モバP「目つきがきつめの幼なじみ」 (21)
みく「それじゃPチャン、また明日にゃ」
紗南「ばいばーい」
P「ああ。気をつけて帰るんだぞ」
P「さて、俺も残りの仕事終わらせるか」
P「………」カタカタ
P「………」カタカタ
P「よし終わり! 帰ろう」
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帰り道
P「(今日も疲れたな……一杯飲んでいこうか。ちょうど目の前に居酒屋あるし)」
ガラッ
店員「いらっしゃいませー」
P「(結構混んでるな……でもカウンター席はいくつか空いてるみたいだ)」
P「(適当な席に座ろう)」
店員「お待たせしました。ご注文は」
P「生ひとつと、あと鶏のから揚げ」
店員「かしこまりました!」
P「さて、ビール飲んでストレス発散っと……ん?」
女性「んぅ……」グッタリ
P「(隣の席の人、だいぶできあがってるな。というか飲み過ぎじゃないか?)」
P「(何か嫌なことでもあったのかな)」ジー
女性「………んー?」クルリ
P「(やばっ、視線があった! ジロジロ見てたのバレたか)」
P「す、すみません! だいぶ酔っておられるようだったので、大丈夫かなと思いまして――」
P「……あれ?」
P「(こちらを向いたその人の顔に、えらく見覚えがあるような気がした)」
女性「………あら?」ジーー
P「えっと」
P「もしかして……留美さん?」
留美「……P君?」
P「いや驚いたな。こんなところで留美さんに会えるなんて」
留美「私もよ。……それにしても、随分と恥ずかしい姿を見せてしまったわね」
P「(和久井留美さん。俺と同じ26歳で、そして俺の幼なじみだ)」
P「(幼なじみといっても、漫画でよくあるようないつも一緒という関係ではなかった)」
P「(小さい頃は一緒にたくさん遊んだけれど、小学校、中学校と進むうちに同性の友達と遊ぶ機会が増えていき)」
P「(高校の頃にもなると、あまり会話もしないようになっていった)」
P「(とはいえ別に仲が悪くなったというわけじゃないから、今も普通に話すことができている)」
P「留美さんってしっかりしてる方だから、酒に酔ってぐでんぐでんになってるイメージは湧かなかったな」
留美「そんなことないわ。私だって、お酒をたくさん飲んで気分よくならなきゃやってられない時はあるんだから」
P「……なにかあったのか?」
留美「………」
留美「そうね。酔ってる勢いで、誰かに吐き出したい気分だったの。聞いてくれる?」
P「俺でよければ」
P「(高校卒業以来、ろくに顔も合わせていなかったのに、えらくスムーズに会話が進んでいく。腐っても幼なじみということなんだろうか)」
留美「――というわけよ」
P「そうか。秘書の仕事、辞めちゃったのか」
留美「何年か続けているうちに、閉塞感のようなものを感じてしまって」
留美「あと地味に上司のセクハラが鬱陶しかったから」
P「それはまた……なんというか、大変だったな」
P「でも大丈夫なのか? お金の問題とか」
留美「新しい仕事のあてはいくつかあるから、金銭面は多分大丈夫」
P「さすがにその辺はちゃんと考えてるんだな。しっかりしてるよ」
留美「ありがとう。……でも、新しい仕事にもきちんと取り組めるかどうか」
P「ん?」
留美「もちろん、与えられた仕事には全力で当たるわ。けれど、その職場でも今まで感じていたような物足りなさを覚えた時、私はどうするのかと思って」
P「また辞めたくなっちゃうってことか」
留美「一度その選択をしてしまった以上、また同じように甘えてしまうかもしれないでしょう」
P「まあ、それはそうかもしれない」
P「俺も学生時代、一度授業サボったら癖になったことがある」
留美「それと同レベルに扱われるのは……いえ、根本は同じね」
留美「というか、よく保健室に行っていたのはやっぱり仮病だったのね……」
P「あれ、覚えてたの?」
留美「記憶力には自信があるのよ」
P「物足りなさ、か」
P「具体的にさ。どういう仕事だったら満足できるのか、聞いていいかな」
留美「具体的……は、少し難しいわね。私自身、自分の感情をうまく把握しきれていないから」
留美「ただ……そうね。なにか、私の世界を広げてくれるような……そんな仕事があれば」
留美「はぁ……いい年にもなって、まるで子供みたいな答えね」
P「そんなことないって。大事なことだろ、それ」
P「そうか、世界を広げてくれるような仕事か……」
P「………」
留美「P君?」
P「留美さんって、綺麗な顔してるよな」
留美「……え、どうしたのいきなり」ササッ
P「待って、引かないでくれ。別に口説いてるわけじゃなくてだな。いや、ある意味では口説いてるんだが」
留美「要領を得ないわ。言いたいことがあるならはっきり言いなさい」
P「あー、うん。つまり……はいこれ、俺の名刺」
留美「名刺? ……シンデレラプロダクション?」
P「俺、そこでアイドルのプロデューサーやってるんだ。というわけで、留美さんもどう?」
留美「どうって……確かに秘書としての経験は、プロデューサー業務にある程度活かせると思うけど」
P「ああいや、プロデューサーじゃなくて」
留美「えっ? なら……まさか、私にアイドルをやれと?」
P「そういうことだけど」
留美「……はあ。P君、本気で言ってるのかしら」
P「ああ。俺は結構イケると思ってる」
留美「いくら私がそういった方面に疎いと言っても、26という年齢がアイドルを始めるのに向いていないことくらいはわかるわ」
P「確かに数は少ないけど、世の中には30越えてもアイドルとして頑張っている人だっているんだ。不可能じゃない」
留美「年齢だけじゃないわ。君、私が愛想のいい方じゃないって知っているでしょう」
P「愛想だとかそういうものは、あとからいくらでもついてくる。俺は本質的に留美さんがアイドルに向いているんじゃないかと思った」
留美「本質的って……根拠は?」
P「外見の良さと……あとはプロデューサーとしての俺の勘。結構当たると評判なんだ」
留美「勘って……確かに、そういう仕事では直感が大事になることがあるのは理解できるけれども」
P「ちょうどクール系アイドルが欲しいと思っていたんだ。留美さんならドンピシャだし、俺としてはぜひともお願いしたい」
P「いきなりは決められないと思うから、今度事務所に見学にでも来てくれたらいい」
留美「……本気、なのね」
P「さっきも言ったじゃないか」
留美「………」
留美「とりあえず、見学には行かせてもらうわ」
P「よしっ! ありがとう」
P「さすが、持つべきものは幼なじみだな」
留美「何年か振りに会ったのによく言うわ。昔から、調子のいいところは変わらないのね」
P「ははは、まあな」
今日はここまで
続きは明日の夜に書けたらいいな
またまたPとアイドルが昔なじみ系のSSですが少しでも楽しんでもらえるとうれしいです
後日
P「一通り事務所の説明は終えたわけだけど……どうだった?」
留美「そうね……ここにいる人達の熱意のようなものは、伝わってきたわ」
P「今はできたての小さいプロダクションだけど、これから大きくなっていくから」
留美「……そう」
留美「ねえ。君は、私がアイドルになることに可能性を感じているのよね」
P「ああ。留美さんの言ってた新しい世界ってやつも、きっと開けるんじゃないかと思う」
留美「……確かに、秘書からアイドルに転職なんてすれば、見える景色は相当変わるでしょうね」
留美「思い切った選択をするなら、貯金に余裕がある今のうち、かしら」
P「あ、やっぱり蓄えは結構あるんだ」
留美「趣味らしい趣味がないから、お金ばかり貯まっていくのよ」
留美「……決めたわ。君の誘いに乗ってあげる」
P「おお、本当か!」
留美「半分ヤケだけど……もう半分は、君の言葉を信じることにしたから」
留美「私の第二の人生、P君に預けるわ……」
P「その言い方は無駄に重さを感じるからやめてほしい」
留美「そうかしら」
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