モバP「なっちゃんと俺」 (38)
1作目 モバP「なっちゃんという同級生」(モバP「なっちゃんという同級生」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1434111292/))
2作目 モバP「なっちゃんという担当アイドル」(モバP「なっちゃんという担当アイドル」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1434292580/))
3作目 モバP「ナナ先生のメルヘンデビュー」(モバP「ナナ先生のメルヘンデビュー」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1434535556/))
4作目 モバP「なっちゃんと恋人ごっこ」(モバP「なっちゃんと恋人ごっこ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1434708764/))
5作目 モバP「なっちゃんと後輩アイドル」(モバP「なっちゃんと後輩アイドル」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1434898915/))
6作目 モバP「なっちゃん達のガールズトーク」(モバP「なっちゃん達のガールズトーク」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1436281527/))
の、続きです。少なくとも1作目を読まないと登場人物の関係がよくわからないかもしれません。
今回でひとまず最終回の予定です
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1436613831
ある日の事務所
P「変身!」
光「うーん、ちょっと右手の角度が低いかなあ」
P「難しいな……」
P「一緒に見に行った映画の仮面ライダーの変身ポーズを真似するのに、ここまで細かくやる必要があるんだろうか」
光「何言ってるんだ。どんな時でも全力でチャレンジ! それがヒーローだ!」
P「俺はヒーローじゃなくてプロデューサーだし」
光「どっちでも似たようなもんだよ」
P「長音符号の数しか合ってないぞ」
光「細かいことは気にしなくていいじゃないか。ほら、アタシが手取り足取り教えるからさ!」
P「しょうがないな……」
茄子「………」ジー
P「デスクワークは脳味噌が疲れる」
凛「プロデューサー、コーヒーいる?」
P「ああ、もらうよ」
P「眠気覚ましにちょうどいい」
凛「はい、どうぞ」
P「ありがとう」ゴクッ
P「うん、うまい。苦さもちょうどいいな」
凛「半年以上一緒にいるしね。好みの味加減とかもわかってきた感じ」
P「長い付き合いの賜物だな」
凛「ふふ、そうだね」
茄子「………」
茄子「P君、昔はコーヒー苦手だったのにな……」
P「よし、じゃあ俺ちょっと出かけてくるから」
菜々「あ、Pくん。ネクタイが曲がってます」
P「え、本当?」
菜々「はい。じっとしててください、直してあげます」
菜々「んしょっと……はい、これでばっちりです!」
P「ありがとう、菜々さん。ちょっとぼーっとしてたみたいだ」
菜々「頼みますよ? ナナ達のプロデューサーさん」
P「もちろん。ちゃんとやってくるから」
P「いってきます」
菜々「はい、いってらっしゃい」
茄子「………はあ」
茄子「変です……」
凛「茄子さん? どうかしたの」
茄子「あ、いえ。独り言ですから、気にしないでください」
凛「ふーん。最近なんか元気ないみたいだけど、何かあるのなら相談に乗るよ」
茄子「大丈夫です。本当に助けが必要な時には、頼らせてもらいますね♪」
凛「ならいいけど」
茄子「………」
茄子「ねえ、凛ちゃん」
凛「なに?」
茄子「P君って……イケメンですか?」
凛「……はい?」
茄子「あっ、な、なんでもないです!」ブンブン
凛「……本当に大丈夫?」
茄子「大丈夫です……多分、きっと、おそらく」
夕方
凛「プロデューサー」
P「おう、どうした」
凛「茄子さんのことなんだけど」
P「ああ、わかってる。様子がおかしいって話だろ」
凛「普段はいつも通りなんだけど、時々上の空になったり、ため息ついたりしてるんだよね」
凛「ちょっと探りを入れてみたんだけど、多分プロデューサーが関係あるみたいだよ」
P「俺が? ……そうか」
P「まあ、どのみち今日あたりになっちゃんと直接話すつもりだったから。いろいろ聞いてみるよ」
凛「うん、お願い」
凛「やっぱり、みんな元気なのが一番いいから」
P「いいこと言うなあ、凛は」
凛「一応、アイドル歴ならこの中で一番長いからね」
ガチャ、バタン
P「さて、なっちゃん以外はみんな帰ったな」
茄子「P君。なんですか、話って」
P「単刀直入に聞くけど、ここ数日ちょっと様子が変だなと思ってさ」
P「俺はなっちゃんのプロデューサーだから、何かあったのならそれを把握しておく義務がある」
茄子「義務……」
P「もちろん、悩みがあるなら友達として力になりたいという気持ちもあるけどな」
茄子「……そういう言い方、ちょっとずるいです」
P「そうか?」
茄子「そうですっ」
P「それで、話してくれるのか」
茄子「………」
茄子「その前に、ひとつお願いしたいことがあります」
P「ん?」
茄子「一緒に、お酒を飲みましょう」
P「(適当にコンビニで買ってきた酒とつまみを口にしつつ、俺はなっちゃんが話を始めるのを黙って待ち続けた)」
P「(BGMがわりにつけたテレビからは、明日の天気を淡々と述べるアナウンサーの声が聞こえてくる)」
茄子「私達、お酒が飲める年になったんですね……」
P「すごく今さらだな」
茄子「そうですね」
茄子「……いい感じに、酔いがまわってきました」
P「前にも言ってたっけ。照れ屋だから、酔っていないと素直に言えないことがあるって」
茄子「はい」
P「じゃあ、今から聞かせてくれるんだな」
茄子「………」コクン
茄子「私、今の生活が楽しいんです」
茄子「アイドルとして、歌って、踊って、ファンの人に応援してもらえて。皆さんの幸せそうな顔を見るのが、うれしいんです」
茄子「だから、P君には感謝しています。アイドルにスカウトしてくれたこと」
P「それはよかった」
茄子「はい、よかったです」
茄子「……でも、ひとつだけ困ったことができちゃいました」
P「困ったこと?」
茄子「それは……」
P「(なっちゃんの顔が、耳まで赤く染まる)」
P「(酒の力以外の何かが働いているのは明白だった)」
茄子「私にとってP君は、とっても気の合うお友達。そして、恩人でもありました」
茄子「ちょっとおバカさんだけど、行動力があって、優しい男の子。大人になっても仲良くやっていければいいなって思っていました」
茄子「でも、逆に言えばそれだけの気持ちだったんです」
P「………」
茄子「はじめてこの事務所に来た時、私言いましたよね。私の記憶の中のP君は、気ままな不良学生のままだって」
茄子「でも、ここで一緒に過ごしているうちにわかったんです。20歳になったP君は、昔より真面目で、仕事に一生懸命で、なんだか大人っぽいなあって」
茄子「しばらく会わないうちに、変わったんだなと思いました」
茄子「それに気づいた時、今までとは違う気持ちが生まれていたんです」
茄子「あなたを、好きだと思う気持ち」
P「………」
P「(なっちゃんの悩み事が俺に関係しているかもしれないと言われた時から、なんとなくその可能性はあると予想していた)」
P「(けれど、いざはっきりと告白されると、やはり驚きが大きいものだった)」
P「そうか」
茄子「……驚かないんですね」
P「驚いてるよ。でも、まったく想定していなかった事態じゃなかったから」
P「この前の恋人ごっこの時、様子が変だったもんな」
茄子「あの時から、少しずつ意識し始めていたのかもしれません」
茄子「……困っちゃいますよね。学生のころは何も思わなかったのに、いざアイドルになってから、あなたに恋をしてしまうなんて」
茄子「本当……困っちゃいます」
P「……なっちゃんは、アイドルだ。だから、恋愛することは禁止されている」
P「だから、君の思いは受け入れられない」
茄子「………」
P「と、普通のプロデューサーならそう言うのかもしれないけど」
茄子「え?」
P「あいにく俺は元不良だから、根っこのところは普通じゃないんだ」
P「極論を言えば、俺はアイドルが誰かと愛を育んでもいいと思っている」
P「誰にだって、その権利はあるはずだ。ただアイドルは、わきまえなければいけないことが、他の人よりずっと厳しいってだけ」
P「仮にお互いが好き合っているのなら、その想いを糧に頑張ることくらいは許されるんじゃないかな」
茄子「………」
茄子「なら、聞きます」
茄子「P君。私は、変わりましたよね」
P「ああ、きれいになった」
茄子「P君も、変わりました。かっこよくなりました」
茄子「そして、私の気持ちも変わりました」
P「うん」
茄子「P君の気持ちは、変わりましたか」
P「………」
P「当ててみるか?」
P「俺がなっちゃんのこと、女の子として好きか、そうじゃないか」
P「なっちゃんの得意な、選択式の問題だ」
茄子「………」
茄子「その問題には、答えられません」
P「どうして」
茄子「どっちが正しいかじゃなくて、どっちが正しくあってほしいかでしか、答えられないから」
P「それ、たいして違うか?」
茄子「違いますっ」
P「なっちゃんは肝心なところで怖がりだなあ」
茄子「昔からそうですよ。臆病だから、誰かに手を引いてもらえないと走り出せない。私はそういう人間です」
P「そんなことないと思うけど……でも、いいか」
P「だったら、俺がその手を引いてやる。あの時みたいにな」
茄子「あっ……」
P「俺の手、汗かいてるだろ。緊張してるんだ」
P「どうやら俺も、なっちゃんという女の子を好きになったらしい」
P「『高校のころの遊び友達』というフィルターが、一緒にいるうちに取れちまったのかな」
茄子「……いいんですか? 私、意外と独占欲強いですよ」
P「好意の裏返しと思えば」
茄子「結構、面倒くさい性格ですよ?」
P「知ってる。でも仲良くやれる自信はある」
茄子「………」
茄子「P君……P君っ!」
P「(俺の言葉を聞くやいなや、なっちゃんは俺に抱きつこうとする)」
P「(だが、その動きは途中で止まり……最終的には、俺の両手をぎゅっと握りしめるだけにとどまった)」
茄子「……このくらいが、限界かな」
P「やっぱり、なっちゃんは賢いな」
茄子「わがままだけど……私、まだアイドル続けたいですから」
茄子「それに、これでも十分、P君の体温を感じられます」
茄子「汗だらだらの感触も一緒にですけどね♪」
P「お、ようやくいつもの調子に戻ってきたか」
茄子「ご迷惑をおかけしました♪ 凛ちゃん達にも、謝らないといけませんね」
P「そうだな」
茄子「P君、P君」
P「なんだ?」
茄子「好きです」
P「俺も好き」
茄子「ふふっ、なんだかおかしいです♪」
P「奇遇だな。俺も笑いたい気分だ」
P「(こうして、俺となっちゃんは互いの想いを確かめ合い……一応、恋人関係となった)」
P「(一応というのは、もちろん大幅な制限がかけられた恋愛であるからだ)」
P「(仕事柄、他人に絶対バレてはいけない秘密の共有。それが逆に、俺達の間の絆を一層深める――)」
P「(――そんな間もなく、凛達には事実が明るみに出ることとなった)」
凛「いや、だって見ればわかるし」
菜々「距離が違いますよね、心の距離が。ウサミンアイでまるっとお見通しです」
光「ふたりとも、おめでとう!」
ちひろ「正直頭が痛いですが、仕方がありませんね……プロデューサーさんにはビシバシ働いてもらいましょう」
P「(俺達がわかりやすすぎるだけなのだろうか。だとしたら、早急に芝居の練習をする必要があると思った)」
とある休日
光「ワンダバダバダバ♪ワンダバダバダバ♪」
P「ウルトラマンの映画なんて、見に行くの久しぶりだな」
茄子「私は初めてですね~」
光「スクリーンで見るウルトラマンは大迫力! ふたりとも興奮するに違いないぞ」
茄子「それは楽しみです♪」
P「えーっと、受付はどこだったかな」
光「こっちこっち」ギュッ
P「おいおい、引っ張るなって。そんなに急がなくても間に合うから」
茄子「………」
ぎゅっ
P「なっちゃん。なんだこの手」
茄子「便乗、ですかね?」ニコニコ
P「まったく……両手をアイドルに握られるってのは、ある意味幸せなのかな」
光「P! 早く行こうよ!」
P「わかったわかった」
茄子「……P君」
P「ん?」
茄子「幸せにしてあげますからねっ」
P「………」
P「それ、俺のセリフ」
茄子「……はい♪」
P「(屈託のない彼女の笑顔を見ていると、それだけですべてがうまくいくような気がしてしまう)」
P「(これから先、いろんなことが待ち受けていると思うけど……)」
P「(今はただ、その楽観的な考えを信じてもいいと思えたのだった)」
凛「菜々さん」
菜々「なんですか?」
凛「賭けしない?」
菜々「賭け?」
凛「プロデューサーと茄子さんが、バカップルになるかどうか」
菜々「……それ、賭けが成立しないと思いますよ」
凛「やっぱりか」
おしまい
これにて長々と続けたなっちゃんシリーズ完結です。お付き合いいただきありがとうございました
茄子さんとPの出会いに関しては原作でも謎が多いので、その辺妄想してたらいつの間にかこんな謎のSSができあがっていました
Pがもともとアイドルと知り合い(または身内)だった、みたいな話が好きなので、そのあたりの要素が入り込んでいます
茄子さんと菜々さんに関しては独自設定入れまくったのでコレジャナイ感強いかもしれませんが、申し訳ありませんでした
ところで、なっちゃんの発音って「なっ↑ちゃん↓」と「なっ↓ちゃん↓」どっちなんでしょう? 私は前者なのですが…
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