男 「そうですよ、夏終わっちゃいますよ。
うかうかしているうちに随分涼しくなっちゃいましたね」
幽霊「……」
男 「今日もクーラー要らずの快適な夜ですね」
幽霊「……」
男 「窓開けたら風が強いし、半そでだとちょっと寒いくらいですね。まだ八月だけど」
幽霊「……」
男 「夏、終わっちゃいますよ?」
幽霊「うらめしやああん!」
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幽霊「もうっ、夏、終わるのはやい!」
男 「良いじゃないすか、夏終わるの。蒸し暑いの嫌だし」
幽霊「死んでたら蒸し暑いとか分かんないからそんなの良いのっ!」
男 「俺生きてるから涼しい方が良いっす」
幽霊「しねっ!」
男 「……幽霊さんも、別に夏じゃなくても誰か脅かしに行くんでしょ?」
幽霊「だって、だってー!」
男 「だって?」
幽霊「夏の風物詩でしょお!?」
男 「何が?」
幽霊「怪談!」
男 「いや、まあ……そうかも知れませんね」
男 「だけど、別に夏だろうが冬だろうが幽霊は怖いものですから!」
男 「涼しくても夜なら何でも行けますって! 頑張って行ってらっしゃい!」
幽霊「こんな風強い夜に行きたくないよ! 怖いモン!」
男 「おひゃ?」
幽霊「おひや?」
幽霊「あ……待って。聞かなことにして。ごめん」
男 「ハイ、待ちます」
幽霊「……確かにね、死んだ後にも強く残るほどの怨みつらみの強いベテランお化けさんなら、どんな状況下でも行けると思うよ? 行って下さい」
男 「ハイ」
幽霊「確かにそんな奴らなら雨天決行だろうし、こんな風強くて涼しい夜程度なr
男 「ハイ。で、あなたは?」
幽霊「……うっかり死んだあとふらふらしてるだけです」
男 「早く成仏しちゃえばどうです?」
幽霊「ふっふっふ」
男 「ふっふっふ?」
幽霊「私はですね、生前オカルトな趣味がありまして」
幽霊「怪談話、お化けのはなし、大好きだったのよ」
男 「初耳だ」
幽霊「え! 言ってなかった!?」
男 「知らないっす」
幽霊「とにかく! 不本意ながら死んじゃって、しかしこうして自分の意識を持って幽霊として存在することができた!」
幽霊「これがどれほど嬉しいことか!」
幽霊「分かるかお前!」
男 「いえ、あんまり分かりません」
幽霊「うらめしやっっ!」
幽霊「とにかく、こんなに早く人生終わるとは思わなかったけど うらめしやっ!」
男 「あ。はい」
幽霊「怖い話好きだったから、幽霊になっちゃったし、怖い話とか怪談とかで生前楽しませて貰ったそのぶん驚かせてあげたいの!
うらめしや!」
男 「はい」
幽霊「そもそも手始めに貴方にとり憑いてやったのに、ちょっともドキドキワクワクしてくれない!」
男 「はい」
幽霊「もう、妥協するから。別に憑き殺したりしないから、ちょっとは驚いてってばー」
男 「ところで何で、憑くって、心に馬にさんずいなんだろう?」
幽霊「さんずいじゃないでしょ!」
男 「?」
幽霊「ほら、さんずいっぽいけど、点が一つないじゃない」
男 「じゃあ、なにへん?」
幽霊「えっ!」
幽霊「わ、わかんない……」
男 「ぷっ」
幽霊「笑うな!」
男 「お互い底辺ですね」
幽霊「一緒にするなあ!」
男 「確かに俺はド底辺ですけど、貴方はどうなんでしょう?」
幽霊「私はねー……あれ? あれ?」
男 「……」
幽霊「あれー? なんだっけ……」
幽霊「私、なんだっけ?」
男 「もう、いいんじゃないですか? 自分のことも思い出せないって、それは」
幽霊「よくない!!」
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