女「ふ、ふえぇ……遭難だよ!」(15)
女「幼女ちゃんと出会ってから三年がたった」
女「大学卒業後、在学中もちょくちょく手伝っていた施設に就職」
女「そこで施設の子供たち相手の先生をしている」
女「免許は、ないが学科は全てとったので実習すればどれか取れるだろう。そんな時間がないし必要ないのがこの施設」
女「多大な権力を盾に様々な人脈を使い日本を支えてると思う。そっち方面の話も最近ついていけるようになったのも大学で勉強したからか。とりあえずテレビで出てくる人のほとんどとは一緒に食事した」
女「多忙で超充実した毎日だけれどまだ研修の身。施設の長、主様にはまだまだ仕事を任せてもらえない」
女「……いや、無理っす。手塩に育ててきたたくさんの孤児たちの引き取り先探すなんてできないっす」
女「そんなこんなで人生経験を増やすため、私はフランス一カ月の研修旅行に行かされた。もちろん幼女ちゃんと一緒に」
女「」
女「」
女「……う、うぅ」
幼女「おねーちゃん、泣かないで!」
女「うぅ、ご、ごめんね」
女(十歳の子に慰められるなんて情けない)
幼女「例えここが無人島でも私たち二人ならなんとかなるよ!」
女「」
幼女「」
女「……わーーーん」
幼女「ふえぇ……遭難だよ!」 スタート!!!
主「……」
黒服「……」
バタン
運転手「失礼します」
黒服「ノックぐらいせんか、馬鹿者」
運転手「あ? そんな状況じゃねぇだろ!」
主「落ち着きなさい!」
黒服「……は」
運転手「……はいよ。で、状況はどうなんですか?」
主「黒服」
黒服「はい。現状としては女様と幼女様の乗った船は嵐に会い転覆。乗組員は数人を除き無事救助されましたがそこにお二人の姿はなかったと。これが一昨日のことです」
運転手「他には」
黒服「救助された人から聞いた話だとお二人は転覆前の数十分から目撃者はないとのことです。ただ最後に目撃したのが艦長室でして」
運転手「なんでそんなとこに?」
黒服「地図を見せてほしいと。一応女様は航海術の学もありますので非常時の備えをしていたものかと」
運転手「……」
黒服「……」
主「……」
主「すでに救助隊を向かわせています。早ければ明日にでも見つかるでしょう」
運転手「主様!」
主「わかってます。あなたもその救助隊に入れてあります」
運転手「おっし!」
黒服「主様!」
主「あなたもよ、黒服」
黒服「!?」
運転手「!?」
主「運転手は海外も長いし女さんとも付き合いが長い。そこに賭けるのは損じゃない。でも理知的な発想なら黒服も必要となる」
黒服「……つまりストッパーと?」
主「そ、いつもどおりね」
運転手「いや、こいついらないですから」
主「ならあなたも認めるわけにはいきません」
運転手「……っくしょー、ほらいくぞ!」
主「チケットはすでに取ってあるから準備なさい。出立は明日よ」
黒服「はっ」
運転手「はい」
女「さて、あんまり悲観してられる状況でもないしそろそろする事しなきゃね」
幼女「おねーちゃんもう大丈夫なの?」
女「うん、まぁこれは覚悟のうえで船を置いてきたんだしね」
幼女「?」
女「まぁあそこで転覆するのは船長曰く半々だったから無駄になる可能性もあったのよね」
女(だから救助まで体力的にお荷物になる幼女ちゃんを連れ出したなんては言えないわー)
女「とりあえず船長達が救出されててくれれば遅くとも一週間でここも割り出せるだろうからそれまでゆっくりたのしみましょうか」
幼女「はーい」
女「しなきゃいけないことも多いからさっそく、あ」
幼女「? どうしたの、おねーちゃん?」
女「無理なことがあったらすぐに言うのよ?」
幼女「はい!」
女「ん、よろしい。では行きますよ」
女「とりあえず手持ち確認ね」
幼女「浮き輪!」
女「そうね、これはこれで使い道があるとはいえ、二つ持ってきて大丈夫だったかな?」
幼女「どうなの?」
女「まだいくつか残ってたとはいえ……誰もなくなってなければいいけど」
女「と、今は他人より我が身かな。さて他には」
女「トランク4つ。中身はほとんどビニール袋なんだけどね」
幼女「なんで?」
女「浮き輪がわりなのよ。三つ浮き輪を繋げればかなり安定するからね」
幼女「そうなんだ」
女「まぁ二日ぶんの食べ物と、包丁にライターしか入ってないんどけどね」
幼女「少ないね」
女「沈まないギリギリがここだからしょうがないわ。ま、少ないけど一週間ならどうにかなるはず」
幼女「なら平気だね」
女「それにこの無人島は地図に乗るくらいある程度大きい島だから。大型の生物はいないけど夜も危なくないって意味ではむしろオッケーなのよ」
幼女「」
女「よーしそれじゃさっそくねぐらを作りましょうか」
幼女「……おねーちゃん?」
女「んー何?」
幼女「あのね、言いにくいんだけど……」
女「何? トイレ?」
幼女「多分おねーちゃんのいってる島、ここじゃないよ」
女「え?」
幼女「木で隠れて見えないけど向こう側まで一、二分なの」
女「」
幼女「……あってるの、おねーちゃん?」
女「ふ、ふえぇぇ……うぅ……」
幼女「な、泣かないでよ。大丈夫だよきっと!」
女「うぅ、んっ」
幼女「頑張ろうね!」
女「ふぁい……」
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