実力派エリート? 陽太郎 (17)
※第二次近界民侵攻から十年後の世界
※オリキャラもいっぱいでる(上記の理由からほとんどオリキャラ)
※遅筆、一週間に一回更新が目安
※書き溜めほとんどなし
※独自解釈があるかも
※地の文あり
以上を許せる方がいればどうか見てやってください……
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「よう、平気か? メガネちゃん」
「…………!」
『あっけにとられる』とは、こういう事なんだろうかと彼女はそのとき初めて思った。
――場面は少し前にさかのぼる。
(遅くなっちゃったなぁ……塾、間に合うかな?)
走るたびに左右にポニーテールを揺らしながら彼女は左腕につけたデジタル時計をチラッと窺った。
文字盤には『PM7:47』の表記。すでに日は沈み、辺りは暗く、空には星が煌々と瞬いている。
塾が始まるのは午後の8時からで、彼女はあと13分で塾に着かなければならないのだが、女子中学生
の……まして、運動が得意ではない彼女では、全速力で走ったってここから最低20分はかかってしまう。
「…………仕方ないか」
そう呟いた彼女はあきらめるのかと思いきや横道に逸れ、近くに人がいないかを確認したあと鉄線で
隔てられている区域に侵入した。
『立入禁止近界民出現警戒区域』と書いてある看板で隠れている部分に人ひとりが通れるくらいの隙
間があるのだ。
「ちょっと怖いけど……大丈夫、大丈夫! 走ればあっという間、この近道なら10分で着く……!」
恐怖を柔らげるべく自分に言い聞かせる。
彼女が近道として使用するそこは、五年ほど前に近界民による三度目の大規模侵攻があって以降、
『門』が頻繁に発生するようになり、警戒区域に指定された場所で、人っ子一人いないまさにゴースト
タウンと化した区画。そんな所を通るのだから彼女自身気が気ではなかった。住むものを失い、手入れ
の行き届いていない家屋が上げる軋みは、ある種悲鳴のようにも聞こえ、それが彼女の恐怖心をさらに
掻き立てた。
(あともう少し! もう少し……! 怖くない! 大丈夫……!)
目を瞑り、息を殺してひた走る。このまま行けば何事もなく警戒区域外に出られるはずだった。
『門発生、門発生、座標誘導誤差6.45』
「……!!」
『門』の発生を知らせるボーダー本部のサイレンが鳴り、アナウンスが流れる。『門』から出てきたの
は捕獲用の大型トリオン兵、通称『バムスター』
(近界民……! そんな!)
バムスターはその目で彼女を認識するなり、彼女を捕獲せんと巨体をしならせ勢いよく襲い掛かってき
た。
「……っ!!」
その時。
「『弾』印!」
突如現れた少年が「バウンド」という掛け声とともに大きく宙を舞い――
「行くぞ! 『風神丸』!」
そして一閃。
次の瞬間にはバムスターは真っ二つになり、地面に倒れこんだ。
バムスターの切り口はウネウネとした構造体がはっきりと確認できるほど鮮やかで、無駄がないように見
える。
「よっと! 着地」
何事もなかったように少年は着地をすませ、ヘルメットを被り直し、隣に浮かぶ兎の耳のような突起を持
ち白く炊飯器にも似た機械に問いかける。
「今の結構よかったろ? 白レプ」
『そうだな。剣筋はだいぶ鋭くなってきている』
その光景をわりかし近い距離で見ていたメガネでポニーテールな彼女は一瞬の内に起こった出来事に理解
が追い付かず呆然とヘルメットの少年と『白レプ』と呼ばれるものを見つめ続けていた。
彼女の視線に気づいたのか少年は彼女に近づき、手を差し伸べた。
――場面は冒頭へと戻る。
「よう、平気か? メガネちゃん」
「…………!」
差し出された手を恐る恐る握る。少年は彼女が手を握ったのを確認しやさしく引っ張り起こした。
「おれ、林藤陽太郎っていうんだ。……きみ、かわいいね名前は?」
「へ!? あ、えっと……桃園……桃園藤華」
彼女――藤華は、少年――陽太郎から投げ掛けられた言葉に一瞬困惑したが、藤華はからかわれているのだ
と思ったらしく、軽く受け流し陽太郎の質問に答えた。
「ほう……藤華ちゃんね」
「あの……そっちは……」
「んむ? あ、こいつか? こいつはレプリカ、おれも含めてみんなが白レプって呼んでる」
『はじめまして。私はレプリカ。ヨータローのお目付け役だ』
「あ、どうも」
ペコリと軽くお辞儀をする。
「えっと……林藤君」
「陽太郎でいいよ、歳も変わらないだろうし」
「じゃあ……陽太郎君」
「はいはい! なに?」
名前で呼ばれた陽太郎は上機嫌だ。というのも陽太郎は無類の女の子好きでかわいい子にはあちこちで声を
かけて回るくらいなのだ(まったく相手にされないが)当然女の子に下の名前で呼ばれようものなら鼻の下も伸
びるというもの。目の前の女の子も例外ではない。
「そのトリガーと白レプ君って……本部のトリガー……じゃないよね? 本部で見たことないし……」
「ああ、玉狛製のトリガーだからちょっと本部のとは規格が違う。だからランク戦じゃ使えないんだけど~……
……って、あれ? ……もしかして藤華ちゃんってボーダー隊員?」
「うん、隊員って言ってもオペレーター志望だけど……」
『オペレーター"志望"ということは、まだチームに所属していないということか』
「早く立派なオペレーターになるために今は勉強中なんだ――」
ここで藤華は自分の言葉の中に違和感を感じた。何かしている途中だったような――そんなことを思い起こさ
せるワード。そう『勉強』。藤華は、はっ……として腕時計を覗く。『PM7:57』と文字盤には映し出されている。
「……! ごめんね! 陽太郎君、白レプ君! そういえば私、塾に行く途中だったんだ!!」
「ほほう、オペレーターの勉強に加えて学校の勉強も頑張っているとは……やりますな」
陽太郎の渋いニヤリが炸裂する。そして同時に男気も爆発。藤華を抱え上げ陽太郎が尋ねる。
「塾はどっちだ?」
「え!? えっと……陽太郎君!? これは……」
まさかのお姫様抱っこに狼狽する藤華。記憶ではお姫様抱っこは父親と近界民大規模侵攻の際自分を救出した
レスキュー隊員にされたくらいである。
「今の時間帯だと塾が始まるのって午後八時くらいからだろ? あと3分しかないんじゃ地上を走ってたんじゃ間
に合わない。最短距離で行こう」
「最短距離……?」
「そ、」
そう言って上を指さす。どうやら屋根伝いで塾まで向かうらしい。
『ここ周辺で一番近い塾は三門学力増進塾だ』
「あ! そこ!」
レプリカがデータの中から探ってきた塾は一発目でビンゴ。彼の頭には(全身頭だが)三門市のすべてが詰ま
っている。
「よし! じゃあそこに行くか! 方角は?」
『こっちだ案内したほうが早い』
「しっかりつかまってろよ」
陽太郎はそうやさしく囁き藤華を落ちないようしっかりと抱きかかえ三門学力増進塾の入っているエスポワー
ル三門なるマンションへ急いだ。
本日はここまでです。書き溜めも死にました……
※ここから補足
林藤陽太郎(15)
今年の四月には高校生になるぴちぴちの中学三年生
彼の愛用しているトリガー『風神丸』はレイガストの攻撃特化版で
(つまり、通常レイガストの逆ver)もちろんオプションにスラスターもある。
ちなみに『印』は白レプが出している。
白レプ
玉狛の技術を目いっぱい注ぎ込み完成したレプリカ
ちびレプを解析し新たに命を吹き込んだものそのため、レプリカであってレプリカでない
用はレプリカのレプリカ。今は陽太郎のお目付け役。
暇してたら続きが書けたので、投下します。
「いや~可愛かったですな~]
藤華を無事に塾に送り届けた後、散歩を続行。陽太郎は藤華を抱きかかえた感覚の残る腕を見つめ、
余韻に浸っていた。しかし、その気分を壊すようにレプリカが一言。
『またこってり絞られるな』
「……それは言わない約束だろ?」
今まで考えないようにしていたことを掘り起こされ、ムッとした表情を浮かべる。すかさず陽太郎は
レプリカに反撃。
「ていうか、レプリカもトリガー使うの止めなかったんだから共犯だぞ」
『心得ている。ヨータローのフォローはできる限りするつもりだ』
「ならいいけど」
実は陽太郎は今年の一月にボーダーに入ったばかりのC級隊員であり、ボーダーに入隊してからひと月
しか経過していない。――もっともトリガー自体はずっと前から使っていたようだが、それは仮想戦闘
モードでの話。ちなみに入隊時の対近界民戦闘訓練では、一秒という記録を残している。それでも今季
は豊作らしくぶっちぎりで一位というわけではないらしい。
そんな、エリートとは言えないが実力派といって差支えのない陽太郎もC級はC級。正隊員以外の戦闘
でのトリガー使用を禁止しているボーダーの規律に照らし合わせれば陽太郎の行為は隊務規定違反にあ
たる。
それは、レプリカもよく理解していたが緊急時であったということと陽太郎の戦闘の才能、そして陽
太郎のとった行いの正当性(ボーダーとしては間違っている)を考慮し、多少の手心が加えられるので
はと考え、トリガーの使用を陽太郎に一任した。隊務規定違反はこれで三度目ではあるがそれでもレプ
リカはなんらかの罰則は免れないがボーダー側が陽太郎を手放すことはないと見ている。
「……遅くなると雷神丸がうるさいし、さっさと帰りますか」
母の様にうるさい同居人? の顔を思い出し夜の散歩を止め、陽太郎は帰途についた。
「諸君、私のいない間は元気にしていたかね?」
静まり返った玉狛支部に陽太郎の声がこだまする。
「ふむ? おかしいな」
『鍵があいていた、だれもいないということはないだろう』
その時、陽太郎の背後から一刀。手刀がヘルメットをたたき、陽太郎は声をあげた。
「おぶっ」
「『元気にしていたかね?』じゃないわよ。あんた何でまだここにいるのよ!?」
「……へ?」
陽太郎に鋭い手刀を見舞った彼女の名は、小南桐絵 27歳。年齢的にトリオン器官の成長は止まって
いるものの今でも現役のボーダー戦闘員である。というのも七年前に大規模な遠征を成功させたボーダー
の活躍で三門市の注目度が飛躍的にあがったことに関係がある。そのことで三門市の人口は年々右肩上がり、
ボーダーの隊員も十年前と比べて三倍以上に膨れ上がった。当然、経験のない隊員が増えることになり、
そこでボーダーは組織に厚みを持たせるため、トリオン器官の成長が止まった正隊員に対し戦闘員とし
て残ることを強く薦めた。それに伴いB級隊員であっても20歳を過ぎれば固定給が支払われることとなった。
もちろん、『ボーダーに入隊してから五年が経過していること』などの条件はある。
「陽太郎……あんた、まさか携帯見てないの?」
「……む? あ! 呼び出しかかってる!!」
陽太郎の携帯にはだいぶ前に本部からの呼び出しのメールが入っている。
「あんたまたトリガー使ったでしょ! そのことでボスもレイジさんも呼び出されてるんだから!!」
『だからコナミしかいないのか』
「そうよ、留守番頼まれてるの、雷神丸といっしょにね。……それより白レプ、あんたがついて
てなんでこういう事になるのよ!?」
小南の怒りの矛先は陽太郎のお目付け役であるレプリカにも向けられた。
『すまないコナミ、緊急時だった』
「そうそう、あれはトリガーを使わざるを得なかった」
「あんたね……!!」
こぶしを握り締め、肩をワナワナと震わせている。小南の怒りは沸点を超え今にも爆発しそうだった。
しそうだったのだが、二階から降りてきた一頭のカピバラによってその怒りは抑えられた。
「雷神丸……! よかった! こいつになんか言ってやって!!」
小南の表情が一気に明るくなる。そんな小南とは対照的に陽太郎の顔からは血の気が引いている。
こと陽太郎の扱いに関しては雷神丸の右に出るものはいないのだ。
≪陽太郎≫
「……! はいっ!!」
いつもとは違うトーンの低い声に、陽太郎は反射的に背筋を正した。
≪説教を聞きたい?≫
「……いえ!」
≪じゃあ、さっさと本部に向かいなさい≫
「……はいっ!! 行くぞ白レプ!!」
傍から見ていた小南やレプリカには、陽太郎と雷神丸が何を話しているのかはわからなかったが陽太
郎がたった二、三言で雷神丸に屈したことだけは見て取れた。
雷神丸に諭された陽太郎はレプリカとともにそそくさと玉狛支部を出ていく。
動物と話すことのできるサイドエフェクトというのも案外難儀なものかもしれない『副作用』とはよく
言ったものだと、小南は思った。
(……でも、雷神丸とは話してみたいわね)
本日はここまでです。早くダンガーさんを登場させたい。
次回は来週。これたら今週。
※ここから補足
小南桐絵(27)
現役バリバリのA級隊員。
十年前よりも断然強い、ものすごく強い。
今現在ボーダーの隊員数は約2000人でA級隊員は訳60名。全体の3%ほど。
十年前より狭き門になってるのに関わらずA級。強い。
雷神丸
成長するにつれ母性本能が開花。
七、八年くらい前から陽太郎の母親状態。
今は玉狛の全員にしっかりメスとして認識してもらっている。
あと(陽太郎に対して)強い。
今週はまさかの明日から土曜まで出張……
まだ全然続きが書けてません。日曜日までに書き上げるので、
待っていただけるとありがたいです
……話は変わりますが、
ビリーバット「このメガネ、こう見えて結構なキーマンなんだぜ」
迅「ほう」
修「……?」
こういうの誰か書いてくれませんかね……
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