北条加蓮「普通の、9月5日」 (43)
「お祝いありがとう。これからも、モバPさんと一緒にもっと色んなこと、経験してみたいな。頑張るから…よろしくね」
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モバP(以下「P」)「ああ。なんだって、どこだって連れて行くから……こちらこそ、よろしく頼む。加蓮」
北条加蓮「Pさんなら、きっと私の知らない世界にも……ううん、知ってる世界さえも、キラキラにしちゃうんだろうね……ふふっ、私、頑張らなきゃ」
P「ああ。本当に、誕生日おめでとう」
加蓮「うんっ」
P「…………」
加蓮「…………」
P「…………」
加蓮「…………な、なんか正面切って言うとこっ恥ずかしいね、こういうの……」
P「そ、そうだな」
加蓮「あ、そうだっ。Pさん、ちょっと出かけようよ。ほらほらっ!」
P「出かけるって……お前、午後からLIVEだろ。14時には現場入りしていないと――」
加蓮「まだ6時間もあるよ。ふふっ、どこだって連れてってくれるんでしょ?」
P「そういう意味じゃ……はぁ。分かったよ。今日くらい、ケンカしててもしょうがないな」
加蓮「そうそう。Pさんは私の言うことを聞いてくれればいーの♪」
P「で、どこに行きたいんだ?」
加蓮「うーん……あんまり遠くには無理だよね。とりあえずぶらぶらってしない?」
P「おし。外は冷えてるから上着を忘れるなよ」
加蓮「あっ、またそれー!? もおお、身体は大丈夫だってば」
P「薄っぺらい格好で出歩いてるの見るとどうも不安になるんだよ。いいから、ほら、俺の為だと思って」
加蓮「せめて薄着って……もう、しょうがないなぁ。暑くなったらすぐ脱ぐからね?」
――車内――
P「って、車で移動するのか」
加蓮「てくてく歩いて行くなんて私らしくないし、こっちの方が早いもん。ほらほら、早く出発してよ、運転手さんっ♪」(後部座席に座る)
P「へーへー」ブロロ
P「んでどこに行く? とりあえずポテトでも食いに行くか」
加蓮「あーっ、Pさん、女の子とのデートでいきなりジャンクフード? 嫌われちゃうよー?」
P「ポテト大好き娘には言われたくありません」
加蓮「でも今日はそういう気分じゃないかも。うーん、じゃあ、デパートでも行く? ほら、駅前のおっきいヤツ」
P「おお。なんか買いたい物でもあるのか?」
加蓮「こーいうのは、ゆっくり見て回るのが楽しいの。そうだ、Pさんに似合ったネクタイでも探してみよっか」
P「俺は別に誕生日じゃないぞ?」
加蓮「じゃあ、早めのお返しっ」
P「それなら、俺の誕生日の時には、次の加蓮の誕生日の為にお返しを買うことにするか」
加蓮「だったら私は次の私の誕生日の時にPさんへのお返し――ややこしいよ! ややこしいって!」
P「ははは。いいじゃねえか。次の誕生日がもっと楽しみになって」
加蓮「ん……そうだね」
P「今年はすんなり頷いてくれたな」
加蓮「何が?」
P「ほら、去年だったか一昨年だったか。誕生日が嫌いだって言ってたろ」
加蓮「!」
P「さすがに誕生日おめでとうって言って嫌な顔されたのは初めてだから、あん時はどうしたもんかと思ったぞ」
加蓮「も……もうっ、昔の話は禁止っ!」
P「昔と言えばお前、アイドル事務所に入ったばっかりの時に――」
加蓮「禁止ったら禁止ーっ!」
P「はは。分かった分かった」
加蓮「もー。ほらほらPさん、信号、青に変わったよ。早く早くっ」ゲシゲシ
P「ちょ、おま、これ社用車なんだから蹴るなっ」
――大型デパート――
加蓮(軽く変装)「うわーっ……いつ見てもお店がいっぱいあって、目移りしちゃうな……どこから行こっかな。悩んでるうちに1日が終わっちゃいそうだよ♪」
P「なんか少し意外だな。そんなに喜ばれるとは思わなかったぞ」
加蓮「だって楽しいじゃん。雑貨屋に、アパレルに、1階にはネイルサロンもあるんだって!」
加蓮「それにゲーセンに本屋も、やっぱりジャンクフードもあるんだ。食べるところもいっぱいあって、こんなの1日かけても回りきれないよ!」
P「……ははっ」
加蓮「私、こういうとこ結構好きだよ。Pさんと来るのは特にね!」
P「じゃあ次は、もっと時間がある時に来るとすっか」
加蓮「うんっ。あっ、見て見てPさん。あっちに美嘉の等身大パネルがあるっ」
P「スマホの新機種のだな。うちの事務所から出るのは初めてだがえらく売上が良いっていうし、きっと加蓮にも――」
加蓮「こらっ。お仕事の話は禁止っ」
P「ととっ」
加蓮「仕事ばかめー。そんなんじゃ私、自信をなくしちゃうよ?」
P「自信?」
加蓮「ほら、例えば……そのー、アイドルとしてしか見られてないのかなー…………なんて」
P「……それ以外に何があるんだよ、ほら行くぞ」ズンズン
加蓮「あっ、待って待って、歩くの早いってばー」スタスタ
――デパート1階・中央広場――
加蓮「スイーツの露店だ。いっぱい出てるね。フェアでもやってるのかな」
P「おおぅ……見てるだけで胸焼けがするな、ここ」
加蓮「Pさんって甘いのダメだったっけ?」
P「だいたいの男はそうだと思うぞ。スイーツバイキングとか何が楽しいのか訳分からん」
加蓮「あははっ。確かにああいうとこ、男の人はあんまりいないよね」
加蓮「……かくいう私も、ちょっとだけ苦手かなー。ケーキとかドーナツって、あんまりいっぱい食べると気分が悪くなっちゃって」
P「お前はまたそういう無茶を」
加蓮「説教なんて聞こえませーん。あ、そうだっ。ねえねえPさん。ケーキ、買って帰っちゃわない? 私の分っ♪」
P「残念だったな加蓮。既にケーキ屋にて予約済みだ。だいたい午後からLIVEなんだから、ここで買うと一度、事務所に逆戻りだぞ?」
加蓮「ちぇー。それなら今食べる分くらいは? ほらっ、こっち、一口クッキーがあるよ。ビターチョコならPさんでも食べれるでしょ」
P「それなら……まあ、いっか」ガサゴソ
加蓮「ありがとーっ♪」
……。
…………。
加蓮「あーん、っと。ん~、おいしい♪」
P「そっか。よかったな、加蓮」
加蓮「ほら、Pさんもどうぞっ」スッ
P「いや俺はいいよ。加蓮が美味しそうに食べてるだけでお腹いっぱいだ」
加蓮「えー。あ、そっか。そっかそっか」ニヤニヤ
P「……おい、なんで不敵に笑う。何に気付いた」
加蓮「なるほど、Pさんは私にこうしてほしかったんだね」クッキーツマミ
加蓮「はい、あーんっ♪」
P「自分で食え」デコピン
加蓮「あたっ。あれ~? そういうことだと思ったのに。ちぇ」モグモグ
P「まったく。あのな、仮にもアイドルなんだからそういうことは冗談でもやめろってーの」
加蓮「えー?」
P「……世の野郎どもはな、そういうことされると勘違いするんだ。だからやめろ。な?」
加蓮「別に私、勘違――」
P「おし次に行くぞ加蓮。いやその前に手がクッキーで汚れてしまっているなトイレで手でも洗ってこいついでに俺も用を足してくるから」スタスタ
加蓮「あっ! ……もう、デリカシーの欠片もないんだからっ」
――デパート1階――
加蓮「おっ。PさんPさん、ちょっとこっちこっち」クイクイ
P「と、ととっ、待て加蓮、転ぶ。転ぶから待てって……あーっと、ネイルサロン?」
加蓮「デパートの中にあるお店だけど、ちょっと本格的っぽい。ほら、体験コースとかネイル勉強会とかあるみたいだし」
P「だな。となると、こういうところにも営業のかけようがあるってこ――」
加蓮「…………」ズビシ
P「脇腹っ」
加蓮「もー。Pさんのばかっ。デリカシーなしっ!」
P「悪かったなぁ仕事馬鹿で! それで、ネイルを探すのか? さすがに勉強会とかは時間がヤバイだろ」
加蓮「軽く見ていくだけー。わ、新色、いっぱい出てる。これはチェック怠っちゃってたかなー」スタスタキョロキョロ
加蓮「…………」
加蓮「…………Pさん、何ぽつーんとしてんの? 入ってくればいいのに」
P「いや、男にはちょっと入りづらいっていうかな……」
加蓮「変なの。今は男の人もネイルする時代なんだよ? あっ、そうだ。私がPさんのネイルを選んであげる! こっちこっち」クイクイ
P「ばっ、お前、俺はそういうのは」
加蓮「プロデューサーさんなら常に流行をキャッチしてないと、営業先の人にも笑われちゃうぞ?」
P「ネイルつけて行った方が余計に笑われるだろ!」
加蓮「そんなことないってばー。Pさんはいっつもスーツだから、暗色系でー、これと、これと、あとこの辺もかな。意外と赤も似合うかも? ほら、情熱のレッド! Pさんっぽい」
P「あのな――」
加蓮「ネクタイピンと同じようなフリンジとかないかなー。んー、この辺とか似てる?」(Pのネクタイと見比べて)
P「おい――」
加蓮「っていうかPさん、ネクタイピンだいぶ傷んでるよ。これじゃかっこ悪いよ、もー」
P「…………」
加蓮「いろんなの試してみないと分からないかな。ねーPさん、私の次のオフっていつだっけ」
加蓮「っていうかPさんのお休みっていつ? その時にネイルやろうよネイル。ねっ、お願いっ! 私に付き合うって思って!」
P「…………」
P「……ったく、そんな楽しそうな様子を見せられちゃ、嫌だとも言えないな」ボリボリ
加蓮「やたっ」
P「んじゃ次の休みは――」
加蓮「あっ、私この日オフだよね――」
P「じゃこの日だな。……あー、少しは手加減してくれよ? そりゃ男だってネイルする時代なのかもしれないけど、あんまり派手なのだとマジで仕事に支障が出るからな」
加蓮「分かってるよ。ちょっぴりオシャレって感じで。きっとPさん、仕事場でもモテモテになれるよ~?」
加蓮「…………」
加蓮「…………」
加蓮「…………そ……それで、恋人ができちゃったり? ……やっぱナシ! そういうのダメぇ!」ガシッ
P「ぅおう!? 痛いって、締め上がってるって加蓮落ち着け!」
加蓮「はっ。……ご、ごめんなさい」
P「げほごほ……あのなぁ。プロデュース業は忙しいんだから、そういうのに縁はないし、大丈夫、俺はアイドルのプロデュースをしている方が面白いから」
加蓮「ホント……?」
P「ホントだっての。な?」
加蓮「……それなら安心、かな」
――デパート2階――
加蓮「あっ、CDショップだ。ちょっと寄っていかない?」
P「そうだな。今注目されているアーティストのチェックは、プロデューサーの義務だ」
加蓮「もぉ、またそれー? あ、でも気持ちは分かっちゃうかも。アイドルとして、ライバルの顔は見ておかないとね」
P「そういうこった。さて、このショップのイチオシコーナーはっと…………ん?」
P「おい加蓮、加蓮。ちょっと来てみろ。こっちこっち」テマネキ
加蓮「どしたのPさん? さては気になるアイドルグループのCDでもあった? 駄目だよ、ちゃんと私を見てくれなきゃ」
P「ああ。ある意味、気になるアイドルのCDだな。ほら、これ」
加蓮「んー? …………あ……私のCDだ」
P「それにこのポップ。見ろ、イチオシのアイドルって横に、『店長も個人的に応援してます』ってあるぞ」
加蓮「………………」
P「『頑張る姿が健気で目が離せないっ。つい財布の紐も緩んでしまいます(笑)』ははっ、だってさ。頑張る健気なアイドルさん」
加蓮「………………へへっ」
P「なあ加蓮。昔さ――うん、昔の話って言ったらお前は怒るかもしれないけど、昔、努力とか下積みが嫌いって言ってただろ」
P「今だって加蓮、あんまり努力してる姿を人に見せないよな」
P「それはそれでかっこいいけどさ。世の中にはちゃんといるんだ。お前の、頑張ってる姿そのものに惚れ込んでる奴が」
P「な?」
加蓮「………………Pさん」
P「んー?」
加蓮「……私をアイドルにしてくれて……アイドルとして育ててくれて、ありがと」
P「こっちこそ、育てられてくれてありがとう。……はは、誕生日に礼を言われるのも、そろそろ慣れちまったかもな」
加蓮「……ゴシゴシ……えーっ、私そんなにお礼ばっかり言ってるー? じゃあこれからは、Pさんをつけあがらせないようにしなきゃ」
P「おいおい、どうしてそうなるんだよ。ってかもうCDショップはいいのか?」
加蓮「……これでも軽くメイクしてるから、LIVEまでに落ちちゃったら大変でしょ?」
P「そっか」
――デパート2階――
加蓮「あと……2時間くらいかな。移動時間も含めたら、1時間30分が限界くらい?」
P「そうだな。もっとゆっくりできる時に来られれば良かったんだが……やっぱ誕生日にLIVEってのはよくなかったか」
加蓮「ううん。私だってアイドルだもん。LIVEさせてもらえるだけで嬉しいよ。それに――」
加蓮「その方が、いっぱいの人からお誕生日を祝ってもらえるからね♪」ニシシ
P「こいつめ生意気なっ」グシャグシャ
加蓮「あはは、くすぐったいってばー」
加蓮「さて……どうしよっか。ご飯でも食べる? でも正直、あんまりお腹すいてないんだよねー」
P「昼飯は軽く済ませるか。そうした方が加蓮も動きやすいだろ」
加蓮「そだね。でもそろそろ歩き疲れちゃったかもなー……ねね、Pさん。おんぶしておんぶっ」
P「自分で歩け」フイッ
加蓮「えーっ。いつもは過保護すぎるくらい過保護なのに、こういう時だけ!」
P「大人っていうのは都合の良いことばっかりの人間なんだ」
加蓮「むぅ」
P「疲れたならどこかに座って休むか? ほら、そこにベンチもあるし」
加蓮「そだね。よいしょ……っと」スタッ
加蓮「ん~~~」ノビ
加蓮「っはぁ。……えへへっ」
P「なんだよ急に。気味悪いな……」
加蓮「いーからいーから。ほら、Pさんもとなりとなりっ」ポンポン
P「おう」スタッ
加蓮「…………」
P「…………」
加蓮「…………」
P「…………」
加蓮「……あっ、あっちの子供」
P「ん?」
加蓮「ううん。風船持ってるなーって。どこで配ってんだろ」
P「さあ……ケータイショップとか、案内とかか?」
加蓮「かなぁ」
P「…………」
加蓮「…………」
加蓮「……あれ? あっちの子供」
P「ん?」
加蓮「気のせいかな……見たことある気がする。どこでだろ……」
P「子役かもな。ほら、現場で見たとか」
加蓮「どうだろ。違うと思うんだけどなー……なんだっけ、うーん……」
P「頑張れ加蓮。思い出したら超スッキリするぞ」
加蓮「ん~~~~~~…………あっ、たぶんあれだっ! ほら、クリスマスの時、プレゼントを貰いに来てくれた男の子!」
P「おお、思い出せたのか」
加蓮「うん。すごくスッキリした! そうだよ間違いないよ! あの時の子!」
P「クリスマスかー。加蓮、ノリノリだったな。ちょっとびっくりするくらいだったぞ」
加蓮「最初は子供なんてーって思っちゃったけど……ほら、あの頃、クリスマスってちょっと複雑で。でも、いざやってみたらすごく楽しくて!」
加蓮「プレゼントを、はいっ、って渡したら、ありがとー! って言ってくれるんだ。もうすっごくいい笑顔」
加蓮「忘れられないなぁ……あれも、私の大切な、特別な思い出だよ」
P「そっか」
加蓮「Pさんと出会ってから、毎日が全部……特別な思い出になってるんだよ。今日のことだってずっと……ずっと、忘れないからね!」
P「……ありがとな、加蓮」
加蓮「ふふっ」
P「…………」
加蓮「……あれ? Pさん、もしかして泣いちゃってる?」
P「ばっかお前、大の男は泣かないんだよ」
加蓮「目からなんか垂れ落ちてるけど……」
P「これはお前、そう、あれだ。大地の恵み」
加蓮「は、はあ……」
――デパート3階――
加蓮「ねえねえPさん、どこに行くの? ねえ、ちょっと? もうあんまり時間がないよ? ねえっ!」
P「…………」スタスタ
P「ああ、時間なら大丈夫だぞ加蓮。今さっき現地の方から電話があって、機器トラブルがあったっぽくてな」
P「現地入りはもう30分くらい遅くても大丈夫だって言われたからな」
加蓮「えーっ。別に着いてすぐリハって訳じゃないんだし、早く行っておいた方がよくない?」
P「それがな。先方、あまり早く来られすぎるとスタッフが恐縮してしまうし申し訳ないって感じになりそうだから、って」
加蓮「どういうこと?」
P「ま、つまりお前のような大物アイドルを待たせたらスタッフがビビリ上がるってことだよ」
加蓮「そ、そう。……えっと、これは喜んでいいところ、なのかな……」
P「いいんじゃねえか? で、ついでに1つ思い出してな。本当は今日、LIVEが終わってからここに来るつもりだったんだ。加蓮用の誕生日プレゼントを受け取りに」
加蓮「え、そうだったの? 言ってくれればよかったのに……そしたら、別の場所とかあったんじゃないの?」
P「LIVEの後じゃ、さっきほどのんびり歩いて回る時間はなかったよ。だからこれでいいんだ」
加蓮「そっか。……そ、それで、そのー、私の誕生日プレゼントっていうのは……」
P「お、気になるか?」
加蓮「そういう風に言われたら普通気になるからっ……もう。Pさん、もったいぶらないで教えてよ!」
P「ははは。ちょっと待っていてくれ。5分くらいかかるから、ここに座って待ってろ。な?」(ベンチを指差す)
加蓮「はーい。早く戻ってきてね?」
P「おう」スタスタ
加蓮「…………」
加蓮「…………」
加蓮「…………って、結局プレゼントって何!? これ5分ずっと焦れったくしていないといけないってこと!?」
――デパート3階・ベンチ前――
P「ただいまー」
加蓮「お帰りっPさん! もう、遅い!」
P「お、おう? 思ったより早く受け取れたと思ったんだが――」
加蓮「だって結局Pさんもったいぶってばっかりだもん! 初めてのLIVE前よりも落ち着かなかったよ、もう!」
P「それはさすがに大げさじゃ……」アセ
P「じゃあ、お待たせ、加蓮。ほら、これ、プレゼントだ」
加蓮「……うん」
P「改めて。誕生日おめでとう、加蓮。まあ、その、なんだ……今日を元気に迎えてくれてありがとう、っていうかさ」
加蓮「…………」シュルシュル
P「またこれからの毎日を楽しんでくれ、って意味で。プレゼントだ」
加蓮「これって……腕時計?」
P「ああ。どうだ、スタイリッシュでイケてるだろ。店員に流行りの物について論議して3時間も潰した後での決定だ。これならって思ったけど……どうだ?」
加蓮「…………」
加蓮「…………」(腕に巻く)
P「お」
加蓮「…………」ギュ
加蓮「…………」ジー
加蓮「…………」ギュ
加蓮「……ふふっ。ありがと、Pさん……これ、いいよ。なんだか、すっごく落ち着く……」
加蓮「かち、かち、って、時計の針が動いてて……前は、それをただぼうって見ることしかできなかったけど」
加蓮「今は、1秒1秒がすごく大切に思えるんだ……これ、大切にするね、Pさん。……ありがとっ!」
P「……」ホッ
P「ああ。大切にしてやってくれ。時間も、時計も」
加蓮「…………でもさPさん。これ、たぶん男物じゃない?」
P「マジ!?」
加蓮「マジ」
P「あの店員! 女の子へのプレゼントに男物の候補とか出すかフツー!?」
加蓮「でも選んだのPさんだよね」
P「…………」
加蓮「…………」
P「…………スマン」
加蓮「いいっていいって。その方が、なんだか特別感があっていい感じだし♪」
――そして
――数時間後 LIVE会場――
加蓮「よいしょ、っと」(腕時計を外す)
加蓮「これは、大切に保管、っと……。あ、そうだ。Pさんが預かっててよ。そうしたら安心でしょ?」
P「分かった。……そ、そこまで大切にされるとむず痒いな……」
加蓮「えー、そう? 私もPさんに何かあげたら、分かるのかな……」
P「そういうモンだよ」
加蓮「……っと、そろそろ出番だね……すぅ……はぁ……よし。大丈夫。スイッチ入れなおした!」
P「ああ」
加蓮「じゃあ、行ってくるから――しっかり見ててね、Pさん」
「Pさんに育ててもらったから、こんなに輝く私になれたって…ちゃんと、ステージの上で証明してみせるよ。見ててね!」
おしまい。北条加蓮、誕生日おめでとう!
一昨年と去年のコメントから身構えていましたが……いやはや、なんとも普通に祝われてくれたので。逆にびっくりしてしまいました。
けれど、「普通に誕生日を喜べるようになった」って考えれば、それはきっととても素敵なことです。
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