【俺ガイル】海老名姫菜「私の想い」 (35)
俺ガイルのSSです。
7月14日は海老名姫菜さんのお誕生日ということで、一本。
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私には、想いを寄せる人がいる。
けれども、その人にこの想いを伝えることは絶対に出来ない。
伝えてしまったら、きっと全てが壊れてしまう。
だから、胸のうちにそっと秘めるの。
私は、こうやって側で笑っていられるだけで良い。
あなたにとって私はただの友人だとしても、私は──
三浦「海老名、どしたん?」
海老名「ん、どうもしてないけど、優美子こそどしたの?」
三浦「いや、ボーッとして他っぽかったらから、なんかあったんって思ったんだけど」
海老名「……いや、最近隼人くんがヒキタニくんと仲良くしてるっぽくてね、ハヤハチが捗ってしょーがないんだよっ!!」
三浦「あー、はいはい、いつものね……」
結衣「あはは、ほらティッシュあるよ」
三浦「……でも、そだね。最近、隼人がたまーにヒキオと一緒にいるのを見る気がする」
結衣「うーん、まぁ、仲が良い人が増えることはいいことなんじゃないかな?」
海老名「仲が良い人が増える……つまり隼人くんのハーレム……あら、ユイ、いいこと考えるね」
結衣「あたし何か変なこと言った!?」
三浦「あーはいはい、自重しな海老名」
海老名「ぐ腐腐腐……」
三浦「……でも、他にも最近、隼人の知らないこと、多くなってる気がする」
海老名「……」
結衣「優美子……」
海老名「……優美子は、隼人くんのことをよく見てるんだね」
三浦「えっ、いきなりどうしたん……」
海老名「大丈夫だよー。優美子ならきっと、隼人くんのことを分かってあげられるよ」
結衣「そ、そうだよ、優美子! 元気出して!」
三浦「海老名、結衣……ありがと」
そう、これでいいの。
優美子には自分の想いに対して正直に向き合って欲しい。
そして、真っ直ぐに突き進んで欲しい。
出来れば、ずっと、大好きな今の場所の空気を変えたくはなかった。
でも、それは優美子の為にならないから。
だから、私は彼女の背中を押す。
その結果、私がどうなるかは分からない。
どのみち、誰にも理解できないし、理解されたくもない想いだ。
その想いを悟られないようにする為に自分を偽り、誤魔化し、そして嘘を吐き続ける。
だから、自分に正直な彼女がとても眩しく見えて。
そして、私は自分が嫌いなのだ。
結衣「ええっ、優美子、隼人くんに告るのっ!?」
三浦「……うん」
海老名「ユイ、ちょっと声大きいよ」
結衣「あっ、ごめんつい……」
三浦「やっぱ、厳しいかな」
結衣「そんなこと、ないと思うけど」
三浦「本当は少しさ、駄目かもしれないって思ってんの」
結衣「優美子……」
三浦「あーしは本気。だけど、隼人はどう思ってるのか、よく分かんない時がある……」
結衣「そんな、誰にでもあることだって」
三浦「でも隼人のは、他の人とは、なんか違う気がするんだよね」
海老名「……」
三浦「やっぱ、告らないでさ、今の楽しいまんまでやっていった方がいいんじゃないの、とか──」
海老名「──優美子、大丈夫。優美子の想いはきっと隼人くんにも通じるはずだよ。自分の想いを、正直に伝えて」
三浦「え、海老名?」
海老名「……あはは、もしも隼人くんが優美子と一緒になったらハヤハチは封印しないといけなくなっちゃうね、それだけは残念だなぁ」
結衣「姫菜……」
海老名「ぐ腐腐腐、その時はあれだね、次はトベハチとかもありなのかなぁ……あ、そっちも駄目になっちゃうのかもしんないのかな、ね、結衣?」
結衣「ええっ、なんであたしに聞くの!?」
三浦「はぁ……でも、あんがとね、海老名、結衣」
海老名「何もしてないけどねー」
結衣「頑張ってね、優美子!」
いつか、いつかは訪れるということを分かっていた。
その覚悟も、とうに出来ている。
優美子ならば、決して遠くない日に、その想いを打ち明ける日がやってくると。
それでいい。
それでこそ、私が応援している三浦優美子だ。
いつだって自分に正直で、真っ直ぐで、そして曲がったことを嫌う子。
だからこそ、私にとって輝いて見えた。
私は、心より優美子の恋の成就を願っている。
……その願いは決して偽りじゃないって。
そう、自分に嘘を吐き続けていたのかもしれない。
三浦「あーしはっ、隼人のことが好きなの!」
葉山「……」
三浦「もっと隼人のことを知りたい、もっと近くなりたい! だから……あーしと……!!」
葉山「優美子、そこからは俺に言わせてくれ」
三浦「!!」
葉山「俺も、優美子のことが好きなんだ。だから、俺と付き合ってくれないか」
三浦「……うん!!」
戸部「っべーわ、とうとう隼人くんも彼女持ちかー」
葉山「おいおいあんまり茶化すなよ」
大和「これからは彼女のことばかり気にするようになるんだろうなー」
大岡「それなー」
葉山「そんなことないって。ただまぁ、出来れば男である俺から告白したかったんだけどな……」
結衣「おめでとう、優美子!!」
三浦「結衣、ありがとう……あれ、ところで海老名は?」
結衣「え、姫菜はそこに……あれっ、さっきまではそこにいたと思うんだけどなぁ……」
海老名「……」
海老名「おめでとう、優美子」
海老名「友達としてさ、本当に嬉しいよ」
海老名「……なんで」
海老名「なんで、直接言えないのかなぁ」
海老名「やっぱり……」
海老名「私は、腐ってるんだ」
優美子は隼人くんに想いを告げ、そしてその恋は成就した。
それはとてもおめでたいことだと思う。
ならば、私は友人としてそれにおめでとうと言ってあげるべきなのだ。
それなのになんで。
なんで私は逃げてしまったのだろう。
私は優美子の恋が実ることを願っていたはずなのに。
どこかで、それを素直に祝えない私がいるんだ。
最低だ、私。
大好きな友人の恋の成就すら喜べないなんて。
そんな腐った私に、優美子のことを好きだなんていう資格なんかありはしない。
元々、私と優美子じゃ釣り合わない存在だったんだ。
こうやって、友人関係を持てているだけでも奇跡と言ってもいい。
そう、夢を見ていただけなの。奇跡の夢。
だから、今回の出来事は夢から覚めるいいきっかけ。
やはり私の青春ラブコメはまちがっている。
いい加減に、このまちがった想いを捨てないと──
──海老名っ!!
海老名「……優美子!?」
三浦「あんた、なんでこんなところに……なんでそんな泣いてんの」
海老名「えっ、泣いて……?」
海老名(その時自分の目に手をやって、はじめて自分が泣いていることに気が付いた)
海老名「あ、あはは、これは嬉し涙だよ、優美子、良かったね、本当に──」
三浦「嘘つかないでよ」
海老名「……!」
三浦「海老名がなんでここにいるのかは知らない、でも今なんとなく嘘ついてんのは分かる」
海老名「嘘なんて、ついてな……」
三浦「無理して言ってんの、あーしから見ても分かんの。教えてよ海老名、何を隠してんの?」
海老名「……言えないよ、絶対に言えない」
三浦「なんでよ、あーしは海老名からそんなに信用なかったの?」
海老名「逆だよ、私は優美子のことは信用してるよ。だからこそ言えない」
三浦「訳、わかんない」
三浦「なんか、海老名、今すっごい距離ある気がする……このまま離れていっちゃいそうで、それは嫌」
海老名「……」
三浦「教えてよ、海老名。今何を考えてるのか。自分の想いを正直に伝えろって言ったの、海老名じゃん」
海老名「……はは、そういえばそうだったね」
三浦「あーしは知りたい、海老名のことを」
海老名「……そうだね、じゃあ言っちゃおうか……どのみち、もう叶わないことだしね」
三浦「……?」
海老名「私さ、優美子のことが好きなの」
三浦「え、いきなりどしたん、あーしだって海老名のこと」
海老名「違うの、優美子。私はね、一人の女として優美子のことが好きなんだ」
三浦「──え?」
海老名「あはは、驚いたでしょ。今までとべっちとか、他の男子とかを避けてたのも、優美子のことが好きだったからなんだよね」
──海老名、他のクラスの男子から紹介してくれって言われてるんだけどさ。
──あ、じゃあもういいや。
三浦「あ……」
海老名「気持ち悪いでしょ、同性愛なんて。それに、優美子にはもう彼氏がいるしね」
三浦「あ、あーし、今まで、海老名に……!!」
海老名「いいの、そんな気に病まないで欲しいな。でも、嘘ついちゃったことはごめんね。心のどこかで、少し隼人くんに振られた方がいいなんて思ってる私がいたの」
三浦「え、びな……」
海老名「……一度壊れちゃったものは、もう元には戻らない、かな。ごめんね、優美子。本当は最後の最後まで隠し通すつもりだったんだけど、ボロ出しちゃった。これじゃあもう今まで通りにはいかなくなっちゃう」
三浦「待ってよ海老名、これで終わりなんて、納得いかない」
海老名「本当にごめん、優美子──大好きだったよ」
三浦「海老名っ!!」
海老名「っ、離して! もう終わりなんだよ、全部。もう元には戻らない」
三浦「そうかもしんないけどっ! そうかもしんないけど……でも、こんないきなり海老名がいなくなるなんて、あーしは嫌」
海老名「……」
三浦「でも、あーしにはどうすればいいのか分かんない……教えてよ、海老名。あーし達はどうすればいいの」
海老名「……優美子」
三浦「……あーしは隼人のことが好き。だから、海老名の想いには応えられない。でもっ、海老名のことだって好き……!! それは友達としてかもしんないけど、でも!!」
海老名「……なんで。私は、優美子の恋は叶わない方が良いなんて思ってたんだよ」
三浦「それでも!! ……海老名と別れるのは、やだ……」
海老名「──!!」
三浦「ねぇ、あーしはどうすればいいの……教えてよ……!!」
海老名「……優美子、ありがとう。そう言ってくれただけでも、私はとても嬉しい」
三浦「海老名……」
海老名「優美子がそう言ってくれたんだもん、いなくなったりしないよ。これからも友達としてだけど、よろしくね……でも、その前に、ちょっとだけ一人でいさせて」
三浦「海老名、本当だよね。絶対に戻ってくるよね」
海老名「うん。約束だよ。絶対に戻るよ……おめでとうは、その時に言うね」
そう約束をした後、優美子は隼人くん達のところへ戻っていった。
だから今ここにいるのは私一人。
空を見上げて、涙を拭く。
海老名「優美子が、ああ言ってくれたんだもんね」
私の恋は、成就はしなかった。
こんな醜い本音も曝け出しちゃって、もう優美子と友達としてすら付き合えなくなっちゃうかなって思ってた。
それでも。
私の本音を聞いた上で、優美子は私なんかと別れるのはやだと言ってくれた。
ズルいなぁ、もう。
大好きな人にそんなことを言われたら、離れられなくなっちゃうのに。
海老名「……そろそろ、戻ろうかな」
最後にもう一度、空を見上げた、
雲一つなく、青ガラスのように澄み切ったその空は、まるで私の心と同じように晴れ渡っていた。
了
完結です。
読んでくださった方、ありがとうございました。
三浦って海老名呼びだっけ?
>>26
そうです、意外なことにずっと海老名呼びですね。
ただ私の所持している原作7巻の「あんま姫菜にちょっかい出すの、やめてくれる?」のセリフだけ何故か姫菜呼びでした。誤植……?
それとどうでもいいことなんですが、このスレを完結させた後にすぐにHTML依頼投げたら誕生日の今日中にどっかのまとめサイトにまとめられるかな、と思ったところ、えすえすゲー速報さんがわずか15分ほどでまとめてて驚きました。まる。
このSSまとめへのコメント
ゆっりゆらら ゆゆっゆるゆり
ゆっりゆらら ゆゆっゆるゆり