友「いっつも本読んでるね」 僕「・・・・・・」 (129)
僕「おねえちゃん」 従姉「・・・・・・」
僕「おねえちゃん」 従姉「・・・・・・」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1434029479/)
の続き?です。
完全に蛇足です。でも書きたいので立ててしまいました。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1434902693
母「私の仕事だって忙しいの」
父「うん・・でも急患が入ったら行かなきゃいけないんだよ」
母「ええ、そうでしょうね。でもそれで私だけがいつも犠牲になるのはおかしいよ」
父「うん・・・ごめん。でも行くよ」
母「・・・」
ガチャン
僕「・・・」
母「あ・・僕」
僕「おかあさん・・またおとうさんとけんかしたの?」
母「ごめんね。大丈夫だよ」
僕「・・うん」
***
母「そんなこと言って、僕はどうするの?誰があの子のご飯作るの?!」
父「ごめん・・・本当にごめん。今日はどうしても帰れそうにないんだ」
母「今日は私だって無理なの!」
父「今日だけお弁当とか買っておこう」
母「ダメよ!子供にはちゃんと作ってあげなきゃダメ!栄養が偏るわ!あなた医者なんだから分かるでしょ?!」
父「・・・」
僕「おかあさん!ぼく・・だいじょうぶだから・・だから・・けんかしないで・・ぐすっ」
母「・・・ごめんね」
父「・・・ごめん」
***
父「・・離婚しよう」
母「・・ええ」
僕「!やだ!だめ!りこんしちゃやだ!!うわあああああん!!」
母「僕!起きてたの?!」
僕「うわあああああああん!!」
母「よしよし」
僕「ぼくじぶんでごはんつくるから!だからやめて!うわあああああああん!」
父「・・・」
母「・・・ごめんね僕」
***
先生「皆さん、入学おめでとう!私がこの1年2組の担任の先生です!これから一年間よろしくね!じゃあみんな、自己紹介しましょうか!」
「じこしょうかいってなにー?」
先生「皆に、自分の名前とか出身の幼稚園とかを教えてあげるのよ」
「はーい!」
男「ぼくのなまえは男です!ようちえんは○○ようちえんです!すきなものはりんごです!」
女「わたしのなまえは女です!ようちえんは○○ようちえんです!ピアノをならっています!」
・・・
僕「・・・えっと・・ぼくのなまえは僕です・・・えっと・・△△ほいくえんしゅっしんです・・よろしくおねがいします」
ざわざわ
「△△ほいくえんてどこ?」
「しらなーい」
「オレもあいつしらない」
先生「はい、みんな静かにー!それじゃあこれから小学校の説明をしますねー!」
・・・
男「おまえさー、いえどこなの?」
僕「えっ?ぼく?」
男「うん」
僕「えっと・・●●だよ」
男「へーようちえんちがうから、とおいところなのかとおもった」
僕「・・・」
男「そとあそびいこうよ」
僕「あんまりうんどうすきじゃないんだ」
男「ふーん・・へんなやつ」
「男くん、そといこ!」
男「うん」
タッタッタ・・・
僕「・・・」
僕(・・ほんよもう)
***
「あ、せんせー、じゅぎょうさんかんだからおけしょうしてるー!」
先生「コラ!そういうこと言わないの///」
親たち「くすくすくす」
先生「・・授業をはじめます!///」
・・・
女「ねえねえ、僕くんのおかあさんてどのひと?」
僕「え?・・・えっと・・いないよ」
女「いいなー!なんでいなの?」
僕「おしごと・・いそがしいから」
女「ふーん」
先生「コラ、女ちゃんと僕君!授業中喋らないっ!」
僕「ごめんなさい」
女「ごめんなさい」
女「もー僕くんのせいでおこられちゃった!」
僕「ごめん」
・・・
先生「ねえ僕君、ちょっといい?」
僕「えっ?・・・なんですか?」
先生「僕君・・休み時間いつも本読んでるけど、お友達と外で遊んだりしないの?」
僕「えっと・・うんどうすきじゃないんです」
先生「・・そうなんだ。でもお友達と遊ぶことも大事だよ?」
僕「・・・はい」
先生「・・・」
僕「ぼく、もうかえってもいいですか?」
先生「あ、うん。引き留めてごめんね」
僕「・・・」
とたとたとた
先生(僕君・・お友達いないみたいね・・・なんとかしなきゃ)
僕「・・・」
ガチャ
僕「ただいま」
・・・
僕(てれびみよう)
先生「はいみんなー。今日は先生から新しい提案がありまーす」
みんな「?」
先生「みんな、放課後は公園とかで遊んでるでしょ?」
「うん!」
先生「公園に集まる時間がばらばらだと、一緒に遊べなくなっちゃう日もあるから、週に一回はみんなで同じ時間に公園に集まって遊ぶ日を作るのはどうですか?」
「そんなことしなくてもなんとなくみんな来るよー?」
先生「でも、みんなで集まったほうがいいでしょ?」
「うーん?」
先生「じゃあ早速、今日の放課後は3丁目の公園に4時に集まりましょう!」
「はーい」
先生「先生もお仕事終わったら行くからね」
「わーい!!」
先生「僕君」
僕「え?」
先生「僕君も、ちゃんと来てね?」
僕「・・・」
先生「みんなで遊ぶのもたまにはいいでしょ?ね?先生のお願い」
僕「・・・・はい」
男「あ、女ちゃんはやいね」
女「うん!」
男「みんなくるかな?」
女「うん、くると思うよ」
男「そういえば、あいつもくるのかな・・・えっとなまえなんだっけ・・あ、僕」
女「えー僕くんくるのー?」
男「僕のこときらいなの?」
女「だってぜんぜんしゃべらないんだもん。足おそいし」
男「あいつさーようちえんもちがうし、いっつもほんよんでるから、おれもぜんぜんしゃべったことないなー」
女「このまえやすみじかんにひとりであやとりしてたよ。なんか女の子みたいだよね」
男「げーあいつ、おんななんじゃないの?」
女「なによー!わたしだっておんなのこなのに!」
男「いや、女ちゃんはおんなのこだからいいじゃん」
僕「・・・」
男「あ・・僕」
女「あ・・・」
僕「えっと・・・ごめん・・・ぼく、きょうはかえるね」
たったった・・
男・女「・・・」
**
先生「遅れてごめんねー」
「せんせいおそい!」
先生「ごめんごめん!さ、いっしょにあそぼう!なにしてたの?」
「おにごっこだよ」
先生「そっかー今鬼はだれ?」
「わたしだよ!たっち!!」
先生「あ!やられた!もー!!」
「えへへへ!せんせいちゃんと10かぞえてね!」
先生「よーしみんな捕まえるぞー1・2・3・・・」
『~♪』
先生「あ、5時の鐘が鳴ったら今日はお終いにしましょう!みんな気を付けて帰るのよ」
「はーい!」
先生(・・・僕君こなかったのかな・・)
先生「あ、男君!」
男「え?なに?」
先生「今日、僕君って来なかった?」
男「えっ?!えっと・・・・こなかったです」
先生「そっか」
男「お・おれもうかえるね!」
先生「うん。車に気を付けるのよ」
先生(だめだったかなぁ・・)
先生「じゃあお給食の時間はおわりです」
「やったーやすみじかんだ!」
「ドッチボールしよー!」
僕「・・・」
とたとたとた・・
先生(あ、僕君も外に行くみたいね・・よかったあの後放課後遊びに顔出してないけど、僕君もきっとお友達作れたんだわ)
・・・
先生「・・・あれ?校庭に僕君いないわね・・・」
がらがら
僕「・・・」
先生「僕君?」
僕「えっ?」
先生「あ、驚かせてごめんね。外で遊んでたんじゃないの?」
僕「・・・としょ室で本かりました」
先生「・・そうなんだ」
僕「・・・」ぺら
先生「ねえ僕君」
僕「はい」
先生「放課後遊び、行ってる?」
僕「・・・・いえ」
先生「お外で遊ぶの嫌い?」
僕「・・・・」
先生「たまにはお外で遊ぶのも面白いよ?」
僕「・・ぼく・・・足おそいし、なかいい人いないから、みんなめいわくだとおもいます」
先生「・・・そっか」
「せんせいさようなら!みなさんさようなら!」
先生「みんな気を付けて帰ってね」
先生「あ、男君」
男「え?なに?先生」
先生「あのね、ちょっと相談があるの」
男「?」
先生「僕君ているでしょ?」
男「!!」
先生「僕君、放課後遊びに来てないみたいなの」
男「う・・・うん」
先生「もしよかったら、誘ってあげてくれない?」
男「えっ・・な・・なんでおれが?」
先生「男君お友達多いでしょ?ね?お願い」
男「う・・・うん」
男「ねえ、僕」
僕「・・・男君?」
男「先生が、ほうかごあそびに来なさいっていってた」
僕「・・・・うん」
男「・・・なんでこないの?」
僕「・・・・・ぼく・・みんなとあそんだことないし・・めいわくだよね?」
男「おまえさ・・・もしかしてこの前のこと先生に言ったの?」
僕「え?」
男「・・・」
僕「・・・言ってないよ」
男「・・・・もうおまえとしゃべんない」
僕「え・・・」
男「・・・」
たったった・・・
僕「・・・・・・」
先生「みなさん、今日で2学期はお終いですが、3学期から新しいクラスメイトが増えます!」
「ほんと?」
「おとこのこ?おんなのこ?」
先生「はいはい、3学期になったら分かりますから、それまでのお楽しみね」
「えー」
***
「せんせいさようなら!みなさんさようなら!」
先生「じゃあまた3学期ね」
「はーい」
先生「はぁ・・・」
同僚「どうしたの?今日でとりあえずは仕事終わりなのにため息ついて」
先生「いえ・・・うちのクラスに全然友達作れない子がいて」
同僚「もしかしてイジメ?」
先生「1年生だし、そういうのは無いと思うんだけど」
先生「ちょっと家庭環境が複雑な子でね・・なんていうか自分から他人と関わらないというか」
同僚「そっかー・・・それは難しいね」
先生「うん。ないか良い解決策無いかなぁ・・」
同僚「まぁとりあえずは一人でも友達作らないとね」
先生「私もそう思ってリーダー的な子にお願いしてみたんだけど、あんまり上手くいかなかったみたいなの」
同僚「うーん・・・なんかさ、その子自身にも問題あるんじゃない?」
先生「どうなんだろ?漢字とか覚えるの早いし、頭はいいみたいなんだけど、体育はダメみたいなのよね」
同僚「まあ小学生にとっては体育が一番重要だからなぁ」
先生「うーん・・・」
かちゃ
僕「・・ただいま」
『今日は11時過ぎるので先に寝てて。お金はいつものところに置いてあります。冷蔵庫にあるものは好きに使っていいですよ。おかあさんより』
僕「・・・」
ガチャ
僕「あ・・・ぎゅうにゅうない」
店員「いらっしゃいませー」
僕「・・・」
店員「アラ、ぼうやお使い?えらいねぇ」
僕「・・・」ぺこっ
僕「えっと・・ぎゅうにゅうと・・あとしょくパンもかわなきゃ」
女「ママ、このおかしもかって!」
女母「だーめ」
女「えー・・・あ」
女母「ん?」
女(僕がいる・・ひとりでかいものしてるのかな?)
女母「あら?もしかしてあの子友達?」
僕「!」
女「ち・・ちがうよ。しらない。あんな子」
女母「?そうなの?・・・まあとりあえずそのお菓子は戻してらっしゃい」
女「えー」
僕「・・・・・・・」
***
「おはよー」
「ひさしぶりー」
「どこかいった?」
「おんせんいったよ」
「いいなー」
がらがら
僕「・・・・おはよう」
みんな「・・・・」
僕「・・・」
**
ガラガラ!
先生「皆さんこんにちは!久しぶりですね!」
「先生おはよー」
先生「じゃあ、今日は朝のあいさつの前に転校生を紹介します」
「あ、そうだった」
「どんなこだろ?」
先生「友ちゃん、おいで」
友「みなさんはじめまして!あたしの名前は友です!お父さんの仕事のつごうで、九州からひっこしてきました!」
「おんなのこだ」
「かみ長くてかわいいね」
「きゅうしゅうってどこ?」
先生「はいはい。じゃあ友ちゃんは空いてる席だから・・僕君の隣に座ってね」
友「はーい!」
僕「・・・・・・」
友「よろしく!」
僕「・・うん」
先生「じゃあ朝の会を始めましょう。日直さん、号令!」
「きりーつ!」
「ねえ友ちゃん、きゅうしゅうってどんなとこ?」
友「あたしがいたとこは海のちかくだったよ」
「ねえともちゃんてけつえきがたは?」
友「Oがた!」
「家どこなの?」
友「えっとね●●のマンションだよ」
「たんじょうびいつ?」
友「1月××日」
僕「・・・(なんか、ぼくいないほうがいいな)」
とたとたとた
ぱたん
僕(としょ室いこう)
友「ねえねえ」
女「なにー?」
友「あたし、このあたりよく分からないから、ほうかごいっしょにあそぼう?」
女「うん、いいよー。あ、まいしゅう水ようびは“ほうかごあそび”って言うのがあってね・・・」
友「ふーんそういうのがあるんだ・・・あれ?」
女「どうしたの?」
友「いつのまにかとなりの席の子がいないなぁとおもって」
女「ああ・・・あいつへんな奴だから」
友「そうなの?」
女「うん。いっつもとしょ室にいるし、一人で絵かいたりあやとりしたりしてて、なんだか女の子みたいなやつだから」
友「ふーん」
先生「じゃあ次はこの引き算です」
友「うーん」
僕「・・・」かりかり
友「ん?あれ僕くんもうできたの?」
僕「え・・うん」
友「ひきざん分からないの。おしえて」
僕「どれ?」
友「13ひく7。ゆびがたりない」
僕「えっと・・・ノートに13こマルかいてみて」
友「え?・・・うんかいたよ」
僕「7こぬりつぶしてみて」
友「うん・・・あ、のこりは・・えっと6こ!」
僕「うん」
友「ありがとう!」
僕「え?」
友「?」
僕「あ・・・えっと・・うん。ありがとう」
友「それって“どういたしまして”じゃないの?」
僕「あ、うん。ドウイタシマシテ」
友「ふふっ、へんなしゃべりかた」
僕「うん・・あんまり言わないから」
友「ふーん?あ・・今日のひるやすみいっしょにあそぼうよ!」
僕「え・・・ぼく・・外であそぶのにがてだから」
友「外じゃなくてもいいよ」
僕「え・・えっと・・うん。でもほかの子とあそんだほうがいいよ」
友「なんで?」
僕「・・・だって、」
先生「こらー!授業中は喋らないの!」
僕「ごめんなさい」
友「ごめんなさい!」
キーンコーンカーンコーン
「きりーつ!れい!」
「ありがとうございました!」
僕「・・さっきはぼくのせいでおこられちゃってごめん」
友「え?べつに僕君のせいじゃないでしょ?」
僕「・・・」
女「友ちゃーん!」
友「あ、女ちゃん。なに?」
女「あそぼー!」
友「うん!あ、僕くんもいっしょにあそぼうよ」
僕「え?」
女「・・・」
僕「ぼく、いいよ。いくとこあるし」
友「え?そうなの?」
僕「・・・・じゃあ」
とたとたとた
友「・・・」
ガラガラ
友「・・・」
とたとたとた
友「みーつけた!」
僕「わっ!!」
友「としょ室にいたのかー何よんでるの?」
僕「え・・えっと、え本とか図かん」
友「ふーん・・あたしもいっしょに見ていい?」
僕「え?」
友「いいでしょ?」
僕「・・・じぶんがよみたいもの、よんだほうがいいよ」
友「あたしはその本がよみたいの!」
僕「じゃあぼくもういいから、はい」
友「もう!」
僕「ぼくはべつの本かりてきょう室もどるよ」
友「なんでいっしょにあそんでくれないの?」
僕「・・・・ぼくといっしょにあそんでたら、友ちゃんもきらわれちゃうよ」
友「え・・・?」
僕「・・・ごめんね」
がらがら
友「・・・」
女「あ、友ちゃん来たんだ!」
友「うん!けっこうみんな来るんだね」
女「うん。さいしょは先生もきたんだけど、さいきんはぜんぜん来ないよ」
友「ふーん」
女「おにごっこしよう!」
友「うん」
「友ちゃん足はやい!」
友「ふふん!」
女「友ちゃんて男君より早いんじゃない?」
男「きょうそうする?」
友「のぞむところだ!」
男「ひきわけかぁ」
女「らいねんのスポーツテストでしょうぶだね」
男「負けないぞ!」
友「あたしだって!」
・・・
友「ねえ、女ちゃん」
女「なに?」
友「となりの席の僕くんてきらわれてるの?」
女「え?僕?」
友「うん」
女「なんかさ、あいつチクリまってうわさだよ。それに男のくせに女みたいでしょ」
友「そうかなぁ?」
女「そうだよ。友ちゃんもあんなやつのとなりでかわいそうだよね。早くせきがえすればいいのに」
友「うーん」
ガラガラ
友「・・・いない」
図書委員「どうしました?」
友「なんでもないです」
ガラガラ
図書委員「?」
僕「・・・」ぺら
タッタッタッタ!
友「みつけた!」
僕「!」
友「なんでこんなとこにいるの?」
僕「・・・だって・・友ちゃんがさがすんだもん」
友「おくじょう入れるの?」
僕「・・・はいれないからかいだんにすわってるの」
友「そっか・・よいしょ」とす
僕「・・・ぼく、教室行くよ」
友「まって」
僕「・・なに?」
友「なんでみんなといっしょに遊ばないの?」
僕「・・ぼく、みんなにきらわれてるの。わかるでしょ?」
友「べつにあたしはきらいじゃないよ」
僕「まえに言ったでしょ?ぼくとあそんでたら、たぶんきみもきらわれちゃうから」
友「・・・みんなにきいたら、僕くんていつもひとりで女の子みたいな遊びしてるからいやなんだって」
僕「・・・聞いたんだ」
友「もっと外であそべばいいんじゃない?」
僕「ぼく、走るのにがてだし、みんなのあしでまといになるから」
友「・・・」
僕「・・・」
友「・・よし、そっちがそういうつもりなら」
僕「え」
友「ふふふ」
僕「???」
今日はここまでにします。
おやすみなさい。
こんばんは
恥ずかしいので一気に書いて一気に投稿です
「おはよー」
「おはよー」
僕「・・・」ぺら
「あれ?かみ切っちゃったの?」
「うん、じゃまだったから」
「へーもったいない」
僕「・・・え?」
友「よっ!」
僕「え・・友・・ちゃん?」
友「おはよ!」
僕「・・かみ切ったんだ」
友「うん。かっこいいだろ?」
僕「う・・うん」
「おはよー」
「おはよー」
僕「・・・」ぺら
「あれ?かみ切っちゃったの?」
「うん、じゃまだったから」
「へーもったいない」
僕「・・・え?」
友「よっ!」
僕「え・・友・・ちゃん?」
友「おはよ!」
僕「・・かみ切ったんだ」
友「うん。かっこいいだろ?」
僕「う・・うん」
友「今日からは休みじかんになったら、ようしゃなく僕を校庭につれ出すからな!」
僕「え?!」
友「あ、オレのこともよびすてでよんでいいから」
僕「え?!・・・えっと・・やっぱり悪いからちゃんづけにするよ」
友「ダメだ。せめてくんづけ」
僕「え・・えー・・・それじゃ男の子みたいだよ」
友「べつにいいだろ!」
僕「・・・」
女「あ、友ちゃんおはよー。かみ切ったんだ」
友「うん!いいだろー?」
女「ん?友ちゃんどうしたの?」
友「なにが?」
女「なんか男の子っぽいよ」
友「その方が楽なんだもん!これからはオレのこと、くんづけかよびすてでよんでよ!」
女「えー?!」
***
先生「みなさんおはようございます!来月は校内マラソンがありますね」
僕(・・やだなぁ)
先生「マラソンに向けて、みんなでお昼休みは校庭を走りましょう!」
「えー」
「やだー」
先生「まあどうしても嫌だったらいいけどね。でも先生も走るからみんなも頑張ろう」
「はーい」
友「・・・」ニヤリ
僕「げ」
キーンコーンカーンコーン・・
僕「・・・」そー・・
友「まて」がし
僕「う」
友「校庭いくぞ」
僕「・・・」
友「男も女もいっしょに行こう!」
男「うん」
女「・・・」
僕「はぁはぁはぁはぁ・・・・」
友「・・・男もじきゅうりょくはないなー」タッタッタッタッタ
男「・・・くそーオトコオンナめ!」タッタッタッタッタ
女「二人ともはやいよー」
友「こら僕、もっとほんき出してはしれ!」
僕「はぁ・・はぁ・・・ほんきなんだけど・・・はぁ・・はぁ・・」
男「・・・」
女「・・・」
先生「・・・」
***
先生「じゃあ今日は算数の宿題を出します」
「えー」
「さんすうきらーい」
先生「分からないところがあったらお家の人か分かる人に聞いてもいいですよ」
「はーい」
友「僕ーおしえて」
僕「・・いいよ」
友「じゃあほうかご、としょ室だな」
僕「うん」
「せんせいさようなら!みなさんさようなら!!」
女「ねー友、しゅくだいいっしょにやろう?」
男「あ、オレもやる」
友「よし!としょ室行こう!」
がらがら
僕「・・・え」
男・女「・・・あ」
友「じゃあやくそくどおりしゅくだいおしえて!」
僕「え・・あ・・うん」
男「えっと・・オレ・・」
友「男もいっしょにおそわればいいじゃん」
男「あ・・うん」
友「女もね」
女「・・・うん」
僕「えっとね・・・10こえる計算のときは、10でいったんとめればいいとおもうよ」
友「どういうこと?」
僕「たとえば9たす8は、まず9たす1をして10。そのあとのこりの7をたして17にするの」
男・女(・・わかりやすい)
友「そっか!」
僕「えっと・・たぶんこのやりかたで今日のしゅくだいはできると思うから・・その・・やってみようよ」
みんな「うん」
かりかりかり・・
友「できた!」
女「私もできた」
男「ちょっとまって・・・オレもできた!」
僕「みんなで答え合わせしてみる?」
みんな「うん」
・・・
女「みんないっしょだね」
友「じゃあみんなあってるかな?」
僕「・・・たぶん」
男「よかったーオレだけできてないかとおもった」
***
僕「・・・じゃあもうかえる?」
友「うん。僕、ありがとう!」
僕「あ・・・うん」
男・女「・・・」
男「ありがとう」
女「ありがとう」
僕「あっ・・・うん・・」
男「・・・・それと・・・ゴメン」
僕「え?」
男「ほうかごあそびの時・・ごめん」
女「私も・・ごめん・・・うっ・・・うわーん!!」
友「えっ?!なにどうしたの??」
僕「えっと・・・ぼく、だいじょうぶ。きにしてないから」
男「ごめん。もう、むししたりしないよ」
女「・・・ごめん・・うえっ・・ごめんね・・ひっく」
僕「な・・泣かないで・・」
友「???」
***
男「じゃあ、またあした!」
女「バイバイ!」
僕「うん」
友「ばいばい!」
僕「・・・」
友「僕、いえちかかったんだな」
僕「・・・うん」
友「もしかして知っててかくしてた?」
僕「・・・」
僕「・・・だって、言ったらいっしょに帰るとか言いそうで」
友「イヤなのかよ!」
僕「・・・ぼくといっしょに歩いてたら、友くんもみんなにきらわれちゃうと思って」
友「そんなことないだろ」
僕「・・・ねえ」
友「ん?」
僕「・・・ありがとう。友くんのおかげで仲直りできた」
友「ん?けんかしてたの?」
僕「・・・わかんない」
友「なんだそれ」
僕「・・・ふふっ」
友「へんなやつ」
友「なぁ、これから僕のいえあそびに行っていい?」
僕「え?・・・うーん・・」
友「イヤなのか?」
僕「いやじゃないけど、来てもつまんないと思う」
友「もしかして、お前のお母さん怖いの?」
僕「ううん、お母さん仕事だからだれもいないよ」
友「そーなんだ」
僕「ぼく、ゲームとかもってないし」
友「べつにいいよ」
僕「本しかないよ」
友「うーん・・じゃあいったん帰ってそのあとこうえんにしゅうごうな!」
僕「うん」
*****
・・・
友「やっと合流だな」
僕「うん。また2年間よろしく」
女「あ、友!また一緒のクラスだね」
友「うん!」
僕「先生来たよ」
担任「みんな、席つけー」
「はーい」
担任「俺が5年1組担任だ。2年間よろしくなー」
男「先生、6年生のときはクラス替えないの?」
担任「うん。だから今いるみんなで卒業まで一緒だ。みんな仲良くな」
担任「じゃあ早速だけどクラスの委員決めようか。5年生からはみんな何かしらの委員会入んなきゃダメだからな」
「えー」
「めんどくせー」
担任「まず学級委員だけど誰か立候補いないか?」
「・・・」
担任「じゃあ先生が勝手に決めるぞ。えっと・・・僕、やってくれないか?」
僕「・・・えっと」
「お前やればいいじゃん」
「そうそう」
担任「お願いできないか、僕」
僕「・・わかりました」
担任「うん、じゃあ頼むぞ」
僕「・・はい」
友「なー僕、何の委員が楽だと思う?」
僕「え・・・分かんないよ」
担任「こら、友、楽なのを探すな」
友「あはは」
男・女「・・・」
キーンコーンカーンコーン・・・
男「大変だな」
僕「うん、しょうがないよ」
男「まあでも僕頭いいし、一番合ってるんじゃないか」
僕「そんなことないよ」
友「おい、みんなクラブ何入る?」
女「私はボール運動かな」
男「オレはまだ決めてない」
友「ふーん・・僕は?」
僕「えっと・・理科クラブかな」
男「友は陸上?」
友「どうしよっかなー・・」
女「じゃあ私たちこっちだから」
男「じゃーな」
友「また明日ー」
僕「うん」
友「オレも理科にしようかな」
僕「え?もったいないよ。足早いのに」
友「なんだオレと一緒はイヤかよ?」
僕「そんなことないよ」
友「じゃあいいだろ!」
僕「うん。友くんがそれでいいならいいよ」
友「お前が部長になって楽なクラブ活動にしてくれよ」
僕「もう!」
友「あははは!」
僕「・・・友くん」
友「ん?」
僕「いつもありがとう」
友「急になんだ?」
僕「うん・・・なんとなく」
***
ミーン
ミーン
ミーン・・
友「なー、夏休みの宿題もう終わった?」
僕「うん、日記以外は終わったよ」
友「よし、写させて!」
僕「もう、自分の力でやらないとダメだよ」
友「じゃー僕が教えてくれよ」
僕「いいよ」
友「じゃあこれから僕んち行っていい?」
僕「うん、あ、ヒマワリに水あげなきゃ。その後でいい?」
友「ヒマワリって学校の?」
僕「うん」
友「お前、生物係じゃないだろ?」
僕「うん。だけど生物係の人、みんな忙しいみたいだし、僕家近いから」
友「それって押し付けられてるって事だろ。オレが言っておいてやろうか?」
僕「いいよ!僕好きでやってるし」
友「そうか?・・・うーん・・・じゃあ今日からはオレもいっしょに水やりするよ」
僕「え?悪いよ」
友「いいの!オレも好きでやるんだから!」
僕「・・ありがとう」
友「そのかわりに宿題な!」
僕「あはは」
ジャーーッ
友「もう一回かな?」
僕「うん。僕、ジョウロに水入れてくるね」
友「おう」
・・
僕「~♪」
友「あー・・・暑いなぁ」
僕「夏だからね」
友「ヒマワリってさ種食べられるんだっけ?」
僕「ハムスターとかのエサなんじゃないの?」
友「そうだよなーなんかいっぱい種取れるのになぁ」
僕「ヒマワリってなんか他の花と違うよね。種の付き方とか」
友「うん。でもオレ、ヒマワリって結構好きなんだ。でっかくて、他の花みたくなよなよしてなくて」
僕「うん。ヒマワリって、なんだか友くんみたいだよね」
友「ん?そうか?」
僕「うん」
友「ふーん」
僕「そういえば今年も岩手行くの?」
友「ん?分かんない。涼しいからオレは行きたいけど」
僕「うん」
友「お前こそ行かないの?えっと・・ナントカ島」
僕「あ・・うん。特に行く用事もないし」
友「ふーん。じゃあ2年生の時行ったっきり?」
僕「そうだね」
友「なんかあの時も、お前あんまし教えてくれなかったけど、どんな島なんだっけ?」
僕「えっと・・海がきれいだったよ」
友「じゃあ泳いだのか?」
僕「泳いでないよ・・2年生のときは泳げなかったし」
友「そういやそうだったなー」
友「・・・」
僕「どうしたの?」
友「ん・・いやなんでもない」
僕「?」
友「もう昼だからさ、ご飯食べたらお前んち行くよ」
僕「うん」
友「算数と社会持ってく」
僕「うん。どこまでやったの?」
友「・・・」
僕「全然やってないんだね」
友「あたり」
僕「もう・・夕方までかかると思うけど今日中にやっちゃおうね」
友「え?!今日中に終わるか?!」
僕「終わらせるの」
友「は、はーい・・あ、終わったら花火やろうぜ」
僕「うん、いいね」
***
友「布団敷いたぞ、室長!」
僕「うん。明日早いんだからまくら投げはなしだよ。じゃあ電気消すね」
かちっ
・・・
「くらえっ!」
ぼふっ!
友「ふっふっふ・・いい度胸だな!」
僕「あ、こら」
友「くらえええ!」
ばふっ!!
「オトコオンナが怒ったぞ!!」
「押し入れから枕出すぞ!」
「あんたたちいい加減にしなさいよね!」
わーわー
僕「・・・あーあ」
「おい先生来たぞ!」
「やばいっ」
ささっ
ガラガラ!
担任「こら!・・・あれ?」
僕「ん・・・なんですか先生?」
担任「あ、ここは室長僕か。今騒がしかったかと思ったんだが」
僕「もうみんな寝てますよ。隣のコテージじゃないですか?」
担任「ん?そうか・・起こしてすまん」
僕「いえ・・おやすみなさい」
先生「おやすみ」
がらがら
「僕、ナイス」ぼそ
僕「・・・もう寝ようよ。また先生来るから」
「そうだな」
「おやすみー」
友「ナイス演技」ぼそ
僕「もう・・寝るよ。明日早いんだし」ぼそ
友「えーもうちょっと喋ろうぜ」ぼそ
僕「うるさくしたら他のみんなにも迷惑だよ」ぼそ
友「うーん・・じゃあそっち行く」ぼそ
もぞもぞ
僕「・・・」
友「・・・」
友「林間学校って面白いな」
僕「まくら投げは行事の一部じゃないよ」
友「一泊なのがつまらないよな。もっと長くやればいいのに」
僕「うん、確かにそうだね。でもずっとカレーってわけにもいかないよ」
友「ハハハ・・そうだな」
僕「それに、来年は修学旅行あるし。確か日光じゃなかったけ?」
友「あ・・・・うん、そうだな」
僕「?」
友「・・・」
僕「修学旅行でも同じ部屋になったとしたら、まくら投げは絶対禁止だからね」
友「・・・うん」
僕「?」
友「・・・」
僕「どうかしたの?」
友「・・・」
友「あと一年とちょっとしたら、オレたち中学生だな」
僕「うん」
友「お前はどこの中学行くの?」
僕「わからないよ」
友「・・・やっぱり受験すんのか?」
僕「わからないよ・・・でもあんまり遠くには行きたくないなぁ」
友「そうなのか?」
僕「だって・・・友くんとあんまり遊べなくなっちゃうし」
友「・・・」
友「お・・お前頭いいんだから私立とか行けばいいじゃん」
僕「うーん・・・あんまり考えてないなぁ」
友「だって、そのために塾とか行ってるんだろ?」
僕「本当は僕はあんまり行きたくないんだけどね」
友「と、とにかくさ、オレのことなんか気にしないでいいところ行けよ」
僕「・・・僕にとってはそんなことよりも友達と一緒の学校がいいよ・・・友くんが嫌ならしょうがないけど」
友「ち・・違うって!そうじゃない!」
僕「?」
友「だって・・お前、前言ってじゃん医者になりたいって。いいとこの学校行かなきゃいけないんだろ?」
僕「うん・・・でもお母さんは反対するかもしれないし・・」
友「え?なんで?」
僕「・・・うん。まあ色々あって」
友「?」
僕「あ・・あのさ」
友「ん?」
僕「こんな事言う機会無いから今言っちゃうけど」
友「?」
僕「いつもありがとう」
友「え?何が?」
僕「僕さ、友くんが友達でいてくれるから学校楽しいよ」
友「な・・何言ってんだバカ」
僕「僕さ、あんまり友達いないでしょ」
友「そんな事無いだろ。男とか女とか」
僕「うん。男君も女さんも友くんのおかげで友達になれた」
友「そうだっけ?」
僕「うん・・・でも本当の意味で友達なのはたぶん友くんだけだよ」
友「そ・・そんなことねーよ」
僕「クラスで、みんながいる中で、僕にどうでもいい話してくれるのって友だけだもん」
友「え?どういうこと?」
僕「男くんとか女さんとかはクラブのときとか、他に人がいないときは話しかけてくれるけど、クラスの、他の人がいるときに話しかけてくれるのは友くんだけ。クラスでは友くん以外の人は勉強とか委員会のこととかは話してくれるけど、遊びのこととか昨日のテレビのこととか話してくれるのは友くんだけだよ」
友「・・・考えすぎだろ」
僕「僕体力ないし、面白いこと言えないからしょうがないんだけどね。だから、僕に遊ぼうって言ってくれるのは友くんだけ」
友「・・・」
僕「だからね、いつもありがとう」
友「・・・お前も、みんなに遊ぼうよって言えばいいんだよ」
僕「・・うん、そうだね」
友「中学行ったら他の小学校のヤツとかも入ってくるんだぞ」
僕「うん」
友「もしかしたら、オレは・・・・・お前と同じクラスになんないかもしれないんだぞ」
僕「うん・・確かにそうだね」
友「そしたらお前、友達とか作らずにずっと本読んでるだろ」
僕「そうかも」
友「・・・そもそも違う中学かもしれないだろ」
僕「・・・それは嫌だなぁ」
友「・・・・」
僕「?」
友「とにかく!お前、もっと自分から人に話しかけろ!」
僕「うん・・・頑張るよ。心配してくれてありがとう」
***
僕「おはよう。寒いね」
友「・・・」
僕「友くん?」
友「あ・・・ああ僕!」
僕「おはよう・・・どうしたの?」
友「えっと・・・いや・・うん」
僕「今日で2学期終わりなのに元気ないの珍しいね・・・もしかしてカゼひいた?」
友「い・・いや、そうじゃないよ」
僕「あ、じゃあ冬休みの宿題の事心配してるんでしょ」
友「あ・・・うん。そんなとこ」
僕「もう、じゃあまた一緒にやろうよ」
友「う・・うん」
僕「?」
担任「じゃあこれで2学期最後の授業は終わりだ」
「やったー」
担任「喜んでるとこ悪いけど、もう一個宿題な」
「えー!」
「やだー」
担任「勉強じゃないから安心しろ・・・紙配るぞ」
・・・
担任「よし、みんなにいったか?」
「ありまーす」
「白紙だよ」
「絵を描くの?」
担任「それにはな、将来の夢を書いてくるんだ」
「将来の夢?」
「書初め?」
担任「いやいや、そうじゃなくてな、例えば野球選手になりたいとか、スチュワーデスになりたいとかだよ」
「えーじゃあこんな大きな紙いらないよー」
担任「書き方は自由だけど、なりたいものだけじゃなくて、なんでなりたいかとか、それがどんな仕事なのかを自分で調べたり、考えたりして書いて来なさい」
「なんかちょっと面倒だなぁ」
担任「こらこら!・・で、それで書き終わったら必ずお父さんかお母さんに見てもらって、一言書いてきてもらいなさい」
「えっ恥ずかしい!」
「やだよー」
担任「ちゃんと見てもらうんだ。でないと仮面ライダーとか書く奴いるだろうからな」
「えっ?!仮面ライダーだめなの?!」
「書こうと思ったのにー!」
担任「まあ冬休みは短いからそんなに宿題ないだろ。じっくり考えてきなさい」
僕(・・・将来の夢かぁ)
担任「じゃあこのまま帰りの会やっちゃっていいかな?」
担任「・・・じゃあこれからプリント配るからな。家に帰って必ずお母さんに見せること」
「はーい」
担任「じゃあこれで終わりかな。休みだからってあんまり遅くまで起きてるなよ」
「はーい」
担任「じゃあ挨拶しようか・・・あ、そうだその前に、友、前に来て」
友「・・・はい」
担任「友はお父さんの仕事の関係でな、この2学期を最後に転校することになった」
「えー?」
「うそ?知らなかった!」
「友行っちゃうの?!」
僕「・・・・・え?」
担任「・・・じゃあ友、みんなに挨拶しな」
友「・・・この1年間ありがとう。えっと・・・三学期からは▼▼県の学校に行きます。みんなといっしょに卒業できないの残念だけど、4年間とても楽しかったです」
担任「・・うん、ありがとう。戻っていいぞ。じゃあこれで帰りの会は終わりにしよう。日直」
「きりーつ!」
・・・タッタッタッタッタ
友「・・・待って!!」
僕「・・・」
友「ゴメン!!怖くて・・・どうしても言えなかったんだ!!・・・本当にゴメン!!」
僕「・・・いつ・・行っちゃうの?」
友「・・明後日」
僕「・・・」
友「・・・今日、これから時間ある?」
僕「・・・うん」
友「裏山行こう」
僕「うん」
友「・・・懐かしいな」
僕「・・うん」
友「よく休み時間抜け出してここで遊んだよな」
僕「・・うん」
友「・・・」
僕「・・・友くん」
友「うん」
僕「・・・ごめん・・僕・・・ずっと友くんに頼りっきりだったね」
友「・・・え?」
僕「僕・・大丈夫だから。友くんがいなくてもちゃんと友達作るから」
友「な・・なに言ってんだよ」
僕「あのね・・僕、知ってるんだよ」
友「何を?」
僕「友くんの作文とかこっそり見たことあるから」
友「・・・え?」
僕「僕が・・女の子っぽいって言われて仲間はずれにされてたから、友くんが男の子っぽい格好して、男の子っぽい言葉づかいしてくれたんでしょ?」
友「そ・・・それは」
僕「作文の中では“私”だったよね」
友「あ・・あれはそう書かないと先生に色々言われるから・・」
僕「これから・・・友くんが転校先で・・それでいじめられたりしたら僕、つらいから」
友「・・・」
僕「だから、前みたく普通の女の子みたく髪伸ばして、スカート履いて、女の子らしい言葉づかいに戻って」
友「・・・オレは・・そんなつもりじゃ・・」
僕「僕、もう大丈夫だから。友・・ちゃんのおかげで、僕、もう大丈夫だから。だから安心して、転校して」
友「・・・僕」
僕「僕ね・・・僕の両親て離婚してるの」
友「・・・え?」
僕「だから僕のお母さんって働いてて、僕が起きてる時間はほとんど家に居ないの」
友「・・・そうだったんだ」
僕「小学校上がった時、僕だけみんなと違う保育園だったし全然友達出来なかった。だから学校にいても家に居ても、僕は一人ぼっちだった」
友「・・・」
僕「だから、友ちゃんが・・・僕にとって学校で初めてできた友達で・・友ちゃんのおかげで学校にいる間は一人ぼっちじゃなくなったんだ」
友「・・・」
僕「だから僕、すごく感謝してるんだ・・・何にも恩返しできなかったけど・・・せめて次のところで友ちゃんが幸せであってほしい」
友「僕・・・オレ・・あ・・あたし・・」
僕「僕はもう大丈夫。ありがとう・・・本当にありがとう。ずっと元気でいて」
友「うん・・・うん・・ゴメン・・・言えなくてごめん・・・うっ・・うっ・・」
***
ガチャ
母「・・・」
僕「お母さん、お帰り」
母「あれ?起きてたの」
僕「うん。年末なのに遅くまでお疲れ様」
母「うん、ありがとう」
僕「あのさ、お母さんに見てもらわきゃいけない宿題があるの」
母「え?いいよ。どれどれ」
僕「“将来の夢”を書いて先生に提出するんだけど、お母さんに見てもらって一言書いてもらわなければいけないの」
母「うん・・どれどれ・・」
僕「・・・」
母「・・・・僕」
僕「なに?」
母「冗談でしょ?」
僕「本気だよ」
母「やめなさいよ、医者なんて」
僕「なんで?」
母「医者なんて忙しくて大変だし・・・碌な人いないわ」
僕「お母さんの仕事だって忙しくて大変でしょ」
母「そうだけど」
僕「お母さん、お父さんは関係ないよ」
母「!!」
僕「僕、お母さんがどういう理由でお父さんと離婚したのかなんて知らない。そんな事とは関係なくなりたいんだよ」
母「でもっ!!ダメよ!!医者に・・なるにはお金もかかるし・・・お母さんはあなたを医者にしたくないの!!」
僕「お母さん、泣かないでよ」
母「泣いてないわよっ!!ううっ・・」
僕「泣いてるよ。少し冷静になってよ」
母「・・・やめてよ。お願い」
僕「お母さん」
母「え?」
僕「泣かないで」
母「・・・僕」
僕「泣いたって、他の人の気持ちは変えられないんだから」
母「・・え?」
僕「僕が泣いても・・・お父さんとお母さんは離婚したでしょ」
母「!!」
僕「・・・とにかくこれお母さんに書いてもらわないと、僕冬休みの宿題提出できないから。冷静になったらお願いね」
母「僕・・」
僕「じゃあ、僕先寝るね。おやすみなさい」
パタン
僕(・・・やっぱりお母さんは反対したかぁ・・)
僕(・・・とりあえずもう寝よう)
僕「・・・」
トゥルルルルルルルル!!
僕(・・・ん?何だろうこんな時間に・・)
「はいもしもし・・・え?!」
「うそっ!・・・うん・・・うん・・わかったわ」
「だいじょうぶ・・・タクシーで行くから・・・うん」
僕(・・・なんだろう?)
ガチャ
母「僕!」
僕「え?」
母「これから病院に行くからすぐに着替えて」
僕「え?」
母「お母さんが・・倒れたらしいの」
僕「・・・おばあちゃんが?」
母「ありがとうございます」
タクシー運転手「はい、××円です」
僕「お母さん、おばあちゃん飛行機で来るの?」
母「違うよ。ヘリコプターで来る」
僕「え?」
母「とりあえず行こう」
僕「う、うん」
医者「あ、ご親族の方ですね」
母「はい・・お母さんは大丈夫ですか?!」
医者「とりあえずはヘリの中で応急処置をしましたが、これから手術になります。おそらく3時間以上かかります」
母「会えませんか?!」
医者「すぐに手術が始まりますので」
母「待っていていいですよね!」
医者「はい。こちらの病室でお待ちください。長くなると思いますので仮眠をとられても大丈夫です」
母「僕、私は手術室の前の椅子にいるから。あなたは病室に居て」
僕「う、うん」
母「お金、渡しとく。飲みものとか買いなさい」
僕「うん」
母「何かあったら言いに来て」
タッタッタッタ・・
僕「・・・」
ガチャ
従姉「・・・あ」
僕「わっ!」
従姉「僕・・だよね?久しぶり・・大きくなったね」
僕「な・・なんでいるの?」
従姉「付き添い。お父さんとお母さんは明日もお仕事があるから」
僕「・・・うん・・おばあちゃん大丈夫なの?」
従姉「昨日から手がしびれるって言ってたの・・」
僕「・・うん」
従姉「とりあえず座ろう」
従姉「初めてヘリコプター乗ったよ」
僕「・・うん」
従姉「島ではね、急病人がいるとヘリコプターで東京の病院まで行くことがあるの」
僕「そうなんだ」
従姉「ごめんね・・びっくりしてるよね」
僕「・・うん」
従姉「・・・私も・・・正直言うと怖い」ぶるぶる
僕「・・・従姉おねえちゃん・・」
従姉「手、繋いででていい?」
僕「うん」
従姉「・・」
ぎゅっ
・・・
ここまでにします
つづきです。
僕「おねえちゃん」
従姉「うん」
僕「僕、飲みもの買ってくる」
従姉「うん」
・・・
僕「はい」
従姉「ありがとう」
僕・従姉「・・・」
従姉「・・・長いね」
僕「3時間ぐらいかかるって言ってたよ」
従姉「うん」
僕「寝ててもいいって言ってた」
従姉「うん、大丈夫」
・・・
僕「いつまでこっちにいるの?」
従姉「分からない」
僕「ずっと病院にいるの?」
従姉「え?僕の家に泊めてもらうって話だと思ったけど」
僕「あ、そうなんだ」
従姉「聞いてなかった?」
僕「うん」
・・・
僕「僕、ちょっと見てくる」
従姉「あ、私も行く」
僕「うん」
・・・
僕「お母さん」
母「僕、従姉ちゃん」
従姉「・・」ぺこっ
僕「どんな感じ?」
母「さっき一回医者が出てきた。とりあえずうまくいってるみたいなこと言ってたわ」
僕「そうなんだ。良かった」
母「・・・」
ガチャ
母「!」
医者「まだ途中ですが、とりあえず大丈夫そうです。今縫合の段階に入りましたので」
母「助かったんですか?!」
医者「とりあえずは。ただ場所が脳ですので今後何らかの障害が出るかもしれません。それは○○さんが起きてからでないと何とも言えません」
母「・・はい」
医者「これから容体が急変するということはありませんので、もう休まれても大丈夫ですよ」
母「はい・・ありがとうございます」
医者「病室で休まれますか?」
母「いいですか?」
医者「ええ。ですが3人寝るのはちょっと狭いと思いますし、子供さんたちは帰られたほうがいいかもしれないですよ」
母「そうですね・・僕、タクシーで従姉ちゃんと帰っててくれる?」
僕「あ、うん」
母「じゃあお金渡すわ。私、明日はここからそのまま仕事行くから。明日どうするかはまた電話するわ」
僕「うん」
従姉「叔母さんも無理しないでください」
母「うん、ありがとう」
・・・
ガチャ
僕「ただいま」
従姉「お邪魔します」
僕「・・・もう4時近いね」
従姉「うん」
僕「僕・・結構眠い」
従姉「うん、私も」
僕「ここ、お客様用の部屋・・・大昔はお父さんの部屋だったけど」
従姉「・・・うん」
僕「お布団出すね」
従姉「・・・あ」
僕「?」
従姉「・・・怖いから一緒に寝てもいい?」
僕「え?僕の部屋で寝るの?」
従姉「うん」
僕「・・いいけど」
**
僕「・・・ん」むくり
従姉「・・・すー・・すー・・」
僕「・・・おねえちゃん・・・もう11時過ぎだよ」
従姉「・・・う・・ん・・・・わっ!」
僕「?」
従姉「お・・おはよう」
僕「おはよう」
従姉「・・・起きよっか」
僕「うん」
・・・
従姉「ごちそうさま」
僕「ごちそうさま」
従姉「僕、ほんとにちゃんと料理出来るんだね」
僕「自分の分、自分で作ってるだけだから」
従姉「うん」
僕「おばあちゃん、とりあえず大丈夫って言ってたね」
従姉「うん。よかった」
僕「治ったら島に帰るんだよね」
従姉「うん。たぶんそうだと思うよ」
僕「えっと・・おねえちゃんはどうするの?」
従姉「え?」
僕「今日」
従姉「あ・・・あー・・何も考えてない」
僕「僕、冬休みの宿題はもう終わってるけど、お母さんから電話かかってくるまでは外行かない方がいいと思うから家に居るつもり。おねえちゃんはどこか行ってきてもいいよ」
従姉「一人で出ても、どこに何があるのかわからないよ」
僕「あ・・・そっか」
従姉「うん。だから私もお家にいるね。あーあ私も宿題もってくればよかった」
僕「・・・」
従姉「でもさすが僕だね。もう宿題終わってるなんて。ねえ、ヒマだから宿題見せてよ」
僕「ええ?」
従姉「うーん・・きれいな字だね」
僕「読書感想文はダメ」
従姉「えーいいでしょ」
僕「ダメ」
従姉「ケチ!ん?これは?」
僕「あ!」
従姉「将来の夢?」
僕「・・・」
従姉「僕、医者になりたいんだね」
僕「・・・昨日、それでお母さんとケンカした」
従姉「え?」
僕「お母さんは、僕のこと医者にしたくないから」
従姉「え?なんで?」
僕「たぶん、お父さんが医者だから」
従姉「え・・・どういうこと?」
僕「・・・お母さん、お父さんのこと嫌いだから」
従姉「・・・」
従姉「・・・・ケンカってどんなの?」
僕「・・・・昨日・・」
・・・
従姉「・・・そっか・・」
僕「・・・」
従姉「でも、お母さんにそういう事言っちゃダメだよ」
僕「僕、間違ってないよ」
従姉「・・・そうかもしれないけど・・でもそういう言い方したらお母さん傷つくよ」
僕「おねえちゃん」
従姉「ん?」
僕「おばあちゃんが良くなったら、僕、おねえちゃんと一緒に島に行こうかな」
従姉「えっ?!」
僕「ここに居ても・・・もう、しょうがないから」
従姉「お母さん置いて行くって事?・・・ダメだよお母さんが悲しむよ」
僕「知らないよ・・そんなこと」
従姉「僕・・・どうしたの?昔はすごく優しかったのに・・お母さんのこと好きって言ってたじゃない」
僕「・・・」
従姉「それに友達だっているでしょ?友さんだっけ?いつも一緒に遊んでるっていう」
僕「友・・ちゃんはもう居ないから」
従姉「え?」
僕「だから僕にはもう友達いないから」
従姉「え?・・どういう事?友さんとケンカしたの?」
僕「▼▼県に転校した」
従姉「・・・そうなんだ」
僕「・・・」
従姉「僕、」
僕「おねえちゃん、僕自分の部屋に行くね。テレビとか見てていいから」
バタン
従姉「・・・」
***
トゥルルルルルルルル!
バタン
従姉「あ、」
僕「僕出るからいいよ」
従姉「うん」
ガチャ
僕「もしもし・・・え?久しぶり・・・うん・・・大丈夫」
従姉「?」
僕「あ・・・そっか・・うん・・・はい。それじゃ」
ガチャ
従姉「お母さん?」
僕「ううん、お父さんだった」
従姉「え?!」
僕「お父さんの病院同じ系列だったみたい」
従姉「そうなんだ」
僕「おばあちゃん大丈夫だって」
従姉「調べてくれたんだね」
僕「そうみたい」
従姉「お母さんは?」
僕「今日もたぶん病院泊まるんだと思う」
従姉「たぶん?」
僕「連絡忘れてるんだと思う。お父さんがそれに気づいて電話してくれたみたい」
従姉「あ、うん」
僕「夕ご飯の支度するための買い物行くけど、おねえちゃんも一緒に行く?」
従姉「うん、行く」
従姉「おっきいスーパー!」
僕「島にも確かスーパー有ったような・・」
従姉「うん。でもこんなに大きくないよ」
僕「うん・・・ご飯何がいい?」
従姉「えーっとね・・・あ・・・あー」
僕「何?」
従姉「・・・せっかく作ってくれようとしてるところ悪いんだけど・・えっと」
僕「?」
従姉「・・・ハンバーガー」
僕「あ・・・うん」
従姉「いいの?」
僕「僕も作らなくて済むから助かるけど・・」
従姉「やったぁ!!」
僕(おねえちゃん・・子供みたい)
従姉「わー!すごいすごい!!」
僕「お・・おねえちゃん・・恥ずかしいからそんなにはしゃがないでよ・・」
従姉「ご・・ごめん・・でもこんなお店来たことないから!」
僕「食べたことないんだっけ?」
従姉「内地に行った人がお土産で買ってきてくれたことあるけどね」
僕「うん・・・あ、じゃあお店で食べてく?」
従姉「いいの?!」
僕「・・うん」
・・・
従姉「おいしい!」
僕「うん」
従姉「・・そんな軽蔑のまなざしで見ないでよー」
僕「そんなふうに見てないよ」
従姉「シェイクって初めて飲んだ!」
僕「・・・」
従姉(帰ったら友達に自慢しよう)
従姉「ただいまー」
僕「ただいま」
僕「お風呂入れるね。おねえちゃん沸いたら先入っていいよ」
従姉「うん、ありがとう」
・・・
従姉「お風呂どうぞ」
僕「うん。冷蔵庫に麦茶あるから飲んで」
従姉「うん」
・・・
僕「ふぅ・・」
従姉「お帰り」
僕「うん」
僕「僕、もう寝ようかと思うんだけど」
従姉「あ、じゃあ私も寝るね」
僕「うん、おやすみなさい」
従姉「あ、一緒に寝ちゃダメ?」
僕「い・・いいけど」
従姉「うん!」
僕「電気消すよ」
従姉「うん」
ぱちっ
僕「・・・」
従姉「・・・」
従姉「ねえ」
僕「ん?」
従姉「ちょっとお話ししよう?」
僕「ん」
従姉「・・・僕はさ、なんでお医者さんになりたいの?」
僕「・・・笑わない?」
従姉「笑わないよ」
僕「昔、おねえちゃんのとこに行ったとき、伯父さんに鶏のさばき方をならったでしょ?」
従姉「・・うん」
僕「あの時ね・・・命ってすごく大切なものだって思ったから」
従姉「そっか」
なでなで
僕「なっ・・なでないくていいよ!」
従姉「ダメ?」
なでなで
僕「・・・いいけど」
従姉「・・私は応援するよ」
僕「でも・・お母さんはきっと反対するよ」
従姉「その事、ちゃんと言えばお母さんも分かってくれるよ」
僕「・・そうかな」
従姉「おねえちゃんも一緒に言ってあげる」
僕「・・・」
従姉「私はね、お母さんのこともお父さんのことも好きって言ってた優しい僕が好きだよ」
僕「・・ん」
従姉「ちゃんと仲直りしないと嫌いになっちゃうよ」
僕「・・・」
従姉「もう一個聞いていい?」
僕「何?」
従姉「友さんて子のこと、好きだったの?」
僕「なっ・何言ってんの?!」
従姉「あ、やっぱりそうか」
僕「ちっ違うから!」
従姉「ちゃんと好きって言った?」
僕「だから!」
従姉「僕っ」
僕「?」
従姉「どんなに好きでも、ちゃんと言わないと伝わらないんだよ」
僕「・・・わかんない」
従姉「何が?」
僕「好きとかそういうのが」
従姉「・・・友さんのこと、教えて?」
僕「・・・えっと・・・・」
・・・
従姉「あのね」
僕「うん」
従姉「それ、完全に好きだと思うよ」
僕「・・・でも」
従姉「電話して、ちゃんと言おう」
僕「電話番号知らない」
従姉「えっ?!聞かなかったの?」
僕「うん」
従姉「もう・・」
僕「住所は知ってるけど」
従姉「え?なんで?」
僕「連絡プリントに書いてあったから」
従姉「そっか」
僕「でも・・・僕にそんな事言われても・・迷惑だよ」
従姉「そんな事無いよ。その子、僕のためにずっと男の子っぽくしてくれてたんでしょ?なかなか出来ることじゃないよ」
僕「・・・」
従姉「よし、冬休みのうちに会いに行きなさい」
僕「無理無理無理!お金ないし!」
従姉「そこはお母さんに頼めば?」
僕「いやだよ!こんな事お母さんに言いたくない!!」
従姉「まあ確かにそうだよね・・・あ、じゃあお父さんにお願いすれば?」
僕「お父さんに言っても、▼▼県まで行くとしたら結局お母さんに言わなければダメでしょ?」
従姉「お父さんに会いに行くって名目で行けば?」
僕「お父さん都内にいるもん!」
従姉「だから、お父さんに全部言って協力してもらうの」
僕「ええ?!」
従姉「お母さんに言うのよりはいいんじゃない?」
僕「まあ・・そうかもしれないけど・・」
従姉「けど?」
僕「そんな事お父さんに言うの恥ずかしいし、友ちゃんに・・・言うのも恥ずかしいよ」
従姉「でも言わないとダメだと思う。僕、なんだかすごく寂しそうだもん」
僕「・・・」
従姉「フラれちゃったら私が慰めてあげるから、勇気出して行ってきなよ」
僕「も・・もう、おねえちゃんのバカっ!」
ぎゅっ
従姉「よしよし」
なでなで
僕「・・・もう寝る」
従姉「うん、おやすみ」
僕「おねえちゃん・・・今日お母さん帰ってくるって」
従姉「うん。私もおばあちゃんに会いたいし、病院まで一緒に行こう。それでいっしょに帰ってくればいいでしょ?」
僕「うん・・・ねえ本当に言うの?」
従姉「もちろん」
僕「お母さんとケンカするところ・・あんまり見られたくないなぁ」
従姉「私も僕の味方に付いてあげるから」
僕「うーん」
従姉「とりあえず病院行こう」
僕「・・・」
ガチャ
僕「おばあちゃん」
祖母「あ、僕ちゃんと従姉ちゃん来てくれたんじゃの」
従姉「おばあちゃん意識なかったからね・・私おばあちゃんといっしょにヘリに乗ったよ」
祖母「そうだったかの」
僕「おばあちゃん・・もう大丈夫なの?」
祖母「心配かけてごめんね。もううれしくなったから」
母「・・お母さん・・よかった」
従姉「おばあちゃん、いつ帰れるの?」
祖母「分からんけど、たぶん1週間くらいじゃないかの?」
従姉「よかった。叔母さんがいるし、私は先帰るかもしれないけど大丈夫だよね?」
祖母「うん。いろいろありがとうね・・・母もね」
母「うん・・お母さん・・ごめんね・・ずっと帰らなくて」
僕「・・・」
従姉「・・おばあちゃん」
祖母「ん?」
従姉「あのね、昨日僕に聞いたんだけど、僕、将来お医者さんになりたいんだって」
僕「えっ!」
母「・・・」
従姉「だからね、僕がお医者さんになっておばあちゃんのこと診てくれるようになるまでは、もう病気しちゃダメだよ」
祖母「そうなんだね、僕はわがとちがって優秀なんだね」
なでなで
僕「お・・おばあちゃん」
ガチャ
僕「ただいま」
従姉「お邪魔します」
母「はぁ・・三日ぶりの家だわ」
僕「お母さん、晩御飯作るよ。何がいい?」
母「え・・私が作るわよ、たまには」
僕「ほんと?」
母「うん。何がいい?」
僕「コロッケかな」
母「うん」
僕「僕手伝うよ」
母「うん・・従姉ちゃんはテレビでも見てて」
従姉「わ、私も手伝います!」
母「だいじょうぶよ、うちキッチン狭いから」
僕「うん、大丈夫だよ」
従姉「・・はい」
チーン!
僕「ジャガイモ、チンしたよ。潰す?」
母「うん、お願い。スプーンここよ」
僕「うん」
ぐっ・・ぐっ・・
母「・・僕、従姉ちゃんのこと押し付けてごめんね」
僕「え?大丈夫だよ」
母「・・うん」
僕「パン粉出すね」
母「うん」
僕「・・・こんなもんかな・・」
ざっざっ
母「僕」
僕「?」
母「昨日、連絡忘れてごめん」
僕「えっと・・お父さんが連絡くれたから」
母「・・うん・・・・もしアナタが会うときがあったら・・お礼を言っておいて。私が言ったらケンカになっちゃいそうだから」
僕「うん」
母「それとね・・・」
僕「?」
母「・・・アナタを・・早く大人にしてしまってごめんなさい」
僕「え?」
母「アナタは家のこととか自分のこととか何でもできるけど・・・それは私のせいだね」
僕「・・そんな事無いよ」
母「友達作って外で遊ぶこともしない子にしちゃってごめんなさい」
僕「・・・僕、お母さんのこと怒ってないよ。この前はひどいこと言ってごめんなさい」
母「・・・」
僕「ジャガイモ冷めたよ」
母「うん・・・ありがとう、あとは私がやるね」
僕「うん」
母「・・・この前のプリント、書いておくから私の机に置いておいて・・・大変だけど、これからはもっとちゃんと勉強しないとダメよ」
僕「あ・・ありがとう!」
***
従姉「僕」
僕「うん」
従姉「よかったね」
僕「・・・うん」
従姉「僕のお父さんに連絡しないとね」
僕「うー・・・」
従姉「男なら言ったことは最後までちゃんとやりなさい」
僕「・・・はーい」
・・・
僕「もしもし、お父さん?」
父『うん』
僕「おばあちゃん、よくなったよ。ありがとう」
父『担当は違う人だよ』
僕「うん・・・お父さん、ちょっとお願いがあるんだけど」
父「ん?」
僕「実は友達が転校しちゃってね・・」
・・・
従姉「それじゃあ叔母さん、ありがとうございました」
母「ええ、お兄ちゃん・・あなたのお父さんによろしくね」
従姉「はい。たまにはおいでと父も言っていました」
母「うん・・・そうね。これからはできるだけ・・・ううん、1年に1回は行きます。そう言っておいて」
従姉「はい!」
母「僕も連れてくからね」
従姉「あ・・はい。でも僕くんも中学生になったら忙しいでしょうから、本人が大丈夫な時で結構ですよ」
母「そうね・・・でも従姉ちゃん帰る日なのにあの子は・・」
従姉「あー・・大丈夫ですよ。聞きましたから。お父さんのところ行ってるんですよね」
母「・・うん」
従姉「えっと・・叔母さんは・・その・・旦那さんのこと本当に嫌いで離婚したんですか?」
母「え?」
従姉「あ・・ごめんなさい。余計な事聞きました」
母「・・・そうね・・お互い意地張って・・一緒に過ごす時間が短くなって・・一緒に暮らせなくなったって感じかな」
従姉「・・そうですか」
母「あなたも、好きな人ができたら意地張っちゃダメよ。ちゃんと正直に思ってること言わないと」
従姉「・・・はい」
母「飛行機の時間大丈夫?」
従姉「あ、そろそろです!」
母「じゃあ気を付けてね」
従姉「はい・・・僕くんにもよろしく」
母「うん」
従姉「それじゃあ、また!」
『○○島空港行きは400番ゲートからの出発となります。搭乗手続きをお済みでない方はお急ぎください』
あなたに初めて出会った夏、あなたはとても大人びて見えました。
私が泣いて出来なかったことも、あなたは泣かずにやることができました。
それから3年経った冬、思いがけずあなたに再び会うことができました。
あなたの背は私と同じくらいに伸びていて、あなたがとてもまぶしく見えました。
だけど私はあなたの優しさと弱さを知りました。
私が見ていたあなたの強さは、あなたを支えてくれた人が作ってくれたものだということを知りました。
私は間違っていなかったと思います。
あなたのために私ができたことはあれしかなかったと思います。
山ほどたくさんのことを言えなかったことに後悔はありません。
でも、ひとつだけついた嘘は今でも少しもどかしいです。
私の庭に胡蝶蘭はありません。
だけどそれは嘘のままでいいと思うんです。
あなたの夏の思い出が、私の思い出と少しでも重なっているのなら。
あの花火の日のあなたの気持ちが、私と同じだったのなら。
でも勘違いしないでほしいんです。
私は今幸せです。
子供の頃願ったかたちとは違うけど、あなたは私を大切に思ってくれています。
私のことを大切に思ってくれる家族もいます。
あなたは、友達との約束をちゃんとはたして▼▼県の大学の医学部に行きました。
そして今は家族も仕事も大切にしています。
そんなあなたは、これからもずっと、私の自慢のイトコです。
プルルルル・・・
僕「こんにちは」
従姉「うん、どうしたの?」
僕「今年の夏さ、うちの子が島に行きたいって」
従姉「いいよ。でも最近観光客多くてチケット取れないみたいだから早めに予約しなよ」
僕「あ、一人で行かせようと思うんだ」
従姉「・・・そっか、娘ちゃんももう今年で2年生だからね」
僕「うん、わがままだからちゃんと叱ってやっていいから」
従姉「ふふ、うちのチビにちゃんとエスコートするように言っとく」
僕「確か4年生だよね」
従姉「うん・・・・あの時の私たちと一緒だね」
僕「・・うん」
従姉「帰る時わんわん泣くのはうちの子の方だと思うわよ」
僕「ははは」
従姉「べつに夏じゃなくてもいいからさ、また家族でいらっしゃい」
僕「ありがとう」
あなたは決して泣かない人だった。
ベッドの中で教えてくれた、私の知らない幼いあなたも、きっと涙は流さなかったんでしょう。
でもあの夏、別れの日、空港で泣いてくれた。
その思い出は、今でも私だけの大切な宝物です。
ありがとう。
これで私の作り話はおしまいです。
作り話なので、もし読んだ人が似た体験を持っていても、それはきっと偶然です。
私は島の外で暮らしたことがありません。
だから内地のこととか、どこかおかしい所などあるかもしれません。
私のいる島は、この時期は霧と雨が多くてあまり畑作業ができません。
そうやってできた仕事の合間になんとなく書いてみただけです。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
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