【ミリマス】北沢志保「……うつ病?」 P「らしいよ」 (73)

~765プロライブシアター劇場にて~

ワアアアアアアァァァッ――!!

翼「みんな最後までありがとーっ!」

志保「これからも私たちをよろしくお願いします!」

星梨花「二周年記念ライブ、ミリオンスターズがお送りしました~!」



ベテランP「――うんうん、みんな成長したな」

若手P「お、俺……ここまでみんなと一緒に歩いてきたこと、誇りに思うっス!」

P「あぁ……そうだな」

社長「だがこれはまだ終わりではない。むしろ新たなスタートだ。君たちにはこれからも期待しているぞ!」

ベテラン・若手P「ハイ!!」

P「……はいっ!」


ワアアアアアァァァッ――


P「……――」



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1438005557

――デューサーさん

あの~――こえてますか?

小鳥「プロデューサーさんってば!」トントン

P「!!」



恵美「琴葉! 飲んでるか~っ!?」

琴葉「あのね恵美、お酒じゃないんだから変な絡み方しないでよ」

美也「このミックスドリンク、お酒みたいな味ですけど~。不思議ですね~」

ジュリア「飲んだことないだろ……ま、こんな気分のいい日は酔っぱらってみたい気もするけどな」

このみ「うぃ~今日は無礼講じゃい! 育ちゃんもこっちきなさい、ふひひ」

育「?」

静香「このみさん絡み酒は禁止!」

ワイワイ ヤイノヤイノ



P「……あ、すみません音無さん。少し疲れてしまって」

小鳥「大丈夫ですか? 打ち上げも強制参加じゃないんですから、疲れてるなら無理しなくても……」

P「いやいや。せっかくの二周年ライブの後ですし、僕のことは気にせず楽しんでください」

若手P「なんすかぁ、センパイもっとテンションあげてきましょうよぉ!? ヒック」

P「はは……元気だなお前は」

ベテランP「若者のノリと一緒にしてやるな。まぁしかし、私もPさんも二年間頑張ってきたんだ。今日くらいは羽目を外したらどうだ?」

P「えぇ……そうですね」

麗花「あ、ベテランさんこんなことにいましたね~♪ 早くしないとたこわさ無くなっちゃいますよ~」グイグイ

ベテランP「わかった、わかったから……」

麗花「おや、Pさんもいますね。どうですか、一緒にたこわさパーティしませんか?」

P「ん、いや、俺はその」

若手P「麗花しゃん! 俺に麗花しゃんのたこわさをたべさせてくらしゃいっ!」

麗花「お、いっちゃいますか? じゃあまず生たこ足の踊り食いから……」

ベテランP「向こうでやれお前ら……はは、とにかくお互いお疲れ様。また次のために英気を養っておこうぜ。影の功労者、小鳥さんに乾杯!」

小鳥「ちょ、そういうの恥ずかしいからいいですって!」

ベテランP「ははは! いいじゃないですかたまには」

P「はは……」

――数時間後

志保「(いけないわ……打ち上げに浮かれてスマホ忘れるなんて……)」

ガチャ

P「――ん? 北沢さん?」

志保「あっ……お、お疲れ様です。スマホ忘れたので……」

P「あ、あれ北沢さんのか。猫のカバーだからそんな気はしてた……はい。これ」スッ

志保「どうも……ほかの人はもう帰ったんですか?」

P「小鳥さんは泥酔、ベテランさんと若手くんは駅までみんなを送ってったよ」

志保「そうですか……」

P「ん……」ガチャガチャ

志保「……あの、一人で片付けしてるんですか?」

P「あぁ、うん。他の人はまだ帰るまでかかりそうだし……他にやる人もいないし」

志保「……手伝いましょうか?」

P「ん? いやいや、大丈夫だよ。北沢さんももう帰らないと遅くなるだろ?」

志保「でも、なんか……プロデューサーさんが一人で後片付けしてるの見ちゃったら、後味悪いんで。手伝います」

P「え。いや……うん、ごめんね。助かるよ」

ガサガサ……

志保「……」

P「……」カチャ ゴトン

志保「……」

P「……」カラン ガサガサ

志保「……あの」

P「ん、何?」

志保「いえ、何でもないんですけど。疲れてるんですか?」

P「……うん、ちょっとね」

志保「……なんか、楽しくなかったみたいな顔してますね。みんなあれだけ騒いでたのに」

P「あぁ、はは……そう見える? 楽しくなかったわけじゃないんだけどね」

志保「?」

P「今日はシアターの二周年ライブだったでしょ? 僕も一応……創設時からのメンバーだから二周年なんだよ」

志保「そう……でしたね、そういえば。じゃあなおさら嬉しいんじゃ?」

P「うん……そうだね。嬉しいよ、みんながここまで成長してくれたのは」

志保「…………」

P「いや、なんというか……たぶん、僕の方がみんなに追いつけてないんだよ。それだけだから気にしないで」

志保「……でも、プロデューサーさん」

prrrrrr……

P「あ、ごめん……もしもし。はい……あ、はい。北沢さんですか、はい、ここにいます。僕が送っていきますからいいですよ。僕飲んでないんで……いや、はは、すみません、はい。はい、わかりましたお気をつけて。どうも、お疲れ様です、また」ピッ

志保「ベテランさんですか?」

P「うん。若手くんもちょっと飲みすぎたみたいだから一緒に送っていくってさ。北沢さんは車で送るよ」

志保「……打ち上げでお酒、飲んでなかったんですか?」

P「こういうこともあるかと思ってさ。あと、飲む気分じゃなかったし……」

志保「……」

P「なんつって。はは、ちょっと体調悪かったんだよ。はは」



………………

P「――本当に駅までで大丈夫?」

志保「はい。流石に家までは遠いですし」

P「そう。じゃあ気を付けてね。本当に」

志保「はい」

P「……」

志保「……」

P「……あの、車降りないの?」

志保「お、降りますけど……プロデューサーさんはこの後どうするんですか?」

P「僕? 僕は……事務所に戻って小道具の後片付けして、今日の報告書類早めにうちこまなきゃいけないから、泊まりかな」

志保「え……帰らないんですか?」

P「帰ってもすることは同じだし。他の社員と違って仕事遅いから、こうでもしないと追いつけなくてさ」

志保「……」

P「あぁ、北沢さんは気にしなくていいからね! 細かい仕事は僕らの役割だから、今日はしっかり休んでおいてよ」

志保「あの……仮にも仕事先の仲間がそんなことしてるってわかったら、夢見が悪いです」

P「あー……ごめん、言わなきゃよかったね」

志保「そういうことじゃなくて…………はぁ。じゃあ、せめて日付が変わるころにはちゃんと寝るって報告してください」

P「えぇ? 北沢さんに? 電話で?」

志保「で、電話じゃなくてもいいですけど……メールとかLINEでもいいですから、きちんと報告してください。じゃないと社長に報告しますよ」

P「う……でも、僕、北沢さんのアドレスも何も知らないよ?」

志保「じゃあいま教えますから……それと、その北沢さんっていうのも、やめてください。プロデューサーさんの方が年上なんだから、呼び捨てで結構です」

P「そ、そっか……ごめんきt……し、志保」

志保「……じゃ、これ私のIDです。送ってくださってどうも」ガチャ

P「う、うん。ごめんな……」

――翌日

~劇場~

志保「(……一応、日付かわった瞬間にメッセージは入ってきたけど)」

ガチャ

志保「お疲れ様です」

小鳥「あ、お疲れ様志保ちゃん」

P「お疲れ様です」

ベテランP「お、志保か。昨日はちゃんと休めたか?」

志保「はい、送っていただいたので」

P「……」カタカタ

べテランP「はは、Pさんは真面目だからな。よかったよかった」

P「……」カタカタ

ベテランP「じゃあ続けてになるけど、今日は昨日のライブに関する特番の収録がある。Pさんに付き添ってもらうから、未来やエレナと一緒に向こうで合流してくれ」

志保「わかりました」

P「……えーと、ちょっと待ってね北z……志保。あと3分で仕上げるから」カタカタ

志保「……わかりました」

~都内某スタジオ~

エレナ「――で、とにかく最高だったヨ~! 来年は三周年ライブでもっともっとアツくなろうネ!」

未来「熱くなりすぎて溶けないようにしましょう! ん~でも溶けるくらいの方がいいのかな? 私たちが太陽になってカーッとみんなを照らすわけだし、こうアイスが溶けちゃうくらいの……」

志保「ではここで昨日のライブでも告知させていただきました情報をもう一度」

未来「え、ちょっとスルーしないでよぅ!」

ワハハハハ…


P「……」


――数時間後

エレナ「う~ン、なんか思い出すだけでまたワクワクしてきたヨ~。ねぇねぇこれからちょっとレッスンしていかなイ?」

未来「あ、そうしよっか! ダンスの神様なにとぞご指導を~」

エレナ「ミライはおおげさだネ! シホはどうすㇽ~?」

志保「いいですよ。オーバーワークにならない程度なら」

エレナ「あはは、ダイジョブダイジョブ~♪ いつもと同じくらいだからネ」

志保「……。と、とりあえずプロデューサーさんに報告してきますね」

-自販機前-

P「…………」

志保「プロデューサーさん、今収録終わったんですけど……」

P「…………」

志保「プロデューサーさん?」

P「んああ、お疲れ様! どう、うまくいった?」

志保「はい」

P「そっかそっか。あ、何か飲む?」

志保「いえ……あの、これからレッスンスタジオお借りしたいんですけど」

P「スタジオ? うん、いいよ。あんまり遅くならないようにね。じゃあ挨拶回りして車出すからちょっと待っててね」

志保「……プロデューサーさん」

P「ん?」

志保「昨日“本当に”寝た時間と、今朝起きた時間教えてください」

P「昨日は、ホントにちゃんと日付が変わるころに寝たよ」

志保「ちゃんと寝たんならいいですけど」

P「……で、えー……今朝は、3時に起きたかな」

志保「……は?」

P「起きたというか……それ以上眠れなくてさ。はは」

志保「それ、寝てないのとほとんど一緒じゃないですか! なんで……!」

P「……なんでかな、本当。寝ようとするとさ、最近わるい夢ばっかり見るんだよな……それで、飛び起きたら、もう眠るのが怖いって言うか」

志保「……あ、あの」

P「あ、いやいや僕個人が悪いだけの話だからさ! なにか僕に原因があるんだよ、はは……」

志保「か、体は大丈夫なんですか? 勝手に倒れられたりしても困るんですけど」

P「うん、ちょっと体が重いだけだよ。倒れないようにはするから……ごめんね。じゃ、ちょっと待っててね」

志保「……」



~劇場~

茜「プロちゃんそれマジ!?」

若手P「マジだっての! 今この二周年の流れに乗って、話題性があるうちにバンバン仕事もらっとかないとな!」

茜「それはそうだけどちょっと勢い乗りすぎだよぉ! さすがの茜ちゃんも連日関西と関東往復はムリムリ!」

若手P「元気があれば何でもできる!!」

可憐「で、でもその……これじゃスケジュールが過密すぎます……」

若手P「ええ!? 可憐ちゃんがそういうなら……ほかの子にカバーしてもらうかなぁ」

茜「ちょっと茜ちゃんに対する扱いの差がだね、プロちゃんよ」

ガチャ

志保「お疲れ様です」

若手P「お、志保お帰り! どうだった今日は!?」

志保「普通です。ベテランさんはいますか?」

若手P「師匠ならまだ営業回りっすよ。業務報告なら俺がやっとこうか?」

志保「いえ、ここで待ってます」

――1時間後

ベテランP「――ん、了解。連日仕事入れてすまなかったな。明日はオフにしてあるから志保もゆっくり休むんだぞ」

志保「わかりました。……あの、ちょっとお尋ねしたいんですけど」

ベテランP「なんだい?」

志保「プロデューサーさん……あ、Pさんはその……ちゃんと休んでいらっしゃるんですか?」

ベテランP「あぁ……確か先月は一日休みをとってたはずだ」

志保「た、たった一日ですか?」

ベテランP「先月は大きなライブの前で、私たちも少々立て込んでいてな。丸一日休みにできる日がほとんどなかったんだ」

志保「……体壊しますよ」

ベテランP「心配ありがとう。だがまぁ今回は社長も気をまわしてくれたから、プロデューサー三人で上手く休憩はまわしていた。安心しなさい」

志保「……」

ベテランP「……Pさん、元気なかったのか?」

志保「最近眠れないって言ってました。昨日も3時間しか寝てないって……」

ベテランP「うーん……我々もあまり無理をしないようにとは言ってるんだがな。本人が中々に仕事を休もうとしないものだから困ったものだ……コーヒー飲むか?」

志保「いえ……仕事熱心な人なんですね。その……正直いままであまり深く関わったことなかったんですけど」

ベテランP「んー……そうだね。若手くんが入社してプロデューサー業に就いてからは、個別に担当しているアイドルもいないし。彼自身、昔のように積極的には……」

志保「……?」

ベテランP「おっと、そういえばそろそろ局の打ち合わせにいかねばならないんだった。積もる話はまた次の報告にでも聞かせてくれ。それじゃ」ガチャ

志保「は、はい。お疲れ様です……」

~劇場通用口~

志保「……」コツコツ

P「……」

志保「あ……お疲れ様です」

P「お、おお。お疲れ様。もう上がりかい?」

志保「はい。プロデューサーさんは……まだ、ですよね」

P「はは、いやぁ、まだ細々とした仕事がね……」

志保「……どうして、そこで立ってたんですか?」

P「え? あぁ、ちょっとその、眠気がさ。はは」

志保「眠れてないんでしょう? どうしても必要な仕事以外は、明日に残しておけば……」

P「うーん……まぁどの道、眠れないし……」

志保「体壊したらどうするんですか? 早く帰って休んでください。社会人なら健康管理もきちんとすべきです」

P「……うん、そうだね。できるならそうしてるし」

志保「え?」

P「あいや、はは。とりあえず残しちゃってる仕事だけ片づけてくるよ。はは……それじゃお疲れ様」コツコツ…

志保「………………」

一旦乙です

>>10
島原エレナ(17) Da
http://i.imgur.com/L1nax0C.jpg
http://i.imgur.com/mYXxAMr.jpg

>>10
春日未来(14) Vo
http://i.imgur.com/19kLq46.jpg
http://i.imgur.com/q7kyFri.jpg

>>12
野々原茜(16) Da
http://i.imgur.com/uNWumef.jpg
http://i.imgur.com/wEzBB9t.jpg

>>12
篠宮可憐(16) Vi
http://i.imgur.com/mNAE8JJ.jpg
http://i.imgur.com/iz59qMf.jpg

――翌日

~都内のカフェテラスにて~

志保「ムカつく」チュー

静香「……気分でも悪いの?」

志保「悪いわよ。あれだけみんなからも休めって言われてるのに、自分のことなんかどうでもいいみたいな受け答えばっかり。あんな人がよく二年もプロデューサーなんて続けてられるわ」チュー---- カラン

静香「あなたちょっと言い過ぎよ……真面目な人なのよPさんは。私も短期間だけ担当してもらったことあるけど、よく気の回る良い人だったわ」

志保「……確かに気は回る人ね。その気を自分の健康に回せばいいのに」

静香「……やっぱり志保から見ても心配になる?」

志保「心配っていうか……何を考えてるのかよくわからないのよ。どこかで……ウソをつかれてるみたいで」

静香「昔からそうなのよあの人。すごく私たちに気をつかってる感じがするのよね。仕事仲間とはああいう距離を置きたいだけなのかもしれないけど」

志保「…………私、気を遣われるの嫌いなのよ」

静香「だから私とは仲が良いのかしらね? あの志保がわざわざお茶に誘ってくれるなんて変わったものだわ」

志保「毒を吐くのに最適な相手があなたしかいないだけよ」

静香「光栄ですこと。……まぁそんなに気になるなら、一回とっ捕まえて本音で話してみたら? 悪い人じゃないから、真剣に話せば聞いてくれるわよきっと」

志保「……ケーキ食べる?」

静香「あなた3個目じゃないの……可奈じゃないんだからストレスを食で紛らわすのはやめなさい」

志保「(……ストレスね。なんで私があの人のことでストレス感じなきゃいけないのかしら)」

~夜の劇場~

P「…………」カタカタ カチッ

ベテランP「さて……そろそろ私たちも上がりにしようか」ギシッ

若手P「うっす! 俺もちょうどキリ良かったんで」

ベテランP「Pさんはどうだい? よかったらこの後軽く一杯行こうかと思ってたんだが」

P「あ、いえ。僕はもう少しだけやってしまいたいんで……」

ベテランP「そうか……志保から聞いたんだが、最近あまりよく眠れないそうだね。調子が悪くならないうちにきちんと休めよ」

P「……はは、すみません、どうも」

若手P「枕とか変えてみるといいかもっスよ? あとはオフに思いっきり運動するとか。海未ちゃんとかと一緒にランニングでもどうスか?」

P「ああ、それもいいかもね」カタカタ

ベテランP「……それじゃ、お先に。戸締りはよろしくな」

若手P「センパイお疲れーっス」

P「はい、お疲れ様です」

バタン……

P「…………」

P「…………」

P「……」カタカタ カチッ

P「……」タッ カタタ

P「………フゥーッ………」

P「…………」

――数時間後

P「……」カタカタカタカタカタカタ

P「……」カチッ

チッ… チッ… チッ…

P「(……まだ1時か)」

ヴーッ!

P「(!……誰だこんな時間に)」スッ



北沢 志保:まだ起きてますか?



P「……」



P:はい。もう寝るところですよ。



P「……」

P「……」カタカタ カチッ カタカタカタカタ

P「……」ボリボリボリ

ヴーッ!




北沢 志保:失礼しました。それではまた明日。おやすみなさい



P「……」ボリボリ

P「……」カタカタカタカタカタカタ



――さらに数時間後



P「(……4時か)」

P「(……一応、横になっておこう)」ポスッ…

P「………………」

P「(……7時前には音無さんが来てしまう……8時には二人も戻ってくるな。そのあと高山さん、田中さん辺りが朝出だったかな。北沢さんは……夕方から来るのか)」

P「……」



P「(明日が……来なかったらいいのに)」



――翌日、夕刻

環「――それでさ、でっかいアザラシがたくさんごろーんってなってるんだよ! おやぶんも一緒にみにいこーよ!」

ベテランP「そうだな。環と一緒ならいろんなことを教えてもらえそうだ」

キャッ キャッ



若手P「俺としては千鶴さんはもう少しカワイイ路線で行くのもアリだと思うんス! こう、あえて庶民的で自然派なカンジのモデルとしてアパレルと提携するつもりなんで、ヨロっス!」

千鶴「そ、そうですわね。そこまで熱心に言われるとそういうのもいい気が……」

アーダコーダ



小鳥「んーっ……ちょっと小休止しようかなぁ。プロデューサーさん、何か飲みますか?」

P「……」カタカタ

小鳥「プロデューサーさん?」

P「あ、いや。僕は大丈夫です」

小鳥「そうですか。何かおやつとかは?」

P「お気遣いなく」カタカタ カチッ カチッ

小鳥「そうですか……みなさんは何か御淹れしましょうかー?」

P「…………」カタカタカタカタ

志保「……」

P「……」カタカタ カチッ

志保「……お疲れ様です」

P「うえ! あ、お疲れ……どうかしたの?」

志保「……少しミーティングルームをお借りしたいんですけど」

P「あぁ……でも今ベテランさんも若手くんも打ち合わせ中だよ。あ、ユニットで話し合い?」

志保「プロデューサーさんとミーティングしたいことがあるので」

P「……えと、どこか営業先が遠いのかな? なんなら場所と時間もらえたらこっちで」

志保「いいから、ちょっとパソコンから離れてください」

P「え、あ、わかった……」カチッ



~ミーティングルーム~

志保「……」

P「……」

志保「……」

P「……」

志保「……」

P「あの、何か話でもあるんじゃないの?」

志保「……あるにはありますけど」

P「?」

>>27
大神環(12) Da
http://i.imgur.com/HJi4oTJ.jpg
http://i.imgur.com/4qVKOsX.jpg

二階堂千鶴(21) Vi
http://i.imgur.com/qyVZxwi.jpg
http://i.imgur.com/wqjq0yD.jpg

志保「昨日何時に寝たんですか?」

P「……えーと……」

志保「今朝起きたのは? 出社してきたのはいつですか?」

P「……それを聞いてどうするの?」

志保「どうもしませんけど。職場に不健康な働き方をしてる人がいたら、私たちも安心できませんので」

P「はぁ……いや、キミが気にするようなことじゃないよ。僕は僕のペースでやってるんだから大丈夫だ」

志保「子供だからってバカにしてるんですか? 他の人は見て見ぬふりしてるみたいですけど、昨日お風呂に入ってないでしょう。スーツも着替えてないし」

P「残業したまま事務所で寝泊まりしてたんだ。別に珍しいことじゃない」

志保「顔」

P「え?」

志保「気のせいなら問題ないですけど。相当やつれて疲れてる顔してますよ。そんなプロデューサーを見てアイドル達が安心して働けると思ってるんですか?」

P「…………お説教のためにわざわざ呼び出したのか?」

志保「はい。そうでもしないとずっと仕事し続けたままなんでしょう、どうせ」

P「大人には大人の仕事があるんだよ。アイドルが口出しすることじゃない」

志保「……!」カチン

P「もういいかい? まだ途中だったから戻らせて」

志保「あなたが正しい大人だっていうんですか? そうやって他人の気遣いも全部無視して、周囲への影響も考えずに無茶をするのが大人なんですか」

P「…………」

志保「……もういいです。この間一人で後片付けしてるのを見てちょっと優しい人だと思ったから、少し心配になっただけです。それも徒労でした。お時間取らせてすみません」

P「……北沢さんは真面目だな」

志保「!」

P「それに正しい。正しさを求める潔白で純粋な姿勢がある。若くて、とても綺麗な心を持ってるんだね」

志保「何が言いたいんですか? 子供には大人の苦労は分からないとでも?」

P「それもある。でも別にそんな苦労を経験しなくてもいい。いやしない方がいい」

志保「は……?」



P「……正しさに殺される人間もいる。正しくない自分に殺される人間もいるんだ。情けない話だけどね」



………………



奈緒「あ~Pさん? まぁ悪い人やないよ。昔は結構バリバリ営業にも行ってはった気ぃするけど……そうゆうたら最近あんま見ぃひんなぁ」



莉緒「Pさんのこと? うーん、私はよく知らないんだケド、このセクシーボディを前にしても全然目線を動かしてくれなかった記憶はあるわね。ちょっと元気のない人かな?」



百合子「Pさんですか? 良い人ですよ? よく送迎に来てくれるし……え、他には? ……う~ん……」



杏奈「……あの人、何か隠してる……気がする……悪いことじゃ……ないと思う……けど」



美奈子「痩せすぎ。そもそもいつも食欲がなさそう。ちゃんとご飯モリモリ食べてほしいのになぁ……」



社長「彼は……そうだな、ちょうど若手君とポジションを替わった辺りからはこう、正直今一つ覇気を感じなくなったというか……とても誠実で真摯な好青年なのだけどねぇ。もちろん、彼も我々と共に頑張ってくれているのは確かだよ」


………………



――数日後

志保「……プロデューサーさん」

P「……懲りないね、キミも。そんなに僕がいると迷惑かい」

志保「迷惑とかじゃないですけど……得体のしれない人が同じ職場にいるのは嫌なので」

P「はは、ひどい言われようだな……まぁでも、そう思われても仕方ないか」

志保「みんなの話を聞いてても、あなたは害のある人とは思えないです。でも、その……昔と比べると元気がないって話をよく聞くので」

P「昔ね……そうだね。劇場創設当初は僕もみんなと同じような気概で満ち溢れてたからね」

志保「今は違うって言うんですか? あなただって二年間、みんなと頑張ってきたはずなのに」

P「……場所、移そうか」

志保「え」

P「気分のいい話にはならないと思うから……少し甘いものでも食べながら聞いた方がいいよ。今日はもう仕事終わりだっけ?」

志保「え、ええ。一応」



~某ファミレス~ 

イラッシャイマセー オフタリサマデース

P「ふー……ごめんね、こんなに気を遣わせちゃって」

志保「別に……私が勝手にしてるだけですから」

P「こういうファミレスでもよかったかな? にぎやかな場所だと辛気臭い話も多少はマシだと思ったんだけど」

志保「ええ、恵美さんと一緒によく来ますから」

P「あぁ、所さん……そういえばこういうの好きだったな。まぁ、何かとりあえず頼みなよ。僕出すから」

志保「…………」

P「そんな睨まないでよ……話しにくくなるじゃないか」

志保「べ、別に睨んでるわけじゃ……」ポチ

タダイママイリマース

志保「……うつ病?」

P「らしいよ」

志保「らしいよって……そんな他人事みたいに」

P「うん……でもまさにそういう病気らしいよ。世間一般には『病気』としてはあまり認知されてないけど」

志保「……あの、私はよく知らないんですけど。それってなんか、死にたいとか考えてネガティブになっちゃう病気……なんですよね」

P「はは、そうだね。漠然と全部がネガティブになる病気かな。あくまで僕の場合は、だけど」

志保「いつから?」

P「んー……自覚するほど症状がひどくなってきたのは……若手くんと、営業担当を入れ替わったとき辺りかな」

志保「あ……」

P「はは……ホント、こういう話を人にするのって僕も気が進まないからさ……まぁ、その、他の人には内緒にしててね」

志保「……わかりました」

P「ごめんね。えーと……劇場設立した頃の僕がどんな感じだったか、覚えてる?」

志保「いえ。私は最初からベテランさんに担当してもらってますし……同僚の人がいる、くらいにしか」

P「そうだね、今まであんまり話したこともなかったしね。当時の僕は結構バリバリ営業回りに出る人間だったんだ。いわゆる『新入社員です! がんばります!』みたいな……はは」

志保「みたいですね。あまり劇場で見かけることありませんでしたけど……」

P「うん。外回りに出てウチの宣伝して仕事とってくることに夢中になってたからね。アイドルのみんなとは……正直ほとんど触れ合う機会がなかった気がする」

志保「ダメじゃないですか。プロデューサーがアイドルと関わらないなんて」

P「はは、ホントにね……ごめんね。周りが見えてなかったんだよその時は」

オマタセイタシマシター デラックスチョコレートパフェデゴザイマース

P「食欲あるね」

志保「い、いいでしょ別に」

P「それでも僕なりによかれと思って頑張ってたんだよ、その時は……バカだったよ。今でもバカだけど」

志保「……」パクパク

P「ベテランさんってさ。すごく頼りになるし仕事もできる人でしょ。アイドルのみんなも彼に懐いて、悩み相談事とかも彼の方に話してたみたいでさ。僕が担当してたアイドルもみんな、だよ?」

志保「あまり信頼されてなかったんですね」

P「だろうね。そういうのもあって、アイドルから認められたくて、余計に仕事とってくるのに躍起になってた。プロデューサーの仕事はあくまでアイドルに仕事を持ってくることだと思ってたから」

志保「……間違ってはいないと思いますけど」

P「そうだね。間違ってはいないけど正しくもない。そうして一年はバカみたいに奔走してた。『もっと頑張ったらアイドル達も僕を認めてくれる』なんて思いながら……」

志保「……」

P「要は自分のために頑張ってたんだな。アイドルのためじゃなくて。それじゃ嫌われて当然だよ……ちょっとコーヒーとってくるね」ガタ

志保「はい」

P「……」ズズ…

志保「プロデューサーさん、ご飯はちゃんと食べてるんですか?」

P「……ごめん。最近2日に1回くらいしか食べてない」

志保「え……体壊しますよ! 何か――」

P「ごめんな。吐いちゃうんだ。何食べても」

志保「っ……」

P「水分は摂れるから脱水にはなってないよ。まぁ……食べた方がいいのはわかってる。今どうにか慣らしてるとこなんだ」

志保「……」

P「えーと……それから、若手くんが新しく入社してきた。すごく気さくで前向きで、あっという間にアイドル達と仲良くなっちゃったよね」

志保「少しチャラチャラしてる気はしますけどね」

P「はは。こういう職場だしある程度はいいんじゃない。失敗も多い人だけど、それ以上に無邪気で明るいから、みんなも自然と彼を慕うようになっていったね」

志保「ええ……」

P「誰が見ても明らかに僕より適任だ。社長もすぐにそう判断した。『若い芽を育てていこう』って。で、僕が担当していたアイドルは一人、また一人、若手くんがメインにプロデュースしていくことになっていった」

志保「……」

P「気づいたら僕はベテランさんと若手くんの裏方でサポートする役割に落ち着いてた。この頃からようやく自分の存在意義に疑問を感じ始めた」

志保「裏方だって大切な仕事でしょう」

P「もちろん。でも僕は自分が思っていた以上に利己的で、視野の狭い人間らしかった……ゲホッゲホ」

志保「あ、だ、大丈夫ですか?」

P「はは、こんなにべらべらしゃべるの、久しぶりでさ……ごめんね」

P「はぁ……あの、北……志保こそいいのかい? さっきからネガティブなことばかり僕、垂れ流しちゃってるけど……」

志保「……いいです。そんなに溜め込んできたなら吐き出しておかないと毒でしょう」

P「……優しいね、志保は」

志保「優しくないです。それで?」

P「うん……僕がこの765プロに入ったのは、アイドルが好きだからなんだ。社長もそれを汲んで僕を雇ってくれた。でも――」

志保「でも?」

P「僕の場合の『好き』っていうのは、純粋な愛着とかじゃなくてね。もっと捻くれた欲求というか……アイドルに好かれる自分になりたかったんだよ」

志保「……なんか男の人らしいですね」

P「そうかな? 名誉欲と支配欲が入り混じった、薄汚い欲望だよ。みんなからチヤホヤされる可愛い女の子に好かれたい、独占したいっていうのは……低俗なガキの発想だ。プロデューサーになるものとしてはロクな動機じゃない」

志保「……」

P「キミたちは特に純粋で敏感な子達だ。仲良くしてくれたアイドルたちも気を遣って付き合ってくれてたんだろう。仕事で関わる必要がなくなれば、僕はもう誰と関わることもなかった」

志保「そ、そんなこと……」

P「志保の友達に、僕のことを友人だと思ってくれる人はいた? 精々キミと同じように仕事場にいるただの社員か、『仕事上は良い顔をしているプロデューサー』くらいの認識だったんじゃないかな」

志保「!」



――私も短期間だけ担当してもらったことあるけど、よく気の回る良い人だったわ

――まぁ悪い人やないよ

――良い人ですよ? よく送迎に来てくれるし……え、他には? ……う~ん……

――「……あの人、何か隠してる……気がする……

P「……ベテランさんと若手さんはとても良くできた人たちだ。彼らに嫉妬することも一度や二度ならずあった。でもそんなのはお門違いだし、僕は僕のできることを精いっぱいやって、アイドルたちの信頼を得たいと思っていた」

志保「……」

P「若手くんが企画した全国的なライブイベントがあった。比較的大きなプロジェクトで、新参が考案したこともあってベテランさんも協力していた。社長も期待を込めていたし、アイドル達もイベントを楽しみにしていた」

志保「……それ、キャラバンイベントですか?」

P「そうだよ。現在も進行中の一大プロジェクトだ。僕が企画したイベントで、みんながあそこまでやる気になっていたことはなかった。その時も若手くんの才能を妬んだけど、僕のするべきことは彼とアイドルたちのサポートを全力ですることだと割り切って、スポンサーや企業提携を集めることに必死になった」

志保「……」

P「僕なりに、裏方として、日陰者の仕事をやり続けた。若手くんは将来有望な人だし、嫌われ役をするべきじゃない。大企業の人たちに頭を下げて、馬鹿にされて罵られて、アイドル達を置いてひとりで地方営業に出たら、月に一度も劇場に顔を出せなくなった」

志保「……通りであまりみかけなかったわけですね」

P「ここ最近は二周年イベントも重なってたからね。でも誰も気にしてなかっただろ? 僕がいなくても」

志保「ぅ……」

P「……まぁ、それでも帰ってきて、無事にライブを成功させることができれば。アイドルたちの輝く姿を見れば、苦労もきっと報われると信じていたよ」




765プロ全国キャラバン。大きなイベントだったね。最初は天海さん、水瀬さん、双海さんたちに田中さん所さん、それにエミリーさん、北上さん……だった、かな。最終日のことは今でもよく覚えてる。



――ワアアアアアアアアァァァァァ!!

ベテランP「いいイベントだった……プロジェクトのスタートは成功だ。よくやったな若手」

若手P「うう……みんなよく頑張ったっス! 俺は……俺はみんなをほごりにおぼうっず!!」ズビィ

P「……お疲れ様、若手くん」

「「「――プロデューサーさんっ!!」」」



ライブで目一杯輝いていたアイドルたちが駆け寄ってくる。屈託のない笑顔で、仲間たちとその余韻を分かち合うために。
僕も今まで陰ながら頑張ってきたんだ。見ている側でもひとしおの感動はあった。



恵美「ああ゛あ゛~ん! ぶろでゅ~ざ~!!」ダキッ

若手P「うおお恵美ちゃん! マジお疲れっす! 最高っした!!」

エミリー「仕掛け人様、私……頑張ってきて本当に良かったです!」

若手P「俺も同じっす! 本当にありがとうみんな!」

琴葉「プロデューサー……! 見てくれてましたか!?」

ベテランP「しっかりと見ていたぞ。本当によく頑張ったな!」



皆、各々のプロデューサーに労いを求めた。彼女たちは本当に満足そうに笑っていたよ。



P「…………」






誰も僕のところに駆け寄ってくることはなかったよ。

「お疲れ様でした」って言葉だけが連続して投げかけられた後、社長に声をかけられるまで、僕は熱気冷めやらぬ舞台裏で間抜けに一人で突っ立っていた。


志保「…………それは……でも……」

P「普段から接してない人間なんだから、声のかけようもなかったんだろうね。その日は疲れが出たってことで打ち上げも欠席して、家で抜け殻みたいになってたよ」

志保「……………」

P「一応その翌日はオフをもらってたんだけどね。夜になるにつれて徐々に……自分が壊れ始めていくのがわかった」

P「僕は何のために嫌われた? 何のためにここへきた? 誰も僕を見てなんかいやしないんじゃないか? 僕はあそこにいるべきじゃなかったんじゃないか?」

P「一度考え出したら、もうダメだった。今まで生きてきた時間、765プロに入ってからのすべての行動、出会ってきた人たち、あらゆる経験が何もかも間違いで、無意味で、自分の存在が単なる害悪でしかないと」

志保「そんなこと! ……そんなこと、一人で決めつけるのは」

P「間違いだね。それも頭ではわかっていた。でもダメなんだ……そういう『気持ち』になってしまうんだ。自分自身が自分自身をすべて否定しようとする。そういう『気持ち』になってしまうんだ。そしてそんな自分をまた間違っていると考える自分がいる。おわりのない悪循環だ」

志保「……」

P「もう自分でコントロールが効かなくって、それでも我が身がかわいいってことはわかってるから、死にたくても[ピーーー]ない。そんな自分が許せなくて、壁や床に頭をぶつけたり、泣きわめいて奇声を上げたり、部屋のものを壊したりしていた。完全に自分がおかしいんだってわかったよ」

志保「……っ……」

P「……ごめんね。気持ちのいい話じゃないよね。つまりその……それからしばらくは毎晩悪夢にうなされるようになって、食事も全部逆流するようになってしまったんだ。流石に社員の人たちは僕の様子がおかしいことに気づいてくれたのか、一度病院に行くように勧められたんだよ」

志保「……それで、うつ病だって言われたんですか」

P「正確には抑うつ症状の傾向が強い、って診断されただけなんだけどね。まぁ……日常生活に支障が出始めていたのは間違いなかったから」

P「初めは睡眠導入剤と、精神安定剤、あと胃腸の薬を渡された。とりあえず様子見ってことでね」

志保「今も飲んでるんですか?」

P「うん。誰でも最初はそうらしいんだけど、薬の影響で今度は頭が停止したみたいに何も感じなくて来てさ。仕事の為に外回りに出たら何をしに来たのか忘れるみたいなことがよくあったんだ。これじゃ唯一役に立ってた仕事もできやしない。それがまた引き金になって、仕事もできず劇場にいるだけで吐き気と震えが止まらなくなってきた」

志保「そ、それは薬の副作用ではなくて……ですか」

P「副作用というか、薬の効き目が裏目に出たのかな。何も考えないでいる自分がさらにみじめになってきたというか……そんな状態をほかのアイドルたちに見られるわけにもいかないし、結局外でぼんやりとすることが増えてきてさ」

志保「別にそんなの……きちんと話せば」

P「みんなわかってくれるかもしれないね。でも……そういう時って本当に何もかもダメなんだ。人が怖いんだよ。自分が迷惑な存在だってことを叩きつけてくる存在だから。たとえ誰も口にしなくても、僕がそう感じてしまうから。それもまた申し訳ないと思うんだけど……」

志保「……………」

P「……少しやめようか? チョコパフェ溶けちゃうよ」

志保「……ぷ、プロデューサーさんも」

P「?」

志保「何か……何でもいいから、少しでもいいから。何か食べてください。ゆっくりで、いいですから……」

P「……でも、食欲が」

志保「目の前でそんな辛そうな顔してるの、見たくないです。あ、これは別にプロデューサーさん自身が嫌だってことじゃなくて、その、なんか心配になるから」

P「……うん、そうだね。じゃあ、ポテトでもつまもうかな」ポチ

タダイママイリマース

P「……ふふ」モグ…

志保「ど、どうしたんですか?」

P「あ、いや。人前で食事するの数ヶ月ぶりだからさ……吐くのが嫌で、打ち上げとかでも飲むだけにしてるもんだから」

志保「……そんな寂しいこと平然と言わないでください」

P「んー……確かにすごくさみしいよ。でも今は、志保がいてくれてるから、なんとなく食べようって気になってきたよ」

志保「そう……ですか」

P「こんなポテトフライが美味いと思うのもかなり久しぶりだな……味なんか普段感じないから」モグ…

志保「……こういう悩み……病気のことって、誰かに話したりしてるんですか?」

P「うん……一応社長には、それとなくね。いきなり倒れても申し訳ないし、首切るなら切ってくれって言ったよ」

志保「そんな急に――」

P「そしたらさ、『キミのような人を笑顔にすることができれば、ウチのアイドルたちはもう無敵だと思わんかね?』って。時間はどれだけかかっても構わないから、今度はアイドル達のために出来ることを、ほんの少しでもいいから手伝ってほしいって言われたよ……本当に仏様みたいな社長だあの人は。志保もポテト食べなよ」

志保「……」モグ…

P「それからは……とにかく誰に嫌われてるとか好かれるとかは、いったん意識の外に追いやるように努めた。今の僕がこれ以上壊れてしまわない程度の距離で、みんなのサポートをしていこうって思った。ベテランさんは何も言ってないのに察してくれたみたいでね。あの人にも逆らえないよ」

志保「……若手さんのことは、どう思ってるんですか? まだ……」

P「しばらくの間は、正直妬みの感情が抑えられなくて、アイドル達と楽しそうに話してるのを見ると死にたくなったよ。みんな本当に好きで彼のところに集まってくるのがわかるから。でも……」

志保「?」

P「若手くんの性格だろ? やっぱり本人とキチンと接してると『この人は、他人を大事にする人なんだな』っていうのが嫌でもわかっちゃうんだ。そのうちなんだか嫉妬するのも無意味に思えてきてね……ここ最近は頼りになる後輩として見られるようになってきたよ」

志保「よかった……んですよね? それは」

P「僕はそう思えるよ、今は。薬がなかったらどうなるかちょっと不安だけどね。はは…………まぁ。こんなところかな。まだ何も考えずにみんなと話ができるほど、僕は落ち着いて周りを見ることができないから。漠然とだけど……不安定な状態なんだよ」

イラッシャイマセ- ナンメイサマデショウカー

P「……だいぶ話しこんじゃったね。ごめんね、こんな鬱屈した話に付き合わせて」

サンメイサマ ゴアンナイシマース

志保「……それをせがんだのは私ですから、気にしないでください。それと」

P「?」

アリガトウゴザイマシター

志保「プロデューサーさんがいることを悪いと思っている人は、いないと思います。プロデューサーさんにも思うところはたくさんあるでしょうけど……そんなに謝らなくても、大丈夫です。少なくとも私には」

P「そう……だね。ごm……えっと」

志保「そういうときは、『ありがとう』っていうんです。言葉を変えるだけでも、ちょっとは意識が変わってくるかもしれませんし」

P「……かもな。ありがとう志保」

志保「別に。それよりここの食事代、ありがとうございます」

P「はは、ちゃっかりしてるなお前」

志保「顔を立ててあげてるんですよ。感謝してください」


………………

――夜

~劇場~

P「…………」カタカタ カチッ カチッ

ベテランP「……調子はどうだい」

P「あ、どうも……いやぁ、これがなかなか、はは」

ベテランP「若手も小鳥さんもすでに帰った。別に遠慮することないぜ、肩の力抜け」

P「……良くは……ないですね、正直」

ベテランP「だろうな。飯は食ってるか?」

P「……今日はなんとか食べられました」

べテランP「うんうん。前に志保がPさんのこと気にかけてたからな。私も……心配していないわけではない」

P「すみません……迷惑をかけてばかりで」

ベテランP「本当に迷惑ならさっさと追い出してるさ。Pさんは社長も、私や若手も頼りにするほどの働きをしてくれている。それは間違いないことだから、覚えておくといい」

P「……すみm……ありがとうございます」

ベテランP「……志保は優しい子だな」

P「ええ。本当に。どうしてあげればいいのか悩みます」

ベテランP「うん……私自身はあまりそういう贔屓はしないよう努めるクチなのだけども、志保の担当を移してもらうことくらいはできるんじゃないか?」

P「……」

ベテランP「どうかな? もちろんこれは単なる提案だ。Pさんがまだアイドルと関わるのを恐れていたとしても……北沢志保という子は少なからず、Pさんと互いに打ち解け合おうとしている予感はするがね」

P「……それでも、怖さはありますね。見捨てられるのはやっぱり……」

ベテランP「そうだな。だから私のお節介はここまでにしておこう。友人としてのお節介はね」

P「え……?」

ベテランP「正直なところね。キャラバンも含めて我々の仕事はさらに増えていく一方なわけだ。同僚としても、そろそろあの人数のアイドルを二人で管理するのは少々難しくなってきた」

P「……僕にアイドルを担当しろ、と?」

ベテランP「肩書きだけのプロデューサーという現状もあなたの重みに少なからずなっていることだろう。これは仕事仲間としての少々のプレッシャーだ。もちろん、あなたにも断る権利はあるが……」

P「……」ブルブル

ベテランP「……すまないね、しかしPさんの力を借りたいというのも事実だ。繰り返すがあなたの仕事の腕は社員一同買っている。これはそういう引き抜きの誘いだ。もちろん最優先はPさんの健康だから、結論を急ぐことはないのだけれど」

P「……アイドルに」

ベテランP「ん?」

P「アイドルのみんなに……嫌われるのは……怖い。いきなり僕が復帰したことを、怪しんで、今以上に距離を置かれるのは……怖い、です」

ベテランP「うん、そうか。では、もしそのように感じるようになってしまった時は、志保を頼るといい」

P「……頼る、ですか」

ベテランP「私たちはプロデューサーうんぬん以前に、彼女らのファンでもある。アイドルに癒され励まされ、頼るのはファンの特権だ。別にそれは下衆な欲望などではないさ。人間なのだから人に頼ることがあって当たり前だ」

P「……」

ベテランP「まぁ、これからの働き方の一つとして頭の片隅にでも入れておいてくれ。Pさんの健康のために一番よさそうな選択を我々も後押しするつもりだからな。それじゃ、今夜はこれで」ガチャ…

P「……」

P「……ふ、ふふ……」ポロ… ポロ…

P「みんな……良い人ばかりなのに」

P「バカだなぁ……僕はホントにっ……バカだ」ポロポロ…

…………

それから1ヶ月ほどして、僕は社長に一つ提案をした。

身勝手な理由で申し訳ないが、今まで休んでいた個別アイドルプロデュースの業務を徐々に復帰させてもらいたいこと。

その第一号には、アイドル北沢志保を任せてほしいということ。



社長はすんなりとこの提案を受け入れてくれた。ただし、少しずつほかのアイドル達の面倒も見るように協力していくこと。

決して無理はしないこと。辛くなったら誰かを頼ること。これらを条件として、だった。



薬の量はまだ減ってはいない。だが日中、特に志保といるときはわずかに食欲が回復し、吐き出すこともなくなってきた。

相変わらず夢に出てくるアイドルたちは、笑って僕を無視して走り去っていく。何度も何度も同じ夢を見続けて、睡眠時間は不安定なままだ。

そのことを志保に話すと、志保はなにかしら僕と一緒に行動しようとしてくれる。「別の記憶を上書きすればそれを夢に見るようになるかもしれない」とかなんとか。



眠るのは怖い。でも、起きたら志保が『おはようございます』とメッセージをくれる。それはとても安心することで、眠る前の唯一の支えにまでなっていた。



キャー シホチャーン!

志保「ありがとうございました。次のライブもぜひ来てくださいね!」

ウオオオオオオオオオオ!!

P「…………」

志保「……プロデューサーさんっ」タタッ

P「……お疲れ様。ソロライブで緊張した?」

志保「まぁ、少しは。でもしっかりやり遂げましたよ? 見てたでしょ?」

P「うん。……ありがとう志保」

志保「……お礼を言われることはしてませんけど。私は貴方がとってきてくれた仕事を成功させただけです」

P「そうだね。それでも、だよ」

志保「?」

P「……僕の嫌な記憶を少しずつ志保が塗り替えていってくれる。僕のこれまでの、すべてが良かったと思えるような、そんな瞬間を……今は君と一緒に作りたいと思う」

志保「っ……///」

P「これもすごく自分勝手な欲求かもしれないけど……志保?」

志保「……プロデューサーさん、変に直球過ぎるとこありますよね。別にいいですけど」

P「そ、そうかな。ごm……ありがとう」

志保「べ、別に褒めてませんから! ほら、行きますよ! 次は杏奈の担当を任されてるんでしょう?」

P「あ、待ってくれよ……これでも心の準備が……」

志保「大丈夫です。私はプロデューサーのこと……ちゃんと知ってますから」



――僕にとってこれは辛い病気だ。それは間違いない。

でもそのことを知ってなお僕を生かしてくれようとする人がいるのなら。

僕は彼らに目一杯の感謝を返したい。

そこにいてくれて、僕に出会ってくれてありがとう。こんな言葉しかいえなくてごめんね。

僕の手を取ってくれてありがとう。

お尻

>>33
横山奈緒(17) Da
http://i.imgur.com/hpWc3GR.jpg
http://i.imgur.com/L7tVp4m.jpg

>>33
百瀬莉緒(23) Da
http://i.imgur.com/3n2XsbT.jpg
http://i.imgur.com/iBQklt4.jpg

>>33
七尾百合子(15) Vi
http://i.imgur.com/T0VlWzU.jpg
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>>33
望月杏奈(14) Vo
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>>33
佐竹美奈子(18) Da
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http://i.imgur.com/mqPw0Jy.jpg

>>42
エミリー(13) Da
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http://i.imgur.com/m6idfy1.jpg

乙でした............救いがあってホッとしてる

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