エレン「お前らやる気出せよ!」 (88)
※そこはかとないネタバレに注意
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1370179814
アルミン「エレン、お願いだから入団式の間は大人しくしててよ?」
ミカサ「開拓地行きになりたいと言うなら止めない。でもあなたは調査兵団に入りたいのでしょう?」
エレン「オス! 打って良し、投げて良し、走って良し! 大人しくすることにかけては右に出るものはいない。エレン・イェーガーです! オッス!」
アルミン「……」
ミカサ「……」
アルミン、ミカサ(不安だ……)
キース教官「貴様! 貴様は何者だ!」
………………
キース教官「貴様は何者だ!」
………………
アルミン(……噂には聞いてたけど、これが通過儀礼ってやつか。エレンは大丈夫かな……)
ミカサ(エレン……、お願いだから余計なことは言わないで……)
エレン「ヘイ、教官! ヘイ!」
アルミン、ミカサ(自分からいった!?)
ジャン(なんだこの隣のやつ……)
キース教官「……なんだ、貴様。教官には敬語をつかえ!」
エレン「オーライ。ヘイ、教官様! ヘイ!」
ジャン(様つけただけじゃねえか)
キース教官「……何か用か」
エレン「なんで目の下にご飯ですよ塗ってんの? 何ブーム?」
アルミン、ミカサ(何言ってるの!?)
エレン「って、隣の刈り上げが言ってました」
キース教官「ほう……」ギロリ
ジャン「ええ!? いや、言ってません! おい、てめえ何言ってやがる!」
エレン「内緒にしろって言ったのに何で言ったんだ、って隣の刈り上げが憤ってます。これは有罪確定ですね」
キース教官「……貴様は入団式が終わるまで外周を走っていろ!」
ジャン「いや、俺は——」
エレン「おい、貴様! 教官に口答えとは何事だ!」
エレン「教官が白って言ったら、黒いカラスも白なんだよ!」
エレン「教官が禿げてないって言ったら、禿げてても禿げてないんだよ! フッサフサなんだよ! 貴様は教官に禿げって言うつもりなのか!?」
ジャン「そんなこと言うつもりは……」
エレン「じゃあ、とっとと走りに行け! そうですよね、キース オブ 教官?」
キース教官「ん? ああ、そうだな。……さっさと行け!」
ジャン「……はい(なんだよ! なんで俺がこんな目に!)」タッタッタッ
アルミン(巻き込まれた人、ごめんね……)
キース教官「……それで、貴様は何者だ」
エレン「エレン・イェーガー。私が入団したからには必ずや巨人を打倒致します。一年目から三割、三十本、百打点はお約束しますよ」
キース教官「三割、三十本、百打点? ……よくわからん。貴様も走っていろ」
エレン「サー、イエッサー! ジャクソンマイケルばりのムーンウォーク、いやさムーンダッシュをお見せ致します!」
エレン「いやっほーい! 巨人を打倒する未来へ向かってレッツラゴー! ポーゥッ!」サササササッ
キース教官「……」
ジャン「はぁはぁはぁ……」タッタッタッ
エレン「おっすおっす!」サササササッ
ジャン「あ、てめえ! てめえのせいで俺は——!」タッタッタッ
エレン「まあ、そう怒るなよ、刈り上げ少年ボーイ」サササササッ
ジャン「ちっ……。結局てめえも走らされてんのか。ざまあみやがれ」タッタッタッ
エレン「ヘイ、刈り上げ! ヘイ!」サササササッ
ジャン「その呼び方やめろよ、腹立つ!」タッタッタッ
ジャン「っていうか、それ、どうやって走ってるんだよ?」タッタッタッ
エレン「さすが刈り上げ! 目の付け所がジョリってるな!」サササササッ
ジャン「喧嘩売ってんのか……」タッタッタッ
エレン「こいつぁ、古の歩法、ムーンウォークの進化系、ムーンダッシュ!」サササササッ
ジャン「見た目と実際進む向きが逆でなんか気持ち悪いぞ」タッタッタッ
エレン「おいおい、言葉の暴力はやめろよ。気持ち悪いって言われ慣れてる俺だったから良いものの、他の人なら訴訟もんだぞ」サササササッ
ジャン「いや、おまえ自身じゃなくてその走り方だよ」タッタッタッ
エレン「おい、マイケルに謝れ」サササササッ
ジャン「誰だよ……」タッタッタッ
ジャン(こいつ、うぜえ……。速度上げて振り切ろう……)タッタッタッ
エレン「いやっふー!」サササササッ
ジャン「……」タッタッタッ
エレン「ポーゥッ! アーォッ!」サササササッ
ジャン「…………」タタタタタタッ
エレン「小刻みに、震える、爪楊枝」サササササッ
ジャン「………………」 ダダダダダダッ
エレン「イエス! そいつは掴みづらいぜ、YEAHAAAAA!」サササササッ
ジャン「うるっせーよ! なんでその走り方でそんなに速いんだよ!」 ダダダダダダッ
エレン「おいおい、刈り上げっち。自分が遅いのを人のせいにするんじゃないぜ」サササササッ
エレン「俺の速さはこんなものじゃない! 音速を超えろ! セナの後継者は俺だ! スピードアップップ! ポーゥッ!」ササササササササササッ
ジャン「はええ……」タッタッタッ
ジャン「まあ、これで自分のペースで——」タッタッタッ
キース教官「おい、貴様!」
ジャン「!? は、はい!」タッタッタッ
キース教官「あんなふざけた走りより遅いとは随分のんびりとしてやがるな! あいつより遅かったら飯抜きだ! 死ぬ気で走れ!」
ジャン「」
〜夕食〜
ジャン「クソッ! ひどい目にあったぜ」
アルミン「お疲れ様」
ジャン「ああ。ええと——」
アルミン「僕はアルミン。君が走らされる切っ掛けになったエレンの、幼馴染なんだ。……本当にごめんね」
ジャン「……いや、お前が謝ることじゃねえだろ。気にすんな」
アルミン「そういってもらえると少しは気が楽になるよ」
ジャン「ところであいつは途中からいなくなってたけど、どこに行ったんだ? おかげで飯抜きは免れたけどよ」
アルミン「エレンならそこでミカサと話してるよ」
ミカサ「エレン、途中から姿が見えなかったけど何処に行ってたの?」
エレン「ちゃんといたぜ。普通に走るのに飽きたから工夫してた」
ジャン(いや、あの走り方は普通じゃねえだろ)
ミカサ「工夫……。具体的には?」
エレン「地面の中を掘り進んでた」
ミカサ「……」
エレン「全然進めねえの! モグラまじリスペクト! あいつらマジぱねえ! 将来なりたい職業で調査兵団とモグラで迷う!」
ジャン「勝手にモグラでもなんでもなってろよ」
エレン「本気にするとか引くわー……。脳みそまで刈り上がってんのか」
ジャン「……」
アルミン「ちなみにモグラは地面の中を進むより地上を歩いたほうが速いからね」
エレン「……わーお。超大型巨人が犬の糞を踏んでいるのを見て以来のショック」
ベルトルト(……え)
ミカサ「エレンに絡まれてた人……。さっきはエレンがごめんね」
ジャン「き、気にしなくて良いぜ」
ミカサ「そう」
ジャン(か、可愛い……)
ミカサ「……?」
ジャン「ああ、いや……。きれいな髪だな」
ミカサ「……ありがとう」
エレン「ヘイ、刈り上げ! ヘイ!」
ジャン「だからその呼び方やめろって言ってんだろ!」
エレン「人の幼馴染に色目使ってんじゃねえよ」
ジャン「つ、使ってねえよ!」
エレン「具体的には、まつざきしげるいろ」
ジャン「何色だよ! 全然わかんねえ!」
ジャン「そういや、お前らシガンシナ区出身ってことは……」
アルミン「うん。超大型巨人に襲撃された。僕は内地側にいたから直接見てはいないけどね」
アルミン「エレンはあの襲撃の時、目の前でお母さんを巨人に……」
ジャン「あいつはそのショックであんなふうになったのか」
アルミン「いや、エレンはお母さんを食われる前からあんなだったよ」
ジャン「あ、そう……」
アルミン「エレンとミカサは超大型巨人が壁を壊すところも見たらしい」
ジャン「……そうか。百年の平和が破られたショックで言動がおかしくなったんだな」
アルミン「いや、元からだってば。そもそも壁が破られたのと彼のお母さんが食われたのはほぼ同時だしね」
ジャン「あ、そう……」
ミカサ「ずっと小さい頃からエレンを知ってるけど、彼はずっとあんな感じ」
ジャン「あ、そう……」
エレン「お前らやる気出せよ!」
ジャン「……あいつが何か騒いでるぞ?」
アルミン「行ってみよう」
ジャン「え、俺もなのか?」
ミカサ「行こう?」
ジャン「お、おう! 行こうか!」
アルミン「エレン、どうしたの?」
エレン「聞きたい?」
アルミン「……」
エレン「ねえねえ、聞きたい?」
アルミン「……うん」イラッ
エレン「そんなに聞きたいなら教えてあげても良いよ」
アルミン「……ありがとう」イライラッ
エレン「キース教官が絶対に言わないこと」
アルミン「え!?」
エレン「……」
アルミン「エレン?」
エレン「……」
ミカサ「?」
エレン「……」
ジャン「おい?」
エレン「……」
アルミン「……」
ミカサ「……」
ジャン「……」
エレン「……」
エレン「はい、皆さんが静かになるまでに5分かかりました」
アルミン「……」イラッ
ミカサ「……」イラッ
ジャン「……」イラッ
重くて変なエラーが出まくるので、また後日投下
エレン「校長か! お前は校長か!」
アルミン「それで、さっき叫んでたのはなんだったの?」イラッ
エレン「うーん……、教頭……かな? そうだ、あの顔は教頭だよ!」
アルミン「エレン?」イライラッ
エレン「あれは裏で暗躍して、次期校長の座はわしのもんじゃ、うひゃははは、とか笑ってる顔だよ!」
アルミン「……」イライライラッ
エレン「違うから! そういうシステムじゃないから! 校長を蹴落としても教頭が繰り上がりで校長になったりしないから!」
アルミン「もういいよ……」
エレン「諦めんなよ。そういうところ、お前の悪い癖だぜ?」
アルミン「……」イラッ
ミカサ「そ、それで何があったの?」
エレン「あいつらがなるべく巨人に当たりたくないなんて言いやがるんだ」
アルミン「それは仕方ないよ。みんな怖いんだ」
エレン「だからっていつまでも逃げていられるわけじゃないだろう!?」
アルミン「でも無理強いはできないよ。せめて僕らだけでも頑張ろう?」
エレン「一部だけが頑張っても駄目なんだ。チームが一丸とならなきゃ!」
アルミン「うん……。うん? チーム?」
エレン「確かに巨人は強い。当たらないように逃げてこちらの情報を隠しつつ、ペナントレースは2位、3位を目指すのも作戦としてはありなのかもしれない」
アルミン「ペナント? え?」
エレン「でもそんなことでクライマックスシリーズで戦えると思うか!?」
アルミン「そもそもエレンが何を言っているかわからないよ……」
エレン「ん? 打倒巨人の話だよな?」
アルミン「うん、そうだよ」
エレン「じゃあ合ってるだろ」
アルミン「え? え?」
ジャン「なあ、ミカサ。あいつが何言ってるかわかるか? 巨人を倒す話には聞こえないんだが……」
ミカサ「エレンは時々わけのわからないことを言う」
ジャン「時々?」
ミカサ「……頻繁に」
エレン「おい、そこの刈り上げらー」
ジャン「どうせ俺のことだろうけど、なんだその呼び方」
エレン「人の幼馴染に色目使うなって何回言わせんだよ」
ジャン「使ってねえって!」
エレン「具体的には、さびてつおなんどいろ」
ジャン「だから全然具体的じゃねえんだよ! 何色かさっぱりわかんねえ!」
エレン「ふーむ」
ジャン「今度はなんだよ……」
エレン「ミカサ、ちょっとこっちに来てくれ」
ミカサ「なに?」
エレン「おい、刈り上げらー、略してからー。あっち行ってろ」
ジャン「もうちょっとましな略し方あんだろ……」
エレン「かりげらー? 曲げれそう! 曲げれそう! スプーンをぐにゃりと曲げれそう! そんな呼び名はお前にゃもったいねえ!」
ジャン「普通に名前を呼べよ!」
エレン「No! ノーと言える日本人! 希少価値! 希少価値! アイム、スキャットマン!」
エレン「ドゥッピドゥピドゥピドゥッピッピ! ドゥッピドゥピドゥピ、イェーイイェイ!」
エレン「ってそれ違うから! それスキャットマンじゃないから!!」
エレン「……あれ? 刈り上げどこ行った?」
ミカサ「エレンがドゥピドゥピ言い始めた辺りであっちに行った」
エレン「これだからゆとり世代は人の話を聞かないって言われるんだ」
エレン「からーは放っておこう。ミカサに頼みがあるんだ」
ミカサ「なに?」
エレン「明日の朝、からーに会ったら『一晩中さくら色を想像してたの……?』って囁いてやってくれ」
ミカサ「からーってジャンのことで良いんだよね?」
エレン「さっきの刈り上げの名前がそうならそれで合ってる」
ミカサ「……わかった。でもどうして?」
エレン「いろいろ迷惑をかけたからそのお詫びだよ。そうするとあいつは喜ぶんだ」
ミカサ「エレン……私は嬉しい。ようやく人に迷惑をかけていることを認識できたのね」
エレン「人は成長するんだ。それは俺でさえ例外じゃない」
エレン「ミカサにそう言ってもらえたら、あいつのことだから嬉しさのあまり何か言ってくるだろうけど、とりあわなくて良いからな」
ミカサ「わかった」
エレン「言うときは目力を込めてな」
ミカサ「全力でいく」コク
ジャン「話は終わったのか?」
アルミン「嫌な予感しかしない……」
ミカサ「大丈夫。エレンも成長している。悪いことにはならない」
アルミン(ミカサはすぐエレンに丸め込まれるから逆に心配なんだよな……)
エレン「む」
ジャン「どうした?」
エレン「外から面白そうな気配」
エレン「行きますよ、助さん!」
ミカサ「私?」
エレン「格さん!」
アルミン「僕?」
エレン「八兵衛!」
ジャン「……」
エレン「八兵衛!!」
ジャン「……ひょっとして俺か?」
エレン「自分が呼ばれてるのに気づかないとか、うっかりってレベルじゃないな……。刈り上げ八兵衛に降格すんぞ」
ジャン「いつから俺が八兵衛になったんだよ! うっかりが刈り上げになったら降格とか基準もわかんねえし!」
ミカサ「あそこにいるのは……」
アルミン「ええと、クリスタだね。何してるんだろう?」
エレン「聞いてみるか」
エレン「Hi!」
クリスタ「?」
エレン「What are you doing?」
クリスタ「え?」
エレン「What are you doing here?」
クリスタ「え? え?」
エレン「おい、やべえ。話が通じねえぞ」
ジャン「いや、お前が何しゃべってんだよ。普通に話せよ」
エレン「やれやれ、仕方ないな」
エレン「Ski bi di bi di do bap do! Do bam do! Bada bwi ba ba bada bo! Baba ba da bo! Bwi ba ba ba do!」
クリスタ「!?!?!?」
ジャン「え!? 更にわけわかんねえんだけど!?」
エレン「スキャット語もわかんねえとか今まで何を学んできたんだよ。ジョンに謝れ」
ジャン「だから、マイケルといいジョンといい、誰なんだっつーの……」
アルミン「それで、こんなところで何をしているのかな?」
クリスタ「えっと……」
ユミル「まだ走らされている芋女にパンを渡すつもりだ。 ……そうなんだろう?」
ジャン「また一人増えたな。名前なんだっけ」
ユミル「私は——」
エレン「若ハゲ! 若ハゲじゃないか!」
アルミン「エレン?」
エレン「おでこの後退は止まった?」
ジャン「何言ってんだ?」
ユミル「……」
エレン「あとさー。あのぎざっ歯はどうかと思うんだ。歯医者行け。な? 腕の良い医者紹介してやるから」
ユミル「……」
エレン「本当に腕が良いから。確実に麻酔と生理食塩水を間違えるのだけが玉に瑕だけど、それ以外は大丈夫だから。な?」
ジャン「致命的だろ。大丈夫な要素が一個もねえよ」
アルミン「ごめん、ユミルだったよね? エレンはちょっと言動がアレなところがあるから気にしないで」
エレン「親友に言動がアレ呼ばわりされる男、エレン・イェーガーです。よろしく」
ユミル「……別にいいよ。気にしてない」
エレン「ところで芋女ってなに?」
アルミン「そうか、エレンとジャンは走っていたからわからないね」
エレン「要求する! 断固として説明を要求する!」
アルミン「えっとね。二人が走り始めた後に——」
エレン「面倒くさいからかくかくしかじかで良いよ」
アルミン「え!?」
ジャン「そんなんじゃわかんねえだろ」
エレン「できないことをできないと言うことは簡単なんです! なぜ挑戦しようとしない!」
アルミン「エレンがそう言うなら……」
アルミン「かくかくしかじか」
エレン「まるまるうまうま」
エレン「理解した」
ジャン「嘘だろ!?」
エレン「中途半端に刈り上げてるからわからんのだ。どうせ刈り上げるなら頭頂部3cm四方を残して全部刈り上げんかい!」
ジャン「奇抜すぎるわ! わかったって言うなら、アルミンはなんて言ったんだよ?」
エレン「入団式の真っ最中に盗んできたふかし芋を食べていたサシャ・ブラウスは、キース教官に何をやっていると問われても構わず芋を食べ続けた。さらに重ねてキース教官になぜ今芋を食べているのかと問われ、サシャは冷めてしまっては元も子もないので今食べるべきと判断したと答えた。キース教官の意図するところの回答ではなかったため、キース教官が質問を変えてなぜ芋を食べたのかと尋ねるとサシャは、その質問は何故人は芋を食べるのかという質問なのか、と問い返した。キース教官がその回答に絶句していると、その沈黙を芋を分けて欲しいのだと勘違いしたサシャは、半分どうぞと言いつつも明らかに半分に満たない芋の欠片をキース教官に渡した。その結果、サシャは死ぬ寸前まで走り続けること及び晩飯抜きを言い渡され、現在に至る」
エレン「って言ったんだよ」
ジャン「!?」
アルミン(いや、僕そこまで言うつもりもなかったんだけど……)
エレン「まあ、状況は理解した。ちょいとひーたん。そのパンをこっちにお寄越しなさい」
アルミン「ひーたん?」
ミカサ「エレン、彼女の名前はクリスタ」
クリスタ「……」
エレン「おっと、こいつぁ失礼しやした。なんで言い間違えたのかなー? どうしてかなー?」
クリスタ「……どうぞ」
エレン「この借りは刈り上げにつけておくよ。借り上げだけに」
ジャン「おい、いい加減ぶっ飛ばすぞ」
エレン「ヘーイ! サシャ・ブラウス!」
サシャ「……?」タッタッタッ
エレン「パンがあるぞよ。こっちに来るのじゃ」
サシャ「……」ダダダダダッ
エレン「お座り! 待て!」
サシャ「はい!」ピタッ
エレン「……」
サシャ「……」
エレン「……」
サシャ「……」
エレン「……」
サシャ「……」
エレン「よし!」
サシャ「」ムシャムシャ
エレン「よしよし」なでなで
エレン「良いかい、サシャ・ブラウス。そのパンはクリスタのだ。でもあげたのは俺だ。わかるね」
サシャ「はい!」ムシャムシャ
エレン「よし、それだけ理解してればいい。食べたら戻ってゆっくり休むんだよ」
サシャ「はい!」ムシャムシャ
ジャン「……なんだあれ?」
アルミン「よくわかんないけど、どうせろくでもないことを考えてるよ」
ミカサ「うん」
エレン「パンをとっちゃってごめんね、クリスタ。彼女、シガンシナ区で二度と会えなくなったあいつに似ててさ」
クリスタ「え?」
エレン「だからどうしても俺の手でパンをあげたくて」
クリスタ「ううん、そういうことなら良いのよ」
アルミン「? 誰のことだろう?」
ミカサ「わからない」
エレン「きっと生きていると信じているんだけどね」
エレン「あいつ、元気かな……」
クリスタ「……きっとその人も元気で生きてるわ」
エレン「人? ニジイロマダラエリマキトカゲを人に分類するとか頭沸いてんのか」
クリスタ「……」
エレン「名前はグリシャって言うんだ」
アルミン「それエレンのお父さんの名前だよね!?」
アルミン「なんにせよ、サシャはエレンに気に入られたみたいだ。気に入った要素がまったくわからないけど」
ジャン「そういえば、なんで俺はこんなに絡まれるんだ?」
ミカサ「……」
アルミン「……」
ジャン「なんだよ?」
アルミン「多分、入団式のときに隣にいたからかな……。基本的にエレンのすることに深い意味はないよ」
ミカサ「エレンのことは自然災害と割り切ったほうが気が楽」
ジャン「……最悪だ」
アルミン「それじゃ、今日はそろそろ部屋に戻って寝ようか」
ジャン「ああ、そうだな。初日なのに疲れきったぜ」
エレン「憑かれただけにね」
ジャン「お前が言うなよ」
エレン「ヘイ、刈り上げ! ヘイ!」
ジャン「慣れてきた自分が腹立たしい」
エレン「なあなあ、ミカサってどう思う?」
ジャン「なんだ、その質問」
エレン「良い事教えてあげよう」ヒソヒソ
ジャン「……なんだよ」
エレン「ミカサの乳首、さくら色」ヒソヒソ
ジャン「!?」
ジャン(ミカサのち……、ちく……、さくら色……)
ジャン(いやいや、あの野郎の言うことだ。きっと出鱈目だ!)
ジャン(でも、幼馴染なんだよな)
ジャン(じゃあ本当に……)
ジャン(だとしてもそんなこと想像するのはいかんだろ!)
ジャン(……さくら色かぁ)
ジャン(……)
エレン「」zzz
ジャン(一睡もできなかった……)
エレン「ヘイ、刈り上げ! ヘイ! 爽やかな寝不足顔だな!」
ジャン「うるせえな。誰のせいだよ……」
エレン「ん? なにが?」
ジャン「なんでもねえよ」
エレン「ひゃっほーい! 飯だ、飯だ、朝飯だーい!!」ダダダッ
ジャン「朝っぱらから元気なやつだ」
ミカサ「……」
ジャン「ミカサ……。お、おはよう!」
ミカサ「……」スタスタスタ
ジャン「?」
ミカサ「……」
ジャン「……」
ミカサ「一晩中さくら色を想像してたの……?」ギロリ
ジャン「!?」
ミカサ「……」スタスタスタ
ジャン「ち、違うんだ! ミカサ! 聞いてくれ!」
ミカサ(『何か言われてもとりあわなくて良い』……わかってる、エレン)スタスタスタ
ジャン「ま、待ってくれーー!!!」
ミカサ「エレン、アルミン、おはよう」
アルミン「おはよう」
エレン「Доброе утро」
ミカサ「エレン、ジャンに言ったよ」
エレン「そうかそうか。あいつも喜んだろうなぁ」
ミカサ「多分、御礼を言いたくて、ずっと私を呼び止めようとしていた」
エレン「最後に、この変態……、って言ってくれてたらもっと良かったんだけどね。そこまで言わせようとしたらさすがのミカサも勘付いちゃうしなぁ」
アルミン「……朝っぱらからジャンに何をしでかしたのさ」
ミカサ「昨日、エレンが迷惑をかけたお詫びに、彼が喜ぶことを言っただけ」
アルミン「ジャンが喜ぶことを教えてくれたのって誰?」
ミカサ「エレン」
アルミン「……おかしいと思わなかった?」
ミカサ「……今思った」
アルミン(ごめんよ、ジャン……)
エレン「うーむ、朝から飯が美味いなぁ。まさにメシウマ!」
サシャ「エレン、おはようございます」
エレン「サシャ! こっちゃこい! どんとこい!」
サシャ「はい!」
エレン「何年ぶりじゃろうか。大きうなったのー」
サシャ「エレンのおかげです! 昨日パンをもらえなかったらこうして生きてはいられなかったかもしれません!」
エレン「おお、そうかそうか。たんと食べえよ?」
サシャ「食べます! いただきます!」ムシャムシャ
エレン「サシャはめんこいのう」なでなで
サシャ「えへへ」ムシャムシャ
アルミン「なんだこれ」
ミカサ「私にもわからない」
エレン「サシャや、サシャ。それっぽっちのパンで足りるんかのう?」
サシャ「正直物足りないです……」
エレン「そりゃあいかん! ちいと待っとれ!」
エレン「ヘイ、刈り上げ! ヘイ!」
ジャン「……今、お前に構ってる元気はねえんだよ。あっち行ってろ」
エレン「ミカサのことだろう?」
ジャン「!?」
エレン「仲を取り持ってやろうか?」
ジャン「本当か!?」
エレン「ああ。代わりと言っては何だが、そのパンをくれ」
ジャン「ちゃんと取り持ってくれるんだろうな?」
エレン「俺を信じろよ! 嘘なんてついたことないだろう?」
ジャン「しらねえし、そもそもお前が真面目に話してるのを見たことすらねえよ」
ジャン「……わかった。ちゃんと取り持てよ?」
エレン「ぐへへ、ばかめ! 引っかかりやがった! 適当にミカサに吹き込んでそれで終わりだよ!(ヘイ、刈り上げ! ヘイ! 簡単に人を信じちゃいけないってことをお前にわからせてやるぜ! せいぜいミカサの視線に怯えて過ごすんだな!)」
ジャン「本音も建前も真っ黒じゃねえか! パン返せこの野郎!!」
エレン「おっと、失敗」
エレン「サシャ! サシャや!」
サシャ「はい、なんでしょう」
エレン「ほーら、パンだよ。お食べ」
サシャ「!?!? 良いんですか!?」
エレン「わしとあんたの仲じゃあないか。何を遠慮することがあるんじゃ。お食べよ」
サシャ「ありがとうございます! ありがとうございます! 一生ついていきます!」ムシャムシャ
アルミン「エレンのサシャに対するあの優しさはなんだろう」
ミカサ「わからないけど、私なら怖くて受け取れない」
〜訓練開始〜
キース教官「今日は適性判断を行う!」
キース教官「これができなければ兵士としてはやっていけん!」
エレン「良いかお前ら! できない者は即刻退団してもらうからな! 気合を入れてやれ!」
キース教官「お前はあっちだ」
エレン「あ、はい」
キース教官(今年は豊作だな。特にミカサ・アッカーマン。一切のブレがない)
ミカサ「……」
キース教官(……その逆にエレン・イェーガー)
エレン「細かく、振動する、俺」ブルブルブル
エレン「バイブレーター機能搭載! 最新機種! 最新機種!」ブルブルブル
キース教官(あれだけ震えながら姿勢を保っていられるのは逆にすごいのか……?)
エレン「激しく、振動する、俺」ブルブルブル
エレン「振動ダンス! 振動ダンス! 姿勢制御中でもレッツダンシング!」ブルブルブル
キース教官「……エレン・イェーガー、口を閉じろ」
エレン「イエッサー! マナーモードON!」ブルブルブル
エレン「ヴヴヴ、ヴヴヴヴヴ、ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!」ブルブルブル
エレン「ヴヴヴヴヴ、ヴヴ、ヴヴヴヴヴヴヴ!!」ブルブルブル
キース教官「……言いたいことがあるならきちんと話せ」
エレン「教官、このベルト壊れてます」ブルブルブル
アルミン「こうして、適正試験に合格した僕たちは訓練兵として戦闘訓練を行っていった」
アルミン「相変らずエレンは周りに、主にジャンに迷惑をかけながらも訓練に励んでいる」
アルミン「それでも何故かエレンは少しずつ皆に受け入れられていっているようだ。打倒巨人を合言葉に木の棒を振り回す人が増えてきた」
アルミン「……どう考えてもそれでは巨人を倒せないと思うのだけれど」
アルミン「エレンは今日も叫ぶ」
エレン「お前らやる気出せよ!」
終わり
熱血主人公を書こうとしたらこうなった。
皆もテンションの上げすぎには気をつけてください。
とりあえず五作目で切りが良かったので主人公のエレンをメインにしてみた。
でもジャンのほうが目立ってる気がしないでもない。
個人的に短いSSのほうが読みやすくて好きなので、今回のは長すぎたくらい。
続き書くとしても新しくスレを立てます。
以前書いたSSも是非ご照覧あれ。
アルミン「襲い来るモノ」
ハンジ「あなたの言葉を胸に、私は生きていく」
ライナー「俺は、こんなことには負けない」
アニ「陽だまりを歩く」
エレン「お前らやる気出せよ!」 New
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません