幽霊『ひゅ~どろどろどろ…』男「それ口で言ってたの?」(390)

男「ジグソーパズル超楽しい!一晩中やってられるぜ!」

男「えーっと、ここが端っこだから、ここにはめて…」

男「……」

男「あっ!?端のピースが一個ない!?おかしいな…見逃したか」

男「おっかしいなーどこ行ったかなー」

ひゅ~…

男「…あっるぇ?見つからん…マジどこやった?端からやってかないととても完成しないよこれ」

どろどろどろ…

男「……ん?」クルッ

男「…!あった!こんなところに!なんでピースが俺の後ろに落ちてるんだよ…」パシッ

男「まるで誰かがここに置いたみたいだ…」

ザラザラザラー

男「……」

男「あ゛ぁ!?」クルッ

バラバラ…

男「なん…だと…」

男「あ…ありのまま 今 起こったことを話すぜ!」

男「おれは無くしたピースを見つけたと思ったらいつのまにか組んでたパズルがバラバラになっていた」

男「な…何を言ってるのかわからねーと思うが おれも何をされたのかわからなかった…」

男「頭がどうにかなりそうだった…」

男「直下型大地震だとかポルターガイストだとか そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ」

男「もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…」

惜しい…ですね…

男「!誰かいるのか!?」

!!ひゅ、ひゅ~どろどろどろ…

男「……」

………

男「……」

男「…気のせいか」スッ

男「ポテチうまー…」パリッ

ほっ…

男「…さて仕方ない、組み直すか…」

男「まずパズルをこう…かき混ぜてー…」ガシャガシャ

ひゅ~どろどろどろ…

男「…かき混ぜてー…」

バチッ!!!
ぎゃっ!!?

男「…!そこか!」バッ

ガシッ

うぎゃー!!!

男「捕まえたぞ!この野…郎!」バシッ

ぎゃーっ!!!肩!肩!溶けるぅううう!!!

男「…その声、女か?」

そうですよっ、離してー!!

男「離さん!さぁお前は何者だ!」

ぎゃー!!痛い痛い溶ける溶ける死ぬぅー!!!

男「…ちっ!うるせぇから離してやる。でも逃げんなよ!?」

わ、分かりましたよぅ

男「ほら!」パッ

ひーっ!殺されるー!

男「あっ!こら!早速逃げようとしてんじゃ…」ガシッ

男「ねーっ!!」ブンッ

ひっ?なんですかこれ…

バサッ

し、塩、塩!ひーっ!!!

男「もう逃がさん!」

動けないー!…

男「お前は何者だ?」

………

男「返事しろ!」

ゆ、幽霊です…

男「ふん、だと思ったよ…」

なっ…なんで…

男「ここに幽霊が出るって話は聞いてた。まさか越してきて2週間で遇うとは思わなかったけどな」

なるほど…って!なんで私に触れたんです!?

男「ポテチ食った手だからだ」

ポテチ…?

!さっきの袋はポテチの…!

男「そうだ!幽霊ってのは塩に弱いんだろ?あんな、たった数粒の塩でも効くんだな」

わざわざポテチ食べた手でパズルをかき混ぜたのは…!

男「塩を付着させたんだよ。またお前に邪魔されたら困るからな」

なんという手練れ…ここまでしてやられたのは始めてですよ

男「お前、常習犯か…許せねぇな」ギラリ

ひぃっ!?ごめんなさいぃ!

男「…まぁ、とにかく…」

男「姿を見せな!でなきゃ何も始まらねぇ」

え…?見えてないんですか?

男「おうよ、声が聞こえるから、そこにいるのは分かるんだがな…」

…姿の見せ方なんて知りませんよ

男「なにぃ?」

普通に見えてるのかと思いましたよ

男「バーカ!幽霊がいたとしても、見えるわけねーだろ!」

言ってることおかしいですよねソレ

男「ちっ…姿が見えないんじゃ話にならん」

そこそこ話になってますけど…

男「お前、自分の姿も見えないのか?」

自分の姿は見えますよ。ここに手があって、足があって

男「ここは!」ガシッ

ぎゃー!!そこはちょっとまずいところですって!痛い痛い痛い痛い!!

男「鏡にも映らないのか」パッ

痛たた…鏡は…どうでしょう、分かりませんね

男「試してみるぞ。着いてこい!」

その行動力はなんなんです?

脱衣場

男「ほら、鏡だ」

……うーん。映ってませんね

男「いやしかし俺は今日も一段とカッコいい」

え、ナルシスト?

男「鏡には美しい俺しか映ってないな」

ええまぁ、美しいかどうかは別として、そうですね

男「何とかして姿を見せてみろ」

何とかしてってそんな無茶な…

男「こう…強く念じてみるとか…あるだろ!?」

強く念じ…ですか?じゃちょっとやってみますけど…

むむむ…

男「どうだ?」

特に何も…

男「イメージ力が足りないんだよ!」

そんなこと言われても…

男「もっと、骨を!肉を!神経を!血を!イメージしろ!」

むむむむむ…!

男「関節の数もこの際1000個くらい増やしちまえ!」

どこの空手界の最終兵器ですか!?

男「リアルシャドー!」

ああもうっ!

男「塩かけるぞ!」

ひいっ!?塩はやめ…

はっ!!

男「!どうした?」

今…ちょっとビビッと来ました

男「きっといい兆候だ!もうちょっと頑張れ!」

はい!…むむむむむ!!

男「どうだ!」

来てます!来てます!むむむむむむむむむ…!!

男「行けそうか!」

行けそうです!むむむむむむむむむ!!骨を肉を肌を全身を!イメージ!!!

男「おし、行けっ!」

むむむむむむ…キタ━(゚∀゚)━!!!


ぼんっ


男「…おっ」

幽霊『キキキ…キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!』

男「おお…」

幽霊『す、すごい!ホントに出来た!実体化ですよ実体化!!』

男「ああ…」

男「…時にお前、女なんだよな?」

幽霊『はい?そうですけど?』

男「…俺は気にしないがな、一応、親切心で教えておいてやる」

幽霊『なんですか、早く言ってくださいよ、気になるじゃないですか』

男「お前、今、全裸だぞ」

幽霊『は…?全…』チラッ

幽霊『』

\ぎゃーーーー!!!!/

男「やれやれ、服までイメージしないからだ」

男「とにかく…だ。実体化も出来たことだし、座れ


幽霊『うう…全裸を見られた…一糸纏わぬ裸の私を…見られた』

男「いいじゃねぇか少しくらい、俺は気にしてない」

幽霊『私は気にしますよ!』

男「気にするほど豊かな体型じゃないしな…胸なんて無さすぎて男かと思った」

幽霊『(#^ω^)ビキビキ』

男「それで…お前…なんで俺の優雅なパズルタイムを邪魔した」

幽霊『えっ…?いや、なんでって言われても…なんと』

男「なんとなくとか言ったらその貧相な胸に荒塩擦り込んでやる」

幽霊『どこのパンクラチオン!?』

男「で?なんと…何だって?続きを言ってみろ」

幽霊『えーっとぉ…なんとか私も手伝いたかったんですよ!』

男「……」ゴゴゴゴゴ

幽霊(ヤバいッ怒らせた!?荒塩は嫌だ~…)

男「そうか、お前もパズルが好きなんだな!」

幽霊『えっ?』

男「まぁ確かに他人のパズルを手伝いたくなる気持ちは分かる。だがやられた方は得てして一人で作り上げることに達成感を…」

幽霊『は、はぁ…』

男「パズルとはそもそも~」ペラペラ

幽霊『はい…』

男「このパズルの絵はかの有名な画家の~」ペラペラ

幽霊『ええ…はい…』

男「この時代の芸術家で有名なのは言うまでもなく~」ペラペラ

幽霊『うん…うん…』ウトウト…

幽霊『……はっ!』パチ

男「zzz…」

幽霊『つ…机に突っ伏したまま寝てる…まさか一人で延々話続けてた…?』

男「うーん…あと1ピースぅ…」ムニャムニャ

幽霊『夢まで見てる…』

幽霊『…って言うか私…』

幽霊『もしかして、寝てた…?』

男「おおいッそれはゴミじゃねーッ!」ガバァッ

幽霊『!!?』ビクッ

男「…!」

幽霊『あ…おはようございます…』ビクビク

男「…まな板お化け?」ボケーッ

幽霊『誰がまな板ですか!寝惚けたフリして罵倒とは大した根性ですね!!』

男「……」スクッ

幽霊『あ…あの、どこ行くんです?』

男「顔洗うんだよ…言わせんな恥ずかしい」スタスタ

幽霊『いや別に恥ずかしいことじゃないでしょう』


バシャバシャ

男「ふぅ…今日もまた俺は美しい…」

幽霊『……』シラーッ

男「なんだその白けた面は。お前も顔洗え!」ピッピッ

幽霊『うわっ!冷たいです!!タオルタオル!』スッ

すかっ…

男「ふん…幽霊だから物に触れないのか」

幽霊『そうでした……って、あれぇ?』

男「なんだ?間抜けな声出して」

幽霊『じゃなんで幽霊の私に水がかかったんです?』

男「……」

幽霊『実体化しても物には触れない…?でも水がかかった…』

男「と言うかお前、昨日パズルのピースに触れたじゃねぇか」

幽霊『……??』

男「ふん。なんかよく分からんが、俺は飯を食う!」ゴシゴシ

幽霊『……うーん…』

ちょんっ

幽霊『…あれ、タオル触れるようになった』

男「なんなんだよお前は」

幽霊『あ、もしかして…』スッ

ピタッ

幽霊『…蛇口に触れた!じゃあこの歯ブラシは…』スッ

すかっ

幽霊『やっぱり触れない!』

男「…なるほどな、俺にも分かった…」スッ

男「もう歯ブラシ、持てるな」ポイッ

幽霊『わっ…とぉ!』パシッ

男「……要するにお前は」

男「俺が一度触れたものじゃないと触れないんだな」

幽霊『しかもたぶん触るとこを見てなくちゃいけないんだと思います』

男「……不便だな」

男「お前は今、顔と両手だけ実体化させてるわけだが」

幽霊『だって全裸なんだから仕方ないでしょう!』

男「俺は気にしないと言って…」

幽霊『だから私が気にするんですって!』

男「…俺が触れたものならお前も触れられる…か」

幽霊『…え?』

男「ちょっと待ってろ…」

幽霊(ま、まさか私に服を…!ただのナルシストだと思ったら、案外気が利くんですねぇ)

男「たしかこの棚にしまって…お、あったあった…」ゴソゴソ

男「これをやる」スッ

幽霊『真っ白の服…?ワンピースですか!?』

男「ふっ」バサァ

男「…シーツだ。引っ越してすぐに買ったんだがな、どうにも肌に合わなくて、一日で元に戻した」

幽霊『え…あの…服は?』

男「俺が女物の服を持ってると思ったか。まぁお前みたいな絶壁なら俺の服でも問題ないかもしれんが、俺のように美しい者にしか似合わんからな」

幽霊『や…やっぱりただのナルシストだった!!』

男「針と糸をやる。これで好きなように『こさえろ』…ただし代わりのシーツはないぞ」ポイッ

幽霊(おのれ…実体化解いてこっそり背中に刺してやろうか…)

男「間違っても俺に刺そうとなんてするなよ。塩漬けにしてやる」

幽霊『ひいっ!読まれてる!!?』

男「リビングにいろよ」スッ

幽霊『……』

幽霊『……』チクチク

幽霊『お裁縫なんて久しぶりにやったけど、こんなに難しかったかな』ヌイヌイ

男「なんだ、ホントにやってるのかよ」スッ

幽霊『だ、だってシーツのままじゃ…!』

男「別に駄目だと言ってるわけじゃないだろ。好きにしろ」コトッ

幽霊『!味噌汁…?』

男「俺のだからな」

幽霊『ああ、朝ご飯ですか』

男「お前の分はないぞ」

幽霊『幽霊に食事なんて要りませんよー』

男「まぁこの味噌汁には通常の6倍ほどの塩が入ってる。一口でも飲めばお前は間違いなく死ぬだろうな」

幽霊『6倍て私じゃなくても危ないでしょう』

男「塩で死ぬわけないだろう。人間嘗めんな」

幽霊『塩分過剰摂取嘗めんな、ですよ!』

男「さて、あとはこの沢庵を刻むだけだ」

幽霊『出来たー!』ワーイ!!

男「……」トン、トン、トンッ

幽霊『さすが私、やればできる幽霊ですね!』

男「うるさいぞ…」スッ

幽霊『あっ!見てくださいよ私の服!』バサッ

男「……」

男「下手だな…美しくない」

幽霊『仕方ないじゃないですか!久しぶりなんですから!!』ムカーッ

男「久しぶり…さっきもそんなこと呟いてたが、幽霊のお前が裁縫をやったことがあったのか?」

幽霊『嫌だなぁ、生前の話ですよ!』

男「……生前」

男「飯でも食いながらゆっくり聞かせてもらうぞ」

男「いただきます」

幽霊『ほぉ…』

男「なんだ?」

幽霊『いや、なんというか…いい感じの食卓ですね』

男「朝は大事だからな、しっかり食わなきゃならん。これで目の前に霊さえいなければ完璧だ」

幽霊『さらっと酷いこと言いますね…』

男「それで?」スッ

幽霊『はい?』

男「お前の生前の話が聞きたい」パリッ

幽霊『ええー…?』

男「お前にも霊じゃなかった時代があったんだろ」

幽霊『ええ、まぁ…』

男「それになにより、このアパートに、この部屋に居着いてる理由が知りたい」ズズッ

幽霊『うーん…そんな、話すようなことはないんですけどね』

男「お前はなぜここにいる?」

幽霊『この土地は元々、私の家があった場所なんです』

男「要するにお前は自爆霊なのか」

幽霊『字が違います』

男「でも自爆霊ってのは死んだ自覚のない霊のことだと聞いたことがあるぞ」

幽霊『だから字が違っ……え?そうなんですか?』

男「お前、死んだ自覚ないのか?」

幽霊『まさか、バリバリありますよ、ありまくりです』

男「自殺じゃないだろうな」

幽霊『違いますよ…でもちょっと、近いかもしれませんね』

男「……」モグモグ

幽霊『ここは元々、私の家でした。結構大きくて、家というより屋敷、ですかね』

幽霊『結構古くからある由緒正しいお家だったんですよ』

男「ほう」

幽霊『でも私はその由緒正しい家の中でも少し出来の悪いほうでして』

幽霊『よく、屋敷から少し離れた小屋?に入れられてたんです。お仕置きですね』

男「離れというやつか。つまりそこが、ちょうどこの部屋の辺りにあったんだな」

幽霊『ええ』

男「で?どうして死んだ?」

幽霊『いや、それが…』

男「なんだ?」ヒョイ

幽霊『少し言いにくいというか…』

男「知らん。話せ」パリッ

幽霊『うう…』

幽霊『私はよくその離れで過ごしてたんですけど』

男「……」

幽霊『離れの中で勉強してろって言われても、さすがに長時間はできなくて、いつも途中でやめちゃって』

幽霊『それで、よく離れの中にあるもので遊んでたんです』

男「小学生のころか?」

幽霊『そうですそうです。で、私よく…思い出せないんですけど、なにかで遊んでて』

幽霊『それを親に取り上げられて、離れの中で一番背の高い棚にしまわれちゃったんです』

男「……ほう」モグモグ

幽霊『小学生の私じゃいくら頑張っても届かなくて、結局そのまま諦めてしまったんですよ』

幽霊『それでそれから10年くらい後だったか…あれからお仕置きで離れに入れられることがほとんどなくなったんですが、一度だけ、確か使ってない布団を取りに離れに入ったんです』

男「シーツか?」

幽霊『掛け布団です。で、私そのときになって、あの時しまわれてしまった何かのことを思い出して、猛烈にまた見たくなったんです』

幽霊『それで、その頃にはもう背もそこそこ高くなってましたから、椅子を一つ置いて、その上から棚に手を伸ばしたら…』

バキッ!!

幽霊『古い椅子の脚はボロボロで、すぐに折れました。バランスを崩した私はそのまま倒れて、倒れた先には梅干しの壺があって…』

男「壺に頭ぶつけて死んだのか。間抜けだな」

幽霊『返す言葉もありません…』

男「そこまで鮮明に覚えてて、なぜ霊になった?」

幽霊『さぁ…。でも』

幽霊『小学生の私がよく遊んでて、取り上げられて棚にしまわれて、取ろうとして落ちて頭打って死んだ…あのときの何か。あれがなんだったのか思い出せないんですよ』

男「そうか…」ズズズッ

男「御馳走様。まぁ特に面白味のない話だったな」

幽霊『そりゃ愉快話ではありませんけど…っ』

男「どうした?思い出したか?」

幽霊『いえ、それが、その…』

男「なんだよ。早く言え。トイレか」

幽霊『違います!その…』

幽霊『なんか…お腹空いてきて…』

男「はぁ!?お前『幽霊に食事なんて要りませんよー』とか言ってただろうが」

幽霊『そのはず…なんですけど…不思議ですね…』

男「…仕方ない、ちょっと待ってろ」

幽霊『そう…不思議なんですよ』

幽霊『幽霊の私が眠いと感じたり、お腹が空くなんて』

男「どこかでエネルギーを消費してるんじゃないか」

幽霊『幽霊の私がエネルギーを?いったいどこで…』

男「会話」

幽霊『!?』

男「あと、実体化」

幽霊『!!??』

男「だろ…たぶん」

幽霊『なんで私より詳しいんですか!?』

男「勘だよ勘」

男「ほら、白飯とたくあんだ」ゴトッ

幽霊『いいんですか?』

男「いいんですか?ってお前がねだったんだろうが」

幽霊『…ありがとうございます。じゃ、いただきます!』

男「……」

幽霊『うん…うん…白米うまー!久しぶりに食べたー!』

男「よかったな」

幽霊『うまうま』パクパク

男「……」


幽霊『ごちそうさまでした!』

男「お粗末さま」

幽霊『いやぁホントにおいしかったです。男くんはいい旦那になれますよ!』

男「ん…?おい。なんで俺の名前を知ってる?」

幽霊『名前くらい部屋をふわふわしてる間に見つけましたよ』

男「なぜ『くん』付けで読んだ?」

幽霊『私より年下でしょう?』

男「俺は今年で23だ」

幽霊『私は享年19歳です。この姿は当時のまんま』

男「ほらみろ」

幽霊『ですが、死んでから17年!幽霊やってます!』

男「……」

幽霊『……?』

男「…36か、bbaだな」

幽霊『わーっ!ちょっ待っ今のなしッ』

男「おい妖怪『絶壁bba』、食器はキッチンへ持っていけ」

幽霊『ぜ、絶壁bba…!!』ズガーン!!

男「俺はこれから忙しいんだ、片付けは自分でやれ」

幽霊『え?忙しいって、何かあるんですか?』

男「平日の朝だぞ、決まってるだろ」

幽霊『あ、そうか仕事ですか!』

男「バカ言え、俺に仕事はない。新聞、チラシを読むのに忙しいんだよ」

幽霊『えっニート!!?』

男「言っておくが、お前が思ってる以上にニートは厳しいぞ」

幽霊『知りませんよそんなことは』

幽霊『えっ、えっ、男くんニートなんですか』

男「仕事をしない人間という意味でならそういうことになる」

幽霊『他にどんな意味があるんですか…え、バイトとかも一切やってない?』

男「バイトやってたらニートじゃないだろ」

幽霊『ガチ無職ですか!?』

男「ニートだよ」

幽霊『ああ、はい…』

男「大学を出てから、3ヵ月だけ働いてたが、辞めた」

幽霊『なんでです?』

男「合わなかったからだ。社長は『類い稀な天才』と俺を評したが、その天才向けの仕事というにはあまりにヌルかったな」

幽霊『ひどいニートがいたもんですね』

幽霊『なにかやりたいこととかないんですか?』

男「仮面ライダー」

幽霊『はい?』

男「知ってるだろ仮面ライダー。幼稚園の頃からずっと憧れてた。今もな』

幽霊『えー…』

男「仮面ライダーになるまでは無職でいようと思ってる」

幽霊『たぶん一生無職ですよ』

男「実はお前を見つけたとき、俺の願いを叶えに来たイマジンかと思ったぞ。こいつなにタロスだ?と」

幽霊『なんの話です?』

一旦切ります
また明日

ご支援ありがとうございます

幽霊『じゃホントにニートなんですね』

男「だからそうだと言ってるだろ?」

幽霊『ふ~ん…』

男「なんだ…」

幽霊『…やることないんですね…』

男「?」

男「なんだいったい」

幽霊(死んでから17年…ずっと一人で過ごしてきた)

幽霊(やっと私を見つけてくれた)

幽霊(しかもニートときた)

幽霊『もしよかったら私に付き合ってもらえませんかね』

男「断る。なんで幽霊の頼みを聞かなきゃいけないんだ」

幽霊『いいじゃないですか~…暇なんでしょう?』

男「新聞を読むんだよ」

幽霊『新聞なんて一時間あれば読めるでしょう』

男「そんなにかからん」

幽霊『じゃあ尚更…』

男「しまった…」

幽霊『ねぇお願いしますよ…別に大したことじゃありませんから』

男「ちっ…仕方ない、聞くだけ聞いてやる」

幽霊『やった!…あのね、私この17年間ずーっと一人で過ごしてたんです』

男「…で?」

幽霊『せっかくあなたに会えたんですから、17年ぶりにいろいろやってみたいんです』

男「…例えば?」

幽霊『とりあえず…外に出てみたいです!』

男「……」

男「お前、ふよふよ浮いてんだから、外くらい出れるだろ」

幽霊『もちろん外に出ることはできます…でも一人じゃつまらないんです』

男「お前、俺と外に出てなにかしたいことがあるのか?」

幽霊『それは出てからのお楽しみということで…』

男「お楽しみ…か。それは面白そうだな」

幽霊『でしょう?じゃ早速…』

男「だが断る。俺は基本的に外が嫌いでな」

幽霊『うわー根本的な部分からニートだ』

男「だが…まぁ…」

幽霊『?』

男「散歩ってのもたまには悪くないか」

幽霊『!』

男「もちろんお前も連れていってやる」

幽霊『ありがとうございます…でもなんで急にそんな態度変えて…?』

男「暇だからだ」

幽霊『めんどくさいなぁこの人。結局暇なんですか』

男「俺は今から支度するからお前はそこで待ってろ」

幽霊『はーい…(結局新聞読まないのかい)』

男「ときにお前」

幽霊『?』

男「実体化したまま外に出れるのか」

幽霊『いや…さぁ…?全然わかりませんね』

男「…いろいろ試してみるか」スッ

幽霊『?』

男「…とりあえず」バサッ

男「行くぞ」キリッ

幽霊(ただの散歩なのになんでこんなキメてるんです?)

男「これはドアだ」

幽霊『分かってますよ』

男「通れるか?」

幽霊『余裕です』スーッ

男「壁抜け…じゃ、今からこのドアに触れる。お前は壁抜け使わずにもう一度出てみろ」チョンッ

幽霊『……』ソーッ

ガシッ

幽霊『あっドアノブ掴める!』ガチャッ

男「基本的に俺が触ったものしか触れない…逆に言えば、俺が触ってないものならその存在を無視できるわけだ」

幽霊『そういうことですね。今まではすべての物質がその状態でした』

男「…ちなみに実体化中は誰の目にも写るのか?」

幽霊『さぁ?』

男「鏡には写ったな…まぁいい、なるべく他人に見られたくない…いつでも霊体に戻れるようにしておけよ」

幽霊『それだと男くんからも見えませんよ』

男「声は聞こえるだろ。問題ない」

男「じゃ、外出るぞ」ガチャッ

サッ

幽霊『…?今誰かいました?』

男「…チッ」

幽霊『男くん?』

男「……」スタスタ

幽霊『あ、ちょっ…』フワフワ

男「……」スタスタ

幽霊『今誰かいましたよね?』

男「さぁな…どっちにせよ、お前のことは見えてなかったようだが」

幽霊『…ふぅん』

男「しかし…平日の朝は気持ちいいな」

幽霊『無職の特権ですよそれ』

男「さて…お前が他人に見えてないことは分かった」

幽霊『そもそもこの17年間、まともに私のことを見れたのってあなただけですよ』

男「いままで」

男「さて…お前が他人に見えてないことは分かった」

幽霊『そもそもこの17年間、まともに私のことを見れたのってあなただけですよ』

男「今まで誰もお前に気づかなかったのか」

幽霊『いや…なんとなく勘づいてる人は結構いました。あなたも幽霊がいるアパートと聞いていたんでしょう』

男「なるほどな…つまり俺は」

男「いわゆる霊感というやつが強いのか?」

幽霊『あー…そうかもしれませんね』

男「……ま、そんなことはどうだっていいんだ」

幽霊『はぁ』

男「お前が外に出てやりたいことってのはなんなんだ?」

幽霊『あ、もうそれ聞くんですか…』

男「お楽しみとか言ってただろ。教えろ。青姦か?」

幽霊『』

男「冗談だ、そんなに引くな」

幽霊『真顔でそういうこと言わないでくださいよ…』

幽霊『…お楽しみっていうのは単にあなたの興味を引くために使っただけですよ』

男「そうか…じゃ帰るか」

幽霊『ちょちょちょちょちょまだアパート出て3分経ってませんよ!?』

男「俺を騙したんだろう」

幽霊『うう…とりあえず聞いてくださいよ…お願いですから…』

男「あんまりくだらなかったら青姦だ」

幽霊『さっきのあれ冗談じゃないんでしょう!?』

男「で、なんなんだ?」

幽霊『……』

幽霊『さっき…私の死んだときの話をしましたね』

男「ああ。梅干しの話だろ?」

幽霊『梅干しの壺に頭ぶつけて死んだって話です』

男「あれがなんだ」

幽霊『やっぱり気になるんですよ…』

男「壺の中身か?」

幽霊『梅干しですって!…そうじゃなくて、その、離れの…』

男「…取ろうとして、死んだあれか」

幽霊『そうです…なんだったか知りたくて…』

男「どうするつもりだ?」

幽霊『離れのあった場所を探してみたいんです』

男「離れのあった場所、か…」

男「って、おいbbaもうろくしてんのか?17年だぞ、離れがなくなってから何年経つかは知らんが、その何かが残ってるはずがないだろうが」

幽霊『15年前、私の家は火事で焼けてしまって、離れもその後取り壊されてしまいました。あとbba言うな』

男「尚更だ。残ってるはずがない」

幽霊『とりあえず、離れの跡地に行きたいんですよ』

男「…どこにある?」

幽霊『このアパートの裏です』

男「おいっここまで来たの無駄足じゃねぇか」

塩なしでも幽霊自体には触れるのか?

幽霊『こっちです』フワフワ

男「……」スタスタ

幽霊『ここ、この駐車場の…』

幽霊『となりっ』ビシッ

男「……これは」

男「畑じゃねぇか」

幽霊『ですよね…』

男「こんなところに小さな畑があったのか。知らなかったな…見たところ何も育ててないようだが、持ち主はいないのか?」キョロキョロ

男「…このボロい家が怪しいな」ズカズカ

幽霊『え、ちょっ』

カチッ

男「……」

幽霊『…反応がありませんね』

男「この家はお前の家が焼ける前からあったのか?」

幽霊『いえ…焼ける前はなかったはずです』

>>57
実体化幽霊は男(と同じくらい霊感が強い人)なら見えますし、触ることができます
霊体は塩を介さなくては触れることができません
姿も見えませんが、聞こえる人には声だけが聞こえます
細かい設定は書きながら考えてるので、気になったところがあれば聞いてください

男「ふむ…どうしたもんか、勝手に入ってみるか?」

おっさん「おにいちゃんそこの家に何か用かい」

幽霊『!』

男「用というか…ここには誰もいないんですか」

おっさん「いないねぇ。爺さんが一人で暮らしてたみたいだけど、半年くらい前に出てったよ」

男「…この畑は?」

おっさん「その爺さんがなんかいろいろ育てとったよ。今は誰も使ってないし、なにも育ってないね」

男「…使ってもいいんですか」

幽霊『えっ?』

おっさん「まぁーたぶんあの爺さんが戻ってくることはねぇし、半年も放置されてたし、別にいいんじゃないかね。しかしボウズ、畑仕事なんかに興味あるのか」

男「暇ですから」

おっさん「ははは、なるほどなるほど…好きに使いなさい。なに、いざとなったらおいらが責任を取る!」

男「どうも」

おっさん「いやぁ最近の若い者は畑仕事なんかやりたがらんと思ってたが…なかなか珍しいもんよ」

幽霊『確かに珍しいですね』

おっさん「…」

おっさん「…ところであんちゃん…なんか憑いとるね?」

男「!」

幽霊『!!?』

おっさん「いやぁーおいらもよく分からんけど…後ろにおるねぇ」

男「そうですか」

おっさん「まぁーこの辺はそういうの多いってたまに聞くけど…ありゃホントかもしれんなぁ…」ブツブツ…

スタスタ…

男「……」

幽霊『ね、ねぇ男くん…さっきの人、私のこと見えてたんですかね?』

男「気配だけ感じたんだろう。霊感があるんだな…しかしあのおっさん…」

幽霊『な、なんですか!?』ドキッ

男「俺のことをおにいちゃんだのボウズだのあんちゃんだの…ハッキリしなかったな」

幽霊『知りませんよそんなこと!!』

男「とにかく、この畑は俺のものだ」

幽霊『そこまでする必要あったんですか…?』

男「いや単純に野菜を育てたい」

幽霊『えらく健全なニートがいたもんですね!』

男「さて…」ザッ

幽霊『…どうします?』

男「…どうします?じゃないだろ…その…見つかるとは思わんが何かを、探さなきゃな」

幽霊『やる気ですね…』

男「お前のことだろ?」

幽霊『まぁそうですけど…』

男「土いじりは楽しそうだからな。スコップ…あと軍手もいるが、部屋にあったか…?」

幽霊『さぁ…』

男「一度戻るぞ。畑がすぐ近くでよかったな」

スタスタスタスタ…

男「……!」ピタッ

幽霊『わっ!』ゴンッ

幽霊『急に立ち止まらないでください…実体化してるときにぶつかったら普通に痛いんですよ…』

男「またか…」

幽霊『?』ヒョコ

幽霊『……』

幽霊『郵便受けに、封筒…?』

男「チッ」バシッ

男「開けてみろ」ポイッ

幽霊『なんですか?借金の催促状とか?』ワクワク

男「……」ガチャ

幽霊『何かな何かな~』ガサガサ

幽霊『なに…』ボロッ

幽霊『!?』

ボロボロ

幽霊『わ、わ、な、中からなにか…!虫…!?』

男「前は髪の毛だった…今回は…」ヒョイッ

幽霊『…まさか…それ…』

男「爪。生爪剥いでぶちこんだんだろう」

幽霊『ひいいいいいい!!?』ゾゾゾッ

男「…拾って、封筒に戻しとけ」

幽霊『いやいやいやなんですかこれ!!なんでこんなものが…』

幽霊『!爪に何か書いてある…?』ソーッ

「る」

幽霊『る?』

男「…片手の指五本…五枚あるだろ…」

幽霊『ぜ、全部に書いてある…』

「る」「て」「い」「し」「あ」

幽霊『るていしあ…』

男「親指から順に…『あいしてる』だろ」

幽霊『……!!!』

男「つまりそういうヤツだ」

幽霊『ひぃいいいいいいいいいい!!!!』

男「さっさと中に入れ…」

幽霊『…な、な、な、なんですかこれぇえええええええ』ガクブル

男「仕事を辞めた…2ヵ月前から来てる」バタン

幽霊『嫌がらせですか…?』

男「鈍いなお前は…」

男「ストーカーだよ」

幽霊『す…すとー…かー…』

男「さっきお前、誰かいるって言ってたろ。いたよ。たまたま遭遇しかけたがな、普段はいつのまにか投函されてる」

幽霊『な…なんて恐ろしい…通りで男くんが幽霊の私を怖がらなかったわけだ…』

男「お前は素で怖くねぇよ」

男「というか、そんなことはどうでもいいんだよ。畑仕事だ」ガサガサ

幽霊『そんなことって…』

男「ほら、あった、スコップだ。軍手も」テテーン

幽霊『おおーよく持ってましたね』

男「お前にはスコップないから、素手でやれ!」

幽霊『えー!嫌ですよ!私もスコップ使いたいです!』

男「誰もいないのにスコップだけが動いてたら端から見て気味が悪いだろうが」

幽霊『それ言ったら今までの私との会話も、他人には全部独り言に見えてたってことになりますけど…』

男「俺はいいんだよ」

幽霊『可哀想に…すでにそういうキャラだと思われてるんですね…ニートだし』

男「塩持った、よし行くぞ」

幽霊『えっ、いや、塩は…』

再び、畑

男「本当に、ここが離れの跡なんだな?」

幽霊『はい』

男「そして、ここにその、何かがあると」

幽霊『はい…』

男「どうしてそう思う?俺には到底あるようには思えんぞ」

幽霊『あなたは分からないかも知れませんが、なんというかこう、エネルギーのようなものを感じるんですよね』

男「エネルギー」

幽霊『熱というか光というか…確かにこの畑から感じるんです』

男「よく分からんが…まぁとにかくいじってみるか」

幽霊『はい!』

男「見つからなかったら、青か」

幽霊『そのネタはもういいですって!!』

男「……」ザクッザクッ

幽霊『あの、よく考えたら私、土に触れない気がするんですけど』

男「そうだな。お前は俺の触れた部分の土しか弄れない」

幽霊『それって効率悪くないですか?』

男「軍手だ」

幽霊『え?』

男「お前が土に触れられなくても、軍手は土に触れられる。俺が触れたこの軍手ならな」スッ

幽霊『なるほど…』

男「別の方法だと、お前の手を塩だらけにする、というのもあるが…」

幽霊『死にます!私幽霊ですけど確実にヤバいです!』

男「悪くないと思うんだけどな…」

幽霊(今更だけどすごいサディスト…)

男「……」ザクザク

幽霊『……』ホリホリ

男「……」ザクザク

幽霊『……』ホリホリ

男「……」ザクザク

幽霊『…あの、何か話とかしながらやりませんか?』ホリホリ

男「無音だと寂しいか。ラジオでも用意すれはまよかったな」ザクザク

幽霊『いや、そうじゃなくて…』ホリホリ

男「お前が話せ」ザクザク

幽霊『え?』

男「お前が話せ」ザクザク

幽霊『……』ホリホリ

幽霊『むかしむかし、あるところに…』ホリホリ

男「昔話かよ。いよいよbbaだな」

幽霊『振っといて…ひ、ひどい…』

男「17年も幽霊やってたんだろ。何かないのか」ザクザク

幽霊『そうですね…』ホリホリ

男「……」ザクザク

幽霊『うーん…やっばり、語れるような霊生活送ってないですねぇ』ホリホリ

男「今まで何やってたんだ?」ザクザク

幽霊『特に何も…このアパートの中をずっとうろうろしてました』ホリホリ

男「暇人め」ザクザク

幽霊『あなたにだけは言われたくないです』ホリホリ

男「そして昨日ついに…俺に取っ捕まったというわけだ」ザクザク

幽霊『そうですね。人と話するのも17年ぶり。驚いたけど少し感動しました』ホリホリ

男「……」ザクザク

幽霊『……』ホリホリ

幽霊『そういえば男くん、昨日ずいぶん楽しそうでしたよね、一人のときはいつもああなんですか』ホリホリ

男「…どうだろうな」ザクザク

幽霊『…っていうか、ずいぶん深くまで掘ってますけど、何か見つかりました?』ホリホリ

男「ん?…ああ、ひたすら無心でやってたから見てなかった」ザクザク

幽霊『土いじりは楽しそうだ、って全然楽しんでませんよね』ホリホリ

男「ん…」ジーッ

男「…おっ」

幽霊『!何ですか!?』

男「ミミズだ」ポイッ

幽霊『ぎゃー!!!』ビクゥ

男「ミミズくらいで騒ぐなよ、ミミズは塩かけると消えるんだぞ。お前と同じだな」

幽霊『それナメクジです…いやナメクジと同じってのも嫌ですけど』

男「他には何もないな」

幽霊『そうですか。まだまだ時間かかりそうですね』ホリホリ

男「俺は未だに見つかると思ってないぞ」

幽霊『うーん…』ホリホリ

男「……」ザクザク

幽霊『……』ホリホリ

男「おい無乳」

幽霊『むにゅう、ってちょっと可愛い響きですね…じゃなくて!コラ!!』

男「お前19で死んで、その時の姿のままなんだよな」ザクザク

幽霊『え?…そうですけど』

男「未練とか、あるのか?」ザクザク

幽霊『未練…ですか』

男「やりたいことだっていっぱいあっただろ」ザクザク

幽霊『そりゃまぁ…お金持ちになりたいとか、美味しいものいっぱい食べたいとか、いろいろありますけど』

幽霊『今になって、まだやりたいと思ってることなんて、ほとんどないですよ』

男「…そうか」ザクザク

幽霊『なんでそんなことを?』

男「幽霊」ザクザク

幽霊『は、はいっ?』ドキッ

男「俺は超常現象とかそういう類いのはまったく信じてないクチだった…幽霊に塩が効くとか、出鱈目だと思ってた」ザクザク

男「だがお前は現に存在する…目の前に…触ることだってできる」スッ

ペタペタ

幽霊『……』

幽霊『なにナチュラルに胸触ってるんですか!!?』

男「すまん背中かと思った」

幽霊『呪い殺してやろうか…』

男「俺はこの目でモノを見るまで信じない。だからお前にあえて、少し世界の範囲が広がったぞ」ザクザク

幽霊『はぁ…』

幽霊(なに考えてるんです?この人…)

男「お前は暇潰しの相手にちょうどいいってことだ」ザクザク

幽霊『心読まないでくださいよ…どうも』

ガキンっ

幽霊『…!?』

男「スコップが何かに当たったな…これは…」スッ

ゴソッ

男「石…?」

幽霊『なんでしょう…それにしては色が…』

幽霊『ん…?』

男「なんだ」

幽霊『その石から…なにかエネルギーを感じます』

男「お前の言ってたエネルギーって、これが正体なんじゃないか?」

幽霊『むむむ…分かりませんが…かなり強力なエネルギーが…』

男「パワーストーンとか…そういうのか…?」

幽霊『詳しくないからなんとも言えませんけど、こんな畑から出てきますかね』

男「…なんかいい感じだなこの石。持って帰ろう」

幽霊『ただの石じゃないんですかね…』

男「お…なんだもう…12時過ぎか」

幽霊『そんなに経ってたんですか』

男「このまま続けてもいいが、少し小腹が減った。昼飯食うぞ」スクッ

幽霊『食べたらまた続きやるんですか?』

男「いや…正直もう飽きてきた」

幽霊『でしょうね…』

男「とりあえず部屋に戻るか…」スタスタ

幽霊『その石、どうするんです…』

男「インテリアにする」

幽霊『わぁ素敵(棒)』

男「俺には洒落た石が似合うな」

幽霊『ヒネたあなたにはただの石ころで十分ですよ…』

切ります
自分でもイマイチ方向性が分かりませんが、メインキャラあと二人出る予定です
一人はもう見当つきますよね

再開します

カンカンカンカン

幽霊『あのー男くん』

男「なんだ?」

幽霊『言おうかどうか悩んだんですが』

男「何をだ」

幽霊『言った方がいいと思うので、言いますよ』

男「だから、何をだよ」

幽霊『います…下に』

男「…一階に?」

幽霊『ええ…上がってくる感じはなさそうですが…さっきまで見られてました』

男「そうか」

幽霊『いいんですか?』

男「……」

男「アレは面倒くさい…下手したらぶっかけてくるからな」

幽霊『ぶっかけ…!?何を!?』

男「分かるだろ…」

幽霊『ま、ま、ま、まさか…』

幽霊『す、ストーカーさんってガチホモなんですか!?』

男「ガチ…?いや、それはないだろ」

幽霊『??』

男「とにかく…アレとは関わりたくない」

幽霊『分かりませんね…警察に相談するとかしないんですか?』

男「警察は嫌いなんだよ。なんだか無償に腹が立つ連中だ」

幽霊『ふぅん…男くんもしかして前科持ちですか?』

男「ぶっ殺すぞ」

ガチャ

男「…ただいま」

幽霊『おかえりなさーい』スーッ

男「俺より先に壁抜けで入るな」

幽霊『いやーもう癖みたいなものですし』

男「直せ」

幽霊『厳しいですねホント…』

男「さて…この石は…」スッ

男「…テレビの横に置いておこう」コトッ

幽霊『やっぱ不恰好ですよそれ』

男「bbaめ…これが流行りの最先端だ」

幽霊『ウッソだぁ�・』

…………

カタカタッ

男「よし…昼飯食うか」ガサガサ

幽霊『なに食べるんです?』

男「カップ麺だ」

幽霊『あるぇー!?朝のちゃんとした食事はなんだったんですか!?』

男「もう今日は動かないからな…適当でいいんだよ」

幽霊『私のお願いは…?』

男「また今度だ」

幽霊『そ、そんなぁ』

男「嘘じゃないぞ…約束は守る」

幽霊『うっ…』ドキッ

男「守る…守るが…今回まだその時と場所の指定はしていない…」

幽霊『ふざけるなっ…!』ざわ…ざわ…

男「お湯を沸かさなきゃな」クルッ

幽霊『ちょ、せっかく乗ってあげたのに!無視って!』

男「そういえばお前、料理とかできないのか?」

幽霊『料理…ですか?うーん』

男「シンキングタイム終了ー、できないんだな無能乙」

幽霊『早い早い』

幽霊『まぁ…料理…できませんけど』

男「ちっ、とことん役に立たんな」

幽霊『そんなっ』ガーン

男「だが…ただ飯食らいにするわけにはいかん、片付けはお前がやれ」

幽霊『はい?』

男「茶漬けでいいな?」

幽霊『…え』

幽霊『お昼ご飯!私にも!?』

男「いちいち大袈裟なんだよ…いらないのか?」

幽霊『欲しいです!』

男「なら待ってろ」

幽霊(まさか頼みもしないうちから用意してくれるなんて…)

幽霊(男くんてどうしてなかなかいい人ですねぇ)

幽霊(何だかんだ私に付き合ってくれたし…優しいですね)

幽霊『……』キラキラ

男「視線が鬱陶しい。床のホコリでも取ってろ」

幽霊『いややっぱ鬼畜だこの人!』

数分後

男「いただきます」

幽霊『いただきまーす…』

男「……」ズゾゾゾ…

幽霊『それ、ラーメンですよね?』

男「見りゃ分かるだろうが」

幽霊『ふーん…』ジーッ

男「欲しいのか?」

幽霊『!まっままままさか!!だってそんな、ねぇ!?』

男「何が、ねぇ!?だよ…ほら」スッ

幽霊『……!』

男「…食えよ。美味いぞ」

幽霊『だって塩でしょう!?死にますよ!!』

男「ちっ。勢いに任せて食って、悶え苦しむ姿が見たかったのにな…」ズゾゾー

幽霊『その手にはかかりませんですよー!』パクッ

男「当然その茶漬けにも塩入ってるぞ」

幽霊『あばばばばばばば!!』ジタバタ

男「……」スッ

ピッ

tv「先日からこちらで開催されてるイベント『ザ・ジュラシッ…」

幽霊『っ!テレビですか!?』ガバッ

男「bbaはテレビ観るの初めてか」

幽霊『そこまで古い人間じゃありませんから!?』

幽霊『何か面白いのやってます!?』

男「この時間だとニュースばかりだと思うがな…」ピッピッ

幽霊『わー…』

男「……」ピッピッピッ

幽霊『ん…え!?これ水戸黄門ですか!?まだやってたの!?』

男「再放送だぞ」

幽霊『でも観たことないやつですよ!凄い!』

男「ちなみに水戸黄門はこの間完結した」

幽霊『!!』

男「放送当時から見てたお前からすればショックだろう…」

幽霊『いや放送当時からは見てないですよ!?そのbba扱い、いい加減ツラくなってきました…』

男「……」ズゾゾゾ

幽霊『わー黄門さま…久しぶりに観たなぁ』

男「……ふっ」

幽霊『ん…?男くん今笑いました?』クルッ

男「あんまりお前が嬉しそうだからな…ついついおかしくなってきちまった」

幽霊『……』

幽霊『嬉しいですよ…実際に』

幽霊『一人ぼっちでいるのと、あなたみたいな人でも、見つけてもらえたのじゃ、全然違います…』

男「……」

幽霊『…ねぇ、男くん…』

男「…なんだ?」

幽霊『…私…』

ポロッ…

幽霊『私…』

男「…おい」

幽霊『あなたのこと、ちょっとだけ…』

男「おい」

幽霊『…な、なんですか』

男「テレビ台の上に置いた石が転がり落ちた」

幽霊『はい?』

男「今…ころっと落ちたぞ。座りが悪かったとかそんな風じゃねぇ…確かに動いた」

幽霊『はぁ…?』

男「お前じゃないよな?」

幽霊『あのですね、私は今あなたの正面でお話ししてたんですよ?むしろそれを余所見してたなんてあなたずいぶん酷い仕打ち…』

コロ…

男「お…」

幽霊『だ…か…らぁ……聞いてくださいよ!!そんなに石が気になります!?』クルッ

幽霊『……」

コロコロコロコロ…

幽霊『……え?』

男「石が…転がってる…」

幽霊『ええ!?』ガーン

男「なんだこれは…何が起きてる?地盤沈下でアパート全体が傾いたか?」

幽霊『いや…これ…もしかしたら…』

ピョ�・ン!!!

男「…!」

幽霊『跳んだ!?』

ピョーン ピョーン!!

男「勝手に跳ねる石…!おい幽霊、ビデオだビデオ!」

幽霊『そんなものありませんよ!こ、これ…たぶんこれ…』

幽霊『幽霊です!この石から感じるエネルギーの波長…』

男「お前なに言ってんだ?幽霊なんて実在するわけないだろ」

幽霊『ええええ!?ここに来て私の存在全否定!』

グルルルルル…

男「鳴き声…?」

幽霊『い、今この石から…やっぱりそうですよ!』

男「犬かなにかの幽霊か?」

ピョン ピョン ピョン

男「!!おいっどこに行く!」

ポチッ

幽霊『!…チャンネルが変わった?』

ポチッ

男「…この石」

ポチッ

男「リモコンの選局ボタンを押してやがる…石のくせに…」

ポチッ

幽霊『こ、このチャンネルは…!!』

tv「平日だと言うのに会場内は多くの観光客で賑わっています!」

男「…これが見せたかったのか」

幽霊『ただのニュースですよね?』

tv「特にこちらのエリアでは巨大なtレックスの頭部が…」

幽霊『tレックス?』

tv「これが『ザ・ジュラシックワールド』最大の人気を誇っています!」

男「ザ・ジュラシックワールド…」

幽霊『なんですこれ?』

男「市内で催ってる恐竜展だ…そういえば新聞に載ってたな」

ピョーンピョーン

幽霊『あっ!また石が…どんどんチャンネル変えていってますよ!』

『私を』

ピッ

『ここに!』

ピッ

『釣れ』

ピッ

『て』

ピッ

『行けそうですかね、斎藤選手…』

男「…私をここに連れていけ、だと?」

幽霊『ねぇこれどっかで見たことある手法だと思うんですけど』

男「この石…」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

ピッ

『僕は』

ピッ

『恐竜の化石がたくさん!なんとその種類およそ…』

幽霊『あ、このニュースに戻ってきた…』

男「僕は恐竜の化石…か」

幽霊『って!化石!?』

男「面白い石ころだ」

幽霊『なるほど!化石だったんですね!!ということは、恐竜だった頃の残留思念が霊として…』
※その通りにならなくて、積もりに積もった思い。霊の原因になるとされている

男「アホか。こんな日本の、しかもこんな何もない畑から化石が出てくるか!」

幽霊『あ、そうか…』

男「だいたいこの石のどこが化石だ!ただのショボい石ころだろうが」

幽霊『あなたさっきまでめちゃくちゃ気に入ってたじゃないですか』

男「そもそもな、俺は、恐竜なんて信じてないんだよ…実物を見たことないからな」

幽霊『そ、そういうものですかね…』

ピョーン ピョーン!!

幽霊『わ!めちゃくちゃ跳び跳ねてる!怒ってるんですよ!』

男「なにぃ…?」

ピョーン ピョーン!!

男「ふんっ」シュバッ

!?

男「生意気な石ころだ…このままハンマーで粉々にしてやろうか?それとも…あちこちに穴開けてネックレスにでもしてやろうか…?」ググッ…

グルルルッ…

幽霊『はー…男さん、石ころ相手に容赦ないですねぇ…』

男「ええ…?コラ石ころ…なんとか言ってみろ…」

ヤ、ヤメテクレ

幽霊『えっ!!?』

男「なに…!ホントに喋ったのか…?」

ハ、ハナシテクレ!!

男「…ふん」パッ

ボテッ

石ころ『マッタク石使イノ…荒イ奴メ…!』

男「…喋る石ころ…いよいよ普通じゃないな」

石ころ『我ハ石コロナドデハナイ!!誇リ高キ恐竜ノ化石ダ!!』ピョーン!!

幽霊『ま、間違いありませんよ…幽霊ですよこれ』

男「こいつ見世物になるかな」

幽霊『霊感ある人にしか声は聞こえないと思いますよ』

男「こいつは石を体のように動かしてるのか?」

幽霊『たぶんそうなんでしょうね』

石ころ『我ヲ無視シテ話ヲスルナー!!』

男「あ?なんなんだお前はよ…何がしてぇんだ」

石ころ『サッキ言ッタハズダ!恐竜展ニ連レテイケ!!』

男「なんでそんなことをしなきゃいけないんだよ…」

石ころ『我ノ仲間ニ会ウノダ!!タクサンイルノダロウ?』

男「…全部死んでると思うがな…」

石ころ『構ワン!!突如謎ノ光ニ包マレテ、コノ身ヲ無クシテ数千万年!!ヨウヤク日ノ下ニ出テコラレタノダ!!仲間ニ会イタイ!!会ワセテクレー!!』

男「読みにくい」

幽霊『ちょ、男くんそれはngでしょう』

男「そんなに行きたいんだったらお前、ぴょんぴょん跳ねてきゃいいだろうが」

石ころ『道ガ分カラナイ!!』

男「地図を用意してやる」

石ころ『コノ姿デハ地図ヲ持ツコトガデキナイ!!』

男「ちっ…なら会場の方向にぶん投げてやるよ」

幽霊『ひ、酷い…』

男「幽霊!お前なんとかしろ!!」

幽霊『え!?』

幽霊『うーん…私は正直、この恐竜の幽霊を連れていくのに賛成なんですよね』

男「なに…?」

幽霊『だって久しぶりに地上に出てこられて、しかも仲間に会うチャンスがあるなら…会わせてあげたいじゃないですか』

幽霊『私には分かるんですよ…同じ幽霊ですから。しかもこの恐竜は私の何百万倍も、一人ぼっちだったんですよ』

男「知ったことか」

石ころ『貴様ー!!鬼メ!!サテハオ前ガ我ラヲ滅ボシタノダナ!!」

男「だがまぁ…」ヒョイ

石ころ『!?』

男「畑仕事も終わった…昼飯も食った…これから暇人午後の部だ」

男「連れていってやる」

石ころ『ホ、本当カ!?』

男「ああ」

幽霊『お、男くん…私の説得の甲斐がありましたか!』

男「いやお前の説得はどうでもいい」

幽霊『がーん』

男「ちょっと…気になるものがあってな…」

幽霊『……?』

男「そうと決まればさっそく行くぞ」

幽霊『場所は分かるんですか?』

男「ああ…電車で20分くらいだな」

幽霊『あれ…この辺りに駅ってありましたっけ?』

男「お前が生きてた頃とは違うんだよ」

幽霊『そ、そうですよね』

男「一番近いところで徒歩30分だ」

幽霊『遠っ!!?』

男「心配するな、自転車で行く」

幽霊『ほっ』

石ころ『貴様ラ何時モ、ソウイウヤリ取リデ時間ヲ浪費シテイルダロウ…』

男「……」ガシャン

幽霊『それが男くんの自転車ですか?ボロボロですね』

男「まぁ、乗れないことはないからな…」ギギギチギチ…

幽霊『変な音してますけど…』

男「…とにかく幽霊!お前はここからは実体化するなよ…話しかけるのはいいが小声にしろ」

幽霊『はーい…』スゥッ

男「石ころ!お前は胸ポケットに入れておくが、もし勝手に飛び出して落ちたりしても拾わんからな」

石ころ『フン!!我ガソンナ愚カナコトヲスルハズガナイ!!』

男「そうかい。じゃ、行くぞ…」ギギ…

ドシャアッ

幽霊『あーあ…』

男「くそ…やっぱり新しいのを買うべきか…」ギコギコ

幽霊『嫌な音してますねー…』フワフワ

男「ペダルが重い…ちっ…」

男「!!おい、幽霊」

幽霊『はい?』

男「お前、手足だけ実体化できるんだよな」

幽霊『できますけど、何でです?』

男「手足だけ動かして、自転車漕げ


幽霊『』

幽霊『う…く…お、重いぃ…』ギコギコ

男「ははは、楽だ楽だ。手足だけだから周りの目からは俺が漕いでるようにしか見えまい」

幽霊『あんまり調子に乗ると事故らせますよ!!』

男「事故だと?ふん、この自転車でこれまでに起こした事故は6回だ」

幽霊『え…』

男「段差に乗り上げようとして倒れたのが3回、電柱にぶつかったのが2回、猫を避けようとして壁に突っ込んだのが1回だ」

幽霊『だからボロボロなんですよ…』

男「ほら、駅が見えてきたぞ。もっとシャカシャカ漕げい」

幽霊『うわーん!』

石ころ『意外ト居心地ガイイゾ、ココ…』



幽霊『や、やっと着いた…』

男「予定より3分遅れた。もう電車来ちまうぞ」

幽霊『い、急がないと!』

男「だな」ダッ


券売機

男「……」

幽霊『どうしたんです!?何で止まってるんですか!?早く切符買わないと!』

男「ああ…そうなんだが…」

幽霊『なんですか!まさか買い方が分からないとか!?これだからニートはダメなんですよ…』

男「幽霊の分の切符は必要なのか?」

幽霊『えええそこで悩みます!?』

男「まぁとりあえず俺の分だけでいいだろう…もし止められたら、お前はここに置いていく」

幽霊『本気で止められると思ってます?』

ホーム

男「よし間に合うな」ダッ

ポロッ

石ころ『ウワッ!!急ニ走ルナ!!』

幽霊『恐竜さん…!?』

まもなくドアが閉まります…

prrrrrrr …

駅員さん「閉まるドアにご注意くだ…」

男「馬鹿野郎てめー何してやがる!!」

駅員さん「!?」

男「これで乗り遅れたら許さんぞ!!」ヒョイッ

石ころ『ソ、ソンナコト言ワレテモ』

男「!ほら、駅員さん待ってくれてるじゃねーか!!すいません駅員さん」

駅員さん「ど、ドアー閉まりますご注意ください…」

幽霊『男くん、今あなたが恐竜さんに怒鳴ったのを、駅員さんが怒られたと思ったみたいですよ…』

男「!……すいません」


ガタンガタン…ガタンガタン…


幽霊『……�・♪』

男「…鼻唄が古い」ボソッ

幽霊『!!』ガーン

男「…この電車の中に霊感の強い奴がいたら、お前の鼻唄が聞こえてるんだろうか?」

幽霊『どうでしょうね…そもそもほとんど人乗ってませんけど…』

男「でも見ろ、あのお婆さんこっちをめちゃくちゃ見てるぞ」

幽霊『あなたが独り言ぶつぶつ言ってるように見えてるんじゃないですかね』

男「しまった…これじゃ完全に変人だ」

ガタンガタン…

プシュー…

男「ここだ。降りるぞ」ガタッ

幽霊『!早いですね、まだ二駅で着いちゃいましたよ』

石ころ『ムッ…!』

男「どうした、石ころ」スタスタ…

石ころ『懐カシイ匂イガスルゾ…!』

男「へぇ…俺には分からんが」スタスタ

石ころ『我ト同種ノ匂イダ!!間違イナクコノ近クニイル!!』

男「近くもなにも」スタスタ

ガション!!(改札)

男「すぐ目の前だからな」

幽霊『わー…この大きな建物が…』

男「ザ・ジュラシックワールド…恐竜展だ」

石ころ『ウオオオオオオ!!イル!イル!!我ガ同胞!!インカンテロプロプスキル!!』

男「淫乱テロ…?なんだかよく分からんが、あのオブジェなら『アンキロサウルス』だぞ」

石ころ『違ウ!!アイツハ…インカンテロプロプスキル!!』

男「あー分かった分かった…当時はそういう名前だったんだな」

幽霊『じゃああれは何て言うんです?』

男「頭の分厚い…確か『パキケファロサウルス』だな」

幽霊『男くん、恐竜信じてないって言ったわりには詳しいですね』

男「一般教養だ。このくらい知ってなきゃニートはやれんぞ」

石ころ『違ウ!!アイツハ…ユクベンキロウヤルベニス!!』

男「はいはい」

幽霊『変な名前だったんですね』

男「しかし…会場の外でさえこの充実っぷり…大したもんだな」

幽霊『人も大勢いますしね。もしかしたら少しくらい私が見えてる人もいるのかも…』

石ころ『ハ、早ク入ルゾ!!モシカシタラ我ガ最大ノ友、デューバースロロンギリューバーマイス君ガイルカモ知レナイ…!』

男「でゅ…?」

幽霊『もはや呪文ですね…』

男「じゃ入場料を…おい、これは幽霊の分も必要なのか?」

幽霊『分かってて聞いてるでしょう』

係員「ザ・ジュラシックワールドへようこそ!」

男「あの、すいませんが」

係員「はい?どうなさいました?」

男「でゅーばーなんちゃらって恐竜います?」

係員「でゅーばー???すみません、ちょっと調べてみないと分かりませんが、そのような名前の恐竜は…」

男「そうですか、分かりました」

幽霊『分かるわけありませんよね』

男「…だってよ、石ころ」

石ころ『今ノハ…オ前ノ同種ノ中デモ特ニ美シイナ!!』

男「奇遇だな、俺もそう思った」

幽霊『あなた達…呆れて何も言えませんよ』ハァ

男「おやこんなところに『まな板ザウルス』が」

幽霊『呪い殺してやる!!!』キー!!!

男「……」スタスタ

幽霊『ふへー、いろいろいますねぇ…卵の化石から、全身復元された化石まで…』

男「どうだ…石ころ、お前の仲間はいるか」

石ころ『……大勢イル』

男「よかったな」

石ころ『シカシ我ガ呼ビ掛ケテモ…誰モ返事ヲシナイ…』

石ころ『皆、眠ッテイルノカ…?』

男「……お前だけ、少し早く目が覚めちまったんだろ」

石ころ『ソウカ…』

男「こいつらも…たぶん…そのうち目を覚ます。そしたら同窓会でもやったらいい」

石ころ『…ソウダナ!』

幽霊『…男くん』

男「…ん?…なんだ…ここから一気に人が増えたな…」

係員「こちら最後列になりまーす!」

男「なるほど…ニュースでやっていたtレックス…間近で見たいがために行列ができてるんだな」

幽霊『tレックスですか…私も見てみたいですねぇ』

男「お前は幽霊なんだから、すーっと行列を抜いてけばいいだろ」

幽霊『いやぁ、それってルール違反でしょう…それにこういうのって、並んで見るのが楽しいんですよ』

男「そういうもんか?」

幽霊『そういうもんです』

男「…手だけ実体化させろ…」

幽霊『?』スッ

男「石ころにも見せてやれ」

石ころ『ム!tレックスガ何カ分カランガ、是非見セテイタダク!!頼ムゾ小娘!』

幽霊『小娘って…あれ?男くんは?』

男「俺は…いい。ちょっと別のところを見てる」

男「……」スタスタ

幽霊『あー、行っちゃった』

石ころ『小娘!モウ少シ進メンノカ?』

幽霊『手だけとは言え、実体化してますから…あまり動くと誰かに気づかれるかも知れません』

石ころ『不便ナコトヨ』

幽霊『恐竜さんだって、今、ふよふよ宙を浮いてるようにしか見えてませんよ』

石ころ『ナニ!?』

幽霊『当たり前でしょう、あなたは化石が本体なんですから…』

石ころ『ソウデアッタ…』

幽霊『…そういえば恐竜さん、なんて恐竜なんです?』

石ころ『我カ?…ヨクゾ聞イテクレタ!我ハ…』

幽霊『あ、やっぱいいです。どうせ聞いても分からないと思うんで』

石ころ『クッ、無念!』

ゾロゾロ

幽霊『少し前に行けそうですね』フワフワ…

石ころ『時ニ小娘、我ヲ日ノ下ニ掬イ出シタ、アノ男トヤラハ何者ナノダ?』

幽霊『ただのニートですよ』

石ころ『ニート?ヨク分カランガ、アイツハ生意気ダナ』

幽霊『そうですねぇ』

石ころ『ダガナカナカ…イイ奴ダ』

幽霊『…そうですね』

ゾロゾロ

幽霊『…あ、また進んだ…そろそろ見えるんじゃないですかね?』チラッ

石ころ『……』

石ころ『!ア、アイツハ、デューバースロロンギリューバーマイス君!!』

幽霊『え、でゅーばーってtレックスのことだったんですか!!』

石ころ『早ク前ニ行クゾ!!』ピョンピョン

幽霊『ルール違反だって…ああ、もう!特別ですよ!』スイーッ

tレックス頭部の化石

幽霊『うわ�・…こんなに大きいとは…ガラスごしでこの迫力…さすが最強の恐竜ですね』

石ころ『最強!?何ヲ言ウ、最強ノ恐竜ハ我ダロウ!!』

幽霊『知りませんよ…しかし、これ…』

幽霊『この迫力…エネルギー…もしかしたら…お話しできるかも知れませんよ』

石ころ『ナニ!?本当カ!?』

幽霊『そんな気がします…』

石ころ『…デハ…エー…ウンッ、ゴホンッ!!』

石ころ『デューバースロロンギリューバーマイス君!デューバースロロンギリューバーマイス君であるか!?』

幽霊『…やっぱり長いでしょうその名前』

tレックス『……』

パチッ

幽霊『!!』

tレックス『その声は…マーベルテゼルクロロンヒューダイロンヌ…か…』

幽霊『そんな名前なんですか』

石ころ『如何ニモ!マサカ君ニ再ビ会エル日ガ来ヨウトハ!』

tレックス『……』

石ころ『デューバースロロンギリューバーマイス君?』

tレックス『マーベルテゼルクロロンヒューダイロンヌよ…お前の体は…それしか残らなかったか…』

石ころ『ウム?』

tレックス『我らは一度滅びた身…再びお前と会えたのは嬉しく思う…』

tレックス『だが…眠っているうちに…久しく自らの体を見ぬうちに…我は在りし日の姿をとうに忘れ去ってしまった…』

tレックス『友よ…お前はどうだ…?』

石ころ『我ハ…我ハ…!?』

石ころ『オ、思イ出セナイ…我ハ…我ハ一体ドンナ姿ヲシテイタノダ…!?』

tレックス『忘れてしまうだろう…他の者達もそうだ…それだけ長い時が流れた…』

石ころ『ト、友ヨ…君以外ノ誰モ、我ノ言葉ヲ聞カナカッタ…コレハドウイウコトナノダ?』

tレックス『…簡単よ』

tレックス『ここにいるもの達は皆…二度と目を覚まさぬのだ』

tレックス『我らの過ごした時をあの一瞬の光に置き去り…ここで次の役目を果たしているのだ…』

石ころ『次ノ役目…?』

tレックス『我らを包み込んだあの光…あれは彼の地に住まう生物のほとんどを消し去った』

tレックス『言うなれば積み上げた歴史を…消してしまったのだ…』

tレックス『しかし我らのうち…運のよかったいくらかは…このように姿形を一部だけ残すことかできた…』

tレックス『我らはもはや歴史と共に死した。だがこうして残った一部が、その歴史を再現しようとしているのだ』

石ころ『歴史ヲ…再現?』

tレックス『我はこの姿を忘れてしまった…だが見ろ…我の一部が浮かび上がらせる我が姿…なるほど確かにこんなふうだった、と思わせるだけの風格がある…』

石ころ『…ドウイウコトダ…!』

tレックス『我らの歴史を取り戻す…次の世代の者たちがいる…』

石ころ『…!!』

tレックス『どうだ…?お前もここで、消された歴史を再現する鍵とならないか…彼らはいい…我らを大切に扱ってくれるし…こうして様々な者が見てくれる…』

tレックス『かつて我のような者がいたのだと…はっきりとその歴史を…記憶に刻んでくれるのだ…』

石ころ『…歴史…』

tレックス『死した後に過ごす日々も悪くはないぞ…』

石ころ『…スマナイガ今ノ我ハ…』

石ころ『コノ目デ新タナ歴史ヲ見テミタイ…新タナ歴史ノ証人トナリタイ…!!』

tレックス『……』

tレックス『何かを…得たな…?』

石ころ『新タナ友ダ…』

tレックス『…いいな…それは…それこそが…我らにとっての新たな歴史…』

tレックス『…我の分も楽しめ…友よ…』スッ

シーン……

石ころ『……』

幽霊『……』ポカーン…

幽霊『あ、あの…マーベルテゼ…えーっと…』

石ころ『…ナァ小娘ヨ…』

幽霊『は、はい!?』

石ころ『我ハコレカラノ、新タナ歴史ト共ニアリタイ…』

幽霊『…いいんじゃないですか?それで…』


男「お、いたな…」スタスタ

幽霊『あ、男くん…』

男「案外スムーズに列が進んだみたいだな」

幽霊『いえ、結局抜かしちゃいましたよ』

男「卑怯ものめ」

幽霊『あ、そうだ、実はね、このtレックスが…』

石ころ『モウ済ンダ話ダ…イチイチ言ウコトデモナイ…』ピョンッ

幽霊『……あー』

幽霊『なんでもないです』

男「?」

幽霊『ところで男くんは何を見ていたんです?』

男「…いろいろ見てたんだ」

幽霊『……』チラッ

男「……」サッ

幽霊『何か持ってますね』

男「き、気にするな…」

幽霊『気になりますよ』

男「何でもいいだろ…」

幽霊『はっ!まさか私へのプレゼント!?』

男「それはない」

幽霊『じゃあ見せてくださいよ�・』

男「帰ってからだ」

幽霊『ちぇっ…って、もう一番の見物は見ちゃいましたけど、どうします?』

男「…どうする、石ころ」

石ころ『…満足シタ。帰ロウ』

幽霊『えー…もう帰るんですか?』

男「石ころが帰るって言ってんだ、帰るぞ」

幽霊『……そうですね』

男「…ずいぶん素直だな。頼むから一人でこっそり侵入するとか、そういう犯罪じみたことはするなよ」

幽霊『しませんよそんなこと!!』

男「ん…じゃあ帰るぞ…」スタスタ

幽霊『はーい』フワフワ

石ころ『……』ピョンピョン

石ころ『……ジャアナ』ピタッ

石ころ『……』ピョーンピョーン

帰りの電車の中

ガタンガタン…

幽霊『ねぇ男くんその袋の中身なんなんですか?』

男「なんだっていいだろ」ボソッ

幽霊『教えてくださいよ�・』

男「いーやーだ」

石ころ『…甘イナ!!』ピョンッ

ガサッ

幽霊『あっ…袋の中に!』

男「おいっ…!」

石ころ『ナンダ…?暗クテヨク分カラナイガ…ナニカ柔ラカイモノガ…』ガサガサ

幽霊『?』

石ころ『!!モ、モシカシテコレ、我カ!我デハナイカー!!』

幽霊『??』

男「え?」

幽霊『ねぇねぇ気になりますよ!!』フワフワ

男「自転車漕いでる間は静かにしてろ!」ガシャガシャ

石ころ『ナルホド!ソウカコンナ感ジダッタゾ!!』

幽霊『恐竜さんも、教えてくださいよ�・!!』

男「俺にも石ころが何をそんなに喜んでるのか分からないな…」

石ころ『イヤーコレハ素晴ラシイ!』

ガチャガチャ

男「ただいま」ギィ

幽霊『おかえりなさい』スーッ

男「お前好きだなそれ…」

幽霊『家主より先に家に入って迎える感覚、たまらないです』

幽霊『それより袋の中身!中身!』

男「分かった、分かったよ!その代わり、笑うなよ」

幽霊『笑えるようなものなんですか?』

男「さぁ…な!」バッ

ゴロン…

幽霊『……』

幽霊『これ…え?』

幽霊『ぬいぐるみ…!?』

幽霊『え?なんで?なんでこんなものを…』

男「別にいいだろうが。テレビで紹介されてて、いいなと思ったんだ」

幽霊『えー…でも…意外な趣味ですね。こんな可愛いぬいぐるみが欲しかったなんて』

男「ほっとけ…それ最後の一個だったんだぞ」

幽霊『…ところでこの恐竜、何て言いましたっけ?』

男「おいおい幽霊、無知すぎるだろ…これは『トリケラトプス』だ」

石ころ『違ウ!!我ガ名ハマーベルテゼルクロロンヒューダイロンヌダ!!』

男「まーべる…はぁ?」

幽霊『!もしかして恐竜さんって…!』

石ころ『ソウダ!!コレコソ我ガ姿ダ!!』

男「なに?お前トリケラトプスだったのか」

石ころ『違ウト言ッテルダロウ!?我ガ名ハマーベルテゼルクロロンヒュ…』ヒョイッ

石ころ『ナ、ナンダ急ニ!放セ!!』

男「ちょうどいい…この石ころ、いい加減鬱陶しいと思っていたんだ」

男「幽霊!持ってろ」ポイッ

石ころ『グワッ!!』ガンッ

幽霊『わ…!?』

石ころ『ク…ズイブン堅イ部分ニ当タッタゾ…骨カ!?』

幽霊『悪かったですね…まな板で…』ズーン

男「ふっ…このトリケラトプスの腹を…」ギラン

幽霊『なっ…!?鋏…!』

男「裂く!!」ズバッ

幽霊『わぁっ!なんてことを!いくら男くんがサディストだからって、ぬいぐるみにまでそんな酷いことしなくても…』

男「そして石ころ!」バシッ

石ころ『!?』

男「お前を…入れる!」グイッ

幽霊『へっ?』

石ころ『ナ、何ヲスルー!!』

男「そして裂いたところをすぐさま修繕」チクチク

幽霊『わ、私より上手い…!』

男「できあがりだ」

幽霊『!これは…』


石ころ『ム……?』モゾモゾ


幽霊『可愛いー!!』

男「石ころinぬいぐるみ!これでお前の体はトリケラトプスだ、不格好な化石よりマシだろ」

石ころ『オ…オオ…オオオオ…』

石ころ『素晴ラシイ!!素晴ラシイ!!有難ウッ!!』

男「お前は我が家のペットだ…当分ここにいてもらうぞ」

石ころ『面白イ!!コレガ新タナ歴史ノ第一歩ダ!』

男「はて…何のことだ?」

玄関前

?「男さん…独り言…すごい…の」

?「わたしの愛…受けとって…くれるかな…?」

?「……げほっごほっ…!」ボタタッ

?「…ひゅー…ひゅー…また来るねぇ…」




男「……!!」

幽霊『?どうしました?』

男「…玄関から…音がしたな」

幽霊『え…全然聞こえませんでした…』

石ころ『……?』

男「…そろそろアレとも…ケリをつけないとな」

切ります
特に深く考えずに書いてたら、信じられないくらい長くなった…しかも大して中身ないし
3人(匹?)目のメインキャラは『トリケラトプスの幽霊』です

次は、もう普通に分かると思いますけど、どういう話にしましょうね、どうしましょう

っていうかまだ幽霊と出会って丸一日経ってないのか
内容がないよう><

男「よくよく考えたら幽霊二つも側にいるって異常だよな」

幽霊『なにか言いましたか?』

男「なんでもない…じゃ、本編スタートだ」

男「おい石ころ…」

石ころ『ナンダ?』

男「せっかく恐竜の姿にしてやったたんだし、改めて名前をつけてやろう」

石ころ『ナニ!?本当カ!』

男「何がいい?」

石ころ『我ノ名前ハマーベルテゼルクロロンヒューダイロンヌダ!!』

男「長いな。縮めて『マロロンヌ』にするか」

幽霊『なんか響きがキモいですねマロロンヌ…』

石ころ『ソンナフザケタ名前ハオ断リダ!ソウダ!!小娘ガ決メテクレ』

幽霊『え、私ですか』

石ころ『コイツニ決メラレルヨリズットイイハズダ』

幽霊『うーん…トリケラトプスだから…えーっと…』

男「トライセラトップス・ドーパート」ボソッ

幽霊『なんですかそれ……じゃあ…』

幽霊『トラちゃんなんてどうでしょう』

男「……」

石ころ『……』

【審議中】 aa略

男「厳正な審議の結果、まぁこれでいいだろう、ということになった」

トラ『男ノヨリハ、マシダ…』

幽霊『はぁ…どうも…』

男「しかしなんで…トリケラトプスがトラになる?」

幽霊『え…「ト」リケ「ラ」トプスで…』

男「省略!そういうのもあるのか」

幽霊『いや発想はマロロンヌと同じでしょう』

男「よし…では、トラ。お前には家のガードを頼む」

トラ『了解シタ!』

幽霊『ちょっと待て自宅警備員』

幽霊『……』グー…

男「ん?」

幽霊『う…お腹が…』

男「長時間実体化していたせいか?」

幽霊『たぶん…なんかもう生きてた頃とあんまり変わらないですね…お腹空くし、眠いし…』

男「トイレは?」

幽霊『今のところ必要ではないです…て言うか男くんちょっと変態ですよね』

男「トイレってだけで変態扱いとかちょーキモいんですけどー」キモーイ

幽霊『なんでギャル口調!?』

トラ『我モ腹ガ減ッタ!!』

男「おいおい、家にドックフードなんてないぞ」

トラ『ソンナモンイラン!!肉ヲクレ!!』

男「…腹ペコ幽霊どもめ。仕方ない…一寸待ってろ」

トラ『アイツ、狩リガデキルノカ?』

幽霊『あなたじゃないんですから、そんなことしませんよ…でも、素朴な純日本食には定評があるようですよ』

男「できたぞ」スッ

幽霊『早っ!?』

幽霊『って!これは…』

男「サンドイッチだ」

幽霊『え…?』

トラ『素朴ナ純日本食トハナンダッタノカ』

幽霊『え?え?夕食ですか?これ』

男「夕食ですよ、それ」

幽霊『こ、これだけ…?』

男「夜は寝るだけだからな、カロリーを消費することがない。夕食を腹一杯食っても、太るだけだぞ」

幽霊『は、はぁ…そうなんですか』

男「足りなかったら塩むすびでも作ってやる」

幽霊『それはいらないです』

トラ『肉ハドウシタ!!』

男「うっせーな、ちゃんと入ってらよ」パカッ

トラ『!!オオ!肉ダ!コレハドノ恐竜ノ肉ダ!?』

男「ええーと…大豚竜(ラージポークザウルス)だ」

トラ『初メテ聞ク名前ダナ』

幽霊(ただのハムですしソレ)

トラ『ムシャムシャムシャ…』

男「どうやってぬいぐるみ越しに食べてるのかは敢えて気にしない」

幽霊『れ、霊ですから、そのくらいできるますよ!たぶん』

男「ほら、お前も食え」

幽霊『あ、はい…いただきます…』

幽霊『………』モグモグモグ

男「美味いか」

幽霊『すごいですね…見た目はただのサンドイッチなのに…どうしてこんなに美味しいのか…』

男「それはよかった」

幽霊『男くんはいい旦那さんになれますよ…』モグモグ

男「どうだかな…俺は嫁を選り好みする。下手すりゃ生涯独り身かも知れん」

幽霊『まぁニートのうちは無理でしょうね』モグモグ

男「……」

幽霊『あ、でもいざとなったら私がお嫁さ』

男「おいトラ!食い散らかすんじゃねぇよ」

トラ『コノ体ニハマダ慣レテナイノダ!!』ボロボロ

幽霊『…あー美味し…』モグモグモグ

幽霊『ごちそうさまでした…』

男「おう…皿は自分で下げろよ」

幽霊『はーい』フヨフヨ

幽霊『…男くんは食べないんですか?』

男「俺はまだいい。後で来る」

幽霊『来る??まさか…私たちに隠れてこっそり出前とか取ったんですか!?』

男「出前なんて取ったことねぇよ…」

幽霊『じゃあなんですか』

男「勝手に来るんだよ…」チラ

男「6時45分…そろそろだな」

ガチャッ

幽霊『…?なんです?今、玄関のほうから音が…』

男「……」

トラ『酔ッ払イガ部屋ヲ間違エタンジャナイカ』

男「お前、恐竜のくせによくそんなこと知ってるな」

男「…幽霊。玄関すり抜けて、見てみろ」

幽霊『…?』フヨフヨ

スーッ

幽霊『……あれ?』


幽霊『男くん、玄関に、ドアノブのところに何かぶら下げてありましたよ』フヨフヨ

男「持ってこなかったのか?仕方ないな」スタスタ

ガチャッ

男「…あった…」

男「……」スッ

幽霊『それそれ。その袋の中身、なんですか?』

男「これは…」ゴソッ

男「…弁当だ」

幽霊『…弁当…?』

男「ここ一週間毎晩毎晩…同じような時間に、届けられてる」

幽霊『だ、誰が…はっ!まさか例のストーカー!?』

男「…ああ…そういう考え方もあるのか」

幽霊『え、今まで他を疑ってたんですか』

男「しかしこの弁当…食通の俺も少し感心するレベルの出来で」パカッ

キラキラキラキラ…

幽霊『おお…!ゴージャス…!』

男「正直有難いんだよ」

トラ『ソンナ得体ノ知レナイモノヲ食ウノカ』ムシャムシャ

男「お前なんか静かだと思ったらまだ食ってたのか」

男「まぁ…ただでもらえるものならなんでも貰っておくべきだ…」

男「ちなみに空になった弁当箱を外に置いておくと、翌朝には回収されてる」

幽霊『完全に出前じゃないですか』

男「いただきます」ペコリ

幽霊(しかし…毎日弁当を作ってくるストーカーって…)

幽霊(ほっとくわけにはいかないんじゃ…?)

男「おい…よだれ垂れてるぞ」

幽霊『!』ゴシゴシ

幽霊(私一人で調べてみようか…)

男「……」モグモグ

幽霊『むー…』ムムムム

男「…?なに唸ってんだ」

幽霊『接続中です』ムムムム…

男「は?接続?wi-fiか?」

幽霊『ちょっと違いますけど…』

幽霊『むーっ!!き…キタ━━(゚∀゚)━━!!!』

男「うるさいな、静かにしろ」

幽霊『繋がりました!』

男「何にだよ」

幽霊『幽霊専用コミュニティーツール・憑いったー!』

男「ぶっ」

幽霊『笑わないでくださいよ!…これはね、幽霊だけが発する特別な電波を行き来させて、他の幽霊たちと連絡し合えるんですよ』

男「それはツールって言わないだろ…」

トラ『ソレ、我ニモ出来ルカ?』

幽霊『もちろん!強く念じるだけですから』

男「勝手にやってろ」モグモグ…

面白いしずっと支援してるが、

キャラコメはやめてくれ…>>149
萎える

幽霊『えーと…【拡散希望】〇〇市内のアパートにて独り暮らしの男性がストーカー被害にあってます。何か知ってることがあったらドンドン教えてください!…と』

トラ『コレハ便利ソウダナ』

幽霊『憑いーとする…よし!これで情報が集まってくるはずです!』

男「いや、情報も何も、顔見知りだぞ」

幽霊『え?』

男「言ったろうが。会社を辞めてからだって。お前の言うストーカーは」

男「同じ職場にいた女だ」

幽霊『えぇっ!?』



?「男さん…食べてくれてる…かな…?」

?「ゲホッゲホッ…!」

?「今日は…一段と…寒いね…暖めあえたら…いいのに…」

>>163
自分も基本的に好きじゃないけど、気分でやってみた
たぶんもう二度とやらないから心配しないで


幽霊『元同僚がストーカー…そ、そうだったんですか…』

男「ああ」

幽霊『なおさらほっとくわけにはいかないでしょう!』

男「…なら、お前に任せる」

幽霊『え?』

男「俺は別に困ってない。今朝の爪とかああいうのは、捨てればいいだけだしな」

幽霊『で、でも…』

男「お前には憑いったー(笑)があるんだろ?どうにかできるならどうにかしてくれ」

幽霊『じゃ、じゃあ…やってみますけど…』

幽霊(ストーカー被害に困ってないって…うーん…そういう問題ですかね…?)

トラ『イイナ、コノ憑いったー!色々ナ情報ガ手ニ入ルゾ!!』

ごめんなさい、いつもより少ないですが今日はもう切ります
ストーカー編前編とでも言ったところでしょうか
やっぱり先のことはあまり考えてません

死んでから17年経つくせに幽霊がやたらと通俗的なのは、この憑いったーのおかげだった、ということで…

あらすじ

男がストーカー被害に遭っていることを知るや否や、対策に乗り出す幽霊
当の本人はほとんど迷惑に思っていないようだが…

男「……」

幽霊『なになに?そんな情報が…』

幽霊『ふむふむ…自販機で飲み物を買っていた?なるほど…』

幽霊『へー、ここからそう遠くないところに住んでるんですね』

男「住所まで割り出したのか…」

幽霊『これが憑いったーの実力です!』ドヤァ

男「ああそうかい」

幽霊『じゃちょっと、先回りしてます!』

男「早く帰ってこいよ」

幽霊『はーい』スーッ…

男「さて…トラ、弁当食うか」

トラ『肉ヲ!肉ヲクレ!』

?「……」スタスタ…

?「あったかいカフェオレ…おいし…」ゴクッ

?「!げほっげほっ…!」

ソローッ

幽霊(あの女の人がストーカー…そしてあのアパートが…)

幽霊(よし、先回りして……ん?憑いったー…)

幽霊(えっ!!ネコ飼ってるんですか?見たい見たい!)

幽霊(よーし、もうこの際、家の中に入っちゃおう!幽霊だしそのくらいしても問題は…)

?「……」スタスタ

幽霊(ああっ!もうあんなところに!急がないと…!)スーッ


男「トラ、唐揚げやるよ」ヒョイ

トラ『ウム、カタジケナイ!!』モグモグ

幽霊(よし…先回り成功!)スーッ

幽霊(703号室…七階って最上階ですか。高いなぁ…男くんの部屋なんて二階なのに)

幽霊(まぁそんなことはどうでも…)

?「鍵…鍵…」ガサゴソ

幽霊(わっ!もう上がってきてる!やばいやばい…!)

幽霊(お、お邪魔しまーす…)スーッ

?「…鍵…あった」スッ

ガチャッ


男「ほら、プチトマトだ…」

トラ『野菜ナドイラン!』

男「トマトは果物だぞ」

トラ『イラン!!』

?「ただい…ま」ガチャッ

スーーーッ……

?「…寒気が」

?「体温…計らなきゃ…」スッ

幽霊(……)コッソリ

幽霊(取り敢えず戸棚の裏に隠れてみたけど…これ、どうすれば…?)
※質量のない(実体化していない)幽霊は、狭い棚の裏にも入れる


?「……」

?「……」

?「……」ピピッ

?「35.4℃…平熱…」

幽霊(低っ!)

幽霊(まぁでも、ちょっと平均体温低めの人って結構いるし…)

猫「ニャー」トトトッ

幽霊(きゃー!猫!か、可愛い!)

猫「!フシャーッ!!」

?「…?どうしたの…」

幽霊(ば、バレた?いや、気のせいって可能性も…しょせん猫だし…)

猫「フギャルガルルグルグルブシャー!!」

幽霊(ひぃいいいいいい絶対バレてるぅうううう!)

?「戸棚…?」

幽霊(うっ!)ギクッ

?「虫でも…いた…?」スッ

幽霊(虫じゃなーい!)

?「気に…なる…」スタスタ

幽霊(き、来た!こうなったら、腹括るしかない…!)

?「何かいるの……?」ソローッ

幽霊『……』ヌゥッ


猫「!フギャー!ムギャーンニャー!!!」

?「…?なに?」


幽霊『…ひゅ�・どろどろどろ…』


?「……」

幽霊『……』

猫「フギャー!!」ネコパンチシュシュシュ

?「何もいない…けど…一応…」スッ

?「虫除けスプレー…!!」シュー!!

幽霊『きゃあああああああああああ!!!?』

猫「フルル!フルル!フシャー!!」

?「なにも…いなかったよ」

幽霊『うう…一旦退却っ』スーッ


307号室前

幽霊『実体化してるのに見えてない…そんなこともあるんですか』

幽霊『憑いったーで聞いてみよう…』


幽霊『…ストーカーの家の前なう!渾身のひゅ�・どろどろどろが、まったく通用しなかった(;_;)超ショックです(tot)』

幽霊『これでよし…』

幽霊『でもあの猫はどう考えても見えてましたよね』

幽霊『…ん?え、早っ!もう返事来たんですか!?』

幽霊『なになに…?』

「実体化シテイタノニ見ラレナカッタ、トイウノハツマリ、ソイツガソモソモ幽霊ノ存在ヲ微塵モ信ジテイナイトイウコトダロウ」

「存在シナイト思イ込ンデイルカラ、本当ニ見エナクナッテイルノダ」

幽霊『ふーん、そういうものなんですか…って言うかこの片仮名…』

幽霊『トラちゃんですよね!?何でそんなこと知ってるんですか!?』

「今、男カラ聞イタノダ。アト、伝言。早ク帰ッテコイ、弁当ノオカズ残シテアルゾ…男ヨリ」

幽霊『……は�・い。すぐ帰ります』フワフワ


男「憑いったー、電話代わりに使えるのは便利だな」

トラ『我ハモウ使イコナセルヨウニナッタゾ!!』

幽霊『ただいま�・…』スーッ

男「�・�・�・」

トラ『�・�・�・』

幽霊(…聞いてないし…むぅ)


幽霊『ひゅ�・どろどろどろ!!』バーン

男「……」

トラ『……』

男「おかえり、全然ひゅ�・どろどろどろな感じじゃなかったぞ」

トラ『ソレジャアタダ騒イデイルダケダ』

幽霊『ちょっとやり過ぎましたね…』

男「…で、どうだった」

幽霊『憑いったーで呟いたとおりです』

男「見られなかった…それだけか」

幽霊『はい?』

男「他には何もしなかったのか…ポルターガイストとかラップ音とか」

幽霊『ええっ…してませんし…ラップ音はやったことありませんよ…』

男「ふん…情けないな、お前ホントに幽霊か?おいトラ、ラップ音やってみろ」

トラ『……パンッ!!』

男「ok、さっさと寝ろ」

トラ『……』

男「…さっきのひゅ�・どろどろどろと言い、お前は幽霊に向いてないんじゃないか」

幽霊『む…向いてない…!?』ガーン

多分「~」何だろうけど環境依存文字はやめて欲しいなぁ

男「そもそもな、のほほーんとした顔で人ん家に上がる幽霊がいるか?」

幽霊『うう…』

男「お前はダメだ!幽霊やめちまえばいい!」

幽霊『む、向いてないとかやめちまえだとか…』プルプル…

男「ん?」

幽霊『私だって、好きで幽霊やってるわけじゃないんですよ!!』ポロポロ

男「……」

幽霊『うわ�・ん…!』スーッ…

男「……」

トラ『小娘ヲ泣カセルトハ、非道ナ奴メ!!』

男「ふん…俺は言いたいことを言ったまでだ」

トラ『ソレニシタッテ言イスギダロウ』

男「…幽霊の存在を信じてない奴には幽霊が見えない…」

男「あんなのでっちあげだ…本当の幽霊なら、誰だって驚かせることができるはずだ」

>>183
表示されてませんでしたか?
すみません。波線であってます。

風呂場

幽霊『うえーん…』シクシク

コツンコツン

幽霊『?』ゴシゴシ

ガチャ

トラ『腹減ッテナイカ』

幽霊『と、トラちゃん…』

トラ『コノ弁当、特ニ肉、美味イゾ。小娘モ食エ!!』

幽霊『…でもこれ、あのストーカーが作ったお弁当なんでしょう…そんなの食べたくないです…変な薬とか…』

トラ『エッ!?入ッテルノカ!?ウワー!!二度モ死ニタクナイー!!!』ジタバタ

幽霊『あ、いや、入ってなさそうですね…』

幽霊『…じゃあ、一口だけですよ…』スッ

パクッ

幽霊『……!?』ピクッ

トラ『…ドウシタ?』

幽霊『お、美味しい…この卵焼き…!なんだろう…この、この…心が解れるような…』

トラ『?』

幽霊『男くんの料理は美味しい…まるで高級料亭で食べてるかのような…でも…』

幽霊『この卵焼きは違う…!もっと温かい、人の心…まるで、お母さんの手料理のような…』

幽霊『う…うえーん…!美味しいよぉ…』ポロポロ

トラ『ナ、ナンデ食イナガラ泣ク!?足リナイノカ!?我ガタクサン食ッタカラカ…!?』アセアセ…


男「……」

男「あいつは本当に、真心込めて弁当を作ってくれている…それが分かってるから、俺も邪険に扱えない…」

二時間後

男「……」

トラ『イヤ…一応起コソウトシタンダガ…』

幽霊『すー…すー…』

男「まったく…風呂場で寝るとは、ふざけた奴だ」

男「しかしこいつ、実体化したまま眠れるのか…ますます幽霊らしくないな」スッ

男「よいしょ…トラ、弁当箱を片付けておいてくれ」ヒョイッ

幽霊『すー…すー…』

トラ『我ニソンナ細事ヲ…!』

男「…また石ころだけにして、土の中に戻してやろうか」

トラ『スグニ片付ケマス』ビシッ

男「頼むぞ」スタスタ

幽霊『すー…すー…』

男「…重さの普通の人間と大差ない…気持ち軽いような気もするが…」スッ

幽霊『うーん…むにゃ…』

男「……」チラッ

男「9時か…普段ならパズルでもやってるところだが」

パチンッ

トラ『!…オイッ急ニ暗クナッタゾ!?』

男「もう寝る」

トラ『マ…待テッ周リガ見エンッ!何ガアルノカ…痛テッ!!』ゴンッ

男「……おやすみ」

トラ『オイッ!?』

翌朝

幽霊『ん……むぅー……』パチッ

幽霊『…あれ?お布団?』ガバッ

トラ『ヤット起キタカ』

幽霊『…トラちゃん…なんか全身腫れてません?』

トラ『気ノセイダ…別ニ壁ヤ家具ニブツカリマクッタワケデハナイ!!』

幽霊『?…あの、ところでこのお布団は…』

男「俺の布団だ」スタスタ

幽霊『わっ!男くん!』

男「飯だぞ」

幽霊『あっ、あの!もしかして私たち…一緒に…寝てたとか…?』

男「…はっ」スタスタ…

幽霊『…えー!ちょっ…キッチンに引っ込まないでくださいよ!今のはどういう意味ですか!?』

トラ(アイツハ床デ眠ッテイタガ黙ッテイヨウ)

男「今日はご飯にあさりの味噌汁、アジの干物にほうれん草のひたしものだ」

幽霊『わー…豪華ですねやっぱり』

男「たんと食え」

幽霊『食べますとも!今日はやけにお腹空いてるんですよね!』

男「実体化して寝てたからじゃないのか?」

幽霊『さぁ…どうなんでしょう…?』


男「いただきます」

幽霊『いただきまーす』

トラ『イタダク!肉!肉ハ!』

男「ちゃんとあるだろ」

トラ『ドコニアル!?』

男「アジ。あさりもだ」

トラ『ニ、肉…ダガ…』

男「……」パクパク

幽霊『うーん…』モグモグ

男「…どうした?何か食えんものがあったか?まぁあっても食ってもらうが」

幽霊『いえ…男くんの料理は美味しいです』

男「そうか。そりゃそうだろう。俺は料理の天才だからな」

幽霊『ニートですけどね。…でも男くんの料理って、完璧すぎるんです』

男「…どういうことだ?」

幽霊『非の打ち所がなさすぎるんです』

男「別に悪いことじゃないだろ…」

幽霊『ストーカーのお弁当…ちょっとだけ食べました。卵焼きは、ちょっと甘すぎたんですけど』

幽霊『でもそれが…凄くよかった。なんかすごくほっとして…嬉しかったんです…』

男「……」

幽霊『何て言うんでしょうね?こういうの…不思議だなぁ』

男「…要するにお前は甘い卵焼きが好きなんだな?」

幽霊『あ、いや、そういうことじゃなくて…』

男「分かってるよ…ご馳走さま」ガタッ

幽霊『早っ!』

トラ『ニ、肉ガ食イタイ…コンナ小サナ貝ナド…!』パクッ

トラ『!?ウ、ウマイ!!ナンダコレハー!!ドウシテ我ハ今マデコンナウマイモノヲ食ベナカッタンダー!!』

幽霊『そりゃトリケラトプスはアサリなんて食べませんよね』

トラ『ウマイー!!!』

幽霊『……』スッ

幽霊『……』パクッ

幽霊『…うん…でもやっぱり美味しいですね。男くんの料理…』

男「で…今日は何しようか」

幽霊『求人広告でも読み漁ってたらどうです?』

男「遠慮しとこう」

トラ『狩リニ行コウ!アサリヲタクサン採ルノダ!!』

男「一人で行けよ」

トラ『グヌヌ…』

男「お前は?」

幽霊『……ええ、ストーカーに会いに行こうかな、と』

男「会ってどうするんだよ」

幽霊『私のことを一目でも見てもらいたいんです!』

男「……」

男「本来の目的とブレてるよな…」

幽霊『?』

男「まぁいい。好きにしろ…お、そうだ…弁当が回収されたか見てきてくれ」

幽霊『はーい』フワフワ

玄関

幽霊『えーっと、弁当…』スーッ

?『よかった…全部食べてくれたんだ…』ガサッ

幽霊『!!?』

?『嬉しい…な…』ニヤニヤ

幽霊『な、なんか笑顔が引きつっててちょっと怖い…』

幽霊『はっ!ダメだ!幽霊の私が怖がってどうするんです!ここはドーンと、強烈な存在感をアピールして…』

?「……♪」スタスタ

幽霊『だから歩くの早いんですって!待ってー!』フワーッ

?「……?」ピタッ

幽霊『!』

?「…呼ばれた…気がした…」

幽霊『!!来た?来た来た!?』

幽霊『なんとか…このまま気づいてください…!』

幽霊『おーいストーカーさん!私はここにいますよー!!』ブンブン

?「……」スタスタ

幽霊『あああもうっ!!』フワーッ

?「……」スタスタ

幽霊『は、早いですって!』フワーッ

?「……」スタスタ

幽霊『…早足で帰ろうとするってことは、多少は後ろめたさがあるんですかね…?』フワーッ

幽霊『ぎゃっ!?』ガンッ!!

幽霊(し、しまった…実体化してたんだ…!)

?「!!今!何か…声がした!!」クルッ

幽霊『!!』

?「誰かいるの…?」

幽霊『ここ!ここにいますよ!』

?「誰…!?野良猫かなにか…!?」

幽霊『違います!幽霊です!』

?「ま、まさか…ストーカー…!?」

幽霊『えええええ!?あなたがそれ言っちゃうんですか!?』ガーン

?「…!今…どこからか突っ込みが…!」

幽霊『聞こえてるんですか!?』

?「やっぱり…気のせい…?」

幽霊『あーもう…どっちなんですか!!』

?「…げほっ…もういいや…早く…帰ろう」スタスタ

幽霊『ま、待っ…また先回りしますからね!』ギュンッ

幽霊『時速30km浮遊!めちゃくちゃエネルギー使いますけど!』ギュオオオオオッ!!

703号室前

幽霊『はぁ…はぁ…あのスピードならもう少し…かかるはず…はぁ…』

幽霊『今のうちにどうやったら気づいてもらえるか考えないと…!』

幽霊『うーん…さっき…反応したりしなかったり…何が違うんでしょう』

幽霊『……』

幽霊『…あーもしかして…故意に叫んだりしてないとき…?電柱にぶつかったり、思わず突っ込み入れちゃったり…』

幽霊『たぶんそうだ…!でも…』

幽霊『故意に…故意にやらないようにする…って!矛盾してるじゃないですか!』

幽霊『とりあえず呟いときますか…』


?「……」スタスタ


幽霊『!?もう来た…!』

幽霊『あわわわわわわどうしようどうしよう!?まだ具体的な対策は何も…』

幽霊『うーん…男くんが言ってた通りに…ポルターガイスト?ラップ音?』

幽霊『ダメだ!ここは私なりのやり方で、男くんをギャフンと言わせてやらないと…!』

幽霊『やっぱり、あれしかない…!』スウッ


?「……」スタスタ


幽霊『来た!玄関まであと…10歩!』

幽霊『今だ!』バッ

幽霊『必殺!絶叫ひゅ�・どろど…』

?「ただいま…」ガチャ


幽霊『』

バリィン(心の砕ける音)

幽霊『』

幽霊『』

幽霊『』

幽霊『…はっ!しまった、ショックのあまり三分間も固まってましたよ…』

幽霊『まぁそんな気はしましたけど…力技すぎましたねこれは』

幽霊『ど、どうしよう?とりあえず…今日もお邪魔します!』スーッ


幽霊『……』キョロキョロ

幽霊『猫が来ない…さては今いないんですね!チャンス!』

ジャーッ

幽霊『…?水の音…キッチン?』ヒョコッ

?「……」ゴシゴシ

幽霊『弁当箱さっそく洗ってるんですね…』

?「……」ポロポロ

幽霊『?泣いてる…』

?「男くんが…全部食べてくれた…」ポロポロ

?「今までは半分くらいしか食べてくれなくて…アドバイスを書いた手紙を返してくれたけど…」ポロポロ

?「今日は何も入ってない…本当に…空っぽ…!」ポロポロ

幽霊『……』

幽霊『まぁ男くんだけじゃなくて、トラちゃんと私も食べましたしね…』

?「明日から…もっと上手に…作って…また食べてもらおう…」

幽霊『……』

幽霊『あれ!?』

幽霊『なんかもう、私、ストーカーやめさせる必要ない気がしてきた…』

幽霊『男くんは困ってないって言ってたし、お弁当食べてもらってこんなに嬉しそうだし…』

幽霊『なんかもうこのままでもいいんじゃ…?』

幽霊『ん…憑いったー?…そうだ、さっき呟いたんだっけ…』


「何ガ故意ニヤラナイヨウニ、ダ。ヤッパリオ前ハダメダナ!」


「コノ、無乳!!」


幽霊『』


「by天才(ネオ)ニート男」


幽霊『殺す…殺ぉおおす!!呪ってやるぅうううう!!幾千年経っても、呪い続けてやるぅううううああああああのニートぉおおお!!何が天才(ネオ)だよふざけんなぁあああああああああああ!!!!』


?「きゃああああああああ…!!!」

数分後

ピンポーン…

幽霊『……開いてますよ』

ガチャッ

男「……よう」

幽霊『よう、じゃないでしょうがあああああああああ!!!?』オラアアアアアアア

男「お、落ち着け、幽霊通り越してただの怪物になりつつあるぞ」

幽霊『だってあんな…憑いったーで「無乳」なんて!あれって他の幽霊にも知られちゃうんですよ!!?』

男「そ、そうなのか」

幽霊『そうなのか、じゃないですよぉおおおおおおおお!!!』

トラ『デ…ストーカーハ…?』

幽霊『……それが…』

男「…なるほどな、急いで来いと言うから来てみれば…」

?「」

幽霊『あのぉ…私があの呟きに我を失って絶叫したのを、どうやら彼女見えたらしくて…ショックで気絶を…』

男「……」

幽霊『その…別にやろうとしてやったわけじゃ…』

男「分かってる…」

幽霊『でも…他人に危害を加えたのはやっぱりマズいですよね…』シュン

トラ『ソウ凹ムナヨ…ソンナ失敗、誰ダッテスルモノダ』

幽霊『と、トラちゃん…慰めてくれるんですか…?』

男「そうだぞ幽霊。凹ますのは胸だけでいい」

幽霊『凹ませてませんからぁああああああああ!!!!!』


?「はっ!」ビクッ

男「!!」

トラ『!!』

幽霊『!?』

?「う…あれ…?私…なんで…」

幽霊『……!』サッ

男「なぜ隠れる」

?「…!!え、え!?男く…男さん…!?」

男「大丈夫か」

?「え…へ…え!?ほ、本当に…何が…なんだか…あれ?」

男「…おい…幽霊」

幽霊『……』

男「隠れるな。出てこい」

?「幽…霊…?」

幽霊『ひゅ…ひゅ�・どろどろどろ…』ヌゥッ

?「…ひっ…!」ビクッ

幽霊『!み、見えてる…?』

男「みたいだな」

?「…あ…あなた…誰…?」

幽霊『ゆ…幽霊です』

?「……」ポカーン

幽霊『…う�・ら�・め�・し�・や�・』

?「……」

?「ふにゃ」バタン

トラ『!?』

男「こいつ、極度の怖がりみたいだな…」

幽霊『ええっ!?』

トラ『トイウカ、ソモソモコイツハナンナンダ?』

男「お前には言ってなかったか?…こいつはスト子。俺が前に勤めてた会社の同僚だ」

トラ『オ前働イテイタノカ!!』

男「悪かったな…」

トラ『ジャア、会社ヲ辞メテカラ…』

男「そうだな…といっても、引っ越し先のこんな近くに住んでるとは思わなかったが」

幽霊『引っ越す前はどんな被害が?』

男「手紙が毎日投函されていた」

幽霊『それはいわゆるラブレター的な…?』

男「…の、少しハードな奴が」

幽霊『ハードっていうのは…』

男「必ず血がついてるんだよ」

幽霊『ひいっ!?』

男「そして引っ越して来てからはエスカレートだ…髪の毛の入った封筒、爪の入った封筒、毎日届く弁当…」

トラ『ホウ…』←何が怖いのか正直よく分かってない

幽霊『でもなんでそんなこと…』

?「…好き…だから…」

幽霊『!!?』

男「おい、大丈夫なのか」

スト「大丈夫…もう…起きれる…」ムクッ

幽霊『好きだから…って言うのは…?』

スト「…そのままの意味…だよ…」

スト「男さんのことが…好きで…好きなのに…好きすぎて…」プルプル

スト「げほっげほっ!!」

幽霊『!大丈夫ですか!?』

スト「大丈夫…いつも…こうだから…」

幽霊『いや、いつもって…余計マズい気がするんですけど』

スト「男さんのことを思うと…なぜだが咳き込んでしまって…ごほっごほっ」

スト「げふっ」ビシャッ

スト「ふふ…つい…血まで…」

幽霊『この人怖いですってぇええええ!!』

幽霊『ねぇ絶対大丈夫じゃないですよね!?』

男「いや…こいつはいつもこうだった。仕事中もよく吐血してた。今も変わってないんだな」

スト「ふふふ…お陰さまで…ピンピンしてるけど…ね」

幽霊『どこが!?』

男「まぁ…確かに多少はマシになったのかもな…」

幽霊『?』

スト「ふふふっ…だって…あのとに…」


2ヵ月前

スト「男さんっ…私と…付き合ってくださゴボッ」ビシャアッ

男「すまん、無理だ」

スト「どうしてですか…?私が…ストーカー気味だから…?それとも…
猫好きだから…?」

男「……どちらでもない。断った理由はただひとつ」

男「お前が俺より早く死にそうだからだ」

スト「え…?」ボタボタ

男「今の吐血だってそうだ…お前、どうしてそんなに体が弱い?」

スト「私…これ…病気で…」

男「病気だと?…一時的なものならとにかく、それならもっと駄目だな」

スト「そん…な…」

男「俺の嫁になる上で、二つの条件がある」

男「ひとつ、俺より美味い飯を作る」

男「ひとつ、俺より長く生きる」

男「この、どちらか一つでも達成できないのなら…お前は俺の嫁にはなれない」

スト「う…ううう…」ペタンッ

男「それと、もうひとつ…俺は今週一杯で会社を辞めるつもりだ」

スト「そ、そんな…!ごほっごほっ…」

男「…じゃあな。また、二つの条件をクリアできそうになったら、出直してこい。待ってるぞ」スタスタ

スト「男さん…男さん…!!」

幽霊『うう…何てひどい話…!男くんがここまでのクズだったなんて…!』

スト「…そんなこと言わないで…幽霊さん…私は…男さんの出した…条件を…クリアするために…頑張ってるの…」

スト「そしたら…なんだかすごく…毎日が…楽しいの…お弁当を作って…体力をつけるために…毎日徒歩で男さんの家に…行って…」

幽霊『な…なんて律儀な…!』ブワッ

男「……」

幽霊『でも、スト子さん…やっぱりストーカーはよくないですよ…』

スト「…そう…だよね…分かってる…分かってるの…なのに…」

スト「どうしても…諦めきれなくて…!!」

幽霊『うううっ…』

スト「いけないことはいけないこと…やっぱりちゃんと…警察に行って…」

男「!待て!!」

スト「…?」

男「警察だと!?俺の嫁になるかも知れない女が警察!?そんなの認めんぞ!いいんだ警察なんて行かなくて!俺が許す!!」

スト「…え」

男「確かに条件をクリアしたとは言いがたい…だが」

男「お前の料理を幽霊(コイツ)は泣くほど喜んで食ってた…俺の料理で泣いたことはないのに、だ」

男「そしてお前の吐血回数も…目に見えて減った。いい兆候だろう」

男「近づいてるんだ俺の嫁に…一歩ずつ確かに、な」

スト「……う」

男「だから、もう少し頑張って…俺の嫁になってくれ」

スト「ううっ…!」ポロポロ

スト「はい…!!」


幽霊『うわーん…!よかったですねスト子さん…!』

トラ『我ニハドウモ、男ノ態度ガ気ニ食ワンガナ…』

猫「ニャーオ」スタスタ

トラ『ムッ!イツノ間ニ!』

猫「ニャ!?ニャ、ニャー////」デレッ

トラ『!?』

男「……」スタスタ…

幽霊『男くん、最後のアレ、ほとんどプロポーズでしたよね』ニヤニヤ

男「プロポーズ?プロポーズってのは『僕の助手席に座ってください!』とかそういうのじゃないのか?」

幽霊『同じですよ!まったく、男くんって変なところでウブなんですねぇ。私が色々教えてあげましょうか?』

男「そういうところで世話を焼きたがる…ますますbbaだな」

幽霊『(#^ω^)』ピキィ

男「あん?」

幽霊『そういえば無乳だと馬鹿にした恨みをまだ返してませんでしたね…』

男「あれはお前を本気にさせるためにやったんだ」

幽霊『え?』

男「自分で言ってただろ『故意じゃない言葉』に反応してたって」

幽霊『え、ええ…』

男「お前を、特に胸のことを馬鹿にすれば、すぐに本気で怒るだろうと思ってやってみたんだ…」

男「まさか気絶させることになるとは思わなかったけどな」

幽霊『なっ…本当ですか!?』

男「本当じゃなかったとしても、結果オーライだろ」

幽霊『むむ…』

男「…そうだ、おい幽霊」

幽霊『?』

男「お詫びと言っちゃなんだが、甘い卵焼き作ってやる」

幽霊『!』

男「なんだ急に表情変えやがって。分かりやすいやつだな」

幽霊『いいじゃないですかー!!』


その後、帰ってから男が作った卵焼きには、尋常じゃない量の塩が入っていた

死にかけた幽霊が男を問い詰めると、「砂糖と塩を間違えた」との返答が来る

どう考えても嘘だと喚く幽霊だが、その真偽は男以外には誰も分からない…

切ります
とりあえず考えてたメインキャラが出揃いました…なんかすごく時間かかったけど
これからどうするかはまだしっかり決めてませんが、のんびりやっていきます
それと、次回から更新が不定期になる恐れがあります。ご了承ください

登場人物


文武両道、料理も上手いエリートニート
22歳だがずっとニートをやってるわけではなく、つい最近まで会社員だった
非常に霊感が強く、二人(一人と一匹?)の霊を手懐けてしまうほど

幽霊
享年19歳の女幽霊
死後17年間、自宅があった場所をさ迷っていたが、男に見つかってからは彼のところに居着くようになる
男のおかげで『実体化』が可能になり、霊感を持つ人間なら誰にでも見えるようになった
また、霊感を持つ人間が触れたものなら自由に触れるようにもなった(ただし触れる瞬間を見ていなくてはならない)

トラ
トリケラトプスの幽霊
男がアパート近くの畑から発掘した化石に憑いていた
実体化のかわりに、自分が入っているトリケラトプスのぬいぐるみを体として操っている
博物館に展示されることより男たちと共に現代を楽しむ道を選んだが、もはや扱いはペット

スト子
男の元同僚でストーカー
持病のせいですぐ咳き込んだり、吐血する
元々霊を信じていなかったが、幽霊が全力で驚かしてからは普通に見えるようになった
男に毎日弁当を作って届けたり、不気味な手紙を送っているが、それでもまだ話は通じる方である



幽霊『……』フワフワ

男「お前はもうすっかり実体化でいるのに慣れたみたいだな」

幽霊『そうですね。こうやって人の顔見てお話したり、好きなもの食べたり、実体化してなきゃできませんから…』

男「俺に感謝しな」

幽霊『は?なんでです?』

男「実体化できるようにしたのは俺だろうが」

幽霊『男くんは実体化とかできないの?ってヒントくれた程度でしょう』

男「何ぃ?生意気な…」

幽霊『やる気ですか?ポルターガイストでもお見舞いしてやりますよ』

男「塩」スッ

幽霊『わぁああああそれはなしですって!!』

トラ『ウルサイナ…我ノ眠リヲ邪魔スルナ!!』

男「何でお前が寝るんだよ」

幽霊『そうですよ!私みたいにエネルギー使うようなことしてないでしょう』

トラ『コウイウ習慣ダカラ仕方ナイ』

男「習慣だからって、眠くもないのに寝るかよ普通」

幽霊『私は寝ますよ。ちゃんと眠くなりますから』

男「ちゃんと眠くなるっておかしいだろ」

幽霊『いいじゃないですか�・…じゃ、おやすみなさい』バフッ

幽霊『zzz…』

男「もう寝たのか……ちっ。自分勝手な連中だな……おいトラ!」

トラ『!ナ、ナンダ』

男「どうせ寝るならお前、俺の枕になれ」ガシッ

トラ『マ、枕ダト?フザケルナ!!オ前コソ自分勝手ダゾ!!放セー!!』バタバタ

男「じっとしてろ」スッ

トラ『オ、重イー!!!』

深夜

トラ『グゥ…重イ…シカシナゼ我ヲ枕ニ…』

男「zzz…」

トラ『……!』

幽霊『すー…すー…』

トラ『ソウカ、小娘ニ布団ヲ使ワレテイルカラカ』

男「っくしゅん!!」

トラ『ウルサイナ…』

男「ごほっごほっ」

トラ『……』

男「……げほっ!」

トラ『…大丈夫カ?コイツ…』

翌朝

チュンチュン…

幽霊『……ん』パチッ

幽霊『ふわぁ�・…よく寝た…』ムクッ

幽霊『……あれ』

男「…ごほっごほっ…」

幽霊『男くんまだ寝てるんですか。なんだかんだ言っても所詮はニートですね』

トラ『オイ小娘…コイツ大丈夫ナノカ?』

男「ごほっごほっ…」

幽霊『……嫌な咳してますね。まさか…』スッ

ピタッ

幽霊『……』ジュウウ…

幽霊『熱つつつつ!!!?』パッ

トラ『!?ドウナッテルンダ』

幽霊『私も医者じゃないから詳しくは分かりませんが…』

幽霊『…風邪引いたんじゃ』

トラ『カ、風邪…!?』

男「ごほっ…ごほっごほっ」

幽霊『まったく…なんで風邪なんて…』

トラ『床デ寝テタカラジャナイカ?』

幽霊『なんで床で寝てるんです…この寒い時期に』

トラ『オ前ガ男ノ布団デ寝テルカラダロウ』

幽霊『あっ』

幽霊『ってことは男くんが風邪引いたの…私のせいですか…?』

トラ『……マァ、ソウナルナ』

幽霊『……』

幽霊『うわあああああん私はやっぱりダメ幽霊だ!男くんに迷惑かけるだけじゃなくて、風邪まで引かせちゃうなんて!!』

トラ『オ、オイ…』

幽霊『こうなればどうにかこうにか男くんもお布団に入れてあげればよかったんだ!でも私は胸が小さいから色仕掛けなんてできっこないし…うわああああん私が貧乳だからいけないんだ!死んでやるううううう!!!』

トラ『オ前ハ幽霊ナンダカラモウ死ンデルダロ!!』

幽霊『あっ、そうでした…ってじゃあこの思いはどこにぶつければいいんですかうわあああああん!!!』

男「…お前の胸は…小さいんじゃなくて……無いんだろ…」

幽霊『はっ!男くん!生きてたんですか!?』

男「最初から…死んでねぇよ…」

幽霊『ごめんなさいごめんなさいぃ私のせいでぇえええええ!』ビエーン

男「うるさい泣くな…お前そこの…テーブルの上にケータイあるから…取ってくれ…」

幽霊『ぐすん…これですか…』スッ

男「ああ…」パカッ

男「くそっ…ダルいな…」カコカコカコカコカコカコカコカコカコカコカコカコ

幽霊『風邪引いてるのになにケータイいじってるんです!出会い系ですか!?』

男「違うわっ!誰がそんなげほっげほっ!!」

幽霊『ああっほら大声出すから!』

男「ごほっごほっ…」

幽霊『そ、そうだ…薬!薬ないんですか!?』

男「ねぇよ…」

幽霊『買ってきます!私とトラちゃんで!』

男「いくら…実体化できても…幽霊が店に入って薬買う…なんて…無理…だ…」ガクッ

幽霊『ええっちょっ…!しっかりしてくださいよ!』

男「」

幽霊『どうしようどうしよう…』アタフタ

トラ『オ、落チ着ケ!トリアエズ布団ニ運ベ!』

幽霊『は、はいぃ!』グイッ

幽霊『お、重いぃいいいいい!!!』プルプル

トラ『エエイ非力ナ!ソレナラ我ガ頭ヲ持チ上ゲル!!小娘ハ足ヲ持テ!!』

幽霊『えっ?トラちゃん大丈夫なんですか?』

トラ『恐竜ノ力ヲ嘗メルナヨ!!!』グイッ!!

幽霊『おお!その小さい体のどこにそんな力が…!』

トラ『グ…オオ…早ク足ヲ…』プルプル

幽霊『はいっ』ガシッ

トラ『…ヨシ…一歩ズツ…ユックリダゾ』プルプル

幽霊『……はっ!』パッ

トラ『ナ、ナゼ放ス!?…オンドゥルルラギッタンディスカー!!!』

幽霊『ナイスタイミングですよ!』ギューン!!

スカッ

スト「!!」ビクッ

幽霊『スト子さん!』

スト「ゆ、幽霊…さん…?」

幽霊『お弁当の回収ですか!?それより大事なお願いがあるんですけど!』

スト「な、なに…?」

幽霊『男くんが風邪引いちゃって、大変なんです!』

スト「え…!!」

幽霊『とにかく入ってください!いやホントにどうすればいいのか分からなくて…』

スト「わ、分かっ…ごほっごほっ!!」

幽霊(し、しまった!この人もこうなんだった!!)

幽霊・スト『男くん!』

男「」

幽霊『ああ、ダメだ起きてくれない』

スト「気を失ってる…熱があるの?」

幽霊『みたいです』

スト「計ってないの?…いい、私がやる…」スチャ

幽霊『えっなんで鞄から体温計が!?』

スト「私もよく体調崩すから…一応持ち歩いてて…」スッ

スト「……」ピタッ

幽霊『どうしたんですかスト子かん?』

スト「これは悪いことじゃない…服を脱がすのは熱を計るため…下心じゃない…!」ボタボタ

幽霊『鼻血が滝のように流れてますけど!?』

トラ『コイツノ頭ニ潰サレテル我ハ見事ニスルーカ…』

スト(綺麗な胸板…腹筋…でもこれ以上は見ちゃいけない…)ボタボタ

幽霊『だ、大丈夫ですか?鼻血流してる人が他人の熱計るってすごく怖いんですけど』

pipipi

スト「あ、鳴った…」ハァ

幽霊『なんで残念そうなんです…?』

スト「…38.1℃」

幽霊『ええっそんなに!?』

スト「私平均体温35℃だから…すごく高く感じる…」

幽霊『あなたは特に低いんですよ!…でもこんな…このままほっといてもよくなりませんよね…』

スト「薬あるけど…」スッ

幽霊『なんか本格的な処方箋ですね…男くんに効きますか?』

スト「駄目かも…」

幽霊『こ、こうなったら氷枕とか…』

スト「氷枕って…今時そんなの使うかな…」

幽霊『じゃあ…』

スト「冷えピタ買えばいいんだよ…薬局に…」

幽霊『…スト子さん行ってくれるんですか!?』

スト「うん…でもこのアパートから一番近い薬局って…」

幽霊『行きましょう行きましょう!今すぐ行きましょう!』フワーッ

スト「あ、ちょっと…」

スト「……男くん待っててね…」

ガチャッ

トラ『ダカラナゼ我ヲ誰モ助ケテクレナイ…』

トラ『オ、重イ…モウ…限…界…』

トラ『ガクッ』

10分後

男「う……」ピクッ

男「…くっ…頭痛ぇ…幽霊はどこに行った…まさか本当に薬買いに行ったのか…?」

男「…トラ…トラ!お前もいないのか…?」

トラ『』

男「ああ…枕に…そうだった」スッ

トラ『…ハッ!オ、恐ロシイ夢ヲ見タ…巨大ナ隕石ガコチラニ向カッテ…』

トラ『…男!オ前大丈夫ナノカ!?』

男「大丈夫じゃない…頭が痛いし喉が痛いし鼻水も出る…」ズズッ


ピンポーン

男「!」

トラ『小娘カ?早カッタナ』

男「あいつがピンポンなんて押すわけないだろ…」コホン

トラ『ナニ…?ジャアイッタイ誰ガ…』

男「入っ゛でい゛い゛ぞ」ガラガラ

ガチャッ


?「酷い声ね…『お兄ちゃん』」




幽霊『薬局遠くないですか!?』フワフワ

スト「さっき…言おうとしたのに…」スタスタ

幽霊『っていうかいつも以上に歩くの速いですね!』フワフワ

スト「非常事態だから…」スタスタ

切ります…
間空いちゃったわりにはあんまり書けなかったよ

男宅

男「い゛や゛…ゴホンッ…本当に…悪いな。わざわざ呼び出しちまって」

男「……妹」

妹「別にいいわ…学校なんて一日二日休んだところでどうだっていいもの…」

男「…でも来年には受験だろ」

妹「…そうね…」スッ

ピトッ

男「……」

妹「熱があるようね」

男「お陰で視界がぐらぐらしやがる…」

妹「一応、いろいろ買ってきたわ…りんごとかポカリ○エットとか冷えピタとか…」ガサゴソ

男「悪いな」

妹「いちいち謝らないで…お兄ちゃんが風邪引いて一人で寝込んでるなんて、そっちのほうがよっぽど嫌よ」ペタペタ

男「……ところで何故さっきから俺の顔を触ってる?」

妹「久しぶりだもの、次はいつ会えるか分からないからたくさん触っておきたいわ」ペタペタ

男「2週間とちょっとしか経ってないぞ……だいたい、会おうと思えばすぐ会える距離だろ」

妹「現に今、来てるしね」ペタペタ

トラ(ナ、ナンダコノ娘ハ…?)

妹「……!」

男「…ん?」

妹「そのぬいぐるみ、どうしたの?」

男「ああ、恐竜展で買ったん…」

妹「何かついてる」

男「……?糸クズか?」


妹「何か憑いてる」


トラ『!?』

男「…!!」

妹「お兄ちゃんが風邪引いたのって…」スッ

妹「もしかしたらこれのせいじゃない?」ガシッ

男「おい止せっ…ゲホッゲホッ」

妹「じっとしてて…」

トラ『ナニヲスル気ダ…ヤメロ…ヤメテクレェエエエエエエエエエエエ』





幽霊『あっ!あれですね、薬局!』

スト「思ったより…時間かかっちゃった…早く買って…戻らないと…」

幽霊『しかし独り暮らしって大変ですよねぇ…私たちがいなかったらどうしてたんでしょう。男くん友達とかいなさそうだし…』

スト「ストーカーなら…いるけど…ね」

幽霊『ま…とにかく、さっさと買っちゃいましょうか』

ウィーン…

スト「これで…よし」

幽霊『しかし冷えピタってずいぶんたくさんあるんですねぇ。私が生きてた頃なんてせいぜい2、3種類しか…』

スト「幽霊さんって…いくつなの…?」

幽霊『言ったらbbaって呼ばれそうなので内緒にしときます…』グスン

スト(男くんに言われたんだろうな…)

幽霊『………ん?』ピコーン

スト「どうしたの…?」

幽霊『いえ…ちょっと呟き(憑いったー)をキャッチしまして…これは』

幽霊『……トラちゃん…?』

スト「?…幽霊さん…」

幽霊『なんかちょっとまずいことになってるかもしれません…』

スト「え…?」

男宅

男「くっ…お前…なんてことを…」

妹「別に滅したわけじゃないわ…この霊にはいろいろ聞きたいことがあるし…」

男「なんでお前はそんな…霊感強いんだよ?」

妹「さぁ?でも私がお兄ちゃんに勝ってるところってコレくらいだから…」

男「まぁ俺はスーパーニートだしな」

妹「……りんご剥いてくるわ」スタスタ

男「……」


男「トラ…すまん…」ボソッ

妹「お兄ちゃん、冷蔵庫にヨーグルトがあったけど、これにすりおろしたりんご入れたら、食べる?」

男「おお、食べる食べる…でもそのヨーグルト、砂糖自分で入れるやつだぞ」

妹「分かってるわ」

妹「はい」スッ

男「……」

妹「…どうしたの?やっぱり要らない?」

男「いや…思ったよりりんごの切り方が大きくて…なんかどちゃどちゃぶちこんだ感じだなぁ…と」

妹「私はお兄ちゃんみたいに料理上手じゃないの…文句があるなら自分で作ればいいじゃない」

男「わ、分かった分かった…怒るなよ…」

妹「冗談よ…怒ってないわ…食べさせてあげる…」スクッ

男「……」

妹「はい、あーん…」

男「……」ガバァ

妹「そんなに大口開けなくても…」ヒョイ

男「はっはひひんほはほほひふひは」モグモグ

妹「???」

男「やっぱりりんごが大きすぎだ、って言ったんだ」

男「って、これ、砂糖入れてないな。さっき言ったのに…」

妹「ああ、さすがにそれはお兄ちゃんに任せようと…」

男「こんなのテキトーでいいんだよ、テキトーで」ザバーッ

妹「絶対多いわよそれ」

男「いいんだいいんだ、これがうまい」モグモグ

妹「……」

ペロッ

男「……おい」

妹「ほっぺについてたの」

男「お前、いい加減に俺離れしないとこれから先…」

妹「そんなことよりお兄ちゃん、なにか隠し事してない?」

男「…え?」

妹「そういう味がしたわ……例えば」

妹「誰か他に同居人…いたりして」

男「……」

妹「……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

男「まさか。この俺が他の人間を気安く家に上げるはずがない…ましてや同居人なんて…」

妹「そうよね…ごめんなさいお兄ちゃん、変なこと言って…」


幽霊『ただいま!大丈夫ですか男くん!!』スカッ



スト「冷えピタ…買ってきたよ…」ガチャ


妹「……」

男「は…ハイパークロックアップ!」

妹「できたら…よかったわね」ギロッ

幽霊『え…誰です…?その子…』

スト「??男さんの友達…?」

妹「………」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


男「いやその…こいつは俺の…」


幽霊『!…あーっ!トラちゃん!!?』


トラ『』プラーン


スト「な、なんで…なんで窓から宙吊りにされて…天日干し…?」

幽霊『違いますよスト子さん!さっき憑いったーでトラちゃんが「助けてくれ」って…このことだったんですね!?』


妹「…扉すり抜け…白装束…2秒で理解できたわ」

妹「…あなたも霊ね…」

幽霊『へっ…?あ、はい…幽霊です』

妹「私は妹…お兄ちゃんの妹よ…」

幽霊『いもうと…?おにいちゃん…?』

スト「え…男さんの妹…?」

妹「そうよ…」

妹「…あなたはただの人間ね。お兄ちゃんの何なのか知らないけど…離れてた方がいいわ」

スト「えっ…?」


妹「滅する…!!」ギロッ

幽霊『はい…!?』

男「まずいッ…妹の『除霊スイッチ』が『怨』になった…!」

幽霊『はあ?スイッチオン?』

男「逃げろ!」

妹「逃がさない…!」ガシッ

バサッ

幽霊『?……白い粉…』

キラキラキラ…

幽霊『っ!まさか…!!』

幽霊『し…』

ザラザラザラザラーッ

スト「きゃっ…!」

幽霊『…………!!!!』ドサッ

男「…幽霊!」

妹「ふふっ…ただの人間霊一人消滅させるのなんて…塩だけあれば誰だってできるわ」

男「くっ…なんてことを…あれだけの塩を浴びたらいくらなんでも…」

スト「……!」

スト「これ…甘い…!塩じゃなくて砂糖じゃ…?」

男「!?」

妹「しまった…つい、白いのが手元にあったから塩だと思って投げてしまったけど、ヨーグルトに混ぜる砂糖だったわ!」

男「は!?じゃ…幽霊は…!」

『ふふふふふふ…』

妹「!」

『ふふふふふふ…ふふふははははははははは…』

スト「幽霊さんの声…!?」


『私は…』

幽霊『私はもはや塩で消える脆弱な幽霊ではない!』

幽霊『私は存在する…最強の幽霊として!!』

バーン!!!!

スト「復活した…!」

妹「黒装束…!?」

男「…どこのリュウガだよ」

ブラック幽霊登場!
突っ込みどころ満載ですが今日は切ります
次の更新は土日のどっちかになる予定です

bgm http://www.youtube.com/watch?v=0qnkz-gsnxy

スト「幽霊さんが…黒くなった…?」

男「………」

黒幽霊『フフフフフ…ああ…やっとこの姿になれた…』

黒幽霊『いい気分…このままどこかで暴れてみたいぐらいだ』

スト「口調まで変わってる!?」


妹「…黒くなろうが赤くなろうが黄色くなろうが…所詮は霊!」バッ!!

黒幽霊『!!』

妹「今度は本物の塩よ!喰らいなさい!!」シュッ

黒幽霊『あ?』バサッ

妹「!?振り払った…触ったのに効いてない!」


黒幽霊『今さらそんなもんが効くと思ったか?』スッ

フワッ…

スト「?食器が浮いて…」

黒幽霊『甘いんだよ!』\シュートベント/

ヒュンヒュンヒュンッ

妹「ポルターガイスト…!?くっ…!」ガシャンガシャン!!

黒幽霊『ははははは…!!』

スト「そんな…幽霊さん…どうして…」

黒幽霊『はぁっ!』フワッ

妹「逃げる気ね…!!」ガシャッ

黒幽霊『……逃げる…だと?』

黒幽霊『馬鹿言え…お前みたいな鬱陶しい奴がいるんじゃあ文字通り寝覚めが悪いんだよ…』

黒幽霊『これでもくらいな』\ファイナルベント/

妹「!?」

黒幽霊『必殺…ブラック★デッドシューター!!』ゴォッ!!!

スト(ただの体当たりにしか…?)

妹「私だって…格闘は得意なのよ!見せてあげるわ私のカウンター!」バッ

スト「え…え…!?ど…どうしよう…どうしよう…!」オロオロ

男「……」ヌッ

黒幽霊『…!…邪魔だ!』ゴオッ

妹「お兄ちゃん!?間に入っちゃ危な…」


男「外 で や れ」ブンッ


黒幽霊『ぐっ…!?』ビシッ!!

妹「あっ…!」ビシッ!!

スト(す、すごい…チョップで止めちゃった)

男「……」グラッ

スト「!男さん!」

黒「」ガクッ

スト(そうだ…男さん…すごい熱が…)

スト「二人とも、いい加減にして!!」キッ

スト「じゃないと…私も…」

スト「怒るよ…?」羅崇妬王(ラストワン)…

黒幽霊『…揃いも揃って本当に…鬱陶しい…!』

妹「いいわ表でやりましょう…ただし私も容赦しない…」

男「」※現在、体温はさらに上がって38.4℃

数分後

男「」

コンコン

男「」

コンコン

男「……」ハッ

男「…ここは…家…だよな…」

男「…しまった…気を失ってたのか…あいつらはどこに行った……!?」

コンコン

男「さっきからなんだ…手になにかが…」

トラ『我ダ!!』

男「…トラ!お前…ぬいぐるみは…」

トラ『アノ小娘ニ宙吊リニサレタカラ…ナントカ化石ダケデ這イ出テキタンダ!!』

男「…そうか…で、あいつらは…外か?」

トラ『ア、アア…凄マジイ闘気トイウカ殺気ガ出テタゾ』

男「…まずいな。なんとかしないと…」ズキッ

男「ぐっ…頭が…」

トラ『オイ、大丈夫カ!!』

男「石ころに心配されるほど落ちぶれちゃ…」

男「!…そこに落ちてるの、冷えピタか」

トラ『コレカ…!?』

男「よし…これさえあれば…」バッ

男「……」ペタッ

男「幽霊あいついったい…何が起きた…?」

トラ『ヨク分カランガ何カソウイウ性質ミタイナモノナンジャナイノカ?』

男「性質か…塩に触れると弱くなり、砂糖に触れるの強くなる…ってとこか」

男「…そういえば…妹がポカリを買ってきてくれたんだったな…あれを飲んで落ち着こう…」フラフラ…

ガチャッ

男「……!」

男「これは…りんご酢…!?こんなのも買ってきたのか…」

トラ『シカシ、ヨクモアンナニ血気盛ンナ女ヲ三人モ…』

男「俺だってこうなるとは思わなかった…というか、思うはずがない…」

トラ『…トコロデ我ノ体(ボディ)ヲソロソロ降ロシテヤッテクレナイカ?』

男「……」ガシッ

ポイッ

トラ『オイッ!!モウチョット丁寧ニ外セ!!針金ダゾ!!穴デモ空イタラドウスル!!』

男「気にするな」

トラ『気ニシロ!!ヌイグルミデ遊ブ上デノ基本的ナルールダゾ!!』

男「……基本的…」ピクッ

男「……」チラッ

『りんご酢』

男「やってみるか…」

トラ『ナンダッテ?』

男「…トラ、外に出るぞ」

トラ『熱ガアルンダロ…無理ダ』

男「冷えピタがある限り俺は不死身だ」

トラ『イヤイヤイヤ…』

男「ちょっと待ってろ、準備する」

トラ『?』

男「楽しい実験コーナーだぞ」



妹(この霊…予想以上に手強いわ…!)

黒幽霊『ハハハハ…!幽霊の私にただの攻撃が当たるわけないだろ!』

黒幽霊『いや、今の私はもはや優秀な霊…優霊だ…!』

スト「つまらない…よ…!」バシッ

黒幽霊『ただの人間の癖にしつこいぞ…!』

スト「ストーカー…だからね…」

黒幽霊『…ちっ…』\ソードベント/

黒幽霊『斬り刻んでやる!!』ジャキィン!!

妹「なっ…日本刀!?どこからそんなものを…」

黒幽霊『かつてこの地に倒れた侍の所持していた日本刀…これはその霊だ!』バッ

妹「物質霊を操っているというの…!?」サッ

スト「?」※幽霊以外の霊は見えてない

黒幽霊『ほら逝っちまいな!!』ブンッ

ズバッ!!!

妹「……!」ヨロッ

スト「…え…!?」

妹「あなたはただの人間…離れてなさいと言ったでしょう…!」ガクンッ

スト「な…私を庇って…!?」

妹「早く離れなさい!!」

黒幽霊『いくら刀の霊だからと言っても…認識してまえば生身にも刃は通る…』

黒幽霊『お前の霊感を通して痛みが伝わるはずだ!』

妹(その通りよ…もう…二度は耐えられない…)

黒幽霊『今度こそ…逝け!!』ブンッ

「おい無乳!」

黒幽霊『……』ピタッ

黒幽霊『…今…なんつった…!?』ギギギ…

男「聴覚まで衰えたか?この切り裂きbbaが」

スト「お、男さん…!」

妹「お兄…ちゃん…」

男「…まさか斬るとはな…こいつにそんなことができるなんて知らなかった」

妹「物質霊を操る幽霊は確かにいるわ…でもこの幽霊にそんな力があるとは…」

男「そういうのができるようになるのが…その黒モードだろ」

黒幽霊『……フフフ…私は黒幽霊…普段の幽霊が無意識にためてきた力を解放することができる…』

男「そしてそのために必要なのが砂糖というわけだ」

黒幽霊『そうだ…』

男「もう塩も効かない…なら」

男「こんなのはどうだ?」スッ

スト「!?…それは…」

妹「りんご酢…!」

男「食べ物飲み物を粗末にするのはご法度だが…今日だけは許せ」ヒュッ

バシャッ!!

黒幽霊『ぐ…!!?』

黒幽霊『こ…こんなものを掛けて…どうするつもりだ…!?』

男「!」

妹「?」

スト「…?」

男「……ふ」

男「掛けても効かないなら…飲め!」ガバッ!!

黒幽霊『!!むぐぐぐごくっ!』

黒幽霊『っ…酸っぱい…!!』プハッ

ゾワッ

黒幽霊『ん…?なん…だっ…この感覚は…』ゾワゾワ

男「…当たりか?」

黒幽霊『体が…おかしい…!なにか…何かが出てくる…!』ゾワゾワ

男「…出てこい!」

黒幽霊『ぐ…う…ああああああああっ!!!』

ポンッ!!!

男「……」

妹「……」

スト「……」


黒幽霊『…お、お前…!』

幽霊?『……』フワフワ


男「…幽霊が、二人?」

スト「ど…どうなってるの…?」

妹「分裂…!?」


黒幽霊『お前…「どの」私だ…!?』

幽霊?『……クールじゃありませんね、黒い私』


男「おい!お前…幽霊か?」

幽霊?『…そうです』

男「本当か?ちょっとなんか…微妙に違う気がするんだが」

幽霊?『フッ…』

幽霊?『普段の私は弱すぎる…黒い私は荒々しすぎる…』

幽霊?『ならばクールにいきましょう…幽霊らしく、ね』

男「…クール?」

幽霊?『私はクール幽霊…さぁ、黒い私…あなたの罪を数えなさい』

黒幽霊『私は一人でいいんだよ…消えろ!』

切ります

妹ルートだと思った?
残念!バトル多めの幽霊『性質』究明編でした!

ライダーネタ無理矢理入れすぎたのでちょっと反省してます

幽霊『ひゅ�・どろどろどろ…』前回の三つの出来事!!

一つ○エリートニートの男が風邪をひき、看病するために妹がやってくる!

二つ○妹が塩と間違えて砂糖を撒いたことにより、幽霊の別人格『黒幽霊』が目覚める!

三つ○男が黒幽霊にリンゴ酢を飲ませると、もう一人の幽霊が出現する!

デデデデン!
デデデデン!!
デデデデン!!!
デデデデーン!!!!

スト「幽霊さんが…二人いる…??」

妹「ど、どうなってるのよ…」

男「これは…」


幽霊?『黒。あなたちょっとやり過ぎじゃないですか?たかだか女の子一人にそこまで必死になるなんて…』

幽霊?『まったくクールじゃありませんね』

黒幽霊『チッ…うるせぇなサブ…てめぇも斬ってやろうか?』

幽霊?『サブ…?』

サブ…予備、補欠、控えなどを意味する

幽霊?『……ほぉう…なかなかクールなこと言いますね』

黒幽霊『相変わらずワケ分かんねー奴だ…死ね!』バッ

幽霊?『とっくに死んでますよ』ヒラリ

スト「ちょ…なんで二人になったの…?なんで戦ってるの…?」

妹「サブ…もしかしたらあの幽霊は…人格が複数あるのかしら…」

スト「そ、そんなことが…?」

妹「だってそうとしか…」

男「ただし普段はあの『弱っちい幽霊』に収まってる」

妹「お兄ちゃん…?」

男「お前が砂糖をかけたことで解放されたんだろ」

妹「……」

男「では砂糖以外ではどうなるのか?」

妹「その答えがあれ…?」

男「そうみたいだな…あの『もう一人の幽霊』も…普段の幽霊とはやっぱり違う」

妹「元に戻せないかしら」

男「元に戻すためにわざわざ降りて来たんだ」

スト「そ、そうだ…男さん…大丈夫なの…?」

男「………」ガグガグ

男「限界だ」ドサッ

スト「!!」

男「ふ、震えが止まらん」

妹「無茶するからよ!」ダッ

スト「え、あ、危ないよ…!」

妹(人格が複数あって、しかもあんな『実体化』して暴れ回るなんて危険すぎる!)

妹「あなたはここで始末するわ!」


黒幽霊『おい…邪魔だ!』ドンッ

幽霊?『!』ヨロッ

黒幽霊『来いよ…今度はマジで死ぬかも知れないけどなぁ!』シャキンッ!!

妹(塩…黒幽霊には通じなくても、刀の物質霊なら防げるはず!)スッ

パシッ!!

黒幽霊『なにっ…白刃取り!?』

妹「塩を手にまぶしたのよ!…さぁ、今度は体内に塩を…」

ヒヤッ…

妹「……!?」ゾクッ

幽霊?『よぉくご覧なさい黒…これがクールな戦い方と言うものですよ…』スッ

クール!maximum drive!!!

幽霊?『ゴーストフリーズ!』

ピキィン!!!

妹「……!!!」

スト「な…なに…?急に動きが止まって…」

男「…お前は霊感が弱い方だから分からないかもな…」ガタガタ

男「冷たい空気が広がってるぞ」ガタガタ

スト「え…それで震えて…?」

男「そして冷気の中心にいる妹は…もっとヤバい」


妹「……」カタカタ

妹(なに…これ…?体が…冷たい…凍ってるみたいに…)

妹(違う…気のせいよ…金縛りと一緒…私の体はなにもおかしくない…)

妹(どこも凍ってない…でも…なんで…?…寒い!)


幽霊?『寒気…って感じたこと、あります?…ありますよね』

幽霊?『私は他人に「寒気」を感じさせることができるんです…震えるほどの…硬まるほどの』

幽霊?『これぞ究極のcool…そして私は…』

幽霊?『クール幽霊!』

黒幽霊『名乗るのが遅ぇんだよバーカ』

クール幽霊『あなたさっきからうるさいですよ…うるさすぎ…』

黒幽霊『はぁ?てめぇがうるせぇよ…』

クール幽霊『久しぶりに出てこられたと思ったのに喧嘩とは…まったくクールじゃないですね』

黒幽霊『何がクールだくだらねぇ』


クール幽霊『凍ります?』

黒幽霊『斬るぞ』


ビリビリビリビリビリ…


スト「ど、どうしてこんな…」

男「もはや俺じゃ止められん…病人だしな」

スト(こんなのもう…霊現象の枠を超えてる…何か災害のような…)

妹「くっ…!」

妹(物質霊を操るとか…寒気を感じさせるとか…私の手に負えるレベルじゃない…)

妹(でも…)ギリッ

妹「お兄ちゃんを危険な目に遭わせるわけにはいかないのよ!!」バッ!!!


クール幽霊『自力で寒気から逃れた…!?』

黒幽霊『よそ見してる場合かよ?』

クール幽霊『…!』

黒幽霊『気のせいか?お前いつもの数段弱いぜ!』シュッ

ザクッ!!

クール幽霊『うっ…!?』ドサッ

黒幽霊『ははははははは!!無様だなぁ!やっぱりお前は主人格にはなれねーよ!!』

クール幽霊『なぜ…?力が出ない…』

クール幽霊『……』ハッ

クール幽霊『しまった、リンゴ酢か…!』

黒幽霊『ああ?』

クール幽霊『男くん!』

男「!」

クール幽霊『あなたリンゴ酢を飲ませたんですね!?』

男「あ、ああ…つーか俺のこと一応分かってるのか」

クール幽霊『通りで力が出ないわけです…通りでクールさが足りないわけです…!』

スト「どういうこと…?」

クール幽霊『純粋な、ただのお酢じゃないと、私はクールになれない!』

クール幽霊『マイルドなリンゴ酢じゃ…クール幽霊マイルドフォームになってしまう!』

男「グローイングフォームみたいなもんか…」

黒幽霊『ならさっさと…』

クール幽霊『!』ハッ

黒幽霊『失せろ』ブンッ

クール幽霊『あ…』

パシッ

妹「塩…白刃取り…!」

黒幽霊『またっ…てめーかぁ!!』

妹「はっ!」シュッ

黒幽霊『がはっ…!!』

黒幽霊(こいつ…刀の柄で喉を…!)

男「よし、よくやったぞ妹!」

妹「え?」

男「動きが止まった今しかない…来い!」

男「トラ!」


トラ『ヤット出番カ!!!』ピョンッ!!

スト「え…?」

トラ『クラエ小娘!』ブンッ

ビチャッ

スト「わっ…!」

ドボドボドボッ

黒幽霊『ま、まさかその黒い液体は…!』

トラ『醤油ダ!!!』

黒幽霊『くっ!』サッ

ビチャッ!!!

黒幽霊『ぐわぁ!!』

妹「効いてる…!?」

ビチャビチャビチャ

黒幽霊『やめろ…やめろぉ!!』ガクンッ

トラ『思イ知ッタカ!!!』

妹「お兄ちゃん、いったい何を…!?」

男「…さしすせそ…だ」

妹「さしすせそ…?」

男「俺も…リンゴ酢を見てとっさに思い付いたんだがな…もし何か変化があれば、と試してみた」

妹「どういうことよ…」

男「塩をかけると弱くなる…砂糖をかけると強くなる…そして酢をかけるとクールになった…」

男「では醤油は?」


ポタポタ…

トラ『少シハ効イタカ!!コノ似セ小娘!!』ヒュー…

トラ『痛ッ』ボテッ

トラ『ヌイグルミノ姿デヨカッタ…マサカ部屋カラ飛ビ出スコトニナルトハ』

黒幽霊『ぐぅ…ううう…!!嫌だ…やめろ…!!』

トラ『本物ノ小娘ニ…幽霊ニ戻レ!!!』

男「さぁ幽霊、元に戻るか…?」

スト「地味に私にも…醤油がかかったんだけど…」ポタポタ

男「すまんな…クリーニング代、後で出す…」


黒幽霊『うああああああああああ』ズズズ…


妹「!なにか煙のようなものが…」

クール幽霊『あれは…あの人格は…出しちゃいけない…!』

妹「え…?」

黒幽霊『ああああああああああああああああああ!!』

ボンッ!!!


トラ『……』

スト「……」

妹「……」

クール幽霊『なんてことでしょうか…ついに出てしまった…あれが…!』


ピンク幽霊『やーん!実体化なんて、超�・�・�・�・�・久しぶり♪』


男「誰 だ お 前…」

その瞬間、男の体温は38.7℃になった

切ります!
何が起きてるのか分からない?何がしたいのか分からない?

大丈夫!書いてるこっちも分からない!

※前回ラストでクール幽霊が名乗ってたのを素で忘れてたため、二度名乗ることになってしまいました。すいまそん

スト「………」プルプル

妹「ど、どうしたのよ」

スト「い…え……人間」

スト「人間って…ホントに…本当に驚くと…声が出なくなるんだ…ね…」

妹「…確かに驚いたわ」


ピンク幽霊『いや�・�・�・ん♪黒ちゃんにクールちゃんじゃな�・い!あなたたちも出てたのね♪』

黒幽霊『ちっ…うぜぇのが出てきやがった…』

クール幽霊『だからいけないって言ったのに…』

ピンク幽霊『や�・ん♪そんな邪険に扱わな・い・で♪』

黒幽霊『はぁ…まぁ、いいか。てめぇも斬ってやるからよ』チャキッ

クール幽霊『黒も厄介ですが貴女はそれ以上に厄介…それに何よりクールじゃありません』スッ

ピンク幽霊『あ�・んもぅ…そんな怖い顔…』

フッ


ピンク幽霊『し・な・い・で♪』プニッ

黒幽霊『……なっ』

妹(早い!一瞬で彼女の懐に…!?)

スト(っていうかあの人…本当に幽霊さん…?)

文字化けがウザい

黒幽霊『き…斬るぞてめぇ!!!』

ピンク幽霊『そんなに怒っても無駄よ?頬っぺたはぷにぷにで可愛い�・んだから♪』プニプニッ

黒幽霊『き……』ブチッ

黒幽霊『斬る!!!!』ブオンッ!!!

ピンク幽霊『…次は』


フッ


ピンク幽霊『クールちゃん…よ♪』ペタッ

クール幽霊『え…』

ピンク幽霊『も�・クールちゃんってばもっと栄養摂らなきゃダメよ?』

クール幽霊『な、なにを言って…』

ピンク幽霊『貴女がおっぱい小さいと、私も小さいんだから…不便な体よねぇ♪』ペタペタ

※黒もクールもピンクも皆ベースは幽霊なので、胸が同じ小ささ

>>310
文字化けって『♪』ですか?音符のマークです
なくても問題ないので、必要なら使うのやめますよ


黒幽霊『こ…殺せ!クール!そいつ殺せ!!』

クール幽霊『もちろんです!その一言だけは絶対に許せない!』

ピンク幽霊『いつものクールは…どこに行ったのかしらぁ?』

フッ

クール幽霊『また消え…』

妹「……!」ハッ


ピンク幽霊『あら…?』フッ

男「」

妹「…お兄ちゃんっ!!」

へっ?そこでしたか
『う�・ん』とかそういうのを『うーん』にすれば大丈夫ですよね?

ピンク幽霊『うふふどうして…気絶してるのかしら♪』ギュウッ

男「」


妹(お兄ちゃん、熱があるのに無理するから…!)

妹「お兄ちゃんから離れなさい、この淫乱ピンク!」

ピンク幽霊『……?』チラッ

妹「でないと私が…」

ピンク幽霊『興味ないわぁ…』

妹「え?」

ピンク幽霊『私はいま…彼に興味があるのよ♪』ギュウウウウッ

男「」

妹「なにを言ってるのよ!お兄ちゃんを離しなさい!!」ダッ

黒幽霊『やめとけガキ!』バッ

妹「!!」

黒幽霊『あいつには…自分の興味があるものに寄り、興味ないものから離れる…磁石みたいな性質があるんだよ』

妹「じゃあ…私はあいつに近づけないってこと?」

黒幽霊『そうだ…』

妹「関係ないわ!」ブンッ

黒幽霊『うおっ!』サッ

妹「私に興味持たせればいいんでしょう!?」タタタッ

黒幽霊『お、おい!』

ピンク幽霊『だから貴女には興味ないって言ってるじゃ…』


妹「聞きなさいピンク幽霊!私にはおっぱいが三つあるわ!!!」

黒幽霊『はぁ!?』

クール幽霊『トータルリコール?』

ピンク幽霊『え…!!?』バッ

フッ

ピンク幽霊『…あ』

妹「こんな…一瞬でこっちに来るなんて…よほど興味を持ったのね」

妹「でも残念…嘘に決まってるでしょ!!」ガシッ

ピンク幽霊『きゃ!…まんまとやられたわ♪』

妹「もう私のお兄ちゃんには触らせない!」


男「」ドサッ

スト「男くんしっかり…!」

黒幽霊『くそ…騙されたぜ』

クール幽霊『あなた結構アホじゃないですか?』

黒幽霊『はぁ?…ってことはお前もアホになるな!』

クール幽霊『私はアホではありません…クールですよ』

黒幽霊『それがアホっぽいんだよ』

クール幽霊『アホのあなたには理解できないだけでしょう』

黒幽霊『あ?やるかてめぇ?』

クール幽霊『上等です、寒気で風邪引かせてあげますよ』

トラ『喧嘩ハヤメロ!!!』

黒幽霊『あ?てめぇ…』

クール幽霊『普段の私が可愛がってた…ペットのトラちゃんですね』

トラ『ペットデハナイ!!』

黒幽霊『てめぇが醤油ぶちまけたからピンクが出てきたんだぞ…今まで何してやがった!』

トラ『オマエ達ヲ完全ニ消シ去ルタメニ一度部屋ニ戻ッテタノダ』

黒幽霊『完全に消し去るだぁ…?できんのかよ、ぬいぐるみのてめぇに!』

クール幽霊『…何か男くんには狙いがあったようですが…それですか?』

トラ『ソウダ…オマエ達ニ消エテモラウ算段ガアル…!!』

黒幽霊『算段だぁ…?そんなもんあるのかよ』

トラ『我モ最初ハ男ノイイ加減ナ予想カト思ッテイタガ…サッキノ醤油デ確信シタ!!』

黒幽霊『何をだよ…』

トラ『さしすせそ、ダ』

黒幽霊『さしすせそ…?』

トラ『料理ノさしすせそ、言エルカ?』

黒幽霊『料理のさしすせそだぁ…?知るかよそんなもん』

クール幽霊『やっぱりアホですね黒。いいですか、料理のさしすせそとは、砂糖、塩、酢、醤油、ソースのことです』

トラ『最後ハ味噌ダ』

クール幽霊『っ…!?』カァッ

黒幽霊『やっぱアホはてめぇだったな!』

黒幽霊『…待て。砂糖、塩、酢、醤油…だと?』

トラ『ソウダ…オマエ達ハ自分デモ知ラナカッタヨウダガ…』

トラ『ソレゾレノ性格ハ「料理のさしすせそ」ニヨッテ出現スルミタイダナ!!』

黒幽霊『だから砂糖をかけられて…なるほど!』

クール幽霊『私は自分が酢をかけられると出てこれること、知ってましたけどね。リンゴ酢でも』

トラ『ソシテ醤油ガ、アノピンクダ』

黒幽霊『ってことは、味噌…』

クール幽霊『…黒、私の記憶が正しければ、味噌って』

黒幽霊『…ああ。死んでから一度も口にしたことがねぇ』

トラ『ヤハリカ…』

男「……」ハッ

スト「…男くん…!よかった…生きてた…」

男「また気絶してたか…あいつ…幽霊はどうなった!?」キョロキョロ

スト「あそこに…」スッ


ピンク幽霊『♪』ニコニコ

妹(くっ…今にも向こうに飛んでいきそうな…すごい力…!)グググ


男「…そうか、あれじゃないのか」

スト「?」

男「トラ!」

トラ『応ッ!!』ピョンピョン

男「さしすせそ最後の『そ』だ!」

トラ『マカセロ!!』スッ

スト「味噌…?」

最後の調味料『味噌』がもたらす結果とは!?
黒幽霊、クール幽霊、ピンク幽霊はどうなってしまうのか!?
驚天動地のグダグダ展開が続く『幽霊性質究明編』
ついにクライマックス!

男「行くぞ…!!!」ググッ

男「味噌」ブンッ

トラ『シュート!!!』ギュウウウウンッ

スト「投げた…!」

トラ『目標ヲ捕捉!味噌激突マデ残リ…3…2…』ギュウウウウウンッ

ピンク『あらぁ?』スッ

トラ『イ…』ガシッ

黒『お…おい!?捕まってんじゃねぇか!』

クール『しょせんはぬいぐるみ…無理があったようですね』

男「……」

トラ『ハ…放セ…』ジタバタ

ピンク『私ぃ…』グググ…

ピンク『ケモノって好きじゃないの♪』ブンッ

トラ『ギャアアアアアアアア!!!』グシャアッ

スト「ああ…トラさんが味噌漬けに…」

男「予備の味噌は用意してない…万事休す、か…」

黒『だから!私たちを消すなんて無理なんだよ!』

クール『だいたい、味噌ならなんとかなる、ってその根拠が分かりませんよ』

男「……いや」

男「まだ終わってないか…!」


ピンク『さぁて、そろそろ放してもらえなぁい?トリプルおっぱいちゃん♪』クルッ

フッ

ピンク『……え?』

妹「だからそれは…嘘よ!」ブンッ

ベチャッ!!!

ピンク『……!!!』


妹「目の前に味噌が飛んできたから…付けてやったわ」

妹「これでいいんでしょ?お兄ちゃん」

男「…よくやった!」

ピンク『こ…このっ…』シュウウウウウ…


黒『!ピンクから煙が…!』

クール『ここからはまったく知らない領域ですね…』


ピンク『この私に…味噌を…つけるなんて…!!!』シュウウウウウウウウ…


スト「ど、どうなるの…?」

妹「さっさと消えてしまいなさい…!」


ピンク『う…うあああああああああああああっ!!!』


ピカッ!!!


男「…さて、鬼が出るか蛇が出るか」

トラ『』←顔面味噌漬けのため発声不可能

シュウウウウウウウウウウ…

黒『煙が晴れてきた…』

クール『…二人…いますね。ピンクと…』


男「…幽…霊……か?」


幽霊?『………』

ピンク『…誰よ貴女…?』

幽霊?『……だ』

ピンク『だ?』

幽霊?『だるーい…』

ピンク『え…』

男「幽霊…じゃない…微妙に違う…色がくすんでるのか…?」

黒『あんなの私も知らないな…』

クール『確かにくすんでますね…灰幽霊…とでも…?』

幽霊?『私は…』

幽霊?『廃幽霊…』

黒『そっちの廃かよ』

廃『………』

廃『だるーいぃ…』ボソッ

ズオッ…

妹「!」ビクッ

スト「!!」ビクッ

その異変にいち早く気づいたのは、ピンクと共にすぐ近くにいた妹…次いでスト子だった

男「…どうした…?」

妹「かっ…」

男「…?」

スト「……」ドサッ

男「おい…!」


そして、男


男「!…」フラッ

男(分かった…あいつ…廃幽霊が…何したのか…)

男(クールに似てるが…それ以上にタチが悪い…な…)

男「」ドサッ


黒・クール『は??』

ピンク『と…とんでもないのが出てきたみたいねぇ♪』

黒『どうなってんだこりゃ…』

クール『なにをしたんですかね…』

ピンク『あらぁ?でも一番近くにいた私はなんともないわよぉ?』

黒『…人間にしか効かねぇのか?』

クール『そうなんですか?』

ピンク『知らないわぁ♪』

黒『おいアバズレ!とりあえずお前もこっち来い!』

クール『貴女と仲良くするのは嫌ですが、非常事態なんでね』

ピンク『やぁん♪もう、二人とも冷たいわぁ♪』スーッ

廃『……』


黒『あいつ、動かねぇけど…どうする?』

クール『消すしかないでしょう』

ピンク『方法が分かるのぉ?』

クール『分かりませんよ、とりあえず黒、一発殴ってみたらどうです?』

黒『おいおい天下のクール様がひでぇこと言うなぁ…お前が行け』

ピンク『クールちゃん怖いんじゃないのぉ?』

クール『なっ…!怖くないですよあんなの!』

黒『クールになれよ(笑)とりあえずお前行ってこい!』

クール『淫ら…ピンクが平気だったということは、私も平気か…?』オソルオソル

ピンク『腰が引けてるわぁ♪』

クール『うるさいですね…』

クール(えぇ�・…どうしようか…私こういうリスキーなことするキャラじゃないのに…)

クール(ホントにリスキーなのかは分かりませんが…)

クール(いや。近くにいただけで男くん達が気絶。普通じゃないですよねぇ)

黒『おいクール!なにたらたら歩いてんだよ!』

クール『わ、分かってますよ!急かさないでください!クールに行きますから』


廃『………』


ピンク『さて…どうなるのかしらぁ♪』

黒『あいつが駄目だったら次はオマエ行けよ?』


クール『……』

廃『………』

クール『…あなた何者です?』

廃『………私は廃幽霊…あなたと同じ幽霊ですよ…』

クール『では廃幽霊。あなたは…』

クール『……!』ピクッ

クール『……』

廃『……』


黒『なんだあいつ…』

ピンク『いきなり固まっちゃったみたいねぇ?』


クール『…ふ…ふふっ…なるほど…それがあなたの…』


黒『?』

ピンク『なにかしらぁ?』

クール『あなたは危険すぎますね…これ以上この世にのさぼらせておくわけにはいきません』スッ

クール リミットブレイク!!

ピンク『マキシマムドライブじゃないのねぇ♪』

黒『つーかあいついちいち前フリがめんどくせぇよ』

クール『クール流奥義…』

(鳥)肌立てるクールの息吹!!

ピンク『はだたてるくーるのいぶき…?クールちゃんどういうセンスしてるのよぉ♪』

黒『天駆龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)をリスペクトしてるんじゃ…って、なんだこりゃあ!?』

黒『あいつの辺りだけ猛吹雪が!!』


クール『消えなさい…廃幽霊!』

廃『……のに』

クール『…はい?』

廃『…せっかく呼ばれたと思ったのにこんな扱いを受けるなんて…ああやっぱり私なんて死ねばよかったんですね。もう死んでるけど。どうせ私なんて地味で根暗で冴えない幽霊ですよ。でももしかしたら他の『私たち』みたいに不思議な能力が身に付いてるかもしれないじゃないですか。それさえないんですよ。憂鬱すぎます…』

クール『……!!』


黒『ど、どうなってんだ?まったく見えねーぞ…』

ピンク『……あらぁ?』

ピンク『吹雪が消えてくわぁ…♪』

黒『なんだもう消えちまったのかよ。よく分からない奴だったな廃幽霊…』

ヒュオオオオオ…

黒『吹雪が完全に消えた…』

ピンク『…あ、いるわよぉクールちゃん♪』


クール『………』

黒『おいクール!何もいきなり消すことはなかったんじゃねぇか?』

クール『…ま…だ…』

黒『……!』


廃『………』


ピンク『…あの吹雪の中、よく無事でいられたわねぇ♪』

クール『吹雪を消したんです…』

黒『…あ!?あいつがかよ』

クール『いえ…私が…』

黒『は?』

クール『あいつは…廃幽霊はたぶん…「負の感情を伝染させる」ことができるんです…本人は知らないみたいですけど…』

クール『そして私の気力…やる気とかそういうのを削いで…吹雪を止めさせた…』

クール『あり得ませんあんなの…神経質は最近の人間が耐えられるはずない…』

クール『あとは頼みました…あいつに…塩…を……』

ドサッ

黒『…クール?』

クール『』

黒『く…クール!!!』

ピンク『…あらぁ?ダウンしちゃったのねぇ♪』

黒『クソ…あいつ…負の感情だかなんだか分からないが…よくもクールを!!』バッ

廃『…殴るんですか?殴りますよねそりゃ…私みたいなやつ、幽霊になんてならないで、魂さえ残らず消えてしまえばよかったんだ。死んだのに意識があるなんて、だるいですだるすぎます。はぁ…』

黒『……』ビクッ

黒(か、体が急に重く…まるで動くことを拒んでいるように…!)

黒『……く』ガクッ

ピンク『…黒ちゃんまで?ふぅん…』

ピンク『面白そうねぇ♪』ヒュッ!!

シュンッ

廃『…今度はあなたですか…もういいです私をどうしようが…好きにしてください…』

黒『ぴ…ピンク…オマエ何でわざわざ近づいて…』

黒『…!』

ピンク『♪』

黒『廃の能力が効いてない…?』

ピンク『自分で言うのもどうかと思うけど私ぃ…』

ピンク『負の感情とかぜーんぜん興味ないわぁ♪』

黒『…けっ。お気楽なやつだな』

ピンク『黒ちゃん』

黒『!なんだよいきなり声色変えて』

ピンク『塩がいるんでしょぉ?取りにいってらっしゃい♪』

黒『…え?』

ピンク『私が時間を稼ぐからぁ♪』

黒『お、お前…』

ピンク『早く早く♪』

黒『…ちょっと待ってろよ!』フワーッ

廃『みんな私を悪者みたいに…そうですよね私は悪い奴です。私みたいなの生まれてこなきゃよかったのに。ねぇあなたもそう思いますよね…』

ピンク『…うふふ♪』


男の部屋

スーーッ…

黒『よし、塩、塩…』

黒『って、さっき暴れたせいでひどいことになってやがる!!』

黒『台所へ…』フワフワ…

黒『……塩は』

黒『ああっ!ぶちまけてあるじゃねぇか!ちっくしょー…』サッサッ

黒『早く戻らねぇと…』サッサッ

黒『よし、これでいいだろ!いくぜー!』ギュン

黒『ドアすり抜け!』スーーーッ

ザラザラザラー

黒『…しまった!私が霊体で扉をすり抜けても、塩はそんなことできないんだ!』

黒『ああーもう!!』ガチャッ

サッサッサッサッ

黒『よし!半分以下になっちまったけど問題ねぇだろ!行くぜ!』ギュンッ!!!!


ピンク『…信じられないわぁ♪同じ「私」とは思えないほどの怨念…♪』

廃『別に怨念なんて…私はただこの身の不幸を嘆いてるだけです…ああ世知辛い…』

ピンク『そろそろ…もたないかも…♪』

黒『ピンク!塩持ってきたぜ!』ギューーン!!

廃『塩…!』ピクッ

廃『それは嫌ぁああああああ!!』

ピンク『……う』グラッ

ピンク(塩への拒絶が強烈な負の感情に…限界だわぁ…♪)

ドサッ

黒『ピンクー!!お、お前まで…!』

廃『はぁ…はぁ…塩は…塩はやめてください…』

黒『…駄目だ!クールとピンクの仇は私が取る…』

廃『や…やめ…』

黒『これで…終わりだ!』ブンッ!!

バサーッ!!

廃『……』

廃『あ…ああ…』シュワシュワ…

黒『はぁ…はぁ…』

廃『あ…あなたの…勝ち…です…』シュワシュワ

ピカッ!!!

黒『新しい…いの…ち…』

ドサッ

妹「う……」パチッ

スト「んっ…」ピクッ

男「……く…」

妹「……あら…?」

スト「…あれ…」

男「……ん?」

フワフワフワ…

幽霊『みんな、何でこんなところで寝てるんです?』


妹「あ、あなた…」

スト「本物の…」

男「……幽霊…か」


幽霊『はい?』

それから男たちは、幽霊が黒幽霊に変わってから何があったかを話した…


幽霊『なるほど。つまり私が砂糖に触れると黒になって』チョン

黒『私が酢に触れるとクールになるわけだ』チョン

クール『さっきのはリンゴ酢でしたけど。そして私が醤油に触れるとピンクになる』

ピンク『いやぁーん♪私が味噌にさ・わ・る・と?』

廃『私が出てくるわけです…そして塩に触れると』

幽霊『元に戻る…ってことですか』


男「ま、フォームチェンジってとこだな」

妹「あなたのせいで大変な目に遭ったわ」

スト「まさか…こんなことに…なるなんて…ね」

幽霊『いやぁよく分からないけどお疲れさまです』

幽霊『ところで男くん、風邪は治ったんですか?』

男「……」

男「意識した途端に全身が熱く…」バタン

妹「看病やり直しね」

スト「今度は…ちゃんと…やらないと…」

幽霊『私冷えピタ買ってきたんですよ…ってもう貼ってあるじゃないですか』

男「ああ冷えピタな…これがなかったら今ごろくたばってたかもしれん…」

幽霊『死んだら男くんも幽霊になれるかもしれませんよ』

男「お前みたいな多重人格者には死んでもなりたくねぇ」

hahahahahahahahaha!!!!


トラ(別ニ上手クモナントモナイダロ…)

これで今まででの話の区切りにしようと思います

以降はキャラの設定だけはそのままに、大きな物語はなしで『一話完結型』になる予定です
要するに細かいことは丸投げで、再スタートです

長いこと放置しててすみませんでした
そのくせグダグタ過ぎでごめんなさい。かなり反省してます
だってどうすればいいか分からなかったんだよぅ(´;ω;`)

ある日の午後…

男「………」パリパリ

男「…うーん…せんべい食いながらの詰め将棋ほど愉しいことはないな…」パリ…

オオオオオオオオ……

男「……?」パリパリ

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ

男「なんだ?…外…飛行機が低く飛んでるみたいな音だな」スタスタ

ガラッ


ゴオオオオオオオオオオオオオ!!!!


男「なにっ!!?」


プワーーーオォン!!!

男「な…なんだ一体…なにが…」

シュウウウウウウウ…

男「……これは…電車…?」

男「…バカな。あり得ん。どうしたら電車が俺の家に突っ込んで来るんだ?脱線事故か?ココ二階だぞ?」

プッシュゥーーー…

男「お…誰か降りてきた」


?「ここですね………」スタッ


男(…べっぴんさんじゃないですかァ�・ッ!!)

?「………」キョロキョロ

?「留守ですか?」

男「あ?…俺…か?」

?「……どうも」ペコッ

男「…どうも」

?「………」

男「えーと…何の用で……」

?「……幽霊に会いに来ました」

男「!あいつの知り合いか…」

?「いえ…『知り合いになるために来た』って感じです」

男「……??」

男「まぁいいやとりあえず名前は…」

?「ああ…私は…」

?「霊王です、霊世界の王」

男「れ、れいおう…?」

霊王「はい」

男「霊世界ってのは…?」

霊王「すべての霊が住まう場所です」

男「そこの王様…」

霊王「はい」

男「………」

男「…とりあえず幽霊の関係者ってのは分かった。でもあいつは今いないぞ」

霊王「どこにいるんです?」

男「どっかその辺をぶらぶらしてると思うが…呼んできた方がいいか?」

霊王「ええ…あまり時間がないので。お願いします」

男「……」スクッ

男「あ、そのせんべいよかったらどうぞ」スタスタ

霊王「……」

霊王「……」パリッ



男「幽霊…どこにいる?」スタスタ

近所のおっさん「よう!にいちゃん!こないだの知恵の輪は解けたのか?」

男「ん?…ああ、楽勝だった。解き方はちゃんと紙に書いといたから今度渡すよ」

近所のおっさん「ありがとうなぁ。説明書なくしちまって解き方が分からなくなってたんだよ」

男「…急いだ方がいいな」スタスタ

近所のおばさい「ちょっと男ちゃん!こないだ渡したラジオは直ったの!?」

男「ああ…直したよ…今度持ってくる…ただ、次に落としたらたぶんもう直せんぞ」

近所のおばさい「ありがとねぇいつも。旦那があんまり大事にしてたからなんとかしなきゃと思っててね…」

男「別にいいさそのくらい。忙しいんで失礼するよ」スタスタ

幽霊『男くんってなんか便利なアイテム扱いされてません?』

男「幽霊!いつの間に」

幽霊『なんか忙しいみたいですけど、なにかあったんですか』

男「お客さんだ。お前にな」

幽霊『え?私に?誰です?』

男「霊王。霊世界の王とかなんとか」

幽霊『…はい?』

男「…知らないのか」

幽霊『知らないです』

男「……」

男「とにかく帰るぞ」グイッ

幽霊『は、はいぃ…』

男「待たせて悪かった」ガチャッ

霊王「あ、来ましたか」ナデナデ

トラ『イイ加減ニ離シテクレー』ジタバタ

男「トラ…お前なにお客さんに引っ付いてんだ」

トラ『チ、違ウ…コノ女ノホウガ…』

霊王「恐竜の霊とは珍しいですね。普通ならとっくに成仏していそうなものですが…」パッ

トラ『ウオッ』ポテッ

霊王「さて…貴女が噂の幽霊ですか」

幽霊『う、噂…?』

霊王「ええ。この辺りで一般人を巻き込んで大暴れした凶悪な幽霊…」

幽霊『え…』

男「この間の事か…」

霊王「…まずは自己紹介からしましょうか」

霊王「私は霊王、霊世界の最高権力者…つまり王です」

幽霊『霊世界ってなんですか?』

霊王「私たち霊の住まう世界。そして本来なら貴女も」

幽霊『私も?』

霊王「……貴女は『鬼籍登録』してないので、知らなくて当然でしょう」

幽霊『鬼籍登録…?』

男「鬼籍って『鬼籍に入る』の…」

霊王「そうです。人間…そしてすべての生物は、死ぬと霊体になり、霊世界にやってきます」

霊王「私たちはその霊体を『鬼籍』に登録して、霊世界の居住権を与えるのです」

男「こいつはその鬼籍に登録してないのか」

霊王「ええ。しかし、とは言っても、死後すぐの霊体が霊世界にやってこなかったというだけで、そういうことは多々あります」

霊王「なにか未練があって、現世に霊体が留まってしまう」

幽霊『だって未練があるも何も、急に死んじゃいましたし…』

霊体「ええ。事故死した霊は成仏できないことがほとんど。貴女も例に漏れずそうなのです」

霊体「最近は事故死が多くてですね、つまり鬼籍登録せずに現世にうようよしてる霊がたくさんいるんです」

霊体「貴女のように成仏できない霊は、我々がこうやって出向いて鬼籍登録させるのですが」

霊王「数が多すぎてですね。貴女のところに来るのは、本来なら23年後でした」

幽霊『23年後…!?私が死んで17年経ってるのにですか!?』

霊王「鬼籍登録させなきゃいけない霊が多すぎて予定が凄いことになってるんです。本来使者を遣わせるところを、今日は無理やり時間を割いて私が直々にやってきました」

男「なんでわざわざ…」

霊王「貴女がここで問題を起こしたからですよ。鬼籍登録してれば問題の処分は霊世界で行えます。ですが登録してない貴女の処分はこちらで行う必要があるんです」

男「だったらまず登録させてしまおう、と」

霊王「その通り」

トラ『ヨク分カランガオ前ハ悪者デハナインダナ?』

霊王「もちろんです。あ、貴方も鬼籍登録してませんね。ついでにやってしまいましょう」

トラ『我モカ!』

幽霊『鬼籍登録すると何か良いことでもあるんですか?』

霊王「ぶっちゃけ特にありません。ですが霊世界での居住権を得て自由に生活できるようになります」

幽霊『私はこっちで特に苦労なく過ごしてるんですが…』

霊王「そういう方は別に現世にいてもらっても構いません。ですがさっきも言ったように、問題を起こした者は霊世界に呼び出すので。登録してもらわないと面倒なのです」

幽霊『はぁ…』

霊王「では鬼籍登録していただきます」

幽霊『何か物凄いキツいことだったりします?全身に写経するとか、塩水を大量に飲むとか…』

霊王「こちらの紙にいくつか記入していただくだけです」

男「えらく簡単だな…」

霊王「というわけでさっそく」サッ

幽霊『あ、はい…』

幽霊『名前、性別、生年月日、享年…思ったより普通ですね』

幽霊『……その他、ってありますけど』

霊王「特になければ空欄で構いません」

幽霊『……』カキカキ…

男「へぇ。お前そんな名前だったのか」

幽霊『ちょ…見ないでくださいよ!恥ずかしいじゃないですか』

霊王「別に恥ずかしいことじゃないでしょう」

トラ『我ハ筆ナド持テンゾ』

男「しゃあねぇな、俺が書いてやる…」

カキカキカキカキ……

2分後

幽霊『書けました』

トラ『我モ書ケタゾ!!』

霊王「はい。では確認しますのでしばらくお待ちを」スッ

幽霊『霊世界かぁ…そんなの全然知りませんでしたよ』

トラ『我ハ知ッテタゾ』

男「嘘つけ」

霊王「…幽霊さんちょっと…」

幽霊『何か変なとこありましたか?』

霊王「その他のところ…この『多重人格』とは?」

幽霊『あー…私も最近知ったんですが、どうやら私、人格がたくさんあるらしくて』

男「調味料に反応していろいろ出てくるんだよ」

霊王「…なるほど。ちなみに何人いです?」

男「ノーマル、黒、クール、ピンク、廃…だから5人だな」

霊王「もしかして今回の問題はそれが原因ですか?彼女を見るにとても他人に危害を加えるようには思えませんが」

男「そうだな」

霊王「分かりました…」

幽霊『………』

霊王「あとは特に問題はないでしょう。鬼籍登録はこれにて終了。お憑かれさまです…」

幽霊『…あのーそれで処分というのは…』

霊王「ああ…霊世界に戻ったらすぐに協議しますよ」

幽霊『すぐって具体的にいつごろに…?』

霊王「ええと…」スッ

男(iphone!?)

霊王「そうですね今後の予定が…早く進めばだいたい…」

霊王「31年後ですね」

幽霊『えっ!?』

男「31年後!?」

霊王「?…そんなに驚くようなことですか?」

幽霊『いやだって31年ですぐってことはないでしょう…』

霊王「ああ…まぁ最初はそうですよね。時間の感覚が生前と同じだとそう感じますよね」

霊王「でも私は霊になって2000年以上経ってますから。31年なんてあっという間です」

男「2000年…だと…』

幽霊『あっという間って…』

男「今までbbaだとか言って悪かった。お前なんてこの人に比べたら赤ん坊みたいなもんだな…」ボソッ

幽霊『ちょっと想像できませんね』ボソッ

霊王「?」

幽霊『と、とにかくしばらくは処分待ちなんですね』

霊王「ええ」

男「言っておくけど俺たちは大した被害受けてないぞ。妹もスト子も、幽霊のこと知ってるしな」

霊王「そんなに心配しなくても、多重人格が発覚した時点で罰は軽くなるはずです」

幽霊『ば、罰って例えば…?』

霊王「そうですね、懲役だとだいたい7…」

幽霊『ひぃ!それ以上聞きたくないです!』

男(7年?70年?…まさか700年?気になるじゃねーか)

霊王「では今度こそお憑かれさまです。あ、トラさんも」

トラ『我コソ何千万年モ霊ヲヤッテルンダゾ。モット敬イナサイ』ドヤッ

霊王「恐竜って可愛いんですね、貰っても良いです?」

男「どうぞ」

幽霊『どうぞ』

トラ『オイッ!オ前ラ冷タスギルダロウ!! 』

霊王「じゃ、そろそろ予定が押してるので今日は失礼します」

幽霊『わざわざ来ていただいてすみませんでした』

霊王「いえいえ…あ、そうだ」ゴソッ

霊王「よかったらこれ、どうぞ」スッ

男「!?さっきのiphoneか!」

霊王「いえ違います。先日霊世界にやってきたゲイツさんからいただいたアイデアを元に作ったものです」

霊王「霊専用多機能端末『霊phone』…試作品という形になりますが、差し上げます」

幽霊『!』

トラ『ナニッ!!』

幽霊『い、いいんですかこんなの貰っちゃって』

霊王「構いませんよ」

幽霊『でもこれ、何ができるんです?』

霊王「貴女も現世にいる霊同士となら『憑いったー』でコミュニケーションが取れるでしょう。あれで霊世界の霊とも交流できるようになります」

幽霊『便利ですねぇ』

霊王「鬼籍登録が完了したら、定期的にメルマガが届くようになりますよ」

男「企業のやることだろそれ」

霊王「その他にもマップ機能、電卓機能、写真撮影機能、音楽再生機能、動画再生機能、辞書機能など…」

幽霊『ふむふむ…』

トラ『我モ欲シイゾ!!』

霊王「すみません霊phoneは今これしかなくて」

男「おいトラ、霊王さんにワガママ言うな!」

霊王「霊padならあるんですが」

男「ゲイツ霊世界でも抜かりねぇな!」

霊王「おっと、さすがにこれ以上のんびりはしてられません。失礼します」

プワァアアーン!!!

男「うお!また電車!」

幽霊『こ、これは?』

霊王「霊世界に繋がる特別な電車『レイライナー』です」

男「バイクで操縦できそうな電車だな」

霊王「では、さようなら」プシュー…


ガタンゴトン…ガタンゴトン……

ゴォオオオオオオオオオオオーー!!!!


幽霊『消えちゃいましたね』

男「霊世界…」

数時間後

幽霊『男くん』

男「なんだよ」

幽霊『これ使い方がよく分かんないんですけど』

男「霊phone?こんなの直感で使えるようになってんだよ、いろいろ触ってみろ」

幽霊『分かりませんよ…ポケベルなら使えるんですけどねー』

男「bba乙」

トラ『男ー!霊padノ使イ方ヲ教エテクレー!! 』

男「アホか。ぬいぐるみに使えるわけないだろ」

トラ『クソー!!コンナノイラン!!我ノテーブル代ワリダ!!』


男「……」

男(こいつらは現世(ここ)にいる方が幸せなんだろうか)

男(それとも…)

切ります

霊王は、霊世界が絡んで来たときしか動かせないので
サブレギュラーってところでしょうか?
そのうちオフの時の霊王とか書くかもしれないです

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom