提督も手慣れた手付きだ。
しかし、梳かされている如月の顔が、湯上りとは異なる理由で赤みがかっている事には気付かない。
如月「ねえ、司令官?」ユッタリ
提督「はいよー」ナデリ
如月「卯月のこと、叱らないであげてね?」
提督「分かってるよ。任務中は誰よりも真面目で、本当は寂しがりな娘だ…たかがゲームの一つで気にするもんか」
如月「ええ、そうなのよ…司令官は私達のこと、本当に良く見ていてくれるのね」クスッ
提督「大事な娘達だからな」
如月「ありがとう司令官、如月も司令官に大事にされて嬉しいわ♪」ニコッ
そう言って振り返る如月は年相応のあどけなさと、どこか大人びた雰囲気を混ぜ合わせた…とても可愛らしくも艶のある微笑を浮かべていた。
提督「本日も異常が無い事を確認した。それじゃあ、そろそろ消灯時間だし、待機組の3人はこの後宿舎に戻って明日の朝、引継ぎを頼む」
天春月「「「はいっ!!」」」
天津風「それじゃああなた」
如月「また明日」
春雨「お休みなさい」
提督「はい、おやすみー」
待機組の3人が、廊下の端の階段を下りていくのを確認すると提督は執務室に戻る。
すると、瑞穂が包みを持って待機していた。
提督「瑞穂、本日の秘書艦任務お疲れ様」
瑞穂「はい。本日も有り難うございました」
そう言って応えると瑞穂は、手に持つ包みを提督に差し出す。
瑞穂「提督、本日は遅くまで起きていらっしゃるご予定でしょうか?」
提督「明日の会議資料を纏めなきゃならんからな」
瑞穂「こちら、夕餉のご飯の残り物ですが、小腹が空きましたら召し上がってくださいね?」
どうやら包みの中身はお握りと付け合せのようだ。
包みを受け取ると、米の匂いが仄かに漂ってくる。
提督「有り難う瑞穂、大事に頂くよ」
瑞穂「そんな…提督、瑞穂は秘書艦として当然の事をしただけです」クス
提督「その言葉、聞かせてやりたい奴が多数いるんだよなぁ…」
苦笑する提督に微笑む瑞穂
提督「それじゃあ、瑞穂…おやすみ」ナデナデ
瑞穂「はい。お休みなさいませ、貴方様…」ギュウッ
名残惜しそうに執務室を後にする瑞穂を見送りながら、提督は思考に耽る。
提督(瑞穂には…いや、あいつ等には生き残って、それでいて勝たせてやりたいものだ…)
提督「さて、その為にも資料作成をちゃちゃっと進めるとするか!」
そう呟くと提督は海図や資料の束を持って、提督私室に戻る。
中でも、瑞穂から手渡された包みを一番丁寧に持って。
結局その晩、提督私室から明かりが消えることはとうとう無かったと言う。
投下終了
天津風の上着を捲ってお臍周りの匂いを嗅ぎ回りたいだけの人生だった…
ほのぼのと言いつつ、次回からがっつり戦闘パートに入る予定です
ある程度書き溜め終わったら、報告ついでに艦娘安価を取るかと思うので
その際はよろしくお願い致します
感想有り難うございます
少しだけ投下致します
【横須賀鎮守府 第七提督管理下 食堂】
本日の朝礼は、珍しく全体朝礼であった。
そのため、食堂に遠征と近海哨戒任務に出撃している艦娘を除く、全ての艦娘が集合していた。
提督「諸君、おはよう」
/
オハヨーゴザイマース!!
\
提督「本日の朝礼だが、大事な連絡がある為、全体朝礼の形式を取らせてもらった」
提督「既に耳にしている娘もいるだろうが、来月頭から十日間の日程で横須賀鎮守府、航空総軍、海上護衛総隊と合同で大規模な演習作戦を行う次第となった」
提督「対象となるのは、本鎮守府に在籍する全ての艦娘だ」
提督「そして、我々横須賀第七の参加する演習内容は対潜掃討戦、夜間漸減邀撃戦、敵機動部隊への航空撃滅戦、敵輸送・揚陸船団の撃滅の4つだ」
提督「また、その間も物資輸送の遠征任務も継続して行ってもらう」
提督「今から名前を呼ばれた者は、各任務の責任者として、始業開始後に執務室に出頭すること」
そうして提督は、手に持ったメモ用紙に記載された名前を読み上げる。
提督「対潜掃討演習担当。軽巡洋艦 鬼怒」
鬼怒「はいっ!」
提督「夜間漸減邀撃演習担当。高速戦艦 比叡」
比叡「はい、司令!」
提督「航空撃滅演習担当。航空母艦 赤城」
赤城「はっ!」
提督「敵船団撃滅演習担当。重巡洋艦 愛宕」
愛宕「はぁ~い!」
提督「物資遠征任務担当。軽巡洋艦 多摩」
多摩「にゃっ!」
提督「各責任者より、各任務の担当艦が呼集されると思うが、今月末までは演習準備期間として忙しくなると思う」
提督「…が、演習を含めた各任務を全員無事に達成する為にも、各艦娘の協力を期待する。以上、解散」
金剛「気をぉおつけぇえー!!!総員、提督にぃ敬礼っ!!」
艦娘達 ビシッ!!!
提督 スッ
こうして、シ號覆滅作戦が水面下で本格的に始動し始めたのだった。
【横須賀鎮守府 第七提督 執務室】
執務室には、先程名前を呼ばれた5人の艦娘と一番秘書官の金剛が集合していた。
提督「諸君には、演習と遠征任務の作戦計画書、参加艦娘名簿と非常時に開封する大海令八十七號に基づいた作戦指示書を渡しておく」
そう言って提督は6人の艦娘に書類を渡していく。
提督「そして、各艦隊が任務に就く間は、金剛率いる鎮守府直衛艦隊の指揮を俺が執る」
提督「何か質問は?」
比叡「はいっ!」
提督「比叡」
比叡「演習の割に、模擬弾ではなく実戦用の実弾なのは何故なんですか?」
提督「理由は二つ。一つ目は演習とはいえ、今回は普段の演習海域である本土近海ではなく、深海棲艦の出没する可能性がある海域であること」
提督「二つ目は、航空総軍と海上護衛総隊、そして横須賀鎮守府第一から第七までを総動員した、過去に例を見ない大規模演習であること。つまり、より実戦に即した雰囲気で行う必要があるからだ」
比叡「分かりました。司令、夜間漸減邀撃の斬り込みは比叡にまっかせてください!」
提督「良い返事だ。潜水艦隊も同様の任務だから、きちんと伝えてくれ。他に質問がある奴は?」
多摩「提督、質問にゃ」
提督「多摩」
多摩「この、作戦指示書を開封する判断はどうすれば良いにゃ?」
提督「開封判断だが、非常時は緊急通信としてシ號覆滅作戦開始を意味する暗号電文を打電する」
提督「その電文傍受と同時に開封してくれ、中身自体は今回の任務に被るような内容だ」
多摩「シ號…何の略にゃ?」
提督「前世に置いて、我が本土が初空襲を受けた。その際、爆撃機はどこから来たのかという問いに米国の大統領が応えたのだ。「我々の爆撃機はシャングリラから飛び立った」とな…」
多摩「成る程にゃ…シャングリラの頭文字の事なのね。つまり提督は、演習期間中に敵機動部隊による本土空襲を想定しているのにゃ?」
提督「ああ、深海棲艦が我々の前世に近い攻勢作戦を取ることが多いと、総力戦研究所における今般の分析で分かっている」
提督「だから、連中が前世同様シャングリラから我々に挑んでくるのなら、シャングリラそのものを我々が叩き潰す」
提督「それが、シ號覆滅作戦の骨子だ。その為、大規模演習で横須賀の戦力の大部分が本土近海を離れる事を派手に通信で各地に打電しまくる。連中を誘い込む為にな…」ニヤリ
多摩「有り難うにゃ。遠征任務とはいえ、必ず成功させるにゃ」
提督「有り難う多摩。他には?」
鬼怒「はいっ!鬼怒達は本土近海での任務だけど、これは本土空襲に乗じて敵潜水艦が沿岸航路を脅かす可能性があるって事で良いの?」
提督「ああ、基本はそれで問題無い…が」
提督は執務机に置かれた使い古された手帳を手に取り、パラパラと捲る。
そこには、前世の記憶を取り戻した時から、想い出せるだけの前世での事象が時系列順に書かれていた。
提督「前世で本土の制空権が敵の手に落ち敵超重爆による空襲が本格化した際に、本土近海に不時着水した敵機のパイロットを救助する為、敵潜水艦の活動があった形跡がある」
提督「深海棲艦の連中は幾らでも沸いて出てくるが、所詮は生まれたての新兵だ」
提督「だが殲滅を逃れて経験を積んだ奴が戦列復帰する可能性を極力減らしたい。そう言った意味での敵潜水艦掃討任務でもある」
鬼怒「分かったよ提督。鬼怒に任せて!」
提督「他は?」
愛宕「はぁーい」
提督「愛宕」
愛宕「私の率いる艦隊は、低速の戦艦が多い編成だけど、これで問題無いのかしら?」
提督「ああ、本土空襲を担う敵艦隊は恐らく一撃離脱の為の高速艦だけの編成だろう。そうすると低速の艦隊だと追い付けない」
提督「そして、今のところ深海棲艦の重爆は欧州方面でしか確認されていない」
提督「そうすると、前世以上に本土近海に近づいた敵空母から艦載機を発艦させる必要がある」
提督「赤城、敵の大規模基地に艦載機を使った強襲を行う際、最も危険だと思われる時間は何時だ?」
赤城「はっ!攻撃隊を送り出し、帰艦を待っている間の時間です。艦隊上空が手薄になり、且つ送り狼の可能性も考慮されますから」
提督「宜しい。じゃあ、補助的な護衛空母に直衛艦への補給を行う艦隊が別にいればどうだろう?」
赤城「機動部隊としては、護衛空母に艦隊上空の直衛を任せて、強襲任務に注力出来ます」
提督「そうだな。愛宕、つまるところそう言う事だ」
愛宕「分かりました。私達は、敵本体から離れた海域に位置する敵護衛空母と補給艦を食べれば良いのね?」
提督「その通りだ。そして、今回は前世と違いこちらも護衛に軽空母と対潜装備の水雷戦隊を複数随伴させる。敵の蚊蜻蛉とドン亀の心配なんぞせず、好きなだけ沈めて来い」
愛宕「はぁ~い。愛宕、了解で~す♪」
提督「他には……無さそうだな」
金剛「あっ!因みに鎮守府は私達直衛艦隊と、各軍協力の元きちんと護り抜きますので、皆サンは各自の任務に集中して貰って大丈夫デース!」Yeah!!
鬼怒「金剛さん!提督の事、お願いします!」
金剛「問題Nothing!!陣頭指揮を執るとか言ったら、ぶん殴ってでも地下指揮所に連れて行って閉じ込めておきマース!」ブイッ
提督「おいおい、手加減してくれよ…」エェ…
提督の情けない声に、一同笑いに包まれる。
だが、笑いながらも既にこの部屋の7人は、演習というのは体の良い言い訳であり、敵機動部隊による本土空襲が必須であるという確信に満ちていたのだった。
投下終了
書きとめ止めたらまた投下します
あと、次は投下後に艦娘の安価予定です
書き溜めが完了しました
4レス程投下してその後安価レスとなります
【横須賀鎮守府 第七埠頭】
月末、全ての準備が整った。
埠頭は、演習と遠征に出立する艤装を展開した艦娘達、そしてそれを見送る提督と鎮守府直衛の艦娘達の姿で埋まっている。
月末までは、艦娘の準備以上に提督の方が慌ただしかった。
鎮守府全体での作戦会議、統合参謀本部との調整や、航空総軍、海上護衛総隊の参謀との打合わせに出席したりと出張だらけである。
また、演習に際しての使用弾薬の計算や使用装備に艤装の確認等、正に寝る間も無い忙しさであった。
書類仕事の方は、金剛を始め熟達した秘書艦達に手伝ってもらう事で何とかなった。
そして、提督権限でしか処理出来ない重要書類や会議の出席、艦娘のメンタルケア等は提督の手によって成された。
艦娘とは精神的な作用で、使用する艤装の性能が変わってくる。
鎮守府に着任した艦娘は、それぞれ個人的な問題…家庭や周囲の環境、そして自身の操る艤装の持つ前世の記憶との対面等…を抱えている。
提督自身、前世の記憶で手の震えが止まらなくなる時がある。
彼より若く、時には幼すぎる彼女達にはとても大きなしこりとなっている。
そのしこりを、提督なりに受け止めて、解き解す時間が大事だと提督は考えていた。
だから、艦娘達の話を積極的に聞き、気持ちを受け止め、時間を割いた。
そして艦娘達も、自分の出自や感情の波を受け止めてくれる提督に縋った。
その結果は、様々である。
提督への尊敬、憧憬、思慕、依存等の感情を艦娘に抱かせた。
そして、精神的な支えとして提督の存在が大きくなると、艦娘の精神状態は安定して、艤装との適用も上がり、結果は戦果となり実績となった。その成果を数字で示すことで文官も納得した。
だからこそ、海軍は提督と艦娘の接触…時に私的かつ精神的なものであっても…を制止するどころか推奨した。ケッコンカッコカリ制度がその具体例である。
艦娘候補となった女性も、配属先の提督と同郷や近い地域、既に配属されている知り合いや同じ施設で育った仲間達と同じ鎮守府に配属出来るように考慮されている。
出立日時が決まってからは、提督の暇な時間を見付けては様々な艦娘が提督の元に訪ねてきた。
頭を撫でてほしい。肩車をして欲しい。抱きしめてほしい。怖いから一緒に寝て欲しい等々である。
提督はその一つ一つに真摯に応えた。
流石に全員の相手は無理だったが、その分は帰還時にという約束でどうにか諌めた。
話が脱線してしまったが、今埠頭に立ち、出立しようとしている艦娘達に不安の表情は窺えない。
平和の為に。仲間の為に。提督の為に。
艦娘達はそれぞれの思いを胸に抱きながら、提督の見送りを迎えた。
「提督!」
「提督っ!」
「てーとく!」
「クソ提督!」
「司令!」
「くず司令!」
「司令官!」
「しれぇ!」
「あなた!」
「君!」
「貴様!」
提督は出立する艦娘一人一人の前を歩き、その呼び掛けに応じていく。
提督が前に来ると、暇を持て余して座り込んでいた艦娘も立ち上がり、提督に呼びかける。
照れ隠しで提督を呼ぶ曙の頭を撫でたり、迷いの無い表情でこちらの瞳を見つめてくる霞に頷いたりと、足を時々止めながら、提督は全員と無言の挨拶を交わした。
そして、全員と挨拶を終えた提督は、彼女等の中央付近に立ち、訓示を始める。
提督「諸君、これより演習と遠征任務が開始される」
提督「君たちは、俺の誇りであり仲間であり家族でもある」
提督「いつも言っているが勇気と無謀の意味を取り違えるな」
提督「何かあれば無理せず、隣の仲間、同僚、戦友、ライバルに助けを求めろ!」
提督「必ず、全員無事に帰還せよ!」
提督「俺はここで、この鎮守府で諸君の帰りを待つ。だから安心して戻ってこい!」
提督「良いか!?もし、白靄の中一人でうろついた揚句、誰も居ない鎮守府に辿り着いたら…」
提督「それはきっと死後の世界…ヴァルハラに辿り着いてしまったって事だからな!!」
金剛「Hey!!提督、今のは例えが微妙過ぎて誰も…駆逐イ級だって理解出来ないヨー?」アキレ
茶々を入れる金剛に爆笑する艦娘達。
提督も苦笑をするが、直ぐに表情を引き締める。
提督「諸君!!」
直ぐに艦娘達も直立不動になる。
提督「諸君達艦娘に力と名誉…そして八百万の神の加護と永遠の栄光を!!」
こうして、賽は投げられたのだった。
投下終了
以上で戦闘前パートは終了で、次回から戦闘パートに入ります
なるべく色んな艦娘視点で書いていく予定ですが
特に掘り下げて欲しいという艦娘が居れば安価でご指定願います
>>+1~5 艦娘安価
※大和・ビスマルク・大鳳以外の艦娘
※連投と安価内容被りは下にずらします
※埋まらなければこちらで適当に書きます
書き込んだ直後に違和感の正体に気づいた
下ズレして弥生でお願い
混乱させてしまい申し訳ありません
なるべく色んな艦娘を出したいと思いますので既出の艦娘は無しという旨
次回安価時にはその点を明記致します
>>218さん
手間取らせてしまってごめんなさい
安価は 陸奥 龍田 舞風 利根 弥生 で書きます
少しだけ投下しますね
【横須賀鎮守府 第七提督私室 非常階段】
提督「平和だな…大きな戦が起きているとは思えない」
深海棲艦出現前に比べ数こそ減っているが、荷物を運ぶ艀、焼玉エンジンの小さな漁船や機帆船の往来を眺めながら提督が呟く。
榛名「この静けさも前世と違い、ピリピリとした空気が感じられないからでしょうか」
提督「本土防衛は重要だが、精神的に煽った処で敵機は落とせんからな」
榛名「榛名も前世において大空襲を体験しましたが、精神論の無意味さを痛感しました」
提督「…思えば冷や汗が出る」
榛名「全くです…」
提督「しかし一昨年だったか?あの頃に比べて榛名はとても変わったな」
榛名「…鉄底海峡突破作戦ですね」エット
当時、太平洋戦域で初めて確認された陸上型の棲姫に対する大規模攻撃が行われた。
連続出撃で参加艦艇は極度の疲労が溜まっていた。
その為、様々な方法…提督への八つ当たり等…で各自発散させていたのだが、榛名は只管耐えていた。
感情を押し込め、大丈夫だと虚勢を張り、出撃を続けた。
前世の記憶が榛名に戻ったのは、正にそのような時であった。
それは耐えきれない精神的な負荷となり、半ば錯乱状態になってしまったのだ。
止む無く代行に比叡を当てて作戦を継続しつつ、提督は榛名の回復を願った。
無線越しに作戦の進行具合を確認しつつ片時も榛名の傍を離れなかった。
感情の波を抑えきれない榛名は、提督にその全てをぶつけた。
ひっかき傷や痣だらけになりながら、提督は榛名の傍を離れずに榛名を抱きしめ、安心させ、落ち着きを取り戻すように努めた。
作戦が成功したと同時に榛名の緊張の糸が切れたのか、提督に倒れこむように気絶して半日目を覚まさなかった。
目が覚めたとき、提督公室のソファで横になっていた。
机に携帯型通信機を置き、対面で提督が帰還する艦隊とやり取りをしていた。
意識が覚醒していく中、榛名は錯乱してしまった事、提督に当たってしまった事を詫びた。
泣きながら謝罪の言葉を述べる榛名を、しかし提督は優しく抱きしめ、頭を優しく撫でながら「榛名が無事で良かった」と言ってくれた。
この時からでしょうか?榛名の中で何かが変わったのは…
あの時、榛名が無事だったことを見て安心した提督の優しいお顔。
今思い出しても、胸の高鳴りが止まりません。
提督に…提督に救って頂いたおかげで、榛名は大丈夫になりました。
そして、以前の榛名では出来なかった事も出来るようになりました。
金剛お姉さまのように、提督にもっと榛名に時間を割いて欲しいと考えて行動するようになりました。
お顔を向けて欲しい。優しく頭を撫でて欲しい。抱きしめて欲しい……と。
自分の前世に関しても、大丈夫になりました。
提督の元でなら、全てを乗り越えて戦えると思えるようになったからです。
鎮守府で榛名達の帰りを待っていてくださる提督が居てくださるから。
榛名は提督と、この鎮守府の皆がいる限り大丈夫です。
それに榛名、ケッコンカッコカリも出来て、提督の奥さんの一人ですから…えへへ//
榛名「さぁ、そろそろ戻らないと金剛お姉さまが拗ねてしまわれますよ?」ヤダッ
提督「そんなに時間経ってたか…確かにそりゃ面倒くさいな」
榛名「まぁ、提督ったら。金剛お姉さまに今の事を言いつけてしまいますよ?」
提督「勘弁してくれ…今のは、俺と榛名だけの秘密だぞ?」
榛名「仕方ありませんね…分かりました。提督と榛名だけの秘密にしておきます」フンス
提督「榛名が優しい娘で助かるよ」ナデナデ
榛名「えへっ//」ニヘラ
【横須賀鎮守府 第七提督公室】
「TINJUFU Tea Party」とは、金剛曰く「鎮守府内の様々な事について、紅茶の味と香りを楽しみながら穏やかに議論を行う、とても文明的な時間なのデース」らしい。
まあ、ぶっちゃけると唯の女子会なので提督としては積極的に参加する気はあまりない。
ネタが尽きると、大体火の粉が自分に降りかかり、つるし上げの対象とされてしまうからだった。
この日、出席しているのは鎮守府直衛を務める高速戦艦 金剛・榛名、重巡洋艦 青葉、航空巡洋艦 利根、駆逐艦 響(ヴェールヌイ)である。
もう一人、軽巡洋艦 大淀が鎮守府に残っているが、ここ数日は公室横の通信室で緊急電に備えて待機している。
演習・遠征艦隊が出撃してから、既に一週間が経とうとしていた。
金剛「しっかし、前世以上に戦線を広げてしまって大丈夫なんですかネー?」
提督「太平洋側は島伝いに米豪連絡線の回復に努めて、印度洋じゃ大陸沿いにスエズ打通だもんなぁ」
榛名「そういった意味では、やはり深海棲艦側の戦力もピークを越えたのではないでしょうか」
利根「罠という事も考えられるぞ。我々を誘いだして、補給線を断ち切る為の」
響「大いにあり得るね。畑で兵士が採れるみたいに、深海棲艦も海からぽこじゃか沸いてくるからね」
提督「噂の域を出ないが、新型の深海棲艦の情報も出ている。気を引き締めて掛からんと、前世のミッドウェーと同じ目に合わされるやもしれない」
青葉「ほうほう、それは気になりますねぇ…ところで司令官、響ちゃんの抱き心地は?」
提督「軽すぎて心配になるくらいだ…お前ちゃんと食べてるのか?」
響「毎食きちんと食べてるよ。それとも、司令官は肉付きが良い方が好みなのかな?」
提督「そんな事で好き嫌いはせんが…そろそろ降りてくれませんかね?」
響「…やだよ。私は直衛艦だよ?司令官と鎮守府を守る任務についているんだ」
響「それに、私が降りると司令官は貧乏揺すりを始めるか、また煙草を吸いに行ってしまうからね」
青葉「確かに、本数増えましたしねぇ…内心焦りまくってますよね?」
提督「…いつから分かってた?」
金剛「最初からデース」ハンッ
榛名「提督、顔には出さないだけで行動で良く分かりますからね」フンス
利根「…まあ、気持ちは分からんでもない。吾輩も早く出撃したいからのぅ」グデェー
大淀「提督っ!!」ドアバンッ
通信室のドアが開けられ、大淀が通信文を片手に文字通り飛び込んでくる。
瞬間、提督が立ち上がれるように響は提督の膝から飛び降り、脇にどく。
提督「何事か!?」
大淀「敵機の…来襲です」
差し出された通信文を受け取りながら、提督は違和感を感じる。
敵機動部隊の発見では無いのか…と。
大淀「太平洋側で特設監視艇 第三十二日東丸より「敵機動部隊発見。我ガ艇ニ気付クモソノママ本土方面ニ高速デ通過ス。厳重警戒ニ当ラレタシ」との一報があり」
提督「その後は?」
大淀「既に硫黄島と房総半島配備の景雲改が索敵に飛び立ちました」
大淀「そして、もう一報あります」
提督「…手短に頼む」
大淀「海上護衛総隊 台湾支隊の哨戒機大洋が大陸沿岸を哨戒飛行中、浙江省方面より高々度で本土方面へ向け飛行する所属不明機多数を発見したと…」
提督「大淀、引き続き通信を頼む。金剛、来い!」ガタッ
大淀「はっ!!」
金剛「Sir!!」
立ち上がると提督は、そのまま執務室に直行する。
浙江省…麗水……前世では、ドゥーリットル攻撃隊が降りた場所か。
くそ、どいつもこいつも前世の事を引きずりやがって!!
執務机の中から、以前夕張に概算してもらった報告書を引っ張り出す。
その間に金剛は、東南亜細亜と大陸、日本が含まれる地図を取り出し執務机に広げる。
提督「浙江省から直進したとして、連中は機動部隊攻撃の陽動だろうから…」
榛名「やはり軍需施設…九州だと八幡製鉄所を中心とした北九州工業地帯でしょうか」
提督「となると、迎撃に飛び上がるのは…」
利根「航空総軍 八幡製鉄所防空隊所属の天雷、雷電改、鍾馗改、キ-102甲…征龍だったか?その辺りじゃろうな」
提督「くそ、そっちは装備の更新が間に合ってないのか…」
響「この報告書に近い巡航速度に巡航高度だと、近づく前に逃げられそうだね」
青葉「司令官、長官に繋がりました」
提督「助かる…」
その後、電話で横須賀鎮守府長官と一分程度、会話をして受話器を置く。
大淀「提督、追加で入電です」
提督「読み上げてくれ」
大淀「八丈島の陸軍電波警戒所が敵航空機多数を捉えました。数十分後に横須賀到達の見込みです」
提督「宜しい。大淀、シ號覆滅作戦開始を打電しろ。その後、俺と一緒に高角砲塔L塔の対空指揮所に向かうぞ」
大淀「分かりました。では、後程…」
そう言って大淀は通信室に戻った。
提督は執務室に残った5人に向けて言う。
提督「諸君、始まった。以前話した通りにやってくれ…頼むぞ」
金剛「Yes!!私の実力、見せてあげるネー!!」
榛名「勝手は!榛名が!許しません!!」
青葉「青葉にお任せ~」
利根「うむ、出陣じゃな!」
響「了解!響、出るよ」
全員を見回し、出撃許可を与える提督。
そして、最後に部屋から退出しようとした金剛に話掛けられる。
金剛「Hey, my Admiral!!戦闘旗、少しだけ下げても良いですカー?」
提督「…ったく、一時留学しただけなのに旧大陸人風を吹かしやがって」
金剛「Uh-huh…その海軍の傍流の血を引く、極東の島国の一海軍軍人風情が何言ってるネー」
提督「……違いない」
数舜の沈黙の後、提督は苦笑する。
提督「好きにやってこい。ただし、戦闘結果報告書は日本語で書けよ?一々訳すのは面倒だからな」
金剛「Sir, my Admiral!!戦果Result…期待してネー?」
そう言って金剛達5人は出撃する為、埠頭に向けて執務室を飛び出していく。
頼もしいその後ろ姿を見届けると、提督は大淀を伴い、長官や他の横須賀鎮守府提督が集まる高角砲塔へと向かう。
長い一日が始まったのだ。
投下終了
利根ちゃんの掘り下げ含め書き溜めたらまた投下します
戦闘旗云々は手元に資料が無く曖昧なので、間違っていたらごめんなさい
弥生の部分が書けましたので投下します
横須賀鎮守府より打電されたシ號覆滅作戦の開始を示す暗号電文は、横須賀鎮守府第七の各任務に就く艦娘達に傍受された。
その瞬間、各任務の責任者…旗艦…を務める艦娘により作戦指示書の封が切られる。
内容は、演習で行っている内容をそのまま、敵艦隊の位置判明と共に実施するよう変更する旨、明記されていた。
鬼怒「これより、演習任務を中止します!!」
比叡「我々は、作戦指示書に従い、シ號覆滅作戦を実施します!!」
愛宕「全艦、直ちに総員戦闘配置に着いてくださぁーい!」
赤城「攻撃隊には、対艦攻撃兵装を…急いで!」
金剛「戦闘旗掲げぇ!!」
多摩「にゃ!」
多摩を旗艦とする遠征任務艦隊は、東南亜細亜の資源地帯から物資…主に石油やゴム、ボーキサイトやタングステン等の戦略資源…を輸送する船団の護衛に就いていた。
これはいつも通りの遠征任務なので、シ號覆滅作戦が発動されたとて特段任務の内容に変更があるわけではない。
しかし、敵の陽動や新たに出現する深海棲艦に遭遇する可能性もある為、普段以上に周辺への監視を強めた。
既に、資源地帯近海にて哨戒活動を行っている海上護衛総隊哨戒機の哨戒範囲から外れて久しい。
卯月「作戦が始まっても、卯月達はいつも通りっぴょん」プップクプー
弥生「…うん。でも、私達の資源で…皆が戦えるから…頑張らないと」
球磨「その通りだクマ。球磨達は提督達がドンパチ出来るように、遠路遥々資源を運ぶ手伝いをしてるクマ」
球磨「どうせ戻ったら連中好き勝手に暴れてるだろうから、その分こっちも報酬は弾んでもらうクマ」
この20隻程度の輸送船団を護衛するのは、横須賀第三と第七の遠征任務艦隊である。
序列の問題…この場合悪しき習慣ではなく艦娘の経験と練度の差から…船団の前方と左翼側を第三の艦娘。
そして、後方と右翼側を第七の艦娘達が護衛していた。
輸送船団と最後尾を護衛する艦娘の間には、第三と第七の軽空母艦娘が一人ずつ配置され、夜間と荒天時以外は常時哨戒機を飛ばしている。
卯月と弥生は輸送船団の右翼側で、球磨率いる水雷戦隊に配置されていた。
旗艦球磨を先頭に睦月型駆逐艦 睦月、如月、弥生、卯月、望月の6人である。
卯月「じゃあうーちゃんはぁ、司令官に遊園地か動物園に連れて行って欲しいっぴょん!」
睦月「あっ!それ睦月も賛成にゃし!!」
望月「あたしは別に…まぁ、司令官と一日だらけられるならそれでいいかなー」
如月「望月、それって普段と変わらないじゃない…」
如月「それと卯月…一応司令官は許してくれたみたいだけど、一言くらい言っておきなさいよ?」
弥生「卯月…また、何かいたずら…したの?」
卯月「えっとぉ…色々やってるから、うーちゃんもどの事か分からないっぴょん!」
如月「悪戯というか内政ズタボロというか…」
卯月「あぁー!!思い出したっぴょん!あのゲームの事ぴょん!?」
望月「ゲーム?あぁ、司令官のパソコンのやつ…?」
如月「そ、最後にやったの卯月じゃないの?」
卯月「それなら、この前待機組の所に遊びに行った時にやってたぴょん!」フンス
卯月「でも、うーちゃんその時は特にイタズラした記憶は無いっぴょん…」
如月「各国との外交関係が極限まで悪くなった揚句、破門寸前だったのよ…何したのよ?」
卯月「あーそれはね、うーちゃん流せっきょくてき外交をしたらそうなったぴょん!」
睦月「ほぅほぅ…その心は?」
卯月「周辺国の全領土を頂くか国の有り金ちょーだいって、さもなければ戦争しかけるぞってお願いしまくったぴょん!」ドヤァッ
如月「まぁ…」
睦月「うわぁ、卯月ってば大胆だね!?」オドロキィッ
望月「プーッ…あのゲームでそれやっちゃったんだ。リカバリ大変だったんじゃない?」クスクス
如月「まあ、司令官に凄い所見せてやるんだって息巻いてた天津風ちゃんが一番の被害者…?」
如月「むしろ、司令官に代打頼ませて色々とお喋りが出来たから、結果オーライって所かしら」
望月「何それ羨ましい…最近司令官忙しいから、あんまり一緒にゲーム出来ないんだよなぁ」
睦月「にゃにゃ!実は卯月の計画的犯行だったってことかにゃ!?」
卯月「そうだっぴょん!もっともっとうーちゃんを褒め称えるべきだっぴょん!!」フンスフンスッ
弥生「でも…きちんと司令官にも…言った方が良いと思う」
卯月「んん~確かに、じゃあ弥生も一緒に行って司令官に構って貰うっぴょん!」
弥生「…え?弥生…も?」
卯月「そうだっぴょん!弥生も最近司令官に構ってもらってないぴょん!」
弥生「それは…司令官が…忙しそうだから、気を使わないように…してただけ」
卯月「でもでもぉ、弥生ってば折角うーちゃんの喋り方真似してるんだし、司令官にお披露目しないのぉ~?」
弥生「うぇ…!?き…聞いてたの?//」
卯月「ぴょん!」フンス
この日、一番弥生が動揺した。
弥生と卯月は睦月型の姉妹であると同時に、元々血の繋がった姉妹だった。
そして、姉の方だった弥生は妹の卯月同様、ごく普通の家庭で育った。
しかし、幼い弥生は卯月が…妹が…生まれると、幼いながらに姉としてしっかりと、大人を見習って行動しようと考えた。
我儘で甘えたがりの卯月に対して、弥生は我儘を言わず常に我慢をして、長女として大人にも背伸びして接した。
その結果、常に緊張を強いられた弥生の顔から、表情が徐々に減っていった。
艦娘の候補として、二人姉妹とも海軍に籍を置く事になったのはそんな時だった。
海軍の軍人さんは、きっと今までの大人よりも凄い偉い人。だから、弥生がしっかりしないと…
だが、弥生の心構えは結果的に無意味に終わる。
睦月型駆逐艦 弥生、卯月として着任したとき、司令官は二人の目線に合わせてしゃがみ、着任に対する礼と歓迎の言葉を述べたのだ。勿論二人の頭を撫でながら。
司令官の手はごつごつしていたけど、嫌な感じじゃなかった。
この日から、弥生は背伸びをする必要が無くなった。
他の艦娘が居る時や、任務の時は皆平等に。でも、弥生や他の駆逐艦とお話しする時、司令官は弥生達の目線に合わせて接してくれた。
こんな事、今まで殆ど経験が無かったから、逆に弥生は混乱した。
今までは、常に弥生が背伸びをしてきたのに、今度はどうすれば良いのか。
弥生「司令官…ごめんなさい。その…表情が硬くって…」
ある時、司令官に対する様々な感情をどう表現して良いか分からず悩んでいたら、司令官に声を掛けられた。
司令官は、弥生の目線に立つと頭を撫でながら
提督「今は、色々と悩みなさい。でも、弥生のその顔も、弥生の個性だから俺は気にしないよ」
提督「後はそうだな…笑ってみるか?」
そう言って司令官は弥生の頬っぺたを、表情が柔らかくなるようにって、マッサージしてくれた。
くすぐったかったけど、とても温かかった。
その時は、卯月がやってきて司令官に飛び掛かって、司令官が倒れたけど、とても楽しかった…と思う。
それから、一人の時は時々、顔をマッサージしてみる。司令官がしてくれたみたいに。
他には、最近は卯月の真似をして司令官を呼んでみようと練習しているが、中々上手くいかない。
卯月に言われたのは、その事についてだった。
如月「あらぁ、それは如月も聞いてみたいわぁ」クスッ
睦月「睦月も聞きたいにゃ~」ニャシシ
望月「寧ろ、それを聞いた司令官の反応が気になるわー」ダルーン
弥生「それは…駄目、弥生と…司令官の二人の時だけに…するって決めてるから」
卯月「うびゃあぁ…それはズルいっぴょん!うーちゃんもぉ」ブー
如月「まぁ、弥生がそう言うなら」
睦月「仕方ないのにゃ」
望月「…ま、そのうち司令官に感想聞けば良いし」
卯月「ぴょん!?確かに、なら問題無いっぴょん。弥生は弥生で司令官に遊んでもらうっぴょん」
弥生「うぇ…う、うん」コクリ
そう考えると、この任務も退屈ではなくなる。
終わった先の楽しみ、自分のしたい事が出来たのだ。
球磨「まぁ、確かに弥生は着任当初と比べて、きちんと自己表現が出来るようになってきて球磨も育てた甲斐があったクマ!」
弥生「そう…ですか。有り難う…ございます」
球磨「お礼なんて言われる事はしていなクマよ?先任として、きちっと道を示すのは当然だし、弥生は思った事があればどんどん球磨達に言って欲しいクマ」
弥生「はい…弥生、頑張ります」
多摩「お喋り中の所申し訳にゃいが、お客さんにゃ」
割り込む多摩の声。
多摩「右翼後方に不明感数隻。今、龍驤の艦載機が向かったけど、恐らく出現したての連中にゃ」
球磨「球磨、了解したクマ!」
球磨「よぉし、ちびっ子ども!!やる事は分かってるクマね!?」
睦月「睦月達のお仕事はぁ」
如月「輸送船団を守る為」
弥生「深海棲艦…に対して」
卯月「時間稼ぎをして」
望月「船団が安全に退避できるようにするって事っしょー?」
球磨「その通りだクマ!!よぅし、全艦取り舵、敵に突っ込んで攪乱するクマ!!」
睦月「了解にゃし!」
如月「とぉりかぁ~じ!」
弥生「弥生、水雷戦隊…出撃です!」
卯月「卯月、頑張るぴょん!」
望月「あーい、それじゃあ行くよー」
天気晴朗なれど、波高し。
こうして、弥生達のシ號覆滅作戦が始まった。
投下終了
次は時系列的に龍田さんか舞風あたり書き溜めて投下します
こう、秋イベが小規模だと予想してね。安価枠に大型建造の艦娘を追加しようと…やってみたんですよ。
全部出るレシピで大型艦建造。そうしたらね、出来たのがビスマルク級戦艦赤城に装甲空母赤城に大和型戦艦赤城に普通の赤城2人なんですよ…
秘書艦をZ1やZ3、運の高い空母にしたりしたんですけど、他は二航戦の二人とか被害担当空母とひゃっはーと使い古したまな板と、まるゆ二人とあきつ丸さんだった訳ですよ。
それでね、何が一番怖かったかって、気が付いたら各資源がね、6~7万程消えていたんですよね…orz
龍田編の書き溜めが終わりましたので投下します
【本土近海 太平洋側】
潜水カ級エリートは爆雷攻撃を受けて艤装にダメージを受けると、潜水航行不能となった為急速浮上を行った。
上手くいけば、自分に爆雷攻撃を加えた駆逐艦に魚雷を撃ち込んで道連れに出来るかもしれない。
一抹の期待に掛けて、浮上する。
普段は海中で過ごす事が殆どであるカ級は、眩しい太陽が苦手だった。
だが、呼吸を司る艤装にダメージを負った状態ではそのような事を考えている場合ではない。
せめて、太陽が雲に隠れていれば…そう思った。
だから急速浮上をして、海面上に顔を出したとき、望みが叶ったと思った。
浮上した海面は日陰となっており、眩しさに目が眩む事を避けられたのである。
しかし、それは太陽が雲に隠れたからではなかった。
カ級の眼前に艦娘が一人、太陽を背に仁王立ちしていた為、偶々その部分が日陰となっていただけであった。
「こんにちわぁ~」
朗らかに、その艦娘は挨拶をする。
その非日常的な光景に、一瞬我を忘れるカ級。
「ごきげんよう~」
陰っていて、その顔は上手く窺えない。
ようやく、日光にカ級の眼が慣れた時に、ようやく表情が分かった。
とても、とても綺麗な笑顔…だと思った。
眼を細め、口角を上げ、そして頭には輪っか型の艤装が見える。
いつか、海底に沈むニンゲンの古い古い船で見かけた彫像…ニンゲンはテンシと呼んでいると仲間に教わった…のようだった。
「そぉして…さようなら~♪」
瞬間、カ級は頭部に強い衝撃を受け、永遠に意識を手放した。
龍田「鬼怒ちゃ~ん!こっちの敵、始末したわよぉ」
得物を一振りして、刃先に付着した深海棲艦の体液を飛ばすと、龍田は朗らかな声で伝える。
鬼怒「了解だよ!龍田さんは、引き続き辺りの警戒をお願いします!」
龍田「はぁ~い」
戦闘詳報に、撃沈確実 一の文字を書き込む鬼怒を横目に、龍田は辺りを警戒する。
シ號覆滅作戦が正式に発動する以前から、鬼怒達の戦いは水面下で始まっていた。
元来、敵潜水艦による通商路破壊を防ぐ為の演習であり、各員実弾配備ともなれば、演習開始と共に全艦娘は戦闘配置を取っており、敵の潜水艦…その目的を問わず…を発見次第、演習の体で追い詰めていった。
参加艦娘は、横須賀第七からは軽巡洋艦 鬼怒、長良、名取、五十鈴、龍田、夕張の5人。駆逐艦 雷、電、風雲、海風、リベッチオ他多数に練習巡洋艦 香取、水上機母艦 瑞穂、飛行艇母艦 秋津洲、陸軍特種船 丙型 あきつ丸、軽空母 龍鳳である。
更に、本土沿岸との事で、海上護衛総隊の哨戒飛行隊に所属する哨戒機 東海、大洋、七式大艇も参加している。
雷「龍田さんは良いわよねぇ、体液が付着しても直ぐに跳ばせて…」
既に二隻程、浮上してきた敵潜水艦の頭部を叩き割っている錨を手に、雷が嘯く。
龍田「あらぁ、でも雷ちゃんの錨もぉ提督に頂いたものなんでしょう~?」
雷「だからこそ…なのよ、お手入れするのは当たり前なんだけど、深海棲艦の体液って洗っても中々落ちないのよねぇ…」
「困っちゃうわ!」と言う雷の言い方が、彼女の姉妹艦 暁にそっくりなのでクスリと龍田は笑った。
姉妹艦と言えば…
龍田(天龍ちゃん…みんなに迷惑かけてないかなぁ~)
天龍・龍田の二人は血の繋がった姉妹だった。
しかし、その家庭は円満とはいかず、両親は殆ど家にいなかったか、いても怒鳴り声を挙げて喧嘩ばかりしていた。
当時幼い龍田を…怖がり怯える妹に…天龍は片時も離れず付き添い、時には怒りの矛先を子供達に向ける両親の前に立ち、龍田を庇った。
ある日、両親は家に乗り込んできた警察に捕まり、二度と戻ってこなかった。
残された二人は行く宛も無かった為、施設に預けられ、そこで幼少期を過ごした。
天龍は昔から良く施設の子や周りの子達と遊び回り、時には取っ組み合いの喧嘩ばかりしていた。
そんな天龍におっかなびっくり付き従うのが、幼少時の龍田だった。
ある時、天龍が年上の悪ガキと喧嘩して、ボコボコにされて帰ってきた。
悔しくて泣く天龍の傍らで、龍田は私にも何か天龍ちゃんの手助けが出来ないか…と考えた。
当時の天龍は、木刀を片手に遊び歩いていた。
だったら、私は長物で天龍ちゃんを後ろから支えよう。
そう思った龍田は薙刀の道場に通い始めた。
それから、喧嘩の度に二人は勝ち続けてきた。
天龍が斬り込み、龍田がその後ろから相手を突き崩す。
二人の息はピッタリだった。
艦娘の候補者として、海軍に呼ばれたのはそのような時分だった。
候補者として書類に署名した二人は、軽巡洋艦 天龍・龍田として、着任した。
まだ艦娘の数も20人に満たない小さな鎮守府だった。
その提督はしかめっ面で二人を迎えた。
この若い提督を天龍と龍田は舐めていた。
そして、それをするに相応しい戦果を挙げ、天龍は勢いを増して提督に迫った。
「もっと俺を戦わせろっ!!」と…
しかし提督は、必要以上の出撃をさせなかった。
口より手が出るタイプの天龍は、そうすると出撃の度に敵に突っ込み、掻き乱し、戦果と引き換えに中波して戻ってきた。
その度に、提督は天龍に無茶をするなと諌めた。天龍がそれに頷く事は無かった。
ある日、執務室に龍田が呼ばれた。
流石に提督も呆れて、私達は左遷かしら…と内心龍田は考えていた。
だから、提督が龍田に「天龍の無茶を止めるのを手伝って欲しい」と頭を下げられた時、呆気に取られた。
確かに、現状は天龍に深刻な被害ではないが、喧嘩と実戦は違う。
このままでは天龍が轟沈する可能性がある。
それだけは避けたい。
だから、龍田の力を借りたい…と。
最初は大の大人が、こんな小娘に頭を下げるなんてと呆れていた龍田だったが。
ふと、天龍の居ない日常を頭に思い浮かべた。
それは、昔から有る筈の大事な何かが欠けた世界。
ゾクリと、龍田の背中を冷や汗が流れる。
その場では、何とも言えない旨、提督に伝えて龍田は執務室を後にした。
次の出撃では、天龍はカスリ傷を負ったが龍田は大破した。
天龍「どうしてあそこで、無理して突っ込んだんだっ!?」
修復が完了した龍田に天龍が迫る。
龍田「天龍ちゃん、一人で突出していたから。私、天龍ちゃんにね?死んで欲しくなかったの…」
それだけ伝えると龍田は視線を落とす。
それだけで、天龍は龍田の言いたい事を…その本質を汲み取る。
伊達に十数年一緒に苦楽を共にしてきた訳ではない。
二人は血の繋がった姉妹なのだから。
その後、2人は執務室に呼ばれた。
提督「龍田が大破した責任は俺にある。天龍、俺を一発殴れ」
3人だけの執務室で、提督はさも当然のように言い放った。
天龍は自分の突出が原因だと断ったが、提督は天龍の言を退け、提督権限を口に出して再度同じ事を口にした。
止む無く天龍は提督に拳骨を喰らわす。
その後、左頬を腫らしながら提督は言った。
提督「今後は、お互いに突出しないように戦術や戦闘方法を考えよう」
何事も無かっかのように言い出した提督に2人は困惑したが、取り敢えず提督の示した椅子に腰かける。
一旦提督は私室に戻り、本を取ってきた。
その時点で、少なくとも天龍はさっきまでの事を忘れたかのように目を輝かせた。
提督の持ってきた本…『世界の武具・甲冑図鑑』というタイトルだった…を手に提督は言った。
提督「お互いが相互に支援し合うように、妖精の加護を加えた特殊な艤装を工廠で作ってもらおうと思う」
天龍「なぁ、なぁ提督!!…この本に出てる武器で好きなのを作って貰えるって事か!?」
本を手にパラパラと眺めていた天龍が弾む声で提督に話し掛ける。
提督「あぁ、その通りだ。天龍は刀剣の類が似合うんじゃないか?」
天龍「おっ!提督もそう思うか?俺もそうだと思ってたんだよなぁー」ニシシ
龍田(二人とも…凄い目を輝かせて本を覗き込んでる)
まるで天龍ちゃんが2人いるみたい…
この時、初めて龍田は提督に親近感を持った。
提督「天龍は、どんなのが良い?」
天龍「そうだなぁ…やっぱりこう両手で持って、一気に敵をぶっ潰せる奴が良い!!」ウーン
提督「それだとな……あった。これなんかどうだ?」ページメクリ
天龍「何々…うぉお!?何だこれかっけぇ!!」
提督「ツヴァイハンダー…選ばれた者だけが扱っていた両手剣だ」
天龍「よっし!!提督、俺これに決めた!!」
提督「分かった、夕張と明石に後で伝えておこう。…龍田はどんなのが欲しい?」
龍田「…あっ!え、私ぃ…?」
2人の姿を眺めているのが楽しく、話を振られたのに気付かず、狼狽えてしまった。
天龍「提督、龍田は長物が得意なんだぜ!昔薙刀習ってたからよぉ」
龍田「ちょ…天龍ちゃん、あんまり言わないでちょうだい~//」
何だか無性に恥ずかしくなり、昔の武勇伝を語り始めた天龍を止める。
提督「長物か…ならパイク…は長すぎるしなぁ。ハルバードなんてどうだ?」
天龍「んん…確かに似合いそうだけど、ちょっと在り来たり過ぎないか?」
提督「お前もそう思うか?なら……こいつはどうだ?」
天龍「何々…バル…ディッシュ?へぇ、こんなのがあるのか」ホーン
提督「東欧圏の武器でな、別名三日月斧、半月斧とか言うんだぜ?」
天龍「かっけぇ別名だなぁおい…じゃあ、龍田はこれにしようぜ?」
龍田「えっ…えっ…えぇ~!?」アセッ
何だか勝手に話が決まってしまった。
結局、その時話した通りに工廠で擬装が作成されて、私達二人はそれを装備して戦っている。
確かに、お蔭で私と天龍ちゃんの息はピッタリになったし、天龍ちゃんも無茶して突出する事が無くなった。
龍田(その点は提督に感謝しないとねぇ~)
この鎮守府に来てから、天龍ちゃんも以前みたいにピリピリする事は無くなった。
そして、幼い頃から私の面倒を見てくれたお蔭か、駆逐艦の幼い子達からの人気者になった。
龍田(今頃天龍ちゃんは邀撃部隊で、提督は鎮守府で戦っている…)
龍田(この戦いが終わったら、また久しぶりに3人でお話ししたいわ~)
穏やかな午後の執務室、あーでもないこーでもないと議論する提督と天龍。
それを楽しそうに眺めながら、時々茶々を入れて2人を慌てさせるの。
龍鳳「皆さん、哨戒機より通報!我々の位置から南西およそ20海里にて磁探に感有り…です!」
鬼怒「了解!皆、行くよー!!」
龍田「はぁ~い♪」
通報のあった海域に龍田も向かう。
その胸中は姉妹艦と、提督の事を案じながら、しかしなお表情は穏やかだ。
そうして、決まり文句を呟くのだった。
龍田「死にたい船はどこかしらぁ~?」
以上、龍田編の投下終了
次は多分、舞風になるかと思いますので書き溜め次第、投下します
あと、天龍田の武器は完全に趣味で選ばせて頂きました
舞風編の書き溜めが完了しましたので投下
また、今回は独自解釈や設定等かなり含んでいますので
その点、ご承知おきください
【横須賀鎮守府 高角砲塔L塔 指揮所】
指揮所には既に横須賀鎮守府長官、第一から第六までの各提督とその伝令役を務める艦娘。
他には通信班に他の三軍からの連絡武官や参謀達が詰めていた。
指揮所の壁の一角には皇国本土と横須賀近海の地図が掲げられており、各軍や敵の部隊配置がリアルタイムで表示されるようになっている。
また、指揮所中央には、横須賀近海と敵機動部隊が居ると思わる海域の海図が設置されており、こちらもオペレーターが情報を元に各艦娘や部隊の動向を駒を使い状況に応じて配置している。
提督と大淀が指揮所に到着したとき、既にそこは喧々諤々の喧騒の場と化していた。
「八幡製鉄所防空部隊。敵重爆編隊の追撃を断念!」
「北九州工業地帯の被害は軽微なるも、被害の詳細は現在確認中!」
「各主要都市にて空襲警報発令と共に国民への避難指示を下令。現在官憲指導下で避難誘導を継続中!」
「中国地方までの新幹線並びに国鉄在来線の各鉄道車両の緊急退避完了!」
「第二並びに第三鉄道師団所属の各鉄道高射連隊、新幹線と国鉄在来線に接続完了!現在、各高射陣地に展開中!」
「第一総軍司令部、関東各地に展開中の迎撃飛行隊、試験飛行隊、練成飛行隊に緊急発進を下令!」
「房総半島にて分散展開中のT部隊。出撃準備完了!」
全国地図に敵機を示す赤いマークと、部隊展開をする各軍の部隊を示す青いマークが光点として次々と表示される。
提督「やはり九州は厳しかったか…」
大淀「敵機の巡航速度と侵入高度的に流石に難しいかと…」
提督「機動部隊は索敵機の情報頼みだが、重爆は航空軍と陸軍頼みだからなぁ」スッ
大淀「この日の為に準備してきた列島縦深防空網です。今は信じて待ちませんと」シュボッ
提督「次に敵編隊と接敵する可能性があるのは…」スマン
そのとき、通信班長が興奮した様子で通信を読み上げる。
「現在、四国松山の航空総軍 第三四三飛行隊が敵編隊と接敵!邀撃戦を開始しましたっ!!」
その報告に指揮所にいた全員がどよめく。
第三四三飛行隊は海軍系列の乙戦…陣風及び陣風改と偵察機景雲を装備する、西日本でも有数の迎撃飛行隊であった。
神戸方面に向かう敵深海棲艦の重爆編隊。
その形姿は歪としか言いようがなかった。
というのも、その元となった航空機がいずれも…夕張をしてゲテモノと言わしめた機体だったからである。
先頭…指揮官機を務めるの独逸ユンカース社製のJu287。通称『モスクワボンバー』と当時呼ばれていた機体を元にした重爆棲姫。
そして、指揮官機を護る様に3機の直援機は、同じく独ブローム・ウント・フォス社の計画機BvP.188を元にした重爆棲鬼である。
前者は前進翼、後者はW字翼の噴流式爆撃機という、照和二十年代の超高速と音の壁を目標に試みられた対応策の落とし子だった。
この4機編隊を筆頭に続くのは、これまた当時高速度を追及し、大西洋の海を越えて同じ道を歩んだ米ノースロップ社と独ゴータ・ホルテン社の共同製作品であるXB-35全翼爆撃機を元にした重爆棲鬼である。
この全翼機を元にした重爆棲鬼は4機編隊のコンバットボックスを7つ組み、都合計32機の重爆棲鬼・姫の編隊が列島を横断せしめようとしていた。
その編隊に挑み掛かる4機編隊。
先頭の陣風改は機体全部を黒く塗装され、太陽の逆光を浴びながらハ219-ル(海軍呼称『土星』発動機)の唸りも勇ましく急角度で敵編隊に向かってゆく。
その黒い陣風改に乗る妖精パイロットは、自分に続く3機に向かい指示を出す。
タキ「クボ、ヨネ、コンノ!!目標は左翼前方のブーメランだ!重爆棲鬼の機首斜め前から突っ込む!!」
妖精's「「「よーそろー!!」」」
近づくにつれ、敵重爆編隊から猛烈な対空射撃が始まるが、それを物ともせず、4機の陣風改を突っ込む。
四式改射爆照準器に敵重爆…そのブーメランのような形状の翼の付け根部分…を捉えた妖精タキは機銃の射撃ボタンを押す。
すると機首の十三粍機銃2丁、主翼の4丁の二十粍機銃が火を噴く。
そのまま敵重爆棲鬼にぶつかるすれすれで航過すると、そのまま急降下を続ける。
タキ機の最初の一撃こそ耐えていたが、続けて3機の陣風改に同じ箇所を連続で攻撃されると堅牢を旨とする重爆棲鬼も溜まらず、左主翼付け根が破断し、そのまま回転しながら墜落を始めた。
タキ「よし、共同撃墜一だな!」
急降下を続けたタキ機だったが、今度は機首を垂直に近付けて反転急上昇。手近な敵に狙いを付けるため再び高度を上げていく。
タキ機に続く3機の陣風改も、少し反転に手間取りながらも再度高度を上げていく。
???「おいタキ、逆鷹戦法で俺たちの獲物を全部落とすなよ!?」
タキ「大丈夫ですよカンノ大尉、まだまだ獲物は残ってますから!」
カンノ「感謝するぜ!よぉ~し、妖精ども!俺たちもタキ達に美味しい所を持ってかれる前に喰い付くぞ!!新選組、推参っ!!」
鋭い嘴に研ぎ澄まされた爪を持つ、獰猛な荒鷲の群れが皇国上空の敵編隊へと殺到した。
最初の敵重爆棲鬼撃墜の報に、指揮所は沸いた。
その中で、提督は冷静に黙考していた。
提督「他に、四国・九州方面であいつらに対抗出来そうな部隊は…」
大淀「近傍ですと、第二総軍旗下の第六航空軍の羅刹(キ94-Ⅱ)かと思います」クイッ
提督「羅刹なら高々度迎撃機だからな…これで阪神工業地帯や大阪工廠到達前に数を幾らか減らせれば良いのだが」
そこに、通信班長が待望の電文を持ってやってきた。
「索敵中の景雲改が敵機動部隊を発見!!」
更にどよめく指揮所。
直ちに、横須賀鎮守府所属の各機動部隊充てに敵機動部隊の座標を送り始める。
ただ、通信班長はまだ何か言いたそうな表情でその場に留まっている。
長官がまだ何かあるのかと聞くと、何ともしどろもどろな返事が返ってきた。
「はぁ、読み上げる程では無いのですが…」
提督「構わん。読み上げてくれ」
「はっ!読み上げます…『鴉天狗ヨリ飛行隊司令部。敵機動部隊発見、座標ハ右ノ通リ。尚、敵直援機ノ邀撃受ケルモ我ニ追イツク猫艦戦無シ』です…」
瞬間、指揮所内で長官や提督、連絡武官の一部が爆笑する。
皆、前世で似たような電文を見た記憶があるのだ。
提督「そんな電文を送ってくる余裕があるなら、連中無事に基地に帰れるだろうさ。時間を取らせて済まなかった。配置に戻って構わん」
「はっ!」
長官に目線で確認を取ると提督は大淀に指示を出す。
提督「大淀、今の座標を直ちに赤城達に伝えてやれ、航空撃滅戦と行こうじゃないか」
大淀「はっ!!」
赤城達、横須賀第七機動部隊に電文を送る為駆けていく大淀を見送りながら、提督は戦の流れが傾きつつあることを悟った。
【本土近海 太平洋 某地点】
横須賀鎮守府 合同機動部隊は、敵機動部隊撃滅の為、演習を続けながらも無線封止を徹底して機会を伺っていた。
横須賀第七からは旗艦赤城を筆頭に加賀、飛龍、蒼龍、瑞鶴、翔鶴に雲龍型の3人…計9隻の正規空母と艦隊直衛として軽空母鳳翔が参加。
その直衛として、航巡最上、三隈、筑摩と対空防衛を担う乙型駆逐艦秋月、照月と対潜警戒の駆逐艦娘複数人で構成されていた。
筑摩「6番索敵機より通報、南南東12海里にて潜水ヨ級の出現を確認。浅深度にて潜水航行中!」
赤城「了解しました。その方向で近いのは…舞風さん、野分さん。お願いします」
筑摩の報告に即座に赤城が対潜掃討を命ずる。
舞風「了解です!舞風行っきまーす!!」
野分「あっ!舞風待って…駆逐艦野分、出撃します!」
命令を受けた2人が即座に該当海域に向かう。
舞風は、艦娘としての生活を満喫していた。
彼女はごく普通の家庭に生まれた一人っ子だったが、小さい時からダンスが好きで、小学校入学と共に地元の小さな劇団に入団した。
小さいながらも劇団では、仲の良い友達や上級生の先輩に可愛がられながら、充実した生活を送っていた。
転機となったのは入団から数年経った頃、地元の公民館で公演する劇のリハーサル中の出来事である。
老朽化していた照明機材の一つが天井の支持架から外れ落下した。真下で練習に励む舞風は気付かない。
それに気付いた仲の良かった同級生の友人が、咄嗟に舞風の手を取り、手前に引き寄せてくれなかったら命そのものを失っていたかもしれない。
幸い舞風は一命を取り留めたが、照明器具の落下した片足は複雑骨折してしまった。
その為、公演どころか劇団自体を退団せざるを得なかった。
そこからは、長いリハビリの生活だった。
リハビリの期間中、舞風の胸には一つ気がかりな事が残っていた。
事故当時、舞風を助けてくれた友人にきちんとお礼を言う機会が無いまま、退団してしまった事である。
しかしそれを表に出す事なく、辛く苦しいリハビリを表面上は明るく、元気に乗り越えた。
次の転機は、数年に渡るリハビリが完了して自由に動き回れるようになった後、艦娘となった事だった。
当時、宣伝映像で見た艦娘。外洋の荒波を物ともせず自由に海を舞う姿に、幼い頃からの自分の夢…踊り回り、皆で楽しく過ごしたい…に再び火が点いたのだ。
両親は反対したが、幸い着任地が近傍の横須賀であることと、夢を実現させたいという娘の強い説得に遂に折れた。
陽炎型駆逐艦 舞風として着任した彼女は、艤装を付け、訓練こそ厳しいが自由に海を駆け巡れる毎日に満足していた。
最近は上陸後、暇な時は自室だったり、食堂棟の脇だったりと様々な場所で昔習ったダンスを踊っていた。
その姿を見た他の駆逐艦も一緒に習ったり、その手の事柄に詳しい軽巡洋艦 那珂に指導を受けたりしながら過ごす日々が続いた。
提督「舞風のダンス、上手いって評判だぞ。ちょっと見せてくれないか?」
秘書艦だったとき、提督にそのように言われて、舞風は恥ずかしながらも自信満々に自分のダンスを披露した。
ダンスが終わると提督は拍手喝采で舞風を褒めた。
それが余りにベタ褒めだったので、気恥ずかしくて提督の顔を見れなかった舞風は提督の膝に座りながら、提督の踊りに関する質問に自信満々に応える。
そして話題は、ふと過去に起きた不幸な事故の話になった。
それでも舞風は明るく、笑顔で、仕方が無かったんだと言った。
そして、当時からの心残りの事、艤装としての『舞風』が気掛かりにしている事を辛くないかと提督に聞かれた。
舞風「確かに、心残りは辛いけど…それでも、舞風は明るくしていたいんです」
舞風「辛い事を乗り越える為、前を向いて歩く為なんだ…」
舞風「だから…だから、舞風は笑うんです!」
どことなく影を帯びながら、それでも提督に笑顔を向ける舞風を提督はとても、とても強い娘だと褒めた。
ただ、どうしても過去の事、艤装の事で辛くなったらいつでも俺の所や他の艦娘の所に来なさいと言った。
そして、舞風の頭を優しく撫でながら提督は言ったのだ。
提督「また、新しいダンスを覚えたら是非、見ていたい」
…と。
敵潜水艦の出現した海域に急行しながら舞風は当時を振り返り内心苦笑する。
舞風(それにしても、あの時の提督は本当にズルかったなー)
あの秘書艦として、執務の手伝いをしてから暫くして、また舞風が秘書艦になった日があったんだ。
その日は新しい駆逐艦の艦娘が着任するからっていうから、ちょっとだけ緊張してたんだ。
でもね、その艦娘を見た瞬間。舞風、何も考えられなくなっちゃったんだ。
だって…だって、着任したその艦娘が…
野分「陽炎型駆逐艦 野分、参上しまし…」
ビシッと着任の挨拶しようとしたその娘が、舞風を見て絶句した。
舞風「あなた…もしかし…て…」
野分「舞…風……舞風なの…?」
私だってびっくりだよ!?
だって、だって…あの時、私を助けてくれた子が…野分として着任なんて信じられる?
私、もう何が何だか分からなくなって野分に抱き着いて一杯あの時の事をごめんなさいって謝って、一杯有難うってお礼を言ったの。
野分はね、あの時と変わらず優しく私の手を取って、大丈夫だからと慰めてくれた。
もう、あの時は本当にわんわん泣いちゃった。
提督ったら、手の込んだ再開を考えてたみたいなんだけど、私が余りに泣いちゃったから逆にオロオロしてて…
今思い返せば、ちょっと面白いかったなー。
因みにね、その時提督公室に"偶然"居合わせた青葉さんが、その感動の再開を他の娘達に知らせたんだけど、色々と伝言ゲームがあったみたいで最終的には「提督が舞風ちゃんを泣かせた」って事になっちゃったんだ。
提督ったら、執務室に入ってきた金剛さん達に連れていかれて、簀巻きにされて吊るされてた。
『私は少女を泣かせるクソ提督です』ってプラカードを首から下げながら。
野分ったら、着任早々そんな有様を見ちゃったから、またまたびっくりしてたんだ。
だから、色々と舞風が説明したんだ。
止まってた時間が動き出したみたいにね、本当にたくさん色んな事を話したよ。
上から提督が「下してくれー」って言ってるけど、駄目!
舞風を泣かせたのは提督なんだからって、逆にブラブラ揺らしてあげたんだ。
そしたら、のわっちや他の駆逐艦の娘も一緒になって提督で遊んじゃった。
それからの生活は、今まで以上に楽しくて大変で…でもでも、とっても充実してるよ。
あの事故からも野分は劇団に留まっていたらしくて、一緒にダンスを踊ったり、ダンスを教えて貰ったりしたんだ。
あと、びっくりしたのは那珂ちゃんが実は同じ劇団で、舞風が居た時に野分と一緒に面倒を見てくれた先輩のお姉さんだったみたい!
だから、のわっちったら那珂ちゃんを見るや否や「那珂ちゃんさん!」って駆け寄っていくんだもん。
その言い方が面白くて、舞風思いっきり笑っちゃった。
それから、鎮守府でパーティがあると私達は余興で踊ったりしてる。
もうね、最高に楽しいんだよ!
だから、この任務が終わったらまた一杯踊りたいな。
この前の歓迎会では、提督ったら舞風達のダンスを見ないで外に出てたから、次は絶対に見てもらわないとね!
野分「…かぜ?舞風!聞いてる?」
舞風「っとと、ごめんのわっち!考え事してた」テヘヘ
野分「…っもう、ちゃんとしないと…司令に呆れられちゃいますよ」モウッ
舞風「あーそれは嫌かなぁ」
野分「それじゃあ、しっかり敵潜を仕留めましょう」
舞風「うん!」
野分「じゃあ舞風!野分が左側から追い込むから…」
舞風「舞風が右側から仕留めるんだよね?オッケー、行くよのわっちー!!」ワンツー
太平洋の波頭を乗り越え、駆逐艦艦娘の二人は敵潜水艦に向かってお互い左右から弧を描くように接近する。
それは、上空を飛ぶ哨戒機からはとても綺麗な円弧に見え、2人の息がピッタリであることを証明していた。
筑摩「野分より通信、敵潜水艦のものと見られる油膜及び艤装の漂流物を確認。撃沈確実とのことです」
赤城「了解しました」
飛龍「赤城さん、横須賀第一の旗艦より信号!先ほど傍受した敵座標に向けて第一次攻撃隊を発進させよと言っています」
赤城「有難う飛龍、全航空母艦は発艦準備!鳳翔さん、艦隊上空はお任せします」
鳳翔「任されました。皆さんは安心して、攻撃隊を出してくださいね」
赤城「はいっ!!」
赤城は横目で自分を含めて9人の航空母艦を見渡す。
加賀は冷静に、蒼龍、飛龍は血気盛んに、翔鶴は粛々と、瑞鶴は雲龍型…特に葛城…に発艦前の最終確認を監督している。
それを見止めた赤城はクスリと笑い、呟く。
赤城「若い娘達は良いですね。意気軒高で皆、ひたすら勝利を信じていて…」
加賀「赤城さん、貴方もその一人の筈ではなくて?」
赤城「そうでしょうか?今の私はあくまで提督の歯車の一つですから」
加賀「その提督が勝利を約束してくれるのでは?」
赤城「勿論…ただ、その為には私達が提督のご指示を確実にこなさなくてはいけませんね」
加賀「えぇ」コクリ
赤城は発艦準備として弓を構える。
するとワラワラと搭乗員妖精や整備妖精が肩や腕に集まってくる。
赤城「あら、総隊長。その鉢巻はどうしたの?」
フチダ「はい、整備班長からお供させてくれって頂きました!」フンス
赤城「そう、なら整備班の分もしっかり敵を倒してきましょうね?」クスッ
フチダ「任せてください!おいブーツ、二次攻撃隊の獲物…無くなってたら済まんな」
ムラタ「勘弁してくださいよ総隊長…折角の爆弾や魚雷、海に投棄して終わりなんてあんまりですよぉ」
これには搭乗員妖精一同大笑いである。
加賀「赤城さん、全艦発艦準備完了しました」
瑞鶴からの報告を受けた加賀が赤城に伝える。
赤城「分かりました。では…総飛行機、発動!!」
赤城の号令一下、整備妖精が空母毎に各種方法…赤城の場合は弓…で射出された艦載機を実体化させる為、加護を与える。
これで、射出された矢は実体化するのだ。
赤城「全艦、風に立て。取り舵!!」
加賀「とぉりかぁーじ!」
妖精による加護が行われて発艦準備の最終段階が進む中、合成風力を得て艦載機の発艦がスムーズになるよう全空母が風上に艦首を向ける。
そして、全艦が風上に向かい艦首を立てた事を確認した赤城は号令を下す。
赤城「発艦始め!制空隊長…頼みますよ」
イタヤ「合点、任せてください!攻撃隊はしっかり守ってみせますよ」
矢を番え、その飛行機型の鏃に乗った妖精に制空任務をお願いしながら赤城は目一杯矢を引き絞り、放つ。
放たれた矢は瞬く間に見えなくなる。
あわや発艦失敗かと思われたその時、閃光と共に3機の烈風一一型が水平線の向こうへ浮かび上がるのが見えた。
これを見た整備妖精達は万歳三唱である。
これを始めに、各空母からも続々と第一次攻撃隊が発艦を始める。
約20分後、横須賀連合機動部隊から発艦した第一次攻撃隊、約900機が空中集合を完了し、発動機の轟音と共に東北東の空、敵機動部隊へ向けて飛び立っていった。
こうして、敵機動部隊撃滅戦の火蓋が切って落とされたのである。
投下終了
次は利根編を書き溜めたら投下します
舞風はカッコカリ台詞聞くと、全力で抱き締めてあげたくなる娘ですよね
乙
天龍龍田は姉妹だったけど、こういう巡り合わせのケースは多いのかな
舞風はさり気なくドキッとさせられることをしてきそう
利根編までの幕間でちょこっとだけ投下
>>297
艦娘の出自については、予め設定作っている娘もいますが
大部分は安価の結果とゲームで使ってみた印象、後は艦としての経歴等々で思い付いたら書いています
後は極力着任先は知り合いや同じ地方や学校出身等、身近な者が同じ鎮守府に着任出来るよう
裏で海軍が動いていたりしてます
【皇国本土上空 高度一万二千メートル】
重爆棲姫は困惑していた。
ヨーロッパのニンゲンとヨウセイは重爆棲鬼・姫にとって強力な防空網を備えていた。
何より陸上型の沿岸要塞鬼や装甲列車鬼、海上要塞鬼といった連中が深海棲艦と協力して陸地を荒らし回っている状態である。
重爆棲鬼達も、直援機と共に100機単位でヨーロッパ大陸に侵入して激戦を繰り広げている。
だが、今回のような直援無しでの敵本土爆撃任務もあった。
複数方向から侵入して敵の目を誤魔化す為である。
最も、それが困惑の理由ではない。
『キョクトウのニンゲンはヨーロッパ程手強くない』
そのような楽観論が欧州側の棲艦や鬼・姫達の認識であったのに、この様は何だ?
敵の迎撃機により、既に3機が撃墜され、その倍の重爆棲鬼が損傷を受けている。
姫「キョクトウのニンゲンはヨーロッパのニンゲンの真似しか出来ない時代遅れと…言っていたのに…」
重爆棲姫の独り言は、皇国軍の更なる迎撃の網に入った事で、これまでの認識を更に否定的にさせた。
既にニンゲンが『シズオカ』と呼んでいる陸地を過ぎた辺りだった。
重爆棲姫を護衛している3機の重爆棲鬼のうち、1機が突如大爆発を起こした。
慌ててその後ろを飛ぶ重爆棲鬼が破片に巻き込まれないように編隊を崩す。
すると編隊を崩し、群れから逸れた重爆棲鬼に大きな噴進弾が命中した。
それは重爆棲鬼の装甲を貫き、爆弾投下軌条に残っていた500ポンド爆弾を誘爆せしめ、その重爆棲鬼を内側から空中分解させた。
他の重爆棲鬼にも、次々と命中して爆発を起こす者が続出した。
それは噴進弾ではなかったが、姫を更に困惑させるには十分であった。
姫「バカな!?高射砲の命中だと?何故…この高度でこんなに命中するのだ…」
高射砲とは従来その発射弾数によって弾幕を張り、その弾幕で敵編隊を包み込み、上手く破片の被害や直撃が出る事を祈る確率論的運用を旨とする兵器だった。
しかし、この時の発射弾数と命中弾数は、欧州での数万発につき1機撃墜の比ではなかった。
"数発"で重爆棲鬼に命中弾を出している。
この時、迎撃に当たったのは陸軍 第二鉄道師団隷下の鉄道高射連隊である。
かつて列島を横断する高速鉄道…後の新幹線で当時は弾丸列車と呼ばれていた…の工事が照和二十年代に着工された。
その際に他の在来線とは異なる広さの鉄道軌条を持つ、この高速鉄道専用に編成された師団である。
陸軍鉄道師団の存在意義は、一に非常時の迅速なる鉄道輸送を行う事。
二に鉄道インフラに対するあらゆる障害からこれを防衛する事を旨としていた。
この時、迎撃に当たった鉄道高射連隊は主に二つの迎撃兵器を有していた。
いずれも陸軍が妖精と共同開発を行った、列車高射砲と地対空噴進弾である。
六式十五糎列車高射砲…運用側からは鉄道へのあらゆる災厄を追い払う意味で『破邪』というあだ名で呼ばれていた…と、噴龍四型熱線探知式誘導噴進弾である。
これらの対空兵器は、専用の電動機関車で新幹線に接続されると、要所要所に設けられた対空陣地に配置される。
それは、本線から引き込み線が引かれた先にターンテーブル状になった線路がある陣地である。
このターンテーブルが360度回転する事で、高射砲や噴進弾は全方位への対空射撃が可能となるのである。
陣地に配置された車両は同じく電動機関車で牽引されてきた、対空射撃用の四号二型改電探によって射撃管制されて、近接信管を備えた砲弾により高精度の命中率となったのである。
編隊が通過するまでに僅か数回の射撃しか出来なかったが、この迎撃の結果更に6機の重爆棲鬼が撃墜され、半数の重爆棲鬼が損傷を受けた。
それでも編隊は列島横断を諦めなかった。
そのまま横断し、海に出れば太平洋側の深海棲艦と合流できる。
それを信じて…ひたすら前進と空襲を続けるのだった。
投下終了
うごご…次こそ利根編を書いてきます
乙
グロイザーxを思い出すw
利根編投下します
>>305
個人的にはブラックドラゴンの手綱を操るプラチナブロンドの黒い甲冑着たお姉さんってイメージでしたが、機械獣としてのグロイザーXシリーズの方がやられ役としては相性良いですね。
という事で、そんな感じで各自脳内変換オナシャス!!
【横須賀鎮守府 高角砲塔L塔 指揮所】
東海地方で重爆棲姫が困惑している頃、横須賀では敵艦載機を迎撃する手筈が整えられ、完了しようとしていた。
「東京湾兵団隷下の全ての海堡、沿岸砲台、沿岸陣地の戦闘配置完了!」
「横須賀特別陸戦隊、全ての浮沈特火点への戦闘配置完了!」
「高角砲塔G塔の高角砲群、L塔のヴ式改対空射撃管制電探との連動完了!」
指揮所で次々入る合戦準備完了の報告を聞きながら、提督は無線を使い、各提督毎に割り当てられた直衛艦隊への専用回線に接続する。
提督「金剛、俺だ。通信状態はどうか?」
金剛「Sir, my Admiral!!感度良好デース!」
榛名(榛名の感度も良好です!)
提督「作戦指示書に書かれた通りだが、これより俺がお前達の指揮を執る」
金剛「了解ネー!直衛艦隊、総員意気軒高。提督は好きなように指揮棒を振るってクダサーイ」
提督「分かった。それでは、直衛艦隊にはそのまま押っ取り刀で敵機動部隊の迎撃に向かってもらおうか」
金剛「分かりましタ。敵機動部隊の奇襲にビックリして、鎮守府残存の艦隊で急いで迎撃に向かいマース!」
提督「それと八丈島、小笠原兵団、房総配備の電波警戒所からの通報だと、敵は戦爆連合約750機との事だ」
金剛「Wow!!それは大変ですネー!慌てて迎撃しないと大変な事になりマース」
提督「追加でもう一つ、敵編隊…硫黄島の迎撃機で一部補足した結果、警戒して密集隊形で侵入しているらしい」
提督「…そこでだ、各砲台の統一射撃で敵の出鼻を挫く」
提督「これから送る座標区画に対して各自照準を合わせて欲しい」
提督「発射のタイミングはこちらで下令する」
金剛「了解しましタ!派手にやらせてもらいますネー」
提督「任せる」
一連のやり取りと、座標区画の連絡を受けた金剛は単縦陣で続く残りの4人に振り返る。
金剛「さ、皆サーン!今の通信の通り、敵の出鼻を挫きマース!」
金剛「全艦、主砲仰角最大!!弾種三式!信管調定は…流石に各自で出来ますよネー?」
榛名「榛名、大丈夫です!」
青葉「流石にそれくらいは…」
利根「出来ないと横須賀から追い出されるからのぅ」
響「それじゃ、私は近接防空に努めるよ」
金剛「皆、良い返事で安心しました。…それじゃ、提督の合図を待ちましょう!」
深海棲艦艦載機は、敵の迎撃を受けつつも極めて順調に目標に接近していた。
目標はニンゲンが『ヨコスカ』と呼ぶ場所。
深海棲艦の最大の脅威であるカンムスメの指揮を執るテイトクと、そのカンムスメ達の基地を襲撃する。
その後は速やかに母艦に戻るのが攻撃隊の任務である。
しかし、眼下の房総半島や東京湾。遠くは相模湾にかけて、既に全ての迎撃準備が完了していたのである。
各陣地には対空装備として、小は七.七粍機銃から大は四〇糎連装砲まで、無数の各種火器が対空射撃電探と高射装置の補佐を受け、雁首擡げて敵機を今や遅しと待ち構えていた。
「敵機、要塞砲と戦艦艦娘の射程に侵入しました」
通信班長が長官に伝えると、長官は頷き「各個、斉射始め」と射撃命令を発した。
提督は簡潔に金剛へと命令する。
提督「金剛、撃ち方始め」
金剛「Sir!!榛名、主砲斉射!Fireeeeeee!!!」
金剛の号令一下、榛名と金剛の三十五.六糎三連装砲4基12門と射程内の各要塞砲全てが対空射撃を開始した。
各砲から発射された三式弾は敵編隊に向かい撃ち出され、各自で設定した信管調定に従い、予め指定しておいた座標で炸裂する。
そこは、丁度密集した敵編隊の…その最も層の厚い部分が、まさに航過しようとしていた空域である。
閃光と共に、指向性の炎の塊が四方八方から無数に敵編隊を包み込む。
それは、或る物は敵機に直撃して引火誘爆せしめ。
或いは操縦を困難に陥らせる程の大穴を敵機に穿ち。
或いは回避しようと無理な操縦をして空中衝突を敵機に引き起こさせしめた。
提督「続いて青葉、利根。撃ち方始め」
三式弾の最初の洗礼を受けながらも、敵機は前進を続ける。
航空機は車と違い後進が出来ないのだ。
突然の迎撃に戸惑いながらも、更に敵編隊はこちらの…中型砲の射程内に入る。
青葉「待ってました!青葉、撃ちます!」
利根「主砲、てぇーーっ!!」
金剛達の狙っていた座標空間の、より前面に狙いを付けていた重巡・航巡の二〇.三糎連装砲と、同級の沿岸砲台が続けて火蓋を切る。
戦艦レベルの主砲に比べればその迫力こそ劣るが、その分砲門数では圧倒している。
この砲撃は、最初の迎撃砲火による混乱から敵機が冷め止まぬうちに、更に追い打ちを掛ける結果となった。
先程よりは数こそ少ないが、数十機の敵機が火を噴くか、何らかの損傷を受けた。
提督「お前達、盛大にぶっ放したみたいだな」
提督「今ので、約200機程の敵機を撃墜し、ほぼ同数が損傷を受けたと熟練見張員から報告を受けた」
金剛「Yeees!!我ながら、今の砲撃は手応え有り有りだったヨー!」ブイッ
提督「うん。それじゃあ後は迎撃機と中近距離での対空戦闘がメインとなる」
提督「各自、横須賀沿岸に沿って回避運動…まあ、適当に逃げ回ってくれ」
金剛「Sir, my Admiral!さーて皆サーン、敵攻撃機が怖いから逃げますヨー?(ノリノリ)」
榛名「何という事でしょう…榛名、逃げます!(真面目)」
青葉「迎撃火力が…火力がちょこっと足りなかったのかな…?(大根役者)」
利根「あぁあ~敵機が怖いなー…怖いから吾輩は回避するのじゃー(棒読み)」
響「不死鳥の秘密は、回避運動の上手さにあるんだよ(天然)」
金剛を筆頭に単縦陣を組んでいた5人は、迎撃から回避運動に入ったと敵機に誤認させる為、Uターンして横須賀沿岸に沿って北上を始めた。
迎撃を生き残った敵戦爆連合はようやく混乱から立ち直ると、迎撃機は直衛の艦戦に任せて各自の目標…鎮守府施設や艦娘…に狙いを定める。
だが、攻撃体勢を取り始めた敵機を迎えたのは、活火山の如く猛烈な対空砲火であった。
高角砲塔G塔の連装4基の長一〇糎高角砲や、砲塔側面の対空機銃座。
沿岸陣地の要所要所に設けられた高角・噴進砲座や機銃座、そして沿岸航行する艦娘達を援護するように立ちはだかる浮沈特火点である。
浮沈特火点とは読者諸兄の世界において、本土決戦を前に陸軍によって計画・試作されていた兵器である。
敵上陸海岸に事前に沈めておき、敵舟艇群接近と共に急速浮上して、装備された速射砲、舟艇砲や機関砲を撃つ一型。
そして、敵上陸直前に上陸海岸に舟艇用の小型機雷を複数個ばら撒く、小型潜航艇型の三型が計画・試作されていた。
しかしこの世界の浮沈特火点とは、コンクリート製の艀に水密性を持たせた複数の対空機銃座や高角砲・噴進砲座を設けたものだった。
通常は水面下に沈めておき、非常時は浮上させて埠頭等の対空戦闘に特化させたものである。
提督の艦娘達は、回避運動を取りつつ、この浮沈特火点の守備範囲に敵攻撃機を巧みに誘因せしめた。
艦娘達を狙おうとした敵攻撃機は、濃密な対空砲火を浴びて被弾炎上するか、攻撃を諦め爆弾や魚雷を投棄して、遁走に掛かる機も出始めた。
それでも…計算されて十字砲火を形成するように配置されていも、乱戦の様相を呈するこの状況下では死角が生ずる。
その死角を狙って敵雷撃機が4機、雷撃コースに乗ろうと金剛達に迫る。
響「2時の方角から敵雷撃機4機、来るよ!」
金剛「Oh、Tea Timeにはまだ早いデスヨー?」
榛名「どうしましょうっ!?」
青葉「まあ、航空優勢下って事を考えれば…」
利根「航巡の運用思想を示せるのじゃ!その雷撃機、貰ったぁーっ!!」
利根の合図と共に既に射出され、戦闘空域端の低空域で待機していた数機の瑞雲が雷撃機に上空から襲い掛かる。
二〇粍機銃が火を噴き、海面に着弾の水柱を立てながら敵雷撃機を一機、また一機と撃墜し…或いは雷撃を投棄させる。
その様子を見た利根は自分の手柄に満足し、内心自信満々だった。
今頃父上は在郷軍人会の地区隊長として、避難誘導を指導しておるじゃろうな。
だが、今回の戦闘がテレヴィジョンでブイティーアールで流れれば、吾輩の姿を見て父上も安心するじゃろう。
そんな事を考えていた。
利根、筑摩の実家は代々皇国陸軍に仕えていた。
とは言っても、将軍や参謀としてではなく下士官として…である。
明治健軍以降、代々陸軍に仕えて軍曹…良くても少尉として奉公してきた。
それでも滅私奉公に努め、利根の祖父は近衛第一師団第一連隊に配属されるという名誉も得ている。
利根の両親は男子に恵まれなかったが、生まれた2人の娘を後生大事に、大層可愛がって育てた。
長女は父親の血を濃く引いたのか、竹を割ったような性格で、幼少期より木銃で遊んだり、父親と乱取りしてじゃれ付いたりとどこか男勝りな性格だった。
反対に次女は母親の血を濃く引いたのかお淑やかな性格で、勝気だがどこかおっちょこちょいな姉を慕い、良く助けた。
二人が高等学校に進み、卒業後の進路について家族で考えていた時、艦娘候補者の通知が姉妹に届いた。
艦娘となり軍に努める事に関しては、両親は寛容だった。
随分前から女性の志願制度を設けており、将校として勤める女性も多数在籍している時代である。
ただ、気掛かりな点もあった。
父親は陸軍曹長として勤め、今は引退して予備役曹長として別の職に就いていた。
陸軍の事なら、起床点呼から演習時の手の抜き方まで知り尽くしている。
しかし、海軍の事となると2人の父親にとって全く未知の世界だった。
ましてや艦娘と言えば、それこそ最前線で戦うという認識であり、大事な…年頃の娘を2人共志願させるのに躊躇させていた。
しかし、長女は積極的に参加する旨を示し、次女は姉を補助しつつ艦娘に興味がある旨を示した。
その為、最終的には艦娘として娘達を送り出す事に同意したが、配属先が決まると父親は筆を取り、提督に手紙を書いた。
曰く、この非常時に海軍軍人として娘達を送り出す事で、皇国にご奉仕出来る事が出来て光栄である。
しかし、海軍の事は分からず、かつ実戦に参加する事は覚悟しているが、どうか無理な指揮をなさらない様に、可能な限り努めていただきたく存じ上げます…と。
この手紙を読んだ提督は、鎮守府長官や陸軍人事局等に何回か電話を掛けた後、直ぐに返事を書いた。
曰く、この危急存亡の非常時に年頃の大事な娘二人を艦娘として志願させていただき、感謝の念が堪えないこと。
また、作戦に置いては無理を避け、敵の漸減邀撃に努めて、極力艦娘の被害を抑える作戦方針を旨としていること。
その為、確約は出来ないが娘達を故意に危険な作戦へ参加するような事は避けるよう全力を尽くしたい…と。
返事は陸軍人事局を経由して姉妹の両親の元に届けられた。
父親の予備役中尉の昇進状、中尉の階級章と共に。
突然の在郷軍人会地区隊長への昇進と提督の返事に両親は驚き、やがて安堵感を覚えた。
下士官・兵にとって良い指揮官とは、常に兵の命を第一に考えてくれる者を指していたのだ。
それからは、定期的に利根の好物のおはぎと茶菓子が送られてきており、おはぎは利根姉妹に。
茶菓子は秘書艦や待機組のお茶請けとして、有効活用している。
そんな訳で利根は時々しでかすが、概ね改二の航巡として満足した日々を送っていた。
利根「ふはは、どうじゃ?やったか!?」
通信妖精「瑞雲より通報、一機取り逃して間もなく射点に点きそうとの事です!!」
利根「へっ!?ちょっぱっ!!?」
しでかした利根は周章狼狽ここに極まれりである。
そこに、後続の響が増速して利根と並走する。
響「やらせはしないさ」
響「…砲術、雷撃機前面の水面。アゴーイッ!!」
響の装備する長一〇糎連装高角砲が速射して、敵雷撃機前面の海面を嘗める。
水柱が一つ、また一つと雷撃機周辺に立ち昇るが、勇敢にも敵機はそれを物ともせずに向かってきた。
間もなく魚雷投下という正にその時、水柱の一つが敵雷撃機の主翼に触れた。
その衝撃で敵雷撃機はもんどりうって海面に激突。
その衝撃で魚雷の信管が誤作動を起こしたのか一際大きな水柱を上げ、雷撃機は四散した。
利根「ふぅ…かたじけない。助かったぞ響」ウゥ…
金剛「Yes!ビッキー、Nice assistだったヨー」
響「司令官に褒められたいからね(僚艦の危機を救うのは当然さ)」
青葉「響さん、本音と建て前が逆になってますよー」
響「…ハラショー//」
金剛「さて、上空の敵機も大分減ってきましたネ」
金剛「一旦、私達は反転して再度残りの敵機を引き付けますヨー」
金剛の指示と共に5人の艦娘は反転、再度沿岸に沿って回避運動を取りつつ航行を続ける。
このまま行けば、我々に有利なまま横須賀での戦闘は時機に終わるだろう。
口にこそ出さなかったが、5人はそれぞれ勝利を確信していた。
大きな爆発音が聞こえたのは、反転が終了して再度沿岸に沿って単縦陣で航行していた時だった。
その音の方角に胸騒ぎを覚えた榛名は振り返り、そして言葉を失った。
榛名「あ…あっ…あぁ……」
顔を青ざめさせ、動揺する榛名に気付いた4人も同様に振り返り、そして愕然とした。
高角砲塔L塔、その頭頂部が爆炎と噴煙に包まれていたのだ。
投下終了
次は横須賀戦の残りと重爆棲姫の最期、その後むっちゃん、航空戦と夜戦の順で書き溜めていく予定です。
あぁ、等々ツェッペリン伯が来てしまうのか…
E-5堀しつつ書き溜めたのを投下
むっちゃんと空母戦の手前までの分です
【横須賀鎮守府 上空】
深海猫艦爆は2機の五式戦に追われていた。
編隊を組んでいた他の機は、最初の迎撃砲火後にバラバラになってしまい、止む無く単機で攻撃目標を探していた所だった。
敵迎撃機の追撃はしつこく、何度か被弾しているが幸い動力部や操縦系統に被害は出ていない。
だが、ずっと回避機動を取っていた為にそろそろ燃料が帰投ギリギリの量になってきた。
深海棲艦の艦載機は、大よそ全てが自己学習能力を備えた人工知能搭載無人機である。
或る程度の練度を積めば積むほど、その動作は洗練され、ニンゲンの脅威となってくる。
或る程度練度を積んでいたこの猫艦爆は、攻撃を諦め、帰投して練度温存に走る様に人口知能が判断した。
そこで、取り敢えず搭載していた爆弾を投棄しようと指示信号を送る。
返ってきたのは、投下軌条のエラーによる投棄不能の信号だった。
その信号への対処を人工知能が判断しようとしている最中、更に敵迎撃機の追撃の銃火を受ける。
今度は操縦系統でエラー信号が多発。
結果、燃料タンクに穴が開き、操縦系統のエラーから帰投が不可能と判断された。
そこで、最終判断として手近な標的への突入自爆モードになる。
手近な目標を…四角く大きく、頂部に大きなニンゲンのデンタン…我々でいうレーダー…がある施設に標的を絞る。
残りの燃料を使い、急角度でエンジンをフルスロットにして、標的のレーダーを爆撃照準器の中心に捉える。
追撃していた五式戦が、敵機の意図に気付き慌てて追い縋るが間に合わず、敵機は高角砲塔L塔の頭頂部に肉薄した。
そこで周辺の高角砲の射撃管制を行っていたヴ式改電探の基部に、残りの航空燃料をまき散らしながら突入。
爆弾投下軌条に残された、2個の500ポンド爆弾と共に砕け散った。
【皇国本土 上空】
横須賀上空で敵攻撃隊が四分五裂となり遁走を始めていた頃、本土上空を横断していた深海棲艦重爆編隊もまた、最期のときを迎えんとしていた。
敵高射列車砲、噴進弾と迎撃機による迎撃を受け、落伍機続出し、10機程度に数を減らした重爆編隊は遂に皇都外縁部に到達。
最終目標である皇都への爆撃コースに乗るまでもう直ぐだ。
しかし、ここで重爆編隊は今までとは比較にならない迎撃を受けた。
この世界では皇都を中心とした関東一帯を皇都大都市圏と制定し、その大都市圏外縁部には『皇都外郭防衛陣地』の名の元、無数の高射砲、対戦車速射砲、噴進砲や重加農砲陣地が設けられていた。
配備されている高射砲は五式十五糎高射砲であり、半自動装填装置と高角砲塔L塔頭頂部に設置されていた物と同じヴ式改…独テフレンケン社製ヴルツブルグ・リーゼ対空射撃管制電探…によって統一された管制射撃を実施する。
数十門の対空砲による弾幕射撃により、数機の重爆棲鬼が頭部を、主翼を粉砕され墜落していく。
そして、恐怖の弾幕射撃地帯を抜け、一瞬の静寂が訪れる。
しかし、その静寂こそ次の迎撃手段である、高々度迎撃機が忍び寄る為の時間に他ならない。
管制妖精「そちら、水戸の試験飛行隊か?」
アラマキ「はい!アラマキ以下、試験飛行隊であります」
管制妖精「こちら、警戒機飛鴎。今から送る地点にて、各飛行隊合同による迎撃を行う、至急向かわれたし!」
アラマキ「了解!ウメカワ、行くぞ!」
ウメカワ「はいっ!少佐、いよいよ八咫烏とル式噴進弾のお披露目ですね!」
アラマキ「そうだな、取り敢えず飛ぶのに邪魔なル式をぶっ放してから突っ込むぞ」
ウメカワ「了解っす!」
2機の八咫烏…キ283 試製噴流式戦闘機は速度を上げ、警戒機の指示した迎撃空域に向かう。
この八咫烏、実は皇国謹製の物ではない。
数次に及ぶ、遣欧潜水艦派遣作戦で設計図を入手し、皇国で試作と性能試験を行い、その後ライセンス生産を行う予定であった。
欧州連邦の盟主、独逸フォッケ・ウルフ社が抱えるクルト・タンク博士がかつて設計したTa183緊急戦闘機、通称『フッケバイン』である。
既に欧州連邦では、フッケバインを改良した後継機Ta183C-10、通称『ベ-195』が大量配備されている為、気前良く前世代機の設計図を寄越してくれたのだ。
この、凶兆の大烏の設計図と共に、試験の為譲ってもらったル式対空噴進弾も同じく独逸製である。
独ルールシュタール社が開発した、X4空対空有線誘導噴進弾がそれである。
3門の三〇粍機関砲と4発のル式対空噴進弾を抱え、日本神話の鴉2羽は大空を翔る。
???「お、水戸から出張ご苦労さん!」
アラマキ「コバヤシさん!お久しぶりです」
コバヤシ「俺たち第二四四飛行隊は、調布や厚木の噴進機離陸時の上空直援を兼ねて、羅刹で先に上がってたからなぁ…暇だったぜ」
アラマキ「ってことは…連中も来るんですか?」
ヒノキ「呼ばれてきました!鉄脚のエースことヒノキでーす!!」
アナブキ「俺も、俺もいますってばよ!!」
急加速で合流したのは、調布より飛び立ったキ201 試製六式戦闘機火龍である。
調布の飛行隊の合流に合わせて更に無線が騒がしくなる。
???「厚木から乙戦で来たっ!!」
???「サカイさん、置いてかないでくださいよ~」
コバヤシ「おっ!その声は、サカイとニシザワかい?」
サカイ「その通りでっす!」
ニシザワ「遅ればせながら、噴式震電にて厚木空一同。参上致しました!」
ウメカワ「これで役者は一通り揃ったっぽい?そういえば、カトウさんやクロエさん達が居ないっすね」
ヒノキ「あぁ、隊長達第六十四飛行隊はT部隊の護衛で今頃海の上を飛んでる筈だよー」
コバヤシ「洋上飛行っすか?俺たち陸軍寄りには苦手なんすよねアレ…」
ニシザワ「それなら、景雲改が先導しているから大丈夫っすよ!多分ね!!」
パイロット妖精'S「「「HAHAHAHA!!!」」」
管制妖精「警戒機より、迎撃機編隊各機!お前ら喋りすぎぃっ!!これ、航空総軍全軍の緊急回線なんだぞ!?」
管制妖精「…って、そうじゃなかった!間もなく迎撃空域に敵編隊が来るぞ!ちゃんと迎撃してくれよ!?」
パイロット妖精'S「「「大丈夫だ!問題無い!!」」」
こうして無線上でどんちゃん騒ぎをしながらも、各迎撃飛行隊はその期待に十二分に応えた。
敵重爆編隊、全機撃墜。
尚、敵重爆棲姫を屠ったのは八咫烏より放たれたル式噴進弾であり、有線誘導によって姫の頭部を正確に粉砕し、操縦不能に陥れた。
こうして、皇国本土上空の脅威は去ったのだった。
【横須賀鎮守府 沿岸海域】
爆炎と噴煙に包まれる高角砲塔L塔。
その象徴であった、爆発の衝撃で拉げたヴ式改電探は基部から外れ、周囲に設けられた機銃座を結ぶ回廊の一部を巻き込んで崩落する。
それを目にした艦娘達は、その周囲だけ時間が凍結してしまったかのような状態だった。
護れなかった……守れなかった……
誰ヲ…?
提督……提督を……
提督……提督ッテ……ダァレ?
提督は人間……ニンゲン……
にんげん……にんげんッテ……ナァニ?
ニンゲンは弱い生き物……一人では身を守れないくらい弱い生き物……
弱イ生キ物……ジャアドウスレバ強クナレルノ?
強くなるには…たくさんのニンゲンが集まって…街を作って武装して……強くなるの……
強クナル……強クナッタにんげんハドウスルノ?
強くなったニンゲンは…自分達の掲げる目的を目指して発展する
時には言葉…時には行動で…それでも無理な時には人間同士で争って……
争ウ……争ウトドウナルノ……?
勝者と……敗者の二つに分かれます……
敗者…敗者ニナルトドウナルノ……?
敗けると…悲しい…辛い…悔しい…何も出来ない……
……ドウシテ…何モ出来ナイノ?
榛名は…榛名は…着底して……浮かぶ鉄くずだったから…
何も出来なかった…あの日…あの時……守るべき国を…守るべき国民を…
守ルベキものハ……ドウナッタノ?
閃光に覆われ…爆風で吹き飛ばされ…原子の熱線に被曝して…壊滅しました……
ソッカ……悔シイネ…悲シイネ…辛イネ……はるなハ一杯頑張ッタノニネ?
とても……とても頑張りました…姉妹を失い…栄光を失い…国を失い…とてもとても悲しかった…
ソウダヨネ……はるなハ頑張ッタノニネ…
ダカラ…
だから…?
……コッチニオイデ…楽ニナロウヨ?
そちらに…?あなたは…誰?
私ハ榛名…ハルナ…はるな…ノ艤装ニ残ッタ…負ノ残留思念……
嫌です!何故…負の感情に飲み込まれなければならないのですか!?
ダッテ…はるなハマタ…にんげんヲ…提督ヲ護レナカッタ…守レナカッタ……
悔シイ…悔シイ…
辛イ…辛イ…
悲シイ…悲シイ…
コッチニ来レバ…楽ニナレルヨ…
感情ニ身ヲ任セテ……好キニナレルヨ…
提督ニ……会エルヨ………?
そんな…榛名は…榛名は…はるなハ…
ルナ・・・ハルナッ!!
あぁ、呼び声が聞こえる。
意識が…榛名の意識が…深層心理から引き剥がされる……
金剛「榛名ッ!!しっかりしろ!!!」
気付くと、金剛お姉さまに肩を掴まれ、激しく頬を打たれていました。
金剛「貴様!!それでも艦娘かっ!!?今は戦闘中だぞっ!!」
榛名「金剛…お姉…さま…?」
金剛「榛名!?やっと意識が戻った…貴方のお陰で、陣形は滅茶苦茶なのよ?戦意喪失してどうするのよっ!!」
榛名「お姉さま…榛名は…榛名は……」
金剛はグイッと榛名を引き寄せ、その瞳を…光を失いかけた瞳を…睨みつける。
金剛「提督が心配で仕方が無いって…!?ハンッ、笑わせないでよ…」
金剛「貴方は…榛名は、金剛型三番艦にして私の妹!そして今は栄光ある直衛艦隊の二番艦ヨッ!!」
金剛「そして、あの人と…提督と深い絆で結ばれている…」
金剛「違うノッ!?」
榛名「違くありません…榛名は…榛名は、提督のお嫁さんです…!」
金剛「その通りデース!なら、ここでウジウジしていて良いの!?」
金剛「あの時の…あの時の鉄底海峡作戦のように、放り出して逃げてて良いの!?」
榛名「榛名は…榛名は…嫌です。あの時、提督と一緒に乗り越えた筈です…でも…」
金剛「でももヘチマもあるカッ!!このままじゃ夫に…提督に失望されるよ!?それでも榛名は大丈夫なのっ!?」
榛名「それは…大丈夫ではないです…」
提督に嫌われる…失望される…それだけは絶対に嫌だ。
あの時、提督や他の仲間に迷惑を掛けた時、誓った筈だ。
前を向いて歩こう。
仲間と、提督…榛名の大事な人…と共にと…
なのにこの様は何だ。
これでは提督に失望されてしまう。
嫌だ…嫌われたくない…提督に失望されたくない。
榛名はあの日から変わった。
生まれ変わったんです!!
本当ニ…はるなハ生マレ変ワッタノ?
黙れっ!!
貴方は榛名ではない!
本当の榛名はここに、ここに存在しているのだから…偽物は…憑き物は去れ!!
ソウカ…ソウカ…
はるなハ変ワッタ…私ハモウ必要無イ……
私ハ去ル…消エル…
デモ…マタ…はるなガ必要ニナッタラ会イニ来ル……
待ッテテ…ネ……
二度と来るな!
榛名と提督の絆を穢す痴れ者めっ!!!
勝手は、榛名が、許しません!
榛名の瞳に生気が戻る。
そして、周りを感じ取る余裕が出て初めて気が付いた。
榛名の両肩を支える金剛の両手、それが震えていることに。
榛名(金剛お姉さまだって、提督の身を案じていらっしゃる…)
榛名(それでも気丈に振舞っている…なのに榛名は…)
榛名(いえっ…考えていてはダメ!今は行動で、提督に示さないと)ブンブンッ
榛名「お姉さま、皆さん。ご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ございません」
金剛の手を握り返しながら、一言一句に力を…魂を込めて榛名は話す。
榛名「榛名は大丈夫です!さあ、提督がいつでも指揮を再開できるように、作戦指示書に従いましょう!」
金剛「榛名…そうネ、それでこそ私の妹ネー」ウィンクッ
金剛「それでは皆さん、提督との通信が回復するまで私、金剛が臨時に指揮を執りマース!!」
艦娘'S「「「「よーそろっ!!!」」」」
こうして、艦娘達の士気喪失は免れたのだった。
【横須賀鎮守府 高角砲塔L塔 指揮所】
瞬間は唐突だった。
「敵機直上、急降下ぁーっ!!!」
上部電探室か上空監視所か分からないが、絶叫がスピーカーから流れて、指揮所は激しい振動と轟音に包まれた。
提督は咄嗟に大淀を庇い、指揮所の床に倒れこむ。
まるで釣り鐘の中に入ったような…脳を揺さぶる振動、遠くなる聴覚、そして電源喪失による漆黒の闇。
その中で提督は酷く落ち着いていた。
この感覚は何時以来だろうか…?
中部山岳地帯で、敵超重爆の落とす様々なモノ…大型爆弾、ナパーム、枯葉剤、糜爛性ガス弾…によって森林が、山々が、国土が荒れ果てる中、仕掛けた爆薬が誘爆しないかだけを心配していたあの時以来か…
それとも海軍予備士官として海上護衛総隊に派遣されて、その船団護衛任務の実戦訓練航海の帰路で深海棲艦の襲撃があって、乗船していた旗艦艦橋が直撃を受けて、艦長や船団司令が肉片になった時以来か…
そういえば、その時の船団…欧州から引き上げる在留邦人を乗せた輸送船団…の一隻に金剛が乗船していたんだっけか…
懐かしい…あの時艦橋で吹き飛ばされた衝撃で、前世の記憶を想い出したのだったな…
前世に比べればよっぽどましな護送船団だったから、指揮をするのはよっぽど楽だった。
寧ろ、臨時に舵を握らせた航海科の同期には悪い事をしたな。
血や肉片のこびり付いた舵輪を握らせてしまったのだから…
…トク!
……テイトクッ!!
誰かが俺を呼んでいる。
死神か?
眼を開くと、提督の頭を膝に抱えた大淀の顔が映る。
酷く慌てているようだ…
そうだ…俺は、指揮所で指揮を執っていて…敵機の攻撃を受けて…
次第に直前までの鮮明な記憶が蘇ってくる。
大淀「提督!?気付かれましたか…!?良かった…」
提督「大淀…スマン。肩を貸してくれ…」
安堵する大淀に肩を貸して貰いながら立ち上がる提督。
その頭の中では、様々な思考が為されていた。
左肩は…脱臼でもしたか?感覚が無い…
まあ良い、指揮には問題無い…
…指揮?
そう言えば直援艦隊はどうなっている?
外の状況は…?
提督「大淀、現在の状況を教えてくれ」
大淀「提督、そのかt「現在の状況を教えて欲しい」…っ!」
提督の左肩と、肘に出来た挫滅創から滲む血に視線をやりながら現状知りえる全ての情報を大淀は伝えた。
大淀「情報によると、上部ヴ式改電探に敵攻撃機が突入。結果、ヴ式改電探と上部電探室並びに頭頂部の対空監視所が全滅」
大淀「また、敵攻撃機の突入によりヴ式改電探本体や構造物の一部が崩落。機銃座の回廊やL塔近辺に被害が出ています」
大淀「そして、主電源の喪失により現在は非常用電源にて各種設備を稼働中。通信回線は電探回路と併設していた為、電探破壊時に流れた過電流の影響で破断。現在副回線での復旧を試みている状態です」
提督「了解だ。正確な報告、感謝する」
提督「敵機突入から大体どのくらい経っている…?」
大淀「はっ!現在10分程かと…」
提督「そうか、一時的とは言え…指揮系統の目と耳と口を奪うとは…敵さんも中々やるじゃないか」
大淀「そんな事より、早く腕の傷を…今、衛生班を呼んでいる所ですので、少々お待ちください…」
提督「あ、そういえば…指揮所の損害は?」
大淀「はい。提督を含め、数名が軽傷を負っただけで、長官や各提督、連絡武官共に健在です」
そう言いながら大淀はジトーッと提督を睨む。
大淀「因みに、一番の大けがをしたのは提督です。何故、あの時私を庇ったのですかっ!?」
後半からは叱責に近い口調になる。
大淀「私達は艦娘です。いざとなれば艤装展開で何とでもなります。なのに…なのに人間である貴方が何故…」
提督「取り合えず視界に大淀が居て、身体が勝手に動いてしまった」
提督「それに、練度の高い…敵と戦える艦娘の方が俺なんかより尊い存在だと思ったからだ」
大淀「それ、皆の前で言ったら確実に吊るされますからね…?」
提督「じゃあ、俺と大淀の二人だけの秘密って事で…」
大淀「遠慮致します。皆さんには、指揮所での記録としてしっかりと情報共有させて頂きます」プンスカッ
提督「そんなぁ~」
そこに、待望の知らせが入った。
通信回線が復旧したのである。
【横須賀鎮守府 沿岸海域】
ザザッ…ンゴウ……ザッ…コンゴウ……
鎮守府直衛艦隊が、引き続き沿岸哨戒を行うこと十数分。
遂にっ!空電音しか発しなかった無線機から、最も待ち望んでいた声が聞こえてきた!!
金剛「提督!?提督なのっ!?大丈夫デスカッ!?」
提督「ああ、暫く繋がらなくて悪かった。指揮所の方は問題無い」
提督「すまんが、そちらの状況を教えてくれ」
金剛「分かりましタ。敵攻撃隊は一部は母艦に、一部は潜水艦が待機していると思われる方面に遁走。私達は数機の攻撃を受けるも全員損害無し…」
金剛「そして…現在上空には…ヒクッ…敵影無しデス…」
金剛の声は途中から涙声に変わる。
金剛「…視界は砲煙で多少悪いですが…敵影無し…エグッ…」
金剛「我々の…我々の…勝利デスッ!!」ウワァーン
等々堪え切れず、金剛の瞳からほろほろと透明な雫が溢れ、零れ落ちた。
他の4人も、目には感涙の涙を湛えて潤んでいる。
提督「うん。指揮官代理の任、ご苦労だった。皆も、金剛を助けて良く頑張ったな」
金剛「提督が…デードグが、トラファルガーのネルソンにならなくって…本当に良かったヨォ…」グスグス
提督「敵狙撃手のマスケットじゃ…強化コンクリートはぶち抜けなかった訳だ」
提督「金剛、落ち着いたらで良いから…念の為、もう暫く周辺の哨戒を続けてもらえないか?」
金剛「ウン。了解したデース…」クシクシ
金剛「ネェ、残りの哨戒頑張るから…戻ったらハグしても良いデスカ…?」
提督「…共通回線でまたとんでもない事を…」
提督「…構わん。好きなだけハグして良いから、哨戒任務。しっかりと頼むぞ」
金剛「分かったヨー!それでは、鎮守府直衛艦隊。これより、鎮守府沿岸の哨戒任務に就きマース!!」
艦娘'S「「「よーそろーっ!!!」」」
響「司令官、一つ聞いても良いかな?」
金剛に率いられた一同の中、響が無線越しに提督に質問する。
提督「どうした、響」
響「もし、敵艦載機が不時着水しているのを見掛けたら、きちんと沈めた方が良いよね?」
提督「あぁ…そうだなぁ、そのまま漂流して敵に拾われましたじゃ困るし…」
提督「敵の不時着水機は発見次第、撃沈してくれ」
響「ダー、司令官!見付けたら必ず"始末"するよ…」
響の応答にはある種の感情が含まれていたが、敢えて提督は突っ込まなかった。
そして提督は…衛生班員に包帯を巻かれながら…大淀に定時通信の文面を告げる。
提督「大淀、定時通信を頼む。文面は『発、横須賀第七 宛、任務中ノ全艦娘ヘ。鎮守府ハ敵艦載機ノ攻撃受ケルモ之ヲ撃退ス。心配無用ニテ各艦娘ハ所定ノ任務ヲ続ケラレタシ。』…と送ってくれ。」
大淀「分かりました。直ちに…」
そう言って大淀は、定時通信を発する為に指揮所を後にする。
その後、電信は無事に横須賀第七所属の全艦娘に向けて発信された。
しかし、文面には大淀が故意に文言を追加したものが用いられた。
実際に発信された電文は以下の通りである。
『発、横須賀第七 宛、任務中ノ全艦娘ヘ。鎮守府ハ敵艦載機ノ攻撃受ケルモ之ヲ撃退ス。"尚、敵艦載機ノ攻撃ニヨリ提督負傷セルモ健在ニテ指揮継続中。"心配無用ニテ各艦娘ハ所定ノ任務ヲ続ケラレタシ。』
この電文の与えた影響は、後の戦闘で明らかとなるのであった。
投下終了
ぶっちゃけ金剛を泣かせたかったから敵機に突入してもらった(オカルティックな心理表現に挑戦してみたけど、中々難しいものですねぇ…)
また書き溜めたら投下します
ふぇぇ嵐ちゃん来ないよぉ…陽炎型駆逐艦金剛姉妹とか陽炎型駆逐艦能代ばっかりドロップするの止めてくだち!!11!
文学依存少女時雨ちゃんとかって需要ありますかね?(小声)
機動部隊戦直前までの少しだけ投下
【太平洋 某地点】
時間は少し遡り、横須賀にて鎮守府直衛艦隊が激戦を繰り広げている頃。
横須賀鎮守府 連合機動部隊の放った第一次攻撃隊は間もなく、敵機動部隊の防空範囲に到達しようとしていた。
敵機動部隊の構成は、索敵に出た景雲改の報告により判明している。
その内訳は、空母棲姫1隻、空母水鬼1隻、装甲空母鬼1隻、空母ヲ級改2隻、空母ヲ級フラグシップ3隻、高速戦艦タ級フラグシップ4隻、重巡ネ級乃至リ級フラグシップ10隻程度、防空軽巡ツ級エリート乃至各種軽巡フラグシップ十数隻、駆逐艦…恐らく後期型やフラグシップ級…約100隻による巨大な防空輪形陣ということだ。
これに対し、我が機動部隊攻撃隊はどのように立ち向かうのか。
攻撃隊は、中高度…大よそ高度4000mにて編隊を組み、敵機動部隊に向かったいた。
やがて、視力の良い艦戦妖精が敵直援機を発見。直ちに制空隊長に伝える。
この時、敵機動部隊は別動隊の護衛空母群より、艦隊直衛として約400機の艦戦を上空待機させていた。
イタヤ「よっし、敵さんも気付いたな…こっちの編成を見て、どう対応するか見ものだな…」
烈風妖精「皆、わざと編隊を滅茶苦茶にして飛ばしてきてますからねー…今頃奴さん混乱してますぜ」
フチダ「だろうなぁ…まあ、どっちにしろ艦戦の数ではこちらが"圧倒"しているのだから、どうとでもなるさ」
イタヤ「いや、うちら赤城制空隊の連中はしっかりスコアを稼ぎますよ?何しろ赤城姉が旦那さんに褒めて貰えるようにしないと…」
フチダ「確かに、普段は真面目だけど赤城姉、アレで提督に構って貰えないと微妙に拗ねるからなぁ」
赤城艦載妖精'S「「「HAHAHAHA!!!」」」
因みに、この艦載機同士のやり取り。
状況を素早く知る為、総隊長機経由で機動部隊に直結している通信回線上でのやり取りである。
つまり赤城達、第二次攻撃隊を発艦中の横須賀第七機動部隊にはこの通信会話…漏れなく全て届いているのであった。
赤城「………//」ビシュン
蒼龍(うわぁ、赤城さんさくらんぼみたいな顔してる。でも、発艦はしっかり出来る辺りは流石だよねぇ…)バシュン
加賀(赤城さん…気持ちは分かるわ。でも、私の隊は今の所余計な事を言ってなくて良かった…)バシュン
ここにきて加賀、フラグを立てる。
無論、立てた旗は即時回収されるのが世の常であった。
???「制空隊長!!それならうちの加賀もですぜっ!!」
イタヤ「お、その声は加賀姉の所のマッちゃんかい?」
アカマツ「ですぜ!」
アカマツ「加賀の姐御、カッコカリ前からそうだったけど…カッコカリ後はもう凄まじいのなんの」
アカマツ「毎晩寝る前には、提督の写真の前で、貰ったヘアゴムと指輪を置いて…その後、写真をぎゅって持って見つめて…」
イタヤ「…見つめて、どうするんよ?」
アカマツ「『呼び方は…あなた…それとも、旦那さまが良いかしら…?』とか言ってんですぜ?毎晩毎晩、顔にやけさせながら…見てるこっちは砂糖ドバーオロロロローですぜっ!!」
イタヤ「うへぇ…確かに、そりゃそっちも大変だな!!」
横須賀第七 艦載妖精'S「「「GYAHAHAHA!!!!」」」
赤城「……//」ヒュン
加賀「………ブツブツ////」バヒュン
瑞鶴(うっひゃー…加賀さん、熟れて破裂寸前のトマトみたいな顔になってる…(恐怖))ヒュン
翔鶴(私も早く改二になって活躍したい提督に褒められたいカッコカリしたい早くしたいしたい(錯乱))ピシュン
蒼龍(うわぁ…これ下手にフォローすると延焼するパターンだ…(はわわわっ))バシュン
飛龍(提督、ちゃんと多門丸に餌やって世話してくれてるかなぁ…(無関心))バシュッ
雲龍(戦闘配食のお握り、美味しかった…また、食べたいわ(ほんわか))シューン
天城(…とか、雲龍姉様考えてらっしゃるんだろうなぁ…(苦笑))シュイーン
葛城(これよこれっ!先輩や姉さん達との一斉発艦!!もう最高なんだからっ!!(キラキラ))バシューン
因みに第二次攻撃隊は連合機動部隊のうち奇数番号、つまり第一、第三、第五、第七が担当する。
逆に第三次攻撃隊は、偶数番号である第二、第四、第六の各空母艦娘によって担当される事になっていた。
さて、これら第一次攻撃隊を迎え討つ深海棲艦機動部隊は…正直、混乱していた。
空母棲姫(なんだ…この編成は…)
まず、輪形陣外縁部のレーダーピケットの役を担う駆逐艦の報告で敵編隊接近の報告を受け、直援機を向けた。
そこまでは良かった。
しかし、直援機の人工知能からもたらされた敵編隊の詳細を知るに従い、敵の意図が掴めなかったのだ。
深海棲艦の艦載機が、自己学習型の人工知能搭載無人機である事は前述の通りである。
その為、或る程度練度を積んだ直援機達は敵の編成や機数を正確に報告してきた。
その編成が問題だった。
敵編隊は約900機程だが、その約8割が艦戦…つまり、艦艇への攻撃へはほぼ無力の戦闘機だったのだ。
900機の8割なので、凡そ720機程だろうか…?
本来なら、まず空母の…せめて発着艦能力を奪う為に攻撃機を大量に飛ばすのではないのか?
艦戦の護衛と攻撃機の割合は逆ではないのか?
しかし、練度を積んだ直援機の報告は正確なので、猶更空母棲姫は敵の意図を掴みきれなかった。
残り2割の攻撃機も、爆弾を搭載した戦闘機…所謂バクセンが多く、柔然たる攻撃機のスイセイやリュウセイの数は少ない。
空母棲姫も、それなりに練度を積んできた深海棲艦である。
旗下の艦隊に命令を下す為に、より詳細な敵編隊の報告を直援機に求めた。
そして、返ってきた応答信号により、空母棲姫は安堵する材料を見付けることが出来た。
直援機からの応答で、敵編隊はフラフラと危なげに飛行しており、編隊飛行がまともにとれていない事が分かった。
攻撃機もバラけており、相互援護が難しい位置取りである状態である。
そこから、『敵編隊は練成途上であり、熟練度の低い部隊である可能性が高い』という内容が、直援機の判定として送られてきた信号だった。
この判定を裏付ける材料を空母棲姫は知っていた。
攻撃地点に近づく前、敵のヨコスカチンジュフでは、機動部隊の練成の為遠く離れたニンゲンのキチまで移動中であるということ。
その為、敵空母の艦載機は低練度の練成飛行隊であることが、ニンゲンの無線を傍受する事で分かっていたのだ。
つまり、連中は押っ取り刀でやって来た良くて二線級…悪く言えば編隊飛行もままならぬ七面鳥…という事か。
そう、空母棲姫は判断した。
その為、艦隊へは輪形陣をそのままにするよう命じる。
そして、我々の直援機にはある程度練度がある為、一割を攻撃隊に向け、残り9割を敵艦戦に向けるよう指示した。
後は、自動で我々の艦載機が七面鳥…艦戦や艦攻等の種類を問わず…を叩き落とし、輪形陣を形成する各直衛艦の対空砲火によって、敵は我々に指一本触れずに潰走するだろう…
空母棲姫は、ほくそ笑んだ。
無論、空母棲姫の認識は間違いである。
攻撃隊の、特に第一次攻撃隊に選抜されているのは、"ワザ"と編隊飛行を…ギリギリ相互援護が出来る範囲の曲芸飛行で…崩して、尚且つ総隊長指揮の元、正確に敵を攻撃できる腕前を持つ熟練の妖精達であった。
その多くは、配属当初から…古株では2年以上も…深海棲艦との死闘を経験して生き残ってきた、古強者達である。
そして、彼ら最高練度の連中がひよっ子と呼ぶ新人パイロット…と言ってもベテランによる文字通り血を吐く訓練を経験している連中…は第二次攻撃隊や第三次攻撃隊に集中していた。
彼らから見れば、逆に敵猫艦戦の大部分がこっちに向かって来る光景が、鴨が葱を背負ってくる事に等しい状況だった。
総隊長…これは彩雲に搭乗している連合機動部隊攻撃隊の全体指揮官である…の号令により、約100機が攻撃機の直援に回る。
残りは全て、敵直援機に向かってスロットルを全開にした。
ここに、遂に艦娘と深海棲艦の大規模機動部隊同士による激突が始まった。
投下終了
また書き溜めたら投下します
ゲージは割った
嵐は来ない…バケツが死ぬ…
むっちゃんまで書けたので投下
嵐出て秋イベ完了したけど
水木御大が冥界に旅立たれたのでびみょんにアンニュイな今日この頃
カンムスメと深海棲艦の艦戦同士の空中戦が開始されたが、それは副官である空母水鬼と防空担当のタ級フラグシップに任せた。
空母棲姫の専らの関心は、ボウソウ半島通過後に連絡の取れなくなった攻撃隊の状況把握であった。
指揮官機や次席指揮官機との連絡が全く取れないのである。
それはそうだ。
どちらも金剛達の放った最初の管制対空射撃で撃墜され機体は四散している。
残った攻撃隊残存各機も、自身への攻撃に対する回避や遁走への判断が優先されており、現状を報告するという信号の優先順位は最下位に近い。
状況が呑み込めず、攻撃隊帰投の時間が刻一刻と近づく中、空母棲姫は苛立ちを隠せなくなってきた。
その時タ級の報告で、初めて現在の自身が置かれた状況が只ならぬ事態となっている事に気付く。
タ級の報告は、輪形陣外縁の駆逐艦達が敵攻撃隊の攻撃で被害を受けているという事だった。
空母棲姫「そちらには直援機を回していた筈だろっ!!」
しかし、タ級はその直援機が全て敵に落とされてしまい、輪形陣外縁部の制空権が敵の手に渡ったと伝えた。
その報告に空母棲姫は愕然とする。
我々の直援機が敵攻撃隊を返り討ちにしたのではなかったのか…と。
この時、連合機動部隊攻撃隊を援護する為に向かった100機の艦戦は全て、横須賀第一と第二所属の震電改だった。
本来乙戦…局地戦闘機…として開発されていた震電を艦載仕様とする為、様々な紆余曲折…脚部・機体強度やプロペラ径の見直し等…を経て誕生したのが艦上戦闘機 震電改である。
艦戦への改造処置により最高速度こそ低下してしまったが、乙戦譲りである直線飛行時の加速性能は烈風を遥かに凌いでいた。
急加速で追い縋った震電改に背後を取られた直援機隊は、高速を生かした一撃離脱によって瞬く間に叩き落された。
そして、背後の憂いを断った攻撃隊は輪形陣外縁部の駆逐艦や巡洋艦に狙いを定め、攻撃を仕掛けてきたのだ。
輪形陣を構成する中小艦艇から急増する損害報告。
しかし、まだ空母棲姫に策が無い訳では無かった。
護衛空母群から、追加の直援機を寄越してもらうと共に、こちらの各空母の予備機を出す。
主力となる空母や戦艦にはまだ、敵は攻撃出来ないでいる。
まだ、有利なのはこちら側なのだ…
直援機の増援を要請する通信が送られたが、返ってきたのは悲鳴のような返信であった。
『我、有力な敵水上部隊に補足され攻撃を受けている。至急増援求む。』
そして、攻撃隊によって中破状態となった輪形陣外縁部のレーダーピケット艦から、カンムスメの第二次攻撃隊と思しき機影を補足した通信が入ったのもこの時であった。
この時、初めて空母棲姫は事態の深刻さに気付いたのであった。
【太平洋 某地点】
深海棲艦の護衛空母艦隊、補給船団は当初、自身の任務の内容から身の危険を感じる事は無いと考えていた。
位置としては、間に艦娘の機動部隊を挟む形で空母棲姫の機動部隊の南西側に展開していた。
一度、ニンゲンの哨戒機…これは海上護衛総隊の七式大艇だった…に上空を横切られたが、これは船団直衛の艦戦によって追い払われた。
そもそも、位置的にニンゲンの索敵圏の死角に位置しており、本土を強襲されたニンゲンは、まず自身の防衛と空母棲姫の艦隊に向かう筈だ。
この船団を指揮する戦艦ル級エリートはそう考えていた。
その所為もあってか、船団全体に緊張感が欠けており、どちらかと言えば楽観論が全体を支配しつつあった。
だから、最初に水上レーダーに所属不明の艦隊が映った時、新たに出現した深海棲艦の艦隊だろうと思った。
やがて、水平線の彼方からその艦隊が姿を見せる。
先頭は戦艦だろうか、その後ろには重巡と思しき連装砲を備えた連中が複縦陣で続いている。
やがて、先頭の艦が発砲するのが見えた。
バカな奴だ、出現したてでこちらが敵か味方か分からんのだな…
苦笑したル級は、合流後にその点について、この味方の深海棲艦達にきっちり指導してやらねばと思った。
数十秒後、ル級の右舷側に居た軽空母ヌ級エリートの後方に水柱が三本立ち昇った。
この時、初めてル級はおかしな点に気付く…
今の水柱の高さ…我々の16インチ砲の物より遥かに高いのだ…
ル級(まさか…)
直ちに、直援機を向かわせ…が、敵戦列の後方から湧き上がって来た航空機に叩き落とされた。
しかし、落とされる前に直援機は、対峙する艦隊が味方ではない事を伝えてきた。
カンムスメの、護衛空母と重巡戦隊や水雷戦隊に囲まれた戦艦主体の強力な水上打撃艦隊。
これが、直援機の送って来た通信である。
改めてル級は、敵の戦列を確認する。
先頭が戦艦なのは間違いない。
発砲したのも先頭艦だ、主砲から白煙が上がっているのが見える。
しかし、後方にいる重巡だと思われた複縦陣の部隊…これも、射撃を開始したのである。
ル級(敵との距離は3万以上あるのに発砲…という事は…)
そう、先頭の艦が大きくて後続の艦種を見誤っていたのだ。
後続は重巡ではない。
恐らく、16インチ級の主砲を持つ戦艦。
その思考は数十秒後、今度はル級の左舷側に居た補給船団近辺に立ち昇った多数の水柱で確信を得た。
敵の先頭はヤマト級戦艦、ヤマト級の大きさで誤認したが後方はナガト級戦艦。
そして、こちら側…ル級後方の護衛空母や補給船団側に…に水柱が立ったという事は、船団全てが敵戦艦の射程内に入ってしまったという事だ。
事の重大さに気付き、ル級は卒倒しそうになった。
武蔵「おい砲術。初弾命中とはいかなくてもせめて夾叉くらいは出来ないか?全弾全遠とは…それでも大和型の砲術か!?」
イノグチ「申し訳ねぇっす武蔵の姐御!おい、おめーら次は絶対ぶち当てるぞ!!砲術の意地を見せてやれ!!」
砲術妖精'S「「「よぉーそろーっ!!!」」」
武蔵「よーし次は一番から三番まで、それぞれ下げ二、一、そのままでいけっ!」
砲術妖精A「砲術長、再度測距完了!」
砲術妖精B「一番から三番各砲、装填完了!」
砲術妖精C「発砲回路接続確認、いつでも撃てます!」
イノグチ「よし、武蔵の姐御!準備完了しやした!!」
武蔵「よぉーし、一番主砲。撃ぇーっっ!!!」
主砲発射を告げるブザーが鳴り、艤装に張り付いていた妖精達が爆風で吹き飛ばないよう退避する。
ブザーが鳴り終わると、一番主砲塔の三門の主砲がそれぞれ異なる仰角を付けて、轟音と装薬の残り火を吹き出しながら発射される。
発射された三発の九一式徹甲弾は…39秒後に敵軽空母ヌ級の周りに二本の水柱を立てる。
残りの一発は…見事命中である。
命中弾は紙のようなヌ級の艤装装甲を貫通、そのまま水中まで突き抜けた。
喰らった方のヌ級は溜まらず、その衝撃で水中まで引き釣り込まれ、そこで艤装内の弾薬や航空燃料が誘爆して轟沈する羽目になった。
イノグチ「よっしゃ!!やりましたぜ姐御!」
武蔵「ふむ、遠近命中で完全夾叉か…やれば出来るではないか」
砲術妖精'S「「「ドヤッ!!!」」」
武蔵「相手が大和型にはちと不釣り合いだが…止むを得まい」
武蔵「二番主砲、今の算定値を元に…」
イノグチ「へへ、二番主砲塔ももう測距、装填共に完了済ですぜ!発砲回路も接続して姐御の号令一下、いつでも撃てます!」ドヤァッ
武蔵「ふふ、全く現金な奴らだな…」ニヤッ
武蔵「良いだろう。一番、二番主砲、斉射!!撃てぇええーーっ!!!!」
再度、警告ブザーの音と共に、群青の海原に四十五口径四十六糎三連装砲斉射の轟音が響き渡る。
戦線後方だと思われていた、深海棲艦護衛・輸送部隊は今や修羅場の真っただ中となった。
足柄「朝霜!突っ込むわよ!!」ズバババッ
朝霜「おうっ!清霜、霞、付いてきな!いっくぜぇーっ!!」ドヒューン
清霜「わっ!?待ってよ朝霜姉ぇ…武蔵さん!行ってきます!!」ピューン
武蔵「ああ、好きなだけ暴れてこい」フリフリ
霞「ちょっ!?ちょっと朝霜…もうっ!初霜、こっちは任せたわ!!」
初霜「クスッ、了解です!じゃあまた、頑張ってね」
霞「そっちもね、しっかり旗艦を補佐してあげて頂戴よ!」バシューン
酒匂「…ぴゅーん。これでも、霞ちゃんより適用係数高いのにぃ…」シュン
初霜「大丈夫ですよ。あれも霞ちゃんなりに心配してくれてるんです」アハハ…
浜風「そうですね。なので、我々がしっかり酒匂さんを補佐します」キリッ
磯風「だから安心して命令してくれ、水雷戦隊旗艦殿」ドヤッ
酒匂「ぴゃん!有難うみんなっ!」パァ
酒匂「よぉ~し、水雷戦隊旗艦 酒匂!突撃して敵をせん滅しますっ!!」
駆逐艦'S「「「了解っ!!!」」」
妙高「全く、足柄ったら…勝手に戦列を離れて…」ハァ…
那智「はははっ!何、足柄らしいじゃないか…」ニヤリ
摩耶「なぁ、高雄姉ぇ、敵機も殆どいないしさぁ、アタシも…」
高雄「はいはい。思う存分、暴れてきなさい。これで問題ないかしら、指揮官?」クスクス
愛宕「もっちろんよぉ~!摩耶ちゃん、お土産よろしくねー?」ニコニコ
摩耶「応っ!防空巡洋艦 摩耶、出撃するっ!!」ズサァー
扶桑「さあ、瑞雲達。あの子達を援護してあげて…」
水観妖精「山城ネキ!左舷から敵軽巡!!向かってきます!」
山城「姉さまの邪魔をするな!主砲、良く狙って…撃ぇぇーっ!!!」ドッゴーン
水上打撃部隊の両側面から、重巡戦隊や水雷戦隊が包囲を進めていく。
対する深海棲艦は突如現れた強力な敵艦隊に、蜂の巣を突いた様な騒乱状態になっている。
それに対して艦娘達は、敵のお世辞にも統制が採れているとは言い難い迎撃に対し、色々と余裕が見て取れた。
武蔵「しかしプリンツよ。お前の国の電探は凄いな…遠くまで良く見えて、精度も高い」
プリンツ「デンタン…あぁ、『ゼータクト(FuMo25)』の事ですか!?」ピコーン
プリンツ「でも、本国ではもっと高性能のゼータクトや、より新しい水上電探の『フライヤ』や『ナウシカァ』も配備が進んでますよ」エッヘン
武蔵「ほう、我が皇国もそれくらい高性能の電探を作れるようになれれば良いが…」
矢矧「それなら技研で研究はしてるみたいよ。ただ、まだ艦娘に装備させるには装置が大き過ぎるとか…」
武蔵「成程。ならば、そのうち国産の高性能電探を使った精密射撃も可能になる訳か…楽しみだな」フッ
この水上打撃艦隊には、独逸の艦娘である重巡プリンツ・オイゲン、駆逐艦 Z1"レーベレヒト・マース"、Z3"マックス・シュルツ"も参加していた。
Z1「…でも本当に驚きだよねマックス。ぼく等独逸の艦娘が、遠く太平洋で戦うなんて…エムデン號の船員になった気分だよ」ホエー
Z3「どちらかと言えば正規軍というより、国を超えての義勇兵…差し詰めランツクネヒト?」フゥン
Z3「…それよりかはフリードリヒ大王のグラナディア(擲弾兵)かしら、オイゲン嬢」チラッ
2人の会話の途中で、合流したプリンツが鼻息を荒々しくして力説する。
プリンツ「ヤー!!その通り!私達独逸の艦娘が活躍する事で、大使館寄宿舎で着任を待ってるビスマルクお姉さまが居易い鎮守府を目指す!」フンスッ
プリンツ「だからこそ、東洋のマールバラ公(自称)ことアトミラールさんに協力して我々独逸艦娘の優秀な所を見せますっ!!」フンスフンスッ
プリンツ「という訳で、ライヒス・パンツァー・グラナーディア…マールシュッ!!」キラキラッ
Z1「ヤヴォールッ!」ズサー
Z3「ジーガーッ!」スイー
独逸の艦娘達3人も、日本の艦娘達に負けじと大混戦の敵渦中に突っ込んでいった。
狩場の様相を呈してきた戦場に佇む二つの影。
戦艦長門と陸奥である。
2人の脇をすり抜けるようにして、足柄に率いられた駆逐艦3人が駆け抜けていく。
長門「いやぁ、やっぱり駆逐艦は可愛いなぁ」ニマニマ
陸奥「長門…顔面が作画崩壊しているわよ…」
長門「…むっ!済まない…」キリッ
陸奥「それより、あの子達の事、援護しにいってあげたら?」
長門「ふむ、妙案だな。そうする!では、また後でなっ!!」ドババババッ
陸奥「全く、あの辺の性格は昔っから変わらないわねぇ…」アキレ
溜息を吐く陸奥の前に、影が一つ。
陸奥「それで…貴方が私の相手かしら?」
戦艦ル級エリートである。
陸奥「良いわ、お姉さん。今、ちょっと気が立っているから…相手になってあげる…」クイクイッ
戦艦陸奥は自信家である。
この自信に満ちた性格は、陸奥として着任する前からの彼女の素の性格であった。
彼女は、ごく普通の家庭の一女として生まれ育った。
敢えて、他と違う点を挙げるとすれば、そのスタイルの良さと聡明さが、彼女の自己を形成するに当って多大な影響を与えた事だろうか。
人当たりも良く誰からも認められ、自身に対しての自信から彼女は、常に世の中の事象は自分で判断して決断していった。
その結果、自分の思う通りに決断していかなければ気が済まない性格が形造られた。
だからと言って、それは周りから疎まれる程ではなく、あくまで常識の範疇かつ彼女の奥底で秘めたる深層心理が為した結果であった為、彼女は順調に年を重ね、大学を出て就職した。
因みに長門とは、中学・高校と同じ学校で腐れ縁である。その辺は後述する。
大学卒業後、大企業の受付係として就職した彼女は…しかし、その環境に対して内心不満の種を燻ぶらせていた。
自分はこんな所で、接客をしてただの作り笑顔を振り撒く為に就職したのではない。
もっと、私にしか出来ない事はないのか。
そんな時、艦娘候補者として選ばれたという通知が届いた。
今いる職場に比べれば、もっと活躍の目が…自身の自信を裏打ち出来る機会が…あると感じた彼女はその通知を元に志願した。
結果は、長門型戦艦二番艦 陸奥である。
大型艦、しかも海戦の花形である超弩級戦艦である。
常に渋面の提督に、どこか人間離れした胡散臭さを感じてはいたが、彼女は概ね満足した生活を送った。
艦娘としての人生を歩み始めた陸奥。
しかし或る程度練度を積み、適用係数が上昇した或る時、彼女は自身の艤装の…戦艦陸奥の前世を垣間見た。
桂島で停泊中の不慮の爆沈…。
それは、戦艦としては全く情けない最期に感じた。
何故私が、この私がこんな戦艦の艤装に選ばれたのか。
どうせなら長門の方がまだ、最期まで戦艦として存在出来ていたのではないか。
その頃から、陸奥の戦績は少し振るわなくなった。
嫌な事が起きた際、周りの全ての事象に敏感になってしまう事がある。
この時の陸奥がそうだった。
嫌と言えば提督…あの秘書艦として接すると常に渋面を作っている…提督だ。
喫煙者だと直ぐに分かるくらい、煙草の匂いを纏わり付かせている癖に、陸奥は一度も提督が煙草を吸っているのを見た事が無かった。
私が…戦艦陸奥が、第三砲塔の不審な失火で爆沈したから気を使っている…?
ならば、堂々と私に言ったらどうよ!!
その感情を、秘書艦になった際に陸奥は思うがまま提督にぶつけた。
提督は相変わらず渋面を作りながら、目を反らす。
やがて、弁解なのか何なのか分からない事を言った。
提督「陸奥、うちの鎮守府ではな…その、君の前でだけは煙草を吸わないと俺は決めているんだ」
その回答を聞いた陸奥はぽかーんとして、やがてあきれ果てた顔になる。
陸奥「…何よそれ?私を口説いてるつもり?今時の若者だってそんな事言わないわよ…」
陸奥の言葉に、提督は更に渋面を渋くするのだった。
その日を境に、提督と陸奥の間で暗黙のゲームが始まった。
と言っても、隠れてコソコソと煙草を吸う提督の事が気に入らない陸奥が一方的に始めたものだったが…
内容は至ってシンプルで、提督はある程度執務が終わると自室の扉を開けて、自室経由で喫煙しに出掛ける。
これが、始まりの合図だ。
それから3分間待って、陸奥は提督の行方を追うのだ。
そして、見付けたら散々からかってやるつもりだ。
2人の秘密の追い掛けっこは暫く続いた。
時には提督が逃げ切り、或る時は隠れ場所を駆逐艦娘に暴露され、情けない姿で陸奥に見つかる事もあった。
いつしか、陸奥にとってこの時間は楽しいものになっていた。
そして、この頃から陸奥の戦績は元に戻りつつあった。
或る時、とうとう各艦娘…主に大淀や間宮や明石等…から苦情が入り、中止となった。
曰く、真面目に執務をしてください。
曰く、禁煙場所で吸うのを止めて欲しい。
曰く、火器厳禁の工廠で吸おうとするな!
等々の理由である。
止む無く提督は普段の喫煙場所…非常階段の踊り場で…喫煙をするが、陸奥は度々偶然を装ってその場に通り掛かった。
そして、悪戯っぽい笑顔を張り付かせ散々に提督をからかうのがお気に入りであり、彼女のストレス発散に役立った。
また或る時、更に陸奥を喜ばせる出来事があった。
提督が陸奥を前にして作る渋面。
その理由が判明したのだ!
切っ掛けは、偶々食堂で軽巡の鬼怒と相席になった事だった。
提督と一番仲が良い…これは何となく女の感で判っていた…と思う彼女に聞いてみたのだ。
曰く、提督はいつも渋面を作っているが、その理由について心当たりが無いか…と。
回答は至極簡単に返ってきた。
人懐っこい笑顔で鬼怒は、その理由を答えた。
曰く、提督は陸奥さんが美人過ぎてまともに目が合わせられないから、渋面を作って誤魔化している…と
この回答を聞いた陸奥は、飲んでいたハーブティーを吹き出しそうになった。
当然だった。
あの、どこか人間離れして…距離を感じていた上官の…渋面の理由が、小さい男児の意地みたいな理由だったのだ。
この瞬間、提督と陸奥の見えない距離が一気に縮まったような気がした。
鬼怒にお礼を言って席を立つ陸奥は、内心ほくそ笑んだ。
それから、陸奥が秘書艦になる日は提督にとって災厄の日と成り果てた。
提督は、自身の作る渋面の理由を陸奥は知らないと思っている。
しかし、陸奥は理由を知っているから遠慮なく年上の上司をからかう。
お姉さんぶり、誘惑するかのように…
因みに第三砲塔をネタにからかった時、提督の作りだした表情に陸奥は内心笑いを堪えるのに必死だったと言う。
やがて、いつの間にか陸奥の戦績は以前のそれを上回っていた。
そして、提督もいい加減陸奥に慣れてくると、いつの間にかお互いの目に見えない信頼感は更に高まっていった。
そこから暫くして、長門が着任した。
その姿を見たとき、陸奥は唖然とした。
中学・高校と腐れ縁だった彼女…幼児と触れ合える職業に就きたいと常に豪語し、学校帰りに公園で遊ぶ子供達に声を掛けて廻っていた彼女…が同じ長門型として着任したのだ。
その着任理由だが、彼女は高等学校卒業後、専門学校に行き、保育士の資格を取ろうとした。
その最中に艦娘候補者の通知が届いていたが、全て無視していた。
しかし、彼女の努力も空しく数回受けた資格試験で全て不合格。
居酒屋のカウンター席で管を巻いていた所、隣に"偶々"座ってきた提督に「小さい女の子と触れ合える職場がある」と唆され、意識朦朧とする中で艦娘となる『最終確認書類』に署名した。
次に長門が意識を取り戻した時は、横須賀第七の戦艦宿舎の一室だった。
因みに、この話を提督が秘書艦の金剛に話した時、呆れた回答が返ってきた。
金剛「テートクゥ、一体いつの時代の王立海軍の真似をしてるんデスカ…」
これに対して、提督は当時の王立海軍の雇用や待遇面に関しての問題点を何点か挙げてやると、金剛は拗ねて30分間口を利かなくなった。
しかし戦艦長門として着任した彼女は、存分に艦娘としての自分を確立して言った。
眼を醒ませば、そこは無邪気な駆逐艦娘達…長門曰く天使たち…が駆け回る鎮守府こそ、自分の探し求めていた楽園だったと確信したのだ。
この発言を聞いた提督や陸奥達は、勿論ドン引きである。
しかし、駆逐艦娘達も、この頼れるお姉さんを陸奥同様に慕い、長門もそれに応え良く駆逐艦を庇い、助けた。
そして、嵩む修理資材に提督は頭を抱える日々が続く事になった。
尚、敵深海棲艦の駆逐艦については長門曰く「駆逐艦の名を借りた名伏し難い何か」と言い、真っ先に攻撃の対象とされる事が多い。
話が大分脱線してしまったが、今陸奥と戦艦ル級エリートは対峙していた。
同航砲戦である。
まず敵ル級が発砲。
数十秒後、敵弾が陸奥を包む。
乱立する水柱。
そして、金属と金属が高速で擦れ合う、絹を引き裂くような甲高い音。
敵弾の一発が陸奥の砲塔に命中したのだ。
しかし、進入角度が浅かった為、砲塔天蓋に弾かれた敵弾は明後日の方向に飛んでいく。
陸奥「各部、損害報告!急いでっ!」
陸奥は旗下の妖精達に向かい叫ぶ。
司令塔妖精「こちら司令塔損害無し!」
砲術妖精「こちら砲術!三番砲塔被弾も損害軽微!」
陸奥「砲術、損害の程度は?」
砲術妖精「被弾の衝撃で何人か気絶しただけです!」
砲術妖精「第三砲塔の五番、六番砲共に健在!砲塔バーベットも歪み無しで旋回可能!」
陸奥「分かったわ。全砲、撃ち方よぉーい!!」
陸奥の号令一下、先ほどの返礼とばかりに主砲の発射準備が整えられる。
先程、大淀からの定時通信を聞いた時はビックリした。
あの提督が負傷するなんて…
しかし、それは陸奥の心…深層心理に潜む自尊心に火を灯した。
提督を、あの人をからかい…火遊びして良いのは私達艦娘であって、貴方達深海棲艦ではない。
お痛が過ぎる子には、躾が必要ね…。
それに、まだ私はケッコンカッコカリを提督としていない。
勝手に死なれては困るじゃない。
最初のケッコンカッコカリこそ鬼怒だったが、私にはまだ彼からもぎ取れるモノがある。
最初の…高速戦艦でもなく航空戦艦でもない…純粋な戦艦としてのケッコンカッコカリというモノが。
勿論、ケッコンカッコカリの時間と場所は私に見合った物でなければ駄目よ?
でも、その期待に応えてくれるなら…お姉さんが、とっておきのご褒美を挙げるわ。
だから、待ってなさいよ提督。
今、この敵戦艦を叩き潰して戻ってきてあげる。
第三砲塔に折角敵弾を喰らったんだし、これをネタに思いっきり弄ってあげるわ…
その時の提督の反応を思い浮かべ、陸奥はほくそ笑んだ。
砲術妖精「陸奥のアネキ!準備出来ました!」
陸奥「上等…主砲、全砲門!開けぇーっ!!!」
陸奥の命令と共に、全八門の四〇糎砲が火を噴く。
放たれた8発の主砲弾は、敵ル級エリートに降り注ぎ、その内3発が命中弾となる。
完全に敵を散布界に収めての夾叉である。
それだけ、陸奥の練度が高い事を伺えさせる状態であった。
陸奥の放った砲弾により、敵ル級は砲塔を2基貫通されたのか、支持架から盛大に爆発を起こし、砲塔が吹き飛ぶのが見えた。
その様を見て、陸奥は自身のスコアが更新される事を確信した。
既に、戦の流れは完全に艦娘側に傾いていた。
投下終了っぽい
次は素敵なパーティ(敗残兵狩り)の時間っぽい
時雨も居るっぽい
夕立、てーとくさんが着任した次の日に着任した最古参の一人っぽい!
ずっと一緒だった大事なてーとくさんが傷ついたって聞いて
夕立、ちょっと我慢が効かないかもしれないっぽい…
箸休め
【国民的人気戦艦 ビックセブンの一日】
05:00 起床
国民的人気戦艦 長門は目を覚ます。
さあ、新しい一日の始まりだ。
起床と共に、長門は枕の下に敷いた駆逐艦娘の写真を取り出し眺める。
夢の内容は覚えていないが、そんな些細な事はどうでも良いのだ。
写真を見て覚醒した長門はそのまま次の行動に移る。
何故なら、彼女は頼もしい国民的人気戦艦なのだから。
05:30 グラウンド
横須賀鎮守府合同グラウンドでは、早朝トレーニングを行う艦娘達で賑わっていた。
横須賀第七でも、軽巡洋艦長良、鬼怒、燃料給油艦速吸、駆逐艦皐月、長月、菊月、朝潮を始めとする艦娘達が参加していた。
国民的人気戦艦は、この中に混ざり、共に早朝ランニングを行う。
長門は、息を切らしながら頑張って走る駆逐艦達に付いて走り、励ます。
何故なら、彼女は頼もしい国民的人気戦艦なのだから。
06:30 シャワー室
早朝トレーニングを終えた艦娘達は汗を流す為シャワーを浴びる。
横須賀第七に割り当てられたシャワールームで、国民的人気戦艦長門は駆逐艦娘達がシャワーで遊ぶ中に混じり、共にシャワーを掛け合い。
時に髪を流して、駆逐艦娘の体に付着した汗を流してあげる
何故なら、彼女は頼もしい国民的人気戦艦なのだから。
07:00 朝食
シャワーを浴びた長門は、朝食を採る為食堂に向かう。
そこでは、起床して総員点呼が終わり、お腹を空かせた艦娘達で賑わっていた。
長門の前にはちょうど初春型の艦娘達が並び、お盆を手に順番を待っている。
やがて彼女達の番が来た。
彼女達の会話に耳を傾け、届かない小鉢を取ってあげる優しさを垣間見せる。
何故なら、彼女は頼もしい国民的人気戦艦なのだから。
09:00 演習
初春型の席で楽しい朝食のひと時を過ごした長門は、演習へと向かう。
今日の相手は、横須賀第四が相手だ。
こちらは新しく加わった駆逐艦娘の練成を目的とする為、その艦娘を旗艦にしている。
長門は、火力支援担当として編成の四番目に居た。
適用係数の高い長門は演習でも火力担当として期待されていた。
何故なら、彼女は頼もしい国民的人気戦艦なのだから。
11:00 演習終了報告
演習の結果を提督に報告する。
結果はC敗北判定である。
「何であそこで旗艦を庇うんだよ!!」と提督は長門を叱責するが柳に風の如く聞き流す。
彼女にとっては、旗艦の駆逐艦娘が無傷で演習を潜り抜けた事の方が大事だったのだ。
弱気を助け、強気を挫く。
何故なら、彼女は頼もしい国民的人気戦艦なのだから。
12:00 昼食
さあ、待ちに待ったお昼の時間だ。
艦娘達が元気に任務に就けるよう、給糧艦や配膳当番の艦娘が作ってくれた大事な昼ご飯だ。
朝以上に賑やかになる食堂。
長門は、列の最後尾に並ぶ。
そこでは清霜や朝霜達夕雲型の駆逐艦娘が喧々諤々とお喋りに講じていた。
ここでも、小鉢に手が届かない清霜の変わりに小鉢を手に取り、お礼を言われる。
しかし、長門にとってもこのような事など些細な事に過ぎない。
何故なら、彼女は頼もしい国民的人気戦艦なのだから。
13:00 演習道場
さあ、午後の課業の時間がやってきた。
長門はここで清霜に稽古を付けている。
「戦艦になりたいっ!!」という、清霜の純粋で直向きで無垢な瞳の前には例え長門と言えども抗えない。
乱取りや組手等の稽古を通して、清霜に密着し、手本通りの型を取れるように身体を支える。丁寧に。
どのような駆逐艦の願いでも、叶えるように長門は全力を尽くす。
何故なら、彼女は頼もしい国民的人気戦艦なのだから。
15:00 間宮
この時間になると、おやつを食べに多くの艦娘達が甘味処 間宮に向かう。
「今日は間宮さんの新作があるみたい!」
「ハラショーそれは楽しみだな」
「うむ、楽しみだな!」
「はわわ、長門さんなのです!」
「長門さん、ごきげんよう…なのです!」
間宮に向かう駆逐艦達に混じり、彼女もまた間宮に向かう。
彼女だって立派な戦艦とは言え、女性だ。
甘い物には目が無い。
間宮に来ていた駆逐艦娘達全員に間宮の新作を全て奢り(代金は提督付)、駆逐艦娘達のお礼の言葉にも敢えて素っ気なく返礼する。
駆逐艦娘達全員に楽しいひと時を過ごしてもらう為なら、この程度の出費など怖くも何ともない。
何故なら、彼女は頼もしい国民的人気戦艦なのだから。
17:00 課業終了
さあ、一日の課業が終わった。
非番の艦娘達は三々五々、それぞれの余暇を過ごす。
長門は陽炎型駆逐艦娘達が、近くのしょっぴんぐもーるとやらに向かうというので同行する。
しょっぴんぐもーるには様々な店が並んでおり、彼女達が迷子にならないように細心の注意を払いながら長門も楽しんだ。
「この服、ええなぁ」
「確かに、今は季節の変わり目ですから、気になりますね…」
「確かに…な、良いだろう。その服、このビッグセブンが買ってあげようではないか!」
「うぇ、長門さん…これブランドものだから結構な値段よ!?」
「ふっ…私はビッグセブンだ。この程度の値段で恐れる事などない」
「わー凄いねー流石ビッグセブンだー」
「何なら、皆の好きな服。特別にこのビッグセブンが買ってしんぜよう」
「えっ!?良いの、んじゃんじゃアタシはこれ~」
「アタイはこれでっ!」
「うちはどれにしようかねー…」
「はっはっはっ!好きなだけ選ぶと良い!」
陽炎型の駆逐艦娘達は、それぞれお気に入りの服が買えて大満足だ。
会計(クレジット 横須賀第七 提督宛領収書付)を済ますとフードコートで流行りのクレープをご馳走(クレジット 横須賀第七 提督宛領収書付)して、鎮守府へと戻る。
陽炎型の艦娘達はとても嬉しそうだ。この笑顔を見るためなら多少の出費など痛くもない。
何故なら、彼女は頼もしい国民的人気戦艦なのだから。
19:30 夕食
『朝食・昼食』と大体同じなので省略。
20:00 入浴
『06:30 シャワー室』と大体同じなので省略。
21:30 就寝
今日の全てが終わり、消灯時間が迫る。
長門も、本日の充実した一日を振り返りながら、枕の下に入れる写真を選ぶ。
「今日は朝潮型だな」
陸奥は今日は女子会とやらで、まだ戻ってきていないが関係ない。
今日の疲れを明日に残さない為、長門は早めに就寝する。
良い夢が見られる事を期待して…
何故なら、彼女は頼もしい国民的人気戦艦なのだから。
---
【横須賀第七 提督執務室】
提督「さて、今月の給料は…っと」
提督「…マイナス……だと?」ボーゼン
大淀「提督、先日出した横須賀第七の会計報告書が差し戻されてきました」ペラ
提督「ん…どれどれ…使途不明金について、その内訳の詳細を記して再度送られたし…」
提督「って…なんだこの額!!?こんなに使途不明金に使った記憶なんてないぞっ!!」
大淀「それですが、添付の領収書には『横須賀第七 提督宛』ときちんと記載されていますが…」パサ
提督「…ちょっと、それ貸してみ………ふむ」
提督「……………………ほう」
【横須賀第七 戦艦寮 長門型居室】
ドアバーン!!!
提督「長門の大馬鹿ビックリセブンはどこだっ!!!!!?」弩+フロントリックマスケット+ビル+板金鎧
陸奥「長門なら、(駆逐艦娘を愛でる為の)精神修行をする為にてビルマ奥地の秘境に行ってくるって…」
艦!!
休日に斑鳩のBGM聴いてテンション上げながら
俺は何でこんなものを書いてんだろう…
嗚呼、時間が逝く…
駆逐艦の前では立派な国民的人気戦艦を演じてるからセーフ、セーフです!
良いね?
(^q^)ワカリマシター
夜戦開始部分まで投下
【北東太平洋 某所】
太陽が水平線の彼方へと没しようとする薄暮の太平洋。
辛うじて副縦陣と見て採れる戦列が長い影を水面に落としている。
百鬼夜行…ではなく、横須賀を強襲した深海棲艦機動部隊の成れの果てだった。
列の先頭付近に位置する空母棲姫は、昼間の戦闘の熱も冷めやらぬ血走った眼で指揮下…半分以下に減ったしまった…の艦隊に隊列を崩さぬよう、最も速度の遅い艦に船速を合わせるよう指示を飛ばす。
その様を提督が目にする事が出来たなら、間違いなく『ベレジナだ…』と呟くであろう、敗残し指揮崩壊の一歩手前の疲れ切った深海棲艦達の列である。
その中で空母棲姫は、せめて彼女らの泊地に辿り着くまでに損害だけでも減らそうと落伍しそうになる駆逐艦を励まし、傾いた軽巡に時には肩を貸し、檄を飛ばす等必死だった。
前方を空母水鬼に、そして隊列最後尾を戦艦タ級に任せて、傷ついた隊列は闇と星空の明かりが周囲を支配し始める海原を進む。
空母棲姫は、未だに昼間の一連の戦闘…惨敗と言って良い一方的な戦闘…に怒り狂う自身を表面に出さない様に努めていた。
------
昼間の一連の戦闘について、時系列を追ってみてみよう。
攻撃隊に向かった直援機が全滅した頃、お互いの艦戦同士も衝突した。
互いの艦戦同士、速度を生かしての一撃離脱戦闘である。
この時、互いの主力艦戦であった烈風と地獄猫艦戦を比較してみよう。
最高速度こそお互い差は少ないが、強力な発動機による加速力、面火力と耐久力では地獄猫艦戦の方に軍配が上がる。
反対に中低高度での旋回性能は、広大な主翼による翼面荷重の恩恵を受けた烈風が優位に立つ。
当初の空中戦は、速度を生かした一撃離脱戦が主だった為、両者共に損害は少なかった。
猫艦戦は加速で逃げ、烈風はヒラリと猫艦戦の射線から外れる。
やがて、お互いの混戦場所は深海棲艦機動部隊上空へと移っていった。
ここで、困った事態が生じる。
深海棲艦機動部隊は、レーダー管制による強力な統制射撃を得意とする。
ここでもタ級は猫艦戦を援護しよう統制射撃を試みた。
しかし、お互い入り乱れての混戦であり、各艦の射撃装置の照準内には頻繁に味方を示すIFF(敵味方識別装置)の信号が入る。
これでは、味方直援機を誤射してしまう可能性が高い。
そうタ級は判断し、空母棲姫にこのことを伝えて、対空戦闘は個艦毎に実施する旨を意見具申した。
現状の敵技量なら、それでも問題は無いと判断した空母棲姫は許可を出した。
こうして、深海棲艦機動部隊は濃密な弾幕射撃が出来なくなった。
無論、そうなる事を予期して制空隊はワザと敵機動部隊上空に敵直援機を誘因せしめたのだが…
空母棲姫としては、このまま上空に敵艦戦に居座られるのは不味いと考えた。
場合によっては帰投する攻撃隊と鉢合わせしてしまい、悪戯に艦載機をすり減らす恐れもあった。
そもそも艦隊上空で繰り広げられる乱戦によって、各空母の予備機を発艦させる事すら出来ないのだ。
そこで、空母水鬼に命じて、一向に進展の無い上空の制空権争いを確実な物とする為、猫艦戦の人工知能に命令を発するようにした。
低練度の烈風であれば、多少の旋回性能の差はあっても、こちらの猫艦戦のパワーで押しきれる。
ならば、現在の一撃離脱戦闘から旋回飛行を主とする近距離格闘戦へと移行せよという命令変更である。
この命令は恙なく上空の全ての猫艦戦に信号が届き、そして二機編隊を組んだ猫艦戦は格闘戦を仕掛けるべく、烈風の編隊へと向かった。
これこそ、制空隊の荒鷲達が待ち望んでいた瞬間であった。
パワーで押し切られる一撃離脱より、旋回性能と運動性能で勝敗が決まる格闘戦に敵が自ら飛び込んできたのだ。
練達の烈風妖精達は、近距離格闘戦に入ると己の得意とする様々な戦闘方法…捻り込みやバレルロール、インメルマンターン等々…を駆使して、猫艦戦を次々と射爆照準器の照準環に収めては撃墜して、自身のスコアを更新していく。
上空から墜落していく煙は、烈風の物もあるが圧倒的に猫艦戦の数の方が多かった。
横須賀連合機動部隊の放った、第二次攻撃隊が到着したのは正にその瞬間であった。
数こそ第一次攻撃隊に及ばず、その数は400機程だったが、この第二次攻撃隊もまた、偏った編成となっていた。
今度は半数以上が艦爆…爆戦ではなく純粋な彗星一二型…だったのだ。
攻撃隊は、上空で繰り広げられる空中戦には目もくれずそのまま輪形陣へと突入する。
これに対して深海棲艦は命令通り、各艦毎の対空戦闘を実施した。
すると、どうしても対空艤装の差が現れてくる。
攻撃隊はその隙を付き、主に駆逐艦や巡洋艦の対空艤装を重点的に狙い、急降下爆撃を敢行。
機銃に捕らわれ火を噴く機体もあったが、多くの機は投弾に成功。
その命中率は6割を超えた。
結果、輪形陣の防空網に大幅な穴が開く事になってしまう。
上空で熾烈な戦闘を続ける猫艦戦は、この惨状を見ている事しか出来なかった。
何しろ、既に多数の猫艦戦が撃墜されており、周囲は殆ど烈風しか飛んでいない。
自身が標的とならぬように、逃げ回るので精一杯だったのだ。
ここにきて、空母棲姫は決断を迫られた。
戦力温存を図る為、機動部隊は直ちに退避するか。
或いは、攻撃隊が戻るまでその場で戦闘を続行するか…の二択である。
護衛空母・補給船団については、この際切り捨てる事にしている。
その点は予め、非常時には互いに別方向へ遁走する旨を伝えてあるから問題無い。
それよりも、決断するに辺って空母棲姫は何よりも攻撃隊の現状を知りたかったのだ。
しかし、相変わらず攻撃隊からの通信は一向に無い。
空母棲姫の思考が、退避の方向に向かい始めた時、二つの報告が空母水鬼とタ級から齎された。
一つは、目視で…外縁部のレーダーピケット艦は全て沈むか甚大な被害でピケットの役を担える状態では無かった…敵の第三次攻撃隊を発見した事。
もう一つは、空母水鬼のレーダーが攻撃隊の帰投方向より接近する複数の機影を捉えたと言うものだった。
ここで、空母棲姫は退避へ傾きかけていた思考を一時中断した。
何らかの不調で無線機が使えない中、攻撃隊が帰投した可能性があるのだ。
各空母は直ちに帰投した攻撃隊を収容出来るように、今まで発艦待ちだった予備機を発着甲板の端にどかすように各空母に命じた。
そして、既に数十機にまで数を減らした上空の直援機達には申し訳ないが、着艦を邪魔されるのを防ぐ為改めてタ級には、レーダー管制による統制射撃を上空の敵艦戦に向けて実施するように命じた。
しかし、統制射撃が始まるも、その射撃される砲門数があまりに少ない。
第二次攻撃隊によるピンポイント攻撃の成果である。
やがて、空母水鬼より敵編隊はIFFに応答が無い為敵機である可能性が大である事。
また、この編隊は中低高の三つの高度に分かれてこちらに向かってきている事が分かった。
アリマ「よし、T部隊全隊は所定の行動を取れ!俺たち重爆隊は高々度より丸ケ號吸着爆弾を投下する」
フヨウ「こちらフヨウ部隊。我々は低高度より、敵主力艦に肉薄雷撃を敢行します!」
カトウ「こちらカトウ闇鷹飛行隊。我々は中高度で敵艦戦を引き付け、場合によっては敵艦隊の対空砲火を減らします!」
この編隊達こそ、房総半島各地から飛び立った航空総軍直轄の対深海棲艦専門の攻撃部隊。
その名もT(台風のアルファベット頭文字)部隊の雄姿であった。
陸爆妖精アリマ率いるT部隊本隊は、四式重爆や銀河陸爆で構成されており、大よそ高度6000mからの攻撃を行う。
流星妖精フヨウ率いるフヨウ部隊は、全員が流星改二(発動機をターボプロップ式であるネ203発動機に変更し、機体強度の見直しを行った実質別物)に搭乗しており、その機体下面には増大した搭載量に合わせて二本の九一式改航空魚雷を装備していた。
そして、この二部隊を掩護する為に戦闘機妖精カトウ率いる航空隊(正式には第六十四飛行隊の本隊)が装備するのは、キ83甲…五式遠距離戦闘機《闇鷹》である。
この双発重戦には、翼下には増槽と共にR式噴進弾が搭載されていた。
これは、独逸製R4M空対空噴進弾《オルカン》をライセンス生産したものであり、敵直援機が残っていればそれ対してに…いなければ敵深海棲艦に向けて放つ事を目的に装備されていた。
三種類の事なる編隊が、それぞれの目的を胸に秘め敵機動部隊に向かう。
空母棲姫は、この3編隊のうち、高々度を飛行する編隊より中低高度を飛行する編隊に注意して、敵第三次攻撃隊と共に攻撃するように指示を出した。
しかし、敵本土より飛来した編隊は第三次攻撃隊…今度は雷撃機の割合が多かった…の攻撃中は、深海棲艦の射程外を周回しておりダメージを与える事が出来なかった。
第三次攻撃隊は、第二次攻撃隊が攻撃した…著しく火力の落ちた…輪形陣構成艦に狙いを定めて攻撃を行った。
上空の猫艦戦を全滅させた制空隊も、燃料に余裕のある機は機銃で敵艦を牽制して攻撃隊を援護する。
結果、輪形陣を構成する駆逐艦や巡洋艦に多数の被害が出た。
最終的に、対空火力は戦闘開始前の2割以下となり、穴だらけの輪形陣は最早張子の虎と化している。
そこに、T部隊のうち、陸爆妖精アリマ率いる飛行隊が敵輪形陣上空に侵入した。
空母棲姫(高々度公算爆撃か…今更何故?)
陸上の静止目標ならともかく、高々数十機の爆撃機による海上の移動目標に対する高々度公算爆撃の命中率などたかが知れている。
そう考えた空母棲姫は、各艦に回避運動を優先させた。
アリマ「丸ケ號吸着爆弾、投下ぁーっ!!」
号令一下、各機からX状の翼の生えた物体が投下される。
これぞ、T部隊による対艦戦闘の必殺兵器『丸ケ號吸着爆弾』による攻撃であった。
丸ケ號吸着爆弾は、赤外線誘導方式の誘導爆弾である。
投下後、所定の高度で爆弾尾部の制動翼がパラシュートのように開き、X状の補助翼と合わせて探知した赤外線目標…この場合、大熱量を発する大型空母や戦艦…へ向かいゆっくり降下していく。
最初に直撃を喰らったのはヲ級フラッグシップの一隻だった。
格納庫を構成する頭上の艤装に命中。
その装甲を貫通した爆弾はその格納庫内で炸裂する。
格納庫内は、予備機の発艦やら攻撃隊帰投に備えて慌てて作業中だった為、爆弾や魚雷、航空燃料タンクが放り出されている状態だった。
そこに一撃を喰らったのだから溜まらない。
また、回避運動時に波が入らない様に、口状の艤装が閉じていたのも災いした。
爆発のエネルギーを逃がす箇所がどこにも無く、頭部艤装はヲ級フラッグシップ本体の頭部諸共、西瓜のように弾け飛んだ。
頭部を失い、糸の切れた人形のように海面に倒れるヲ級だった物を目にして空母棲姫は、敵大型機の落とす爆弾が只者ではない事に気付く。
空母棲姫「対空砲火、あの大型爆弾を狙え!我々に近づけさせるなっ!!」
命令を受け、直ちに対空砲火が撃ち上げられるが、その数は非常に少なく、お世辞にも有効だとは到底思えなかった。
カトウ「そうは問屋が卸しませんよっと!」
そこに飛来したるはカトウ闇鷹飛行隊。
カトウ「クロエ、お前の隊は戦艦と防空軽巡を叩け!」
クロエ「了解!」
ごく簡単なやり取りの後、二手に分かれた飛行隊はそれぞれの獲物…空母と戦艦・防空軽巡の対空艤装…に向かった噴進弾の発射桿を引く。
闇鷹の翼下に装備されたR式噴進弾が、コンマ数秒毎に順次標的に向かい放たれる。
最終的には音の壁を突破して着弾した噴進弾は、敵の装甲こそ貫通出来なかったが、爆発の衝撃と破片により標的の対空艤装に甚大な被害を及ぼす。
そして吸着爆弾と噴進弾による攻撃を経て、最後に輪形陣中枢に飛び込んできたのはフヨウ部隊である。
フヨウ「セキ、お前は半分率いて反対側から同時雷撃を咬ますぞ!出来るか!?」
セキ「勿論です!きちっと獲物にぶち当てて帰還してみますよっ!」
二手に分かれた流星改二の編隊は、左右同時に雷撃を敢行した。
これにより狙われた敵艦は、左右どちらに舵を取っても魚雷攻撃を受ける結果となる。
更に第三次攻撃隊の中でまだ投弾していなかった彗星が、雷爆同時攻撃を行うべくこれを援護する。
海面は回避運動のうねりや航跡、そして着弾の水柱に覆われて白く泡立つ混沌の場と化していた。
空母棲姫自身も飛行甲板に直撃弾を受け、更に艤装に触雷していた。
傾いた飛行甲板から予備機が滑り落ちていく。
その光景を見た空母棲姫は、ついに撤退を決意する。
しかしその決断は余りにも遅く、またその命令通りに撤退できた艦は全体の半数以下だった。
全空母の発着艦能力喪失、主力艦ほぼ全てが小破から大破、輪形陣を構成する駆逐艦や巡洋艦は殆どが中破以上の損害。
そして、護衛空母・補給部隊からは『空母棲姫は何処に有りや?全世界は知らんと欲す』という通信を最期に、連絡が付かなくなっていた。
攻撃隊はどこかで不時着水して潜水艦や近くに出現した味方に任せて、深海棲艦機動部隊は同海域より撤退するより他なかった。
空母棲姫(次こそは…必ず成功させてみせる……)
捲土重来を夢見る怨嗟の意思を胸に、空母棲姫は撤退戦の指揮を執った。
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そして現在、完全に闇が支配する中で、敗残兵達は航跡に夜光虫の光を交えながら海原を進む。
彼女達の泊地までの最短航路を通って。
最初の接敵は、戦列の先頭を行く軽巡フラグシップだった。
被雷の水柱が夜眼に慣れ始めた空母棲姫の視界に移る。
更に左舷前方を航行していた駆逐艦が被雷。
そして空母棲姫自身の前方海面下を、無航跡の魚雷が通過していくのが見て取れた。
空母棲姫「くそっ!!潜水艦の待ち伏せかっ!?」
敵の攻撃を潜り抜けたと思ったのに…
空母棲姫は心の底から憎悪に満ちた声音で叫んだ。
【横須賀鎮守府 第七提督公室】
敵攻撃隊が去り鎮守府直衛の艦娘達が帰投した今、皇国本土は臨戦態勢から警戒態勢へと移行する旨、統合参謀本部から通達があった。
その為、提督達は高角砲塔L塔の指揮所から普段使い慣れた各執務室にて、残りの艦隊の帰投と…夜間漸減邀撃部隊の接敵を待っている状態だ。
公室の机に、かつての鉄底海峡作戦と同じく無線機と海図を広げる。
当時と異なる点は、提督と榛名以外にも鎮守府直衛の艦娘で席が埋まっている状態であった。
ソファ中央に提督、その膝の上に金剛、背中に響のサンドイッチ。そして左隣には榛名が座り、包帯と添え木で固定された提督の左腕を擦っている。
対面のソファでは、利根がテレビの報道特集に自分の姿が映っていないか探していたが、やがて飽きたのか横になり寝息を立て始めた。
上座には青葉が座り、本日の戦闘詳報を纏める為ペンを走らせる。
大淀は通信室に再び籠り、非常通信に備えていた。
因みに、金剛達が帰投すると大淀は指揮所での一部始終を委細漏れなく伝えた。
結果、金剛は提督の膝の上から動かなくなった。
ギュッと提督の右手を抱き締め、代わりに海図に部隊配置を示す駒や旗を榛名と共に置いてもらう。
響は不時着水した敵機を三機仕留めたご褒美と称して…実際に艤装の脚部で不時着水機を踏み付けて完全に水没させている…提督の背中に貼り付いていた。
時々スンスンと匂いを嗅いでいるようだが、敢えて思うが儘にさせる。
今は、接敵と敵への攻撃を意味する通信を待っている。
念の為、全国では灯火管制が敷かれており、公室の照明にも周囲に暗幕が張られている。
その薄暗い部屋の中、提督は海図に置かれた駒の配置を見つめながら唯々接敵の通信を待っていた。
提督「…かつて」
提督がポツリと呟く。
その言葉に金剛がピクリと反応して肩を震わす…が、握った手を優しく力を込めて握り返すと安堵したのか、肩が落ちる。
それを確認すると提督は、今度は優しく諭すように…話を続けた。
提督「独逸のロンメル将軍が『砂漠での戦いは艦隊戦と似ている』と言ったらしい…」
提督「ならば、その逆もまた然り…」
海図上の駒…撤退する敵艦隊とそれを阻止するように配置された潜水艦の駒…を見ながら話は続く。
提督「敵はある程度練度のある指揮官に率いられた艦隊だ」
提督「つまり、撤退時には部隊をある程度掌握し、かつ最短で最小限の被害で自分らの泊地に戻ろうとするだろう」
提督「そこで…連中の最短経路を妨害しうる位置に、横須賀第一から第七までの全ての潜水艦が斜行陣で待機させる」
提督「退却する敵縦列は…堤にぶつかる水流の如く、その斜行陣に沿って受け流される筈だ」
提督「強行突破を行う事も出来るが、そうするとより被害が出る…ならば多少道を外れてでも安全に帰還する方がマシだ」
提督「敵の指揮官はそう判断するだろう」
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空母棲姫「全艦転舵!南東方面に航路を変更して進むぞっ!!」
空母水鬼「で…でもそれだと距離が伸びる…燃料が足りない子もいる」
空母棲姫「その時は我々大型艦から補給する。最悪曳航してでも連れて帰る!」
空母水鬼「…分かった」
奇しくも提督の判断は当たっていた。
空母棲姫は被害を極限に抑える事に思考の大部分を割いていた。
正に敵ながら見事に指揮官としての役目を果たしている。
その場に居たならば尊敬の念すら提督は感じただろう。
感嘆の言葉すら発したかもしれない。
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提督「…だからこそ、そこに付け込ませてもらう」ニヤリ
口角を吊り上げ、底冷えするような冷笑を浮かべて提督は海図を見つめる。
提督「『シ號覆滅作戦』の最大の目的は敵機動部第の殲滅だ」
提督「潜水艦の壁を受け流し、航路を変更した先には餓えた猟犬の群れが待ち受けている」
提督「一週間無線封止を継続し、只管目の前に獲物が現れる事を待ち続けた猟犬達がな」
提督「真に恐縮だが、そこで彼女達には壊滅してもらう」
榛名(提督…今とても、悪い顔をしていらっしゃいます…)
横で提督の話を聞いていた榛名が、提督の表情から滲み出る悪意を感じ取る。
それは、まるで悪戯が成功した時の子供のようで、無邪気な殺意に喜びを感じているかのような雰囲気であった。
榛名(でも、そんなお顔を為さる提督も……素敵です//)キュン
榛名(カメラがあればなぁ…)
青葉(あっ!ちゃんと今の司令官の顔は隠し撮ってありますよ!)
青葉の方を向くとビシッbと親指を立てた青葉と目が合う。
榛名(有難うございます青葉さん!)ヤタッ
青葉(いえいえー、普段はお目に掛かれない司令官の大変ワイルドな表情ですし。結構人気出ますよこれー)
金剛(……それ、後で私も一枚欲しいデース)
響(ハラショー…私も欲しいな)
提督の周りでは細やかな女子会(脳内)が始まっていた。
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突然の航路変更に従い、最後尾に位置するタ級はそれに従った。
これ以上被害を出したくない空母棲姫の判断だ。
それは理解していたし、尊敬すら感じるこの指揮官に発した命令には唯々諾々と従う。
タ級は中破していた。
魚雷を一発くらい、浸水と対空砲火で火を噴いたスイセイ艦爆の突入によって背部下方にある第二、第四砲塔は共に使用不可能となっている。
ふと、後方に気配を感じたタ級は後ろを振り向く。
やや距離を置いて、漆黒の闇に二つの紅い点が見えた。
タ級(いつの間にか落伍していた駆逐艦がいたのか…?)
紅い点はゆっくりとタ級に近づいてくる。
タ級(もしかして燃料が切れかけているのか…ならば、幾らか分けてやるk)
そこでタ級の思考は止まる。
紅い点の正体が判明したからだった。
紅い点は艦娘の、その瞳の色だったのだ。
その艦娘はゆっくりとタ級に迫る。
そこまで大きくない。
恐らく駆逐艦か軽巡クラスだろう…
タ級(まさか仲間から逸れた艦娘とか…?)
突然の事にタ級は何とも場違いな事を考える。
そして、敵艦娘は射程にタ級を捉えたのか、その手に構える主砲を向ける。
消える紅い点。
続けて発砲の光、その光に照らされた艦娘は…とても、邪気の無い満面の笑みを浮かべていた。
或いは見間違いか。
しかし、それを再度確認する事は出来なかった。
十二.七糎連装砲B型改二より放たれた砲弾は、2発ともタ級の顔面…というよりも両目に命中して、タ級の視力を永遠に奪った為である。
夕立改二は発射時の光で夜間視力を失わない為に、目を瞑った。
口は敵を見付けた時から半月状に開いて犬歯を覗かせている。
笑顔とは、本来攻撃的な意味を持つ物なのかもしれない。
夕立の大好きな提督さんが居れば、そんな事を言いそうな満面の笑顔である。
夕立「さあ、素敵なパーティを始めしょう♪」
それが、夜間水上砲雷戦を開始するに当って夕立が発した言葉だった。
投下終了
第四の視点(捕虜)として、空母棲姫と空母水鬼をジュネーブ条約に従って戦時捕虜にする。
或いは戦闘中には良くある事として始末してしまうかで悩み中…
艦娘、提督、読者視点に続く第四(捕虜)の視点って需要有りますかね?
じゃあ第四視点有りで話を書いていきます
ちょこっとだけ投下
やべぇびみょんにネタが被った気がしてこんな時、どんな顔をして良いのか分からない…
背後から聴こえる砲声と着弾音。
だが、それ以上に空母棲姫を驚嘆せしめたのは、頭上に打ち上げられた無数の照明弾だった。
空母水鬼「っ!?…前方に敵!!」
空母棲姫「…罠だったか」
退避行動が裏目に出た。
先程下した自身の命令を思い出し、血が流れる程唇を噛み締めた。
戦列先頭部分に水柱が上がり、それが空母棲姫にとっての水上砲雷戦を告げる合図となった。
空母棲姫「背後を見せるな!全艦、喰い破れっ!!」
敵の包囲を突き破り、一点突破を図る。
回頭する時間すら惜しい深海棲艦艦隊にとって、最善の命令を空母棲姫は下した。
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比叡「全艦、合戦準備!」
比叡「霧島、私に続いて!イタリアの二人は私達と複縦陣で敵の足を止めます!!」
霧島「はいっ!!比叡姉さま」
イタリア「分かりました!」
ローマ「了解」
比叡「鳥海!!貴方達重巡戦隊は、敵側面に回って第二十三水戦を援護!!可能なら突入も可!」
鳥海「分かりました!全艦、最大戦速にて前進!敵右舷に回り込みます!!」
重巡艦娘'S「「「よぉーそろーっ!!!」」」
比叡「神通!第二十三水戦を率いて、敵戦列に抜刀突撃!戦線を混乱させてきてっ!!」
神通「拝命致しました。既に一部の娘が戦線後方にて攪乱攻撃を実行中ですが、第二十三水雷戦隊本体もこれに続きます」
神通「第二十三水雷戦隊、敵艦隊と砲雷戦を行います!全艦、最大戦速!続いてくださいっ!!」
軽巡・駆逐艦娘'S「「「よぉーそろっ!!!」」」
比叡「北上!貴方達は迂回して敵後方へ移動!隙を見て全射線を発射して!!」
北上「りょーかい。それじゃ、大井っち達!あたし達も取り敢えず迂回しますよっと」
雷巡'S「「よーそろー!!」」
比叡「通信!ト連送!!」
通信妖精「初弾発射と同時に既に通信済ですっ!!」
比叡「有難う!それじゃあ、漸減邀撃部隊旗艦 比叡。気合い、入れて、行きますっ!!」
【横須賀第七 提督公室】
通信機から流れるト連送。
提督「始まったか…」
取り敢えず敵を補足出来たようで一安心した提督は、改めて海図上に置かれた駒を確認する。
提督「敵の航空戦力を封じた今、海面上は陸上戦闘とそう違わない様相を呈している」
提督「そして縦列を組む敵艦隊は、恐らく一点突破を狙ってくるだろう…」
提督「だから先頭に高速戦艦を当てて、食い止める」
提督「やることはシンプルだ」
提督「『槌と金床』戦術…それのの海上版だ」
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時雨改二を含む白露型駆逐艦艦娘は、第二十三水雷戦隊の最も側面で落ち穂拾い…即ち、戦列から外れた敵艦を掃討していく任を受けていた。
時雨の面前には、混乱の為列から外れた後期型駆逐艦が二隻。
部隊外縁部で実質一人の時雨を見止めると向かってきた。
敵駆逐艦二隻、発砲。
しかし、時雨は涼しい顔でそれを回避する。
続いて、時雨が向かって右側の駆逐艦に発砲。
二発の主砲弾は、敵主砲基部と、右側の脚部を吹き飛ばす。
これで右側の敵駆逐艦は、旋回しか出来ず、主砲も発射出来ないので無力と化した。
だが、左の駆逐艦は健在。
次発装填中に再度砲撃を受ける事を確信していた時雨は、回避しようと身構える。
しかし、敵の攻撃は無かった。
左の敵駆逐艦は、隣の味方が浮かぶ標的と化した事に恐れたのか…時雨や僚艦に背を向け、明後日の方向に向かっている。
何故?
味方に知らせに向かった?
でもそっちは明後日の方角だよ?
逃げる?
逃げるの…?
味方を…仲間を置いて?
…一人で…?
……一人だけで?
その事実に気付いた時、時雨の心の中をどす黒い感情が蝕んだ。
それは、艤装としての『時雨』の物なのか、或いは彼女自身の深層心理に眠っていた何かを呼び覚ましたのかは、定かではない。
どうして君は一人で逃げるんだい?
僕は逃げないよ。
誓った。
誓ったんだ…あの日から…
時雨の言う『あの日』とは、西村艦隊の艦娘を集めた提督が、頭を下げた日であった。
あの日、西村艦隊に前世で在籍していた艦娘達全員が艤装の記憶を取り戻した事を確認した提督は頭を下げた。45度の最敬礼で。
前世の悲惨な結末知る身として。
そして一海軍軍人として、あのような投機的無謀な作戦を敢行してしまった事への贖罪として。
提督は、部下の艦娘達に躊躇無く頭を下げた。
あの日、頭を下げた提督に真っ先に慌てて弁護を始めたのは満潮だったね。
続いて山城も提督は関係無いって言って、最上もそれに続いた。
そして扶桑が言ったんだ。
扶桑「提督、頭を上げてください」
扶桑「私達は艦艇は、生まれた時より戦いの中で沈む事を覚悟しています」
扶桑「過程や結果がどうであれ、戦闘の中で沈む事が出来たのなら、それは私達の本望…」
扶桑「提督が頭を下げるような事ではありません」
扶桑「それに、提督のようにあの時を思って下さる方が居るだけでも、私達にとっては何よりも有り難い事なのですよ?」
その時の僕は、恥ずかしい事に泣いてしまったよ。
ぽろぽろと涙を流して…
だって、頭を下げた提督が…そのまま小さくなって、どこか遠くに行ってしまうような感じがしたんだもの…
頭を上げた提督は、泣いている僕を見てとても慌てていたね。
それで、偶々隣室に居た青葉さんがこの話を触れて廻って。
最終的に「提督が時雨を泣かせた」って事になって、部屋に金剛さん達が入ってきて連れ去られちゃったね。
どうも、比叡さん辺りが金剛さんに伝えるに当って大げさに脚色して伝えてしまうみたいだ。
その後、提督は埠頭のガントリークレーンに吊るされていたっけ。
首から『私は駆逐艦を泣かせるクズ司令です』ってプラカードを下げて。
でもね、あの日提督が頭を下げた事で、色々な事が変わった。
満潮が遠回しにお礼を言うようになったし、山城も口で言う事と態度に明確な違いが見て取れるようになった。
何より、僕の心の中の感情に気付く事が出来た。
あの後、それでも納得行かない提督は僕達にプレゼントをくれたね。
髪飾り。
改二の改装を施してから、扶桑と山城、そして僕は常に付けている。
満潮は部屋の宝石箱に、最上はポケットに入れてとても大事にしているよ。
後から着任した朝雲と山雲にも、同じように謝って居たけど、やっぱり僕達と同じような返事だったらしい。
そして、身に着けてこそいないけど、二人も同じように髪飾りを大事に持っているのを知っている。
そして、僕達の絆を深めてくれた提督の為なら、絶対に逃げないし、自身を犠牲にしてでも仲間を助ける覚悟で僕達は居られるんだよ?
時雨「だから……」
再装填完了と共に、逃げ出した敵駆逐艦へと狙いを付けた時雨は呟く。
時雨「君には失望したよ…」
瞳から光を失った時雨は、砲を発射する。
狙いは寸分違わず敵駆逐艦の両脚部を破壊した。
これで、敵は背を向けたまま何も出来ない。
更に、時雨は再装填する。
そして、口から図れたのは…時雨にとっての…呪詛の言葉であった。
時雨「そうか、つまり君はそういうやつだったんだな…」
呪詛の言葉を述べると共に、発砲。
二発の砲弾は敵駆逐艦の両脇を、軽く抉って彼方へと飛び去って行く。
どうしてこの言葉が呪詛の言葉かだって?
それは、提督と僕を繋ぐたった一つの共通点。
その共通点を粉々に打ち砕く言葉だからなんだよ。
僕は本を読むのが好きで、よく鎮守府内の図書室に行くんだ。
そこで、偶に提督が資料を探しに来て会う事がある。
提督も本を読むのが好きな人だけど、僕とはジャンルが合わない。
僕は文学作品や散文詩、そういった分野の本を読むけど、提督は男の子が好きそうな戦記物や歴史物の本ばかり。
でも、たった一つだけお互いに知っている話があった。
提督が、得意げに中等学校の国語で習ったその話について言っていたね。
その人の全集なら僕は、小学生の時に全部読んでしまったから、全て知っているのを知らずに。
提督が話終えて、その人のその作品集について色々と話すと、提督は罰が悪そうな顔をしていた。
その時は、提督の表情の変化が面白くて僕は笑ってしまったね。
ごめんね。
でもね、本当は凄く嬉しかったんだ。
たった一つ。
たった一つだけども、僕と提督の少年の日の思い出を繋ぐ、展翅台の上の虫ピンを見付ける事が出来て。
だから、さっき言った言葉は僕にとっては呪いの言葉なんだ。
何か僕がしでかして、提督にその言葉を言われてしまったら、きっと僕の心は粉々に砕け散ってしまうと思うから。
だから、僕がこの言葉を使う時、相手は敵じゃあないんだ。
馬車道…その車輪の下、路傍の石以下の相手に対してだ。
これだと、どう表現しようか…
困ったな…
そうだ、前提督に借りたゲームに出てきた狂った芸術家。
退廃的かつ随分と前衛的な作品をこよなく愛する、あの芸術家の言葉を借りようか?
それだけ、ブラウン管の中の0と1で支配された事象に相応しい、この客観的な物体に対して。
虫けらくん。
君の名前は今から虫けらくんだ。
更に時雨は発砲し、敵駆逐艦の表面を削っていく。
時雨は機械的に、装填と発砲を繰り返し、その度に哀れな敵駆逐艦は表面を削り取られていく。
死なないように、急所を外しながら。
本能的に周囲を警戒しつつ、時雨の眼は虫けらとなった敵駆逐艦に向けられている。
しかし、その瞳は別の場所…全てが終わった、未来を視ていた。
僕達皆で少しずつ貯めているお金。
このお金で、小さな島を買うんだ。
そこで、残った艦娘達と提督で自給自足の生活をする。
そこでは、僕達が生活する小さな屋敷を立てて、菜園や釣った魚で暮らしていく。
屋敷の端っこには、小さな図書室があって、窓辺にはゆったりしたソファを置く。
インクと少しかび臭い匂いの部屋。
そこで僕と提督は、お互いに本を読むんだ。
お互いに肩を合わせて…//
それで、静かに時間を過ごす。
時々、はっちゃんや名取さん、由良さん達も本を読みに来て。
皆でそれぞれ、本の感想を論じたりするのも楽しいだろうな。
でも、提督は色々自分の事に無頓着だからね。
途中で飽きて寝てしまうんだ。
だから、僕が提督を膝枕してあげるよ。
それで、また静けさを取り戻した図書室には、提督の寝息と僕が本のページを捲る音しかしない。
素晴らしい未来だと思う。
早く、そんな日が訪れると良いな…
気付けば、敵駆逐艦は浮かぶ肉の塊と化しており、時折コヒューコヒューと弱弱しい呼吸音だけを響かせている。
時雨「もう削る部分も無いみたいだね」
そう言って時雨は、魚雷発射管を肉の塊に向ける。
時雨「ばいばい。虫けらくん」
その声は、とても朗らかだった。
4発の酸素魚雷を喰らい、残った全ての肉も小さな断片となり吹き飛んだ後、時雨は隣で延々と旋回を続けている駆逐艦に向かった。
時雨が近づくと観念したのか、敵駆逐艦は動きを止める。
時雨「待たせてしまって、ごめんね」
優しく呟きながら、時雨は主砲に砲弾を装填する。
その姿は機械的ではなく、優雅さと慈しみを感じ取るものである。
時雨「今、楽にしてあげるからね」
装填を終えた時雨は、主砲を敵駆逐艦の急所に向けて狙いを付ける。
その動作は神々しさすら感じられ、まるで騎士の叙任式のような荘厳さを湛えていた。
引き金を引き、2発の砲弾が敵駆逐艦に吸い込まれる。
そして、正確に急所を打ち抜かれた敵駆逐艦は静かに没していった。
???「時雨姉さ~ん!」
時雨「おや、春雨達じゃないか」
時雨の振り向いた先には、白露型の面々と天龍の姿。
時雨の瞳には光が戻っている。
春雨「これ、補給の弾薬です!」ヨイショッ
時雨「有難う。これで、また行けるね」ガシャコン
天龍「見てたけど、相変わらずだなぁ時雨は…」
そう言いながら、提督から貰った大剣…ツヴァイハンダーだったかな…を肩に乗せながら天龍が呟く。
時雨「逃げようとしていたからね。僕達では有り得ない事だから仕方ないよ…」
天龍「まあ、そりゃそうだが…結構えげつねぇと思うぜ?」
時雨「そういう天龍さんこそ、どんな感じ?旗艦に続かなくても大丈夫なの?」
天龍「俺たちの旗艦様は異次元だからな、俺は自分に合った落ち穂拾いで満足してるよ」
春雨「確かに、重巡や高速戦艦の皆さんも、気迫が違う気がします。はい」
時雨「それもそうだね」クスッ
天龍「そこに何故か、一部駆逐艦が混じってるのがまた笑えねぇけどな」
そう言って苦笑する天龍。
確かにそうだと、皆して笑う。
当然だろう。
その一部の駆逐艦とは、彼女達白露型の姉妹艦でもあったのだから。
投下終了
時雨に蔑まされる為に昆虫採集と海底都市探索に出掛けて来る
終わったらまた書き溜めて投下します
夜戦の続きと箸休めを投下します
個人的に夕立、綾波と夜戦内型姉妹は夜戦時に十傑集走りしてるイメージ
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駆逐艦 夕立は、敵渦中にて敵を混乱させる為に単身飛び込んでいた。
目の前に敵軽巡。
敵艦もこちらに気付き、発砲する。
しかし、敵の放った砲弾は夕立の艤装の一部を掠めただけで、その後方へと着弾した。
既にお互い指呼の間であり、次弾を放つ余裕が無い敵艦は次に何をするべきか決めかねている間に、夕立は更に相手に接近する。
それに敵艦は怯んだ。
夕立「…何それ?」
犬歯を覗かせ、今にも噛み付かんと口を広げる夕立にはその敵艦の様が酷く滑稽に映った。
直射というよりも接射の状態で相手に砲口を向け、引き金を引く。
そして、主砲弾によって敵軽巡が傷を負っている隙に魚雷を放ち止めを差す。
水柱が立つ中、夕立の周囲だけが騒乱から取り残されたように錯覚を感じる。
肩で息を整えていると背後から殺気。
すかさず、夕立は主砲を相手に向ける。
綾波「主砲弾…装填されていませんよ?」ニコッ
夕立の目の前に同じく突き出される主砲。
夕立の手にあるのと同じ、十二.七糎連装砲B型改二だった。
夕立「そういう綾波も…主砲に弾が入っていないっぽい?」ニヤッ
取り敢えず主砲を向ける事で相手が一瞬動揺し、その隙を突く夕立の戦法は綾波には通じない。
最もそれは、夕立も同じなのだが。
綾波「それでは、お背中を…」
夕立「預けるっぽい!」
お互いの死角をカバーしながら主砲に弾を込める二人。
直後、二人の背後を付け狙っていた敵駆逐艦が水中から飛び掛かってきたが、装填を終えた二人によって逆に水中へ叩き返された。
夕立「今ので…三隻目っぽい!」ヒイフウミー
綾波「…綾波は五隻目ですねー」ニコッ
夕立「ぽいぃいいいっ!!?」ガーン
夕立「夕立も…もっともっと頑張らなきゃ!!」フンス
綾波「くすっ…それじゃあ、また後で…」
夕立「再開したら夕立が勝ってる筈っぽい!」
お互い簡単なやり取りの後は直ぐに別れ、それぞれ勘の赴くままに戦場へと舞い戻る。
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夕立は、提督が着任した翌日に鎮守府に着任した。
当時は秘書艦の電と、夕立と同じ日に着任した駆逐艦の初霜、白雪、軽巡洋艦の多摩だけの小さな所帯であった。
流れに身を任せて着任した夕立は、少しだけ緊張していたが、自分と同じような子達が居て安心した。
夕立より年上で大人だった提督は優しく、安心させる為に夕立の頭を撫でて瞳の色を…エメラルドのように綺麗だと…褒めてくれた。
その日は、皆で執務をしたり、お昼は提督の手料理を食べたり、提督が多摩をカラかって引っ掻かれるのを見て笑ったりと充実した一日だった。
一人で寝るのが怖いと言ったら、開いていた視聴覚室に皆で布団を引いて寝る事になった。
まるで、お泊り会みたいだと夕立は思った。
それから、毎日のように新しい艦娘が着任して鎮守府も賑やかになっていく。
そんな中夕立は、遠征担当として、初霜達と一緒に影から鎮守府を支えていた一人だった。
遠征も大変だが、戻ったら提督さんが迎えてくれる。
頭を撫でられるのは恥ずかしかったが、嫌いでは無かった。
こんな毎日が続くのだと夕立は思っていた。
或る時、響や五十鈴の第二改装が決まった。
二人は改装後に更に強く、大人びた雰囲気を感じた。
夕立もいつか、そんな日が来るのかな?
そしたら、もっともっと提督さんや皆の為に頑張れるっぽい!
夕立も自分の改二改装も期待していて、その機会が直ぐに巡って来た事に大喜びした。
しかし、いざ改装が終わり、鏡を見ると愕然としてしまう。
着任初日、提督に褒めてもらった瞳が…夕立に自信を与えてくれていた緑色の瞳が…鮮血のような紅色になっていたのである。
人は得てして第一印象によって、相手や事象を測ってしまう事が多い。
ましてや夕立はまだ少女であり、それを補う精神的な余裕が無かった。
夕立にとって、自分の緑色の瞳は提督さんに褒めて貰った大事な思い出であり、今までの夕立の自己をを形成していたとても大事なものだったのだ。
執務室に戻ると夕立は頑張って報告をしたが、途中からは我慢出来ずにグスグスと泣いてしまった。
執務室に戻った時から夕立の様子がおかしいと感じていた提督は、優しく頭を撫でながら理由を聞いた。
夕立「夕立の瞳がね…提督さんの好きな緑色じゃ無くなっちゃったの…」クスン
夕立は素直に口にすると提督に抱き着いた。
それでも提督は優しく夕立を支えてあげて、頭を撫でながら諭した。
曰く、確かに今までの夕立の瞳はエメラルドみたいで綺麗だったが、今の瞳もガーネットのようでとても綺麗だよ…と
その言葉夕立は恐る恐る顔を上げた。
夕立「…本当に?提督さん、夕立のこと嫌いにならない?」
嫌いになんかならない。
こうして、夕立が改二として成長する事が出来て自分の事のように嬉しい。
これからも、夕立の力を借りたい。
そう言った提督は、夕立の瞳から溢れる涙を拭いてあげた。
良かった。
提督さんに嫌われなくて。
そう思った夕立は安心したのか、もうちょっとの間だけ泣いていたが、泣き止むといつも通りの夕立だった。
そして、夕立の改二祝いにと、提督からプレゼントが手渡される。
夕立「わぁああ~♪提督さん!有難う!!」ピコピコピコ
プレゼントは、白いマフラーと髪留めだった。
海に出ても寒くないように。
海に出ても髪が乱れないように。
女の子の扱いが下手(金剛談)な提督さんが選んでくれた、素敵なプレゼント。
それを手に夕立は提督に飛び付いた。
嬉しかった。
やっぱり提督さんは提督さん。
夕立の大好きな提督さん。
夕立は、その日を境に益々任務を頑張るようになった。
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夕立(だから…夕立は必ず生きて帰るっぽい)
夕立は考える。
自分は、白露程固執する目標を持っている訳でもない。
自分は、時雨程賢い訳でもない。
自分は、村雨程女の子らしい訳でもない。
自分は、春雨程優しい訳でもない。
ならば、夕立は忠犬として大好きな提督さんに常に従おう。
ならば、夕立は番犬として大好きな提督さんと提督さんとの思い出の詰まった鎮守府を守ろう。
ならば、夕立は闘犬として大好きな提督さんに敵対するものを滅しよう。
最後まで提督さんに従い。
提督さんに仇名す者の咢に喰らいつき。
四肢を削がれ首一つになってでも提督さんの為に戦う。
夕立は自分の道標を見付けたのだ。
自分自身の手によって。
だから、夕立はどんな敵だろうと恐れない。
だって、提督さんに怒られる方が怖いもの。
だから、夕立はどんな時でも提督さんの言う事に従う。
だって、提督さんに嫌われる方が悲しいもの。
だから、夕立はどんな激戦だろうと必ず生きて帰る。
だって、提督さんに頭を撫でて貰えないのは寂しいもの。
夕立(帰ったら、提督さんに報告してい~っぱい褒めてもらうっぽい!!)ムフフ
照明弾の消えかかった闇夜の海を、夕立は次の獲物を探して駆け抜けていった。
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照明弾が消え、一時的に辺りは闇に包まれる。
それは、次の照明弾が上がるまでの間、しばし艦娘と深海棲艦の姿を暗闇に隠し込む事を意味していた。
神通「姉さん!那珂ちゃん!」
川内「はいよっ!!」
那珂「どしたのー?」
神通「左舷10時の方向に敵!あの一帯だけ、統率が執れてます!」
川内「どれどれ…おっ、本当だ!」
那珂「あの重巡が、周りの駆逐艦や軽巡に指示出しているみたいだね」
神通「…次の獲物は、あの重巡でいきます!」キッ
川内「おっけぇ!!それじゃあ皆、夜戦エクストリームアタックを仕掛けるよ!!」
那珂「はーい!!」
重巡ネ級は、突如こちらに向けられた光芒に眼を顰める。
それは、艦娘の一隊だった。
神通によって照射された探照灯によって浮かび上がる影。
那珂「那珂ちゃん!!」シャッ
\\\
シャッ 那珂「センター!!!」
///
那珂「一番の見せ場ですっ!!」シャッ
「どっかぁ~ん!!」の掛け声と共に、那珂が敵戦列に向けて発砲。
反航状態で且つすれ違い様の斉射だった為、そこまでの被害は与えられなかったが、この砲撃で深海棲艦達の戦列が乱れる。
川内「突撃よっ!!これを喰らいなっ!!」ズシャー
続いて川内が同じようにすれ違い様に、魚雷を発射。
今度は一発がネ級に命中。
周りの敵のどれかにも命中したのか、水柱が上がる。
被雷したネ級だったが、幸い急所は外れた為持ちこたえる事が出来た。
しかし、凄まじい水柱で視界が遮られた状態である。
その水柱の向こうから迫る殺気。
それに気付いたネ級は尻尾状の艤装を使い、水柱の向こうに居るであろう殺気の源に向け振り下ろす。
パリィッ!!
金属同士がぶつかり合う音。
弾き返される艤装。
その衝撃でネ級は前のめりに踏み込む。
神通「良い太刀筋ですが、踏み込みが足りませんね…」
神通の手には抜き身の日本刀。
ネ級の一撃は神通によって切り払われたのだ。
直後、神通は踏み出した足を軸に回転。
返す一太刀でネ級の首を跳ねる。
ネ級は自分の身体を見下ろす不可思議さに戸惑っていた。
だが、海中に落ちるまで自分の身体を見続ける事は遂に叶わない。
江風「こいつはお釣りだ…取っときなっ!!!」
神通の後に続く江風から放たれた酸素魚雷によって、ネ級の胴体が被雷の水柱に包まれた為である。
神通「那珂ちゃん!残りの敵は!?」
那珂「皆、散り散りに潰走しちゃってるよー」
川内「まあ、私達に掛かれば当然よ…」フンス
川内「それにしても、新入りも結構やるじゃんかぁ~」ニコニコ
江風「いや、川内パイセン達に比べたらまだまだですって」アハハ
川内「謙遜しなくて良いって良いって!まあ、帰ったら私がみっちり特訓してあげるからね!」キラキラ
神通「姉さん、江風。お喋りはそこまでにして…次の敵を探しましょう」
那珂「他の娘達共も逸れちゃったしねぇ…皆、大丈夫かな?」
神通「皆、それくらいで堪えるようには鍛えていません…さあ、敵を漸減しつつ合流しましょう」
了解の掛け声と共に、4人は獲物と逸れた仲間を探し求め、再び闇夜へと溶け込んでいった。
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駆逐艦 暁は、大混戦の最中孤立していた。
暁(もう…皆と逸れちゃうなんて…)
暁(全く、激しい戦いばかりで困っちゃうわ!)プンプン
暁(……うぇ………暗いよぅ)
辺りは一面闇である。
しかし、暁は知っていた。
先程、照明弾の明かりが消える前に前方に人影がちらりと見えた事を。
暁(そろそろ追いついたかしら?)
そう言って暁は探照灯班に照射を命じる。
一筋の光芒が伸びる。
その先には…
リ級「………………」ギロッ
リ級フラッグシップがこちらを睨んでいた。
暁「……ふぇ」ジョワァ
リ級はこちらに向き直り、カットイン体勢に入る。
「そこまでですっ!」
声と共に、リ級に凄まじい数の閃光が光る。
周囲には更に多くの水柱。
砲弾が着弾した瞬間であった。
暁「ぴぎゃーっ!!?」カリスマガード
間髪入れず聞こえる砲声。
鳥海「暁ちゃん、大丈夫?」
暁の元に駆け付けたのは、鳥海率いる重巡戦隊…鳥海、古鷹、加古、衣笠の4人…だった。
暁「…ぢょうがいざん」ウルウル
安心したのか涙声の暁。
鳥海「間に合って良かったわ…」ホッ
古鷹「鳥海さん、敵重巡は完全に沈黙!」
加古「よっしゃぁー!あたし達の手柄だね!」
衣笠「ふふーん、帰ったら青葉に自慢しちゃおっと♪」
「おおーい!!」
鳥海が暁の手を持ち、起ち上がらせていると声が聴こえてくる。
長波「あっ!ここに居たか、探したぞ暁」
暁「もうっ!長波達が暁を放っておいて、どっか行っちゃうのがいけないんじゃない!」プンスカ
長波がやって来ると暁も安心したのか、饒舌になる。
長波「悪かったって。それじゃあ、今度はちゃんと着いてこれるな?」
暁「あ…当たり前でしょ!暁は一人前のレディなんだから」
長波「よし、それでこそレディだ。高波、早霜!!周囲はどうだ!?」
高波「今の所、敵影は発見できないかも…です!」
早霜「由良さんは、恐らく…あちらの方に向かわれたかと…」
長波「ん、じゃあ鳥海。あたし達は、由良や阿賀野達と合流するから」
鳥海「分かったわ。私達は、またこのまま進んで敵を掃討していきます」
長波「了解。んじゃ、また後でな」ニッ
鳥海「お互い、頑張りましょう」クスッ
そう言い残すと、鳥海達重巡戦隊はその場を後にする。
長波「さてと、それじゃあたし達も行くとしますか…」
長波は残った三人を見やる。
長波(うん、総員意気軒高…問題無いな)
長波「よーし、長波様も張り切っちゃうぞぉ」キラッ
長波「みんなー、あたし達は提督に持ち帰る手土産を探しつつ、由良達に合流するぞー」
暁「…暁の出番ね、見てなさい!」フンス
早霜「早霜…参ります」
高波「高波、出撃かも…です!」
4人の駆逐艦娘は、残りの艦娘達と再び合流する為、戦場へと舞い戻って行く。
再び打ち上げられた照明弾によって照らされ、オレンジと黒の二色によって彩られる世界へと…
箸休め
《ここがあの提督さんの鎮守府ね》
【横須賀第七 提督執務室】
鬼怒「えっ!?今日来る艦娘が来る時間は席を外すって…?」
提督「うん。ちとその時間帯は急用が出来てな…」スマン
鬼怒「何言ってるのさ提督…着任の挨拶より大事な用事って何も聞いてないよ…」ハァ
鬼怒「それに、提督が今みたいに微妙に目を反らすのって…何か隠し事してる時だよね?」ジトー
提督「いや、そのな…」メソラシ
提督「何も無いというか…若さゆえの過ちと言うかだな…」
鬼怒「んもう回りくどいなー…さっさと言っちゃった方が楽だよ?」ツンツン
/
コンコン
\
提督「おっ…おう、入って良いぞー」
提督(遠征班が戻って来たか?これで話を逸らせるぞ…)ホッ
/
ガチャッ
\
鹿島「提督さん……来ちゃった♪」
提督「」
鬼怒「あっ!新しく着任する子だね?」
鹿島「はい。練習巡洋艦 鹿島、着任しました。宜しくお願い致します!」ニコッ
鬼怒「軽巡洋艦 鬼怒だよ。宜しくね!」ニパッ
鬼怒「もう聞いてよ鹿島さん。提督ったら、鹿島さんが着任するのに席を外すって言ってたんだよー?」
提督「ちょっ」
鹿島「まあ。そうだったんですか?私、あの時のお礼が言いたくて早く来たのに…」シュン
提督「いや、そ…そんな事は無い…と思うぞうん」
鬼怒「…ん、あの時?もしかして提督と鹿島さんって知り合い?」
提督「ま…まあ、以前ちょっと…な」
鹿島「はい、提督さんには以前…とてもお世話になったんです♪」ニコッ
鬼怒「……………ほう」ジトー
提督(アカン)
【同時刻 金剛型の部屋】
金剛「!!!?」ミコーン!!
比叡「お姉さま、どうしたんですか?」
金剛「…私の提督LOVEレーダーが反応したネ…」アホゲブンブン
比叡「今日って確か、新人が着任する日ですよね…」フムゥ
金剛「まあ、どんな艦娘が着任しようと問題Nothingだからネー」HAHAHA
金剛「何しろ私と提督はあの日…輸送船団という共通の環境下で、運命的なアバンチュールを成し遂げていたのですカラッ!!」フンス
比叡「…モンスーン船団でしたっけ?」
金剛「Yes!そう、あれは時化て荒れに荒れた印度洋の話で--」ペラペラペーラ
比叡(2日ぶり794回目のお話。来ましたー!!)
比叡(そういえば、榛名は大丈夫かな…あの娘も結構敏感だから…)
榛名「くすくす、榛名は提督のお嫁さんだから大丈夫です♪」
榛名「子供は…提督が望むなら、1レギオンくらい産んでも大丈夫です//」ブツブツ
比叡(取り合えず榛名も大丈夫そうね。良かったー)ホッ
/
ガチャ
\
霧島「お姉さま方、取り敢えず一通り道具は持ってきたので、備えは十分かと…」
比叡「霧島…って、また色々と持ってきたね」ヒエー
霧島「フレイルにメイス、釘バットに木刀…どうぞお好きな物を選んでください」クイッ
比叡「うーん、まだ執務室に行くのは早いと思うよー」アハハ
霧島「ふむ、確かに…青葉辺りが騒ぎ始めてからでも良さそうですね」カチコミクラスノ眼光
【場所は戻って執務室】
鬼怒「提督ぅ…何か、隠してるよねー?」ジトー
鬼怒「怒らないから、正直に話して…」ゴゴゴゴ
提督「いや…これは、あのだな…」アセッ
鬼怒「三行」
提督「海上護衛総隊在籍時」
提督「血塗れの舵輪握らせた」
提督「航海科の同期」
鬼怒「……あぁ」ナットク
鬼怒「って、それなら別に言い訳する必要ないじゃん!」
提督「いや、それは別に問題無いんだが…」
鹿島「…あっ!もしかして、提督さんあの時艦橋で言ってたk」ポン
提督「わーわーわー!!!」
鬼怒「ん……あぁ…うん。何か、分かったような気がする…」アキレ
提督「なら、別に言う必要は無いな!?鹿島も頼む!この通り!!」アタマサゲー
鹿島「うふ♪どうしましょう…」クスクス
提督「ひぇ…」
鹿島「もう、冗談ですよ?提督さんが駄目なら、私も言いません♪」クスッ
提督「…ほっ」
「それで、何て言ったんですか?」
提督「だから、当時読んでいた小説に書かれていt…」クルッ
青葉「書かれていた?」ニコニコ
提督「」
【同時刻 特三型姉妹の部屋】
雷「はっ!!?」ピョコン
響「どうしたんだい雷?髪の毛の一部が耳になってるよ」
雷「司令官が近く酷い目に合う予感がするわっ!!」
響「ああ、雷のカミナリ電探に反応があったのか…」
雷「そうみたい。まあ、何かあれば執務室から悲鳴が上がるだろうし…」
響「そうだね。私達はその時に駆け付けよう」
雷「えへへ、そうしたら司令官には雷をいーっぱい頼ってもらおうっと♪」
電「それより、雷ちゃんも響ちゃんも七並べの続きをやるのです」フンス
響「ダー。次は暁姉さんの番だったね」
暁「…うぅ…誰よハートの10止めてるのはぁ…」グス
【再度 場所は戻って執務室】
提督「……青葉」ヒクヒク
青葉「はい。青葉ですよ?」ピョコ
青葉「それより司令官、早くお話の続きをどうぞ!青葉、気になります!」
提督「お前、いつから聞いてた……?」
青葉「んーっと…ドアの前に張っていたところ、鹿島さんがいらしたので…最初からです!」ニパッ
提督「…待機組は?」
青葉「初雪ちゃん、望月ちゃんに卯月ちゃんなら遊び疲れてソファで寝ていたので、ちゃんと毛布を掛けておきました!」フンス
青葉「一応寝顔は写真に収めて、後で長門さんにご購入して頂く予定ですが……司令官も欲しいんですか?」クビカシゲ
提督「違うそうじゃない」
提督「とにかく、俺は絶対言わないからな!」
青葉「えぇ~良いじゃないですか!?減るもんじゃ無いですし!!」
提督「俺の心が擦り減るの!」
提督「軍機!軍機ですっ!!」ウガー
青葉「もう、司令官の意地悪ぅ!鹿島さん…青葉にだけ、ちょこっとお話し頂けませんか?」ススッ
鹿島「…ごめんなさい。提督さんに怒られそうなので、私からもお話しはできません」クスッ
青葉「むむむ…これは、強敵ですね…まあ、いっか」
青葉「それよりも、折角久々にお会いしたんですし…記念に一枚如何です?」カメラカマエ
鹿島「良いんですか?」ウデニダキツキ
提督「お前は本当にブレねぇな…」
青葉「ほら、司令官も笑顔笑顔!はい、チィ~ズ!!」パシャー
青葉「それじゃ、出来上がったらお渡しに伺いますね~」
鹿島「はい、有難うございます♪」フリフリ
提督「さて、それじゃあ鬼怒。鹿島を寮に案内してやってくれ…」
鬼怒「了解だよ!」
そう言って鬼怒も執務室のドアに向かう。
提督「それじゃ俺は執務の続きがあるから…鹿島は先に寮に行っててくれ」
鹿島「はい、了解しました♪」
そう言うと、鹿島は組んでいた腕を外す。
提督も、やっと落ち着いて午後の執務に励む事が出来ると思った。
その刹那
鹿島「提督さん…鹿島、絶対に逃がしませんからね?」ボソッ
そう、耳元で囁かれる
提督「!!!??」
ぎょっとして鹿島の方を向くと、鹿島は鬼怒に連れられて執務室から出ていく所だった。
部屋を出るとき、退室の挨拶をする鹿島と目が合う。
その熱を帯びた瞳は、扉が閉じられるまで、真っ直ぐ提督に向けられていた。
提督(………胃薬飲みたい…)ゲッソリ
【その頃 空母寮 瑞穂の部屋】
秋津洲「あぁー!!?また死んだかもぉっ!?」ピコピコ
瑞穂「…もう少しでぼす戦だったのですが、惜しかったですね…」ピコピコ
秋津洲「そう言いつつ、すもう城超えてから瑞穂は全然やられてないかも!(積極果敢に突っ込んで穴に落ちるタイプ)」ピコピコ
秋津洲「まあ、流石に二面だけあって敵も手強いから、秋津洲が苦戦するのも仕方無いかも!!」ピコピコ
瑞穂「ですが、今回は前回より先に進めました…」ピコピコ
瑞穂「中間ぽいんと…にも到達しましたし、きっともう直ぐくりあー出来ますよ(最初は操作に戸惑うけど慣れると卒なく出来るタイプ)」ピコピコ
秋津洲「よぉーし…次こそかぶき城を攻略するかも!!」ピコピコ
秋津洲「瑞穂も…頑張って秋津洲を援護して欲しいかも!」ピコピコ
瑞穂「クスッ…はい。畏まりました」ピコピコ
今日も鎮守府は平和です
艦!!
投下終了
夜戦は後2回くらい書き溜めて終わりそう…
そうしたらまた待機組安価とって、ほのぼのとした鎮守府生活に戻る予定です
戦闘終了部分まで投下
時間的に半日程度の戦闘なのに気付けば一か月半程掛かっている不思議
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高速戦艦 霧島は切れていた。
既に中破状態となり、殆ど反撃の術を持たない装甲空母鬼は為すがままだった。
至近距離から三式弾を叩き込む。
照明弾を打ち上げる必要は無い。
艤装…大型獣のようなそれ…を炎上させ、生き物と重油が焼ける匂いをまき散らしながら周囲を照らし出す。
その苦痛により怯んだ隙に、霧島は相手の懐に入り込む。
振り上げられた拳。
その先には、妖精の加護を受けた合金鋼製のガントレットが装着されている。
そのまま装甲空母鬼の艤装に強烈な右ストレートを叩き込む。
折れる歯。
飛び散る体液。
轟く悲鳴。
それを無視して、霧島は近接攻撃を続ける。
合間に、主砲による攻撃を加えながら…
霧島「…最初に…」
攻撃をする霧島の顔は羅刹の如く照らし出されている。
霧島「着任した金剛型は私なのに…」
艤装の上に位置取る装甲空母鬼本体は、炎に炙られながら霧島の攻撃を耐え、艤装から吹き飛ばされないようにするだけで精一杯である。
霧島「…どうして…」
関節に叩き込まれる拳。
艤装の腕部分がおかしな方向に捻じ曲がる。
霧島「司令はまだ私とケッコンカッコカリしてくれないのよっ!!!!」
完全な八つ当たりであった。
比叡「こら、霧島!」ペシッ
霧島「痛っ!比叡お姉さま!?」カスダメ1
比叡「そいつもう大破して浮かんでるだけみたいだから、始末は水雷戦隊や重巡戦隊に任せて放っておきなさい…」モウ
霧島「もっ…申し訳ありません。取り乱してしまって…」アセッ
比叡「一応、私達は要なんだからしっかり周囲の状況を見ないと…」
比叡「それと、司令なら最近霧島の事ばかり相談してくるから、そろそろ貴方も準備していた方が良いわよー?」ニッ
霧島「…えっ?…それって……//」
比叡「さあ、イタリアの傭兵達が向こうで大物を足止めしてるから、私達も加勢しに行くよー!!」ズサー
霧島「あっ!待ってください比叡お姉さま!それってどういう事ですかっ!?」
比叡の後を追って霧島もその場を離れる。
比叡「細かい話は帰還する時にね!ほら、行くよーっ!!」
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空母棲姫は、大破した空母水鬼を背後に庇いながら、伊太利亜製ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦 イタリア、ローマと対峙していた。
空母棲姫「忌々しい艦娘共め…火の塊となって、沈んでしまえ…」ギロッ
ローマ「姉さん!大丈夫っ!?」
イタリア「ええ、砲塔が一基ダメになったけど…航行、戦闘共に問題ありません!」
相手は姫級の深海棲艦であり、空母水鬼を庇いながらとは言えその戦闘能力は侮れない。
ローマ「全く、敵は大将首なのに私達コンドッティエーリ(傭兵)に任せっきりなんて…」
主砲に次弾を装填する僅かな時間、ローマは愚痴った。
イタリア「それだけ、私達を信頼してくれているのよ?」クスッ
イタリア「それとも、ローマは今の契約が切れたら本国に戻るのかしら」ニコ
ローマ「…そうね。それも良いかもしれないわ…」フン
それを聞いたイタリアはクスクスと笑う。
ローマ「姉さん…?」
イタリア「じゃあ、リベと作っていたあの衣装はお蔵入り…かしら?」フフッ
ローマ「っ!?どうしてそれを…」
イタリア「出撃前にリベが教えてくれたのよ?ハロウィンパーティの衣装、ローマと楽しく作ってる…って」ニコッ
ローマ「…//」
イタリア「それに、提督とも色々お話し出来なくなるのは寂しいのでは無くて?」
ローマ「…提督は、別に……それは姉さんだった一緒じゃない…!」
イタリア「あらぁ、私はこの極東の地で永久就職するつもりですよ♪」
ローマ「…全く、あの提督のどこが良いのかしら…」
ブツブツと呟くローマをニコニコと眺めるイタリア。
戦闘の真っ只中にあっても冗談を言う余裕があるだけに、とても心強い。
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二人は伊太利亜王国のヴェネツィアに住む、代々商人の家系図を持つ従姉妹同士だった。
かつては都市国家として、今は水の都として栄華を誇る都市で幼少期を過ごしたのである。
家が近いことから実の姉妹のように育った二人は、やがて羅馬の大学へと進学する。
イタリアは人文学科、ローマは史学科を専攻してお互いに充実した大学生活を送っていた。
その最中、深海棲艦の出現により伊太利亜を中心とする地中海世界もその脅威を受ける。
実家は海洋貿易を生業としていた為、その影響は計り知れなかった。
そして、艦娘として対抗手段を得た政府は、二人に候補者としての通知を送り届けた。
お互いに、かつての海洋国家であるヴェネツィアの血が目覚めたのだろうか。
艦娘になる事により政府から家族へ給付金が支給される事を理由に、二人は家族を説得し艦娘となった。
艦娘となった2人に待ち受けていたのは配属先を告げる辞令である。
そこには、極東で同じように海運業を生業とする島国へと向かうよう書かれていた。
提督「遠く欧州から良く来てくれた。二人の着任を歓迎する」
どこか変な訛りのあるキングス・イングリッシュで二人の着任を迎えた提督は、歓迎の言葉もそこそこにローマに質問した。
提督「ところで、ローマが書いたこの論文『ラテン語の伝番による地中海貿易に与えた影響に関する一考察』に関して2、3点質問があるのだが…」
なんと提督は、大学に居た時にローマが書いた論文を手元に持って、著者であるローマに質問を始めたのだ。
これによって、己の学術欲に火を点けられたローマは質問に回答すると共に、提督の知識不足に付いて補足を加える。
これが更に提督の知的探求心に火を点けた為、イタリア…当時は改装前でリットリオと名乗っていた…を放置し、執務室は喧々諤々の大論争の場と化してしまった。
しかし、イタリアはその光景を微笑ましく見ていた。
あのローマがここまで感情を露わに話すのは久し振りだったこともある。
何より、自分達の祖国や彼女達が育ったヴェネツィアについて知ろうとする提督の姿に興味を持ったのだ。
二人の論争は、定時通信の報告に執務室を訪れた大淀に「仕事をしてください」と提督が蹴りあげられるまで続いた。
因みにこの時秘書艦だった比叡は、途中から完全に夢の世界に旅立っている。
何ともおかしな着任挨拶となったが、それからの鎮守府での日々は概して充実したものであった。
この極東の海洋国家では、夏場こそ蒸し暑いが温暖な地域に位置しており、どこか地中海を彷彿とさせる面もあった。
しかし、彼女達の祖国以上に四季の色合いが鮮やかなこの島国は、こと食に関しては美食で知られる彼女達伊太利亜人の舌を常に満足させ、その料理に好奇心を抱かせるに十分であった。
また、この変わった提督…彼女達の雇用主…は様々な歴史的事象に興味を持っているらしく、暇な時間にはローマにラテン語を習ったり、お互いの持つ歴史的解釈をぶつけ合っていた。
そのような時間、イタリアもローマと共に提督の傍で色々と話しをするのが好きだった。
伊太利亜の文化、風習、食べ物、そして彼女達の実家の事等々。
まるで幼い少年のように目を輝かせ、イタリアの作った料理を頬張りながら熱心に話を聞くその姿に、いつしかイタリアの心には淡い想いを抱かせていた。
ローマも表面上は素っ気ない振りをしつつ、滅多に表に出さない感情を提督に対しては遠慮無くぶつけていた。
それだけ、提督に心を開いていた証拠であった。
因みに、段々と丸くなっていったローマはこの後文字通り更に丸くなのだが、ここでは割愛する。
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空母棲姫「……沈めぇっ!!」
空母棲姫による攻撃。
二人は転舵により進路を変更してこれを交わす。
そこに、三人の物とは異なる水柱が昇る。
空母棲姫「…おのれぇ……」ギリッ
イタリア「どうやら、足止めした甲斐がありましたね…」
ローマ「…やっと来たのね。遅い騎兵隊の到着だこと」
そこには、霧島を引連れて空母棲姫への牽制射撃を行う漸減邀撃部隊旗艦の姿が、朧げに確認出来た。
これで、金床の補強は何とかなりそう。
2人の伊太利亜製艦娘は、周囲へと気が散ってしまった敵に再度砲撃を加えるべく、敵に砲口を向けて照準を合わせるのだった。
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敵戦列を迂回する北上達雷巡を中心とする一隊は、間もなく射点に達しようとしていた。
木曾「もう少しで俺も適用係数99か…カッコカリしたら、あいつには模造刀の店に連れて行って貰うだろ…その後は、美味い和菓子の店でお茶をするだろ…//」エヘヘ
単縦陣の三番目に位置する木曾が、近い将来を夢見てムフフと笑う。
大井「こーら、今は戦闘行動中なんだから余計なお喋りは止めなさい!」
それに釘を差す大井。
大井「…それにカッコカリなら順番的に次は霧島さんで、それから鈴谷、伊19、伊8、陸奥か瑞鳳ってなるだろうから、貴方の番は結構先になるんじゃない?」
木曾「ほ…本当かよ大井ねぇ…どうしてそんな事が判るんだよ!?」
大井「ああ見えてうちの提督、変に律儀な所があるから…基本カッコカリは着任順にやってるのよ?」
木曾「うぐ…そうだったのか…」キソー
木曾「って事は、北上ねぇ達の時もそうだったのか…!?」
衝撃を受けた木曾は、先頭を進む北上に話し掛ける。
北上「………んー、まあ、そうねぇ…」
大井「こらっ!北上さん、今怒ってるんだから…余り話し掛けないの!」
木曾「…えっ?でも、いつも通りに見えるけど…」
それを聞いた大井は呆れた感じで応える。
大井「…あのねぇ」
大井「貴方が普段目にするのは、私や金剛さん達がギャーギャー怒ってる姿だろうけど、北上さんはまた違う怒り方なのよ…」
木曾「…んーと、冷静に怒るってやつか?」
大井「なんだ、分かってるじゃない。今の北上さんは、激おこ状態なのよ?」
北上「…もー、恥ずかしいから止めても大井っちぃー」アハハ
大井の解説に北上は苦笑する。
北上「…木曾っちはさぁ、アタシと大井っちがここに着任した理由って知ってたっけ?」
木曾「えぇっと……確か、大井ねぇがいじめられてたのを庇って、通ってた学校を追い出されてきたんだったか?」
北上「んー、まあそんな感じかな…」フハハ
北上「アタシ達の学校って女子高でさ…」
そう言って北上は己の身の上を語り始めた。
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何故か大井っちが、相手を乏しめる事で虚栄心を満足させる連中の標的にされてたんだけど、アタシはそれが気に入らなかった。
だったあいつ等、裏でコソコソ自分のやってる事はバレないように動いてんじゃん。
だからさ、或る時校舎裏で大井っちを取り囲んでいた奴等の中に入って行って、言った訳。
裏でコソコソ陰湿にやるくらいなら、表で堂々とやったらどうなのさ!ってね…
そしたらあいつ等の乏しめるリストにアタシの名前が加わったみたいでさー。
その日からもー酷いのなんの…
んで、段々それがエスカレートしていって、大井っちもアタシも余裕が無くなってきた。
そんな時だよ、艦娘の候補者通知が届いたのは。
藁をも縋る思いで、アタシ達はそれに頼った。
よっぽど余裕が無かったんだろうね…その時はさ。
んで、当時メンタルがヤバかった大井っちは、暫く治療に専念してアタシが先に着任した訳だ。
そん時提督はさ、着任したてのアタシにこう言ったんだ。
ここでは誰もお前達を責めないし、責めさせない。
逆に不満点があれば改善していきたいと思うから、何か意見があればどんどん言って欲しい。
あと、大井の事が気になるだろうから、暫くは戦闘より大井の回復に北上は努めてもらいたい。
ここに北上の特別外出許可証と、病院の面会許可証があるから、北上が必要と思えばいつでも外出して構わん。
…ってさ。
全く、戦争しなくて良いのかよー?って思ったけど、正直本当に有り難かった。
鎮守府での生活も、あの虫唾が走るような学校とは違ってそこそこ楽しいし。
まあ、駆逐艦の子達は喧しいから苦手っちゃあ苦手だけどさ…ポリポリ
そうして、いつしか大井っちの体調も回復して、鎮守府に無事着任した訳だ。
これでようやくアタシ達二人の新しい人生がスタートじゃん!
…って喜んでたけど大井っちったらさ、着任早々提督に喰って掛かってんだよ?
そんなだらしない恰好で迎えるのはどういう事か!?
北上さんに変な事してないでしょうね!?
そんな身体に悪いインスタント食品ばかり食べてないで、もっとしっかりした食事を採りなさいよ!!
あーもぉおお!!私が作るから、貴方はそこで座ってなさい!!
とかね…今思えば、大井っちなりの照れ隠しだったんだけどさ。
…えー、そんな事言ったって今更気にする事ないじゃん大井っちぃ?ニヤニヤ
それからアタシ達は雷巡として、色んな戦いを経験して、自分達の誇りを取り戻していった。
そんなある日、二人して執務室に呼ばれたんだ。
理由はお察しの通り…ケッコンカッコカリを執り行う為だよ。
北上「いやーあん時は流石にビックリしちゃったよー」
北上「最近大井っちばかり前線に出てるから、どうしたんだろうとか思ってたらさ?二人揃ってカッコカリする為なんだもん」ニシシ
大井「あの時は、貴重な北上さんの嬉し泣きする顔が見れて、とても幸せでした…//」ウットリ
北上「しょうが無いじゃんかー!」ウガー
北上「アタシ達に新しい居場所と心の温もりを取り戻してくれた、それだけじゃなく深い絆を結びたいだなんて…」
北上「流石の北上さまだってお涙頂戴しちゃうよ…//」
北上「……だからさ」
不意に北上の声に殺意が籠る。
北上「提督が負傷したって時は凄い心配した…まあ、仮にもアタシ達の旦那さんな訳じゃん?」
北上「そしてそれ以上に、怒り心頭でさー…」
大井「ええ、それは私も同じですね」
北上「あれだ…過程はどうであれ、提督が負傷したという事実が残った」
北上「…あいつ等は、アタシ達の一番大事なものに泥を塗りやがった」
北上「…ふざけんな!」ギリッ
北上の声は、普段から想像もつかない心の底から底冷えするものだった。
北上「幸いにもアタシ達は『槌と金床』の槌の役割じゃん?」
北上「本っ当に有り難いと思ったよ?」
北上「あいつ等、一人も逃さず皆殺しに出来るって…ね」ニヤッ
そう言って笑う北上の顔には、禍々しい程の殺気が影を落としている。
北上「その辺は共感出来る部分があるんじゃない…ぜかましっち?」
北上は単縦陣の最後尾に声を掛ける。
島風「うん!北上さんの気持ち…分かるかも」
話を振られた島風は頷く。
島風「私も両親が深海棲艦に殺されちゃって、施設では殆ど一人ぼっちだったから…」
島風「でも、鎮守府に来てからは毎日が楽しいもん!」
島風「時間がある時は、提督が一緒に走ってくれたり色んな話を聞かせてくれた」
島風「そして、施設で一緒だった天津風ちゃんとも再会出来たし、お友達もたくさん出来た!」
島風「そんな私達の居場所と提督を攻撃するなんて、絶対に許せないよ!」
北上「だよねー」
大井「木曾、貴方だって下手したらさっき話してたお出掛けの話。永遠にご破算になる所だったのよ?」
木曾「…ふん、そいつは笑えねぇ冗談だな」
木曾「それなら、落とし前付けてもらわねぇと気が済まねぇ…」
大井「…でしょ?」
木曾「ああ、北上ねぇ…こっちはいつでも準備出来てるぜ?」
北上「おっ!心強いねぇ、それじゃあ各艦の意思を統一したところで」
北上「そろそろ、パーティ閉幕の挨拶といきましょうか…」
北上は各艦に魚雷の速度と信管調定について指示を下す。
北上「それじゃ、各艦発射後速やかに回頭してその間にぜかましっちは次発装填」
北上「その後、あたし達雷巡は反対側の発射管、ぜかましっちは再装填した発射管を使って二回目の雷撃といきますよー」
三人「「「よぉーそろーっ!!」」」
4人の艦娘は、射点に点くために一路敵の撤退方向へと舵を取った。
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空母棲姫は絶望的な戦いを続けていた。
空母水鬼を庇いつつ、一対四の戦闘である。
他の部下達がどうなったか把握する余裕も無い。
空母棲姫「……これまでか…」
自分の周りに乱立する水柱を目にして、空母棲姫は覚悟を決める。
こうなれば、自分が囮となり空母水鬼だけでも泊地へと向かってもらう。
空母棲姫「…水鬼、お前h」
空母水鬼「姫!!?…魚雷が!!!」
振り向いた空母棲姫の目に映ったのは、水面下を向かってくる無数の雷跡であった。
恐らく、空母水鬼が常に死角となる後ろを確認していたに違いない。
空母棲姫(良い部下に恵まれたものだ…ならば!)
そして空母棲姫は渾身の力で後進した。
大破した結果、魚雷を回避する力も残されていない空母水鬼の射線前面へと飛び出る為に。
立ち昇る触雷の水柱。
霧島「お姉さま…あいつ」
比叡「部下を庇ったわね…敵ながら天晴というべきかしら?」
水柱が消えると、水面に浮かぶ影が二つ。
霧島「……どうしますか?」
比叡「見た感じ、艤装はもう扱えなさそうね。浮かぶのがやっとって所か…」
比叡「なら、やる事は一つでしょ」
霧島「…分かりました。では、私は第一の旗艦と鎮守府に連絡を入れて参りますね」
比叡「有難う霧島。お願いね」
そう言うと比叡は、影に向かって進んでいく。
それは、海面に没しようとする空母棲姫を必死に抱き留め、自身の艤装の残骸に載せようとする空母水鬼の姿があった。
比叡「……手伝いましょうか」
空母水鬼はキッと比叡を睨む。
しかし、直ぐに比叡の伸ばした手に上官の身体を預ける。
比叡「素直で結構……貴方は自力で動ける?」
空母水鬼 コクリ
比叡「分かりました…」
比叡は頷くと、ゆっくりと二人の立場を伝える。
比叡「貴方達二人に攻撃手段が無い事を確認しました。これより二人をジュネーブ条約に基づき、戦時捕虜として我々が身柄を拘束します」
ジュネーブ条約。
それは、空母水鬼にとって知らない未知の言葉だった。
しかし、その言葉を聞くと身体から自然と力が抜ける。
本能的に…或いは魂に刻まれたのかもしれない軍事行動の終了を意味するその言葉を無自覚に認識する事となった。
そしてその瞬間、空母水鬼達の戦争は終わったのだ。
霧島「ほら、しっかりして!」
力が抜け、倒れかけた空母水鬼を比叡の元に戻って来た霧島が支える。
比叡「霧島、どうだった?」
霧島「第一の旗艦は捕虜の件、了解したとのことです」
霧島「また、第一の旗艦経由で鎮守府にも連絡をしてくれると…」
比叡「ん、了解。その様子だと、第一から第六の各艦隊も残敵掃討を終わったみたいね。じゃあ、取り敢えず散らばってる各艦を集合させて」
霧島「分かりました!」
霧島からの連絡で、散らばっていた横須賀第七の艦娘達が集合してくる。
皆、比叡と霧島に連れられた捕虜の姿に驚くが、この場で提督の代行である比叡が決定した事である。
渋々ながら従った。
比叡「それじゃあ、途中で潜水艦達を拾って、ちゃっちゃと母艦に戻りましょう」
こうして、漸減邀撃部隊の戦闘を最後に一連の戦闘は終結となった。
集合した艦娘達は、彼女達を戦闘海域近海へと運んでいた揚陸母艦へと一向は向かう。
その途上で、敵潜水艦らしき音源を捉えたが、対潜担当の艦娘が向かう前に逃げたのか、その後補足する事は無かった。
やがて揚陸母艦に辿り着くと、簡単な修理・整備や捕虜の治療等を行い、ようやく一息付くことが出来る。
霧島「あ…あと、比叡お姉さま…」
比叡「んー?」
霧島「その、戻ってから…私はどのように司令と接すれば宜しいのでしょうか…?//」
比叡「そんなの、普段通りで大丈夫でしょ」
霧島「…ですが、先程の話を聞いてしまったので…直接司令のお顔を見れるかどうかも怪しいです//」アワワ
比叡「大丈夫だって!私や金剛お姉さまもいらっしゃるんだし、ちゃんとフォローするから」b
霧島「お…お願い致します///」
比叡「さ、私は報告書書いたりしなきゃいけないから、取り敢えず霧島は部屋で落ち着いてらっしゃい」
霧島「わ…分かりました。では、後程…」
比叡「はーい!ゆっくり休むんだよー?」
比叡(私も早く報告書を書き上げて、少し休もうっと…)
比叡は考えながら、自分の左手に輝く指輪に視線を落とす。
比叡(司令…お姉さま…比叡はきちんと努めを果たして戻りますから、待っていてくださいね?)クスッ
出発の地へと艦首を向ける揚陸母艦に身を任せて、艦娘達は暫しの休息を取るのであった。
投下終了
後は帰還場面とクリスマス小話を書いたらまた投下します
帰還場面と小話を投下して
最後に待機組安価を取ります
ただ、量が多いので投下終了まで20分程掛かります
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【横須賀鎮守府 第七提督執務室】
「提督!」
闇の世界から引きずり出される感覚。
何か夢を見ていた気がするが、もう思い出す事は出来なかった。
この声は大淀か。
提督「………すまん。うたた寝していたみたいだ」
覚醒と共に意識がはっきりしてくる。
提督「そろそろか…?」
大淀「はい。揚陸母艦群の入港が滞りなく完了致しました。現在、第一埠頭より順次接舷上陸を行っています」
大淀「約20分後には第七の艦娘を乗せた揚陸母艦《残波》、《犬吠埼》が第七埠頭に接舷予定です」
提督「分かった…準備をして埠頭に向かう」
提督「ご苦労だった下がっていいぞ」ファア~ア
大淀「はい。では、私は通信室に戻ります」クスクス
朝の日差しが眩しく目を瞑ったまま提督は応える。
どうやら、揚陸母艦の帰還を待っている間に居眠りしてしまったらしい。
そのまま、視覚以外の感覚を用いて周囲の状況を把握しようと試みる。
通信室のドアが閉じる音。
暖かく柔らかい枕。
提督(………枕なんて持って来てない筈だが?)パチリ
金剛「寝坊助サン…やっと起きたデース」クスッ
瞼を開くと、苦笑する金剛と目が合う。
どうやら眠っている間中、膝枕をしてくれていたらしい。
提督「どれくらい寝てた…?」
金剛「ンー…2時間くらいですネー」
提督「結構寝てたな…手間を掛けたな」ナデナデ
金剛「んっ…この10日間殆ど寝てなかったデショ?作戦中は不眠で待機してたし…今くらい休んでも罰は当たらないヨ?」ニコッ
提督「他の連中は…?」
榛名「榛名は権限のある書類の作成をしていました!」フンス
上座に座っていた榛名が声を挙げる。
榛名「…あと、提督の腕がずれ落ちないようにずっと支えていました」
提督「そうか、榛名も偉いな…」ナデリ
榛名「♪」
響「私は、散らかっていた部屋を片付けていたよ?」
今度は机に腰掛けた響の顔が視界に入る。
響「後、司令官が魘されていないか見張ってた」ボウシヌギ
提督「…監視任務ご苦労。響も偉い子だ」ナデクリ
響「…スパシーバ//」ニコッ
一通り全員の頭を撫でると提督は響の手を借りて起き上がる。
上質な枕だったが、ここ暫くの緊張で凝った肩や首回りには戦術的敗北だったようで、動かすとポキポキと音を立てる。
提督「青葉と利根は?」
そのまま、欠伸を噛み殺しながら残りの人員について確認を取る。
金剛「青葉は戦闘詳報に添付する写真の現像作業」
榛名「利根さんは、第七鎮守府内を巡回中ですね」
提督「了解した…それじゃあ、俺は一旦着替えて身嗜みを整えてから埠頭に向かうから…」
提督「一応、一名だけここで伝令として残って欲しいんだが…」
響「司令官、私が残るよ」
提督「…お願いして良いか?」
響「待つのは慣れてる…問題無いよ」ニコッ
響「それより、着替えるなら今着ている上着…アイロンくらい掛けておくけど?」
提督「助かる…多分、1時間程で戻る筈だ」ヌギヌギ
作戦期間中は殆ど着ていて、幾分か汚れた第三種軍装の上衣を響に手渡す。
響「ダー…了解だ」スンスン
提督「それじゃ、金剛と榛名は20分後に第七埠頭に集合してくれ」
金剛「Sir, my Admiral!」
榛名「はい!」
提督「それじゃ、俺は一旦私室に戻る…」
金剛と榛名に埠頭へ向かう旨を連絡した後、提督は自室へと戻る。
背後からは埠頭へ向かう金剛達とそれを見送る響の声が聞こえてくる。
「Hey, ビッキー!楽しむのは良いけど…程々にするんだヨー?」
「勿論…時間と場所は弁えているさ」
「響さん…榛名にも少しだけ嗅がせてもらっても良いでしょうか?」
「ダー」
何も聞かなかった…聞こえなかった…
そうしよう…
自室に戻ると提督は顔を洗い、不揃いの無精髭を剃って髪を整えた。
その後は、クローゼットに収められた皺一つ無い第三種軍装の上下に着替える。
予備で仕舞っておいた物で、普段はアイロン掛けを忘れてしまうくらい着る機会の無いものだ。
最近は瑞穂が部屋に来た際、定期的にアイロン掛けをしているらしく、今回のような突発事態時にとても助っている。
命を懸けて戦い、生き延び、疲れ果てながらも母港へ帰還を果たした彼女達を迎えるのだ。
最上級の歓待で迎えずして何が提督か。
これは提督として彼女達艦娘を指揮する上での最低限の礼儀であり、義務ですらあると確信している。
提督「そろそろ向かうか…」
姿見でネクタイが曲がっていない事を確認すると、提督は略帽を脇に挟み埠頭へと向かった。
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【横須賀鎮守府 第七埠頭】
埠頭では、既に揚陸母艦が接舷して乗り込んでいた艦娘達が上陸を始めていた。
艤装は着けていない。
点検や修理は工廠で行う為、後程纏めて工廠付近の埠頭へ降ろす為だ。
2人の捕虜もそこで上陸し衛生部に移送された後、軍医の治療と修復槽への入渠を行う。
艦娘達は旗艦を筆頭に部隊毎に整列し、提督を待っていた。
長期作戦と、戦いの傷や疲れを残して。
しかし、艦娘達の顔には疲労の色よりも達成感、帰還した事への喜びの色の方が圧倒的に多く見て取れる。
そこに提督が現れる。
大規模作戦時にしか見られない皺一つ無い軍装を着込んで。
だがいつもとは違い、左腕は三角巾で吊るされており、それが艦娘達の目に留まり心配させた。
金剛の号令で、艦娘達が気を付けの姿勢を取る。
提督は目線で金剛に休めの合図を送り、再び金剛の号令が掛かった後に言葉を発する。
提督「…諸君、良く還ってきてくれた」
早朝の埠頭に提督の声が静かに、しかし艦娘達全員に聞こえる大きさで響く。
提督「数時間前、軍令部より大規模演習作戦並びにシ號覆滅作戦が完遂した旨、下令された」
提督「敵重爆、敵艦載機の二正面作戦と、敵艦隊との交戦により多少の損害はあったが…」
提督「全て想定されていたものより小規模に抑える事が出来、かつ敵艦隊を各個撃破した上で資源輸送も成功」
提督「我々の勝利だ」
提督「…まあ、それ以上に諸君達が誰一人欠ける事無く帰還した事の方が俺は嬉しい」
提督「現在、横須賀鎮守府の担当は呉や大湊、海上護衛総隊が引き継いでいる」
提督「これより、諸君達には3日間の特別休暇が下賜される。ゆっくりと疲れを癒して欲しい」
提督「最後に…諸君達の今後の活躍を期待する」
提督「本当に有難うな」ニコ
金剛「総員!!気を付けぇぇーっ!!!」
話が終わると、金剛が再び号令を掛ける。
金剛「総員、提督と皇国にぃ万歳三唱っ!!!」
埠頭に響き渡る艦娘達の万歳の声。
第七以外の埠頭からもその叫びが聞こえてくる。
喜びの感情を乗せて響くそれを提督は、何よりも心地よく力強い響きだと感じていた。
金剛「総員、解散!!」
万歳三唱が終わり、解散命令が下る。
艦娘達はワッと列から飛び出し駆ける。
提督の元へ。
これも大規模作戦時のお決まりの光景だった。
なので提督も、その場で艦娘達を受け止める為待ち構える。
しかし、感情の昂っていた双方はある事を失念していた。
提督が負傷している事を…である。
何人かの聡明な艦娘は気付いていたが、提督がそこはカバーして受け止めると思っていた。
何よりそれで踏みとどまって、他の艦娘達に遅れを取るわけにはいかない。
金剛や榛名は提督の傍にあって、当然提督が考慮して受け止めるだろうと思っていた。
尚、当の本人である提督は完全に失念していた。
慢心ここに極まれり、である。
弁護するとすれば、痛み止めとして打っていたモルヒネで感覚がマヒしていたからだろうか。
それにしても、もう少し自分の身体を大事にして欲しいものである。
100人以上の艦娘が1人の提督に殺到する。
単純な力のぶつかり合いであり、戦術も何も無い。
結果は誰でも分かる。
提督に近い位置で飛び付いた艦娘達は、長ネギ数本を折ったような音と蛙の曳き潰されたような声を耳にしたという。
何の考えも無しに受け止めて、艦娘の波の中に消えていく提督。
傍で見ていた金剛と榛名はドン引きである。
こうして、長い長い十日間は何とも微妙な形で幕を閉じる。
因みに提督は、この件で散々軍医に嫌味を言われた挙句、治癒まで更に二週間程日数が伸びる事を通達された。
艦娘達は艦娘達で、待機組と秘書艦の仕事に手の不自由な提督の身の回りの世話をする旨を追加した。
そこには、やって良い事と悪い事まで事細かに書かれており、今後は待機組に選ばれる為に艦娘達のより積極的なアプローチが行われる事が予測されるのだった。
箸休め
《師走のとある一日》
【09:15 金剛型の部屋】
十二月の朝は、雲一つ無い晴天である。
放射冷却によって冷え込んでいるが、澄んだ空気と青い空は清々しい気分にさせてくれる。
そんな素晴らしい朝のひと時は、ドアを叩くけたたましく音で中断された。
このようにドアを叩く人物は一人しか心当たりが無い。
比叡「司令、朝から何ですk「比叡!匿ってくれ!」…はい?」
比叡がドアを開けると提督が飛び込んできた。
訳が分からないので説明を求める。
提督「朝から金剛が「プレゼントを寄越すデース!!」つって追い掛け回してくるんだよ!」
比叡「はぁ…」ソレデ?
提督「そこで、俺は盲点を点く事にした。木を隠すなら森の中…金剛から逃げるなら金剛型の部屋の中とな」
比叡「朝から忙しい人ですねぇ…」アキレ
提督「あいつは10時から演習だから、それまでの間匿ってくれ」コノトオリ
比叡「しょうがないですねぇ…10時までですよ?」ハァ
提督「流石比叡!愛してるぞ!」ヨシッ
比叡「ちょっ!?いきなり変な事を言わないでくださいよ!!//」ワタワタ
比叡「隠れるのは良いですけど、折角なのでちょっとお願いがあるんですが…」
提督「おう、優しい司令が何でも聞いてあげるよー」
比叡「実は、今度のクリスマスパーティ用にケーキの試作をしたんですが…」
比叡「司令、味見をお願いします!」
提督「」
提督の前に出されたのは、シンプルなイチゴケーキだった。
パッと見た感じでは、おかしな箇所は無い。
しかし比叡は、気合いを入れて料理をする際、様々な"隠し味"を入れてしまう困った娘だ。
去年は真っ青なケーキを出されて、ぶっ倒れた記憶が思い出される。
比叡「さぁ、司令!お願いします!」ニパ
提督「……お…おうっ…」
提督(見た感じは普通だな…)
提督(最近は"隠し味"を控える事で大分まともな料理をするようになったが…)
提督(まあ、これなら大丈夫だろう…南無三)パク
比叡「どうですか司令!?」ワクワク
提督「……比叡」
比叡「はい!」ワクワク
提督「味は…とても…良いと……」
提督「思う…ぞ…?」
ガクッ
比叡「本当ですか!?良かったぁ~」パァア
比叡「…って、また司令が気絶してる」アリャ
比叡「感想を言ってくれるのは有り難いですけど、具体的なアドバイスを聞けないのは困るなぁ…」ヨイショ
比叡「司令はソファに寝かせておいて…っと」
比叡「うーん、やっぱり隠し味入れないで、後で他の娘にも味見してもらおうかなぁ」ウーン
比叡「イエローケーキは手に入らなかったから、引っこ抜く時に叫び声を聴かないように頑張ったんだけどなぁ…」
比叡「仕方ない!これは司令用にして、まだ何も入れてない予備の方を進めちゃおっと」フンス
榛名「比叡お姉さま、おはようございます」ヒョコ
比叡「おはよう榛名!今日は演習だっけ?」
榛名「はい、10時から金剛お姉さまと行って参ります」
比叡「頑張ってくるんだよー」
比叡「…あっ、そうだ榛名?」
榛名「はい?どうされました」
比叡「司令が今ソファで寝てるから布団掛けておいてもらえない?」
比叡「私、今ケーキ作ってて手が離せないから…」クルッ
シーン
比叡「相変わらず司令が関わると素早いなぁ榛名は…」クス
榛名「提督、おはようございます♪」ニコ
提督(……この声は榛名か…?)
榛名「わざわざ朝からお部屋にいらっしゃるなんて、榛名…感激です」ニコニコ
榛名「お布団、掛けておきますね?」
榛名「クスッ…可愛い寝顔♪」ナデリ
提督(穏やかな顔してるだろ…全身麻痺してるだけなんだぜ?)
榛名「…あっ!そうだ…」テッテッテッ
提督(…?部屋に戻ったのか?)
榛名「提督、少し早いですが…榛名からのクリスマスプレゼントです!」
提督(ああ、有難う榛名。口が開けばお礼を言いたいのだが…)
榛名「腕の中に入れておきますね?」ギュ
榛名「その…時間が経って温かくは無いのですが、是非お使いになってくださいね…?//」ポッ
提督(暖かい…カイロかな?)
榛名「…やだ!?そろそろ演習場に向かわなくちゃ…」ハッ
榛名「それでは提督…どうぞごゆっくりなさっていってくださいね?」ニコ
提督(榛名はそのまま演習に向かった…)
提督(早く痺れが治らないかなぁ…)
ガチャ
霧島「はぁ…全く司令はどこに…っ!?」
提督(この声は霧島か…?)
霧島 スーハーワンツー
提督(あ…嫌な予感)
霧島「金剛お姉さまぁー!!部屋に!部屋にて司令を発見しましたっ!!」
金剛「霧島!!Really!!?」ズサァッ
霧島「はい!私達の部屋のソファでグッスリと…」シー
金剛「Oh!?本当に居ました…霧島、Niceデース」ムグッ
霧島「ふふ、では私はこれで…」スッ
金剛「Thank youネー!今度、とっておきのスコーン焼いてあげるねー」バーイ
提督(金剛にとうとう見付かってしまった…)
金剛「提督ゥー?もう、部屋で待っててくれるなんて優しいんだかラー♪」ニコニコ
提督(犬のように周りをウロチョロしている気配が…)
金剛「んふふー♪」ツンツン
提督(最も…感覚が無いからどうしようも無いのだが…)
金剛「Wow!?提督、その手元にあるのってもしかして…私へのプレゼントでーすカー?」キラキラ
提督(ああ…違う。それは榛名から貰ったプレゼントだ…)
金剛「提督、私…今とってもHappyネ♪素敵なクリスマスプレゼント、有難うネ?//」チュッ
提督(盛大な誤解なんだが…)
金剛「Oh!?もう直ぐ演習の時間デシタ!」ハッ
金剛「それじゃ、ゆっくりしていってくださいネー?」テテテッ
提督(うむ…榛名には済まないが、結果オーライという事か?)
提督(取り敢えず落ち着いたら…眠く…なって…き…)
その後、ソファで冷たくなっている提督が発見され、提督は金剛型の部屋内で静かに息を引き取った。
尚、プレゼントの件は後程誤解だと発覚し、提督の次の休日は金剛へのプレゼントを選ぶ為に金剛型姉妹によって抑えられたのである。
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【13:10 執務室】
提督「あ゙あ゙ー酷い目にあったぁ…」ブツブツ
提督「結局午前中の仕事が昼休みにまでずれ込んでしまった…」
瑞鶴「もう!言い訳は良いから、提督さんは早く手を動かす!」(秘書艦)
提督「はいよー」カキカキ
提督「しっかし瑞鶴、随分機嫌悪いな…」
瑞鶴「しょうがないじゃない!」
瑞鶴「皆して、七面鳥だのターキーだの騒いじゃって…」
瑞鶴「翔鶴姉まで言い始めたんだから…お陰で朝は喧嘩して飛飛び出しきちゃったわよ」プクー
提督「ああ、もう直ぐクリスマスだからなぁ…」
瑞鶴「別にクリスマス自体は良いけど…どうしても気にしちゃうから、そういう所くらい皆も気にしてくれたって良いじゃない」ツーン
提督(………ふむ)
提督「なあ、瑞鶴?」
瑞鶴「あによー?」ツーン
提督「皆が言ってるターキーなんだが、あれって七面鳥の事を言ってる訳じゃないぞ?」
瑞鶴「…………は?」ポカーン
提督(我ながら苦しい言い訳…)
瑞鶴「え?違うって…えっ!?どういう事なの提督さん!?」コンラン
提督(あっ…喰い付いた)
提督「あのな、ターキーって皆が言ってるのは…そう、ターキンとかタルキンとか言う人名を誤って覚えてしまっているからなんだ」
瑞鶴「?????」
提督「ターキンは銀河帝国の大総督、タルキンは古代カーメン王国の偉大な魔導士でな…」
提督「ターキンは銀河帝国の宇宙要塞で一歩も引かず戦い、タルキンは町を包囲した十万の魔物の群れを自己犠牲呪文で道連れにした…」
提督「どちらも歴史に名を遺す人物で、クリスマスに併せて祝う事になっている。皆はそれを誤って覚えてターキーと言っているだけなんだ」
瑞鶴 ポカーン
提督(何言ってんだこいつ…って思われてそうだが…まあ、適当だし止むをえまい)
瑞鶴(提督さん…また訳分からないことを言い始めたわ…)ジトー
瑞鶴(でも、提督さんなりに気を使ってくれてる…のよね…?)
瑞鶴(私も、いつまでもウジウジしてちゃ駄目ね…性に合わないし!)ウンッ
瑞鶴「へーそうなんだー凄いねー(棒)」
提督「お…おう」
瑞鶴「でも、なんだか元気になってきたわ!提督さん、有難う!」ニコッ
提督「あ…ああ、それは良かった…」
提督(おっ…?意外と上手くいったのかこれは?)
/
ガチャッ
\
朝霜「司令、昨日の出撃の報告書…持ってきたぜー」ヒラヒラ
提督「おっ…有難うな」ウケトリ
提督「…んで、その左手のそれはどうした?行儀悪いぞ」
朝霜「あーこれかい?何でも、くりすますめにゅーとか言う奴だってさ」モグ
瑞鶴(七面鳥だ…)
瑞鶴(落ち着いて瑞鶴…さっき、提督さんが意味不明な弁解をしてくれたじゃない!)
瑞鶴(提督さんも居るし、一々気にしちゃ駄目よ!!)フンスッ
朝霜「この前のばれんたいんと言い、全く面妖な鎮守府だねぇここは…まあ、料理は美味いから良いけどさ」ムグムグ
提督「…ふむ、確かに美味しそうだな」
朝霜「だろぉ…ハムッ…あろで司令も食べてみると良いぜ?」ムグムグ
提督「そうだな、だがその前に…どんな感じか見せてくれないか?」
朝霜「ング…ほらよ、アタイのだから食べんじゃねーぞ?」
提督「ほう、これは中々…」
そう言って提督は受け取った七面鳥を眺める…振りをして、高々と掲げる。
揶揄われた事に朝霜も気付いた。
朝霜「あっ!!こら司令!それアタイのだぞっ!?返せよっ!!」ピョンコピョンコ
提督「ふはは!悔しかろう…その身長では飛び跳ねても届かんぞ?」ドヤッ
朝霜「良いから返せっつってんだよ!!ずっけぇぞ司令!」ウガー
提督「七面鳥を食べる側がターキーとして揶揄われる気分はどうだ!?」フハハ
どうやら、提督も無意識に調子に乗っていたらしい。
先程自分が述べた意味不明なこじ付けは全否定どころか、頭の中から抜け落ちていた。
「……提督さん」
提督「…どうした瑞k」クルッ
カエセヨーシレー!
瑞鶴「折角前向きになろうと思ったら…何よもう!」
瑞鶴「私、空元気まで出したのにバカみたいじゃない…」グスッ
瑞鶴「提督さんまでターキーって馬鹿にして…もう知らない…提督さんのバカッ!!」ウワーン
提督「」
カエセヨ…
提督(あかん…瑞鶴が泣いてしまった…)
提督「お…落ち着け瑞鶴…これはだな!?」アセアセ
瑞鶴「ヒクッ…知らない知らない!!もう知らないもん!」グスグス
提督(まずい…本気で泣いてしまった…)
……
提督(何とか、泣き止んで貰わないと…)グイグイ
提督(朝霜が裾を引っ張って…って忘れてた!!)
提督「あ…あぁ、すまん朝m」クルッ
朝霜「ウグッ…じれぇ…あだいのお肉…返せよぉ…」ウルウル
提督「」
提督(こっちもガチ泣きしてるだと…?)ダラダラ
提督「す…すまん朝霜!?ほら、返すから泣き止もう…なっ?」
朝霜「モグ…ヒグッ…ガツガツ…グジュ…」フルフル
提督(泣き止んでくれませんでした…)
瑞鶴 スンスン
朝霜 グズグズ
提督(不味いぞ…二人とも泣かせてしまった…)
提督(こんな所、他の艦娘に見られたら…吊るされる)ダラダラ
提督(落ち着け俺、ここは…高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対応するしかない!)
/
ガチャッ
\
翔鶴「瑞鶴…今朝はごめんなさい…」ワイッ
葛城「瑞鶴先輩!今日は私が奢りますから、気晴らしにお昼行きましょうよ!!」ワイッ
提督「」
霞「あーた、こっちに朝霜来てない?」ドヨッ
足柄「朝霜ー?清霜が待ってるんだから、早く戻ってらっしゃいな!」ドヨッ
大淀「提督、軍令部より『年末・年始期間における駆逐艦愛護週間』に関して通達が届きました!」ヨドッ
提督「」
青葉 パシャッ
提督「」
提督「
提t
t
この後、滅茶苦茶怒られた後吊るされた。
----
【15:20 甘味処 間宮】
天津風「あぁ、それであなた…吊るされてたのね?」アキレ
提督「怒った翔鶴と大淀…無茶苦茶怖かったです…ハイ」
初風「どう考えても提督が悪いんじゃない…自業自得よ!」ツーン
提督「だからこうしてな、駆逐艦愛護週間に則って間宮でご馳走している訳だ」
天津風「はぁ…何よそれ?駆逐艦なら誰でも良いって事?」プンスカ
初風「偶々傍を私達が通りかかったから都合良く…ってことかしら?」ツンツン
提督「いや、そんな事はないぞ!お前達が大事だから、こうしてわざわざお願いして間宮まで一緒してもらったんだ」キリッ
天津風「そ…そう、あなたがそう言うのなら、別に私は気にしないわ//」テレッ
初風「…そうね、提督がそう言うならそうなんでしょうね…//」ツンテレ
時津風「よしよーししれー、アタシが頭撫でてあげるー」オンザヒザノウエ
雪風「しれえ!雪風は、司令にこのケーキあげます!」ドウゾッ
提督「おう、お前達は優しいなぁ」ムグムグ
初風「何よそれ…」チラッ
初風「それより提督、何か私に言う事忘れてないかしら?」チラチラ
提督「んー?」
提督は隣に座る初風の全身を眺める。
最初から気付いていたが、何かの罰ゲームだと思い敢えてノーコメントだったのだが、どうやら違うようだ。
初風「な…何よ…?」ツン
提督「三人とお揃いのクリスマス衣装…とても似合ってるぞ初風?」ニコッ
初風「ふ…ふん!今更言ったからって…あ…アリガト//」ツンテレ
時津風「しれー、アタシもケーキあげるー」アーン
提督「あむっ…あひがほうなー」ナデナデ
時津風 ドヤッ
雪風「しれぇ、雪風も撫でて欲しいです!」
提督「はいはい」ナデナデ
雪風「えへへ、撫でられちゃいましたー♪」ニコニコ
天津風「あ…あぁあああなた!わ…私もケーキあげるわ!!//」プルプル
提督(ケーキを刺したフォークが滅茶苦茶震えてる…)パクッ
天津風「ど…どうかしら?//」ドキドキ
提督「ん、美味しかったよ…ありがと天津風」ナデリ
天津風「…ん♪当たり前のことをしただけよ…//」ニヘラ
初風「はぁ…何やってるのよ皆…」ジトー
初風「全く、提督も提督だし……ほらっ//」
提督(そう言いつつも、ケーキを差し出す初風であった…)
提督「お…おう」ムグ
初風「…これで満足?//」ボウシトリ
提督「ああ、満足は満足なんだが…」
初風「何よ…?」ツンツン
提督「いや、ケーキ貰う流れなのは分かるが…頭を撫でる流れだったのかこれ?」
初風「」ボンッ
初風「い…良いじゃない別に!?//」ウガー
初風「そ…それより、撫でるの!?撫でないの!?はっきりしなさいよっ!!//」ガミガミ
提督「丁重に撫でさせて頂きます…」ナデクリ
初風「わ…分かれば良いのよ分かれば//」ツンテレ
提督「しっかし、衣装を合わせるのは分かるが…普段と違って随分大胆になったな…」
そう言って提督は初風の足…正確にはスカートを履いていないため露出された太腿付け根部分に眼をやる。
それに気付いた初風はサッと上着を引っ張りそれを隠す。
そして、提督の足に踵で強烈な一撃を加えた。
初風「どこ見てるのよ!?バカッ!!変態っ!!!///」
提督「ぐぎぎ……」プルプル
初風以外の3人は、呆れた視線を提督に送っていた。
----
「提督!」
「駆逐艦愛護週間と聞いて」
提督「来たな…期間限定の重航空駆逐艦共が…」
赤城「朝潮型駆逐艦 赤潮!」
加賀「同じく朝潮型駆逐艦 加潮、参りました」
提督「…お帰りはあちらになりますが…?」
第十六駆逐隊が間宮を後にした頃を見計らい、2人の艦娘が現れる。
それは、朝潮型の制服に身を包んだ赤城と加賀であった。
赤城「さあ、提督!駆逐艦の私達に美味しいすいーつをご馳走してください!」ドヤッ
加賀「ください…//」ハズカシイ
提督「ほう…良いのかな?」
赤城「…?」
提督「本当なら、今度2人と外出する時に美味しいスイーツの店に連れて行こうかと思い、資金を貯めていたのだが…」
提督「真に恐縮だが、ここで君たち2人に奢ってしまうと、その店に行けなくなってしまうなぁ…」ニヤリ
赤城「!?」アゼン
加賀「な…なんて言う恐ろしい人…」ボーゼン
提督「今なら、この間宮無料券で手を打てるのだが…どうかな?」
赤城「く…鬼!悪魔!提督!!」
加賀「赤城さん…ここは提督の提案を飲んで、貰えるものは全て貰うべきです!」ヒソヒソ
赤城「っ!そうですね…加賀さん、危うく理性を失うところでした…」フゥ
赤城「提督、その提案で受け入れましょう!」フンス
提督「そうか、懸命な判断…感謝する」
赤城「その代わり、お出掛けの時は期待していますよ?」
加賀「いますよ?」
提督「ああ、その時を楽しみにしていると良い」
提督「じゃあ、これを渡しておくからゆっくりしていきなさい」スッ
そう言って提督は赤城達に券を渡すと、足早に間宮を後にした。
後にはウキウキルンルンの赤城と加賀が残る。
赤城「さあ、加賀さん!どれを食べましょうか?」キラキラ
加賀「そうですね、私は…!?」ハッ
赤城「…?どうしました加賀さん?」キョトン
加賀「赤城さん、その無料券…良く見てください!」キッ
赤城「無料券…ですか…?」
そこには『間宮にてドリンク一杯無料!!』と書かれていた。
赤城「」
加賀「赤城さん…提督にまんまと一杯やられました…」
赤城「て…提督は!?」ハッ
加賀「既に逃走して、周辺に気配は感じられません…」シュン
人気の無い間宮前の通路に、赤城と加賀の悔しそうな声が響く。
赤城と加賀は提督に戦略的敗北を喫したのだった。
----
【19:30 提督私室】
提督「今日も酷く疲れる一日だった…」ハァー
瑞穂「提督、本日も一日お疲れさまでした」ニコッ
鹿島「さぁ、今日は皆で寄りを掛けたクリスマスメニューですよ?」クスッ
秋津洲「たっぷり召し上がって欲しいかも!」フンス
提督「すまん、みんな有難うなー」ウル
提督「うん、良い匂いだ…凄くお腹空いてきた」グー
瑞穂「クスッ…瑞穂はライスコロッケを作ってみました」
鹿島「うふふ、私はグラタンです♪」
秋津洲「秋津洲はサラダと特性ドレッシングを作ったかも!」
提督「うぃ…それじゃあ、皆席に着いた事だし…」
4人「「「「いただきますっ!」」」」カモッ
瑞穂「提督、お味の方は如何でしょうか?」
提督「うん、衣がサクサクだし中のご飯はケチャップが効いてて大変美味しい!」
瑞穂「良かった…あまり洋食は作らないので、お口に合うか不安でしたから…」パァア
提督「いや、普通に美味いぞ?大したもんだ!」
瑞穂「提督のお口に合って、瑞穂も嬉しいわ♪」ニコニコ
鹿島「提督さん、私のチキングラタンも自信作なんですよ?是非、食べてみてくださいね♪」
提督「おう、どれどれ…」パクッ
提督「うん!チキンもマカロニも良い感じに柔らかいし、焼き加減も丁度良くて大変美味い!」モグモグ
鹿島「うふふ、提督さんのお口に合ったみたいで良かったです♪」ニパッ
提督「ははっ…でも俺の口に味を合わせてばかりだと、他の人向けに味付けをする際大変なんじゃないか?」ナンテナ
瑞穂「?」ニコニコ
鹿島「?」クビカシゲ
秋津洲「???」
提督(あれー?)
秋津洲「それより提督、秋津洲の作ったサラダも食べて欲しいかも!」ドヤ
提督「うむ、ちょっと待ってな…」ドレッシングカケカケ
提督「…ふむ」モシャモシャ
秋津洲「どうかも?美味しいかも!?」ワクワク
提督「うん、ドレッシング共々さっぱりしていて、他のおかずに合うな!」ウンウン
秋津洲「ふふーん、これくらい秋津洲に掛かれば余裕のよっちゃん烏賊かもっ!」フンス
提督「ああ、流石だなアッテンボロー君!!」
秋津洲「こらぁー!!また名前を間違えたかも!?秋津洲は伊達と酔狂で生きる、雄一以外の将帥じゃないかもっ!!」プンプン
提督「ふははは」
鹿島「提督さん、いつも秋津洲さんの名前を間違ってますけど…何かあったんですか?」
提督「いやな、以前…名前を間違えた事があってな…あの時は何て言ったんだっけか…?」
秋津洲「あの時はアカネマル君とか言われたかもっ!!秋津洲は永遠に人間に生まれ変われない大和の仏師じゃないかもーって怒ったかも!」プンスカ
提督「そうだったな…それ以来、何となく間違えた名前で言うのが癖になってしまってな…」
秋津洲「提督、凄く性格悪いかも!早く治さないと嫌われちゃうかも!!」
提督「大丈夫だ、間違うのはアルマガバール君だけだからな!!!」
秋津洲「もぉー!!秋津洲はカタルーニャ出身の投槍歩兵じゃないかも!!!」ポカポカポカ
提督「ふははは」
瑞穂「お二人とも、とても仲良しですね」ニコニコ
鹿島「あれは仲良しと言えるんでしょうか…」アハハ
----
秋津洲「それじゃあ、秋津洲はお皿を洗ってくるから皆はゆっくり休んでいると良いかも!」ガタッ
瑞穂「秋津洲さん、瑞穂もお手伝い致しますよ」スッ
秋津洲「一人で大丈夫かも!今日は秋津洲が一番簡単な料理を作ったから、その分後片付けは秋津洲に任せて欲しいかも!」
鹿島「うふふ…それでは、お言葉に甘えさせて頂きますね?」
秋津洲「了解かも!2人はそこで暇している提督の相手をしていて欲しいかも!」ヨイショット
そう言って、秋津洲は重ねた食器を流しに持っていき、食器を濯ぎ始める。
鹿島「それで、提督さん?」ボソッ
提督「はい?」
鹿島「本当はどうして、"わざ"と違う名詞で呼んでいるんですか?」ニコッ
瑞穂「僭越ながら、瑞穂もその点は気になっていました」ドキドキ
提督「…バレてた?」
瑞穂「提督、隠し事をなさる時は少しだけ早口になりますからね」クスッ
鹿島「分かる人が聴いたら、直ぐに分かっちゃいますよ?」モウッ
提督「全く…お前達は優秀だな…」
そう言って提督は経緯を話し始めた。
提督「あいつの艤装って、少し特殊だろ…?」
鹿島「大艇ちゃんでしたっけ?確かに島風ちゃんや天津風ちゃん、それに秋月型の二人と似ていますね」
提督「ああ言った、一種の無人機のような艤装を扱う艦娘に選ばれるのは…少々特殊な人でな」
瑞穂「…と、おっしゃいますと?」ゴクリ
提督「超能力とかテレパシー、所謂第六感とか言う能力を生まれ付き持っている女の子が対象になるんだ…」
鹿島「随分オカルティックな話ですね…」マァ
提督「俺も最初聞いた時は、何言ってんだって思ったさ?」
提督「だが、実際に彼女らと対面して見ると、どこか不思議な感じでな…それが艤装適用によって更に増幅される」
提督「だから、ああ言った本来の艤装と独立した無人機を扱えるんだ…」
2人が何となく納得したような表情になるのを確認して、提督は話を続ける。
提督「例えば島風は常人より遥かに俊敏だ」
提督「天津風は島風程では無いが、俊敏だし全体的な能力が高い」
提督「秋月型の二人は、三次元の演算能力がずば抜けていて殆ど無意識に諸元計算が出来る」
提督「まあ、その代償として島風と天津風は廃熱量が多く体温が高い」
提督「そして秋月型の二人は計算で糖分を常人以上に消費するらしく、直ぐにお腹を空かしてしまう」
提督「…つまり、優位な点もあれば欠点になり得る部分も持っている訳だ」
鹿島「そうすると、秋津洲さんの場合は?」
提督「ああ、二人とも…サヴァン症候群って聞いた事は無いか?」
瑞穂「はい、言葉だけでしたどこかで聴いたような気がします…」
鹿島「詳細までは流石に…」
提督「うん、俺も最初軍医に言われるまで知らなかったんだが…」
提督「秋津洲の場合、その亜種に近い能力を持っているらしい」
鹿島「…と言うと?」
提督「あいつは、記憶力が常人のそれを超えていてな…単語とその意味について、見たものを全て紐付して記憶している」
提督「そして、艦娘となってからは二次元画像に関しても完全に記憶する事が出来るようになった…」
提督「これの重要性は分かるな…?」
鹿島「つまり、一度見た海図は全て暗記出来るという事ですね?」
瑞穂「そして、索敵機からの情報を元に海面上の位置情報を正確に知る事が出来る…」
提督「その通りだ」
提督「だから、秋津洲の索敵能力はとても高いし信用出来る」
提督「その分、三次元での演算となるとかなり苦手らしく、前線向きでは無いがな…」
鹿島「だから、戦闘訓練よりも哨戒・索敵訓練を重点的に行っているんですね?」
提督「ああ、秋津洲の能力を最大限に引き出せるしな。その方があいつも遣り甲斐を感じてくれる筈だ」
瑞穂「提督は、秋津洲さんの事をとても大事にしているのですね」ニコ
鹿島「じゃあ、名前をわざと間違えているのも?」
提督「うん、あいつの能力を最大限引き出してやりたいという老婆心からやっている」
鹿島「ふぅん……提督さん、因みに本音は?」
提督「俺の無駄知識が生かせて嬉しいのと、いつかあいつの知らない単語を見つけて揶揄いたい!」ドヤ
鹿島「まあ、提督さんったら…実は結構ドSなんですか?」ニヤッ
提督「ど…ど…ドSちゃうわい!」
瑞穂「?」ニコニコ
鹿島「瑞穂さん、ドSって言うのはね…」ゴニョゴニュ
提督「ちょっ!鹿島さん!?」ヤメテ
鹿島に耳打ちされた内容を聞いていた瑞穂は、段々と顔を赤くしながら俯いていく。
最終的には両手で顔を覆ってしまった。
隠しきれていない両耳は真っ赤である。
瑞穂「あ…ああの、提督//」ソロソロ
提督「はい…」
瑞穂が指の隙間から瞳を覗かせて、恐る恐るしゃべり始めた。
瑞穂「て…提督が望むのでしたら…み、瑞穂はどのような事でもう…受け入れます///」オメメグルグール
提督「あーうん…まあ、そうねぇ…」コマッタ
鹿島 ウフフ♪
秋津洲「食器洗い終わったかもー!!って、瑞穂はどうして顔が真っ赤になってるかも?」キョトン
鹿島「秋津洲さん、これは提督さんg「わーわーわー!」…あら♪」
提督「あ…アイゼンクライト君には全く関係無い話だから!気にしなくて宜しい!!」
秋津洲「あー!!?また間違えてるかも!秋津洲は蒸気機関で動く独逸製霊子甲冑じゃないかも!!」プンスカ
鹿島 ニコニコ
瑞穂 アワワワ///
こうして、一見穏やかだった食卓は食後の喧騒に包まれていった。
----
【22:00 提督私室】
提督「ああ…書類が終わらない…」
3人が自室へと戻った後、提督は炬燵に潜って昼間終わらなかった執務の続きを行っていた。
鬼怒「おおーい提督ー!先にお風呂、失礼したよー?」フキフキ
提督「あーい」
鬼怒「ん?元気ないね…?そうしたの?」
提督「今日は色々とあり過ぎてな…疲れた」ハァアー
鬼怒「そっか…んじゃあ、鬼怒が元気にしてあげよっか?」フフン
提督「んーお願いしますー」カリカリ
鬼怒「じゅ…重症だねぇ…それじゃあ」エート
鬼怒「ここで一句!」
提督「はい」カリカリ
鬼怒「クリスマス!」
提督「はい」カリカリ
鬼怒「提督と一緒に暮らします…?」ナンチャッテ
提督「…」ポトッ
鬼怒「あ…あははぁ…面白くない!?無いぃっ!?」アセアセ
提督「鬼怒…」ヒザポンポン
鬼怒「?」ヒザニスワリ
提督 ワシャワシャ
鬼怒「わっ!?何…何なの!?」
提督(はぁあ…癒されますぅ…)ワシャワシャ
鬼怒「!!!?」コンラン
そのまま提督は、暫く鬼怒の頭を撫で続けて一日の疲れを癒していく。
因みに只管撫で続けた結果、鬼怒に「折角乾かしてた髪に変な癖が付いちゃうでしょ!!」と怒られた。
艦!!
投下終了
鬼怒のクリスマスボイスが大天使過ぎて困った。困らない
待機組安価
>>+1~3 待機組に選ばれる艦娘
※大和・ビスマルク・大鳳の3人、以前の安価で選ばれた艦娘以外
※連投と安価内容被りは下にずらします
※埋まらなければこちらで適当に書きます
榛名、浜風、不知火 了解しました
書き溜めたらまた投下致します
多忙につきちょこっとだけ投下
【横須賀第七鎮守府 某所】
艦娘達の寮が立ち並ぶ一角、普段は資材置き場として使われている部屋に複数の人影が見られた。
???「よぉし、一通り揃ったみたいじゃの」
???「2名程遅れてくるようだが、他は揃っている」
???「そんじゃあ、いっちょ始めっかー!!」
???'S「「「第12回 浜風と提督の仲をもっと親密にする会議!!!」」」
ワーワー
パチパチパチ
ヤンヤヤンヤ
???「因みに、今日は待機組として不知火も居るんだよね?」
???「そうみたい。昨日本人から聞いたわ」
???「んじゃ、現地のサポートは不知火に任せても良いんじゃないか?」
???「確かに…不知火さんが一番最初に司令の所に着任したのよね?」
/
ガチャ
\
???「ごめんごめーん!遅れちゃったー」シツレイシマース
???「遅れてすまんなぁ…今はどんな感じなん?」ゴメンナー
???「ああ、わざわざご苦労さん」コッチジャ
???「今は、現地のサポートは不知火に任せても良いのでは?という話をしていた所だ」
???「あー不知火にねぇ…」ウーン
???「おう!不知火じゃあ不安かい?」
???「あはは…あの子、ああ見えて結構しでかすからなぁ」
???「昨晩も「久し振りの待機組です」とか言ってキラキラしてて、結局中々寝付けなかったのよ」クスッ
???「今朝はえらいテンション低くて眠そうにしてたからなぁ…」アァ
???「へー不知火って変わってるんだねー」
???'S(オマエモナー)
???「えっと…それじゃあどうするけぇ?」
???「一応、私達は神通さんとかにそれとなく協力を要請したわ」
???「後は、同じ待機組の榛名さんにも伝えておいたでぇ」
???「成程、各自で仲の良い艦娘に伝えていく訳か」ホウ
???「かぁー、そいつは名案だねっ!」ペシッ
???「でしょ?後は"雷壕(※)"使える子はそれを使った情報共有もいけると思うわ」
???「ほな、うちは何人か心当たりに声掛けていくか」
???「司令には言っちゃダメなんですか?」エーッット
???「もちろんじゃ、絶対たいぎぃ顔されるけぇ」ウーン
???「はい、じゃあ初霜ちゃんや時雨ちゃん達に伝えてきます!」ピョンコ
???「じゃあアタシも一緒に行くー!」ワーイ
???「それじゃ、私は妙高姉さん達に連絡するわ」ゴクリ
???「島風達は任せて!」フンス
※どっかの鎮守府の夕張が作成したL○NEのような艦娘向けアプリ
???「んじゃんじゃぁ、夕雲達はこっちに任せておいて~」ンフフー
???「それじゃあ、こっちは川内さんや那珂ちゃん達に伝えてきまーす!」ハーイ
???「はい、那珂ちゃんさんならきっと協力してくれる筈です」ウン
???「ああ、那珂さん達が味方に付けば心強いな!じゃあ翔鶴さん達空母もこっちでやるか?」ヨッシャ
???「そうね、雷壕を使っておけば任務中の人達も確認できますね」タシカニ
???「一応、不知火にもそれとなくフォローはしとかんとなぁ…」アハハ
???「それは私達でやれば良いわ」
???「うちは、金剛さん達に連絡入れるけぇ…任せとき」ブイ
???「そいじゃ、各自やる事が決まったところで一旦解散じゃ」
???「次の休憩時間にまた集合して、各自の成果を報告し合おう」
???「よっしゃー!皆、気張っていくぞー!!」
???'S「「「「おおーっ!!!」」」」
こうして、提督と浜風の知らない水面下で何やら陰謀が動き始めたのであった。
投下終了
また書き溜めたら投下します
何型の艦娘か分かるかな?
分かった提督には今夜夢で嫁艦とイチャイチャ出来る呪いを掛けておきますね
遅れてごめんなさい
もうちょっと掛かりそうでち
このSSまとめへのコメント
逃走かな?