修学旅行前日。帰り道。
海老名「あの……どういうことかな?比企谷君?」
八幡「いや、だからさ。戸部の告白を断るからグループが気まずくなるんだろ?告白も承諾して普通に付き合うんなら、気まずくなるってことはなくなるんじゃねーの?」
海老名「…………ごめん。今は誰かと付き合うとかは、ちょっと」
八幡「………そうか。ならまぁ、仕方ない。どうにかしよう」
俺ガイルSS。シチュエーションとか時間軸とかちょっとおかしいです。
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海老名「ていうか、ちゃんと気づいてくれてたんだね。私の本当の依頼」
八幡「ん?あぁ、まぁ、人の心を見透かすのは得意だからな。見たくない物ばっか見て、おかげで眼が腐っちまった」
海老名「それに、そんなにはっきり口に出して言ってくるとは思わなかったな。ちょっと意外」
八幡「ん?そうか?俺は元からこんなんだったと思うが……それに、言葉は分かりやすくなきゃ意味がないからな」
海老名「もっとも、口にはっきり出せない事のせいでこんなことになっちゃってるんだけどね……。ごめんね?丸投げしちゃって」
八幡「別に?俺がやりたいからやるんだ。あんたらのグループが暗いと、クラスまで暗くなっちまう。俺みたいなぼっちにはどうでもいいことだが、一緒になって暗くなってるあいつの顔は、見たくない」
海老名「……あいつ?」
八幡「……ノーコメント」
海老名「まぁ、大体予想つくけどね」
八幡「ノーコメント」
海老名「……葉山君でしょ?」
八幡「ノーコメ……いやおい」
海老名「ぐ腐腐」
八幡「はぁ……。まぁ、明日は俺なりになんとかする」
海老名「うん。ありがとうね……本当に」
八幡「それから、あんたも、もう少しに素直に生きたらどうだ?」
海老名「……?」
八幡「俺が言うことじゃないかもしれんが……。まぁ、その、なんだ。あんたが思うほど、人間はめんどくさくねーよ。もっと単純に考えていいんだ」
海老名「……それも『あいつ』さんが君に教えてくれたこと?」
八幡「……どうだかね。俺は家に帰る。じゃあな」
海老名「えー、可愛い女の子は送ってくのがルールでしょー?」
八幡「自分で言うか……。まぁ、いつもならそうしたかもしれんが。今日はちょっと事情があるからな。さいなら」スタスタ
海老名「……行っちゃった。まぁそんなに距離ないから別にいいけど……」スタスタ
???「え、海老名さん?」サッ
海老名「………」クルッ
戸部「海老名さんじゃーん!っべーわ。マジっべーわー!こんな夜道に女の子一人にできるわけないっつーかー」
海老名「………」
戸部「送ろうかー?海老名さん送るよー?」
海老名「……戸部っちこっちだったっけ?」
戸部「えっ、や、喉渇いたからジュース買いに来たっつーか。そ、それより送ろうかー?」
海老名(多分、結衣が発案して比企谷君がアシスト、かな……。私が言っていいことじゃないけど比企谷君も大変だなぁ…)
海老名「えーと、別にいいかなー」
戸部「えっ、でもほら海老名さんみたいな可愛い女の子が一人じゃ危ないじゃん?ほら最近さぁー危ないじゃん?」
海老名「いや、別に……」
八幡『もっと単純に考えていいんだ』
海老名「………」
戸部「海老名さん?え、海老名さーん?」
海老名「……うん、じゃあ、送って貰おうかな」
戸部「………!オッケーオッケー!全力で送るわー!」
海老名「……へー……」
海老名(付き合うという選択肢、ね)
戸部「しかもー」
海老名(悪い人。ではないと思う。職場体験の犯人がまだ解りきってない以上、あまり断定的な評価は下せないものの、彼はまぁ、いい人だとは思う)
戸部「んでねー。あいつがさー」
海老名「ほー」
海老名(全体的にチャラチャラしているけれど、普段接している限りは特に嫌な感情はもたない。少しおこがましい言い方になるけれど、彼が私を好いてくれている事実は、まぁ、嬉しい。嬉しいが)
戸部「そしたらさー。俺もさー」
海老名「まぁねー」
海老名(やっぱり、そこまでだ。いくら彼のことを見つめなおしても。いつか結衣に言った『いい人』以上の評価にはならない。付き合おうなんて選択肢は、やはりない)
戸部「んでー………?」
男a「ちょっとそこのおじょーさん♪」
男b「……」ニタニタ
戸部「な、なんすか、あんたら」
男a「あー、お前は関係ないから」
男b「早く帰れ。邪魔」
海老名(わー、ベッタベタ、多分これも結衣発案)
海老名「……なんですか?」
男a「おにーさんとあーそぼっ!」
男b「あーそぼっ!」
海老名「……きゃー助けてー戸部っちー」
戸部「お、おぉ…お、俺ら急いでるんで?」
海老名(…………あれ?)
男a「やー、ちょっとそれはないでしょー」ガシッ
海老名「……ひっ」
戸部「ちょ、あんたらなんなんすか!海老名さんから……」
男b「あーお前マジうっぜキレたわ」ボゴッ
戸部「……ゲフッ」
海老名「戸部っち!」
男a「ヒューッ!黄金の右ぃっ!」
男b「おら、これ以上殴られたくなかったら帰れ」
戸部「ひっ、ひぃぃっ!」ダッ
男a「うっわダッセ!夜道に女の子一人置いてくとかさー!」
男b「笑えねー!」
海老名「……!」
男a「つーわけでさー、おじょーさんはおとなしく付いて来てくれるよね?」
男b「俺さー、女の子は大事にする男でさー。できれば綺麗な体のままでヤりたいんだよねー」
男a「ヒューッ!紳士!ジェントルメェン!」
海老名「………」
海老名(怖かった。ただただ怖かった。今からどうなってしまうのか解らないから。いや、解ってしまうから。怖かった。掴まれた肩の、嫌な感触が体全体に広がり包まれて、体から力を奪って行く)
男b「あーでもあんま胸でかくねーしなー。殴りながらやる方が興奮するかも」
男a「いやいや俺のことも考えろや!」
海老名(あぁ、まぁ、こんなもんだよね。実際。だってただの『いい人』だもんね。そのレッテルを貼ったのは他ならぬ私で、彼に『いい人』以上のことを期待してはいけない。仕方ないよ。仕方ない)
海老名(彼に、私は救えない)
戸部「___海老名さん!」
海老名「………え?」
戸部「避けて!」ブンッ
男a「あん?なんっ、熱っ!あっつ!」
男b「んだっこれ!コーヒーか!」
戸部「海老名さん!今の内に!」ガシッ
海老名「えっ、えっと、うん!」ダッ
海老名「………え?」
戸部「避けて!」ブンッ
男a「あん?なんっ、熱っ!あっつ!」
男b「んだっこれ!コーヒーか!」
戸部「海老名さん!今の内に!」ガシッ
海老名「えっ、えっと、うん!」ダッ
戸部「ハァッ、ハァッ、も、大丈夫だと思う」
海老名「う、うん」ヨロッ
戸部「………」
海老名「………えと、ありがと」
戸部「………俺さぁ」
海老名「………?」
戸部「………一回、本気で逃げたんよ。すっげぇすっげぇすっげぇ怖くて」
海老名「……え?」
戸部「一回殴られたぐらいでさぁ……葉山くんなら、もっとかっこよくやったんだろなぁ……ダッセぇなぁ、俺ー……」
海老名「……えっと、いや、それでも助けに来てくれたじゃない。私、すごく怖くて動けなかったよ?」
戸部「それは、海老名さんがあいつらとどっか行っちゃうのが、嫌で…。それに海老名さんに、怖い思いさせちゃったし……」
海老名(………なんで?私をちゃんと無事に助けたのに、なんで彼は、落ち込むのだろう。いつもみたいにチャラチャラしないで、こんなに真面目な顔をするのだろう)
海老名(たった一度でも、私に背を向けてしまったから?)
戸部「もっと人がいたら、あのまま、多分俺逃げてたし…」
海老名「……かっこよかった!」
戸部「……え?」
海老名「かっこよかった!戸部っち、かっこよかったよ!」
戸部「……そう?」
海老名「そうそう!かっこよかった!」
戸部「お、おぉ!っしょ!?っしょ!?マジ俺ヒーローだわー!よくやったわ俺ー!」
海老名「ふふっ、本当にありがとね」
戸部「お、おぉす!」ドキッ
海老名(……………単純だなぁ……でも)
八幡『 あんたが思うほど、人間はめんどくさくねーよ。もっと単純に考えていいんだ』
海老名(私も、案外単純だ)
戸部「じゃねー海老名さん!明日は楽しもうねーつって!」
海老名「うん、バイバーイ」
海老名「………」
海老名(これは、恋。なのだろうか?)
海老名(私には、解らない。答えは出ない。問い掛けることすらできない。それを自分に問い掛けるには、私はあまりに目を逸らし過ぎた)
海老名(だから、待とう。彼が私に問い掛けてくれるまで。その時に答えは出るだろう)
海老名(その答えが、お互いに望ましくない物だとしても、きっと大丈夫だ)
ー終わりー
後日談。修学旅行前日。夜。
結衣「ヒッキー。姫菜がね。なんか依頼取り消しだって」
八幡「………そうか。それは良かった」
結衣「えぇー良かったのかなー?」
八幡「由比ヶ浜。前にも言ったと思うが、依頼がないってことはいいことなんだ。解決する問題も必要もないんだからな。海老名さんが、もう大丈夫って思ったんならそういうことでいいんだ」
結衣「……うん。そっか、そうだよね!」
八幡「じゃ、俺はもう寝る」
結衣「うん。おやすみー」ピッ
八幡「ったく、電話じゃなくてメールで良かったろうに……」
八幡(………あれだけ偉そうに海老名さんに言っておいて、俺は何もしないっていうのもな……。告白とまでは行かなくとも、この修学旅行をきっかけに、もう少し『あいつ』と……)
八幡「………戸塚」
ー終われー
終わりです。
戸部ってウザイけど、良い奴だと思う。
八幡のこと認めてるし、あのグループにいながら、由比ヶ浜じゃなくて海老名さんを好きになってる所とか。
それにしたってさすがにキャラ崩壊だし展開急ですねすみませんでした。
めぐり先輩が一番好きです。
読んでくれてありがとうございました。
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