咲「私たちってセフレなんですよね?」久「!?」 (133)
咲(ん…、あれ?もう朝…)
特大の頭痛に見舞われ、意識が覚醒してくる。
呻き声をあげて咲が薄らと目を開けると、視界に飛び込んできたのは肌色。
咲「…えっ」
焦りと共に意識が一気に浮上した。
もう眠けも頭痛もどこへやら。
意識が完全に目覚めると、自分が誰かに抱かれて眠っていたことに気付いた。
しかもお互い裸で。
咲(―――え?どういうこと?)
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心臓が激しくばくばくと音を立てる。
とりあえず落ち着こうと静かに深呼吸をする。
落ち着いてもこの状況を打開できるとは思えないが。
相手の顔を確認したくとも、咲を抱き込むように寝ているため起き上がらないと相手の顔が見えない。
だが起き上がるという事は、相手を起こしてしまう可能性もあるわけで―――。
まだ心の整理が追いついていないためそれはご遠慮願いたい。
どうしてこうなったのか。
もはや悪い夢だと思いたい。
もうここはこっそり起き上がって、相手が目覚める前に退散、もとい逃亡するか。
どうしようか悶々と考えていた咲は、自分を抱き込んでいる相手の寝息が途絶えた事に気づいてなかった。
?「あら、起きたの?」
聞き覚えのある声だ。
はっとして反射的に顔を上げた。
咲「………ぶ、ちょ…」
呟いた自分の声に驚く。
酷く掠れていて、まるで風邪を引いて喉を傷めたときの感覚に似ている。
そのままケホケホと軽く咳き込むと、久が労わるように咲の背中をゆっくりと撫でた。
久「咲、無理して喋ろうとしなくていいわ」
咲「…っ、は、い…」
久「水でも持ってきましょうか?」
咲「……お願いします…」
分かったと言って、ベッドから起き上がった久は言うまでもなく全裸である。
咲は咄嗟に顔を伏せて視線を逸らす。
久が笑った気配を感じたが、とてもではないが正視できない。
高校時代は合宿で一緒にお風呂にだって入ったことがある。
互いの裸なんて見慣れているはずである。
だが、今の咲は久の裸を正視できない。
久は床に落ちている自身の服を適当に着ると、寝室から出て行く。
数分も経たず、戻ってきた久の手には水の入ったコップがあった。
久「はい、咲」
目の前に差し出され、それを受け取る。
「ありがとうございます」と小さな声で礼を述べて、コップの水を飲み干した。
冷たい水が痛んだ喉に心地よかった。
咲が飲み干したのを見ると、久が咲の手からコップを取り上げる。
久「お腹空いてるでしょう?私が食事を作っておくから、その間にシャワーを浴びてきなさい」
着替えとかはこっちで用意しておくから、と久が咲の手を軽く引く。
促されてベッドから立ち上がるも膝に力が入らず、そのまま床に崩れ落ちそうになったとこを久に抱きとめられた。
咲「あ、りがとうございます…」
久「身体は大丈夫?」
咲「えっと…多分…大丈夫、です」
久「…じゃ、なさそうね」
もう少し休んでいていいから。
そう言って咲をもう一度ベッドに寝かせて久は部屋から出て行った。
倦怠感が身体を包む。腰から下がやけに重かった。
それから、人に言えないような場所にぴりっとした痺れも感じた。
身体にはところどころ鬱血の痕――キスマークがあった。
内ももの際どい部分にまで。
それを見た瞬間、思わずうわぁ…と呟き、顔を赤面させる。
これを付けたのは久だろうか?
咲がこんなに狼狽えて動揺しているのに、久は至って普通に見えた。
いや、ちょっといつもより優しい――のだろうか。
雰囲気がひどく柔らかになっていたような…。
まるで恋人に接するときのような…。
咲「わ、私ってば何考えてるのっ?」
そこまで考えて、咲は悶絶する。
すっかり気恥ずかしくなった咲は思わず頭から布団を被りなおした。
*****
高校を卒業し、社会人になった後も、咲達麻雀部メンバーは年に数度は集まる。
飲み始めて数時間も経つと、大分酔いが回ってきたようで、咲はふらふらと席を立った。
夜風に当たって酔いを醒ましているところに、久がやってきた。
久「咲、具合が悪いの?」
咲「部長…いえ竹井先輩、大丈夫です」
久「そう?―――かなり顔が赤いわね。もう今日は帰りなさい」
咲「…え?でも、みんなに悪いですし…」
久「私から説明しておくから。ね?」
そう言って久は店の中に戻っていった。
ほどなくスマホを片手に久が再び店から出てくる。
久「咲、今タクシーを呼んだから」
咲はありがとうございます、と小さく頭を下げる。
久が呼んだタクシーはそれほど待たずにやってきた。
咲がそのタクシーに乗り込み、ドアを閉めようとすると久の手がそれを遮った。
咲「…先輩?」
久「すみません、出してください」
咲の疑問の声には応えず、久も一緒に乗り込み、運転手に行き先を告げる。
その行き先が咲のいつも使っている駅と反対方向であったため、咲の疑問はなお一層深まった。
咲「…あの、先輩…?私の使っている駅は反対方向なんですけど…」
久「咲をひとりで帰らせるわけないでしょう」
咲「大丈夫ですよ、もう社会人ですし…」
久「…咲、自覚ないのかもしれないけど、かなり酔いが回ってるでしょ。泥酔一歩手前よ」
咲「……」
久「そんな状態で帰らせるわけにはいかないわ」
何かあったらどうするつもりなんだと言う久。
咲「えーと…じゃあ、どこへ…?」
久「私の家よ」
咲「…先輩の?」
久「今日はもう私の家に泊まりなさい。明日の朝に帰ればいいでしょ」
咲「でも、先輩の家のご迷惑になるんじゃ…」
久「一人暮らしだから大丈夫よ」
久はそう言うが、本当に大丈夫なのか。
少々の不安を抱えつつも、タクシーは久の家に走り続けた。
最初におかしいと考えるべきだったのだ。
そうすれば、自分と久が間違えるような事態にも陥らなかったはず。
久の家のマンションに着くと、久は一度「コンビニに行ってくるから待ってて」と部屋を出て行った。
どこか落ち着かず、居心地悪く思いながらも大人しく久の帰りを待った。
戻ってきた久はコンビニの袋を携えていた。
袋の中には酒の缶やら、つまみ、軽食が入っていた。
久「少し飲み足りなかったから」
咲が袋を不思議そうに覗き込んでいるのを見て、久が答えた。
咲「…私のせいですね、すみません」
久「別に咲のせいじゃないわよ。それにこれも部長の務めだからね」
咲「何年前の話ですか」
久「あら、ほんの数年前よ」
咲はこっち、と袋からミネラルウォーターのペットボトルを渡された。
やっぱり先輩はいつまでたっても頼りになる先輩だなぁ。
なんて思っていた咲の考えは、数時間後に崩壊することになるのだった。
続きます。次回は久咲エロっす
*****
咲と久が結合している部分から、くちゅくちゅと濡れたいやらしい水音が聞こえる。
久の熱は熱くて、爛れた媚肉に何度も擦られて高い嬌声を上げ続けた。
咲「…あっ、…あ、ぁん…ん…」
久「気持ちいい…?」
咲「あ、あん…」
久「言葉も出せないほどいいの?」
一度、久が二人の結合していた秘部を離す。
すると咲がもの惜しげに吐息を漏らした。
その瞬間、また秘部をくっ付け勢いよく擦られて、体中に電流が流れたような衝撃が走った。
咲「あぁぁぁ…っ!」
急激に絶頂へ追い上げられて、咲の体がびくんと跳ねた。
そんな咲の様子にあてられ、久も艶やかな呻きを漏らした。
久が咲の耳朶をいやらしく舐めたり、甘噛みする。
ぴちゃぴちゃと羞恥心を煽るように淫猥な水音を耳元でさせながら、咲の全身にねっとりした愛撫を施す。
痺れるような快感が腰を中心に全身に広がり、咲の身体を支配していた。
咲「あああああ…っ!」
絶頂し、余韻に浸る咲の媚肉がひくひくといやらしく痙攣する。
久「咲のここはとてもきれいなピンク色ね」
咲「…ぁ…ん…言わないで…」
久「どうして?とても可愛らしいわよ」
久の綺麗な指先がつーっと咲の入り口をなぞった。
ゆっくりと、咲に分かるように。
咲「だめぇ…!」
そんな刺激さえびくびくと身体が反応して痙攣する。
労わるように、そっと撫でる久の手の動きさえ感じ切ってしまう。
久「気持ちよさそうね?」
咲「…ぅ…ん…」
久「気持ちいでしょう?」
耳元で甘やかに囁く久の濡れた声に逆らえず、咲はただひたすら頭を縦に振る。
咲「…きもち…ぃ…」
久「もう一度言って」
咲「…きもちいい…です…」
言わされていることにさえ快感を感じている。
自分のはしたない身体に羞恥心で全身が薔薇色に染まった。
久「ここも、気持ちいいわよね?」
久の指が咲の入り口から乳房へと移った。
そこを何度も抓んだり、引っ張ったりしながら反対側の乳首を口に含んだ。
咲「あっ…や…!」
久「そんなに反応しておいて、嫌?」
啼いて喜んでいるくせに。
無意識に腰を久の身体に擦り付けている咲の身体を揶揄する。
何度も吸い付いたり、噛んでみたりを繰り返すと、息も絶え絶えにひんひんと啼き出す。
幾度となく続く快感に秘部から愛液がだらだら漏れ出す。
久「私が欲しい?」
陶酔して落としきったのを見た久が咲に尋ねる。
咲の瞳に欲情の炎が揺らめいているのを見て久は強かに笑う。
久「…どう?」
咲「――欲しいです」
久「また、抱いてほしい?」
従順にこくこくと頷く咲はもはや我慢しきれないのか、早く早くと腰を久に擦り付ける。
咲「抱いてください…」
久「いいわ。抱いてあげる、咲…」
久は咲の腰を掴んで支えると、良い子と褒めるようにキスをひとつした。
咲が舌を伸ばしておねだりすると、望むままに久の舌が咲の口腔を犯す。
二人で獣のように舌を絡めあって、お互いの唾液が混ざり合い、顎を伝って零れるのさえ気にする余裕はない。
キスが終わると、久の秘部が咲の秘部にぴたりと合わさった。
久「お望みどおり、あげるわ」
咲「ああああ…っ!」
勢いよく擦られた瞬間、咲は高い嬌声を上げた。
咄嗟に逃げを打つ腰を掴まれて、更に強く擦られる。
ぽろぽろと過ぎるほどの快感に悦楽と恐怖を感じてしまう。
息を求めてぱくぱくと口を開く咲の口唇に、久が指先をそっと沿わす。
口端から垂れている咲の一筋の涎を拭い取って、久はそれを自身の口へ入れた。
久「……今日は朝日が昇るまで寝れると思わないでね、咲」
何を言ったのか、咲の耳には届かなかった。
激しい律動とともに快楽の波に呑まれて、やがて意識が途切れた。
続きます。次回は1週間ほど空くかも。
>>1はもしかして咲の地球儀の人か!?
違ってたらすまん
>>1はもしかして咲の地球儀の人?
違ってたらごめん
*****
咲(うわぁ…!うわぁ…!うわぁ…!!)
浴室でシャワーを浴びながら、昨夜の自分の痴態を思い出す。
酔った勢いで自分から誘ったのか、それとも久の方から?
詳細は不明だが、久と寝たことは確かだ。
どうして忘れ去っていたのか。
頭が冴えてきて、ようやく昨夜の全容を思い出した咲。
羞恥心のあまり叫び出したい気持ちに駆られるも、
そんなことすればきっと久がすっ飛んでくるに違いない。
そして、理由を問われたとしても言えるわけがない。
久とのセックスを思い出して、恥ずかしさのあまり叫んでしまいましたなんて。
そんな告白するくらいなら、今ここで死んでしまった方がマシだ。
でも、いつまでもここにいるわけにもいかない。
しかし出て行く覚悟も決められない。
思い出した今となっては、どんな顔で久に会えばいいのか。
このまま煙のように消えられたらいいのに。
久「…き、咲?」
自分の思考に耽っていた咲は久の声に気付かなかった。
ドアをどんどんと叩く音がして、ようやく背後のドアに視線を向ける。
磨りガラスの向こうから久の影が見えた。
久「咲、入ってもいい?」
咲「ま、待ってください…!」
身体を隠そうにも、裸で浴室にいるのだ。
入って来られては全裸を見られてしまう。
久「…入るわよ」
久がドアノブに手を掛けたのが分かった咲は、思わず取っ手を握りしめる。
咲「だ、大丈夫ですから!私いま、裸なので、その……」
久「――昨日、全部見たのに何を今更」
咲の頬が朱に染まる。
咄嗟に言い返せなくて、小さな唸り声を出すしかない。
久「…シャワーが終わったらリビングにいらっしゃい。朝食にしましょう」
先に折れたのは久の方だった。
ドアから離れて磨りガラスに映る人影がなくなってほっと息をついた。
シャワーを終えた咲は久が用意した朝食を食べて、自宅へと帰った。
あの後、何を話したかよく覚えていない。
とにかく緊張していて、出された食事を機械的に喉に押し込んでいった。
あれほど気づまりする食事は初めてだった。
途中の電車で久の家にスマホを忘れたことに気付いたが、取りに行く勇気はなかった。
咲はあまりスマホを使用しないので、なくても特に不便はない。
メールは他愛のない話ばかりであるし、緊急性のある用件は自宅の固定電話にかかるからだ。
気持ちの整理がついてから、久の家に取りに行こう。
咲はそう考えていた。
*****
咲「今日は雨か…」
雨音で目を覚ました咲はカーテンを開けた。
バケツを引っくり返したような土砂降りの雨だった。
台風が近づいてる為、咲の職場は休日になった。
今日は家で大人しくしていよう。
咲は読みかけの本を手にしてテレビをつける。
どこも台風のせいで交通機関が麻痺したニュースでいっぱいであった。
ピンポーン。
インターホンの音に、咲は玄関へと顔を向けた。
今日は来客の予定はないし、宅配便も特に頼んだ覚えはない。
首を傾げながらも玄関へと向かい、ドアを開けた。
咲「―――竹井先輩」
ぽたぽたと濡れた前髪から滴が落ちる。
全身ずぶ濡れで、手にしている傘はどうやら途中で壊れてしまったらしい。
久「こんにちは、咲」
咲「…な、何をしてるんですか!」
久「酷い言い草ね。せっかく忘れ物を届けてあげたのに」
咲「…忘れ物?」
久「コレ」
差し出された物は、先週咲が久の家に置き忘れていったスマホだった。
咲「これを届けに?」
久「だって、いつまで待っても来ないから」
咲「電話すればいいでしょう!」
久「したけど、咲が出てこなかったから」
咲「…それなら留守録に…」
久「直接言いたかったの。留守録だけじゃ相手が聞いたか聞いてないか分からないでしょ」
だから、直接来たと言う久。
咲にスマホを握らせると、そのまま背を向けて踵を返す。
咲「ま、待ってください…!」
咄嗟に立ち去る久の腕を掴んだ。
久「なに?」
咲「どうやって帰るつもりですか?」
久「歩いて帰れるとでも思ってるの?」
恐らく、電車で帰ると言いたいのだろう。それは出来ない。
咲「台風で交通機関が全部ストップしているようですよ」
久「仕方ないわ。動くまでどこかで時間を潰すしかないわね」
咲「…下手したら今日はもう動かないかもしれないですよ」
スマホを届けてもらって、このまま帰らせると言うのも―――。
しかも外は台風のせいで大荒れだ。
この天気の中、久を帰らせるわけにはいかない―――。
咲「あの、先輩」
久「何?」
咲「今日は私の家に泊まってください」
勢いで言ってしまった。
久が何かを喋る前に、咲の部屋に引っ張り込む。
久は全身ずぶ濡れだった。このままでは身体を冷やして風邪を引いてしまう。
咲「とにかく上がってください」
久「……お邪魔するわ」
何か言いたそうに口を開いたが、結局言わないことに決めたのか咲の後に大人しくついてきた。
久をソファに座らせて、咲はタオルを取りに行く。
咲「これで身体を拭いてください」
久「ありがと」
咲「私はお湯を沸かしてきますから」
久「ええ」
咲が差し出したタオルをぼんやりと眺めるばかりで、久は動こうとしない。
焦れた咲は、久の濡れた頭をごしごしと拭きだす。
久はされるがままで動こうとしなかった。
ある程度、濡れた腕や肩を拭き終えて、久の手の中にタオルを握らせる。
咲「残りはちゃんと自分で拭いてくださいね」
咲は立ち上がって浴室へと向かった。
浴槽にお湯が溜まるまで時間はかかるが、待ってもらうしかない。
着替えはどうしようか。
買ったばかりのおろしていない服があるから、それを着てもらおう。
そんなことを考えていた咲は蛇口から出てくる水音に邪魔されて、背後のドアが開いたことに気付かなかった。
すっと横から腕が伸びた。
あっと思う間もなく背後から抱きしめられて身動きが出来なくなる。
咲「……せ、んぱい…」
驚きで声が裏返った。
咲が久の名を呼ぶとますます強く抱き締めてくる。
続きます。
微かな久の吐息が耳元から聞こえてきて、息が苦しくなる。
咲「……あの、先輩…」
久「咲…」
咲「は、離れてくれませんか…?」
久は小さく首を横に振った。
NOと言っているのだろう。
絶対離さないとでも言うように、久は咲を抱きしめる腕に力を込めてくる。
咲「あの、苦しいです…離して、ください…」
久「――――咲」
これ以上ないほどお互いの身体が密着していた。
久の濡れたシャツの感触が伝わってくる。
ふとあの夜の情事が頭をよぎり、頬が熱くなる。
濡れた久の服から染みてきた水で、咲の背中もじんわりと冷たくなった。
咲「冷たいです、先輩…」
久「じゃあ咲が温めてよ」
甘く掠れた声で言われた言葉を理解する前に、久は咲の身体をぐるりと回して正面を向かせる。
久の顔が間近にあった。
咲が驚きの声を上げる前に、久が咲の唇を塞いだ。
咲「……んぅ!」
なんとか逃れようとするも、久はどんどん身体を咲の方に傾けてくる。
後ろに傾いていく身体を支える為に、久を退けようと彼女の肩を掴んでいた手で浴槽の縁を掴んだ。
顔を横に振って逃げようとしても、久が両手で咲の頬を掴んでしまう。
こうされては逃げられない。
咲「……はぁっ」
酸欠になりそうだ。
一瞬の隙をついて唇を離し、大きく息を吸い込んだ。
だが、それを待っていたとばかりにもう一度唇を重ねられる。
息継ぎの為に口を開いたのが仇となった。
易々と彼女の舌の侵入を許してしまった。
歯列をなぞって、咲の口内を久の舌が蹂躙する。
溶け合うほど舌を絡ませて、重なり合う口唇の隙間から、咲のか久のか分からない唾液が顎を伝って零れていく。
咲「ふぅっ……んっ!」
キスが深くなっていくごとに背中にぞくぞくとした感触が走っていく。
咲は力が抜けて、ずるずると床にしゃがみ込んだ。
浴槽を背にして、久と咲のキスは続いていた。
もう抵抗する意思はなかった。
そのうち背中に濡れた感触が伝わって、気付けば浴槽から溢れてしまった湯が排水溝へと流れていった。
久「……咲も濡れてしまったわね」
咲「はぁ、はぁっ…誰のせいですか…」
久「…一緒に入る?」
久と顔を見合わせる。
久の視線が「欲しい」と咲を見ていた。
濡れた瞳が狂おしいほどの熱を伝えていた。
その視線にほだされてしまったのか。
咲「―――いいですよ」
きっと正気に戻ったらまた後悔するに違いない。
咲「……ぁ、あーっ…!だめ…!」
久「何がだめなの?」
咲「お湯が…入ってきちゃ…!」
湯の中で久の指が咲の内部を抉る。
じゅぷじゅぶと指が膣内を行き来する感覚と粘ついた水音。
止めどなく涙が零れ落ちて、水面に落ちる。
咲「……もっと…っ」
久「もっと…なに?」
意地の悪い顔を見せる久に、どうしようもなく快感を煽られる咲。
咲「もっと…せんぱいをください…」
久「そんなこと言って、どうなっても知らないわよ」
久の頭を引き寄せて自分からキスをする。
咲の中に埋まっている指が、さらに激しく蠢いた。
咲「…ふ……んん……きもちいいです、せんぱい」
久が嬉しそうに笑うのを見て、温かいものが胸に広がっていくのを感じた。
続きます。
*****
その後、咲達は度々性交渉を持った。
咲の家で、久の家で、車の中で、公共のトイレでもセックスをした。
嫌だと拒んでも、最後には久の思うままに身体は従順になってしまう。
でもそれを悪く思っていない自分はどこか馬鹿になっているに違いない。
そんな関係を続けてきたある日、ふと久にとって自分は何なのだろうと思ってしまった。
思って、すぐに気付かなければ良かったと思った。
きっと久にとって、咲は後腐れのない、欲求不満を解消できる都合の良い相手なのだろう。
ベッドの上のお友達、俗にいうセフレというやつだ。
女同士だから妊娠もしないし、避妊の手間も省けるちょうど良い相手。
だとしたら、久の目は節穴だ。
だってこの事実に気付いた咲の胸は軋むほど痛みを感じている。
苦しい。どうして気付いちゃったんだろう。
いつの間にか、久を愛していたことに。
熱いものが込み上げてきて、目の端から零れ落ちた。
――――やめよう。
もうこんな関係。続けて何がある?
ゲームオーバー、ジ・エンド。
言い方なんてどうでもいい。ここが行き止りだ。
先のない未来をただ闇雲に進むよりも、堅実な道を探す選択をしよう。
久と関係を切って、泣いて苦しんで、悩んで、新しい恋をして、結婚をして。
そして平凡な道を歩んでいこう。
それがいい。今からでも遅くない。
今日、全部終わらせよう。
久との情事も、自分の想いも。
――――終わらせるはず、だったのだけれども。
咲(―――あれ?何かおかしなこと言ったのかな、私?)
久はうつ伏せになってぴくりともしなくなった。
咲もなにも言い出せずに、沈黙の時間が続く。
咲『もうこんな関係、終わりにしましょう』
久『………どういうつもり?咲』
咲『セフレなんてやめて、真っ当な恋人を作った方がいいと言っただけです。先輩も私も』
久『―――ちょっと待って』
いつものセックスが終わった後、咲は久にもう終わりにしようと告げた。
久は枕に顔を埋めて動かない。
咲(まさか、この局面で寝てないよね……?)
控えめに久の名を呼ぶとようやく顔を上げる。
こちらを穿つような視線で観察するように見つめてくる。
久「……咲、座って」
久はベッドから起き上がって、その場に正座した。
早くしろというように久が指で咲の座る場所を叩く。
咲は大人しく久の言うとおりに座った。
久「ねえ、咲」
咲「はい」
久「確認したいことがあるんだけど。私の質問に応えてくれない?」
咲「……分かりました」
何を言われるのか少々身構える。
久「まず、あなたは私との関係を終わりにしたいと言ったわね」
咲「ええ、言いました」
久「……咲は私をセフレだと?」
咲「……世間一般ではそう呼ぶのかと」
何でだろう。久の背後に黒い靄が見えるような。
久は怒っているのか落ち込んでいるのかよく分からない顔をしていた。
久「……世間一般の基準で言うなら、私と咲は『恋人』同士のはずなんだけど?」
ぼそりと、この上なく心外だとばかりに言った言葉に咲は目を丸くした。
咲「………は?………え?」
久「何、その反応は」
咲「……えーっと。いつから私達は恋人同士になったんでしょうか?」
久「最初からよ」
最初?最初ってどこから?
久「……あの日、飲み会の後で、咲が私の家に泊まった日よ」
続きます。
咲の疑問がそのまま顔に出ていたのだろう。
むすりと不貞腐れた顔で応える久。
貝のように口を閉ざす咲に、久が不穏な気配を漂わせる。
久「……本当に覚えてないの?」
久にとって、咲は“特別”な人間だった。
自分の夢を叶えてくれた人物。
好きになるのに時間はかからなかった。
だが、咲の “ 特別”は久ではなかった。
彼女の“特別”は、親友であり好敵手でもある和だった。
それに言い得ぬような苦味を感じていた。
後にそれが嫉妬という感情だと気づいてしまった。
次第に咲への感情が、本来であれば異性に向く感情であることを認めざるを得なくなった。
でも、それが叶うはずがないことは自身が一番よく分かっていた。
咲が自分に恋愛感情なんて抱いていないことは一目瞭然だ。
久の隣で屈託なく笑う咲に、どうしようもないほどの苛立ちを抱いた。
―――私の気持ちも知らないで。
もういっそ、この生温い関係を壊してしまおうか。
滅茶苦茶に壊して、壊してしまえば、きっと咲は久を憎むだろう。
例えベクトルは違っても、自分が咲を想う時間と同じだけ、咲も自分を忘れない。
それはとても甘美な誘惑のように思えた。
理由をつけて咲を自分の家に招き入れた。
ここまでは計算通りだった。
ちょっとコンビニへ行くと言って、家を出る。
ビールやチューハイなどの酒の缶、つまみになるものや、咲が食べれるようなおにぎりやサンドイッチをカゴに放り込む。
自分は今夜、最低のことをしようとしている。
それでも、咲がこの日を絶対に忘れないように、自分のことをいつまでも覚えていてくれるように。
失礼、飯食ってました。投下続けます
久が家に帰ると、不安げな顔をして待っていた咲がいた。
初めての家にひとりで残されて心細かったのだろう。
久を見てほっと安堵の息をついた。
手から提げていたコンビニ袋を咲に手渡す。
酒の缶を開けて飲む。
緊張からか、酷く喉が渇いていた。
咲も袋の中を漁って、中からサンドイッチを取り出して食べ始める。
咀嚼するたびに動く口元や、飲み込む時に上下する喉から目が離せない。
久の邪な視線にも気づかずに、咲は呑気にサンドイッチを食べ続ける。
久「――シャワー浴びてくるわ」
適当なところで切り上げて浴室に向かう。
頭から冷たい水を被って、火照った身体を冷やした。
―――今日で終わらせる。自分のこの澱んで濁りきった欲望も想いも。
久(……ああ、泣いてしまったのね。咲)
無理もない。
先輩だと思っていた人物に強姦されて、心が痛まないわけがない。
許してくれとは言わない。
許さなくていい。
そうして自分をずっと覚えていてくれれば。
指でそっと咲の涙を拭った。
咲「……なんで先輩が泣いてるんですか」
掠れきった声で言われた言葉に瞠目する。
自分の目元を触ると、確かにそこは濡れていた。
一度自覚してしまえば止めどなく涙が溢れた。
久「……なんででしょうね」
咲「本当に泣きたいのは私の方ですよ」
久「そうね。でも、私は謝らないわ」
咲「最低ですね」
久「だって、後悔なんてしてないから」
ずっとずっと欲しかった咲を手に入れたのだ。
後悔なんてするわけない。
なのに、心は張り裂けそうな痛みを訴えていた。
どうしてこんなに苦しくて哀しいのか。
喜んでいいはずなのに、こんなにも辛い。
咲「……泣かないでください、先輩」
久「咲は優しいわね。自分にこんなことする相手の心配までして」
咲「ええ、正直そこは見損ないました」
そうだろう。
こちらから咲の信頼をぶち壊すような真似をしておいて、咲の言葉に傷つく資格なんて自分にはない。
咲「……でも、先輩はふざけてこんな事するような人間じゃないでしょう?」
咲の手がそっと久の頬に添えられる。
久は無意識のうちに、その手の上に自分の手を重ねた。
咲「言ってください。私はまだ、先輩からちゃんとした言葉を受け取っていません」
言えない。言えるわけがない。
そう思い続けていた言葉が、咲の一言でするりと口から出てしまった。
久「――好き。好きよ、咲」
譫言のように好きという言葉を繰り返す。
なんて陳腐でありふれた言葉なんだろう。
いざ咲への想いを言葉にしようとすると、こんな平凡な言葉しか出なかった。
そんな情けない自分にまた涙が込み上げてくる。
咲に縋り付くように抱いて、好きだと繰り返す。
そんな久の姿は、咲には救いを求めているようにしか見えなかった。
咲「……先輩は頭が良いのに、馬鹿ですね」
久「なに、その矛盾した言葉……」
咲「だってそうじゃないですか」
また「馬鹿ですね」と言ったのが聞こえてきて、久は「怒るわよ」と力なく言葉を返した。
咲「私だって、先輩のことが好きですよ」
咲の言葉が聞こえてきた瞬間、久の頭は真っ白になった。
久「……それは同情?そんなに私が可哀想?」
咲「同情のつもりはありません」
久「和のことは?」
咲「和ちゃんとは友情以上の感情はありませんよ」
久「……ねえ」
咲「はい」
久「その……いつから、私を好きだったわけ?」
ずっと咲を見続けていたくせに、そんな大事なことに気付かないなんて間抜けすぎる。
咲「逆に先輩に聞きますけど、いつから私が好きだったんですか?」
その質問に答えられずに押し黙ると、咲はふっと暖かい笑みを浮かべた。
咲「私も先輩と同じ気持ちですよ」
久「……まだ酔いが醒めてないだけじゃないの?」
咲「いいえ」
久「言っておくけど、後から『間違いでした』なんて前言撤回しても、忘れてなんかあげないわよ」
咲「確かにまだ酔ってますけど、忘れなくていいですよ」
久「……この酔っ払い」
咲「素面では言えないこともありますよ」
久は咲と顔を見合わせ、互いの手を握り合わせた。
久「ごめん、もう一度やり直させて」
咲「どうぞ」
先程までの獣のように貪る様な荒々しい口づけではなく。
そっと優しく羽を合わせるようなキスをした。
久「―――咲、好きよ」
咲「―――私も好きです」
*****
久「……………………」
咲「……………………」
咲(わ、私……なんでそんな大事なことを忘れてるのっ!?)
まさかそんなドラマチックな展開があったとは夢にも思わなかった。
久「………覚えてないの?」
咲「いえっ、覚えていました!ばっちりしっかりと」
久の不気味なほど輝かしい笑みに、反射的に答えてしまった。
久「でも、私をセフレだって―――」
咲「いえ何か寝ぼけてました。勘違いしてました。ごめんなさい。それは全力で忘れてください」
久「……忘れていたのよね?」
咲「いえ、ちゃんと覚えてます。大丈夫です。私と先輩は恋人同士でした」
久「忘れていたのよね?」
咲「うっかりしてました。本当にごめんなさい。大丈夫です、さっきのは失言で―――」
久「 忘 れ て い た の よ ね ? 」
咲「………………」
久「………………」
咲「………………ごめんなさい」
無言の攻防が続くも、久の不気味な笑顔の圧力に咲はあっさりと白旗を上げた。
久「私の純情を弄んでくれたわけね、咲は」
咲「先輩が『純情』なんて片腹痛いです」
久「咲?そんなこと言って良いと思ってるの?」
久の眼光が咲を貫いた。
久「もう二度と忘れないように、しっかり、覚えこませておくわね」
―――――その身体に。
……嗚呼。明日が休日で良かった。
久の言葉に、そんなことを考えた咲だった。
カンッ!
終わりです。
見て下さってありがとうございました。
次は両片想いな久咲が書きたい。
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