吹雪「鎮守府に終わりを」 (79)

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この鎮守府に着任して、いくらかの月日が経った。

当初は不安だらけだったが、周りの尽力と私の努力と人柄により、ある程度の位置に付くことは出来たようである。

昼間の演習を終え、食堂へ向かう。

「海軍カレー、中盛でお願いします」

「分かりましたー!カレー中1!」

厨房に居るのは、間宮さんだ。

彼女は人手が足りない、この時間帯のみ食堂を手伝っているらしい。

しばらくして、注文の品が届いた。

「吹雪さんじゃないですか。演習は終わったのですか?」

「はい!でも、私だけ被弾率が高くて…」

山盛りどころじゃない富士山くらいに盛っているカレー(特注だろうか)をさも平然と平らげているのは赤城先輩だ。

その細身の体からは想像がつかないくらい食べている。

先輩と呼んでるのは、精神的な面で尊敬できる人だからだ。扶桑先輩からは戦術とプライドの保ち方。

「それで神通さんに怒られてしまいまして…はは…」

「彼女は厳しいですからね。その分自分にも厳しいみたいですよ」

いつの間にかカレーは半分までに減っていた。

(凄い食べっぷりだなぁ…)

「吹雪さん。新人…と言ってももう何か月もたつあなたに言っておきますが、妙な真似だけはしないで下さいね?」

「妙な真似…?」

はて、なんだろうかと思っていると赤城の口から答えが出た。

「伊58と名もなき艦隊による鎮守府クーデターです」

歴史的なニュースとなったものだ。

と言っても今と比べて、鎮守府内は穏やかであり決してそのような事は起こるはずもないだろう。

卯月「カフェで一つのパフェを食べさせあってもらうぴょん!」

長月「な...!そんな恥ずかしいこと出来るか!」

卯月「でも勝者はうーちゃん。敗者は二人っぴょん。拒否権はない!びしっ!」

菊月「ぐ...司令官!司令官はそんなことさせないよな!?」

分かりやすく二人に指をさす卯月に意地でもやりなくない菊月は敬愛する司令官に助けを求めようとする。が...

提督「買ってきたぞ。これで良いのか?」

長月&菊月「裏切ったな司令かーーん!!!」

これ以上ないほど言葉がハモった瞬間である。

卯月「さぁさぁ、早くはじめるっぴょん!」

皐月「いいなー、ねぇ司令官僕達の分は?」

提督「お金あげるから好きなのをかって来なさい」

文月「わ〜い♪」

弥生「どれ、食べようかな...」

騒がしい向こうの団体を他所に長月と菊月は対面して座っている。もちろん、正面にはパフェがある。

菊月「ぐぬぬ...こ、こうなったら早く終わらせるぞ」

長月「あぁ...」

そう言い、菊月はパフェをスプーンでひとすくいし長月の方へと向ける。

菊月「あ...あーん...///」

菊月の肌は白い。そのため柔らかい肌が分かりやすいほどに紅潮しているのが見てとれる。

それを見た長月は思わず止まってしまう。

菊月「おい!早くしろ!は、恥ずかしいんだ!///」

長月「あ、あぁ///」

急かすような菊月の声にはっとし、パフェを頂く。それはどこまでも甘く、少しすっぱかった。

改善された。艦娘と提督の横暴はもう無いはずだ。

私は、そう信じている。

「そんな事するはずないじゃないですか」

「それなら良かったです♪では、吹雪さん、私はこれで」

「お疲れ様です!赤城先輩!」

敬礼して見送った。

そして食事を食べ終え、部屋へと戻る。

「吹雪ちゃん!お帰り~」

「今日は暇っぽい!」

同室のルームメイトである夕立と睦月だ。

特に後者は、姉妹を失ってしばらく動けそうになかったらしい。

その姿はあんまりにも可哀そうだったので、慰めてやったが。

「そう言えば…何か聞こえない?」

「外を見ればわかるにゃしい」

窓を見る。

人の集まり。手に何か書かれたプラカードを持っている。

書いてあることからおおよそが理解できた。

「…デモ隊」

「そうっぽい!最近うるさくてお昼寝も出来ないよー」

明らかにそうでしょう、と言いたくなったが彼女の口癖だ。言ってもしょうがない。

「私の時はいなかったのに…どうしてだろ?」

「あのクーデターから活発になったってテレビで言ってたよ、吹雪ちゃん」

「そうなんだ…」

国を護る事、ひいては人を護る事が艦娘の使命だ。

だからと言って、私物化したり捨てたりするのは以ての外であると世界中の人々に認識させたのが『あのクーデター』である。

上の髭です。
他者様のスレに誤爆してしまい、誠に申し訳ございません...

それぞれに考えがあり、どれが正しいかなんては誰しも知らない。

けれども、考えを広めることは誰にでも出来る。

鎮守府と言う世界は狭い様で、広い。

世界は大きく変わった。

そう、知らぬ間に大きく。

私は、机に座り教科書を開く。

ノートと鉛筆、消しゴムを広げる。

明日は、宿題提出日のはずだ。今のうちにやっておこう。

「あ!明日宿題の提出日だったぽい!睦月ちゃんー!答え見せてー!」

「駄目だよ!自分でやるから見に着くんだよ、夕立ちゃん!」

「睦月ちゃんの意見に賛成だよ!ほら、分からない所なら教えてあげるから!」

「っぽい~…」

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何とかして、宿題を終えた。気づいたら夜だ。

「んー…明日は学校で実践授業らしいよ?」

「何の?」

間延びした声で夕立は言った。

「えーとね、航空戦における回避と攻撃方法…の実践っぽい」

「航空戦!?今の装備で大丈夫かなぁ…」

「本番でどうにかするしかないよ…吹雪ちゃん」

私達は明かりを落とした。

それぞれの寝床に着き、適当に雑談した後眠りについた。

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「夜戦だ!やっせんー!」

「姉さん、静かに!」

神通と川内、那珂は提督に頼まれたあることをしている最中だ。

「2人とも、目標来たよー」

今居る位置は、ここから100km内の場所。

「じゃあもう一度作戦内容の説明だよ」

2人はうなずく。

「開始時刻はマルイチマルマル。目標は…この人」

「…過激派団体の幹部ですね姉さん」

「そう。だから、これで片付ける」

懐から出したのは漏れた街灯に照らされ、鈍く光る銃。

「12糎拳銃…艦娘用の銃ですね」

「私達も持っているよねー?」

神通、那珂も取り出した。

「そうだね。じゃ、行こうか『サムライ』、『ゲイシャ』」

少女たちは、銃を取り出し、常夜に走り出す。

銃声が、木霊した。


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「ふわぁぁ…おはよう…睦月ちゃん、夕立ちゃん」

朝の光が眩しくて、起き上がる。

ある意味で抜錨しているのかもしれない。

「月曜日はやだー…ずっと日曜日がいいっぽいー…」

「バカな事言ってないで、布団畳んでご飯食べるよ!」

睦月が夕立にため息交じりで言い放った。

夕立もしぶしぶであるが、向かっていったようである。

(授業頑張らないと…皆に認めてもらえないしね)

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朝食を終え、教室へ移動ののち教科書を机に入れる。暇つぶしに気まぐれで買った新聞を読む(あるのは青葉が作ったある程度検閲された新聞のみである)

三文記事や要点がつかめない長ったらしい毒にもならない社説を読んでいると、小さな記事が目に着いた。

(…死亡事故、ですか)

平和団体は勿論、中には艦娘解放や深海棲艦との対話をと謳った連中がここの所増えてきている…気がする。

外の事はなるべく最小限に扱っている。

これもクーデターが起きたから故だろうか。

(車体に戦車砲のように開いていた、ですか)

さらに見ていくと、死体も同様だったと書いてある。

詳しいことまでは載っていない様だ。

予鈴が鳴った。

新聞を急いでカバンに仕舞い、教科書とノート、筆箱を取り出す。

担任である足柄が来ていつも通りの授業が始まる。


昼食をはさみ、眠くなってくる時間に航空戦の実践は行われた。

一航戦の先輩たちが模擬用の艦載機を放つ。

ユスリカの様に動き回る艦載機に私は、たじろいでしまった。

「うわっ!」

左腕に被弾した。

(落ち着いて…落ち着けば落とせるはず…)

「そこ!」

主砲を上へ放つ。すると、2,3機が落ち葉のように海へと向かっていった。

(やった!)

その日は、左腕だけの被弾のみで今回の優秀者として足柄先生や一航戦の先輩たちに褒められた。

(赤城先輩に褒められた~♪)

上機嫌でお風呂に入り、上機嫌で自分の部屋へと向かう。

「おかえりー。今日は良かったみたいだね!」

睦月の指には煙草が挟まっている。

くつろぐスペースにマッチと携帯灰皿、弓矢が描かれた小さな箱。ホープと言う煙草である。

「煙草吸っているんだ、睦月ちゃん」

「そうにゃしい~。たまに吸うと落ち着くんだぁ」

開けられた窓から煙がゆったりと溶けてゆくように流れている。

ふぅー、と一飲みした後私の方へと向き「これ、皆には内緒だよ?」とはにかむような顔で言った。

夕立もこれは知っていたらしく「別にいいよ。私も少ししてるし」と言い、箱を見せた。

吸っているのはしんせいの様だ。

「たまに吸うからいいんだよねー。あ、この事も内緒だよ?」

案外ワルですね、と私は気怠そうに言い、今日の出来事を反芻し寝床へと着いた。


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「今日ユー達に集まってもらったのは他でもないネ!」

司令部地下室。別名『開かずの間』にて行われていた。

「それで、私たちに何の用?金剛さん」

「もう寝る時間なのですが…」

「ふわぁぁ…那珂ちゃん眠ーい…」

アークロイヤルパラダイスティーに火をつける。

甘い紅茶の匂いが部屋を包み込む。

「簡単ネー。先日川内達にやらせたあの事についての話デース」

一服した後、口を荒々しく言う。

「撃ち漏らしたのが一人…居たネ。何で…何でキルしそこねたんデスカ!?」

「他に居たのか!?」

「それは後から入ってきた事…でも、次からは…気を付けないとユー達がここから追放されるネ…」

川内はヘラヘラしながら箱から煙草を取り出し、火をつけた。

「別にいいじゃん。それに…情報、違ってたよ?金剛さん」

ふぅー、と彼女の顔面に煙を吐く。

「アンタらの問題だろ。ちゃんと調べてこいって霧島の姉さんに言っておいて下さい。では私たちはこれで」

バタン、と扉が閉まる。

「mother fucker!」

煙草を床に落として何度も強く踏みつけた。

今回はここまでです。

勢いとノリは重視しますよ!

何か問題点があれば、言って下さるとありがたいです。


>>7
間違いは誰にでもあるのです。気にしてませんよ

「っはー!」

夕方。授業が終わった後に自己鍛錬をする。

それを終えての、一杯だ。

駆逐艦でも酒は飲める。酒保にはビールや日本酒など多くのものを取り揃えている。

「吹雪ちゃんはお酒が好きなの?」

「終わった後のビールは最高だよ!睦月ちゃんと夕立ちゃんも、飲む?」

「飲むっぽい!」

「私はいいや」

冷蔵庫から、買ってきたビールを夕立と自分の分を、取り出す。

ポン、と心地の良い音を出す。

キリンビール。吹雪やみんながよく飲むものだ。

「美味いっぽいー!」

さらに、煙草を取り出し、火を付け始めた。

数杯飲み、夕立は酔ってきたのか話始める。

「吹雪ちゃん…提督さんの事どう思ってる?」

考えた事が無かった。

「考えた事無いや…夕立ちゃんは?」

「いい人だよね!」

即答された。迷いが無い。

「睦月ちゃんはどう?」

「そうだね、夕立ちゃんと同じだよ!」

可もなく不可もなくな答え。

ピンポンパンポーン…


(チャイム?こんな時間に何だろ?)

ノイズが少し聞こえた後、長門秘書艦の声が聞こえた。

『夕立と睦月は、至急執務室へ来るように。繰り返す、夕立と睦月は、至急---』

「ごめんにゃしい…呼ばれたみたい」

「行かないと…こんな時だからアレっぽい…」

2人は申し訳なさそうな、後ろめたそうな感じで、執務室へ向かっていった。


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執務室には、提督と呼ばれる踏ん反りかえる者と隣に着きそう長門、煙草を加えて待つ金剛と茶を飲んでいる赤城と加賀、眠そうにしている那珂と「しゃきっとして下さい、那珂姉さん」と淡々と言う神通、少し興奮気味の川内、虫の居所が悪そうな顔をする瑞鶴がいる。

「遅れました!」

「ごめんなさいっぽい!」

提督はそれを無視し、本題を話し始めた。

「よく来た。話とは、次の『目標』についてだが…こいつらだ」

長門が各自に資料を配る。

「近々とある宗教団体…に属するNPOを完膚なきまで潰してほしいとの事だ」

「宗教団体…益々怪しいですね」

「赤城さんの言う通りです」

夕立と睦月は、どう言う事と言う顔をしていた。

それを察した長門が説明をする。

「疑問に思う者もいるかもしれない。彼らは私たちの脅威になりかねない存在だ。これは大本営からの通達である」

瑞鶴と川内は、煙草に火をつけた。ラム酒の香りと甘いバニラの匂いが紅茶の香りと交る。

「…臭い」

神通は、三人の加えている物を切り裂いた。

「ひゅー…怖い怖い」

「吹かすなら外でして下さい」

彼女の腰には、日本刀が下げられている。

「神通さんが日本刀(それ)持っているなんて珍しいっぽい」

「狭い部屋でそんなの振り回すなんてクレイジー…ま、当たってないからいいですけどネ」

この部屋に漂うのは、煙と殺意だ。

「作戦は簡単だ。ただ、殺せ。徹底的にな。実行は明後日のマルマルマルマル。以上。質問がある者は今ここで言え」

「…提督、他には」

「質問も無い様だし解散。あ、銃の手入れは忘れ無い事」

それぞれがそれぞれのペースで部屋を出ていく。

「なぁ、長門。お前さんから見て吹雪はどうよ?」

いつもの気まぐれかと思い、素直な自分が持つ彼女の評価を答える。

「彼女は友人を慰め、この鎮守府の危機を何度も救った良い子です。かつ成績や交友関係も良好…ですね」

その時、新しいおもちゃを見つけたように彼は、にんまりとした顔で言った。

「彼女もここに配属させようか」

「…正気ですか」

「そりゃな。考えなしじゃないぜ、長門ぉー…」

相変わらず考えが読めない奴だと彼女は思った。

「海軍謀略部隊」と書かれた書類を眺める。

彼が何故に彼女を選んだのかは、神のみぞ知る。


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「戦争反対!」

「深海棲艦は敵じゃない!」

「艦娘を解放せよ!」


演習を終え、帰宅しようとするとデモ隊に出会った。直に見るのは初めてである。

太い字で書かれたプラカードや横断幕、さらには機械式のメガホン(正式名称は分からない)で主張していた。

「こっちが君らのためにどれだけ戦ってると思っているのやら…」

紺の帽子を深く被った白髪の少女はつぶやいた。

「あ、響さん。遠征お疲れ様です!」

「お疲れ。君は演習終わりかい?」

「そうですね。良かったら間宮に寄って行きませんか?」

「君の奢りならね」

「じゃあ良いです」

彼女は冗談さと言い、一緒に間宮へと向かった。


間宮のスイーツはこの世のものとは思えないくらい美味しい。

和菓子洋菓子問わずである(もっとも外のお菓子は不味い事が多い)

私はあんみつ、響は特製アイスを頼んだ。

しばらくしてくると、それを食べながら言う。

「遠征している時にとある船が燃えながら、沈んで行くのを見たんだ。そしたら周りには艦娘が居てね、それを見ているだけなんだよ」

「…見ているだけ?」

普通なら助けるだろう。普通なら。

「ああ。その後、海面に掃射し始めて驚いたよ。それで砲撃しようとしたら天龍さんに止められたんだ。『これはヤバいからするーしとけ』って…」

「もしかしたら、深海棲艦なのかもしれませんね。潜水艦でも仕留めようとしたんだと思いますよ」

「だと良いけどね…」

煮え切らない言い方に疑問を持ったがめんどくさそうなので、それ以上聞くことは止めた。

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しばらく、自室で勉強をしていると呼び出しのアナウンスがかかった。

『吹雪、吹雪。大至急執務室に来るように。繰り返す、吹雪、吹雪---』

(何かやらかしたのでしょうか…?)

そんな疑問を抱きつつ、私は執務室へと向かった。


執務室に居るのは、提督だけだ。

「失礼します!司令官、何の御用でしょうか?」

「あぁ、固くならなくてもいい。ただ、質問に答えて欲しい。いいね?」

呼び出して置いて呆気にとられる反面、返しによっては首かもと思ってしまう。

「もしだ…もし大切な人…友人でもいいが、危機にさらされている時、躊躇なく敵を撃てるか?」

簡単なようで難しい問いだ。考えと恐怖から声が出にくくなっている。

「躊躇なく…ですか?」

「ああ」

「…撃ちます。撃てます!」

それが聞きたかったのだ!と言わんばかりの顔をし、こう告げる。


「吹雪、君を本日付けで『海軍謀略部隊』への配属を命ずる。頑張りたまえよ」

「はいっ!司令官!」

よく分からないが、司令官に褒められた。期待されている。

そのことで、頭と心は一杯だった。

「では、場所を案内しよう。長門に付いて行きたまえ」

「行くぞ、吹雪」

事務的な口調で言い放った。

怪談を降り、関係者以外立ち入り禁止と書かれた鉄製の扉を開ける。

中に居たのは---


「睦月ちゃん!?夕立ちゃん!?それに赤城先輩や加賀先輩も…」

「ついに配属になりましたカー、ブッキー!」

「金剛さんも!?」

鎮守府じゃ指折りの実力者達が何故こんな地下に集まっているのだろう。

「失礼する」

長門は混乱している吹雪を無視し、出て行く。

「特型駆逐艦も出世したんだね-!嬉しいー!」

「川内さん…あの…」

「姉さん!」

「ごめんな。じゃ、新歓始めますか!」

見知った人たちが、自分のために祝ってくれる。

これほど嬉しいことは無い。

「吹雪ちゃんと睦月ちゃん、夕立ちゃんは明日から別のメニューを課します」

「別メニュー?」

すると、一斉に銃を取り出した。

「…私たちは海軍、いや提督直属の兵隊(アーミー)…それが私達『海軍謀略部隊』」

「…は?」

意味が解らない。なんだ、何をするんだ。何をすればいいと考えてしまう。

その意味を睦月が答えた。

「『海軍謀略部隊』は分かりやすく言うとね…邪魔になる人間を消すんだよ」

「消す…?」

文字通りの意味だろう。消すと言う意味は…

「要は殺すって事にゃしい」

「冗談…だよね…?」

現状をなおも受け入れない新入りに、那珂が冷たく浴びせた。

「べっつにいいじゃん!邪魔するって事は、その分不利になるって事だよぉ?だったら、殺した方がいいよね」

ゾワリとした。

本心だ。ここの人たちの本心だ。

「私…あの…えっと…」

「吹雪さん、戸惑うのは分かります。でも、受け入れないといけませんよ。私もそうして来たのですから」

狂ってる、とは言いだせそうにない雰囲気だ。

私は、それを受け入れざる負えなかった。

「…わかりました」

翌日、私は銃を受け取った。

4式自動小銃(艦娘型)と12糎拳銃。

威力は小銃も拳銃も変わらなかった。

(どちらもひき肉にするのは簡単ですね)

岩と分厚い金属に大きな穴が開いた。

新聞で見た物は、おそらくこれが起因するのだろう。

「特型駆逐艦、調子はどう?」

「まぁ、何とか」

「そっか。これ終わったら15分休憩だよ。その後は、睦月たちと合流して、神通から基本的な動きの説明があるからね」

「了解です!」

私は、最悪だと思った。

こんな威力のある武器を、人に向けて撃つのだ。

革命が起きて、改善されたとしても、やはり変わらない。

(私は…)

少女の中で、何かの意志が燻ろうとしていた。

(私は---)


---この最悪な鎮守府と最悪の提督に終わりを告げさせてやる。



孤独な戦いが、始まろうとも知らず、少女は拳銃を握り、天へと放った。

今回はここまでです。

これを後2日で終わらせる予定です

ここまでで、悪いところがあれば教えて下さると助かります

人が居なさすぎて泣けてくるずい…

うーん…とりあえず続けるずい

「吹雪さん、あなたが持つ武器の性能(スペック)は知ってますか?」

昼食を食べ終わり、微睡む時に赤城が訪ねてきた。

「い、いえ」

無意識に背筋を伸ばし、敬礼する。

「そう固くならずに楽にしてもいいですよ。支給されたのは4式自動小銃と12糎拳銃…で合ってますか?」

大穴を開けたのだから覚えていない方がおかしい。

「そうですね。それで合ってます」

「まず4式38式から。元々は7.7mm機関銃をベースに艦娘(わたしたち)仕様に改造した人間には扱う事が難しい銃です。12糎は12.7mmですけど」

確か、機関銃は開発でよく出るものだ。

「機関銃は正直、使い道ないですから…陸上で使えば、威力はかなり有りますよ」

「それで…何で説明を?」

「あなたは、まず自分が何をするかは分かっていますか?」

小銃と拳銃。何年か前に見た映画であれば、突撃兵が使っていたはずだ。

「突撃…でしょうか?」

一瞬、分かってないなこいつ、と言った雰囲気を出した。気を損ねた様だ。

「半分正解です。突撃は勿論、陸上での戦闘も行ってもらいます。人間の中には武装してくるのもいますからね」

いつもの顔に戻った。どうやら、気分を損ねたわけじゃない様だ。

(良かったー…)

「私達に支給されるのは、主に3つ。拳銃、ナイフ、手榴弾。次に役割についてですが、実行班と補助班、諜報班の3つ。私は2番目ですね」

「はぁ…私は赤城さんと同じ班何ですか?」

「吹雪さんは確か…実行班、だったはずです。小銃か狙撃銃を貰ったはずだと」

「小銃を貰いましたが…」

「なら実行班ですね。私は38式を支給されましたから」

そもそも、海がメインになる艦娘にとって陸軍の武器は必要ない。

なのに使うのは…消すためだろう。

ふと、疑問が沸いた。

「…赤城先輩は殺すことに抵抗は無いんですか?」

う~ん、と思案するようなしぐさの後、こう言った。

「考えたこともありませんでしたね。でも、提督の命令ですから何か意図があるのだと思います」

提督の命令。この一言に尽きると言う事だろうか。

逆らう訳にはいかない、と言う事だろう。

「今夜はもう二人と会ってもらいます。と、言ってももう来るころだと思いますよ」

「あれ?赤城さん、それに吹雪じゃん。どったの?」

カーキ色のセーラー。黒髪に三つ編みと茶色のストレート。北上と大井だ。

仲良さそうに、腕組みしてる

「お二人は彼女が『部隊』に入ったことは知ってますか?」

嫌そうな顔をし、「昨日金剛から聞いたわよ。ほら、北上さんとのデートを邪魔しないで!」

しっしっ、と左手を揺らしながら北上と共に去っていった。

「あはは…」

「そう言えば、今回は吹雪さんに実戦を…と神通さんが言ってましたよ。健闘を祈っています」

「はい!」

(何で…何で「駄目」だって言えなかったの私…)

体を震わせ、唇を少し強く噛んだ。


実戦は、案外簡単な物だった。

茂みから、川内さんが覗く。見えるのは古びた煉瓦創りの倉庫と小型ボート数隻だ。

「作戦をもう一度確認するよー。特に吹雪と夕立はちゃんと聞いておくように」

今回の作戦は、違法に資材を敵に売り払う組織の始末だ。ここから数十キロ先にあるアジトを潰す。

小銃を持つ私と夕立、睦月は敵をかく乱する。その後死角から川内さんと神通さんが攻撃すると言うものだった。

銃を腕が少しつりそうだ。夕立と睦月の方を見るが、私と同じ気持ちの様だ。しかし、ここでミスをしたら恐ろしいことが待っているかもしれない。

「敵は数は少ないけど、機関銃で武装した奴らだ。この時間なら、幸いにも見張りだけ。停泊しているボートは私達が魚雷でやるからね。バレたら作戦は即終了。じゃあ、作戦開始!」

出撃。

一気に駆け抜け、銃を放つ。

「何だこいつら!撃て!撃て!」

「こ、来ないで下さい!」

パパパと軽快な音が私の筒から出る。

「こいつ…!がはぁ…」

「終わったぽいー…」

ふと、我に返り、辺りを見渡す。すると、靴下に何か付いている。

どす黒い物斑点がが大小付いていた。

今日はここまで

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案内されたのは個室だった。

吹雪が来たときには彼女を除き、3人揃っていた。

「君なら来るかと思ったよ、吹雪」

予見していたかの様に響は言い放つ。

「これで全員ですか?」

薄紫髪の少女があっけらかんと言う。

「そうだね。座ってくれ、吹雪」

戸を閉め、座る。

「あらあら、吹雪さんじゃない。どうしたのかしら?」

「陸奥さん…?どうしてここに?」

「さあ。どうかしらねぇ」

くすくすと笑うだけで答えてはくれなかった。

「さて、と。始めますか。『水路部』をね」

「…水路部?」

水路部とは本来、海の状態を観測・記録、天体観測を請け負っている所だ。しかし、今はそのような名称は使われていない。

「ここに居るのは、以前から変わらない提督や鎮守府や基地、泊地に対して監査を入れている人間を欺けるための諜報機関だよ」

「つまりその日だけ騙す嘘吐きさん達の集まり、と」

素直な子ですね、と薄紫髪の少女は言う。

「その前に、つまみと飲み物は注文するかい?煙草は吸っても構わないよ」

「じゃあお言葉に甘えて、清酒と枝豆。後キュウリの酢の物を」

そう言い、隅に置いてある灰皿を取り、煙草に火を付ける。

「では改めて。まずは…自己紹介でもしますか」

「響さんと陸奥さんは知ってますが、あの人は…」

「青葉です!どうぞ、よろしくぅ!」

薄紫髪の少女---青葉と言う様だ---は会った時と変わらないテンションで話す。

「私は違いますけどねー。フリーの記者ですし」

煙草を一飲みし、一体なんなの目的なのだと視線で問いかける。

「多くの鎮守府は改善を図ってきたつもりだ。しかし、実態はアレが起きても変わらなかった…」

神妙な顔をしながらそう彼女は言った。

「つまり革命が起きた後でも、提督達(かれら)は変わらなかったって訳。さらに巧妙に私物化し始めたのよ。こんな組織まで作って…」

はぁ、と陸奥が呆れ気味に言う。

「しっかし、驚きましたよ。まさかあなた達が裏切るなんて…青葉、驚きです」

「いちいちハーレムを作るしか能が無い奴の元に居てもしょうがないじゃない。それに酒も煙草も一部を除いて禁止にしたんだからね」

一部とはここの事だ。煙草や酒も無論、ここでしか飲めない。

「戦場じゃ楽しみと言えばそれだからね。しかも賭けも禁止にして、指揮もほぼ艦娘(わたし)達に丸投げだ」

「酷いですね…」

そんな事実が有ったとは、驚きだ。

「それで、指揮すれば、全滅しかけるから何度殺そうかと思ったよ…」

「ま、ここのはコネで着任(ついた)ようなものですしねぇ。そう聞いてますよ」

出るわ出るわ、提督の話。

ロリコンだとか、戦略も知らない無能とか、資金を着服してるとか、誰かを孕ませて堕(おろ)させたとか等…

「前も前ですけど、今も今ですね」

私がそう言うと「不幸だわ…なんてね」と陸奥が冗談を飛ばす。

思わず、その場にいた全員が笑ってしまった。


今回かここまでずい

「号外!号外!鎮守府にてテロ未遂!ごうがーい!」

いそいそと新聞を配る那珂に吹雪が通りかかる。

「あ!吹雪ちゃん!新聞だよ!擦りたてほやほやだよ?」

そう言うと、はい!と押し付けられた。

適当に歩き、腰を下ろす。

(嘘…でしょ…)


そこには---「主犯響、捕まる」


発行しているのは---青葉だ。

(リークした…嘘…)

そこに書かれた情報は、かなり正確だった。

どこで、誰がいつどのやって…しかし、不幸中の幸いか私と陸奥さんの名前は無かった。

記事によると、発覚した原因は資材が少なくなっていた事。

しかも僅かにだ。演習や出撃で見積もっても少なかったらしい。

書き換えしていた事実さえも分っていた。

それよりも、今の彼女には怒りが込められていた。

記事のために艦娘を売った、あの記者モドキ。

全段や魚雷撃ってでも許されない。

(沈めてやる!完全に…です!)



独房は、最近出来たところだ。反省もしない艦娘を送り込み改心させる…のが目的らしい。

そこへ私は入った。

中は冷たく、暗い。殺風景と言った方がいいだろうか。

奥の部屋に響はいた。

「はは…よく来たね…」

鎖で両腕を縛られ、吊るされている。体はあちこち傷だらけ。

彼女の足もとには血だまりが出来ている。

そこが今居る場所だった。

「酷いです…」

「シベリアに比べたら屁でもないさ…吹雪…」

「何でしょう?」

彼女はかすれそうな声で伝えた。

「…臨時司令部…そこを探して…メンバーはもう揃えているから…中からも外からも…」

「どこに有るんですか!?」

「…演習…場を探して…みてく…れ…」

そう言うと、響は眠ってしまった。

(そこに…行けば…)

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少し時間がかかったが、見つけることが出来た。

「ここですか…」

巨大な工廠に入渠施設(ドック)、演習場に出撃用の出入り口まである。

ふと、思い出した。

ここはかつて、海軍が制海権を取られた時に使う反攻用の施設で有った事。

(もしかしたら…)

通信室と書かれた部屋へ向かう。

入ると、手書きの紙切れが貼られていた。

(このチャンネルで合わせればいいのですね…)

チャンネルを慎重に合わせる。

ノイズ交じりで声が聞こえる。

『こ…ら…す…ろ…です…なた…者で…か…』

「こちら、何々鎮守府!水路部!」

すると、ノイズは無くなり、はっきりとした女の人の声が聞こえた。

『そうですか。水路部でしたか。私は…大淀です。やらかした、ね』

革命後の処分。大半は左遷及び更迭。それは人間だけではなく、一部の艦娘にも適用された。

それが、彼女だ。

声は元気がない。

「あの…どうしたら…」

『武器、要ります?情報ならいくらでも…』

今欲しい物それは---


「この鎮守府についての実態のリークを…お願いします」

『…了解しました。では、3日ほどお待ちください。それまでには…』

「分かりました。通信切りますね」

『…幸運を』

通信機を切り、しばし考える

(3日間…)

その間に横暴を解き、協力者が誰か知らねばならない。

響はおそらく答えようとはしないだろう。知られてしまえば計画は終わりだ。

時間はもう無い。

と、思われた。

(これは…!)

協力者はこれで繋がっているらしい。

電探で出来そうだ。出撃できる機会があればしてみよう。



「どうしたの?吹雪ちゃん、そんな思いつめた顔して…」

教室でどうするか悩んでいると、睦月が心配そうに声をかけてきた。

「いや、何でもないよ!あはは…」

「そう言えば、例の作戦実行が決まったよ」

「いつ頃なの?」

「明日のマルキュウマルマル。場所はいつもの所。それで…小銃は無し。それは川内さん達が後から支給してくれるって」

機会は意外と早く来た。艤装があるなら、もしかしたら出来るかもしれない。

「分かったよ。出るのは私と睦月ちゃんと…」

「夕立ちゃんと陽炎先輩、それに軽巡の大淀さんに北上さん、大井さんだよ。更迭明けてから久々の出撃だよねぇ。」

そうだね、と私は言い、机に伏せた。

やけに眠気が出てきたのだ。


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傷が疼く。

あの時やられた傷が。

右太ももにやられたあの傷が。

右手に刺さった砲弾の破片が。

顔に残った切り傷が。

疼く疼く疼く。

決まって出て来るのはアイツだ。

「弱いな」

私は弱くなんかない。夜戦でなら…

「そこまで経験あるのか?」

ッ…うるさい…


「夢か…」

夜戦好きの少女は、獣のような顔で静かに笑っていた。

作戦はこうだ。

まず、対象となる船をある場所まで送り届ける。

ある位置で、敵に見せかけた味方を送り込み、船ごと沈めると言った内容だった。

船は予想以上に大きく、立派だ。

そこで、サイドに2人ずつ、前に1人、後ろに1人と言う構成になっている。

船で何が起ころるか乗組員は不明である。

すると、無線が入った。

『ここで沈めるよー。一斉射』

魚雷を船へと向ける。発射。その間に魚雷を装填しなおす。

船は大きな爆発音とともにゆっくりと海へ潜り込んでゆく。

これからが本番だ。

チャンネルを合わせる。

『はい』『聞こえてるわ』『聞こえてるっぽい!』

3人から入った。

大淀さん、大井さん、夕立ちゃんだ。

『作戦の説明に入ります。これは陸奥さんからの説明です』

『捕獲。それだけです。まず、通信網をズタズタにしましょう。砲弾には別途配られたチャフがあるはずです。それを撒いて下さい』

『以降は特製反響弾での気絶を狙って下さい。以上』

「何してるの…?砲台を上に向けて」

大きな発射音と共に、キラキラとした物がばら撒かれる。

「これじゃあ通信聞こえなくなっちゃうよ!吹雪ちゃん!」

「これでいいの…これで…」

陸奥さんの声が後ろから聞こえた。

「水路部!攻撃開始!」

投下。海が揺れる。何か私たちの艤装に加工をしたのか、震動は伝わることは無かった。

睦月と北上、黒潮先輩や陽炎先輩は気絶してしまった。

「さて、撤収よ。お荷物は…敵が来たわ!」


「やっぱり提督の言うとおりだった訳だ…裏切り者め…」

そこに居たのは、主力艦隊。

「吹雪さん…」

赤城は彼女を残念な顔で見ている様だ。

旗艦は長門。構成は金剛に霧島。川内に神通などなど。およそ前線で戦ってきた猛者共。

「残念です…あなた達を消すことになるなんて…」

最悪だ。

最悪の状況。

緑の空が広がっている。

「提督の言う事さえ聞いていれば…」

「何を言っているんですか?私達の魚雷は爆薬は入ってませんよ?」

魚雷は浮いて来た。

「…ッ」

「何で…爆発したんですか?」

そう。魚雷には事前に爆薬を抜いておいたのだ。

「何故…何故…!」

「さあ。でも…」

陸奥さんと大淀さんは上を射した。

「少なくとも、衛星中継はしていますよ」

「那珂ちゃんはぁ、証拠が無いとただのはったりにしか聞こえないなぁって思うよ!」


「ならこれを見ても言えますか?」


彼女が持ってきたのはPC。しかも、衛星中継用のだ。

わざわざ艤装に組み込んできたらしい。

「はいはーい!ピースピース!」


その数時間後、吹雪が属する提督は逮捕された。

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