飛鳥「………」

P「何か反応してほしい」

飛鳥「あぁ、やはりボクに向けての言葉だったのか」

P「だからあすかわいいって言ってるじゃん」

飛鳥「明らかな造語なのに、すぐに理解（わか）れというのは少し無茶じゃないかい」

P「どういう意味か知りたいか」

飛鳥「別に」

P「どういう意味か知りたいか」

飛鳥「いや」

P「どういう意味か知りたいか」

飛鳥「ループ式の質問なのか」

飛鳥「……なら、聞かせてくれ」

P「よくぞ聞いてくれた」

飛鳥「根負けしただけだけどね」

P「あすかわいいとは、飛鳥がかわいいという一文を縮めてひとつの単語にしたものなのだ」

飛鳥「その答えの予想がついていたから聞かなかったのに」

P「というわけで、あすかわいい」

飛鳥「やめてくれ。ボクにかわいいなんて言葉は似合わないだろう」

P「そんなことないだろ。かわいいし」

P「それとも、あすかっこいいとかの方がいいか？」

飛鳥「いや、そういうわけじゃ……というか、いちいち縮めないと気が済まないのかキミは」

P「やっぱりあすかわいいな」

飛鳥「かわいいなら……あれだ、蘭子とかのほうがずっと当てはまるだろう」

P「蘭子もかわいいけど飛鳥もかわいいぞ」

P「見た目も、中身も」

飛鳥「答えが抽象的だね」

P「お望みなら今から逐一聞かせてあげるが」

飛鳥「遠慮しておくよ。むず痒くなりそうだ」

P「つれないな」

飛鳥「そろそろレッスンの時間だし、ボクはもう行くよ」

P「わかった。頑張ってな」

飛鳥「あぁ」

ガチャ、バタン

飛鳥（鏡の前）「………」

飛鳥「かわいい、か」

飛鳥「………」

飛鳥「に、にこーっ☆」←満面の笑み


飛鳥「……さすがにこれはない」

飛鳥「こんなもの、他人には見せられないね」ｸﾙﾘ


P「……あの、レッスン用のジャージ置き忘れてたから届けに来たんだが」

飛鳥「」

飛鳥「……見た？」

P「えーっと」

P「心配するな、超かわいかったから」

飛鳥「そうか」

P「おい、どこ行くんだ」

飛鳥「晶葉に記憶爆殺装置を作ってもらうか、志希さんに記憶滅殺薬を借りてくる」

P「名前が物騒すぎる」

飛鳥「離してくれ。ボクはどうしても行かねばならないんだ」

飛鳥「人は誰しも、やらなければならないことから逃げてはいけないんだ」

P「やだよ。だってさっきの言い方だと後者はすでに完成してるじゃないか」

その後


飛鳥「……はあ」

P「いつまで屋上で黄昏ているんだ」

飛鳥「ボクにも見られたくないモノくらい存在する」ﾑｽｯ

P「部屋に入る前にノックくらいするべきだったな。ごめん」

飛鳥「………」

飛鳥「ひとつだけ」

P「うん？」

飛鳥「ボクの似合わない笑顔を見た感想は」

P「さっきも言ったけど、超かわいかった」

飛鳥「……そうか」

飛鳥「もういい。忘れよう」

P「忘れるのか」

飛鳥「あぁ。といっても、忘れようと思うことほど忘れられないのが人の性だけど」

飛鳥「もうすぐ日が沈むね」

P「きれいな夕焼けだな」

飛鳥「あぁ」

P「そろそろ帰るか？」

飛鳥「……いや。もう少しだけ、ここでボクと一緒にいてくれないか」

P「何かあるのか」

飛鳥「今宵は満月。じきに夜空に姿を現すだろう」

飛鳥「そうしたら」

P「そうしたら？」

飛鳥「キミの隣で、一度つぶやいてみたい言葉があるんだ」

P「……とんだロマンチストだな」

飛鳥「いいじゃないか」

P「………」

P「やっぱりあすかわいい」


おしまい