男「洒落怖に満ちた世界で」 (25)

全ての洒落怖作者や、怪談に敬意を込めて

もし、これを読んで奇妙な現象に出くわしても作者は一切責任を負いません

全て、洒落怖や民間伝承、怪談を元にしたパロディです。

あと、書き溜めは無く、脳内プロットだけなので進行遅いです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1436309956

僕は、気づいた時には既に『見える』体質だった
普段はぼんやりと、強く集中すればはっきりと見える

そんな僕が、一枚のツアーチケットを貰ったのは運命だったのかもしれない

先輩「ホラー好きの彼女と行こうかと思ってたのに……もうこんなん要らない!お前にやるわ!!」

そう先輩に押し付けられたチケットには、『本当に怖~いオカルトツアー』と書かれていた

男「オカルト……」

その時は気のせいとしか思っていなかったが、チケットからというより、その行く先から嫌な気配がしていた

捨てるのも勿体ないし、怖いもの見たさもあってか、僕はそのツアーに行ってみることにした

男「えぇと、持っていくものは……」

着替え、と一応清め塩も持っていくか……
なんて思ってたら、ふと、押入れに仕舞っていたアレを思い出した
昔、近所の神社の神主さんがくれた『注連縄』を大きな円形にしたものだ。神主さんは「やばそうな霊を見かけたら、この注連縄を敷いてその中で息を潜めなさい」と言っていたっけ
ほぼ無意識に、僕は注連縄を鞄に突っ込んでいた

男「あとはお経と……御札……は剥すと怖いしいいや」

兎も角、数日後にぼくはバスの中にいた
四泊五日の長旅だ、何も起こらない事を祈った

結局初日は、出ると噂の旅館への移動で終わった
夕暮れを告げる鐘が遠くから聞こえてくる、男4人の部屋に割り振られた僕は、他3人より少し遅れて部屋入りしたんだった

幕間

??「お前……それ……」

??「大丈夫です。知ってて持ってるんですから」

??「それ、ほんまか?だとしたらお前……」

??「これ以上は、何も触れないでください、まだあと1年くらいなら持つ筈ですから……」

幕間終了

部屋にいた男達と自己紹介を交わした、とりあえず彼らについて記しておく

Tさん、寺生まれで、このツアーから嫌な予感がしたので来てみたらしい

Mさん、こっちは神社の生まれで、友人に誘われて来たらしい、当の友人は当日ドタキャンしたらしいが

Uさん、生まれは一般家庭だが、弟子も独り立ちできそうだし、師匠に追いつきたいからとツアーに参加したらしい。彼で三代目に当たるそうだ

ツアーには、5,6人の大学生のグループが来ていた
ウトウトしながらバスで聞いた限りでは、今夜『降霊術』を行うらしい
Tさんは「そんなことしなくても出るのに……」と言っていた

まあ、男が4人集まって、卓があれば大概麻雀大会になる
勝つとも負けるともない流れで打ち続け、気づけば深夜になっていた

じわ、と一瞬視界が曇った気がした

Uさん「やっと来たか」

配牌の時、Uさんはそんな事を漏らした

Tさん「しくじったか……余計なもんまでついてやがる……」

Mさん「切るんは簡単じゃけど、切るか?」

Uさん「いや、じきに来るだろうからそれまで待とうかと思ってる」

最初は麻雀の話かと思った
だが、旅館の雰囲気がそれは違うと伝えていた
下からゆっくりと何かが近づいてくる感覚がする……指が震える……

Tさん「驚いた、お前も来てるのが解るのか」

男「え?」

Tさん「下から、来てるだろ?」

そう言うとTさんはポケットから数珠を取り出す

Uさん「こりゃあ……またとんでもねぇのを呼んだな」

Mさん「俺じゃあどうしようもならんな、任せた」

卓から、いや、その下から床をすり抜けて黒いようなもやが立ち上る
よくわからないが、見てる。僕たちを

Tさん「破ッ!!」

Tさんの手が光る、モヤは文字通り霧散してしまう

Uさん「本物は下か、その下だな……」

Mさん「塩か縄はねぇか?結界張って逃げられねぇようにすれば祓えるじゃろ?」

男「注連縄ならここに!」

咄嗟に、鞄から清め塩と注連縄を引っ張り出す

Mさん「っと、流派ちょい違うけど……これならなんとかなりそうじゃ」

Uさん「さあ、行こうか」

Uさんの目が爛々と輝く、待ってましたと言わんばかりにポケットから奇妙な形の首飾りを出して首にかける

Uさん「お前、これ持ってろ」

ぽい、と別の首飾りを渡される

Uさん「俺のよりだいぶ弱いけど魔除のタリスマンだ、それでもそこらのアミュレットより効果あるけどな…後で絶対返せよ?」

頷いて、4人で部屋を出た

僕たち以外にも宿泊客は居た筈だし、旅館の従業員はまだ居る筈だが、廊下は妙に静まっていた
1階への怪談を降りる、一歩毎に視界の端がチラつく

Tさん「~~~~~」

お経、だろうか?Tさんがブツブツと呟きながら先頭を歩く
廊下は薄暗いが、1階の廊下はさらに視界が悪い気がする

僕たちの部屋の真下の部屋の前で、Tさんは立ち止まる
中からうめき声が聞こえる

Uさん「先にどっちだ?」

Tさん「手ごわくはなってるが、元々のほうは一人でなんとかなる、問題は呼ばれた方だ」

Mさん「俺が剥すだけ剥してみる、祓いは任せた」

襖の前に塩を盛り、注連縄を手にしたMさんは襖を勢いよく開けた

Tさん「破アァ!!」

Tさんの手から白い光が迸る
低いうめき声を上げて倒れたのは、武者の霊だった

Mさん「そらっ!」

武者を囲むようにMさんの投げた注連縄は落下する
Tさん「止めだ!破ぁ!!」

今度こそ武者の霊は消滅した

Uさん「次だ、手遅れになる前に!」

Mさんは取り出したカッターで掌に傷をつけ、近くでぐったりしてる5人の大学生に、清め塩と一緒に口に入れ始めた

Mさん「~~…~~~~」

何か呟いて居る。全員の口に入れ終わった後、メモ翌用紙を取り出して呪文のようなものを唱え始めた

大学生の体から、何か小さな鬼のようなものが出てくる

Mさん「うっし、出たぞ……」

Tさん「破ッ!」

鬼が一匹、また一匹と消されていく
全ての鬼を消し去る頃には、時間は2:00を回っていた

信じられなかった
僕は、インチキでもなんでもない『本物の除霊』に立ち会ったのだ

たぶん、偶然居合わせただけの3人の(僕を入れて4人の)霊能者が、めのまえの怪異を解決したのだった


男「……で、あれらはなんだったのでしょう?」

とん、と牌を切りながらそう尋ねてみた

Uさん「この宿のあの部屋は、昔濡れ衣を着せられた武士が暗殺された場所なんだ。たぶん、畳の下の板張りの床には当時の血痕が残っていた筈だよ」

Uさん「それがあの武者霊、今回は特殊だったけど、普段はもうちょっとぼんやり見える筈だ」

要は、無念の怨霊の類いである

Uさん「二つ目は『ヒサルキ』の一種だと思う」

男「ヒサルキ?」

Uさん「猿を被る鬼と書いて『被猿鬼』、動物にとりつけて使役する一種の式神に近いかな」

Uさん「で、あれは典型的な召喚失敗例だね、制御できないとああやって人に取り憑いて凶暴化させてしまう」

Mさん「取り憑いたばっかりなら今回みたいに剥せるが、一度完全に乗っ取られちまうと俺じゃ無理だな」

Tさん「今回は本体を引き出せたから勝てたようなものだ……」

そうして、初日の夜は更けて行った

なお、僕はその日ボロボロに負けた

期待
Mさんだけ元ネタがわからない・・・・

>>17
『コトリバコ』の神社生まれのM
パロディということで、人やモノから霊体を引き剥がす専門の霊能者として出させて頂きました
Tさんは言わずもがな
Uさんは『師匠』シリーズの主人公です。作者から名前を取りました

二日目

前の席からこんな噂が聞こえる

モブ「八尺様の伝説って、このへんらしいぜ」

モブB「マジか~……怖いな……」

八尺様、たしか人を攫っていく身長八尺程の帽子を被った女性だったか
特徴的な笑い声があってたしか……

「ぽぽぽっぽ……」

Uさん「後ろだ、振り向くなよ?」

なんてこった……

Tさん「ま、霊能者が4人も居れば怪異の方から寄ってくるだろうよ」

Uさん「……グウの音もでねえ……」

Mさん「札はさっき寄った神社でありったけ買ったし、塩も買い足しておいた」

たしか、四隅に盛り塩した空間にははいれないんだったか?

Uさん「さっき、アレがあぁなってました……気づかれる前に逆側から街を出ればセーフ……の筈です」

「ぽっぽぽぽ……ぽぽぽ」

モブC「ひ……」

僕等四人は聞き逃さなかった
八尺様が笑った後、後ろで男が小さく悲鳴をあげたことを

まずいことになった……僕等は満場一致でそう感じた

しばらく走ると八尺様の気配は消えた
ある男だけは顔面蒼白のまま震えていたが、とにかく応急処置をしなくては

Mさん「バスを部屋とすると……運転席の方に御札貼らせて貰ってくる」

Tさん「とりあえず四隅と窓、入口ドアに御札が必要だろうな……」

男「も、盛り塩は?」

Uさん「揺れるバスで盛り塩は意味無いだろう、そんなものよりは注連縄の方がまだ有用だ」

男「僕、あの人に注連縄貸して来ます」

男の周囲に注連縄、バスは御札まみれ

Tさん「これで、暫くは持つはずだ」

もう日は沈んだ、旅館までの道中に現れない事をただただ祈るしかない
そんな祈りは、直後に崩れ去った訳だが……

チリ……と後部に貼られた御札がゆっくりと燃えていく

「ぽぽ、ぽぽぽぽぽ」

コンコンと後部の窓が鳴る、居るのだ、カーテンの向こうに
カーテンの締め切られたバスの中にコンコン、コンコンと音が響く
速度が上がった、運転手にも聞こえたらしい

Tさん「もう速度を上げた所で無駄だよ、上に居るからね」

上に、つまり屋根にしがみついているのだ

Uさん「今調べた、例の旅館は『地蔵の内側』だ」

空気が凍る、やつの徘徊する街から今夜は出られないというのだから当然だろう

「ぽぽ、ぽ、ぽっぽぽぽぽ……」

Uさん「探してるな、現状、カーテンやら注連縄で奴は確認出来ていないはず……」

Tさん「頼む、効いてくれっ!!っ破ぁ!!」

天井越しに彼の法力が炸裂する
正体なんてかくして居られないと言わんばかりに、高らかに叫ぶ

「ぼっ」

どん!ざしゃ……

Tさん「あたりが浅い!また直ぐに来るぞ!」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom