様々なものが最後に辿り着く場所なのかもしれません

だから私も

おや、今度こそ綺麗な貝殻ですね

ショーウィンドウに飾っていそうなオブジェ

それに近い気がします

とても、とても美しい

ツンと尖った妖精さんの耳のように、音感が優れているらしいですよ

竪琴を胸元に、歌を心に、惹かれ合うものを共鳴させて

あれ？この例え変ですかね

妖精さんの耳は尖っていますよね？

人によっては違う？

イメージさせるものが違えば詩人失格です

ならばもう一度です

おや、今度こそ綺麗な貝殻ですね

ショーウィンドウに飾っていそうなオブジェ

それに近い気がします

とても、とても美しい

まるで細長いソフトクリームのような形状の貝殻

色はストロベリーとバニラとチョコレート

三色入り混じった味

食べる時は頭からですか？お尻からですか？

うまくして潰れないようにと頭を悩ませてしまいますよね

あれ何を言っているのですか私は

いつのまにか食べ物の話になっているではありませんか

チョココロネでもないのですよ

……

少しお腹が空いていたようです

でもこんな貝殻らしい貝殻を見つけたのです

でしたら、することは一つです

耳元に当てて、貝の音

ずっと、海の音


聴こえてくるでしょうか

「海未ちゃーん、海未ちゃーーん、海未ちゃーーーん！！！」

とても大きな穂乃果らしい声が

「せっかく海に来てるんだから、こんなところでじっとしてないでさ！」

いえ別にいいではありませんか

海辺で情緒に浸るというのも

確かに穂乃果から見れば、こんなところかもしれませんが

私からすれば居心地のよい場所なのです

明るい穂乃果らしいハキハキとした元気なことば

聞いているだけで穂乃果なんだなと

そう穂乃果は穂乃果ですが

穂乃果なんですよ

間違いなく穂乃果でした

「ほぇ？」

目を丸く見開いてよくわからない様子

疑問形のクエスチョンマークを出す人の顔はこんな感じ

そういう具体例を穂乃果は教えてくれます

何故でしょう

見ているだけで涙が出てきました

これがいわゆる多幸感というものでしょうか

それとも山頂でご来光でも拝んでしまったのでしょうか

じんわり滲みでた涙

少し流れるとなんだか流れるのが気持ちよくて止まりません

嗚呼

穂乃果

私が止まって悩んでいるときも

貴方はいつでも笑顔で大丈夫だよ

そういって何処かへとんでいってしまいましたね

潮騒のよう幾度と無く繰り返すうちに

なんだか立ち止まっていることすらも流石にバカバカしくなりましたよ

そうして追いかける

そのうちに止まっていたことも悩んでいたことも

何処かへ消えていってしまいました

だから消えたときは追いかければいいんだ

そうすれば迷ったことも忘れて何かを飛び越えていけるのですから

貴方に教えられたことなのですよ

それにしても、日差しが肌を刺しますね

外で遊ぶことが大好きだった

何をしていても楽しんで

気がつけば男の子が好きそうな玩具でも遊んでいる

このプラスチック玩具も貴方なら面白い方法で遊んでしまうのではありませんか

でもすぐに壊してしまいそうですね

あははやっちゃった、と悪びれもせずに

笑いながら走り抜ける校庭

それを追いかけながら私も成長していったような気がします

桜の樹の下で向日葵の種を食べる話をするかと思えば

紫陽花の匂いのする場所で蝸牛をつつき笑い転げた記憶も鮮明に

そういえばここへ来る前に梔子でしたか福寿草でしたか

それとも菊だったのでしょうか

黄色が目につきました

貴方の名前は穂乃果で植物から拝借したのでしょうけれど

どちらかというと穂が実った後の食べることに興味が注がれたようですね

私は女の子らしい花言葉や読書の嗜みを教えようとしましたが

いつのまにやら穂乃果の好きな漫画の話になってしまいましたね

外で遊べない雨の日は特に

でも穂乃果の勧める漫画は意外に面白いんですよね、ふふ

「もー海未ちゃん、思い出し笑いなんて趣味悪いよ！」

あら、いたのですか穂乃果

「さっきからずっといるよーー、それよりさ早く泳ごうよ－ー、じゃー競争ねー！よーいﾄﾞﾝ」

どこかのだれかの真似事でしょうか

そういって脇目もふらず走り抜けていきました

この勝負は明らかに私の負けですね

……

別にジュース奢りませんよ

さて、私も穂乃果の側にいきますか

どちらがいいのでしょう

左手にプラスチック玩具、右手に貝殻

穂乃果の喜ぶのは

左手を握りしめ私も貴方の場所へ




了