提督「え!赤城が燃料漏れ!?」 (13)
提督「そりゃいくら補給しても腹ぺこなわけだわ…。でももう流れちゃったんでしょ大丈夫じゃないの?そんなことより私ご飯食べたいんだけど」
大淀「提督、今回流出した重油はC重油と呼ばれるものです。正直な所かなり厄介ですよ」
提督「え、そうなの!?」
大淀「成分中には硫化水素や炭化水素を含む場合が多いですので、毒性に十分注意が必要です」
提督「…それって環境団体に怒られる?」
大淀「はい、もちろん。C重油は重油の中でも特に比重が重く、不純物を多く含んでいます。また、低温環境下では粘性が強く扱いがやっかいです」
大淀「ほら、この写真を見てください現地から報告された物です。」
http://i.imgur.com/bo15d07.jpg
提督「うわぁ鳥さんが…」
大淀「重油は海上や沿岸部で漂流するうちにどんどん揮発物質がなくなり固形化します。また水分を取り込み、アメ状からチョコレート状になり、もちの様な形態に変化していきます。生物に付着すると写真のようにベットリとついて取れなくなります。細かく分離した場合は小さなオイルボールとなり、沿岸部で沈澱する場合もあります。これは海草や貝類、珊瑚の育成に深刻な被害をもたらします」
提督「つまり、放っておくとかなりバッシングをうけるって事ね」
大淀「その通りです。イメージ回復の為にも鎮守府総出で重油の回収作業にあたらなければなりませんね」
提督「分かったわ。手の空いてる艦娘に整備員さんに憲兵さんに手伝ってもらいましょう」
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提督「それじゃ作戦立案といきましょう。作業前に事前に準備する事は?」
大淀「原則として、作業者の体調に充分気を付けてください。次に、作業者の皮膚を保護するためにあらかじめハンドクリームやファンデーションを顔、腕に塗るようにしましょう」
提督「ふむ…ファンデーションなら備蓄があるから大丈夫ね」
大淀「作業着等重油が付着する衣類については、表面にシリコンオイル(粘度の高い物)を事前にすりこむ事で洗浄が非常に楽になり、作業着を再利用しやすいという指摘があります」
提督「そうね、作業着を一々新品にしてたら資金が底をついてしまうものね。作業着はツナギみたいなのでいいのかしら?」
大淀「はい、地上作業ではツナギを。波打ち際ではウェットスーツを着れば大丈夫です」
大淀「それと、臭気を吸い込まない様、マスク、ゴーグル等の防護具等を必ず準備して下さい。コンタクトレンズを使用している作業者は揮発成分により、目の痛み、炎症を起こしやすいです。できるだけ眼鏡で作業するよう事前に伝えましょう」
提督「後、作業に向いてない人っているのかしら」
大淀「かなり過酷な作業ですので、心臓循環器系の持病のある人は、急な過労による突然死は充分ありえます。呼吸気管器や神経系の持病、療養中の人はも同様ですね。事前の健康調査を必ず行い、通院、薬剤服用者については特に注意するようにしましょう」
提督「作業に使用する器具、薬剤、除去方法は何がいいのかしら?」
大淀「現在漂着している重油は水分含有率が5割以上になっていて非常に重いです。周囲の水ごと除去しますので、ひしゃく、バケツ、袋等は丈夫な物を使用し運搬しやすい形で回収します」
提督「沖合の方はどうするの?」
大淀「界面活性剤や凝固剤等の有機化学薬剤を使用します。薬品を使用しますので事前に関係学術機関や漁協の判断をあおいでください。また、重油汚染地域の特性にあわせて適切な除去方法を選択して下さい」
大淀「こちらがその一覧です」
重油汚染地域の特性による除去手段例(人手を除く)
・海上沿岸部 回収船機械回収・吸着マット・拡散薬剤散布等
・海上海岸部 ジェットポンプ回収・吸着マット・生物分解薬剤等
・海岸砂浜部 吸着マット・表面部重機収集、選別・生物分解薬剤等
・海岸岩場部 洗浄機溶融回収・生物分解薬剤散布等
※ジェットスチーム(高圧洗浄機)による溶融回収は、特に緊急を要する地域に
使用を限定し、周囲を吸着マットやオイルフェンスで封鎖し、2次汚染に十分
配慮すること。
漂着量が少ない場合は地中に大部分が浸透してその後の回収がより困難となる。
提督「成る程ねぇ…砂浜や岩場は駆逐艦の子や府員を割り当てて、海上作業では大型機械を使うから戦艦や空母の子達にやってもらいましょう」
提督「他に注意する事はあるかしら?」
大淀「現地は風の強い海岸です。濡れた体から体力を容赦なく奪い取ります。疲れたら休憩ではなく、1~2時間ごとに必ず休憩を取るようにしてください。また、休憩の都度、各自が体調の変化を冷静にチェックしてください」
提督「片付けはどうしよう?道具は洗剤で洗えばいいのかな」
大淀「汚れた器具、作業衣を始末する時に皮膚に付かないよう十分注意して下さい。洗浄はおがくず、洗剤等で行い、灯油等2次汚染の発生する恐れのあるものは使用しないでください。回収重油、汚染廃棄物等は密閉状態で保管し、周囲への2次汚染に注意してください」
提督「了解、ごみもそのまま捨てないほうがいいよね」
大淀「袋、ごみ等重油に汚染された物は絶対に焼却しないでください。有毒ガスが発生します。できるだけ専門の焼却場で処分して下さいね」
提督「作業期間の設定は半年ぐらいかな」
大淀「そうですね、重油がなくなるまで当分の間という事になりますが、かなりの長期戦になりそうです。作業を効率よく行うための一時的な中断やシフト設定を考慮する必要があります。
最悪、ボランティアの支援を要請するのも一つの手と思われます。1~6月中は重油も固定化していますが、気温上昇とともに2次流出、液状化がありますので迅速な対応が大切ですね」
提督「了解!頑張って海を綺麗にしなきゃね!」
赤城「あの、そろそろおなかをふさいでもらってもよいでしょうか、おなかがぺこぺこです」
提督「…回収重油を赤城に飲ませようか?」
大淀「ナイスアイデアです」
おわりっ!
よくよく考えたら大破で動いて燃料やらオイルやらを海に撒き散らす艦娘はヤバイ
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