穂乃果「サニデイ・アイランド!」 (15)

ナレーション(穂乃果)「緑豊かな島。島を浮かべる青い海。弱肉強食の中で生きていく動物たち。常夏に相応しく燃える太陽」

ナレーション「ここは悠久の楽園、サニデイ・アイランド!今晩は一風変わった活動をする動物たちを、高坂穂乃果がお見せします!」


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ナレーション「その動物たちは今、島から少し離れたところで活動している最中のはずですが……どこにいるのでしょうか?」

ナレーション「いました!ことりちゃんの群れが海面すれすれを飛んでいます」


ことり「うみちゃーん!まだー?」


ナレーション「ことりちゃんの鳴き声がここまで届きます。高く甘みがある声は聞いてて惚れ惚れとしますね~。毛並の揃った羽毛が日光を返して、まるでことりちゃん自身がキラキラ輝いているみたいです♡」

ことり「うみちゅんちゅん、うみちゅんちゅん」


ナレーション「ことりちゃんの群れは海面の一か所を中心に据えているようです。いったいあそこには何があるのでしょう?」

ナレーション「っと、一羽のことりちゃんが動き出しました!海面から空へ一直線に飛び上がっていきます」

ことり「ことり、いっきまーす!」

ナレーション「そして急ターンして海面へ一直線!綺麗に垂直に潜っていきました」

ナレーション「待つことたった9秒!ことりちゃんが海面から飛び上がってきました!」

ナレーション「そうして潜っては飛び上がってを繰り返しています。これはことりちゃんの羽が海の水で濡れ濡れになって羽ばたけなくなったからです。代わりに翼を折りたたんで水の抵抗を最小限にして"泳いでいる"んです。うーん…この光景、何かに似ていると思うんですよ。そう、航行中の船の脇で跳ねながら並走するイルカのように!……え、フィクションの中だけの演出なの?!ずっと憧れてたのに!」

ナレーション「…先ほどのことりちゃんが島の砂浜に泳ぎ着きました。ん?足から何か青いものを放しましたね。よく見るとうねうねと動いています。生き物のようです。ことりちゃんはいつの間に持っていたのでしょうか」

ナレーション「映像を巻き戻してみましょう。……あ、掴んでいます!最初に潜って出てきた時点で足にしっかり挟んでいます。以降の映像でも青い生き物の姿を確認できますね」

ことり「おつかれさまちゅん♡」スリスリ

うみ「今日も綺麗にきまりましたね」うねうね

ことり「はぁん…うみちゃんの肌ぁ♡ぬめぬめぇ♡」

うみ「あ、そこを触られると…///」

ナレーション「ことりちゃんと青い生き物が絡み合っています。あの青い生き物は安全なのでしょうか?」

ナレーション「こちらが海中で暮らす青い生き物の映像です。平たい体を波状に動かしながら器用に泳いでいます。」

ナレーション「じつはあの青い生き物はうみちゃんといいます。うみちゃんはこの島周辺の浅瀬に住むウミウシの仲間です」

ナレーション「ことりちゃんがうみちゃんをこの砂浜へ持ち込む行動は『オヤツ』と呼びます。その様子がまるでことりちゃんがうみちゃんをおやつにするようだから、と専門家は得意げに語っていました。なるほど」

ナレーション「うひゃぁ、今度はことりちゃんがうみちゃんをひっくり返して、そこに顔を埋めております。見ているのが恥ずかしくなってくるのは穂乃果だけでしょうか…。でも心なしか、ことりちゃんとうみちゃんは楽しそうに見えませんか?」

ナレーション「しかし、なぜ鳥とウミウシが共に活動しているのでしょう?」


ナレーション「この島を何年も観てきた専門家に伺ったところ、このようなエピソードがあるようです」


ナレーション「この島は昔から保護区域に指定されていますが、悲しいけれど、ことりちゃんの羽は密売業者に目を付けられ高値で取引されていました」


ナレーション「ある日ことりちゃんが密猟者に襲われ海に沈むところを、専門家が目撃しました。彼女はことりちゃんを救出するために、やや黒に滲み始めた海面に飛び込みました」


ナレーション「そこで目にしたのは、沈んでいくことりちゃんと、ことりちゃんに纏わりついている一匹のうみちゃんでした。うみちゃんはことりちゃんに纏わりつつ器用に浅瀬の底まで泳いで、人間の目の届かない亀裂の隙間に隠れてしまいました。彼女の中では大人しい生き物のはずだったうみちゃんへの認識が、空の脱落者を食らう獰猛な生き物へと変わり始めていました」


ナレーション「しかし奇跡を目撃します。先ほどの隙間から何かが目に留まらない速さで泳いでいったのです。持参のビデオカメラで確認したところ、それはあのことりちゃんでした!人間に襲われて海に沈んだことりちゃんが、元気な姿で海から帰って行ったのです!」


ナレーション「彼女は目を疑いました。海の底で何があったのか。うみちゃんはいったい何をしたのか。うみちゃんが獰猛な生き物などでは無かったことは明白です。彼女は大自然の神秘を知りました」


ナレーション「その日から、ことりちゃんがこれまでに取らなかった行動を取り始めました。海を不得手とするはずのことりちゃんが海に潜っていくのです。彼女は察しました。ことりちゃんは海の底にいるうみちゃんに会いに行きたいんだって。しかしそう上手くはいかず、命からがら陸に帰ったものもいれば、お腹を表に海面を漂うものもいました」


ナレーション「そして遂にあることりちゃんが海から帰ってきたその足に、一匹のうみちゃんが掴まれているのを彼女は視認しました」


専門家(希)「あれは奇跡やと思うんよ。失敗したら死ぬとわかってて、それでも恩人に会いたい。そんなことりちゃんたちの一途な思いがな?ようやく実を結んだんや。当時のうちはわが身のことのようにうれしかったわぁ」

ナレーション「人間のエゴによる悲劇が、新たな生態を生んだ。そのことが良かったのかは結論付けるものではないのかもしれません。大事なのは今ここにある奇跡を守ること。穂乃果はそう思います」

ナレーション「あっ、別のことりちゃんうみちゃんペアも続々と砂浜に上がりました。ことりちゃんのアクションはバラバラですね」

ナレーション「う、うん…こちらはうみちゃんをひっくり返して乗っかって身体を小刻みに揺らしています。この行動は『キス』と呼ばれ、ことりちゃんの生殖口とうみちゃんの雌の生殖器同士を擦り合わせています。見てるこっちがドキドキしてきます…」

ナレーション「一方こちらは……うひゃぁ…ことりちゃんの生殖口をうみちゃんの雄の生殖器に宛がっているところです。あ…今入りました!!///……この行動は『スキ』と呼ばれます。うみちゃんはウミウシの仲間で両性具有なので、ペアはいつでもキスとスキを行えます」

ナレーション「こちらのことりちゃんは逆にうみちゃんに押し倒されています。あ、あっちのことりちゃんは二匹のうみちゃんと戯れています!二匹も同時に連れてきたのでしょうか。幸せそうに目を細めています」

ナレーション「オヤツの意義は専門家の間でも議論が交わされております。専門家の一人である彼女はこう表現しました。『人間でいうところの、愛ゆえなのかもしれない』と。すごーい!」

ナレーション「静かな砂浜はことりちゃんたちの甘美な鳴き声が響き渡ります……」


  うみちゃん…うみちゃん、きてぇ♡あっ、あっ、あん♡

  こ、ことりっ…わたしも…いくっ♡あっ――

  ちゅぅん♡ちゅんちゅん、ちゅーーーーん♡

  ん、んんんん、んんん……ん♡


ナレーション「なんだか私、変な気分になってきました……///」もじもじ

ナレーション「コホン、このような習性を身に着けたことうみですが、問題が幾つかあります。まず子孫は残せません。やはり異種族の壁には叶いません」

ナレーション「そしてオヤツの成功率は高くありません。ビデオからお送りしますが、まずこちらは、ことりちゃんが海に潜る際に溺死してしまうケースです。身体のコントロールを誤って羽を広げてしまい、泳げなくなってしまいました。こちらは海に潜ったことりちゃんの嘴で貫かれるうみちゃん。やはりあの泳ぎは相当速いのですね」

ナレーション「こちらは無事に砂浜に落ち着いたことうみペアですが……あ、ことりちゃんがうみちゃんをしきりに突っついています。そして…うわぁ、うみちゃんが食い千切られてしまいました。そのままうみちゃんを完食しました。これも愛が成せる技なのでしょうか……」

ナレーション「このようにことうみの習性は不思議なことだらけです。ですがご覧ください。砂浜で一生懸命に身体を絡めあうことうみを。異なる種族があんなにも仲良くしている、この美しい光景だけで価値があると思いませんか?」

ナレーション「そろそろお時間ですね。では最後にことうみがお別れていくところをお送りします!ばいばーい!」

ことり「うみちゅぁん……んん♡」

うみ「こ…とり……し…お……み…ず……」

ことり「はぁぁん♡…そっか、今日はもう休もうか?」

うみ「すいません……」

ことり「んーん。ちゅっ♡ありがとうね」

ことり「じゃ海まで運ぶちゅん♡」バサバサ

うみ「…………」

ことり「…寂しい?」

うみ「……はい」

ことり「ことりも、寂しいよ」

うみ「…………」

ことり「明日はいつにする?」

うみ「……たいようが…てっぺんに…」

ことり「わかった!じゃその時まで、生きてね?」

うみ「ことりも…ですよ……」

ことり「うん!ばいばい!」ポイッ

うみ「はい……」

  ぽちゃんっ

うみ「またその時までです。ことり♡」

おしまいです

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