窓際族「これ? 魔力を練るだけの簡単な仕事さ」(230)

男「・・・転勤・・ですか?」

上司「ああ、新しくできた13支部へ行ってもらいたい」

男「・・・・・はぁ、断ることは・・・」

上司「できん。さっさといけ」

男「・・・はぁ」ペコリ

同僚「「転勤おめでとう!!!」」パァン!

男(こいつら…。本当は“分かってる”くせに…)

男「・・・ありがとうございます」

同僚1「いやー、お前が怪我してから、死んだ魚のような目をしてたからさー」ニヤニヤ

同僚2「俺ら心配してたんだぜ? だから少し成績落ちちまった」ハハハ

同僚3「お前がいなくなって最初は不安だったけど、案外いけるし、こっちの心配はしなくていいぞ」ギャハハ

男「・・・・・・・」グッ

同僚1「さ、俺ら魔法闘技の実業団は新設の支部の方と違って大忙しなんだっ! さっさと行くぞ!!」ニマァ

同僚「「はーい!」」タッタッタ

男「・・・・・・・・・・くそっ!!」バァン

―――帰り道。

男(…思えば、魔法闘技しかしてこなかった)

男「・・・・・」テクテクテク…

男(中学では地区大会で優勝した)

男(高校では世界大会の補欠になった。・・・一度も出なかったけど)

男(その後、大手魔法企業“mg社”の実業団に入り、先輩達を押しのけてエースになった俺は人生の頂点を歩いていた・・・と、思っていた)

男「・・・・・強かったなぁ俺」

男(魔法と格闘技の融合スポーツである魔法闘技では、どいつも魔法か闘技かどちらかに特化していた。・・・が、俺は万能を追い求め、追い続けた)

男「なんで怪我なんかするんだよ・・・」テクテク…

男(練習中、急な立ちくらみで俺は倒れた。そして、倒れ方が悪かったのか、右足の靭帯が切れた)

男「・・・は、はははは、ははははは!!」タチドマリッ

男「・・・・・・・家帰ろう・・・」テクテクテク

男(疲れた・・・本当に、疲れた・・・)

男「もう帰ろう」

男(13課がどういうところであれ、俺に仕事ができるとは思えない・・・)

男(明日退職届出そう・・・)

男「あ、でも荷物あっちあるのか・・・」ハァ

男「ほんと、魔法闘技以外は優柔不断だし、バカだよなぁ俺…」オチコミッ

―――翌日。

男「・・・・・ここか」タクシー

男(国の最南端じゃねぇか・・・。こんな田舎というより最早辺境の地で一体どんな仕事があるってんだよ)

窓際族「やぁ、キミだね。僕と一緒に仕事をするパートナーは」ニコニコ

男「・・・あ、よろしくお願いします」ペコリ

窓際族「いやいや、確かに僕とキミは親と子ほど年の差がありそうだけど、僕達は同じ“平社員”だ。敬語もいらないよ」ニコッ

男「・・・いえ・・・これがスタンダードなので・・・」

男(容姿は4、50代。“使えないオーラ”がすごくて今までなら関わるのを避けただろう・・・)

男(が、俺もすでに同じ場所に立っているのだ。他人から見れば俺もこの人も・・・)

窓際族「さ、案内するよ」ニコニコ

窓際族「この施設は外から見たら山のように大きいけど、部屋数は知れてる。“仕事場”が数部屋と、僕らの寝る場所があるだけだ」ニコリ

男「先に仕事場を案内してもらっていいですか?」

窓際族「さすが、実業団のエリート! やる気満々だね」

男「・・・!? よ、よく知っていますね」プルプルプル…

窓際族「そりゃあ、会社のことだからね。キミが五人抜きしたあの日は興奮で寝れなかったよ」コウフン!

男「・・・・・その話あんましたくないっす」

窓際族「・・・あ、ああ! そうだよね! “怪我”をして三軍落ちなんて楽しい話じゃなかったよね!」ゴメンネッ

男(ああ、さっそく分かってしまった。・・・この人、“他人の心の機微”を読めないんだ。相手が不快になることを平気で言ってしまうんだろうな)イライラ

窓際族「つ、着いたよっ! ここが僕らの仕事場だっ」ジャーン

男(強大な密閉空間に・・・白い球?)

窓際族「各部屋に一つずつ合計5つ。もしかしたら後三人、ここにくるのかもね」

男(冗談じゃない! こんな空気の読めない奴が後三人くるなんて!)

男「・・・・・? これが仕事場? これが?」

男(そういえば、業務内容も教えられてない。ここで何をするっていうんだ?)

窓際族「これ? 魔力を練るだけの簡単な仕事さ」


 ―――そう、それは簡単な仕事だった。

 簡単すぎて・・・死にたくなるほどの。

今日はここまで。これからよろしくおねがいします。

続きいきます。

――――翌日。

男(寮の部屋は信じられないくらい広かった。電子機器も充実してたし、下手したら実業団の時よりいい暮らしになりそうだ・・・)

男「・・・となると、疑問が出てくるんだよなぁ」バシャバシャ

男(最初は実業団で名の売れた俺を解雇できないんだと思っていた。世間的に考えて、怪我をしたくらいで即解雇なんて人道に反してるからな。だからこんな所で退屈な仕事を延々とさせて自ら退職届を持ってくるのを待っている・・・と)

男「自然が豊かだから水もそのまま使えるし、飲める」フキフキ

男(しかし、精神的プレッシャーなどなく、むしろこの部屋にいる限り心が安らいでいきそうだ。リハビリのための道具も用意してくれている・・・)

男「・・・分からないな」ゴクゴクゴク

男(もしかしたら、この設備を上回るほどの苦しい仕事なのかもしれない。最悪の仕事を劣悪な環境でやらせていたらこれまたメディアに叩かれるからな・・・)ガチャ

男「えーっと・・・タイムカードは」

窓際族「あ、男さん、おはよう」ニコリ

男(迷彩服に身を包み、それがところどころ血で汚れてる窓際族さん・・・こええええ)ガクガク

窓際族「・・・ああ、これですか? 私の趣味なんです。モンスター狩り」ニコッ

男「モンスター狩り・・・って、このあたりって“特a級”のモンスターが出てくる未開発域ではないんですか!?」アセリ

男(だから施設は厳重な壁と魔法の防御結界で守られてる・・・)

窓際族「いやぁ・・・確かにこのあたりのでっかいのは怖いですよー。でも、私が狙うのは小さいやつばかりだから」ハハハ

男(笑い事じゃねぇ。この人が失敗して施設にモンスターが入り込んできたら、“障害者”の俺はどうな・・・)

男「・・・ははっ、自覚あったのか」ウツロ

窓際族「・・・・男さん?」

男「い、いえ、大丈夫です。それより、いつか狩りを見せてください」

窓際族「・・・・ええ、いいですよ」ニコリッ

男(・・・この人、能なしではないのかな。じゃあ、なんでこんなところで)

――――作業部屋。

窓際族「おはようございます。今日は男さんの最初の仕事ですので、流れだけ私が説明いたします」キリッ

男(仕事の時はすごくできる人みたいだ・・・)

窓際族「まず、この仕事は簡単にいえば“未来を守る”仕事だと言えます」

男「・・・未来を?」

窓際族「はい。我が社の理念は知っていますね?」

男「“魔法で創る明るい未来”」

窓際族「はい、そうです。つまり、私達のこの仕事は会社の理念を体現したような内容です」ニコリ

男(この白い球に魔力を込めるだけの仕事が?)

窓際族「それでは、男さんもただ作業するだけでは先も見通せず不安で作業効率も落ちると思いますので、私の仕事の成果からお見せします」ポンポン

男「窓際族さんが触ったら色が変わった?」

窓際族「ははは、こいつ今日は機嫌がいいな」

男「機嫌!? 機嫌ってこいつ生きてるんですか!?」

窓際族「ああ、いやいや、失礼。機嫌が良いと言ったのは私のことです」

男(球に触って色が変わって自分の機嫌が良い? 訳分からん・・・)グワングワン

窓際族「私はこの球に二週間魔力を込め続けました。そうするとほんの少しですが、“心”を反映するようになりました」

男「・・・心?」

窓際族「はい、心です。この球は最終的に“理想の自分”になるはずです。それが我が社の計画している“未来創造プロジェクト”の一つ“理想の社会”です」

男「こいつが・・・」

窓際族「まぁ、難しい話はおいおい説明していきます。今必要なのは、球と“あなたの魔力”それだけです」ニコリ

男「・・・・・・」

窓際族「こちらへ」

――――隣の作業部屋。

窓際族「作業部屋は正五角形の頂点に扉があり、作業中は同僚を見えないようになっています。それというのも、魔力と言うのは感情に左右されやすいものです。私達は大丈夫かもしれませんが、今後ウマの合わない同僚や、魅力的な異性と働くようになったら困りますからね。男さんは“英雄”だったので、さぞかしモテたことでしょう」ハハハ

男(“元”英雄な・・・。生憎、女の子は“二次元の扉”から見える魔族ちゃん達にしか興味が湧きませんでした)

窓際族「はい、こいつがあなたの相棒であり仕事道具です」

男(白く・・・丸い・・・球)

窓際族「素材は企業秘密らしいです。会社の人間にも教えないということは、本当に外に出したくない“何か”なんでしょうね。これは倉庫に予備が沢山あります。なので壊れても大丈夫ですよ」ニコリ

男「・・・壊れるものなのか」ソッ

窓際族「触れるのなら、そのまま魔力を好きなだけ込めてください」

男(さわり心地は・・・すべすべな“赤ちゃんの肌”のようだ)サワサワ

窓際族「最初は最大出力でもいいと思いますよ?」ニコリ

男「・・・・そうっすか」

男(バランス型の俺が最大出力放出したところでしれてるけど・・・)グッ

窓際族「おおっ、さすがですね! わたしじゃあ、こんなに強い輝きはだせませんでした!!」コウフン!!

男(・・・なんか太陽フレアみたいに魔力が球から外へ漏れだしてる・・・)

窓際族「ちなみに壊れる原因は魔力の込めすぎではありません」

男「・・・え?」シュン…パリンッ

男「うわっ!?」

窓際族「魔力の出力が1mmp変化するだけで壊れます」

男(1ミリマジックポイントって・・・針の穴に数メートル先から糸を投げて通す正確性だぞ)アセ

窓際族「大丈夫、慣れれば簡単です。ただただ“つまらない”だけです」

男「そう・・・っすか」ハァ

窓際族「魔力を込めるタイミング、回数、長さは自由なのですが、毎日9時間誤差10分この部屋にいてもらいます。短くても長くても駄目です。もちろん休憩は自由ですが、時間を忘れては困るので入口付近のタイムウォッチは必ずお持ちください」

男「9時間・・・・・」

窓際族「それもすぐに慣れますよ」ニコリッ

――――倉庫。

男(一人で取りにきたのはいいものの・・・)

男(大きさがまちまちだったなんて・・・)

窓際族『選べなかったら眼をつぶって魔力を外に放出してください。その時光ってるのが相性の良い球です。でも、運ぶ時は絶対に手袋を使って下さいね』

男「・・・放出・・・か」グッ

球「・・・」パァァァァァ!!

男「これか?」

球2「・・・」パァアアア!!

球6「・・・」パァァァァ!!

球12・14・15・(以下結構多い数)
「・・・」パァァァァ!!

男「・・・どれにしろってんだよ」ハァ

――――作業部屋(男)

男(結局、最初に光った奴を持ってきた・・・)ナデナデ

男「最初に触った時、魔力を込めないといけないんだったな」グッ

男(どうせなら、リハビリも兼ねてあの魔法を使う時くらいの魔力を込めよう)

男「・・・・・治療魔法(メディケーション)!!」パァアア

球「・・・・・」パァァ

男「一回目はこれでオッケー・・・と」

男(試合の時の緊張感を持って・・・)

男「・・・治療魔法(メディケーション)!!」パァアア

球「・・・」パァアアア!

男「・・・うしっ、うまくいったぞ!」

窓際族『もし成功したなら、休憩所にある魔法測定機に記録しておくのがいいですよ』

男「一応記録しておくか」テクテク

男(ついでに飯も食おう)タイムォッチカチッ

球「・・・」

―――休憩所。

窓際族「あれ?男さん、休憩いくの?」ニコ

男「え、ええ、成功したので記録ついでに・・・」

窓際族「すごい!! もう成功したんだっ! 僕なんか10個以上壊したよ!」ハハハ

男「一応、魔力コントロールは得意なので・・・」

男(そういえば、どっかの雑誌記者に無理やり書かされた魔法コントロール論、印税もらってないな・・・)マイッカ

窓際族「それじゃあ、忘れないうちに記録しちゃって」ドウゾ

男「あ、はい」

男(壁に刻まれたダーツの的みたいな模様。中心には黒い球が半分埋め込まれていて、魔力を込めろと書かれている)

男「・・・治療魔法!!」パァァァ

黒い球「・・・」パァァァ!!

男(模様が・・・一つ増えた?)

窓際族「おお、平均値を軽く越してるねぇ!」コウフンッ

男「ちなみに窓際族さんの模様はどれですか?」

窓際族「僕はこれあんま相性良くないみたいで、記録残らないんだ」ハハハ

男「そうなんですか」

窓際族「それより、今から街へ行かないかい?」ニコリ

男「・・・街があるんですか?」

窓際族「ああ、“とってもいいところ”さっ」

男(なんかうさんくさい・・・)ハァ

ご飯食べてきます。

こんな特殊ジャンル需要あるのか・・・

ぜんぜん見てないよ!
面白そうとかこれっぽっちも思ってないからね!

…魔法で足の骨治らないの?

>>25さん、足の怪我は普通に歩ける程度には治ってます。魔法を使って無理やり治すと、そこが邪魔して魔法をうまく使えなくなります。

逆に魔法を極めるとして、今から特訓してもアマチュア大会で善戦できる程度にしか成長しないと医者には言われてます。

会社が提供したリハビリ道具は、一般人が普通にスポーツできる程度のものです。プロ用のものは送られませんでした。

―――“越えられない壁”。

男「・・・あれ? これって・・・」マサカ…

窓際族「ああ、そうだよ。世界に数個しかない異世界への扉さっ!」バッ

男(魔法世界と並行して存在するもう一つの世界。世界の線自体は真っすぐ伸びてる訳じゃない・・・って俺は誰に説明してるんだ)ハッ

窓際族「場所との相性がいいのか、木土日はいつでも行けるよ」ニコリ

男「は、はやく行きましょうよっ」アセアセ

窓際族「ははは、もしかしてキミも“魔族”ちゃんのファンかい?」

男「・・・・・い、いえ」ギクッ

男(携帯端末で見ることができる異世界のトップアイドル魔族ちゃん。実業団からプロへ転向して、金を稼ぎまくっていつか異世界へ行くんだって思っていたけど・・・)

男「まさか、こんなところで夢がかなうとは・・・」ボソリッ

窓際族「ん? なんかいったかい?」

男「いえいえっ、いきましょう!!」バッ

窓際族「やれやれ・・・せっかちだなぁ」バッ

――――異世界。

男「ここが異世界かぁ・・・!?」スタッ

男(あ、足が・・・!?)バタリ

窓際族「だ、大丈夫かい!? ああ、そうだった。こっちの世界では“魔力”なんて概念自体存在しないんだ。魔法で支えてるキミの足はこっちでは動かないんだった」アセアセ

男「す、すいません」

窓際族「謝る必要はないよっ! 僕のミスだ。次は必ず杖を持ってこよう」

男(もうきたくない・・・)

窓際族「ここはね、こっちの世界の中心街でキミの好きなアイドルのグッズが沢山売られているんだ!」ニコリ

男「・・・!?」ナンダト!?

窓際族「ちなみに、こっちで手に入れた品物は持って帰ることができるよ」ニコリ

男「で、でも・・・こっちの世界のお金が・・・」

窓際族「あー、そうだったなぁ。よしっ、今日はボクの奢りだっ、好きなのを買うといいよっ」ニコッ

男「マジですか!? ・・・い、いや、それはできません」キョヒッ

窓際族「同僚だからかい? 堅いねぇ、・・・よし、それじゃあ、使った分だけ僕らの世界のお金で後払いしてくれたらいいよ」ニコッ

男「・・・はぁ、それなら」

―――元の世界休憩所。

男「いやぁ、やっぱ魔族ちゃんは可愛いっすね」ホクホク

窓際族「僕は魔王ちゃん推しだけどね」ニコニコ

男(異世界は思った以上に、楽しかった。・・・楽しかっただけに絶望もした。自分は“普通”ではない)

窓際族「その顔、足のことだね?」

男「・・・あ、・・・はい」

窓際族「大丈夫大丈夫! いつかきっと良くなるよ」ハハハ

男(・・・う ぜ ぇ)

窓際族「さ、休憩いっぱいしたから、仕事に戻ろう!」

男「・・・はい」

―――作業部屋(男)

男「治療魔法!」パァアア

球「・・・・」パァァァ!!

男「・・・治療魔法!!」パァァァ

球「・・・・」パァァァ!!

男(それにしても、向こうの世界のお金を持っているなんて、窓際族さんはいったい何者なんだ?)

男「向こうに魔法の概念がないなら、魔法の使える窓際族さんはこっちの世界の人なんだろうし・・・」チリョウマホウ!

球「・・・・」パァァァ!!

男(それにしても、この作業は思った以上に退屈だ)チリョウマホウ!

球「・・・・」パァァァ!!

男(こんな簡単な作業、キーボードの同じ部分をひたすら叩くのと変わらないぞ・・・)チリョウマホウ!

球「・・・・」パァァァ!!

男(かといって、油断をすれば球は壊れる)チリョウマホウ!

球「・・・・」パァァァ!!

男「本当にこれは精神的に俺らを・・・」

男(結局、回数制限がないので、この後はずっと部屋の中で座っていた・・・)

―――休憩所。

窓際族「初仕事お疲れ様。どう? やっていけそう?)

男「・・・まぁ、たぶん」

窓際族「キミなら大丈夫! 僕が保証するよっ!!」ドンッ

男(この人のこういうところ・・・嫌いだなぁ)ハァ

???『お前なら大丈夫! ダメでも俺がいるっ!』ドンッ

???『諦める前にやれ! やってダメならもう一度やれっ!』ドンッ

男(きょうはさっさと帰って寝よう・・・)

窓際族「男さん、よかったら一緒に夕飯でもどうです?」

男「・・・いえ、今日は疲れたので、もう寝ます」スッ

窓際族「そうですか・・・、それではまた明日」ニコリッ

男(疲れたんです・・・本当に)ガチャ

―――自室。

男「九時間労働しても、トレーニングしなかったら時間が余りすぎてるな」

男(かといって疲れてあんま動きたくないし・・・)

男「そうだ、魔族ちゃんのcdでも聞こう」オーディオソウチャク

男「・・・・・」ポチットナ

オーディオ「-------------ィィィンッ!!!」ザツオンッ

男(しまった!? こっちと構造が違うにきまってるじゃないかっ!)ポチッ

オーディオ「返事がない。ただの屍のようだ」

男「・・・・修理代、経費で落ちるかな」

――――数日後。

男(確かに退屈な仕事だ。が、これ以外にも退屈な仕事なんていくらでもあるだろう。そんな中で、仕事以外を優遇されてるというのに文句をいうのは社会人としてどうかと思う)チリョウマホウ!

球「・・・・・」アオッ!!

男「・・・・・?」

男(今色が・・・?)ゴシゴシ

球「・・・・」シロッ

男「もう一度・・・」チリョウマホウ!

球「・・・・・」ムラサキッ!

男「・・・!?」オドロキッ

球「・・・・」シロッ

男(今のが・・・感情の色!?)

―――休憩所。

窓際族「それはおめでとう! こんなに早くできるなんて本当にキミはすごいよっ」

男「・・・はぁ、ありがとうございます」

窓際族「あ、そうそう! 今日の夕方、新しい仲間が増えるから、準備しよう!」ニコッ

男「・・・・・・えっ?」

―――施設入口。

窓際族「やぁ! 三人とも遠路はるばるご苦労さん!」ニコッ

エリート社員「よろしくお願いします!!」レイギタダシクッ

美人社員「よろしくお願いします」シセイタダシクッ

不良社員「・・・・・よろしく」ボーッ

男(組み合わせが訳分からん・・・)ズツウ!

窓際族「それじゃあ、まずは自己紹介からだ。僕の名前は窓際族。ここにはプロジェクト初期段階、施設ができる前からいるんだ。隣が男さん。なんと、元・・・」

男「あー、えっと男です! よろしくお願いします!」

エリート「はいっ! エリートです! ここに配属される前は企画開発部にいました! よろしくお願いします! 先輩!」ペコリ

美人「美人です。魔法のことはあまり詳しくないのでよろしくお願いします」ペコリッ

男(こういう人を美人って言うんだろうなぁ・・・でもやっぱ魔族ちゃんに比べたら・・・)

不良社員「ういーっす、上司殴ったらここに飛ばされましたぁ。真面目に働く気ないんでよろしくぅ」チャラチャラ

男(・・・くっ)グッ

窓際族「まぁまぁ、男さん」スッ

男「・・・?」ケンジュウ?

不良社員「・・・お、おい、なんだよ。俺なんもしてねぇじゃねぇか」

窓際族「お気の毒です」パァン!!

男「不良社員さん!」クッ

男(肉体強化で間に合うか!?)アシビキッ

男「・・・くっ」バタリッ

不良「・・・び、びびらせやがって・・・」

美人「不良君・・・後ろ・・・」

不良「・・・・なんだこりゃ!?」

ドラゴン「・・・・・」

窓際族「ちゃんと扉閉めてこなかったでしょう。まったく近頃の・・・」ブツブツブツ

エリート「・・・・・」ムクチ

美人「・・・? 男さん倒れてどうしたの?」

男「・・・え、いや、ははは」

男(加速して助けようとしたなんて言えない!!)///

―――自室。

男(その後、不良君が大人しくなったおかげで施設の案内はスムーズに終えた)

男「エリートさんを教えるのか・・・」

男(あの、自信満々な目、ゆるぎない姿勢、・・・昔の俺みたいだ)ハァ

男「まぁ、何にせよ、人が増えるのはいいことか」

男「それにしても、美人さんどっかで見たような・・・」ハテ

―――エリートの部屋。

エリート「ふんっふんっふんっ」ウデタテッ

エリート(人とは不思議なものだ。あれほど自信満々で、あれほどゆるぎなかった男さんが、あんなに弱弱しく見えるなんて・・・)

エリート「それだけ自分が大きくなったのだと思っておこう」フンフンッ

エリート(それにしても不良め、お前に仕事の邪魔はさせない!)

エリート「さて、次は音楽の勉強をして、それから・・・」

美人「・・・・・・・」サァァァァァ!

美人(まさか、男さんがいるとは・・・)

―――過去。

美人(中学生)「あ、あの先輩・・・、これ・・・」

先輩(女)「いやー、すまん。私は渡すほうなのだ」ナハハ

美人(中学生)「誰にですか?」

先輩(女)「もちろんあの人」テレビユビサシ

美人(中学生)「世界大会補欠の・・・男?」

先輩(女)「ああ、私の憧れだっ」キリッ

―――現在。

美人(その後、いくらアプローチを試みても先輩が私を見てくれることはなかった。そして、実業団入りした男さんに告白した先輩は見事に振られた。そして、私の知らない大学へ行った)

美人(その後、先輩を求めてあなたを追いかける日々が続いた。この会社に入ったのもその延長線上。・・・怪我をして三軍に落ちてからの情報が社内でも曖昧になっていたから新設であるこの支部への異動を希望したのだけれど、まさか本当にいるなんて・・・)

美人(それにしてもあれだけ自信満々に輝いていた男さんがあんな死んだ魚のような笑い方をするなんて)

美人「なんか先輩のこともどうでもよくなってきた。仕事がんばろ」

美人(この会社の魔法セキュリティは世界トップクラスだから、男ばかりの職場でも安心して眠れるわね)

美人「・・・・・・むにゃむにゃ、せんぱい」zzz

―――翌日。

男「これに触れて、魔力を込めるだけの仕事」

エリート「そうなんですか・・・」ハァ

男(そりゃ、大企業の最前線でバリバリ働いていたエリートからしたら、こんなの雑用どころか下請けの会社がやる仕事だもんな)

エリート「最大魔力でいっていいですか?」ニヤリ

男「ああ、うん、大丈夫だよ」

エリート「はい、実は自分、学生の頃魔法闘技部の主将をしてまして、魔力にはちょっとした自信があるんですっ!!」ゼンカイッ

男(目をつぶりたくなる程度の輝き・・・うん、でもアマチュアトップクラスなのはたしかだな)

エリート「どうですか?」

男「うん、すごいよっ! それじゃあ、もう一回やってみよう」

エリート「・・・っ! はいっ!!」パァァ

男(元実業団に褒められたからうれしかったのかな。エリートらしくない子供のような笑顔だ)

エリート「・・・・はっ!!」パリーンッ

エリート「・・・どういうことですか?」ウルウル

男(今度は泣きそうな顔。本当にエリートなのか?)クスッ

エリート「・・・失敗を笑うなんてひどい人ですね」

男「ああ、違う違う。それは最初は誰でもするんだよ。俺が笑ったのは、エリートがあまりに可愛かったから」

エリート「・・・・・かわっ」/////

男「・・・けしてそういう意味じゃない」オコトワリシマス

男(その後、何度も試してみたが、エリートが成功することはなかった・・・)

―――休憩所。

美人「エリート君も?」

エリート「はい。恥ずかしながら一度も・・・」

不良「・・・ふん、エリートが聞いてあきれるな」ハンッ

窓際族「不良君もいっぱい挑戦したけど、ダメだったね」ニコリッ

不良「・・・あ、ああ」カァァァ

男(そんなに難しいことだったんだ)

美人「窓際族さんは何個くらいで成功するようになったんですか?」

窓際族「・・・僕? 僕は何個か覚えてないけど、一週間くらいでやっと連続5回に成功したね」

新人三人「・・・一週間」ゴクリ

窓際族「その点。男君はすごいよっ! 初日のしかも二つ目以降10日連続で魔力を込め続けてるからね」ニコニコ

新人三人「・・・・」ニラミ

男「は、はは、コツおしえようか?」

エリート「結構です! 自分で掴んでこそ先が楽になります!」

不良「俺はめんどくせーから教えてもらうぜ!」

美人「私も早く仕事覚えたいから」

エリート「・・・・・・」

男「・・・・・」

窓際族(エリート君には後で僕がレクチャーしておくよ)

男(は、はい・・・)

男(この人・・・こんなに他人に気を使う人だったか?)

窓際族「さ、今日は新人歓迎会だ」ニヤリッ

―――自室。

男(疲れた。本当に疲れた・・・)

男「まさか窓際族さんがめちゃくちゃ酒癖悪いなんて・・・」

男(美人さんの貞操が危うかったもんなぁ)ドキドキ

男「美人さんは美人さんで、よく分からないことで突っかかってくるし」

男(実業団時代に俺が彼女の先輩を振った? ・・・いや、まてよ。もしかして、一度クッキーかなんかを作ってきた・・・)

男「スポーツマンが他人から食べ物貰う訳ないだろ・・・」

男(でも、それによって傷ついた人が出たのなら・・・謝らなくちゃ)ヨイショ

男「・・・まだ起きてるかな」

男「美人さん、起きてますか?」コンコン

美人「・・・ふぁぃ」ムニャムニャ

男(魔族ちゃんの魔法少女コスプレパジャマ!!? まさかまさかまさかっ!!)

男「美人さんってもしかして魔族ちゃんのファン!!?」ガシッ

美人「も・・・って男さんも!?」オドロキッ

男「ああ、こんなところに天使・・・いや魔族ちゃんがいる・・・」

美人「魔族ちゃんだなんてそんな・・・」テレテレ

男「今度良かったら、一緒に魔族ちゃんライブ2012ver見ないかい?魔族総選挙2012verでもいいよっ」コウフンッ

美人「・・・ええぜひっ!」ニコリッ

男「・・・・あ、いや、違ったそうじゃなかった、あの・・・一言謝りたくて」////

美人(大の大人が照れてる・・・)

美人「謝りたい?」

男「・・・あ、ああ、思い出したんだ。昔、クッキーを渡そうとした女の子に受け取れないって断ったことを」

美人「・・・・ぷっ、あははっ」

男「・・・・・?」

美人「私に謝ってどうするんですか! 意味不明すぎ!」アハハハ

男「・・・あっ」カァァァ

美人「・・・私、男さんのこと試合会場でずっと見ていましたけど、結局何も分かってなかったみたいですね」

男「そ、そんなことはないっ! 試合中の俺が俺の全てだっ!!」

美人「・・・・・。・・・そうですか? 私には今のあなたのほうがずっと魅力的に見えます」ニコッ

男「・・・・えっ」////

美人「ま、女の子好きの私には関係のない話ですけどねっ! おやすみなさいっ!」バタンッ

男「・・・・・・・・・まいっか」

―――翌日。

男(仕事の始まりは各自自由だ。どれだけゆっくりでも毎日9時間、部屋に入り白い球に一回以上魔力を込める。ただそれだけの仕事)

男「それがどうしてこうなる・・・」

不良「・・・くそっ」バァンッ!

男(不良本日20回目の失敗)

不良「コツっていったってそのコツの使い方が分からなきゃ意味ねーじゃねぇか!!」

男(不良は魔法の基礎を学んでいない。だから、似たような魔力を何度でも出せるが、“正確な魔力”を出すことはできない。それができるのは、一つ一つの魔法を本から師から学び、何度も何度も練習・実践してきたものだけがそれを出せる)

男「不良。キミはとりあえず、球要らないや」

不良「ああ? 俺みたいな落ちこぼれは仕事しなくていいっていうのかよ」

男「ああ、そうだ。今の不良にこの仕事はできない」キッパリ

不良「なんだよそれっ!!」ジメンドーンッ

男「不良はまずは休憩所の魔力測定器で何度も何度も魔力を計るんだ」

不良「・・・それをしたら失敗しないのかよ」

男「・・・ああっ、俺を信じろっ」ドンッ

不良(何だよこいつ・・・急にキラキラしやがって・・・)キラキラネームカヨ…

男(なんだか楽しいっ!)

―――美人の作業部屋。

男「・・・昨日はどうも」ペコリ

美人「・・・・・さっ、やりましょ」

男(あんまり気にしていない様子だ・・・それはそれで・・・)ハァ

男「昨日は美人さんの魔力を見ていないから、アドバイスするのは一度見てからにするよ」

美人「・・・もしかしたら、アドバイスの必要ないかもです」

男「・・・え」

美人「・・・・・・はっ」マリョクッ

球「・・・・」パァァァァ

美人「・・・・・・はっ」マリョクッ

球「・・・・・・・」パァァァ

男「おおっ!」

美人「ねっ、できたでしょうっ!!」ダキッ

男「お、おおふ」アタフタ

美人「・・・よし、三回目・・・えいっ」マリョクッ

球「・・・・」バリーンッ

男「・・・・・・」

美人「・・・あはは、連続は無理か」

男「そんなことないよっ! 二回連続したってことは、三回も四回も変わらないよっ!」

美人「・・・え、ええ、そうね」///

男「俺もうかうかしてられないな。それじゃあいくよっ!」スタスタスタ

美人(現役の男さんみたいだった・・・)ポーッ

美人「・・・はっ、いかんいかん・・・私には魔族ちゃんが・・・」

―――作業部屋(男)

男「・・・・・」ハァッ

球「・・・・・」アカッ

男「・・・なんだこれ」

球「・・・・・」シロッ

男(・・・俺の感情・・・なのか?)

男(どの感情がどの色になるのか分からないけど、なんだか穏やかな色じゃないなぁ)

男「・・・今日はやめとこ」

男(その後、久々に肉体トレーニングをして時間を過ごした。魔力は一度も込めなかった)

今日はここまで。おやすみなさい。


質問にすぐ返事したい気持ちはわかるが、>>26みたいに答えるんじゃなくて本文中に出した方がいいぞ。

ある程度魔力を込めたら次の玉に……とかじゃないんだよな。壊れるかもしれないのに。

続き。
>>57さん了解です。本文に出ないと思ってました。

―――翌日。

男(不良が失踪した)

窓際族「残念ですが、不良さんは本社へ退職届を出しに帰ってしまったようです」

エリート「・・・ふんっ、軟弱な奴だ」

美人「軟弱かどうかって関係あるのかしら」

エリート「自分はどんな仕事でも諦めずにやり遂げてみせます!」

男「・・・・・それが会社の為になるとは言えなくても?」イラッ

エリート「・・・・は?」

男「適材適所ってあるんじゃねーの?」イライラ

美人「・・・・男さん?」コワイ…

男「俺だって諦めたくはなかったっ!」ガンッ

エリート「ひっ!」ビクッ

美人「・・・・」ソウイウコトカ…

窓際族「男さん、落ち着いてください」

男「・・・っ!! す、すみませんっ!!」ニゲッ

美人「・・・エリートさん大丈夫?」

エリート「プロ格闘家って怒ると怖いんですね・・・」ガクガク

窓際族「・・・彼は今日作業しないほうがいいですね。本社に連絡しておきます」

美人「・・・連絡?」

窓際族「ええ、・・・あ、伝え忘れてました。一日休暇をとるのには本社への連絡が必要なのです。不良さんは連絡していないので、逃げたにせよこのプロジェクトからは外されます」

エリート「・・・先に行ってくださいよ」ムスッ

美人(エリートさんカッコ悪い・・・)

――――自室。

男(やってしまったやってしまったやってしまった!!!)ガンガン

男「・・・はぁ」スコシオチツイタ…

男(諦めたくなんかなかった・・・)カミグシャ

男「どう考えても、俺が悪いよなぁ・・・」ハァ

窓際族「男さーん。いますかー」コンコン

男「・・・あ、はい」

窓際族「男さん、今日は本社へ連絡しておきましたので、一日お休みください」ニコリ

男「・・・・・はい」

窓際族「・・・そういえば、今日はあっちの世界へ行けますので、よかったらどうですか?」

男(・・・この人・・・本当におかしい。最初は緊張してただけなのか? こんなに人に気を使えるなんて・・・)

男「はい、そうします」

――――異世界。

男「今回は杖持参してみました」ジャーン

男(そして、窓際族さんがこっちのお金を持っていた秘密も教えてもらった)

男「・・・よし、行こう」

――――異世界、スロット店。

店員「っらしゃいせー!!」

男「・・・・・」

店員「・・・外人?」トテテテテ…

窓際族『いいですか? あちらの世界の人と私たちではゲームで言う“運の良さ”が違います。スロットという運のゲームはあっちの世界の人で勝ったり負けたりする仕様になっているのですが、僕らがそれをすれば・・・』

男「・・・勝ちまくり・・・というわけか」ジャラジャラ

男(所持金は窓際族さんに借りた紙幣五枚。両替機に通して五十枚になった)

男「スタート」ガシャコン

スロット「ペカッ!!」

男「・・・!? こ、壊れた!?」

店員「あー! すごいですねぇ!! 座って1g目に当てるなんて」ニコニコ

男「あー、えーっと、どういう風にそろえれば・・・」

店員「初めての第一打で当てちゃうなんて!」コウフンッ

店員「そろえてあげますね?」ニコニコ

男「・・・ありがとうございます」

――――二時間後。

店員「ありあっしたー!!!」ペコリン!

男(結局倍以上になった)

男「これで今日も魔族ちゃんのグッズが・・・」

チャラ男「おっ、あいつじゃね?」

dqn「ほんとだぁ! 当てまくってた奴だ!!」

ムキ男「ずるはいけねぇよなぁずるは」ニヤニヤ

男(・・・こいつら)グッ

男「あ、そうか魔法使えなかった・・・」

チャラ男「ちょっと面貸せよなぁ」グイッ

男「・・・いや、それは・・・」

dqn「はははっ、遠慮すんなって」グイグイ

ムキ男「可愛がってあげますよー」グイグイグイッ

男(ちっ、あっちの世界なら・・・)

???「あー、男さんだぁ!!!」ダダダッ

男「・・・え?」

チャラ男「な、なんだこの人だかり」ドウヨウッ

オタクの群れ「「ぶひぶひ」」

dqn「こ、こわいよ!」ヒィ!

ムキ男「こ、こんな人数相手にできないっ!」キャァ!

魔族ちゃん「男さんっ! こっちの世界に来てたんですねっ」フリフリ

男「・・・え、ええ!? 魔族ちゃん!?」オドロキッ

魔族「異世界の窓からいつも試合見てました! ファンなんですっ!」

男(魔族ちゃんが魔法闘技の試合を!?)カンドウッ

魔族「私達魔法とか使えないからいつも楽しく見てました」キャッキャ

男(死 ん で も い い)ルイセンホウカイ

魔族「でも急に試合に出なくなったから心配したんですよ?」

男「あ、えーっと・・・ちょっと休暇中で・・・」ドウヨウ

魔族「そうなんですか? それでこっちへきたんですねっ☆ゆっくり楽しんでくださいねっ!」ニコリ

オタクの群れ「「魔族ちゃーん!!」」

魔族「はーい☆それじゃあ、男さん、またねー」ブンブン

男「あっ、俺も・・・・」

男(言えない・・・嘘をついた・・・この口で・・・)ズーン

男(結局、グッズも買えず帰路に着いた)

男「疲れた。・・・ああ、本当に疲れた」バタリ

―――翌日。

男「えっ、エリートも帰るんですか?」

窓際族「ええ、そうみたいです」

美人「心配しなくても男さんのせいじゃないわ」

男「でも・・・」

窓際族「同僚に嫉妬して、大局が見えないようでは会社のために何もできない。エリートさんはそう言ってました」

男「嫉妬? エリートが俺に?」

男(どう考えても俺なんかよりあいつのほうが・・・)

窓際族「まぁ、不良さんも含めて送別会できなかったのは残念ですが、私達も未来のために仕事をしなくてはいけません」ニコリッ

美人「そうそう、私、連続で5回できるようになったんですよ?」ニコリッ

男「え、すごい!!」

窓際族「今日も一日がんばりましょう!」

球「・・・・」パァアン!!



男「・・・・・・・」ワレタ

男(何だ・・・?)

男「ちょっと魔力測定器に・・・」

――――休憩所。

男「・・・はっ!」

男(威力が・・・増している!?)オドロキッ

男(その後、何度も試してみたが、威力が定まらず、合計25個の球を割った)

―――数時間後、休憩所。

窓際族「威力が定まらない?」

男「ええ、今まで何年も安定して出せた魔法がここにきて全く定まらないのです」

美人「へぇ、プロの人って毎回同じ威力の魔法が使えるんだ」

男「いや、そういう訳でもなく、これができるのは実業団では俺とライバル企業のエースくらいかな。世界大会に出るような人たちは当たり前のようにできる技術だけど」

窓際族「つまり単純にスランプなのでは?」

男「・・・スランプ」

美人「私も昨日は連続3回が限界だった。・・・はぁ、連続でできればできるほど“割れた時の苦しみが大きいな”」ハァ

男「・・・・・!?」ビクッ

男(何回だ!? 何回連続で成功してたんだ!?)

男「・・・・・・・127回」

男(割れるなんて思ってなかったから油断していた。少なくとも127回は同じことをしなければならないのか!!)ゼツボウ

――――作業部屋(男)

男(怖くて一回目もできない・・・)

男(積み重ねてきたものが一瞬にして崩れる・・・)

男「似てる・・・」

男(俺の人生も似たようなものだ。トレーニングと試合でパンパンに張り詰め、たった一回の怪我であっさりと破裂してしまった)

男「怖いんだ。“人生を繰り返すのが”」

男(だが、人生が待ってくれないように、仕事は始めなければならない)

男「どうすれば・・・どうすれば・・・」オロオロ

窓際族「失礼しますね」ヨイショ

男「窓際族さん・・・球?」

窓際族「ええ、球です。私が今のところ、319回成功させている球です」ニコリ

男「そんなのを持ってきて割れたらどうするんですか!?」アタフタ

窓際族「・・・もちろん割るんですよ」ニコリ

球「・・・」ジャァナ、パァアアアン!!!

男「・・・・・・」アゼン

窓際族「いいですか。これはただの“球”で、仕事道具です。たしかに“200回目辺り”で人生が見えてくるかもしれませんが、それはあなたなら乗り越えられます」ニコリッ

男「・・・は、はい」

窓際族「いいですか? あなたならきっとできます」

男(ああ、やっと分かった。窓際族さんは最初から俺のことを気にしてくれていた。気を置いていたのは“俺のほうだ”!)

男「ありがとうございますっ!」フカブカッ

男(俺が頭をあげると、目の前に窓際族さんはいなかった)

男「・・・かっこいいな」

男(しかし・・・、だからといって簡単にスランプが抜けるわけではない)ヌンッ

球「・・・」マダマダダネパァアアン!

男「これで50個目・・・」

男(何かが違う・・・何かが・・・)

美人「・・・男さんちょっといいかな」コンコン

男「はい?」

―――休憩所。

美人「お願い!! 一緒にオンラインゲームで戦って!!」タノミッ

男「え、何それ?」

美人「魔力電波で世界中のプレイヤーとゲームができるオンラインゲームがあるんだけどね。そこで喧嘩を売られちゃったの」アセアセ

男「美人さんも喧嘩を買ったりするんだ」ヘェ

美人「ん、ちょっとね」

男「でも、俺って魔力あるほうじゃないよ? そりゃ平均よりは強いと思うけど、一般人の鍛えてる人に負けちゃうレベルだよ」

美人「大丈夫だよ。このゲームは魔力の強さだけじゃなくて、魔力コントロールも重要なの。だから男さんにはぴったりだと思って」ニコリッ

男(なるほど・・・でも)

男「今の俺は知ってると思うけど・・・」

美人「いいのいいの! “私が男さんとやりたいんだからっ”」ニコリッ

男(あ、気を使ってくれてるんだ。・・・今までだったら気付かなかったな)

―――美人の部屋。

美人「男さんはねー、普通のコントローラー使って」ニコニコ

男(美人さんのは・・・手袋?)

美人「私のは会社の開発部から貰った特注なの」テヘッ

男(こっちの女の子も・・・可愛いな)ドキッ

美人「さて、練習もかねて、雑魚敵と戦おうか」スッスッ

男(早い・・・。追いつかなきゃ)カチャカチャ

美人「あ、ストップ。まさかこれって・・・」

幸運の白ウサギ「・・・キュィ?」

美人「ああ! 幸運の白ウサギだぁあ!! 捕まえて捕まえて」ギュッギュッ

男(だぁあ! 胸をあててくるなっ!)ガチャガチャガチャ

美人「攻撃系の魔法じゃ逃げちゃうから、補助系の魔法で逃げ道をふさぎましょう」スッスッ

男「おっけー」カチャカチャ

男(ふーん、こっち系のゲームあんまやったことないけど、魔力補助のおかげでずいぶんと動かしやすいな)

美人(男さん、やっぱすごいな。これって難易度けっこう高めのゲームなんだけどな)ドキドキ

男(魔力をコントローラーに込めればそのまま魔法が発動するのか)ハッ

プレイヤー【男さん】は補助魔法大きな壁を発動した!

幸せの白ウサギ「・・・キュイ!!?」アセアセアセ

男「美人、そっちにいったぞ!」シンケンッ

美人(やばっ、試合時の男さんだっ・・・呼び捨てにされちゃった)ドキドキドキ

男「美人っ!!? くっ」

プレイヤー【男さん】は加速魔法を多重発動した。

男「うぉおおおお!!」

美人「早すぎて何がなんだか」

幸せの白ウサギ「・・・キュゥ」コウソク!!

美人「おおおぉぉおぉおぉお!!」ガシッ

男「・・・・!!」ガシッ

二人「「よっしゃぁ!!」」グッ

プレイヤー【猿】「おいおい、遅いんでないの?」

プレイヤー【犬】「兄ちゃん、セックスしてたんだぜこの女」ヒヒヒッ

プレイヤー【ラグナロク】「なっ・・・」カァアア!!

プレイヤー【男さん】「おいおい、子供のくせにセックスなんて言葉はやいんじゃないか?」

犬「なっ、何を!?」

猿「おい犬、よくみてみろ。あのプレイヤー名」ニマァ

犬「・・・! へぇ、こっちの世界まで男か」ニヤニヤ

美人「な、なによっ」ムッ

犬「はははっ、今回の発端だって俺らが“男なんてプロの世界じゃ通用しない”って言っただけじゃないか」

猿「それをお前が顔真っ赤にして怒っただけだろ」ギャハハハハハ

美人「・・・・うぅ」カァァァァァ

男(そういうことか・・・)

男「おい、お前ら」

犬「・・・なんだよ」

男「とりあえず、まずは俺と勝負しないか? 俺対お前らでいいぜ」ニヤリ

猿「なんだよ、部外者のくせに・・・。ま、いいだろ。内容は何だ? 殺し合いか?」

男「いや、そこにある岩に何回連続で・・・えっとファイア?をぶつけられるかってのはどうだ?」

犬「ひひひっ、俺達がどれだけこれに時間を費やしてるか知らないで」

猿「回線ラグや、フィールドのちょっとしたずれまで熟知してる俺らに挑むなんてな」

男「ところで、ファイアってどう打つんだ?」

美人「手を前方にかざして、ファイアって言うの!! 魔力の量に合わせて炎がでるから!」

男「おお、こうか、ファイア」ボアッ

犬「あはははっ、当たったじゃねぇか! 距離三倍以上の岩に!」

猿「もちろんこれもカウントのうちだからな」

男「ああ、いいぜ」

男「28回目」ドンッ

犬「・・・・」ドンッ

猿「・・・・くっ」ドンッ

美人「・・・・・すごい」

美人(何がすごいって、距離が離れれば離れるほど、魔力の調節もコントロールも難しくなる。それを二人の二倍以上の速度で繰り出すなんて・・・)

男「そろそろスピードあげていいか?」

犬「な、なんなんだよこいつ」

猿「さてはお前廃プレーヤーだな! 履歴を見せやがれ!」

男「履歴? どう見せるの?」

犬「△おして一番下だよっ!!」アッ

美人「あー! 犬のミス!! 後は猿だけよっ!!」アハハハッ

男(美人さん・・・興奮しすぎ・・・)ハァ

男「こう?」

犬「・・・履歴40分・・・捕獲魔物“幸せの白ウサギ”!!!?」キョウガクッ

猿「なんだって!!?」アッ

男「俺の勝ち・・・だな」ニヤリ

犬・猿「なんなんだよこいつ・・・」

犬「で、でも、こんなの遊びだからなっ!」ムッ

猿「そうだそうだっ! 本番はこれからだっ!」ムキーッ

男「そりゃぁ、もちろんっ! ルールとかはなしの倒し合いだろ?」

美人「え、ええ」

男「テンションあがってきた。ちゃんと正五角形刻めるかなぁ」グッグッ

美人(正五角形・・・力・技・速さ・受け・そして魅せ。観客に評価させると大きさはどうあれいつも正五角形になる“最強のバランス型”)

犬「・・・お、おい、正五角形って実業団の・・・」アセリ

猿「・・・ど、どうせ、真似してるだけだっつの・・・」アセアセ

男「さぁ、始まりの合図はいつだ」ドンッ

寝ます。このタイミングだと男がカッコ良く見える。本当にカッコイイのは窓際族さんです。では。

犬・猿「「すいませんっした!!」」

男「俺は別にいいよ」アハハ

美人「私も男さんがいいなら」

犬「それにしても、やっぱ男さんすげーっすね」

猿「現役時代より魔法コントロールうまくなってるんじゃないんですか?」

男「・・・いや、そうでもない。最近、魔力が安定しなくて困ってるんだ」

犬「それってあれのせいじゃないんですか?」

男「・・・あれ?」

猿「おい、やめろって。男さんそこの会社だぞ」

犬「あ、そっか・・・」

男「教えてくれ、頼む」

犬「・・・・・・実は」

男「うちの会社が人体実験を行っている?」

犬「はい、何やら人から魔力のみを取り出す実験とか言われてて・・・」

美人「それって昔から言われてるじゃない。魔法会社が儲ければそういう噂がついてくるものよ。魔力融合実験とかね」

猿「あと勇者精製実験なんてのも噂されてますよね」アハハ

男「いずれにせよ、俺のスランプは俺のせいだ。きっと立ち直ってみせる・・・」

犬「・・・男さん」キュン

猿「もしよかったら連絡先教えてもらっていいですか!?」ランラン

男「ああ、いいよ。またこのゲームで相手してくれ」ニコ

美人「その時は私も一緒ねっ」ムスッ

――――作業部屋(男)

男「うまくいくと思ったんだけどなぁ・・・」ハァ

男(結局、ゲームはしょせんゲームだった。魔力の不安定は依然続き、これで記念すべき77個目の球になる)

男「やはり、緊張感が足りないのか・・・」

男(試合中の緊張感を思い出して・・・)

男「・・・・・・・・・・・・・・・・・ハッ!」

球「・・・・」パァァァ

男「・・・もう一度!」ハッ

球「・・・・」パリーン

男「・・・・・・クソッ」

男(そういえば、高校の頃、何やってもうまくいかないことあったな・・・)

男(高校生)『んだよ?』

男(高校生)『ははっ、雑魚相手にしたってつまんねーんだよっ』ポタポタ

男(高校生)『・・・・・・・つまんねぇ』

男(結局、喧嘩三昧で夏の大会の出場を取り消されかけた時、あまりのショックで気づいたんだっけな)

男(高校生)『俺から魔法闘技を奪わないでください!! お願いします!!』ドゲザ

男(おせっかいな担任や家族のおかげで出場できた俺は全国大会で好成績を残し、世界大会補欠参加をしたんだ)

男「どうやって立ち直ったんだっけ・・・」ハァ

――――休憩所。

男「あ、窓際族さん」

窓際族「お、男さん、良いところに」ニコッ

男「狩り・・・ですか?」

窓際族「ええ、以前のお約束。今果たしたいなぁと思いまして」ニコリ

男「でも今は・・・」

窓際族「スランプなんですよね? それなら尚更行くべきだ」

男「はぁ・・・」

窓際族「早くしないと“夜の王”が出ますから支度してください」ニコリ

――――施設外。

男「・・・はぁはぁはぁ」イキギレ

窓際族「あまり緊張しないほうが良い。それがモンスターに伝わって、やられちゃうからね」ニコニコ

男(そんなこと言われたって・・・)クソッ

男(木々に囲まれた薄暗い空間。腰まで生えた草がモンスターの存在を醸す)

男「・・・・くっ」

窓際族「草に隠れてチャンスを待っているのはしょせん雑魚。キミなら後の後でも十分対応できるはず。問題は堂々と草を踏みしめてあるく中型モンスター。見つけたら即行動。オッケー?」

男「お、おっけー」ゴクリ

男(ある意味試合以上の緊張感だ。でも、それがモンスターに伝わる。かといって緊張感なくしては突然の出来事に対応できない・・・)

窓際族「キミのそれは緊張じゃなくて“不安”だ。見えないモンスターに対して抱えている不安、自分自身を信じられない不安」

男「・・・不安」

窓際族「どれだけ不安を抱えても、モンスターと出会わなければ無意味だ。かといって緊張感なくしては、いざという時身体が動かない。男さんはどうすればいいと思う?」

男「・・・俺は・・・俺はいつも目の前に敵がいた。そして自分との戦力を計り、その時に出せる最善の手を考え、即行動した。例え相手に予想外の行動をされても、それに対処できるだけの“余裕”を残しておく・・・」

窓際族「相手が目の前にいるのは良いよね。自分を見なくていい」ニコリッ

男「自分?」

窓際族「キミは今も昔も相手ばかり見ている。自分をさっさと決めてしまい、それを相手と比べて対応策をとる」

男「・・・」

窓際族「だけれど、“同じ自分”なんていない」

男「・・・っ!」

窓際族「毎日寝る時間だって、食べるものだって、出会う人だって違う。気温が違えば天気も違う」

男「なら・・・どうすればっ」

窓際族「見つめるんだ。自分を」

男「・・・自分を?」

窓際族「ああ、キミはまだ自分を知らなさすぎる」

男「・・・自分を見つめる」

窓際族「・・・・・この音」キョロキョロ

男「どうしたんですか!?」

窓際族「武器は持ってるね」

男「はい。モンスターですかっ!?」

窓際族「黄昏の姫君が近くにいる。それに後ろから夜の王もきてる」

男「ええ!?」オドロキッ

窓際族「夜の王は最強だが人間に対する殺意は少ない。私が遠くへ誘導しておく。その間に黄昏の姫君を」

男「あ、え、えーっと黄昏の姫君ってのはどれくらいの強さで・・・」

窓際族「・・・いつも逃げてたんで分かりません。ではっ!」ニコッ

男「ええ!? ・・・行っちゃったよ」ボーゼン

男(とりあえず草に隠れて・・・)

黄昏の姫君「・・・・・・」

男(姫君って言うから美しいモンスターかと思ったら、飛べないドラゴン“ドラゴ”じゃねぇえかよっ!!?)アセリッ

男「空の王ドラゴン、地上の王ドラゴって言えば子どもだって知ってる知識だぞ」

ドラゴ「・・・・・?」クルッ

男(しまったっ!? 目が――――)

ドラゴ「・・・・」グバァ…

男「やばいっ!?」ダッ

ドラゴ「グォオオオオオオオ!!」レーザービーム!!

男「くそっ、古代の生き物は禁術並みの魔法を使いやがる」ハァハァ

男(どうする・・・武器は拳銃が一丁と、魔力吸収型ブレードだけだぞ・・・)

窓際族『見つめるんだ。自分を』

男「そうだ・・・今もまた武器だけを見てた。敵だけを見てた・・・」

男(俺は今何ができる? 魔法は? 体術は? 精神状況は? 戦略は? モチベーションは?)

男「この気持ち知ってる・・・」

男(世界大会で名前の知らない相手を見た時、自分ならどうするか、想像してた時の気持ちだ)

男「・・・ん、案外いけそうだな」ヨシッ

ドラゴ「ギャァオウ!!!」

男「炎の塊が無数に・・・なんだこれ」ハハハッ

男(全ての回避は無理だ。それならば・・・)

ドラゴ「ギャゥゥゥウウゥゥ!!」ハッシャ

男「多少の攻撃は受ける!!」ダッ

男(魔法で炎耐性を最大まで上げて・・・)

男「うぉおおおおおおお!!」ドンッ

男(げ、右腕飛んだ)

男「うぉおおおおおおおおおおお!!!」ズシャ

ドラゴ「グォオオオオオウ!!」

男「ま、まだまだっ」2hit!3hit!4hit!

男(意識が・・・)フラフラ

男「くらえー!!」16hit!!great!!

ドラゴ「グギャァァァァアアア!!」

 ドラゴを倒した!!

男「・・・はぁはぁはぁ」クラッ

窓際族「大丈夫ですか!?」ガシッ

男「はい・・・窓際族さんは?」

窓際族「ええ、なんとかね」ニコ

男「ああ、右腕がなくなっちゃったなぁ・・・。でもまぁ左利きだしいっか」

窓際族「きっと大丈夫だよ」ニコリ

男「ええ、そうですね」ニコニコ

窓際族「ドラゴの牙を添え木に腕をくっつけておきましょう」グッ

男「・・・あれ? この模様・・・」ジメンペタ

窓際族「あ、ああ、これ? 私の魔力ですよ」

男「・・・・・え?」

窓際族「測定器の壁が小さすぎて、外まであふれちゃったんですよ」アハハ

男「」アゼン

今日はここまで。

続き。途中でやめたのはすまぬ。

―――休憩所。

美人「お、男さんっ!!?」オドロキッ

男「あ、ああ、ちょっとやってしまったよ」ニコニコ

窓際族「さぁ、美人さん、男さんに飲み物を用意してやってくれ」ニコニコ

美人(何この二人・・・怖い・・・)オチャドウゾ

窓際族「後で治療魔法をかけますね。日常生活には支障ないはずです」ニコリ

男「ああ、ありがとうございます。助かります」ニコニコ

美人(怖い・・・この人たち・・・誰?)ガクガク

窓際族「おや? 美人さん震えていますね」スッ

美人「いやっ!」

男「窓際族さん。急に女性に触れてはいけませんよ?」ニコリ

窓際族「ああ、そうですね。すみませんでした」ペコリ

美人「い、いえ・・・」

男「ああ、そうだ。美人も回復魔法得意だったよね?」パチッ

美人(ウィンク?)

美人「え、ええ、まぁ」コクリ

男「それじゃあ、美人にお願いしようかな」スッ

窓際族「おやおや、やっぱり男女が二人集まれば・・・」ニコリ

男「違いますよ。実は少し前からの知り合いだったんです」ペコリ

美人「し、失礼します」ペコリッ

窓際族「・・・・・・・」ニコニコ

――――美人の部屋。

男「ぐぅうううっ!!!」バタリッ

美人「いやぁああぁぁ!! 男さん!?」カケヨリッ

男「かっ、かはっ!! ぐっ!!」モンゼツ

男(痛くないわけあるか! 大丈夫な訳あるか!! 腕が一本吹き飛んでんだぞ!!)

美人「か、回復魔法!!」パァァァァ!!!

男「ぐぅぅうううう・・・・はぁはぁ・・・」

男(痛みはなくなったが、繋げるには・・・)

男「・・・今日は何曜日?」ガンメンソウハク

美人「木曜日よ・・・」

男「・・・良かった」ムクッ

美人「どこへ?」

男「頼む、説明は後でするからついてきてくれ」

美人「・・・は、はい」

―――異世界。

男「魔族ちゃんを探そう」ハァハァハァ…

美人「ここ・・・え、ええ!?」オドロキッ

男「あ、ああ、ここは魔族ちゃんのいる“異世界”だ」

美人「あ、あれってもしかして越えられない壁なの?」

男「それより、早く魔族ちゃんを探そう・・・」ハァハァ

美人「な、なんで?」

男「頼むっ!!」

美人「わ、分かったわよっ! もうっ」タッタッタ

男「ちっ、これじゃあ杖もつけない・・・」

男(とりあえず落ち着いて考えよう・・・)

男(初め、俺は窓際族さんを鬱陶しいおせっかいな空気の読めない気の使えない男だと思っていた)

男(しかし、だんだん窓際族さんの“良い所”が見えてきたし、“悪い所”も俺が作っていた溝のせいだと気づいた)

男「そして、窓際族さんに信頼を置いた。信用したんだ」

男(だが、そのタイミングで魔力が乱れた。・・・いや、それを重ねるのは早計か)

男「いずれにせよ・・・」

男(窓際族さんは俺のために球を割ってくれた・・・が、)

男「本当にあれは窓際族さんがずっと魔力を込め続けた球なのか?」

男(それは分からないが、とにかく窓際族さんはまともじゃない。それだけは分かる)

男「・・・結論、俺はまだ何も分かってない」ハァ

美人「・・・魔法が使えないならそう言いなさいよっ!」プンスカッ

美人(男さんのは演技だったとして、なぜそれをする必要があったの)

窓際族『・・・・・』ニコニコ

美人「・・・・っ」ゾクッ

美人(あれは人間の笑顔じゃない。もっとこう・・・そう、白い球みたいな“からっぽ”な・・・)

美人「あれに魔力込め続けたらあんなになるとか・・・」ナーンテ

魔族ちゃん「みんなぁ! 今日もありがとうっ!!」ワーイ

美人「・・・・・いた」カンドウ…

オタク達「「「魔族ちゃぁぁぁあぁぁぁん!!!」」」

美人「ど、どうしよう・・・人がいっぱいだ」ゴクリ

美人「あ、あのっ!!」

魔族ちゃん「みーんな、元気ないぞー! せーのっ!」

オタク達「「「魔族ちゃぁあぁぁぁああん!!!」」」コウフンッ

魔族ちゃん「ありがとぅぅううううう!!」

美人「こらぁあああ! 話を聞けぇええええ!!!」

オタク達「「「・・・・・!?」」」フリムキッ

魔族ちゃん「・・・・?」

美人「魔族ちゃん・・・さん! 男さんを・・・助けてっ!!」

魔族ちゃん「・・・男さん!? ・・・・・・」ウルウル

オタク達「「「・・・・・」」」ウンウン

魔族ちゃん「ありがとうっ!!!」ニッコリ

美人「こっちですっ!!」ダッ

魔族ちゃん「はいっ!!」

男「くぅ・・・」

男(意識が・・・)フラフラ

魔族ちゃん「男さんっ!!」ガッ

男「・・・・ぐっ!!?」イタイ…

美人「連れてきましたよっ!」

魔族ちゃん「男さん! 怪我したんですって!!?」

男「・・・あ、ああ。右腕がちょっと・・・」チダラケッ

魔族ちゃん「い、急いで救急車をっ!!」ピポパッ

男「・・・あ、ありがとう」バタリッ

―――病室。

男「ふぅ・・・」ベッドイン

美人「・・・・・」クゥ…

男「・・・ありがとう」

美人「・・・・・」クゥ…

男「8時間・・・早く戻らなきゃな」

男(こっちの世界で一晩以上過ごすと魔法が使えなくなるって噂だからな・・・)

男「よっ・・・さすが魔法がない分、機械文化に特化した世界だな。当分動かないだろうが、きっと治る」オクソクッ

美人「・・・あれ? 起きてたの?」ムクッ

男「ああ、もう大丈夫だ。早く戻ろう」

美人「・・・え?」

男「よっと・・・ギプスの分さっきより歩きにくいな・・・」ヨロッ

美人「まだ駄目だよっ! 魔族ちゃんがいつまでもいて良いって言ってたし!」

男「いや、魔法使えなくなるし・・・」

美人「そんなのいいよっ! 身体のほうが大切でしょ!?」

男「いや、それは違うでしょ」

美人「え?」

男「俺達は魔力と共に、魔法と共に生きてきた。それなくしては生きられない。身体の一部だ。・・・違う?」

美人「・・・・・・」ムッ

男「とにかく行こう」ニコリッ

美人(・・・一緒に魔法捨てる覚悟だってあったのに)ムゥ…

男(だが、戻ってどうする・・・)

―――休憩所。

窓際族「おやっ!? それは異世界の技術だねっ」ニコニコ

男「え、ええ、美人の魔法だけじゃ足りなかったみたいで」アセリッ

美人(待ち伏せ!?)オドロキッ

窓際族「それなら私も行けばよかった。今から行くところだったんだ」ニコリッ

男「え、そうだったんですか? それは残念だ。一緒にスロットできたのに」

窓際族「“ノリ打ち”ってやつだね。また今度しようね」バイバイ

美人「・・・行っちゃった」

男「・・・・・・・!」ダッ

美人「どこ行くの!?」

――――作業部屋(窓際族)

男「・・・やっぱりあった・・・」

白い球「・・・・」ヨゥ

美人「はぁはぁ・・・ど、どうしたのよ」

男「・・・・分からない。分からないけど、俺はきっと・・・」

男(窓際族に・・・殺される?)ゾクリッ

美人「きっと・・・何?」

男「いや、なんでもない」ブンブン

男(チャンスは今しかないのか・・・?)

美人「・・・・・・」ムゥ

――――越えられない壁。

男「・・・・・っ」ハァハァ

男(これを壊せば・・・)ハァハァ

男「・・・・・」ドックンドックン

男(殺される前に殺せ・・・)バクバク

男「は、破壊ま・・・!?」

男「・・・かはっ、はぁはぁ・・・俺は何を?」

男(いったい何が起きてるんだ・・・)

――――翌日。作業部屋(男)。

男(結局、何もできず部屋に帰った俺は、美人の誘いを断り眠りに落ちた)マリョクッ!

白い球「・・・・」パァァァァ!!

男(しかし、狙われてるのは俺だけとは限らない。今日からは美人も守らないと・・・)マリョク!!

白い球「・・・・」パァァァァ!!

男「・・・しかし」

男(スランプを抜けたのはいいが、困った状況になった・・・)

男(最初の頃は、キーボードにエンターキーのみが存在し、それをひたすら叩く感覚だった。とてもつまらない作業だったが、淡々とこなすことができ、何も考えなくてよかった)

男(ところがどうだ。何度かに一度、魔力をどれくらい出せばいいのか不安になる時がある。キーボードに全てのキーがそろっていて、それを叩く感覚だ。落ち着けば間違えることはないのだが・・・)

男「回数を重ねれば重ねるほど・・・プレッシャーは増していく」

男(異世界の怪談に子供が河原の石を積み、それを鬼が崩す話があったな・・・あれに似ている・・・)

男(それでも、今日だけで30回成功させたのは、強い自信となるだろう)

男(だが、その日、再び事件は起きる)

―――休憩所。

窓際族「・・・・・・」フラーッ

男「・・・!? 窓際族・・・さん?」

窓際族「・・・・・球が・・・割れてしまった・・・」バタリッ

男「・・・!? 窓際族さんっ!!!」カケヨリッ

男(なんだっ? これが本当に窓際族さんか?)

男「・・・・・人形のようだ」

窓際族「・・・・・・」シーン

美人「ふんふふーん♪ 今日は連続15かー・・・い」ゾッ

美人「きゃぁぁぁぁあぁぁぁあ!!!」フラッ

男「くっ・・・」ガシッ

美人「お、男・・・さん」

男「落ち着け」

美人「・・・・はい」ムスッ

美人はなんでちょっとした事ですぐムスッとすんの?
毎日生理なの?

男「・・・これはいったい」グッ

男(さわり心地は白い球に似ている。が、まぎれもなく窓際族さんだ)グッグッ

美人「死んでるの?」

男「わからない・・・少なくとも生命活動はしていない」ハッ

窓際族「・・・・・」パリーン

美人「・・・・割れた?」

男「これは・・・白い・・・球だ」

第一章 完

>>119さん。美人は毎日がエブリデイなんだろうきっと。

第二章 オープニングだけやって終わる。

―――自室。

本社『窓際族。彼なら数週間前に事故で亡くなっています』

男「・・・そうですか。あの、今まで本社とのやりとりをしてくれていた方がいなくなったのですが、これからはどうすればいいでしょうか?」

本社『・・・連絡は今まで一度もいたしておりませんが。仕事の指示は全てメールでお送りしてます』

男「そう・・・ですか、ありがとうございました」ガチャ

美人「どうだったの?」

男「謎が増えるばかりだ。窓際族という人物は数週間前に亡くなっていたらしい」

美人「・・・・・っ」ゾクリ

男「あの人が窓際族という人物でなかったのか、それとも“窓際族本人”だったのかは分からない。が、まずはやることが一つ」

―――――窓際族の部屋。

男「ここを調べなくては・・・」ゴクリッ

美人「何・・・この臭い」

男「白い球の・・・残骸?」グシャ

美人「衣服も、ベッドもまるで新品のようにそのままよ・・・」

男「いったい・・・どういうことなんだ?」カチッ

パソコン「welcome!」

男「・・・くっ、片手じゃやりにくいな」カチャカチャ

美人「貸して」カチャカチャカチャカチャ

男「・・・ワーオ」

美人「うーん・・・どうやら、メールも私が来る数日前から開いてないわね」

男「・・・数日?」

男(それはつまり・・・数日前までは本物の窓際族だったってことか?)

美人「・・・ちょっと待って・・・これって」

パソコン『白い球の注意点』

パソコン『白い球の注意点』

1、一日9時間以上は近くにいない。

2、魔力を込める回数は一つの球に一日50回まで。

3、200回を超えると、特殊梱包材に入れ、本社に送ってください。

4、200回越えても魔力を込め続ける同僚がいた場合、速やかに本社へ連絡し支持を仰いでください。

5、100回を超えている同僚で、急に性格が変わった人物がいたら、速やかに本社へ連絡し、作業部屋へ監禁してください。その際、球は部屋から持ち出して置いて下さい。

男「・・・・騙されていたという訳か」

美人「・・・一体誰に?」

男「分からない、分からないけど・・・」

美人「でも、“終わった”のよね?」

男「ああ、これからが“始まり”だ」


第二章 はじまり。。。

ブラックファンタジーはじまり。嘘。おやすみ。


注意点3は「200回を超えたら」でいいのかな?

>>127
3は200回を越えたら、4は本社の指示。誤字脱字すまぬ。

つづき。すぐ寝るかも。

―――自室。

男(さて・・・なんとかあの部屋からパソコンを移したものの、全ての謎は解けない・・・)

美人「・・・・・」ボーッ

男「この情報・・・」

パソコン『各“素体”のデータベース』

男(白い球にはそれぞれスペックがあり、耐久度や容量が違う)

男「1mmpも嘘だったのか? ということはあの日から・・・」ゾクリ

男(確かに、“あの男”が言っていたことが真実なら、魔法をまともに学んでいない不良がここに来るのはおかしい)

美人「・・・素体って・・・素材の間違いよね?」

男(美人は“一つの強い疑問”にさいなまれている)

男(白い球は・・・元は“人間”なのではないか?)

男「分からない・・・が、やらなければならないことは決まっている」

美人「・・・・まさか」

男「ああ、明日から“作業”に戻る。今日は二人分休暇申請を出しておいた」

美人「・・・!? なんでやるの!? 逃げましょうよ!!」

男「これ・・・」スッ

パソコン『本社への定期報告および白い球の定期納入がなされない場合』

14日間一度も連絡がなく、30日間納入が滞った場合は、施設地下に設置された“融合魔力装置”によって、施設を“消去”します。

美人「消去って・・・確認作業とかしないの!?」

男「つまり“たったそれだけの期間”で、それだけのことをしなければならない事態になるんだろう」

男(そして、今俺達がこの場を離れれば一ヶ月後に施設は消去される。そうなれば真実は闇の中だ・・・)

美人「で、でも、私達みたいな一般人、ここがどうなろうと関係ないじゃない」

男「いや、そうでもないらしい」カチッ

パソコン『納品』

リスト【社員】
リスト【一般人】


男「これが何を意味するのか分からない。が、“納品”されたのが俺達であることは確かだ。そして、不良やエリートは・・・」カチカチッ


リスト【社員】

・不良 納入不可【再搬入済み】

・エリート 納入不可【失踪中】


美人「い、いや・・・」

男「もしかしたら・・・いや、考えたくもない」

男(逃げるという選択肢自体、最初から存在していなかったんだ・・・)

男「それに、もし納品というのがここへ連れて来られることだったとして、それなら選ばれた俺はもしかしたら・・・」

美人「練習中の事故は・・・仕組まれたもの?」ゾクッ

男「それも分からない。ただ、あの時怪我してなければ転勤は断っていただろう」

美人「どうすればいいのよ・・・」ボウゼン

男「今は前に進むしかない。決して前向きではないがな」

美人「・・・私は」

―――作業部屋(男)

男(球が割れていた理由、それはあまりに単純だった)ハァッ!

球「・・・・」ピカッ

男(あの男の巨大な魔力。あれで割れていただけなのだ)フンッ

球「・・・・」ピカッ

男「あれは本当になんなんだ・・・?」フンッ

球「・・・・」ピカッ

男(最後に見た人形のような窓際族さんは、存在感も質感も異様でまさに“白い球”そのものだった)

男(だが、普段の彼はとても人間くさくて、温かみがあった・・・)

男「・・・今は目立たないほうがいいな」ハァッ

白い球「・・・・」ピカッ

男「これで50回。限界に近付くにつれ何かが変わっていくと思ったが・・・」

男(もう一度・・・やってみるか?)ドックンドックン

男「・・・・はぁっはぁっ」ソロー…

白い球「・・・」

男(俺もなるのか? ・・・あれと?)ドックンドックン

男「はぁっ・・・はぁっ・・・ち、治療ま・・・」

白い球「・・・・・」

男「・・・・っ、かはっ! はぁっはぁっはぁっ・・・」

男(できないっ・・・俺は“あれ”になりたくないっ!!)ゼェゼェ…

男「ここに九時間拘束していた理由も分からない・・・」

男(・・・何か見落としてないか?)

男「・・・分からない」

―――休憩所。

美人「私・・・帰る」

男「・・・・え?」

美人「だって、怖いもの・・・」

男「い、いや待て。危険だ――――」

美人「ここは安全なのっ!?」バァン!

男「・・・・・・っ」

美人「分からないよ。昨日まで普通だった人がいきなりおかしくなって、昨日元気にしてた人が急に失踪するなんて」ナミダメ

男「だが、俺はついていくことができない・・・」

美人「・・・っ! そうよねっ! あなたもすでに“おかしくなりはじめてる”ものねっ!」

男「・・・なん、だと?」ガタッ

美人「気づかない? あなた、最初の頃は死んだように生きてた。仕事にあまり興味もなくて、他人なんか見てなくて。・・・でも、変わった。今は“仕事”にとりつかれてる」

男「それは、俺の人生を奪った相手が・・・」

美人「人生が何よっ! ここにいたら人生が取り返せるの!? あなたはもうそんなことは“どうでもいい”のよっ!」

男「・・・・・」

美人「あなたはいつもそう! 先輩が勇気を出したときだって、魔法闘技を言い訳に逃げた。異世界へ行ったときだって魔法を言い訳に逃げた! 今度は“何”を言い訳に逃げるの!!?」

男「俺は・・・」


 ぴんぽーん。


男「・・・・!?」ビクッ

美人「・・・・ひっ」ビクッ

男「玄関のインターホンか?」

休憩所モニター。
『活発そうな短髪女性』

男「・・・転勤してきたのか?」

美人「・・・・・」ガタガタ

男「・・・美人?」

美人「・・・まさか本当に来るなんて・・・」ブルブル

男「・・・・お前、リストを!?」

美人「怖かったの!! 窓際族さんがあんなになって、あなたがそれを追うように変わっていって・・・私・・・」ペタッ

男(落ち着くんだ・・・。今美人を責めても現状は変わらない。むしろこれで美人が出ていくことがなくなった)

美人「・・・っ、先輩!!」

男「・・・俺は・・・俺、なのか?」

ここまで。もしかしたら一日空けるかも。

続きいきます。3時ごろまで

先輩「今日からここで働くことになった先輩です!! よろしくお願いします!」フカブカッ

美人「せんぱぁい!!」ダキッ

先輩「げぇ! 美人!?」

男(美人が女になってる・・・)ヘラ

美人「先輩! 会いたかったんですからねっ」ギュッ

先輩「あほかっ! あんたがストーカーするから逃げたってのに、なんでまた現れんねん!」ビシッ

男(話が違う・・・)ヤレヤレ

美人「あ、あははー。でも、私のおかげですごい出会いが待ってますよ?」

先輩「なんやそれ」ジトー

美人「・・・じゃーん! 男さんでーす」

男「・・・・・・ども」トオイメ

先輩「・・・・・・・・あ」

男・美人「あ?」

先輩「あほんだぁらぁあああ!!」トビゲリッ

男「あぶなっ」ヨケッ

男(な、なんだ!?)アセリッ

先輩「何こんなところでくすぶってんねん!! 世界とるんじゃなかったんかいっ!」ビシッ

男「・・・・・・!!?」グサリッ

美人(あー、かやの外だぁ・・・・)ムスッ

先輩「私はあんたの全部を知ってんねん! だから怪我の一つや二つじゃへこたれへん!!」ドンッ!

男「お、俺だって・・・」

先輩「あんたが死ぬほど苦しんだのも悩んだのも全部わかっとるわ! でも、あんたは大丈夫なんや・・・ぐすっ」ポロポロ

男(そうか・・・こいつは本当に俺のことが、俺の魔法闘技が好きだったんだな・・・)

美人「はいはい、ラブコメはここまでにして、そろそろ施設案内しても良いですかー」イライラ

美人(あーイライラする。せっかく先輩呼んだのに・・・)ムゥ 

男「・・・・・・?」

先輩「あ、ああ、せやな・・・?」

先輩(美人・・・だよな?)

美人「じゃあ、あの後、隣の国まで行ってたんですか!?」

先輩「ああ、確かに男さんの活躍が見られへんのは嫌やったけど、うちかて魔法弓道極めたかったんや」

男「魔法弓? スコアは?」

先輩「お、興味あるのん? うちは16やで」アハハ

男(10回で1セットで、真ん中1点で一つ外の輪になるごとに1点・・・ということは)

男「距離は? 200メートル?」

先輩「あはは、うち立ち止まると緊張してダメなんよ。実践弓しかやらへん」

男「実践弓!? 16って国体クラスじゃないのか!?」コウフンッ

先輩「いやいや、そんなことあらへんよ。実際、辞めてもうたしな」

美人「・・・・・・」イライラ

先輩「実践弓の練習中、後輩を怪我させてもうたんや。それ以来怖くて触ることすらできへん」プルプル

美人「・・・・・・先輩」

男「・・・・・」

先輩「・・・あはは、でも、そのおかげでこうして美人とも会えたし、なにより男さんに言いたいこと言ったし、逆によかったわ」ニコニコ

美人「私も! とてもうれしいです!!」

先輩「でも、ストーカーはもうやめてくれよ」ハハハ

美人「しませんってー」ハハハ



男(その練習中の事故に遭った後輩ってのは・・・



 本 当 に 事 故 だ っ た の か ?)ゾクリッ

美人「・・・・・・」ジーッ

男「・・・・っ!?」ゾクリ

美人「・・・男さんの馬鹿」ツンッ

男(な、なんだ・・・?)

先輩「ここがうちの部屋かー。すげー、ひっろ! 広すぎやろ!!」

美人「えへへー、先輩と私は隣の部屋なんですよ!!」ジャーン

先輩「いや、それ聞きたない情報やったわ」

美人「・・・・がーん」

先輩「うそうそ、冗談や! 隣の国は笑いに厳しかったから、ついついツッコミが厳しなるわ」アハハ

男「先輩もこの会社に就職を?」

先輩「いや? うちは魔法弓の指導者目指してたんやけど、こんなんなってもうたから就職先探してたらえらい条件のええ仕事があってん。それがここやったわけや」ニコリッ

男(関係ないけど黒髪ショート可愛いな・・・)ドキッ

先輩「仕事内容は魔力を込めるだけの仕事やろ? うち魔力の量だけは自信があるけん、戦力になると思うで」ニコニコ

男「あ、ああ。それなんだけど―――」

美人「・・・・・」ガスッ

男「・・・!?」

美人(先輩を巻き込まないでくださいねっ!)ニラミ

男(・・・分かった)コクリッ

男「その通りだ。白い球に魔力を込めて出荷するだけの単純作業だ」ニコリッ

先輩「なんや、それで給料もらえるんやったら家族にも紹介したろうかな」アハハ

美人「“選ばれし者”しかダメなんですよ」ニコニコ

男「・・・・・・!?」ゾクリッ

男(今の顔! ・・・まさか美人は・・・)ドクドク

―――休憩所。

先輩「いやー、二人と喋ってたら、だいぶ喋り方が元に戻ってきたわ」アハハ

美人「そりゃあ、私達同郷者ですからね」ニコリッ

男「いや、俺は違うぞ?」

先輩「せやで、男さんは南大陸の戦争孤児やで?」

男「本当によく知ってるな」

先輩「え、高校の時に特集組まれてたやん。“孤児の仲間に光を見せるのが自分の役目です”キリリッって」アハハ

美人「何それ、カッコよすぎー!」アハハ

男「い、いや、それは今でも思っている。だから、子供の未来を守るこの会社に入ったんだ・・・」

美人「あ、そうだ。今日一度も魔力込めてなかった・・・」ポン

男「・・・・・?」

美人「ちょっと行ってきます!」タッタッタ

先輩「あの子、仕事熱心になったんやなぁ」カンドウ…

男(なんだこの不安は・・・)

男「・・・・・先輩、ちょっといいか」コゴエ

先輩「なんなんよ。男のくせに小さい声出して」

男「しっ、いいから聞いてくれ」クチオサエ

先輩「・・・・・」コクコク

男(俺のことを信用してくれるなら、五分後に俺の部屋まで来てくれ。美人には会わずに)シンケン

先輩「・・・・?」

男(いいか、これはかなり重要なことなんだ。だから真剣に聞いてくれ。頼む)

先輩「・・・・・」コクコク

男「さて、そろそろ俺は部屋に戻ろうかな」ガタッ

先輩「・・・・・」ウワメヅカイ

男(・・・頼む、思いすごしであってくれ)

―――男の部屋。

先輩「男さん、入るでー」コンコン

先輩(なんやろなー。まさか初日からいかがわしい真似はせーへんと思うけど・・・)ドキドキ

先輩「・・・男さん?」

先輩(いない・・・トイレかな?)


「・・・・・・・」ジーッ


先輩「誰やっ?」カマエッ


先輩「・・・・・」


「・・・・・・」ジーッ


先輩(男さん? あんたそんな趣味ないやろ? うちビビりやねんから・・・)

男「そこまでだ」ガッ

美人「きゃぁ!!」

先輩「・・・え!?」オドロキッ

男「美人、まさかお前もすでに“変わっている”とはな」マホウコウソク

美人「な、何するんですかっ!」シバリッ

先輩「な、何してんの二人とも! そういう趣味でもあるんか?」オロオロ

美人「助けてください! 先輩!!」ガッ

先輩「美人・・・男さん、冗談なんか? それともあんたそういう性癖なんか?」ニラミ

男「説明は後だ。マニュアルに則って、彼女を拘束する」

美人「や、やめてよぉ・・・こわいよぉ」ポロポロ

先輩「男!! あんたやってええことと、あかんことがあんで!!」マホウユミ!

男「見事な魔法弓と矢だな。だが、震えてるぞ」

先輩「うるさいっ! 後輩が危険な目におうとるのにウチがびびってどないすんねん!」

美人「先輩助けて助けて助けて助けて助けて!!!」

先輩「・・・・・な、なんや」ゾクリッ

男「・・・まぁ、仕方ない。あんたの気が済むって言うのなら」マホウユミ

先輩「お、男、あんた魔法弓できるんか?」

男「魔法闘技する前はずっと魔法弓やってたんだよ。静止弓だけどな」ニコリ

美人「・・・・・・」ジーッ

先輩(なんやその人を“探るような目”は・・・この子こんなんちゃうかったはずや・・・)

男(これは注意書きのどの部分になるんだ? 早く監禁して本社の指示を仰がなければ)アセ

先輩「男さん。あんた、信じてくれって言ってるけど、ウチのことは心から信じられるか?」

男「・・・・・ああ、少なくとも今俺は先輩以外に信じられるものがない」シンケンッ

美人「・・・・・」ジーッ

先輩(怖い・・・めっちゃ怖い・・・逃げたい・・・けど、どこに逃げんねん・・・)ガクガク

先輩「・・・ウチ、信じたい。だから、まず信じてこの矢を受けてくれへんか?」

男「・・・・・・・・分かった」スッ

美人「・・・・・・・」ジーッ

先輩「・・・おおきに」パンッ

男「―――――ぐっ!!?」ズパッ

美人「男!? 男男男男男男男男!!」ガクガクガクガク

先輩「なんや!!」アトズサリ

男「・・・・末期症状だ」ムクリ

先輩「末期症状!? ウイルスかなんかか?」アセリッ

男「説明は後だ。先に作業場に監禁する」ガッ

美人「・・・・・・・」ジーッ

先輩「・・・ウチ、よう近づかんわ」

男「・・・・・・それが正常だよ」ニコリ


―――――作業部屋(美人)


男「やっぱり・・・割れてる・・・」

先輩「これ・・・が球か?」

男「ああ、おそらく、一日の制限回数を越してしまうと、球はこうなり、作業者はこうなる」

美人「・・・・・」ジーッ

先輩「・・・・なんなんこれ」ゾクリッ

男「実は俺も彼女も、この仕事の本質が全く見えていない」キッパリ

先輩「どういうこと?」

男「あくまで俺の想像だが、これは・・・





 人の塊≪カタマリ≫に、魂≪タマシイ≫を吹き込む作業だ」

先輩「塊? この球が? 人の?」アセアセ

男「ああ、感触と魔力に対する反応、本社からの説明、何よりこの球が人の形を成して動いているのを俺は見た」

先輩「・・・・・・あの、泣いてええかな」グッ

男「ああ、俺だって恐怖でとっくに泣いたさ」

先輩「・・・いや、でもここを離れるの怖すぎるからやめとくわ」グスッ

男「美人にかけた魔法の拘束はそろそろ解ける頃だ。外からカギをかけよう」

先輩「・・・・・・・」

美人「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・またね」ニコリ

先輩「・・・・・・おとこぉ」ギュッ

男「分かってる。見ないほうがいい」

男(この後、俺は初めて作業場の扉を閉め、外からカギをかけた。拘束から解かれた美人は、取り乱すでもなく、慌てるでもなく、その場に立ち止まって、




 こ ち ら を 観 察 し つ づ け て い た)

―――休憩所。

先輩「じゃあ、その窓際族っておっさんが、白い球やったっていうの?」

男「ああ、だが、記録上では俺に出会う前から死んでいたのだが、俺はおそらく“本人と仕事していた”」

先輩「・・・・こ、こわいこと言わんとってーな」

男「これはバイオバーゲンみたいなウィルスのせいでも、ホラー映画のような呪いの伝染でもない。・・・もっとおぞましい何かだ」

先輩「・・・な、なぁ、なんで逃げへんの?」

男「ああ、逃げたら“再納品”されるからな」

先輩「の、納品?」

男「そうだ。俺も、先輩も、美人も、不良も、エリートも、

・・・・納品された人間だ」

先輩「わ、私はこの会社と関係ないのに?」

男「・・・それに関しては俺のミスだ。すまない」フカブカ

先輩「え?」

先輩「ほんなら・・・、美人が納品リストからウチを選んだから・・・」

男「ああ、時系列の謎は残るものの、それのせいで事故が起き、“納品”された」

先輩「あ、あああ、あああああぁあああああ!!!!!」ガンガンッ

男「落ち着けっ!!」ギュッ

先輩「あぁぁぁあぁあぁぁぁぁああぁぁあぁ!!! ・・・!? コヒュ・・・ヒュ・・・」

男「過呼吸!?」クッ

男(初めてだったらすまんっ)クチヅケッ

先輩「・・・!?」バタバタ

男(口 内 魔 法 ! !)パァアア

先輩「・・・・・・・かはっ・・・はぁはぁ・・・」ギュッ

男「・・・・・・・大丈夫・・・だ」ギュッ



美人「・・・・・・・・」ジーッ



男「・・・・・・・!!!!!?」ゾクゾクゾクッ

男「・・・・・・破壊魔法!!」パァアア!!

壁「・・・・・」ボンッ

先輩「・・・・ど、どしたん!!?」アセアセ

男「・・・・美人だ」

先輩「え?」ゾクリッ

男「頼む、しばらくここにいてくれ!!」ダッ

先輩「・・・・・・・ま、待って!!?」


美人「・・・・・・・」ジーッ


男(似ている・・・窓際族が死んだときと・・・!)アセッ

――――作業部屋(美人)


美人「・・・・・・・」ジーッ


男(ずっと・・・そのままの姿勢だったのか)ゾクゾクッ

美人「・・・・・・・・・・!?」ハッ

男「・・・!?」

美人「お、男さん!? 私・・・ええ、なんで閉じ込められてんの!?」

男「意識が!?」

男(いや待て・・・白い球・・・本人・・・意思・・・白い球・・・!)

男「しまった!!」

―――休憩所。

美人「・・・・・・・」ジーッ

先輩「・・・・いや、いやや・・・」アトズサリ

男「先輩!!」バンッ

美人「・・・・・・・・・」バタリ

先輩「・・・・・・・」フラリ

男「先輩!!」ガシッ

先輩「・・・・もう、離れんとってな」ギュッ

男「・・・ああ、すまん」

男(同じだ・・・)

美人「」

男(これは・・・白い球だ)

――――作業部屋(美人)。

男「美人!!」ガチャ

美人「・・・・・・・・」スゥ

先輩「・・・・寝とんのか?」

男「いや、これは一種の気絶状態だ」

先輩「どういうことや?」

男「少しだけ、見えてきた・・・」

男(だが、それならば、窓際族は・・・)

窓際族「・・・・・・」ジーッ

男「しまった!!!」



 ガ チ ャ リ 。



第二部 完

寝ます。途中の④やコメが挟まれる度に背筋が凍った。夏に恐怖をありがとう。
おやすみ。

続け・・・られるか?

―――美人の作業部屋。

男「・・・・・・」

先輩「・・・・・ぐすっ」ウツムキ

美人「・・・・・」イライラ

窓際族「・・・・・・・・・・・・・」ジーッ

男(くそっ、一体いるんだから“複数体”いることくらい予測しておくべきだった!)

美人「・・・・・・あー、ダメだ。ダメダメ。我慢できない」スクッ

男・先輩「「・・・・・?」」

美人「・・・・・」テクテクテク

窓際族「・・・・・・」ジーッ

美人「ここから出せよ」ガンッ

美人「は や く」ガンガンッ


美人「こ こ か ら」ガンッガンッガンッ


美人「だ し や が れ」ガンッガンッガツンッ


美人「・・・・・・」ポタポタポタ…

先輩「美人! 頭から血が出てるじゃない!」オオアワテ

男(やめろっ・・・今刺激したら余計危険だ)グッ

先輩「そんなのっ! 関係ないっ!!」ダッ

美人「・・・・・・・・・・あぁあ?」グルッ

先輩「・・・・・・えっ?」

美人「う~るぅ~せぇ~なぁ!!!」コブシッ

先輩「くっ・・・」ヨケッ

美人「・・・あれ、肩外れた・・・」グイッグィッ

男(欠如しているのは、忍耐力に力の制御・・・)

美人「・・・・・まぁ、いいや。 出せよ!! おらぁああ!!」グァングァン!!!

男「このままじゃ頭蓋骨が・・・」ダッ

男(手荒だが、実力行使だっ!!)グッ

美人「・・・・・男さん・・・」

男「――――――っ!?」ピタッ

美人「・・・・・・・・・・・」ニタァ

先輩「セイッ!」ガッ

美人「ぐっ・・・邪魔すんなよ!」ブゥン

先輩「はっ」ウケナガシッ

男「今だ!! 衝撃まほ―――――!?」ゾクリ

窓際族「・・・・・・・・・・」ニタァ

男(まさかっ!! あいつの目的は・・・)

男「先輩・・・絶対に魔法は使うなよ」

先輩「なんでよ・・・」

男「あいつらみたいになりたいか?」

先輩「・・・・・・・お断りや」

窓際族「・・・・・・」ジーッ

男(まさか・・・待ってるのか?


        “殺 し 合 い” を …)


窓際族「・・・・・・・」ニタァ…

あかん・・・眠すぎて変な方向いく。
夜更新にする。

よし、呪い成分溜まった。がんばろう・・・がんばろう・・・


 くちゃくちゃくちゃ――――

男(なんでだよ・・・)

 がすっがすっがすっ――――

男(なんで・・・なんだよ・・・)

 きぃぃぃぃぃぃぃぃん――――

男「・・・頼むよ」

 グドッ!!

男「どうして・・・


 どうして白い球じゃないんだよぉおおおおお!!!!」

先輩「」

美人「」

窓際族「・・・・・・・・」ニタァ…



第三部『孤独な死の螺旋階段』

男(分からない・・・)

男(なんなんだよこれ・・・)

美人「・・・・・・ぅぁ」ボーッ

男(感触は白い球。だが、魔力に反応することもない)パァァァ!!

美人「・・・・・・・ぁ・」ボーッ

男(だが、血も流れない)ガスッ

美人「・・・・ぎっ・・・・・」ボーッ

男「どうすればいいんだよ・・・」クッ

窓際族「・・・・・・・」ジーッ

男(あの男は“10時間以上”も微動だにせずこちらを観察している)

先輩「・・・・・・・」

男(しかし、しかし・・・だ。美人が異様な事態になるのは分かるが、なぜ先輩まで“症状”が出ているんだ・・・?)

男「・・・・・・」グッ

男(先輩・・・ちょっと痛いぞ)ハレツマホウ!!

先輩「・・・・・・」ボンッ…ポタポタ

男(うそ・・・だろ? 腹が抉れてるんだぞ・・・)

男「何をした・・・」

窓際族「・・・・・・」ジーッ

男「何をしたんだ!! 窓際族!!!」

窓際族「・・・・・・」ニタァ…

男「くっそぉおおおおお!!!」ゼンリョク!!

男(破滅魔法!!!)リョウテニヒカリ!!

扉「・・・・・」ビドウダニセンヨ

窓際族「・・・・・・」ニタァ…

男「・・・ちきしょう」

美人「・・・・・・・・・・ぁぁぅぁ」

男「黙れよ!!」キュィィイイン!!

男「撃滅魔法!!」ガッ

美人「・・・・・・ぎぎっ・・・」バタリ

男(・・・・・・・え?)

美人(だったもの)「ぎぎ・・・ぎぎぎ」ハンシン

男(なんで生きているんだ? 右半身が吹き飛んだんだぞ?)

美人(だったもの)「・・・・ぐぐぐ・・・ぎ?」グルンッ

男「・・・なんだよ、なんなんだよ・・・」

男(上半身が“ひっくり返る”ように中心に集まっていく・・・)

美人(だと思っていたもの)「・・・・・・・」

男(色が・・・消え失せていく)マサカ・・・

白い球「・・・・・・」

男「う、うわぁああぁぁぁああ!!!」

先輩「・・・・・!? い、いたぃいいい!!」バタバタ

男「先輩! 先輩!! 最大回復魔法!!!」キュィィイイイイイン!!!

先輩「・・・・・痛く・・・ない」フゥ

男(なんなんだよ・・・ちきしょう)

扉「・・・・」コンコン

男「・・・・?」

窓際族「取引をしませんか男さん?」ニヤリ

男「・・・・・・っ」ゾクリッ

男(最初に出会った時の・・・窓際族さん)

窓際族「あなたが今白い球だと思っているもの。それは美人さんで間違いありませんよ」ニコニコ

男「ちょ、ちょっと待て・・・先に質問に・・・」

窓際族「だけど、隣の女性はどうでしょうね?」

男「俺の質問・・・・・・なんだと!?」バッ

先輩「・・・どうしたのよ」

男(な、何が正しいんだ!? 分からない・・・)アセリ

窓際族「今、“それの本体”はどこで、何をしているんでしょうねぇ?」ニヤニヤ

男「お、お前・・・本当に先輩か・・・?」

先輩「お、男さん? 何言ってるんですか?」

男(・・・!? 喋り方が・・・)ニラミ

先輩「こ、怖い・・・なんで・・・」イヤイヤ

男「今助けるからな・・・」ズバッ

先輩「・・・こ、こひゅ・・・こひゅぅううう」チノウミ

窓際族「私の言葉・・・

 信 じ た ん で す か ?」ニマァ…

男「な、中身・・・」クチャクチャクチャ…

男(ない、ない・・・ない)

男「もっと上か?」ガスッガスッガスッ

男(温かい・・・血だ・・・これは血だ・・・)

男「あ、ああ、あああああ」キィィイイイイィン!!

男「しょ・・・しょうめつまほう」グドッ

窓際族「・・・・・・・・終わりましたね」ガチャ

男「お、お、おまっ・・・お前ぇええええ!!!!!」ゼンカイッ

男「最大放出魔法!!!!」バッ

窓際族「そろそろ気づかないですかね?」

男「何がだ・・・」キィィイイィイイィイイン!!

窓際族「全部、幻覚ですよ?」

男「・・・・・え」キュゥゥゥゥゥ……

窓際族「良かった・・・本社に連絡とる前に正気に戻ってくれて・・・」ホッ

―――休憩所。

男「じゃあ、転勤してからまだ二日しか・・・経って?」

窓際族「ええ、この仕事が“向いていた”せいで、強い幻覚作用にやられたようです」

男(じゃあ、さっきの生温かい感触も・・・?)

「・・・・・・・」ジーッ

男「・・・・!?」バッ

窓際族「ど、どうしました?」アセリッ

男「い、いえ・・・」タラリ

窓際族「あ、そういえば、今日はあれの日だ」ニヤリッ

男「越えられない壁・・・ですか?」

窓際族「・・・? いえ、今日は“楽しい”日ですよ」ニタァ

男「・・・・っ」ゾクリ

――――作業場(黒い部屋)

魔族ちゃん「いやぁぁぁああぁぁぁ!!!」

男(なんなんだこの部屋・・・)

魔王ちゃん「やめてぇえええぇぇえぇえ!!!」

窓際族「今日は大切な“納品日”ですからね」ニコニコ

男(魔族の女性達が裸で天井から伸びた管から・・・)ゾクリ

窓際族「せーのっ」スイッチオン!!

魔族達「「「ぎゃぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」

男「・・・狂ってる・・・」

窓際族「これがあなたの世界でも?」

男「・・・・え」

――――作業場(美人の部屋)。

美人「・・・・・・」ガクガクブルブル

先輩「・・・・・いや、いや」ゴウキュウ

男(気が狂いそうだ・・・いや、狂ってるのか?)

窓際族「しつこいですねぇ・・・さすがというべきか・・・」

男(そうだ・・・同僚が昔やってた“あれ”やろう・・・)

男「頭に手をかざし・・・」

窓際族「・・・? 何を・・・」

男「破壊魔法と治癒魔法を同時に展開」キュゥウゥゥゥウゥウウゥウウン!!!

男「・・・ぐっ、ぐぁああ!!」

男(脳の破壊と再生。それによって引き起こされる興奮物質の大量噴出・・・)

――――倉庫。

男「・・・・ふしゅ・・・・ぅ」

男(全身の血液が沸騰しているみたいだ・・・)

窓際族「・・・・・ちっ」

男「ここは・・・白い球の倉庫?」

窓際族「まだはやい!」シュゥゥウン!!

男「遅い!!!」ガッ

窓際族「くっ・・・」バッ

男「そうか・・・そういうことだったのか窓際族・・・」

不良「・・・・・」

エリート「・・・・・」

美人「・・・・・・」

男「お前が全ての原因だったんだな」ニラミ

窓際族「・・・・は、ははっ、ははははははっ!!!!」

男(とりあえず全員の安否を確認しなきゃ)ズキズキズキ

男「ちっ、ドーピングは効果が短い割に副作用が強いな・・・」アトズサリ

窓際族「起こそうとしても無駄ですよ? 白い球の“呪い”は完璧だからね」ニマァ

男「呪い・・・? なんだそれは」

窓際族「く、くくくっ、お前はそれを理解する前に呪いによって殺される・・・」バッ

窓際族「白い球の正体はな、“未来創造プロジェクトの闇”だ」ニマァ

男「未来創造プロジェクトの・・・闇」

窓際族「あれによって、何人が死んだと思っている」

男「死? 何故人が死ぬんだ・・・」

窓際族「それに聞けよ」

男「・・・え?」

白い球「・・・・・くぃ」

男(なんだ・・・?)

白い球「憎い・・・なぜ、熱い・・・痛い・・・殺す・・・憎い」

男「・・・・・」ゾクゾクッ

白い球2「殺したい・・・でも殺された・・・内臓捨てられた・・・なんで、苦しい・・・」

白い球「「「「「「死ぬまで・・・殺す」」」」」」

男「・・・・これが全部・・・死体?」

窓際族「おいおい、そんな崇高な呼び方するなよ。これらは・・・ゴミだ」ガスッ

白い球「ぅぉぉぉぉぉ・・・・」

男「・・・会社は、“何”をしているんだ・・・」

窓際族「・・・俺がそれを知る必要があると思うか?」ニタァ

男「・・・・ぐっっぐぐぐぐ」ズキズキズキ

窓際族「・・・なんだ。お前を殺すのが楽しみだったのに・・・」

男(流れ込んでくる・・・これが・・・呪い?)

殺せ。なぜ、わからない。死ね。誰が?何のために?それを、必要、憎むべき、実験体、故意、恨み、


男「違う・・・これは・・・叫びだ」ズキズキ

窓際族「・・・もういい、お前の相手は疲れる・・・」ギュゥウウゥゥン………

窓際族「白魔法“終”」ギュゥォン!!

男(加速魔法!!)ギュゥウウウン!!

――――施設外。

男「・・・はぁはぁはぁ・・・」イキギレッ

男(誰も・・・助けられなかった・・・)

男「どうする・・・戻って解決するの?」

男(頭痛が止まることはなさそうだ)ズキズキズキ

男「助けないと・・・あいつらまで球に・・・」

男(幻覚の中とはいえ、俺は美人を“殺した”・・・。だから見捨てる訳にはいかない・・・)


――――別の施設。作業部屋(黒い部屋)

魔族ちゃん「ぎぃいぃい!!」ジュッ

魔王ちゃん「や、やめてください!! きゃぁあ!!」ジュゥウ

会社員「・・・・・これで・・・我が社は・・・」ニヤリ

白い球「・・・・・」

会社員「・・・? なんだ」ソローッ

≪ニュース速報≫

a「某国で数十年と言う長期にわたって続いていたと思われる人体実験が明るみになりました」

b「人体実験の内容はあまりにも凄惨で、関わった者は何人も自殺したと報告を受けております。

a「人体実験と言えば、こんな噂を知っています?」

b「噂?」

a「とあるdという大手の会社が―――――」パァァァン!!

ad「ぎゃぁぁあっぁあぁぁぁぁぁ!!!」ニゲッ

ディレクター「これは大スクープだ! いくぞっ」

アシスタント「・・・・・・・」ガッ

ディレクター「・・・何を・・・」クビチョンパ

――――――大変ご迷惑をおかけしております。

 復旧まで後もうしばらくお待ちください。

ここまで。また明日。

なんだかわけがわからん

最初の流れの世界(先輩来る、美人発狂)

正気に戻った(風)の魔族ちゃん陵辱世界

脳のオーバーヒート的なので気付いた真の世界(白球がしゃべーる)

でおk?

>>202 ジーッ…

こんな時間だけど、逝くっけけけkkっけkkっけkkkっけkk

――――女子更衣室。

女1「ねぇねぇ、“呪い”って知ってる?」

女2「何それ? 魔法の種類?」

女3「私知ってる!! 魔法論では説明できない力のことだよね」

女4「・・・・・・・ぉぉ」ジーッ

女2(また女4さんこっち見てる・・・。なんでみんな何も言わないのかな)ゾクッ

女1「そうそう、呪いは魔法論でも禁忌中の禁忌として、歴史から抹消してるの」

女3「私、一個知ってるよ。去年の夏に起きた某テレビ局の事故ってあるでしょ? あれ呪いらいしよ」キャッキャ

女4「・・・・・ぉお・・・ぉぉ」ペタ

女2「・・・・ひっ!」ビクッ

女3「いきなりどうしたのよ女2・・・・」

女2「な、なんでもない・・・」

女4「・・・・・・・・」ジィーーーッ

女2(こわいこわいこわいこわい・・・)ガタガタ

女1「実はその事故の呪いって、あの大手魔法会社dが原因らしいよ」

女3「d社が? うっそだぁ! あそこ何十年も前からある大企業じゃん」

女2「ね、ねぇ、もう行かない?」



女1「」グルンッ

女3「」グルンッ



女4「な ん で ?」ニタァ



女2「!!!?!!?!?」ビクッ

女2「な、なんでもない!!」

女1「・・・・・・でさぁ、そのd社って昔から黒いうわさが絶えないんだけど、これあるじゃん」シロイタマッ

女3「うん、スマホよりこっちのほうが便利だよね」シロイタマッ

女2「・・・うん、私もそう思う」シロイタマッ

女1「これってさぁ、“何でできてると思う?”」ニタァ

女2「・・・・・っ!?」ゾクッ

女3「ひ、人の肉とか言わないでよっ!!」ビクビク

女1「そんなのは当たり前じゃん」シレッ

女2(えっ、今のはどっちの意味の・・・)ビクビク

女1「これはね・・・とりゃ」ビチャッ

女3「あー、もったいなぁい! これけっこう高くね?」

女1「聞こえなかった?」

女2「何が?」

女1「ああ、じゃあこうしてみようか」グリッ

白い球「・・・・ぁぅぁぁぁ」ウメキゴエ

女3「な、なによこれ・・・」ビクビク

女1「これはさ、“未来の可能性”でできているんだって」

女4「・・・・・・」ジーッ

女2(地面見てるよぉ・・・)

女1「そして、これに未来の可能性をつめている人間達がいるんだけど・・・」

女3「なんかそれだけ聞くと、かっこいい話だな」

女1「とんでもない。その会社では、人材・素材をとある施設に入れることを“納品”っていうらしいんだ」

女2「・・・な、何の話か分からないよ・・・」ビクビク

女1「あんたそんなこと言ってたら“納品”されるよ?」シンケン

女2「や、やめてよ・・・」

女3「納品・・・されるのか?」

女1「分からない。・・・でも、納品が決定すれば、それが誰でも“その場で人生を終わらされて”施設へ行くことになるみたい」

女1「そして、“納品”された人間は、納品された“素材”・・・白い球に未来を込めるの」

女2「未来を・・・こめる?」

女1「そう、未来・・・ありとあらゆる“可能性”。未来を詰め切った人間はどうなると思う?」

女3「未来がなくなれば・・・死ぬだろうな」

女1「・・・いいえ、答えは・・・可能性を羨ましそうに“観察”しはじめるの。じーーーっとね」

女2「っ!!?」ビクッ

女4「・・・・・・・・・」ニタァ

女1「そこまでは普通の呪いの話。・・・ただ、ここからが禁忌とされた部分なんだけど聞きたい?」

女3「き、気になるじゃねぇか」

女4「・・・・・・・」ジーッ

女2「わ、私は・・・・」

女1「呪いはね・・・一体“どれにかかっている”のだと思う?」

女3「はぁ? そりゃ、未来を失った人間にだろ」

女2「・・・・・ち、違うと思う・・・」ビクビク

女1「さすが、“呪われてるだけあって”分かっているわね」

女2「え?」

女1「白い球の呪いはね・・・“その場にいる全ての人がかかるの”」

女3「ああ、どーりでさっきから、からだがきしきしと・・・」グルンッ

女2(あ、ああ、・・・女3ちゃんが・・・“折りたたまれて・・・”)

白い球「・・・・ぉおぉおおぉおぉ」

女4「・・・・・・ぉおぉおおぉぉ」ペタッペタッ

女2「ち、ちかよらないでよぉ・・・」イヤイヤ

女1「それでね、同時に呪われた人の中で一人だけ、助かる方法があるの・・・」

女2「・・・!? ど、どうすればいいの!?」アセリッ

女1「それはね・・・


  男 さ ん が 作 っ て く れ て る よ ? 」グシャッ

女2「い、いやぁあぁああぁ・・・」ジョワァ…

女2(・・・・男さんってだれ? どうすれば助かるの? 女1さんはなんで顔が溶けたの? 女4さんはなんでまだこっち見てるの? 分からない・・・わからないこわいこわいこわい・・・恨み・・・殺す・・・いかり・・・・・私のみらい・・・・・・みら・・・どこ・・・)ジーッ

女4「・・・・・・・」ブゥン




 ぐ し ゃ り

――――施設外入口前。

女「・・・・・・ここか」チャキッ

刑事「・・・・・・いいのか。本当に」

女「ええ、私は・・・どうしても行かなければならないの」キッ

刑事「強いな・・・。後輩と憧れの男が行方不明になった場所に自ら志願するなんてな・・・」

女「私は、ただ仕事するだけよ・・・」

刑事「はいはい。・・・だが、命の危険を感じたら逃げるぞ」

女「・・・そんなの、とっくに感じてるわよ」ドキドキ

刑事「ちげぇねぇ」ドックンドックン

女「さぁ・・・入りましょうか」フミ

――――施設内休憩所パソコン前。

『納品リスト』


先輩 未納入 納品しますか? はい/いいえ

男「」カチッ

【はい】

男「・・・から」カチッカチッ

※先輩 は、31度目の納品です。それでもよろしいですか?

男「たすけるから」カチッカチカチ

【はい】

『納品リスト』

美人 納品履歴 2回。内訳 窓際族・窓際族

男≪死亡≫ 納品履歴 1回。内訳 窓際族

エリート 納品履歴 1回。内訳 窓際族

不良 納品履歴 1回。内訳 本社係長

窓際族≪死亡≫ 納品履歴 1回。内訳 男

男「・・・・・・今度こそ」カチッ

男「・・・・・・・・・・」ジーッ

―――施設内入口。

女「・・・施設はまだ使われている?」

刑事「おい、得意の魔法弓の準備しておけ」カチャ

女「・・・・・・やめたわ」

刑事「ああ、そうだったな」ポイッ

女「魔法銃・・・」カチャ

女(・・・男・・・さん)

男『見事な魔法弓と矢だ』

女「ごめん・・・ね」

女(次は、次こそは助けるから・・・)

企画名:

『未来創造プロジェクト』

サブタイトル:

【白い球に込めた未来の光】

最大の売り

『人の未来を込めているため、効果が抜群!』

それ以外にも、

『低コスト』『大量納入』『繰り返し使える』

問題点

『未来を奪われた者は





 “ 死 を 奪 わ れ る ”

一応終わりです。

ジャンル的に解説はしません。それぞれの答えがそれぞれの正解です。

次回タイトル安価したいところですが、叩かれるのでやめておきます。

では、短い間でしたが、お付き合いありがとうございました。では。

作者いるなら
97の
窓際族「測定器の壁が小さすぎて外まであふれちゃったんですよ」

の意味教えて

>>223います。次回作書いてました。

こういうの答えるのは慣れ合いにならんのかな?

測定器の壁に魔力の波紋を残して威力を記録する装置なんだけど、窓際族の力がでかすぎて波紋が外に記録されちゃったって訳です。

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