狐娘「復活じゃー!」 男「・・・・・・」(255)

~祖父の家~

男「納屋の掃除くらい自分でやれよ・・・ったく」ゴソゴソ

(祖父「頼んだぞ・・・男」)

男「頼んだぞ・・・とかいいながら酒飲みに行っちまうし・・・くそ」

男(まぁいいか、その分バイト代として弾んでもらおう)

男「・・・・・・って何だこの壺?でっけぇ・・・」

男(しかもなんか札貼ってあるし・・・)

男「・・・はがしちゃお」ペリペリ

男「中に何が入ってんのかな・・・これで大量の漬物とかだったらかなり残念だが・・・」カポッ

?「・・・・・・・・・・・・」

男「・・・・・・・・・・・・」カポッ

男「・・・・・・・・・」

男(そっと閉じちゃったけど・・・だれかが体育座りしてた?)

男「もっかい見てみよ」

カポッ

?「いつになったら出られるんじゃ・・・はぁ」

男「・・・」

?「・・・あ」

カポッ

男「目が合ったからなんか閉めちゃったけど」

男(あれってどう見ても女の子だよな!?)

男「もっかいだけ見てみよ・・・」カポッ

?「もらったあああああああああああああああ!」ドゴォォ!

男「ぐわっ!?」

?「ふ・・・ふふふふふふ、やった!やったのじゃ!出れた!出れたのじゃああああああああ!」

男(な、なんだこいつ・・・いきなりアッパーをかましてきやがった!)

男「な、何なんだお前?!」

?「ただの人間風情がこのわしに名前を問うのか?頭が高いにもほどがあるわ」

男(・・・腹立つなコイツ)

?「ふふ・・・まぁよい。封印を解いた礼じゃ。特別に教えてや」

ガラガラピシャッ!

?「ろう?」

男「汗かいたから風呂でも入るか」

?「おい!ちょっと!なぜ閉める!開けろ!この!」ガタガタガタ

男「この札貼っとけば出てこれないだろ多分」ペタ

?「お、おい!待てというに!」

男「・・・・・・」スタスタスタ

?「・・・!・・・!・・!」

男(何なんだあいつは・・・あとでじいちゃんに聞いておかないと)

~風呂~

男「ふーー、昼間の風呂もいいもんだ」

男(・・・あいつなんだったんだろうな)

男(なんか獣の耳みたいなのはえてるし、尻尾もあったし)

男「ほんと何なんだろうな」

?「お呼びかな!」ガラガラガラ

男「あっ!?」

?「ふっふっふ」

男「いやいやいや、なんでここにいるんだよ!どうやって出てきた!?」

?「反対側の引き戸から出てきたまでじゃ」

男「なに?」

?「まぁそんなことはどうでもよいのじゃ!」

男「いやどうでもよくないだろ!」

?「そんなことよりも貴様・・・たかだか人間の分際でわしをここまで侮辱するとは」

男「は?」

?「この狐娘様をここまでコケにするとはいい度胸じゃ」

男「・・・」

狐娘「ふふふ・・・恐ろしくて声も出んか?」

男「いや・・・そういう台詞は服を着てから言えよ。お前どう見ても風呂に入ろうとしてるだろ。ぜんぜん怖くねーよ」

狐娘「硬いことをいうな人間。数百年も壺に閉じ込められていたら風呂のひとつも入りたくなるものじゃ」

男(意味がわからん)

男「てか初対面のやつの家の風呂を使おうというその考えがすでにわかんねーよ」

狐娘「人間の考えなど知らん。そこにある風呂にわしが入りたい。それだけじゃ」

男「知るかよ。出てけ」

狐娘「・・・よいのか?そんな口をきいて?」

男「あん?」

狐娘「人間風情一人を殺すことくらいわしには造作もないんじゃ・・・わぶっ!?」バシャッ

男「んなもんしるか」

狐娘「き、貴様・・・!焼き殺してやるー!」

狐娘「地獄の業火で焼き尽くしてやる!死にさらせ!」

男「うぉっ!?」

狐娘「食らえ!」ポフッ

男「・・・・・・」

狐娘「・・・・・・食らえ!」ポフッ

男「・・・・・・」

狐娘「・・・・・・あ、あれ?」

男「・・・」

狐娘「・・・」

狐娘「・・・おい人間」

男「なんだよ」

狐娘「はよう髪を洗え」

男「何なかったことにしようとしてんだてめぇは!」グリグリグリグリ

狐娘「イダダダダダダ!?」

男「なにが「地獄の業火で」だ!さっさと出てけ!」

狐娘「ち、ちがう!今日はたまたまじゃ!数百年ぶりじゃから調子を取り戻せてないんじゃ!」

男「んなことしるか!」

狐娘「案ずるな!調子が戻ったらちゃんと殺してやる!」

男「そういう問題じゃねーだろうが!」グリグリグリグリ

狐娘「あだだだだだだだだだ!?」

狐娘「あ、あが・・・」ピクピク

男「ったく・・・あがったらさっさと出てけよ」

ガラガラガラピシャッ!

男「ほんとになんなんだよあいつは」

男(でも・・・さっき指先から火花が散ってたし・・・なんだったんだあれ)

男「・・・」

狐娘「いい風呂だったんじゃ」ビチャ

男「おいっ! 体拭いてから出てこいよ!」

狐娘「貴様が用意しとらんのが悪い」

男「やだこのチビっ子、傲岸不遜」

狐娘「男のくせにしなを作って気持ちの悪いヤツじゃのう・・・」

男「本当になんなんだよ、このクソガキは。ああもう、タオル!」



狐娘「クソガキ呼ばわりとは人間風情が大きく出たな。後で殺してやる」フキフキ

男「いちいち腹の立つ奴だな。背中拭けてないぞ」

狐娘「や、やかましいわっ」フキフキ



狐娘「おい人間、腹が減ったぞ。供物を捧げんか」

男「なに飯たかってんの」

狐娘「わしをあまり怒らせるでない」

男「それは俺の台詞だ。ったく、なんか食いもんあったかな」


男「ほれ、かりんとうでも食え」

狐娘「ほほう、甘味を出すとは口の割には敬虔で感心じゃ」

男「これ位で大げさだな」

狐娘「む、実はその貧相な顔立ちや奇妙な出で立ちに似合わず富豪なのか?」

男「はあ? まあ、昔は地方じゃ有力な家柄だったとか聞くけど、今は中流階級と言えるかも怪しいわ。おかげで貧乏学生やってるちゅうに」

狐娘「??」

カリッ

狐娘「甘味がうまいんじゃ!」ピコッ

男「聞き流したな・・・それはオメデタイこって」

狐娘「わしは甘いものに目がないからのう。ふふ、これに免じて先ほどまでの無礼は許してやろう」

男「・・・あっそう」

狐娘「わしは、気分がいい。おい貴様、名を名乗れ。覚えておいてやる」

男「偉そうだな、おい。『男』だよ」

狐娘「つまらん名前なんじゃ」

男「うるせえ、ほっとけ」

狐娘「わしのことは『妖艶なる美しき狐娘さま』と呼ぶがいい」

男「妖艶(笑)美しき(笑)」

狐娘「き、貴様! 愚弄しおって! 灰燼に帰すがいい!」

ポフッ

男「なに? ガスコンロに点火でもすんの?」

狐娘「ううっ、なんで出ないんじゃ・・・」

男「さっきから、何なのソレ?」

狐娘「狐火に決まっとるわ、アホか貴様」

男「お前には絶対言われたくねえぇ!」

狐娘「ところで、なんじゃその箱は、邪魔くさいのう」

男「箱じゃねえよ。テレビだ。臭いのはお前だ」

狐娘「臭くないわ! 風呂に入ったばかりじゃ!」

男「いや、ケモノ臭いぞ。臭え臭え」

狐娘「臭くないっ!」

男「あんまり口を開かないでもらえる。臭いんで」

狐娘「く、臭くなんてないんじゃ・・・」

男「鼻がひん曲がりそー」

狐娘「・・・・・・」

男(涙目かよ。ちょっとやり過ぎたか)

男「あー、このテレビなんだがな」ピッ

狐娘「なっ、鏡の向こうの女は誰なんじゃ!?」

男「だからテレビだって。爺ちゃん家のはもはや懐かしのブラウン管だ」

狐娘「結局、この女は誰じゃ! 髪の毛色といい蛮族か!?」

男「ば、蛮族・・・っ。やべっ、ツボった・・・」プルプル

狐娘「ほー、テレビというのは凄いのう。人間もやるではないか」

男「技術革新の賜物だな。いやあ、歴史の天才たちに感謝感謝」

狐娘「しかし、テレビとやらは現在の情勢を知るのに便利そうじゃ。この『りもこん』とやらで違うものが見れると」ポチ

男(・・・そういや、こいつ納屋の壺の中で体育座りしてたんだったな)

男(耳といい、尻尾といい、口振りといい、人間じゃないみたいだし、一体なんなんだ?)

狐娘「・・・なんじゃ、鉄の猪が大量に走っとる」

男「それ、自動車な。本当に何も知らないんだな」

狐娘「ふん、数百年封印されていたのだから仕方ないであろう」

男「無知をそんなドヤ顔で開き直るなよ・・・」

男(・・・数百年ね。ほんとかよ)

狐娘「最近の農家はやけに男前なんじゃ」

男「それはT◯KIOだから特別だ」

ネタがない
アイデアくれー

男「しかし、冷蔵庫に何も食うもんが無かったな。何か買ってくるか」

狐娘「何じゃ、こんな雨風なのに外に出るのか」

男「車で行くから大丈夫だろ。一応傘も持っていくし」

狐娘「そうなのか? それならば早うせい」

男「・・・連れてかないぞ?」

狐娘「な、なんじゃと!?」

男「むしろ、なんでついてくる前提なんだよ」

男(・・・いや、でも爺ちゃんも酒飲みに出かけたし、俺も出たら素性不明のこいつ一人か)

男(でも、何か買っておきたいしな)

男「・・・その耳と尻尾は隠せるのか?」

狐娘「それくらい造作もない」

男「・・・それなら良いか」




狐娘「・・・これは何じゃ?」

男「ビニール傘。ここを押すと」カチッ

ボンッ

狐娘「!!」

男「傘が開く、と。驚いたか?」

狐娘「わ、わしにも寄越せ!」

男「ほらよ。傘で遊ぶなよ」

ボンッ

狐娘「凄いんじゃ!」

男「はしゃぐな、はしゃぐな。危ないぞ」

狐娘「今の傘は頭に被らないんか。おお、透明だから傘の中から雨が見えるんじゃ」


狐娘「楽しいんじゃっ」

男「でも、風も強いから傘さしたまま歩いてると・・・」

ビュオオッ

狐娘「うわあっ!?」

フラッ

狐娘「・・・わぶっ」

男「言わんこっちゃない」


狐娘「さっき、『てれび』で見た鉄の猪じゃ・・・大きいのう」

男「だから自動車な。ほら、乗れ」ガチャ


狐娘「乗る・・・も、もしやこの鉄猪は駕籠なのか」

男「そういうこと。分かったら早くしろ」

狐娘「・・・こんな重そうなものを担ぐとは、人間もやるな」ヒョイ

男「いや担がねえよ、ってどうして草履を脱いだ」

狐娘「草履のまま駕籠にのるアホがどこにおるのじゃ」

男「靴を脱いで自動車にのるアホは目の前にいるがな。・・・まあ、いいや」ヒョイ

狐娘「わしの草履を放るな! どこまでも無礼なやつじゃ」

男「うっせ。ほら、さっさとシートベルトしろよ。雨降ってんだから、早く車に乗らせろ」


ブオオオオオッ

狐娘「は、はやすぎぬか・・・?」

男「いや、安全運転だろ。あまりぎゃーぎゃー騒ぐなよ。危ないから」

狐娘「・・・・・・」

男(こいつ、割と素直だな)



男「うーし、着いた」

狐娘「どこなんじゃ、ここは?」

男「スーパーだ。色んなものが売ってる」

狐娘「市場か」

男「あー、それで合ってる」

狐娘「ふむ、今ではこのような屋形の中で市場を開くのか」

男「ほら、入るぞ。はやく耳と尻尾を隠せ」

狐娘「もう隠しとる」

男「はあ?」

男(もしかして、俺以外には見えないみたいな感じか?)


「なにあれ・・・コスプレ?」
「キツネみたい、かわいー」

男「・・・隠れてねえじゃねえか!」グリグリグリグリグリ

狐娘「いだだだだだだだ!?」

男「ったく・・・。車に戻ってろ」

狐娘「いやじゃっ」

男「大人しく言うこときけ!」

狐娘「貴様の言葉になぞ従わないんじゃ!」

男「・・・・・・しょうがねぇな。さっさと買い物終わらせて帰るぞ」


狐娘「おいこれは何じゃ!」

男「あ? それは菓子パンだ。つうかあまり大声出すなうるせえ」

狐娘「これは美味いのか?」

男「・・・買わないぞ」

狐娘「買え!」

男「買わないって言ってんだろうが!」

店員「あのー・・・」

狐娘「買えーっ!」

男「これ以上騒ぐなら・・・」

狐娘「ひっ、まあアレをするのか!?」

店員(あ、アレ!?)

狐娘「痛いのはいやじゃぁ・・・もうアレはやめて欲しいんじゃぁ・・・」

店員(い、痛い!? 体格差!?)

男「そういう割には、やって欲しがってるようにすら見えるけどな」

店員(ほ、欲しがる!? ナニを!?)

狐娘「そんなわけなかろう! 乱暴者め!」

店員(乱暴!? あどけない少女にこんなコスプレをさせて無理やり!?)

店員「こ、この変態レイプ魔ーっ!」ベチン

男「ふげっ!」



狐娘「菓子パンじゃー! 菓子パンじゃー!」

男「・・・どうしてこんな酷い目に遭わなきゃいけないんだよ。必死に謝られても、もうあのスーパー行けねえよ」

狐娘「買い物は終わったのだから早く帰るんじゃ!」

男「もう言い返す気力もないわ、はあ・・・」

~祖父の家~

祖父「お帰り」

男「帰ってきてたか、ただいま」

祖父「納屋の方は片付いたか?」

男「粗方な。そしたら変なもんを見つけちまって」

狐娘「なんじゃ、しょぼくれたのがおるのう」

男「じいちゃんに何て口を利きやがる」

祖父「なんだ、彼女でもこさえてきたのか?」

男「そんなわけあるか!」

祖父「そういえば桃をたくさん貰ってきたぞ」ガサッ

男「うおっ、そんなに? 絶対食い切る前に傷むだろ」

狐娘「!! 寄越せ!」ピョン

男「ほんと行儀の悪い奴だな・・・」

狐娘「むしゃむしゃ・・・!!」

男「どんだけ食うんだこいつは。頬っぺたがハムスターみたいだぞ」

祖父「皮も剥かずに・・・なかなか豪気だな」

狐娘「けふっ・・・ふふふ、これで・・・!」

ブオオッ

男「うおっ!?」

祖父「おお」

狐娘「ふふふ、万全ではないにせよ、これがわしの力じゃ!」

男(『地獄の業火』っていうのもあながち嘘じゃなかったのか?)

狐娘「ふふふ、人間よ。わしの言葉を覚えとるか?」

男「・・・菓子パン?」

狐娘「違う! 『調子が戻ったらちゃんと殺してやる!』じゃ!」

男「そんなこと言ったか?」

狐娘「言ったわ!」

男「いつどこで何時何分何秒地球が何回周ったときだよ?」

狐娘「な・・・ふ、ふんっ、そんな言葉に踊らされんぞ!」

男(・・・もしかして、ほんとにヤバい?)

狐娘「せめて一思いに殺してやる!」

男「うぅっ・・・!」


ギュルルルルッ


狐娘「はうっ・・・!」

男「・・・ん、青白い火が消えた?」

祖父「おや、この桃、すでに少し傷んでるな」

狐娘「た、謀りおって・・・」プルプル

男「完全に自滅じゃねえか。アホ」

狐娘「厠・・・厠はどこじゃ?」

男「さあ?」ニヤッ

狐娘「貴様・・・はやく言わんと・・・タダでは・・・」

ギュルルルルルルルルッ

狐娘「はうぅぅん・・・」ビクビク

男「・・・まあ、ここで撒き散らされても困るし、ついてこい。使い方も教えてやるから」




祖父「・・・納屋の壺から出てきたとは不思議な話だな」

男「びっくりしたわ。あいつは一体何なんだ?」

祖父「・・・さあ?」

男「分かんないのか?」

祖父「物の怪の類じゃないか?」

男「いや、それは何となく分かるけど・・・」

祖父「壺か。そういえば小さい頃、曾祖父さんに話を聞いたことがあるような・・・」

男「じいちゃんの、曾じいちゃんって・・・江戸時代終わりくらいの生まれか。やべえな」

祖父「そうだな。何でも、家には呪われた壺が伝わっていて、蓋をあけると災いが降りかかるとか言ってたな」

男「・・・パンドラの箱かよ」

祖父「箱でなく壺だな。多分、呪われた壺を開けたんだろう」

男「災い・・・そういえば、いきなり女の店員にビンタされたな」

祖父「それはうちの血筋だな」

男「嫌だよ、そんな血筋。女にビンタされる血筋ってなんだよ」



祖父「ふーむ、しかし、どうしたものか」

男「・・・もう一回、壺に詰め直すか」

祖父「札が貼っていたんだろう?」

男「ああ、納屋の戸に貼ってあったはずだから、取ってくる」



男「あれ、ない? 剥がれたのか?」

キョロキョロ

男「うわっ、雨でぐしょぐしょになってボロボロだ・・・」



男「あ、これ詰んだ?」


狐娘「ひどい目に合ったんじゃ・・・」

男「・・・・・・」

狐娘「人間、何を落ち込んとるんじゃ」

男「別に・・・」

狐娘「あの桃は傷んどるから捨て置け」

男「もう捨てた。腹下した後は水飲んどけ。脱水気味になるから」

狐娘「ふむ、井戸から汲んで持ってこい」

男「偉そうだな、おい。井戸なんて俺が生まれる前から使ってないらしいけどな」

狐娘「なに? それなら水はどこから取ってくるんじゃ?」

男「上水道だよ。ちょっと待ってろ」



狐娘「ごくごくっ・・・ぷはっ」

男「中年のサラリーマンかよ」

狐娘「人間、わしは腹が減ったぞ」

男「飯をたかるな、厚かましい」

祖父「男、夕ご飯はまだか?」

男「今作るよ。しょうが焼きでいいよな」

祖父「ああ。早くあいつが帰ってきてくれないと困るな」

男「ばあちゃん、婦人の会の旅行だっけ」

祖父「ああ。明日帰ってくる。昼間から酒を飲めるのも今日で終わりだ・・・」

男「ああ、そう・・・」

狐娘「うだうだせんで早うせんか!」

男「厚かましい上にやかましい!」グリグリグリグリグリ

狐娘「うがががががが!?」




男「ほら、出来たぞ」

狐娘「遅いんじゃ」

男「文句言うなら食うな」

祖父「すまんな」

男「別にいいよ。一人暮らしで慣れてるし」

狐娘「な、今時の人間は肉を食うのか!? それとも、下賤な身分なのか!?」

男「今の日本人は肉を食うんだよ」

狐娘「・・・しかも銀シャリを当然のように食うとは、ここは江戸か?」

男「いやいや、そんななわけないだろ。過疎地域だよ。ど田舎」

狐娘「田舎でこの食事とは・・・時代は変わったんじゃな」

祖父「最近は時の流れが早い。いつの間にか、ぽけべる、すーふぁみ・・・新しいモノばかりだ」

男「古い! じいちゃん、それもう俺が物心ついた時にはだいぶ下火だったから! というか、じいちゃんスマホもってるだろ!」




男「ほら、出来たぞ」

狐娘「遅いんじゃ」

男「文句言うなら食わせねえ」

祖父「すまんな」

男「別にいいよ。一人暮らしで慣れてるし」

狐娘「な、今時の人間は肉を食うのか!? それとも、下賤な身分なのか!?」

男「今の日本人は肉を食うんだよ」

狐娘「・・・しかも銀シャリを当然のように食うとは、ここは江戸か?」

男「いやいや、そんななわけないだろ。過疎地域だよ。ど田舎」

狐娘「田舎でこの食事とは・・・時代は変わったんじゃな」

祖父「最近は時の流れが早い。いつの間にか、ぽけべる、すーふぁみ・・・新しいモノばかりだ」

男「古い! じいちゃん、それもう俺が物心ついた時にはだいぶ下火だったから! というか、じいちゃんスマホもってるだろ!」


祖父「LINEのクリエイティブスタンプ作ったから購入してくれ」

男「すげえな!?」

狐娘「はぐはぐ・・・悪くないのう」


男「・・・で、お前、これからどうすんの?」

狐娘「ふむ、行く宛もないからのう。不本意だが貴様の世話になってやる」

男「いや、ねえよ」

祖父「いや、ある」

男「はあっ!?」

祖父「我が家で代々封印してきたんだ。それを解いた以上、お前が責任を負わなければな」

男「・・・そ、そうかもしれねえけど、元はじいちゃんが納屋掃除を頼んだのが原因だろ」


祖父「年寄りに責任を負わせるなんて最近の若者は・・・」

狐娘「なっとらんのう」

男「なに、共感し合ってるんだよ! ふざけんな! こちとら貧乏学生なんだよ!」

祖父「・・・しょうがないな。引き取るならば個人的に仕送りをしてやる」

男「まじで!?」

祖父「マジマジ。ただ、こちとら年金生活だからな。あまり多くは期待するな」

男「・・・取引といこうか」

祖父「・・・経済学部に入ってから強かになったな」

男「当たり前だ。ナッシュ均衡を目指そうじゃないか」

狐娘「よく分からんが悪い顔なんじゃ」




祖父「くっ、老人からそれだけ取り立てるなんて鬼か!?」

男「じいちゃん、貧乏は人を鬼にするんだぜ」

祖父「それなりに仕送りはもらってるんだろう・・・?」

男「金は送ってもらってないよ。奨学金貧乏だっての」

祖父「バイトしたら良いじゃないか」

男「少しはしてるよ。でもバイトばかりしたくないんだよ」

祖父「ううむ・・・まあ、可愛い孫だからな、しょうがない」

男「さすがじいちゃん」

狐娘「?? 貴様の家はここだろう?」

男「ここはじいちゃんの家で俺の家じゃないんだよ」

狐娘「そうなのか?」

ぶっちゃけ乗っ取りだから何も考えてないんだ
みんなのレスが、このssを作る!! ということで、協力してねー

男「俺の住んでるところはボロいぞ。格安のわりにそこそこ広いけどな」

狐娘「ふん、壺の中に比べればほとんどの場所が、桃源郷なんじゃ」

男「・・・・・・そもそも、どうして壺に封印されてたんだよ」

祖父「気になるな」

狐娘「ふふふ、何と・・・」

男「・・・」

狐娘「忘れてしもうたわ!」

男「あっ、そう」

狐娘「なんじゃ、その返事は。こういうのは面白い素振りを返すものじゃ」

男「お笑い芸人じゃあるまいし・・・想定内だしな」

狐娘「・・・最初は腹を立てていた気がするが、後はいつ出られるか考えていたからのう」

祖父「それは辛かったな」

狐娘「別に数百年くらいなら辛くないが退屈で窮屈だったんじゃ」


男「・・・物の怪と人間は違うんだな」

狐娘「誰が物の怪じゃ。貴様こそ妖怪『頭グリグリ』じゃ」

男「お前、後でグリグリするからな」

狐娘「せ、折檻はやめるんじゃ!」



男「後片付けよし、全員の布団よし、明日の炊飯のセットもよし。風呂も入った。頭グリグリもした」

狐娘「うう、人間のくせに生意気な・・・」

男「うるせえ。・・・さて、もう寝る以外することはないな」

狐娘「しかし、奇妙な寝間着じゃ」

男「俺のお古のジャージだ。ダボついてるが着物よりいいだろ」

狐娘「着心地が悪いんじゃ・・・」

男「肌に直接着てるからだろ」

男(下着も買ってやらないとダメか。つうか、ほんとに俺が面倒みるのかよ・・・)


狐娘「しかし、電気とやらはすごいの。夜でもこんなに明るいとは」

男「文明の発達の成果だよ」

狐娘「ううむ、娑婆も大きく変わっとるようだし、はやく馴染まねば」

男「耳と尻尾がそのままのうちは絶対馴染めねえよ」

狐娘「これは調子を取り戻せば何とでもなる。こんな貧相な身体も時期にな」

男「なんだ、昔はチビッ子じゃなかったのか?」

狐娘「当たり前じゃ。物言う花、美人、佳人、傾城なぞ言われ過ぎて慣れてしもうた」

男「ふーん」

狐娘「ぼんっ、きゅっ、ぼんっ! だったんじゃ!」

男「あっ、そう」

狐娘「本当じゃぞ!?」

男「だとしても、今はチビじゃねえか」

狐娘「うぐぐ、そ、それならば見せてやる!」ペカ-

男「おお?」


狐娘「しかし、電気とやらはすごいの。夜でもこんなに明るいとは」

男「文明の発達の成果だよ。特にここ二百年くらいは凄まじいというからな」

狐娘「ううむ、娑婆も大きく変わっとるようだし、はやく馴染まねば」

男「耳と尻尾がそのままのうちは絶対馴染めねえよ」

狐娘「これは調子を取り戻せば何とでもなる。こんな貧相な身体も時期にな」

男「なんだ、昔はチビッ子じゃなかったのか?」

狐娘「当たり前じゃ。物言う花、美人、佳人、傾城なぞ言われ過ぎて慣れてしもうた」

男「ふーん」

狐娘「ぼんっ、きゅっ、ぼんっ! だったんじゃ!」

男「あっ、そう」

狐娘「本当じゃぞ!?」

男「だとしても、今はチビじゃねえか」

狐娘「うぐぐ、そ、それならば見せてやる!」ペカ-

男「おおっ?」


ボンッ‼︎

狐娘「きゅっ、ぼん!」

男「・・・」

狐娘「見よ、ないすばでーなんじゃ!」タユン

男「・・・いや、胸だけ大きくなってもバランスが悪いぞ。つうか、『キュッ、ボン』のところ口で言ってたし」

狐娘「うるさいんじゃ! 今は力を取り戻せていないだけじゃ!」タユン

男「・・・何にせよ、もう少し背が大きくなってからにしとけ。子どもが冗談で胸に詰め物してるようにしか見えないし」

狐娘「世の中にはこういうのが良いという者もいるじゃろう」

男「知らんがな」

狐娘「うーむ・・・あ」

男「あん?」

狐娘「元に戻らん」

男「・・・・・・」


狐娘「・・・まあ明日には戻っとるはずじゃ」

男「はあっ・・・そんじゃしっかり寝ろよ」

狐娘「なんじゃ、寝るのか?」

男「寝ないけど、いつまでもここにいても仕様がないだろ。じいちゃんも寝室に引っ込んじまったしな」

狐娘「もう少し、話をしようでないか。ずっと話し相手もおらんかったしな」

男「・・・何を話すんだよ?」

狐娘「貴様の色恋話でも聞かせい」

男「何もない」

狐娘「ぶっ、その年で色恋の経験が一つもないのか。それでよくわしに不遜な態度が取れたものじゃ」

男「不遜なのはお前だ」

狐娘「ふふふ、小童め」

男「・・・」イラッ

狐娘「今後はわしに対して恭しくするんじゃ」

男「するか、アホガキ。大体、お前はどうなんだよ」

狐娘「もちろん、経験豊富じゃ!」

男「ほーん。例えば?」

狐娘「そ、それは・・・ほら、あれじゃ!」

男「あれ? ・・・他の狐とか?」

狐娘「あんな畜生と恋愛なぞできるか!」

男「じゃあ、人間との恋愛か?」

狐娘「人間と恋なんてあり得ん!」

男「じゃあ人外どうし?」

狐娘「ロクな奴に遭ったことないわ!」

男「じゃあ、誰とだよ?」

狐娘「そ、それは・・・」

男「・・・なんだ、初心じゃねえか」

狐娘「やかましい!」ドゴオッ

男「ぐふっ!?」

狐娘「気分が悪い! わしはもう寝る!」タユン

~翌日~

狐娘「ふふふ、あぶらーげ、あぶらーげじゃ・・・もっと捧げい」ムニャムニャ

男「まだ寝てんのか」

狐娘「ぐふふふ・・・」フリフリ

男(・・・尻尾)キュッ

狐娘「はうあっ!?」ガバッ

男「起きたか」

狐娘「き、貴様っ! 夜這いか!?」

男「ちげえよ! もう朝だから起こしに来たんだよ!」

狐娘「ならば朝這い?」

男「だからちげえ! そもそもそんな日本語はない!」

狐娘「まったく、下等な人間の分際で」

男「お前、飯と寝床を提供してもらって、その言い種かよ。そんなんだから封印されたんじゃねえの?」

狐娘「うるさいっ! 誇り高いわしが人間に媚へつらうとでも思っとるのか?」

男「・・・」イラァ

男「・・・・・・決めた」


男(・・・絶対に、こいつの鼻っ柱を折ってやる!)



狐娘「なんじゃ、この程度で機嫌を悪くしたのか」

男「いや、そんなことない。朝飯ができてるぞ」ニコッ

狐娘「な、なんじゃ急に・・・」




祖父「男、朝飯ありがとう」

男「ばあちゃんにもちゃんと言ってやれよ」

祖父「言っとるわ」

男「仲がいいこった。今日、帰ってくるんだろ」

祖父「うむ・・・きっと旅行の後はアイツの相手が面倒だ」

男「土産話を長々とされるとかか?」

祖父「そうだな・・・。あと、長いこと抱き着かれたりする」

男「・・・昔から仲がいいよな」

祖父「心は少女のころから変わってないからな。昔と違って料理に髪の毛とか月の物なぞは入れなくなったか・・・」

男「何だって?」

祖父「心は少女の頃か

男「そこじゃなくて、その後」

祖父「昔と違って料理に髪の毛とか月の物を入れなくなった」

男「・・・なに、ばあちゃんそんなことしてたの?」

祖父「してた。今でもご近所のタエさんなぞと話していると機嫌が悪くなる」

男「・・・マジ?」

祖父「真剣とかいてマジと読む」

男「・・・聞きたくなかった」

祖父「言ったろう。うちの血筋は女難に見舞われると。まあ、頑張れば幸せになれる」

男「・・・それだと、父ちゃんと母ちゃんも? 出来ちゃった婚とは聞いてたけど・・・」

祖父「お前の母親は出来た嫁だ。・・・ただ息子が言っとったが、地下室で、手錠で拘束されたまま何度も無理やりやられたらしい」

男「」

祖父「あの当時は虚ろな目をしていたが、今となっては幸せそうで何よりだ」

男「おえええ・・・!」

祖父「こうして良く出来た息子もいるしな」


男「最後にフォロー入れても手遅れだよ! 感動ゼロだよ!」

祖父「出来ちゃった婚で良く出来た息子って我ながら面白くないか?」

男「うるせえ! クソジジイ!」

狐娘「祖父に対して何て口を利くんじゃ」

祖父「ほんとにな」

男「だああああああああああ!!」

何も考えずに書くといつもこんな感じになるな・・・
あと、こういうssってどこで終わらすか悩む

これはえんえんと読んでいたいレヴェル。
ロリ巨ょうじょはアレ岸某さんの隠れでイメージした。。
ごちうささまです。m(__)m
期待!
ネタとしてはあやかしがあやかしを呼ぶ展開も楽しそうだし、男の生活圏内の♂♀諸人との日々も良いやも。
楽しみにしております。(^-^)ノシ

祖父「いつまでこっちにいるつもりなんだ?」

男「今日までかな。ばあちゃんに顔見せたら帰ろうと思ってた」

祖父「そうか・・・もっと泊まっていってもいいんだぞ」

男「色々、あっちで用事もあるしな」

狐娘「人間、今日はどこに行くんじゃ?」

男「出掛ける用事もないから、どこにも行かねえよ」

狐娘「なんじゃと!?」

男「テレビでも見て、現代のことでも知っとけ」

狐娘「わしは出歩きたいんじゃ!」

男「はあ・・・そういえば、下着を買う予定だったな」

狐娘「新しい着物の献上か。くるしゅうないぞ」

男「着物じゃねえよ、洋服だ」


狐娘「洋服・・・どれ、早う行くぞ」

男「その耳と尻尾があるうちは連れ歩けねえよ・・・」

狐娘「ならば、あぶらーげを持って参れ」

男「油揚げ? なんで?」

狐娘「いいから早うせんか」

男「・・・ったく、人遣いの荒い奴」



狐娘「はぐはぐ・・・うまうま・・・」パタパタ

祖父「美味そうに食べるな」

男「犬みたいに尻尾を振ってやがる。単純な奴め」


狐娘「・・・うむ、まあまあじゃ」ケプッ

男「どの口が言うんだ、こら」グニグニ

狐娘「ふにゃぁ! にゃへろー!」


男「・・・それで、油揚げを食べたのにはどんな理由があるんだ」

狐娘「決まっとるだろう。はっ!」ペカ-

男「うおっ」

祖父「耳と尻尾が消えたな・・・」

狐娘「これならば、人の世を忍ぶことも容易じゃ」

男「・・・まあ、和服なのも目立つが、それくらいなら問題ないか」



~服屋~

男「ここでいいか」

狐娘「おお・・・大きいのう」

男「そうでもねえよ。もっと都会に行けばこれ以上の大規模店がそこかしこにあるぞ」

狐娘「ううむ・・・」

男「さっさと入るぞ」

狐娘「う、うむ」


男「・・・子ども服売り場に来たのはいいが、やけに大人っぽいのばかりだな」

狐娘「ほわあ・・・煌びやかなんじゃ」キラキラ

男「・・・なんか欲しいのあるか?」

狐娘「うーむ・・・これはいいのう!」スチャ

男「・・・それはやめとけ。お前には似合わない」

狐娘「む・・・」

店員「お探しですか?」ズイッ

狐娘「ぬぁ!?」

男(こんな和服着てる変わり者にも接客に来るとは・・・)

店員「わあ、可愛い! 妹さんですか?」

男「ああ、まあ、そんな感じです」

狐娘「誰が妹じゃ! わしは・・・」

男「話合わせろ、面倒くさいから」ボソッ

店員「やーん、素敵な着物」

男「ははは、こいつがねだるから、祖母のものを着させてもらったんですよ」

狐娘「何を・・・もがもが」

男「少し黙ってろって。後で甘いもの買ってやるから」ボソボソ

狐娘「・・・・・・」ムスッ

店員「どうしました?」

男「いやあ、こいつはすぐ憎まれ口を聞くので・・・気にしないでください」

狐娘「・・・・・・」ジロッ

男「服を少しと下着を買おうと思ってるんですよね」

店員「お嬢さんは、大人びてるし、すごい綺麗な顔立ちなので、うちの服はとても似合うと思いますよお」

男「はあ・・・」

店員「このホワイトの丸襟のトップスと、カーキのチュールスカートを合わせると、綺麗目でコンサバなフェミニン感が出ていいと思いますっ」

男「はあ・・・」

狐娘「なんじゃ、何語を喋ってるんじゃ? お国言葉か?」

男「・・・それに近いかもしれない」

店員「試着してみてください・・・っと、着物だと簡単に脱ぎ着できませんね」

男「あ、確かに」

店員「サイズ的には、これでもぴったりとは思うんですけど・・・」ジィッ

狐娘「ええい、じろじろ見るな」

男「す、すいません。口が悪くて」

店員「いえー、とっても可愛いらしいですよ! あ、こっちのGジャンに、ボーダーシャツと、この甘ガーリーなスカートで、かっちりしながらも崩しが・・・・・・」ペチャクチャ

男「は、はあ・・・」

店員「あっ、草履なんですね! 靴もお求めならこのオクスフォードシューズが、コーデも広くて、あっでもこっちの編み上げブーツも絶対に似合う~、こっちのパンプスも・・・・・・」ペチャクチャ

狐娘「・・・・・・」ゲンナリ


店員「ありがとうございました~!」


男「すげえ、押しの強い接客だった・・・」

狐娘「疲れたんじゃ・・・」

男「まあ、服の一つ一つはそんなに高くなかったし、じいちゃんがくれた金で間に合ってよかった」

狐娘「おい人間、早う甘いものを寄越せ。わしを労われ」

男「お前のためのものを買ったんだけどな!」

狐娘「疲れたものは疲れたんじゃ」

男「ったく・・・」

狐娘「・・・おい、あれはなんじゃ? 魚みたいなものが売っておる」

男「ああ、たい焼きか」

狐娘「甘い匂いがするが美味いのか?」

男「ああ。食うか?」

狐娘「うむ、買って参れ」

男「ほんと偉そうな奴・・・お前も来い」グィッ

狐娘「きゅ、急に引っ張るなっ」


男「たい焼き二つください」

おっちゃん「はい、毎度。おう、可愛い嬢ちゃんだな。一つサービスな!」

男「いいんですか? ありがとうございます」

狐娘「三つも食べられるかのう・・・」

男「一つは俺の分という発想はないのかよ」

狐娘「はぐはぐ・・・」

狐娘「!」

狐娘「うまいんじゃっ」

狐娘「皮はさくっとしていて香ばしく、熱々の粒あんを噛むたびに控えめな優しい甘さが口に広がって素晴らしいんじゃ!」

男「グルメリポーターかよ・・・。うん、クリームも美味い」

狐娘「くりぃむ? ・・・別の味なんてずるいんじゃ!」

男「食ってみるか?」ヒョイ

狐娘「うむ」パクッ

狐娘「!」

男「美味いか?」

狐娘「トロトロで甘々なんじゃ! はあ、ええのう・・・」ニヘラ

男「締まりが無い顔してるぞ」

男(俺の食いかけだから嫌がると思ったが・・・いや、夢中で気付いてないのか)

狐娘「もう一個は何味なんじゃ?」

男「あー、チョコだったんじゃないか」

狐娘「ちょこ?」

男「今の甘いものの一番人気」

狐娘「ほう・・・どれ」

男「まず、あんこを食い切れよ」

狐娘「甘味は残さんから心配するな!」

男「ああ、そう・・・」

狐娘「あむっ・・・」

狐娘「!!」

男「いい反応するなー」

狐娘「濃厚な甘さの中にほんのりとした苦味・・・しかし、不快さはなく、むしろ甘さを引き立てておる。しかも、この鼻に抜けるさりげなくも爽やかな香り」ポロポロ

男「泣くのかよ」

狐娘「ひっぐ、なんて素晴らしいんじゃ・・・」

男「良かったな」

「ちっちゃい子を泣かせてる・・・」
「酷いお兄さんね・・・」

男「・・・おーい、泣き止め。あらぬ誤解を受けてる。ティッシュやるから」

ドロンッ

男「うわ、尻尾と耳が!? はやく車に戻るぞ!」


狐娘「年を取ると涙脆くなって仕方ないのう」

男「チビッ子が泣いているようにしか見えなかったが・・・」

狐娘「貴様は本当に嫌なやつじゃ」

男「へいへい」

狐娘「この後はどうするんじゃ?」

男「家に帰って昼飯を食う」

狐娘「わしは昼餉はいらんぞ。たい焼きで満足じゃ」

男「そうか、きつねうどんにしようと思ってたんだがな」

狐娘「なっ・・・おのれ汚いやつめ!」

男「何がだよ」

狐娘「うう・・・お腹がいっぱいなんじゃ。でもきつねうどん・・・くうう」

男「・・・まあ、きつねうどんは夕食でもいいか」

狐娘「! う、うむ、それがいいのう! いや、別にわしが食べたいとかそういうのではなく・・・」パタパタ

男「天邪鬼め」

~祖父の家~

男「じいちゃんがいないな」

狐娘「書き置きがあるぞ」

男「なに?」

祖母『お祖父さんと少し出掛けてきます』

男「ばあちゃん、帰ってきてたのか。あ、じいちゃんからとLINEが着てる」

祖父『祖母さんに誘拐された(>△<Uu 助けて(ρ_;)・・・ぐすん』

男「変なスタンプまで押してるし・・・これが自作のやつかな」

男「・・・」ポチポチ

男『強く生きて。あと鍵はかけといた方がいいよ』

男「適当に昼飯を食うか」

狐娘「今日はちと暑いのう・・・」

男「それなら扇風機を使えよ」

狐娘「せんぷーき?」

男「これ」カチッ

ブウウウウウッ

狐娘「おお、涼しいのう。凄いのう」

男「じいちゃん家はエアコンがないから扇風機だのみなんだよなぁ」

ブウウウウウッ

狐娘「・・・・・・」ツイィ-

ブウウウウウッ

狐娘「・・・・・・」ツイィ-

男「・・・扇風機の首振りに合わせて動くのはやめろ。俺に風がこないだろうが」グイィッ

狐娘「うぐぐ・・・」グググ…



ブウウウウウッ

狐娘「あー」←ビブラート

狐娘「!」

狐娘「あー、あー」

男「・・・やることが、まんま子どもだな」

狐娘「にーんげーん、くーたーばーれー」

男「やかましい!」グリグリグリグリ

狐娘「あだだだだだだ!?」



TV「犯人はあなただったんですね・・・」

狐娘「・・・」パリパリ

TV「あの時から復讐を誓ったの・・・」

男「ぐう・・・」

TV「でも、まだ間に合う! あの子のためにも罪を償ってください・・・」

狐娘「・・・」ズズ…

TV「刑事さん・・・うう・・・」

狐娘「おい、人間。お茶のおかわりを寄越せ」

男「ぐう・・・」

狐娘「おい、人間」ユサユサ

男「・・・」

狐娘「おーい」ユサユサ

男「・・・」

狐娘「男、男」ユサユサ

男「・・・ううん?」

狐娘「やっと起きたか人間。さっさとお茶のおかわりを淹れい」

男「・・・へいへい」

男(狸寝入りするつもりだったのに、名前を呼ばれたから起きちまった)

狐娘「陽射しも和らいできたし、外に出るぞ。散歩じゃ」

男「めんどくさい」

狐娘「良いから行くぞ」

男「はあ・・・それなら尻尾と耳を隠せ。あと着替えも買ったんだから着替えろ」

狐娘「文句の多いやつじゃ」ペカ-

男「わがまま狐が何言ってんだ」

狐娘「・・・少し待っていろ」

男「下着も着けろよ」


狐娘「これで問題ないか?」

男「・・・別人みたいだな」

狐娘「動きやすいのう。ただうなじの辺りがチクチクするんじゃ」

男「あ、値札とってないだろ」

狐娘「??」

男「動くなよ、ハサミで切るから」チョキ

狐娘「・・・」

男(こいつ、いい匂いするな。髪の毛が長いからか?)

狐娘「早うせんか」

男「偉そうにしやがって」



狐娘「これはどう履くのじゃ」

男「靴下は履いたな・・・足を中に突っ込め」

狐娘「うむ」

男「あとは、紐で縛るだけだが、最初だからやってやる」

狐娘「苦しゅうない」

男「次からは自分でやるんだから覚えろよ」

狐娘「面倒なんじゃ・・・」


男(・・・足、白すぎだろ。狐のくせに毛の一つも生えてない)

狐娘「・・・なに、わしの足をじろじろ見とるんじゃ、変態め」

男「・・・体毛がびっしりで驚いたんだよ」

狐娘「そ、そんなわけないじゃろう!」

男(とか言いつつ、確認するんだな)

狐娘「生えとらんだろう! 嘘をつきおって! 貴様は最低の男じゃ!」

男「へいへい」

狐娘「そんなんだから、その年まで色の一つも覚えられないんじゃ!」

男「ほっとけ!」

男(実際、おかしいな俺。チビッ子は対象外なのにな)

だれてエタるからあまり長くしたくないよー
余計な設定のかわりに新キャラをぶっこむのはアリかね?

狐娘「うーむ、草鞋とは勝手が違うの・・・」

男「挫かないように気をつけろよ」

狐娘「分かっとるわ」

男「この辺りは何もないな」

狐娘「確かに昔の頃の景色と大差ないのう」

男「昔もこの辺りにいたのか?」

狐娘「具体的な場所は覚えとらんが」

男「ふうん。自分が過ごした場所が分からないのは、寂しいように思えるが」

狐娘「そうなのか?」

男「そんな気がするだけだ」

狐娘「そのようなことはないぞ」

男「・・・それなら俺の気のせいだ」



狐娘「ん、あの店はなんじゃ?」

男「・・・あの駄菓子屋まだあったんだ」

狐娘「駄菓子・・・金平糖やら、昨日のかりんとうやらじゃな」

男「ああいうのって駄菓子なんだ? 初めて知った」

狐娘「ふふ、伊達に長く生きとらんぞ」

男「長く生きたことの自慢が駄菓子でいいのかよ」

狐娘「・・・いちいち鼻につくやつじゃのう!」

男「冗談だよ」



狐娘「色々とあるのう」

男「うお、ビッグカツだ。ガブリチュウに、よっちゃんイカ・・・懐かしいなあ」

狐娘「ふむ、キャベツ太郎とな?」

男「駄菓子はやっぱり安いな。中学生くらいまでは友だちと一緒によく買った」

狐娘「安いのか?」

男「かなりな。子どもの味方だ」

狐娘「それならたくさん買ってもいいんじゃなっ」

男「・・・夕飯のことも覚えとけよ」

狐娘「むむ、それならこの薄っぺらいものと、じゃが、やはり甘いのも少し欲しいし・・・」

男「・・・・・・」

狐娘「む、チョコバット? ・・・あのチョコか!? むむむ・・・」

男「やっぱり子どもだよなあ・・・」



~祖父の家~

狐娘「ちゅるちゅる・・・はあ、やはりきつねうどんは美味いのう。力も漲るんじゃ」

男「・・・お前、今日食ってばかりだな」

狐娘「そ、そんなことはないぞ! テレビも見たんじゃ!」

男「生産性の欠片もねえな」

狐娘「あと寝たりしたんじゃ」

男「それだけ聞くとニート以外の何者でもねえな・・・」

狐娘「にーと?」

男「ある種の擬似特権階級だ」

狐娘「それならば、わしはにーとじゃ!」

男「現代において威張れる身分ではない。俺の家に来るなら家事くらいやってくれよ」

狐娘「断る!」

男「・・・」イラッ


男(もう一回封印してえ)




男「浴槽につかれるって本当にいいなあ。一人暮らしだと基本シャワーしか浴びないし、人の家の風呂最高だわ」ホカホカ

祖父「それは良かったな・・・」

男「・・・爺ちゃん、やつれた?」

祖父「いやなに、バアさんに振り回されるのも久しぶりだったからな」

男「ああ、そう・・・」

祖父「本当に明日帰るのか?」

男「帰るよ。もう荷造りも終わった」

祖父「そうか・・・バアさんとの緩衝材になってもらおうと思ったんだが・・・」

男「絶対やだね」

祖父「くっ」

男「ばあちゃんと仲良くね」

祖父「・・・ああ」



狐娘「おい人間、わしの艶やかな髪を梳かせてやろう」

男「結構です」

狐娘「む、遠慮するでない」

男「遠慮じゃないから」

狐娘「わしの美しき髪は世の宝じゃぞ!? どれだけの男がわしの髪に惚れ込んだと思っとるんじゃ」

男「知らねえよ」

狐娘「良いから梳くのじゃ!」

男「全く・・・それが人にものを頼む態度かよ」

狐娘「ぐちぐちうるさいんじゃ」

男「・・・」イライラ

男(こんにゃろう・・・後で泣かしてやる)

スッ...スッ…

狐娘「もう少し丁寧にせんか」

男「へいへい」


男(・・・認めるのは癪だが、実際、綺麗な髪の毛だよな。自惚れるのも少し納得だ)

狐娘「ふわあ、眠いのう・・・」

男(ただ、その髪の持ち主がこいつじゃなあ。もっと心優しい可愛げのある女性の方が似合うだろ)

狐娘「・・・失礼なことを考えているな?」

男「ん?」

狐娘「髪と櫛には特別な力があるんじゃ。貴様の考えも朧気ながら分かるんじゃ」

男「・・・最初に言えよ」

狐娘「ふん、貴様を試したんじゃ。貴様がどのような人間か知るためにな」

男「・・・とか言いながら本当に誰かに梳かして貰いたかっただけじゃないのか?」

狐娘「そ、そんなことないぞ?」

男「泳いでる、目が泳いでるぞ」

狐娘「ふん、まあ、貴様が本当に悪しき心の持ち主でないのは伝わった」

男「お前・・・あんだけ人からたかっといて、まだ信用してなかったのかよ」

狐娘「ふふ、女はみな女狐なんじゃ」

男「やかましいわ」

今日はこれだけなんだ、短くてすまぬ
平日に酒飲みとか勘弁して欲しいわ

~翌日~

ガタンゴトンガタンゴトンッ

狐娘「おお、巨大な鉄の蛇じゃ!」

男「電車だよ」

キイイイイッ‼︎

狐娘「ええい、うるさいのう!」

男「我慢しろ。道のりは長いぞ」

狐娘「なんじゃと?」

男「電車から新幹線に乗り換え、また電車だ。家に着くまでに四時間以上かかるぞ」

狐娘「うええ・・・」

男「尻尾と耳は隠し通せるか?」

狐娘「あぶらーげを食べたから問題ないんじゃ」

男「ほんと素敵体質だな」



狐娘「しかし、人間も神通力が使えるようになったのか?」

男「はあ?」

狐娘「このような電車とかいう巨大な乗り物や、テレビ、貴様のもっているその箱も、神通力としか思えないんじゃ」

男「あー、『成熟した科学は魔法と見分けがつかない』みたいなこと言うもんな。俺も最初にスマホを知った時は凄いと思ったしな」

狐娘「・・・しかも、城のような高い建物もたくさん建っているではないか。こんなにも大名が増えたのか?」

男「くっ・・・ビルに大名が住んでるって・・・」プルプル

狐娘「何笑っとるんじゃ!」

男「悪い悪い、ツボっちまった」フゥ

狐娘「何なんじゃ、まったく・・・」

男「まあ、現代社会については追い追い教えてやるよ」


男「よし、新幹線に乗り換えだ」

狐娘「しんかんせん? 電車とは違うのか?」

男「新幹線は電車よりもずっと速いぞ。青春18切符鈍行列車の旅をした後に乗ると感動する」

狐娘「??」

男「こっちの話だ」


狐娘「弁当が売っとるぞ!」

男「駅弁か」

狐娘「買え!」

男「買わない」

狐娘「買えー、買えー」ググ…

男「服を引っ張るな」

狐娘「美味しそうなんじゃー、食べたいんじゃー」

男「・・・」

狐娘「うーうー」



ブオオオオッ

狐娘「本当に速いの」パクパク

男「くっ・・・俺も甘いな」

狐娘「美味いんじゃっ」ニカッ

男「・・・へいへい。本当に美味そうに食うよな」

狐娘「・・・やらんぞ?」

男「俺は後でもっと美味いものを食うからいい」ニヤ

狐娘「な、なんじゃと!?」

男「・・・冗談だよ。他の客もいるんだから大声出すな」

狐娘「意地の悪いやつめ」

男「お前の食い意地には敵わないと思う」


新幹線パーサー「お弁当、飲み物はいかがですか」

狐娘「む、売り子か。チョコはあるのか」



新幹線パーサー「ありますよ」

狐娘「ならば、チョコをあるだけよこせ」

男「いい加減にしろ!」グリグリグリグリ

狐娘「うがががががが!?」

新幹線パーサー「お客様、車内ではお静かにお願いします」

男「あ、すいません・・・」

狐娘「仕方ないのう、一つでいいぞ」

男「お前なあ・・・」パキキッ

狐娘「ひいっ・・・」

新幹線パーサー「お静かにお願いします」

男「・・・すみません」



男「くっ、先が思いやられる・・・」

狐娘「なんじゃ、落ち込みよって。特別にチョコを一つやるぞ」

男「いらねえよ。大体それは俺の金で買ったもんだ!」


男「これが最後の乗り換えだ」

狐娘「何という人混みじゃ・・・」

男「ここはターミナルだからな。マジではぐれるなよ。会えなくなる」

狐娘「う、うむ」ギュ

男「袖を掴むと服が伸びるから、手に・・・まあ、いいか」


狐娘「・・・すれ違った電車を見たか?」

男「ああ、満員だったな」

狐娘「何と恐ろしいんじゃ」

男「分かるわ。黒人奴隷を運ぶ巨大な船とか、ドナドナされる家畜たちを積んだトラックみたいだよな。運ばれるのは社畜だが」

狐娘「??」

男「人間らしいとは言い難いよな。仕方ないけど。俺ももう少ししたらあれの仲間入りかな・・・」

狐娘「今の人間は大変なんじゃ」


~男の部屋~

狐娘「ようやっと着いたのか」ゲソッ…

男「ああ。結構広いし良い物件だろ。これで安いんだからお得だ」

狐娘「貴様の祖父の家に比べたら小さいの」

男「あそこと比べんな」

狐娘「しばらくはここでの暮らしになるのか」

男「あまり勝手なことすんなよ。追い出すからな」

狐娘「手荒いやつじゃ。ふあぁ、しかし疲れたのう・・・」ボフンッ

男「・・・俺以外の人間がいる時は尻尾と耳は隠せよ」

狐娘「分かっとるわ・・・くぅ・・・」

男「寝るなよ、おい」

~その頃~

?「・・・パンパカパカパカ、パッカン」

?「笑点を見ながら飲むお茶は美味しいわね」ズズ…

?「・・・うん・・・そういえば」

?「何よ?」

?「・・・少し前にアレの封印が解けた」

?「な、何ですって!? いつの話よ!」

?「・・・数日前」

?「どうしてすぐ言わなかったのよ!?」

?「・・・寝てた」

?「相変わらず役立たずね!」

?「・・・ひどい」グスン

?「早く支度しなさい」

?「・・・?」

?「もう一度封印するのよ。いいえ、今度は滅してやるわ」

?「・・・乱暴だ」

?「うるさいわね! あんたも行くのよ」

?「・・・外出たくない・・・というか、布団から」

?「この引きこもりの寝たきりババアがああ!」

?「・・・ひどい」グスン

どうでもいいけど初めてインド映画見たわ。
なんであんなにシリアスやってたのにエンディングで踊り始めるん?

~三日後~


pppp……

男「・・・」ムクッ

男「・・・朝飯つくんねえと」ポケ-

狐娘「くかー・・・」

男「相変わらず目覚ましに全然反応しねーなこいつ」


男「おーい、クソ狐、朝飯だぞー! 起きろー」

狐娘「ぬ・・・朝餉か」パチッ

男「テーブル立てるから起きて布団たため」

狐娘「しょうがないの・・・」


狐娘「今日はなにするんじゃ? わしはまた『もーる』とやらに行きたいぞ」

男「今日から講義があるんだよ。一限だからそろそろ出ないと」

狐娘「前に話していた大学とやらか?」

男「ああ」

狐娘「そこは面白いのか?」

男「面白いとか面白くないとかではないな」

狐娘「それでは美味いものは?」

男「うちの学食はあまり美味くないかな。そこまで安くもないし」

狐娘「なんじゃ、つまらなそうだの。まあ良いわ」

男「・・・お前は留守番だからな?」

狐娘「なんじゃと!?」


男「いや、大学に部外者は連れてけねえよ・・・一応な」

狐娘「ぐぬぬ・・・それならば独りでぶらついてくるんじゃ」

男「・・・それもまだダメだな。部屋にいろよ」

狐娘「な、なんじゃと!? 貴様は鬼か!?」

男「好きに言ってろ、とにかくダメなモンはダメだ」

狐娘「ぐぬぬぬ・・・!」

男「・・・帰りにチョコレート買ってきてやるから」

狐娘「チョコレートじゃと!? ・・・じゃ、じゃが」

男「たい焼きも買ってきてやるよ」

狐娘「・・・! しょ、しょうがないの! チョコレートとたい焼きは絶対じゃぞ! 絶対じゃからな!」

男「へいへい・・・」


~大学~

男「おっす」

友「よっ、久しぶり!」

男「そうだな」

友「さっそくで悪いんだけど、前回のノート写させてくんない。出てなくてさ」

男「・・・ったく、ほらよ。出席がなくてもちゃんと一限にも出ろよ」

友「早起きが苦手なんだよなー」

男「知ってる。その割に今日は早いな」

友「そうそうそう! そうなんたよ!」

男「なんだよ・・・元気だな」

友「隣にさあ、新しく二人組の女の人が越してきたわけ。それも超絶美少女なの!」

男「ふうん・・・そんで?」

友「俺は思ったね。これこそ運命だと」

男「・・・・・・」

友「どうにかお近づきになりたいんだよ男! なにかいい手はないかな!?」

男「そうだな・・・とりあえず無駄に干渉して警察沙汰にならないようにした方がいいだろう」

友「でもお喋りしたい! 『作り過ぎちゃったから食べてください・・・そして私も食べて!』とかやりたい!」

男「・・・」

友「真顔で引くなよ!」

男「じゃあ引かせるようなこと言うなよ」

友「頼むよー! お前、お隣の美人さんと仲が良いじゃないか!」

男「あの人は大家さんだからな。メンドくさい人だし」

友「夕飯のおすそ分けとかもらってるんだろ!? くそっ、羨ましい!」

男「たまにだよ。というか、教授きたから静かにしろよ。あの人、授業妨害する学生を容赦なく、追い出すんだからな」

友「ぐっ・・・」

男「あっ、やべえ大家さんのこと忘れてた」



狐娘「・・・暇なんじゃあ、暇なんじゃあ」ゴロゴロ…

狐娘「テレビも見飽きたんじゃあ」ゴロゴロ…

ピンポ-ン

狐娘「ほあ? なんじゃこの音?」

「おとこー、いるかー?」

狐娘「男ならおらんぞ」

「・・・ん? 入るぞ」

ガチャッ

狐娘「ぬ・・・勝手に入ってくるやつがいるか」

大家「・・・なんだこの生き物?」


大家『はあ、なるほどねえ・・・祖父母の家で拾ってきたと』

男「はい・・・なんかなし崩しに俺が引き取ることになっちゃって」

大家『契約上は単身居住なのは分かってんの? そりゃ大雑把な契約だったのは認めるけど』

男「す、すみません違法ですよね・・・さっき気付きました」

大家『あのなぁ・・・まあ、いいわ』

男「あ、いいんですか・・・?」

大家『だってこれ人間じゃないんだろ? なんか狐みたい尻尾とか耳とか生えてるし』

男「あ、もうその姿を見たんですね
、あのバカ」

大家『祟られんのも嫌だし、家賃もらってるうちは追い出さないどくよ』

男「ありがとうございます」


大家『その代わり、今までよりもさらに雑用手伝ってもらうかんな』

男「はい・・・」

大家『ところでさ・・・』

男「なんですか?」

大家『もうこのちっこいのに手を出したわけ?』

男「そんなわけないでしょ! 俺は常識人ですから!」

大家『ははは、ロリコンじゃなかったのか』

男「いやいや、なんでそう思ってたんですか」

大家『なんでもねえよ。それじゃあな。べんきょー頑張れよ』プッ



男「席外して悪いな」

友「いや。誰からだったんだ?」

男「ちょっとな」

友「・・・女からなのか!?」

男「そうだけど、お前が想像しているような内容じゃないからな」

友「裏切りは許さんぞ!」

男「そういうのメンドくさい」

友「・・・そういうところドライだよな、お前」

男「別に誰が誰と付き合おうとどうでもよくないか? 俺は別にお前が彼女作ろうと何とも思わんぞ」

友「ぶっちゃけ一種のネタだろ、ネタ。それに俺はずっとこういうキャラでやってきたんだよ」


男「彼女出来づらいだろ、そのキャラだと」

友「お陰様でイコール年齢だよ・・・どうしても抜けれないんだなこのキャラから」

男「それってやっぱりお前の性格なんじゃないのか?」

友「演じてる内にってか? まあ、元々そういうお調子者の傾向はあって、それを無理に誇張してるってのが正しいのかもな・・・なんでこんな話をしてるんだっけ」

男「お前がモテないのを悩んでるから相談に乗ったんだろ」

友「あれ? そうだっけ? ・・・まあ良いか」

男(こいつ、そのうち詐欺にあいそうだな。なんだかんだお人好しだし)



狐娘「あぶらーげはやはり良いのう。この甘辛さがたまらん」ハグハグ

大家「おう、もっと食え」

狐娘「もっと食うてもよいのか! 貴様、気に入ったぞ! 男はケチじゃからこんなに買ってくれん」

大家「貧乏学生みたいだからな」

ガチャッ

大家「噂をすれば貧乏学生が帰ってきたな」

男「あれ、大家さん」

大家「お邪魔してるよ」

狐娘「遅かったの。もう日暮れじゃぞ」

男「今日はコマ数が多いんだよ・・・この油揚げ大家さんが買ってくれたんですか?」

大家「お狐さんといえば油揚げかなと思ってな」

男「このバカのためにわざわざすみません」

狐娘「なんじゃと、貴様!」

大家「可愛いもんじゃないか。手ェ出したりすんなよ」

男「いやいや、こんなちんちくりん相手にあり得ないですって」

狐娘「なんじゃとぉ! 貴様如き、こちらこそ願い下げじゃが貴様のような風采が上がらぬ小童に愚弄されるのは気に入らんの!」

男「うっせチビガキ狐め」

狐娘「がるるるっ!」

大家「はあ・・・部屋壊したりすんなよ」

男「うっす」

狐娘「そのうち八つ裂きにしてくれるからな・・・」

男「けっ、出来るものならやってみやがれ」

大家「二人とも子どもだねえ・・・男、ちょっと来な」クイッ

男「?」


大家「お前、あんなの面倒みて大丈夫かよ?」

男「え?」

大家「お金もつのか? 今だって結構苦しいんじゃないの?」

男「あー、まあ、奨学金もあるし祖父から仕送りが貰えるようにもなりましたんで。大家さんのおかげで家賃もかなり安くしてもらってますし今のところ金銭面は大丈夫です」

大家「・・・そのことデカい声で言うんじゃないよ」

男「分かってますよ。ほんと感謝してます」

大家「はあ・・・無茶はするんじゃないよ。いざという時は大人を頼れよ」

男「ありがとうございます」

大家「お人好しは程々にしろよ」

男「それはむしろ大家さんでしょ」

大家「うっせ」



狐娘「たい焼きとチョコレートをはよう寄越せ」

男「忘れてなかったか・・・そんなに油揚げ食った後に食えるのか?」

狐娘「甘味は別腹に決まっとるじゃろう」

男「そんなんじゃ太るぞ」

狐娘「うるさいっ」

男「夕飯食った後な」

狐娘「・・・仕方ないの。今日の夕餉はなんじゃ?」


男「親子丼」

狐娘「なんじゃ、その罰当たりな名は」

男「罰当たりな食物なんだよ。母親の肉と産まれる前の子を一緒に調理して食うんだからな」

狐娘「なっ・・・人間はやはり非道なんじゃ」

男(無精卵だから正確には産まれないんだけどな)

男「一つ言っておくが、非道で罰当たりな食物は美味い!」

狐娘「!!」

男「人間の果てしない欲望こそが美味い飯を作るんだよ」

狐娘「ぐっ・・・」

男「せめて感謝して食うんだな」

長らく放置してすまんかった
やっぱりコンスタントに書けるタイプの人間ではなかった
完結させたスレとエタらせたスレの数は半々くらいのゴミクズですよ



狐娘「男、上がったぞ。髪を乾かして梳くのじゃ」

男「へいへい」

ブォォ……

狐娘「しかし、簡単に熱い湯を出せるとは、ほんに便利な世の中なんじゃ」

男「ああ」ブォォ…

狐娘「この“どらいやー”というのも便利じゃの。初めはわしの美しい髪が焦げかけたが」

男「髪の毛に近付け過ぎたらそうなるわな」カチッ

スッ…スッ…


狐娘「しかし先の娘は中々感心な人間じゃの。あぶらあーげも供えるしの」

男「・・・大家さんのことか?」スッ…

狐娘「貴様も見習ってわしに貢物をするんじゃぞ」

男「相変わらず偉そうなチビ狐だな」スッ…

狐娘「ほんに失礼なやつじゃな!」

男「俺の台詞だ」スゥ…




男「・・・・・・」ボ-

テレビ『全米が涙したあの名作の最新作!』

狐娘「全米とやらはすぐに感動するの。一日一回は涙しとるぞ」

男「涙腺が緩々なんだろ。そろそろテーブル畳んで布団しくか」

狐娘「えー、もう少しテレビが見たいんじゃ。横になると見辛いんじゃ」

男「・・・しょうがないな」

~朝~


男「今日は大学行ってからバイトだから、夜遅くなる」

狐娘「なんじゃと・・・わしの食事はどうするんじゃ」

男「冷蔵庫に出来合いのものを入れてあるから、それで間に合わせてくれ。悪いな」

狐娘「仕方ないの・・・我慢してやる」

男「へいへい、ありがとーございまーす。出歩くと多分捕まるから絶対やめろよ」

狐娘「な、なんじゃと・・・今日も外に出てはいかんのか! 尻尾と耳を隠せばいいじゃろ!」

男「見た目が完全に小学生、良くて中学生だから補導されかねないんだよ。そうしたら色々と面倒なことになりかねん」

狐娘「うぐぐ・・・力が溜まれば・・・」

男「じゃあ大人しく引きこもって力を溜めとけ」バタンッ

狐娘「あっ」


狐娘「・・・まったく、彼奴は不敬なんじゃっ。この狐娘さまに向かって偉そうなんじゃっ」

ピンポ-ン

狐娘「ぬ?」

大家「お狐さんはいるか?」

狐娘「おるぞ! 入るがよい!」

ガチャ

大家「お邪魔するよ。・・・男は大学か」

狐娘「うむ。ちょうどよいところに来たの。暇しておったところじゃ」


大家「おお、それはよかった。アタシもヒマしててね。お菓子食べるか?」

狐娘「ほう・・・貢物とは分かっとるの」ピコピコ フリフリ

大家「こりゃ可愛い」

狐娘「ん?」

大家「何でもない。お狐さんはゲームやったことあるか?」

狐娘「げぇむ? 美味いのか?」

大家「これは廃人製造機を体験させなきゃダメみたいだね。ちょっと待ってなよ」

~大学~

友「ああー、SSレアが出ねえ! いくら課金してると思ってんだごるぁ!」

男「ほどほどにしとけよ・・・」

友「あの娘と出会うためなら俺は・・・俺はいくらでも愛情(金)を注ぎ込む! きっと・・・きっと俺の想いに応えてくれることを信じて!」

男「・・・お前の稼いだ金だから俺は何も言わないよ」

友「あと3k・・・あと3kできっと・・・!」

男「頑張ってくれ。・・・今日はこの後バイトか」


男「・・・ふう、もう夜か。疲れたな」

バチッ…

男「ん?」

?「さっさと消えなさい!」バチチッ

物の怪『ガア・・・ァ・・・」ジュゥゥ…

男(・・・なんか、別世界が展開されてる)コソッ

?「ふん、話にもならないわね」

男(あれ、狐娘? ・・・いや、違うな。取り敢えず面倒くさそうだから関わらないようにしとこ)ソソクサ

?「・・・?」


?「しかしまだ低級妖怪しか見かけないわね。もう少し力試しもしたいのに」

?「・・・お腹すいた」

?「ほんと大食らいなんだから!」

?「・・・ご飯が美味しいんだもん」

?「ったく、帰りにスーパー寄るわよ」

?「・・・そういえば人間の気配があった」

?「は? アンタ、人避けの結界を張り忘れたんじゃないでしょうね?」

?「・・・ちゃんと張った」

?「それで結界に入ってくるってことは、同業者か敵対者か」

?「・・・」

?「もしかしたら、あの妖狐と縁故ある者かもしれないしね」

?「・・・悪い気配ではなかったと思うけど」

狐娘「む、やっと帰ったか」

男「ん、ああ」

狐娘「見栄えの悪い顔をさらに曇らせてどうしたんじゃ?」

男「・・・いやあ、ご立派な狐娘さまに気遣っていただけるなんて嬉しいね」

狐娘「わしは寛大だからの。感謝するがよいぞ」

男「・・・ぶれない奴だな」

狐娘「そういえば隣の娘っ子がゲームを貸してくれたんじゃ! 共にやるぞ!」ピンッ

男「共にやるぞって、これ一人プレイだろ。しかもホラーゲームじゃねえか」

狐娘「二つあるが、一方は娘っ子とやって飽きたんじゃ。だからこっちをやるんじゃ」

男「俺がやるのか?」

狐娘「わしがやるに決まっとるじゃろ。ゲームは今日ずっと娘っ子とやって上達したんじゃ」ドヤッ

男「これがどんなゲームか分かってんのか・・・? 取り敢えず俺は飯を食うぞ」


狐娘「さて・・・はじめるんじゃ」ワクワク

男「あんまり騒ぐなよ」パクッ

狐娘「むむ・・・何やらおどろおどろしいの」

男(こいつやっぱりホラーゲームが何か分かってないのか)モグモグ

狐娘「うーむ、中々自分で動かせるようにならんの」

男「・・・・・・」モグモグ

・・・

バンッ

狐娘「ぎゃぁぁぁあああっ!?」

男「うるさっ」

狐娘「く、くるなっ!このっ! このっ!!」

ガアァッ!

男「主人公やられてんぞ」

狐娘「あっあっあっあっあっあっ」

男「操作方法分かんねえのか?」

狐娘「あああぁぁぁっ」

男「苦情くるから大声出すなって」

アアアアアアアァァッ……‼︎

男「あ、死んだ」


狐娘「・・・・・・」カオマッサオ

男「まず説明書を読むべきだと思うぞ」

狐娘「・・・男、わしの代わりにやれ」

男「お前がやるんじゃなかったのか?」

狐娘「うるさいっ、いいからやれっ」

男「その口の利き方は直せよまったく・・・ほらコントローラー貸せ」



ゴオオオ…

狐娘「ひいっ」ヒシッ

男「怖がりめ」カチカチッ

狐娘「うう・・・」

バンッ

狐娘「うひゃぁっ!?」ギュッ

男「後ろから突然は定番だよな」



ガチャッ

バンッ

狐娘「ふぎゃぁっ!?」ムギュゥ

男「扉開けたら急襲も正統派」

・・・

狐娘「いけっ、そこじゃ、鉄の棒で殴り殺すんじゃ!」ギュ

男「物騒だな」ポチッ,ポチッ

狐娘「よいぞよいぞ! もう一押しじゃ!」ギュギュッ

男「邪魔するなよ・・・っと、最初のボスを倒したか」

オオオォォ……

狐娘「やるのう、少しだけ見直したぞ」

男「分かったから少し離れろ。暑苦しい」

狐娘「なっ、いつの間にわしにくっついたんじゃ変態め!」バッ

男「どう見てもお前から抱き付いてきてただろ。頭わいてんのか」

狐娘「なっ・・・わしがそんなことするわけ・・・」

男「そろそろゲームはおしまいだ。風呂に入ってこい」

狐娘「う、うむ」




狐娘「のうのう」

男「ん?」スッ…スッ…

狐娘「先ほどの続きはせんのか?」

男「今日はもう夜遅いだろ」スゥゥ…

狐娘「しかし続きが気になるんじゃ」

男「また明日すればいいだろ」サラッ

狐娘「・・・明日?」

男「ああ。時間ならたくさんあるだろ」スゥッ…

狐娘「・・・そうか、そうじゃな。うむ!」

男「梳かし終わったぞ。さっさと寝よう」

狐娘「うむ!」

今更『ヤマノススメ』の一期と二期を見ました。TVアニメとか全然見ないんですがあれは良いですね。
あと今更『アナ雪』を見ました。あの有名な歌、もっと明るい文脈で使われてると思ってたから意外でした。
追加して今更『colorful』見ました。小学生の頃に原作読んで感動して小説家になりたいなあと夢見た思い出が蘇りました。まあ専業の小説家なんてなるもんじゃないと今は思いますが。

狐娘「……」クゥ…クゥ…

男「起きろ、眠り狐」

狐娘「・・・」スピ-

男「・・・昨日もゲームのやりすぎたな、こりゃ」

狐娘「・・・」スゥ…スゥ…

男「おーい起きろー、布団はぐぞ」ペラッ

狐娘「・・・んー」ペシペシッ

男「生意気な尻尾め」ワシッ

狐娘「んあっ・・・」ビクッ

男「うおっ」パッ

狐娘「んん・・・」

男「ヘンな声出すなよ・・・」ファサッ




狐娘「んん・・・?」パチッ

男「ようやく起きたか。もう朝飯ができたぞ」

狐娘「ん、ああ・・・」


男「・・・・・・」モグモグ…

狐娘「今日は大学には行かぬのか?」

男「今日から夏休みだよ。期末も終わったしのんびりできるぜ」

狐娘「ほう、それなら出かけるんじゃ」

男「えー」

狐娘「お主は最近、忙しい忙しいのたまいおって、どこにも連れて行ってくれなかったんじゃ」

男「期末だったんだからしょうがないだろ。基本的に試験一発勝負ばっかなんだよ、うちの学部学科は」

狐娘「よく分からんが、とにかくその分もわしの要望を聞けっ」

男(まあ、確かにここのところ食事も手抜きだったし、図書館にこもってたからあんまり相手もしてやれなかった)

男「しょうがないな・・・どこに行きたいんだ?」

狐娘「“ぷーる”とやらに行ってみたいんじゃ」

男「プールか・・・水着を買わないといけないから別の日だな」

狐娘「むむ、それなら中華街とやらに行ってみたいんじゃ」

男「中華街ねえ・・・」

狐娘「あと映画館、“てーまぱーく”、水族館、“温泉も行きたいのう」

男「行きたいところだらけだな」

狐娘「それから美味しいものも食べたいんじゃ」

男「食い意地張ってんな・・・とりあえず今日行くとしたら中華街か?」

狐娘「うむ」

男「それなら水のテーマパークも行けるし、帰りに途中下車で温泉も行けるな」

狐娘「おお? すごいではないか」

男「行くならはやく行こうか。時間なくなるしな」

狐娘「うむ」

男「尻尾と耳は隠せよ」

狐娘「分かっとるわ」


~中華街~

ガヤガヤ

狐娘「おお・・・活気づいとるの」

男「まあ人口が二番目に多い都市だから」

狐娘「あの店、すごい行列なんじゃ。何が売っておるんじゃ?」

男「小籠包みたいだな。並ぶか?」

狐娘「うまいのか?」

男「食えば分かるだろ」

狐娘「適当じゃの・・・わしは待っとるから買ってくるがよい」

男「お前も並ぶんだよ」ヒョイッ

狐娘「ぬぁ!? は、離せ~っ!」ジタバタ



狐娘「やっと買えたんじゃ」

男「かなり長かったな」

狐娘「どれ、さっそく」ハグッ

ブシュッ

男「あづっ!?」

狐娘「あちちっ!」

男「なんだこれ!? テロかよ!? 肉汁テロ!」

狐娘「あ、あつひんじゃぁ・・・っ」

男「服に着いたし・・・はあ」

狐娘「うむ、うまいのっ」

男「どれ、俺も・・・いきなり噛むと肉汁が勢いよく飛び出すみたいだな」ガブ…

ジョババ

男「うわぁ、手が・・・紙ナプキン、紙ナプキン」

狐娘「だらしないの」アグッ

ブシャッ

男「あぢぃっ!? だから勢いよく噛むのやめろ! 学習しない奴だな」

狐娘「うるさいんじゃっ・・・」

男「・・・ったく、アレだな、最初ちょっと噛んで啜ればいいんだ」カミッ ズズッ

狐娘「ひたをヤケドひはんじゃ・・・」ヒリヒリ

男「少し冷ましてから出してほしかったな。美味かったけどさ。トレイ返却してくる」


狐娘「肉まんが美味しそうなんじゃ」

男「ここはテレビでも取り上げられる有名な店だな。ちょっと高いけど買うか」


狐娘「おお、大きいんじゃ」ホカホカ

男「すげえボリュームだな。さすが中華街」チギッ

狐娘「食べ切れるかのう」

男「食い切れなかったら俺が食うよ」

狐娘「うむ」


狐娘「ほう、食べ放題か」

男「かなり安いな。しかも時間無制限か」

狐娘「入るか」

男「却下」

狐娘「なんでじゃ」ブ-

男「お前なら多分、普通に食べた方が安上がりだ。どうせ質は良くないだろうしな」

狐娘「そうかの」

男「間違いない」




狐娘「むむ・・・人が多すぎるんじゃっ、あやつはどこに行ったんじゃ」キョロキョロ

狐娘「・・・いないのう」

露天商「オ嬢チャン」

狐娘「む?」

露天商「栗イカガ?食ベテミテ!」

狐娘「栗か? どれ」パクッ

露天商「一個千円! 安イ!」

狐娘「いや・・・」

露天商「サラニ追加シテアゲル! サービス!」

狐娘「わしはお金をもっとらんぞ」

露天商「さっき栗食ベタ!買ッテヨ!」

狐娘「な、さっきのは試食ではないのか?」

露天商「買ウ! サアサア!」

狐娘「あー、うー・・・」

男「何はぐれてんだ、お前は」グイッ

狐娘「あっ」

男「そろそろ移動するぞ」

狐娘「そ、それがな」

露天商「栗買ッテ!」

男「ああ、結構です。さっさと行くぞ」スタスタ

狐娘「う、うむ」


男「ああいうの、一々相手にすんなよ。絡まれたら無視しとけ」

狐娘「分かっとるわっ・・・別に礼は言わんぞ」プイッ

男「は? 礼言われるようなことはしてないぞ。・・・いや、むしろ俺には常に感謝してもいいくらいだな」

狐娘「絶対にしないんじゃ」ベ-

男「クソ生意気なチビ狐だな・・・もう勝手にうろちょろすんなよ」ギュ

狐娘「・・・」

 ギュ


~海のテーマパーク~


狐娘「おお・・・幻想的なんじゃ」

男「・・・水族館とか初めて来たな」

狐娘「おお、こやつら、フヨフヨして可愛いんじゃ」

男「クリオネか。実物はこんな感じなのか」

男(確かこいつって拡大してみると捕食するところが相当グロいらしいな・・・黙っておこ)

狐娘「うーむ、可愛いのぉ・・・」

男(クリオネって食えんのかな)



狐娘「うわっ、なんじゃこのデカいダンゴムシはっ?」

男「これが 名にし負うダイオウグソクムシか。エイリアンみたいだ」

狐娘「ひぃ、ここの水槽はバケモノだらけなんじゃあっ」

男「深海ってすげえ」


ギャアアァ…‼︎

狐娘「アレに乗ってみたいんじゃ」

男「アレは・・・世に言うフリーフォールってやつか」

狐娘「並ぶんじゃ」

男「あっちのメリーゴーランドにしようぜ」

狐娘「アレは後でいい。今はこれに乗りたいんじゃ」

男「えぇ・・・一人で乗ってこいよ」

狐娘「ダメじゃ、怖いじゃろうが」

男「じゃあ乗るなよ」

狐娘「いいから並ぶんじゃ」グイッ

男「うえ・・・」



ゴゴゴ…

狐娘「こ、こんなに高いのか? 」

男「・・・・・・」ブツブツ

バッ

ヒュオオオォ…

男「あああああぁ」

狐娘「・・・・・・」パクパク



狐娘「あんなに高いなんて聞いてないんじゃっ」

男(だからやめとけって言ったのに)



狐娘「これは楽しいの。おーい」ブンブンッ

男「あまりはしゃいで落るなよー」

狐娘「分かっとるわ。ふむ、本物の馬にも乗ってみたいの」



キュィ- キュ-

狐娘「あの大きいお魚があの海豚というやつか」

男「イルカは魚じゃないんだよな」

狐娘「む、あれはどうみても魚なんじゃ」

男「イルカとクジラは魚じゃないって。ちなみにイルカはクジラの小さいやつだ」

狐娘「は? 鯨は鯨じゃろ? 海豚は海豚なんじゃ」

男「大きいイルカはクジラで、小さいクジラはイルカなんだよ」

狐娘「???」

男「ま、あまり気にすんな」


狐娘「すごいんじゃっ、あやつ芸をするんじゃっ」

男「お前より賢いな」

狐娘「そんなわけなかろうっ、わしの方が賢いんじゃ」

男「じゃあ、何か芸やってみろや」ニヤッ

狐娘「げ、芸じゃと・・・?」

男「ほら、イルカに負けるなっ!」

狐娘「芸・・・げい・・・ゲイ・・・芸・・・っ!」


――大家『今度、男にやってみてな』

狐娘「・・・・・・き」

男「お?」

狐娘「きつねっ!」ピョコンッ←両手で狐耳を表現している

男「・・・・・・」


狐娘「な、なんじゃ黙りおって」

男「あ、ああ・・・うん、悪くなかった。いや、かなり良かった、ウン」

狐娘「そ、そうか。ま、まあこのわしにかかれば当然なんじゃっ」

男「ということで、もう一回」

狐娘「いやじゃ」

男「そこを何とか」

狐娘「海豚の芸に集中せんか」



~温泉~

狐娘「・・・この箱はどう使うんじゃ?」

女性「あ、ロッカーの使い方が分からないの?」

狐娘「“ろっかー”? この箱の名前か?」

女性「こうやって、鍵をかけて、物を盗られないようにするのよ」

狐娘「ほう、便利なんじゃ。礼を言うぞ」

女性「いいのよ」

女性(変わった子ねえ。すごく可愛いけど)



狐娘「いい湯なんじゃー」

狐娘「しかし色々と種類があるのう。試すんじゃ」ザパ

ペタペタ…

狐娘「・・・サウナ?」キイ…

狐娘「あ、暑いんじゃ!?」バタン

狐娘「大人しく湯に浸かるかの・・・」ペタペタ

狐娘「電気風呂?」ザパッ

狐娘「あがががっ、ビリビリするんじゃっ」ザパッ

狐娘「おお、この泡が出とるの、気持ちいいんじゃ」ボコボコ…


狐娘「ふう・・・そろそろ出るんじゃ」



狐娘「おーい、髪を乾かせ」

ザワッ

男「こっち男湯だっての・・・まあ、髪を乾かすくらいならいいか?」

狐娘「早うするんじゃ」



狐娘「ごくっ・・・ごくっ・・・ぷはっ。風呂上りに飲むと美味いのう」

男「まあな」

狐娘「しかし、この手首の輪を使うとタダでジュースが買えるとは素晴らしいの」

男「俺も田舎出身だからハイテクに感じるわ。それと、後払いになるだけで無料なわけじゃないからな?」

~電車~

狐娘「くぅ・・・くぅ・・・」ピョコンッ

ヒソヒソ…

男(遊び疲れて眠るのはいいが、尻尾と耳は隠したままにしろよ!)

ヒソヒソ…

男(他人の振りをしよう。たまたまこのコスプレ少女の隣に座った乗客Aに成り切るんだ)

狐娘「んん・・・」ピトッ

男(はい、もうだめー。これは完全に関係者認定されましたー)

男(ああ、絶対に俺が危ない大人だと思われてるよ。少女に狐耳と尻尾のコスプレさせてる危険人物扱いだよコレ)

狐娘「んん・・・」ピトッ

男(人の心も知らずにコイツは・・・)


・・・


大家「へえ、プールに行ったのか」

狐娘「うむ、あの“うぉーたーすらいだー”というのは面白いの。流れのある“ぷーる”を浮き輪にのって進むのも良かったんじゃ」

大家「楽しそうだね」

狐娘「映画館にも行ったが、あれは音がうるさいの。画面がでかいのは良かったが」

大家「まあ映画館だからね」

狐娘「あとは動物園にも行ったし、“はいきんぐ”もしたし“ばいきんぐ”もしたな」

大家「リア充かよ」


~大学~

男「後期はシラバス見る限り発展的な内容が多くなりそうだな」

友「そうだな……前期で結構単位落としちゃったし、後期で挽回しないと・・・」

男「お、おう、そうか・・・」

友「そういえば今日俺ん家で、いつメンで宅飲みやるんだ。お前もこいよ」

男「今日か・・・」

友「なんか用事あるか?」

男「あー、用事というかなんと言うか」

男(アイツをあんまり独りにするのもな・・・一応保護者だし)


友「・・・最近お前付き合い悪いよな。マジで彼女できたか?」

男「そういうんじゃないが」

友「じゃあ今日の夜に俺ん家な! 後で連絡するわ!」

男「あ、おい・・・相変わらずマイペースな奴だな」

男「大家さんにアイツの面倒見てもらえるように連絡しておくか」ポチポチッ

大家『おう、どうした?』

男「こんにちは。今日ちょっと帰り遅くなるので、あのチビの面倒を見てもらえませんか?」

大家『お前なー、あたしは保母さんじゃないよ?』

男「すみません・・・」


大家『冗談だよ。今もお前の部屋にいるし』

狐娘『紅玉でたんじゃぁっ』

大家『あ、ずる・・・まあこんな感じで』

男「ああ、そうですか・・・それじゃあお願いしますね。失礼します」ピッ


~友の住むアパート~

オタ「どうして二人きりで夢の国でデートしてるのに、告白して振られるんだよっ!」シクシク

友「辛えなあ!女もその気がないなら二人きりで夢の国なんて行くなよっ」

非リア「ビッチ死ね!」

男「それは流石にドンマイ。まあでもがっつき過ぎて引かれたんじゃないのか?」

オタ「うぐ・・・童貞だもんっ! 女の子との距離感とか分かんないもんっ」

友「中高男子校の闇を知らねえからそんなこと言えるんだお前はよお!」

非リア「リア充か? リア充なのかてめえは? あーはぁん?」

男「いや違うけどさ・・・ちょっと酔ったから夜風に当たってくるわ」

ギャ-,ギャ-‼︎

男「はあ・・・」

男(付き合い切れん)

男(普段は真面目で気さくないい奴らなんだが、こういう時はメンドくさいんだよな)

男(まあ、俺みたいな奴とも仲良くしてくれるんだから有り難いことだが)

ガチャッ

男「ん?」

?「あの、うるさいんですけど」

男「ああ、ごめんなさい! 注意しておきます!」

男(隣人さんか。気は強そうだけど美少女だな)

?「・・・」ヒョコッ

男「ん?」

男(・・・狐耳と尻尾。こいつら前に見た奴らか)

?「・・・こんばんは」ペコッ

男「・・・ああ、こんばんは」

?「あんたが顔出すなんて珍しいわね。この男に何か由縁があるわけ」

男(・・・相手は自然体だし、合わせておくか。それしにてもなんか上から目線だな、コイツ)

?「・・・いい人」

男「え?」

?「・・・」ニコッ

男「あ、ああ」

?「ふうーん」ジロジロ

男「・・・なんですか?」

男(あからさまに探るような目つきで人を見るなよ、失礼だな)

ガチャッ

友「おとこぉ、アルコールと食いもんが足りねえ! 調達にいくぞー!」

オタ「調達調達ゥー!」

非リア「ウェーイ! ワンチャン!」

男「お前ら近所迷惑だから静かにしろよ」

友「あ、とととと、隣の美少女さん!」

?「えっ」ヒキッ

非リア「ぶはっ引かれてやがる」

オタ「これで俺と仲間だな」

男「宅飲みも飽きたから外に飲みに行くぞ」グイッ

友「うわっ、引っ張るな! 俺もお隣さんとお話したいのおぉ!」


?「なんなの」ドンビキ

男「話なんかしてねえよ! お前らがうるさいから謝ってたんだアホ! いいから行くぞ!」

オタ「お、おう」

非リア「近くのバー行こうぜ! 行ってみたかったけど一人じゃ入り辛くてさあ!」

男「高そうだな。まあたまにはいいか」チラッ

?「ちょ、ちょっと・・・」

友「もも、もしかしてお隣さんも一緒に行きますかっ!」ズイッ

?「行くわけないでしょ!」

友「は、はは・・・ですよね」ショボン

オタ「ぶはっ、お前も振られてやんの」

非リア「酔ってるからって調子乗り過ぎィ!」


友「うるせえ! さっさと行くぞ!」

オタ「きゃー、大声だしてこわーい」

非リア「女の子と一緒にお酒飲んでみたかったな」

男「それじゃあお騒がせしてすみませんでした。あと友人たちが絡み酒してすみません」

?「いや・・・だから・・・」

友「いいもーん! わたしカシオレしか飲めない女の子だもん!」

オタ「わたしはぁカルーアミルクぅ」クネクネ…

非リア「いや意味わかんねえよ」

ギャハハハッ‼︎




?「行ってしまったわね。てっきり、同業者か何かかと思ったんだけど」

?「・・・あの人から例の妖狐の気配がした」

?「はあっ!? それならもっと早く言いなさいよ! そうしたら無理やり引き止めて口を割らせたのに!」

?「・・・楽しそうなのを邪魔しちゃいけない」

?「そういう変な気遣い不要なのよ!」

?「・・・ごめん」ショボン

?「まあでも、隣の住人と接点があるなら簡単に割り出せるわね。あとはどういう事態が想定されて、どういう対策を取るべきか・・・ふふふ」

?「・・・悪い顔してる」

~BAR~

オタ「バーとか初めてきたよ」

非リア「有名作家の小説とかだと主人公が一人で恵比寿のバーで飲んでたりするけど、俺が就職してもそんなことする人間になるとは思えんな」

友「普通しないだろ」

男「俺、そろそろ帰ってもいい?」

友「はあ? お前が外で飲もうっていったんじゃねえか」

オタ「さっきもほとんど飲んでないし」

男「酒弱いの知ってるだろ」

非リア「まあまあ、せっかくだしもうちょい付き合えよ」

男「・・・そうだな」

友「知ってるか男ぉ! 『乾杯』とはぁ、『杯を乾かすこと』なりぃ!」

オタ「俺が飲んでーお前が飲まないーわけがない! はい! ナッシュ均衡!」

非リア「数量競争におけるベストレスポンス! はい! クールノー! クールノー!」

男「ゲーム理論コールやめろ!」
グイッ

友「とか言いながらノリよく飲んじゃう男くん素敵! 抱いて!」

男「うっせ」ドンッ

オタ「1杯飲めた、n杯飲めて(n+1)杯飲めないわけがなーい!」

友「はい! 帰納法! 帰納法!」

男「数学的帰納法コールやめろ!」

非リア「10杯飲んでも!たったの2杯!」

男「二進法コールもやめろ!」

※一気飲みは危険です。絶対に真似しないでください。
コールはやめましょう。



狐娘「あやつ、遅くなるらしいが本当に遅いの」

ガチャッ

狐娘「やっと帰ったか」

男「ただいまー」ヒック

狐娘「まったく・・・わしのためにももっと早く帰るよう心がけるんじゃ」

男「さびしかったのかー、ごめんなー?」ギュゥゥッ

狐娘「なあっ!? なな、なにをするんじゃ!? は、離せっ」

男「よしよし、俺がそばにいるからな」ギュゥゥッ

狐娘「うっ、この臭い・・・貴様、酔っ払っとるなっ」

男「俺がお前の居場所になってやるからなー」ナデナデ

狐娘「あ・・・なにを・・・」


男「よひっ、一緒に寝るか!」フラフラ

狐娘「ぬおっ!? ま、待てっ」ヨタヨタ

ボフッ

狐娘「き、貴様、なに押し倒しとるんじゃっ」

男「んー?」ギュゥ…

狐娘「ど、どけっ」ジタバタ

男「髪の毛ほんときれいだよなー」サラッ

狐娘「ちょ、調子に乗りおってっ」ググ…

男「耳も尻尾も可愛いなー」モフモフ

狐娘「ひゃぁっ!? き、貴様・・・!」

男「・・・・・・」

狐娘「な、なんじゃ急に黙りおって・・・やっと抜け出せた」

男「・・・ぐあ」スピ-

狐娘「ね、寝とる・・・」

男「・・・・・・」ギュッ

狐娘「ええい、離せ・・・・・・まったく」ピトッ



男(なにがどうなったんだこれ?)

狐娘「・・・すう」

男(俺の隣でチビ狐が俺の右手を枕にして眠ってる)

男(・・・やばい、右手の感覚がまったくない)ヒョコッ

狐娘「んぐっ・・・」

プラ-ン

男(うっわ、血の流れが滞ったせいで指先が冷たいし、まったく力入らねえ。手首より下が全然動かせない)

男(とりあえず血を送んないと・・・頭も痛いし散々だな)


狐娘「・・・奇っ怪な動きをしてどうしたんじゃ?」

男「血流を右手に送ってるんだよ。お前が枕にしてたせいで血が止まってたからな」

狐娘「むっ、悪いのは貴様なんじゃっ」

男「・・・昨日の記憶があんまりなくてな。俺はいつ家に帰ったんだ? バーで思った以上に飲まされたところまでは覚えてるんだが」

狐娘「・・・昨夜わしにした辱めを覚えとらんと言うのか?」

男「辱め? 俺なんかしたか?」

狐娘「貴様は悪漢じゃっ、最悪なんじゃっ」

男「はあ?」

狐娘「・・・!」ピコンッ

狐娘「あれほどのことをしでかしたのだから、わしに供物をして機嫌を取っておくべきなんじゃ。差し当たってあぶらげを五十枚ほど・・・」チラッ

男「調子に乗るな」グリグリグリッ

狐娘「あだだだだだだっ!?」

・・・


狐娘「今日は鍋か」

大家「カセットコンロの火を一回止めるよ」

男「お願いします。米は三合で間に合うか」

狐娘「タラが美味しそうなんじゃ」ヒョイッヒョイッ

男「一人で取りすぎだアホ」

大家「すっかり鍋が美味しい時期になったね」

男「そうですね」

狐娘「はふっ、はふっ」

男「野菜も食えよ」

狐娘「分かっとるわ。白菜もうまいの」


大家「なんだか板に付いてきたね」

男「まあ、それなりに一緒にいますからね」

大家「確かにお狐さんが来てからもう四ヶ月近くか? 時間が経つのは早いね。ちょっとビール付き合ってよ」キュポンッ

男「この前、久々に飲んだら記憶飛ばしちゃったんですよね」

狐娘「・・・ふんっ」

大家「危ない飲み方するね。ほろ酔い程度が一番いいよ」コポポ…

男「分かってるんですけどね。ありがとうございます、注ぎますよ」

大家「ありがと」

狐娘「よくそんな苦いモンが飲めるのぉ。神酒ならわしも好きじゃが」


男「・・・大家さん、こいつに飲ませたことあるんですか」

大家「え、人間じゃないからいいだろ? 味見させただけだし」

狐娘「貴様、わしを童女か何かかと勘違いしておらんか」

男「だって行動も言動もなあ・・・最近はさらに子どもっぽくなってる気がするし」

狐娘「なんじゃとぉっ」

大家「まあまあ。豆腐もふるふるでいい感じだよ」

男「美味しそうですね。一つ貰います」

狐娘「わしにも寄越せ」

大家「その間にエノキをもらう」

「「あっ」」


狐娘「ふう、食べたの」

男「おじやも食べたし、お開きか」

大家「アイス食べたくない?」

狐娘「お、いいのう」

大家「ということで、奢ってあげるから買ってきて」

男「俺ですか・・・分かりましたよ」


大家「そろそろ寒くなってくる季節だね」パクッ

男「そうですね。そんな時期にアイス食うのもなんですが」モグモグ…

大家「コタツ出そうかな」

男「さすがに早くないですか?」

大家「コタツで食べるアイスって最高じゃん」

男「まあ、分かりますけど」


狐娘「今度は渓谷に紅葉を見に行きたいのう」

男「秋っぽい行事だな。もうちょいで見頃になるんじゃないか」

狐娘「あと、“すきー”とやらをしてみたいんじゃ」

男「それは冬だな。まだ先だな」

狐娘「それからの・・・島に行って巨大な杉を見たいんじゃ」

男「・・・どこでそんな知識を得てくるんだ?」

大家「テレビとネットだろ」

男「それもそうですね・・・LCC使えば安く行けるかな? 春が良さそうだ」

狐娘「それから、ひまわり畑とか生キャラメルとか時計台とかカニとか」

男「今度は北かよ。どうせなら夏がいいだろ」

狐娘「やりたいことと行きたいところがたくさんあるんじゃ」

大家「羨ましい限りだね」

男「金のかかるやつめ」

男(・・・ちょっとだけバイトのシフト増やすか)

男「なあ」

狐娘「なんじゃ」

男「尻尾もふらせろよ」

狐娘「はあん? 殺すぞ」

男「そんな嫌か?」

狐娘「この気高きわしの尻尾を下賎な人間に触らせると思うとるのか」

男「髪の毛はいいのに? 毛並み整えてやるよ」

狐娘「む・・・いや、方便に決まっとるんじゃっ」

男「ちっ」

狐娘「まあ、わしの尻尾は最高の手触りじゃし、気持ちは分かるがのう」ドヤッ

男「ほんとかよ。見た感じはそこら辺の犬のほうがいい毛並みしてるけどなー」

狐娘「なんじゃとっ、犬畜生と一緒にするでないっ」

男「まあ、俺は見ただけで分かるほど眼識を持ってないから、触らせてくれんとそこら辺の犬と同じに見えるなー?」

狐娘「ふん、それならとくと触って確かめるが良いっ」

男(チョロい)


狐娘「んん・・・もっと優しくするんじゃ」ビクッ

男「静かにしてろ」

狐娘「っ、んんっ・・・」ビクビク

男「よしよし」

狐娘「っあ、んんっ・・・いたっ」

男「悪い、痛かったか?」

狐娘「も、もうやめるんじゃ」

男「もう少しだけ。我慢しろよ」

狐娘「や、優しくせい・・・ぅ・・・ぁぁ・・・ん」

男「・・・よしっ!」スッキリ


狐娘「ふう・・・」

男「耳掃除はしっかりしろよ」

狐娘「分かっとるわ」

~大学~

友「男ー! 俺にも春が来たぞ!」

男「どんどん寒くなってる時期に何言ってんの」

友「隣の美少女さん二人組だよ!昨日、一緒に飲んだんだ! ぐへ、ぐへへ・・・」

男「うわあ・・・それで?」

友「たのしかった!」

男「・・・ああ、そう」

友「ただ途中から飲み過ぎたせいか記憶がなくてよ・・・もしかして、もしかしちゃったのかなあ! ぐへ、ぐへへ!」

男「酒の勢いでとか引くわ」

友「ま、まあ有り得んよ・・・で、でもよぉ、一緒に部屋で飲むなんて気があるよなあ! そうだよなあ!」

男「・・・そうかもな。ただ女の子の前で潰れるとか、ないわ」

友「はぐぁ! ・・・そんなに飲んでなかったはずなのになぁ」ショボン

男(・・・なんか不穏だな)



狐娘「それでのぉ、昨日は定食屋でサンマを食べたんじゃ。油がのって美味しかったんじゃ」

大家「へえ・・・アイツはなんだかんだでお狐さんの言うこと聞いてくれてるね」

狐娘「じゃが、あやつはすぐに暴力を振るうんじゃ。ケチじゃし、すぐにわしをバカにして腹立たしいんじゃ」

大家「ふうん。まあ、手を出すのは良くないな。そんなに頻繁?」

狐娘「この前、“とりっくおあとりー”と言うと甘味がもらえる日があったじゃろ」

大家「はいはい」

狐娘「あやつにそれを言ったら甘味を持ってなかったからの、イタズラをしたんじゃ」

大家「へえ、どんな?」

狐娘「よう分からん文字の書いた教科書とやらに落書きしたんじゃ。それだけなのに、あやつはひどい折檻をしたんじゃっ! 拳骨からの頭ぐりぐりじゃぞ! あやつは鬼か!」

大家「あー、うん。教科書って結構高いからな・・・洋書とか普通に一万越えるもの多いしな」


狐娘「それに最近は帰ってくるのも遅いし、そのくせすぐに寝るし、わしに構わないのも気に食わん」グチグチ…

大家「・・・なるほどねえ」

狐娘「あやつは優しさが足りないんじゃっ、もっとわしに優しくするべきなんじゃっ」

大家「それなら金運でも上昇させて財産を増やしてあげれば? あいつきっとお狐さんにめちゃくちゃゴマを擦り始めるぞ」

狐娘「そんなことできないんじゃ」

大家「出来ないのか・・・それなら家事の手伝いとかしてみれば? 喜んで優しくするんじゃないの?」

狐娘「めんどくさいんじゃ」

大家「ああ、そう・・・」

狐娘「うーむ」

大家「あ、桃の缶詰あるんだけど食べる?」

狐娘「ほう、桃か。食べるんじゃ」


男「あー、バイト疲れた」

?「こんばんは」

男「げっ」

?「あら、ずいぶんな反応じゃない」

?「・・・こんばんは」

男「・・・何か用ですか?」

?「率直に訊くけど、あなた、狐娘を匿ってるわね?」

男「そうですね、居候させてます」

?「あっさり認めるわね・・・それなら話は早いわ。狐娘を私に引き渡しなさい」

男「・・・あなた方の素性が分からないんですけど」

巫女「私は名無神社の巫女よ。こっちは神使。うちの神様の御使いよ」

神使「・・・・・・」コクッ

男「名無神社というと随分遠くから来たんですね」

巫女「そうよ。高速バスはもう乗りたくないわね。身体がガチガチになったわ」

神使「・・・隣のオジさんのいびきがうるさかった」

男「はあ・・・」

巫女「人生初めての都会暮らしは悪くなかったわ」

神使「・・・インターネットさいこう」

男「はあ・・・」

巫女「今の生活を手放すのはちょっと抵抗があるのよね」

神使「・・・地元だとテレビしか娯楽がない」

男(さっきから反応に困るなあ)


男「そういえば気になってたんですよね。あいつがなんで封印されたのか。しかもなんで家の物置にいたのか」

巫女「え? 物置にいたの?」

男「壺の中で体育座りしてたんですよね。そんで蓋を開けたら出てきちゃって」

巫女「あなたが封印を・・・しでかしてくれたわね」

男「えーと、すみません?」

巫女「・・・はあ、まあいいわ。とにかく狐娘を引き渡しなさい」

男「結局、あいつは何したんですか?」

巫女「悪事の数々よ。かなり高位の妖怪でね。記録には色々と書いてあるわ」

男「悪事・・・盗み食いしたとか?」

巫女「・・・あなた、妖怪を馬鹿にし過ぎじゃないの? 凶悪な妖怪がどんなことをしでかすか分かる?」

男「・・・・・・」


巫女「あなたは実感がわいてないかもしれない。でも、あの妖怪は本当は恐ろしい正体をもってるのよ」

神使「・・・人智を超えているのは事実」

男「うーん・・・」

巫女「・・・あなたは騙されてるのよ」

男「騙されてるねえ・・・」

巫女「分かってもらえたかしら」

男「まあ、分かりました」

巫女「そう、ありがと」

男「それじゃあここに呼んでくるんでちょっと待っててください」

男(・・・さて、チビ狐をどこに逃がすか。あんなの一人にさせたらのたれ死ぬから取り敢えず、俺の実家とかに・・・)

ピカッ

男「――――」バタッ

巫女「まったく、平気な顔で嘘を吐くなんて最低の人間ね」

神使「・・・ごめんね」

巫女「この人間は人質になるかしら?」

神使「・・・どっちが悪者?」

巫女「妖怪に決まってるでしょ。悪を滅ぼすが私の使命だもの」

神使「・・・相変わらず極端」


巫女「で、どうなの?」

男「・・・・・・」

神使「・・・特別な縁を感じる」

巫女「それなら、狐娘をここまで誘き寄せる餌になるかもね。隣人から彼の住所含め個人情報は割り出してるし、ヒトカタを送り付けるわよ」

神使「・・・犯罪」ボソッ

巫女「しょ、しょうがないでしょ。常識の外にいる存在を倒すためには常識破りをする必要があるのよ」

神使「・・・気乗りしない」

巫女「あの狐娘を滅して、宗家に私たちの力を認めさせたいのよ! 協力してよ!」

神使「・・・・・・」フゥ…




狐娘「・・・・・・」

巫女「のこのこと出て来たわね、狐娘」

狐娘「この狐娘さまを呼び付けるなぞ、百年早いぞ小童」

神使「・・・久しぶりだね」

狐娘「貴様なぞ知らぬ」

神使「・・・・・・」

狐娘「・・・あやつは無事なんじゃろうな?」

巫女「さあて、あなたが無抵抗のまま滅されるなら、間違いなく無事だけど」


狐娘「ふん・・・わしをあまり怒らせるな」ペカ-

シュンッ…

狐娘「む・・・結界か」

狐娘(この完成度・・・かなり周到な用意をしたようじゃな)

神使「・・・この」

巫女「ここに来た時点であなたの消滅は確約されてるのよ。下準備に時間をかけたんだから」

神使「・・・毎日こっそり、見えにくいところにお札を張ったり、ビニールに包んで埋めてた」

巫女「職質された時は人生の終わりかと思ったわよ!」

狐娘「知るか」

巫女「それに加えて今日は満月の夜・・・白昼ほどではなくても、妖の力は弱るわよね」

狐娘(・・・今のところ奴らの思惑通りというわけか、気に入らん)


巫女「とにかく、あなたの負けよ。無駄な抵抗は哀しくなるからやめてよね」

狐娘「・・・わしは近頃娘っ子から油揚をもらっておるし、今日はたまたま桃缶も食べとるんじゃ」

巫女「はあ?」

狐娘「ひよっ子が勝ち誇るな」グオオッ

巫女「――!?」

神使「・・・」バッ

バチイイッ‼︎

狐娘「ふむ・・・相殺か。中々やるの」

神使「・・・ここまで回復してるなんて思わなかった」

巫女「な、なんで・・・結界は万全のはず・・・」

狐娘「この程度でわしを抑えつけられると思っとったのか」


神使「・・・それだけの力があったから道を踏み外したんだよね」

狐娘「何の話じゃ」

巫女「昔はアナタもうちの神様の使いだったそうね。生臭も食べて、もう見る陰もないけどっ!」

狐娘「まったく記憶にないし、興味もないの」

神使「・・・巫女、下がって」

巫女「な、なに言ってるの! 私がこの妖怪を滅するのよ」

神使「・・・足手まといだよ」

巫女「・・・っ」

狐娘「どれ先ほどで互角ならば、その三倍でどうじゃ?」ドゴオオッ

神使「・・・くっ」バンッ

バチチイィィッ‼︎‼︎

狐娘「ほう・・・では更に三倍ならどうじゃ?」コオオォ…

神使「・・・相変わらず、敵わないなぁ」




トントン…

男「んあ?」パチッ

警備員「君、大丈夫か? こんな時間にこんなところで何寝てるんだ」

男「・・・ここは大学か?」

警備員「飲んでいるわけではないみたいだな」

男「・・・あ!」ポチポチッ

プルル…

大家『・・・何時だと思ってるんだ』イライラ

男「あ、あの、部屋にチビがいるか見てもらえませんか!?」

大家『ったく・・・ちょっと待ってろ』

警備員「君・・・」

男「あ、大丈夫です! ご迷惑おかけしました!」ダダッ

警備員「あ、おい・・・」


大家『もしもし、お狐さんならいないぞ。何かあったのか』

男「っ! あとで連絡します! ありがとうございました!」プッ

大家『ちょっ、気にな――』


男「・・・どこだ、どこにいる」

男(俺のアパートではない。相手のアパート? 友に聞くか)

プルル…

友「こんな夜中にどうかしたかー?」

男「おう、悪い。お隣さんって今いるか?」

友「はあ? なんだよ?」

男「いや、ちょっと大事なことなんだ。どうだ?」

友「夜中に部屋を出た音は聞こえたけど、帰ってきた音はしないな」

男「そうか、ありがとう」ピッ

男(相手のアパートでもない)

男(相手は部屋を借りたり、割と常識的か? いや、一概にそうとも言い切れない。この前に変なのと戦ってる時は裏路地だったから今回も裏路地? いやしかし、相手は予め何かしらの策を張ってたんだ。だから俺は気絶した。それなら前々から準備をしていた? 俺に気付いていながら今まで手を出さなかったことからも理に適っている。相手は狐娘を危険と見ている。ということは、何かしらの設備が必要か? 相手の会話から見るに、そこまで権力をもっているわけでもない? いや何とも言えないな。前々から準備ができるというからにはそれなりに広い場所や私的な建物? 他の神社とか。あり得る。神社の他には・・・公園とかか? そもそもあのチビは拐われたのか? それとも呼び出された? 大家さんが特に不審に思った様子がないということは、どちらかというと呼び出しか? 特殊な術を使って拐ったのかもしれないが、それなら準備の話とはかなりの程度で矛盾する。呼び出しとすれば、何かしらのインセンティブがある・・・俺か? もしくは前からの因縁・・・だがあいつは昔の記憶がないからな。やはり俺を口実にしたと考えるのが理に適っているか。そうだとしたらあいつの知ってる場所じゃないと呼び出せない。道案内で誘導したとしても何かしら特定の名前がついてる場所。何の変哲もない裏路地ではあり得ない。やはり近くの神社? いや、公園という線も一応ある。俺の現在地は大学。ここからなら神社も公園も等距離。おそらくどちらかだ。どっちだ、神社か?)

ピクッ

男(・・・なんとなく、公園な気がする。中華街ではぐれた時も似たような胸騒ぎを感じた)

男(・・・自然に考えれば神社なんだろうけど、ここは超自然な何かを信じるか)

男(論理よりも直観を信じるというのはあまり俺らしくないな)

男(あいつの影響かな)




神使「・・・ぅ」ドサッ

巫女「し、神使・・・!」

狐娘「中々粘ったの。じゃが、もうおしまいのようじゃな」ヒュオォ

巫女「このバケモノ・・・!」

狐娘「なんじゃ、わしがバケモノと知っとったから愚かしくも滅しようとしておったのじゃろう?」

巫女「・・・っ」

神使「・・・悲しい」

狐娘「ふふ、消えるのが悲しいか?」

神使「・・・ちがう・・・わたしたちの時間は確かに存在したのに・・・あなたはそれを忘れている・・・なかったことにしている」

狐娘「・・・・・・」

神使「・・・それが悲しい」


狐娘「ふん・・・覚えていないことなぞ無かったに等しいんじゃ」

狐娘(・・・あれ?)

狐娘(じゃあ、わしが今のことを忘れたら、今までの日々も無かったことになるのか。わしが存在していたことも?)


狐娘(それならば・・・『わし』は一体なんなんじゃ?)

ズキッ…

狐娘「・・・・・・ぐっ、う」ズキズキ…

神使「・・・?」

狐娘「わしは・・・わしは・・・」ズズ…

神使「・・・力に呑まれちゃダメ!」

「ああああああ・・・」ズズズズズ……

巫女「ああっ・・・」

「わしはわしはわしはわしはわしはわしはわしはわしはわしはわしはわしはわしはわしはわしは」ズズズズズズズズズズ……


「・・・ふ、ふふふふふふふ! わしは――」ズズ…

妖狐「わしは――妖艶なる美しき妖狐さまじゃ」ズズ…

妖狐「わしに人間との日々など要らぬ。強く気高いわしに人間との絆なぞ不要なんじゃ」ズズズ…

神使「・・・力に自我が侵食され始めてる」

妖狐「ふふ、よい気分じゃ。礼として一瞬で消してやる」スゥ…

巫女「させないわよ!」バッ

妖狐「鬱陶しいぞ、有象無象が」ブワッ

巫女「きゃぁっ」バタッ

神使「・・・っ!」

妖狐「貴様から消してくれるわ」

神使「・・・私はどうなってもいいからあの娘は見逃してあげて」

妖狐「どうしてわしが弱者の言葉を聞かなくてはいけぬ。貴様らはわしの怒りに触れた」


神使「・・・・・・」

妖狐「貴様ももっと力のある者を携えていれば、あるいはわしに匹敵できたかもしれんがの」

神使「・・・あの娘はまだまだ未熟だけどいつか必ず大人物になる」

妖狐「ふふふ、それならば尚のこと消してやらねばな」ニタッ

神使「・・・そんなことさせない」キッ

妖狐「満身創痍の体で何ができる。大人しく見ておれ」

巫女「・・・・・・ぅ」

妖狐「目障りな人間、まずは貴様から消してやる」

神使「・・・ダメッ」ググ…



男「何やってんだお前?」


妖狐「!」



男「・・・・・・」チラッ

巫女「・・・」グタッ

神使「・・・っ」ボロ…


男「お前がやったのか?」

妖狐「・・・なんじゃ無事だったのか。つまらん奴め」

男「お前がやったのか!?」

妖狐「・・・そうだとも。わしを消そうとするからの。今から逆に消してやるところじゃ」

男「・・・はあ、そんなことしなくていい。というか、やめろ」

狐娘「なぜ貴様に命令されなくてはいけない?」ズズ…

男「はあ?」


妖狐「いつも偉そうに踏ん反り返りおって。いい加減はらわたが煮え繰り返っておったところじゃ。たかが人間のくせに。弱き人間のくせに」ズズズ…

男「・・・なんかお前変だぞ?」

妖狐「これが本来のわしじゃ・・・欲しいものは力付くで手に入れ、気に入らんものは全て排除する。貴様らはわしをバケモノと呼ぶの」

男「・・・・・・」

――狐娘「この甘味が食べたいんじゃあっ、買えーっ、買えーっ!」

――狐娘「この野菜、不味いのじゃぁっ、要らんっ、わしの分も食えっ」

男「・・・いや、いつも通りじゃね?」

妖狐「なに?」

男「お前のワガママと癇癪なんて今に始まったことじゃないだろ。まったく、少しは俺や大家さんに感謝しろよな」


妖狐「・・・うるさいっうるさいっうるさいっうるさいっうるさいっうるさいっうるさいっうるさいっうるさいっうるさいっうるさいっうるさいっうるさいっ!!」ズズズ…

男「お前、ほんとにどうしたんだ・・・?」スタスタ

神使「・・・気をつけて・・・あなたの知ってる狐娘じゃない・・・力に溺れて正気を失ってる」

男「・・・・・・」

妖狐「・・・ふふ、ふふふ、そういえばかつて貴様を殺してやると言ったな。今ここで果たしてくれる」ブオオォッ

男「おっ?」

神使「・・・地獄の業火」

メラメラメラメラメラッ

男「・・・三度目の正直ってか」

狐娘「ふ、ふふふふふ! 死に晒せっ!」


ゴツンッ‼︎


妖狐「・・・・・・い、いたっ」ジワ…

男「危ないだろ、バカ」


妖狐「い、いたいのじゃ・・・ふぇ・・・」ポロッ

男「まったく・・・」ナデナデ

妖狐「ひっく・・・いたいのじゃ、このアホぉっ・・・! アホぉ・・・」

男「アホで悪かったな」ナデナデ


シュゥゥ…


神使「・・・!」

狐娘「し、心配したんじゃぞっ・・・簡単に拐われおって・・・っ」ヒック

男「悪かったって。心配してくれてありがとな」ナデナデ

狐娘「うう・・・」ギュゥゥッ


男「夜も遅いし帰るぞ。・・・その前に、この娘たちを何とかしないと」

狐娘「・・・」チラッ

神使「・・・大丈夫、もう危害を加えたりしない。この娘も私が説得する」

男「あー、本当か? いや、嘘だったとしてもどうしようもないんだけどさ」

神使「・・・あなたが側にいれば多分大丈夫だから」ニコッ

狐娘「・・・っ」ボッ

男「・・・?」

狐娘「・・・でやぁっ!」ゲシッ

男「いてぇ!? なにすんだクソ狐!」

狐娘「うるさいんじゃっ」プイッ


男「ったく・・・この娘の怪我を治してやれよ。あっちの気絶してる娘も」

狐娘「えー」

男「今度、油揚げ買ってやるよ」

狐娘「しょうがないの・・・」シュゥ…

神使「・・・ありがとう」

狐娘「ふんっ、油揚のためじゃないんじゃからの!」

男「いや、完全に油揚げ目的だろ・・・巫女さんはまだ起きないのか」

巫女「・・・・・・」

神使「・・・負ぶって帰るから大丈夫・・・ありがとう」ニコッ

男「おう、気を付けてな」

狐娘「なに、色目を使っとるんじゃ!」ゲシッ

男「いでっ!? おいコラ」グリグリグリグリ

狐娘「あだだだだだだっ!?」

神使「・・・」クスッ



男「あー、東の空が明るくなってきたな」

狐娘「綺麗な群青色なんじゃ」

男「明日が一限じゃなくてよかった・・・」

狐娘「・・・のう、男よ」

男「ん?」

狐娘「わしが怖くないのか? 見たじゃろう? わしの力はその気になれば簡単に人を傷付け、屠ることができるんじゃ。それにわしは男を消し炭にしようとしたんじゃぞ」

男「そうだな」

狐娘「わしはバケモノなんじゃ。わしといても幸せにはなれん」

男「どうしろと?」

狐娘「じゃから・・・その・・・」

男「・・・はあ、そんなことはのっぴきならない状態になったら、そん時にまた考えようぜ」

狐娘「おい」

男「・・・まあ、あれだ。情が移ったんだよ。だから俺のところにいたいうちは居てくれ」ポンッ


狐娘「・・・っ、お主はずるいんじゃ」ジワッ

男「貴様呼ばわりは止めたのか?」ポンポンッ

狐娘「うるさいんじゃっ・・・お主は黙ってわしの居場所になっていろっ」

男「へいへい・・・うわ、大家さんからのたくさん着信きてた・・・あとで連絡しとかないとなぁ」

狐娘「・・・男よ」

男「今度は何だ?」

狐娘「わしは、怖いんじゃ。今が楽しくて、失うのが怖い。封印された壺の中で未だに夢を見とるんじゃないかと不安になるんじゃ」

男「・・・ばーか」ペシッ

狐娘「いたっ、なにするんじゃっ」

男「その痛みは夢だってのか?」

狐娘「・・・・・・」

男「俺はお前の夢じゃねえよ」

狐娘「当たり前じゃっ、わしの夢の幻影ならばもっと可愛気があるわっ」

男「うっせ」


狐娘「・・・・・・」

男「数百年か。封印されてなくてもそんなに生きるのか?」

狐娘「そうじゃの」

男「羨ましい話だな。俺はどんなに長くてもあと五十年くらいしか生きないだろうし」

狐娘「・・・っ」

男「これから先に何があるか分からないけどさ。俺のこと、覚えておいてくれよ」

狐娘「・・・」

男「忘れられるのは寂しいからな」

狐娘「・・・しょうがないの」



狐娘(・・・わしだって忘れたくないわ)


狐娘(わしの大切な居場所なんじゃからの)


狐娘「そういえば、油揚をよこすのを忘れるでないぞっ、十枚じゃからなっ」

男「一枚に決まってるだろ」

狐娘「なんじゃとっ、ケチくさいやつめっ」

男「そんなに頭をグリグリして欲しいのかなあ?」グッグッ

狐娘「や、やめるんじゃ、この暴力男めぇぇっ」


おわり

ボツシーン(巫女and神使と狐娘の戦闘)

巫女「くっ!」

狐娘「食らえ!」ポフッ

巫女「・・・・・・」

狐娘「・・・・・・食らえ!」ポフッ

神使「・・・・・・」

狐娘「・・・・・・あ、あれ?」

巫女「・・・」

狐娘「・・・」

神使「・・・」

狐娘「おい人間」

巫女「なによ」

狐娘「わしは厳選した個体に努力値振りをしなければいけんから帰るぞ」

巫女「このまま返すわけないでしょうが!」ババッ

狐娘「あばばばばばばっ」ビビビ…

【次回予告!】バァン…ッ

【ノットリノナナシがおくる壮大な狐娘シリーズ第2弾!!】ブゥゥン…

【再び日常に帰った二人!】
狐娘「スキーに来たんじゃ!」
男「寒い・・・」

狐娘「離島じゃー!」
男「辺鄙なところまで来ちまった・・・」

【新たなる出会い!】
雪女「ねえ、人里に連れて行ってよ」
男「んん?」

蛇神「くっく、妾を退屈させるでないぞ?」
男「へあ?」

【前作の人物も登場!】
巫女「狐娘を倒すまで帰らないんだからね!」
神使「・・・それよりもまず生活費」

【直面する困難!】
大家「さすがにこの人数は他に部屋を借りてもらうしかないよ」

役人「戸籍なしってどういうことなんですか?」

教授「この講義は必修ですが例年の不可の割合は7割です」

【すれ違う二人・・・】
狐娘「他のメスと乳繰り合ってろ! この猿めっ」ヒック…
男「なんでそうなるんだよ!」

【立ちはだかる新たな敵!】
退魔師「まとめて滅してくれる」
式神「よ――わ――い」

宗家宮司「ふう、君たち三下ではお話にならないよ」
犬娘「ご主人さま、こいつら食い殺していいです?」

【物語は再び動き始める!】
男「取得してみせる! ――単位と戸籍!」

男「俺の邪魔するっていうなら、お前らみんな倒してやるよ!」

【そして衝撃の結末へ――!】
男「――――」

九尾「男・・・? 男、起きるんじゃ・・・男・・・っ!」



【狐娘「“はーれむ”なんて許さないんじゃー!」男「・・・女難の血筋か」】

COMING SOON…

長いこと放置してすみませんでした
完結させたんで許してください
オマケの次回予告は嘘っぱちなんで本気にしないでください
では、ご縁があったらまたお願いします

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