>>1は川内提督
向こうはコメディ、こっちはシリアルでやっていきます。
願掛け大型で三隈でました。くまりんこ
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この鎮守府にはいくつかの名物がある。
鬼の二水戦旗艦による地獄が垣間見れる特訓だったり、四水戦旗艦のコンサートだったり。
鎮守府に所属している艦の殆どが軽巡洋艦と駆逐艦であるからか、噂話とトラブルには事欠かない。
だからこそか、数少ない戦艦や空母は畏怖の念がもたれ、まるで雲の上の人のような扱いを受けることもしばしばであった。
それだけの艦娘がいれば勿論落ちこぼれてしまう者もいる。例えば。
「嫌だあああ! 行きたくない行きたくない行きたくないの!」
軽巡寮川内型室で布団に包まって足をバタつかせているのが川内。
その布団を無理やりにでも引きはがそうとしているのがその妹の神通と那珂。
「おらぁ! 諦めろ川内ちゃん! 今日もちゃんと訓練受けてもらうんだからね! キャハ!」
「嫌だあああ! 那珂はアイドルなんだからお姉ちゃんにもっと優しくしろよぉ!」
「ならもっと姉らしくしてください姉さん。……那珂ちゃん、ちょっとどいて?」
「おらぁあ! っと、神通ちゃんいいよー!」
「姉さん、行きますよ。っふ!」
「嫌だああ! ってうわああああああ!」
那珂が神通の後ろに退避すると、神通は川内の包まっていた布団ではなく、その下に敷いてあった
敷き布団を掴んで思いっきり引き抜いた。
「うわぁ……神通ちゃんやるぅ」
「ほら、姉さん。着替えて朝ごはん食べに行きますよ」
布団から転がり出されてそのまま床に落ちた川内はそれでも維持で掛け布団を握りしめて包まっていた。
「私はこの布団とケッコンカッコカリします。二人の絆は例え姉妹であっても引き剥がすことはできません」
「あぁ……川内ちゃんここまで来るともう姉というより女として威厳とかそういうの捨ててるよ……」
「姉さん、布団から離れる気はありませんか?」
「無い」
「那珂ちゃんのお願いでも?」
「無い」
「うわぁこの姉即答したよ」
「わかりました。ならそのまま運びます。那珂ちゃん、そっち持ってください」
「はーい!」
「え? ちょ神通!? 那珂!? やめて! ちょっとおおおお!」
川内型軽巡洋艦一番艦 川内。噂の二水戦と四水戦の旗艦を妹に持つ彼女はこの鎮守府の落ちこぼれだった。
食堂でパジャマ簀巻きを披露した川内はようやく観念したのか、朝食を済ませると制服に着替えて訓練場の桟橋に来ていた。
「さて、それじゃあ簀巻きちゃんがだだ捏ねる前に始めちゃおー!」
「那珂ぁ、簀巻きちゃんはやめてよ!」
「川内ちゃんが悪あがきするのがいけないんだよー」
「う、うるさいなぁ! 嫌なものは嫌なの!」
「はいはい、姉さんも那珂ちゃんもそこまでね。それじゃあ今日も艦隊運動から始めますよ」
「うぇーい……」
神通は普段こそ温厚で恐怖の欠片もない物腰をしているが、その足を水面につけた瞬間から別人と化す。
鬼の二水戦の名は伊達ではなく、第一線を張っている戦艦ですら彼女の訓練を受けたがる者はいない。
「神通! ちょっと待って! 足釣った! 足!」
「そうですか、なら姉さんの死因は足が釣ったことになりますね」
「最低の死因だと那珂ちゃんは思います!」
「もういやだー! 帰るー! 神通なんか嫌いだー!」
「姉さん、流石にそれは傷つきました。なので私の傷が癒えるまで訓練は続きます」
「え!? ごめんごめん! 嘘! 嘘だからやめて許して!」
「嘘でそんな事を簡単に言えてしまう姉さんの根性は腐ってると思います。なのでここで叩き直して置きましょう」
「どっちにしろやるんじゃんか! 嘘つき!」
「すみません姉さん。なら嘘をついてしまったお詫びに之字運動を追加します」
「……グスッ」
「川内ちゃんも懲りないねぇ」
駆逐艦達が横で訓練を行う中、川内型だけは個別で訓練を行うことが許されている。
よく言えば個別強化訓練。悪く言えばさらし者。
そんな光景を陸で見ている影があった。
この鎮守府の提督とその秘書艦叢雲。
「相っ変わらずグイグイやらせるわねー神通ってば」
「お前はあの訓練耐えられるか?」
「無理ね。眠気に負けて居眠りしちゃうもの。気付いたら終わってそうね」
「言うじゃないか秘書官様は」
「なんならアンタも参加してくれば? 司令官は現場を理解することも重要よ」
「叢雲は私に溺れて来いと言っているのか?」
「あら、なら泳げばいいじゃない」
提督と叢雲は時折この訓練を見学しに来ていた。
「お前から見て川内はどうだ」
「駆逐艦にしては大きいわね。ブイにしては騒ぎ過ぎだわ」
「辛辣だなぁ……まだ使えんか」
「あの子も私と同じく初期からここにいるのにね。あの性格どうにかならないのかしら」
「夜戦をやらせれば単独先行。昼戦では動く的……か」
「筋は悪くないのにね、勿体ない話だわ」
「艦娘の中でも宜しくない噂が流れているそうだな」
「どっちの噂のこと? 解体されないのは提督の愛人説? それとも妹の功績に縋る姉説?」
「前者は聞いたことがある。後者は初耳だな。発信源を探ってこい」
「嫌よ。また他の鎮守府に左遷させるなんて、面倒臭い」
「もう約束はいいじゃないか。皆にあいつの事を教えてやればいい」
「それはダメよ。それをしたら古参の子たちが黙っている事も、なにより川内自身にも冷や水をかける事になるわ」
「自分の罪は自分で背負わなくては意味がない、か。クソ食らえ。代わりに背負ってやればいいものを」
「それはアンタの自己満足よ。ほら、そろそろあの子遠征の時間」
「っ……そうだな。おーい! 神通ぅ! そろそろ川内を貸してくれぇ!」
訓練に夢中になっていた三人に提督の声が届く。
神通は少しだけ残念な表情。那珂は一息つけると安堵。川内だけは苦虫を潰した顔をした。
「姉さん。残念ですが、続きは明日にしましょう」
「……へい」
三人が桟橋に戻ってくると、そこに叢雲と提督が待っていた。
「おう簀巻き娘。調子はどうだ?」
「最低よ……簀巻きじゃないし」
「姉さん! 提督にそんな口の利き方! 申し訳ありません提督」
「構わない。こいつとは長いからな。そら、駆逐艦達が待ってるぞ。川内。直ちに装備を遠征用に変更し、
出撃五分前にドックに集合。急げ」
「……了解」
川内は桟橋から上がると、ふて腐れるように提督に返礼をした。そしてそのままドックに走っていく。
「んもう……。提督、姉さんはまだ時間が掛かりそうです。いつ崩れてしまうか見ている方が怖いです」
「そうか。中はまだなら外はどうだ?」
「能力は十分です。私の訓練を受けてもわざと手を抜けるだけの実力もありますし、無駄口を叩くだけの余裕もあります」
「ほう、それは凄いな。那珂はどうだ」
「んーあれ以上できない演技されると那珂ちゃんが倒れちゃう。どんどん訓練が厳しくなって筋肉痛で踊れなくなっちゃうよ」
「あら、アイドルは筋肉痛になるのね? 知らなかったわ」
「ッハ! 違うよ叢雲ちゃん! 那珂ちゃんはアイドルだから筋肉痛になんてならないよ! 川内ちゃんの話だよ!」
「あらそう、私も別に那珂の話をしていた訳ではなかったのだけれど。そう」
「うわーん! 叢雲ちゃんがいじわるだー!」
叢雲と那珂が話していると、神通がそっと提督の横に彼にだけ聞こえるように声を出す。
「提督、まだ姉さんの忘れ物は返せないままですか?」
「あぁ、今返してもあいつは捨ててしまうかもしれないからな。預かっているよ」
「そうですか、そうですね。そのほうがいいと思います」
「あー! 神通ちゃんが提督と内緒話しているよ叢雲ちゃん!」
「あら、これは浮気かしら。きっと私は捨てられちゃうのね」
「な、何を言ってるんです! 叢雲さんも訓練受けたいのですか、そうですか」
「いえ、筋肉痛になったら大変だから遠慮しておくわ」
「叢雲ちゃんまだいうのー!」
提督が出撃ドックに目を向けると、四人の艦娘が丁度出撃をした所だった。
三人の駆逐艦はこちらに気付いて手を振っているが、先に沖へ進んで行く軽巡だけは振り返ることはなかった。
(シリアルに突っ込むべきだろうか…?)
今日はここまで
また明日の夜投下します。
(>>5 こいつ直接脳内に)
戦闘から十分しない間に川内の無線に通信が入る。
「こちら第三艦隊川内」
『こちら第一艦隊旗艦阿武隈です。叢雲ちゃんから応援任されたよ』
「助かるよ。お願いね」
『了解、合流するよ。そのまま進んで行って』
川内達を取り囲むように阿武隈と第六駆逐隊の第一艦隊が陣形を取る。輪形陣の形だ。
阿武隈が川内の隣に付いた状態で、帰投を開始する。
「川内ちゃんお疲れ様。こんな近海にも出たんだね」
「阿武隈も任務の帰りにお疲れ。驚いたよ」
「それで? そんなことになるまで川内ちゃんは何してたの?」
表情は笑顔のままだが、声のトーンは少しだけ下がる。
「うへ、悪いけど説教は帰ってからじゃダメ……?」
「はぁ……大方検討はつくけどね。また駆逐艦の子に突っかかれて相手したのね」
「……阿武隈、エスパー?」
「でも相手にした事も、それで相手に奇襲された事も、軽巡じゃありえないと思うよ」
「うん、ごめん」
「川内ちゃん。まだ、それ続けるの?」
「阿武隈、話は帰ってからね」
川内の表情が曇る。
「……後でちゃんと話してよ」
「あれから無事逃げ切れたらね」
「あれ?」
川内の言葉に阿武隈が前を見ると、鎮守府がもうすぐそこで、出撃ドックで仁王立ちしている神通の姿が見えた。
「うわぁ……あれはかなりキてるよ……」
「今夜は寝かせてもらえないかもなぁ」
「ご愁傷様」
「他人事だと思って……はは」
この後負傷した皐月と、念の為菊月と敷波の三人は入渠ドックに運ばれた。
川内は返り血を浴びた姿のまま出撃ドックに正座させられ、皐月達がドックから出てくるまで神通の説教を受けていた。
本日の投下は以上になります。
【お詫び】
今回の投下内容で駆逐艦敷波が不遇な扱いになっております。
敷波提督には心よりお詫び申し上げます。
つきましては世に文月のあらんことを
EOが不調
投下します
夕方。
訓練場の桟橋に腰かけていた川内の元に皐月が歩いてきた。
「よくここがわかったね」
「那珂ちゃんさんに聞いたらここだろうって」
「那珂がその呼ばれ方聞いたら怒るよ?」
「さっきもさんはいらないって言われました」
「だろうね。今は任務じゃないんだから普通に話してよ」
「……うん。隣、座るね」
皐月は川内の横に腰かけると、手にしていたラムネを一本川内に差し出す。
川内は少しだけ笑いながら「ありがと」と包帯で包まれた手で受け取った。
「川内さんはドックに行かないの?」
「後でね、今は反省会をしてるからこのまま。ん……ん……ぷはぁ」
景気よくぽんとラムネのビー玉を落とすと、川内は喉を潤していく。
「はは、今日はごめんなさい。僕が……僕が敷波を抑えられなかったから」
無理した笑顔から少しだけ滴がこぼれる。
そんな皐月を川内は横目で見ながら、皐月の頭を撫でた。
「皐月はちゃんと旗艦してたじゃない。軽巡に発砲できる駆逐艦は中々いないよ。君は強いね」
「僕は……ヒック……強くないよ。川内さんの方が」
「私は弱いよ。弱いから皐月も泣かしちゃったね。神通にまた鍛えて貰わないと」
自傷気味に笑うと、川内は皐月を抱き寄せた。
「私はね、君ら駆逐艦には出来るだけ強くなってほしいの。私が最低ライン。私を早く超えて行ってね」
その言葉に皐月は声を荒げた。
「川内さんは! 川内さんはいつも自分だけそうやって……僕は知ってる! 川内さんがわざと駆逐艦に嫌われてる事も、わざとできない振りしてる事も……でも、川内さんがどうしてそんな事しているのかは誰に聞いてもわからないし、教えてくれない……」
川内は黙って皐月の言葉に耳を傾けている。
「川内さん、僕じゃまだダメかな。僕がまだ弱いから川内さんの事教えてもらえないの? 僕は嫌だよ。誰かの為に誰かが泣いてるなんて嫌だよ……。そんなの間違ってるよ」
「皐月は優しいね。私はそんな言葉かけてあげられないよ。でもそれは皐月の勘違いだよ? 私は強くもないしわざと嫌われているわけでもないし、できない振りもしていない。そんな事神通の訓練でできるわけないじゃない」
はははと川内は茶化す。
「皐月はそれだけみんなの事ちゃんと見てあげられるんだから、君はそのまま進んでいきな。こんな所で振り返っている場合じゃないよ」
「川内さんは、バカだ」
「そうかもね。私もそう思うよ」
そのまま声を上げて泣く皐月が落ち着くまで、川内は頭を撫で続けた。
二人が宿舎に戻る頃にはもう日は沈んで夜になっていた。
「この時間はここにいる。日課は簡単には変えないな、お前は」
消灯時間が過ぎた夜更け。運動場のベンチに提督は座って川内がここに来るのを待っていた。
毎日夜になるとここで川内は自主訓練を行っている。
大体が走り込みや筋トレなど、できるだけ音がでない訓練が主になっていた。
「いつからだろうな、お前が夜に夜戦夜戦と騒がなくなったのは」
「なにしにきたの」
「そう言うなよ。久しぶりだろ、二人で話すのは」
「話す事なんてないから」
「そうだな、お前が言わなかったから皐月のフレンドリーファイアも知らなかった」
川内は提督を睨む。
「そんな事なかった! 有りもしない事を報告する訳ないじゃない!」
「皐月本人から聞かされてな。どう扱ったものか悩んでいた所だった」
「提督、それをいうなら敷波に手を出した私の処分の方が優先でしょ?」
「おや、それは初耳だな」
おどけた態度を取る提督に川内は唇をかみしめる。
「まぁ付き合えよ。久々にお前と話したい気分なんだ」
「それは命令?」
「あぁ命令だ」
「……了解」
川内は提督の座るベンチから少し離れた地面に座った。
それを見た提督は「嫌われてるなぁ」と苦笑いしながら手にしていた飲み物を川内に投げる。
「敷波は少しだけショックを受けていたが、初めての接近戦だったんだ。あれで済んだなら運が良かった」
「よく言うよ。阿武隈が聞いたらなんていうか」
「まぁ接近させた方が悪いとあいつなら言うだろうな。でもお前もわざとそうさせたわけじゃない」
「見ていたみたいに言うね、提督」
「ずっと見てきたからな」
「お前の事を」という言葉は提督の喉から出る事はなかった。でもその意味は川内には伝わってしまう。
「川内。お前、艦娘止めたいか?」
「何よ突然」
「最近のお前の訓練を見ていてな。実力はあるのにやる気はない。しかも大本営に送るデータの測定の時だけは合格ラインぎりぎりの数値ぴったりをたたき出す。秘書艦でもないのにどこから情報を仕入れてくるやら」
「落ちこぼれが必死になって出した点数をそんな見方するなんて提督はひねくれているね」
「付き合いが長いと癖ってのは移るらしいぜ」
「なら叢雲のが移ったのね、納得したわ」
「かもしれんし違うかもしれん」
「……もし。私が辞めたいって言ったら貴方はどうするの?」
「ここを去った後の面倒くらいは見てやる。戸籍が無いと仕事にも就けないだろ。働き口と住む所の保証人くらいにはなってやるよ」
「提督はどうして欲しいの」
「俺はただお前に忘れ物を返したいだけだ」
「忘れ物?」
「あのマフラー。人が折角改二改装記念にくれてやったのに捨てたろ。神通が拾って持ってきてな、今俺が持っている」
「捨てて」
「嫌だね。今は俺のものだ。だからそれは聞けない」
「ならもう私の忘れ物じゃないでしょ」
「お前の忘れ物は別だよ」
「は?」
要領の掴めない話に川内は提督の方を向いた。
提督はまっすぐ前を見ながら真剣な表情をしていた。
「あのタンカー護衛任務。あの時にお前が海に忘れてきた物をまたお前には取り戻してほしい。その後は辞めようが続けようが構わない」
「提督の話はよく分からない」
「よく分からないならなんでそんな顔をする」
「見てない癖に」
「見なくてもわかる」
「どうだか……」
「見てきたからな」
「……」
「もう少しだけ時間をくれてやる。それまでに決めろ」
提督は立ち上がると川内の前に歩いていき、姿勢を正した。
「軽巡川内!」
声を張って呼ばれた川内は軍人の癖か、とっさに立ち上がり気を付けの姿勢を取ってしまう。
「辞令を言い渡す! 本日付けで貴官に第三水雷戦隊旗艦の任を命ずる!」
「……え?」
「返事はどうしたぁ!」
「は……っは!」
動揺しつつも返事をしてしまった川内に対して、提督はいたずらっ子のような笑顔を向ける。
「ま、最後の仕事だ。精一杯やってみろ。我慢なんてしないでさ」
「……サイテー」
それに対して川内はいつかの訓練の時の様に、苦虫を潰したような顔をした。
本日分の投下は以上です。
皐月は駆逐艦の中で一番好きかもしれません。二番目は天津風。
皐月をHDDできるなら憲兵とも一戦交えるのもやぶさかではないので寝ます。
???「外回りが帰ってきたんだって」
???「仕事がきついって?それはすまなかった」
???「もーっと働いてもいいのよ?」
???「できれば残業代を出したいのです」
【お知らせ】
やったぁ!401ちゃんが来てくれた!
残り資材を見るまでは喜びに浸れましたが、見てしまってから瞬時冷静になりました。私です。
本日2200頃に投下予定
多分ワンオペで夕方回しているようなコンビニの店員さんは特型社畜艦の称号を贈られてもいいと思います。
ちょっと早いですが投下開始します。
書き終わってなぜか敷波がサブヒロインポジになっていることに気付いた……。
大型ってストレス溜まるとまわしちゃいますよね
神通率いる第一艦隊ロストの報を聞いた川内と那珂は急いで執務室にいる提督の元に向かった。
二人が部屋に入る頃には既に対策本部が敷かれており、現場の把握と生存の確認が急がれていた。
「提督! 神通は! 神通の部隊はッ!」
部屋に入るなり提督に詰め寄る川内に、提督は作業の手を止めることなく対応する。
「現在空母隊による偵察機捜索をしている。向かった沖ノ島海域は既にこちらが制圧していた。なんらかの異常事態が発生したと思われる為にまだ出るわけにはいかん」
「そ、そんな悠長な事言ってる場合!? もし神通に何かあったら!」
「それで誰かが今行ってもまたその誰かを探す部隊が出てくる! それでは幾ら被害を重ねたところで変わらねぇんだよ!」
「だけど! また、また『あんな事』になったらぁ!」
「那珂! 川内を外に連れて行け! お前も少し頭を冷やせ。そうならない為に今は尽力を尽くすんだろうが」
「川内ちゃん、行くよ。でもその前に提督、那珂ちゃんは……私は本日中には姉の捜索に向かいます。それまでに事態の把握と作戦の概要をお願いします。では」
提督の答えも聞かずに那珂と川内は退出する。
提督は誰に聞かせるでもなく悪態をついたが、横で作業していた叢雲だけがそれを聞いていた。
「どいつもこいつも勝手ばかり言いやがって……クソが」
「ならその勝手ついでにコレ、出しておくわね」
「書類? ……叢雲お前」
「ええ、今回は私も出るわ。状況が状況だし、このままにしておけないわ。それに今、空母隊から電文が届いたのよ」
「……発見の報と……こいつは、最悪だな」
「時間的にも状況的にもなにもかも……一番適した人材は彼女だけよ? あの子もあなたもいつまでも引きずっている場合じゃないってこと」
「しかし、まだ時間が必要だと言っていただろう。ようやく、ようやく一歩踏み出したんだぞ!」
「それが甘いって言ってるのよ。彼女は……川内はあなたの恋人でもペットでもないの。一歩的な感情を押し付けてたのはあなたよ? それに気づいてて止めなかったのもあなた」
「……しかし」
「守ることと可愛がることは違うわ。もしそれをはき違えているなら、あなた司令官には不向きね」
「言ってくれるな」
「言うわよ。見てきたんだもの」
「……だが、さっきの様子だとまだ難しいぞ」
「大丈夫よ」
「なんで……そう言い切れる」
「もう一人じゃないもの。可愛い忠犬だと思っていたのだけれどね……実の所飼い主に良く似た暴れん坊だったって事よ。ホラ」
叢雲は執務室の窓の外、出撃ドック付近を指さした。
提督が視線をそちらに向けると、艤装を身に着け水平線を見つめる一人の艦娘の姿があった。
今まで悩んで動くことすら出来なかったせいか、その愚直な行動が出来る事が羨ましく、とてつもなく頼もしく映る。
自然と肩の力が抜け、呼吸が穏やかになるのを感じた。
それはいつか見た、あこがれだった巡洋艦の影と重なったからか。
それともあの背中を早く送り出してやりたいと思ってしまったからなのか。
横にいる秘書艦は只々澄ました顔をしてこちらを見ていた。
いつも通りに、ならばいつも通りに送り出すことにしよう。
「……まだ命令は待機しか出していないぞ」
「待機してるじゃない。ただ艤装を背負ってるだけよ」
「さっきの例えならまるで『待て』だな」
「ちゃんとわかってるのよ。飼い主が『良し』と言う事も、ちゃんと来るって事も。信頼してるのよ、誰よりも」
「違いないな。叢雲」
「えぇ、作戦なんて後から通信して頂戴。私たちは船よ、急にはもう止まれないわ!」
「宜しい。直ちにバカを叩き起こせ! 第一、第三、第四水雷戦隊を主軸とした救出部隊を編制する! 戦艦、重巡、航巡は敵勢かく乱と撃滅! 急げ!」
この内容を聞いた那珂は直ぐに出撃ドックに向かおうとする。
しかし、横にいた川内は足を止めていた。
その様子を見た那珂は「先、行くね」と出撃ドックに向かっていった。
「私は……私もッ……でも、また……また……」
「また、なんですか?」
「っ!」
突然後ろから話しかけられた川内が驚いて振り向くと、出撃命令が出ているにも関わらず普段通りの恰好をした敷波が立っていた。
「また守るものが壊されるのが怖いですか? それともまた仲間が傷つくのが怖いですか」
「……知ってるんだね」
「この鎮守府が設立された当時に実行された『タンカー護衛任務』。水雷戦隊で行う任務だったけど、当時は秘書艦の叢雲と川内さんの二名しかいなかった」
「……」
「航路は比較的安全で、深海棲艦の姿も少数しか確認されていなかった為にそのまま二名による護衛を行った」
「結果……叢雲は轟沈寸前まで大破して……護衛対象のタンカー船団は全滅……私のせいでね」
「記録には……戦艦ル級を旗艦とした強襲部隊による奇襲だったと書いてありました」
「実際そうだったよ。でも逃げ切れる可能性もあった。あの時の私はバカでさ……敵と邂逅時が夕方だったから少し時間を稼ぐことが出来れば夜戦で倒せると思ってたんだ」
「その時、叢雲は」
「旗艦の指示に従うってさ……。もうすぐ全体が暗くなりきるって時にね、敵重巡の魚雷が飛んできた。でもそれに気づくのが遅れた私は直撃コースから抜けられなかった」
「……それじゃあ」
「庇ってくれたんだよ。叢雲が私の前に出てきて魚雷を真っ向から当たってくれた。そして夜になった瞬間、私は叢雲を守ることで精いっぱいでタンカー船団が襲われていくのを見ている事しかできなかった」
「……でも、今の川内さんなら!」
「叢雲も同じ事言ってくれたよ。提督も、その後来たほかの子達も。でも……目の前で誰かが大破する度にあの夜を思い出す……。あの時はタンカー船団だった、でも次は!? 次は同じ艦隊の子が沈んでいくかもしれない! 神通が! 那珂が! 駆逐艦達が! もう! もう嫌だよ! それなら私は! 私はぁ!」
「なら、それをあの子の前でも言って来てください」
「はぁ……はぁ……誰の事よ」
「皐月です。二水戦ロストを聞いてからずっと出撃ドックで艤装付けて待ってるんです」
「なんで……待機のはずでしょ」
「川内さんがっ! アンタが一番最初にここに来るはずだからって! 待たせられないって! 僕が川内さんを守るんだって言ってるあの子の前で同じ事言ってみなさいよぉ!」
「……そんなの!」
「あの子はねぇ! アンタがあの子の事を知る前からずっとアンタの事を見てきたのよ! タンカー護衛の事も初めから知ってた! それでもアンタに憧れて……アンタみたいに強くて誰かを守れる人になりたいって……っく」
「私が……この私が誰を守れるっていうのよ!」
「叢雲を守ったでんでしょ!? 戦艦や空母が来てからも駆逐艦達を第一に守ってくれてたんでしょう!? この前も私を守ってくれたじゃない!」
「……あれは」
「言い訳なんてしないでよ! 私も……私にも憧れさせてよぉ! うぅ……ひっぐ……アンタの事……目指したいって……思わせてよ……うわぁあああ!!」
「…………」
目の前で泣いている敷波を見て、川内は涙を堪えた。
首に巻いたマフラーに埋めるとそのまま歩き出す。
通り過ぎ様、泣き続けている敷波の頭に手をのせ、聞こえるギリギリの声で「ありがとう」と告げると、そのまま走り出してしまった。
あの小ささなら声が震えているのもバレないだろうと、そんな事だけ考えて出撃ドックに向かう。
残された敷波の後ろから提督が歩いてくるのが横目に見えたから、きっと大丈夫だ。
あの人に任せておけばいい。今は私を待っているあの子の元へ急がないと
頬に当たる風が少しだけ冷たかった。
出撃ドックには既に三水戦のみが残っていた。
初めに一水戦が出撃。追いかけるように四水戦が出撃した。
残された特型駆逐艦三名と皐月が命令を待っているのみだった。
「川内さんまだかなぁ……うぅ、心配だよ」
「吹雪? そんな暇があるなら何度でも装備を確認しないと。この隊になって初めての実戦なんだから」
「白雪だってずっと川内さんに付けて貰ったアイアンサイト覗いているだけじゃない!」
「川内さんにね、言われたの。無駄撃ちする度にマイナス1点。敵の部位ごとに点数を付けて、当たった合計を報告するようにって」
「それがなんなのよ。まるでゲームじゃない」
「そうよ。私の点数が高ければ高い程吹雪達を守れたって証拠になるんだもの。ゲームにだって本気になるわ」
「あー! 白雪まで特徴が強くなってる! 私がまた地味になるじゃない! どうしてくれるのよぉ!」
「吹雪にはそれがあるから大丈夫よ」
「それってなに! 教えて! 教えなさい!」
「……こんな場面でも、普段通りに居られる……それが吹雪の強い所」
「初雪……それ、空気読めてないとかそういう意味じゃないよね? 緊張感ないってことじゃないよね?」
「……」
「黙らないでよ!」
「あら、まだいたの? 追いかけて行ってびっくりさせようと思っていたのに」
「む、叢雲!?」
「ハーイ吹雪お姉ちゃん。相変わらず騒がしいわね」
「アンタだって相変わらず私を姉と思ってないじゃない!」
「あら酷いわね。ちゃんと思っているからお姉ちゃんっていうんじゃない。ね、白雪」
「あのね? 私も叢雲のお姉ちゃんなんだよ?」
「……私も」
「あら、ならここで一番妹の私が一番優しくされなくちゃおかしいじゃない。それはまた後で話すとして。皐月」
特型駆逐艦が固まっているドックの中心部から離れた海側ぎりぎりの堤防に皐月がいた。
叢雲に呼ばれても振り返ることなく、他の水雷戦隊が通ったもう消えたはずの航跡を見つめている。
「安心なさい。ちゃんと来るわ」
「……当たり前じゃないか」
「一番初めに来てほしかった?」
「……」
「あの人はまだ転んだまま立ち上がれないでいるだけよ。だから皐月」
「僕は」
「……えぇ」
「僕は川内さんが立ち上がるまで守ってみせるよ。立ち上がってくれた時にちゃんと横で戦えるように。それまでにもっと強くなる」
「そんなに時間はかからないと思うけど?」
「その時は、鍛えて貰う事にするよ」
「そうね。それが良いと思うわ」
「なんかあの二人分かりあってる感じだねー」
「吹雪は川内さん来ると思う?」
「え? 来ないの?」
「……来るよ」
「来るよね!? ねぇ!」
「来なかったら私達だけで行っちゃおうか」
「はぁ……はぁ……はぁ……白雪は私が知らない間に随分寂しいこという子になったのね……はぁ」
「だってあんまり待たせるものですから」
「悪かったね。ちょっと寝坊しちゃってさ」
「もう皆準備出来てます。早く準備して下さいね」
「ふぅ……そだね」
「あら、私ちょっとお手洗いに行ってくるわね」
「叢雲。出撃前なんだから急いでよ」
「分かっているわよ」
叢雲が皐月から離れてドックの中に戻っていく途中、知れ違う人の肩を叩く。
「あんまり苛めると噛みつかれるわよ?」
「……ありがと」
「ほら、早く行ってあげなさい」
「うん」
吹雪達が抜錨準備に入っている所に合流した叢雲は、トレードマークのアンテナを肩にかけて満足げな顔を見せた。
皐月の元には、ようやく訪れた待ち人。
「まったく……遅いんだよ……」
「ごめんね。待たせた」
「皆、もう行っちゃったんだから……」
「そうだね」
「ずっと……待ってたんだよ?」
「ありがとう、皐月」
「やっぱりバカだ。川内さんは」
「そうみたいだね。皐月と一緒だ」
「僕はばかじゃないもん!」
「私と一緒じゃ嫌?」
「……嫌じゃ……ない」
「なら良かった。おし! それじゃあ三水戦の出撃といきますか!」
「もうどうだっていいよ! 川内さんのばかぁ!」
「イチャついてるね」
「イチャついていますね」
「……イチャい」
「気にしなくていいわよーほら、あんた達も出るわよ」
川内を旗艦とした第三水雷戦隊。
その面々がようやく出撃ドックに集合すると、一列になり、出撃体制に入る。
その号令を川内がかけようとしていた。
「さて、皆待たせて本当にごめんね」
「本当だよ!」
「はは、その分しっかりやるから! 私達三水戦の任務は簡単だよ! 私たちの到着時刻がフタマルマルマル。辺りは既に暗くなっている頃ね」
「あら? あなた夜は怖かったんじゃなかったかしら?」
「いやぁ、まだちょっと怖いんだけどね……それよりももっと怖い人を助けにいかないといけないからさ」
「神通さんはそんなに怖い人じゃないですよ?」
「駆逐艦には優しいの! それで、私たちの任務だけど。 一水戦、四水戦は昼戦にて二水戦の護衛・脱出を補助。そのまま海域を離脱。戦艦、重巡を中心とした部隊が道中護衛や、敵強襲部隊の相手をしてくれる」
「あれ、私たちはなにをするんでしょう?」
「私達はね? その前に吹雪は私のあだ名って知ってる?」
「え?……えーっと……その」
「良いよ。怒らないから言っていいよ」
「い、妹隠れとか……あの、その……ごめんなさい!」
「ははは。ありがとう吹雪。そうだね、今の子達はそのあだ名の方が強いよね」
「夜戦バカ」
「ふぇ? 叢雲今なんて?」
「夜戦バカよ。吹雪の言ったのはこいつが引き籠った後のレッテルよ。それまでは川内といえば夜戦。夜戦といえば川内という位だったんだから」
「へぇ……川内さん夜戦特化なんですか?」
「全然?」
「え?」
「探照灯に夜偵に照明弾。この装備こしらえて突っ込んでたくせに何が夜戦特化じゃないよ。馬鹿じゃないの?」
「へぇー! 川内さん夜戦特化なんですか!」
「それを別にしても、夜戦での戦い方がうますぎるのよ。この軽巡」
「まぁその話はまた後でね。そう、私は夜戦バカって呼ばれてたの。それを吹雪達位になってくると忘れられているみたいでね。多分敵も私の事を忘れているんだと思うのよ。だから」
一息。呼吸を置くと、川内は声を張った。
「今夜は奴らに私の存在を思い出させてやる! 私の妹や仲間に手を出したらどうなるか思い知らせてやる! 私たちの仕事はただ一つ! 夜戦だぁ!」
それを皮切りに川内が艤装に火を入れる。主機が回転して唸り声を上げていく。
それに続いて叢雲、皐月が缶に火を入れた。
出撃ドックはまるで暴走族が同時にバイクをうならせているかのような轟音が鳴り響いている。
吹雪、白雪、初雪はそんな三人に火照されて主機を回す。
「川内! 第二水雷戦隊! 出撃します!」
号令が聞こえた瞬間。我先にと飛び出した六隻の船。
バラバラだった航跡が湾を出る頃には一つとなって、戦場を目指して進んでいく。
「……神通」
既にその瞳に絶望は無かった。
本日分は以上になります。
投下量すくなくてすみません。
一応起承転結の転にはもう入っているのでもうすぐです。
あぁ~皐月可愛いんじゃ皐月ぃ!
乙
>私達三水戦の任務
>「川内! 第二水雷戦隊! 出撃します!」
これはあかんくね?
>>105
誤字です申し訳ありません。
今後気を付けます。
以後読まれる方は脳内変換宜しくお願い致します。
【お知らせ】
本日は2200に投下予定。
アイス……ラムネェ……。
すんません。三十分延長下さい!
仕事の電話が来て手が止まっていました……。
辞める人間を酷使していくスタイルぅ……。
くぅ~疲れました!
これより投下します。
第一艦隊。第二水雷戦隊が消息を絶ってから既に九時間は経っていた。
阿武隈旗艦の第一水雷戦隊が出航してから五時間。
未だに対策本部となっている鎮守府執務室に発見の報は無い。
空母隊の艦載機がくまなく探しているにも拘わらず発見されないという事実に、提督はそれが最も強固なる生存の証明だと確信していた。
あの神通がおいそれと敵にやられてくれる筈がないと。
そして一水戦から連絡が届く。
『こちら第一水雷戦隊旗艦阿武隈! 現在沖ノ島残存勢力と思われる敵艦と交戦。これを撃破。こちらは被害なし。敵は始めからかなりの損傷を負っていました!』
「こちら本部。近くに友軍の出撃情報は無い。恐らく二水戦との戦闘によるものと考えられる」
『私もそう思います。それと、六駆の子達が敵が来た方角に行ってみようと言っているのですが……』
「許可する。現在の阿武隈達の居場所は把握している。向かう方角を報告してくれ」
『北東東です』
「了解した。羅針盤に持っていかれそうになったら直ぐに報告を。以上」
『了解しました!』
通信が切れると、提督は椅子に深く沈み込む。
生きている筈だという確信が強くなるほど、無事でいてくれという心配が大きくなっていく。
四水戦は未だ会敵無し。戦艦を主軸とした支援部隊は沖ノ島海域近海のオリョーク付近で現在待機。
最後に出発した三水戦はようやくバジー島海域に入った頃だった。
「頼んだぞ。誰一人……失ってたまるか」
川内三水戦はまもなくバジー島海域に差し掛かる頃だった。
出航の時の熱気は収まりつつあるも、各員程よい緊張感を持っていた。
前から川内、皐月、吹雪、白雪、初雪、叢雲と並んで単縦陣を維持したまま進んでいく。
すると、殿を務める叢雲から全員に無線が入った。
「この辺はいつも通りね。というより、いつもより穏やかかしら?」
川内が答える。
「そうだね。この海域なら多少は空母型や重巡型が潜んでいてもおかしくないんだけど」
「怪しいわね。旗艦、意見を具申するわ」
「言いたいことはわかるよ。一度バジー島に寄るっていうんでしょ?」
「えぇ。あそこには妖精用の海域監視施設がある。それと、提督にアレのお願いもしてきてあるから取りに行きたいの」
「アレ? なにか知らないけど、初めから寄る気だったのね。私も同じ予定だったから都合は良いかぁ」
そこで皐月が意外そうな声をだした。
「え、川内さんは先を急ぐって言うかと思ったよ」
「まぁ神通の事は心配よ? でも阿武隈や那珂が先に見つけてくれるから、慌てて行ってもしょうがないからね」
「それはそうかもしれないけど」
「それに、私の目的は神通を助ける事だけじゃないしね。あの子ならそもそも助けは要らないかもしれないし」
「他になにかあるの? 叢雲や川内さんの話は難しくて僕には分からないや……」
「皐月ちゃん、大丈夫だよ。私もわからないから」
「吹雪ちゃんもか」
「多分白雪や初雪もわかってないと思うからそんなに気を落とさないでね!」
「吹雪ちゃん」
「あのぉ……なんか一緒にされるのも変な感じがするんですけど」
「白雪!? なんで!? 同型艦だよ? 私お姉ちゃんだよ!?」
「……ノーコメント」
「初雪まで!? 酷い!!」
「大丈夫よ。教えておかないといけない事はちゃんと教えるから。でも今回のは折角だからビックリした所が見たいのよ、私は」
「叢雲もか、私もそんな感じなんだよね」
「川内さんも叢雲もなんか言ってくださいよぉ!」
「白雪も初雪もあんまりお姉ちゃん苛めちゃだめよ? これでいい?」
「叢雲……ありがとう! 持つべきものは妹だよ!」
「あれ、私吹雪の妹で叢雲のお姉ちゃんよね? 初雪も」
「……のーこめんと」
「やっぱり皆が言っている事よくわからないや……」
「はいはい。息抜きはこのくらいにして。進路変更! これより北東、バジー島へ向かう。叢雲、本部に報告してる間お願い」
「了解。あぁ、提督に『あの書類のヤツ、使うわね』と伝えて貰える?」
「いいけど、それ私にも教えてくれないの?」
「見てからのお楽しみよ」
「はぁ。まぁいいわ」
川内は耳の無線機を押す。しかしすぐに繋がらず、ノイズだけがしばらく続いた。
それから少しするとぼんやりと提督の声が聞こえてきた。
『……ちら…部……内か?』
「こちら三水戦、旗艦川内。提督聞こえる?」
『……し。これで聞こえる筈だが、どうだ?』
「クリアになったわ」
『これだけ磁場が悪いとすると、バジーか』
「そ。しかももっと電波悪いところに向かう予定よ」
『バジーの監視施設? そんな所に何しに行くんだ?』
「私はバジーの倉庫に私物取りに行くだけ。叢雲は提督に渡した書類の件で行くって言ってたけど」
『あれか……本当に持ち出す気か、あいつは』
「叢雲も教えてくれないんだけど、なんなのそれ?」
『試作品だよ。見りゃわかる。それよりも寄ってて予定には間に合うのか?』
「大丈夫。水雷戦隊ならあの浅瀬が通れるから沖ノ島深部まで二時間かからないよ」
『駆逐艦達は大丈夫なのか?』
「いけるでしょ。それこそ特型の十八番じゃない」
『持ち前のスペックという事か。了解した。予定に変更はない。バジーにて補給を済ませたのち、作戦行動に戻れ。以上だ』
「了解。阿武隈達に任せっきりな分。奴らのどてっ腹に穴開けてやるからね!」
『頼んだぞ』
無線はそこで切れた。
ここから先は当分無線が使えない地域となる為、次の報告はバジーを出てからになるだろう。
海域監視施設は、深海棲艦への妨害と施設の発見防止の為にジャミング電波を常時発している。
その為、施設と鎮守府の連絡も彩雲などの高速偵察機を用いて行われていた。
だからこそ、ここで何を持ち出そうがすぐに提督の耳に入ることはない。だからこそ、川内はこのタイミングで訪れる事を決めていた。
バジー島にある小さな港には、簡単な泊地と小さな倉庫。島の中心部にある監視施設に続く道がほっそりと続いている程度だった。
港から陸に上がると、叢雲は「挨拶だけしてくるわ」と一人施設に向かって歩いて行った。
残された五人は、川内の案内の元傍にある倉庫の中に入っていく。
「ここはね、私や叢雲なんかがまだぺーぺーだった頃に作られたの。あの頃ではこんな体で前線補給基地なんて呼んでたっけ」
駆逐艦達は初めて見る場所に息を飲んでいた。
そこには旧式の装備が綺麗に並べられており、少しだけ埃を被っていた。
しかし、まるでついさっきまで使われていて明日にでもまた戦場に赴くかのような。そんな印象さえ覚える。
幻想的で、かつ無機質なその空間に駆逐艦達は言葉を失っていた。
すると、川内がゆっくりを奥に進みながら話を始めた。
「君らはさぁ。駆逐艦は戦艦や空母を一人で落とせると思う?」
唐突にそんな質問をされて、四人とも押し黙ってしまう。だが、吹雪がゆっくりと小さな声で答える。
「無理……とは言いたくありませんが、難しいと思います」
「良い答えだね。始めから無理だと言ってれば何もできない。でもね、もし私が同じ質問をされたとしたら……出来ると答えると思うな」
廊下の突当りにある扉を開けると、大広間のような空間に出た。
そこにも装備が綺麗に並べられていて、窓からの日差しが部屋の中を漂う埃を照らしている。
丁度その部屋の真ん中あたりにいくつか無造作に置かれた椅子があり、川内がそこを指す。
それに習って四人は椅子に座った。
皐月はさっきの川内の言葉をなぞるように問いかける。
「僕にも……睦月型にも戦艦や空母を倒せるのかな? やっぱり、難しいのかな……」
「出来るよ」
「はは、即答だね」
「当たり前の事だからね。考える必要なんてないよ。戦艦や重巡、空母には無くて私達にある武器ってなにかわかる?」
「え? えっと……なんだろ」
「これだよ」
川内は皐月の足元にそっとしゃがんだ。
そしてそのふくらはぎの部分に装備されている魚雷発射装置を軽く撫でた。
「魚雷?」
「そう。どんな船でも水面より下の装甲はそこまで厚くないんだよ。そこだけは私たちはいつでも狙える。確かに空母にも艦攻なんかで狙えなくはないけど、早さは圧倒的に私達が上だ」
「そっか。でも、僕の魚雷はそこまで高性能じゃないから……やっぱり難しいね」
「皐月」
川内はしゃがんだまま皐月の目をしっかりと見据える。
真剣な表情の川内に始めは驚き動揺するも、皐月も目を反らさずに川内を見た。
「私達にとって魚雷は牙だ。そこに良し悪しは正直無い。そしてその威力を一番強くぶつけるには……持ち主の度胸と自信。そして気持ちだよ」
「威力に……気持ち?」
「水雷魂なんて事私は言わないけど、生きたい。生きて帰りたい。その気持ちが強ければ強い程、私達は的確な場所を打ち抜こうとする。それが一番の近道だからね」
「……そうだね」
「皐月、牙は決して無くしてはいけないよ。じゃないと……私みたいに後悔するからね」
その言葉の後、川内は少しだけ寂しそうな顔をした。
皐月にはその表情の訳が分からなかったが、きっと以前に同じ事を考えて、失敗して。そしてその考えに至ったのだろうと感じた。
自分のいる場所に、憧れていた人もいたんだ。
そのことだけで、皐月の気持ちを固めるのに十分だった。
「無くさないよ、絶対に。僕は僕の力で川内さんを守りたいんだ」
川内はそれを聞くと、ゆっくりとうなずいて立ち上がる。
吹雪達の座る椅子の後ろ。大きめのテーブルが置いてあり、その上にボロボロの白い布がかかっていた。
それを見つけた川内はこの場の空気を変えるようにそれに近づく。
「うっわ懐かしい! 無くしたと思ってたのに、こんなとこにあったのかぁ!」
持ち上げてみると、川内が今つけているものよりも少しだけ短く、片方の端の方が焦げて切れかかっているマフラーだった。
吹雪がそれを見比べていると、白雪が川内に声をかける。
「それ、川内さんのですか?」
「そうだよ。私が改二に改装される前に付けてたやつ」
「え? 川内さん改二になる前からそれつけてるんですか!」
「始めは付けて無かったんだけどね? 夜戦の時に相手に攻撃しながらニヤニヤしてて怖いって叢雲に言われてからつけるようにしたの。ほら、こうやって顔隠せるでしょ?」
川内は自分の口をマフラーで隠して見せた。
「あーなるほど……。叢雲なら言いそうですね」
「でしょ? ん、皐月どうかした?」
マフラーをじっと見つめている皐月に声をかけると、皐月の目線がマフラーと川内の顔を言行ったり来たりする。そしておずおずとマフラーを指さした。
「それ……僕貰っても良い?」
「それって、これ?」
「……うん」
「良いけど……埃まみれだよ?」
「は、叩けば大丈夫!」
「皐月も顔隠したいの?」
「僕……泣き虫だから。それ良いなって……それに……川内さんと……一緒だし」
「……ふむ、どれ! 巻いてみ?」
川内はマフラーを数回叩くと、皐月の首に回してあげた。
少しだけ長いかもしれないが、皐月の金髪のお下げに合わせるように二本伸びた白い線はとても似合っていた。
「あうぅ……ちょっと長いね」
「んー。その片方の切れかけ。取っちゃおうか」
「え?」
川内はマフラーの片方、被弾して切れかかっていた部分を手でちぎると、切れ端はその辺にっぽいと捨ててしまった。
「これで巻き直せば……ほら、丁度いいじゃない」
「わぁ! 本当ですね! 皐月ちゃん似合ってます!」
「えへへぇ、吹雪ちゃん本当?」
「本当ですよ! ねぇ川内さん!」
「うん、もしかしたら私より似合ってるんじゃない?」
「そ、それはないよぉ……」
皐月は真っ赤になった顔をマフラーに埋めた。
「そうそう。そうやって使えば便利だよね。さて、そろそろ戻りますか」
川内は来た道を戻っていく。
白雪が川内の横にいくと、小さな声で話しかけた。
「結局、川内さんの取りに来たものってあのマフラーだったんですか?」
「ううん、違うよ」
「じゃあ何を?」
「んー……思い出と、気持ちかな?」
「はぁ……」
「まぁそのうち話してあげるよ。そら、叢雲が待ってたら怖いぞー」
そういって先に走っていく川内。それを追いかけるように四隻の駆逐艦が走る。
さっきまで埃が一面降り積もっていたその倉庫には、新しい足跡とちぎり棄てられたマフラーの切れ端が残された。
「提督、忘れ物。ちゃんと拾ってきたからね。この気持ちはもう無くさないよ」
川内の言葉は駆逐艦には届かず、倉庫に小さく響いた。
本日の投下はいじょうになります、
本編を読んだ方は察していただけると思いますが、私が言いたいことは一つです。
川内のマフラー巻いた皐月ちゃんのイラスト早く描け下さい
磯波と深雪は神に導かれてしまったか……乙です
>>138
このSSの三水戦のメンバーは1942年4月10日セイロン沖海戦後の第11駆逐隊がモデルとなっている為にこの面子になっています(皐月は私の我儘で投入してます)
磯波さんは第16駆逐隊で元気でやっています。
深雪さんは……1934年の六月末に……。
うちの電と一緒にお昼寝しているので本編には出てこないんじゃないかなと
【お知らせ】
すみません平日時間取れませんでした。
今から書き始めるので本日2300までに上がれば投下致します。
間に合わなければ明日の2300に投下致しますので宜しくお願いいたします。
イベント楽しみらぎ
間に合いそうなので、今夜投下します。
一応今夜の投下でエンディングを向かえそうです。
今丁度書き終わりました。
これより投下開始します。
「やったぁ!」
吹雪達の探照灯の明かりに負けない程の爆炎がタ級flagshipを包み込んだ。
それを見た皐月は確かな手ごたえを感じながら声を上げる。しかし。
「まだよ! 皐月回避!」
「え? わ、わぁ!」
照らし出される黒煙の中から爆音と共に飛来する徹甲弾を、皐月は寸での所で回避する。
それを予測していたかのように煙の中から中破状態となったタ級flagshipが飛び出してくる。
川内は魚雷発射管から一本逆手に魚雷を抜き取ると、回避行動を取りつつ水面に投擲する。
それは川内の意志が反映しているかのように水に潜ると、そのまま一直線にタ級flagshipに向かって進んでいった。
が、魚雷はタ級flagshipに当たることはなかった。
なぜならタ級flagshipは護衛として吹雪達とタ級flagshipの間に位置取っていた重巡リ級flagship元まで下がると、リ級flagshipの首を掴んでそのまま自分の足元に叩きつけたのだ。
川内の魚雷はそのままリ級flagshipに当たる形となり、満足に防御姿勢を取る事の出来なかったリ級flagshipはそのまま波に飲み込まれるように水面に消えていった。
「ッチ! お前の仲間だろうに……下種が」
「嘘……そんなことまでして……あ、あぁ……。あああああ!!!!」
「馬鹿ッ! 皐月駄目だ!」
「川内さん! でも! あいつ自分の仲間なのに!」
「アンタの仲間も今戦ってんのよ!」
「ッ! でも、だけど!」
その光景を見た皐月は表情に嫌悪感と怒りを露わにする。
それと同時にオープン回線で常時聞こえてくる特型四隻の声も耳に混ざる。
「クソ! これじゃ駄目だ……どうする……」
皐月は怒りで敵に突撃したい衝動と、自分の仲間に対する想いのせいで動きに迷いが出始めていた。
なおも吹雪達はタ級flagshipの取り巻きと乱戦を繰り広げており、こちらに援護をする余裕など無い。
川内自身がタ級flagshipを請け負うと宣言している手前、ここで引く訳にもいかない。
この状況を打破するきっかけさえあれば。川内はその糸口を探りながらタ級flagshipの注意を引く為に機銃を放つ。
「僕は……僕はあいつが許せない! 絶対に許さない!」
「皐月、落ち着いて! これじゃ相手の思う壺よ!」
「分かってる! 分かってるんだ! 頭では分かってるのに……畜生!」
皐月は瞳に涙を浮かべながら必死に川内の指示に従う。
回避行動を取りつつ相手に砲撃の隙を与えない様、主砲を放ち続ける。
しかし決定打には程遠く、戦艦持ち前の装甲に弾かれてしまっていた。
その時、先ほどまで吹雪達に指示を飛ばしていた叢雲が川内と皐月の会話に割って入る。
『さっきからガタガタ五月蠅いのよ! さっきまでの威勢はどこに沈めてきたのかしら!?』
「叢雲! そっちは」
『こっちは順調そのものよ! それよりも他を心配してる暇があるならとっととそいつ片付けなさい!』
そうしたいのは山々だと川内は言い返そうとしたが、止めた。
今は皐月を冷静にさせて、タ級flagshipに決定打を打ち込む方法を考えるのが優先だった。
叢雲は皐月に野次を飛ばす。
『皐月! あんたが足引っ張ってどうすんのよ! ご主人守るんじゃなかったの!?』
「言われなくたって分かってるよ!! でも頭の中がぐちゃぐちゃしてわからないんだ!!」
『何が、ッグゥ!! 何が分からないっていうのよ!!』
『叢雲! 大丈夫!』
『平気よ! 吹雪はそこの駆逐邪魔だから片付けて! 皐月! アンタがぐだぐだ悩む事は帰ってからでも出来んのよ! 今出来る事は何!? なんの為にそこの引きこもり引っ張り出してきたのよ!』
「じゃあどうしたら良いのさ! 今すぐにだってあいつをぶっ飛ばしたいよ! 許せないよ! でも川内さんが止めるのに行ける訳ないじゃないか!!」
『ならそこのバカに行かせればいいでしょ!! 簡単な事で駄々捏ねるんじゃないわよ!』
「川内さんに行かせ! ……川内さんに?」
『アンタも聞こえてんでしょ! 何可愛い二番弟子に背負わせて自分楽してんのよ!! 考えてる暇があったら手を動かしなさいよ! 手を!』
川内は叢雲に激を飛ばされて初めて自分のしている行動を見返す。
しかしそれは確かに。今自分が考えている事、している行動は自分でも思う程に受け手だった。
出撃をする際に胸にあった諸突猛進な戦意がいつの間にか消えていた。
それを表に出した皐月を冷静じゃないと止めてしまった。
だが、それは本当なら自分が行うべきだった。
ただ闇雲に突っ込むのではなく、相手の思考の隙を抜けた。そんな奇抜な戦闘を得意としていた筈だ。
何を日和っているのか。馬鹿馬鹿しい。
夜をあの日と重ねて、かつての自分を今でさえ引きずっているのは誰でもない。川内自身だ。
皐月は確かに無謀な突撃をしようとした。でもそれに中身が伴えばそれは川内の持ち味を体現していたではないか。
提督は皐月を川内の未来像と称した様に、彼女はこの時も川内に道を示してくれていた。
小さな月明かりに気付くと、迷っていた道の先が微かに見えた気がした。
『あーもう面倒ね! 吹雪! 白雪! 初雪! 五分持たせなさい! あのバカがやらないなら私が』
「叢雲、五分もいらないよ」
『頭でっかちんが何言っても説得力ないのよ! 引き籠りは無理すんな!』
「はは、笑わせないで。アンタこそたまには先生のいう事聞きなさいよ!」
『ちょ! なんで今その呼び方言うのよ! 止めなさいよ!』
「良いじゃない。昔はよく先生って呼んでくれたんだから。皐月ぃ!!」
「川内さん!?」
「私に考えがある! まずはあのでかい砲塔ぶっ壊すわよ! 付いてきなさい!!」
「りょ、了解!!」
川内はの字運動を大きく行うと、急旋回してタ級flagshipの左舷目掛けて突撃する。
それに合わせてタ級flagshipも向きを変えて発射体制を取る。
それを確認した川内はまた大きくの字運動を行う。
数回、同じ動きを繰り返すと、皐月に呼びかけた。
「オッケーよ皐月。あいつの動きが見えた。今からいう事をそのままやって! 皐月なら出来る!」
「はぁ……はぁ……え? 何をするの?」
「もう一度さっきと同じ事をするから、その時に自分の後ろに魚雷を投げて! 着水したらアイツに飛んでいくように向きを考えてね!」
「で、出来ないよそんな離れ業! 第一魚雷が水面に変に当たったら爆発するじゃないか!」
「そこはまぁ……スクリューの方から刺すように投げれば」
「そんな事が出来るの川内さんだけだよ!」
「じゃあ私がやるわ! 皐月は魚雷があいつにバレないようにわざと顔辺り狙って主砲を撃ちまくって! 魚雷が当たったら私が突っ込むから、そうしたら皐月がしたいように動いていいよ!」
「無茶苦茶だよそんなの! 違う作戦を考えようよ!」
「皐月がいたから!」
「へ?」
「皐月がいたから、吹雪や叢雲がいたから私は私になれたんだ! もう悩んでいじけて動けないのは嫌なんだ!!」
「……川内さん」
「さっきまでの私がそうだったのなら、今の私はそれを壊したい! 私は夜を越えたい!!」
「……」
「暁はもうすぐそこなんだ。あの夜の明けが、もうすぐ掴める気がするの。だから皐月」
「あーもう! わかったよ! でもどうなったって知らないんだからね!」
「ははは。どうにかしてみせる。してやるんだから」
『話は纏まった? もうこっちはカツカツよ。早い所終わらせて欲しいものね』
『川内さん! 皐月ちゃん! あんな奴ぶっ飛ばしちゃえ!』
『私ももう弾が殆どないので、早く帰ってまた射撃訓練がしたいです。早く帰りましょう?』
『皆……一緒、にね』
『よーし。こうなったら特型の底力見せるわよ! 雑魚は叢雲様に任せてさっさと行きなさい!!』
「だってさ、川内さん」
「やるよ。皐月」
「はいッ!」
その間も射撃を止める事なく行っていたタ級に対して数発砲撃を行うと、川内と皐月はまたも大きくの字運動を開始した。
その時、吹雪達が照射し続けていた探照灯の光が消えた。
話を聞いていた吹雪達が合わせてくれたのだ。
これによって魚雷の航跡が敵に発見されづらくなった。
川内と皐月は二本ずつ魚雷を自分の後ろに投げると、皐月はタ級を迂回するように回り、川内は身を低くして波に沿うように突撃する。
「ガアアアアア!!」
再び訪れた暗黒に主砲副砲共に乱射するタ級flagshipは川内の接近に気付くのが遅れた。
川内と対称に向きを揃えたタ級flagship。その目の前で川内は主機を止めて停止する。
「さて、私が勝つかあんたが勝つか。勝負ね」
「ウガアアアアアガアアアア!!!!」
「何? 叫んでばかりで喋ることも出来ないの? 無様ね」
川内の台詞の終わりと同時に二つの爆発音が発生する。
四本の魚雷の内、川内と皐月。二隻の魚雷が一本ずつタ級flagshipの右舷の命中した。
「何が無茶苦茶よ。あはは、当ててんじゃない!」
その爆発が止む前に川内がタ級flagshipに急接近をする。
そしてスケートリンクの上で曲がるようにタ級flagshipの背後に回り込むと、タ級flagshipの首にヘッドロックを仕掛ける。
「いくら戦艦といはいえ、こういう戦いには不慣れでしょ? もうただの艦じゃないのよ! あんたも、私もぉ!!」
「アガッ……ギギァ……ガァ!!」
「苦しい? なら離してあげる。これもついでに受け取りな!!」
川内はなおも中破で留まるタ級flagshipのヒビ入った16インチ主砲の砲身に魚雷を差し込むと、タ級flagshipを押し出すように離れる。
「皐月ぃ!!」
「見てたよ!! いっけぇえええええ!!!!」
「悪いね。どうやら賭けは私の勝ちみたい。ざまぁみろ」
一連の流れを見ていた皐月は、よろめくタ級flagshipに向かって突撃しながら主砲を乱れ撃つ。
その内、一つの弾丸が16インチ主砲の砲塔に当たる。その衝撃は砲身にはめ込まれた魚雷を起爆させるのに十分だった。
辺りを白い光が覆い、遅れて耳をつんざく様な爆発音が木霊した。
魚雷の爆発にタ級flagshipの弾薬庫が誘爆。水上バイク(試作)をぶつけた時よりも大きな爆発が起こった。
「うわああああ!!!!」
皐月は爆風に押され、後ろに吹き飛ばされる。
それよりも近くにいた川内の姿を、体制を整えた皐月は見失ってしまう。
「川内さん? 川内さん!!」
目に焼き付いた光が収まると、間もなく水面に姿を消そうとするタ級flagshipの姿。
そして、それに伴い撤退を開始しようとする深海凄艦達。
川内の姿は海上には無かった。
その代わり、空から聞こえる声。
「ぃぃやったぁぁぁあ!!!! 勝ったぁああ!!!!」
皐月だけでなく、戦いの終わりを悟った叢雲達も釣られて空を見上げる。
すると雲から顔を出した大きな月と、爆風によって空に撃ち上げられた中破の川内の姿。
『……馬鹿って飛ぶのね』
それを見た叢雲がそんな事を言っていたが、誰もそれには答えなかった。
間もなく水面が近づいてくると、川内は身を丸くしでんぐり返しをするように落ちてくる。
そのまま水面を滑るように着地をし、数メートル程進んだ所で転んだ。
「うわぁああ!! 痛たた。もう、締まらないったら……」
ぶつくさと文句を言いながら主機を回して立ち上がった川内に皐月が飛び付く。
「うぉっとぉ!! さ、皐月? どうしたの」
「……ぐすっ……ひぐ、うぅ……」
「え? なんで泣いてるの!? 勝ったよ? 勝ったんだよ!? 私!? 私が悪いの!?」
泣きながら首を横に振る皐月。
それを見ながら叢雲や吹雪達も川内の元に集まってくる。
「あーあー。泣かせちゃってまぁ……最悪ね、この軽巡」
「あんなに頑張った皐月ちゃん泣かせるなんて……川内さん」
「……ひどいですね。撃ちますか?」
「……ノーコメント」
「ちょっと! 私が何したのかくらい教えてよ!! 皐月? もう怖いのいないからね? 大丈夫よ!」
「ぐす……川内ひっぐ、さん。無事で……うぅ、無事でよがっだあああああ!!!!」
「……皐月」
号泣しながら川内の腰に抱き付く皐月を優しく抱きしめながら、川内は皐月の頭を撫でる。
「ありがとうね皐月。叢雲も吹雪も白雪も初雪も、ありがとう」
「ねぇ、先生?」
「叢雲、その呼び方嫌だって言ってたじゃん」
「まぁ良いじゃない。気分よ気分。……。先生は夜を越えたのかしら?」
その質問に川内は少しずつ白いで来た東の空を見つめながら答えた。
「そうだね……。ようやく夜明けだ」
東の空に日が登り始める。
辺りはまだ少しうす暗いが、それでももう明かりを灯さなくても見通すことが出来る。
三水戦の面々は改めてお互いの姿を確認し合うと、思わず笑ってしまう位にボロボロになっていた。
吹雪や白雪は既に中破しており、初雪は小破。
叢雲に至っては大破寸前までダメージを負っていた。
川内や皐月と無線で会話している時に、敵駆逐艦に突撃されていたらしい。
その状況で川内に代わってタ級flagshipに突撃しようとしていたのだから、やはり叢雲も川内の弟子なのだと吹雪達は笑った。
この状況でどうやって帰るかと話していると、西の空から偵察用艦載機「彩雲」が空を翔けてくる。
それを追いかけるように「瑞雲」や「零式艦上偵察機」も飛んでくる。
それを目で追いかけていると、六隻の無線に通信が入る。
『こちら一航戦加賀。三水戦聞えているかしら』
「こちら三水戦旗艦川内。加賀さん、聞こえているよ」
『貴女が無事という事は、そういう事でいいのかしら』
「うん。皆派手にやられてボロボロだけど、まぁA勝利って所かな」
『上々ね。これより本隊が三水戦を護衛するわ。帰りましょうか』
「ありがとう。うん、うちに帰ろう」
「はわわわわ!! 戦艦や空母の先輩達が護衛してくれるなんて……凄いです!!」
「吹雪、アンタ自分が何をしたのかくらい理解しなさいよ。それだけの事をやってのけたのよ、私達は。胸を張りなさい」
「叢雲……うん!」
「それじゃあ皆帰るよ! 皐月、行くよ。皐月?」
「すぅ……すぅ……」
「あら、泣き疲れて寝ちゃったのね。勿論川内先生が連れて行ってくれるのでしょう?」
「まぁ……そうしようか」
「可愛い寝顔じゃない。朝が来てお月様もお疲れだったのね」
「皐月が私の分も頑張ってくれたからね。本当にこの子のお蔭よ……」
「もうみっともない姿は見せられないわね」
「見せないよ。はぁ……もう引き籠れないなぁ」
「神通が寂しがるんじゃない? 姉さんの訓練が出来ないって」
「そうかもね。その辺の話も帰ってから。行こうか」
こうして、三水戦にとっての長い夜の初出撃は終わった。
帰りの道中、川内は皐月の寝顔を何度も横目に見ながら大事そうに抱えて帰って行った。
この鎮守府にはいくつかの名物がある。
鬼の二水戦旗艦による地獄が垣間見れる特訓だったり、四水戦旗艦のコンサートだったり。
鎮守府に所属している艦の殆どが軽巡洋艦と駆逐艦であるからか、噂話とトラブルには事欠かない。
だからこそか、噂の中心にいる艦は注目を嫌でも集める。
あの夜の騒動はその日のうちに鎮守府内を駆け巡り、三水戦は入渠を終えるや否や多くの艦娘に囲まれた。
中でも皐月に対しての質問攻めは凄かったという。始めこそちゃんと答えていたものの、その内目を回してしまい自分の部屋に逃げ込んで閉まった。
その行動でさえ「引き籠りの弟子も引き籠り」と話のネタにされてしまった。
そしてそんな騒がしい一日も夜が更ける。
「こんな日でも日課は欠かさないのな」
「はぁ、はぁ。……提督」
消灯時間が過ぎた頃、提督はいつかの様に川内を運動場のベンチで待っていた。
あの日と違う事と言えば、川内の態度と提督が手にしている飲み物の銘柄くらい。
「先の戦闘ご苦労だった」
「何、そんな事を言う為に待っていたの?」
「いや、お前と少し話がしたくてな」
「私も提督に話があるから丁度良かったわ」
「そら、これでも飲みながらゆっくり話そうぜ」
「そうね。隣座るわよ」
「応。今夜はその隅に座るんじゃないのか」
「私は別にそっちでも良いけど?」
「なんでもない。忘れてくれ」
「変な提督。ねぇ」
「なんだ」
「随分長い間、我儘言って……ごめんなさい」
「……」
「今更こんな事都合が良いかもしれないけれど。私艦娘続けたい」
「どうして?」
「皐月にね。ううん、皐月だけじゃない。三水戦の子達にね、忘れ物見つけて貰っちゃったから」
「そのマフラーか?」
「いいえ。私があの護衛任務の日に忘れてきた大切なもの。軽巡洋艦川内としての誇りと、私としての意地って奴。かな」
「また、捨てる事は出来るかもしれないぞ」
「そんな事できない。する訳ない。だって、これはあの子達が必死に私に見せてくれた想いだもの」
「賭けは、俺の負けだな」
「叢雲が言っていたわよ、それ。人をダシに賭けなんて酷い事するのね」
「実はな、お前がここを去ると決めていたら。俺も提督を引退しようと思っていた」
「え。それ本気?」
「あぁ、それだけ。お前には申し訳ないことをしたと思っていたんだ」
「なんで、なんで提督がそんな事思うのよ……」
「あのタンカー護衛の後からずっとだ。お前を腫物の様に扱ってしまっていた。自分はどうする事もできない。ならばきっと時間が解決してくれるだろうと、お前に全て投げてしまっていた。俺自身もそう思うし、叢雲にもそれで怒られてしまったよ」
「そんな事」
「無いなんて言わせないぞ。これは俺が背負った問題だ。消えるもんじゃない」
「なら、その償いはどうするの」
「そうだな。まだ考えている途中だ。そう簡単にどうこう出来る問題とも思えん」
「なにそれ」
「それに、お前もまだここに残るんだろう? 時間はある。一緒に考えてくれると助かるな」
「それなら、我儘一つ言ってもいい?」
「お、なんだ。言ってみろ」
「駆逐艦の子達のね。教官をやらせてほしいの」
「ほう。どうしてまた」
「吹雪達にね。言われたのよ。私の教える事を是非他の子達にも教えてあげて欲しいって。私もね、そういうのも良いかなって思ってさ」
「なら、今度神通や那珂や阿武隈も交えて話し合おう。この際誰がどの分野を教えるかすり合わせるのも良いかもしれん」
「そうだね。そうしてくれると嬉しいな」
「それとだな、川内。お前にもう一つ話があるんだ」
「もう一つ? 何?」
「近いうちにな。少し離れた所に新しい鎮守府が設立される事になった」
「へぇ。まぁここも結構重要な場所だもんね。でも、なんでそれを私に?」
「そこに配属される提督の面倒も俺が見る事になっているんだが、そいつの秘書艦をうちの駆逐艦から一隻出す事に決まった」
「ねぇ、それって」
「あぁ、ここからは相談なんだが。誰か良い奴はいないものか?」
「それ、分かって聞いてるでしょう」
「いや、そんな事はないぞ。あ、因みに叢雲は駄目だ。あいつがいないと俺が困る」
「流石に新人提督に叢雲は預けられないわよ。ストレスでつぶれてしまうじゃない。そうねぇ……まぁあの子なら適任といえば適任よね」
「誰だ?」
「本当にこの人は……私の推薦は……」
――演習場桟橋――
二日後。川内が夕暮れに演習場の桟橋に腰かけて待っていると、後ろから待ち人が歩いてきた。
「やぁ。今日は僕が待たせた番かな」
「私だっていつも待たせてる訳じゃないわよ、皐月」
「ははは。そうだね」
川内は皐月を桟橋に呼び出していた。
皐月が川内の横に腰かけると、川内は海に垂らしていたロープを引っ張り上げた。
その先には二本のラムネのビンが括られていて、海水に冷やされて飲み頃となっている。
「はい、皐月」
「ありがとう。これもいつかと逆だね」
「あぁ、遠征で綾波と喧嘩しちゃった後の事? そういえばあの時は皐月がこれ持ってきてくれたっけね」
「僕の時は手に持ってきたから少しぬるくなっちゃってたけど、っほっと。んぐっ、っぷはぁ。これは冷たくて美味しいや」
ラムネのビー玉を落とすと、皐月は一口飲んでから笑顔になる。
「ねぇ、皐月。私ね、皐月には感謝してるんだ」
「僕に? なんで」
「皐月には色々助けて貰っちゃったし、守って貰った。だから、ありがとうね」
「や、止めてよ! お別れするんじゃないんだからさ」
「もう少ししたらね。少し離れた所に新しい鎮守府が出来るんだって」
「へぇ。そうしたらここも少しは楽になるのかな?」
「今はまだ良いけど、これからこの鎮守府は北方海域方面とかにも進出をしていくから。今私達が守っている海域の守備の引き継ぎと、私達とは逆の海域の攻略の拠点にするんだって」
「そうなんだ。やっぱりそう簡単に楽させてくれないね。ははは」
「その鎮守府にくる提督も殆ど新人さんみたいでね、ある程度練度の高い駆逐艦を秘書官にうちから出す事になったの」
「……川内さん。別の話をしようよ。そういえば! 今日長月がね!」
「その秘書艦を誰にするかって提督に相談されてさ」
「可笑しいよね! 卯月だってそんな事しないのに! はははは」
「私はね」
「川内さん、止めてよ」
「皐月を推薦したんだ」
「川内さん!!」
「皐月……」
「なんでよ……。なんでだよ!! ようやく、ようやくこうやってお話できるようになって。相棒って言ってくれて!! これからもっとお互いの事話したいって思っていたのに!!」
「だからだよ」
「何がだからなの!!」
「私は相棒だと、親友だと思っているから。一番信頼できる子だと思うから推薦したんだ」
「……だけど」
「別にもう会えなくなる訳じゃないわ。なんなら休暇貰って私が会いに行く。提督に頼んで演習組んで貰えば私と訓練も出来る。それにね」
「……それになんだよ」
「私もこれから駆逐艦の子達の教官をやらせて貰える事になったの。その時にあの鎮守府の秘書艦は私の親友なんだーって自慢したい。あの皐月は私が育てた! だから君達も強くなれるって他の子達にも希望を与えてあげたいんだ。それを皐月に手伝って欲しいの」
「そんな事言ったって、僕まだそんなに川内さんに教わってないよ?」
「大丈夫よ。すぐって話じゃないし、まだまだ時間はある。足りないなって思ったら提督に駄々捏ねて少しくらい伸ばす事も出来る筈よ」
「ふふ、なんだよそれ。まるで子供じゃないか」
「それが私だもの。皐月が見つけてくれた川内よ」
「そんなの……ずるいや。そんな事言われたら断れ……ないじゃないか」
「あーもうまた泣いちゃって。本当に皐月は泣き虫ね」
「川内さんの……ひっぐ、前だけ。だもん」
「あ、そうだ。あっちの鎮守府に移動する時に合わせてマフラー新しいの作ってあげる! 皐月に合わせて色とかも変えてみる?」
「ううん。僕はずっとこれを使うよ」
「良いの? それ片方の端弾がこすれて汚れてるし、錆が着いて赤黒くなっちゃってるよ? 血が着いてるみたいに見えない?」
「良いの!! 川内さんが使ってた奴が良いの!! それでね、川内さんが僕を一人前だと認めてくれたら……その」
「そうだね!! その時に新しいマフラーを作って渡すよ」
「うん! それなら僕も頑張れるよ!!」
「お、泣き止んだなぁ!! 良し!! それじゃあ早速提督に話して皐月強化訓練のスケジュールを考えよう。本舎まで競争だ!!」
「へへん! 僕とやり合おうっていうの? 可愛いね!!」
「皐月の方が可愛いし!」
「なっ! なにおぅ!!」
「そこは絶対に譲れない!」
「うぅ……せ、川内さんのばかぁあああああ!!!!」
「あ、フライングだぞ皐月!! まてぇ!!!!」
その光景を横で見ている影が二つあった。
「ねぇ神通ちゃん」
「なんでしょう。那珂ちゃん」
「川内ちゃん。なんかちょっと見ない間に立派になったよね」
「そうですね。でも、なんででしょう。少し寂しい気持ちもあります」
「那珂ちゃんも。でもさ、やっぱ川内ちゃんはああやって元気な方が似合ってるよね」
「はい。私もこっちの姉さんの方が好きです」
「神通ちゃんの身体の調子が戻ったらまた三人で訓練したいね!」
「ふふふ。その時は二水戦・三水戦・四水戦合同でやりたいですね」
「それなら阿武隈ちゃんも呼んで一水戦二水戦対三水戦四水戦とかやろうよ!」
「良いですね。それならば早速その話を提督や阿武隈に持って行きましょうか」
「よし! そうと決まれば川内ちゃんを追いかけるぞ! まてぇええ!! 川内ちゃん!! 皐月ちゃん!!」
「あらあら、那珂ちゃんったら。待ってください!」
この鎮守府にはいくつかの名物がある。
落ちこぼれと称されていた川内型一番艦川内。
その軽巡洋艦を中心とした出来事や事件は、既に名物と言っても過言ではない程存在する。
その中でも一つ。
一隻の軽巡と一隻の駆逐艦が巻き起こした騒動はその先も当分語り継がれる事になる。
破天荒な二隻の始まりの物語として。
その先の二人の話は、また次の機会に記そうと思う。
――提督の手記より。
以上で完結になります。
最初から見て頂いた方々、途中から追いかけてきて頂いた方々。
ありがとうございました。
【お知らせ】
始めから見て頂いた方々、途中から追いかけてきて頂いた方々。
ありがとうございました。
なんとか一作目完結しました。
途中から大分内容変わった感がしますが、完結です。
最後の方駆け足気味になりましたが、次に続く形を取りました。
次の話は皐月が別の鎮守府で頑張る話です。
ですが、ここの川内も普通に出すので引き続き見に来ていただけたら幸いです。
また少し皐月編の書き為をしようと思います。
その間、もう一つの放置されていた川内SSを動かす事にします。
そちらの方も引き続き読んでいただけたら嬉しいです。
それでは、仕事の暇つぶしに描いた絵を張り付けてから数日後に依頼出します。
以下改善点やご意見など書いて頂けたら助かります。
お疲れ様でした。
【誘導】
川内「あれ、これ昔の私の写真……」
川内「あれ、これ昔の私の写真……」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1435253583/)
多分次回の皐月編の誘導もこっちで行うと思いますので、宜しくお願い致します。
このSSまとめへのコメント
やっぱり、川内は夜戦だな。