うづりん
百合
凛「卯月とそれをしろってこと?」
P「そうです……やって頂けますか」
凛「せっかく、仕事をとってきてもらってあれだけど……女二人でそれは」
卯月「え、私はいいよ」
凛「は……? だって、CMだよ? 全国放送だよ?」
卯月「それでも、プロデューサーさんが私たちを信じて頂いてきてくれたお仕事だし……」
凛「卯月が……気にしないんなら、あたしもいいけどさ」
P「では、こちらが映像をアニメーションで模したものになりますので、今日中にご視聴お願いします」
卯月「はい、頑張ります!」ニコ
P「よろしくお願いします。撮影は明後日からですが、明日からリハが始まります」
凛「……はい」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1436539268
バタン
卯月・凛「失礼しましたー」
卯月「映像、どこで見ようか?」
凛「休憩室にノートパソコンあったじゃん。あれ使おうか」
卯月「そう言えば……じゃあ、善は急げですねッ」
タタタッ
凛「楽しそうだね」
卯月「はいッ。色々なことに挑戦できるので、ワクワクしてます」
凛「ぶれないよね、こういう色物がきてもさ」
卯月「いろもの?」
凛「あ……ううん、独り言」
凛(卯月はあんまり……こういうの気にならないのかな。確かに、女子同士でそんなに意識するのもおかしいけど)
休憩室
ガチャ
凛「失礼します」
卯月「あ、誰もいない……」
凛「ちょうど良かった……」
卯月「じゃあもらったCDセットするね」
ガシャン
ウイーン
凛「30秒の?」
卯月「そうみたいです」
凛「誰か来る前に、さっさと見よ」
卯月「では、再生押しますよっと」
カチッ
チャラララン――
『甘くてとろける……濃厚な』
卯月「か、顔がだんだん近づいていきますね……」ドキドキ
凛「そうだね」
『キスの味……』
チャラララ――
卯月「わ……この角度のイラストだとなんだか、まるで……」ドキドキ
凛「なに、今さら恥ずかしがってるの?」
卯月「だ、大丈夫ですよッ!できます!」
凛「べ、別に本当にするわけじゃないし」
卯月「だよね……うん。あ、終わった」
凛「もう一回見る?」
コンコン
ガチャ
未央「やっほー! キスのCMに出るんだって?!」
凛「はい?」
卯月「ち、違うよ!?」
未央「え、違うの?」
卯月「違います!」
凛「ほら、ちょっと前に口移しのお菓子のCMあったでしょ。あれのパロディCM」
未央「なんだ、しぶりんと卯月のキスシーンが見れるのかと思っちゃったじゃん」
凛「……いやいや」
卯月「え、ええっと」
未央「もう練習したの? あ、これキットカッ〇さっき買ったんだ。二人にあげるよ!」
ぽいぽいッ
未央「しまむー、襲われないように気をつけなよ」
卯月「おそ……?」
凛「しないからッ」
未央「っと、予定が詰まってるんだ。お先に失礼!」
バタン
凛「……嵐か」
卯月「これ……せっかく頂きましたし、映像をもう一度見て練習してみましょうか……」
凛「う、うん」
カチッ
チャラララン――
チャラララ――
卯月「よーし」
ビリビリッ
カサカサ
卯月「はむッ」
凛「……え、もう」
卯月「ふぉーお!」
凛「う……ちょ、ちょっと待ってよ」
卯月「はふふぁひいふぉふぇふぁふぁふひへふははい……」
凛「なんて言ってるかわからない……」
卯月はサラサラとメモ用紙に、
『恥ずかしいので早くしてくださいと書いた』
凛「卯月も恥ずかしいんだ……」
誤:『恥ずかしいので早くしてください』と書いた
凛「じゃあ、行くよ……」
凛は口を開けようと、卯月の顔を見た。
卯月「……」
頬に赤みが差していた。
凛「……ッ」
卯月「?」
凛「……あむッ」
卯月「……ぷはッ」
凛「……」
卯月「こんな感じでしょうか?」
凛「……」コクコク
卯月「食べないんですか?」
凛「……」
凛「……」
スッ
チュポッ
凛「半分あげる」
パキッ
卯月「ありがとうございます。あーん」
凛「あーん」
ヒョイッ
卯月「あむッ……おいひいです」モグモグ
凛「……チョコだしね」モグ
卯月「あの……私の食べかけとか、嫌でした?」
凛「え?」
卯月「あんまり乗り気じゃなかったし……もし、嫌ならやっぱり」
凛「そ、そうじゃないからッ」
卯月「でも」
凛「とにかく、そうじゃないの」
卯月「なら、私も気にしません」ニコ
凛「……うん」
卯月「凛ちゃん、口の端にチョコついてますよ」
凛「そういう卯月も……」
凛(これって……なんか、ホントにキスしてしまったみたいに見える)
卯月「じっとしてて」ペロ
ふきふき
凛「ありがと」
卯月「どういたしまして」
今日はここまで
凛「あのさ……」
卯月「はい?」
凛「卯月ってこういうことしたことない?」
卯月「CMですか? それなら、何度か」
凛「違う違う。キス」
卯月「え……あ……」フルフル
凛「あー、そっか……じゃあ、同じか」
卯月「え? うそ」
凛「なに? 悪い?」
卯月「そうではなくてッ、凛ちゃんもてそうなのになあって」
凛「そりゃ、何かしらはあったけどさ、実戦経験はないよ」
卯月「凄く慣れてたから、てっきり」
凛(慣れてるように見えたのが驚きだよ……)
卯月「表情も落ち着いてて……私ばかり恥ずかしいのだとばかり」
凛「これでも、内心けっこう……やばかったから。男の気持ちみたいなの、分かりかけたかもね」
卯月「あははッ……なんですか、それ」
凛「ところで、CDどっちが持って帰る?」
卯月「あ、凛ちゃん持って帰っていいですよ」
凛「じゃあ、先に借りる」
卯月「気づいたこととかあれば、教えてくださいね」
凛「んー」
――――
―――
凛の家。
お風呂にて。
ポチャン。
凛「冷たッ……」
凛(卯月には言わなかったけど……本当に触れたらどんな感触がするんだろうとか……思ってしまった)
凛(そんなこと言ったら、引かれそうだな)
凛(上目遣いが焼き付いて離れない……)
凛(キットカッ〇じゃなくて、まるで自分を求められてるような……感じで)
凛(卯月はそんなつもりなかっただろうに)
凛「……」
チャプ。
次の日。
武内P「お二人には、本当に申し訳ないと思っていますが、上から指示が出まして配役を男性に変えるということなんです」
卯月「え、また……急ですね」
凛「昨日の今日でか」
武内P「申し訳ありません」ぺこ
卯月「あ、頭を上げてくださいッ。大丈夫ですよッ、気にしないでください。男性の方というのは……」
武内P「ジャニーズの方です」
凛「相手が変わるのは仕方がないとして、どっちがするの」
武内P「ああ、島村さんです」
卯月「わ……凛ちゃんだから大丈夫だったけど……緊張しますね」
凛「ふーん……卯月ね」
武内P「一応、島村さんが何らかの事情でできなかった場合、代役として渋谷さんにも出て頂きますので、これから二人とも一緒にスタジオに来てください」
スタジオ。
ジャニ「今日はよろしくお願いしますッ」ペコ
武内P「ご丁寧にありがとうございます」
卯月・凛「今日はよろしくおねがいます」
武内P「では、私はこれで」
カツカツカツ
卯月「やっぱり、カッコイイねジャニーズの人って」ボソ
凛「……そおかな」イラッ
凛(へー……こういう優男っぽいのがタイプなんだ)
卯月「じゃ、行ってくるね」
凛「うん」
こういうのファンからクレーム来そうだが
スタッフ「変更点は以上になります。島村さんが口に挟んでからBGM流れて3秒後にジャニさん入ってください」
ジャニ「はい」
卯月「……ッ」ドキドキ
ジャニ「君、緊張してる?」
卯月「え、あ、はいッ」
ジャニ「フリだけだし……大丈夫落ち着いて」
卯月「ありがとうございます……」
凛「……」イラ
ジャニ「……ん?」ニコ
凛「……ッ」イラ
スタッフ「入ってくださーい」
>>21
確かに
チャラララン――
『甘くてとろける……濃厚な』
『それは……甘い夢のようで』
卯月「……あむ」
ジャニ「……いくよ」ボソ
卯月「……ッ」
卯月(……顔が、近い……綺麗顔……なのに……なんでしょうか……)ゾワ
スタッフ「ストップ! ストップ!」
ジャニ「……どうしたの」
卯月「え……」ポロ
スタッフ「何やってるのさ、君」
卯月「え、私」ポロポロ
スタッフ「涙出てるよ、ちょっとメイクさんッ来て来て」
卯月「ご、ごめんなさいッ……え、あれ」
ジャニ「どうしたの? どこか痛めてる?」
スタッフ「そういうことは先に言ってくれないと」
卯月「あの、ごめんなさいッ……もう一回お願いします」
――――
―――
数十分後。
スタッフ「はい、オーケーですッ。卯月ちゃん、いい感じで瞳潤んでたからめちゃ色っぽく撮れたよ。結果オーライかな」
卯月「ありがとうございましたッ」
ピトッ
卯月「きゃッ」
ジャニ「はい、これ飲み物」ニコ
卯月「あ、すいませんッ……頂きますッ」ビク
ジャニ「あのさ、良かったらこの後お昼……」
凛「卯月……、次、移動だよッ」キッ
卯月「あ、凛ちゃん」ホッ
ジャニ「あらら、振られちゃった」
凛「失礼しますッ」
ジャニ「お疲れ様」
卯月「お疲れ様です」ぺこ
――――
―――
カツカツカツ
凛「……」
卯月「り、凛ちゃん……腕、痛い」
凛「あ……」
ピタ
ドンッ
卯月「うぶッ!? あいたた……」
凛「悪いね……急いでたから、つい」
卯月「次って、何か急ぐようなことありましたっけ? レッスン、夕方ですよね?」
凛「……ごめん、嘘ついたよ」
卯月「ええ?!」
凛「……ごめん、何もない。ただの……」チラ
卯月「……?」キョトン
凛「ただの私の我がままだから」
卯月「……そうだよね、やっぱり出たかったですよね、CM」
凛「そういうことじゃないけど……」
卯月「それじゃあ、もしかして……緊張してたのばれちゃいました?」
凛「え?」
卯月「凛ちゃんとやる時はなんだか……恥ずかしくて安心感があったんですけど、いざ男性とやるってなると怖くなっちゃって……」
凛「それで、泣いたんだ」
卯月「お恥ずかしい限りです……あーあ、凛ちゃんとなら良かったのになあ」
凛「何言ってるの……」ドキ
卯月「あ、照れてますね」クスクス
凛「からかわないで」ドキドキ
卯月「えへへ……」
凛「……卯月」
ドンッ
卯月「わッ……ど、どうされました?」
凛「いや……なんかむしゃくしゃして」
卯月「からかったの怒ってます……?」ビク
凛(可愛い……層言えば、背、私より小さいんだっけ)
卯月「り、凛ちゃん?」
凛「あのさ」
未央「やほー!!」
ガバッ
凛・卯月「きゃッ!?」
ドサッ
未央「めんごめんご☆ 勢い余っちゃったやい」
凛「未央……あんた」
卯月「きゅう……」
未央「ごめんね!」ニカッ
凛「はあ……まったく」
卯月「未央ちゃん達……早く、ど、退いていただけたら……」
未央「うおお!? 死ぬな!しまむー!」
凛「やばッ」
卯月「よいしょ……ふう……未央ちゃん、どうしたの?」
未央「え、寂しかったから会いに来ただけだけど」
凛「昨日、会ったばっかじゃん」
未央「分かってないねえ、乙女心を。それより、撮影はどうなった? 二人の誓いのチッスは?」
卯月「あのね、それがかくかくしかじかで――ジャニさんに変わったんだよ」
未央「ぶー! なんだ、つまんなーい。残念だったね、しぶりん」
凛「なんで、そうなるのよ」
未央「だって、したかったんでしょ? しまむーと」
凛「だ、誰が卯月としたいなんて言ったのよッ……はッ」クル
卯月「……あ」ズキ
未央「そ、そこまで言わなくても」
凛「その」
卯月「……ホントに、嫌だったんですね。私、そんなことも知らずに……」
凛「……卯月」
卯月「凛ちゃん、美人だから……私、ちょっと一人で舞い上がってました……」
カツ――タタタタッ
凛「卯月!?」
未央「しまむー!?」
凛「待ってッ」
タタタッ
未央「なに? 修羅場?」
凛「あー、もうッ、話がややこしくなるからちょっとここで待てッ」
未央「わ、わんッ」
凛「卯月ッ」
タタタタッ
卯月「……つ、着いて来ないでくださいッ」
凛「しょうがないじゃんかッ」
卯月「な、なんですかそれッ」
凛「あんたが逃げるから! 止まれ!」
卯月「い、いや!」
凛「はあッ?」
卯月「……あ、いや、あのちょっと気が動転してるだけですので……放っておいてくださいッ」
凛「できないってばッ」
トイレ前
タタタタッ
卯月「あ……」
ヒョイッ
ギイッ
バタンッ
ガチャッ
凛「と、トイレは卑怯でしょ……はあッ……はあッ」
ダンダン!
『あ、あの! 私……凛ちゃんのこと嫌いになったりできませんからね!!』
凛「……ッな」
『凛ちゃん、大好きですからね……』
凛「うッ……」カア
『……大好きだもん』
凛(……私に、なんて言えって言うのよ……)
凛「……ご、誤解だから」
『……誤解?』
凛「私はさ、卯月が思ってるような……純粋な気持ちで……いられなかった」
『……』
凛「そのさ……あのジャニと撮影してる時、なんで隣にいるの私じゃないのかってイライラした……ごめん、それで当たった所ある」
『う、うん……?』
凛「本当はどうしようもないくらい……卯月にキスしたい」
ガタタッ
『きゃッ!?』
凛「う、卯月ッ?!」
ガチャン
キイッ
卯月「……凛ちゃん、今、なんて」
卯月はトイレにしゃがみ込んで、真っ赤になっていた。
凛「二度も言わせないで」
凛もしゃがみ込んだ。
凛「だから、あんまり私を煽らないで」
ギュッ
卯月「……ッン」
凛「……ッ」ゾク
卯月「ご、ごめんね……」
凛「暫らく、このままでもいい?」
卯月「で、でもここトイレですし……」
凛「少し、甘えさせて」
卯月「ええッ」
ギュウ
凛「柔らかい……」
卯月「り、凛ちゃん、人の声が……」
凛「入って」
トスッ
卯月「わッ」
バタンッ
ガチャッ
凛「座って、ここ」
卯月「は、はい」
トサッ
凛「手、膝に置いて畏まり過ぎ……」クスクス
卯月「……あ」
凛「怖い?」
卯月「……ッ」ブンブン
凛「へえ」
卯月「甘えてください……」
卯月は凛の手に指を絡めた。
凛「……ン」
凛の唇が卯月のを捕らえた。
卯月「ッ……ァ」
凛(やわらか……すぎ)ゾクゾク
卯月「息ッ……が……はッ」
凛「……はあッ……」
卯月「ッ……んゥ」
凛(卯月の唇熱くて……気持ちい)
卯月「くるし……ッ」
凛「ご、ごめッ……」
卯月が凛の袖を掴む。
卯月「私、これ以上されたら……変になっちゃいます……」
凛「……」プチッ
卯月「り、凛ちゃん?」
すまんねおちした
凛「卯月……そういう風に言うから、私……期待するんだよ」
凛はゆっくりと卯月の胸に顔を埋めた。
卯月「ッ……あ、あの」ドッドッドッ
凛「すっごく早い」ボソ
卯月「当たり前じゃないですか……」
凛「もう一回、さっきの言って……」
卯月が、えっと呟く。
凛は顔をあげて、卯月を見つめた。
凛「好きって」
卯月「……好き」
凛「もっと」
卯月「好き、大好きッ」
凛「もっと言って」
卯月「私ばっかりずるいです……」
凛「……あー」
首筋に手を当てる。
武内Pのお得意だったな、と凛は思いつつ、
凛「……」
また、卯月に口づけた。
『甘くてとろける……濃厚な』
『それは……甘い夢のようで』
未央「わん……いつまで待ってればいいんだよー……」
終わり
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