男「よ、幼女に匂いが分かる能力……」 (10)

神さま「そう」

神さま、と自ら名乗ったそいつはカラカラと笑った。
見た目には人間と何ら変わらない。頭に天使がつけている例のわっかが乗っていなければ。

信じた、というのもあるが、神さまの話は単純に面白かった。

どうやら俺に、能力をくれるらしい。
本当に適当に、本当に下らない能力を人間に与えて、そいつが何をするかが見たいんだそうだ。

神さま「僕はね、人間が好きなんだよ。天地創造の時から、『うわ、こいつら絶対クルぞこれから』くらいには思ってた」

男「流行りの芸人みたいな扱いだな」

神さま「実際そんなとこだよ。気を悪くしたんなら謝るけどね」

別に、立場が何次元もかけ離れた存在からの言葉だ、怒る方がおかしい。
神さまからしたら俺達地球の息とし生けるものすべて、触れるテレビ位なもんなんだろう。

神さま「ああそうそう、君たちの感覚で言えばそんな感じ」

男「!」

俺のココロの中も、あっという間に神さまのものだ。

男「で、俺にくれる能力って何だったっけ」

神さま「幼女の匂いが分かる能力」




男「なんて?」

神さま「幼女の匂いが分かる能力をあげよう」

男「いらん」

神さま「まぁそう言わず。もうあげたし」

男「」

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神さま「ほら、誰でもいいから頭の中で一人幼女を思い浮かべてごらん」

男「……じゃあ、妹で」

歳の離れた妹を思い浮かべる。
小学校二年生だが幼女だろう、一応。

すっと目を閉じると、なるほどいらねえけどすごい能力だ。
いやホントにいらないけど。

頭の中に、まるで見えているようにはっきりと『匂い』の道筋が浮かび上がる。

今俺が立っているのは通学路。
妹も毎日通る道だ。

神さま「親しい間柄の幼女なら、匂いが極限まで薄くても、いつそこを通ったか、そこを通った時の様子とか服装、現在地まで分かる。君の訓練次第で匂いから全てを感じられるようになる」

男「気持ちが悪すぎる」

あまりに。
昨日この道を通った妹が履いていたパンツはうさぎ模様の奴だった。

神さま「ま、頑張ってね」

男「二度と使わないと思う」

神さま「ま、そう言わず。もう始まってるから」

男「?」

神さま「たった今、妹さんはある犯罪グループに誘拐されたよ」

男「は……ぁあっ?!」

神さま「じゃ、『頑張ってね』」


そう言い残して、神さまは煙のように消えた。

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