真尋(ニャル子が……触手の塊に見える)(96)

『這い寄れニャル子さん』の二次創作です
vipで完結できなかった『ニャル子「真尋さーん! 待ってくださいよー!」真尋「……」ビクッ』
を書き直して投稿します

グロテスクな表現やエロスは原作より少ないくらいですが、
ニャル子の見た目に関して異常な状況を設定しました。
ご注意ください

朝の通学路。

ニャル子「真尋さーん、待ってくださいよぅ」

真尋「……」ビクッ

ニャル子「はぁ、はぁ……もう、置いて行っちゃうなんてひどいじゃないですか」

真尋「あ……ああ」

ニャル子「うーむ……起きてからお顔の色がすぐれないようですが……どうかしましたか?」

真尋「べ、べつに何でもないぞ?」

ニャル子「そうですか……なら、早く行きましょう、ホームルーム始まっちゃいますよ」

うじゅるっ!

真尋「うわあっ!」ババッ

ニャル子「真尋……さん?」

真尋「なんでもない、何でもないったら、ほら、行くぞ」

ぐにゅる!

ニャル子「おおおっ!? 真尋さんから手を握ってくださるなんてぇ! もー手が洗えませーん!」アホゲブンブン

真尋「ほら急げ!」

ニャル子「はーい!」

うにゅる うにゅる

真尋(ニャル子が……触手の塊に見える)

教室

健彦「おはよう八坂くん」

真尋「お、おはよう」

ニャル子「はーい! おはよーございまーす!」

にゅるにゅるん!

健彦「あはは、おはようニャル子さん」

珠緒「おはよう八坂くん、ニャル子さん」

真尋「……おはよう」

ニャル子「うっふっふー……おはようございます」

うねうねうね……

真尋(なぜだ……なぜみんな気づかない?)

ニャル子「うふふー! 真尋さんと、おててつないで恋人登校っ!」

真尋(どう見たって、太いのから細いのまで取りそろえたミミズの群れだろ……なんでコイツがニャル子なんだよ?)

ニャル子「真尋さん、席に行きましょうよ」

真尋「あ、ああ……そうだな」
真尋(声も……壊れたエレキギターみたいだ)

真尋(なによりクラスの奴らがひとりも騒ぎ出していない……気づいているのは僕だけか?)

ニャル子「ふんふーん……うふふ」

ぐねぐね

真尋(太い触手を……本体の前でひらひらさせてる)

ニャル子「真尋さんと……うふふー」

真尋「それが手……なのか」

ニャル子「はい?」

真尋「い、いや、何でもない……」

真尋(あ、あぶなかった……口に出しちゃダメだ)

真尋(そういえば、他のふたりはどうなってるんだろ……今日は朝早くに出たって母さんが言ってたけど……)

ハス太「おはよー真尋くん」

クー子「おはよう……少年」

真尋「……っ!? そんな……」

真尋(そんな……そんな……)

ハス太「どしたの? 真尋くん……汗すごいよ?」

クー子「……少年?」

真尋「なんで……普通なんだ?」

ハス太「フツー?」キョトン

クー子「少年、何を言っている?」

真尋(待て待て待て……落ち着け……ニャル子の様子がおかしいからって、こいつらまで変な見た目になっていたら……)

ハス太「どーしたの?」

クー子「……少年、なんだかおかしい」

真尋(心の安まる暇がない……ともかくおかしいのは……)

ニャル子「うふふー」

ぐにゅるんぐにゅる

真尋(こいつだけか……)

ガララ……

担任「ホームルームはじめるぞー……全員席に着けー」

授業中

ニャル子「はいはいはーい! その問題まっかせてください!」

数学教師「おや? それでは八坂さん、お願いします」

ニャル子「うっふっふー……真尋さん、私の勇姿を見ていてくださいね」

うにゅる……うにゅる!

真尋「あ……ああ……」

真尋(たぶん……あの塊が頭……だな。アホ毛みたいな触手が生えてるし……)

ニャル子「ふーむ、これはなかなかに高度な問題ですね……」カッカカッ……カカカッ

真尋(触手でチョークつかんでるし……)

教師「ふむ、図は描けてますね……んっ!?」

真尋(気づいた!?)

ニャル子「あーきてこーきて……」カリカリカリ

教師「あ、あの……八坂さん……」

ニャル子「答えは……8です!」

数学教師「……」

真尋「……」

ニャル子「……」

ぐにゃぐにゃ

数学教師「パンツじゃないですか!」

ニャル子「違います! 自分数字の8なんです!」

数学教師「うぐ……数学の記法に絡めてくるとは……まあいいでしょう……席に戻りなさい」

真尋(いいのかよ? というか、そこじゃないだろ!!)

ニャル子「ふふ、なかなか手強い問題でした」

真尋「そ、そうか……」

ニャル子「しかーし! 真尋さんへの愛があれば、私に不可能などないのです!」ダキツキッ

真尋「ひ……ひいっ!?」

数学教師「コラ、授業中は静かに……つぎの問題は……」

真尋(……なんなんだよ、コレ)

放課後

真尋(よし……ニャル子はいないな?)コソッ

真尋(余市や暮井に相談する訳にもいかないし……ハス太もクー子も気づいていないみたいだし……ここは……)

ニャル子「真尋さん、みーつけたっ!」

にゅるにゅるん!

真尋「ひぎゃ! よ……よう、ニャル子、偶然だな」

ニャル子「もう、朝からひどいですよう……気づいたらお姿が見えないんですもの」

真尋(まずい……このままじゃ……まてよ?)

真尋「なあ、ニャル子」

ニャル子「はい、なんでしょう?」

真尋「今日……なんか雰囲気違わないか?」

ニャル子「あれ? わかりますか?」

真尋「やっぱりなにか……」

ニャル子「たはー! 真尋さんには隠し事はできませんねぇ! じつは勝負下着をつけてきたんですっ!」グイッ

うじゅるっ!

真尋(触手の塊が……グニャグニャと動いてるだけにしか見えない……)ジー

ニャル子「あ……あの、真尋さん?」

真尋「なんだ?」

ニャル子「見せておいてなんですけど……そうじっと見つめられると……照れちゃいますぅ」

真尋「あ……ごめん」プイッ

ニャル子「お、おや? 真尋さん、やっぱり今朝から変ですよ?」

真尋「そ……そんなことないぞ?」

ニャル子「変ですって……私がスカート持ち上げようものなら、『見せなくていいから』とかおっしゃって、さらに見せようとする私に『いいかげんにしろ!』……ってフォークをぶっ刺す……それがパターンじゃないですか」

真尋「むぐ……今日は……そんな気分じゃないんだよ」

ニャル子「いえいえ、フォークを刺さないまでも、真尋さんは私のスカートの中を凝視する方ではないでしょう? 頬を赤らめて、ぷいっとそっぽ向かれるはずなんです……『そ、そんなもの見せるなよ』……って」

真尋「う……」

ニャル子「真尋さん……正直に言ってください……なにか隠してませんか?」

真尋「か……隠してるのは、お前だろ! ニャル子ッ!」

ニャル子「ひゃっ!? そんな怒鳴らないでくださいよぅ」

うじゅる……

真尋(たぶん……アレが両手だ……両耳抑えて……うっすら涙浮かべて……)

ニャル子「真尋さん?」

真尋「その、怒鳴って悪かった。ごめん」

ニャル子「え……真尋さん!?」

真尋「……」

ニャル子「本当にどうしたんですか、今朝から……」

クー子「ニャル子ーっ!!!」

ニャル子「どぬわああっ! どっから湧いて出やがりますか!?」

クー子「勝負下着……うれしい……私のために……」

ニャル子「あんたのためじゃねーですよ! これは真尋さんとのステディな関係のために!」

クー子「ステディな関係……しよ?」

ニャル子「なに目を潤ませやがりますか! 離れなさい!」 ぐじゅる……ぐじゅる……

真尋(クー子が……触手に捕まってる……ようにしか見えない……)

クー子「すごい……ニャル子……おとな……」

ニャル子「ぬわわわっ!? スカートめくらないでください!」

ぐねぐね

真尋(いまのうち……)

真尋「先、帰るからな」

ニャル子「あっ!? 真尋さん! 置いてかないでくださいー!」

クー子「ニャル子……」

ニャル子「うそ、いつもより力強い……」

クー子「だいじょうぶ……やさしく……する……んちゅー」

ニャル子「う、嘘でしょう? ……ぎにゃー!」……ぎにゃー……ギニャー……ギニャー……ニャー……ヤー……

@プティ・クティ

ルーヒー「それで、相談に来たのね?」

真尋「そうなんだよ……こういうのはルーヒーに聞くのがいいんじゃないかって」

ルーヒー「八坂真尋、状況をまとめると、あなたはニャルラトホテプが触手の塊に見える……と?」

真尋「うん」

ルーヒー「でも、他の邪神たちはいつもどおりの姿なのね?」

真尋「そうだ」

ルーヒー「八坂真尋、確認させてちょうだい……あなたは本当に、ニャルラトホテプの姿を見たの?」

真尋「見たよ」

ルーヒー「こんな?」

フリップボード「http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/e/ea/nyarlathotep.jpg

真尋「そうそう、こんな」

ルーヒー「そう……」ピトッ

真尋「まて……どうして僕のおでこを触る?」


ルーヒー「熱はないようね」

真尋「あってたまるか!」

ルーヒー「落ち着きなさい、八坂真尋。ニャルラトホテプがこの姿をとっていたら、あなたはどうなっていたと思う?」

真尋「どうって……あ……」

ルーヒー「間違いなく、正気ではいられないでしょうね」

真尋「それなら、なんでニャル子はあんな格好なんだよ!」

ルーヒー「ずいぶん堪えているようね……いいこと? 八坂真尋、ニャルラトホテプがあの姿をとったなら、あなたが無事であるはずがない」

真尋「……でもっ!」

ルーヒー「わかってるわ。でも、私はあなたが嘘をついているとも思えない」

真尋「ルーヒー……」

ルーヒー「他の邪神たちが動いていないところを見ると、あなたに危険が迫っているわけでもなさそうだし……しばらく様子を見なさい」

真尋「あいつといっしょに居ろって!?」

ルーヒー「いままでもそうしてきたでしょう? 私もできるだけ調べてみるから……」

真尋「……わかった。ありがとな」

ルーヒー「八坂真尋」

真尋「なんだ?」

ルーヒー「たこ焼き、買ってかない?」

真尋「材料は地球産か?」

ルーヒー「それは秘密です」

真尋「……帰る」

ルーヒー「ふふ、またどうぞ」ノシ

家。

真尋「ただいまー」

冒涜的で破滅的なギターの悲鳴のような混沌とした声「おかえりなさーい! 真尋さんっ!」

うじゅる……うじゅる……

ニャル子「もう真尋さん……こんな時間までどこ行ってたんですかぁ」

真尋「う……ちょっとな」

ニャル子「お食事にします? お風呂にします? それとも、わ・た」

真尋「飯にしよう」

ニャル子「あーん、最後まで言わせてくださいー!」

うじゅるっ!

真尋「抱きつくな! 動きにくい!」
真尋(ぎゃああああ! うぎゃああああ!)

ニャル子「もう、照れちゃって! 真尋さーん♡」

真尋(照れてない照れてない! さわるなああああ!)
真尋「もう、いいかげんにしろよ、放せって」グイッ

ニャル子「もう、いけずぅ……」ぐじゅる

頼子「尋くんおかえりなさい」

真尋「母さん、今日のご飯は?」

頼子「スパゲッティよ」

ニャル子「私も手伝ったんですよー!」

うじゅるぎゅるぎゅる

真尋「う……」

頼子「あら、おなか空いてないの?」

真尋「す、すいてるよー……すいてるんだけど……」

頼子「……けど?」

ハス太「真尋くん、おかえりなさい!」

クー子「少年……おそい」

真尋「ああ、ただいま……」チラッ

ニャル子「ん?」

うじゅるっ

真尋「はぁ……早く食べよぅ……」

ニャル子「真尋さん、どうぞっ!」

ぐじゅるん!

真尋「あ、ああ……」
真尋(その触手で! 緑色の粘液の垂れてる触手で、皿にさわんなあああ!)

ニャル子「大盛りにしておきました! 私の”愛”のようにっ!」

うじゅるっ!

真尋「あーそうかよ……あれ?」

ニャル子「どうしました?」

うじゅるっ!

真尋(緑色の粘液が……皿に付いてない? ……やっぱり僕の目がおかしいだけなのか?)

一同「いただきまーす」

ハス太「はむっ……わあ美味しい!」

ニャル子「ふふん、そうでしょうとも! 私の真尋さんへの愛がたっぷり入っているんですから!」

うじゅるうじゅる

真尋(フォークもきちんと使ってるし……触手で、あんなに器用に道具を使えるのか?)

クー子「ニャル子の愛……うふふ……うふふふふ……」ちゅるるる

ニャル子「あーもう、気色悪いこえ出すんじゃねーです!」

にゅるにゅるん

真尋(どっちが気色悪い……でも、動きも言葉遣いも……やっぱりあいつなんだよな……)

ニャル子「真尋さん、お味はいかがです?」

真尋「ああ……美味いよ」
真尋(美味い……本当に……)

ニャル子「いやったー! 真尋さんが私の料理食べてくれましたー!」

真尋「……はっ!? うえ……ぺっぺ……」

ニャル子「ううぅ……それはさすがにひどいですよぅ、真尋さーん」

風呂。

真尋「ふー……いい湯だ……」

真尋(なんでニャル子のやつ、あんな格好に……クー子もハス太も気づいてないみたいだし、母さんも、学校のみんなだって……)

ガララ……

真尋「ん? だれ?」

頼子「尋くん?」

真尋「母さんか……なに?」

頼子「ちょっと出かけてくるから、寝る前に火の用心だけお願いね」

真尋「はーい」

頼子「じゃあ、行ってきまーす」

……ガララ

真尋「母さん、出かけるのか……あれ?」

ガラララッ!

ニャル子「まっひろさーん!」うじゅるじゅるるる!

真尋「ぎゃああああああ!」

真尋「出てけ!」

ニャル子「そんなことおっしゃらず……きちんとタオル巻いているじゃありませんか」

真尋「え……? オムそばみたいになってる!?」

ニャル子「オムそば? まあそれはともかく、さあ、こちらへどうぞ、お背中お流ししましょう!」

真尋「な、なんでだよ」

ニャル子「お義母様が出かけられたので、いまこそはと参上しました。さあさあ、湯船から出て、こちらへ!」

真尋「だからどうして!」

ニャル子「どうしてって……今日の真尋さん、なんだかいつもと様子が違ってらっしゃいましたから……」

真尋「う……」

ニャル子「普通に聞いてもわからないなら、裸のコミュニケーションを! と思いまして」

真尋「裸……ねえ……あはは……はぁ……わかったよ」

ニャル子「おやや!? どうしたんですか真尋さん? いつもなら私をメッタ刺しの上湯船に沈めてお風呂から出て行かれるというのに!」

真尋「人を猟奇殺人犯みたいに言うな!」ザバ……

ニャル子「わお! 目のやり場にこまっちゃいますー!」 にゅるにゅる!

真尋「ほら、背中、流してくれよ」

ニャル子「んふふーそれでは失礼して……」

うじゅる……うにゅる!

真尋「……はぁ」

ニャル子「物憂いため息ですねえ……なんだか影もあって……まあ、そんな真尋さんも魅力的ですけど!」

うにゅるにゅる……ごしごし

真尋「……なあニャル子」

ニャル子「はい?」

真尋「ニャルラトホテプ星人って、いろんな姿になれるんだよな」

ニャル子「そうですねえ……」

真尋「たとえば、触手の塊みたいな」

ニャル子「なれますよ……もしかして真尋さん、ご覧になりたいのですか?」

真尋「いや……いいよ」

ニャル子「お湯、流しますよー」

ざばー

真尋「……」

ニャル子「真尋さん、本当に、何かあったんですか?」

真尋「……べつに」

ニャル子「……」

うじゅるっ!

真尋「ひいっ!?」
真尋(抱きついてきた!?)

ニャル子「真尋さん、お話になりたくないならけっこうです……でも、私はいつでも真尋さんの味方ですから」

うじゅるりゅん

真尋「……っ! ……っ!!!」
真尋(触手が! 触手がああああ! ぎゃあああああ!)

ニャル子「私は、いつもニコニコあなたの隣に這いよる混沌、ニャルラトホテプですから、いつも、真尋さんのそばに居ますから……」

真尋「ニャル子……お前……」

ニャル子「真尋さん……」

にゅるにゅる……

ニャル子「んっふっふ……」 うじゅるん

真尋「……ていっ!」ザクッ

ニャル子「あんんぎゃあああ! い、いきなりなにするんですか!」

真尋「それはこっちのセリフだ! いい話から下ネタに移行したのは、なんとなくわかるんだよ!」

ニャル子「な、なんと!? okサインだったんじゃないんですか?」

真尋「だれがそんなサイン出すか!」

ニャル子「うむぅ……私としたことが、タイミングを見誤るとは」

真尋「そんなタイミング、永久に来ないからなっ!」

ニャル子「ううぅ……こうなったら、強行突破ですっ!」 がばあっ!

真尋「う……」
真尋(くそ……さっきは手がわかったけど、今はどの触手を刺せばいいのか……)

ニャル子「おや? やっぱりokなんじゃないですか……まっひろさー」

ガララララッ

クー子「ニャル子ーっ!」

ニャル子「ひでぶうっ!?」

クー子「ニャル子……裸で少年といっしょ……ずるい……」

ニャル子「裸じゃねーです! タオル巻いてますから!」

クー子「だいじょうぶ、今から裸にする……」グイッ

ニャル子「ちょ……真尋さーん! あなたのニャル子がピンチでーす。助けてー!」

真尋「さて、上がるか」

ニャル子「おおう!? まって真尋さん、せめて一瞥くらいくれても……」

真尋「……」チラッ
真尋(ニャル子とクー子……イソギンチャクに隠れるクマノミみたいだ……)

ニャル子「おおう!? まるで水族館の展示動物を見るような素晴らしい視線! ありがとうござます!」

クー子「ニャル子……ちゅー」

ニャル子「って、んなコト言ってる場合じゃありません! 放して! 放しやがりなさいクー子!」

真尋「ふう、いいお湯だった……」

「ヤッ、ダメ、ドコサワッテンデスカ」
「ニャルコ……カワイイヨ、ニャルコ」

真尋「しばらく出てこないだろうな……」

ハス太「真尋くん、もう上がっちゃったの?」

真尋「ハス太……なんでお前まで脱衣所にいるんだよ」

ハス太「僕も、真尋くんとお風呂に入りたくて……///」

真尋「はあ……頬を赤らめるな、しばらく風呂は空かないだろ……居間に戻ろう」

ハス太「うん」

「ク……コノ……ヒャンッ、ソコハダメデス」
「ウフフ、ニャルコ……ウフフフフ……」

ハス太「はい、牛乳」

真尋「ありがと」ゴクゴク

ハス太「真尋くん、なんだか疲れてるね」

真尋「やっぱり……わかるかな?」

ハス太「うん……今日は早く寝た方がいいよ」

真尋「そうだな……」

「アッー」

ハス太「なに、いまの声? ……ニャル子ちゃん?」

真尋「……気のせいだろ」

チュンチュン……

真尋「ん……朝か……」

ニャル子「うふふ、おはようございまぁす」

うにゅるっ!

真尋「うぎゃああああああああ!」

ニャル子「うわあああっ!? なんですかっ!?」

真尋「う……あ……あ、朝から刺激が……いや、なんでもない。勝手に人のベッドに入るな!」

ニャル子「もう、おどかさないでくださいよぅ」

真尋「驚かされたのは僕のほうだ……ああ、san値が下がる……」

ニャル子「それは大変! さあ、私の胸でニャルコニウムを補給してください、真尋さんっ!」

真尋「……どこが胸だよ」

ニャル子「ああっ! ひどいですよ真尋さん! クー子じゃあるまいし、脱いだらすごいんですからね!」

真尋「……ああ、もう! 出てけーッ!!!」

ザックン!

ニャル子「たわばー!!!!」

ニャル子「うっうっ……ひどいですよぅ……真尋さぁん」

ぐにゅるぐにゅる

真尋「ええい! 泣くなうっとうしい!」

頼子「尋くーん、ご飯よー」

真尋「はーい、ほら、着替えるから出てけよ」

ニャル子「わかりましたよぅ……しくしく」

にゅるにゅる……

真尋「はあ……」

真尋(あんなに緑色の粘液出してるのに、ベッドはぜんぜん汚れてない……)

真尋(やっぱり……)

真尋「僕が見えてるだけ……なのか?」

通学路。

ニャル子「まひろさーん! 待ってくださーい!」

真尋「ていっ」

ザクッ!

ニャル子「うわらばっ!」

教室。

ニャル子「真尋さん、お昼ごいっしょしましょー!」

真尋「とりゃっ!」

ザクン!

ニャル子「おぴょぴょー!」

放課後。

ニャル子「真尋さん、いっしょに帰りましょう!」

真尋「せいっ!」

ズブン!

ニャル子「ふぎゃあああ!」

ニャル子「うっうう……今日の真尋さん、いつもにも増して大胆すぎます」ボロッ

ハス太「うわ、ニャル子ちゃん、フォークだらけ……」

クー子「ニャル子、だいじょうぶ?」

ニャル子「愛の鞭と考えればコレもご褒美……と、言いたいところですが、さすがにキツいですねぇ……」フラリ

ハス太「わっ……ニャル子ちゃん?」

ニャル子「へへ、ちょっと疲れちゃいました……もう、ゴールしてもいいですよね?」

クー子「ニャル子、そのゴール……違う」

ニャル子「……はい?」

クー子「ニャル子を見てて……」

ハス太「うん……わかった」

ニャル子「……どこに行きやがりますか?」

クー子「少年を、問いただす」

ニャル子「な……クー子! 真尋さんに……手は……出させねえです!」

クー子「勘違いしないでニャル子……恋愛は正々堂々……正面突破で行けばいい……卑怯な事はしない」

ニャル子「はっ!? どーだか? いつものあんたのやり口を見ていたら、どこからそんな言葉が……」

クー子「ハス太くん」

ハス太「はいっ! ごめんねニャル子ちゃん!」

ドスッ

ニャル子「ふぎゃるごおっ!?」 

……ガクリ

クー子「寝た?」

ハス太「う……うん。気絶した……かな?」

クー子「ハス太くん、ニャル子をお願い」

ハス太「クー子ちゃん、僕が行っても……」

クー子「ううん。あなたでは、少年を問い詰められない……」

ハス太「う……」

クー子「それに、これはたぶん私の役目」

ハス太「……わかった」コクリ

クー子「行ってくる」

@プティ・クティ

ルーヒー「……オムそば?」

真尋「そう。知らないか? オムライスみたいに、焼きそばを薄焼き卵で包んだ……」

ルーヒー「いいえ、知ってるわ。それじゃあ八坂真尋、あなたはニャルラトホテプの身体に巻かれたバスタオルは見えたのね?」

真尋「そうだけど……それがどうかしたのか?」

ルーヒー「……つまり、あなたの目はニャルラトホテプの一張羅や制服は見えないで、触手の塊として認識している。それなのにバスタオルは見えたの……これはどういうことかしら?」

真尋「えっと……いつもの服は見えないのに、バスタオルが見える……何か違いがあるのか?」

ルーヒー「ええ。あなたがいつもニャルラトホテプの一部だと認識できるほど、あの子が着慣れている服はあなたの目には見えない……でも、ニャルラトホテプの服として定義されていなかったバスタオルは、視覚の上書きから除外された……」

真尋「視覚の上書き? ……それじゃあ、誰かが僕の視覚をいじってるって事か?」

ルーヒー「ほぼ間違いないわ……あなたもそう思うでしょう?」

真尋「……え?」

クー子「少年、すまないが……話は聞かせてもらった」

真尋「……クー子」

クー子「犯人に……心当たりはある?」

ルーヒー「残念ながら……でも、こんな現象を起こす手段は、私の知る限り宇宙でただひとつ」

クー子「……xoth」

真尋「な……あれは、壊したはずだろ!?」

クー子「少年、起きている現象を客観的に観察し、起こしうる原因を絞り込めば、結果は自ら現れるもの……そう、ばっちゃが言ってた」

ルーヒー「八坂真尋、あなたが標的になっている理由はわからない……でも、手段がわかれば、対策も立てられる」

真尋「まさか、またクトゥルーランドに行くのか?」

ルーヒー「その必要はないわ。今朝行って調べてきたの……もぬけの殻だったわ」

真尋「そうか、あの残骸が……」

ルーヒー「いいえ、八坂真尋。本当にもぬけの殻だったの……破壊したxoth初号機の残骸も、試作機も、設計図も見本のソフトも……何もかもなくなっていたわ」

真尋「それじゃあ……だれかが……」

クー子「だれかが……持ち出している」

ルーヒー「そういうことになるわね」

真尋「どこにあるかまではわからないんだな」

ルーヒー「残念ながら……でも、手がかりはあるわ」

クー子「……有効範囲」

ルーヒー「そう、xothの効果が届く距離は限られているわ。少なくとも、この街にはあるはずなの」

真尋「xothの試作機を探し出せばいいんだな?」

ルーヒー「ええ」

真尋「そうか……それならなんとかなりそうだ」

クー子「そこで少年……話がある」

真尋「なんだ?」

クー子「少年、どうしてニャル子に言わない?」

真尋「なんでって……」

クー子「ひとこと言えば済む事。ニャル子が触手の塊に見える。気持ちが悪いから近づかないでくれって」

真尋「そんなこと……たとえあいつが相手でも、言えるかよ」

クー子「……チッ」

真尋「おい、いま舌打ちしただろ!?」

クー子「してない」

ルーヒー「はぁ……あなた、傷心のニャルラトホテプを手込めにしよう……なんて考えては居ないでしょうね?」

クー子「ドキ……してない」

真尋「おい、言ったな? ドキって言ったよな?」

クー子「そんなの、どうでもいいこと……少年、どうして言わない?」」

真尋「そりゃ……決まってるだろ。あいつが……傷つくから」

クー子「フォークを刺してるのに?」

真尋「それとこれとは、話が別だ」

クー子「わかるよ。ニャル子の事、好きだから」

真尋「う……」

クー子「だから少年もわかってるはず。理由も告げられず遠ざけられるのは、フォークで刺されるより痛いって」

真尋「……むぐ」

クー子「そして少年……私は、ニャル子を傷つける者をゆるさない」

バチバチ……

真尋「ぐあ……熱っ!」

ルーヒー「クトゥグア! よしなさい!」

クー子「失礼……少年、おねがい……ニャル子に話してあげて」

真尋「……うん。そうだよな」

真尋の家。

真尋「ただいま……」

ハス太「真尋くん、おかえりなさい」

クー子「少年、ハス太くんには私から話す」

真尋「……たのむ」

ハス太「真尋くん、やっぱりなにかあったんだね」

クー子「ハス太くん、こっち……ニャル子は?」

ハス太「居間のソファで寝てるよ」

真尋「居間だな……わかった」

居間。

ニャル子「くかー……すぴー……」

にゅるにゅる……

真尋「寝てるな……寝てるんだけど……」

ニャル子「んむにゃむにゃ」

真尋(たぶん、頭と足がタオルケットから出てるんだ……だから……)

ニャル子「んふふ、まひろさぁん……」

ぐにゅるる

真尋「ひっ……寝言か……」

真尋(タオルケットから足と頭が出てるから……どっちが頭かわからない)

真尋「というか、またもやオムそば状態だな」

ニャル子「オムそば? 食べたいんですか? 真尋さん」

真尋「ぬわあああ! 起きてたのか、ニャル子!」

ニャル子「食べたいならそう言ってくださればいいのに……待っていてくださいね、すぐに作りますから」

にゅるる

真尋「まて、そのままで聞いてくれ。横になったままで良い」
真尋(動きからしてこっちが頭か……タオルケットで隠れてるだけ、まだ近くで見れるな)

ニャル子「ほえ? なんですか?」

真尋「ニャル子、これは本当に真剣な話なんだ」

ニャル子「真剣な話? ま、待ってください真尋さん! まだ心の準備がー!」

にゅるにゅるぐにゅるん!

真尋「う……わ……」
真尋(動いてる! 動いてる! タオルケットの下で触手が動いてるううう!)

ニャル子「真尋さんからの愛の告白! これは録音しなければ! デジタルと磁気とレコードで永久保存しなければあッ!」

真尋「待て、ニャル子。気をつけ!」

ニャル子「は、はいっ!」ビシッ

ぐにゅるん!

真尋「ニャル子、じつは……」

頼子「尋くん? 帰ってるの?」

真尋「んもう、母さん、今大事な話を……」

頼子「あら、ごめんなさい。少し出かけてくるから、お留守番お願いね」

真尋「わかったよ……」

頼子「ふふ、行ってきます……」

ニャル子「……真尋さん?」

うにゅる

真尋「ニャル子、きのうの朝から、僕の態度がおかしいって思ってただろ?」

ニャル子「やっぱりなにかあったんですか! どこかお加減が!? 風邪ですか? マラリアですか? それとも……ああ、真尋さんが不治の病に犯されるなんて」

真尋「いや、だから……」

ニャル子「ご安心を真尋さん! この宇宙随一の万能薬、一発くんがあればたちどころに……」

真尋「話を聞け!」

ザクッ

ニャル子「テンタコー!」

真尋「はあ……はあ……いいかニャル子! 僕はお前の事が……」

ニャル子「まさか、愛の告白ですか!?」

真尋「良く聞け! 僕はニャル子の事が」

ニャル子「きゃー! まっひろさーん! 私も真尋さんのことが大好きでっす!」 ピョーン

ぐにゅるるるる!

真尋「う、わ……わああああああ!」
真尋(ひ、ひいいいいい! ぎゃああああああ!)


ニャル子「さあ真尋さん、さっそくふたりの愛の結晶を作りましょう! 今日という日を真尋さんと私の一番大切な記念日にするのですっ!」

にゅるぐにゅるる!

真尋「ぎゃあああああ! あ……」カックリ
真尋(……)

ニャル子「真尋さん? すべてを……すべてを私にお任せいただけるのですね!」

真尋「……」ピクピク

ニャル子「えふふふふ……おっとよだれが……真尋さん、邪魔者のこないふたりきりになれる場所に行きましょう」

にゅるにゅるにゅる……

…………

ガチャ……バタン……

ハス太「あ……あれ? 真尋くん? ニャル子ちゃんもいない……」

クー子「ニャル子……まさか」

真尋(ん、あれ……寝てたのか……)

真尋(いや違う……ニャル子に抱きつかれて、気絶して……)

真尋(背中にシーツが当たってる。ニャル子のやつ、寝かせてくれたんだな……)

……ガチャ

真尋(あ、あれ? 手が動かない……足も固定されて……)

真尋「んぐ……むぐぐ!?」

真尋(く、口も!? 服も……パンツだけ!?) パチツ

真尋(こ、ここって……いわゆるラブホテルか!?)

ニャル子「うふふふふ~……真尋さん、お目覚めですね」

真尋「んぐぐ!」

ニャル子「ふふ、ここは、ホテル・ギルマンという……いわゆるラブホッテルでございます」

真尋「むぐっ!?」

真尋(ニャル子、なんのマネだ!)

ニャル子「ふふふ、真尋さんたら大胆なんですもん、寝言で触手、触手があ……なんて」

ぬめにゅるにゅるん!

真尋「みゅぐ!?」
真尋(触手って……お前が触手に見えてるんだよ!)

ニャル子「ふふ、さすがに触手の姿をお目にかけるわけにはまいりませんが、疑似触手プレイなら、じゅるっ……おっと、よだれが……」

ぐにゅにゅるん!

真尋「んっぎゅう!?」

真尋(見えてる! 触手に見えてるんだって!)

ニャル子「もう、真尋さん! そんなに見つめないでください! 生まれたままの姿をそんなに見られたら、さすがに恥ずかしいです……」

ぐにゅにゅるん

真尋(生まれたままって……裸なのか!? たしかにオムそばじゃなくて、焼きそば状態だけど……)

ニャル子「まひろさん……この身体、あなたに捧げます……」

のしっ……にゅるにゅるん!

真尋「んぎゅむ!?」

真尋(胸を……さわられ……)

ニャル子「おやおや鳥肌が立っていますよぉ? 寒くはないですよね~? んふふふふ~」

真尋「んぎゅ!」

真尋(触手が気持ち悪いんだよ!)

ニャル子「ふふふ、こっちは……どうでしょう?」

ぐねぐね

真尋「うっぐ!」

真尋(触手が……パンツの上動いて……んぐえ……きもちわるい……)

ニャル子「……しかしおかしいですねえ……お風呂にお邪魔するたび、真尋さんのご子息は、なんだかんだであま立ち以上にはなるのに……今はぴくりとも反応しません……」

真尋(あま立ちって……いつも見てたのかよ! ……ひっ!)

ニャル子「初めてで緊張しているのでしょうか……ほら、怖くないですよー」

ぐねぐねにゅるるん!
なでなですりすり!

真尋「んぐえっふ! んぎゅううう!」
真尋(ひいいいいい! さわるな! パンツ越しにさわるなああああ!)

ニャル子「うーん……やはりここは、直接拝見しましょう……」

にゅるる……

真尋(触手が……パンツに……)

ニャル子「ふふふ、ほら、脱がしてしまいますよ~」

ぐねぐねにゅるるるん!

真尋「んっぐ! んっぐううう!」ジタバタ
真尋(やだ! 脱がすな! 脱がすなああああ!)

ニャル子「おやおや、すごい反応ですね……でも、あと少しです」

する……ずるる……

真尋「んっぐ……ん……」ポロポロ

ニャル子「真尋さん、泣いて……いやなんですか?」

にゅるぎゅるん

真尋「んっぐ……んっぐ!」
真尋(そうだよ! やなんだよ!)

ニャル子「真尋さん……」

ちゅどーん! ドンガラガラ!

真尋(壁が!?)

ニャル子「何事ですかっ!?」

ハス太「真尋くん! だいじょうぶっ!?」ヒュウウゥゥ

クー子「少年……間に合った」ゴオオオォォ

ニャル子「ハス太……クー子……ふたりともその格好は……本気ですねっ!?」

ぐねぐね

ハス太「ニャル子ちゃん、真尋くんの話を聞くんだ!」

クー子「今日の少年は、普通ではない」

ニャル子「はっ!? 何を言ってやがりますか! 真尋さんはいまから私と永久のちぎりを交わすんです! 邪魔しないでください!」

ハス太「でも、ニャル子ちゃん!」

クー子「それはムリ……少年は戦闘態勢になっていない」

真尋(……はっ! み、見るな!)
真尋「むぐー! んぎゅぐ!」

ニャル子「……それは、初めてで真尋さんが緊張してらっしゃるからです!」

クー子「緊張している? それはちがう……ハス太くん」

ハス太「うん。ちょっと……恥ずかしいけど……」

ふわり……ゴオオオォォォ……

ニャル子「はっ! バカですか? ……戦いを前に武装を捨てるなど!」

真尋(ふたりとも、何考えて……んっ!?)

ニャル子「なん……だと?」

クー子「装備:あぶない水着」

ハス太「装備:エッチな下着」

真尋(クー子……ハス太……)

ぴくん

ニャル子「な……反応した……だと?」

クー子「少年、ニャル子のために磨き上げた身体だけど……どう?」

ハス太「真尋くん、男の子がブラジャーって、ヘン……かな?」

ムクムクムク……

真尋「んぐ……んぐうう」カアァ

ニャル子「な……なんで反応してるんですか! 真尋さん!」

クー子「ニャル子、少年も健康な男の子……本能には逆らえない」

ハス太「えへへ……真尋くん、僕たちの事みてる」

真尋(ぐ……悔しいけどこいつら……見た目は良いんだよな……ううぅ……)

ムクムクムク……

ニャル子「なんで! どうして真尋さんが……」

ハス太「ニャル子ちゃん、言ったでしょ? 今日の真尋くんは普通じゃないんだ」

クー子「もし少年がいつもどおりなら、ニャル子の今のありさまを見ただけで……」

真尋「んぐ!?」
真尋(そうだよ! いま、ニャル子はいったいどうなってんだよ!)

ニャル子「どうなるってんですか?」

クー子「スタンディングオベーション……会場は総立ち状態」

ハス太「うんうん」ピコピコ

ニャル子「真尋さん……」

ぐにゅるる

真尋(身体の上で、ミミズの塊がうごめいてる……うっわあ……うわあ……)

ハス太「ニャル子ちゃん、せめて、猿ぐつわだけでも外してあげて欲しいんだ」

クー子「ハス太くん、あれ、ギャグボール」

ハス太「え? ぎゃぐ?」

ニャル子「ああもうわかりましたよ! 外せばいーんでしょう! 外せばあ!」ぐいっ!

真尋「へぶ……はふぁ……ニャル子……」

ニャル子「いったい、何があったんです?」

にゅるにゅる……

真尋「ニャル子、僕はお前の事が……お前の事が……」

ハス太「どきどき」

クー子「……ごくり」

真尋「触手の塊に見えるんだ」

ニャル子「はあ……」

ハス太「あ、あれ? 思ったほど反応がないね」

クー子「ちがう。これは……嵐の前の静けさ」

ニャル子「へぇ……」

真尋「えっと……ニャル子?」

ニャル子「ほぅ……はあああああああああっ!?」

ハス太「ひゃっ!?」

クー子「ほら」

ニャル子「どどどどど、どー言う事ですか真尋さん!」

真尋「そのまんまの意味だよ! 早くこの手錠を外せ!」

ガチャジタ ガチャバタ

ニャル子「触手!? この私の身体が触手の塊に見えている……クー子もハス太くんもですか!?」

ハス太「ううん。僕らにはその……裸の……ニャル子ちゃんが、ちゃんと見えるよ」

クー子「少年、ずるい」

真尋「……は?」

クー子「ニャル子、裸……シックスナイン……はぁ……はぁ……」

ニャル子「な、なんですかその目は……」

クー子「ニャル子……いただきまーす」ガッバアア

ニャル子「んっわ……ぎゃあああ! どきなさい! 放しやがりなさい! クー子!」

クー子「はだか、裸、ハダカのニャル子……味も見ておこう」ペロリン

ニャル子「んっひゃあ! ど、どこ舐めて!」

クー子「足の親指と親指の間……おいしい」ペロペロペペロ

ニャル子「ひゃっひ……んっく……い……イ……」

クー子「ん……ちゅるちゅる……」

ニャル子「いいかげんにしなさいっ!」

ゴッチン!

クー子「あぅ、ニャル子、ひどい……」

ニャル子「乙女の貞操を奪を手に掛けようとするなら、当然の報いです」

真尋「どの口でそれを言う」

ニャル子「真尋さん!? いったいどうやって……あのカギは私たちでないと開けられないはずですが」

ハス太「ごめんねニャル子ちゃん。でも、こういうのっていけないと思うんだ」

真尋「ありがとな、ハス太」

ニャル子「ふん! ……手錠掛けたままなら、真尋さんを好きにできましたのに」

ハス太「あ……真尋くん、もう一度ベッドに……」

真尋「寝ないぞ……そしてニャル子、もう一度言おう。僕は、お前が触手の塊に見えてるんだ」

ニャル子「うぐ……一度ならず二度までも……いいでしょう! いったいどういう風に見えているのか、教えてください」

真尋「えーと、緑色の粘液まみれの、丸みを帯びて細かな節のある白いきしめんの塊を、思いつく限りグロテスクにしたような……そんな感じだな」

ニャル子「それは……私の化身のひとつですねぇ……てっぺんにある触手は、これですか?」アホゲブンブン

真尋「そうだな……それは、アホ毛を振り回してるんだろ?」

ニャル子「むぐ……それでは、この私の魅惑のフルヌードも、今の真尋さんには……」

真尋「言ったろ? きしめんの緑あんかけって所だな。食欲がまったく湧かない感じの」

ニャル子「お……」

真尋「ん? お?」

ニャル子「お……オーマイガー! ですよ! 真尋さんッ!」

真尋「な……おまえはいったい誰に祈ってるんだ!」

ニャル子「真尋さんを信じる私を信じているんです……しかしこれは……まともな自体ではありませんね!」

真尋「お前が何をもってまともとしているのかについては、非常に疑問が残るが……そうだな。少なくともマトモじゃない」

ニャル子「クー子! その様子なら、見当は付いているんですよね!」

クー子「うん。xothが動いている。少年はその影響下にある」

ニャル子「ああもう! タコ焼き屋のせいですか!」

真尋「いや、ルーヒーの仕業じゃないらしい……」

ニャル子「それなら、どこのどいつがこんなマネしやがるんですか!」

ぐにゅるにゅるにゅるん!

真尋「ああ! もういい!」

ニャル子「真尋さん、どちらへ!?」

真尋「家だよ……ほら、帰るぞ」

翌朝……

チュンチュン……チチチ……

真尋(目が覚めた……深呼吸……)すーはー

真尋(目の前に触手の塊があっても大丈夫、それはニャル子だ……よし)ぱちっ

真尋「あれ?」

真尋「ニャル子?」

真尋「今朝は這い寄ってきてないのか……」

真尋(まあいいか……起きよう)

食卓

頼子「おはよう尋くん」

ハス太「おはよう真尋くん」

クー子「少年……おはよう」

真尋「おはよ……あれ? ニャル子は?」

頼子「ニャル子ちゃんなら、今日は日直があるって、もう出かけたわよ」

真尋「……そうか」

ハス太「ちょっと、元気なかったね」

クー子「うん」

頼子「あなたたち、なにかあったの?」

真尋「べつに……心配するような事じゃないよ」

頼子「そう……それなら良いんだけど、母さん夕方から出かけるから、お夕飯はみんなで相談して決めてね」

真尋「ん、わかった……何にしようか」

クー子「お寿司」

ハス太「ピザがいいな」

真尋「ちょっとは作る事も考えろ」

クー子「……作るよ?」

ハス太「うん」

真尋「……マジか」

頼子「ふふふ、お願いね」

教室。

余市「おはよう八坂くん」

真尋「おはよう……」キョロキョロ

余市「どうしたんだい?」

真尋「なあ余市……今日って日直だったよな?」

余市「そうだよ」

真尋「ニャル子のやつ、来てたか?」

余市「うん。日誌を職員室に取りに行って、保健室に用事があるとか言ってたけど……」

真尋「保健室?」

ガララ……

ニャル子「まっひろさーん! おはようございまーす!」

真尋「ニャル子……それ……」

ニャル子「ん? なんでしょう真尋さん」

真尋「その、かぶってる布はなんだよ?」

ニャル子「保健室からシーツをお借りしてきました! これで真尋さんもだいじょうぶっ!」

真尋「何が大丈夫だよ。ハロウィンのお化けみたいじゃないか……その布の下は……」ペロン

にゅるにゅるん

真尋「はあ……変化無しか……」

ニャル子「いやん真尋さん。女の子の布をめくるなんて!」

真尋「は……はあ? 僕が悪いのか?」

ざわざわ……

真尋「僕が……わるい……のか?」

ニャル子「真尋さん、姿が元に戻ったあかつきには、私の秘密の花園を思う存分ご覧に入れましょう」

真尋「するか、バカ」

ニャル子「あーん、真尋さーん」

ガララ……

担任「ホームルームはじめるぞ……ん? おい八坂、そりゃなんだ?」

ニャル子「ふふふ、私の花嫁衣装です。いえ、角隠し……ウェディングケープですっ!」

真尋(先生、お願いだ! 切れ味の良い突っ込みを……)

担任「……そうか。出席とるぞー」

真尋(ああ……シーツかぶるくらい、いつもに比べればまだマシなのか……でも……)

ニャル子「~♪」

真尋(これなら、気にならない……気持ち悪くない)

授業。

数学教師「次の問題だれか……」

ニャル子「はいはい、はーい!」

バタバタ

数学教師「は、はい……それでは八坂さん」

ニャル子「燃えろ俺の魂! うおおおおおお!」

ガガガガガガッ ガン!

ニャル子「答えは……3ですっ!」

数学教師「せ、正解……」

ニャル子「ふふん、とーぜんです!」

バタバタ

数学教師「ところで八坂さん、そのシーツは何なんですか?」

真尋(やった! 鋭い突っ込みだ!)

ニャル子「真尋さんのための、乙女の純白の衣装です!」

数学教師「な……なるほど……わかりました……席に戻りなさい」

ニャル子「はーい!」

真尋「くそ……ダメか」

ニャル子「何かおっしゃいました?」

わさわさ

真尋「……なんでもない」

体育

真尋(短距離でもシーツ着たままかよ……)

ニャル子「まっひろさーん! アナタのために一位を取りまーす!」

真尋(はぁ……なに張り切って……)

体育教師「よーい……スタート!」

ニャル子「うおっしゃあああ! ぬわえっ!?」

真尋(やば、シーツに躓いて……)

ビッタン! ゴロゴロゴロ……

ニャル子「いてて……転んじゃいました」ボロッ

真尋(なに……やってんだよ)

英語

ニャル子「日本人は魚を食べているから健康である、という意見は間違っている。むしろ野菜を多くとる事にこそ注目すべきだ……」

真尋(ホントに、一日シーツかぶったまま過ごしちゃったな……)

ニャル子「そもそも魚だけを食べるのは、肉類に偏る食事と大差なく、身体に悪い。魚のような顔になりたくなければ、バランスの良い食事を心がけるべきだ」

英語教師「はい、八坂さんよくできました」

ニャル子「ふふふー、ありがとうございます」

キーンコーンカーンコーン

英語教師「あら、もう時間ね。それじゃあ今日はここまで……次回は……」

ニャル子「さて、教科書を机に……」バサバサ……

ニャル子「ありゃりゃ、落としちゃいました」

真尋(シーツが邪魔なんだろ……ホントに何考えてんだよ……ニャル子)

放課後

ニャル子「さて真尋さん、今日はお先にお帰りください」

真尋「おう……え? いっしょに帰らないのか?」

ニャル子「ううぅ、お誘いいただき感謝の極みですが、このシーツを保健室に返さなければいけませんから……」

真尋「それなら、シーツを返しにいってから……」

ニャル子「それはダメです、真尋さんに私の姿を見られたら、意味ないじゃないですかぁ」

真尋「姿って、おまえ……メチャクチャ目立ってたぞ?」

ニャル子「ん? べつに目立とうが注目を集めようが、わたしはどうでも良いのです」

真尋「どうしてだよ? 僕がヘンに見えてるだけで、他の人には普通なんだから……」

ニャル子「それじゃあ意味がないんです。私は、真尋さんに一番かわいい私を見ていただきたいんです。他の人にどう見られてもかまいませんし、触手の塊なんて、知った以上、お見せするわけにはいきません」

真尋「それなら、頭からシーツかぶったりしないで、どこか行けば良いだろ?」

ニャル子「真尋さん、私は真尋さんのおそばに居たいんです。姿を隠すのと、真尋さんから離れるのは別問題なのです!」

真尋「……だからイヤだったんだ」

ニャル子「……はい?」

真尋「いいかニャル子。お前がいつも僕にする事を考えてみろ」

ニャル子「私の愛の主張ですか?」

真尋「愛の……まあいい。仮にそうだとしよう。でだ、遠慮知らずで強引で、僕の迷惑かえりみない自分勝手な振る舞い……あれだけの事をしておいて、今さら見た目を気にするのか?」

ニャル子「真尋さん、それは、励ましていただいている……と考えて良いのでしょうか?」

真尋「……そうだよ。ニャル子の事が触手の塊に見えるなんて言ったら、またお前は変な事するだろうと思ってた。だから黙ってたんだ」

ニャル子「真尋さん、おかしな事だからこそ、きちんと言っていただきたかったのです。私の知らぬ事とは言え、真尋さんを怖がらせるのは私の望みではありません」

真尋「ニャル子、お前こそ、姿が触手に見るからって、僕が嫌いになるとでも思ったのか?」

ニャル子「真尋さん? う……真尋さん……真尋さーん!」

うじゅるるる!

真尋「うわあああ! 抱きつくな! 気持ち悪い!」

ニャル子「真尋さん! 大好きです! お慕いしております」

ぬめぬめじゅるる……

真尋「離れろ……ぐわ……離れろニャル子!」

ニャル子「離れませーん! えいっ!」

むっちゅー……ぐにゅるるるん!

真尋「んぐ!? ……」

ニャル子「ちゅ……ちゅー」

真尋「んぷっは……ニャル子……」

ニャル子「うぇっへへ、どうしました? 真尋さん」

真尋「……戻ってる」

ニャル子「へ? 今なんとおっしゃいました?」

真尋「お前の格好が……元に戻ってるんだよ!」

ニャル子「え……ほ、本当ですか!? 真尋さん!」

真尋「ああ、制服着た、いつものニャル子だ」

ニャル子「ほほう……キスが異常を解くカギでしたか……それではもう一度」

真尋「調子に乗るなっ!」ザクッ

ニャル子「はっびょおおおお!?」

ニャル子「うっうっ……ひどいですよ、真尋さん」

真尋「触手だと、刺して良い場所がわからなかったからな。もう手加減抜きだ」

ニャル子「もう、女の子に男の子が刺して良い場所なんて、限られていますのに……」

真尋「どこだそれは……いやいい、言うな」

ニャル子「スカートの中ですけど、見ます?」スススッ

真尋「……」チャキッ

ニャル子「あ、すいません。マジすいません」

ルーヒー「まったく……何しているんだか……」

真尋「うわっ!? ルーヒー……」

ニャル子「なんであんたが学校に居るんです!」

ルーヒー「急用よ、八坂真尋。あなたのお母様が危ないわ」

ニャル子「にゃんですと!?」

真尋「母さんが? ……どういうことだ!?」

ルーヒー「話は後……とにかくあなたのお家へ!」

八坂家

クー子「少年、お帰り」

ハス太「ルーヒーさん……お久しぶりです」

真尋「母さんは? いないのか?」

ハス太「うん。さっき出かけたよ」

ニャル子「真尋さん、机にメモが……」

真尋「見せろ……えっと……」

頼子『尋くん、ニャル子ちゃん、クー子ちゃん、ハス太くんへ。
少し早いけど出かけます。お夕飯のお金はこれ使ってね』

ニャル子「いっしょにこれが」つ[壱万円]

真尋「母さん……くそ、遅かったか」

ルーヒー「八坂真尋、ここ数日、お母様の様子がおかしかったでしょう?」

真尋「そういえば、夜になると出かけてた。でも、母さん家空ける事が多いし……なんだよその機械」

ルーヒー「xothの探知機よ。残された空間のゆがみから、数日前からxothの試作機が起動しているようなの……そしてプレイヤーデータに、たしかに八坂真尋のお母様の情報があるの」

真尋「母さんがxothを?」

ルーヒー「ええ……そのメモ、書かれた時間は?」

真尋「えっと……30分前だな」

ルーヒー「移動は徒歩か……このあたりにゲームセンターはある?」

真尋「駅のほうに一軒あるけど……」

ルーヒー「よし、そのゲームセンターに行くわよ!」

ゲームセンター

真尋「ここに……母さんが?」

ニャル子「見てください真尋さん! クレーンゲームに限定版のフィギュアが……」

真尋「後にしろ」

ルーヒー「あなたのお母様は、ここに居るはず。xothの試作機もおそらくそこに……」

ニャル子「広い店内です。手分けして探しましょう」

真尋「そうだな」

クー子「xoth……見つける」

ハス太「真尋くんをこまらせるなんて許せない!」フンスッ

真尋「よし……いくぞっ!」

一同「おー!」

真尋「……で?」

ニャル子「まひろさーん……」スリスリ

真尋「どうしてお前がいっしょに居るんだ?」

ニャル子「ここは敵の本拠地ですよ? 真尋さんお一人では危険です」

真尋「普通のゲームセンターじゃないか」

ニャル子「いえいえ、少し古い格ゲーの筐体、壊れたままのワニワニパニック、戦場の絆などもちろん無く、クレーンゲームの景品も一点豪華なのを除けば標準以下のものばかり……ここは間違いなく魔窟です」

真尋「魔窟って……つまりは少し寂れてるって事だろ?」

ニャル子「だからこそ、邪神が隠れ蓑にするにはもってこいなんです」

真尋「ああもう、わかったから放せって!」

ぐいっ! ……にゅるるん

真尋「にゅるん? ……うわあああ! ニャル子! お前また……」

ニャル子「どうしたんです?」

にゅるにゅる……

真尋「また、触手の塊になってるんだよ!」

ニャル子「何ですと!? まさか敵に気づかれて……」

ノーデンス「ははははは、その声で気づかぬ方が可笑しかろう」

真尋「うわっ! 出た!」

ニャル子「ノーデンス! またテメエらの仕業ですか!」

ノーデンス「ふん、私は道具を見つけ、引き渡しただけだ」

ニャル子「道具……xothの事ですね!」

にゅるにゅるん

ノーデンス「ふむ、その様子を見る限り、あいつの企みは失敗したようだな……さらばだっ!」

ニャル子「あ、コラ! 逃げるんじゃねーです! ……ああもう!」

ぐねぐね

真尋「あいつはxothを持ち出しただけで、犯人は他にいるんだよな」

ニャル子「そのようですね。ですが真尋さん、ノーデンスのやつが居た以上、このゲーセンに異変の中心があるはずです……探しましょう!」

真尋「そうだな……とはいうものの、このゲーセン、けっこうでかいな」

ニャル子「しかたありませんね……真尋さん、手を出してください……」

真尋「ん、こうか?」

ぐにゅるっ!

真尋「んぐっ! は、放せニャル子!」

ニャル子「少しだけ辛抱してください……行きますよ! よーい……スタート!」

ダダダダダダダ

真尋「うわああああ!」

ニャル子「ココでもない、ココでもない……えーい! どこにいらっしゃるんです、お義母さま!」

真尋「ぬわああああ!」

ニャル子「ここでもない、ここでも……おや?」

クー子「ツモ大三元ドライチ……うふふふふふ……さいごの一枚……さあ脱いで……」

イヤーン、クーコ、ソンナニミナイデクダサイヨゥ……

クー子「口じゃそんなコト言ってても、身体は正直……ふぎゅ」

ニャル子「何やってんですかクー子」

クー子「いきなり頭踏むのひどい……でもしあわせ」

ニャル子「すり寄ってくるんじゃねーですよ! 何やってたかと聞いてるんです!」

クー子「脱衣麻雀」

ニャル子「ストレートに答えやがりましたね」

真尋「このキャラ、ニャル子にそっくりなんだけど……」

クー子「自作キャラ。合成音声でフルボイス」 ……ポチッ

イヤーン、クーコ、モットミテー

真尋「わ、わ……脱いで……」

ニャル子「真尋さんに変なもの見せないでください!」

ボバキイッ!

クー子「あああ……筐体が……ニャル子ひどい……もうすぐ全裸だったのに」

真尋「いや、そんな場合じゃないんだって……」

アイシテルゼハスタ……
ハス太「はぁ……はぁ……真尋くん、僕も……」

真尋「って、お前も何やってんだよ!」

ハス太「うわあああ! ま、真尋くん!? こ、これは違うんだ! ゲームセンターにも、えっちなゲームがあるんだって知らなくて、ちょっと興味があって、ほんの少し見てただけで……」

真尋「なんで100円玉が積み上げてあるんだよ?」

ハス太「こ、これは……あうぅ」

真尋「はあ……二人とも、こんなことやってる場合じゃないぞ」

ニャル子「そーでした! 二人とも、ノーデンスのやつが居やがりました!」

クー子「ノーデンス……」

ハス太「じゃあ、ノーデンスがxothを?」

真尋「それがどうやら違うらしい……犯人は他に……」

キャー ヒロクンカワイイー

真尋「……え?」

ニャル子「そこですか、お義母さま!」

頼子「はあ……けなげなところなんて、尋くんそのままよねえ……かわいいわぁ」

ニャル夫「お気に召していただき、光栄です」

真尋「母さん! それと……誰だ?」

ニャル子「いったい何者です! はやくお義母さまから離れなさい!」

ニャル夫「何者とはご挨拶だな……わが……ふべらっ!?」

真尋(うわあああ、誰か知らないけど、触手の下敷きに……おえええ……)

ニャル子「お前には黙秘権があります!」

ぬぐにゅるん!

ニャル夫「ま、まて……ふぎゃ!」

ニャル子「お前がこれからした発言は、裁判で不利になる場合があります……だから……」

ニャル夫「お、おい、手を振り上げるな、やめろ!」

ニャル子「しばらく……死んでいなさい!」

ずどぎゃあああんっ!

ニャル夫「うぎゃああああ……」ガクリ

ニャル子「ふぅ、あれ? どうしました? 真尋さん」

真尋「しばらく、ナポリタンは食えそうにない……」

ニャル子「おや? ……ふむ、つまり、ミートソーススパゲティのようになっている……と?」

真尋「確認するな……」

ルーヒー「八坂真尋、ここにいたのね」

真尋「ルーヒー……そうだ! xothは?」

ルーヒー「ご婦人、そのゲーム機についてですが……」

頼子「ぜんぶわかってるわ。これ、xothの試作機でしょ?」

ルーヒー「そこまでご承知なら、どうして彼らに協力したんです?」

真尋「そうだよ母さん!」

頼子「だって、最新ゲーム機のプロジェクトを再立ち上げするからって、モニターに呼ばれたのよ」

ルーヒー「モ……モニタ?」

頼子「ええ。そちらに寝ている人にお願いされてね、ゲーム機としての性能を評価していただきたいって……やっぱり次世代機は違うわね」

ルーヒー「本社からはそんな連絡、一度も……噂だって聞いた事ありません」

頼子「落ちてたゲーム機を使って、一儲けって考えてたらしいわね。このあいだも言ったとおり、このゲーム機は成功しないと思うんだけど……でも、機械としては一流ね」

真尋「でも母さん、そのゲーム機のせいで、僕はニャル子が変な姿に見えて……」

頼子「触手の塊に見えたんでしょ?」

真尋「ど、どうしてそれを!?」

頼子「この筐体に入ってるゲームは、ある日恋人が恐ろしい怪物に見えるようになった主人公のアドベンチャーゲームなの。売りは、身近な人の脳をトレースする事で、その人のリアルな反応をゲーム上で再現できる……ってことかしら。ニャル子ちゃんがおかしな格好に見えたのは、その副作用ね」

真尋「どうしてそんなゲームしたんだよ!?」

頼子「尋くんがニャル子ちゃんとの障害を、どうやって乗り越えるか見てみたくって……ふふふ、ごめんなさいね」

真尋「ううう……母さん、なんかもう……力が抜けて……」

ニャル子「おっと、真尋さん、大丈夫ですか?」

うにゅるっ!

真尋「はは……はぁ……もう驚く気にもなれないや……」

ニャル夫「ぐふふふ……まだだ、まだ終わらんよ!」

ニャル子「にゃにっ!? まだ生きてやがりましたか!」

真尋「生きてって……」

ニャル夫「この試作機さえあれば、周囲の人間の思考は思うがままに操れる! もはや私に敵はなく、そしてゆくゆくはこの国を! 地球を支配し、娯楽によって全宇宙の神となるのだ! ……うわっちい!」

クー子「そんなこと、ゆるさない」

ニャル子「クー子!?」

クー子「ゲームはみんなの幸せのためにあるもの……支配の道具になんて、させない!」

ハス太「す、すごい……炎の量がいつもの3倍増しだ!」

クー子「xoth……もういちど、安らかに眠って……」

ニャル子「うおおお……オラたちの元気をクー子に分け与えるんだ!」

真尋「なんなんだよそれは……でも、すごい火の玉……これって危ないんじゃないか?」

ニャル夫「そ、そうだ……その火の玉を放ってみろ……ここに居る連中や建物だって……」

ニャル夫「まて、私が悪か……」

クー子「……燃えろ」

ドッギャアアアアアアアン!

真尋「う……あれ? 暗い?」

ニャル子「真尋さん、気づきましたが」

真尋「ここは?」

ニャル子「真尋さんの部屋ですよ。電気つけますね」

真尋「うん……あれ? ニャル子、その声……」

パチッ……

うにゅる……うにゅる……

真尋「……ニャル子、xothはクー子が壊したんだよな?」

ニャル子「はい」

真尋「それならどうして、お前は触手のままなんだ?」

ニャル子「あの試作機は電源を切っても、条件を満たさない限り、効果が切れないように作られているそうなんです」

真尋「だから、母さんが家にいる間もニャル子が触手に見えてたのか……」

ニャル子「はい、そーなんです」

真尋「ん? じゃあ元に戻る条件って何なんだ?」

ニャル子「それは真尋さん、呪いを解く最高の方法は、愛する人同士のキスですよー」 ぐにゅにゅるん

真尋「おおなるほど……はあああああああ!?」

ニャル子「もう、真尋さんたら、そんなに大声出して、照れ屋さんなんですからぁ!」

真尋「いや待て! 触手の塊とキスしろって!?」

ニャル子「何をいまさら。一度元に戻ったのだって、キスしたからじゃないですか」

真尋「だ、だからって!」

ニャル子「いやなら、真尋さんはそのまま目をつむってください。さくさくっとキスしちゃいますから……ドゥヘヘヘ」

真尋「いや……いいよ」

ニャル子「なんですと? 真尋さんにずっとこのままの姿をさらせとおっしゃるのですか?」

真尋「ちがうよ……よっとほら、ベッドのココ……隣に座れよ」

ニャル子「は、はい……失礼します」

うにゅる

真尋「……」

ニャル子「……あの、真尋さん?」

真尋「こんどの事でわかった。どんな姿しててもニャル子はニャル子なんだって」

ニャル子「……はい、そのとーりです! どんな格好していても、私の真尋さんに捧げる愛は変わりません!」

真尋「……今日だけだかんな」

ニャル子「真尋さん? ……んむっ!?」アホゲピーン

真尋「ん……ちゅ……」

ニャル子「はむ……ん……」

真尋(あれ? 唇に当たる感触が……やわらかく……)

真尋「んは……元に戻ったな」

ニャル子「真尋さん……ほへ~」

真尋「ニャル子、勘違いするなよ? これは治療だ! 治療なんだからな!」

ニャル子「は、はい……んふふふふ、でも、もう一回くらい!」

真尋「調子に乗るな!」ザクッ

ニャル子「はっぎょおおおお!?」

居間

ハッギョオオオオ……

頼子「うん、元に戻ったみたいね」

クー子「ニャル子とキス……少年、ずるい」

ハス太「真尋くんとちゅー……ニャル子ちゃん、ずるい」

頼子「ふふふ、二人とも落ち込まないで」

ハス太「でも、どうして真尋くんとニャル子ちゃんにあんなことしたの?」

頼子「こまった息子の顔を見たいから」

ハス太「うわ……」

クー子「歪んだ愛」

頼子「それと、確認かしら?」

クー子「確認?」

頼子「あのゲーム、恋人が怪物に見えるってお話だったの」

ハス太「それで、何を確認するの?」

頼子「主人公は尋くん……そして、怪物に見える相手は主人公の恋人なの……」

ハス太「恋人……」

クー子「まさか……」

頼子「呪いを破るのは、真実の愛のキス……やっぱり、なんだかんだ言って、尋くん……ふふふ」

ハス太「……クー子ちゃん、はやく真尋くんの部屋に!」

クー子「うん、奪い取る」

ハス太「真尋くんを!」

クー子「ニャル子を!」

ダダダダ

頼子「ふふふ、がんばってね……ふたりとも」


end

これにて終了。
初めての二次創作ssとなりました。

至らぬ所も多いでしょうが、お楽しみいただければ幸いです。
それではみなさまおやすみなさい。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom