モバP「こーひーな日常」 (33)

モバマスの小日向美穂ss

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1

―事務所

P「さ、きょうも元気にお仕事の時間だ」

P「ふあ…昨日遅かったからかな…いまいち眠気が冷めない…」

ガチャッ

美穂「あ、ぷ、プロデューサーさん!お、おはようございます!」

P「おう、美穂かおはよう。ずいぶん早いなまだ8時だぞ」

美穂「今日は学校が土曜日でお休みで…じゃ、じゃなくて!あのっ、あくび…眠そうで、だ、大丈夫ですか…?」

P「ああ、見られてたのか…平気さ、ちょっと動いていればすぐに眠気も…」

美穂「あ、あのっ、よければコーヒー淹れてきますけどっ!…ど、どうですか…?」

P「…ありがとう、もらうよ」

美穂「は、はいっ!今淹れてきますね!」

P(美穂はいそいそと給湯室へ向かい、数分後、お盆に俺用のマグカップを乗せて持ってきた)

美穂「ど、どうぞ!」カチャ

P「ありがとう」ズズズ

美穂「あ、あの…どうですか!?」

P「うまいよ、とても上手になってきてる」

美穂「そ、そういってもらえるととっても嬉しいですっ、えへへっ」

P「それにしても悪いな、毎度お茶くみみたいなことやらせて…」ズズズ

美穂「い、いえ!す、好きでやってることですから!それに…」

P「それに?」

美穂「な、なんでもないです!」カアアッ

P「あはは、そうか」ズズズ


P(土曜日、学校が休みの日には美穂はよく朝早くから事務所に来る)

P(他の人たちが来るまでこんな風にコーヒーを淹れてくれたり、他愛もない話をしたり…)

P(とてもゆったりとした時間を過ごせる)

P(週末の出勤日の密かな楽しみになってるのは、他のアイドル達にはもちろん、ちひろさんや本人にも秘密だ)

美穂「ぷ、プロデューサーさん?ニコニコしてますけどうれしいことでもあったんですか…?」

P「い、いや、なんでもない」ズズズ

P(どうやら顔に出ていたようだ…)

『モーニングこーひー:朝のゆるやかな時間を共に過ごす小日向美穂』

2

―レッスン場

美穂「はあ…、はあ…、はあ…」

トレーナー「よーし、今日のレッスンはここまで―っ!各自課題を確認しておくように!」

アイドル達「「ありがとうございました!!」」

美穂「…はっ!あ、ありがとうございました!」

―レッスン場廊下

P「おう、ここにいたか」

美穂「んん…くぅ…」

P「居眠りしてるのか…こんなベンチで寝てたりしたら風邪ひくぞ」ユサユサ

美穂「ん…ふぇっ!あ、す、すみません!私、ちょっと疲れてたみたいで…」ワタワタ

P「ん、お疲れ様。よく頑張ってるみたいだな」


P「今すぐ動けそうか?」

美穂「…ご、ごめんなさいっ、もう少し休憩してから…」

P「かまわないさ、そう言うと思ってほら、差し入れのミネラルウォーター」

美穂「あ、ありがとうございます!」

P「水分補給も大切だからな、そこで買ってきておいたんだ」

美穂「やけに準備がいいんですね…」ジトー

P「ライブが近いからな、今日は特に厳しくするってトレーナーさんが言ってたんだ」

美穂「もうっ、言ってくれてもよかったじゃないですか~!」ゴクゴク

P「あはは、ちょっと横座るぞ」スッ

美穂「あっ…」


P「…?ダメだったか?」

美穂「い、いやっ、ダメじゃないですけど…。あ、あのっ、私、今、そのっ、あ、汗臭くないですか…?」

P「あはは、大丈夫だよ」カシュッ

P(休憩がてら雑談をしながらミネラルウォーターと一緒に買った缶コーヒーを開ける)

P(横にはミネラルウォーターをこくこくと飲む顔を紅潮させた美穂)チラッ

美穂「…?」コクコク

P(こんな小柄な体で、汗びっしょりになりながら頑張ってるんだ。汗臭いだなんて突き放すわけがない)ジッ

美穂(プロデューサーさんさっきからちらちら見てきてる…やっぱり汗臭いのかなあ…うう~!)カアアゴクゴクゴク

『ホットこーひー:激しい運動や緊張で体を火照らせた小日向美穂』

3

―ライブ会場

美穂『み、みなさーん!今日は私たちのライブに来てくれてありがとうございまーす!』

雫『今日はみんなに私たちの魅力をもぉーっと知ってもらえるように頑張って歌いますよー!』

美穂『き、緊張してるけど!雫ちゃんと一緒に頑張ります!』

ワーワー

P「…」

P(穏やかでマイペースという点は似通っているのに言動が違うこの二人…)

P(かたや緊張しいのはにかみ屋、かたやおっとりしたのんびり屋)

P(お客さんの反応を見るにやっぱり相性がよかったみたいだな)

P(今回だけ試しに組ませたけど練習の時も仲良くやってたみたいだし、今日限りで終わらせるのももったいないかな…)

『ミルクこーひー:及川雫と抜群のコンビネーションを見せる小日向美穂』

4

―テレビ局ピロティ

美穂「あっ、プロデューサーさん…」

P「迎えが遅くなってすまなかったな。外じゃなくてロビーで待ってたらよかったのに」

美穂「す、すみません、中で待ってたら雪が降ってるのが見えたから…」

P「初雪だってな、積もらないといいが…」

美穂「わ、私は積もったのも見てみたいです!実家の方は暖かい地域でしたし…」

P「事務所周りの雪かきをするのは男たちなんだから勘弁してくれ」

美穂「えへへっ、冗談ですっ」

P「やれやれ…。おっと、立ち話してても冷えるだけだな。すぐ表に車止めてあるから行こうか」

美穂「は、はいっ」


P「そうだ、忘れてた。はいよ、差し入れのドリンク」ポン

美穂「えっ、二つ…?…あ、あっ、手がジンジンします~!」ワタワタ

P「こんな寒い中手袋もしないで立ってるから…それで少しはあっためておけ」

美穂「あ、あのっ、二つなのは…」

P「あったまったらいらない方返してくれ。俺の分だ」

美穂「缶コーヒーとココア…こ、ココアをもらいますねっ」スッ

P「そう言うと思ったよ。さ、今度こそ行こうか」ヒョイ

美穂「は、はいっ…はくちっ」

P「おいおい、やっぱ冷えてるだろ」

美穂「す、すみません雪は好きだけど寒さは苦手で…はくちっ」


P「しょうがないな、ほら」パサッ

美穂「あっ…」

P「俺ので悪いけど、マフラーがあるだけで違うだろ」

美穂「あ、ありがとうございます…」

P(それから美穂は車に乗り込むまで無言だった)

P(今回は美穂の行動がきっかけだったけど、これからはアイドルが寒中で待機することも考えて防寒対策を徹底させないとな…)

P(運転席で冷えかけた缶コーヒーを飲んで一息おいてから美穂に声をかける)

P「よし、美穂。寒いだろうけどじきにあったまるからちょっと我慢しててな」カチャッ

P(美穂は小さな声で何かを答えたようだが、エンジンの音でかき消されてよく聞き取ることができなかった)

美穂「…寒いけど、暖かいです。私の心が…。な、なんちゃって、えへへっ…」

『アイスこーひー:寒いけど暖かい、冬の小日向美穂』

5

―事務所

美穂(今日も学校お休みだけど早起きして事務所に来ちゃった)テクテク

美穂(最近は土曜日になるたびにこんな風に朝早くから事務所に行ってプロデューサーさんとお話してるなあ…)テクテク

美穂(迷惑だったりするのかなあ…)テクテク

美穂(あれ、事務所の部屋の中から声がする)

ちひろ「――…――」

P「…はい、すみません」

美穂(ちひろさん、この時間からこの部屋にいるのは珍しいなあ…)ガチャ

P「おう、美穂か。おはよう」

ちひろ「美穂ちゃんおはよう」

美穂「お、おはようございますっ」


美穂「あれ、今お二人で何か話してませんでした?」

P「ああ…何でもないんだ」

ちひろ「うふふっ、飲み物でも入れてきますね。美穂ちゃんは何がいい?」

美穂(あ、あれ?)「こ、ココアでお願いしますっ」

ちひろ「プロデューサーさんはコーヒーですよね。ちょっと待っててくださいね!」イソイソ

P「まだ何も言ってないんだけどな…まあいいけど」カタカタ

美穂(あ、あれ??)「あ、あの…プロデューサーさん…?」

P「ああ、美穂…。ちょっと今集中したいから静かにしていてくれないか?」

美穂(あ、あれれ???)「は、はい…」

P「…」カタカタ

美穂「…」ダイホンパラパラ

美穂(うう、プロデューサーさんいつもと感じが違う気が…)


ちひろ「プロデューサーさん、美穂ちゃん、飲み物が入りましたよ」カチャカチャ

美穂「あ、ありがとうございますっ」

P「ありがとうございます」ズズズ

P「…おいしい」

ちひろ「事務員たるもの、飲み物の淹れ方は一通り研究しましたからね!」エヘン

美穂「…」コクコク

P「あはは、恐れ入りました…」ズズズ

美穂「…」ズズッ

ちひろ「ふふふっ」ニコニコ

美穂(プロデューサーさん、忙しいみたいだったのに…)


ちひろ「あら、美穂ちゃん。ずいぶん調子が悪そう…」

P「本当だ。顔色悪いぞ」

美穂「…」ブルブル

ちひろ「幸い今日はレッスンだけの日ですし、早退した方がいいと思いますよ。ねえ、プロデューサーさん」

P「…ああ、連絡はこっちでするから、今日は家でゆっくり休んでくれ」

美穂「…は、はい」フラ

P「大丈夫か?きつかったら送っていこうか?」ガタッ

美穂「…。大丈夫です…」


―六日後、小日向美穂の部屋

美穂(あの日の土曜日から、事務所に行きたくなくて、プロデューサーさんと顔を合わせたくなくて、体調不良でお休みをとっている)

美穂(あの時の話、プロデューサーさんはやっぱりアイドルとの交流についてちひろさんから釘を刺されたんだろうな…)

美穂(きっと、私が余計なことをしたせいで…)

美穂(私はただ、プロデューサーさんとのんびりお話していたかっただけなのに…)

コンコン

美穂「お母さん?開いてるよ」

雫「こんにちわーっ、美穂さん」

美穂「し、雫ちゃん!?ど、どうして!?」

雫「美穂さんが来ませんからー、ちょっと心配になっちゃいまして―」


美穂「ほ、本当にごめんなさい!お仕事をほっぽり出しちゃって…」

雫「お仕事はプロデューサーさんが何とかしてくれてます―、それよりもみんな美穂さんのことを心配してますよー」

美穂「う、うう…」

雫「アイドルの子たちもー、ちひろさんも―、プロデューサーさんも―…」

美穂「プロデューサーさん…ね、ねえ、雫ちゃん」

雫「なんでしょうかー」

美穂「ぷ、プロデューサーさんって、わ、私のこと迷惑だって言ったりしてなかった…?」

雫「ありえませんよー」

美穂「そ、そんなあっさりと…」

雫「美穂さんがどう考えていようとー、プロデューサーさんが私たちのことを、美穂さんのことを迷惑に思うなんてそんなことは絶対にありえませんよー」

美穂「で、でも…」

雫「美穂さん大胆な行動をするのにー、考えすぎちゃうんですねー」

美穂「大胆って…」


雫「美穂さんの様子を見ていればすぐわかりますよー」

美穂「…」カアア

雫「プロデューサーさんはとぉってもいい人ですからねー」

美穂「…」カアアア

雫「さっきも言った通りプロデューサーさんが美穂さんを迷惑に思うことなんてありえませんよー」

美穂「で、でも…」

雫「ですからー、もぉーっと大きくかまえて、ぶつかっちゃいましょうー」

美穂「…」

雫「おっと失礼しましたー、もぉーっと、じゃなくて、どーんと、ですねー」

美穂「…う」ポロッ

雫「何ですかー?」

美穂「あ、ありがとう…雫ちゃん…」ポロポロ

雫「どういたしまして―、美穂さん―」


―翌日、事務所

P「さ、今日も元気にお仕事だ」

P(美穂が早退した日から一週間)

P(体調が悪いのなら仕方ないと思い美穂の判断に任せていたが、さすがに心配になって雫にお見舞いを代表してもらった)

P(単なる体調不良ならいいが、そうじゃないなら原因が思い当たらなくもない)

『ちひろ「プロデューサーさんの行動はパワハラに当たることもあることを自覚してくださいね」』

『ちひろ「たとえばいつもお茶くみをやらせたり、内心嫌がってるのにそれを無視したり…」』

『ちひろ「心当たりがあるって顔してますね…聞かせてください」』

『ちひろ「…うーん判断が難しいところですね…」』

『ちひろ「コーヒーくらいなら私が淹れてあげますよ。そうじゃなければ自分で淹れるとか…」』

『P「はい、すみません…」』


P(美穂はあの話の直後に来た。つまり、あの話を聞いて自分がパワハラされてるかもしれないと思って…)

P(でも恥ずかしがり屋の美穂は直接言い出せず、顔を合わせないことで抵抗しようとしてるのかも…)

P(そうだとすると俺が話しかけたり相談に乗るのは逆効果だし…)

P「ふあ…いろいろ考えてたら寝不足だ…」

ガチャッ

美穂「ぷ、プロデューサーさん…お、おはようございますっ」

P「み、美穂…」

P「じゃあ、俺たちはお互いに誤解してたのか…」

美穂「うう…ご、ごめんなさい!」

P「気にするなって。だいたい俺が美穂の厚意に甘えてたのがよくなかったんだ」

美穂「ち、ちがうんですっ」

P「これからは自分のコーヒーくらいは自分で…」

美穂「は、話を聞いてください!」

P「…」パチクリ

美穂「ご、ごめんなさい…でも、わ、私、プロデューサーさんにコーヒーを淹れて、そのあとおしゃべりすることが楽しいんです!」

P「…」

美穂「こ、これはパワハラじゃないはずです!」

P「わ、わかった。落ち着け…」

美穂「ま、まだです!もぉーっと、大きくかまえてぶつかっていって、わかってもらいます!ぷ、プロデューサーさんにも!ちひろさんにも!」


ちひろ「その必要はないですよ」

美穂「ち、ちひろさん…」

P「いつの間に…おはようございます」

ちひろ「美穂ちゃんの声、部屋の外にもよーく響いてましたよ」

美穂「あっ…うう…」カアア

ちひろ「プロデューサーさん、これはむしろ、止めたほうがパワハラですねよね」クルッ

P「う、うーん…そうですね…」

ちひろ「もちろん過度な接触はNGですけれど、これまでみたいにほほえましく接するならどんどんやってもらっても構わないと、さっきの声を聞いて思いました」

美穂「…」カアアア

P(しかし、はにかみ屋の美穂があそこまで自己主張するとはな…)

P(誰の影響を受けたものやら…)フッ

『ブラックこーひー:苦い思いや酸っぱい思いも経験して、少しずつ成長していく小日向美穂』

エピローグ

―ある土曜日の朝、給湯室

P「…」シュンシュンシュン

美穂「…」コポポポ

P「なんでこんな狭いところに二人で入ってるんだ、俺たちは」ジョロロ

美穂「わ、私はこの方がプロデューサーさんとたくさんお話できて、た、楽しいです!」サラサラ

P「危ないと思うんだけどなあ…ちひろさんめ…」

『ちひろ「でもプロデューサーさんも美穂ちゃんにお茶くみさせっぱなしってのはどうかと思うんですよ」』

『ちひろ「こうしたらどうでしょう、美穂ちゃんにコーヒーを淹れてもらう代わりにプロデューサーさんが美穂ちゃんの飲み物を作る!みたいな」』

『P「それってあんまり意味ないんじゃ…」』

『美穂「ええっ!い、いっしょにってことですか!?」』

『ちひろ「……ええ、もちろん!!」』

P「まったく…」ハァ

P「しかし、美穂はいつまでたってもココアか…」

美穂「す、すみません、苦いのは苦手で…で、でも、プロデューサーさんのはちゃんと愛情をこめて淹れてますから!」

P「責めてるんじゃないさ。気にするな」

美穂「ちひろさんみたいに豆を挽いてから淹れるのは難しいですけれど、粉のコーヒーでもおいしく淹れる方法を教えてもらいましたし…」

P「本当に淹れるの上手になったな」

美穂「ふぇっ!あ、う、嬉しいです!」カアア

P「さて、二つともできたな、むこうに持ってくか」

―事務所

雫「わぁー、とっても美味しそうな香りですねー」

P「おう、おはよう、雫。今日はずいぶん早いな」

ちひろ「おはようございます!本当にいい香りですね。上手ですよ、美穂ちゃん」

美穂「あ、ありがとうございます!で、でもプロデューサーさん用の一杯しかなくて…」

雫「ふふっ、残念ですー」

ちひろ「残念ね、雫ちゃん。今私が淹れてきてあげますよ」

美穂「ご、ごめんなさいっ…」

P「俺たちが給湯室に行く前には二人ともいなかったんだし仕方ないさ」

雫「そうですよー、それより、冷めないうちにお二人とも飲んだ方がいいですよー」

P「…そうだな」

美穂「そ、そうだね…」

P(おそるおそる熱いココアをすする美穂)

P(ニコニコしながら見ている雫)

P(給湯室からはちひろさんの豆を挽く音やお湯を沸かす音)

P(美穂の淹れてくれたコーヒー)ズズズ


P「うん、うまい」

美穂「ほ、本当ですか!?」パァッ

P「ああ、いつもありがとうな」

『レギュラーこーひー:いつも通りの生活の中にいる、いつも通りの小日向美穂』

以上です。ありがとうございました

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