木場真奈美「IMCG・ワタシハヘイキ」 (45)
あらすじ
これからは、私を信じて。
注
IMCG第8話
前話
櫻井桃華「IMCG・薔薇色愛情地獄」
櫻井桃華「IMCG・薔薇色愛情地獄」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1434881135/)
設定はドラマ内のものです。
それでは、投下していきます。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1436355034
序
IMCG・オペレーションルーム
兵藤レナ「IMCのコアは!?」
浜川愛結奈「コクピットの中よ……IMCはコクピットを中心にウルフを広がってる」
古澤頼子「パイロットのセンサーは何個か稼働してます」
柳清良「バイタルは正常……生きてはいるようね」
井村雪菜「真奈美さん、応答してくださいぃ!」
西島櫂『おっとっと!どうやって発砲してるの!?』
一ノ瀬志希「ウルフと兵装の接続は止めたよー。つまり」
高峯のあ「IMCが直接動かしてるのよ……」
愛結奈「そうでしょうね」
頼子「真奈美さんが動かしているなら、背中からなら一撃ですから」
櫂『……とにかく!どうにかして、止められない!?このままだと被害が増えるよ!』
池袋晶葉「そうだな……壊れてもいい場所に誘導するか?」
伊集院惠『立ち入り禁止は継続、区域は広げます』
レナ「ふむ……誘導できる?」
大和亜季『どこに、でありますか?』
晶葉「真奈美のIMCなら、IMCGが責任を取るべきだろう」
雪菜「ここ、ですかぁ!?」
のあ「敷地も十分あるわ……適切でしょう」
レナ「そういうこと。櫂ちゃん、誘導お願い!」
櫂『了解!追ってきてるみたいだし、頑張るよっ!』
レナ「IMCG、総員避難を!」
愛結奈「了解。放送、総員、安全な場所まで避難を!」
櫂『フェイズ1は、出来そうもないよね……』
雪菜「ええ……」
晶葉「先にウルフを止めないといけないかもしれないな」
梅木音葉『私は……』
頼子「警戒レベルは上昇せず、出撃は許されません」
愛結奈「こんな事態なのに……」
レナ「音葉ちゃん、空中に一時的に避難して。出撃じゃないわ、武器は全てロック状態で」
音葉『了解しました……ディアー避難します』
頼子「警察には武器ロックの状態であることを連絡」
晶葉「ディアーの発進を急げ!終わったら、職員をドック内からも避難させろ!」
志希「りょうかーい!」
レナ「頼子ちゃん、あそこに電話つなげられる?」
頼子「了解。司令、近くの受話器でお話ください」
レナ「ありがとう。もしもし?IMCGの責任者、兵藤レナよ。アナウンサーにつなげて。一回しか言わないから、しっかり放映すること。よろしい」
川島瑞樹『突如暴走したシュリンクが……へっ?IMCGの責任者から電話?わかりました、つなげてちょうだい』
レナ「聞こえてるわね」
瑞樹『聞こえています』
レナ「要点は三つよ」
瑞樹『何をお伝えしたいのでしょうか?』
レナ「一つ、IMCは人間の強い感情をコアとして形成されること」
瑞樹『はい?』
レナ「二つ、現在暴走中のシュリンクはパイロットがIMC化したこと」
瑞樹『つまり、暴走ではなく、IMCが出現してる、ってこと?』
レナ「三つ、社員のケジメは自分でつけるから、IMCGの敷地近くには近寄らないこと。以上」
瑞樹『ま、待ってください!』
清良「強引ね」
レナ「納得させないと、自由に出来ないわ」
櫂『フェイズ1は行けそうもな、おっと!』
のあ「弾の無駄遣いね……」
晶葉「櫂!ウルフの動きを制限しないとやられるだけだ!」
櫂『わかってる!』
レナ「櫂ちゃん、引きつけて!対処法は考えるわ!」
櫂『了解!こっちだっ!』
雪菜「真奈美さん……」
序 了
1
ゼットテクニカ・会議室
コンコン
財前時子「入りなさい」
財前時子
ゼットテクニカ先進技術開発部の部長。技官の中には彼女の幼い頃を知っている人も多い。
木場真奈美「失礼します」
木場真奈美
海外帰りの女性。多彩な経歴を持つらしい。
時子「座りなさい。話は聞いてるわね?」
真奈美「いいや。契約前に記録を残したくないと言ったのは、そっちだろう」
時子「その通り。私は貴方を社員として雇うために、呼んだ」
真奈美「大企業のグループ会社なんて、真っ当な企業が私を雇う理由なんてあるのか?」
時子「安定した雇用は嫌いのようね」
真奈美「そうは言ってないさ」
時子「フン。契約の話をする前に紹介するわ。レナよ」
兵藤レナ「兵藤レナよ。上司になるから、よろしくね」
兵藤レナ
ゼットテクニカの社員。会社員には贔屓目にも見えない。
真奈美「それで、仕事は何だ?」
レナ「パイロットよ。乗るものが出来ていないから、テストパイロットもだけど」
時子「ゼットテクニカの社員として雇用するわ。手当は十分に」
真奈美「なんだ、戦闘機でも作るのか?」
時子「戦闘機じゃないわ」
レナ「武器は使ってもらうけれど。出来るでしょ?」
真奈美「その辺は調べてるのか」
レナ「そうじゃないと、あなたを呼べない」
真奈美「それもそうだな。武器を使うもの、か」
時子「名前はシュリンク。いずれ必要になるわ」
真奈美「Shrink?縮むじゃないな、精神科医か?」
レナ「正解。米国に滞在歴もあるのよね」
真奈美「精神科医だろうがカウンセラーだろうが、私には向かないよ」
時子「違うわ。言ったでしょう、パイロットよ」
真奈美「なら、シュリンクとはなんだ?」
時子「ロボット、よ」
真奈美「ふむ。もう一つ聞きたい」
レナ「なに?」
真奈美「私でなければいけない理由はあるのか?」
時子「あるわ」
真奈美「あることはわかった。理由はなんだ?」
時子「貴方が適正だから、よ」
2
IMCG・ドック
真奈美「結局……明確にはわからないな」
梅木音葉「なにか……ありましたか」
梅木音葉
シュリンク3・キャットのパイロット。口数は少ない。
真奈美「いいや……独り言だよ」
音葉「……そうですか」
真奈美「なぁ、音葉君」
音葉「なに……でしょうか」
真奈美「IMCとは何だ?」
音葉「私には……わかりません。ただ」
真奈美「ただ?」
音葉「私達に……余裕は無いようですね」
真奈美「ああ。シュリンクのコクピットは最初から6つしかない」
音葉「タイガーは限界のようです……」
真奈美「このウルフに期待しないとな」
池袋晶葉「なんだ、真奈美。心配なのか?」
池袋晶葉
IMCGの技術主任。シュリンクの設計と開発の中心的人物。
真奈美「心配はしてないよ。私が応えないといけない側だ」
晶葉「内蔵兵装への接続システムは順調だ」
真奈美「ああ。私の存在価値を見せてやろう」
3
IMCG・オペレーションルーム
レナ「フェイズ2、完了だけど……」
時子「ハァ……梅木音葉!」
浜川愛結奈「まあまあ、時子、そんなに声出さないの」
浜川愛結奈
IMCGのオペレーター。時子とは学生時代、先輩後輩の間柄。
時子「今言わなくてどうするのよ!梅木音葉、聞いてるわね!」
音葉『はい……』
時子「貴方、何をしたかわかってるでしょうね」
音葉『……』
時子「頼子、どういうことか報告して」
古澤頼子「はい。シュリンク3の状況を説明します」
古澤頼子
IMCGのオペレーター。落ち着いたメガネ女子。
頼子「可動部分がほぼ破壊。コクピット中枢が過負荷のため損傷」
レナ「つまり、動かないということね……」
愛結奈「コクピット、これ大丈夫なの?」
高峯のあ「大丈夫じゃないわ……」
高峯のあ
IMCGの技術職員。ウルフの兵装は彼女が担当している。
晶葉「貴重な一体だが、仕方があるまい。こっちが音葉に見合うものを準備できていなかったんだ」
頼子「対策が必要かと」
音葉『……あの』
時子「なにかしら」
音葉『帰還できないようです……ご協力を』
時子「貴方ねえ!」
愛結奈「どーどー」
レナ「シュリンク4、出していい?」
時子「好きになさい!私は戻るわ!」
愛結奈「お疲れー。だそうよ、晶葉ちゃん?」
晶葉「お許しも出たことだ。真奈美、ウルフを出すぞ!」
真奈美「了解した。まぁ、こんな初出撃も良いだろう」
レナ「お願いね」
音葉『お願いします……』
真奈美「人助けは気が楽さ。急ぐぞ」
4
IMCG・オペレーションルーム
雪菜「……」
レナ「雪菜ちゃん!」
雪菜「は、はいぃ!」
レナ「集中して。私達がやらないといけないの」
雪菜「はいっ!」
愛結奈「IMCに乗っ取られたウルフは、ドルフィンを追って移動中!」
櫂『結構な弾撃ったと思ったけど、まだなの!?』
のあ「……半分未満でしょうね」
晶葉「薔薇のIMCには使わなかったからな」
櫂『厳しいかぁ……』
惠『IMCGまで残り150メートル、避難は完了してます』
レナ「惠ちゃん、近づきすぎないように」
惠『了解です。保護している少女もいるので、警戒します』
清良「もしかして、桃華ちゃんがいるの?」
亜季『はい。少々同行してもらっているであります』
レナ「仕方がないわね。櫂ちゃん、ちょっとだけ頭に入れといて!」
櫂『了解っ!あと、質問!』
頼子「なんでしょうか」
櫂『真奈美さんが、IMCになる理由ってなに!?おっと!』
レナ「理由ね……」
雪菜「それは、たぶん……」
櫂『ごめん、後で!聞いて考えられるほど余裕ないっ!』
レナ「了解!IMCG敷地内まで引きつけることに集中!」
愛結奈「雪菜ちゃん、カルテ準備出来る!?」
雪菜「超特急でやりますっ!」
5
IMCG・ドック
真奈美「これが、ディアーか」
一ノ瀬志希「どう、凄いでしょ~」
一ノ瀬志希
IMCGの技術職員。真奈美とは海外で会ったことがあるらしい。
真奈美「ほぼ完成か?」
志希「外側だけねー。大切なところは出来てないよ」
真奈美「人の形を、してないな」
志希「動かしやすいから、人の形だったけど、音葉ちゃんにはその制約ないでしょ?」
真奈美「その通りだ。が、あまりいい気分はしないな」
志希「どーして?」
音葉「イメージです……羽ばたくイメージだけで動かします」
真奈美「操作方法はわかってるよ」
音葉「私は……もっと自由に」
真奈美「なぁ、音葉君」
音葉「……どうかしましたか」
真奈美「自分でなくなる感覚は、ないのか?」
音葉「もちろん……ありますよ。私は一時的に変身します」
真奈美「そうか。ありがとう、頑張ってくれ」
志希「さー、テストしよっかー。音葉ちゃん、よろしく~」
6
IMCG・オペレーションルーム
時子「集まってるわね?」
レナ「ええ。皆、来て」
時子「お知らせは二つよ」
愛結奈「良いニュース、悪いニュース?」
時子「どっちも良いニュースよ。一つは、私が異動するわ」
愛結奈「良いニュースね」
真奈美「……」
時子「そう冗談めかして言ってくれると助かるわ」
頼子「どちらに異動となるのですか」
時子「経営側よ、副会長にされたわ」
レナ「副会長なんて役職、あったかしら?」
時子「なかった、のよ。意味はわかるでしょう」
愛結奈「出世してるのに」
時子「顔は簡単に出せなくなるわ。レナ、任せるわ」
レナ「もとよりそのつもり」
真奈美「もう一つは、なんだ?」
時子「警察の協力を取り付けたわ」
レナ「良く説き伏せたわね」
頼子「オペレーションが円滑に進みます。助かります」
時子「……」
愛結奈「苦虫を噛んだような顔して。条件があるわけね?」
時子「ええ。IMCGは、警察に吸収されるわ」
真奈美「警察に、か」
時子「ある意味では正しいことではあるわ。悪くはさせない」
レナ「それは、いつ?」
時子「昨日今日で突然変わらないわよ。ただ、自由度は落ちる」
レナ「その日までに準備はしろ、ってことね」
時子「ええ」
頼子「それにしても、警察ですか。ふふっ」
真奈美「警察官になるとは思わなかったな」
時子「頼むわよ。IMCの出現範囲は拡大してるのよ」
レナ「そもそも、警察の力は借りないと無理だった」
時子「立場なんてどうでもいいわ。IMCGはやるべきことをやるしかないの」
愛結奈「わかってるわよ、そんなの最初から」
7
IMCG・オペレーションルーム
愛結奈「IMC出現!」
レナ「出現位置は!?」
頼子「IMCGより南西600メートル」
レナ「少しずつ離れてるわね……真奈美さん!」
真奈美『こちら、真奈美』
レナ「ウルフで出撃準備!」
真奈美『了解』
音葉「私は……どうしましょうか」
レナ「音葉ちゃんもディアー出撃待機」
愛結奈「警察に連絡!周囲500メートルに避難指示!」
頼子「屋上カメラの映像を出します」
レナ「仮面をつけてるように見えるわね」
愛結奈「むしろ、ほぼ仮面じゃない?」
頼子「IMCに破壊行動は見られません」
レナ「準備出来次第、シュリンク4出撃!」
8
仮面のメイクルーム
真奈美「フェイズ1開始、さて今回はどうかな」
真奈美「鏡台……メイクルームか?」
井村雪菜「どちら様ですかぁ……?」
井村雪菜
仮面のIMCのコア。鏡台で自分の顔を見つめている。
真奈美「お邪魔だったかな?」
雪菜「メイクの勉強中なんですぅ」
真奈美「ほう」
雪菜「でもぉ、なんだかしっくりこなくてぇ」
真奈美「試行錯誤が必要さ。なんなら、アドバイスでもしようか?」
雪菜「はいっ!少し、待っててくださいねぇ」
9
仮面のメイクルーム
雪菜「うーん、やっぱり違う。こんなの違う」
真奈美「……」
雪菜「変わらないと。メイクは変わるための道具じゃないと」
真奈美「なぁ、君」
雪菜「変わらないと、変われないと意味なんてない……」
真奈美「君は自分のことが嫌いなのか?」
雪菜「……」
真奈美「どうなんだ?」
雪菜「わかりませんか?」
真奈美「わからないよ」
雪菜「キライです。だから、変わりたいんです」
真奈美「自分の顔は見えてるか?」
雪菜「鏡に映ってますぅ」
真奈美「いや……見えてない。君の顔は仮面の下だ」
雪菜「仮面があるなら、私は欲しいんです」
真奈美「否定はダメだ」
雪菜「否定?」
真奈美「自分を否定するな。仮面で隠してしまうんじゃない」
雪菜「あなたにはわからないんです!私の気持ちなんて、わからないんです!」
真奈美「そうやって、仮面に隠すのか?」
雪菜「隠したいことくらい、いくらでもあります」
真奈美「そうだな、私にもある。君の気持ちも、わかる」
雪菜「なら、否定しないでください」
真奈美「だから、私が話そう」
雪菜「あなたが?」
真奈美「私は木場真奈美だ。私の話をしよう」
10
仮面のメイクルーム
雪菜「どうして、外に逃げたんですか……?」
真奈美「私の隠し事は、いつだって一緒だよ」
雪菜「自信がないんですか」
真奈美「きっと、そういうことだろうね」
雪菜「どうして、ですか?」
真奈美「どうして、ね」
雪菜「なんでもできるじゃないですか……」
真奈美「出来てもきっと、意味はない」
雪菜「……」
真奈美「きっと、今の方がいい。結局、戻ってきたのにも意味がある」
雪菜「強いのは嫌いですか」
真奈美「ここにいれるのは、これまでがあったからだ」
雪菜「……」
真奈美「私は話したよ。海外に逃げて、武器として扱われた。今もそうだ」
雪菜「……嫌になりませんか」
真奈美「君を助けられる位置にいる。それだけでも意味があるよ」
雪菜「……私は、そんな自分の意味が持てません」
真奈美「意味は、これから持てばいい。君自身を否定するな」
雪菜「……」
真奈美「メイクは好きなのか?」
雪菜「えっ……」
真奈美「どっちだ?」
雪菜「好きです。色んな、私になれるんですぅ」
真奈美「そうだよ、私、でいいじゃないか」
雪菜「ああ……そうですねぇ」
真奈美「答えは出たか?」
雪菜「はい。でもぉ……」
真奈美「どうした?」
雪菜「この仮面は硬いと思いますぅ」
真奈美「ああ。私を信じろ。絶対に、助け出す」
11
IMCG・オペレーションルーム
愛結奈「シュリンク両機、IMCG敷地内に侵入!」
櫂『よしっ!真奈美さん、答えて!』
頼子「応答なし。IMCは攻撃姿勢を崩さず」
愛結奈「接続範囲内だけど、フェイズ1移行は無理よ」
櫂『でも、ここまで来たから解決ってわけじゃないじゃん!』
清良「わかってるわ」
レナ「どうにかして止めるわよ」
晶葉「銃弾はかなりの数が残ってるな。全部撃たせるか?」
のあ「さっきから頻度が減ってるわ……いつになることかしら」
櫂『雪菜ちゃん!カルテは!』
雪菜「……」
レナ「雪菜ちゃん?」
雪菜「ばか、ばか、真奈美さんのばかぁ!」
櫂『わっ!』
雪菜「カルテなんて作るまでもないですぅ!惠さん、聞こえてますかぁ!」
惠『聞こえてるけど、どうしたの?』
雪菜「薔薇のIMCのコアだった、櫻井桃華ちゃんと会話させてください!」
惠『え?待って、確認を取るわ』
雪菜「櫂さん、準備してくださいっ!」
櫂『ごめんっ!何をすればいいかわかんない!』
レナ「雪菜ちゃん、何か考えでもあるの?」
惠『大丈夫だそうよ』
雪菜「司令、後でお願いしますぅ!桃華ちゃんとつなげてください!」
櫻井桃華『わたくしに聞きたいこと……なんですの?』
櫻井桃華
薔薇のIMCのコアだった少女。シュリンクの機能を逆手に取り、真奈美の内面に侵入した。
雪菜「真奈美さんの内側を見ました、ね」
桃華『ええ……そうですわ。人の庭を踏み荒すように』
雪菜「どんな景色だったか、教えてください」
桃華『寂しい荒野でしたわ。危険な場所で、彼女はいつも兵器のように自分を定義していましたわ』
雪菜「ありがとうございますぅ。辛い体験の後なのに」
桃華『辛くなどありませんわ。あのままの方が、きっと』
雪菜「わかりますぅ。惠さん、ありがとうございましたぁ」
惠『ええ、目的は達成したかしら?』
雪菜「はいっ!司令、私に作戦がありますっ!」
レナ「言って」
雪菜「真奈美さんは、ばかです!私にはあんなこと言ったのに、自分は過去に引きずられるなんて!自分を兵器だと思って、落ち込んじゃうなんて、ばかですっ!」
愛結奈「さっきから物凄い勢いで伝わってるわ」
頼子「同感です。作戦を言ってください」
雪菜「だから、否定してくださいっ!」
櫂『否定、否定……なるほど』
頼子「伝わってるようですね」
愛結奈「具体的には何をするわけ?」
雪菜「ウルフを、ドックに落としてくださいっ!」
12
IMCG・オペレーションルーム
愛結奈「ドックに落とす?」
雪菜「そうですっ!櫂さんもドックで戦ってください!」
櫂『ドックでシュリンク2体は大丈夫なの?』
頼子「もちろん、ダメです」
晶葉「ふむ……雪菜!」
雪菜「はいっ!」
晶葉「面白い!レナ、やるぞ!」
レナ「確認していい?根拠は?」
雪菜「近づくことが大切なんです。銃器を有利に使わせないために」
晶葉「近接格闘なら、絶対に勝てる」
レナ「絶対、ね」
晶葉「話は単純だ!」
のあ「……性能差」
志希「ドルフィン強いもんね~」
晶葉「ドルフィンは、私が最後に作り上げた格闘戦の傑作だ」
雪菜「ウルフなんかに負けません」
晶葉「格闘ならな!」
雪菜「櫂さん、聞いてください」
櫂『うん。わかってる』
雪菜「真奈美さん、お願いしますっ!」
晶葉「コクピットだけは破壊されるな!それ以外は許す!」
レナ「ドックのハッチを開きなさい!」
頼子「ハッチオープン」
レナ「ウルフは今をもって破棄」
のあ「いいのかしら……?」
晶葉「構わん」
清良「……」
レナ「櫂ちゃん!」
櫂『行きますっ!』
レナ「連れて帰ってきなさい!作戦開始!」
13
IMCG・オペレーションルーム
のあ「……ウルフの兵装は主に二つ」
雪菜「櫂さん、接近してくださいっ!」
櫂『いっくぞぉ!』
のあ「手部、腕部、肘部の飛び道具……」
愛結奈「IMCが発砲!」
櫂『当たらない!』
晶葉「真奈美が操縦してるわけじゃないんだ」
のあ「……こちらからの制御もしてない」
レナ「震えた手で当てられるなら、当ててみなさい」
のあ「もう一つの兵装は……」
雪菜「ウルフ、牙を抜きました!」
のあ「……牙と名付けたカタナ」
愛結奈「櫂ちゃん、止まらないで!」
櫂『わかってる!』
頼子「IMC、振りかぶります」
愛結奈「受け止めて!」
頼子「ドルフィン、IMCに接近」
雪菜「牙、落ちてきます!」
櫂『おりゃあ!』
愛結奈「ドルフィン、牙を受け止めに成功!」
志希「ドルフィンの左手、壊れたね~」
のあ「……必要経費よ」
頼子「ドックのハッチオープン、完了しました」
櫂『押し込むよっ!』
頼子「ドルフィン、IMCを捉えました」
レナ「牙を手放せばいいのに」
晶葉「残念だが、このIMCにそんな知恵はないよ」
清良「兵器でありたくないと、そう思う感情で出来てるものね」
雪菜「戦いになんて、向いてないんです」
愛結奈「ドルフィン、IMCをドック方向へ押してるわ!」
頼子「IMC、牙を放棄」
櫂『おっとっと』
晶葉「さっさと、牙を捨てるんだ!」
櫂『もちろん!ドルフィンに武器は不要!』
雪菜「突撃!」
頼子「IMCの反撃」
愛結奈「止めた?」
雪菜「ドルフィン、ウルフの左腕を取りましたぁ!」
櫂『これは真奈美さんから習った!』
レナ「櫂ちゃん、一気に行きなさいっ!」
櫂『ドックに落とすよっ!』
14
IMCG・オペレーションルーム
愛結奈「ドルフィン、IMCと共にドックに落下!」
清良「上を取ったわ」
櫂『おっりゃあぁぁ!』
頼子「ドルフィン、格闘中」
レナ「櫂ちゃん!跳弾だけには気をつけて!」
晶葉「万が一当たっても気にするな!」
のあ「コアに直接当たらなければ……平気よ」
レナ「だから……」
カーン!
清良「……」
レナ「……」
志希「あれ~?ゴングを鳴らすタイミングじゃない?」
愛結奈「いや、正解!」
頼子「時間無制限、戦いの鐘がなりました」
雪菜「櫂さん、パンチパンチですよっ!」
15
IMCG・オペレーションルーム
愛結奈「IMC、左手部兵装を発射!」
頼子「ドルフィン、発射方向をずらしました」
雪菜「左手を破壊しましたぁ!」
櫂『次!』
頼子「IMC、ドルフィンにクリンチ」
櫂『あー、もう!このまま行くよっ!』
のあ「ボクシングなら……反則だけれど」
レナ「構わないわ!」
愛結奈「右フックがヒット!」
雪菜「櫂さん、足元ですぅ!」
櫂『うおっとっと!』
頼子「ドルフィン、転倒しました」
雪菜「ウルフ、右肘部兵装を開きましたぁ!」
レナ「櫂ちゃん!」
櫂『抑えが甘い!』
のあ「……あら」
愛結奈「想像と違った動きだったわ」
頼子「ドルフィン、IMCを蹴り飛ばしました」
レナ「そのまま立ち上がったわね。さすが」
雪菜「兵装は外れました!」
晶葉「櫂!今なら開いてるぞ!」
櫂『了解!行くよっ!』
頼子「前蹴りが肘部にヒット」
櫂『もういっちょ!』
頼子「右ストレート直撃」
レナ「どこかで見たことあるわね」
愛結奈「真奈美がタイガーでやってた動きそのままじゃない」
清良「研究の成果が出てるわね」
雪菜「ウルフの右肘が壊れましたぁ!」
のあ「後は……左腕」
頼子「IMCに動きがあります」
櫂『うわっ、なにこれっ!』
晶葉「IMCそのものだ!櫂、十分に注意しろ!」
雪菜「逃げられる距離はないですよぉ!」
櫂『なら、近づくよっ!』
頼子「IMC、ドルフィンに接触」
櫂『せーのっ!』
雪菜「左フック!」
愛結奈「右ストレート!」
頼子「ウルフの頭部を破壊」
レナ「右手、IMCに取られたわ」
雪菜「ウルフ、左腕部の兵装開いてますっ!」
櫂『晶葉ちゃん、壊すよ!』
頼子「ドルフィンの頭部カメラ破損しました」
愛結奈「良い頭突きだったわよ!」
晶葉「許す!そのまま、止めろ!」
櫂『ありがとっ!』
レナ「あらら……」
清良「タダじゃないのに」
レナ「まっ。お金のことに悩むのは私の仕事」
雪菜「櫂さん、避けてください!」
櫂『よっ!』
頼子「避けました……か?」
愛結奈「どうみても避けたわよ?」
のあ「……どうやって」
晶葉「なるほど。次のプランは決定だ」
レナ「今よ!」
雪菜「パンチ、パンチ!」
頼子「左フックがヒット」
愛結奈「あー、ローブローもいいのね」
雪菜「わっ、膝蹴りですっ!」
頼子「いわゆる金的です。ウルフの腰部負傷」
清良「言い方があるでしょう……」
雪菜「ウルフ、倒れましたぁ!」
愛結奈「IMCもドルフィンから剥がれたわ!」
のあ「両腕……破損」
頼子「ウルフが利用できる飛び道具はありません」
雪菜「飛び道具なしですっ、司令!」
頼子「接続可能です」
レナ「櫂ちゃん!」
櫂『はいっ!』
雪菜「真奈美さん、連れて帰ってきてくださいぃ!」
レナ「フェイズ1移行!」
16
見知らぬ土地
櫂「真奈美さん」
真奈美「……来たか」
櫂「来たよ。状況はわかってる?」
真奈美「わかってる。私のIMCは負ける寸前だ」
櫂「うん。あたしはフェイズ1に突入した」
真奈美「恥ずかしい話だが、これが私の、風景だ」
櫂「……」
真奈美「役に立たなければ意味がない。武器がなければ強くもない」
櫂「……」
真奈美「平気だと、と言い聞かせておいてこのザマだ」
櫂「……」
真奈美「私は兵器だ。そうでなければ、生きていけない」
櫂「……」
真奈美「そんな自分に向き合えない。こんな生き方を……どこかで嫌っていた」
櫂「……」
真奈美「でも、私は、そうでなければ私でいられない」
櫂「……るか」
真奈美「今も、昔も、私は兵器だ。それでも平気だ」
櫂「知るかぁ!」
真奈美「な……」
櫂「あたしは知らないっ!真奈美さんの過去なんて知らない!」
真奈美「……そうか」
櫂「あたしにとっては、ただの料理上手な頼れる先輩なだけ!」
真奈美「……私には違う」
櫂「雪菜ちゃんは、それでも待ってるのに」
真奈美「そうか、彼女は、知ってた、な」
櫂「そんなに捨てられないなら、今の現状を見てよ!」
真奈美「……」
櫂「真奈美さん!こっち、見て」
真奈美「なん……だ」バチン!
櫂「ほら」
真奈美「……やられたな」
櫂「あたしは勝った」
真奈美「ああ……」
櫂「ウルフは倒した、IMCも倒せる、真奈美さんにも勝った」
真奈美「勝ったと、言えるか」
櫂「その気なら幾らでも。あたしは負けない、真奈美さんのためなら負けない」
真奈美「なぁ……櫂君」
櫂「なに、言い訳はもういいよ。真奈美さんは兵器じゃない。あたしにも勝てない兵器なんて、要らない」
真奈美「そうじゃない……」
櫂「でも、先輩としては必要、IMCGには真奈美さんが必要だよ」
真奈美「違う」
櫂「……なら、なに?」
真奈美「シュリンクは、後2体だ」
櫂「わかってる」
真奈美「終わりまで、負けないか」
櫂「負けない。あたしは、ウルフの分まで戦うよ」
真奈美「……可愛い後輩を信頼するとしよう」
櫂「真奈美さん」
真奈美「いいか、私はちょっと器用なだけの、一般人だぞ。何も出来ない」
櫂「そうなりたいんでしょ?」
真奈美「ああ……実は、な」
櫂「ダメ」
真奈美「ふふ、ダメか」
櫂「何も出来ないわけないでしょ。IMCGで働いてもらうから」
真奈美「ああ……戻ってもいいか」
櫂「レナさん次第だけど」
真奈美「聞いてみないとわからないな」
櫂「うん、そうだね」
真奈美「でもな」
櫂「どうしたの?」
真奈美「ウルフのコクピットは硬いぞ」
櫂「わかってる。信じてっ!」
真奈美「ふっ……わかった」
櫂「あれ、変なこと言った?」
真奈美「いいや……頼む」
櫂「行くよっ!」
17
IMCG・オペレーションルーム
愛結奈「フェイズ1完了!」
雪菜「真奈美さん、聞こえますか!?」
のあ「……通信機」
晶葉「壊れてるな」
櫂『よしっ!』
雪菜「櫂さん」
櫂『任せて。信じて、もらったから』
雪菜「大丈夫です、私も信じれました。今もこうして、います」
愛結奈「ええ……そうね」
頼子「やりましょう」
レナ「オーケイ、コア摘出開始!」
18
IMCG・オペレーションルーム
愛結奈「監視カメラの映像見れてる?」
櫂『うん……慣れないけど』
清良「頭突きの件は反省ね」
のあ「……少し上」
櫂『ここ?』
晶葉「オッケーだ!思いっきり、殴れ!」
櫂『せーのっ!』
頼子「コクピット露出しました」
晶葉「これで、完全に終わりだな」
雪菜「櫂さん、見えてますか!?」
櫂『見えてる!』
愛結奈「コア抽出完了!」
雪菜「バイタル正常……無事ですぅ!」
レナ「フェイズ1完了!フェイズ2移行!」
頼子「IMCに動きあり」
のあ「……逃げるわよ」
晶葉「ウルフを捨てたか!」
頼子「IMC、完全にウルフから分離」
愛結奈「と、飛んだわ!」
雪菜「ハッチが閉めきれません!」
櫂『あ、逃げられたっ!しまった、カメラ壊れてる!』
晶葉「ふむ。兵器を乗り捨てるIMCだったのか」
志希「寄生虫みたい」
愛結奈「対策を考えないと……」
頼子「IMC、ドックから脱出」
雪菜「外の監視カメラの映像に切り替えますぅ!」
レナ「櫂ちゃん、誘導するわ!追って……」
ズドーン……
のあ「ディアーが……墜落したわ」
音葉『すみません……制御装置の不調で墜落しました』
レナ「そうなの?」
頼子「音葉さんが言うなら間違いないです」
愛結奈「音葉ちゃんが嘘つくわけないわよ」
志希「タイムスタンプ改竄~」
のあ「確かに……不調だったようね」
晶葉「居眠りによる制御異常だ、私のデータだとそうなってる」
志希「本当は適当に補完するのに、バグってたー。で、いい?」
頼子「ということです」
愛結奈「ディアーは出撃してないけど、事故でIMCが潰れたわ」
レナ「はい、フェイズ2完了!お疲れ様!」
櫂『いいの……?』
雪菜「無事に終われば、いいんですっ!」
19
IMCG・女子寮
清良「はい、特に異常はなさそうね」
真奈美「ちゃんと、看護師だったんだな」
清良「軽口が叩けるなら、大丈夫ね」
真奈美「謝るよ。心配をかけたな」
清良「……私に謝られても困るわ。真奈美さんも、知ってたでしょう」
真奈美「……ああ」
雪菜「おじゃまします」
真奈美「雪菜君か」
雪菜「言ってくれれば、良かったのに」
清良「自分が弱いだなんて、言えないのよ」
雪菜「それでも、ですぅ。だって、仲間なんですから」
真奈美「……ありがとう」
清良「司令と話してくるわね。出来れば連れてくるから、待ってて」
雪菜「お願いしますぅ」
真奈美「櫂君に負けたよ、私は」
雪菜「はい。だから、もう、真奈美さんは兵器なんかじゃありません」
真奈美「本当に……強いな」
雪菜「私にも、真奈美さんにも出来ないことをしてるんですよ。ずっとずーっと、強いです」
真奈美「本当に、その通りだ」
雪菜「あのね、真奈美さん」
真奈美「なんだ?」
雪菜「IMCGに誘ってくれた時、本当に嬉しかったです」
真奈美「……」
雪菜「私でも、私だからこそ、出来ることを示してくれました」
真奈美「ああ……」
雪菜「真奈美さんが、ここまで引っ張ってくれました。私はIMCGの一員として頑張ります。だから……」
真奈美「……」
雪菜「私を、私達を信じてください」
真奈美「ふ……君に言われる日が来るとは、思わなかった」
雪菜「真奈美さんを私は信じれました。今度は私を信じてください」
真奈美「櫂君にも同じことを言われたよ……本当に、君は……成長したんだな……」
雪菜「でしょ?うふふ」
真奈美「……雪菜君、実は」
雪菜「なんですかぁ?」
真奈美「いや……なんでもない。機会があったらにしよう」
雪菜「はい。疲れてるでしょうから、ゆっくり休んでくださいねぇ」
真奈美「わかってるよ。お休み、雪菜君」
雪菜「おやすみなさい、真奈美さん。また、明日」
20
IMCG・ドック
晶葉「派手にやったな」
櫂「あはは……」
のあ「いいわ……直るものは直せばいい」
志希「しゅうごーう!修理開始~」
晶葉「ウルフはダメだ。完全に分解しよう」
音葉「……」
櫂「壊しちゃった、やり過ぎたかな」
音葉「いいえ……必要なことでした」
櫂「ありがと。がんばらないとね。真奈美さんの分まで」
音葉「……」
櫂「どうしたの、音葉ちゃん?」
音葉「櫂さん……お願いがあります」
櫂「……なに?」
音葉「何にも……負けないでくださいね」
櫂「うん、音葉ちゃんもね」
音葉「ええ……」
晶葉「櫂!」
櫂「なに、晶葉ちゃん!」
晶葉「ドルフィンの修理ついでに、改善策を取るぞ!来てくれ!」
櫂「わかった!行ってくるね、音葉ちゃん」
音葉「行ってらっしゃい……櫂さん」
EDテーマ
アイの証明
歌 西島櫂・梅木音葉
終
製作 テレビ〇日
オマケ
PaP「真奈美ちゃん、ってどうやってウチに来たんだっけ?」
CoP「スカウトですよ」
CuP「おかげで、ボイストレーナー候補が一人消えたんですよ」
PaP「また、あの人がやらかしてるのか」
CoP「結果オーライですよ。真奈美さん、ウチの良心ですからね」
PaP「そうだな。少なくとも僕じゃない」
CoP「自覚はしてるんですね……」
おしまい
あとがき
8が真奈美さんの数字だと個人的に思ってるので、第8話は真奈美回です。
ちょうど折り返しです。もうしばらくお付き合いくださいな。
次回は、
ヘレン「IMCG・カーテンコール」
です。
それでは。
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