海未「自らを律するために」 (13)

少し危ないライトタルパ系です。
海未視点の物語で廃校問題なしの時間軸です。
鬱成分大さじ五、報われ成分小さじ三です。
クズ未ちゃん苦手な方は引き返すことを勧めます。

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生まれた時からいつも家の縛りに固められてきた。
まずは家が第一。
それが母の言葉だった。
私は毎日の厳しい稽古の中、その言葉に自らを一体化させることに努めた。
小学生になった頃、私は親友と呼べる存在が二人できた。
学校でも、放課後でも、いつも離れられないほど一緒にいた。
だから家で両親といる時だけ、園田の娘を演じ、外では園田海未として振舞ってきた。
そんな私が遂に親友と離れざるを得ない状況に陥った。
高校を卒業した私達は、それぞれ別々の道を歩き始めた。
南ことりは服飾の勉強に海外へ。
高坂穂乃果は和菓子の修行にと日本中のありとあらゆる工房へ出向きに行った。
私はと言うと、一人地元に残り、大学に通いつつ幼少の頃から続けていた稽古をつけてもらっている。
最近、どうも思うように体が動いている気がしない。
そんな違和感を覚えたのは、二人が夢に向かう事を告げた日からだった。

ひとつ補足を忘れてました。
大学時代という設定です。



大学ではそれなりに単位を取り、人と関わっては離れた。
あの二人と同じ様な感覚を覚えさせる人が居ないか、そんな馬鹿な考えはとっくの昔、一年の頃から捨てていた。
誰の心にも入り込もうという勇気はなかったし、誰も二人のいた場所には入れさせたくはなかった。
孤独感に人は苛まれ、自らの命を絶つ事もあると心理学の講義の際に聴き、自死を選ぶ程自分は気が滅入っていないと思った。
二年時に初めて発表形式の授業があった。
私の発表は夏休み後の初回でやる事を告げられ、早めに取り掛かった。
結果として、春学期中に備えは出来、私は何の心配事もなく、時折来る二人の親友の手紙に胸を躍らせた。
世の中、思った様に事が進む事はない。
夏休みの終わり頃、台風が襲い、近所で落雷があった。
特に問題は無かった。あくまで物理的には。
私のパソコンは、全てのデータが消えた。
私はその日から何日も徹夜で発表の準備を再構成した。
誰かと関わっている場合ではない。
親友の手紙を見なくなった。
気がつくと、親友の応援の口真似をする様になっていた。



発表は結局原案の八割の完成で臨むことになった。
客員講師の先生は、もう少し抑揚のある内容だとより良くなると言っていた。
発表が終わった後、私の中に親友の二人がいつの間にか一つの存在として存在していることに気がついた。
高坂穂乃果の、南ことりの記憶が混淆し、二人が一人の人物としてその存在が見える様になった。
最初は違和感しか無かった。
勿論何も言わないし、ただ私を見ているだけだった。
でも、その目には敵意はなく、寧ろ何処か二人の面影を映すその存在に私は話しかけるようになっていた。
でも、最初は話せないでいた様で、私が何を言うか予想しながら話した。

海未「今日は少し寒いですね。」

???「もうすぐ冬だもんね〜。」

海未「またこたつで寝ないでくださいね。風邪をひかれたら困ります。」

こんなとりとめのない会話から始まった。
冬が過ぎ、私は彼女と一緒に三年になった。



私が属するゼミには人が十人いた。
また必要以上に馴れ合いを強要してきそうな気がして、私はあえて周りから距離を置いた。
ゼミの初回の発表で私は失敗した。
二年時のことを思い出して不眠に陥っていたことだけでなく、彼女と時間を極力過ごしていることが癒しであった私には、あまり学業に専念することができ無かった。
発表が終わった後、私は彼女と一緒に大学のそばの寺の階段で話をした。
彼女は私を励まそうと繰り返しファイトだよっ‼といい続けた。
私は平気ですよ、大丈夫です。と何ら救いにもならない言葉を吐き続けた。
珍しく帰りが遅かった私は、とりあえず友達と一緒に勉強していたと親に嘘をついた。
次第に気が滅入る度にこの様なことを繰り返し始めた。
後期のゼミの発表もまた失敗して帰りが遅くなった。



四年に上がる前に親友の二人が一時的に戻ってきた。
三年も会わなければ人は大きく変わるものだ。
高坂穂乃果はサイドテールを無くし、以前よりもしっかりしていた。
南ことりは前よりも素敵に、そして頼り甲斐のありそうな魅力的な女性になっていた。
私は服もあまり買いに行かないこともあり、二人は内心変わっていないなと内心ほくそ笑んでいるように見えた。
二人が帰った後、私はまた彼女と一緒に話した。
彼女はいつも私を励まし、肯定してくれて、時には律してくれる。
不在だった二人とは大違いだ。
二人はまた夢に旅立って、私はまた置いていかれた。
大学最後の年が始まった。



私はいつの間にやら心が弱くなっていたみたいだ。
そんなことをネットサーフィンを見ながら思った。
初めのうちはまとめサイトのくだらないスレ巡りを繰り返していた。
正直言って大学などもうどうでもよかった。
自分は自分の身を律するために家にこもりがちになった。
たまに自嘲気味に箱籠もり娘などと呟いては彼女にそうだね!!と言われ続けた。
私はもう現状に満足するのみだった。
今日もまた母の稽古をする時間になった。
部屋を出る際、彼女がファイトだよっ!!と声をかけてくれた。
私は元気を貰って部屋から足を一歩出した。

終:一

久々に見た海未ちゃんはどこか元気がなさそうだった。
ことりちゃんも同じことを考えていたようで、心配していたみたいだった。

穂乃果「ねぇ、私はどうすればいいかな?」

???「全く穂乃果は。良いですか、あなたの為すべきことをなさい。でも無理は禁物ですからね。」

穂乃果「はぁーい。でもさ、折角ことりちゃんが居るんだから一緒にどこか行ってみたほうがいいよね。」

???「そ、それはそうですけど...。」

穂乃果「あと少しで私も師匠のところに戻らなきゃだし、時間はないもん。だからさ。」

???「...そうですね。あまり私を不安にさせないであげてくださいね。」

穂乃果「うん!!」

どこへ行こうか、私は彼女とプランを立て始めた。

終:二

???「今日も可愛かったですね、私たちは。」ニッコリ

ことり「うんっ!!三年ぶりだもん、やっぱり最初のうちは見かけで驚くけどみんな変わってなくてなんだか嬉しかったよ。」

???「変わるわけないじゃないですか。だっていつも一緒ね!と言ったのはあなたなんですから。」

ことり「そうだよね...。」

ピロリンッ!

ことり「あ、先生からだ!」

???「良い知らせですね。流石ことりです!!このままの調子でファイト!!」

ことり「うんっ!!」

多分こうなるんじゃないかと思った次第です。
面白くはないでしょうし、割と上げ下げがないですがまぁ...。
この年になってこんな存在がいると思い起こした時に、結構心に来るものもありますが、なんだかんだで私は元気です。

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